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特許7539609抗-CD300C単クローン抗体を含むがん予防または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】抗-CD300C単クローン抗体を含むがん予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240819BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022528613
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2020016264
(87)【国際公開番号】W WO2021101244
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2019-0147496
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154076
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522193293
【氏名又は名称】セントリックスバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チェウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スイン
(72)【発明者】
【氏名】イム、チャンキ
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/231188(WO,A1)
【文献】Sci. Rep.,2016年,Vol. 6:23942,p. 1-12
【文献】J. Innate. Immun.,2013年,Vol. 5,p. 389-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号120、および36からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するscFvのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、抗-CD300c単クローン抗体。
【請求項2】
前記抗-CD300c単クローン抗体は種間交差反応性を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗-CD300c単クローン抗体。
【請求項3】
前記交差反応性はヒト抗原とマウス抗原に対する交差反応性であることを特徴とする、請求項2に記載の抗-CD300c単クローン抗体。
【請求項4】
抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含み、前記抗体は配列番号14、20、および36からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するscFvのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、がん予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記がんは大腸がん、直膓がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸部がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記薬学的組成物は免疫抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記免疫抗がん剤はanti-PD-1、anti-PD-L1、anti-CTLA-4、anti-KIR、anti-LAG3、anti-CD137、anti-OX40、anti-CD276、anti-CD27、anti-GITR、anti-TIM3、anti-41BB、anti-CD226、anti-CD40、anti-CD70、anti-ICOS、anti-CD40L、anti-BTLA、anti-TCR、およびanti-TIGITからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物はがんの増殖、生存、転移、再発または治療耐性を抑制することを特徴とする、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含み、前記抗体は配列番号14、20、および36からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するscFvのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、免疫抗がん剤。
【請求項10】
前記免疫抗がん剤はがんの増殖、生存、転移、再発または治療耐性を抑制することを特徴とする、請求項9に記載の免疫抗がん剤。
【請求項11】
前記がんは大腸がん、直膓がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸部がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項9に記載の免疫抗がん剤。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む、抗がん治療法の補助剤。
【請求項13】
前記補助剤は免疫細胞の免疫機能を活性化させて抗がん治療効果を向上させることを特徴とする、請求項12に記載の補助剤。
【請求項14】
前記抗がん治療法は放射線治療法、抗がん剤治療法または免疫抗がん剤治療法である、請求項12に記載の補助剤。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、非ヒト対象におけるがんの予防または治療方法。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1項に記載の抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む組成物の、非ヒト対象におけるがん予防または治療用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗-CD300c単クローン抗体、これを含むがん予防または治療用組成物、およびこれを含む抗がん免疫治療用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは現代人の死亡原因で最も大きな比重を占めている疾患の一つであって、多様な原因によって発生した遺伝子の突然変異によって正常細胞が変化して発生した病気であり、正常な細胞の分化、増殖、成長形態などに従わない腫瘍のうち悪性のものを指称する。がんとは、「制御されていない細胞成長」と特徴づけられ、このような異常な細胞成長によって腫瘍(tumor)と呼ばれる細胞塊りが形成されて周囲の組織に浸透し、ひどい場合には身体の他の器官に転移したりもする。がんは手術、放射線および薬物療法などで治療をしても、多くの場合根本的な治癒ができず、患者に苦痛を与え、最終的には死に至らせる難治性慢性疾患である。特に、最近では老年人口の増加、環境の悪化などによって世界がん発生率は毎年5%以上増加している趨勢であり、WHO報告書によると、今後25年以内にがん発生人口は3千万人に増加し、このうち2千万人の人口はがんで死亡するであろうと推定されている。
【0003】
がんの薬物治療、すなわち、抗がん剤は一般的に細胞毒性を有している化合物であって、がん細胞を攻撃して死滅させる方式でがんを治療するが、がん細胞だけでなく正常細胞にも損傷を与えるため高い副作用を現す。したがって、副作用を減少させるために標的抗がん剤が開発された。しかし、このような標的抗がん剤の場合、副作用は低くすることができたものの、高い確率で耐性ができてしまうという限界点を露呈した。したがって、最近では体内の免疫体系を利用して毒性および耐性による問題点を減少させる免疫抗がん剤に対する関心が急増している趨勢である。このような免疫抗がん剤の一例として、がん細胞の表面のPD-L1に特異的に結合してT細胞のPD-1との結合を抑制してT細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃するようにさせる免疫関門抑制剤が開発されたことがある(大韓民国公開特許10-2018-0099557)。しかし、このような免疫関門抑制剤の場合にも効果を示すがんの種類が多様でないため、多様ながんにおいて同一に治療効果を示す新しい抗がん免疫治療剤の開発が切に必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような従来技術上の問題点を解決するために案出されたもので、抗-CD300c単クローン抗体、これを含むがん予防または治療用組成物、およびこれを含む抗がん免疫治療用組成物などを提供することをその目的とする。
【0005】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業界で通常の知識を有する者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50からなる群から選択されたいずれか一つ以上のCDR(complementarity-determining regions)配列を含む、抗-CD300c単クローン抗体を提供する。前記CDR配列は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50からなる群から選択されたいずれか一つ以上のCDR配列と90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。アミノ酸配列に対する「配列相同性の%」は最適に配列された配列と比較領域とを比較することによって確認され、比較領域でアミノ酸配列の一部はさらに、配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含むことができる。
【0007】
