(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】医療用機器類の製造工場
(51)【国際特許分類】
A61L 2/04 20060101AFI20240819BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20240819BHJP
A61L 2/08 20060101ALI20240819BHJP
A61L 2/07 20060101ALI20240819BHJP
A61L 2/06 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61L2/04
A61L2/10
A61L2/08 108
A61L2/07
A61L2/06
(21)【出願番号】P 2022090855
(22)【出願日】2022-06-03
(62)【分割の表示】P 2017223440の分割
【原出願日】2017-11-21
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000149000
【氏名又は名称】株式会社大協精工
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】須藤 伸夫
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-085656(JP,A)
【文献】特開2001-206506(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104676779(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106778982(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0249995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/04
A61L 2/10
A61L 2/08
A61L 2/07
A61L 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用機器類の製造工場であって、
前記医療
用機器類の製造領域と出荷領域の間に、滅菌準備領域と、本滅菌領域と、滅菌養生領域とをこの順序で有する滅菌領域が、該滅菌領域以外の領域から隔離されて配置されてな
り、
前記滅菌対象の医療用機器類が、水蒸気又はガスの流通可能な包装資材の内部に収納された状態であることを特徴とする医療用機器類の製造工場。
【請求項2】
本滅菌領域が複数あり、滅菌準備領域から各本滅菌領域への通路が該準備領域内で複数に分岐し、各本滅菌領域から滅菌養生領域への複数の通路が該養生領域で合流してなることを特徴とする請求項1に記載の医療用機器類の製造工場。
【請求項3】
複数の本滅菌領域のそれぞれに、各本滅菌領域同士を繋ぐ通路が設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の医療用機器類の製造工場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器、バイアル、ゴム栓、キャップ、ピストン、その他医療用機器類全般を製造する工場に関し、特に、医療用機器類の製造から出荷までの間に、製造した医療用機器類を出荷用の包装資材に収納し、この包装資材ごと滅菌して、医療用機器類の使用時に必須の滅菌を、医療用機器類の製造工場内で行うことのできる工場に関する。
【0002】
従来、上記のような医療用機器類は、製造工場内で製造後、医療用機器類を使用する例えば製薬会社や研究機関あるいは疾病治療機関等の医療用機器類使用所に発送され、これら医療用機器類使用所において、滅菌処理され、滅菌直後に所定の使用がなされることが一般的である。
【0003】
このように、医療用機器類に関しては、医療用機器類のユーザー側で、使用に際しての滅菌が行われるのが通常であり、滅菌直後に使用がなされない場合には、滅菌状態が維持された状態で保管用の容器や袋等に収容され保管されるのが一般的である。
【0004】
しかし、滅菌のためには、特殊で高価な装置を必要とする上、このような特殊な装置の操作に精通する必要があるばかりでなく、このような特殊な装置の高レベルでのメンテナンスの必要もある。加えて、このような特殊で高価な装置の設置場所の確保、あるいはこの設置場所の高レベルでのメンテナンスの必要もあり、ユーザー側の負担は絶大である。
【0005】
一方、医療用機器類の滅菌あるいは、飲食物用容器の殺菌について、種々の技術が提案され、あるいは実用されている。
