(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】外用剤、頭皮又は頭髪用の外用剤、頭皮又は頭髪用の外用剤を用いた毛髪育養方法、及び動物用の皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240819BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240819BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/02
A61Q7/00
(21)【出願番号】P 2024056920
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524123850
【氏名又は名称】株式会社ricari
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉▲崎▼ ゆかり
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037563(US,A1)
【文献】特開平03-287517(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194169(JP,U)
【文献】特開2008-213453(JP,A)
【文献】特開2001-240512(JP,A)
【文献】特表2021-529154(JP,A)
【文献】特開2006-335698(JP,A)
【文献】特開平07-330554(JP,A)
【文献】HE, Ting et al.,European Journal of Medicinal Plants,2016年,14, 1,1-15,ISSN: 2231-0894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桐の幹又は/及び根のおがくずを小粒径になるように粉砕して得られる桐粉体を含有する外用剤において、前記桐粉体が所定の発泡性の液体に混合されることで、人の頭皮又は頭髪に塗布可能に構成されるとともに、前記桐粉体を5質量%以上且つ20質量%未満含有する、頭皮又は頭髪用の外用剤を用いた毛髪育養方法であって、
前記
発泡性の液体に混合された前記桐粉体を対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布する塗布ステップと、
前記対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された前記桐粉体に対して赤外線を照射する照射ステップと、
を有し、
前記照射ステップでは、3分以上の時間に亘って赤外線が照射される、
毛髪育養方法。
【請求項2】
前記塗布ステップでは、前記桐粉体が混合された前記
発泡性の液体であってホイップ状に泡立てられた前記
発泡性の液体が、前記対象者の頭皮又は/及び頭髪上で2センチメートル以上の厚みとなるように塗布される、
請求項1に記載の毛髪育養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤に関する。また、本発明は、頭皮又は頭髪用の外用剤、及びそれを用いた毛髪育養方法に関する。また、本発明は、動物用の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚、頭皮のトラブルや、頭髪の薄毛や脱毛の症状などへの対策として、種々の外用剤が提案されている。このような外用剤は、皮膚のトラブルや脱毛症の要因を阻害する作用を生じさせることで、症状の改善を図ろうとするものである。
【0003】
ここで、例えば、男性型脱毛症は、遺伝的要因が強く、その成因については男性ホルモン説があるものの、皮脂分泌異常、フケの過剰発生、栄養不良や、毛包への血流不全も、その要因として考えられている。そこで、従来技術では、例えば、頭皮の血流を改善し育毛・養毛効果を発現させる因子として、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に着目されている。このVEGFは、頭皮の毛根の先端にある毛球部内の毛乳頭細胞周辺の血管を新生して毛髪の成長を促進させること、また毛乳頭細胞を増殖させてVEGFの産生を促進することで、毛髪を太く長く成長させることが知られている。
【0004】
そして、例えば、特許文献1には、優れたVEGF産生促進作用を有するVEGF産生促進剤に関する技術が開示されている。この技術では、優れた毛乳頭細胞の増殖効果を有する上に、優れたVEGF産生促進作用も有する蜂の子が有効成分として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、皮膚、頭皮のトラブルや、頭髪の薄毛や脱毛の症状などへの対策として、種々の外用剤が提案されているが、その有効性が十分ではなかったり、副作用が出現したりすることがあった。例えば、男性型脱毛症に対する外用剤として、男性ホルモンに拮抗する女性ホルモンが使用される場合には、症状の改善に対して有効性を得られる量を配合しようとすると、女性ホルモンによる副作用が問題となり得る。
