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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】飼育装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020052445
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151190
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 重和
(72)【発明者】
【氏名】村田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇人
(72)【発明者】
【氏名】三戸 太郎
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3208272(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0246591(US,A1)
【文献】米国特許第06561125(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の飼育に用いる飼育装置であって、
箱状の飼育ケースと、
前記飼育ケースに保持されて、飼育する前記生物が止まることが可能な少なくとも一つの止まり部材と
前記飼育ケース内に設けられた引離部材であって、前記止まり部材に沿って移動させることで前記止まり部材に止まっている前記生物を前記止まり部材から引き離すことができる前記引離部材と、
を備える、
飼育装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飼育装置であって、
前記引離部材は、前記引離部材と前記止まり部材との隙間を塞ぐシール部材を有する、
飼育装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飼育装置であって、
前記引離部材は、前記生物を飼育するときに位置させる飼育位置と、前記生物を収集するときに位置させる収集位置との間を往復移動させる移動手段を有する、
飼育装置。
【請求項4】
請求項3に記載の飼育装置であって、
前記移動手段は、前記飼育位置において折り畳み可能な棒状部材である、
飼育装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の飼育装置であって、
前記飼育装置は、前記飼育ケース内の空間の底部に配置されたベルトコンベアを有する、
飼育装置。
【請求項6】
請求項5に記載の飼育装置であって、
前記ベルトコンベアのベルトは、内部に水を保持でき、保持した水を前記生物に給水可能な給水部材を有する、
飼育装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の飼育に用いる飼育装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物を生育に適した環境で飼育するために、生物が飼育される飼育容器内には様々なものが設けられている。生物として、例えば昆虫とするが、例えば、特許文献1には、立方体構造の飼育容器内でコオロギを飼育するコオロギ用の飼育装置が記載されている。そして、特許文献1には、コオロギに水を与えるために、水を含んだ脱脂綿が置かれた容器を飼育容器内に設けることや、コオロギが物陰に隠れることができるように、軽く丸められた新聞紙を多数飼育容器内に設けること等が、記載されている。この様に、従来、コオロギの飼育や繁殖はもっぱら手作業で行われてきており、衛生管理にも手間と時間がかかるため、コオロギの高密度飼育や飼育規模の大規模化を図って飼育することは、大きな手間と大きな時間がかかるため、容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-191834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の飼育装置内のコオロギを収集するためには、飼育容器内に設けられた様々なものと、コオロギとを分けるための手間と時間がかかる。すなわち、特許文献1に記載の飼育装置では、飼育容器内に設けられた多数の軽く丸められた新聞紙に対して、丸められた新聞紙の内部に隠れているコオロギがいる場合や、しがみついているコオロギがいる場合がある。このため、特許文献1に記載の飼育装置において、コオロギを収集するときには、多数の丸められた新聞紙一つ一つに対して、丸められた新聞紙の内部にコオロギが隠れているか否かを確認する手間や、丸められた新聞紙にしがみついているコオロギを新聞紙から引き離す手間などがかかる。これらの手間と時間により、特許文献1に記載の飼育装置では、コオロギを収集するための手間と時間がかかる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、生物を生育に適した環境で飼育することが可能であるとともに、飼育した生物を取集することをより容易にする飼育装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、生物の飼育に用いる飼育装置であって、箱状の飼育ケースと、前記飼育ケースに保持されて、飼育する前記生物が止まることが可能な少なくとも一つの止まり部材と前記止まり部材に止まっている前記生物を、前記止まり部材に沿って移動させるに伴い前記止まり部材から引き離すことができる、前記飼育ケース内に設けられた引離部材と、を備える、飼育装置である。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る飼育装置であって、前記引離部材は、前記引離部材と前記止まり部材との隙間を塞ぐシール部材を有する、飼育装置である。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る、飼育装置であって、前記引離部材は、前記生物を飼育するときに位置させる飼育位置と、前記生物を収集するときに位置させる収集位置との間を往復移動させる移動手段を有する、飼育装置である。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る飼育装置であって、前記移動手段は、前記飼育位置において折り畳み可能な棒状部材である、飼育装置である。
