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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】鉄道用ディスクブレーキの粒子捕捉装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20240819BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20240819BHJP
   F16D 65/092 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
F16D65/00 C
B61H5/00
F16D65/092 D
F16D65/092 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021524434
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 FR2019052608
(87)【国際公開番号】W WO2020094962
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】1860320
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・メストル
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・アダムザック
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525726(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19643869(DE,A1)
【文献】国際公開第2018/054821(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0198772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/00
B61H 5/00
F16D 65/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の鉄道ディスクブレーキ装置のための摩擦アセンブリ(1)であって、
受容スライド(5)を有した上面(31)、および下面(32)、を備えたブレーキヘッド(3)と、
摩擦面である第1の面(21)、および、前記受容スライド(5)に係合するように構成されたプロファイル部材(4)を備えた第2の面(22)を備えた、摩擦材料からなる少なくとも1つのシュー(2)と、
を備え、
前記シュー(2)は、前記第1の面(21)によって境界付けられた第1の空間(E1)と前記第2の面(22)によって境界付けられた第2の空間(E2)とをシールされた状態で連通させる少なくとも1つのダクト(28)を備え、
該摩擦アセンブリ(1)は、さらに、
中心軸線Aを有し、前記ブレーキヘッド(3)に設けられるとともに、前記少なくとも1つのダクト(28)の1つと軸整合された少なくとも1つの貫通穴(38)と、
前記少なくとも1つの貫通穴(38)内に配置され、かつ前記少なくとも1つのダクト(28)との接続を形成する少なくとも1つの接続ブッシュ(8)と、
を備えてなる摩擦アセンブリ(1)において、
前記少なくとも1つの接続ブッシュ(8)を前記プロファイル部材(4)に対して押圧することのできる戻し機構(90)を備えることを特徴とする、摩擦アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記戻し機構(90)がばねである、請求項1に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記接続ブッシュ(8)は、管(81)およびフランジ(82)を有し、かつ、前記戻し機構(90)が、前記フランジ(82)を前記プロファイル部材(4)に押し付けるように構成されている、請求項1または2に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記接続ブッシュ(8)が管(81)およびフランジ(82)を有し、かつ、前記ばねは、一端が前記フランジ(82)に支持されるとともに他端が前記ブレーキヘッド(3)に支持されたコイルばねである、請求項2に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記接続ブッシュ(8)は管(81)およびフランジ(82)を有し、前記ブレーキヘッド(3)の前記下面(32)は、前記貫通穴(38)と共にチャンバを形成するキャップ(70)を備え、 