本発明の一具体例において、前記抗-CD300c単クローン抗体は種間交差反応性を有することができ、前記種間交差反応は好ましくは、ヒト由来CD300c抗原と哺乳類由来CD300c抗原に対する交差反応性を意味し得、さらに好ましくはヒト抗原とマウス抗原に対する交差反応性であり得る。
【0008】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含むがん予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0009】
本発明の一具体例において、前記がんは好ましくは、大腸がん、直膓がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸部がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がん、血液がんなどや、がん細胞の表面にCD300c蛋白質を発現するがんの種類であればこれに制限されない。
【0010】
本発明の他の具体例において、前記薬学的組成物は他の既存の免疫抗がん剤または抗がん剤をさらに含むことができ、前記免疫抗がん剤は好ましくは、anti-PD-1、anti-PD-L1、anti-CTLA-4、anti-KIR、anti-LAG3、anti-CD137、anti-OX40、anti-CD276、anti-CD27、anti-GITR、anti-TIM3、anti-41BB、anti-CD226、anti-CD40、anti-CD70、anti-ICOS、anti-CD40L、anti-BTLA、anti-TCR、anti-TIGITなどや、現在免疫抗がん剤として使われている物質であればこれに制限されない。また、前記抗がん剤は好ましくは、ドキソルビシン、シスプラチン、ゲムシタビン、オキサリプラチン、5-FU、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、ネシツムマブ、がん抗原、抗がんウイルスなどや現在抗がん剤として使われている物質であればこれに制限されない。前記がん抗原はがん腫に特異的ながんワクチン(cancer vaccine)であって、好ましくは膀胱がん特異的ながん抗原としてNY-ESO-1、乳ガン特異的ながん抗原としてHER2、大腸がん特異的ながん抗原としてCEA、肺がん特異的ながん抗原としてVEGFR1、VEGFR2等であり得るが、がんワクチンとして知られているがん抗原の種類であればこれに制限されない。抗がんウイルスの一例としてイムリジック、Pexa-Vecなどがあるが、知られている抗がんウイルスであればこれに制限されない。前記抗がん剤を追加で含むものは好ましくは、併用投与であるか、本発明の単クローン抗体に結合された形態であってもよく、抗がん剤の伝達体内に共に含まれている形態であってもよい。
【0011】
本発明のさらに他の具体例において、前記薬学的組成物はがんまたはがん幹細胞の増殖、生存、転移、再発、抗がん剤耐性などを抑制することを特徴とするが、本発明の薬学的組成物によって発生する効果であればこれに制限されない。
【0012】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む免疫抗がん剤を提供する。
【0013】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む抗がん治療法の補助剤を提供する。
【0014】
本発明の一具体例において、前記補助剤は免疫細胞の免疫機能を活性化させて抗がん治療効果を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の具体例において、前記抗がん治療法は放射線治療法、抗がん剤治療法、免疫抗がん剤治療法などであり得る。
【0016】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む組成物を個体に投与する段階を含むがん治療方法を提供する。
【0017】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む組成物のがん予防または治療用途を提供する。
【0018】
また、本発明は前記抗-CD300c単クローン抗体のがん治療に利用される薬剤を生産するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る抗-CD300c単クローン抗体は多様ながんの表面で発現するCD300cに特異的に高い結合力を有して結合されることによって、T細胞を活性化させると同時にM1マクロファージへの分化を促進させるため、がん細胞の増殖を効果的に抑制することによって多様ながんの免疫治療剤として効果的に使われ得る。また、本発明に係る抗-CD300c単クローン抗体は、既存の免疫抗がん剤との併用投与を通じてその治療効果をさらに増加させ得るだけでなく、種間交差反応性を有しているので、多様な哺乳類に幅広く適用することができる。そして、細胞死滅に抵抗する能力を示す抵抗性がん細胞に本発明の抗-CD300c単クローン抗体を処理する場合、がん細胞の抵抗性を顕著に弱化させてがん再発防止にも優秀な効能を示すであろうと期待される。また、一般的にがん細胞はproinflammatory cytokineであるIL-2の生成を阻害することによって免疫系を回避するが、抗-CD300c単クローン抗体はこのようながん細胞によって遮断されたIL-2の生産量を回復させることによって、活性化した免疫系を通じてがん細胞死滅を誘導させることが確認されて、より根本的な免疫抗がん剤として活用され得るものと判断される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の抗-CD300c単クローン抗体および/またはCD300c siRNAの抗がん効果を示すメカニズムを簡略に示した概略図である。
図2】本発明の抗-CD300c単クローン抗体が各Monocyte、T cell、がん細胞に作用するメカニズムを簡略に示した概略図である。
図3】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のnon-reducing条件でのSDS-PAGE結果を示した図面である。
図4】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のreducing条件でのSDS-PAGE結果を示した図面である。
図5】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のCD300c抗原への結合力を確認した結果を示した図面である。
図6】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のT細胞活性化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図7】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図8】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図9】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の濃度別M1マクロファージへの分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図10】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の濃度別M1マクロファージへの分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図11】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージへの分化能を細胞形態で確認した結果を示した図面である。
図12】本発明の一実施例に係るCL7抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図13】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージ分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図14】本発明の一実施例に係るCL7抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図15】本発明の一実施例に係るCL7抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図16】本発明の一実施例に係るCL7抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図17】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM0マクロファージからM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図18】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージへの分化能をELISAを利用して比較した結果を示した図面である。
図19】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図20】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図21】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図22】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のM0、M1、およびM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能をELISAを利用して確認した結果を示した図面である。
図23】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤との併用投与効果をM1マクロファージ分化能で確認した結果を示した図面である。
図24】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤との併用投与効果をM1マクロファージ分化能で確認した結果を示した図面である。
