(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】主桁連続化剛結合構造
(51)【国際特許分類】
E01D 2/00 20060101AFI20240819BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20240819BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
E01D2/00
E01D21/00 B
E01D1/00 D
E01D1/00 E
(21)【出願番号】P 2024062956
(22)【出願日】2024-04-09
【審査請求日】2024-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301077437
【氏名又は名称】朝日エンヂニヤリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512101121
【氏名又は名称】エーイ-ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】徳野 光弘
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7266808(JP,B1)
【文献】特開2012-154060(JP,A)
【文献】特開2014-040753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁と、橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁を共通の橋脚上に支持して連続化すると共に該橋脚と剛結合する構造であって、上記左径間主桁の桁端と上記右径間主桁の桁端を上記橋脚の橋座面上に枕材を介してそれぞれ支持すると共に、上記各主桁の桁端を上記橋座面上に立設した連結条材で上記橋脚とそれぞれ連結し、上記両主桁の桁端間に形成された遊間の上位に該遊間と間隔を置いて支点部桁材を配し、該支点部桁材、上記遊間、上記各主桁の桁端及び上記連結条材をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と上記右径間主桁を連続化すると共に、該連続化した両主桁と上記橋脚とを剛結合することを特徴とする主桁連続化剛結合構造。
【請求項2】
上記各主桁はアーチ状を呈することを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項3】
上記支点部桁材を上記連結条材と連結したことを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項4】
上記支点部桁材が金属製であることを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項5】
上記支点部桁材が鉄筋から成ることを特徴とする請求項4記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項6】
上記支点部桁材がプレストレストコンクリート製であることを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項7】
上記枕材の桁支持面を曲面構造又は多角面構造としたことを特徴とする請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【請求項8】
上記支点部桁材よりも上位で上記連結条材の上端を支圧材と連結し、該支圧材の上面にナットを球面座金を介して定着したことを特徴とする
請求項1記載の主桁連続化剛結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁の桁端と橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁の桁端を共通の橋脚上に支持する複径間桁橋における、上記左径間主桁と上記右径間主桁の連続化剛結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(A)に示すように、一般的な複径間桁橋は橋長に応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はプレストレストコンクリート製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間にそれぞれ橋幅方向に並列して架け渡し、共通の橋脚2上に支承6を介して左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aを支持する構成となっている。
