(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20240819BHJP
B65D 81/18 20060101ALI20240819BHJP
B65D 51/26 20060101ALI20240819BHJP
G01N 1/42 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
B65D81/38 E
B65D81/18 B
B65D81/38 N
B65D51/26
G01N1/42
(21)【出願番号】P 2021566755
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051561
(87)【国際公開番号】W WO2021131056
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】515141702
【氏名又は名称】株式会社エムダップ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】新倉 和彦
(72)【発明者】
【氏名】早川 慎司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 将仁
(72)【発明者】
【氏名】堀内 沙織
(72)【発明者】
【氏名】三分一 孝則
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆哉
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543082(JP,A)
【文献】特開2019-170207(JP,A)
【文献】特開平04-000172(JP,A)
【文献】実開昭62-093745(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 81/18
B65D 51/26
G01N 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外容器内に離間状態で内容器を配設し、前記外容器と前記内容器との間の密閉された空間部を真空にした真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置であって、
前記真空断熱二重容器は、
前記内容器に固定され中央部が開口した内蓋の開口縁と、前記外容器に固定され中央部が開口した外蓋の開口縁とを連結固定する、連結管と、を備え、
前記固定装置は、前記外容器の開口に対して着脱自在に配設され、前記内容器の内部へ大気の侵入を防いで覆う蓋体と、
前記蓋体の下面に配設されたキャリアガイドと、前記キャリアガイドの下端部に延設して配設され、断面が矩形状の板状部と、前記板状部の下端に配設されたワーク収納部と、を備え、
前記固定装置を前記真空断熱二重容器内に嵌入して固定したとき、
前記キャリアガイドの外周面は
、収納容器上部の気相部体積を削減する形状に構成されることを特徴とする真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【請求項2】
前記蓋体は剛性を有する合成樹脂で構成され、前記キャリアガイドは弾性力のある合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【請求項3】
前記板状部は、剛性を有する、または弾性力のある合成樹脂または金属で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【請求項4】
前記連結管の外周面は、凹凸形状を有することを特徴とする請求項1から3
のいずれか一項に記載の真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【請求項5】
前記板状部及び前記ワーク収納部は、前記収納容器に非接触状態になることを特徴とする請求項1から4
のいずれか一項に記載の真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【請求項6】
前記固定装置のキャリアガイド
が断熱チューブ内に嵌入されていることを特徴とする請求項1から5