【0010】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明から第4の発明のいずれか1つに係る飼育装置であって、前記飼育装置は、前記飼育ケース内の空間の底部に配置されたベルトコンベアを有する、飼育装置である。
【0011】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係る飼育装置であって、前記ベルトコンベアのベルトは、内部に水を保持でき、保持した水を前記生物に給水可能な給水部材を有する、飼育装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、飼育装置は、止まり部材および引離部材を備えている。飼育ケース内で飼育されている生物は、移動して止まり部材に止まることができる。この様に、生物が止まり部材に止まることが出来ることにより、飼育装置は、生物をより生育に適した環境で飼育することが可能である。また、引離部材を止まり部材に沿って移動させることで、止まり部材に止まっている生物を止まり部材から引き離すことができる。これにより、飼育した生物を取集することがより容易となる。従って、飼育装置は、生物を生育に適した環境で飼育することが可能であるとともに、飼育した生物を取集することをより容易にする。
【0013】
第2の発明によれば、飼育装置は、引離部材と止まり部材との隙間を塞ぐシール部材を有する。シール部材により、引離部材と止まり部材との隙間を生物が通りぬけることが抑止される。従って、シール部材を有することにより、引離部材を止まり部材に沿って移動させることで、止まり部材に止まっている生物を、止まり部材から引き離す際に、より確実に引き離すことができる。
【0014】
第3の発明によれば、引離部材は、生物を飼育するときに位置させる飼育位置と、生物を収集するときに位置させる収集位置との間を往復移動させる移動手段を有する。移動手段を設けることにより、引離部材を止まり部材に沿って移動させることがより容易となるため、止まり部材に止まっている生物を止まり部材から引き離すことがより容易となる。
【0015】
第4の発明によれば、移動手段は、飼育位置において折り畳み可能な棒状部材である。これにより、引離部材を移動させることがより確実に容易になる。また、棒状部材を折りたたむことにより、移動手段が飼育ケースから真っすぐに突出して嵩張ることを抑制できる。
【0016】
第5の発明によれば、飼育装置は、飼育ケースの空間の底部に配置されたベルトコンベアを有する。ベルトコンベアにより、飼育ケース内の空間の底部に堆積した堆積物(例えば、糞、抜け殻、死骸、食べ残しの餌等)をより容易に飼育ケース内から外へ排出できる。
【0017】
第6の発明によれば、飼育装置は、ベルトコンベアのベルトに、内部に水を保持でき、保持した水を生物に給水可能な給水部材を有する。これにより、給水部材を用いさえすれば生物に給水できる。従って、生物へ水を与えることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る飼育装置の概略斜視図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3図2におけるIII-III断面図である。
図4図3におけるIV部の拡大図である。
図5】実施形態に係る飼育装置の使用方法を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る飼育装置における飼育ケースの要部の概略斜視図である。
図7】実施形態に係る飼育装置の使用方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態の飼育装置1について、図面を用いて説明する。実施形態の飼育装置1は生物の飼育に用いる飼育装置である。飼育する対象の生物は、地上で移動できる動物が好ましく、さらに、動物のサイズの観点から、地上で移動できる昆虫が特に好ましく、飼育装置1を昆虫用の飼育装置とすることができる。本実施形態では、飼育する対象の生物を、生物の一つの例として、昆虫の一種である、フタホシコオロギ、ヨーロッパイエコオロギ等のコオロギとし、図中および以下の説明において「コオロギ500」と記載する。
【0020】
実施形態の飼育装置1は、図1に示すように、内部に生物を飼育する箱状の飼育ケース10や、飼育ケース10の底部に配置されたベルトコンベア30や、ベルトコンベア30のベルト32に巻かれた帯状の給水帯41等を備えている。なお、図中および以下の説明に記載されている、前後方向、左右方向、上下方向は、すべて次の方向を示している。すなわち、上下方向は鉛直上方に向かう方向及び下方に向かう方向を示している。また、前方とは、図1に示すように、ベルトコンベア30のベルト32を横断する方向のうち、ベルト32上の給水帯41がある側からない側へ向かう方向を示し、後方とは、前方の反対方向を示している。左右方向は、これらの前後方向および上下方向を基準にして定めた左右方向を示している。
【0021】
●[実施形態の飼育装置1の構成(図1~6)]
まず、図1図6を用いて、本発明に係る実施形態の飼育装置1の構成について説明する。図1は飼育装置1の概略斜視図である。図2図1におけるII-II断面図である。図3図2におけるIII-III断面図である。図4図3におけるIV部の拡大図であり、図5は飼育装置1の使用方法を説明する説明図であり、飼育装置1の概略断面図である。図6は飼育装置1における飼育ケース10の要部の概略斜視図である。
【0022】
飼育装置1は、図1および図2に示すように、飼育ケース10、ベルトコンベア30、ハウジング50(図1には2点鎖線で示した)等を備えている。ここで、飼育ケース10、ベルトコンベア30等は、これらを囲うハウジング50に保持されている。飼育ケース10は、ベルトコンベア30のベルト32の上に設けられている。図2に示すように、飼育ケース10は内部にコオロギ500(生物)が飼育され、底部が開口している。飼育ケース10の底部の開口は、ベルトコンベア30のベルト32によって塞がれている。
【0023】
飼育ケース10は、図1に示すように箱状に形成されており、上面を閉鎖する天井部11と、側面を囲う側壁部12と、を有している。上記の様に側壁部12に囲まれた飼育ケース10の底部は開口しており、ベルトコンベア30のベルト32によって塞がれている。すなわち、図2に示すように、ベルトコンベア30のベルト32の一部は、飼育ケース10の床面13となっている。また、図2に示すように、飼育ケース10の内部には、天井部11に上端部が保持された複数の止まり部材21と、止まり部材21が挿通された止まり部材貫通孔22Aを有して止まり部材21に沿って移動させることができる引離部材22とが設けられている。なお、飼育ケース10は、例えば、樹脂で形成する。飼育ケース10は、例えば、高さは約400[mm]であり、左右方向の幅は約700[mm]であり、前後方向の奥行は約400[mm]である。
