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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】照明受光装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20240819BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240819BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240819BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20240819BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G03B11/00
G03B15/00 T
G03B15/02 R
G03B15/02 S
G02B5/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022189415
(22)【出願日】2022-11-28
(65)【公開番号】P2024077358
(43)【公開日】2024-06-07
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】吉村 憲久
(72)【発明者】
【氏名】吉木 啓介
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-101403(JP,A)
【文献】特開2017-158977(JP,A)
【文献】特開2009-192331(JP,A)
【文献】特開2002-267936(JP,A)
【文献】米国特許第06693711(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第111239153(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G02B 5/30
G03B 11/00
G03B 15/00
G03B 15/02
G01J 4/00 - G01J 4/04
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
A61B 5/00 - A61B 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半波長の位相差を生じさせる1または複数の第1領域と、偏光を変化させる機能を有しない1または複数の第2領域とを持つ波長板と、
特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出する偏光選択光学素子と、
所定の受光面で受光する受光素子と、
光を放射する光源と、
前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系と、
前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系とを備え、
前記波長板における前記第1領域と前記第2領域とは、互いに同心円状に、かつ、前記第1領域における少なくとも1個の第1境界が前記第2領域の第2境界と共有されるように形成され、
前記波長板は、前記対象物に対し、前記光源を配置する第1位置側かつ前記受光素子を配置する第2位置側に配置され、
前記偏光選択光学素子は、前記波長板に対し、前記第1位置より前記第2位置側に配置され、
前記照明光学系の第1光軸と前記撮像光学系の第2光軸とは互いに同軸であ
前記撮像光学系は、前記波長板を配置する第3位置より前記対象物を配置する第4位置側に配置される第1光学系と、前記第3位置より前記第2位置側に配置される第2光学系とから成り
前記撮像光学系は、前記第1および第2光学系によって、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像し
前記第1光学系は、前記照明光の波長において、空気との境界である空気界面による反射光の虚像が前記対象物と前記第1光学系との間に位置する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備える
照明受光装置。
【請求項2】
前記撮像光学系は、倍率が0.5倍以下である、
請求項1に記載の照明受光装置。
【請求項3】
前記第1光学系の前記空気界面は、2個である、
請求項に記載の照明受光装置。
【請求項4】
記第2光学系は、焦点距離を可変する変倍光学系、または、予め用意された焦点距離の異なる複数の結像光学系のうちのいずれか1つである、