のいずれか一項に記載の真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、試料を凍結した状態又は氷点下で輸送する容器に用いることのできる真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料を凍結した状態又は氷点下で輸送するための容器として各種の容器が用いられている。この種の容器としては、生体試料輸送容器(特許文献1参照)や凍結保存・輸送兼用容器(特許文献2参照)などが提案されている。また、この種の容器内に試料を収納保持する固定装置の構成としては、凍結保存容器(特許文献3参照)や生体構造物用非凍結保存輸送装置(特許文献4参照)などが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された発明では
図11に示すように、ステンレス製の真空断熱構造の容器本体66が用いられており、容器本体66内には、内容物固定具64を介して試料容器固定具63と極低温液化ガス吸着保持剤61とがそれぞれ設けられている。試料容器固定具63には、試料容器62を保持する試料容器保持穴(不図示)が、容器本体の上下方向に貫通して複数形成されており、その外形は、容器本体66内の水平断面形状と同形状に形成されている。
【0004】
また、試料容器保持穴 (不図示)は、試料容器62を保持する複数の穴として形成されており、容器本体63の上下方向に貫通している。上部が開放した容器本体66の開口部65は、ねじ螺合した蓋体67によって開閉可能に覆われている。そして、試料は、直接試料容器62内に収納される構成になっている。
【0005】
特許文献2に記載された発明では
図12に示すように、図外壁70aと内壁70bを備えた二重壁の真空構造に構成された断熱容器70が用いられている。断熱容器70の上部には、収納物出入口73が形成され、収納物出入口73には、開閉可能な蓋体(不図示)が設けられている。断熱容器70は、横断面形状が円形であり、その周壁は外壁70aと内壁70bで囲まれた真空構造になっている。
【0006】
断熱容器70の内部(内壁70bの内側)は、空洞に形成されており、空洞部には医薬品等の収納物を収納する収納部71が設けられている。板状部材74に外周面には、波立ち抑制板72が立設されており、波立ち抑制板72は、収納部71と断熱容器70の内壁70bとの間に水平方向に配設されており、収納部71と断熱容器70の内壁70bとの空間に貯蔵された液体窒素の波立ち(スロッシング、sloshing)を抑制している。
【0007】
特許文献3に記載された発明では
図13に示すように、低温液化ガスを貯える容器本体81と、この容器本体81の口部を閉じるとともに複数の挿入孔86が上下方向に貫通して形成されたキャップ82と、このキャップ82の挿入孔86に挿入された鞘管84と、この鞘管84に挿通可能に収容されたアンプル収納具83を備えている。
【0008】
図14に示すように、各鞘管84には、複数のガス透過孔が形成されており、各鞘管84に挿入されるアンプル収納具83は、取手部89の下面に断熱部88を介して支持柱87とこの支持柱87の上下方向に並んで取り付けられた複数のアンプル収納部90とを有する構成になっている。
【0009】
特許文献4に記載された発明では
図15に示すように、生体構成物95を液体96と共に封入する圧力保持容器97と、この圧力保持容器97を0℃以下に冷却することで前記液体96を凍結させずに内圧を発生若しくは内圧を増圧させる冷却手段を備えた構成になっている。冷却手段は、圧力保持容器97の周囲を、図面の場合には液体で冷却した構成になっている。生物構造物95は、吊りひもやネットで構成された生物構造物保持手段98によって、圧力保持容器97内に吊り下げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-165487号公報
【文献】特開2017-138244号公報
【文献】特開2008-285181号公報
【文献】特開2015-224211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された生体試料輸送容器では、試料容器62を収納する収納部の上部と蓋体67との間が空間部として構成されており、気化した極低温液化ガスは、通気用の凹部68による隙間を通って外部に流出してしまう構成になっている。そのため、時間の経過とともに、極低温液化ガス吸着保持剤61に吸着させていた極低温液化ガスの濃度が低下することになり、低温保持時間が短くなってしまう問題が生じている。
【0012】
また、試料は直接試料容器62内に収納される構成になっているため、容器本体63が振動すると、試料は試料容器62の内壁に衝突することになる。あるいは、試料は試料容器62と一緒に凍結された状態で容器本体63内に収納される構成となるため、試料の取り扱いの自由度が低下することになる。しかも、試料容器62の中間部から上端部側は、発泡ポリエチレンやポリウレタン等の樹脂材からなる試料容器固定具63によって保持された構成であるため、試料容器62の中間部から上端部側を極低温液化ガスで直接冷却しておくことができない。