かつ、前記戻し機構(90)は、管(81)を取り囲むとともに一端が前記フランジ(82)に支持されかつ他端が前記キャップ(70)の内面に支持されたコイルばねである、請求項2または3に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記フランジ(82)の径方向外周は、中心軸線Aの円錐面に沿って延在する面取り(83)を有する、請求項3からのいずれか一項に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記シュー(2)が2つのダクト(28)を備え、かつ、前記ブレーキヘッド(3)が2つの貫通穴(38)を備え、前記ダクト(28)の各々が2つの前記貫通穴(38)の一方と軸整合されている、請求項1からのいずれか一項に記載の摩擦アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のブレーキ、特に鉄道車両のブレーキ装置の摩擦アセンブリに関する。このような車両は、電車、路面電車、および地下鉄といった、レール上を走行するように構成された全ての車両を意味するものと理解される。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ装置は、一般に、鉄道車両の車輪または車軸と一体のディスクを含む。該ブレーキ装置は、摩擦シューを支持するブレーキヘッドを備える摩擦アセンブリをさらに含む。摩擦シューは通常、ブレーキヘッドへの取付け手段と摩擦パッドを備える。運転者がブレーキ装置を作動させると、摩擦シューの摩擦パッドがディスクに接触し、該ディスクにブレーキ力を加える。したがって摩擦シューは、摩擦により、車輪または車軸と一体とされたディスクにブレーキを掛ける。一般に鉄道車両は、ディスクのそれぞれの側にディスクを把持するように、すなわちディスクを両側から圧縮するために挟むように配置された2つの摩擦アセンブリを有する。
【0003】
摩擦シューの摩擦パッドは、通常、鋳鉄などの金属材料、焼結材料、または複合材料で構成されている。摩擦シューの摩擦パッドがディスクにこすれると、摩擦シューとディスクから材料の粒子が摩擦アセンブリの周囲の大気に放出される。したがって、ブレーキ装置は、多かれ少なかれ微粒子の形で大気汚染を放出する。
【0004】
したがって、摩擦シューの摩擦パッドから来る粒子の放出領域の近くに、特にポンプによって供給される吸引装置を配置することによって、ブレーキ作動中に放出される材料の粒子を捕捉することが望ましい。
【0005】
この問題を解決する一つの解決策は、従来技術を示す図10及び図11に示す摩擦アセンブリである。
【0006】
図10はこのアセンブリの上面図であり、図11図10におけるXI-XI線に沿う断面図である。
【0007】
ブレーキヘッド103は、長手方向Zに縦に延在し、交差方向Xに横に延在する。ブレーキヘッド103は、X-Z平面に、摩擦シュー102を受け入れる上面と、下面とを備える。
【0008】
これら2つの面およびX-Z平面と垂直となるのがY軸である。
【0009】
ブレーキヘッド103は、その上面に、あり溝形受容スライド105を有し、このスライド105は、ブレーキヘッド103の第1の端部から同ブレーキヘッド103の第2の端部の近くまで長手方向に延び、貫通はしていない。ブレーキヘッド103は、長手方向軸Z上に、互いに間隔を置いて配置された2つの貫通穴138を有する。各貫通穴138は、下面を上面のスライド105の底部に接続する。
【0010】
摩擦シュー102は2つの同一の部分よりなり、各部分は、車両のディスク(図示せず)と摩擦接触するよう構成された摩擦面121、および反対側の面122を有する。この反対側の面122は、受容スライド105と係合するように構成されたあり形凸状プロファイル部材104を有する。使用中、シュー102の第1の部分は、プロファイル部材104をスライド105内でスライド105に隣接するまでスライドさせることによって、長手方向軸Zに沿って挿入される。次に、シュー102の第2の部分は、プロファイル部材104をスライド105内でシュー102の第1の部分に突き当たるまでスライドさせることによって長手方向軸Zに沿って挿入される。第1の部分と第2の部分との接触面は、理想的には、表面全体が適合するように形成されている。
【0011】
シュー102の各部分は、Y軸に沿って配向されたダクト128を備える。これらの部品が使用時にブレーキヘッド103に固定されると、2つのダクト128のそれぞれは、穴138に対面して配置される。ダクト128およびそれに面する穴138の主軸はB軸として指定され、したがって、このダクト128およびこの穴138は同軸である。したがって、各ダクト128は、ブレーキヘッド103に設けられた貫通穴138の1つとともに、ブレーキ中に摩擦シュー102によって放出された粒子を吸引することを可能とする1つの回路を形成する。
【0012】