請求項に記載の照明受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の対象物を照明し、その反射光を受光する照明受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の対象物を照明し、その反射光を受光する照明受光装置の一例として、例えば、特許文献1に開示された試料測定装置がある。この特許文献1に開示された試料測定装置は、光源と、当該光源から射出される光を受光する受光素子と、該受光素子よりも前記光源側に配置されており入射光のうち特定方向の偏光成分の光を選択的に取り出す光学素子とを有する試料測定装置であって、測定対象試料よりも前記光源側に配置されており前記光源から射出される光を透過または反射する特定偏光素子、および、測定対象試料よりも前記受光素子側に配置されており測定対象試料を透過または反射した光を透過または反射する特定偏光素子の両方を含む。前記特定偏光素子は、面内にx軸方向とこれに直交するy軸方向とを有し、面内の位置によってジョーンズ行列が異なっている透過型または反射型の偏光素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/039900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特定偏光素子は、例えば、ガラス板の間に液晶を挟み込んだ構造であるため、前記ガラス板および液晶によって反射が生じる。この特定偏光素子内部で生じる反射光は、偏光が変化しているため、受光素子の手前で取り除くことが困難であり、迷光(ノイズ)となって、前記受光素子でのSN比を低下させてしまう。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、受光素子でのSN比を改善できる照明受光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる照明受光装置は、半波長の位相差を生じさせる1または複数の第1領域と、偏光を変化させる機能を有しない1または複数の第2領域とを持つ波長板と、特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出する偏光選択光学素子と、所定の受光面で受光する受光素子と、光を放射する光源と、前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系と、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系とを備え、前記波長板における前記第1領域と前記第2領域とは、互いに同心円状に、かつ、前記第1領域における少なくとも1個の第1境界が前記第2領域の第2境界と共有されるように形成され、前記波長板は、前記対象物に対し、前記光源を配置する第1位置側かつ前記受光素子を配置する第2位置側に配置され、前記偏光選択光学素子は、前記波長板に対し、前記第1位置より前記第2位置側に配置され、前記照明光学系の第1光軸と前記撮像光学系の第2光軸とは互いに同軸である。
【0007】
このような照明受光装置は、前記特定偏光素子を用いること無く前記特定偏光素子に代え、前記第1領域および前記第2領域を持つ波長板を用いるので、前記特定偏光素子内で生じる反射光を生じ得ないから、受光素子でのSN比を改善できる。
【0008】
他の一態様では、上述の照明受光装置において、前記撮像光学系は、倍率が0.5倍以下である。
【0009】
このような照明受光装置は、倍率が0.5倍以下である撮像光学系を用いるので、受光素子でのSN比を好適に改善できる。
【0010】
他の一態様では、これら上述の照明受光装置において、前記撮像光学系は、前記波長板を配置する第3位置より前記対象物を配置する第4位置側に配置される第1光学系を含み、前記第1光学系は、空気との境界である空気界面による反射光が前記撮像光学系の結像位置からずれる位置に結像する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備える。好ましくは、上述の照明受光装置において、前記第1光学系は、前記空気界面による反射光の虚像が前記対象物と前記第1光学系との間に位置する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備える。
【0011】
このような照明受光装置は、前記第1光学系が、前記空気界面による反射光が前記撮像光学系の結像位置からずれる位置に結像する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備えるので、前記反射光が前記受光素子の受光面に結像しないから、受光素子でのSN比を改善できる。
