(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】熱間ストリップ圧延ライン内における熱間成形の際に、鋼ストリップの温度を、開ループ制御または閉ループ制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B21B 37/74 20060101AFI20240819BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20240819BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20240819BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240819BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B21B37/74 A
G05B11/36 505Z
C21D8/02 A
C22C38/00 301W
C22C38/00 301A
C22C38/04
(21)【出願番号】P 2022566410
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2021057720
(87)【国際公開番号】W WO2021223937
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102020205655.2
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ハセル・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュプロック・アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】グリーベル・カーイ
(72)【発明者】
【氏名】ブシュホフ・グイード
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508336(JP,A)
【文献】特表2015-515543(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047023(WO,A1)
【文献】特表2017-512905(JP,A)
【文献】特開平06-246331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/74
G05B 11/36
C21D 8/02
C22C 38/00
C22C 38/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
dv≧1mmとdv≦300mmとの間の厚さを有する粗製品から、
熱間ストリップ圧延ライン内において、T
H≧30℃からT
H≦750℃まで、またはT
H≧400℃からT
H≦750℃までの目標巻き取り機温度と、d
WB≦25mmの熱間ストリップ厚さと、b
WB≧900mmとb
WB≦2100mmとの間の熱間ストリップ幅とを有する熱間ストリップへの熱間成形の際に、
重量%において、
最小 最大
C 0 1
Mn 0 2.5
の合金元素を有する鋼ストリップの温度を、開ループ制御または閉ループ制御するための方法であって、
前記熱間ストリップ圧延ラインが、
前記粗製品の加熱及び/または温度均一化のための少なくとも1つの炉と、
前記粗製品の熱間圧延のための少なくとも1つの圧延スタンドと、
成形の後の前記熱間ストリップの合目的な冷却のための冷却区間と、並びに、
コイルへの前記熱間ストリップの巻き取りのための巻き取り機とを有しており、
その際、それぞれの個々の機構ユニットが、固有の閉ループ制御装置または開ループ制御装置を、予め与えられた目標値のために有している前記方法において、
- 熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルが、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値を、前記機構ユニットの少なくとも2つの閉ループ制御装置または開ループ制御装置と、オンラインでやり取り及び/または記憶し;
- 前記上位のプロセスモデルが、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定し;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出し、並びに、前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標値プリセットを維持するために、前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡し;および、
- 前記新しい目標値プリセットの前記検出が、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
- 前記粗製品は、鋳造機械からの、d
B≧50mmからd
B≦160mmまでの厚さを有するスラブであり;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、
前記スラブの、v
G≧4m/minとv
G≦6m/minとの間、またはv
G≧5m/minとv
G≦6m/minとの間の鋳造速度と、T
GE≧800℃の鋳造機械走出温度とを、目標プリセットの決定の際に考慮すること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最適化の目標は、エネルギー消費量、生産量、プロセス信頼性、製品特性、生産コスト、及び/または、設備摩耗を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
