(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】伸縮性枕カバー
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A47G9/10 W
(21)【出願番号】P 2018170698
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-06-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518326043
【氏名又は名称】株式会社チェリージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】元 瑞杰
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】西 秀隆
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0149985(KR,A)
【文献】登録実用新案第3155837(JP,U)
【文献】中国実用新案第202820615(CN,U)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕本体を挿入するための枕挿入用開口部であって、前記枕本体よりも小さい寸法を有する穴状の枕挿入用開口部が形成された裏地面と、
枕使用時に頭部が接する生地面となる表地面であって、前記裏地面の周縁部において縫合ないし接合されてなる表地面と、を有する枕カバーであって、
少なくとも前記裏地面は、
裁断端部がそのままの状態でもほつれが生じることがなく且つ伸縮性を有するシームレス生地であり、前記裏地面の前記枕挿入用開口部は前記シームレス生地の裁断端部により形成され、かつ、前記枕挿入用開口部の開口周縁部には、ほつれ防止のための縫製部が存在しないことを特徴とする、枕カバー。
【請求項2】
前記表地面が、伸縮性を有し、前記裏地面と同型の形状を有する、請求項1に記載の枕カバー。
【請求項3】
矩形状の形態を有する、請求項1または2に記載の枕カバー。
【請求項4】
前記枕挿入用開口部は前記裏地面の中央に形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の枕カバー。
【請求項5】
前記裏地面と前記表地面が異なる生地によって構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の枕カバー。
【請求項6】
前記シームレス生地は、通常時の寸法の0.5倍~2倍の伸縮率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の枕カバー。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の枕カバーを製造する方法であって、
裏地面用の伸縮性を有するシームレス生地と表地面用の生地を用意し、
前記それぞれの生地を所定形状に裁断するとともに、前記裏地面用の生地においては、枕本体を挿入するための枕挿入開口部であって、前記枕本体よりも小さい寸法を有する穴状の枕挿入用開口部を、前記シームレス生地を裁断することで、前記シームレス生地の裁断端部により形成し、
裁断された前記裏地面と前記表地面とを、それぞれの周縁部において縫合ないし接合する、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枕カバーに関し、より具体的には、少なくとも一方の面がシームレス生地からなることにより開口部のほつれ防止処理が不要であって幅広いサイズや形状の枕に適用することができる枕カバーに関する。また、本発明はそのような枕カバーの効率的な製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
寝具用カバーのうち特に枕カバーについては、近年様々なサイズや形状の枕が販売されていることから、それぞれの枕にぴったりと適合するような専用カバーを用意する必要があり、異なる種類の枕に汎用的に使用することができる枕カバーは極めて少ない。また、枕カバーは毎日使用するものであり、就寝時には頭部からの発汗があるため、清潔に保つためには頻繁に交換することが望ましいが、取替時の着脱には手間と時間がかかるため、その取替頻度は低くなってしまう。
【0003】
このような問題を改善するために、従来は、大きな開口部を形成して、ファスナーやスナップボタンにより開閉することにより容易に着脱可能にする枕カバーが提案されている(特許文献1)。また、異なるサイズや形状の枕であっても、ある程度汎用的に使用でき、枕からカバーを容易に着脱することを目的として、例えば、伸縮性を有する丸編みによる布帛からなる枕カバーや(特許文献2)、伸縮性を有する糸からなる布を縫い合わせることにより製造した枕カバーも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-42856号公報
【文献】実用新案登録第3166050号公報