【0012】
他の一態様では、上述の照明受光装置において、前記第1光学系の前記空気界面は、2個である。好ましくは、上述の照明受光装置において、前記第1光学系は、照明光の波長において、像側の空気界面による反射光の虚像が前記対象物と前記第1光学系と間に位置する前記像側の空気界面の曲率半径で形成された1枚のレンズ(貼合わせレンズを含む)を備える。
【0013】
このような照明受光装置は、前記第1光学系の前記空気界面を最低数にするので、前記空気界面による反射光を最低にでき、受光素子でのSN比を改善できる。
【0014】
他の一態様では、上述の照明受光装置において、前記撮像光学系は、前記第3位置より前記第2位置側に配置される第2光学系を含み、前記撮像光学系は、前記第1および第2光学系によって、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する。好ましくは、上述の照明受光装置において、前記第2光学系は、4個以上の空気界面を持つように、複数のレンズを備える。
【0015】
このような照明受光装置は、第1および第2光学系を備え、前記第1光学系で前記反射光を前記受光素子の受光面でぼかす一方、前記第1および第2光学系で前記対象物の光像を前記第1および第2光学系の収差を取り除きながら前記受光素子の受光面で結像するので、受光素子でのSN比を改善できる。
【0016】
他の一態様では、上述の照明受光装置において、前記撮像光学系は、前記第3位置より前記第2位置側に配置される第2光学系を含み、前記第2光学系は、焦点距離を可変する変倍光学系、または、予め用意された焦点距離の異なる複数の結像光学系のうちのいずれか1つである。
【0017】
このような照明受光装置は、第1および第2光学系を備え、前記第2光学系で倍率を変えられるので、前記第1光学系で前記反射光を前記受光素子の受光面でぼかす作用効果を維持する一方、変倍して受光できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる照明受光装置は、受光素子でのSN比を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態における照明受光装置の構成を説明するための模式図である。
図2】前記照明受光装置の波長板を説明するための図である。
図3】前記照明受光装置の作用効果を説明するための図である。
図4】比較例を説明するための図である。
図5】前記照明受光装置の変形形態を説明するための図である。
図6】一例として、前記照明受光装置の傾き計測装置への適用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0021】
図1は、実施形態における照明受光装置の構成を説明するための模式図である。図1は、照明受光装置Dを、各光軸を含む平面で切断した断面図である。図2は、前記照明受光装置の波長板を説明するための図である。図2Aは、前記波長板の正面図であり、図2Bは、前記波長板の作用効果を説明するための図である。図2Cは、前記波長板の変形形態を説明するための図である。
【0022】
実施形態における照明受光装置Dは、所定の対象物(ワーク)WKを照明し、その反射光を受光する装置であり、例えば、図1に示すように、照明部ILと、ビームスプリッタBSと、波長板WPと、第1光学系Gr21と、偏光選択光学素子PSと、第2光学系Gr22と、受光素子ISとを備える。前記所定の対象物WKは、任意であり、限定されない。
【0023】
照明部ILは、所定の配置面に配置された所定の対象物WKに照明光を照射する装置であり、例えば、光源LSと、偏光子PLと、バンドパスフィルタBPFと、光学系Gr11とを備える。
【0024】
光源LSは、所定の電源から給電され、所定の光を放射する装置であり、例えば、ランダム偏光を放射する発光ダイオード(LED)等を備えて構成される。
【0025】
偏光子PLは、所定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出光とする光学素子である。
【0026】
バンドパスフィルタBPFは、入射光における所定の波長範囲の光を透過して射出光として射出し、前記入射光における前記波長範囲を除く光を遮光する光学素子である。前記波長範囲は、狭いほど好ましく、バンドパスフィルタBPFからは、単色光が射出されることが好ましい。
【0027】
光学系Gr11は、集光した光をビームスプリッタBSに入射させるものであり、例えば、2個の第1レンズL11および第2レンズL12を備えて構成される。第1レンズL11は、入射光を平行光にして射出光として射出し、第2レンズL12は、入射光を集光して射出光として射出する。