【0013】
特許文献2に記載された凍結保存・輸送兼用容器では、収納部71と断熱容器70の内壁70bとの空間に液体窒素をそのまま貯蔵する構成であるため、搬送中に外部から加わった外力によって生じる液体窒素の波立ち(スロッシング)を抑制する必要がある。しかも、液体窒素の気化が進んでいくと、波立ち抑制板72に面する液体窒素の液面高さが低下することになり、液体窒素の気化と共に激しさを増すことになる。抑制板72によって激しくなった波立ち(スロッシング)を抑制することが難しくなる。
【0014】
液体窒素が波立ち運動を生じて、波立ち運動の固有振動数と板状部材74や断熱容器70等の固有振動数とが一致すると、断熱容器70自体が載置台等の上で大きく移動させる力が作用することになる。そして、試料は、収納部71内に収納された構成であるため、液体窒素が波立ち運動を生じると、試料が収納部71の内壁に衝突して破損してしまう危険性もある。
【0015】
特許文献3に記載された発明では、容器本体81が外力によって振動すると鞘管84も一緒に振動を生じ、鞘管84内に収納されているアンプル収納具83も鞘管84とともに振動を行うことになる。そのため、アンプル収納部90内に収納されているアンプルも振動の影響を受けることになる。
【0016】
特許文献4に記載された発明では、生体構造物95が吊りひもやネットで構成されている生体構造物保持手段98で吊り下げられて、液体96に浸かっている状態である。しかも、圧力保持容器97は、持ち運び輸送体内に設けた冷却手段の冷却液中に浸かった状態に配設されている。そのため、外力によって持ち運び輸送体が振動すると、生物構造物95は圧力保持容器97内で振動することになる。更に、持ち運び輸送体内の冷却液や圧力保持容器97内の液体の固有振動数によっては、生物構造物95生体構造物保持手段98によって大きな振り子運動を行うことになる。
【0017】
本願発明では、これらの問題を解決することができ、収納した試料を効率的に、しかも効果的に凍結保存した状態又は氷点下で搬送することができ、しかも、試料を収納した真空断熱二重容器が振動しても、真空断熱二重容器の振動による影響が試料に及ぼさないようにした真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本願発明に係る課題は、請求項1~6に記載した真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置によって達成することができる。
即ち、本願発明は、外容器内に離間状態で内容器を配設し、前記外容器と前記内容器との間の密閉された空間部を真空にした真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置であって、前記真空断熱二重容器は、前記内容器に固定され中央部が開口した内蓋の開口縁と、前記外容器に固定され中央部が開口した外蓋の開口縁とを連結固定する連結管と、を備え、
前記固定装置は、前記外容器の開口に対して着脱自在に配設され、前記内容器の内部へ大気の侵入を防いで覆う蓋体と、前記蓋体の下面に配設されたキャリアガイドと、前記キャリアガイドの下端部に延設して配設され、断面が矩形状の板状部と、前記板状部の下端に配設されたワーク収納部と、を備え、
前記固定装置を前記真空断熱二重容器内に嵌入して固定したとき、前記キャリアガイドの外周面は、前記収納容器上部の気相部体積を削減する形状に構成されることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本願発明に係る真空断熱二重容器では、内容器と外容器とが連結管によって支持連結された構成になっているので、内容器から連結管を介して外容器に伝達される熱伝導は遅くゆっくりとしたものになる。しかも、内容器と外容器との間は真空に設定されているので、内容器内の温度上昇はゆっくりとしたものになる。また、連結管の外周面を凹凸に形成しておけば、薄肉で連結管を形成しても連結管の長手方向における強度を向上させることができる。
【0020】
また、固定装置のキャリアガイドを断熱チューブ内に嵌入させることにより、真空断熱二重容器が振動しても、その振動がワーク収納部に伝わることを抑制しておくことができる。しかも、板状部は断面が矩形状の板状部として構成されているので、真空断熱二重容器の振動により蓋体やキャリアガイドが真空断熱二重容器と共に振動しても、その振動によって、ワーク収納部を自由振動させることがない。