【文献】実用新案登録第3202245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ファスナーやスナップボタンにより開閉する場合には、それらの開閉用部材を別途取り付ける必要があるために製造工程が増え、コスト高となるとともに、就寝時に体勢を変えると開閉部材が頭部に接触して睡眠の妨げとなる可能性がある。また、丸編みによる伸縮性の布帛を用いる枕カバーの場合には、枕カバー全体を一体的に形成する必要があり、例えば、所望の機能や用途に応じて部分的に他の素材と組み合わせることができないなど、構造の柔軟性に欠ける。また、伸縮性を有する糸からなる布を縫い合わせることにより製造した枕カバーの場合には、外周を縫い合わせる工程に加えて、枕投入用の開口部をほつれ防止など耐久性向上のための縫製処理を別途行う必要があり、熟練の技術を要するとともに製造工程が複雑になる。このような課題を解決することができる枕カバーへのニーズがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討した結果、インナーなどに用いられるシームレス生地を、枕投入用の開口部が形成される裏地面に使用することにより、生地の裁断部がほつれないことから開口部の周縁をほつれ防止の縫製処理を行う必要がなく、さらに、伸縮性のある生地特性によって、様々なサイズや形状の枕に対して使用することができ、取替が容易であり、ずれやよれが生じない枕カバーを提供できることを見出した。また、そのような枕カバーは、ほつれ防止のための縫製処理が不要であり、ファスナーやボタンなどの開閉部材が不要であるため、従来の枕カバーの製造工程よりも簡略化することができ、製造コストや所用時間を短縮することができることを見出した。本発明は、係る知見に基づくものである。
【0007】
本発明による枕カバーは、
枕本体を挿入するための枕挿入用開口部が形成された裏地面と、
枕使用時に頭部が接する生地面となる表地面であって、前記裏地面の周縁部において縫合ないし接合されてなる表地面と、を有する枕カバーであって、
少なくとも前記裏地面は、伸縮性を有し、前記裏地面の前記枕挿入用開口部は裁断形成されてなり、かつ、前記枕挿入用開口部の開口周縁部には、ほつれ防止のための縫製部が存在しないことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の実施態様においては、前記表地面が前記裏地面と同型の形状を有することが好ましい。
【0009】
本発明の実施態様においては、上記枕カバーが矩形を有することが好ましい。
【0010】
本発明の実施態様においては、前記裏地面が、シームレス生地からなることが好ましい。
【0011】
本発明の実施態様においては、前記裏地面と前記表地面が異なる生地によって構成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の別の実施態様において、上記の枕カバーを製造する方法は、
裏地面用の生地と表地面用の生地を用意し、
前記それぞれの生地を所定形状に裁断するとともに、前記裏地面用の生地においては、枕本体を挿入するための枕挿入用開口部を裁断形成し、
裁断された前記裏地面と前記表地面とを、それぞれの周縁部において縫合ないし接合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開口部の周縁部をほつれ防止の縫製処理を行う必要がなく、様々なサイズや形状の枕に対して使用することができ、取替が容易であり、使用時にずれやよれが生じないような枕カバーを提供することができる。さらに、本発明によれば、そのような枕カバーを従来よりも少ない工程で簡易に製造することができることから、設備投資が安価であり、熟練の職人を要しないことから人件費を低減することができ、所用時間を短縮することができるという、枕カバーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施態様における枕カバーの表地面および裏地面を示す図である。
【
図2】本発明の裏地面における枕挿入用開口部の例である。
【
図3】本発明の枕カバーへ枕を装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比を実物のそれらから変更し誇張してある。
【0016】
<枕カバー>
図1~3は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。
図1に示すように、枕カバー10は、表地面11と裏地面12を有している。また、本発明による枕カバー10において、裏地面12には枕挿入用開口部13が形成されている。表地面11の周縁部15と裏地面12の周縁部15’は、縫合ないし接合されている。また、少なくとも該裏地面12は伸縮性を有し、該枕挿入用開口部13の開口周縁部14には、ほつれ防止のための縫製部が存在しない。以下、本発明による枕カバー10を構成する各部材について説明する。
【0017】
<枕挿入用開口部>
図1に示すように、本発明による枕カバー10の枕挿入用開口部13は、枕を該枕カバー10へ挿入するために設けられた開口部であり、使用時に頭部へ接する生地面である表地面11とは逆側の裏地面12に形成される。
図2に示すように、枕挿入用開口部13の形状は、これらに限定されるものではないが、直線、波線、円、楕円、三角形や四角形などの多角形とすることができる。枕挿入用開口部13を形成する裏地面12を、以下に詳述するシームレス生地とすることにより、開口周縁部14の生地の端部が裁断されたままの状態でもほつれることがなく、したがってほつれ防止のための縫製処理を行う必要がない。開口周縁部14にそのような縫製処理を行った縫製部が存在しないことから、見た目にも美しく、肌触りが良いことから使用者の睡眠の妨げにならず、三つ巻き縫製部分において見られる経年使用による汚れの蓄積の問題が生じない。更にほつれ防止の縫製処理工程を要しないことから、製造工程を簡略化することが可能であり、コスト的にも製造効率的にも優れている。
【0018】
<裏地面>
図1に示すように、本発明による枕カバー10の裏地面12は、使用時に頭部へ接する生地面である表地面11とは逆側の生地面である。裏地面12の形状は、好ましくは、表地面11と同じ形状であるが、適用する枕のサイズや形状、または表地面11と裏地面12へ用いる素材の特性に応じて、異なる形状としてもよい。裏地面12に用いられる素材は、伸縮性のある素材が好ましく、生地裁断端部がそのままの状態でもほつれが生じることのないシームレス生地とすることが特に好ましい。
