(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】パレタイズ装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/16 20060101AFI20240819BHJP
B65G 57/24 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B25J9/16
B65G57/24
(21)【出願番号】P 2020066059
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年12月18日~令和1年12月19日 テクノホライゾングループ&エルモソリューションフェア 2019 in 名古屋にて展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000132231
【氏名又は名称】株式会社スター精機
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】水野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】青山 俊輔
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-95322(JP,U)
【文献】特開2010-58978(JP,A)
【文献】特開平9-193860(JP,A)
【文献】特開2018-34825(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125767(WO,A1)
【文献】明渡甲志、中嶋久人、北野斉、谷口稔、堤俊成、橋内賢二,住宅設備・建材技術,パナソニック電工技報,パナソニック電工株式会社,2009年03月19日,Vol.57 No.1,p.57-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 57/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の把持片によりワークを挟持して把持する把持部と、
前記把持部を移動させて前記ワークを搬送する搬送部と、
前記把持部及び前記搬送部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記ワークを順次搬送してパレットに積載するパレタイズ装置において、
前記制御部は、前記把持部を前記パレットの積載面に沿って移動させるように前記搬送部を制御することにより、前記把持片に前記ワークを押し込む動作を行わせ、前記押し込む動作によって前記パレット上にある複数の前記ワーク同士の隙間を埋める隙間埋め制御を実行する
ものであって、
前記制御部は、前記隙間埋め制御において、前記ワークを把持している前記把持部を移動させることにより、すでに前記パレットに設置されているワーク同士の隙間を埋める、パレタイズ装置。
【請求項2】
前記把持片は、プレート状に形成されており、
前記一対の把持片のうち第1の把持片は、第2の把持片に対して、前記第1の把持片の下端部が前記第2の把持片の側に近づくように、傾いている請求項
1に記載のパレタイズ装置。
【請求項3】
前記第2の把持片は、上下方向に沿って伸びるように形成された補強部材により補強されている請求項
2に記載のパレタイズ装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記把持部を水平方向において直交する2方向、及び上下方向に直動可能に構成されている請求項1~
3のうちいずれか1項に記載のパレタイズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持し、搬送してパレット上に整列させるパレタイズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの輸送のためにパレットにワークを積載するパレタイズ装置が、生産工場や流通運送業界などで用いられている。このようなパレタイズ装置として、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載されているパレタイズ装置では、検出装置を利用して、ワーク相互間の隙間が小さくなるように、ワークを近接させて配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、一対のプレートにより、ワークを挟んで把持する把持装置を採用している。