【0028】
ビームスプリッタBSは、照明光の波長において、入射光を所定の分割比で2つの光に分割して射出する光学素子である。ビームスプリッタBSは、いわゆるプレート型のものや薄膜状のものであってよいが、図1に示す例では、いわゆるキューブ型が用いられている。このキューブ型のビームスプリッタBSは、2個の直角プリズムを各傾斜面同士で貼り合わせて略立方体形状にしたもので、一方の直角プリズムの前記傾斜面には入射光を分割するための誘電多層膜が被覆(コート)されて形成されている。
【0029】
波長板WPは、入射光と射出光との間で半波長λ/2の位相差を生じさせる1または複数の第1領域と、偏光を変化させる機能を有しない1または複数の第2領域とを持つ光学素子であって、前記第1領域と前記第2領域とは、互いに同心円状に、かつ、前記第1領域における少なくとも1個の第1境界が前記第2領域の第2境界と共有されるように形成されている。前記半波長λ/2の波長λは、前記バンドパスフィルタBPFからの射出光の波長λであり、対象物WKを照明する照明光の波長λでもある。
【0030】
例えば、図2Aに示すように、波長板WPは、所定の径を持つ円形状の、入射光と射出光との間で偏光を変化させない1個目の第2領域AR2-1と、前記第2領域AR2-1の外周を囲むように形成され、前記入射光と前記射出光との間で半波長λ/2の位相差を生じさせる環形状(リング状、ドーナツ状)の第1領域AR1と、前記第1領域AR1の外周を囲むように形成され、前記入射光と前記射出光との間で偏光を変化させない環形状(リング状、ドーナツ状)の2個目の第2領域AR2-2とを備える。第2領域AR2-1の外周の境界は、第1領域AR1の内周の境界と共有され、第1領域AR1の外周の境界は、第2領域AR2-2の内周の境界と共有されている。第1領域AR1は、径方向に所定の幅(第1幅)を持つ。第2領域AR2-2は、径方向に所定の幅(第2幅)を持つ。第1領域AR1の前記第1幅、第2領域AR2-1の前記径および第2領域AR2-2の前記第2幅は、この照明受光装置Dの仕様等に応じて適宜に設計される。これら第2領域AR2-1、AR2-2は、偏光を変化させる機能を有しない例えば接着剤やガラス等で適宜な材料で形成される。例えば、半波長λ/2の位相差フィルムが第1領域AR1として円環状に加工され、この内外に接着層が第2領域AR2-1、AR2-2として形成され、波長板WPが作成される。この第2領域AR2-1は、空気で形成された空気層であってもよい。あるいは、例えば、半波長λ/2の位相差フィルムが第1領域AR1として円環状に加工され、これが円板状のガラス基板に貼り付けられ、波長板WPが作成される。このような波長板WPは、例えば、図2Bに示すように、Y偏光成分の光が入射光として入射されると、第1領域AR1では、半波長λ/2の位相差が生じることによりZ偏光成分の光が射出光として射出され、第2領域AR2-1では、前記位相差が生じること無くそのままY偏光成分の光が射出光として射出される。
【0031】
なお、図2Aに示す例では、中央部分に第2領域AR2が形成され、その外周に第1領域AR1が形成された波長板WPであったが、図2Cに示すように、中央部分に第1領域AR1が形成され、その外周に第2領域AR2が形成された波長板WPaであってもよい。図2Cに示す波長板WPaにおいて、図示しないが、第2領域AR2の外周に、さらに、2個目の第1領域が形成されてもよい。また、図2Aに示す波長板WPにおいて、図示しないが、第2領域AR2-2の外周に、さらに、2個目の第1領域が形成されてもよい。これら上述の例では、半波長λ/2の位相差を生じさせる第1領域AR1は、1または2個であるが、任意の個数であってよく、この照明受光装置Dの仕様等に応じて適宜に設計される。同様に、上述の例では、偏光を変化させない第2領域AR2は、1または2個であるが、任意の個数であってよく、この照明受光装置Dの仕様等に応じて適宜に設計される。
【0032】
第1光学系Gr21は、入射光を、前記配置面に配置された対象物WKに照射する対物レンズである。第1光学系Gr21については、さらに、後述する。
【0033】
偏光選択光学素子PSは、入射光から特定方向の偏光成分を選択的に取り出して射出光として射出する偏光子である。偏光選択光学素子PSは、例えば、第2領域AR2を透過し、対象物WKで反射し、第1領域AR1を透過して半波長λ/2の位相差が生じた偏光成分を選択的に取り出して射出光として射出する。より具体的には、偏光選択光学素子PSは、Z偏光成分のみを透過させ射出光として射出し、他の偏光成分を遮光する。
【0034】