【0003】
このような複径間桁橋にあっては、
図1(B)に示すように、主桁の自重や床版コンクリートの重量等の死荷重、又は走行車両の重量等の活荷重に基づき、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aとを連続化した部位(以下、「支点部」という。)において大きな負の曲げモーメント(
図1(B)中の「-」のモーメント、すなわち上向きの凸状となるように曲げようとする力)が発生し、当該連続化した部位の連結コンクリート9の上端側に引張力Tが発生して亀裂が発生するおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1は、左径間主桁の桁端と右径間主桁の桁端同士を連結しないで遊間を形成した状態(上記負の曲げモーメントが発生しない状態)で、左径間主桁上と右径間主桁上に床版コンクリートをそれぞれ打設し、該各床版コンクリートの重量や主桁の自重等による死荷重(以下、「連続化前死荷重」という。)による正の曲げモーメント(
図1(B)の+のモーメント、すなわち下向きの凸状となるように曲げようとする力)を各主桁に発生させた後、上記遊間に連結コンクリートを打設し両主桁の連続化を図る方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の主桁連続化構造によれば、支点部における連続化前死荷重に基づく負のモーメントの発生を防止することができるが、連続化後に加わる死荷重(以下、「連続化後死荷重」という。)や活荷重に基づく負の曲げモーメントによって上記連結コンクリートに引張力(
図1(A)のT)が加わると、該引張力を連結コンクリートのみ、つまり引張強度の弱いコンクリート部材のみで受け持つこととなり、上記亀裂の問題を有効に解消することはできない。
【0007】
また、上記特許文献1においては、上記遊間に打設した連結コンクリートのずれ止めを図る手段として、各主桁の桁端面から結合用部材を突設し連結コンクリート内に埋設する方法を採っているが、両結合用部材は互いに連結されておらず、結局は引張強度の弱いコンクリート部材に引張力を担わせる構造であることに変わりはない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、支点部における連続化前死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止する一方、支点部における連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメント、ひいてはコンクリートに加わる引張力を減殺しつつ、該引張力を遊間の上位に配した支点部桁材に受け持たせ、上記亀裂の問題を有効に解消することができる主桁連続化剛結合構造を提供する。
【0009】
要述すると、本発明に係る主桁連続化剛結合構造は、橋幅方向に並列した複数本の左径間主桁と、橋幅方向に並列した複数本の右径間主桁を共通の橋脚上に支持して連続化すると共に該橋脚と剛結合する構造であって、上記左径間主桁の桁端と上記右径間主桁の桁端を上記橋脚の橋座面上に枕材を介してそれぞれ支持すると共に、上記各主桁の桁端を上記橋座面上に立設した連結条材で上記橋脚とそれぞれ連結し、上記両主桁の桁端間に形成された遊間の上位に該遊間と間隔を置いて支点部桁材を配し、該支点部桁材、上記遊間、上記各主桁の桁端及び上記連結条材をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と上記右径間主桁を連続化すると共に、該連続化した両主桁と上記橋脚とを剛結合する構造を有する。
【0010】
よって、上記左径間主桁と上記右径間主桁を連結しない構造により、支点部における連続化前死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止する。一方、上記遊間の上位に配した上記支点部桁材によって支点部高さ(
図1(A)のH)を可及的に高くすることができ、支点部における連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺しコンクリートに加わる引張力を減殺することができる。加えて、該引張力を上記支点部桁材に受け持たせ、亀裂の問題を有効に解消することができる。
【0011】
