(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】変形加工機
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20240819BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20240819BHJP
F16P 3/14 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B21D5/02 M
B21D5/02 X
B30B15/00 B
F16P3/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020071231
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-04-10
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513083853
【氏名又は名称】フィースラー エレクトロニク ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ フィースラー
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-525123(JP,A)
【文献】特開2015-211984(JP,A)
【文献】特開2018-103262(JP,A)
【文献】特表2019-504768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041001(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00789182(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/00
F16P 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠(2)を備える変形加工機(1)であって、
前記機枠(2)上には、上方工具(4)と下方工具(5)とが設けられ、
前記上方工具(4)および前記下方工具(5)のうちの少なくとも一方は、移動経路(14)に沿って相対移動可能に前記機枠(2)に収容され、
前記上方工具(4)および前記下方工具(5)の互いに対向して配置される端面(6,7)は、寸法可変な作業ギャップ(8)を形成し、
前記上方工具(4)又は前記下方工具(5)には、第1光学安全光バリア(20)が関連付けられ、
前記第1光学安全光バリア(20)は、前記作業ギャップ(8)に隣接する第1安全空間(28)を保護するために用いられ、
前記第1光学安全光バリア(20)は、第1安全光ビームを供給する第1ビーム源(21)と、前記第1安全光ビームを受ける第1光レシーバ(23)とを備え、
前記第1ビーム源(21)および前記第1光レシーバ(23)は、前記第1安全空間(28)の互いに対向する境界面に配置され、
前記機枠(2)又は前記上方工具(4)には、第2光学安全光バリア(30)が割り当てられ、
前記第2光学安全光バリア(30)は、第2安全光ビームを供給する第2ビーム源(33)と、前記第2安全光ビームを受ける第2光レシーバ(34)とを備え、
前記第2光学安全光バリア(30)は、第2安全空間(31)を保護するように設計され、
前記第2安全空間(31)は、前記上方工具(4)の
前面(18)である最大
面の前方に位置することで、前記第2安全空間(31)の前記上方工具(4)への投影が前記上方工具(4)の少なくとも一部分を覆い、
前記第2ビーム源(33)および前記第2光レシーバ(34)は、互いに対向する側部に配置され、
前記第2光学安全光バリア(30)は、第3安全空間(51)を監視するように設計され、
前記第3安全空間(51)は、前記移動経路(14)に沿って前記下方工具(5)の方向に、前記下方工具(5)と対向する前記上方工具(4)の前記端面(6)を超えて
前記第2安全空間(31)の鉛直方向下側から下向きに延在し、
前記作業ギャップ(8)への前記第3安全空間(51)の投影が前記作業ギャップ(8)の少なくとも一部分を覆う、
変形加工機(1)。
【請求項2】
前記移動経路(14)に沿った相対移動を開始するための駆動機構(10,11)は、相対移動可能に前記機枠(2)上に配置された前記上方工具(4)、および/又は、相対移動可能に前記機枠(2)上に収容された前記下方工具(5)に関連付けられ、
前記駆動機構(10,11)、前記第1光学安全光バリア(20)、および前記第2光学安全光バリア(30)は、安全制御装置(17)に接続され、
前記安全制御装置(17)は、前記第1光学安全光バリア(2
0)および前記第2光学安全光バリア(30)からの信号に応じて、前記駆動機構(10,11)を始動および停止するように設計され、
前記安全制御装置(17)は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間に予め決定可能な距離が存在し、対象(50)が前記第3安全空間(51)に進入する場合に、前記駆動機構(10,11)を始動して、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離を縮小するように設計される、
請求項1に記載の変形加工機(1)。
【請求項3】
前記安全制御装置(17)は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離が縮小する間、対象(50)が前記第1安全空間(28)、前記第2安全空間(30)、又は前記第3安全空間(51)に進入すると、前記駆動機構(10,11)を停止するように設計される、
請求項
1に記載の変形加工機。
【請求項4】
前記安全制御装置(17)は、前記下方工具(5)とワークピース止め具(15)との間の、調整可能な距離を設定するのに利用される、アクチュエータ(46)を停止するように設計される、
請求項2又は3に記載の変形加工機。
【請求項5】
前記上方工具(4)は前記機枠(2)に相対移動可能に収容され、
前記第1光学安全光バリア(20)は前記上方工具(4)上に配置され、
前記第2光学安全光バリア(30)は前記機枠(2)上に配置される、
請求項2、3、又は4に記載の変形加工機。
【請求項6】
前記上方工具(4)は前記機枠(2)に相対移動可能に収容され、
前記第1光学安全光バリア(20)は前記上方工具(4)上に配置され、
前記第2光学安全光バリア(30)は前記第1光学安全光バリア(20)と
位置的に接続される、
請求項2,3、又は4に記載の変形加工機。
【請求項7】