しかも、板状部及びワーク収納部は、断熱チューブの内周面及び収納容器に非接触状態に配設されているので、真空断熱二重容器の振動によってワーク収納部が、収納容器に衝突することがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、真空断熱二重容器の縦断面図である。(実施形態)
【
図2】
図2は、真空断熱二重容器の正面図である。(実施形態)
【
図3】
図3は、ワークキャリアを装着した状態での縦断面図である。(実施形態)
【
図4】
図4は、積層した吸着剤ブロックの要部斜視図である。(実施形態)
【
図6】
図6は、ワークキャリアと真空断熱二重容器の正面図である。(実施形態)
【
図8】
図8は、固定装置としてのワークキャリアと真空断熱二重容器の斜視図である。(実施形態)
【
図9】
図9(A)は、収納容器の正面図であり、
図9(B)は、収納容器の斜視図である。(実施形態)
【
図10】
図10(A)は、他の構成に係る収納容器の正面図であり、
図10(B)は、収納容器の斜視図である。(実施形態)
【
図11】
図11は、生体試料輸送容器の断面図である。(従来例1)
【
図12】
図12は、凍結保存・輸送兼用容器の一部断面を含む斜視図である。(従来例2)
【
図13】
図13は、凍結保存容器の一部断面を含む斜視図である。(従来例3)
【
図14】
図14は、アンプル収容具を示す説明図である。(従来例3)
【
図15】
図15は、圧力保持容器の概略説明断面図である。(従来例4)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明を実施するための形態について、実施形態を挙げて図面を参照しながら具体的に説明する。本願発明に係わる真空断熱二重容器に用いる輸送試料の固定装置としては、以下の実施例で示す構成以外であっても、本願発明の技術思想を満たし、本願発明の課題を解決することができる構成であれば、以下に説明する構成に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
[実施形態]
[外容器と内容器及び連結管の構成]
【0023】
図1、
図2、
図3に示すように、真空断熱二重容器1は、上端部が開口した外容器3内に上端部が開口した内容器10を配設し、内容器10内に複数個の吸着剤ブロック30と収納容器25及び外容器3と内容器とを連結する連結管20を備えた構成になっている。外容器3の底部6には、外容器3を立設支持する環状の円筒部と外容器3内を密閉する底板部とが形成されている。この底板部は、外側へ湾曲状に突出した曲面形状に形成されており、底板部の所望の部位には、真空吸引部34が形成されている。真空吸引部34に真空吸引機を接続することで、外容器3と内容器10との間の空間部21を真空状態にすることができる。
【0024】
外容器3の上端部には、中央部が開口した裁頭円錐形の外蓋4の下端部が固定部45によって固定されており、固定部45では溶接、ロウ付け、接着により一体的に固定されている。また、外容器3の下端部には、底部6が設けられており、底部6としては、外容器3の外周面が下方に延設した環状支持部と外容器3の底面を覆う底面部とが構成されている。底面部は、外側へ湾曲状に突出した曲面形状に形成されており、環状支持部と底面部とは、固定部45によって一体的に固定されている。
【0025】
内容器10の上端部には、中央部が開口した環状の内蓋11が固定部45によって固定されており、固定部45では溶接、ロウ付け、接着により一体的に固定されている。内容器10の底部12は、絞り加工等によって一体的に成形されており、外側へ湾曲状に突出した曲面形状に形成されている。外容器3の底面部と。内容器10の底部12とを同方向に突出した曲面形状に形成しておくことにより、空間部21を真空状態にしたときの面強度を高めている。
【0026】
図示例は省略しているが、内容器10の外周面全面を覆う形で薄肉のアルミニウム板を巻装しておくことができる。薄肉のアルミニウム板としては、平板状の滑らかな面として構成しておくことも、皺だらけまたは梨地加工、シボ加工のようにザラザラの面として形成しておくこともできる。
【0027】
外蓋4の上端部の開口縁と内蓋11の内周縁は、それぞれ連結管20の上端部と下端部とが、固定部45によって一体的に固定されている。外蓋4、外容器3、内容器10及び連結管20で囲まれる空間部21が、密閉された空間部として構成されている。
【0028】