接続ブッシュ108が穴138に取り付けられている。接続ブッシュは、管と、この管の一端で半径方向外向きに延びるフランジとからなる。管は穴138に挿入されており、管の外径は、可能な限り最良のシールが構成されるよう、穴138の内径に等しい。フランジは、ブレーキヘッド103の環状ハウジングに収容されており、このハウジングは、主軸Bを中心とし、かつシュー102の反対側の面122に面している。したがって、フランジは、シュー102のプロファイル部材とブレーキヘッド103のスライド105の底部との間に挟まれている。環状ハウジングの(主軸Bに沿った)深さはフランジの厚さに実質的に等しく、その結果、そのハウジングに入ると、フランジは、ブレーキヘッド103、およびシュー102のプロファイル部材104の面122の両方と接触する。
【0013】
接続ブッシュ108は、ブレーキヘッド103を完全に横断し、スライド105を備えた面とは反対の面でブレーキヘッド103から突出している。ブッシュ108の管のこの端部にはパイプ150が固定されている。このパイプ150は、吸引装置(図示せず)に接続され、鉄道車両のブレーキから生じる粒子を、ダクト128および穴138から吸引することを可能にする。
【0014】
接続ブッシュ108は、ブレーキから生じる粒子を、シュー102のダクト128からブレーキヘッド3の貫通穴138に案内するのに役立つ。したがって、接続ブッシュ108は、ダクト128および穴138を介して生じ得る漏れを防止することを目的としている。特に、接続ブッシュ108は、摩擦シュー102とブレーキヘッド103との間の境界面の空隙に滑り込む可能性のあるブレーキから生じる粒子の量を制限し、特に、外部からの空気流がその空隙を介して穴に入ることを防ぐことを目的とする。空気流の流入は、吸引装置による吸引を低下させる。
【0015】
鉄道車両用の鉄道ディスクブレーキ装置のための摩擦アセンブリは知られており、このアセンブリは、一方において、受容スライドを有した上面、および下面、を備えたブレーキヘッドと、他方において、摩擦面である第1の面、および、前記受容スライドに係合するように構成されたプロファイル部材を備えた第2の面を備えた、摩擦材料からなる少なくとも1つのシューと、を備え、前記シューは、前記第1の面によって境界付けられた第1の空間と前記第2の面によって境界付けられた第2の空間とをシールされた状態で連通させる少なくとも1つのダクトを備え、該摩擦アセンブリがさらに、中心軸線Bを有して前記ブレーキヘッドに設けられるとともに前記少なくとも1つのダクトの1つと軸整合された少なくとも1つの貫通穴と、前記少なくとも1つの貫通穴内に配置され、かつ前記少なくとも1つのダクトとの接続を形成する少なくとも1つの接続ブッシュと、を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、使用中、そのような摩擦アセンブリは、ダクト128および穴138におけるシュー102とブレーキヘッド103との間の境界面での空気の通過を効果的に防止することができない。
【0017】
実際、ブレーキヘッド103とシュー102との間の境界面におけるクリアランスは、接続ブッシュ108がシュー102に対して十分なシールを確立することを妨げる。
【0018】
本発明の目的は、上記の欠点を改善することである。
【0019】
本発明は、鉄道車両のブレーキ動作から生じる粒子を、同じ吸引力でより効果的に吸引することを可能にする摩擦アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、摩擦アセンブリが、少なくとも1つの接続ブッシュをプロファイル部材に押し付けることができる戻し機構を含むことにより達成される。
【0021】
これらの配置により、接続ブッシュとシューの間、したがってブレーキヘッドとシューの間で、ダクトと貫通穴を介してシールが確保される。ブレーキヘッドとシューを介したこのシールにより、鉄道車両のブレーキ動作から生じ、シューの摩擦面(第1面)に放出される粒子をより効果的に吸引することが可能になる。
【0022】
有利には、戻し機構はバネである。
このように、この戻し機構は、摩擦アセンブリへの組み立てが簡単で、優れた耐久性を有する。
【0023】
有利には、接続ブッシュは管およびフランジを有し、戻し機構は、フランジをプロファイル部材に押し付けるように構成されている。
したがって、フランジの表面全体とプロファイル部材の表面との間の接触によってシールが確保される。
【0024】
有利には、接続ブッシュは管およびフランジを有し、ばねは、一端がフランジに支持され、他端がブレーキヘッドに支持されたコイルばねである。
したがって、戻し機構の摩擦アセンブリへの取り付けが容易になる。
【0025】
有利には、接続ブッシュは管および円錐形フランジを有し、このフランジが戻し機構として機能する。
したがって、戻し機構として追加の部品を使用する必要がない。
【0026】
