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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】サージ検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20240819BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20240819BHJP
   G01R 13/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01R29/12 Z
H02M7/06 E
G01R13/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021079652
(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022173754
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】稲崎 弘次
(72)【発明者】
【氏名】阿部 毅人
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 征紀
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-079268(JP,U)
【文献】特開2004-096958(JP,A)
【文献】特開2018-054398(JP,A)
【文献】特開昭62-147689(JP,A)
【文献】特開昭55-103031(JP,A)
【文献】実開平05-087785(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0383860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
13/00-13/42、
15/00-17/22、
H02M 7/00-7/40、
H01T 1/00-4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷サージを検知するサージ検知装置であって、
検知対象線の通電により二次電圧を生成する変流部と、
前記二次電圧を整流して整流電圧を生成する整流部と、
前記整流電圧を定電圧に変換する定電圧部と、
前記定電圧を時定数に応じて遅延させ、立ち上がりに遅延時間を有する基準電圧を生成する遅延回路と、
前記雷サージを検知した場合に検知信号を出力する判定部とを備え、
前記判定部は、前記整流電圧の大きさに基づいて前記検知信号の出力の有無を決定すると共に、前記基準電圧の大きさに基づいて前記検知信号の出力時間を設定することを特徴とするサージ検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記整流電圧のピーク電圧が所定の閾値以上の場合に、前記検知信号を出力する請求項1に記載のサージ検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記整流電圧のピーク電圧を保持するピークホールド回路を備える請求項2に記載のサージ検知装置。
【請求項4】
前記判定部が、ロジックICを含む請求項1~のいずれか1項に記載のサージ検知装置。
【請求項5】
前記定電圧部は、前記定電圧によって充電されるコンデンサを備え、
前記ロジックICの起動電源を前記コンデンサから供給する請求項に記載のサージ検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージを検知するサージ検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
避雷器の接地線には、避雷器の動作を確認するために、雷サージを検知するサージ検知装置としてサージカウンタが設置されるのが通例である。
【0003】
この種のサージカウンタとしては、IoT技術の発展に伴って、雷サージの発生回数をカウントする機能に加えて、雷サージを検知した場合に検知信号を外部に出力する機能を有するものも開発されるに至っている(例えば、特許文献1を参照)。このような外部出力機構を備えたサージカウンタを用いると、遠隔地において雷サージの状態を管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6698932号公報
【文献】特許第6450044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の外部出力機構を備えたサージカウンタでは、接地線等の検知対象線に発生する小さいノイズ等を雷サージとして誤検知して検知信号を外部に出力してしまうという問題があった。また、検知信号の出力時間が、雷サージの大きさや持続時間によって大幅に変動(例えば0.数秒~数十秒程度)するという問題もあった。そのため、遠隔地等において、雷サージの状態を正確に管理することが依然として困難であった。