好ましくは、上記各主桁をアーチ状とすることにより、支点部高さを確実に高くすることができると共に、連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺することができる。
【0012】
好ましくは、上記支点部桁材を上記連結条材と連結することにより、上記支点部桁材を所望位置に容易に配することができると共に、連続化剛結合構造を強化することができる。
【0013】
また、上記支点部桁材を金属製とすることにより、適切に引張力を受け持つことができる。さらに好ましくは、上記支点部桁材として鉄筋を用いることにより、容易に配設や埋設を行うことができる。
【0014】
又は、上記支点部桁材をプレストレストコンクリート(以下、「PC」という。)製とすることができる。
【0015】
好ましくは、上記枕材の桁支持面を曲面構造又は多角面構造とすることにより、上記各主桁の変位や傾き、形状に適切に順応して確実に上記各主桁を支持することができる。
【0016】
また、上記支点部桁材よりも上位で上記連結条材の上端を支圧材と連結し、該支圧材の上面にナットを球面座金を介して定着することにより、該球面座金で縦断勾配や横断勾配による傾斜を吸収できるため、上記ナットを隙間なく定着することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る主桁連続化剛結合構造によれば、支点部における連続化前死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止する一方、支点部における連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメント、ひいては連結コンクリートに加わる引張力を減殺すると共に、該減殺した引張力を支点部桁材に受け持たせることができ、亀裂発生を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は一般的な複径間桁橋を概示する側面図、(B)は複径間桁橋に発生する曲げモーメントの分布図である。
【
図2】支点部桁材として鋼製アングル材を用いた実施例における主桁連続化剛結合構造を概示する説明図である。
【
図3】左径間主桁と右径間主桁の各桁端を橋脚に連結する状態を示す説明図である。
【
図4】左径間主桁と右径間主桁の各桁端を橋脚に連結した状態を示す説明図である。
【
図5】主桁連続化剛結合構造を示す橋長方向断面図である。
【
図6】主桁連続化剛結合構造を平面において断面視する図(
図5のA-A線断面図)である。
【
図7】主桁連続化剛結合構造を平面において断面視する図(
図5のB-B線断面図)である。
【
図8】主桁連続化剛結合構造を示す橋幅方向断面図(
図5のC-C線断面図)である。
【
図9】桁支持面を多角面形状とした枕材を説明する断面図である。
【
図10】支点部桁材として鉄筋を用いた実施例における主桁連続化剛結合構造を概示する説明図である。
【
図11】主桁連続化剛結合構造を示す橋長方向断面図である。
【
図12】主桁連続化剛結合構造を平面において断面視する図(
図11のD-D線断面図)である。
【
図13】主桁連続化剛結合構造を平面において断面視する図(
図11のE-E線断面図)である。
【
図14】主桁連続化剛結合構造を示す橋幅方向断面図(
図11のF-F線断面図)である。
【
図15】球面座金によるナットの定着を説明する断面図である。
【
図16】主桁連続化剛結合構造の他例を示す橋長方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る主桁連続化剛結合構造の最良の実施形態を
図1乃至
図16に基づき説明する。
【0020】
<一般的な主桁連続化構造>
既述したとおり、
図1(A)に示すように、一般的な複径間桁橋は、橋の長さに応じて両岸の橋台1間に単数又は複数の橋脚2を設け、H形鋼等の鋼材製又はPC製の複数本の主桁3を橋台1と橋脚2間、橋脚2と橋脚2間にそれぞれ橋幅方向に並列して架け渡す構成となっている。
【0021】
詳述すると、一つの橋脚2の橋座面2a上に対し支承6を介して左径間を構成する主桁3と右径間を構成する主桁3の各桁端3aが支持されており、該左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3a間、具体的には各桁端3aのそれぞれの桁端面3b間に遊間5を形成し、該遊間5により左径間主桁3と右径間主桁3は途切れた構造を有しており、遊間5内に連結コンクリート9を打設して左径間主桁3と右径間主桁3の連続化を図っている。