連結管20は、薄肉の金属を用いて、その周面は凹凸状に形成しておくことができ、このように構成しておくことにより、薄肉の金属で連結管20を構成しても連結管20の面強度を向上させている。連結管20としては、その面強度を高めるために厚肉のパイプ材で構成しておくこともできるが、連結管20の重量が増大するとともに、連結管20の熱伝導率が高くなってしまう。
【0029】
そのため、連結管20の重量を軽減し、面強度を高めるため、薄肉の金属を用いて、その周面を凹凸状に形成しておくことが望ましい構成となる。このように形成した連結管20を用いることで、内容器10を外容器4に対して強固に支持固定することができる。
【0030】
外容器3及び内容器10は、薄板の金属材によって構成されており、外容器3、内容器10及び連結管20は、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス鋼を用いて構成されている。また、外容器3及び内容器10を構成する材質としては、薄肉で物理的な強度や熱に対する強度の高い材質で構成しておくこともできる。
尚、連結管20としては、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス鋼よりも熱伝導率の低い亜鉛合金やスズ合金、耐熱性マグネシウム合金等の金属材を用いて構成しておくこともできる。また、外容器3及び内容器10を構成する材質としては、薄板で物理的な強度や熱に対する強度の高い材質で構成したときには、連結管20も外容器3及び内容器10と同じ材質で構成することもできる。
[収納容器及び吸着剤ブロックの構成]
【0031】
内容器10内には、上端部が開口した金属製で有底の収納容器25が、内容器10の内面から離間した状態で収納されている。収納容器25の底面と外周面には、複数個の吸着剤ブロック30が配設されており、収納容器25は、収納容器25の底面と内容器10の底部12との間に配設した吸着剤ブロック30によって支持されている。
【0032】
また、収納容器25の外周面には、内容器10の内周面側に突出した複数個の仕切り皿27が立設されており、各仕切り皿27は、収納容器25の長手方向に沿って互いに離間した状態で平行に配設されている。
図3、
図4及び
図5に示すように、仕切り皿27の先端部側は、上方に屈折したストッパ片28が形成されており、仕切り皿27上に載置した吸着剤ブロック30の位置決めと仕切り皿27上で吸着剤ブロック30が移動するのを規制している。
【0033】
仕切り皿27の材質としては、収納容器25と同様にアルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス鋼を用いて構成されている。仕切り皿27は、溶接、ロウ付け、接着により収納容器25の外周面に一体的に固定することができる。また、図示例は省略しているが、吸着剤ブロック30毎にアルミ箔を巻き付けて、仕切り皿27とストッパ片28とを形成しておくこともできる。この場合、吸着剤ブロック30に供給した極低温液化ガスを吸着できるように、極低温液化ガス用の吸着口を巻装したアルミ箔に形成しておくことが望ましい構成となる。
また、外容器3及び内容器10を薄肉で物理的な強度や熱に対する強度の高い材質で構成したときには、仕切り皿27も収納容器25と同様の材質で構成しておくことができる。
【0034】
図示例は省略しているが、内容器10の外周面を薄肉のアルミニウム板で巻装しておくことができる。これにより、金属製で構成した内容器10の外周面を金属の積層構造としておくことができ、内容器10の外周面からの輻射伝熱を最小とすることができる。
また、外容器3及び内容器10を薄肉で物理的な強度や熱に対する強度の高い材質で構成したときにも、内容器10の外周面を薄肉のアルミニウム板で巻装しておくこともできる。
【0035】
各吸着剤ブロック30としては、収納容器25に密着させた状態に配設しておくことはできるが、
図5に示すように、仕切り皿27のストッパ片28によって、各吸着剤ブロック30が内容器10の内側面に接触しない状態に配設しておくことが望ましい構成になる。
【0036】
このように構成しておくことにより、内容器10の内側面に配設した各吸着剤ブロック30と内容器10の内周面との間に断熱層として機能する空気層を形成しておくことができ、各吸着剤ブロック30に吸着した極低温液化ガスの冷気が内容器10に伝熱するのを防止しておくことができる。
【0037】
図9(a)、