このような把持装置を採用する場合、プレートでワークを挟み込んだまま移動させ、ワークを配置した後、ワークの間からプレートを抜き取らなければならないという動作の都合上、ワーク間には、少なくともプレートの厚さ寸法に相当する隙間が形成されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ワーク間の隙間を小さくするパレタイズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、一対の把持片によりワークを挟持して把持する把持部と、前記把持部を移動させて前記ワークを搬送する搬送部と、前記把持部及び前記搬送部の動作を制御する制御部と、を備え、前記ワークを順次搬送してパレットに積載するパレタイズ装置において、前記制御部は、前記把持部を前記パレットの積載面に沿って移動させるように前記搬送部を制御することにより、前記把持片に前記ワークを押し込む動作を行わせ、前記押し込む動作によって前記パレット上にある複数の前記ワーク同士の隙間を埋める隙間埋め制御を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】(a)従来におけるハンド部の側面図、(b)本実施形態におけるハンド部の側面図。
【
図6】パレタイズ処理の流れを示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態のハンド部の動作態様を示す模式図。
【
図9】パレタイズ処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明にかかる「パレタイズ装置」を具体化した各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。また、各実施形態及び変形例の説明において、明示している構成の組み合わせだけでなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、各実施形態及び変形例を組み合わせることも可能である。
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すパレタイズ装置10は、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め決められた位置に設置された可搬式のパレットP上に整列させて積載する装置、すなわち、パレタイズする装置である。ワークWは、直方体の箱、例えばダンボール箱であり、外部の搬送設備(ベルトコンベヤなど)から、パレタイズ装置10に設けられているローラコンベヤ1に供給される。そして、供給されたワークWは、ローラコンベヤ1に設けられたストッパ(図示略)により、所定の静止位置に位置決めされて静止する。パレタイズ装置10は、ローラコンベヤ1上に位置決めされて静止しているワークWを把持して搬送するように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0010】
図1に示すように、パレタイズ装置10は、ワークWを把持する把持部としてのチャックハンド部20(以下、単にハンド部20と示す)と、ハンド部20を移動させる搬送部としての搬送機構30と、搬送機構30が固定される直方体の枠体40と、を備える。また、パレタイズ装置10は、ハンド部20及び搬送機構30の動作を制御する制御部としての制御装置100と、各種情報を入出力可能な情報端末としてのコントローラ(図示略)と、を備える。
【0011】
枠体40は、略長方形状の底枠41と、底枠41と同じような長方形状の天井枠42と、底枠41及び天井枠42の四隅に立設する支柱43と、を有する。本実施形態において、枠体40の長手方向をX軸方向とし、短手方向(X軸に直交する方向)をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に垂直となる方向をZ軸方向と示す。なお、パレタイズ装置10は、通常、平面に設置されるため、Z軸方向が上下方向に相当する。また、X軸方向及びY軸方向が、水平方向に相当する。
【0012】
底枠41の長辺のうち1辺の一部は、枠体40の外部から内部へパレットPを通過可能にするため、省略されている。底枠41には、パレタイズ装置10を移動可能に構成するために、複数のキャスター44が設けられている。また、底枠41には、複数の固定脚45が設けられている。固定脚45は、高さ調整機構付きのものであり、高さを調整することにより、キャスター44による移動を不能にして、パレタイズ装置10の位置を固定することができる。なお、固定脚45の代わりに、又は固定脚45とともに、キャスター止めを設けてもよい。
【0013】
ローラコンベヤ1は、枠体40に取り付けられており、Z軸方向において高さ調整可能に構成されている。これにより、ローラコンベヤ1と外部の搬送設備とのZ軸方向における高さ調整を行うことが可能となる。
【0014】