受光素子ISは、入射光を所定の受光面で受光し、光電変換することによって前記入射光に応じた電気信号を出力する装置であり、例えば、フォトダイオード、PDS(位置検出センサ)、ラインセンサ、または、2次元イメージセンサ等を備えて構成される。受光素子ISには、この照明受光装置Dの仕様等に応じて適宜な種類のセンサが用いられる。
【0035】
第2光学系Gr22は、前記照明光で照明された前記対象物WKの光像を第1光学系Gr21とともに前記受光素子ISの前記受光面に結像するための光学系であり、1または複数のレンズを備えて構成される。
【0036】
これら光源LS、光学系Gr11の第1レンズL11、偏光子PL、バンドパスフィルタBPFおよび光学系Gr11の第2レンズL12は、これらの各光軸を光軸(第1光軸)AX1に合わせて第1光軸AX1に沿ってこの順で順次に配設される。バンドパスフィルタBPFおよび光学系Gr11は、照明光学系を構成し、第1光軸AX1は、この照明光学系の光軸(照明部ILの光軸)である。光源LSから放射された光は、光学系Gr11の第1レンズL11に入射され、第1レンズL11で平行光となって第1レンズL11から偏光子PLに入射され、偏光子PLで所定方向の偏光成分(本実施形態ではY偏光成分)となって偏光子PLからバンドパスフィルタBPFに入射され、バンドパスフィルタBPFで所定の波長範囲の光となって光学系Gr11の第2レンズL12に入射され、第2レンズL12で集光されて照明部ILの照明光として光学系Gr11の第2レンズL12から射出される。
【0037】
なお、照明部ILは、光源LSおよび偏光子PLに代え、所定方向の偏光成分を放射するレーザ光源を前記光源LSとして備え、光源LSと、バンドパスフィルタBPFと、光学系Gr11とを備えて構成されてもよい。
【0038】
これら光源LS、偏光子PL、バンドパスフィルタBPFおよび光学系Gr11を備える照明部ILは、第1光軸AX1と、ビームスプリッタBSの前記傾斜面と45°で交差するように、ビームスプリッタBSに対して配置される。ビームスプリッタBSの前記傾斜面における第1光軸AX1の交差点は、前記傾斜面の中央位置(例えば前記傾斜面が矩形である場合にその2対角線の交点位置)であることが好ましい。したがって、照明部ILから射出された照明光は、その第1光軸AX1に沿って伝播(進行)し、ビームスプリッタBSに入射され、その前記傾斜面で伝播方向(進行方向)が90°曲げられる。すなわち、光源LS、偏光子PL、バンドパスフィルタBPFおよび光学系Gr11における第1光軸AX1は、90°曲げられる。前記照明光は、前記傾斜面で反射され、所定方向の偏光成分(Y偏光成分)の照明光となって、前記傾斜面で90°曲げられた第1光軸AX1に沿って伝播する。
【0039】
波長板WPは、前記対象物WKに対し、前記光源LSを配置する第1位置側かつ前記受光素子ISを配置する第2位置側に配置される。より具体的には、図1に示す例では、波長板WPは、ビームスプリッタBSにおける前記傾斜面で反射した照明光(前記所定方向の偏光成分の照明光)を射出する射出側であって、第1光学系Gr21の像側(前記受光素子IS側)である位置に配置される。ビームスプリッタBSから射出された前記所定方向の偏光成分の照明光は、波長板WPに入射され、第1領域AR1では、半波長λ/2の位相差が生じて前記所定方向に直交する偏光成分(上述の例ではZ偏光成分)となって射出され、第2領域AR2-1では、前記位相差が生じることなくそのまま前記所定方向の偏光成分(上述の例ではY偏光成分)で射出される。
【0040】
第1光学系Gr21は、前記波長板WPを配置する第3位置より前記対象物WKを配置する第4位置側に配置される。波長板WPから射出された各偏光成分の照明光は、第1光学系Gr21に入射され、前記対象物WKを照明する。前記対象物WKの反射光(第1反射光)は、第1光学系Gr21に入射され、第1光学系Gr21を介して波長板WPに入射され、第1領域AR1では、半波長λ/2の位相差が生じて射出され、第2領域AR2-1では、前記位相差が生じることなくそのまま射出される。このため、第1領域AR1に入射した照明光の第1反射光が第1領域AR1に入射されると、前記第1反射光は、前記第1領域AR1に入射した前記照明光の偏光成分と同じ偏光成分(上述の例ではY偏光成分)となって波長板WPから射出される。第1領域AR1に入射した照明光の第1反射光が第2領域AR2-1に入射されると、前記第1反射光は、前記第1領域AR1に入射した前記照明光の偏光成分に直交する偏光成分(上述の例ではZ偏光成分)となって波長板WPから射出される。第2領域AR2-1に入射した照明光の第1反射光が第2領域AR2-1に入射されると、前記位相差が1回(1度)も生じないので、前記第1反射光は、前記第1領域AR1に入射した前記照明光の偏光成分と同じ偏光成分(上述の例ではY偏光成分)で波長板WPから射出される。この波長板WPを透過した照明光の第1反射光は、ビームスプリッタBSに入射し、所定の分割比で分割された透過成分のみ、射出される。