図25】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の0%FBSの条件でのがん細胞成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図26】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の0.1%FBSの条件でのがん細胞成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図27】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のがん細胞(肺がん)成長抑制効果を比較した結果を示した図面である。
図28】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のがん細胞(乳ガン)成長抑制効果を比較した結果を示した図面である。
図29】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の濃度別がん細胞成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図30】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤との併用投与によるがん細胞成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図31】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤との併用投与によるがん細胞成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図32】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤との併用投与による作用メカニズムを確認した結果を示した図面である。
図33】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体の結合特異性を確認した結果を示した図面である。
図34】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のマウスでの交差反応性を確認した結果を示した図面である。
図35】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のマウスでの抗がん効果(大腸がん)を確認した結果を示した図面である。
図36】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体がin vivoでがん成長に及ぼす影響を確認した実験方法を簡略に示した図面である。
図37】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでがん成長抑制効果を確認した結果を示した図面である。
図38】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のin vivoで腫瘍微細環境での腫瘍浸潤リンパ球の増加に及ぼす影響を確認した結果を示した図面である。Scale barは50umを示す。
図39】本発明の一実施例に係る抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでM1マクロファージ増加に及ぼす影響を確認する結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の抗-CD300c単クローン抗体は、CD300c蛋白質に特異的に高い結合力を有して結合してCD300cのメカニズムを効果的に抑制することによってT細胞を活性化させ、M1マクロファージへの分化を促進させることによってがん細胞の成長、がんの発達、がんの転移などを効果的に抑制できるため、CD300c抗原を表面に発現している多様ながんの治療に効果的に使われ得る。
【0022】
本明細書において、「抗体(antibody)」とは、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を意味し、多クローン抗体(polyclonal antibody)、単クローン抗体(monoclonal antibody)およびこの機能的な断片(fragment)をすべて含む。また、前記用語はキメラ性抗体(例えば、ヒト化ミュリン抗体)および異種結合抗体(例えば、両特異性抗体)のような遺伝工学によって生産された形態を含むことができる。このうち単クローン抗体は単一抗原性部位(エピトープ、epitope)に対して単一結合特異性および親和度を示す抗体であって、異なるエピトープに対して特異性を示す抗体を含む多クローン抗体とは異なり、単クローン抗体は抗原上の単一エピトープに対してのみ結合特異性および親和度を示すので、治療剤としての品質管理が容易である。特に、本発明の抗-CD300c単クローン抗体は、CD300cを発現するがん細胞に特異的に結合してそれ自体としても抗がん活性を示すだけでなく、免疫細胞を刺激することによってがん細胞依存性抗がん活性を最大化させることができる。前記抗体は構成のうち重鎖(heavy chain)および/または軽鎖(light chain)の可変領域(variable region)を含み、前記可変領域は1次構造として抗体分子の抗原結合部位を形成する部分を含み、本発明の抗体は前記可変領域を含む一部の断片で構成され得、好ましくは前記可変領域はCD300cに対する可溶性受容体で代替され得るが、本発明の抗-CD300c単クローン抗体と同一の効果を示すのであればこれに制限されない。
【0023】
本明細書において、「免疫グロブリン(immunoglobulin)」とは、抗体と構造的特性が同一であり、抗原特異性がない抗体類似分子と抗体をすべて含む概念である。
【0024】
本明細書において、「単鎖可変領域フラグメント(single-chain variable fragment;scFv)」とは、抗体の軽鎖および重鎖の可変領域を15個内外のアミノ酸が連結されたペプチド配列からなるリンカー(linker)に連結した蛋白質であって、軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域、または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域の順のいずれも可能であり、元の抗体と同一あるいは類似する抗原特異性を有する。連結部位は主にグリシン(glycine)とセリン(serine)からなる親水性の柔軟なペプチド鎖であって、「(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)」の15個のアミノ酸配列またはこれと類似する配列が主に使用される。
【0025】
本明細書において、「免疫抗がん剤」とは、人体が有している免疫細胞の免疫機能を活性化させてがん細胞と戦わせるがん治療方法を総称し、その一例としてanti-PD-1、anti-PD-L1、anti-CTLA-4、anti-KIR、anti-LAG3、anti-CD137、anti-OX40、anti-CD276、anti-CD27、anti-GITR、anti-TIM3、anti-41BB、anti-CD226、anti-CD40、anti-CD70、anti-ICOS、anti-CD40L、anti-BTLA、anti-TCR、anti-TIGITなどがあるが、これに制限されない。
【0026】
本明細書において、「補助剤(adjuvant)」とは、主薬物、すなわち、抗がん剤の薬効を補助して治療効果を改善および/または向上させるか、主薬物に対する耐性を抑制して治療効果を改善および/または向上させるか、主薬物の有害な作用を防ぐか緩和する目的で使われる補助薬物を意味し、本発明の補助剤は抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含んでいるのであれば制限がない。
【0027】
本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によってがんなどの疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0028】
本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によってがんなどの症状が好転するか有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0029】
本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明の薬学的組成物が投与され得る対象を指し、その対象には制限がない。
【0030】
本明細書において、「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」とは、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末または飲み物の形態であることを特徴とすることができ、前記薬学的組成物はヒトを対象にすることを特徴とすることができる。前記薬学的組成物はこれらに限定されるものではなく、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、座剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われ得る。本発明の薬学的組成物は薬剤的に許容可能な坦体を含むことができる。薬剤学的に許容される坦体は、経口投与時には結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用でき、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用でき、局所投与用の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使うことができる。本発明の薬学的組成物の剤形は前述したような薬剤学的に許容される坦体と混合して多様に製造され得る。例えば、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性製剤などに剤形することができる。