搬送機構30は、枠体40に固定され、Z軸方向に沿って伸びるように形成されている柱部50と、柱部50に固定され、Y軸方向に沿って伸びるように形成されているアーム部60と、を有する。
【0015】
枠体40の支柱43の間には、第1のガイド部としてのX軸ガイドレール51がX軸方向に沿って設けられており、柱部50は、X軸ガイドレール51に対して、X軸方向に沿って移動可能に固定されている。柱部50は、枠体40の底部に配置されるX軸サーボモータ(図示略)の出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、柱部50は、X軸サーボモータの駆動力に基づき、X軸ガイドレール51に沿ってX軸方向に往復移動するように構成されている。
【0016】
柱部50には、第2のガイド部としてのZ軸ガイドレール61がZ軸方向に沿って設けられており、アーム部60は、Z軸ガイドレール61に対して、Z軸方向に沿って移動可能に固定されている。アーム部60は、柱部50に設けられているZ軸サーボモータの出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、アーム部60は、Z軸サーボモータの駆動力に基づき、Z軸ガイドレール61に沿ってZ軸方向に往復移動するように構成されている。
【0017】
また、柱部50には、Z軸ガイドレール61とは別にZ軸方向に沿ってカウンタウェイト63用のリニアガイド64が設けられている。カウンタウェイト63は、アーム部60に連結されており、アーム部60が移動する際、アーム部60の反対方向に移動するように構成されている。カウンタウェイト63により、アーム部60の重量を打ち消し、Z軸サーボモータの駆動力が小さくても、アーム部60の移動及び停止を容易に行うことができる。なお、カウンタウェイト63用のリニアガイド64が設けられているため、カウンタウェイト63からアーム部60に伝わる振れを抑制することが可能となる。
【0018】
アーム部60には、第3のガイド部としてのY軸ガイドレール21がY軸方向に沿って設けられており、ハンド部20は、Y軸ガイドレール21に対して、Y軸方向に沿って移動可能に固定されている。ハンド部20は、アーム部60に設けられているY軸サーボモータの出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、ハンド部20は、Y軸サーボモータの駆動力に基づき、Y軸ガイドレール21に沿ってY軸方向に往復移動するように構成されている。
【0019】
以上に説明したように、搬送機構30は、ハンド部20を水平方向において直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)に直動可能に構成されている。
【0020】
図1,
図2に示すように、ハンド部20は、回転機構23を介してアーム部60に固定されている。回転機構23は、内蔵する旋回サーボモータ(図示略)の駆動力に基づき、回転機構23を中心としてZ軸周り(
図1において矢印Rの方向)にハンド部20を旋回可能に構成されている。
【0021】
ハンド部20は、回転機構23に取り付けられる長方形状の基部24と、基部24に対して固定される一対の把持片としての一対のプレート25,26と、を有する。基部24は、その平面がZ軸に対して垂直となるように回転機構23に対して固定されている。また、基部24は、光電管センサ27を備え、基部24の直下にワークWが存在するか否かを検出可能に構成されている。
【0022】
一対のプレート25,26は、基部24の長手方向(
図2において左右方向)において離間するように基部24に設けられている。そして、一対のプレート25,26のうち、第1のプレートとしての固定側プレート25は、基部24の長手方向両端のうち一端側に、基部24に対して移動不能に固定されている。固定側プレート25は、略長方形の薄板状に形成されており、Z軸方向に沿って伸びるように固定されている。固定側プレート25は、例えば、カーボンプレートであり、基部24の長手方向内側の平面には、摩擦抵抗シートが貼付されている。
【0023】
また、一対のプレート25,26のうち、第2のプレートとしての可動側プレート26は、基部24に対して移動可能に固定されている。詳しくは、基部24は図示しないスライド用サーボモータの駆動力に基づいて長手方向に沿ってスライドするスライド機構28を有し、可動側プレート26は、スライド機構28に固定されている。よって、可動側プレート26は、スライド機構28とともに基部24の長手方向に沿って往復移動するように構成されている。
【0024】
可動側プレート26は、略長方形の薄板状に形成されており、Z軸方向に沿って伸びるように固定されている。可動側プレート26は、例えば、カーボンプレートであり、基部24の長手方向内側の平面には、摩擦抵抗シートが貼付されている。また、可動側プレート26の長手方向外側の平面には、長手方向に突出する補強部材としてのリブ29が設けられている。このリブ29は、Z軸方向に沿って壁状に設けられている。
