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特許7539613OLEDディスプレイ装置、およびそのバックカバーの製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】OLEDディスプレイ装置、およびそのバックカバーの製作方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240819BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240819BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240819BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240819BHJP
【FI】
G09F9/00 350A
H04N5/64 571E
H05B33/14 A
H10K50/10
H10K59/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020110121
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2021009369
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077787
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064194
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518098623
【氏名又は名称】オソン ディー アンド イー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OHSUNG D&E CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】13-1, Geumganggongwon-ro, Dongnae-gu, Busan, 47711, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨン デ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ギュ
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0106826(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109927391(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0291158(US,A1)
【文献】特開昭61-129522(JP,A)
【文献】国際公開第2014/014066(WO,A1)
【文献】特開平11-212578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
H04N 5/64
H10K 50/10
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDパネルと、前記OLEDパネルの背面を覆って支持するバックカバーとを含んで構成され、
前記バックカバーは、少なくともインナスキンとアウタスキンとを含み、
前記アウタスキンは、平坦なメイン部と、前記メイン部に直結するとともに、これから延長されつつ湾曲するようにして構成されたベンディング部と、前記ベンディング部からさらに前面側へと延長された側壁部と、前記側壁部からさらに延長されてからヘミングされたヘミング部とを含み、
前記アウタスキンのメイン部は、その外縁に至るまで、少なくとも前記インナスキンを含む内層部により被覆されており、
前記内層部の端面と前記アウタスキンの側壁部とがなす角度が、0度より大きいことを特徴とする、OLEDディスプレイ装置。
【請求項2】
OLEDパネルと、前記OLEDパネルの背面を覆って支持するバックカバーとを含んで構成され、
前記バックカバーは、少なくともインナスキンとアウタスキンとを含み、
前記アウタスキンは、平坦なメイン部と、前記メイン部に直結するとともに、これから延長されつつ湾曲するようにして構成されたベンディング部と、前記ベンディング部からさらに前面側へと延長された側壁部と、前記側壁部からさらに延長されてからヘミングされたヘミング部とを含み、
前記アウタスキンのメイン部は、その外縁に至るまで、少なくとも前記インナスキンを含む内層部により被覆されており、
前記アウタスキンのメイン部に垂直な方向と、前記内層部の端面とがなす角度が、0度より大きいことを特徴とする、OLEDディスプレイ装置。
【請求項3】
前記バックカバーは、前記インナスキンと前記アウタスキンとの間の樹脂コア層を含むサンドイッチパネルから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のOLEDディスプレイ装置。
【請求項4】
前記インナスキンおよび前記アウタスキンは、鉄、アルミニウム、これらの組み合わせ、およびこれらの合金で構成される群から選択される素材から構成されることを特徴とする、請求項に記載のOLEDディスプレイ装置。
【請求項5】