【0031】
一方、製剤化に適合な坦体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使われ得る。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0032】
本発明に係る薬学的組成物の投与経路はこれらに限定されるものではなく、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願で使われた用語「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学的組成物はまた、直腸投与のための座剤の形態で投与され得る。
【0033】
本発明の薬学的組成物は使われた特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健常、性別、規定食 、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症度を含んだ多様な要因により多様に変わり得、前記薬学的組成物の投与量は患者の状態、体重、病気の程度、薬物の形態、投与経路および期間により異なるが、当業者によって適切に選択され得、1日0.0001~500mg/kgまたは0.001~500mg/kgで投与することができる。投与は一日に一度投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量はいかなる場合であれ、本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る薬学的組成物は丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化され得る。
【0034】
以下、本発明の理解を助けるために下記の実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0035】
実施例
実施例1:抗-CD300c単クローン抗体の選別
1.1.抗-CD300c単クローン抗体のライブラリの製作
抗-CD300c単クローン抗体を選別するために、ラムダファージライブラリ、カッパファージライブラリ、VH3VL1ファージライブラリ、およびOPALTLファージライブラリを利用してバイオパニング(biopanning)を実施した。より詳しくは、免疫試験管(immunotube)に5μg/mL濃度のCD300c抗原を添加し、1時間の間反応させて試験管の表面に抗原を吸着させた。そして、3%のスキムミルク(skim milk)を添加して非特異的反応を抑制させた後、さらに3%のスキムミルクに分散されている1012PFUの抗体ファージライブラリをそれぞれの免疫試験管に添加して抗原と結合させた。そして、TBST(tris buffered saline-Tween20)溶液を利用して3回洗浄して非特異的に結合されている把持を除去した後、CD300c抗原特異的に結合されている単鎖可変領域フラグメント(single-chain variable fragment;scFv)ファージ抗体を100mMのトリエチルアミン溶液を利用して溶出させた。溶出されたファージは1.0MのTris-HCl緩衝溶液(pH7.8)を利用して中和させた後、大腸菌ER2537に処理して37℃で1時間の間感染させ、感染させた大腸菌はカルベニシリンが含まれているLB寒天培地に塗布して37℃で16時間の間培養した。そして、形成された大腸菌コロニーを3mLのSB(super broth)-カルベニシリン培養液を利用して懸濁させ、一部は15%グリセロールを添加して-80℃で使用前まで保管したし、残りはSB-カルベニシリン-2%葡萄糖溶液に再接種して37℃で培養した。そして、獲得された培養液を遠心分離してファージ粒子が含まれている上層液を利用して再びバイオパニングを3回繰り返すことによって抗原特異的な抗体を確保および濃縮した。
【0036】
バイオパニングを3回繰り返した後、抗体遺伝子を含んでいる大腸菌をカルベニシリンを含むLB寒天培地に塗布して37℃で16時間の間培養し、形成された大腸菌コロニーを再びSB-カルベニシリン-2%葡萄糖溶液に再接種して37℃で吸光度(OD600nm)が0.5になるまで培養した後、IPTGを添加して30℃で16時間の間追加培養した。その後、periplasmic extractionを実施したし、前記結果を通じてCD300c抗原に特異的に結合する抗体のライブラリプール(library pool)を一次的に確保した。
【0037】
1.2.抗-CD300c単クローン抗体の選別
CD300c抗原に高い結合力を有し特異的に結合する抗-CD300c単クローン抗体を選別するために、実施例1.1と同じ方法で確保されたライブラリプールを利用してELISAを実施した。より詳しくは、コーティング緩衝溶液(coating buffer;0.1 Mのsodium carbonate、pH9.0)にCD300c抗原とCD300a抗原をそれぞれウェル当り5μg/mLの濃度となるようにELISAプレートに分注した後、室温で3時間の間反応させて抗原をプレートに結合させた。そして、PBST(phosphate buffered saline-Tween20)を利用して3回洗浄して結合されていない抗原をきれいに除去した後、それぞれのウェルに2%BSA(bovine serum albumin)が添加されているPBSTを350μL添加して室温で1時間の間反応させ、PBSTを利用して再び洗浄した。そして、実施例1.1と同じ方法で確保されたscFvを含んでいるperiplasmic extractを25μgずつ添加し、1時間の間室温で反応させて抗原と結合させた。1時間後にPBSTを利用して3回洗浄して結合されていないscFvを除去した後、4μg/mLの検出用抗体を添加して再び室温で1時間の間反応させた。その後、PBSTを利用して結合されていない検出用抗体を除去した後、HRPが結合されているanti-rabbit IgGを添加して室温で1時間の間反応させ、再びPBSTを利用して結合されていない抗体を除去した。そして、TMB溶液を添加して10分の間反応させて発色させた後、2Nの硫酸溶液を添加して発色反応を終了させ、450nmで吸光度を測定してCD300c抗原に特異的に結合する抗体を確認した。
【0038】
1.3.抗-CD300c単クローン抗体配列の確認
実施例1.2と同じ方法を利用して選別された抗-CD300c単クローン抗体の塩基配列を確認した。より詳しくは、選別された抗体クローンをplasmid miniprep kitを利用してplasmid DNAを抽出した後、DNA sequencingを実施してCDR(complementarity-determining regions)配列を分析した。その結果、互いに異なるアミノ酸配列を有している25種の抗-CD300c単クローン抗体を確保した。
【0039】
ラムダファージライブラリを利用して選別された抗-CD300c単クローン抗体は3種類であって、配列番号36のCDR配列を含むSL18(DNA配列は配列番号35)、配列番号8のCDR配列を含むCL4(DNA配列は配列番号7)、および配列番号10のCDR配列を含むCL5(DNA配列は配列番号9)であった。
【0040】
カッパファージライブラリを利用して選別された抗-CD300c単クローン抗体は10種類であって、配列番号2のCDR配列を含むCK1(DNA配列は配列番号1)、配列番号4のCDR配列を含むCK2(DNA配列は配列番号3)、配列番号6のCDR配列を含むCK3(DNA配列は配列番号5)、配列番号22のCDR配列を含むSK11(DNA配列は配列番号21)、配列番号24のCDR配列を含むSK12(DNA配列は配列番号23)、配列番号26のCDR配列を含むSK13(DNA配列は配列番号25)、配列番号28のCDR配列を含むSK14(DNA配列は配列番号27)、配列番号30のCDR配列を含むSK15(DNA配列は配列番号29)、配列番号32のCDR配列を含むSK16(DNA配列は配列番号31)、および配列番号34のCDR配列を含むSK17(DNA配列は配列番号33)であった。
【0041】
VH3VL1ファージライブラリを利用して選別された抗-CD300c単クローン抗体は10種類であって、配列番号38のCDR配列を含むCB301_H3L1_A10(DNA配列は配列番号37)、配列番号40のCDR配列を含むCB301_H3L1_A12(DNA配列は配列番号39)、配列番号12のCDR配列を含むCL6(DNA配列は配列番号11)、配列番号42のCDR配列を含むCB301_H3L1_E6(DNA配列は配列番号41)、配列番号14のCDR配列を含むCL7(DNA配列は配列番号13)、配列番号44のCDR配列を含むCB301_H3L1_F4(DNA配列は配列番号43)、配列番号16のCDR配列を含むCL8(DNA配列は配列番号15)、配列番号46のCDR配列を含むCB301_H3L1_G11(DNA配列は配列番号45)、配列番号18のCDR配列を含むCL9(DNA配列は配列番号17)、および配列番号20のCDR配列を含むCL10(DNA配列は配列番号19)であった。
【0042】
OPALTLファージライブラリを利用して選別された抗-CD300c単クローン抗体は2種類であって、配列番号48のCDR配列を含むCB301_OPALTL_B5(DNA配列は配列番号47)および配列番号50のCDR配列を含むCB301_OPALTL_E6(DNA配列は配列番号49)であった。
【0043】
前記結果を通じて、CD300c抗原に高い結合力を有し特異的に結合するがんの予防または治療に使用できる25種の抗-CD300c単クローン抗体を確認することができた。
【0044】
1.4.抗-CD300c単クローン抗体の製作および精製
実施例1.3を通じて確認した抗-CD300c単クローン抗体の塩基配列を利用して、抗体を発現できる重鎖と軽鎖を分離した発現用ベクターを製作した。より詳しくは、分析したCDR配列を利用してpCIW3.3ベクターにそれぞれ重鎖と軽鎖を発現できるように遺伝子を挿入して製作した。製作した重鎖と軽鎖発現用ベクターをPEI(polyethylenimine)と1:1の質量割合で混ぜて293T細胞にトランスフェクションして抗体の発現を誘導した後、8日目に培養液を遠心分離して細胞を除去して培養液を獲得した。獲得した培養液は濾過過程を経た後、0.1M NaHPOおよび0.1M NaHPO(pH7.0)が混合されている溶液を利用して再懸濁させた。そして、再懸濁させた溶液はprotein A bead(GE healthcare)を利用したaffinity chromatography方法を通じて精製したし、最終的にElution buffer(Thermofisher)を利用して湧出させた。