前記上方工具(4)と前記第1光学安全光バリア(20)との間に、調整装置(22)が配置され、
前記調整装置(22)は、前記上方工具(4)に対する前記第1光学安全光バリア(20)の移動経路(14)に沿った位置を調整するように設計される、
請求項5又は6に記載の変形加工機。
【請求項8】
前記第1光学安全光バリア(20)および前記第2光学安全光バリア(30)は、前記上方工具(4)および/又は前記下方工具(5)の、操作者と対向する前
面(18,29)を保護するように設計される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の変形加工機。
【請求項9】
変形加工機(1)を操作する方法であって、
安全制御装置(17)によって第1安全空間(28)を監視する工程であって、
前記第1安全空間(28)は、寸法可変な作業ギャップ(8)に隣接して設けられ、
前記作業ギャップ(8)は、互いに対向して設けられる上方工具(4)および下方工具(5)の端面(6,7)によって形成され、
前記上方工具(4)および前記下方工具(5)のうちの少なくとも一方は、移動経路(14)に沿って相対移動可能であり、
前記第1安全空間(28)の監視は、第1光学安全光バリア(20)を利用し、
前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離の縮小中における、前記第1安全空間(28)の監視は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離における予め決定可能な第1距離間隔の範囲内で実行され、
前記距離の縮小は、対象(50)が前記第1安全空間(28)に進入するときに終了する、
第1安全空間(28)を監視する工程と、
前記安全制御装置(17)によって第2安全空間(31)を監視する工程であって、
前記第2安全空間(31)は、前記上方工具(4)の
前面(18)である最大
面の前方に位置し、前記移動経路(14)を横断する投影において、前記上方工具(4)の
前記最大
面を少なくとも部分的に覆い、
前記第2安全空間(31)の監視は第2光学安全光バリア(3
0)を利用し、
前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離の縮小中の、前記第2安全空間(31)の監視は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離における予め決定可能な第2距離間隔の範囲内で実行され、
前記距離の縮小は、対象(50)が前記第2安全空間(31)に進入するときに終了する、
第2安全空間(31)を監視する工程と、
前記安全制御装置(17)によって第3安全空間(51)を監視する工程であって、
前記第3安全空間(51)は、前記作業ギャップ(8)の前方に位置し、前記移動経路(14)を横断する投影において、前記作業ギャップ(8)を少なくとも部分的に覆い、
前記第3安全空間(51)の監視は、前記第2光学安全光バリア(30)を利用し、
前記第3安全空間(51)の監視は、前記上方工具(4)および前記下方工具(5)の静止段階中に実行され、
前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離の変更は、対象(50)が前記第3安全空間(51)に進入するとき、又は、前記対象(50)が前記第3安全空間(51)に進入した後に前記第3安全空間(51)から離れるときに始動され、かつ/又は、
ワークピース止め具(15)の前記上方工具(4)又は前記下方工具(5)に対する距離の変更は、対象が前記第3安全空間(51)に進入するときに終了する、
第3安全空間(51)を監視する工程と、を備える、
方法。
【請求項10】
対象(50)が前記第3安全空間(51)に進入するときの、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離の縮小は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離が、予め決定可能な第3距離間隔の範囲内である場合にのみ開始される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の前記距離の縮小は、前記上方工具(4)と前記下方工具(5)との間の距離が予め決定可能な第4距離間隔の範囲内である場合に限り、対象(50)が前記第3安全空間(51)に進入するときに開始される、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1距離間隔における最小の距離は、前記第2距離間隔における最大の距離に等しいか、それ以上である、
請求項9、10、又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3距離間隔における最小の距離は、前記第2距離間隔における最大の距離に等しいか、それ以上である、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第4距離間隔は、前記第2距離間隔と等しい、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、機枠を備える変形加工機に関するものであって、機枠上には、上方工具と下方工具とが設けられ、上方工具および下方工具のうちの少なくとも一方は、移動経路に沿って相対移動可能に機枠に収容され、上方工具および下方工具の互いに対向して配置される端面は、寸法可変な作業ギャップを形成し、第1光学安全光バリアが上方工具又は下方工具に関連付けられ、第1光学安全光バリアは、第1安全空間、特に作業ギャップに隣接する直方体状の第1安全空間を保護するように設計され、第1光学安全光バリアは、第1安全光ビームを供給する第1ビーム源と、第1安全光ビームを受ける第1光レシーバとを備え、第1ビーム源および第1光レシーバは、作業ギャップを挟んで対向するように配置され、機枠又は上方工具には、第2光学安全光バリアが割り当てられ、第2光学安全光バリアは、第2安全光ビームを供給する第2ビーム源と、第2安全光ビームを受ける第2光レシーバとを備え、第2光学安全光バリアは、特に直方体状の第2安全空間を保護するために使用され、第2安全空間は、上方工具の最大面の前方に配置され、第2安全空間の上方工具への投影が上方工具の少なくとも一部分を覆い、第2ビーム源および第2光レシーバは、第2安全空間における、特に鉛直方向に配置された、互いに対向する境界面上に配置される。
【0002】