【0006】
本発明は、雷サージを正確に検知すると共に、その検知信号の出力時間の変動が極めて小さいサージ検知装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、雷サージを検知するサージ検知装置であって、検知対象線の通電により二次電圧を生成する変流部と、二次電圧を整流して整流電圧を生成する整流部と、整流電圧を定電圧に変換する定電圧部と、雷サージを検知した場合に検知信号を出力する判定部とを備え、判定部は、整流電圧の大きさに基づいて検知信号の出力の有無を決定すると共に、定電圧に基づいて検知信号の出力時間を設定することを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、判定部は、整流電圧の大きさに基づいて検知信号の出力の有無を決定するため、雷サージではない小さなノイズなどによって、検知信号が誤って出力される事態を確実に防止できる。また、判定部は、定電圧に基づいて検知信号の出力時間を調整するため、検知信号の出力時間の変動を抑制できる。つまり、整流電圧は雷サージの大きさ等によって大きく変動し得るが、定電圧は雷サージの大きさ等の影響を受けにくく安定している。そのため、この安定した定電圧を基準として検知信号の出力時間を設定すれば、検知信号の出力時間の変動を抑制できる。
【0009】
(2) 上記(1)の構成において、判定部は、整流電圧のピーク電圧が所定の閾値以上の場合に、検知信号を出力することが好ましい。
【0010】
このようにすれば、整流電圧のピーク電圧、つまり、雷サージのピーク値を考慮して、検知信号の有無を決定できるため、より正確な雷サージの検知が可能となる。
【0011】
(3) 上記(2)の構成において、判定部は、整流電圧のピーク電圧を保持するピークホールド回路を備えることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、整流電圧のピーク電圧を簡単かつ正確に検知することができる。
【0013】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかの構成において、時定数を有すると共に、定電圧を時定数に応じて遅延して所定の遅延時間を設定する遅延回路を備え、判定部が、遅延時間に基づいて検知信号の出力時間を設定することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、遅延回路の時定数に応じて検知信号の出力時間を簡単かつ正確に設定できる。
【0015】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかの構成において、判定部が、ロジックICを含むことが好ましい。
【0016】
このようにすれば、安価で小型のサージ検知装置を提供できる。
【0017】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、定電圧部は、定電圧によって充電されるコンデンサを備え、ロジックICの起動電源をコンデンサから供給することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、外部電源を別途用意する必要がなくなるため、外部電源の確保が難しい場所でも使用可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、雷サージを正確に検知すると共に、その検知信号の出力時間の変動が極めて小さいサージ検知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るサージ検知装置を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態に係るサージ検知装置の動作を説明するための図であって、(a)は整流電圧、定電圧及び基準電圧の各電圧波形を示し、(b)は(a)の電圧波形に応じた第一判定部、第二判定部及び第三判定部の各出力のタイムチャートを示す。
図3】本発明の実施形態に係るサージ検知装置の動作を説明するための図であって、(a)は整流電圧、定電圧及び基準電圧の各電圧波形を示し、(b)は(a)の電圧波形に応じた第一判定部、第二判定部及び第三判定部の各出力のタイムチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るサージ検知装置について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るサージ検知装置を示す回路図である。本実施形態では、検知対象線として、避雷器の接地線GWを例示する。同図に示すように、サージ検知装置1は、接地線GWの通電により二次電圧を生成する変流部2と、二次電圧を整流して整流電圧を生成する整流部3と、整流電圧を定電圧に変換する定電圧部4と、定電圧を遅延させた基準電圧を生成する遅延回路5と、雷サージを検知した場合に検知信号を出力する判定部6と、判定部6の検知信号を外部に出力する出力部7とを備える。