前記アウタスキンのメイン部の外縁に重なり合う箇所の近傍にて、前記内層部の端面と前記アウタスキンの側壁部とがなす角度は、0.5度以上5度以下であることを特徴とする、請求項1に記載のOLEDディスプレイ装置。
【請求項6】
前記アウタスキンのメイン部の外縁に重なり合う箇所の近傍にて、前記内層部の端面と前記アウタスキンの側壁部とがなす角度は、1度以上3度以下であることを特徴とする、請求項1に記載のOLEDディスプレイ装置。
【請求項7】
前記OLEDパネルは、パネル固定テープによってバックカバーに貼り付けられて固定されることを特徴とする、請求項1または2に記載のOLEDディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACM(Aluminum Composite Material Panel)パネルなどのサンドイッチパネルを用いて、ディスプレイ装置に適用されるバックカバーを製作する方法、およびそれを用いたOLEDディスプレイ装置に関するものである。ここで、サンドイッチパネルは、樹脂コア層を、前面側及び背面側の金属シート(インナスキン及びアウタスキン)により、サンドイッチ状に挟み込んだ積層材シートである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light emitting diodes:OLED)は、正孔注入電極と、有機発光層と、電子注入電極とで構成され、有機発光層の内部で電子と正孔が結合して生成された励起子(exciton)が、励起状態から基底状態へ遷移する際に発生するエネルギーにより、発光が行われる。
【0003】
そのため、OLEDは、自発光特性を有し、液晶表示装置とは異なって別途の光源を必要としないため、その厚さと重量を減少させることができる。
【0004】
また、OLEDは、低消費電力、高輝度、及び高反応速度など、高品位の特性を示すことから、携帯用電子機器の次世代のディスプレイ装置と考えられている。
【0005】
一般的に、OLEDは、内部に有機発光層を含むOLEDパネルと、OLEDパネルに組付けられて、OLEDパネルを支持するバックカバーとを含み、バックカバーの背面にシステムボードが備えられる。
【0006】
一方、OLEDが作動する際、バックカバーの背面に備えられたシステムボードから発生する高い作動熱がOLEDパネルへ伝達され、OLEDパネルの有機発光層を劣化させることになるが、劣化した有機発光層は、変性および分解されて、画素間の輝度の偏差による残像など画質の低下や寿命の低下を引き起こす。
【0007】
そのため、バックカバーは、OLEDパネルを安定して支持すると同時に、作動熱を容易に排出できるように、剛性及び熱伝導率の高い素材で形成する必要がある。かかる条件を満たすため、最近は、アルミニウム複合材パネル(Aluminum Composite Material Panel)がバックカバーの素材に用いられている。
【0008】
ACMパネルは、アルミニウム素材のインナスキンおよびアウタスキン、並びに、両スキン間の樹脂コア層で構成され、その厚さの割に高い構造強度および放熱性能を有することから、バックカバーの素材として好適であるといえる。
【0009】
しかしながら、かかる従来のバックカバーの構成において、剛性を確保するためには、その分だけ大きな厚さが必要となり、それに伴い重量も増加することになるため、製品の減量化が難しいという問題があった。
【0010】
したがって、かかる問題を解決するため、バックカバーの外縁領域をベンディング形状とすることで、重量増大による問題が発生することなく、構造的に剛性が確保できるようにする技術が見出された。
【0011】
そして、かかるベンディング技術の1つとして、ACMパネルの両スキンと樹脂コア層を共にベンディングするのでなく、ベンディング形状とすべき外縁領域にてインナスキンおよび樹脂コア層を除去してから、アウタスキンのみをベンディングすることで、ベンディング作業の効率向上、バックカバーの重量減少、および剛性確保を同時に達成することができる剥離・折り曲げ(peeling and bending)方式が開発された。
【0012】
従来は、図1に示すように、ACMパネル10の縁部におけるインナスキン12と樹脂コア層16のみを、カッターを用いて所定の深さまで切削して除去してから、残されたアウタスキン14のみによる張り出し部は、金型を用いて特定の形にベンディングし、ベンディングされた先端をヘミングする方式で工程が進められた。
【0013】
ところが、このような従来の技術では、カッター5を用いて、ACMパネル10の最外側から内側へと進みながら、インナスキン12および樹脂コア層16を切削し、除去するので、求められるアウタスキン14のベンディング幅(上記の縁部の幅)が大きい場合は、その分、切削量が多くなり、作業に相当な時間がかかることになる。その結果、ディスプレイ装置の製作における生産性が低下する問題があった。
【0014】
また、従来の技術では、図2に示すように、アウタスキン14のみによる張り出し部の、ヘミングされた先端部と、この張り出し部より内側にある、残されたインナスキン12および樹脂コア層16の端面部分とが干渉しないように、アウタスキン14のベンディング部分と、残されたインナスキン12および樹脂コア層16との間隔を広く保たなければならない。そのため、結果的にバックカバーの構造的な剛性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2019-169789号公報