【0019】
<シームレス生地>
本発明による枕カバー10に用いられるシームレス生地とは、縫い目や継ぎ目のない生地のことであって、使用時に内包する枕にぴったりとフィットするような伸縮性を有し、かつ裁断端部にほつれ防止用縫製処理が不要なように加工された生地のことである。このような特性を有する生地であれば、特に限定されるものではない。枕挿入用開口部13を形成してなる裏地面12をシームレス生地とすることにより、開口周縁部14をほつれ防止のために縫製処理する必要がないことから、優れている。
【0020】
そのようなシームレス生地は、通常時の寸法の約0.5倍~2倍の伸縮率を有することが好ましく、可逆的に寸法が変化することにより、内包する枕本体よりも枕挿入用開口部13の寸法を小さくすることができる。枕本体よりも枕挿入用開口部13の寸法を小さくすることにより、枕挿入用開口部13を開閉するファスナーやスナップボタンなどの部材を取り付けなくても、使用時に枕挿入用開口部13から枕が外へ出てくることがない。また、取替の際に、ファスナーやボタンを開閉する必要がないことから、時間と手間を省くことができる点においても優れている。
【0021】
<表地面>
本発明による枕カバー10に用いられる表地面11は、使用時に頭部へ接する生地面のことである。表地面11の形状は、好ましくは、裏地面12と同じ形状であるが、適用する枕のサイズや形状、または表地面11と裏地面12に用いる生地の特性によって、異なる形状としてもよい。
【0022】
表地面11に用いる生地は、裏地面12と同一であっても異なっていても良い。例えば、夏季に使用する枕カバー10については冷涼感を得られる素材としたり、冬季に使用する枕カバーについては起毛素材などの暖かさを感じられる素材とするなど、所望の機能に応じた生地とすることができる。このような表地面11としては、これらに限定されるものではないが、パイル、布帛、キルト生地、ニットなどの生地を使用することができる。また、例えば、消臭機能や防菌・防カビ機能を有する生地など、特別な機能性を有する生地を使用してもよい。このように、表地面11と裏地面12に異なる素材を使うことができることにより、消費者の選択肢を拡げることができる。
【0023】
また、表地面11も伸縮性のある生地とすることにより、例えば、流通過程においては非常にコンパクトなサイズでありながら、使用時には、枕カバー10の寸法よりも、ある程度大きな寸法の枕を内包することができる。このような特性により、流通・保管コストの削減、また梱包材や包装材の削減にもつながるとともに、消費者にとっては小さな枕カバー10に大きな枕を入れることができるという強い興味や関心を与えることができる。
【0024】
また、そのように伸縮性のある生地を用いることにより、例えば、
図3に示すように、矩形の枕(a)、中央部が凸状に隆起した形状の枕(b)、上部が凸状に隆起した形状の枕(c)および首に接する部分が凹状の窪み形状となっている枕(d)等、様々な形状の枕について、ずれやよれを生じることなく、ぴったりとフィットした状態で使用することができる。
【0025】
<枕カバーの製造方法>
本発明による枕カバー10の製造方法は、生地の裁断工程と、裁断された表地面11と裏地面12とを、周縁部15(15’)において縫合ないし接合することを特徴とする。以下、本発明による枕カバー10の製造方法を構成する工程について説明する。
【0026】
<生地の裁断>
本発明による枕カバー10の製造方法においては、表地面11と裏地面12を裁断する工程を含む。裁断方法は所望の形状に生地を裁断することができれば特に限定されるものではないが、効率面の観点から、自動裁断機により裁断することが好ましい。表地面11と裏地面12を同一の形状とする場合には、自動裁断機で一気に裁断してもよい。また、裏地面12については、裏地面12を構成する生地の中央に自動裁断機で穴を形成することにより、挿入開口部13を形成することができる。
【0027】
<生地の縫合/接合>
本発明による枕カバー10の製造方法においては、上記裁断工程において所望の形状に裁断した表地面11と、さらに枕挿入用開口部13を形成した裏地面12とを、それぞれの周縁部15(15’)において縫合ないし接合する工程を含む。表地面11と裏地面12の接合方法は、糸による縫合や、接着剤による接着、熱溶着など、表地面11と裏地面12とが継続的な使用に耐えられ得る限りにおいて任意の方法により接合することができる。また、裏地面12をシームレス生地とすることにより、自動裁断機により形成した挿入開口部13の開口周縁部14を縫製処理する必要がないことから、表地面11と裏地面12とをそれぞれの周縁部15(15’)においてのみ接合すればよく、従来の製造方法に比べて工程数が少なく簡易である。
【0028】
このように、本発明による枕カバー10の製造方法は、例えば従来の封筒式の枕カバーについての(1)生地の裁断工程と、(2)表生地の枕投入口周縁部のほつれ防止のための三つ巻き縫製処理工程と、(3)裏生地の枕挿入口周縁部のほつれ防止のための三つ巻き縫製処理工程と、(4)表生地と裏生地の縫い合わせ工程と、の4工程から成る製造方法と比較して、工程数が少ないことから、設備投資・運営コストが低く抑えられ、自動化できる工程であることから、熟練者が不要であり人件費を低減することができ、製造に要する時間を短縮することができるという優れた効果を有する。
【0029】
以上において、一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
10 枕カバー
11 表地面
12 裏地面
13 枕挿入用開口部
14 枕挿入用開口部の周縁部
15 表地面の周縁部
15’ 裏地面の周縁部