【0024】
天井部11は、図1および図2に示すように、側壁部12の上に置かれた2枚の板状の天井板111を備えている。それぞれの天井板111は、2つの取手111A(図1参照)と、2つの棒状部材挿通孔111B(図2参照)と、2つの棒状部材保持部111Cと、を備えている。また、それぞれの天井板111は、図2に示すように、複数の板状の止まり部材21を保持している。
【0025】
取手111Aは、図1に示すように、天井板111の左側端部と、右側端部とのそれぞれに設けられている。利用者は取手111Aを把持して天井板111(天井部11)を持ち上げて、天井板111(天井部11)および天井板111に保持された後述する複数の止まり部材21を、飼育ケース10から取り外すことできる。
【0026】
棒状部材挿通孔111Bは、詳細は図6を用いて後述するが、図2に示すように、引離部材22から上に延びる棒状部材221が挿通された貫通孔である。棒状部材保持部111Cは、詳細は図6を用いて後述するが、図1及び図6に示すように、側面視逆L字状に形成されており、下側が天井板111に回転可能(図6参照)に保持されている。また、図1および図2に示すように、棒状部材221は、コオロギ500(生物)を飼育するときに、棒状部材挿通孔111Bから上に突出して折り曲げられており、先端側では棒状部材保持部111Cに保持されている。ここで、図1に示すように、棒状部材保持部111Cは、棒状部材221を上側から抑えることで、棒状部材221を保持している。
【0027】
側壁部12は、図1及び図2に示すように、飼育ケース10の側面を囲い、前側の前壁部12Fと、後側の後壁部12B(図3参照)と、左側の左壁部12L(図2参照)と、右側の右壁部12Rと、を備えている。そして、図1に示すように、前壁部12Fは透明な窓部12F1を備えており、同様に後壁部12B(図3参照)も透明な窓部(不図示)を備えている。前壁部12Fの下部とベルトコンベア30のベルト32との間は閉鎖されており、同様に後壁部12B(図3参照)の下部とベルトコンベア30のベルト32との間も閉鎖されている。
【0028】
右壁部12Rは、図1に示すように、透明な窓部12R1と、窓部12R1の下に扉部12R2と、を備えている。図1及び図2に示すように、扉部12R2は、上側を中心に回転して開閉することができ、扉部12R2の下側にはブラシ12R2Aが設けられている。扉部12R2を閉じた場合は、コオロギ500が逃げ出さないように、右壁部12Rとベルトコンベア30のベルト32との隙間はブラシ12R2Aによって塞がれる。図2に示すように、左壁部12Lは、右壁部12Rと同様に、透明な窓部(不図示)と、窓部の下に扉部12L2とを備えている。右壁部12Rの扉部12R2と同様に、扉部12L2も上側を中心に回転して開閉することができ、扉部12L2の下側にはブラシ12L2Aが設けられている。以上で説明した様に、前壁部12Fの扉部12L2および後壁部12B(図3参照)の扉部12R2を閉じさえすれば、右壁部12Rおよび左壁部12Lと、ベルト32との隙間はブラシ12R2Aおよびブラシ12L2Aにより塞がれる。これにより、側壁部12とベルトコンベア30のベルト32との間からコオロギ500が逃げ出すことが抑制される。
【0029】
止まり部材21は、図2に示すように、上端部が天井板111に保持されている。また、図2及び図3に示すように、複数の止まり部材21が飼育ケース10内に設けられている。図3に示すように、止まり部材21は、上面から見た断面が前後に延びる方形波状に形成されており、複数の止まり部材21は間隔を開けて飼育ケース10内に配置されている。ここで、断面が方形波状とされた止まり部材21の方形波の1辺の長さは、方形波の凹凸にコオロギ500が入り込みやすいように、例えば、約20[mm]である。また、左右に隣り合う2つの止まり部材21の間隔は、例えば、約20[mm]である。止まり部材21と飼育ケース10の床面13との隙間は、コオロギ500が通り抜けることができる程度とされて、例えば、1~20[mm]である。止まり部材21の材質には、ステンレス等の鉄や、アルミや、亜鉛メッキ鋼板等の金属や、木材、紙、樹脂などを適宜用いる。
【0030】
そして、図4に示すように、止まり部材21には、コオロギ500の足場となるよう、止まり部材21を貫通する細孔21Aが、止まり部材21の全面に渡って、多数設けられている。これにより、止まり部材21は、飼育ケース10に保持されて、飼育するコオロギ500(生物)が止まることが可能である。細孔21Aは、例えば、直径約1[mm]の貫通孔であり、隣り合う細孔21Aとの間隔は、例えば、約1[mm]である。止まり部材21の有する細孔21Aの形状、数及び間隔は適宜変更でき、細孔21Aを足場にして止まり部材21にコオロギ500が止まることができればよい。止まり部材21は、パンチングメタルで形成されていてもよく、エキスパンドメタル等の金網で形成されていてもよい。
【0031】
引離部材22は、図2に示すように、飼育ケース10の2つの天井板111それぞれの下側に設けられている。引離部材22は、板状に形成されており、止まり部材21が挿通された複数の止まり部材貫通孔22A(図2及び図4参照)を有し、棒状部材221の下端部(図2及び図6参照)が取り付けられている。図4に示すように、止まり部材貫通孔22Aには、引離部材22と止まり部材21との隙間を塞ぐシール部材22AAが設けられている。すなわち、図4に示すように、引離部材22は、引離部材22と止まり部材21との隙間を塞ぐシール部材22AAを有する。
【0032】
ここで、シール部材22AAは、引離部材22に対して止まり部材21を固定せずに移動可能なように形成されている。このため引離部材22を、止まり部材21に沿って移動させることができる。シール部材22AAは、例えば、弾性を備えるゴム状の樹脂で形成する。シール部材22AAは、引離部材22と止まり部材21との隙間を塞ぐことができればよく、樹脂として弾性を備えるゴムやエラストマーで形成してもよいし、弾性が低い樹脂で形成してもよいし、スポンジやブラシで形成してもよい。
【0033】