図9(b)に示すように、収納容器25は、有底の筒状形状に形成されており、上端の開口部には外方に延設したリング状の上面覆い板26が設けられている。上面覆い板26は、収納容器25の上端部を屈曲成形させて一体的に成形することも、溶接、ロウ付け、接着により収納容器25の上端部に固定しておくこともできる。上面覆い板26によって、仕切り皿27上に載置した吸着剤ブロック30の上面を覆っておくことができる。
【0038】
図9(a)、(b)に示すように、上面覆い板26及び収納容器25の底面には、極低温液化ガスの吸排気口33が複数形成されている。また、吸排気口33としては、
図10(a)、(b)に示すように、収納容器25の側面に複数形成しておくこともできる。吸排気口33の形成箇所としては、収納容器25の全長の三分の一より上側と、同全長の三分の一より下側に形成しておくことができる。また、収納容器25の側面に吸排気口33を形成する場合には、仕切り皿27上の吸着剤ブロック30の上端部側に対向して開口させておくことが望ましい構成となる。
【0039】
吸着剤ブロック30で用いる吸着剤としては、極低温液化ガスを吸着しておくことができる材料であれば適宜の材料を使用することができる。例えば、吸着剤としては、ゼオライトや活性炭、オイルソーベント、グラスウールなどを用いることができる。
【0040】
図3~
図5に示すように、複数個の吸着剤ブロック30は、収納容器25の底面側及び側面側を覆うように配設されている。収納容器25の底面側及び側面側に配設された複数個の吸着剤ブロック30は周方向と上下方向に等間隔に配設されている。このように配設しておくことにより、極低温液化ガスを各吸着剤ブロック30に吸着させた状態で、収納容器25を均一な状態にて冷却することができる。
[断熱チューブの構成]
【0041】
図3、
図7に示すように、連結管20の内面全面を覆う形で、発泡樹脂製の断熱チューブ40を設置してもよい。これにより、収納容器25内の冷気が連結管20に伝熱されるのを防止している。また、断熱チューブ40の上端部には、フランジ部が形成されており、後述するワークキャリア50の蓋体2を開閉自在に載置固定することができる。断熱チューブ40のフランジ部とワークキャリア50の蓋体2との間での固定は、クリップ部材により蓋体2の上面とフランジ部の下面を挟持して固定することも、ネジ螺合により固定することもできる。また、他の公知の固定方法を用いて固定することもできる。
【0042】
そして、
図9(a)、
図9(b)に示した収納容器25の構成では、断熱チューブ40の下端部と収納容器25の上端部との間に、極低温液化ガスを流す隙間を形成しておくことができる。また、
図10(a)、
図10(b)に示した収納容器25の構成では、断熱チューブ40の下端部と収納容器25の上端部とを密接させた構成にしておくことができる。
[固定装置としての構成]
【0043】
図3、
図6~
図8に示すように、収納容器25内に試料を挿入支持するワークキャリア50が用いられている。ワークキャリア50は、収納容器25内で極低温状態にて試料を保持するものである。そして、ワークキャリア50は、蓋体2と蓋体2の下面に取り付けたキャリアガイド52、キャリアガイド52の下面に下方に向かって取り付けた板状部54、及び板状部54の下端に設けたワーク収納部51を備えた構成になっている。
【0044】
蓋体2は、断熱チューブ40の上端部に設けたフランジ部と着脱自在に構成されており、蓋体2の上面とフランジ部の下面との間をクリップ等により挟持して、両者を圧接密着させて挟持することができる。蓋体2の上面とフランジ部との間での着脱自在の構成としては、蓋体2とフランジ部との間の対向する面間に螺合部を形成させておくこともできる。
【0045】
キャリアガイド52の外周面は、ワークキャリア50を真空断熱二重容器1内に嵌入したとき、断熱チューブ40の内面に密着するとともに、収納容器25の上端部側とも密着することができる。これにより、キャリアガイド52で覆われた収納容器25の内部を密閉状態に維持することができる。
尚、吸着剤ブロック30から気化した極低温液化ガスは、断熱チューブ40とキャリアガイド52とを通って、外部に排気され、内容器10内が気化した極低温液化ガスによって高圧状態になるのを防止できる。
【0046】
板状部54は、所定幅を有する板状部材から構成されており、ワーク収納部51とともに収納容器25に非接触状態に配されている。板状部54としては、真空断熱二重容器1に外力が作用して真空断熱二重容器1が振動したとしても、長尺の矩形断面で振動を吸収することができ、板状部54の下端部に配設したワーク収納部51が振動するのを防止しておくことができる。
【0047】
ワーク収納部51は、真空断熱二重容器1内に収納する試料を収納させておくための収納空間を有する形状に構成されている。