下位のプロセスモデルは、前記熱間ストリップ圧延ライン内における前記鋼ストリップの組織成長を、少なくとも1つの点のために、前記熱間ストリップの巻き取りの前に決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記熱間成形の際に、粗圧延スタンドと仕上げ圧延スタンドとが使用されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記仕上げ圧延スタンド内への走入温度の前記目標値のために、
T
FS=850℃からT
FS=1050℃まで、またはT
FS=900℃からT
FS=1000℃まで、またはT
FS=900℃からT
FS=950℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記仕上げ圧延スタンドからの走出温度の前記目標値のために、
T
FS≧750℃からT
FS≦950℃まで内、または、T
FS≧750℃からT
FS≦900℃まで内、または、T
FS≧800℃からT
FS≦850℃まで内の温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる
ことを特徴とする請求項5から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記仕上げ圧延スタンド内への走入速度の前記目標値のために、
v
F≧0.4m/sからv
F≦1m/sまでの速度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項5から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記粗圧延スタンド内への前記走入温度の前記目標値のために、
T
VS≧1000℃からT
VS≦1150℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記粗圧延スタンドからの前記走出温度の前記目標値のために、
T
VE≧950℃からT
VE≦1100℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記仕上げ圧延スタンド内への走入厚さの前記目標値のために、
d
FS≧20mmからd
FS≦70mmまで内の目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項5から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記巻き取り機温度の前記目標値のために、
T
H≧30℃からT
H≦750℃まで、またはT
H≧450℃からT
H≦550℃までの目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記鋼ストリップ内において、
前記合金元素Cは、0.03重量%から0.15重量%までの含有量に、及び/または、Mnが、0.50重量%から2.00重量%までの含有量に制限されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
最適化された前記目標値プリセットは、同じ生産目標、または機械的
な特性を有する、後続の熱間ストリップの製造のために使用されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一つに従う方法による、鋼ストリップの前記温度を前記開ループ制御または閉ループ制御するための装置において、
- 前記熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルによって、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値が、前記機構ユニットの少なくとも2つの開ループ制御装置または閉ループ制御装置と、オンラインでやり取り可能及び/または記憶可能であり;
- 前記上位のプロセスモデルが、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定可能であり;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、それぞれの前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出し、並びに、前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標値プリセットを維持するために、それぞれの前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡し;および、
- 前記新しい目標値プリセットの前記検出が、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間ストリップ圧延ライン内における熱間成形の際に、鋼ストリップの温度を、開ループ制御または閉ループ制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼ストリップの熱間成形は、通常、熱間ストリップ圧延ライン内において行われる。この熱間ストリップ圧延ラインは、異なる個々の機構ユニット、例えば、炉、圧延スタンド、駆動部、鋼ストリップの巻き出し装置および巻き取り装置、または、冷却区間から成っている。
この様式の機構ユニットの開ループ制御もしくは閉ループ制御のために、多数の異なる装置または方法が公知である。これら開ループ制御もしくは閉ループ制御は、基本的に、目標値-現在値比較、および、目標値の維持のための相応する補正処置の導出を基礎としている。その際、維持されるべき目標値は、経験知識及び/または先行するプロセス分析を基礎として規定される。