有利には、接続ブッシュは管およびフランジを有し、ブレーキヘッドの下面は、貫通穴と共にチャンバを形成するキャップを備え、 かつ、戻し機構は、管を取り囲むとともに一端がフランジに支持されかつ他端がキャップの内面に支持されたコイルばねである。
【0027】
有利には、フランジの径方向外周は、軸線Aの円錐面に沿って延在する面取りを有する。
したがって、プロファイル部材がスライド内で摺動すると、プロファイル部材がこの面取りに力を加え、これにより、シールブッシュ(接続ブッシュ)が穴に自動的に押し込まれる。
【0028】
有利には、シューは2つのダクトを備え、かつ、ブレーキヘッドは2つの貫通穴を備え、ダクトの各々が2つの前記貫通穴の一方と軸整合されている。
これにより、粒子の吸引はより効率的である。
【0029】
有利には、接続ブッシュが管およびフランジを有し、フランジが戻し機構として作用し、管におけるフランジを有する端部と反対側の端部は、ブレーキヘッドの下面に対して適合するプレートによって延長されている。
【0030】
本発明は、非限定的な例として示されるいくつかの実施形態の以下の詳細な説明からよりよく理解され、その利点がより明らかとされる。以下は添付図面の説明である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による摩擦アセンブリの上面図である。
図2図1に示した摩擦アセンブリのII-II線に沿う断面図である。
図3図1に示した摩擦アセンブリのIII-III線に沿う断面図である。
図4】摩擦アセンブリの他の実施形態によるシューおよび接続ブッシュの断面図である。
図5】摩擦アセンブリの別の実施形態によるシューおよび接続ブッシュの断面図である。
図6図1に示した摩擦アセンブリの接続ブッシュの斜視図である。
図7】摩擦アセンブリの別の実施形態によるシューおよび接続ブッシュの断面図である。
図8】摩擦アセンブリのさらに別の実施形態によるシューおよび接続ブッシュの断面図である。
図9図8に示した摩擦アセンブリの変形実施形態におけるシューおよび接続ブッシュを示す斜視図である。
図10】既に説明した従来技術による摩擦アセンブリの上面図である。
図11】既に説明した図10に示した摩擦アセンブリのXI-XI線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による、鉄道車両用の鉄道ディスクブレーキシステム用の摩擦アセンブリ1の上面図であり、図2は、図2のII-II線に沿った断面図である。
【0033】
この摩擦アセンブリ1は、長手方向Zのより大きい方向、および交差方向Xの横方向に延在するブレーキヘッド3を備える。したがって、ブレーキヘッド3は、主にX-Z平面内に延在し、摩擦シュー2を受け入れる上面31と、上面に平行に延在する下面32とを備える。
【0034】
これら2つの面およびX-Z平面に垂直となるのがY軸である。
【0035】
ブレーキヘッド3は、その上面31に、あり溝形受容スライド5を有する。このスライドは、ブレーキヘッド3の第1の端部から、ブレーキヘッド3の、このスライド5が貫通しない第2の端部近傍まで長手方向に延在する。ブレーキヘッド3は、長手軸線Z上に、互いに間隔を置いて配置された2つの貫通穴38を備える。 各貫通穴38は、下面32をスライド5の底面51に接続している。
【0036】
また、この摩擦アセンブリ1は摩擦シュー2を含む。この摩擦シュー2は、実質的に同一な2つの部分の半分体であり、各半分体は、車両のディスク(図示せず)と摩擦接触することを意図された摩擦面(第1の面)21と、反対側の面22(第2の面)を有する。この反対側の面22は、受容スライド5と可能な限りしっかりと係合するように構成されたあり形凸状プロファイル部材4を有する。このプロファイル部材4は、シュー2の半分体の全長(Z方向に沿って)にわたって延在している。
【0037】
したがって、プロファイル部材4がスライド5に挿入されているときの、プロファイル部材4におけるスライド5の底部51および側面に適合する面は、前記反対側の面22の一部である。
【0038】
あるいは、プロファイル部材4およびスライド5は、これらの2つのプロファイル部材が相補的であり、かつ、長手軸線Zに沿ってシュー2およびブレーキヘッド3を相対的にスライドさせ、シュー2がY軸に沿ってブレーキヘッドから外れるのを防ぐように形作られているならば、プロファイル部材4はあり形とは異なるプロファイルを、またスライド5はあり溝形とは異なるプロファイルを有することができる。
【0039】
有利には、プロファイル部材4の各ダクト28の周りの領域、およびスライド5の各穴38の周りの領域は、X-Z平面において平面であり、平行である。
【0040】
使用中、シュー2の第1の半分体は、スライド5内のプロファイル部材4をスライド5に当接するまでスライドさせることによって、長手軸線Zに沿って挿入される。次に、シュー2の第2の半分体は、スライド5内でプロファイル部材4をシュー2の第1の半分体に当接するまでスライドさせることによって長手軸線Zに沿って挿入される。第1の半分体および第2の半分体の接触面は、理想的に、互いに表面全体がフィットするように形成されている。したがって、あり形4を備えた摩擦シュー2の第2の面22は、ブレーキヘッド3のスライドの下面32および底部51に適合する。