欧州特許出願公開第3321557A1に開示されている変形加工機は、一対の工具が設けられた機枠を備え、一対の工具のうちの1つは移動経路に沿って相対移動可能であるように機枠に設けられ、一対の工具は寸法可変な作業ギャップを形成し、第1光学安全光バリアは可動である工具に関連付けられ、一対の工具の端面に平行な第1ビームを供給する第1ビーム源と、第1ビームを受ける第1光レシーバとを備え、第2光学安全光バリアは一対の工具のうちの1つに関連付けられ、第2ビームを供給する第2ビーム源と、第2ビームを受ける第2光レシーバとを備え、移動経路に垂直に配置されて端面に隣接する工具の側面を保護する。
【0003】
本発明の課題は、変形加工機および、変形加工機の操作方法を提供することであり、それにより、変形加工機の簡易化された操作および改良された保護の実現を可能にする。
【0004】
この課題は、上述した種類の変形加工機に係る、本発明の第1の局面によって解決される。第1の局面では、第2安全光バリアは第3安全空間を監視するように設計され、第3安全空間は、移動経路に沿って下方工具の方向に、下方工具と対向する上方工具の端面を超えて下向きに延在する。その場合、作業ギャップへの第3安全空間の投影が、作業ギャップの少なくとも一部を覆うようにする。
【0005】
第1安全光バリアの役割は、下方工具に対向する上方工具の端面に直接隣接する第1安全空間を監視し、それにより、上方工具の下方工具に向かう接近移動中(又は、下方工具の上方工具に向かう接近移動中)に、狭窄していく作業ギャップ内における操作者の干渉を検出すること、および、各場合において相対移動可能であるように機枠に設けられた上方工具と下方工具とからなる群のうち一工具の駆動機構を停止し、事故を防ぐことである。このようなシステムは、出願人によってAKASという製品名で市販され、AKASは、作業ギャップに隣接する、特に直方体状の第1安全空間を保護するように設計された第1光学安全光バリアを備える。この第1光学安全光バリアは、第1安全光ビームを供給するための第1ビーム源と、第1安全光ビームを受けるための第1光レシーバとを備え、光バリア又は光グリッドとも記載され得る。第1安全空間は、互いに対向して設けられる第1ビーム源および第1光レシーバによって横方向の境界付けがなされる。第1ビーム源および第1光レシーバの構成に応じて、第1安全空間は、ビーム源と光レシーバとの間に延在する境界の形状で表すことができ、その輪郭は楕円形、円筒形、長方形、又は正方形の断面を有し得る。
【0006】
第2光学安全光バリアの役割は、特に直方体状の第2安全空間を監視することであり、第2安全空間は、上方工具の最大面の前方、つまり前側に位置する。第2安全空間は、操作者に対向する空間部分であり、機械操作の間、上方工具と下方工具との間に置かれて曲げ作業の過程で変形されるワークピースが、上方に移動し得ることで、操作者に対向する上方工具の最大面に接近できる空間である。例えば、加工される金属薄板部品が上方工具と下方工具との相互作用によって作業ギャップ内で曲げられ、それによって、ワークピースのうち当初操作者に対向していた部分が、円軌道を辿り、上方工具の最大面に向かって移動する。金属薄板部品を安定させるために把持している操作者が、手を負傷してしまうリスクがある。したがって、この空間部分には事故のリスクがあるため、事故を防ぐために、第2安全空間と呼ばれるこの空間部分は、第2光学安全光バリアによって監視される。好ましくは、第2安全空間は、移動経路を横断する、好ましくは上方工具の前部に垂直な空間方向への第2安全空間の投影が、上方工具を少なくともほぼ完全に覆うような寸法で形成される。
【0007】
さらに、第2光学安全光バリアは、移動経路に沿って下方工具の方向に、下方工具に対向する上方工具の端面を超えて下向きに延在する第3安全空間を監視することによって、さらなる役割を担う。したがって、作業ギャップへの第3安全空間の投影、つまり、下方工具に対向する上方工具の端面と上方工具に対向する下方工具の端面との間に延在する、作業ギャップにわたる投影面への第3安全空間の投影は、少なくとも作業ギャップの一部分、特に帯状の一部分を覆う。
【0008】
第3安全空間を監視する第1の目的は、機枠に可動に設けられた上方工具と下方工具とからなる群に含まれる各工具の予め決定可能な相対移動を、フットペダル又はハンドスイッチを作動させる必要なく起動させることである。むしろ、例えば、操作者が作業対象のワークピースを作業ギャップに供給するか、又はワークピースを作業ギャップから除去することによって、変形加工機の相対移動を起動させるように提供され得る。
【0009】
第3安全空間を監視する第2の目的は、下方工具に対して可動であることにより、ワークピースの挿入深さを決定するワークピース止め具の予め設定可能な相対移動の安全を図ることである。ワークピース止め具の(通常は水平な)移動中に、下方工具とワークピース止め具との間の空間に操作者が干渉可能となることは回避するべきである。それは、ワークピース止め具の調整中に、ワークピース止め具と下方工具との間に操作者の手が置かれると怪我をする危険があるためである。
【0010】
本発明の、さらなる有利な発展は、従属請求項の主題である。
【0011】
相対移動可能に機枠に設けられた上方工具、および/又は、相対移動可能に機枠に収容される下方工具が、移動経路に沿った相対移動を始動させる駆動機構を割り当てられ、駆動機構、第1安全光バリア、および第2安全光バリアが安全制御装置に接続され、安全制御装置は、第1安全光バリアおよび第2安全光バリアからの信号に応じて、駆動機構を起動し、また、停止するように設計され、安全制御装置は、上方工具と下方工具との間に予め決定可能な距離が存在し、対象が第3安全空間に進入する場合に、駆動機構を始動して、上方工具と下方工具との間の距離を縮小するように設計されると、有用である。
【0012】
一例として、駆動機構は、電気直接駆動、電気ギア駆動、又は電気油圧駆動として設計され、上方工具、および/又は、下方工具の、移動経路に沿った直線運動を提供する。この目的のために、駆動機構は、特に、プログラマブル論理制御装置(PLC)として設計され得る安全制御装置システムに電気的に接続される電気モータを備える。
【0013】
安全制御装置は、駆動機構の安全指向制御のために設計され、この目的のために適切な切替え手段を備え、例えば駆動機構用電力供給の二線式遮断器などのために設計される。駆動機能の安全指向の運転停止が必要か否かを決めるために、安全制御装置は第1光学安全光バリアおよび第2光学安全光バリアに電気的に接続され、第1光学安全光バリアおよび第2光学安全光バリアから供給されるセンサ信号を受け取るように設計される。好ましくは、それぞれの光学安全光バリアのセンサによって供給される個々のセンサ信号の処理は、例えば、それぞれの光学安全光バリアで局所的に実行される。この処理作業のために直接的に最適化された回路装置が提供され得るためである。この場合、安全光ビームの減衰が予め設定可能であれば、それぞれの光学安全光バリアは、安全制御システムに対してセンサ信号の出力のみをする。