棒状部材221は、図3及び図6に示すように、引離部材22の角部(引離部材22の後右部あるいは引離部材22の前左部)に下端部が保持されており、引離部材22の角部から上に延び、ヒンジ221A(図6参照)を有している。そして、図1図2図6に示すように、それぞれの棒状部材221は、引離部材22から飼育ケース10の外(上)まで伸びており、天井板111の棒状部材挿通孔111Bに挿通されている。棒状部材221は、引離部材22を移動させる移動手段である。利用者は、棒状部材221の天井板111から上に突出する部分(図5参照)を把持して引離部材22を上下に移動させることができ、棒状部材221により、引離部材22を移動させることがより確実に容易になる。
【0034】
引離部材22は、コオロギ500(生物)を飼育する場合には、上側の飼育位置S1に位置させる。棒状部材221のヒンジ221Aは、棒状部材221の下側に設けられており、引離部材22が飼育位置S1にあるときに、次の様に、棒状部材221をヒンジ221Aで折り畳んで、天井板111(天井部11)に保持させることが出来る。すなわち、図6に示すように、棒状部材221をヒンジ221Aにて折り曲げ、さらに、天井板111の棒状部材保持部111Cの先端部が棒状部材221の上に重なるように棒状部材保持部111Cを回転させる。これにより、図1及び図6に示すように、棒状部材221の先端部が棒状部材保持部111Cに支持され、棒状部材221がヒンジ221Aで伸びることが抑止されることで、棒状部材221(移動手段)はヒンジ221Aにて折り畳まれた状態で保持される。その結果、棒状部材221は引離部材22を飼育位置S1にて保持する。この様に、コオロギ500(生物)を飼育するときに、棒状部材221は、飼育ケース10の天井部11(天井板111)から上に真っすぐに突出することなく、ヒンジ221Aにて折り畳まれている。
【0035】
そして、図6に示すように、棒状部材保持部111Cが棒状部材221の上に重ならないように、棒状部材保持部111Cを回転させれば、折り曲げられた棒状部材221を真っすぐに伸ばすことができる。ここで、利用者が、棒状部材221を把持して、棒状部材221を真っすぐに伸ばして、さらに、棒状部材221を下に押し下げれば、図5に示すように、棒状部材221の下端を保持する引離部材22は棒状部材221によって押し下げられる。詳細は後述するが、図5に示すように、引離部材22が飼育ケース10の底部まで押し下げられた状態を、コオロギ500(生物)を収集するときに引離部材22を位置させる引離部材22の収集位置S2とする。
【0036】
利用者が棒状部材221を把持して棒状部材221を上下に移動させれば、棒状部材221を保持する引離部材22も上下に移動する。利用者は、棒状部材221を上下に移動させて、引離部材22を上側の飼育位置S1から下側の収集位置S2との間を移動させることができる。この様に、引離部材22は、コオロギ500(生物)を飼育するときに位置させる飼育位置S1と、コオロギ500(生物)を収集するときに位置させる収集位置S2との間を往復移動させる移動手段(棒状部材221)を有する。そして、移動手段(棒状部材221)は、飼育位置S1において折り畳み可能な棒状部材221である。
【0037】
ベルトコンベア30は、図1及び図2に示すように、飼育ケース10の底部に配置されており、換言すれば、飼育ケース10内の空間の底部に配置されている。ベルトコンベア30は、一対のローラ31と、一対のローラ31の間に架けられたベルト32と、ベルト32を清掃するベルト清掃部33と、を備えている。また、ベルトコンベア30には、コオロギ500に給水する給水装置40が設けられている。
【0038】
ローラ31は、図2に示すように、モータ(不図示)によって回転させられる。ローラ31の回転方向は、図2中に矢印にて示されている。ローラ31の材質は、例えばゴムを用いる。ローラ31の回転に伴い、ベルト32が回転する。この様に、ベルトコンベア30は、ローラ31がモータ(不図示)および電源(不図示)により回転する電動式とする。モータ(不図示)の電源には、例えば、発電所から電気が供給されたコンセントや、アルカリ電池等の一次電池や、リチウムイオン二次電池や、鉛蓄電池等の充電可能な二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等が用いられる。
【0039】
ベルト32は、図2に示すように、飼育ケース10内部の空間の底部に配置されており、一部が飼育ケース10の床面13となっている。ローラ31を回転させることで、ベルト32が図2に示す矢印の方向に回転すると、ベルト32の一部である飼育ケース10の床面13は、左から右に動く。これにより、飼育ケース10の床面13に堆積した堆積物(例えば、糞、抜け殻、死骸、食べ残しの餌等)は、飼育ケース10の内部から外部へと搬出される。ここで、上述した様に、左壁部12Lおよび右壁部12Rと、ベルト32との隙間はブラシ12L2Aおよびブラシ12R2Aにより塞がれていることにより、ベルト32が回転して床面13が左から右に動いても、左壁部12Lおよび右壁部12Rと、ベルト32との隙間からコオロギ500が逃げ出すことが抑制されている。
【0040】
ベルト清掃部33は、図2に示すように、左側のローラ31の下側でベルト32に当接するスクレイパー331と、スクレイパー331の下に置かれて、左側のローラ31およびスクレイパー331を囲うように設けられた受皿332を有している。
【0041】
スクレイパー331は、ベルト32に当接する上端側に向かうにしたがって厚みが小さくなる、上端が尖ったヘラの形状に形成されている。スクレイパー331のヘラの形状に形成された上端部は、ベルト32の前端から後端に渡って、ベルト32に当接している。また、スクレイパー331は、下側がハウジング50の保持されている。右側のローラ31の下側にてベルト32に、スクレイパー331の尖った上端部が当接することにより、ベルト32に付着している付着物が、ベルト32からそぎ落とされて、さらに、スクレイパー331の下に置かれた受皿332内に溜められる。
【0042】
以上で説明した様に、飼育ケース10の床面13に堆積した堆積物は、一部が床面13となっているベルト32が回転すると、移動するベルト32(床面13)によって飼育ケース10の右側に運ばれて、右側のローラ31の左側でベルト32の上から受皿332内に落ちる。さらに、ベルト32から落ちずにベルト32に付着した付着物は、スクレイパー331によりそぎ落とされて、ベルト32が清掃される。
【0043】
給水装置40は、図1及び図2に示すように、ベルト32の外側に巻かれてベルト32の周方向に沿って一周する給水帯41と、給水帯41に水を供給する水供給装置42と、給水帯41を洗浄する給水帯清掃部43と、を備えている。