【0023】
ここで、サージ検知装置1は、筐体からなる装置本体(図示省略)内に、整流部3、定電圧部4、遅延回路5、判定部6及び出力部7を備える。一方、サージ検知装置1は、装置本体内に、雷サージの発生回数をカウントするカウンタを備えていない。つまり、本実施形態では、サージ検知装置1の機能が、雷サージの検知信号を外部に出力する機能に限定されている。
【0024】
変流部2は、接地線GWが内部(貫通孔)に挿通される環状の鉄心8と、鉄心8に巻回された二次コイル9とを備える。接地線GWが雷サージにより通電すると、二次コイル9に雷サージに応じた二次電圧が生成される。なお、鉄心8は、接地線GWへの装着が容易になるように、第一部分8aと第二部分8bの二つに分割可能な構成となっている。
【0025】
整流部3は、複数(図示例は4個)のダイオードを含むダイオードブリッジDBから構成されている。ダイオードブリッジDBは、二次電圧から整流電圧(例えば図2(a)のV1を参照)を生成する。整流電圧の大きさや持続時間は、雷サージの大きさや持続時間に応じて変動する。ダイオードブリッジDBの一対の入力端子間には、二次コイル9の両端が接続されている。なお、本実施形態では、ダイオードブリッジDBの一対の入力端子には、サージ保護用のバリスタZも接続されている。バリスタZは、整流部3、定電圧部4、遅延回路5、判定部6、出力部7などの各種回路を雷サージから保護する役割を有する。
【0026】
定電圧部4は、整流部3で生成される整流電圧で充電されるコンデンサC1と、コンデンサC1を放電するための抵抗R1と、コンデンサC1に充電された整流電圧から定電圧(例えば図2(a)のV2を参照)を生成するツェナーダイオードZDと、定電圧によって充電されるコンデンサC2とを備える。定電圧は、雷サージの大きさや持続時間の影響を受けにくく、その大きさや持続時間はほぼ一定である。
【0027】
コンデンサC1は、整流電圧のエネルギーを充電し、そのエネルギーをコンデンサC2に供給する役割と、整流電圧の大きさを判定するために、後述する判定部6の第一判定部10に整流電圧を供給する役割とを有する。コンデンサC1は、ダイオードブリッジDBの一対の出力端子間に接続されている。コンデンサC1には、抵抗R1とツェナーダイオードZDとが直列に接続されている。ツェナーダイオードZDには、コンデンサC2が並列に接続されている。なお、本実施形態では、ダイオードD1がコンデンサC2と直列に接続されており、これら素子D1、C2がツェナーダイオードZDと並列に接続されている。ダイオードD1は、電流の逆流を防止する役割を有する。
【0028】
遅延回路5は、抵抗R2と、コンデンサC3とを備える。抵抗R2とコンデンサC3とは、直列に接続された状態で、定電圧によって充電されるコンデンサC2と並列に接続されている。遅延回路5にコンデンサC2から定電圧が印加されると、抵抗R2の抵抗値及びコンデンサC3の容量により決まる時定数(抵抗値×容量)に応じて、立ち上がり速度が制御された基準電圧(例えば図2(a)のV3を参照)が生成される。つまり、基準電圧の立ち上がりは、定電圧に応じた一定値(定常状態)になるまでに、RC時定数により決まる所定の遅延時間を要する。この基準電圧の立ち上がりの遅延時間により、雷サージの検知信号の出力時間が設定される。厳密には、遅延時間の経過により検知信号の出力が終了するようになっているため、遅延時間は、検知信号の出力終了タイミングを決定する。なお、本実施形態では、コンデンサC3には、コンデンサC3を放電するための抵抗R3が並列に接続されている。
【0029】
判定部6は、定電圧部4のコンデンサC1から整流電圧が印加され、その整流電圧の大きさが第一閾値以上であるか否かを判定する第一判定部10と、遅延回路5のコンデンサC3から基準電圧が印加され、その基準電圧の大きさが第二閾値以上であるか否かを判定する第二判定部11と、第一判定部10及び第二判定部11の出力に基づいて、検知信号の出力の有無および出力時間を決定する第三判定部12とを備える。
【0030】
第一判定部10は、整流電圧のピーク電圧を保持するピークホールド回路13と、ピークホールド回路13に接続された第一NOT回路14と、第一NOT回路14に接続された第二NOT回路15とを備える。
【0031】
ピークホールド回路13は、ダイオードD2と、コンデンサC4と、可変抵抗VRとを備える。コンデンサC4と可変抵抗VRとは、互いに並列に接続された状態で、ダイオードD2のカソード側に直列に接続されている。定電圧部4のコンデンサC1からダイオードD2に整流電圧が印加されると、コンデンサC4が整流電圧で充電される。この際、カソード側の電圧よりも高い整流電圧がアノード側に印加されるとダイオードD2に電流が流れるが、カソード側の電圧よりも低い整流電圧がアノード側に印加された場合はダイオードD2に電流が流れない。その結果、コンデンサC4の電圧は、整流電圧のピーク電圧に保持される。コンデンサC4で保持された整流電圧のピーク電圧は、可変抵抗VRを介して放電することにより、第一NOT回路14に印加される。