【0014】
任意には、光学安全光バリア、および/又は、安全制御システムは、予め決定可能な手順(フェードアウト)に応じて、所定のエリアにおいて、第1光学安全光バリア、および/又は、第2光学安全光バリアを停止するように設計されることができる。それにより、第1光学安全光バリア、および/又は、第2光学安全光バリアの安全光ビームの予測可能な遮断によってワークピースの変形工程の予定の順序を中断しないようにする。
【0015】
また、安全制御装置は、第3安全空間に関して第2光学安全光バリアに問い合わせをするように設計されることができ、それにより、第3安全空間内における安全光ビームの遮断に基づいて、又は、結果として生じる第2光学安全光バリアのセンサ信号に基づいて、ワークピースが第3安全空間内の作業ギャップの方向に正確に供給されているか、又は、ワークピースが作業ギャップから除去されつつあり、その過程で、第3安全空間内の安全光ビームが遮断されているかを認識する。入射する安全光ビームに応じて第2光学安全光バリアに設けられるセンサから第2光学安全光バリアにおいて提供されるセンサ信号の処理を簡潔化するために、好ましくは、第2安全空間と第3安全空間との間における区別が第2光学安全光バリア内においてされない。その代わりに、第2光学安全光バリアに設けられるセンサから第2光学安全光バリアにおいて提供される全てのセンサ信号が、常に処理される。
【0016】
一例として、対象が進入するとき、特に、ワークピースが第3安全空間の起動区間内に供給されるとき、第2光学安全光バリアの安全光ビームの十分に大きな減衰に基づいて、ワークピースが第3安全空間に供給されつつあると判断することができれば、駆動機構は安全制御システムによって起動されてもよい。この場合、上方工具と下方工具との間の作業ギャップを縮小することによる変形動作が望ましいと推測され、フットペダル又はハンドスイッチを起動することなく変形動作を実施できるようにする。
【0017】
代替的に、上方工具と下方工具との間の作業ギャップの縮小による変形動作は、対象が先ず第3安全空間に進入し、その後に第3安全空間から除去されたときにのみ起動されてもよい。このような態様で変形動作を起動させることで、例えば、操作者がワークピースを把持して第3安全空間に導入することで、自身の手によって第3安全空間内の安全光ビームを減衰させ、これが、第2光学安全光バリアによって、第3安全空間内への対象の進入として検出されることが推測される。操作者がワークピースを作業ギャップ内に設置した後、操作者はワークピースから手を離すことができ、これが、第3安全空間からの対象の除去として検出され、所望の変形動作の開始が可能となる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態においては、対象が第1安全空間又は第2安全空間に進入するとき、上方工具と下方工具との間の距離の縮小の間に、安全制御システムが駆動機構を停止するように設計されることが意図される。対象が第1又は第2安全空間に進入すると、危険な状況であると推測され、駆動機構の緊急停止又は、駆動機構の作動方向転換のいずれかが行われる。
【0019】
追加的に、又は代替的に、安全制御装置は、アクチュエータを停止するように設計されてもよく、この安全制御装置により、下方工具とワークピース止め具、具体的には水平方向に調節可能なワークピース止め具との間の距離が設定される。アクチュエータは、例えば、駆動機構が停止され、第3安全空間が第2光学安全光バリアによって監視される場合に起動できる。対象が第3安全空間に進入すると、ワークピース止め具と下方工具との間の距離の縮小によって、操作者が圧潰のリスクに曝される危険な状況であると推測され、アクチュエータにおいては、緊急運転停止又は作業方向の変更のいずれかが行われる。
【0020】
好ましくは、上方工具は相対移動可能に機枠に収容され、第1光学安全光バリアは上方工具に設けられ、第2光学安全光バリアは機枠に設けられる。この構成では、第2光学安全光バリアは、好ましくは、作業ギャップが完全に開放されたときに上方工具の上端となり得る最高位置から、鉛直方向下向きに、少なくとも上方工具に対向する下方工具の端面まで延在する。
【0021】
代替的に、上方工具が相対移動可能に機枠に収容され、第1安全光バリアが上方工具に設けられ、第2安全光バリアが第1安全光バリアに設けられるように構成される。
【0022】
本発明の有利なさらなる発展では、上方工具と第1安全光バリアとの間に、調整装置が設けられ、調整装置は、移動経路に沿った、上方工具に対する第1安全バリアの位置を調整するように設計される。これにより、下方工具に対向する上方工具の端面に対する第1光学安全光バリアの位置を調整することが可能となる。上方工具が異なれば、その移動方向における計数も異なり得るためである。
【0023】
第1光学安全光バリアおよび第2光学安全光バリアが、上方工具および/又は下方工具の操作者に対向する前面を保護するように設計されると有用である。
【0024】
本発明の課題は、本発明の第2の局面に係る変形加工機の操作方法により解決され、操作方法は、第1安全空間を監視する工程であって、第1安全空間は、上方工具および下方工具の対向する端面のうちの一方に隣接して設けられ、第1安全空間の監視は第1光学安全光バリアを利用し、第1安全空間の監視は、上方工具と下方工具との間の距離の縮小中に、上方工具と下方工具との間の距離における予め決定可能な第1距離間隔の範囲内で実行され、距離の縮小は、対象が第1安全空間に進入するときに終了する、第1安全空間を監視する工程と、第2安全空間を監視する工程であって、第2安全空間は上方工具の最大面の前方に位置し、移動経路を横断する投影において、上方工具の最大面を少なくとも部分的に覆い、第2安全空間の監視は第2光学安全光バリアを利用し、上方工具と下方工具との間の距離の縮小中の第2安全空間の監視は、上方工具と下方工具との間の距離における予め決定可能な第2距離間隔の範囲内で実行され、距離の縮小は、対象が第2安全空間に進入するときに終了する、第2安全空間を監視する工程と、第3安全空間を監視する工程であって、第3安全空間は、作業ギャップの上流に位置し、移動経路を横断する投影において、作業ギャップを少なくとも部分的に覆い、第3安全空間の監視は第2光学安全光バリアを利用し、第3安全空間の監視は、上方工具および下方工具の静止段階中に実行され、上方工具と下方工具との間の距離の変更は、対象が第3安全空間に進入するとき又は、対象が第3安全空間に進入した後に第3安全空間から離れるときに始動され、かつ/又は、ワークピース止め具の上方工具又は下方工具に対する距離の変更は、対象が第3安全空間に進入するときに終了する、第3安全空間を監視する工程と、を備える。