【0007】
一方で、頭皮の状態を毛髪育養促進に適した環境に改善させることで、頭髪の薄毛や脱毛の症状などに対処することも考えられる。ここで、特許文献1によれば、副作用の発生を可及的に抑制しながら頭皮の状態を毛髪育養促進に適した環境に改善させることができるようにも思われる。しかしながら、健康食品としても知られる蜂の子は、比較的高価であって、更に、その加工処理に手間を要するものである。また、皮膚における活性酸素の増殖によって炎症が生じ、皮膚、頭皮のトラブルや、頭髪の薄毛や脱毛の症状などが起こり得るところ、皮膚に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって、皮膚の状態を改善させ、頭皮においては、毛髪育養促進に適した環境に改善させる技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、皮膚に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって、皮膚の状態を改善させ、頭皮においては、毛髪育養促進に適した環境に改善させることを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の外用剤は、桐の幹又は/及び根を粉砕して得られる桐粉体を含有する。
【0010】
ここで、桐の幹や根には、タンニン、パウロニン、セサミンといった成分が含まれる。本開示の外用剤は、桐の幹又は/及び根を粉砕した桐粉体により、パウロニンによる抗炎症作用を好適に生じさせるものである。
【0011】
そして、本開示は、上記の外用剤において、前記桐粉体が所定の液体に混合されることで、人の頭皮又は頭髪に塗布可能に構成される、頭皮又は頭髪用の外用剤として捉えることができる。この場合、頭皮又は頭髪用の外用剤は、前記桐粉体を5質量%以上含有してもよい。これにより、毛髪育養の顕著な促進作用を得ることができる。また、頭皮又は頭髪用の外用剤は、前記桐粉体を20質量%未満含有してもよい。これにより、外用剤を対象者の頭皮又は頭髪に張り付くように塗布させることが可能になる。
【0012】
また、本開示は、上記の頭皮又は頭髪用の外用剤を用いた毛髪育養方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の毛髪育養方法は、前記液体に混合された前記桐粉体を対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布する塗布ステップと、前記対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された前記桐粉体に対して赤外線を照射する照射ステップと、を有する。この場合、前記照射ステップでは、3分以上の時間に亘って赤外線が照射され得る。これにより、桐粉体が好適に加熱され、パウロニンによる抗炎症作用が活性化されることで、毛髪育養の促進作用を得ることができる。また、前記塗布ステップでは、前記桐粉体が混合された前記液体であってホイップ状に泡立てられた前記液体が、前記対象者の頭皮又は/及び頭髪上で2センチメートル以上の厚みとなるように塗布され得る。
【0013】
また、本開示は、上記の外用剤において、天然油脂に所定のアルカリ剤と前記桐粉体とが混合されることで、前記桐粉体を含有した固形石鹸として構成される、動物用の皮膚外用剤として捉えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、皮膚に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって、皮膚の状態を改善させ、頭皮においては、毛髪育養促進に適した環境に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の毛髪育養方法のフローを示すフローチャートである。
【
図2】対象者の頭頂部および前頭部について、本開示の毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況と、本開示の毛髪育養方法を実行した1ヶ月後の毛髪の状況と、の比較を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の毛髪育養方法のフローを示す図面に基づいて、本開示の実施の形態である頭皮又は頭髪用の外用剤、及びそれを用いた毛髪育養方法を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