【0041】
偏光選択光学素子PSは、前記波長板WPに対し、前記光源LSを配置する前記第1位置より前記受光素子ISを配置する前記第2位置側に配置される。より具体的には、図1に示す例では、偏光選択光学素子PSは、ビームスプリッタBSにおける前記傾斜面を透過した照明光の第1反射光を射出する射出側であって、第2光学系Gr22の物体側(前記対象物WK側)である位置に配置される。ビームスプリッタBSから射出された第1反射光は、第2光学系Gr22に入射され、第1および第2光学系Gr21、Gr22によって前記対象物WKの光像(前記所定方向に直交する偏光成分の第1反射光で構成された前記対象物WKの光像)が受光素子ISの受光面に結像される。受光素子ISは、光電変換し、前記受光面で受光した前記対象物WKの光像に応じた電気信号を出力する。この受光素子ISから出力された電気信号は、この電気信号を処理する適宜な装置(例えばコンピュータ等の情報処理装置等)へ出力される。
【0042】
本実施形態では、第1光学系Gr21、波長板WP、ビームスプリッタBS、偏光選択光学素子PS、第2光学系Gr22および受光素子ISは、これらの各光軸を光軸(第2光軸)AX2と合わせて第2光軸AX2に沿って物体側から像側へこの順に順次に配設される。第1光学系Gr21および第2光学系Gr22は、前記照明光で照明された前記対象物WKの光像を結像する撮像光学系を構成し、第2光軸AX2は、この撮像光学系の光軸である。この撮像光学系と前記照明光学系とは、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とがビームスプリッタBSの前記傾斜面で互いに直交するように、配置され、前記照明光学系の第1光軸AX1がビームスプリッタBSの前記傾斜面で90°曲げられるから、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とは互いに同軸である。ここで、光源LSの第1位置は、前記照明光学系の第1光軸AX1と前記撮像光学系の第2光軸AX2とが交差する前記傾斜面上の位置とみなすことができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、第1光学系Gr21は、空気との境界である空気界面による反射光(第2反射光)が前記撮像光学系の結像位置からずれる位置に結像する前記空気界面の曲率半径(=1/曲率)で形成された1または複数のレンズを備える。より具体的には、第1光学系Gr21は、照明光の波長において、前記空気界面による第2反射光が前記撮像光学系の結像位置に結像する前記空気界面の曲率半径より小さい曲率半径で形成された1または複数のレンズを備える。より詳しくは、第1光学系Gr21は、例えば図3に示すように、照明光の波長において、前記空気界面による第2反射光の虚像が前記対象物WKと前記第1光学系Gr21との間に位置する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備える。図3に示す例では、第1光学系Gr21の前記空気界面は、2個である。言い換えれば、第1光学系Gr21は、1枚のレンズを備えて構成されている。前記1枚のレンズには、図1に示すように、2個の第1および第2レンズL21、L22を互いに貼り合わせた貼合わせレンズが含まれる。
【0044】
図3は、前記照明受光装置の作用効果を説明するための図である。図4は、比較例を説明するための図である。
【0045】
図4に示す比較例の照明受光装置D’は、第1光学系Gr21に代え、空気界面の曲率半径が比較的大きな1枚のレンズで構成された第1光学系Gr21’を備える点を除き、上述の実施形態における照明受光装置Dの構成と同じ構成である。このような比較例の照明受光装置D’では、照明光の波長において、第1光学系Gr21’の前記レンズにおける像側の空気界面SF2’による虚像が前記対象物WKの外側(第1光学系Gr21’から前記対象物WKより離れる側)の位置P1’に形成され、受光素子ISの受光面では、第1光学系Gr21’と第2光学系Gr22とで構成される撮像光学系の結像位置と、前記空気界面SF2’による第2反射光の結像位置とが近くなってしまう。このため、この比較例の照明受光装置D’では、前記空気界面SF2’による第2反射光の比較的明るい領域(ホットスポット)が受光素子ISの受光面に生じてしまい、ノイズが生じてしまう。この結果、受光素子ISでのSN比が低下してしまう。
【0046】