更に、通常、先立って、鋼ストリップの製品特性と機構ユニットの調節されるべき目標値との間の関連が形成される。通常、鋼ストリップの製造の際に、極めて異なった目標値と達成しようとされるべき製品特性との間の複合的な関連が与えられている。
【0003】
設備技術の増大するデジタル化によって、所望される製品特性を誘起する適当な目標値の展開のために、機構ユニットに関連付けられたプロセスモデルが使用される。データの状態、関連の複雑性、及び/または、手間暇に依存して、この目的のために、例えば、統計的なモデル、分析的なモデル、または、ニューロンのネットワークが、これら機構ユニットに関連付けられたプロセスモデルのために使用される。
【0004】
複数の機構ユニットを有する熱間ストリップ圧延ラインのためのこの様式の制御コンセプトにおいて、異なる機構ユニットを介しての目標値プリセット、または、実際値の変化の際の相互作用が、機構ユニットに関連付けられたプロセスモデル、及び/または、機構ユニットの開ループ制御装置もしくは閉ループ制御装置によってマッピング(abgebildet)されないことは欠点である。
特に、材料品質等級に対する高い要求を有する鋼ストリップの製造の際に、時間、温度、組織成長の複雑な相互作用、および、これらによるほぼ静力学的な個別機構ユニット制御は、困難に最適化され得る。
【0005】
更に、熱間ストリップ圧延ラインの個別機構ユニットの開ループ制御装置もしくは閉ループ制御装置は、個別機構ユニットのプロセスガイドの最適化が、常に、必ずしも全ての製造プロセスの最適化を誘起しない、という趣旨で欠点である。特に、例えば連続鋳造設備を有する組み合わせられた設備内において、より動力学的なプロセスガイドによって、エネルギーコストおよび製造コストは節約され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、熱間ストリップ圧延ラインの公知の開ループ制御装置もしくは閉ループ制御装置を、設備支配的に、個別機構ユニットのための目標値プリセットが、例えば鋼ストリップの製品特性を考慮して最適化される、という趣旨で、更に発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルは、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値を、前記機構ユニットの少なくとも2つの閉ループ制御装置または開ループ制御装置と、オンラインで記憶及び/またはやり取りする。
前記上位のプロセスモデルは、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、例えば炉の温度モデル、冷却区間の温度モデルまたは熱間ストリップ圧延ライン内における成形のモデルのような下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定する。
前記上位のプロセスモデルは、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出し、前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標値プリセットを維持するために、この目標値プリセットを、前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡す。
前記新しい目標値プリセットの前記検出は、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる。
【発明の効果】
【0008】
上位のプロセスモデルは、機構ユニットの目標値及び/または実際値を基礎として、鋼ストリップの現在の生産状態をマッピングする。
例えば、均質化炉のためのエネルギー収支バランスおよび物質収支バランス、または、鋼ストリップのこの鋼ストリップの組織成長のための統計的なモデルのような、適当なプロセスモデルによって、上位のプロセスモデルは、将来における例えば巻き取りの前の温度経過の展開(Entwicklung)を決定する。このことによって、この個別機構ユニットのための目標値プリセットと、可能な偏差との間の相違は、早期に認識可能である。
上位の最適化モデル内において進行する最適化アルゴリズムは、目標値プリセットを、巻き取りの前の熱間ストリップの目標値プリセットが、先立って確定された最適化の目標の考慮のもとで達成される、という趣旨で最適化可能である。
先立って確定された最適化の目標が、例えば、生産目標、特にエネルギー量、生産量または品質目標、であることは可能である。
【0009】
この方法の有利な特徴は、請求項2から14までの特徴内において具現されている。
請求項2に従い、前記粗製品が、鋳造機械からの、dB≧1mmからdB≦300mmまでの、有利にはdB≧50mmからdB≦160mmまでの厚さを有するスラブであること;および、
前記上位のプロセスモデルが、
前記スラブの、有利にはvG≧4m/minとvG≦6m/minとの間、更に有利にはvG≧5m/minとvG≦6m/minとの間の鋳造速度と、有利にはTGE≧800℃の鋳造機械走出温度とを、目標プリセットの決定の際に考慮することは有利である。
【0010】
有利には、請求項3に従い、最適化の目標は、エネルギー消費量、生産量、プロセス信頼性、製品特性、生産コスト、及び/または、設備摩耗を含み、これら目標が、鋼製造領域内における有利な案内量である。
【0011】
更に、請求項4に従い、下位のプロセスモデルが、前記熱間ストリップ圧延ライン内における前記鋼ストリップの組織成長を、少なくとも1つの点のために、有利には前記熱間ストリップの巻き取りの前に決定する場合、有利である。