【0025】
なお、一対のプレート25,26は、基部24の長手方向において、その平面同士が対向するように基部24に取り付けられている。よって、スライド機構28により、可動側プレート26を固定側プレート25の側に移動させることにより、一対のプレート25,26の間に配置されるワークWが挟持されることとなる。
【0026】
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。制御装置100は、前述した各種サーボモータを駆動させるための駆動回路を備えており、駆動回路を介して各種サーボモータの動作を制御可能に構成されている。
【0027】
また、この制御装置100は、光電管センサ27、各種サーボモータ及びコントローラ等と接続されており、各種情報を取得可能に構成されている。また、制御装置100は、各種機能を備え、取得した各種情報に基づき、各種機能を実行する。これらの機能は、制御装置100が備える記憶装置(記憶用メモリ)に記憶されたプログラムが実行されることで、各種機能が実現される。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0028】
各種機能の中には、例えば、ワークWを搬送し、パレットPに積載するパレタイズ機能が存在する。パレタイズ機能について簡単に説明すると、制御装置100は、所定の静止位置に位置決めされて静止しているワークWをハンド部20により把持させ、ワークWごとハンド部20を搬送機構30によりパレットP上に移動させ、解放することにより、ワークWを積載する機能である。この機能により、ワークWは、例えば、
図3に示すように、パレットP上に、上下方向(Z軸方向)に複数段に亘って積み重ねられるとともに、各段において、所定方向(X軸方向又はY軸方向)に複数の列(
図4ではX軸方向に2列)に整列させて積載される。
【0029】
ところで、ワークWが、ダンボール箱のような包装資材により内容物が包まれて構成されている場合、内容物の重量、もしくは包装資材の強度によっては、吸引式の保持具よりもプレート25,26で挟持したほうが、安定して搬送することができる。加えてプレート25,26の場合は、エアを供給する設備を必要としないので、小型化することが可能であり、移動式のパレタイズ装置10には適している。
【0030】
しかしながら、プレートによりワークWを挟持する場合、ワークWの間に隙間が形成されるという問題がある。すなわち、ワークWを解放させた後、挟持させていたプレートをワークWの間から上方へ引き抜くこととなるので、ワークWの間には、少なくともプレートの厚さ寸法に相当する隙間が形成されるという問題がある。
【0031】
ワークWの相互間に大きな隙間や、数多くの隙間が形成されると、安定性や耐圧性に欠け、移動の際、荷崩れが生じやすくなるという問題がある。なお、ワークWを解放させた後、整列方向の外側からワークWをハンド部20により押し込ませて、隙間をなくすことも考えられるが、解放後、ハンド部20を整列方向の外側に移動させる手間がかかり、作業効率が低下してしまう。そこで、本実施形態では、ワークW間の隙間を極力なくし、かつ、短時間でワークWを積載することができるように、以下のような工夫をしている。
【0032】
第1の工夫として、固定側プレート25の厚さ寸法を極力薄く構成するようにした。そして、
図5(c)、
図5(d)に示すように、複数のワークWを整列させる場合、その固定側プレート25がワークWの間に配置されるようにした。これにより、ワークWを整列させた後、ワークWを解放させて、固定側プレート25を上方に引き抜いてもワークWの間の隙間を小さくすることができる。
【0033】
なお、固定側プレート25の厚さ寸法を極力薄くする場合、次のような問題が生じやすくなる。すなわち、
図4(a)に示すように、ワークWを挟持する際、固定側プレート25が反り返り、ワークWの上部しか接触しなくなり、安定性に欠けるという問題があった。そこで、
図2に示すように、固定側プレート25が、可動側プレート26に対して所定角度αの傾きを有するように構成した。
【0034】
より詳しくは、可動側プレート26は、Z軸方向に平行に、つまり、基部24に対して垂直方向に固定されている。一方、固定側プレート25は、その下端部が可動側プレート26の側に近づくように、Z軸方向に対して所定角度αだけ傾かせて、基部24に対して固定されている。つまり、固定側プレート25は、基部24の長手方向内側に傾くように固定されている。所定角度αは、固定側プレート25の剛性や厚さ寸法に応じて任意に変更可能であるが、例えば、1~10度の範囲内であることが望ましく、本実施形態では3度としている。これにより、