【0032】
第一NOT回路14は、ロジックICであり、整流電圧のピーク電圧が所定の第一閾値よりも高い場合に「L(LOW)」を出力し、第一閾値よりも低い場合に「H(HIGH)」を出力する。第二NOT回路15は、ロジックICであり、第一NOT回路14の出力を反転させる。つまり、第二NOT回路15は、整流電圧のピーク電圧が、第一閾値よりも高い場合に「H」を出力し、第一閾値よりも低い場合に「L」を出力する。これにより、第一判定部10では、整流電圧のピーク電圧が第一閾値以上であるか否かが判定される。なお、第一閾値の大きさは、可変抵抗VRの抵抗値によって調整できる。第一閾値の大きさを固定する場合は、可変抵抗VRに代えて固定抵抗を用いてもよい。
【0033】
第二判定部11は、遅延回路5のコンデンサC3に接続されたNOT回路16を備える。NOT回路16は、ロジックICであり、立ち上がり速度が制御された基準電圧の立ち上がりが第二閾値未満であるときは「H」を出力し、基準電圧の立ち上がりが第二閾値以上であるときは「L」を出力する。なお、NOT回路16の出力が「L」となるタイミングは、遅延回路5のRC時定数により調整できる。つまり、NOT回路16の出力が「L」となるタイミングは、コンデンサC3の容量及び/又は抵抗R2の抵抗値を変更することにより調整できる。
【0034】
第三判定部12は、第一判定部10のNOT回路15及び第二判定部11のNOT回路16のそれぞれに接続されたAND回路17を備える。AND回路17は、ロジックICであり、第一判定部10のNOT回路15の出力および第二判定部11のNOT回路16の出力が共に「H」の場合に「H」を出力し、それ以外の場合は「L」を出力する。そして、第三判定部12が「H」を出力している時間が、判定部6による検知信号の出力時間に相当する。
【0035】
出力部7は、判定部6から検知信号が出力されている間、管理施設等の外部に対して検知信号を出力する。出力部7は、例えば、MOSFET等の電界効果トランジスタ18により構成されている。
【0036】
本実施形態では、各ロジックIC14、15、16、17の動作電源は、定電圧部4のコンデンサC2から供給されるようになっている。そのため、各ロジックIC14、15、16、17の動作電源として、商用電源などの外部電源は必要ない。なお、外部電源からの電圧供給はないため、上記の判定部6の検知信号の出力開始タイミングは、各ロジックIC14、15、16、17が起動電圧に達したときとなる。つまり、この起動電圧に達したときを基準として、検知信号の出力時間が設定される。
【0037】
次に、上記のように構成されたサージ検知装置1の動作を説明する。
【0038】
図2(a)及び図3(a)は、整流部3で生成される整流電圧V1の波形、定電圧部4で生成される定電圧V2の波形、及び遅延回路5で生成される基準電圧(定電圧をRC時定数に応じて遅延させた電圧)V3の波形を模式的に示す。また、図2(b)及び図3(b)は、上記の各波形に応じた、第一判定部10の出力、第二判定部11の出力、及び第三判定部12の出力のタイムチャートをそれぞれ示す。なお、図2(a)及び図3(a)中のV4は、ピークホールド回路13で保持された整流電圧V1のピーク電圧の波形を模式的に示す。整流電圧V1のピーク電圧(最大電圧)は、定電圧V2及び基準電圧V3の最大電圧(立ち上がり部分を除いた定常状態の電圧)よりも大きい。基準電圧V3の最大電圧は、定電圧V2の最大電圧と実質的に同じである。定電圧V2の最大電圧は、各ロジックIC14、15、16、17が正常に動作する範囲内で変動してもよく、本実施形態では時間の経過と共に減少傾向を示す。
【0039】
図2(a)に示すように、第一判定部10は、定電圧部4のコンデンサC2から供給される定電圧V2により各ロジックIC14、15、16、17が起動電圧Sに達したときに、ピークホールド回路13により保持された整流電圧V1のピーク電圧V1maxが第一閾値P1以上であるか否かを判定する。このとき、図2(a)に示すように、ピークホールド回路13により保持された整流電圧V1のピーク電圧V1maxが第一閾値P1以上であると、図2(b)に示すように、第一判定部10の出力は、「L」から「H」に切り替わる。一方、第二判定部11の出力は、定電圧V2から生成される基準電圧V3が第二閾値P2以上になったときに、「H」から「L」に切り替わる。そして、第三判定部12の出力は、第一判定部10及び第二判定部11の出力が共に「H」のときのみに「H」となり、それ以外のときは「L」となる。つまり、第一判定部10の出力が「L」から「H」に切り替わったタイミングT1から、第二判定部11の出力が「H」から「L」に切り替ったタイミングT2までが、検知信号の出力時間Toutとなる。判定部6は、この出力時間Toutの間、検知信号(第三判定部12の「H」出力に相当)を出力し続ける。