実施形態における頭皮又は頭髪用の外用剤、及びそれを用いた毛髪育養方法について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本開示の毛髪育養方法のフローを示すフローチャートである。なお、本実施形態における頭皮又は頭髪用の外用剤は、桐の幹又は/及び根を粉砕して得られる桐粉体を含有する外用剤であって、桐粉体が所定の液体に混合されることで、人の頭皮又は頭髪に塗布可能に構成される。
【0018】
本フローでは、先ず、S101において、頭皮又は頭髪用の外用剤を生成するステップが実行される。S101のステップでは、桐の幹又は/及び根を粉砕して得られる桐粉体と、所定の液体と、を混合することで、頭皮又は頭髪用の外用剤が生成される。
【0019】
ここで、皮膚における活性酸素の増殖によって炎症が生じ、皮膚、頭皮のトラブルや、頭髪の薄毛や脱毛の症状などが起こる傾向がある。
【0020】
本開示人は、このような症状に対して、桐粉体を頭皮又は頭髪用の外用剤として用いることで、抗炎症作用および抗酸化作用によって頭皮を毛髪育養促進に適した環境に改善できることを新たに見出した。
【0021】
詳しくは、桐の幹や根に含まれるタンニン、パウロニン、セサミンといった成分のうち、パウロニンによる抗炎症作用を好適に生じさせることを可能にする技術により、頭皮の状態を改善させ、頭皮を毛髪育養促進に適した環境に改善させるものである。
【0022】
上記を実現するために、S101のステップでは、桐の幹又は/及び根のおがくずを、10μm程度の粒径になるように更に粉砕することで、桐粉体を取得する。そして、この桐粉体を所定の液体に混合することで、頭皮又は頭髪用の外用剤を生成する。このとき、外用剤において、桐粉体が5質量%以上含まれるように、桐粉体と所定の液体とが混合される。また、上記の液体は、発泡性の洗髪用化粧品、又はペースト状の頭髪用化粧品を含んで構成され得る。そして、このようにして桐粉体を用いることで、桐の幹や根に含まれるパウロニンによる抗炎症作用を好適に生じさせることが可能になる。
【0023】
例えば、1人あたりの頭皮又は頭髪用の外用剤を生成するときには、桐粉体3gを、液体30gに混合する。ここで、上記の液体は、例えば、発泡性の洗髪用化粧品10gと、水20gと、が混合された液体であって、このように発泡性の洗髪用化粧品を用いる場合には、桐粉体と該液体との混合物がホイップ状に泡立つように、約1分間攪拌される。
【0024】
なお、後述する塗布ステップにおいては、上記の外用剤が対象者の頭皮又は頭髪に張り付くように塗布される必要がある。そこで、上記の外用剤においては、桐粉体の含有量が20質量%未満となるように、桐粉体と上記の液体とが混合され得る。これにより、比較的粒径が小さな桐粉体により吸水作用が生じたとしても、桐粉体と上記の液体との混合物を好適に泡立てることが可能になり、以て、上記の外用剤を対象者の頭皮又は頭髪に張り付くように塗布させることができる。
【0025】
次に、S102において、上記の液体に混合された桐粉体を、つまり、頭皮又は頭髪用の外用剤を、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布する塗布ステップが実行される。
【0026】
このS102のステップでは、ホイップ状に泡立てられた桐粉体と上記の液体との混合物が、対象者の頭皮又は/及び頭髪上で2センチメートル以上の厚みとなるように塗布される。これにより、後述する照射ステップが実行されているときにおいても、頭皮又は頭髪用の外用剤が対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された状態を好適に維持することができ、以て、上述したパウロニンによる抗炎症作用を好適に作用させることができる。
【0027】
なお、液だれを防止するために、対象者の襟足からフェイスラインに亘ってロールコットンが巻かれてもよい。更に、対象者の頭部がラップによって包み込まれてもよい。
【0028】
次に、S103において、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射する照射ステップが実行される。
【0029】
このS103のステップでは、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して、遠赤外線ヒーターを用いて3分以上の時間に亘って赤外線が照射されることで該桐粉体が好適に加熱され、パウロニンによる抗炎症作用が活性化されることになる。
【0030】
そして、S103のステップの実行後には、対象者の頭皮又は/及び頭髪に上記の外用剤が塗布された状態において該外用剤が泡立てられ、その後、水または湯で約5分間洗い流される。
【0031】
そして、このような頭皮又は頭髪用の外用剤を用いた毛髪育養方法によれば、頭皮に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって状態を改善させ、頭皮を毛髪育養促進に適した環境に改善させることができる。
【0032】
(対照例、実施例、比較例)