図4(b)に示すように、固定側プレート25が反り返るような薄さにしたとしても、安定して挟持することが可能となる。ちなみに、可動側プレート26は、前述したようにリブ29が設けられているので、反り返ることはない。
【0035】
第2の工夫は、制御装置100は、ハンド部20をパレットPの積載面に沿って移動させるように搬送機構30を制御することにより、固定側プレート25にワークWを押し込む動作を行わせ、押し込む動作によってパレットP上にある複数のワークW同士の隙間を埋める隙間埋め制御を実行するようにした。本実施形態において、制御装置100は、この隙間埋め制御において、ワークWを把持しているハンド部20を移動させることにより、すでにパレットPに設置されているワークW同士の隙間を埋めるようにしている。より詳しく説明すると、複数のワークWを整列方向に沿って順次整列させる場合、一対のプレート25,26が整列方向に前後するようにワークWをハンド部20に把持させ、そのままハンド部20を整列方向に移動させて、固定側プレート25によって端のワークWを押し込ませるようにした。
【0036】
この動作について、
図5に基づいて具体的に説明する。
図5では、左から順番に、ワークW1、ワークW2、ワークW3と示し、ワークW1→ワークW2→ワークW3の順番で、配置されるものとする。
図5(a)に示すように、制御装置100は、複数のワークW1~W3を整列させる場合、既に整列されているワークW1,W2の端(
図5ではワークW2の右隣)にワークW3を移動させるように、ワークW3を把持したままのハンド部20を移動させる。その際、固定側プレート25が、ワークW2の側に配置され、可動側プレート26が、ワークW1~W3の外側(ワークW3を中心としてワークW2の反対側)に配置されるようにハンド部20を移動させる。
【0037】
次に、
図5(b)に示すように、制御装置100は、ハンド部20をワークW2に近づけるように、整列方向において、ハンド部20をワークW2側に向かって移動させる(
図5(b)の矢印方向)。そして、
図5(c)に示すように、制御装置100は、そのまま固定側プレート25によって、ワークW2を整列方向前方(図において矢印方向)に、つまり、ワークW2をワークW1側に押し込むようにハンド部20を移動させる。この押込みは、ワークW1とワークW2との間の隙間がなくなるまで実行される。その後、
図5(d)に示すように、制御装置100は、ワークW3を解放させ、ハンド部20を上方へ引き抜くように移動させる。
【0038】
なお、この場合、ワークW2とワークW3との間に固定側プレート25の厚さ寸法に相当する隙間が形成される。しかしながら、ワークW3の隣に次のワークWを整列させる場合、ワークW3が同様にして整列方向に押し込まれるため、ワークW2とワークW3との間の隙間は、解消される。また、ワークW3が最後尾であっても、つまり、次のワークWが整列されない場合であっても、第1の工夫により、固定側プレート25の厚さ寸法を極力薄くしているため、隙間の大きさを抑制することができる。
【0039】
ここで、制御装置100が実行するパレタイズ処理について
図6に基づいて詳しく説明する。パレタイズ処理は、所定のタイミング(例えば、コントローラの指示が入力されたタイミング)で実行される。パレタイズ処理を開始すると、制御装置100は、まず、所定の静止位置に位置決めされて静止しているワークWをハンド部20により挟持させ、把持させる(ステップS101)。このステップS101が把持ステップである。
【0040】
次に、制御装置100は、搬送機構30により、ワークWごと、ハンド部20をZ軸方向に上昇させる(ステップS102)。そして、制御装置100は、搬送機構30により、ハンド部20をX軸方向及びY軸方向に移動させ、ハンド部20を所定の停止位置に停止させる(ステップS103)。所定の停止位置は、ワークWを複数段に亘って積み重ねるとともに、各段において、所定の整列方向に沿ってワークを1又は複数列に整列させるための位置であり、ワークWの寸法及び個数、段数、列の数、パレットPの大きさ、積み方などの情報に基づいてワークWごとに算出される。これらの情報は、コントローラにより入力される。
【0041】
なお、ワークWを下降させる際、すでに載置されているワークWとの接触を防止するため、多少の余裕をもって、例えば、整列方向において、直前に載置されたワークWとの隙間が空くようにワークWの停止位置が設定される。
【0042】
また、ステップS103において、制御装置100は、ワークWを整列させる場合、整列方向において、固定側プレート25と可動側プレート26が前後するようにハンド部20を回転機構23により回転させる。その際、固定側プレート25でワークWを押し込ませるために、整列方向において前方側が固定側プレート25となるように、ハンド部20を回転させる。