【0044】
給水帯41は、図1及び図2に示すように、ベルト32の外側に1重に巻かれてベルト32の周方向に沿って一周し、断面が矩形の帯状に形成されている。また、給水帯41は、内部に水を保持できる保水性の材質で形成されている。ここで、給水帯41は、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能な給水部材である。換言すれば、ベルト32は、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能な給水部材(給水帯41)を有している。給水帯41の材質は、内部に水を保持できる保水性の材質であればよく、例えば、吸水性の高分子ポリマー素材、不織布等の布、海綿、パルプ、及びスポンジの、1つまたは複数を混合したものを用いる。
【0045】
水供給装置42は、図1及び図2に示すように、ベルト32の左端側の上に設けられており、ハウジング50に保持されている。図2に示すように、水供給装置42は、水が貯留された水タンク421と、水タンク421に一端が接続されて他端が給水帯41の上に開口する水供給配管422と、水供給配管に設けられて水を搬送するポンプ423とを備えている。ポンプ423は、上述した電源からの電気により駆動して水を搬送する電動式ポンプを用いる。ポンプ423には、手動で水を搬送する手動式ポンプを用いてもよい。ポンプ423が水を搬送させれば、水タンク421に貯留された水が給水帯41の上に落ちて、給水帯41内に水が浸透する。これにより、給水帯41の一部は内部に水が保持される。
【0046】
給水帯清掃部43は、図2に示すように、右側のローラ31よりも下側かつスクレイパー331の左側に設けられており、ハウジング50に保持されている。給水帯清掃部43は、洗浄液431Lが貯留された洗浄液タンク431と、ベルト32の上側に設けられてベルト32に当接する洗浄用ローラ432等を有している。洗浄液431Lは、洗浄液タンク431に適宜供給されるとともに、交換される。洗浄液431Lとして、コオロギ500(生物)に無害な液体が好ましい。
【0047】
洗浄用ローラ432は、ベルト32の上側に設けられており、下側でベルト32と当接する。これにより、洗浄用ローラ432の周りでは、洗浄用ローラ432によって、ベルト32が下側に押し下げられる。そして、洗浄用ローラ432の位置は、洗浄用ローラ432によって押し下げられたベルト32が、洗浄液タンク431に貯留された洗浄液431Lに浸って洗浄されるような位置に設定されている。この様に、給水帯清掃部43は、洗浄液タンク431内の洗浄液431Lにベルト32を浸して、ベルト32を洗浄することができる。
【0048】
以上で説明したが、次の様に、給水装置40を用い、コオロギ500(生物)に給水して、給水帯41を洗浄することが出来る。図2に示すように、水供給装置42のポンプ423に水タンク421内の水を搬送させ、水を給水帯41の上に落とす。これにより、給水帯41の水が落とされた部分では、内部に水が浸透し、内部に水が保持している部分となる。この給水帯41の内部に水を保持している部分は、さらに、ベルト32が回転すると、ベルト32とともに飼育ケース10内の空間に移動する。そして、コオロギ500は、この給水帯41の内部に水を保持している部分に接触することで、給水帯41から水を得ることができる。
【0049】
そして、さらにベルト32が回転すると、次の様に、給水帯41は洗浄される。まず、給水帯41の上の付着物は、ベルト32の付着物と同様にスクレイパー331によってそぎ落とされて、受皿332内に溜められる。さらに、ベルト32が回転するとともに、給水帯41は、給水帯清掃部43にて、洗浄液431Lに浸されることで洗浄される。なお、給水帯41(給水部材)は、ベルトコンベア30のベルト32の上に設けられている。換言すれば、ベルトコンベア30のベルト32は、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能な給水帯41(給水部材)を有する。
【0050】
●[実施形態の飼育装置1の使用方法と作用効果(図1~7)]
次に、(A)コオロギ500(生物)の飼育時の使用方法と、(B)コオロギ500(生物)の収集時の使用方法との、2つの使用方法について、作用効果とともに説明する。なお、飼育ケース10内の温度や湿度、照明によって飼育ケース10内に届く光の量等は、適宜調整する。
【0051】
まず、(A)コオロギ500(生物)の飼育時の使用方法を、作用効果とともに説明する。図2は、コオロギ500(生物)の飼育時における飼育装置1の概略断面図である。図2に示すように、飼育時には、右壁部12Rの扉部12R2および左壁部12Lの扉部12L2は、閉じた状態に保たれる。なお、コオロギ500(生物)の飼料は種々の方法で適宜与える。例えば、粉末状の飼料をベルト32の左端側(飼育ケース10よりも左側)の上に置き、ベルト32を回転させて飼育ケース10内の床面13に飼料を運ぶことでコオロギ500に飼料を与える。他に例えば、コオロギ500が飼料を食べることが出来るように飼育ケース10内に飼料を入れた箱を設けて、コオロギ500に飼料を与える。
【0052】
引離部材22は、図2に示すように、飼育時には飼育位置S1に位置する。引離部材22は、図6を用いて上述した様に、下端部が引離部材22に保持された棒状部材221によって、飼育位置S1に保持されている。すなわち、棒状部材221がヒンジ221Aにて折り畳まれ、さらに棒状部材221が棒状部材保持部111Cによって保持される。これにより、棒状部材221が棒状部材保持部111Cによって保持されており、棒状部材221を保持する引離部材22は棒状部材221によって飼育位置S1にて保持されている。
【0053】
飼育装置1の移動手段は、飼育位置S1において折り畳み可能な棒状部材221である。これにより、上述した様に、引離部材22を上下に移動させることがより確実により容易になる。また、棒状部材221を折りたたむことにより、移動手段(棒状部材221)が飼育ケース10から突出して嵩張ることを抑制できる。より詳しくは、棒状部材221がヒンジ221Aにて折り畳まれることで、飼育時に棒状部材221が飼育ケース10の上に真っすぐに延びない。従って、棒状部材221を折りたたむことにより、移動手段(棒状部材221)が飼育ケース10から真っすぐに突出して嵩張ることを抑制できる。
【0054】