【文献】特開2020-072466号公報(KR10-2020-0048000A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述したような問題を解決するためのものであって、ミーリング加工方式でACMパネルにカッティングスロットを形成し、非ボンディング領域におけるインナスキンおよび樹脂コア層を容易に除去することができるACMパネルを用いたバックカバーを含むディスプレイ装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るACMパネルなどのサンドイッチパネルを用いたバックカバーの制作方法は、サンドイッチパネルの上面のインナスキン側において、ボンディング領域の端部に沿って、インナスキンおよび樹脂コア層に対応する深さを有するカッティングスロットを、ミーリング加工方式で形成する切削段階と、前記切削段階で形成されたカッティングスロットの外側の非ボンディング領域におけるインナスキンおよび樹脂コア層を除去し、アウタスキンのみを残すスクレイピング段階と、前記スクレイピング段階で残されたアウタスキンの一定部分をせん断して除去することで、必要な領域のみを残すトリミング段階と、前記トリミング段階で残されたアウタスキンをベンディングするベンディング段階と、前記ベンディング段階でベンディングされたアウタスキンの先端をヘミングして仕上げるヘミング段階とを含んでなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ミーリング加工方式でACMパネルなどのサンドイッチパネルにカッティングスロットを形成し、非ボンディング領域におけるインナスキンおよび樹脂コア層を容易に除去できるようにすることで、バックカバーのベンディング加工における効率が向上し、結果的にディスプレイ装置の生産性向上に役に立つというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の技術によって、ACMパネルのインナスキンおよび樹脂コア層を切削し、除去する工程を示す図である。
図2】従来の技術により、ACMパネルのアウタスキンをベンディングした状態を示す図である。
図3】本発明において、ACMパネルを切削し、カッティングスロットを形成する切削段階を示す全体図である。
図4】本発明において、ACMパネルを切削し、カッティングスロットを形成する切削段階を示す細部拡大図である。
図5】本発明において、ACMパネルの非ボンディング領域におけるインナスキンおよび樹脂コア層を除去するスクレイピング段階を示す細部拡大図である。
図6】本発明において、ACMパネルのアウタスキンの一部領域を除去するトリミング段階を示す細部拡大図である。
図7】本発明において、ACMパネルのアウタスキンをベンディングするベンディング段階を示す図である。
図8】本発明において、ACMパネルのアウタスキンをヘミングするヘミング段階を示す図である。
図9】本発明に係るOLEDディスプレイ装置の断面を示す図である。
図10】本発明において、インナスキンおよび樹脂コア層を傾斜するように切削する過程を示す図である。
図11】本発明において、インナスキンおよび樹脂コア層が切削された状態を示す図である。
図12】本発明において、アウタスキンをベンディングする過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付される図3ないし図12を参照し、本発明を実施するための具体的な内容について詳細に説明する。
【0021】
本発明に係るACMパネルなどのサンドイッチパネルを用いたバックカバー10の製作方法の工程を説明する前に、本発明に用いられるサンドイッチパネルは、その外縁から一定の幅で、樹脂コア層16とアウタスキン14とが接合されていない領域、すなわち、非ボンディング領域が形成されるものが好適であることを明らかにしておく(図4を参照)。
【0022】
本発明に係るACMパネルをなど用いたバックカバー10の製作方法は、次のような工程で行われる。
【0023】
1)ACMパネル(Aluminum Composite Material Panel)などのサンドイッチパネルに対して、その上面のインナスキン12側から、ボンディング領域の縁に沿って、その外側にて、インナスキン12および樹脂コア層16の全体に対応する深さを有するカッティングスロット10aを、ミーリング加工方式で形成する切削段階(図3図4を参照)。
【0024】
2)前記切削段階で形成されたカッティングスロット10aよりも外側の、非ボンディング領域に相当する箇所のインナスキン12および樹脂コア層16を除去することで、非ボンディング領域にアウタスキン14のみを残すようにするスクレイピング段階(図5を参照)。
【0025】
3)前記スクレイピング段階で非ボンディング領域に残されたアウタスキン14のみの張り出し部から、その外縁に沿った一定の幅の部分を、パンチ30でせん断して除去することで、必要な領域のみを残すようにするトリミング段階(図6を参照)。
【0026】
4)前記トリミング段階で残された、アウタスキン14のみのトリミング後の張り出し部について、その根元部(インナスキン12および樹脂コア層16の端面に近接した部分)を上方(前方)へとベンディングするベンディング段階(図7を参照)。
【0027】