【0022】
<本発明に係る主桁連続化剛結合構造>
≪基本構造≫
本発明に係る主桁連続化剛結合構造は、
図2,
図10に示すように、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを共通の橋脚2の橋座面2a上に枕材4を介してそれぞれ支持すると共に、該各主桁3の桁端3aを上記橋座面2a上に立設した連結条材13で上記橋脚2とそれぞれ連結する構造を有している。
【0023】
本発明においては、特に左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aは非連結状態とし、該各桁端3aのそれぞれの桁端面3b間に形成された遊間5の上位に該遊間5と間隔を置いて支点部桁材7を配し、該支点部桁材7、遊間5、各主桁3の桁端3a及び連結条材13を連結コンクリート9内に埋設して左径間主桁3と右径間主桁3を連続化すると共に、該連続化した両主桁3と橋脚2とを剛結合する基本構造を有している。
【0024】
よって、本発明に係る主桁連続化剛結合構造は、一般的な連続化構造と同様に左径間主桁3と右径間主桁3の桁端3a同士を連結しない構造により、支点部における連続化前死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止することができるのは勿論であるが、さらに次の効果を有する。
【0025】
すなわち、遊間5の上位に該遊間5とは離れて配され埋設される支点部桁材7によって支点部高さHを可及的に高くすることができ、支点部における連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺し連結コンクリート9に加わる引張力Tを減殺することができる。加えて、該引張力Tを支点部桁材7に受け持たせ、亀裂の問題を有効に解消することができる。
【0026】
なお、
図2~
図8,
図16は支点部桁材7として鋼製アングル材を用いた実施例を示しており、
図10~
図14は支点部桁材7として鉄筋を用いた実施例を示している。なお、後述するように、本発明に係る主桁連続化剛結合構造において、支点部桁材7として用いる桁材としては引張力Tに耐えうるものであれば、金属製でもPC製でもよく、断面形状も実施に応じ任意である。
【0027】
≪主桁構造≫
本発明においては、各主桁3としてアーチ状の主桁を用いるのが望ましい。たとえば、
図2,
図10に示すように、各主桁3として曲線アーチ状の主桁、つまり長手方向において上向き凸状に撓んだ形状の主桁を用いる。当該曲線アーチ形状により、支点部高さHを確実に高くすることができると共に、連続化後死荷重及び活荷重に基づく負の曲げモーメントを減殺することができ、ひいては引張力Tを減殺することができる。また、
図16に示すように、各主桁3として角形アーチ状(π形)の主桁、つまり長手方向において中央部の桁部分の高さが端部の桁部分の高さよりも高い主桁を用いれば、当該角形アーチ状によっても、支点部高さHを確実に高くすることができ、ひいては引張力Tを減殺することができる。
【0028】
本書の各実施例においては、主桁3としてH型鋼を用いた例を示しているが、後述する枕材4によって支持される支持面を有し、垂直に伸びる連結条材13と連結することができるフランジ部を有する金属製、好ましくは鋼製の桁材であれば、特に断面形状は問わない。また、曲線アーチ状とする場合、その円弧形状を定める半径長(R)は適宜調整することができると共に、角形アーチ状とする場合、角部の角度を適宜調整することができる。
【0029】
≪主桁支持構造及び桁と橋脚の剛結合構造≫
本発明に係る主桁連続化剛結合構造においては、
図3,
図4に示すように、まず左径間主桁3と右径間主桁3を支持するための共通の橋脚2の橋座面2a上に設置された枕材4により左径間主桁3と右径間主桁3をそれぞれ支持する。
【0030】
枕材4について詳述すると、枕材4はコンクリート製又は金属製又は合成樹脂製であり、
図8,
図14にも示すように、橋幅方向に連続して配設する。好ましくは、
図5等に示すように、枕材4の桁支持面(上面)4aを曲面構造とし、又は
図9に示すように、桁支持面4aを多数の微小幅面4bから成る多角面構造として各主桁3の傾きや変形に応じながら支持できる構造とする。
【0031】
よって、
図4に示すように、既述のように設置した枕材4を介して左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aを下フランジ3eをもって橋脚2の橋座面2a上に支持した際に、枕材4の曲面構造又は多角面構造の桁支持面4aによって主桁3の傾き等を吸収することができると共に、鋭角や直角の角部を有しないので枕材4自身が欠けることを有効に防止することができる。