引離部材22は、図2に示すように、飼育ケース10の上側の飼育位置S1にて保持されており、図3に示すように、止まり部材貫通孔22Aに複数の止まり部材21が挿通されている。図3を用いて上述したように、止まり部材21は、上面から見た断面が前後に延びる方形波状に形成されており、図4を用いて上述した様に、コオロギ500は、止まり部材21に設けられた多数の細孔21Aを足場にして、止まり部材21に止まることができる。ここで、止まり部材21の断面が多数の凹凸を備える方形波状となっているため、止まり部材21に止まったコオロギ500は、周囲のコオロギ500から見えにくくなっている。これにより、止まり部材21は、コオロギ500の隠れ家としての機能を有している。さらに、飼育装置1に設けられている止まり部材21の数は複数であるため、比較的大量のコオロギ500(生物)を止まり部材21に止まらせて飼育することができる。
【0055】
そして、飼育装置1は、止まり部材21および引離部材22を備えている。飼育ケース10内で飼育されているコオロギ500(生物)は、移動して止まり部材21に止まることができる。この様に、コオロギ500(生物)が止まり部材21に止まることが出来ることにより、飼育装置1は、コオロギ500(生物)をより生育に適した環境で飼育することが可能である。
【0056】
図2に示すように、飼育ケース10の床面13(ベルト32)から止まり部材21に移動し、さらに止まり部材21の上によじ登るコオロギ500は、引離部材22と止まり部材21との隙間を塞ぐシール部材22AA(図4参照)によって、引離部材22の飼育位置S1よりも上によじ登ることがより確実に抑制されている。これにより、コオロギ500は、より確実に、飼育時に引離部材22よりも下の空間で飼育される。
【0057】
飼育装置1は、図2を用いて上述した様に、ベルトコンベア30を備えており、ベルトコンベア30のベルト32の一部は、飼育ケース10の床面13となっている。飼育時には、ベルトコンベア30のローラ31を図2中の矢印の方向に回転させることで、ベルト32を適宜回転させる。ベルト32が回転すると、ベルト32の一部である床面13は右に移動する。これにより、飼育ケース10の床面13に堆積した堆積物(例えば、糞、抜け殻、死骸、食べ残しの餌等)は、ベルト32が回転すると、床面13とともに飼育ケース10の右側に運ばれて、さらに、右側のローラ31の右側でベルト32の上から受皿332内に落ちる。また、ベルト32から落ちずにベルト32に付着した付着物は、スクレイパー331によりそぎ落とされて受皿332内に落ちる。この様に、飼育ケース10の床面に堆積した堆積物は、ベルト32を回転させるだけで、受皿332内に落とすことが出来る。
【0058】
以上で説明した様に、飼育装置1は、飼育ケース10の空間の底部に配置されたベルトコンベア30を有する。ベルトコンベア30により、飼育ケース10内の空間の底部に堆積した堆積物(例えば、糞、抜け殻、死骸、食べ残しの餌等)をより容易に飼育ケース10内から外へ排出できる。ここで、飼育ケース10の床面13(ベルト32)に堆積した堆積物(例えば、糞、抜け殻、死骸、食べ残しの餌等)は、ベルト32を回転させるだけで清掃されため、容易に飼育ケース10内のより容易に衛生を良好に保つことができる。
【0059】
そして、ベルトコンベア30のベルト32は、図1及び図2を用いて上述した様に、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能な給水帯41(給水部材)を有する。上述した様に、給水帯41は、ベルトコンベア30のベルト32の上に巻かれている。水供給装置42から水が給水帯41に落とされ、給水帯41の水が落とされた部分は水を保持する。この様に水が給水帯41に供給される。そして、ベルト32を回転させて、給水帯41の内部に水を保持している部分を飼育ケース10内に移動させる。これにより、コオロギ500は、給水帯41の内部に水を保持している部分に触れて、水を得ることができる。
【0060】
以上の様に、飼育装置1は、ベルトコンベア30のベルト32に、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能な給水帯41(給水部材)を有する。これにより、給水帯41(給水部材)を用いさえすればコオロギ500(生物)に給水できる。従って、コオロギ500(生物)へ水を与えることが容易となる。ここで、水供給装置42から清潔な水を給水帯41に供給することができるため、コオロギ500は衛生的な水を摂取できる。
【0061】
ベルト32の給水帯41の内部に水を保持している部分が、ベルト32の回転によって、飼育ケース10の外側(左側)に運ばれ、さらに、上述した様に、給水帯清掃部43によって洗浄される。この様に、ベルト32の給水帯41の内部に水を保持している部分は、コオロギ500の給水に用いられた後、給水帯清掃部43によって洗浄されるため、飼育ケース10内を衛生的に保つことが出来る。
【0062】
ここで、水供給装置42内の水タンクに水を補給して、ベルト32を回転させるだけで、コオロギ500に給水できるため、より容易にコオロギ500に給水できる。さらに、給水帯41の汚れは、給水帯清掃部43内の洗浄液431Lに集められ、洗浄液431Lを交換しさえすれば給水帯41を洗浄し続けることができることにより、給水装置40のメンテナンスがより容易となっている。
【0063】
次に(B)コオロギ500(生物)の収集時の使用方法を、作用効果とともに説明する。収集時には、初めに、図6に示すように、棒状部材221を上側から抑えている棒状部材保持部111Cを回転させて、棒状部材保持部111Cが棒状部材221の上に重ならないように、棒状部材保持部111Cを棒状部材221から離れた位置に移動する。そして、ヒンジ221Aにて折り曲げられた棒状部材221を真っすぐに伸ばす。さらに、利用者が、棒状部材221を把持して、真っすぐに伸ばした棒状部材221を下に押し下げる。これにより、図5に示すように、棒状部材221の下端を保持する引離部材22は棒状部材221によって押し下げられる。飼育装置1は棒状部材221を移動手段として有しており、利用者は、棒状部材221を把持して、図5に示すように、引離部材22を、飼育時の飼育位置S1から収集時の収集位置S2まで押し下げることができる。なお、棒状部材保持部111Cを設けるたけで、引離部材22を飼育位置S1に保持させることができるため、飼育装置1では、引離部材22を飼育位置S1に保持させるための機構が、棒状部材挿通孔111Bおよび棒状部材保持部111Cを設けるだけの簡素な構成となっている。
【0064】