最適化された温度管理と並んで、この最適化された温度管理から結果として生じる組織成長は、鋼ストリップの更に別の材料特性及び/または加工のために重要である。プロセス経過内における、組織成長のより正確な開ループ制御もしくは閉ループ制御は、早期に偏差に対して応動すること、および、粗悪品量及び/または後処理を低減することを可能にする。
【0012】
前記熱間成形の際に、請求項5に従い、模範的に、粗圧延スタンドと仕上げ圧延スタンドとが使用される。
粗圧延スタンドおよび仕上げ圧延スタンドへの熱間成形の分割によって、有利な温度分布および温度順序が調節され得、且つ、これら温度分布および温度順序が、同様に測定点および調節点のより多い数によっても、より良好にマッピングされ得る。このことによって、上位のプロセスモデルは、より良好に、偏差に対して応動可能である。
更に、このことによって、熱間圧延の目標値プリセットへの介入のための複数の可能性が与えられている。
【0013】
請求項6および7に従い、前記仕上げ圧延スタンド内への走入温度の前記目標値のために、
TFS≧850℃からTFS≦1050℃まで、有利にはTFS≧900℃からTFS≦1000℃まで、更に有利にはTFS≧900℃からTFS≦950℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることは有利である。
更に、前記仕上げ圧延スタンドからの走出温度の前記目標値のために、
TFS≧750℃からTFS≦950℃まで内、有利には、TFS≧750℃からTFS≦900℃まで内、更に有利には、TFS≧800℃からTFS≦850℃まで内の温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる場合、有利である。
【0014】
前記仕上げ圧延スタンド内への走入速度の前記目標値のために、請求項8に従い、有利には、vF≧0.4m/sからvF≦1m/sまでの速度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる。
【0015】
請求項9および10に従い、前記粗圧延スタンド内への前記走入温度の前記目標値のために、
TVS≧1000℃からTVS≦1150℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる。
前記粗圧延スタンドからの前記走出温度のための前記目標値は、前記上位のプロセスモデルによって、TVE≧950℃からTVE≦1100℃までの温度範囲内において予め与えられる。
【0016】
模範的に、請求項11および12に従い、前記仕上げ圧延スタンド内への走入厚さの前記目標値のために、
dFS≧20mmからdFS≦70mmまでの目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる。
前記巻き取り機温度の前記目標値は、有利には、前記上位のプロセスモデルによって、
TH≧30℃からTH≦750℃まで、更に有利にはTH≧450℃からTH≦550℃までの範囲内において予め与えられる。
【0017】
請求項13に従い、前記鋼ストリップ内において、
前記合金元素Cが、0.03重量%から0.15重量%までの含有量に、及び/または、マンガンが、0.50重量%から2.00重量%までの含有量に制限されている場合、有利である。
【0018】
請求項14に従い、最適化された前記目標値プリセットが、同じ生産目標、特に機械的な前記特性を有する後続の熱間ストリップの製造のために使用される場合、有利である。このことによって、それらプロセス経過が相応する目標値プリセットによって記述されている、既に存在する最適化された該プロセス経過は、同じ材料または鋼ストリップタイプの更なる生産に適用され得る。このことは、最適化時間を節約し、且つ、緩慢に進行する設備変更に対して先立って応動することを可能にする。
【0019】
有利には、請求項15に従い、前記熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルが、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値を、前記機構ユニットの少なくとも2つの閉ループ制御装置または開ループ制御装置と、オンラインでやり取り可能及び/または記憶可能である。
前記上位のプロセスモデルは、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定し、および、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、それぞれの前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出する。
前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標値プリセットを維持するために、この新しい目標値プリセットは、それぞれの前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡される。
その際、前記新しい目標値プリセットの前記検出が、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる。
【0020】
本発明に従う方法を、以下で、実施例に形態での上記の図との関連のもとで、詳細に説明する。全ての図内において、同じ技術的な要素は、同じ参照符号でもって示されている。
【0021】
この明細書に、以下の3つの図が添付されている:
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】熱間ストリップ圧延ラインの設備概要図である。
【
図2】上位のプロセスモデルを有する閉ループ制御装置の概要図である。
【