一方、本実施形態における照明受光装置Dでは、第1光学系Gr21は、照明光の波長において、前記空気界面による第2反射光の虚像が前記対象物WKと前記第1光学系Gr21との間に位置する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズで構成されている。図3に示す例では、第1光学系Gr21は、照明光の波長において、像側の空気界面SF2による第2反射光の虚像が前記対象物WKと前記第1光学系Gr21との間に位置する前記像側の空気界面SF2の曲率半径で形成された1枚のレンズを備える。このような照明受光装置Dでは、照明光の波長において、第1光学系Gr21の前記レンズにおける像側の空気界面SF2による虚像が前記対象物WKと第1光学系Gr21との間の位置P1に形成され、受光素子ISの受光面では、前記空気界面SF2による第2反射光の結像位置は、受光素子ISの受光面の外側(第1光学系Gr21から受光素子ISの受光面より離れる側)の位置P2となる。このため、実施形態における照明受光装置Dでは、前記空気界面SF2による第2反射光は、受光素子ISの受光面で結像せずにぼやけ、前記ホットスポットが軽減される。この結果、受光素子ISでのSN比が改善できる。
【0047】
また、上述から分かるように、偏光選択光学素子PSより物体側の光学系が前記ホットスポットの生成に大きく影響し、偏光選択光学素子PSより像側の光学系は、前記ホットスポットの生成にほぼ影響しない。本実施形態では、第1光学系Gr21が前記ホットスポットの生成に大きく影響し、第2光学系Gr22は、前記ホットスポットの生成にほぼ影響しない。
【0048】
なお、本実施形態において、これらバンドパスフィルタBPFおよび光学系Gr11は、前記光源から放射された光を照明光にして所定の対象物に照明する照明光学系の一例に相当する。第1光学系Gr21および第2光学系Gr22は、前記対象物の光像を前記受光素子の前記受光面に結像する撮像光学系の一例に相当する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態における照明受光装置Dは、前記特定偏光素子を用いること無く前記特定偏光素子に代え、前記第1領域AR1および前記第2領域AR2を持つ波長板WPを用いるので、前記特定偏光素子内で生じる反射光を生じ得ないから、受光素子ISでのSN比を改善できる。
【0050】
上記照明受光装置Dは、第1光学系Gr21が、前記空気界面による第2反射光が前記撮像光学系の結像位置からずれる位置に結像する前記空気界面の曲率半径で形成された1または複数のレンズを備えるので、前記第2反射光が受光素子ISの受光面に結像しないから、受光素子ISでのSN比を改善できる。
【0051】
上記照明受光装置Dは、第1光学系Gr21の前記空気界面が2個である場合には、前記第1光学系Gr21の前記空気界面を最低数にするので、前記空気界面による第2反射光を最低にでき、受光素子ISでのSN比を改善できる。光学パワーが2個の前記空気界面に集約されるため、前記空気界面の曲率半径を小さくし易く、前記第2反射光の前記受光面でのぼけを大きくし易くなる。
【0052】
上記照明受光装置Dは、第1および第2光学系Gr21、Gr22を備え、前記第1光学系Gr21で前記第2反射光を前記受光素子ISの受光面でぼかす一方、前記第1および第2光学系Gr21、Gr22で前記対象物WKの光像を前記第1および第2光学系Gr21、Gr22の収差を取り除きながら前記受光素子ISの受光面で結像するので、受光素子ISでのSN比を改善できる。
【0053】
なお、上述の実施形態において、前記撮像光学系は、倍率が0.5倍以下であれば、より顕著な改善効果がある。例えば、倍率1倍で放射照度が1[W/mm]であり、対象物WKが反射率100[%]の完全散乱体であり、前記撮像光学系の実効Fナンバーが2.0(すなわち、開口数NA=0.25)である場合、前記撮像光学系で取り込めるエネルギーは、0.25=0.0625となり、前記対象物WKの第1反射光(対象物WKの光像)は、約6[%]しか受光素子ISの受光面に到達しない。さらに、倍率が低倍率(例えば0.5倍)になると、倍率の2乗に比例して放射照度が低下するため、対象物WKの第1反射光(対象物WKの光像)は、約2[%]しか受光素子ISの受光面に到達しない。第1光学系Gr21や波長板WPで生じる迷光が仮に1[%]であった場合、これは、前記約2[%]の半分に相当し、受光素子ISでのSN比が大幅に低下してしまう。そこを、上述の実施形態であれば、前記迷光成分を低減できるため、SN比を改善することができ、特に倍率が0.5倍以下であれば、より顕著な改善効果がある。
【0054】