ここで、引離部材22を、飼育位置S1から収集位置S2まで押し下げると、引離部材22は、止まり部材21に沿って移動する。飼育時に止まり部材21にコオロギ500が止まっており、図4に示すように、引離部材22と止まり部材21との隙間はシール部材22AAによって塞がれている。このため、引離部材22が、飼育位置S1から収集位置S2まで移動するにつれて、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)は止まり部材21から引き離される。この様に、引離部材22は、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)を、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させるに伴い、止まり部材21から引き離すことができる。ここで、天井部11(天井板111)を持ち上げることなく、コオロギ500(生物)を、止まり部材21から引き離すことができる。このため、天井部11を持ち上げて、手作業でコオロギ500(生物)を止まり部材21から引き離す場合に比べて、より省スペースにコオロギ500(生物)を止まり部材21から引き離すことができる。
【0065】
そして、図5に示すように、止まり部材21から引き離されたコオロギ500(生物)は、飼育ケース10の底部に集められる。さらに、図7に示すように、飼育ケース10の右壁部12Rの扉部12R2を開いて、ベルトコンベア30のベルト32を回転させれば、飼育ケース10の扉部12R2から飼育ケース10の外へ、コオロギ500を排出させることができる。この様に、コオロギ500を扉部12R2から排出させて、コオロギ500を収集することができる。ここで、扉部12R2のすぐ外側に袋を設置し、扉部12R2から排出されるコオロギ500を袋などに入れて、コオロギ500を袋に集めてもよい。
【0066】
以上で説明した(B)コオロギ500(生物)の収集時の使用方法では、まず、図5に示すように、利用者は、引離部材22を、飼育位置S1から収集位置S2まで押し下げる。次に利用者は、図7に示すように、飼育ケース10の左壁部12Lの扉部12L2を開いた状態で、ベルトコンベア30のベルト32を回転させて、コオロギ500を飼育ケース10の扉部12L2から外へ排出させてコオロギ500を収集する。ここで、引離部材22を、飼育位置S1から収集位置S2まで押し下げる動作と、図7に示すように、飼育ケース10の左壁部12Lの扉部12L2を開いた状態で、ベルトコンベア30のベルト32を回転させて、コオロギ500を飼育ケース10の扉部12L2から外へ排出させる動作とを、同時に行ってもよい。この様に同時に行えば、引離部材22を押し下げる力を加減することにより、引離部材22から引き離されるコオロギ500の一定時間あたりの数を調整でき、ひいては、引離部材22から引き離されて扉部12L2から排出されるコオロギ500の一定時間あたりの数を調整できる。これにより、一気にコオロギ500が飼育ケース10の扉部12L2から外へ排出することを抑制できる。
【0067】
なお、利用者は、棒状部材221を把持して、図5に示すように、収集位置S2にある引離部材22を、収集位置S2から飼育位置S1に引き上げることもできる。従って、利用者は、棒状部材221を把持して、引離部材22を飼育位置S1と、収集位置S2との間を往復移動させることができる。換言すれば、引離部材22は、コオロギ500(生物)を飼育するときに位置させる飼育位置S1と、コオロギ500(生物)を収集するときに位置させる収集位置S2との間を往復移動させる棒状部材221(移動手段)を有する。棒状部材221(移動手段)を設けることにより、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させることがより容易となるため、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)を止まり部材21から引き離すことがより容易となる。
【0068】
また、図4に示すように、飼育装置1は、引離部材22と止まり部材21との隙間を塞ぐシール部材22AAを有する。シール部材22AAにより、引離部材22と止まり部材21との隙間をコオロギ500(生物)が通りぬけることが抑止される。従って、シール部材22AAを有することにより、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させることで、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)を、止まり部材21から引き離す際に、より確実に引き離すことができる。なお、仮に、引離部材22によって、止まり部材21から引き離されずに残ったコオロギ500がいたとしても、そのコオロギ500は飼育ケース10内にいて外部に逃げ出すことができないため、捕まえることが比較的容易である。
【0069】
以上では、飼育装置1の使用方法を説明したが、以上で説明した様に、飼育装置1は、止まり部材21および引離部材22を備えている。飼育ケース10内で飼育されているコオロギ500(生物)は、移動して止まり部材21に止まることができる。この様に、コオロギ500(生物)が止まり部材21に止まることが出来ることにより、飼育装置1は、コオロギ500(生物)をより生育に適した環境で飼育することが可能である。また、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させることで、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)を止まり部材21から引き離すことができる。これにより、飼育したコオロギ500(生物)を取集することがより容易となる。従って、飼育装置1は、コオロギ500(生物)を生育に適した環境で飼育することが可能であるとともに、飼育したコオロギ500(生物)を取集することをより容易にする。
【0070】
これにより、コオロギ500(生物)の収集は、上記の様に引離部材22を止まり部材21に移動させて行うことで、収集を手作業で行う場合よりも手間がかからないと共に短時間に行うことができる。しかも大量のコオロギ500(生物)に対してももれなく収集することをより容易にする。さらに、飼育装置1を用いれば、コオロギ500の高密度飼育をより容易にし、コオロギ500の飼育環境の衛生管理をより容易にする。従って、多数の飼育装置1を用いれば、コオロギ500を高密度かつ大規模に、衛生的な環境で飼育し得る。
【0071】
●[他の実施の形態]