【0045】
製作された抗体を確認するために、精製された抗体5μgにそれぞれReducing sample bufferとNon-reducing sample bufferに添加した後、pre-made SDS-PAGE(Invitrogen)を利用して電気泳動を実施したし、その後、クマジブルーを利用して蛋白質を染色した。各Non-reducing条件の結果は図3に、Reducing条件の結果は図4に示した。
【0046】
図3および図4に示した通り、純度90%以上の抗-CD300c単クローン抗体が製作および精製されたことを確認した。
【0047】
1.5.抗-CD300c単クローン抗体の抗原結合力(Binding affinity)の確認
実施例1.4と同じ方法で製作された抗-CD300c単クローン抗体の中で、CD300c抗原にさらに優秀な結合力を有し特異的に結合する単クローン抗体を選別するためにBinding ELISAを実施した。より詳しくは、コーティング緩衝溶液(coating buffer:0.1Mのsodium carbonate、pH9.0)にCD300c抗原またはCD300a抗原をそれぞれウェル当り8μg/mLの濃度となるようにELISAプレートに分注した後、室温で3時間の間反応させて抗原をプレートに結合させた。そして、PBST(phosphate buffered saline-Tween20)を利用して3回洗浄して結合されていない抗原をきれいに除去した後、それぞれのウェルに5%BSA(bovine serum albumin)を添加されているPBSTを300μL添加して室温で1時間の間反応させ、PBSTを利用して再び洗浄した。そして、抗-CD300c単クローン抗体を4倍段階希釈して入れて1時間の間室温で反応させて抗原と結合させた。1時間後にPBSTを利用して3回洗浄して結合されていない抗-CD300c単クローン抗体を除去した後、4μg/mLの検出用抗体(HRP conjugated anti-Fc IgG)を添加して再び室温で1時間の間反応させた。その後、PBSTを利用して結合されていない検出用抗体を除去した後にTMB溶液を添加して10分の間反応させて発色させた後、2Nの硫酸溶液を添加して発色反応を終了させ、450nmで吸光度を測定してCD300c抗原に特異的に結合する抗体を確認した。その結果は表1および図5に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体のEC50(The effective concentration of drug that causes 50%of the maxium response)を測定した結果、4個のクローン(CK3、CL8、SK15、SK16)を除いて残りの14個のクローンはすべて0.2νg/mL以下であって、結合親和力(Binding affinity)が高いことを確認した。
【0050】
図5に示した通り、Binding ELISAの結果によるsigmoid curveにおいても、本発明の抗-CD300c単クローン抗体が強い結合力でCD300c抗原に結合することを確認することができた。
【0051】
実施例2:抗-CD300c単クローン抗体のT細胞での抗がん効果の確認
実施例1.5の方法で選別された抗-CD300c単クローン抗体がT細胞を活性化させることによって抗がん効果を示すかを確認するために、IL-2(Interleukin-2)の生産量を確認した。IL-2はT細胞の成長、増殖および分化を助ける免疫因子であって、IL-2の生成量が増加するのはT細胞の分化、増殖、および成長が増加するように誘導する刺激が増加することによってT細胞を活性化させるということを意味する。より詳しくは、それぞれ2μg/wellの濃度となるように抗-CD3単クローン抗体と抗-CD28単クローン抗体を96-ウェルプレートに添加して24時間の間固定させた後、1x10cells/wellのJurkat T細胞(ヒトTリンパ球細胞株)と10μg/wellの抗-CD300c単クローン抗体を共に処理した。そして、IL-2の生成量をELISA kit(IL-2 Quantikine kit、R&D systems)を利用して測定した後、抗-CD300c単クローン抗体を処理していない対照群と比較した。その結果は図6に示した。
【0052】
図6に示した通り、抗-CD3単クローン抗体、抗-CD28単クローン抗体を処理して活性化させたJurkat T細胞に抗-CD300c単クローン抗体を処理した場合にIL-2の生成量が増加したことを確認したし、前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体がT細胞を活性化させることができるということと、これを通じて、抗がん免疫作用を誘発してがん組織の成長を抑制できることを確認することができた。
【0053】
実施例3:抗-CD300c単クローン抗体のマクロファージ分化能による抗がん効果確認
3.1.抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージ分化能の確認
実施例1.5の方法で選別された抗-CD300c単クローン抗体が単球細胞をM1マクロファージへの分化に誘導することを確認するために、96-well plateで1.5x10cells/wellのTHP-1(ヒト単球細胞株)を分注し、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体および/または100ng/mLのLPSを処理した。そして、48時間の間反応させた後、M1マクロファージの分化マーカーであるTNF-α(Tumor necrosis factor-α)の生成量をELISA kit(Human TNF-αQuantikine kit、R&D systems)を利用して測定した。その結果は図7および図8に示した。
【0054】
図7に示した通り、LPSを単独で処理した対照群(Con)と比較して、CL4、CL7、CL10、およびSL18抗-CD300c単クローン抗体が約2倍以上TNF-αの生成量が増加したことを確認した。
【0055】
また、図8に示した通り、LPSを単独で処理した対照群(Con)と比較してLPSの処理なしに抗-CD300c単クローン抗体を単独で処理した実験群において、いずれも対照群と比較してTNF-αの生成量が増加したことを確認した。
【0056】
3.2.抗-CD300c単クローン抗体の濃度別M1マクロファージ分化能の確認
抗-CD300c単クローン抗体がM1マクロファージへの分化を誘導するのが濃度により増加することを確認するために、実施例3.1と同じ方法でTNF-αの生成量を確認した。抗-CD300c単クローン抗体は10、1、および0.1μg/mLの濃度で処理した。その結果は図9に示した。
【0057】
図9に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体の処理濃度が増加するほどTNF-αの生成量も増加することを確認した。
【0058】
より細部的な濃度を確認するために、CL7抗-CD300c単クローン抗体を10、5、2.5、1.25、0.625、0.313、0.157、および0.079μg/mLの濃度で処理し、TNF-αの生成量を確認した。その結果は図10に示した。
【0059】
図10に示した通り、TNF-αの生成量が抗-CD300c単クローン抗体の濃度依存的に増加することを確認した。
【0060】
3.3.抗-CD300c単クローン抗体によるM1マクロファージ分化細胞の様相の確認
抗-CD300c単クローン抗体を単球細胞に処理した時にM1マクロファージへの分化の様相を細胞形態で確認するために、THP-1に10μg/mlの抗-CD300c単クローン抗体を処理し、48時間の間培養した後に細胞の形態を顕微鏡下で観察した。その結果は図11に示した。
【0061】
図11に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群(CL7)の場合にTHP-1細胞の形態が浮遊細胞(suspension cell)からM1マクロファージの形態である円形の付着細胞に変わることを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体の処理によって単球細胞がM1マクロファージに分化が促進されることを確認した。
【0062】
3.4.CL7抗-CD300c単クローン抗体のM1マクロファージ分化能の確認
CL7抗-CD300c単クローン抗体がヒト単球細胞のM1マクロファージへの分化を促進させるかを再確認するために、TNF-α、IL-1β(Interleukin-1β)、およびIL-8(Interleukin-8)の分泌量をELISA kit(R&D systems)を利用して測定した。より詳しくは、96-well plateで1.5x10cells/wellのTHP-1を分注し、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を処理した。そして、48時間の間反応させた後、M1マクロファージの分化マーカーであるTNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量をELISA kit(Human TNF-αQuantikine kit、R&D systems)を利用して測定した。その結果は図12に示した。
【0063】
図12に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体を処理していない対照群(Con)の場合と比較して、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群において、すべて3種類のM1マクロファージ分化マーカーが増加したことを確認した。
【0064】
3.5.抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤とのM1マクロファージ分化能の比較
抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージ分化能を比較するために、実施例3.1と同じ方法でTNF-αの生成量をELISA kitで確認した。抗-PD-L1免疫抗がん剤としてはイミフィンジ(Imfinzi)を10μg/mLの濃度で処理した。その結果は図13に示した。
【0065】
図13に示した通り、免疫抗がん剤として知られているイミフィンジ(Imf)を単独で処理した比較群より、抗-CD300c単クローン抗体がTNF-αの生成量を顕著に増加させることを確認した。前記結果を通じて、既存に知られている免疫抗がん剤より、抗-CD300c単クローン抗体がM1マクロファージへの分化能を顕著に増加させることを確認することができた。
【0066】
他の免疫抗がん剤との比較のために、抗-PD-L1免疫抗がん剤であるイミフィンジ、抗-PD-1免疫抗がん剤であるキイトルーダ(Keytruda)、そして、Isotype control(Immunoglobulin G)抗体をそれぞれ10μg/mLの濃度で処理し、TNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量をELISA kitで確認した。その結果は図14図16に示した。
【0067】
図14図16に示した通り、イミフィンジ、キイトルーダ、IgG抗体と比較して、CL7抗-CD300c単クローン抗体がTNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量を顕著に増加させることを確認したし、前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体が既存の免疫抗がん剤と比較してM1マクロファージへの分化促進を顕著に増加させることができることを確認することができた。
【0068】
3.6.抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤とのM0マクロファージからM1マクロファージへの分化能の比較
【0069】
抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM0マクロファージからM1マクロファージへの分化能を比較するために、96-ウェルプレートに1.5x10cellls/wellのTHP-1を分注し、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体、10μg/mLのイミフィンジ、および/または200nMのPMA(phorbol-12-myristate-13-acetate)を処理した。そして、48時間の間反応させた後、TNF-αの生成量をELISA kitを利用して測定した。その結果は図17に示した。
【0070】
図17に示した通り、免疫抗がん剤であるイミフィンジを単独で処理した比較群の場合にはTNF-αが生成されなかったが、抗-CD300c単クローン抗体を単独で処理した実験群ではTNF-αの生成量が増加したことを確認した。また、THP-1細胞にPMAを処理してM0マクロファージに分化させた時にも、イミフィンジを処理した実験群と比較して、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群で顕著に高いTNF-α生成量を確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体が既存の免疫抗がん剤と比較してM0マクロファージのM1マクロファージへの分化を促進させることを確認することができた。
【0071】
3.7.抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤とのM1マクロファージへの分化能の比較
抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤のM1マクロファージへの分化能を比較するために、実施例3.1と同じ方法でTNF-αの生成量を確認した。その結果は図18に示した。
【0072】
図18に示した通り、LPSを処理して単球細胞をM1マクロファージに分化させた時、イミフィンジとLPSを共に処理した実験群ではTNF-αの生成量が有意義な差を示さなかったものの、抗-CD300c単クローン抗体とLPSを共に処理した実験群では抗-CD300c単クローン抗体を単独で処理した実験群と比較してTNF-αの生成量が有意義に増加したことを確認した。
【0073】
3.8.抗-CD300c単クローン抗体のM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能の確認
抗-CD300c単クローン抗体がM2マクロファージをM1マクロファージに再分化させることができるかを確認するために、96-ウェルプレートに1.5x10cellls/wellのTHP-1を分注し、320nMのPMAを処理して6時間の間前処理した後、20ng/mLのIL-4(Interleukin-4)およびIL-13(Interleukin-13)、そして、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を処理して18時間の間反応させた。そして、TNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量をELISA kitで確認した。その結果は図19図21に示した。
【0074】
図19図21に示した通り、PMAを前処理していない実験群の場合には、IL-4およびIL-13と抗-CD300c単クローン抗体を共に処理した実験群でTNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量が増加したし、PMAを前処理した実験群でも同一にIL-4およびIL-13と抗-CD300c単クローン抗体を共に処理した実験群でTNF-α、IL-1βおよびIL-8の生成量が増加したことを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体がM2マクロファージを再びM1マクロファージに効果的に再分化させることができることを確認することができた。
【0075】
3.9.抗-CD300c単クローン抗体のM0、M1、およびM2マクロファージからM1マクロファージへの再分化能の確認
抗-CD300c単クローン抗体がM0、M1、およびM2マクロファージをM1マクロファージに再分化させることができるかを確認するために、96-ウェルプレートに1.5x10cellls/wellのTHP-1を分注し、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を48時間の間前処理し、100ng/mLのPMA、100ng/mLのLPS、そして、20ng/mLのIL-4およびIL-13を処理して24時間の間反応させた。そして、TNF-αの生成量をELISA kitで確認した。その結果は図22に示した。
【0076】
図22に示した通り、PMAを単独で処理したM0マクロファージ対照群、LPSを単独で処理したM1マクロファージ対照群、そして、IL-4およびIL-13を単独で処理したM2マクロファージ対照群と比較して、抗-CD300c単クローン抗体を前処理した実験群において、TNF-αの生成量がすべて有意義に増加したことを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体はM0、M1およびM2マクロファージをM1マクロファージに分化させる能力が優秀であることを確認することができた。
【0077】
前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体は既存の免疫抗がん剤よりもM1マクロファージへの分化を促進させて抗がん免疫作用を誘発し、がん組織の成長を抑制できることを確認することができた。特に、がん細胞の増殖および転移を促進させるのに関与すると知られているM2マクロファージをM1マクロファージに再分化させることを通じて抗がん効果を示すことができることを確認することができた。
【0078】
実施例4:抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与効果確認
4.1.抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤との併用投与効果確認
抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤との併用投与を通じてのがん治療効果を確認するために、NF-κB(nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells)信号の伝達を確認した。より詳しくは、6-ウェルプレートに8.8x10cells/wellのTHP-1を分注し、10μg/mLのCL7抗-CD300c単クローン抗体および/または10μg/mLのイミフィンジを処理した。そして、24時間の間培養した後にリン酸化されたNF-κB(p-NF-κB)をウエスタンブロッティング(Cell signaling)を利用して確認した。その結果は図23に示した。
【0079】
図23に示した通り、免疫抗がん剤であるイミフィンジを単独で投与した実験群と比較して、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群でp-NF-κBの量が増加したし、イミフィンジと抗-CD300c単クローン抗体を併用投与した実験群ではp-NF-κBの量がさらに増加したことを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体とイミフィンジを併用投与する場合にM1マクロファージへの分化が促進されることを確認することができた。
【0080】
4.2.抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤および/または抗-PD-1免疫抗がん剤との併用投与効果確認
抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-L1免疫抗がん剤および/または抗-PD-1免疫抗がん剤との併用投与を通じてのがん治療効果を確認するために、p38MAPK(p38 mitogen-activated protein kinasese)とERK(extracellular signal-regulated kinase)の信号の伝達を確認した。より詳しくは、6-ウェルプレートに8.8x10cells/wellのTHP-1を分注し、10μg/mLのCL7抗-CD300c単クローン抗体、10μg/mLのイミフィンジ、および/または10μg/mLのキイトルーダを処理した。そして、48時間の間培養した後にリン酸化されたp38MAPK(p-p38MAPK)、リン酸化されたERK(p-ERK)をウエスタンブロッティング(Cell signaling)を利用して確認した。その結果は図24に示した。
【0081】
図24に示した通り、免疫抗がん剤を単独で処理した実験群ではp-p38MAPKとp-ERK蛋白質がいずれも観察されなかったが、抗-CD300c単クローン抗体の場合には二種類の蛋白質がすべて観察された。また、免疫抗がん剤との併用投与した実験群ではp-p38MAPK蛋白質の量がさらに増加することを確認した。
【0082】
前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体がMAPK信号の伝達を通じて、M1マクロファージへの分化を促進させ、免疫抗がん剤と併用投与する場合にその効果がさらに増加することを確認したし、これを通じて、抗-CD300c単クローン抗体は単独でも免疫抗がん剤として使われ得るが、既存の免疫抗がん剤との併用投与を通じて、抗がん治療効果をさらに増加させることができることを確認することができた。
【0083】
実施例5:抗-CD300c単クローン抗体のin vitroでの抗がん効果
5.1.抗-CD300c単クローン抗体のがん細胞成長抑制効果確認
CD300cを標的とする単クローン抗体ががん細胞の成長に及ぼす影響を確認するために、A549(ヒト肺がん細胞株)を利用して細胞増殖分析を実施した。より詳しくは、96-ウェルプレートに0%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)条件では2x10細胞を分注したし、0.1%ウシ胎児血清条件では6x10細胞を分注した。そして、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を処理して5日間培養した。そして、CCK-8(DOJINDO)を処理してOD450nmで吸光度を測定して抗-CD300c単クローン抗体のがん細胞成長抑制効果を確認した。その結果は図25および図26に示した。
【0084】
図25に示した通り、0%FBS条件でSK11およびSK14抗-CD300c単クローン抗体を除いては、すべてがん細胞の増殖を抑制する効果を示すことを確認した。
【0085】
図26に示した通り、0.1%FBS条件では実験に使ったすべての抗-CD300c単クローン抗体ががん細胞の増殖を抑制する効果を示すことを確認した。
【0086】
5.2.抗-CD300c単クローン抗体の免疫抗がん剤とのがん細胞成長抑制効果の比較
抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤とのがん細胞成長抑制効果を比較するために、A549(ヒト肺がん細胞株)とMDA-MB-231(ヒト乳ガン細胞株)を利用して細胞成長抑制効果を確認した。より詳しくは、96-ウェルプレートに0%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)条件では2x10細胞を分注したし、0.1%ウシ胎児血清条件では6x10細胞を分注した。そして、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を処理して5日間培養した後、光学顕微鏡で観察した。その結果は図27および図28に示した。
【0087】
図27に示した通り、A549細胞株で免疫抗がん剤であるイミフィンジより抗-CD300c単クローン抗体ががん細胞の増殖をさらに効果的に抑制することを確認した。
【0088】
図28に示した通り、MDA-MB-231細胞株で免疫抗がん剤であるイミフィンジより抗-CD300c単クローン抗体ががん細胞の増殖をさらに効果的に抑制することを確認した。
【0089】
5.3.抗-CD300c単クローン抗体の濃度別がん細胞成長抑制効果確認
抗-CD300c単クローン抗体の濃度によるがん細胞成長抑制効果を確認するために、96-ウェルプレートに0%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)条件では2x10A549細胞を分注し、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を処理して5日間培養した。そして、CCK-8(DOJINDO)を処理して3時間の間反応させた後、OD450nmで吸光度を測定して抗-CD300c単クローン抗体のがん細胞成長抑制効果を確認した。その結果は図29に示した。
【0090】
図29に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体の濃度により依存的にがん細胞の成長が抑制されることを確認した。
【0091】
5.4.抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与によるがん治療効果確認
抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与によるがん治療効果を確認するために、実施例5.1と同じ方法で細胞増殖分析を実施した。免疫抗がん剤としてはイミフィンジを使った。その結果は図30に示した。
【0092】
図30に示した通り、免疫抗がん剤の単独投与と比較して、抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与時にがん細胞の成長が効果的に抑制されることを確認した。
【0093】
また、光学顕微鏡を利用してがん細胞成長抑制効果を確認した。その結果は図31に示した。
図31に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与時にがん細胞の成長が効果的に抑制されることを確認した。
【0094】
5.5.抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与に対する作用メカニズム確認
がん細胞の細胞死滅信号伝達メカニズムにおいて、抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤の併用投与による作用メカニズムを確認するために、A549細胞に抗-CD300c単クローン抗体、イミフィンジ、および/またはキイトルーダを10μg/mLの濃度で処理して細胞死滅マーカーであるCaspase-9切断型(cleaved form)の量をウエスタンブロッティング(Cell signaling)を実施して確認した。その結果は図32に示した。
【0095】
図32に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体を単独で処理した実験群と比較して、抗-CD300c単クローン抗体とイミフィンジを併用投与した場合にCaspase-9切断型の量が増加し、抗-CD300c単クローン抗体、イミフィンジおよびキイトルーダを併用投与した場合にCaspase-9切断型の量がさらに増加することを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体と免疫抗がん剤を併用投与する場合にがん細胞の細胞死滅信号伝達メカニズムがさらに活性化し、これを通じて、がん細胞の増殖この効果的に抑制され得ることを確認することができた。
【0096】
実施例6:抗-CD300c単クローン抗体のヒト抗原とマウス抗原間の優秀な交差反応性確認
6.1.抗-CD300c単クローン抗体の特異性(specificity)確認
抗-CD300c単クローン抗体のヒト抗原とマウス抗原間の交差反応性を確認する前に、まず抗-CD300c単クローン抗体の特異性を確認するために、既にCD300c抗原と拮抗作用をするものとして知られているだけでなく、蛋白質配列が類似するCD300a抗原に対する抗-CD300c単クローン抗体の交差反応性(cross-reactivity)を確認した。より詳しくは、CD300a抗原を0.039、0.63、および10μg/mLの濃度で処理した後、実施例1.5と同じ方法でBinding ELISAを実施した。その結果は図33に示した。
【0097】
図33に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体がCD300aに結合しないことを確認したし、前記結果を通じて、類似する配列であるCD300aに結合しないほど高い結合特異性を示すことを確認することができた。
【0098】
6.2抗-CD300c単クローン抗体のマウスマクロファージ(Raw264.7)のM1分化能の確認
抗-CD300c単クローン抗体がマウスマクロファージにおいてもM1マクロファージへの分化能を促進させることができるかを確認するために、96-ウェルプレートにマウスマクロファージ(Raw264.7)を1x10cells/wellの濃度で分注した後、10μg/mLの抗-CD300c単クローン抗体を共に処理して培養した。そして、TNF-αの生成量をELISA kitで確認した。その結果は図34に示した。
【0099】
図34に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群ではTNF-αの生成量が増加したことを確認したし、前記結果を通じて、ヒトだけでなくマウスにおいても同一に作用してM1マクロファージへの分化を促進させることを確認することができた。
【0100】
6.3抗-CD300c単クローン抗体のマウス大腸がん細胞(CT26)の成長抑制効果
抗-CD300c単クローン抗体がマウスでも抗がん効果を示すかを確認するために、CT26(マウス大腸がん細胞株)を利用して実施例4.1と同じ方法で細胞増殖分析を実施した。その結果は図35に示した。
図35に示した通り、マウスでも抗-CD300c単クローン抗体はがん治療効果を示すことを確認した。