例えば、特開2016-538040(特許文献1)では、容器を低温殺菌あるいは高温殺菌する際の熱エネルギーを循環させて熱エネルギーコストを抑える技術が提案され、特開2013-151152(特許文献2)では、プラスチックのプレフォームを、容器に成形する前に内側面と外側面を加熱滅菌する技術が提案され、特開2017-113257(特許文献3)では、減圧と熱により滅菌するシステムが提案されている。また、一般財団法人日本規格協会から、「ISO規格に準拠した無菌医薬品の製造管理と品質保証」と題する書籍(非特許文献1)が発行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-538040
【文献】特開2013-151152
【文献】特開2017-113257
【非特許文献】
【0007】
【文献】2000年5月31日一般財団法人日本規格協会発行「ISO規格に準拠した無菌医薬品の製造管理と品質保証」
【0008】
しかし、特許文献1,2の技術は何れも、容器やプラスチックのプレフォームあるいは成形品個々の滅菌乃至は殺菌技術に関するものであり、滅菌乃至は殺菌後にこれらの容器等を、これらの容器等をユーザー側で直ちに使用する場合は問題ないが、ユーザー側に出荷する際には、出荷のための梱包が必要となり、この梱包資材による容器等の汚染は必至であり、この対策を講じる必要があるのみならず、ユーザー側では使用直前に、再度の滅菌乃至は殺菌が必須となる。
これらに対し、特許文献3は、使用した後の注射器や手術道具などの医療用機器を廃棄処分するに際しての滅菌技術に関するものであり、使用直前の滅菌とは全く異なっている。
また、非特許文献1は、医薬品の製造及び、シリンジやバイアル等の医療用機器類への充填に際しての無菌手法を規定するものであり、医療用機器類の製造元での無菌手法に関する規定ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来の滅菌乃至殺菌技術あるいは無菌手法とは異なり、医療用機器類の製造元で、該機器類の製造後、ユーザー側への出荷前に、該機器類を収納した包装資材ごと滅菌する技術を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、
先ず、医療用機器類の製造工場内の、医療用機器類の製造領域と出荷領域の間に、滅菌領域を配置すればよいことを見出し、次いで、この滅菌領域では、医療用機器類を出荷用の包装資材に収納した状態で、この包装資材ごと滅菌することがユーザー側において極めて便宜であることを見出すと共に、
医療用機器類をこの包装資材に収納した状態のまま、包装資材ごと滅菌するには、包装資材が滅菌用媒体(例えば、高圧水蒸気やガス等)を自在に通過させる機能を有することが必要であり、
しかも、滅菌用媒体(例えば、蒸気やガス、紫外線や電子線)の噴出(照射)を包装資材の周囲で行うことにより、医療用機器類はもとより、これらを収納している包装資材も万遍なく滅菌することができることを見出した。
【0011】
本発明は、以上の知見をもとにしてなし得たものであり、医療用機器類の製造工場であって、前記医療用機器類の製造領域と出荷領域の間に、滅菌準備領域と、本滅菌領域と、滅菌養生領域とをこの順序で有する滅菌領域が、該滅菌領域以外の領域から隔離されて配置されてなり、
上記の滅菌対象の医療用機器類は、水蒸気又はガスの流通可能な包装資材の内部に収納された状態である。
また、上記の本滅菌領域は複数あり、滅菌準備領域から各本滅菌領域への通路が該準備領域内で複数に分岐し、各本滅菌領域から滅菌養生領域への複数の通路が該養生領域で合流していてもよい。更に、複数の本滅菌領域のそれぞれに、各本滅菌領域同志を繋ぐ通路が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出荷直前の医療用機器類を、該機器類の製造工場内で滅菌することができるため、該機器類のユーザー側では、入荷直後に該機器類を使用することができ、ユーザー側での使用直前の滅菌操作・滅菌状態が維持された状態での保管などは一切不要となる。
このとき、医療用機器類を高圧水蒸気又はガスの流通が可能な包装資材内に収納した状態で、滅菌処理に付せば、医療用機器類の滅菌が該機器類の包装資材ごと滅菌できるため、別途包装資材の滅菌を行う操作が省略できる。
【0013】
また、本滅菌領域を複数とし、滅菌準備領域から各本滅菌領域への通路を該準備領域内で複数に分岐させ、各本滅菌領域から滅菌養生領域への複数の通路を該養生領域で合流させることにより、例えば、複数の本滅菌領域を、上記の高圧水蒸気滅菌領域と共に、乾熱滅菌領域、ガス滅菌領域、放射線滅菌領域、紫外線照射滅菌領域、電子線照射滅菌領域等のように、複数手法の滅菌領域とすることができるため、各医療用機器類の用途やユーザーの要望等に応じた複数の滅菌手法を一度に行うこともできる。
しかも、複数の本滅菌領域のそれぞれに、各本滅菌領域同士を繋ぐ通路が設けられていれば、同種あるいは異種の本滅菌を連続して行う場合に、いちいち養生領域あるいは準備領域を経由せずに、直接次の本滅菌領域に移行させることができ、滅菌効率あるいはエネルギー効率が良好になる。