【0032】
また、本発明においては、上記枕材4を設置した橋座面2a上に、左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aと連結する連結条材13をそれぞれ立設する。
【0033】
連結条材13は、たとえば鉄筋等の鋼棒にて形成し、該鋼棒の下端をコンクリート製橋脚2に一体に埋設して橋座面2aから立ち上げる。又は鋼棒の他、ケーブルの使用が可能である。
【0034】
連結条材13として鋼棒を用いる場合、
図5,
図10に示すように、コンクリート製橋脚2に埋設した補強鉄筋16の端部を橋座面2aから上方へ突出し、該突出部分を連結条材13として用いることができる。
【0035】
また、
図3に示すように、連結条材13を左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aに貫挿する。具体的には、左径間主桁3と右径間主桁3の各桁端3aにおける上フランジ3d、下フランジ3eに設けた貫挿孔17に下から上へと貫挿する。なお、該貫挿孔17を橋長方向に延びる長孔形状にして、各主桁3の桁端3aの変位や位置ズレに対応できるようにするのが望ましい。
【0036】
また、連結条材13は、
図8,
図14に示すように、橋座面2a上において、各主桁3の桁端3aの直下から立ち上げると共に、各主桁3の桁端3aの橋幅方向における並列間隔(橋幅方向に隣接する主桁3間の間隔)の直下から立ち上げることができる。又は、橋座面2a上において、各主桁3の桁端3aの直下からのみ、連結条材13を立ち上げることも実施に応じ任意である。
【0037】
また、既述のように各主桁3の桁端3aの橋幅方向における並列間隔の直下から立ち上げた連結条材13を設けた場合には、
図8,
図14に示すように、当該連結条材13を上記並列間隔内に挿入する。
【0038】
図3,
図4に示すように、支点部桁材7として鋼製アングル材を用いる場合には、各主桁3の桁端3aに貫挿した連結条材13を利用して、当該支点部桁材7を遊間5の上位の所望の位置に容易に配することができる。すなわち、連結条材13の上端(雄ねじ端)に支点部桁材7のフランジ7aの下面を支持するナット14′を螺合すると共に、該上端をフランジ7aに突設した貫通孔7dに貫挿し、該貫挿後の上端にナット14を螺合して、該ナット14を支点部桁材7のフランジ7aの上面に定着することにより、支点部桁材7を所望位置に固定して配置することができる。なお、
図3中の21は座金である。
【0039】
上述した支点部桁材7のフランジ7aの上面に定着するナット14は、フランジ7aの上面に直接定着する、又は図示の如く、支圧材15を介してフランジ7aの上面に定着する。該支圧材15は橋幅方向に並列された桁端3aを橋幅方向に横断するように延在し、各支点部桁材7のフランジ7aの上面に架橋載置する。
【0040】
また、
図8,
図14に示すように、左径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)内及び右径間主桁3の橋幅方向の並列間隔(隣接間隔)内に挿入された連結条材13に対しては、その上端を、支圧材15における主桁3間に延在する部分15aに貫挿してナット14を螺合し、該ナット14を支圧材部分15a上面に定着する。
【0041】
なお、
図3,
図4は支点部桁材7として鋼製アングル材を用いた実施例を示しているが、支点部桁材7として鉄筋を用いた、
図10等に示す実施例の場合も同様に枕材4によって左径間主桁3と右径間主桁3をそれぞれ支持し、各桁端3aと連結する連結条材13を各桁端3aの貫挿孔17に貫挿するのは同様である。
【0042】
また、
図11に示すように、支点部桁材7として鉄筋を用いる場合には、各主桁3の桁端3aを貫挿した連結条材13の上端を支圧材15に貫挿してナット14を螺合し、該ナット14を支圧材15上面に定着する。
【0043】
また、支点部桁材7がアングル材か鉄筋かにかかわらず、上述のように、支圧材15上面にナット14を定着する場合には、
図15に示すような座金21を介して定着するのが望ましい。
図15に示す座金21は球面座金であり、上座金21aと下座金21bの一対の座金から成り、一方の座金に設けられた凸球面部と他方の座金に設けられた凹球面部との係合により、縦断勾配や横断勾配等による傾斜に適切に対応して、隙間なくナット14を定着することができる。