【0025】
好ましくは、第1距離間隔は、上方工具と下方工具との間の距離が、上方工具の、下方工具への高接近速度(「高速」、又は「最高速度」ともいう)からの制動距離と、安全制御装置に収容されたワークピースの厚さとの和よりも大きくなるような寸法とされる。上方工具と下方工具との間の距離がこの和と等しいか、この和よりも小さくなるとすぐに、駆動機構は、通常、上方工具と下方工具との間において、著しく遅い接近速度(「クリープ速度」ともいう)に切り替わり、これは、操作者にいかなる危険も及ばないと推測される速度である。
【0026】
好ましくは、第2距離間隔は、上方工具と下方工具との間の距離がワークピースの厚さと等しいか、ワークピースの厚さよりも小さくなるような寸法とされ、それにより、第2安全空間の監視が、ワークピースの実際の変形工程(特に、曲げ作業)の間に実行される。
【0027】
上記方法のさらなる構成では、上方工具と下方工具との間の距離の縮小は、上方工具と下方工具との間の距離が予め決定可能な第3距離間隔の範囲内である場合に、対象が第3安全空間に進入するときのみ開始される。
【0028】
作業ギャップ内へのワークピースの有利な供給を許容するためには、第1距離空間の下限より、第3距離間隔の下限が好ましい。
【0029】
上記方法のさらなる構成では、上方工具と下方工具との間の距離の縮小は、上方工具と下方工具との間の距離が予め決定可能な第4距離間隔の範囲内である場合に、対象が第3安全空間に進入するときにのみ開始される。これによって、ワークピースが第3安全空間内に供給されて、上方工具と下方工具との間の接近の移動が開始された後でも、ワークピースを変形工程のために上方工具および下方工具に対して正しい位置に移動させる時間が十分にあることが確実となる。
【0030】
上記手順のさらなる変形例では、第1距離間隔の最小距離量(間隔下限)が第2距離間隔の最大距離量(間隔上限)に等しいか、それ以上であることが意図される。これは、第1安全空間の監視が、上方工具と下方工具とが互いに接近しているために継続されていない場合にのみ、第2安全空間の監視が実行されることを意味する。したがって、第1安全空間を監視するために当初利用可能な安全制御装置内のデータは、第1距離間隔の間隔下限を通過した後に、第2安全空間の監視のために利用可能となる。
【0031】
上記手順のさらなる変形例では、第3距離間隔の最小距離量が、第2距離間隔の最大距離量に等しいか、それ以上であることが意図される。
【0032】
また、第4距離間隔も第2距離間隔と等しい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の有利な実施形態を図面に示す。
【
図1】その構成要素が機枠の両側部に配置される2つの光学安全光バリアを有する変形加工機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から
図3に単に概略的に示す変形加工機1は、一対の工具3が設けられた機枠2を備える。例えば、変形加工機1は、プレスブレーキとして設計され、例えば、一対の工具3の上方工具4と下方工具5との間で金属薄板部品を曲げるなどして、金属薄板部品の変形を可能にする。一例として、上方工具4および下方工具5は、それぞれ面平行板として設計され、対向する端面6,7上に互いに対応し合う形状を有する。上方工具4および下方工具5の2つの端面6,7は、一対の工具3の寸法可変な作業ギャップ8の鉛直方向の伸長を制限し、距離27を決定する。
【0035】
一例として、下方工具5は機枠2上の静止位置に固定され、一方で、上方工具4は、機枠2に可動に搭載されるために、機枠2に搭載される高さ調整可能な支柱10,11に設けられた工具ホルダ9によって固定される。一例として、支柱10,11は、液圧シリンダのピストンロッドであり、機枠2に収容され、上方工具4の移動経路14に沿った垂直位置の調整を可能にし、移動経路14は、単に一例として鉛直方向となるよう配置される。
図1の記載から見て取れるように、上方工具4および下方工具5は、機枠2よりも狭い幅で設計されている。
【0036】
図示されていない設計では、両方の工具が高さ調整可能である。別の図示されていない設計では、下方工具のみが高さ調整可能である。
【0037】
図2によると、機枠2の上側12上に設けられ、単に一例として棒状に形成されたワークピース止め具15は、コンパクトに設計され典型的にはアクチュエータとして使用される液圧シリンダ
16の可動ピストンロッ
ドの援助により作業ギャップ8に接近し、又は、作業ギャップ8から離間することができる。これにより、ワークピース止め具15は、ワークピース50の深さ方向の止め具として機能する。ワークピース50の変形前の原形は、
図2に記載のように板状である。
【0038】
図1,2に示すように、変形加工機1は、合計で3つの光学安全光バリア20,30,40を備え、以下にその詳細を記載する。3つの光学安全光バリア20,30,40はそれぞれ、空間の予め決定可能な、特に円筒状又は直方体状の空間部分を監視するように設計され、その空間部分内では、変形加工機1の少なくとも所定の操作段階の間は、操作者による干渉によって操作者に危険が及び得る。
【0039】
変形加工機1の目的に沿った使用中に、変形加工機1を使用する操作者は空間部分内で独占的に作業をし、当該空間部分は変形加工機1の前方に位置し、かつ、上方工具4および下方工具5の前
面18,29に隣接し、前
面18,29は工具ホルダ9又は機枠2から遠い。この作業ゾーン47を
図3に示す。一例として、変形加工機1の後方にある、操作者から離れる側の空間領域は、詳細に記載されていないフェンスの様なバリアによって保護されることができる。しかしながら、作業ゾーン47内で作業をする操作者が、変形加工機1の目的に沿った使用中に、ワークピース50を取り扱うことによって危険な領域へ到達することを除外することはできない。このような領域における危険は、作業ギャップ8内における上方工具4の下方工具5への接近の移動に関連し得る。別の危険は、ワークピース50と上方工具4の前
面18との間における、ワークピース50の一領域の上方工具4の前
面18への接近をもたらす、ワークピース50の曲げに関連する。変形加工機1の安全な使用性を確実にするため、光学安全光バリア20,30,40が備えられる。
【0040】
第1光学安全光バリア20は、作業ギャップ8の前方の第1安全空間28を監視するように設計され、単に一例として長方形の輪郭(
図1,2における点線部)で示され、かつ、第1ビーム源21を備える。第1ビーム源21は、単に一例として、合計で3つの特定されない光ビーム、特にレーザービームを供給する。ビーム源21の光ビームは、上方工具4および下方工具5の端面6,7の長辺に対して少なくとも実質的に平行に整列される。