上述した実施形態の飼育装置1は、上述した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、実施形態の飼育装置1では、図1を用いて上述した様に、飼育ケース10が、窓部12F1、窓部12R1等の窓部を備えるが、これらの窓部を飼育装置1は備えなくてもよく、いくつかの窓部を備えてもよい。例えば、飼育装置1は、右壁部12Rの扉部12R2を備えなくともよい。また、窓部を設ける代わりに、飼育装置1の側壁部12を透明なガラスや透明な樹脂で一体に形成してもよい。また、例えば、扉部12L2の下側に設けられるブラシ12L2Aの代わりに、シール部材22AAと同様のシール部材等を用いてもよい。
【0072】
飼育装置1において、止まり部材21の有する細孔21Aの形状、数及び間隔は適宜変更でき、細孔21Aを足場にして止まり部材21にコオロギ500が止まることができればよい。例えば、細孔21Aの形状を凹状の孔にしたディンプル構造等にしても良い。また、図3に示すように、止まり部材21は、上面から見た断面が前後に延びる方形波状としたが、板状でありさえすればよく、例えば、止まり部材21の断面を直線状としてもよく、他には三角波状、鋸波状、台形波等状、正弦波状、渦巻き状であってもよく、適宜変更できる。さらに、止まり部材21は、天井部11に保持されていなくともよく、側壁部12に保持されていてもよい。
【0073】
また、飼育装置1は、引離部材22は、引離部材22と止まり部材21との隙間にシール部材22AAを有さなくてもよい。仮に飼育装置1がシール部材22AAを有さない場合であっても、止まり部材21が引離部材22に沿って下に移動すると、下に移動する止まり部材21によって、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)のうち一部は確実に止まり部材21から引き離されて、床面13(ベルト32)に落とされる。これにより、飼育したコオロギ500(生物)を取集することがより容易となる。
【0074】
また、飼育装置1において、引離部材22は上下に移動させることができるが、引離部材22を移動させる方向は、上下に限らなくてもよい。止まり部材21に沿って引離部材22を移動させるに伴い、コオロギ500(生物)を止まり部材21から引き離すことができればよく、引離部材22を移動させる方向は、左右でもよく、左上から右下や、右上から左下等、適宜変更でき、そのために、止まり部材21を側壁部12などに保持させてもよい。
【0075】
また、飼育装置1では、引離部材22に、コオロギ500(生物)を飼育するときに位置させる飼育位置S1と、コオロギ500(生物)を収集するときに位置させる収集位置S2との間を往復移動させる移動手段(棒状部材221)を設けている。しかし、飼育装置1から移動手段(棒状部材221)を省いてもよい。飼育装置1において、移動手段(棒状部材221)を設けなくとも、適宜、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させることができる。これにより、引離部材22は、止まり部材21に止まっているコオロギ500(生物)を、引離部材22を止まり部材21に沿って移動させるに伴い、止まり部材21から引き離すことができる。
【0076】
また、飼育装置1では、移動手段は、飼育位置S1において折り畳み可能な棒状部材221であるが、移動手段は棒状部材221でなくともよい。例えば、棒状部材221に替えて、棒状部材挿通孔111Bに挿通され、下端が引離部材22に保持された、ひも状の部材(ロープ、針金等を含む)を飼育装置1に設けてもよい。
【0077】
また、飼育装置1は、ベルトコンベア30を有するが、飼育装置1からベルトコンベア30を省いてもよい。
【0078】
また、飼育装置1において、ベルトコンベア30は、ローラ31がモータ(不図示)および電源(不図示)により回転する電動式としたが、ベルトコンベア30は、適宜ハンドルなどを設けてローラ31とともにベルト32を回転させる手動式のベルトコンベアとしてもよい。また、ポンプ423を手動式のポンプにしてもよい。
【0079】
また、飼育装置1は給水帯41を有する給水装置40を備えているが、飼育装置1から給水装置40を省いてもよい。また、当然ながら、飼育装置1は給水部材(給水帯41)を有するが、飼育装置1から給水部材(給水帯41)を省いてもよい。飼育装置1に、給水容器等を設けてコオロギ500(生物)に水を与えることもできる。
【0080】
飼育装置1において、給水帯41は給水部材として設けられており、給水帯41は、内部に水を保持できる保水性の材質で形成されており、なおかつ、ベルト32の外側に1重に巻かれてベルト32の周方向に沿って一周し、断面が矩形の帯状に形成されている。給水帯41を、ベルト32の外側に2重や、さらに多重に巻いてもよい。給水部材は、ベルト32に設けられており、なおかつ、内部に水を保持でき、保持した水をコオロギ500(生物)に給水可能なものであればよい。従って、給水帯41は、断面が矩形の帯状に形成されていなくてもよく、断面を円形状にしてもよく、楕円形状にしてもよく、多角形状にしてもよく、表面に凹凸があってもよく、適宜変更できる。また、給水部材をベルト32と一体に形成してよい。ベルト32全体を、内部に水を保持できる保水性の材質で形成して、給水部材としてもよい。さらに、ベルト32の一部に、内部に水を保持できる保水性の板状のものを少なくとも1つ埋め込み、これを給水帯41に換えて給水部材としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 飼育装置
10 飼育ケース
11 天井部
111 天井板
111A 取手
111B 棒状部材挿通孔
111C 棒状部材保持部
12 側壁部
12F 前壁部
12F1 窓部
12L 左壁部
12L2 扉部
12L2A ブラシ
12R 右壁部
12R1 窓部
12R2 扉部
12R2A ブラシ
13 床面
21 止まり部材
221 棒状部材(移動手段)
221A ヒンジ
21A 細孔
22 引離部材
22A 止まり部材貫通孔
22AA シール部材
30 ベルトコンベア
31 ローラ
32 ベルト
33 ベルト清掃部
331 スクレイパー
332 受皿
40 給水装置
41 給水帯(給水部材)
42 水供給装置
421 水タンク
422 水供給配管
423 ポンプ
43 給水帯清掃部
431 洗浄液タンク
431L 洗浄液
432 洗浄用ローラ
50 ハウジング
500 コオロギ(生物)
S1 飼育位置
S2 収集位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7