また、上述の実施形態において、第2光学系Gr22は、4個以上の空気界面を持つように、複数のレンズを備えることが好ましい。図5は、前記照明受光装置の変形形態を説明するための図である。例えば、図5に示すように、第2光学系Gr22は、2個のレンズL24、25を備え、4個の空気界面を持つ。このような照明受光装置Dは、空気界面を多く持つので、収差補正等が実施し易くなり、分解能を向上し易くなる。したがって、照明受光装置Dの光学性能が向上できる。
【0055】
また、上述の実施形態において、第2光学系Gr22は、焦点距離を可変する変倍光学系であってもよい。あるいは、第2光学系Gr22は、予め用意された、焦点距離の異なる複数の結像光学系のうちのいずれか1つであってもよい。このような照明受光装置Dは、前記第2光学系Gr22で倍率を変えられるので、前記第1光学系Gr21で前記第2反射光を前記受光素子ISの受光面でぼかす作用効果を維持する一方、変倍して受光できる。
【0056】
また、上述の実施形態における照明受光装置Dは、種々の適用が可能である。例えば、前記特許文献1に開示されているように、表面観察やバルク中の欠陥観察に適用できる。前記表面観察では、上記照明受光装置Dは、傾きやうねりの計測、欠陥やパーティクル等のコンタミ計測、マイクロパターニング等で形成された微小段差計測および粗さ計測等に適用できる。前記バルク中の欠陥観察では、上記照明受光装置Dは、ガラス中の気泡等の観察および歪み等による屈折率の不均一部分の検出等に適用できる。
【0057】
一例として、対象物WKの傾きの計測について説明する。図6は、一例として、前記照明受光装置の傾き計測装置への適用を説明するための図である。図6には、偏光選択光学素子PS、ビームスプリッタBS、波長板WP、第1光学系Gr21および対象物WKが図示され、残余の図示が省略されている。
【0058】
図6において、対象物WKが平坦面の表裏面を持つ板状体である場合、実線で示すように、前記対象物WKが前記配置面に水平に配置され、傾いていないと、Y偏光成分の照明光、および、対象物WKで反射した前記照明光の反射光は、偏光選択光学素子PSを透過できないので、受光素子ISに到達せず、受光素子ISの受光面で受光されない。一方、破線で示すように、前記対象物WKが傾くと、Y偏光成分の照明光、および、対象物WKで反射した前記照明光の反射光は、一部がZ偏光成分となって偏光選択光学素子PSを透過し、受光素子ISに到達するので、受光素子ISの受光面で受光される。例えば、照明部ILから放射された照明光LB1は、ビームスプリッタBSで反射され、波長板WPの第2領域AR2-1を透過し、第1光学系Gr21を介して、傾いた対象物WKに入射されて反射される。この照明光LB1の第1反射光は、第1光学系Gr21を介して、波長板WPの第1領域AR1に入射され、半波長λ/2の位相差が生じてZ偏光成分となって波長板WPからビームスプリッタBSに入射される。このZ偏光成分の第1反射光は、ビームスプリッタBSを透過して偏光選択光学素子PSに入射され、偏光選択光学素子PSがZ偏光成分を透過するように設定されているため、これを透過して、第2光学系Gr22を介して受光素子ISの受光面に到達する。例えば、照明部ILから放射された照明光LB2は、ビームスプリッタBSで反射され、波長板WPの第1領域AR1に入射され、半波長λ/2の位相差が生じてZ偏光成分となって波長板WPから、第1光学系Gr21を介して、傾いた対象物WKに入射されて反射される。この照明光LB2の第1反射光は、第1光学系Gr21を介して、波長板WPの第2領域AR2-1に入射され、波長板WPからビームスプリッタBSに入射される。このZ偏光成分の第1反射光は、ビームスプリッタBSを透過して偏光選択光学素子SPに入射され、これを透過して、第2光学系Gr22を介して受光素子ISの受光面に到達する。このように対象物WKが傾くと、第1反射光の一部のZ偏光成分が受光素子ISの受光面に到達し、受光素子ISから前記Z偏光成分に応じた電気信号が出力される。この電気信号を前記情報処理装置等で検出することで対象物WKの傾きが検知できる。前記電気信号の大きさと傾き角度とを予め対応付けることで、対象物WKの傾き角度が計測できる。
【0059】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0060】
D;照明受光装置、WK;対象物、IL;照明部、LS;光源、PL;偏光子、BPF;バンドパスフィルタ、Gr11;光学系、AX1;照明光学系の第1光軸、BS;ビームスプリッタ、WP;波長板、AR1;第1領域、AR2-1 AR2-2;第2領域、Gr21;第1光学系、Gr22;第2光学系、PS;偏光選択光学素子、IS;受光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6