【0101】
実施例7:抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでの抗がん効果
7.1.抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでのがん成長抑制効果確認
抗-CD300c単クローン抗体の抗がん効果を生体内条件(in vivo)で確認するために、大腸がん細胞株(CT26)2x10個を8週齢BALB/cマウスに皮下注射(subcutaneous injection)で移植して同種移植マウス腫瘍モデル(Syngenic mouse model)を製作した。動物の飼育および実験はすべてSPF(specific pathogen free)施設で進行した。実験方法は図36に簡略に示した。大腸がん細胞株を移植して12日後に、腫瘍の大きさが50~100mmであるマウスに抗-CD300c単クローン抗体CL7、抗-PD-1抗体、および単クローン抗体CL7と抗-PD-1抗体(Combo)をそれぞれマウスに注射し、対照群ではリン酸塩緩衝溶液(phosphate buffered saline;PBS)を同量注射した。より詳しくは、1週間に2回、2週間で総4回をマウスに腹腔内注射(Intra peritoneal injection)でそれぞれを10mg/kgずつ注射した。そして、25日間がんの大きさを測定した。その結果は図37に示した。
【0102】
図37に示した通り、抗-CD300c単クローン抗体を単独投与した実験群で対照群と比較してがんの成長が抑制されることを確認したし、抗-PD-1抗体と併用投与した場合にはがんの成長がさらに効果的に抑制されることを確認した。
【0103】
7.2.抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでの腫瘍微細環境での腫瘍浸潤リンパ球増加効果確認
抗-CD300c単クローン抗体が腫瘍微細環境(tumor microenvironment;TME)で腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocyte;TIL)に及ぼす影響を確認するために、実施例7.1と同じ方法で実験した25日目のマウスを安楽死させた後、1%PFA(para-formaldehyde)をマウス血管内に注入後貫流させ、がん組織を獲得した。そして、獲得されたがん組織を1%PFAを利用して固定させ、順次10%、20%、30%スクロース溶液を利用して脱水した。脱水されたがん組織はOCTコンパウンド(Optimal cutting temperature compound)で冷凍させた後、冷凍組織切片機(Cryotome)を利用してがん組織を50μm厚さで切片にし、腫瘍浸潤リンパ球マーカーであるCD8+T細胞とCD31+がん血管細胞を染色した。その結果は図38に示した。
【0104】
図38に示した通り、抗-PD-1抗体を単独投与した実験群と比較して、抗-CD300c単クローン抗体を投与した実験群でCD8+T細胞が増加したことを確認したし、これを通じて、CD300c単クローン抗体が腫瘍微細環境で腫瘍浸潤リンパ球を増加させて抗がん効果を示すことを確認することができた。
【0105】
7.3.抗-CD300c単クローン抗体のin vivoでのM1マクロファージ増加効果確認
抗-CD300c単クローン抗体がin vivoでがん組織内のM1マクロファージを増加させるかを確認するために、実施例7.2と同じ方法で準備したがん組織切片を利用してM1マクロファージマーカーであるiNOSとM2マクロファージマーカーであるCD206を染色した。その結果は図39に示した。
【0106】
図39に示した通り、抗-PD-1抗体を処理した実験群ではM1マクロファージが対照群と比較して一部増加したが、抗-CD300c単クローン抗体を処理した実験群ではM1マクロファージが顕著に増加し、M2マクロファージはほとんど観察されないことを確認した。また、抗-CD300c単クローン抗体と抗-PD-1抗体を併用投与した実験群でもM1マクロファージが増加したことを確認した。前記結果を通じて、抗-CD300c単クローン抗体が既存の免疫抗がん剤と比較してM1マクロファージへの分化を効果的に促進させることができることを確認することができた。
【0107】
前記結果を通じて、本発明の抗-CD300c単クローン抗体はCD300c抗原に対して高い特異性を有して結合することができ、マウスなどのような種間交差反応性を示すことを確認したので、多様な個体に使用できることを確認した。また、抗-CD300c単クローン抗体はT細胞を活性化させ、M1マクロファージへの分化を促進させることによって免疫抗がん剤の作用をすることによって、がん細胞の増殖、転移などを効果的に抑制できるということをin vitroおよびin vivoですべて確認しただけでなく、既存の免疫抗がん剤との併用投与を通じてその治療効果をさらに増加させることができることを確認したので、CD300c抗原を発現する多様ながんの抗がん免疫治療に効果的に使用できることを確認することができた。
【0108】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形できることが理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
項1:配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50からなる群から選択されたいずれか一つ以上のCDR(complementarity-determining regions)配列を含む、抗-CD300c単クローン抗体。
項2:前記抗-CD300c単クローン抗体は種間交差反応性を有することを特徴とする、項1に記載の抗-CD300c単クローン抗体。
項3:前記交差反応性はヒト抗原とマウス抗原に対する交差反応性であることを特徴とする、項2に記載の抗-CD300c単クローン抗体。
項4:抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む、がん予防または治療用薬学的組成物。
項5:前記抗体は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50からなる群から選択されたいずれか一つ以上のCDR(complementarity-determining regions)配列を含むことを特徴とする、項4に記載の薬学的組成物。
項6:前記がんは大腸がん、直膓がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸部がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、項4に記載の薬学的組成物。
項7:前記薬学的組成物は免疫抗がん剤をさらに含むことを特徴とする、項4に記載の薬学的組成物。
項8:前記免疫抗がん剤はanti-PD-1、anti-PD-L1、anti-CTLA-4、anti-KIR、anti-LAG3、anti-CD137、anti-OX40、anti-CD276、anti-CD27、anti-GITR、anti-TIM3、anti-41BB、anti-CD226、anti-CD40、anti-CD70、anti-ICOS、anti-CD40L、anti-BTLA、anti-TCR、およびanti-TIGITからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、項7に記載の薬学的組成物。
項9:前記薬学的組成物はがんの増殖、生存、転移、再発または抗がん剤耐性を抑制することを特徴とする、項4に記載の薬学的組成物。
項10:抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む、免疫抗がん剤。
項11:前記抗体は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50からなる群から選択されたいずれか一つ以上のCDR(complementarity-determining regions)配列を含むことを特徴とする、項10に記載の免疫抗がん剤。
項12:前記免疫抗がん剤はがんの増殖、生存、転移、再発または抗がん剤耐性を抑制することを特徴とする、項10に記載の免疫抗がん剤。
項13:前記がんは大腸がん、直膓がん、結腸がん、甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、子宮頸部がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、舌がん、乳ガン、子宮がん、胃がん、骨がんおよび血液がんからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、項10に記載の免疫抗がん剤。
項14:抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む、抗がん治療法の補助剤。
項15:前記補助剤は免疫細胞の免疫機能を活性化させて抗がん治療効果を向上させることを特徴とする、項14に記載の補助剤。
項16:前記抗がん治療法は放射線治療法、抗がん剤治療法または免疫抗がん剤治療法である、項14に記載の補助剤。
項17:抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、がんの予防または治療方法。
項18:抗-CD300c単クローン抗体を有効性分として含む、組成物のがん予防または治療用途。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の抗-CD300c単クローン抗体はCD300c抗原に特異的に結合するため、CD300c抗原を分泌するすべてのがんの治療に使われ得るだけでなく、種間交差反応性を有することによって多様な個体の抗がん治療に使うことができる。また、免疫抗がん剤としての作用を通じて抗がん効果を示すため、がんの増殖、発達、転移などを効果的に抑制して多様ながんの免疫治療に効果的に使うことができる。
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【配列表】
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