ワークキャリア50を構成する、蓋体2とキャリアガイド52、板状部54及びワーク収納部51は、断熱性が高い合成樹脂製で構成しておくことができる。蓋体2及び板状部54としては、剛性を有する樹脂材と構成しておくこともできる。
【0048】
これにより、真空断熱二重容器1が振動したとしても、板状部54を支持しているキャリアガイド52と断熱チューブ40とによって、真空断熱二重容器1の振動が板状部54及びワーク収納部51に伝達されるのを防止しておくことができる。
[真空断熱二重容器1内に収納する試料、極低温液化ガス]
【0049】
真空断熱二重容器1内に収納する試料としては、特に医療業界や研究機関において凍結試料輸送容器内に収納して搬送する必要にある試料を用いたり、氷点下で輸送する必要のある試料を用いることができる。
例えば、人間や動植物の組織や細胞、生体構造物、培養した細胞などの人工生体構造物などである。そして、低温状態に保って搬送する必要のある試料を搬送するために用いる容器として、本願発明の真空断熱二重容器1を用いることができる。
【0050】
吸着剤ブロック30に吸着させる極低温液化ガスとしては、真空断熱二重容器1内に収納して搬送する試料の状況に応じたものを用いることができる。例えば、極低温液化ガスとしては、液体窒素、液体ヘリウム、液化アルゴン、液化酸素、液化炭酸ガスなどを使用することができるが、凍結状態で搬送する試料の状況に応じて、適宜選択することができる。
[組立]
【0051】
図3を用いて説明すると、試料収納容器25に固定した複数の仕切り皿27上に吸着剤ブロック30をそれぞれ配設して、上面覆い板26を試料収納容器25の上端部に一体的に固定する。試料収納容器25の上端部に上面覆い板26を一体的に固定した後で、複数の仕切り皿27上に吸着剤ブロック30をそれぞれ配設することもできる。
【0052】
次に、内蓋11を固定する前の内容器10の底部12上に吸着剤ブロック30を載置し、吸着剤ブロック30を周面に配設した上面覆い板26付きの試料収納容器25を内容器10内に設置する。そして、試料収納容器25を内容器10の底部12上に載置した吸着剤ブロック30上に位置決めして設置する。
【0053】
連結管20の下端部の周縁を内蓋11の内周縁に一体的に固定するとともに、内蓋11を内容器10に一体的に固定する。次に、連結管20の上端部の周縁を外蓋4の上端部における開口縁5に一体的に固定するとともに、外蓋4の下端部縁を外容器3の上端外周縁に一体的に固定する。
【0054】
その後、連結管20の内周面と試料収納容器25の上端部に密着するように断熱チューブ40を挿入する。断熱チューブ40としては、連結管20を内蓋11に固定する前に挿入しておくこともできる。
【0055】
次に、ワーク収納部51、板状部54及びワークキャリア50を備えた蓋体2を断熱チューブ40内に挿入して、蓋体2と断熱チューブ40の上端部に形成したフランジ部とを着脱自在に固定することにより、ワークキャリア50を備えた真空断熱二重容器1を完成させることができる。
【0056】
試料を真空断熱二重容器1内に収納保存する場合には、ワークキャリア50を真空断熱二重容器1から取外し、断熱チューブ40の内周面を通路にして極低温液化ガスを注入する。注入された極低温液化ガスは、試料収納容器25が
図9(a)、
図9(b)の構成のときには、断熱チューブ40の下端部と試料収納容器25の上端部との間の隙間を通って、上面覆い板26に形成した複数個の吸排気口33及び試料収納容器25の底面に形成した吸排気口33から各吸着剤ブロック30に注入される。
【0057】
試料収納容器25が
図10(a)、
図10(b)の構成のときには、注入された極低温液化ガスは、試料収納容器25の周面に複数形成した吸排気口33から各吸着剤ブロック30に注入される。このとき、試料収納容器25の周面に形成した吸排気口33を各仕切り皿27上に載置した吸着剤ブロック30の上端部側に対応した位置に形成しておくことが望ましい構成になる。また、必要に応じて吸排気口33を試料収納容器25の周面以外に底面部に形成しておくこともできる。
【0058】
このように、吸着剤ブロック30をブロック状に構成するとともに、試料収納容器25の周面に配設した各吸着ブロック30を仕切り板27上に載置しておくとともに、複数個の吸排気口33を吸着材ブロック30の配設位置に対応して形成している。このように構成することによって、極低温液化ガスの吸着量を適切な吸着量に設定することができる。
[効果]
【0059】