【0041】
シュー2の各半分体は、Y軸に沿って配向されたダクト28(「空気ダクト」とも呼ばれる)を備える。
【0042】
このダクト28は、シュー2の第1の面21によって画定された第1の空間E1と、摩擦シュー2の、前記第1の面と反対側であってプロファイル部材4の面を形成する第2の面によって画定された第2の空間E2との間に、シールされた連通を確立する。
【0043】
シュー28の2つの半分体が使用中にブレーキヘッド3に固定されると、2つのダクト28はそれぞれ穴38の1つに面して配置される。ダクト28およびそれに面する穴38の主軸はA軸として指定され、したがって、このダクト28およびこの穴38は同軸である(したがって、ダクト28および穴38の各セットに対し1つの、2つの平行な主軸Aがある)。したがって、各ダクト28は、ブレーキヘッド3に設けられた貫通穴38の1つとともに、ブレーキ作動中に摩擦シュー2によって放出された粒子を吸引することを可能にする回路を形成する。
【0044】
上記の説明において、ダクト28および穴38は主軸Aと同軸である。
【0045】
あるいは、軸Aを穴38の主軸と見なす場合、ダクト28は、穴38とダクト28との間の境界面(この境界面におけるダクト28のオリフィスは軸Aを中心としている)から開始して、軸Aに対して傾斜することができる。
【0046】
したがって、図を参照して以下に説明するすべての実施形態において、代替構成として、ダクト28は穴38の軸Aに対して傾斜していてもよい。
【0047】
すべての場合において、ダクト28と穴38は互いに軸整合されており、これは、この境界面でのダクト28の開口部が穴38と適合し、それによりダクト28が穴38を延長することを意味する。
【0048】
シュー28は、2つの同一の半分体から構成されるものとして説明してきた。代替としては、シュー28はワンピースであり、使用中に並べて組み立てられたこれらの2つの半分体と同じ形状および寸法である。その場合、単一のシュー28は、2つのダクト28、または単一のダクト28、または3つ以上のダクト28を備える。
【0049】
接続ブッシュ8が各穴38に取り付けられており、接続ブッシュは、管81と、この管81の一端から主軸Aに対して垂直かつ半径方向外向きに延在するフランジ82と、からなる。図6は、そのような接続ブッシュ8の斜視図である。
【0050】
ブッシュ8は、したがって穴38と同軸である。
【0051】
図2に示すように、接続ブッシュ8の管81は、ブレーキヘッド3を完全に横断し、その下面32から突出している。管81のこの端部には、吸引機構(図示せず)に接続されたパイプ50が固定されている。パイプ50は、鉄道車両のブレーキ作動から生じる粒子を、ダクト28および穴38を介して吸引することを可能にする。
【0052】
接続ブッシュ8は、ブレーキから生じる粒子を、シュー2のダクト28からブレーキヘッド3の貫通穴38まで案内する役目を果たす。
【0053】
あり4を有する、ブッシュ8と接触している面22において、ダクト28のオリフィスは、管81の穴と軸整合されており、この管81と心合せされている。
【0054】
有利には、図6に示されるように、フランジ82の径方向外周は面取り83を有する。面取り83は、中心軸Aの円錐面に沿って延在しており、フランジ82はこの円錐端と管81との間に位置している。
【0055】
この面取り83によって提供される利点を以下に説明する。
【0056】
管81は穴38に挿入され、管81の外径は、管81をブレーキヘッド3に対して主軸Aに沿ってスライドできるようにしながら、管81と穴38の壁との間の可能な限り最良のシールを確実にするため、穴38の内径と等しいかまたは実質的に等しい。
【0057】
フランジ82は、ブレーキヘッド3の環状ハウジング39に収容されている。このハウジング39は、スライド5の底部にある空所であり、主軸Aを中心としている。プロファイル部材4がスライド5内にあるとき、ハウジング39は、図2に示されるように、プロファイル部材4の面22の反対側にある。
【0058】
ハウジング39内で、戻し機構90がフランジ82とハウジング39の底部との間に収容され、これによりハウジング39のこの底部からフランジ82を遠ざける。
【0059】
例えば、戻し機構90は、主軸Aを中心とするコイルばねである。図3は、このバネの休止時を示している。ばねによって上方に押し上げられたフランジ82は、スライド5の底部より上に突き出ている。
【0060】