5)前記ベンディング段階でベンディングされたアウタスキン14の張り出し部の先端部分(外縁部)141をヘミングすることで、仕上げを行うヘミング段階(図8を参照)。
【0028】
前記ベンディング段階では、前記アウタスキン14による張り出し部が、ボンディング領域におけるインナスキン12および樹脂コア層16の端面に近接した位置でベンディングされる。
【0029】
また、前記ヘミング段階では、アウタスキン14による張り出し部の先端部141が、パネル内側へと折り返されるか、またはカールする形にヘミングされる。
【0030】
このような本発明によると、アウタスキン14による張り出し部が、インナスキン12および樹脂コア層16の端面に近接してベンディングされることで、製作されたバックカバーの構造的な強度が、従来の技術に比べて格段に向上する。
【0031】
さらに、アウタスキン14による張り出し部が、インナスキン12および樹脂コア層16の端面に近接してベンディングされるにも関わらず、アウタスキン14による張り出し部の先端部141がパネル内側へと折り返される形もしくはカールする形にヘミングされるので、アウタスキン14による張り出し部の先端部と、インナスキン12の端面部分とが干渉しない。
【0032】
本発明において、前記切削段階では、エンドミル20を用いてカッティングスロット10aを形成する。
【0033】
したがって、本発明によると、エンドミル20を用いたミーリング加工方式でもってカッティングスロット10aを形成してから、前記カッティングスロット10aをベースにして、非ボンディング領域におけるインナスキン12および樹脂コア層16を除去することで、アウタスキン14による張り出し部としての、ベンディング用の外縁領域に該当する部分を容易に構成することができる。
【0034】
本発明に係るOLEDディスプレイ装置は、図9に示すように、OLEDパネル5と、前記OLEDパネル5の背面を覆って支持するバックカバー10と、前記OLEDパネル5をバックカバー10に貼り付けて固定するパネル固定テープ7とを含んで構成される。
【0035】
前記バックカバー10は、インナスキン12と、アウタスキン14と、これら(前記インナスキン12と前記アウタスキン14)の間に介在された樹脂コア層16とで構成されたACMパネル素材からなる。
【0036】
前記インナスキン12および前記アウタスキン14は、鉄、アルミニウム、これらの組み合わせ、およびこれらの合金で構成される群から選択される素材を含んでなる。
【0037】
前記アウタスキン14は、樹脂コア層16に接する平坦なメイン部141と、前記メイン部141から外側ないし前面側へと延長しつつベンディングされたベンディング部142と、前記ベンディング部142からさらに前面側へと延長された平坦な側壁部143と、前記側壁部143からさらに前面側へと延長されてからヘミングされたヘミング部144とで構成され、その厚さが、0.5mm~0.6mmであることが好ましい。なお、本願での「平坦」は、曲面ディスプレイのように、全体的に湾曲する場合なども含む。
【0038】
上記に説明した図8によると、前記アウタスキン14の平坦なメイン部141の外縁と、前記インナスキン12の端面121と、前記樹脂コア層16の端面161とは、平面図にて重なり合うように位置する。そして、前記アウタスキン14は、平坦なメイン部141の外縁に、屈曲するベンディング部142が直結している。その結果、前記側壁部143の内面は、前記インナスキン12の端面121と、前記樹脂コア層16の端面161とがなす、一つの連続した平面に対して、少なくとも部分的に接触するか、または、近接して配置される。
【0039】
一方、図9中に示す具体例によると、ベンディング部142の内側の湾曲面が、前記樹脂コア層16における端面161と背面との間の稜部をつかみ込んでいる。また、前記インナスキン12の端面121と、前記樹脂コア層16の端面161とがなす連続面は、上方(前方)に向かうにつれて、パネル内側へと向かうように傾斜している。
【0040】
このように、アウタスキン14の平坦なメイン部141の外縁に重なり合う箇所の近傍
にて、前記インナスキン12の端面121および前記樹脂コア層16の端面161と、前記アウタスキン14の側壁部143とがなす角度(θ)は、0度より大きい。具体的には、0.5度以上5度以下であることが好ましい。さらに好ましくは、1度以上3度以下であり得る。
【0041】
かかる本発明によると、アウタスキン14をベンディングする加工工程にて、ベンディング部142がスプリングバックする現象(塑性材料のベンディング加工で、材料をベンディングした後、圧力を除去すると、元に回復しようとする弾力が作用し、ベンディング量が減少する現象)が生じても、ベンディング角度(α;図9に示す、ベンディングの内角)は、90度を超えなくなる。
【0042】
一方、仮に、インナスキン12の端面121および樹脂コア層16の端面161が垂直に形成されたとすると、アウタスキン14のベンディング角度(α)もまた、ベンディング加工の工程中には正確に90度になるのであるが、ベンディングの後に生じるスプリングバック現象により、鈍角(90度以上)となる結果が生じ得る。しかも、この鈍角の角度は、一定でなく、ランダムに変動しうる。
【0043】
また、アウタスキン14のベンディング部141のベンディング角度(α)がランダムに鈍角になると、ヘミング加工の工程中に、アウタスキン14の側壁部がヘミングダイに密着しないことから、加工における精度が低下することとなるおそれがある。しかしながら、本発明によると、このような問題が発生しない。