【0041】
第1ビーム源21は調整装置22と接続され、調整装置22は、例えば、電気的に操作可能なネジ山付きスピンドルドライブとして設計され、工具ホルダ9および工具ホルダ9に装着された上方工具4に対する第1ビーム源21の鉛直方向位置の変更を可能にする。調整装置22は工具ホルダ9と接続されるため、第1ビーム源21は常に工具ホルダ9の移動を行うが、調整装置22による対応する制御によって、同一方向又は反対方向の運動が重なって実行される場合を除く。
【0042】
調整装置22は、単に概略的に示される安全制御装置17に、詳細に記載されていない態様で電気的に接続され、安全制御装置17は、典型的には単独の部品として設計されるが、第1光学安全光バリア20に一体化されることもでき、安全制御装置は、工具ホルダ9および工具ホルダ9に装着された上方工具4に対する第1ビーム源21の位置を調整するように設計される。
【0043】
第1光レシーバ23は、第1ビーム源21に対向して設けられ、単に一例として、3つのセンサエレメント24,25,26を備える。センサエレメント24,25,26はそれぞれ、第1ビーム源21が供給する対応する光ビーム(さらに特定はされない)を受けるように設計される。第1光レシーバ23は、常に確実に第1ビーム源21と対向して位置するように、第1ビーム源21と同様に調整装置27に装着される。調整装置27は、特定されない態様で安全制御装置17に電気的に接続され、安全制御装置17によって、調整装置22と同調して制御されることができる。
【0044】
また、第1ビーム源21および第1光レシーバ23はいずれも、特定されない態様で安全制御装置17に電気的に接続される。安全制御装置17は、一方では、第1ビーム源21の特定されない光源を選択的に制御し、他方では、第1光レシーバ23のセンサエレメント24,25,26のセンサ信号を評価する。代替的には、第1光レシーバ23からのセンサ信号の評価および、個々のセンサエレメント24,25,26又は一群のセンサエレメント24,25,26のセンサ信号の、実行可能な一時的観測停止(フェードアウト)は、第1光学安全光バリア20において直接実行される。
【0045】
さらに、安全制御装置17は、以下で詳述するように、上方工具4の移動に影響を与えるように設計される。
【0046】
第2光学安全光バリア30は、単に概略的に示す(
図1,2において二点鎖線で示される)第2安全空間31を監視するために備えられる。第2安全空間31は、直方体形状を有し、その最大面60は、操作者領域に対向する上方工具4の前
面18と平行に延在する。単に一例として、安全空間31の最大面60の端部32は、第2ビーム源33と第2光レシーバ34との間に水平方向に延在し、第2安全空間31の最大面の側端38は、移動経路14と平行に、鉛直方向に延在する。一例として、上方工具4の前面18上に対する第2安全空間31の投影62は、
図2に単に概略的に示すが、少なくともほぼ完全に上方工具4を覆うことが意図される。
【0047】
図2に示す第2光レシーバ34は、第2安全空間31の幅の狭い側面に隣接する。第2安全空間31の表面は、第2安全空間31の側端と、第2安全空間31の水平に延在する上端および水平に延在する下端とによって境界付けられる。
【0048】
また、第2光学安全光バリア30は、第3安全空間51を監視するために設けられる。第3安全空間51は、
図1,2に一点鎖線で示され、典型的には第2安全空間51に隣接し、第2安全空間31の鉛直方向下側に直接接続され、第2安全空間31と同様に直方体の形状を有する。したがって、第3安全空間51は、その最大面61が、操作者領域に対向する下方工具5の前
面29と平行となるように延在する。
【0049】
第2ビーム源33は、第2光レシーバ34の方向に光グリッド又は光カーテンを提供するように設計される。第2ビーム源33の光ビームは、第2安全空間31および第3安全空間51を通過することで、第2安全空間31および第3安全空間51それぞれの空間領域において、操作者の指又は手の進入により、直線状に配置された第2光レシーバのセンサエレメント35が受ける光ビームが減衰し、この光ビームの減衰が、光レシーバ34のセンサ信号の顕著な変化において確認できることを確実にする。
【0050】
センサ信号の評価のために、第2光レシーバ34は、詳細に記載されていない態様で安全制御装置17と電気的に接続される。さらに、第2ビーム源33もまた、詳細に記載されていない態様で安全制御装置17と電気的に接続され、それにより、安全空間31を通過する光ビームの選択的な提供、又は、停止を可能にする。代替的に、センサエレメント35のセンサ信号の評価および、個々のセンサエレメント35又は一群のセンサエレメント35のセンサ信号の、可能な一時的な観測停止(フェードアウト)が、第2光学安全光バリア20にて直接実行される。
【0051】
一例として、第1光学安全光バリア20および第2光学安全光バリア30は、上方工具4が下方工具5に対して移動する間に第1安全空間28および第2安全空間31を監視する。それにより、上方工具4と下方工具5との間における接近の移動の間、および、(ワークピース50の曲げ作業のために)ワークピース50の一部分と上方工具4の前面18との間に生じ得る接近の移動の間に、操作者が被り得る危険の可能性を減らすか又は無くす。さらに、一例として、第2光学安全光バリア30は、とりわけ上方工具4と下方工具5との間に相対移動がないときに、第3安全空間51を監視するように構成される。
【0052】
好ましくは、第2光学安全光バリア30は、上方工具4が下方工具5に対して静止しているときに、第2安全空間31および第3安全空間51を監視する。ワークピース50が第2安全空間31および/又は第3安全空間51内に進入すると、安全制御装置17は変形加工機1を作動させる信号を提供することができる。それにより、ワークピース50を第2安全空間31および/又は第3安全空間51に供給するだけで、それに続くワークピース50の変形工程を開始させることができる。
【0053】
代替的に、第2安全空間31および/又は第3安全空間51内への対象の進入と、それに続く第2安全空間31および/又は第3安全空間51からの対象の除去の連続の結果として、変形加工機1を始動させる信号の提供が安全制御装置17によってなされてもよい。このような手順が好ましいのは、特にワークピース50だけでは第2光学安全光バリア30の安全光ビームの確実な減衰を保証できず(例えば、ワークピース50が薄い、又は小さい場合)、そのため、第2光学安全光バリア30からのセンサ信号を安全制御装置17へ提供させるのに、操作者の手による第2安全空間31および/又は第3安全空間51内への干渉が必要になる場合である。この場合、上方工具4と下方工具5との間の距離の縮小が、操作者が第2安全空間31および/又は第3安全空間51から手を引いた後にのみ実行されると有利である。