図3】温度経過、目標値、実際値の比較の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、熱間ストリップの製造のための熱間ストリップ圧延ラインの可能な設備概要図を示しており、この設備概要図において、本発明に従う方法が使用される。
この熱間ストリップ圧延ラインは、鋳造設備1と、2つのせん断機2、10と、2つの炉3、6と、2つの粗圧延スタンド4と、移送可能冷却装置5と、誘導加熱装置7と、3つの仕上げ圧延スタンド8と、冷却区間9と、および、熱間ストリップの巻き取りのための巻き取り機11とから成っている。
上位のデータ処理システム12は、統合された温度モデルと組織モデルとを有している。目標値と実際値とは、異なる設備、もしくは、割り当てられた閉ループ制御装置、開ループ制御装置、及び/または、測定装置とやり取りされ、且つ、例えばデータベースの形態で記憶される。
【0024】
図2は、例示的なネットワーキングを有するフローチャートを図示している。2つの機構ユニット、もしくは、それぞれのプロセスモデルを有する2つの機構ユニットの閉ループ制御装置を図示している。
上位のデータ処理システムIは、目標値を、熱間ストリップ圧延ラインの上位のプロセスモデルIIに引き渡す。これら目標値、例えば強度から、上位のプロセスモデルIIは、例えばそれぞれに最小と最大温度とを有する温度経過の複数の目標値または目標値範囲を検出し、これら複数の目標値または目標値範囲が、下位のプロセスモデルIIIa、bに引き渡される。
これら下位のプロセスモデルIIIa、bは、このことから、それぞれの機構ユニットのための特有の目標値を導き出す。例えば、割り当てられた時点を有する予め与えられた温度曲線から、炉3内における燃焼器開ループ制御のための目標プリセット、または、冷却区間9内における水量の開ループ制御のための目標プリセットが導き出される。
これら目標プリセットは、それぞれの機構ユニットの相応する閉ループ制御装置に転送される。
【0025】
機構ユニット内におけるこれら値が到達されない場合、下位のプロセスモデルIIIa、bは、目標プリセットを適合可能である。同様に、ここで、同様に自己学習的なアルゴリズム用いての下位のプロセスモデルIIIa、bの自動的な最適化も行われ得る。
目標-実際量が、上位のプロセスモデルIIの目標値プリセットVから逸脱する場合、上位のレベルIIで目標値が新たに計算され、且つ、場合によっては適合される。
【0026】
図3は、目標温度経過Bと、測定された並びに予め計算された温度経過Aとを有するグラフを示している。目標温度経過Bは、鋳造設備1の終端でもって開始し、且つ、巻き取り機11に至るまでの経過を描く。実際値は、鋳造設備1の終端から、粗圧延スタンド4に至るまで誇張されている。その際、測定された温度は、目標温度の上方にある。
上位のプロセスモデルIIは、この点から、熱間ストリップ圧延ライン内における異なる位置における温度を予め計算する。温度偏差を修正するために、この温度曲線を基礎として、異なる位置において、異なる目標値が新たに予め与えられ得る。その際、最良な適合手法を決定するために、異なるプロセスモデル、材料モデル、もしくは、組織モデル、及び/または、最適化アルゴリズムが使用され得る。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. dv≧1mmとdv≦300mmとの間の厚さを有する粗製品から、
熱間ストリップ圧延ライン内において、T
H
≧30℃からT
H
≦750℃まで、特にT
H
≧400℃からT
H
≦750℃までの目標巻き取り機温度と、d
WB
≦25mmの熱間ストリップ厚さと、b
WB
≧900mmとb
WB
≦2100mmとの間の熱間ストリップ幅とを有する熱間ストリップへの熱間成形の際に、
重量%において、
最小 最大
C 0 1
Mn 0 2.5
の合金元素を有する鋼ストリップの温度を、開ループ制御または閉ループ制御するための方法であって、
前記熱間ストリップ圧延ラインが、
前記粗製品の加熱及び/または温度均一化のための少なくとも1つの炉と、
前記粗製品の熱間圧延のための少なくとも1つの圧延スタンドと、
成形の後の前記熱間ストリップの合目的な冷却のための冷却区間と、並びに、
コイルへの前記熱間ストリップの巻き取りのための巻き取り機とを有しており、
その際、それぞれの個々の機構ユニットが、固有の閉ループ制御装置または開ループ制御装置を、予め与えられた目標値のために有している前記方法において、
- 熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルが、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値を、前記機構ユニットの少なくとも2つの閉ループ制御装置または開ループ制御装置と、オンラインでやり取り及び/または記憶し;
- 前記上位のプロセスモデルが、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定し;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出し、並びに、前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標プリセットを維持するために、前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡し;および、
- 前記新しい目標値プリセットの前記検出が、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる、
ことを特徴とする方法。
2. - 前記粗製品は、鋳造機械からの、d
B
≧50mmからd
B
≦160mmまでの厚さを有するスラブであり;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、
前記スラブの、有利にはv