【0044】
≪支点部桁材構造≫
支点部桁材7は、既述のように、左径間主桁3と右径間主桁3のそれぞれの桁端面3b間に形成された遊間5の上位に該遊間5と間隔を置いて配され、後述する連結コンクリート9内に埋設され、該連結コンクリート9に加わる引張力Tを担い、亀裂防止に貢献する部材である。
【0045】
支点部桁材7としては、連結コンクリート9内で引張力を担うことができれば、特に形状は問わず、金属製又はPC製の部材を用いることができる。たとえば、
図2~
図8に示すように、断面T字状の鋼製アングル材を用いることができる他、H字状、I字状、π字状等の各種断面形状のアングル材を用いることができる。
【0046】
又は、支点部桁材7として、
図10~
図14に示すように、橋長方向に延びる鉄筋を用いることができる。好ましくは、床版コンクリート8の組立筋を利用すれば、容易且つ適切に支点部桁材7を配することができる。
【0047】
本発明において、支点部桁材7は連結コンクリート9における引張力が生ずる部分に配され埋設されることができれば、その長さは適宜調整することができる。すなわち、
図2,
図5に示すように、支点部桁材7を支点部付近のみをカバーできる長さとすることや、
図10,
図11に示すように、支点部桁材7を橋長全域に亘る長さとすることもできる。
【0048】
≪橋体コンクリート構造≫
次いで、橋体コンクリートの構造について説明する。橋体コンクリートは、各主桁3上及び各主桁3の橋幅方向の並列間隔内に打設する。
【0049】
まず、左径間主桁3上と右径間主桁3上にそれぞれ床版コンクリート8(橋体コンクリート)を打設すると共に、左径間主桁3の橋幅方向の並列間隔内と右径間主桁3の並列間隔内にそれぞれスラブコンクリート18(橋体コンクリート)を打設する。
【0050】
この際に、死荷重(連続化前死荷重)の増大により各主桁3の桁端3aが変位するが、その変位を貫挿孔17が吸収する。さらに各枕材4の桁支持面4aの曲面形状又は多角面形状も各主桁3の桁端3aの変位吸収に貢献する。よって、各主桁3が橋体コンクリートの打設に基づく連続化前死荷重により変形して負の曲げモーメントの発生を防止する。
【0051】
コンクリート打設について詳述すると、橋幅方向に隣接する左径間主桁3における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート18を打設し、連続して左径間主桁3上に床版コンクリート8を打設する。同様に橋幅方向に隣接する右径間主桁3における上下フランジ3d,3eとウェブ3cにて画成されるスペースにスラブコンクリート18を打設し、連続して右径間主桁3上に床版コンクリート8を打設する。
【0052】
換言すると、左径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口19′を閉鎖部材で閉鎖し、左径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口19を通じて上記スペース内にスラブコンクリート18を打設し、連続して左径間主桁3上に床版コンクリート8を打設する。
【0053】
同様に、右径間主桁3の橋幅方向に隣接する下フランジ3e間に形成される橋長方向に延びる開口19′を閉鎖部材で閉鎖し、右径間主桁3の橋幅方向に隣接する上フランジ3d間に形成される橋長方向に延びる開口19を通じて上記スペース内にスラブコンクリート18を打設し、連続して右径間主桁3上に床版コンクリート8を打設する。
【0054】
≪連結コンクリート構造≫
最後に、型枠を組んで遊間5を通じて橋脚2の橋座面2a上に連結コンクリート9を打設し、遊間5、左径間主桁3及び右径間主桁3の各桁端3a、支点部桁材7及び連結条材13を当該連結コンクリート9内に埋設する。
【0055】
好ましくは、連結コンクリート9の打設は上述の如く打設した橋体コンクリート(床版コンクリート8及びスラブコンクリート18)が硬化する前に行う。これら連結コンクリート9と橋体コンクリートとを馴染みよく緊密に硬化させるためである。
【0056】
そして、連結コンクリート9が硬化した後、舗装20を施せば、
図5~
図8,
図11~
図14に示す主桁連続化剛結合構造が完成する。
【0057】
以上説明したように、本発明にあっては、左径間主桁3の桁端3aと右径間主桁3の桁端3aを非連結とすることにより、連続化前死荷重に基づく負の曲げモーメントの発生を防止することができる。
【0058】