【0054】
好ましくは、上方工具4と下方工具5との間の距離の縮小は、対象の進入と除去が予め決定可能な時間間隔の範囲内で行われる場合にのみ安全制御装置17によって有効とされ、それにより、変形加工機1に起こり得る操作エラーを避ける。
【0055】
追加的に又は代替的に、上方工具4と下方工具5との間の相対移動およびワークピース止め具15の下方工具5に対する相対移動の静止段階の間、第2光学安全光バリア30を第3安全空間51の監視に利用することが可能である。例えば、第2光学安全光バリア30の安全光ビームが中断又は減衰した場合、安全制御装置17は、操作者が第3安全空間51に干渉していて、その結果として、下方工具5に向かうワークピース止め具15の可能な接近の移動によって、操作者が負傷する恐れがある、と結論付けることができ、したがって、この場合は、アクチュエータとして機能する液圧シリンダ16が停止される。
【0056】
図3の記載から分かるように、第2ビーム源33の光軸36は、第2ビーム源33と第2光レシーバ34との間の間隔に対して鋭角に配置されることで、周辺光線37が上方工具4の前面18で反射するのを防ぐ。
【0057】
図1から3に示す変形加工機1の設計態様では、第3光学安全光バリア40は、単に一例として、下方工具5の後部、つまり後端41と、ワークピース止め具15の前部、つまり前端42との間の空間領域を保護するために備えられる。第3光学安全光バリア40は、第3ビーム源43と第3光レシーバ44とを備え、これらは互いに対向して機枠2に静的に固定される。第3ビーム源43は、不特定の光ビーム、特にレーザービームを提供するように設計され、光ビームは、下方工具5の
端面7と平行に配置され、第3ビーム源43と第3光レシーバ44との間に障害物がないことを条件として第3光レシーバ44のセンサエレメント45に当たる。第3ビーム源43および第3光レシーバ44は、安全制御装置17と、特定されない態様で電気的に接続される。安全制御装置17は、第3ビーム源を選択的に起動および停止し、かつ、第3光レシーバ44から提供されるセンサ信号を処理するように設計される。
【0058】
第3ビーム源43が起動しているときに第3ビーム源43と第3光レシーバ44との間の光路が遮断されると、第3光レシーバ44は、光路の遮断がなければ生じるはずのセンサ信号を提供しない。その結果、安全制御装置17は、センサ信号の設定値と実際値との間の乖離を検知し、それにしたがって、操作者が危険に曝されていることを推測しなければならず、それにより、液圧シリンダ16への液圧供給が停止されて潜在的な危険を排除する。
【0059】
第2光学安全光バリア30が適切に設計および配置されていれば、第3光学安全光バリア40を省くことができる。というのは、ワークピース止め具15の下方工具5に対する調節の移動の間、第2光学安全光バリア30の援助により第3安全空間51を監視することで、第3光学安全光バリア40の役割が相乗的に実行できるためである。
【0060】
変形加工機1の操作のため、以下の手順が提供され得る。すなわち、第1工程として、変形加工機1は、プログラマブル論理制御装置(PLC)19を利用してプログラムされる。PLC19は、特定されない態様で、安全制御装置17に電気的に接続され、例えばキーボードなどの、プログラミングコマンドを入力するための特定されない入力手段を備える。変形加工機1のプログラミング中に、例えば、上方工具4と下方工具5との間に収容されることになるワークピース50を所望の態様で変形させるために、上方工具4をどの距離まで下方工具5へ近接させるかを定義することが可能である。さらに、プログラミング中にはワークピース止め具15の位置も定義され、この位置は、変形加工機1の作動中に、制御装置19および液圧シリンダ16の援助により設定される。
【0061】
このワークピース止め具15の設定手順の間、第3ビーム源43が安全制御装置17によって起動され、かつ、第3光レシーバ44のセンサ信号が安全制御装置17によって処理され、それにより、第3ビーム源43と第3光レシーバ44との間の光路が遮断された場合に液圧シリンダの液圧供給を停止できるようにすることで、操作者に及ぶ可能性のある危険を排除する。
【0062】
追加的に、又は代替的に、第3安全空間51を監視し得る第2光学安全光バリア30を利用して、このワークピース止め具15の調節作業の保護策を備えてもよく、対象が第3安全空間51に進入する場合には、液圧シリンダへの液圧供給を停止することで、操作者に及ぶ可能性のある危険を排除できるように備えてもよい。
【0063】
ワークピース止め具15の位置決めが成功した後に、第3ビーム源43が備えられていて何かしら使用されているのであれば、第3ビーム源43を停止し、安全制御装置17における第3光レシーバ44のセンサ信号の処理はこれ以上実行されない。
【0064】
制御装置19のプログラミング中に、上方工具4および下方工具5に関する仕様も作成されたため、安全制御装置17は、設定装置22に接続された2つの光学安全光バリア20,30の位置を設定することができ、それにより、光学安全光バリア20,30は、後続する機械加工処理において好ましい位置となる。
【0065】
続く工程では、ワークピース50は操作者によって変形加工機1に供給されることができる。一例として、操作者は、板状のワークピース50を作業ギャップ8内へと水平方向に押し、それによって、ワークピース50は下方工具5の端面7上に配置され、作業ギャップ8内へとワークピース止め具15に向かって水平方向に、ワークピース50の前面がワークピース止め具15に当接して止まるまで押されることが意図される。
【0066】
このワークピースを作業ギャップ8内へ供給する工程の間、ワークピース50が十分に厚いか、又は操作者が第3安全空間51に干渉した場合、第2ビーム源33と第2光レシーバ34との間の光ビームは少なくとも部分的に遮断され、これは、変形作業を開始する起動信号として理解される。それにより、安全制御装置17は、プログラマブル論理制御装置19に対して、上方工具4の下方工具5に対する相対移動を開始するための信号を提供することができる。
【0067】
一例として、この信号の提供は、第3安全空間51における安全光ビームの遮断の原因がワークピース50である場合のみに実行されるように構成されてもよい(ワークピース50の厚さによるが、第2光学安全光バリア30が対応する解像度を有することが必要となる)。第2ビーム源33と第2光レシーバ34との間、特に第3安全空間51において、光ビームがさらに減衰、又は遮断される場合は、安全制御装置17は、操作者が容認されない形で第3安全空間51に存在していることを想定しなければならず、したがって、上方工具4の下方工具5への接近に係る変形加工機1の始動を除外しなければならない。