スライド5内でプロファイル部材4をスライドさせることにより摩擦シュー2がブレーキヘッド3と一体となると、シュー2の第2の面22(プロファイル部材4の面でもある)の端部が接続ブッシュ8に接触する。その後、このエッジが面取り83に乗る。プロファイル部材4がスライド5内を滑り続けると、面取り83の主軸Aに対する傾斜によって、面取り83上の第2の面22のエッジによって及ぼされる力がブッシュ8をハウジング39内に自動的に押し込む。その後、プロファイル部材4は、ブッシュ8を覆ってスライド5内をスライドし続けることができる。
【0061】
フランジ82に面取り83がない場合は、スライド5内でプロファイルメンバー4をスライドし続けることが可能なように、フランジ82がスライド5の底部から突出しなくなるまでブッシュ8をハウジング39に(例えば手動で)挿入する必要がある。
【0062】
すべての場合において、プロファイル部材4がフランジ82を覆うと、ブッシュ8は、プロファイル部材4によってハウジング39に挿入されたままであり、その結果、戻し機構90が圧縮され、フランジ82をプロファイル部材4に押し付ける。したがって、ダクト28と穴38との間、換言すれば、シュー2とブレーキヘッド3との間のシールが確実なものとなる。
【0063】
したがって、接続ブッシュ8は、ダクト28および穴38から生じ得る漏れを防止する。特に、接続ブッシュ8は、摩擦シュー2とブレーキヘッド3との間の境界面の隙間に滑り込む可能性のあるブレーキに起因する粒子の量を低減することを可能にする。とりわけ、接続ブッシュ8はすべて、吸引装置による吸引の効率を低下させる原因となり得る空気がこのギャップを通って穴38に入るのを防ぐことを可能にする。
【0064】
図2および図3は、戻し機構90がコイルばねである場合について示している。
【0065】
戻し機構90は、プロファイル部材4がフランジ82を覆っているときに該機構90がフランジ82をプロファイル部材4に押し付けるものであれば、任意のタイプのものであってよい。
【0066】
例えば、戻し機構90は、図4に示すように環状ばね(「皿ワッシャ」タイプ)として形成されたフランジ82である。
【0067】
したがって、フランジ82は、実質的に中心軸Aの円錐面に沿って管81の端部から延在し、管81は、この円錐によって定義される空間内に配置される。
【0068】
図4では、フランジ82は静止している。フランジ82の、管81と出会う近位端はスライド5の底部から突出している。フランジ82の遠位端は、ハウジング39の底部と接触している。
【0069】
フランジ82が、手動で、またはスライド5内のプロファイル部材4の並進運動によって押し付けられると、フランジは屈曲変形して平らになり、ハウジング39に完全に収容されるようになる。フランジ82は、この変形に抵抗し、よって、プロファイル部材4に押し付けられる。
【0070】
あるいは、フランジ82は(図2および図3に示す先の実施形態のように)平坦であり、戻し機構90は、フランジ82とハウジング39の底部との間のハウジング39に収容される弾性Oリングシールである。図5はこのシールを、休止状態で示している。そして、シールによって上方に押し上げられたフランジ82はスライド5の底部より上に突出している。
【0071】
フランジ82が、手動で、またはスライド5内のプロファイル部材4の並進運動によって押し付けられると、シールは圧縮されてこの圧縮に抵抗し、よって、フランジ82はプロファイル部材4に押し付けられる。
【0072】
図7は本発明の他の実施形態を示している。
【0073】
ブレーキヘッド3の下面32には、中心軸Aを中心とする環状キャップ70が設けられている。キャップ70は、その中心に中央オリフィス75を備えている。このキャップ70の径方向外縁72は、下面32に固定されている。管81は、直径が管81の外径に等しいオリフィス75を貫通し、管81とキャップ70との間にシールを確立している。
【0074】
戻し機構90は、主軸Aを中心とするコイルばねであり、フランジ82を上方に押し上げてスライド5の下部から突き出させるよう、一端はフランジ82(平坦である)に支持され、他端はキャップ70に支持される。
【0075】
管81は、その外面に放射状の隆起815を有しており、この隆起は、ばねの作用によって管81がキャップ70から滑り落ちるのを防ぐためにキャップ70に当接する。
【0076】
代替構成では、管81は、ばねが休止状態にあるときにも管81がキャップ70と接触しかつキャップ70の下に突出し、パイプ50を管81の端部に取り付けることができるように、十分に長い。
【0077】
図7は、プロファイル部材4が穴38の上でスライド5に挿入されている構成における、圧縮状態のばねを示している。ばねはフランジ82をプロファイル部材4に押し付けている。
【0078】
上記のような本発明のすべての実施形態において、フランジ82の寸法(特に直径)は、プロファイル部材4がスライド5に穴38の上で挿入されたときに、フランジ82が、穴38(または該当する場合にはハウジング39)の内面と接触するように選択される。これは、穴38とダクト28との間の全体的なシールに寄与する。