【0044】
一方、前記インナスキン12の端面121および前記樹脂コア層16の端面161と、前記アウタスキン14の側壁部143とがなす角度(θ)が、0.5度より小さいと、スプリングバック現象が完全に相殺されないことから、アウタスキン14のベンディング角度(α)が鈍角となるおそれがあり、5度より大きいと、ベンディング角度(α)が過度に鋭角となって、製品の形状に不良が生じるおそれがある。
【0045】
最も好ましい角度を見つけるため、様々な角度をテストした結果、角度(θ)が1度、2度、及び3度である場合に、スプリングバック現象が最小化され、前記アウタスキン14のベンディング角度(α)が鈍角になる可能性が殆どなく、前記アウタスキン14のメイン部141と側壁部とが最終的に直交となる最適の製造工程を確保することができることが分かった。
【0046】
すなわち、前記アウタスキン14の厚さが0.5mmである場合、角度(θ)が1度以上3度以下の範囲で、非常に良い効果が得られることが分かった。
【0047】
本発明に係るOLEDディスプレイ装置の製作過程では、図10および図11に示すように、切削段階で、インナスキン12の端面121および樹脂コア層16の端面161が、垂直線に対して一定の角度だけ、上方(前方)に向かうにつれて内側に傾斜する形になるように加工される。
【0048】
ここで、インナスキン12の端面121および樹脂コア層16の端面161が、垂直線に対して一定の角度だけ内側に傾斜した形になるようにするためには、その下端部がテーパー状になっている、いわゆるテーパーエンドミル22を用いることができるのであり、前記テーパーエンドミル22のテーパー角度(θ1)は、前記インナスキン12の端面121および前記樹脂コア層16の端面161の傾斜角度(θ)と同一である。
【0049】
また、図12に示すように、ベンディング段階で使用されるベンディングダイ40としては、ベンディングされるアウタスキン14と接する面が、インナスキン12の端面および樹脂コア層16の端面161の傾斜角度(θ)に合致するように傾斜した角度(θ2)を有するものが用いられる。ベンディングプレス42もまた、ベンディングダイ40に対応する傾斜角度を有するものが用いられる。
【0050】
したがって、このように、インナスキン12の端面121および樹脂コア層16の端面161が、垂直線に対して一定の角度だけ内側に傾斜した形になるようにすると、前記ベンディング段階で、前記アウタスキン14のベンディング部141のベンディング角度(α)も90度より小さい鋭角となるようにすることができる。
【0051】
図9に示す具体例において、インナスキン12及び樹脂コア層16からなる内層部が、一つの平坦な端面をなすとして説明したが、場合によっては、湾曲しているか、または、階段状になっていても良い。また、例えば、樹脂コア層16の端面が、図9に示すような傾斜面をなすとともに、インナスキン12の端面が、ほぼ垂直に延びるのであっても良い。一方、樹脂コア層16の端面の下端部(外側の稜線部)は、図9に示す具体例にて、ベンディング部142の内面に食い込むものとして描かれているが、例えば、図8のように、アウタスキン14の外縁上に位置するのであっても良い。
【0052】
バックカバー10を構成するサンドイッチパネルは、好ましい具体例においてACMパネルであって、アウタスキン14及びインナスキン12を構成する金属シートが、アルミシートである。ここでのアルミシートは、通常、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)などとの合金から形成される。しかし、アウタスキン14及びインナスキン12を構成する金属シートは、ステンレス鋼板、ガルバリウム(登録商標)鋼板、マグネシウム合金シートなどであっても良い。金属シートの厚みは、アルミシートである場合に、0.4~0.6mmまたは0.5~0.6mmとすることができ、鋼板などである場合に、0.3~0.6mmまたは0.3~0.4mmとすることができる。
【0053】
サンドイッチパネルを構成する樹脂コア層16は、ポリエチレンなどのポリオレフィン、PET、ウレタンなどの樹脂から構成することができ、非発泡体であっても、発泡体であっても良い。サンドイッチパネルの厚みは、例えば2~8mmまたは3~7mmとすることができる。
【0054】
ボンディング領域及び非ボンディング領域は、例えば、特開2020-072466(特許文献2)に記載の方法により形成することができる。すなわち、ホットメルトシートなどの接着シートを、パネルの外縁部を除く箇所にのみ配置することにより、パネルの外縁部にて非ボンディング領域を形成することができる。
【0055】
パネル固定テープは、好ましい具体例において、両面接着テープであり、図9のように、パネルの周縁から離間した箇所にて、パネルの周縁に沿って線状に延びるように配置することができる。しかし、全面に、または島状に配置しても良い。また、パネル固定テープは、例えば、ホットメルトシートなどであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
5…OLEDパネル、10… バックカバー、12…インナスキン、14…アウタスキン、141…メイン部、142…ベンディング部、143…側壁部、144…ヘミング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12