なお、連続化後は左径間主桁3及び右径間主桁3に加わる活荷重又は舗装20の重量等の連続化後死荷重に基づく負の曲げモーメントによって連結コンクリート9の上方部位に引張力が加わるが、本発明においては、該引張力を支点部高さHを可及的に高くすることにより減殺すると共に、該減殺された引張力を支点部桁材7に適切に受け持たせ、連結コンクリート9に亀裂が生ずるのを有効に防止する。
【0059】
また、本発明にあっては、橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間には該各桁端3aに穿設した通挿孔11を介して橋幅方向に延びるPCケーブル、無垢の線材等の鋼線材から成る連結線材10を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して連結コンクリート9内に埋設すると共に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に該各桁端3aに穿設した通挿孔11を介して橋幅方向に延びる上記鋼線材から成る他の連結線材10を橋長方向に間隔を置いて複数本通挿して連結コンクリート9内に埋設し主桁連続化剛結合構造を強化することができる。
【0060】
再述すると、連結線材10は、
図8,
図14に示すように、橋幅方向に並列したH形鋼から成る各主桁3の桁端3aにおけるウェブ3cを貫通するように通挿孔11を介して通挿して橋幅方向両端の主桁3の桁端3aにおけるウェブ3c外側面においてナット12により締結する。
【0061】
又は、具体的には図示しないが、橋幅方向に隣接する左径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる管材内に緩挿した連結線材10を通挿して連結コンクリート9内に埋設すると共に、橋幅方向に隣接する右径間主桁3の各桁端3a間に橋幅方向に延びる他の管材内に緩挿した連結線材10を通挿して連結コンクリート9内に埋設し、連結線材10を緊張することにより連結コンクリート9にプレストレス力を与え補強することができる。
【0062】
さらに、左径間主桁3と右径間主桁3の各ウェブ3cの橋長方向の全長に亘り連結線材10又は連結管材内に緩挿した連結線材10を橋長方向に間隔を置いて多数本通挿してスラブコンクリート18にプレストレス力を与え補強することができる。
【0063】
また、
図8に示すように、支点部桁材7としてアングル材を用いる場合には、支点部桁材7のウェブ7bに挿通孔7cを突設し、連結線材10又は連結管材内に緩挿した連結線材10を橋幅方向に並列した各支点部桁材7のウェブ7bを貫通するように挿通孔7cを介して通挿して橋幅方向両端の支点部桁材7におけるウェブ7b外側面においてナット12により締結する。これによっても、連結コンクリート9にプレストレス力を与え補強することができる。
【0064】
また、
図14に示すように、支点部桁材7として鉄筋を用いる場合には、該支点部桁材7と直交する方向に延びる鉄筋を連結線材10として用い、橋幅方向に並列する全ての支点部桁材7を連結し、支点部桁材7自体を補強することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…橋台、2…橋脚、2a…橋座面、3…主桁(左径間主桁、右径間主桁)、3a…桁端、3b…桁端面、3c…ウェブ、3d…上フランジ、3e…下フランジ、
4…枕材、4a…桁支持面、4b…微小幅面、5…遊間、6…支承、7…支点部桁材、7a…フランジ、7b…ウェブ、7c…挿通孔、7d…貫通孔、8…床版コンクリート(橋体コンクリート)、9…連結コンクリート、10…連結線材、11…通挿孔、12…ナット、13…連結条材、14,14′…ナット、15…支圧材、15a…支圧材部分、16…補強鉄筋、17…貫挿孔、18…スラブコンクリート(橋体コンクリート)、19,19'…開口、20…舗装、T…引張力、H…支点部高さ。
【要約】
【課題】 連結コンクリートに加わる引張力を減殺しつつ、適切に受け持たせることができ、亀裂発生を有効に防止することができる主桁連続化剛結合構造の提供。
【解決手段】 本発明に係る主桁連続化剛結合構造は、左径間主桁の桁端と右径間主桁の桁端を共通の橋脚の橋座面上に枕材を介してそれぞれ支持すると共に、上記各主桁の桁端を上記橋座面上に立設した連結条材で上記橋脚とそれぞれ連結し、上記両主桁の桁端間に形成された遊間の上位に該遊間と間隔を置いて支点部桁材を配し、該支点部桁材、上記遊間、上記各主桁の桁端及び上記連結条材をコンクリート内に埋設して上記左径間主桁と上記右径間主桁を連続化すると共に、該連続化した両主桁と上記橋脚とを剛結合する構造を有する。
【選択図】
図5