【0043】
次に、制御装置100は、搬送機構30により、ワークWごと、ハンド部20をZ軸方向に下降させる(ステップS104)。このステップS104により、ハンド部20は、例えば、
図5(a)に示す位置に配置される。
【0044】
次に、制御装置100は、整列方向において、予め設けられた余裕(隙間)がなくなるように、ハンド部20の位置調整を行う(ステップS105)。具体的には、制御装置100は、整列方向において、固定側プレート25がすでに配置されているワークWの側面に接触する程度まで、ハンド部20を水平移動させる。このステップS105により、ハンド部20は、
図5(b)に示すように固定側プレート25がワークW2の側面に接触するまで移動する。
【0045】
なお、整列方向において、先頭となるワークWを配置する場合には、このステップS105は、省略される。このステップS102~ステップS105が、ワークWごとハンド部20を搬送機構30により移動させて、ワークWを所定の整列方向に沿って順次整列させる移動ステップである。
【0046】
次に、制御装置100は、整列方向において、複数のワークWがすでに整列して配置されているか否かを判定する(ステップS106)。この判定結果が肯定の場合、制御装置100は、ワークWを挟持したまま、固定側プレート25を整列方向前方に押し込むように移動させる(ステップS107)。つまり、制御装置100は、ワークWを解放する前に、固定側プレート25によって、すでに配置されている複数のワークWのうち端のワークWを整列方向に沿って、押し込ませる。この押し込み動作は、例えば、固定側プレート25の厚さ寸法に相当する距離を移動する(押し込む)まで、実行される。このステップS106により、ハンド部20は、
図5(c)に示すように移動することとなる。このステップS107が押込ステップであり、隙間埋め制御に相当する。
【0047】
その後、制御装置100は、可動側プレート26を整列方向後方にスライド移動させて、ワークWを解放させる(ステップS108)。このステップS108が、解放ステップである。そして、制御装置100は、ハンド部20をZ軸方向に上昇させ、ワークWの静止位置に戻るようにハンド部20の移動を制御する(ステップS109)。このステップS109により、
図5(d)に示す状態となる。
【0048】
そして、制御装置100は、すべてのワークWを積載したか否かを判定する(ステップS110)。この判定結果が肯定の場合、パレタイズ処理を終了する。一方、ステップS110の判定結果が否定の場合、制御装置100は、ステップS101以降の処理を再び実行する。また、ステップS106の判定結果が否定の場合、制御装置100は、ステップS108の処理に移行する。
【0049】
なお、第1実施形態では、各列の最後尾となるワークWとその内側のワークWとの間には、固定側プレート25の厚さ寸法に相当する隙間ができてしまう。このため、各列の最後尾となるワークWに対しては、当該ワークWを解放後、ハンド部20を当該ワークWの整列方向外側に移動させて、最後尾のワークWを押し込んで隙間をなくしてもよい。
【0050】
上記第1実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
制御装置100は、ハンド部20をパレットPの積載面に沿って移動させるように搬送機構30を制御することにより、固定側プレート25にワークWを押し込む動作を行わせ、押し込む動作によってパレットP上にある複数のワークW同士の隙間を埋める隙間埋め制御を実行する。より詳しくは、すでに複数のワークWが整列している場合(ステップS106が肯定の場合)、整列している複数のワークWのうち整列方向において端のワークWを押し込む押込み動作を行わせる。この押込み動作において、制御装置100は、プレート25,26が整列方向に前後するようにワークWをハンド部20に把持させた状態で、そのままハンド部20を整列方向に移動させて、固定側プレート25によって端のワークW(
図5においてワークW2に相当)を押し込ませてワークW同士の隙間を埋める。このように、ワークW3を解放させる前に、ワークW3を把持したまま、ハンド部20を移動させて、ワークW2を押し込む。このため、ワークWを解放させるごとに、ハンド部20をワークWの外側に移動させてワークWを押し込む場合に比較して、外側に移動させる手間を省くことができる。したがって、ワークW間の隙間を小さくしつつ、短時間でワークWを積載することができる。
【0051】
また、一対のプレート25,26によりワークWの側面を挟持するため、例えば、ワークWがダンボール箱であって、ワークWの上面側の強度が弱い場合や、内容物の重量が重い場合であっても、適切に把持することが可能となる。