【0068】
代替的には、この信号の提供は、第3安全空間51における安全光ビームの少なくとも一部の遮断に続いて、第2光学安全光バリア30における安全光ビームの減衰に対する定量的評価を行うことなく実行されるように構成されてもよい。この場合、操作者は確かに手で第3安全空間51に干渉しているが、第1光学安全光バリア20が作動しているため、および/又は、上方工具4と下方工具5との接近速度が遅いために、上方工具4と下方工具5との間の距離が縮小されていても、操作者に危険が及ばないと推測される。
【0069】
さらなる代替的な手順では、信号は、第3安全空間51における安全光ビームの少なくとも一部の遮断と、それに続く第3安全空間51における安全光ビームの当該一部における遮断の解除とが、時系列的に近接して連続で生じた後にのみ提供されるように構成される。この場合、操作者は、先ずワークピース50を挿入するために第3安全空間51に手を入れ、次に再び手を引いて、その後に初めて、上方工具4と下方工具5との間の距離が縮小されるものと推測される。
【0070】
好ましくは、変形加工機1の作業サイクルのきっかけ(トリガー)の種類に応じて、例えば安全制御装置17のプログラミング又は他の何らかの方法によって、どの安全性に関する方法(第1光学安全光バリアの起動、第2光学安全光バリアの起動、上方工具4と下方工具5との間の接近速度の仕様)を、変形加工機1の操作中に操作者の安全を確保するために採用するかが選択され得る。
【0071】
安全制御装置17から信号を提供することによって、第1光学安全光バリア20又は第2光学安全光バリア30からの信号に応じて変形加工機の安全に関する運転停止を実行できる安全制御装置17の介在により、制御装置19は、支柱10,11および支柱10,11に接続された上方工具4用の、特定されないアクチュエータ(例えば、液圧ポンプ)に、上方工具4に移動経路14に沿った下方工具5の方向の直線移動をさせる。
【0072】
この段階では、2つの光学安全光バリア20,30が上方工具4と同調して移動することで、第1光学安全光バリア20の援助によって、作業ギャップ8の上流側の第1安全空間28の安全は既知の態様で守られ、また、上方工具4が下方工具5に接近するときに、第1ビーム源21の個々の光源は徐々に停止され、これに関連する第1光レシーバ23のセンサエレメント24,25,26のセンサ信号は、安全制御装置17において無効化(無視)される。
【0073】
一例として、上方工具4が下方工具5に接近する間、第2光学安全光バリア30は起動せず、第2光学安全光バリア30は、ワークピース50が上方工具4と下方工具5との間に固定され、ワークピース50の変形がまだ開始されていないときにのみ起動するように構成されてもよい。
【0074】
さらに、上方工具4の下方工具5に対する相対移動の間に、第3安全空間51を監視する第2光学安全光バリア30の第2ビーム源33および第2光レシーバ34の停止を実行するように構成されてもよい。これは、安全制御装置17が、第2光学安全光バリア30の残りの第2光レシーバ34を監視するための付加的な処理能力を備え得ることを意味するからである。
【0075】
さらに、一例として、ワークピース50が上方工具4と下方工具5との間に固定され、変形工程が開始され次第、安全制御装置17によって第2光学安全光バリア30を起動することが計画される。第2光学安全光バリア30が起動されるとき、光ビームは、ほぼ完全に第2安全空間31を埋めて、第2光レシーバ34のセンサエレメント35に当たるように第2ビーム源33から放射される。ここで、安全制御装置17は、第2光レシーバ34のセンサ信号の評価のために、予め決定可能な閾値を超えたセンサ信号の乖離があると、安全制御装置17によって、安全に関する、特に2チャンネルの、電源の切断を行い、それにより、上方工具4のさらなる移動を防ぐように設計される。好ましくは、第2光学安全光バリア30および/又は安全制御装置17の、第2光レシーバ34のセンサ信号に対する感度は、変形工程の過程で安全空間31内に回転して進入するワークピースと、安全空間31内への操作者の手による干渉との区別が確実に可能であって、後者の場合にのみ上方工具4の移動の停止が実行されるように設定される。
【0076】
また、単に例示的な方法として、ワークピース50が上方工具4と下方工具5との間に固定され次第、ワークピース止め具15と下方工具5との間の距離を増大させるように構成されることができ、それにより、変形工程の間にワークピース50がワークピース止め具15につかえるのを防ぐ。
【0077】
必要であれば、関連する調整装置22,27の援助によって、2つの光学安全光バリア20,30の組み合わせを、ワークピース50のさらなる変形工程中に、上方工具4が下方工具5に接近するときに想定される位置からワークピース50が固定されるまで、例えば、垂直方向上向き、つまり上方工具4の閉じ方向と反対向きに移動させるように構成してもよく、それにより、より高い位置の安全空間31の信頼性の高い監視を可能にしてもよい。
【0078】
上方工具4と下方工具5との間の距離の縮小をもたらす変形加工機1の作業サイクルのきっかけが与えられた後、きっかけの種類に関わらず、上方工具4と下方工具5との間の距離の縮小の途中停止が、ワークピース50の固定位置のすぐ上方において、プログラム可能な時間で提供され得る。
【0079】
一例として、途中停止は、得られたギャップ幅(作業ギャップの現在の寸法からワークピースの厚さを引いた寸法)が6mmより小さいときに実行され、それにより、さらなる接近の移動の過程でワークピース50が上方工具4と下方工具5との間に固定される前に、ワークピース50の位置決めを可能にする。
【0080】
途中停止において第1光学安全光バリアを無効化することが好ましい。というのは、操作者が、特にその指で、作業ギャップ8に干渉することはもはや不可能であると推測されるためである。
【0081】
さらに、ワークピース50の固定位置に到達した後はワークピース50を形成する移動が開始されるため、途中停止の終了後、特に固定位置への到達後は、第2光学安全光バリア30が始動するように構成される。こうして、目下実行される曲げ動作のため、操作者は第2安全空間31を解放しなければならない。
【0082】
途中停止後に、第2光学安全光バリアがワークピースによって覆われていると推測できるとすると、例えば、箱状のワークピースを製造する場合、後続する動作は、変形工程中に、減速された変形速度で、操作者が連続的に操作するフットペダルによって起動される。