G
≧4m/minとv
G
≦6m/minとの間、更に有利にはv
G
≧5m/minとv
G
≦6m/minとの間の鋳造速度と、有利にはT
GE
≧800℃の鋳造機械走出温度とを、目標プリセットの決定の際に考慮すること、
を特徴とする上記1に記載の方法。
3. 前記最適化の目標は、前記エネルギー消費量、前記生産量、前記プロセス信頼性、製品特性、生産コスト、及び/または、設備摩耗を含むことを特徴とする上記1または2に記載の方法。
4. 下位のプロセスモデルは、前記熱間ストリップ圧延ライン内における前記鋼ストリップの組織成長を、少なくとも1つの点のために、有利には前記熱間ストリップの巻き取りの前に決定することを特徴とする上記1から3のいずれか一つに記載の方法。
5. 前記熱間成形の際に、粗圧延スタンドと仕上げ圧延スタンドとが使用されることを特徴とする上記1から4のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記仕上げ圧延スタンド内への前記走入温度の前記目標値のために、
T
FS
=850℃からT
FS
=1050℃まで、有利にはT
FS
=900℃からT
FS
=1000℃まで、更に有利にはT
FS
=900℃からT
FS
=950℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記5に記載の方法。
7. 前記仕上げ圧延スタンドからの前記走出温度の前記目標値のために、
T
FS
≧750℃からT
FS
≦950℃まで内、有利には、T
FS
≧750℃からT
FS
≦900℃まで内、更に有利には、T
FS
≧800℃からT
FS
≦850℃まで内の温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられる
ことを特徴とする上記5から6のいずれか一つに記載の方法。
8. 前記仕上げ圧延スタンド内への前記走入速度の前記目標値のために、
v
F
≧0.4m/sからv
F
≦1m/sまでの速度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記5から7のいずれか一つに記載の方法。
9. 前記粗圧延スタンド内への前記走入温度の前記目標値のために、
T
VS
≧1000℃からT
VS
≦1150℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記5から8のいずれか一つに記載の方法。
10. 前記粗圧延スタンドからの前記走出温度の前記目標値のために、
T
VE
≧950℃からT
VE
≦1100℃までの温度目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記5から9のいずれか一つに記載の方法。
11. 前記仕上げ圧延スタンド内への前記走入厚さの前記目標値のために、
d
FS
≧20mmからd
FS
≦70mmまで内の目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記5から10のいずれか一つに記載の方法。
12. 前記巻き取り機温度の前記目標値のために、
T
H
≧30℃からT
H
≦750℃まで、有利にはT
H
≧450℃からT
H
≦550℃までの目標値が、前記上位のプロセスモデルによって予め与えられることを特徴とする上記1から11のいずれか一つに記載の方法。
13. 前記鋼ストリップ内において、
前記合金元素Cは、0.03重量%から0.15重量%までの含有量に、及び/または、Mnが、0.50重量%から2.00重量%までの含有量に制限されていることを特徴とする上記1から12のいずれか一つに記載の方法。
14. 最適化された前記目標値プリセットは、同じ生産目標、特に機械的な前記特性を有する、後続の熱間ストリップの製造のために使用されることを特徴とする上記1から13のいずれか一つに記載の方法。
15. 上記1から14のいずれか一つに従う方法による、鋼ストリップの前記温度を前記開ループ制御または閉ループ制御するための装置において、
- 前記熱間ストリップ圧延ラインに割り当てられたデータ処理システム上で、上位のプロセスモデルによって、時間、速度、温度、冷却レート、及び/または、加熱レートを有する、目標値及び/または実際値が、前記機構ユニットの少なくとも2つの開ループ制御装置または閉ループ制御装置と、オンラインでやり取り可能及び/または記憶可能であり;
- 前記上位のプロセスモデルが、やり取りされた目標値及び/または実際値及び/または記憶された値を基礎として、および、下位のプロセスモデルを用いて、前記鋼ストリップの前記温度を、前記熱間ストリップの巻き取りの前の少なくとも1つの点のためにオンラインで予め決定可能であり;および、
- 前記上位のプロセスモデルが、この点における目標値プリセットからの予め決定された前記温度の偏差の際に、それぞれの前記機構ユニットの新しい目標値プリセットを検出し、並びに、前記鋼ストリップの前記温度のための前記目標プリセットを維持するために、それぞれの前記機構ユニットの閉ループ制御装置または開ループ制御装置に引き渡し;および、
- 前記新しい目標値プリセットの前記検出が、少なくとも1つの下位のプロセスモデルを含む最適化アルゴリズムを用いて行われる、
ことを特徴とする装置。
【符号の説明】
【0027】
1 鋳造設備
2 せん断機
3 炉
4 粗圧延スタンド
5 移送可能冷却装置
6 炉
7 誘導加熱装置
8 仕上げ圧延スタンド
9 冷却区間
10 せん断機
11 巻き取り機
12 温度モデルおよび組織モデル
I データ処理システム
II 上位のプロセスモデル
IIIa、b 下位のプロセスモデル
IVa、b 機構ユニットの閉ループ制御
V 目標値プリセット
A 実際値曲線、もしくは、予め計算された経過
A4 粗圧延スタンドの実際温度
B 目標値曲線