下記表1の配合で外用剤を調製した。すなわち、本開示の実施例1は、桐粉体9質量%(3g)と、発泡性の洗髪用化粧品と水とが混合された液体91質量%(発泡性の洗髪用化粧品10g、水20g)と、が混合された外用剤であって、本開示の実施例2は、桐粉体5質量%(1.7g)と、発泡性の洗髪用化粧品と水とが混合された液体95質量%(発泡性の洗髪用化粧品10g、水20g)と、が混合された外用剤である。また、対照例として、桐粉体を含有しない外用剤を調製した。更に、比較例1として、桐粉体3質量%(1g)と、発泡性の洗髪用化粧品と水とが混合された液体97質量%(発泡性の洗髪用化粧品10g、水20g)と、が混合された外用剤を、比較例2として、桐粉体20質量%(7.5g)と、発泡性の洗髪用化粧品と水とが混合された液体80質量%(発泡性の洗髪用化粧品10g、水20g)と、が混合された外用剤を調製した。なお、上記の配合は、1人あたりの頭皮又は頭髪用の外用剤を生成するためのものである。
【表1】
【0033】
(頭皮又は頭髪用の外用剤の評価)
上記表1の配合で調製された頭皮又は頭髪用の外用剤について、下記の評価方法に従い評価した。なお、以下の毛髪育養促進の評価は、上述した毛髪育養方法の照射ステップにおいて、評価者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して、5分赤外線を照射した場合のものである。
【0034】
(毛髪育養促進の評価)
本実施形態における頭皮又は頭髪用の外用剤による毛髪育養の促進作用について、下記の項目に従い評価した。結果を表2に示す。なお、評価結果は、評価者3名について上述した毛髪育養方法を実行し、その1ヶ月後の毛髪の状況と、上述した毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況と、を定性的に比較したものである。
○:毛髪育養の顕著な促進作用が観察される
△:毛髪育養の僅かな促進作用が観察される
×:毛髪育養の促進作用が観察されない
【表2】
上記表2に示すように、1人あたりの頭皮又は頭髪用の外用剤として、桐粉体を5質量%(1.7g)以上含有する、実施例1、実施例2、および比較例2は、桐粉体を含有しない対照例と比較して、毛髪育養の顕著な促進作用が観察される。
【0035】
ここで、
図2は、評価者3名のうちの1名の対象者の頭頂部および前頭部について、上述した毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況と、上述した毛髪育養方法を実行した1ヶ月後の毛髪の状況と、の比較を説明するための図であって、
図2(a)は、上述した毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況を表し、
図2(b)は、上述した毛髪育養方法を実行した1ヶ月後の毛髪の状況を表す。なお、
図2に示す比較においては、頭皮又は頭髪用の外用剤として、実施例1の配合で調製したものが使用されている。
【0036】
図2に示すように、上述した毛髪育養方法を実行した1ヶ月後の毛髪の状況(
図2(b))では、上述した毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況(
図2(a))と比較して、頭頂部および前頭部において、毛髪育養が顕著に促進されていることがわかる。詳しくは、上述した毛髪育養方法を実行する前においては、脱毛症による薄毛の状態によって頭皮の露出が多く見られ、且つ毛髪も細くなっているのに対して、上述した毛髪育養方法を実行した1ヶ月後には、露出していた毛穴からの発毛が観察されるとともに毛髪も太くなっていて、毛髪育養が顕著に促進されていることがわかる。
【0037】
なお、頭皮又は頭髪用の外用剤として、比較例1の配合で調製したものを使用した場合には、上記の
図2に示す程度の毛髪育養は観察されず、頭皮環境の改善による育毛といった毛髪育養の僅かな促進作用が観察された。
【0038】
(外用剤の泡立ちの評価)
本実施形態における頭皮又は頭髪用の外用剤の泡立ちについて、下記の項目に従い評価した。結果を表3に示す。なお、評価結果は上述した毛髪育養方法を施術する評価者3名の総意である。また、この場合の外用剤の泡立ちとは、桐粉体と所定の液体(発泡性の洗髪用化粧品10gと水20gとが混合された液体)との混合物を約1分間攪拌したときの外用剤の状態により評価され得る。
○:ホイップ状に泡立つ
×:ホイップ状に泡立たない
【表3】
上記表3に示すように、1人あたりの頭皮又は頭髪用の外用剤として、桐粉体を20質量%(7.5g)含有する比較例2では、外用剤がホイップ状に泡立たない。一方で、桐粉体の含有量が20質量%未満である、実施例1、実施例2、および比較例1では、外用剤がホイップ状に泡立つ。つまり、実施例1、実施例2、および比較例1では、外用剤を対象者の頭皮又は頭髪に張り付くように塗布させることが可能になる。
【0039】
(対照例、実施例、比較例)