【0052】
複数のワークWを整列させる場合であって、ワークWを解放させる際に、ワークWの間に配置される固定側プレート25は、可動側プレート26に対して、その下端部が可動側プレート26の側に近づくように、傾いている。これにより、固定側プレート25を極力薄く構成し、反り返ってしまう場合であっても、
図4(b)に示すように接触面を大きくして、ワークWを安定して保持することができる。また、固定側プレート25を薄くすることができるので、ワークWの解放後に形成されるワークW間の隙間寸法を小さくすることができる。
【0053】
また、ワークW3を把持したまま、固定側プレート25にて、すでに配置されているワークW2を押し込むようにしている。このため、固定側プレート25を薄く構成した場合であっても、ワークW3を把持することによって、ワークW2を押し込む際に固定側プレート25が反り返ることを防止することができる。つまり、適切にワークW2を押し込むことができる。
【0054】
多関節アームを有するパレタイズ装置では、通常、多関節アームを支持する台座部周辺において、ワークWを把持及び移動させることはできず、デッドスペースとなっている。一方、第1実施形態のパレタイズ装置10では、ハンド部20をX軸、Y軸、及びZ軸方向に直動させるようにしている。これによれば、多関節アームを有するパレタイズ装置に比較してデッドスペースが少なく、パレタイズ装置10の設置スペースを小さくすることができる。
【0055】
(第2実施形態)
上記第1実施形態の構成を、次の第2実施形態のように変更してもよい。以下、第2実施形態では、主に、上記各実施形態で説明した構成に対する相違部分について説明する。また、第2実施形態では、パレタイズ装置10の基本構成として、第1実施形態のものを例に説明する。
【0056】
第2実施形態では、一対のプレート25,26の下方への突出長さを異ならせている。詳しくは、
図7に示すように、Z軸方向において、固定側プレート25の長さ寸法が、可動側プレート26の長さ寸法に比較して、短くなるように構成されている。なお、固定側プレート25は、第1実施形態と同様に、Z軸方向に対して所定角度αだけ可動側プレート26の側にその下端部が近づくように、傾かせている。
【0057】
また、第2実施形態では、制御装置100は、隙間埋め制御において、ハンド部20にワークWを解放させた後、ワークW同士の間から突出長さの短い固定側プレート25を退避させ、突出長さの長い可動側プレート26の下端部分によって、把持していたワークWを押し込むようにしている。
【0058】
この動作について、
図8に基づいて具体的に説明する。
図8では、左から順番に、ワークW1、ワークW2、ワークW3と示し、ワークW1→ワークW2→ワークW3の順番で、配置されるものとする。
図8(a)に示すように、制御装置100は、複数のワークW1~W3を整列させる場合、既に整列されているワークW1,W2の端(
図8ではワークW2の右隣)にワークW3を移動させるように、ワークW3を把持したハンド部20を移動させる。その際、固定側プレート25が、ワークW2の側に配置されるようにハンド部20を移動させる。
【0059】
次に、
図8(b)に示すように、制御装置100は、ワークW
3を解放させ、ハンド部20を上方に移動させる。その際、固定側プレート25をワークWの間から退避させる一方で、可動側プレート26の下端部分をワークWと整列方向において対向させるように移動させる。
【0060】
そして、
図8(c)に示すように、整列方向前方、つまり、解放されたワークW3の側にハンド部20を移動させて可動側プレート26の下端部分によって、ワークW3をワークW2の側へ押し込ませるようにしている。この押込みは、ワークW2とワークW3との間の隙間がなくなるまで実行される。
【0061】
ここで、第2実施形態のパレタイズ処理について
図9に基づいて詳しく説明する。なお、ステップS201~ステップS205までの処理は、第1実施形態のステップS101~ステップS105までの処理と同じであるため、説明を省略する。また、ステップS205が実行されることにより、例えば、
図8(a)に示す状態となる。
【0062】
ステップS205の終了後、制御装置100は、可動側プレート26を整列方向後方にスライド移動させて、ワークWを解放させる(ステップS206)。第2実施形態では、ステップS206が解放ステップである。
【0063】
次に、制御装置100は、整列方向において、複数のワークWが整列しているか否かを判定する(ステップS207)。このステップS207では、ステップS206で解放させたワークWを含めて複数のワークWが整列しているか否かを判定する。この判定結果が肯定の場合、制御装置100は、固定側プレート25をワークWの間から退避させる一方で、可動側プレート26の下端部分をワークWと整列方向において対向させるようにハンド部20を上方に移動させる(ステップS208)。これにより、例えば、