【0079】
有利には、貫通穴38およびキャップ70によって規定される空間はチャンバを構成し、ブッシュ8がプロファイル部材4に対して保持されると、このチャンバは、管81のオリフィスが唯一のオリフィスとなるように密閉される。これは、穴38とダクト28との間の全体的なシールに寄与する。
【0080】
キャップ70は、単一の穴38を覆うものとして上で説明してきた。代替策として、ブレーキヘッドが2つの穴38を含む場合、キャップ70は、それら2つの穴を覆うために細長形状を有することができる。第1の変形例では、各穴38の周りのキャップ70の形状、および各ブッシュ8の形状は図7に示してある。したがって、キャップ70は2つのオリフィス75を有し、それぞれをブッシュ8が横断している。
【0081】
第2の変形例では、キャップ70は、パイプ50が固定される単一のオリフィス75を有する。2つのブッシュ8(穴38ごとに1つ)のそれぞれが、キャップ70によって規定される細長のチャンバに開口する。キャップ70は、各ばね90が載る2つの内部隆起を有し、これらの隆起はまた、ばね90の(図における上方への)移動を制限する役目を果たす。
【0082】
図8は発明の別の実施形態を示す。
【0083】
接続ブッシュ8は、管81およびフランジ82を有する。フランジ82は、戻し機構90として機能するように形成されている。したがって、フランジ82は、その径方向外端にリップを有しており、このリップは、管81に向かって折り返されている。シュー2がブッシュ8を軸Aに沿って押すと、リップは、ハウジング39を満たすために変形し、シュー2とのシールを確実なものとする。
【0084】
管81は、ブレーキヘッド3の下面32に適合するプレート84によって、フランジ82を支持する端部とは反対側の端部で延長されている。管81が穴38に収容されると、プレート84は下面32に支持される。この構成の利点は、ブレーキヘッド3とシュー2との間のシールが、別個の戻し機構を使用することなく、管81およびフランジ82を穴83に挿入することによって簡単な方法で達成されることである。
【0085】
さらに、ブッシュ8は、プレート84によって穴38内の所定の位置に保持される。
【0086】
ブレーキヘッド3の下面32には、この下面32に固定され、プレート84を取り囲むキャップ70が設けられている。キャップ70は、パイプ50が密封状態で固定されるオリフィスを備えている。このようにしてキャップ70はチャンバを規定する。
【0087】
図9は、図8に示した摩擦アセンブリの代替実施形態である。
【0088】
プレート84は、単一の接続ブッシュ8を担持する代わりに、2つの接続ブッシュ8を担持する。したがって、各ブッシュ8の管81は、フランジ82を担持する端部とは反対側の端部において、プレート84によって延長されている。
【0089】
シュー3は斜視図で、かつその中央、すなわちスライド5の中央を通るおよび長手断面(垂直面Y-Z内)で表されている。プレート84および接続ブッシュ8のアセンブリは、分解斜視図として示してある。2つのブッシュ8は、主軸Aに沿って垂直軸Yの方向に穴38に挿入されるようになっている。
【0090】
この変形例の利点は、プレート84および接続ブッシュ8からなる単一のアセンブリで、ブレーキヘッド3全体と1つまたは複数のシュー2全体との間のシールを達成することが可能であるということである。
【0091】
プレート84は、ブレーキヘッド3の穴38の総数に応じて、2つのブッシュ8以上を担持することができる。
【0092】
別の実施形態では、ブッシュ8をプロファイル部材4に押し付ける戻し機構90は、離間して互いに引き合う2つの要素によって達成される。
【0093】
この引力は例えば磁気的なものである。 したがって、ブッシュ8のフランジ82は、2つの要素のうちの第1の要素を構成する環状磁石(またはその円周に沿って分布する複数の磁石)を備える。ダクト28の周りのプロファイル部材4の第2の面22の領域は、プロファイル部材が鋼でできている場合、2つの要素のうちの第2の要素を構成する。したがって、プロファイル部材4が穴38の上のスライド5に挿入されると、フランジ82の磁石とプロファイル部材4との間の引力の磁場がフランジ82をプロファイル部材4に押し付ける。プロファイル部材4が強磁性ではない材料でできている場合、環状磁石がダクト28の周りに挿入され、この磁石が2つの要素のうちの第2の要素を構成する。
【符号の説明】
【0094】
1 摩擦アセンブリ
2 シュー
3 ブレーキヘッド
4 プロファイル部材
5 受容スライド
8 接続ブッシュ
21 第1の面
22 第2の面
28 ダクト
31 上面
32 下面
38 貫通穴
81 管
82 フランジ
84 プレート
90 戻し機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11