下記表4の時間に亘って、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射した。すなわち、本開示の実施例3は、5分に亘って、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射した例であって、本開示の実施例4は、3分に亘って、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射した例である。また、対照例は、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射しない例である。更に、比較例3は、1分に亘って、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射した例であって、比較例4は、2分に亘って、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射した例である。
【表4】
【0040】
(赤外線の照射時間の評価)
上記表4に示した赤外線の照射時間について、下記の評価方法に従い評価した。なお、以下の毛髪育養促進の評価は、上述した毛髪育養方法の塗布ステップにおいて、桐粉体9質量%(3g)と、発泡性の洗髪用化粧品と水とが混合された液体91質量%(発泡性の洗髪用化粧品10g、水20g)と、が混合された外用剤を用いた場合のものである。
【0041】
(毛髪育養促進の評価)
本実施形態における頭皮又は頭髪用の外用剤に対する赤外線照射による毛髪育養の促進作用について、下記の項目に従い評価した。結果を表5に示す。なお、評価結果は、評価者3名について上述した毛髪育養方法を実行し、その1ヶ月後の毛髪の状況と、上述した毛髪育養方法を実行する前の毛髪の状況と、を定性的に比較したものである。
○:毛髪育養の促進作用が観察される
△:毛髪育養の僅かな促進作用が観察される
×:毛髪育養の促進作用が観察されない
【表5】
上記表5に示すように、評価者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して3分以上赤外線を照射した、実施例3および実施例4は、赤外線を照射しない対照例と比較して、毛髪育養の促進作用が観察される。
【0042】
なお、評価者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対する赤外線の照射時間が比較的短い比較例3では、毛髪育養の促進作用が観察されなかった。
【0043】
また、比較例3よりも赤外線の照射時間は長いものの照射時間が3分に満たない比較例4では、実施例3や実施例4が示す程度の毛髪育養は観察されず、頭皮環境の改善による育毛といった毛髪育養の僅かな促進作用が観察された。
【0044】
以上に述べた頭皮又は頭髪用の外用剤、及びそれを用いた毛髪育養方法によれば、頭皮に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって状態を改善させ、頭皮を毛髪育養促進に適した環境に改善させることができる。
【0045】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0046】
例えば、本開示の外用剤は、天然油脂に所定のアルカリ剤と桐粉体とが混合されることで、桐粉体を含有した固形石鹸として構成されてもよい。
【0047】
ここで、犬や猫などの動物は、人間と比べて皮膚が薄くデリケートである。また、人の肌は弱酸性であるのに対して、犬や猫などの動物の皮膚は、中性~弱アルカリ性である。
【0048】
更に、犬や猫などの動物の皮膚は、被毛で覆われているため、汚れ等によって細菌が繁殖し易くなり、臭いの原因となり得る。
【0049】
つまり、犬や猫などの動物の皮膚を清潔な状態に保つことで、臭いの原因を取り除くことができるものの、例えば、犬や猫などの動物を洗う際には、その薄くデリケートな皮膚を十分にケアする必要がある。
【0050】
そこで、本開示の外用剤は、動物用の皮膚外用剤として、桐粉体を含有した固形石鹸が構成されてもよい。これによれば、弱アルカリ性である石鹸成分によって、犬や猫などの動物の皮膚に刺激を与えることなく皮膚を清潔な状態に導くことができ、更に、桐の幹や根に含まれる成分によって、犬や猫などの動物の皮膚に消臭作用や鎮静作用を与えることができる。
【要約】
【課題】皮膚に対する抗炎症作用及び抗酸化作用によって、皮膚の状態を改善させ、頭皮においては、毛髪育養促進に適した環境に改善させる。
【解決手段】本開示の外用剤は、桐の幹又は/及び根を粉砕して得られる桐粉体を含有する。そして、この外用剤は、桐粉体が所定の液体に混合されることで、人の頭皮又は頭髪に塗布可能に構成され得る。また、このような頭皮又は頭髪用の外用剤を用いた毛髪育養方法は、液体に混合された桐粉体を対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布する塗布ステップと、対象者の頭皮又は/及び頭髪に塗布された桐粉体に対して赤外線を照射する照射ステップと、を有する。
【選択図】
図1