【0040】
一方、図3(a)に示すように、ピークホールド回路13により保持された整流電圧V1のピーク電圧V1maxが第一閾値P1未満であると、図3(b)に示すように、第一判定部10の出力は、「L」を維持する。一方、第二判定部11の出力は、定電圧V2から生成される基準電圧V3が第二閾値P2以上になったときに、「H」から「L」に切り替わる。そして、第三判定部12の出力は、第一判定部10の出力が「L」であるため、第二判定部11の出力にかかわらず「L」を維持する。つまり、判定部6は、整流電圧V1のピーク電圧V1maxが第一閾値P1未満である場合は、検知信号を出力しない。
【0041】
出力部7は、第三判定部12の出力が「H」となっている出力時間Toutの間、検知信号を外部に出力する。
【0042】
このようにすれば、判定部6は、整流電圧のピーク電圧に基づいて検知信号の出力の有無を決定するため、雷サージではない小さなノイズなどによって、検知信号が誤って出力される事態を確実に防止できる。また、判定部6は、安定した定電圧(厳密には、時定数に応じた遅延時間を有する基準電圧)に基づいて検知信号の出力時間を設定するため、検知信号の出力時間の変動を確実に抑制できる。したがって、遠隔地等において、出力部7の検知信号に基づいて、雷サージの状態を正確に管理できる。
【0043】
また、本実施形態では、ピークホールド回路13のコンデンサC4や、定電圧部4のコンデンサC2に充電されていたエネルギーがなくなり次第、各ロジックIC14、15、16、17の出力は自動的に「L」にリセットされる。したがって、リセット回路を別途設ける必要がない。
【0044】
以上、本発明の実施形態に係るサージ検知装置について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0045】
上記の実施形態では、第一判定部10が、整流電圧のピーク電圧に基づいて整流電圧の大きさを判定する場合を説明したが、第一判定部10は、ピーク電圧の前後における整流電圧の立ち下がりや立ち上がりに基づいて整流電圧の大きさを判定するように構成されていてもよい。つまり、ピークホールド回路13を設けずに、例えば、各ロジックIC14、15、16、17が起動電圧に達したときの整流電圧の大きさに基づいて整流電圧の大きさを判定してもよい。ただし、雷サージの検知精度を向上させる観点からは、整流電圧のピーク電圧に基づいて整流電圧の大きさを判定することが好ましい。
【0046】
上記の実施形態では、判定部6が、4つのロジックIC14、15、16、17を含む場合を説明したが、ロジックICの数や組み合わせは、最終的な出力結果が同じである限り特に限定されない。例えば、ロジックICとしては、NAND回路やフリップフロップなどを用いてもよい。ただし、ロジックICとしては、超低消費電力型(例えば消費電流が1μA以下)のものを用いることが好ましい。
【0047】
上記の実施形態では、遅延回路5が、抵抗R2と、コンデンサC3とを備える場合を説明したが、遅延回路5の構成はこれに限定されない。
【0048】
上記の実施形態では、ピークホールド回路13は、ダイオードD2と、コンデンサC4と、可変抵抗VRとを備える場合を説明したが、ピークホールド回路13の構成はこれに限定されない。ピークホールド回路13としては、オペアンプ等を利用した公知の回路を適用できる。
【0049】
上記の実施形態では、変流部2が、接地線GWを内部に挿通させて用いる構成である場合を説明したが、変流部2は、接地線GWを挿通させないで、接地線GWに近接させて用いる構成であってもよい(例えば、特許文献2を参照)。
【0050】
上記の実施形態では、サージ検知装置1が、雷サージの発生回数をカウントするカウンタを備えていない場合を説明したが、サージ検知装置1は、雷サージの発生回数をカウントするカウンタを備えていてもよい。この場合、カウンタの動作電源も、定電圧部4のコンデンサC2から供給するようにすることが好ましい。
【0051】
上記の実施形態では、検知対象線として避雷器の接地線を例示したが、本発明において、検知対象線はこれに限定されない。検知対象線は、例えば、避雷設備における棟上導体や引き下げ導線などであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 サージ検知装置
2 変流部
3 整流部
4 定電圧部
5 遅延回路
6 判定部
7 出力部
8 鉄心
9 二次コイル
10 第一判定部
11 第二判定部
12 第三判定部
13 ピークホールド回路
14 NOT回路(ロジックIC)
15 NOT回路(ロジックIC)
16 NOT回路(ロジックIC)
17 AND回路(ロジックIC)
GW 接地線(検知対象線)
V1 整流電圧
V2 定電圧
V3 基準電圧
図1
図2
図3