本願発明に係る真空断熱二重容器1では、真空構造に加えて、吸着剤ブロック30をブロック状に構成しており、しかも、試料収納容器25の周面に配設した各吸着ブロック30を仕切り板27上に載置した構成になっている。しかも、薄肉で外周面を凹凸に形成した連結管20を用いて外容器3に内容器10を吊り下げた構成になっている。加えて、連結管20の内面には、断熱チューブ40を配設しており、ワークキャリア50を真空断熱二重容器1内に嵌入固定した際には、内容器10内を気密状態に維持することができる。
【0060】
しかも、このように構成しておくことにより、内容器10から外容器3を介して外部に伝熱される熱量を抑えておくことができる。また、試料収納容器25の周面に配設した各吸着ブロック30を上下方向に離間した状態で、仕切り皿27上に配設しているので、適切な極低液化ガスの吸着量を得ることができる。
尚、吸着剤ブロック30毎にアルミ箔を巻き付けて、仕切り皿27とストッパ片28とを形成した場合には、少なくとも上下方向に隣接する吸着剤ブロック30間にはアルミ箔が介在しているので、介在したアルミ箔が仕切り板27としての機能を果たすことになる。
【0061】
更に、各吸着ブロック30から極低温液化ガスが気化して行っても、各吸着ブロック30は個別に上端部側から極低温液化ガスの吸着濃度が減少していくため、試料収納容器25の全面をほぼ均一な状態で維持しておくことができる。
【0062】
これに対して従来技術のように、上下方向に隣接する複数の吸着ブロックを、仕切り板を介在させずに直接重ね合わせた状態で配設した場合には、積層した吸着ブロックから気化した極低温液化ガスの吸着濃度は、積層した吸着ブロックの上端部側から減少していく。そのため、試料収納容器の上端部側から冷極低温液化ガスの吸着濃度が低下していくことになり、試料収納容器の全面を均一な状態で維持しておくことができなくなる。
【0063】
内容器10の外周面を薄肉のアルミニウム板で巻装しておくことにより、内容器10の外周面を金属の積層構造としておくことができ、内容器10の外周面からの輻射伝熱を最小とすることができる。
【0064】
各吸着剤ブロック30を
図5に示すように、仕切り皿27のストッパ片28によって、各吸着剤ブロック30が内容器10の内側面に接触しない状態に配設しておくことができる。このように構成しておくことにより、内容器10の内側面に配設した各吸着剤ブロック30と内容器10の内周面との間に断熱層として機能する空気層を形成しておくことができ、各吸着剤ブロック30に吸着した極低温液化ガスの冷気が内容器10に伝熱するのを防止しておくことができる。
【0065】
しかも、従来技術のように、上下方向に隣接する複数の吸着ブロックを、仕切り板を介在させずに重ね合わせた状態で配設した場合には、積層した吸着ブロックから気化した極低温液化ガスの吸着濃度は、吸着ブロックの上端部側から減少していく。そのため、試料収納容器の上端部側から冷却を行うことができなくなり、試料収納容器の全面を均一な状態で維持しておくことができなくなる。
【0066】
これに対して、本願発明では、各吸着ブロック30から極低温液化ガスの気化が進行しても、各吸着ブロック30は個別に上端部側から極低温液化ガスの吸着濃度が減少していくため、試料収納容器25の全面をほぼ均一な状態で維持しておくことができるようになる。
【0067】
固定装置としてのワークキャリア50は、連結管20の内周面に設けた断熱チューブ40に密接するキャリアガイド52によって、内容器10内を密閉状態に維持することができる。しかも、蓋体2及びキャリアガイド52は、発泡樹脂等の合成樹脂製の断熱チューブ40に密着させた構成にでき、キャリアガイド52の下端部に設けた板状部54及び板状部54の下端に設けたワーク収納部51は、試料収納容器25に対して非接触状態に配されている。この構成により、真空断熱二重容器1に衝撃等の外力が作用してもワーク収納部51内の試料に対して振動や衝撃が加わりにくくなる。
【符号の説明】
【0068】
1 真空断熱二重容器
2 蓋体
3 外容器
4 外蓋
6 底部
10 内容器
11 内蓋
12 底部
20 連結管
21 空間部
25 収納容器
27 仕切り皿
30 吸着剤ブロック
33 給排気口
34 真空吸引部
40 断熱チューブ
50 ワークキャリア
51 ワーク収納部
52 キャリアガイド
54 板状部
61 極低温液化ガス吸着保持剤
62 試料容器
63 試料容器固定具
64 内容物固定具
66 容器本体
67 蓋体
70 断熱容器
71 収納部
72 波立ち抑制板
74 板状部材
75 固定連結部材
81 容器本体
82 キャップ
83 アンプル収納具
84 鞘管
87 支持柱
88 断熱部
90 アンプル収納部
97 圧力保持容器
98 生体構造物保持手段