図8(b)に示す状態となる。
【0064】
そして、制御装置100は、整列方向前方、つまり、解放されたワークW3の側にハンド部20を移動させて可動側プレート26の下端部分によって、ワークW3をワークW2の側へ押し込ませる(ステップS209)。これにより、例えば、
図8(c)に示す状態となる。第2実施形態では、ステップS208、S209が押込ステップであり、隙間
埋め制御に相当する。
【0065】
その後、制御装置100は、ステップS210、S211の処理を実行する。なお、ステップS210、S211は、第1実施形態のステップS109、S110の処理と同じであるため、説明を省略する。一方、ステップS207の判定結果が否定の場合、制御装置100は、ステップS210の処理を実行する。
【0066】
第2実施形態の構成によれば、次のような効果を得ることができる。
制御装置100は、隙間埋め制御において、ハンド部20にワークWを解放させた後、ワークW同士の間から突出長さの短い固定側プレート25を退避させ、突出長さの長い可動側プレート26の下端部分によって、把持していたワークWを押し込む。これにより、ワークWを解放させるごとに、ハンド部20をワークWの外側に移動させてワークWを押し込む場合に比較して、上方に移動させるだけでよいため、移動させる手間及び時間を省くことができる。また、ワークW相互間の隙間をすべてなくすことができる。
【0067】
また、固定側プレート25を第1実施形態と同様に、Z軸方向に対して所定角度αだけ可動側プレート26の側に傾くようにしている。これにより、固定側プレート25の反り返りを防止し、上下方向において、固定側プレート25の長さ寸法を短くしても、安定してワークWを挟持することができる。
【0068】
(変形例)
・上記実施形態では、第2の工夫のみを採用し、第1の工夫を採用しなくてもよい。そして、固定側プレート25を傾けたが、傾けなくてもよい。つまり、可動側プレート26と平行となるように、固定側プレート25を設けてもよい。
【0069】
・上記実施形態において、第1の工夫のみを採用し、第2の工夫を採用しなくてもよい。すなわち、制御装置100は、隙間埋め制御を実行しなくてもよい。このようにしても、固定側プレート25の厚さ寸法を薄くすることにより、ワークW間の隙間を小さくすることができる。
【0070】
・上記実施形態において、ハンド部20の把持片をプレート上に形成したが、把持片の形状はこれに限定されず、例えば、爪状に形成してもよい。
・上記実施形態の搬送機構30は、水平方向に直交する2方向、及び上下方向にハンド部20を直動させることができるのであれば、上記構成に限定されない。
【0071】
・上記実施形態において、固定側プレート25の角度調整機構を設けてもよい。これにより、ワークWの重さや大きさなどに応じて、適切な角度に調整することが容易となる。
・上記第2実施形態において、ステップS205は実行されても実行されなくてもよい。すなわち、ステップS205が実行されず、ワークW間に大きな隙間が形成されたとしても、その後、ワークWが押し込まれて隙間がなくなるため、問題がない。
【0072】
・上記第1実施形態では、複数のワークWが整列している場合、ワークWを移動させるごとに、ワークWを押し込むようにしていた。この別例として、複数個のワークWを押し込むようにしてもよい。例えば、整列方向において最後尾となるワークWを把持している場合にのみ、整列しているワークWのうち端に位置するワークWを押し込むようにしてもよい。この場合、複数のワークW間の隙間がなくなるように、ワークWを押し込む距離を調整する必要がある。具体的には、すでに整列しているワークW相互間の隙間が全てなくなるように、隙間の数×固定側プレート25の厚さ寸法分の距離を押し込むようにすることが望ましい。
【0073】
・上記第2実施形態では、ワークWを解放させた後、複数のワークWが整列している場合、その都度、ワークWを押し込むようにしていた。この別例として、複数個のワークWを押し込むようにしてもよい。例えば、整列方向において最後尾となるワークWのみを押し込むようにしてもよい。この場合、複数のワークW間の隙間がなくなるように、ワークWを押し込む距離を調整する必要がある。具体的には、整列しているワークW相互間の隙間が全てなくなるように、隙間の数×固定側プレート25の厚さ寸法分の距離を押し込むようにすることが望ましい。
【符号の説明】
【0074】
10…パレタイズ装置、20…ハンド部、25…固定側プレート、26…可動側プレート、30…搬送機構、50…柱部、60…アーム部、100…制御装置、P…パレット、W,W1~W3…ワーク。