【0014】
また本発明において、本滅菌領域を、例えば、高圧水蒸気滅菌領域とし、滅菌準備領域を予備加熱領域とすれば、本滅菌領域で使用した後の温度低下した蒸気により滅菌準備領域の予備加熱を行うことができるため、熱効率上、有利な滅菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る工場の配置態様の一例を簡略化して示す説明図である。
【
図2】
図1の滅菌領域の他の配置態様を簡略化して示す説明図である。
【
図3】(A)~(C)は本発明で使用する包装資材の例を示す説明図である。
【
図4】本発明の滅菌領域において、包装資材を入れて使用する金網製パイプ状体を示す説明図である。
【
図5】本発明で使用する包装資材の他の例の一部(コンテナー)を示す説明図である。
【
図6】
図5に示すコンテナーと組み合わせて1組の包装資材を構成するホルダーを示す説明図であり、(A)が平面図、(B)が断面の一部を示す図、(C)~(E)が使用態様例を説明するための図である。
【
図7】
図4に示す金網製パイプ状体内に、
図5のコンテナーと
図6のホルダーとで構成する包装資材を入れた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る工場の配置態様の一例を簡略化して示す図であり、同図において、医療用機器類は、製造領域内において、例えば射出、注型、削り出し、ブロー、プレス等周知の成形技術により成形され、次いで、本例では、洗浄・乾燥領域で清浄され、包装領域で包装資材内に収納され、保管領域に一時保管される。
この後、上記医療用機器類は包装資材ごと、滅菌準備領域、本滅菌領域、滅菌養生領域からなる滅菌領域に導入され、例えば、高圧水蒸気、乾熱、ガス、放射線、紫外線、電子線等の適宜の滅菌手法により滅菌処理される。
【0017】
例えば、高圧水蒸気滅菌の場合は、準備領域が予熱領域となり、本滅菌領域で高圧飽和水蒸気により滅菌され、養生領域が常温までの放冷領域となる。
乾熱滅菌の場合も、準備領域が予熱領域となり、本滅菌領域で高温の乾燥空気で滅菌され、養生領域が常温までの放冷領域となる。
ガス滅菌の場合は、本滅菌領域においてエチレンオキサイド等により滅菌される。準備領域は、例えば冬季あるいは雨季等において、予備的な加熱あるいは乾燥領域となり、養生領域が常温までの放冷領域あるいは残留エチレンオキサイドの放散領域となる。
本滅菌領域での滅菌手法がガンマ線、紫外線、電子線照射の場合は、準備領域は、例えば上記したように冬季あるいは雨季等において、予備的な加熱あるいは乾燥領域となり、養生領域がガンマ線、あるいは紫外線や電子線の残留影響の解消領域となる。
【0018】
本発明において、上記の滅菌準備領域・本滅菌領域・滅菌養生領域からなる滅菌領域は、例えば
図2に示すような態様とすることもできる。
図2において、本例では、本滅菌領域を、第1本滅菌領域,第2本滅菌領域,第3本滅菌領域の3つの領域に分け、これら3つの本滅菌領域への滅菌準備領域からの通路を、該準備領域で第1通路,第2通路,第3通路の3つに分岐させ、これら3つの通路から、第1,第2,第3の本滅菌領域へ導入し、これら3つの本滅菌領域で、前記したような高圧蒸気、乾熱、紫外線照射等の適宜の滅菌手法にて滅菌される。
【0019】
このとき、第1,第2,第3の本滅菌領域の全てを1つの滅菌手法に統一させてもよいし、全て異なる滅菌手法としてもよい。例えば、第1本滅菌領域を高圧水蒸気滅菌領域とし、第2本滅菌領域を乾熱滅菌領域とし、第3本滅菌領域を紫外線照射滅菌領域とするなどしてもよい。
【0020】
また、例えば、第1本滅菌領域で高圧水蒸気滅菌を行った後、第2本滅菌領域で乾熱滅菌あるいは第3本滅菌領域で紫外線滅菌を行ったり、更には第1→第2→第3と順番に3種の滅菌を行うなど、種々の態様での滅菌処理を行うこともできる。
そして、このような滅菌処理の便宜のために、
図2に示すように、第1本滅菌領域と第2本滅菌領域との間、第2本滅菌領域と第3本滅菌領域との間に、これらの領域を直接行き来できる通路PWを設けることもできる。
【0021】
更に、医療用機器類の用途やユーザーの要請等に応じて、異なる医療用機器類の滅菌を同時に行うこともできる。例えば、第1本滅菌領域でゴム栓、第2本滅菌領域でバイヤル、第3本滅菌領域でシリンジの滅菌処理を一度に行うこともできる。
【0022】
そして、
図2に示すように、以上のような複数の本滅菌領域の各々から各通路を通って滅菌養生領域に搬送され、該養生領域で養生されつつ合流し、次の領域(
図1の例では梱包・搬出領域)に搬出される。
【0023】
本発明は、以上のような滅菌処理を、医療用機器類の包装資材に収納した状態で行うこともできる。すなわち、医療用機器類を水蒸気又はガスの流通が可能な包装資材内に収納した状態で、上記の滅菌準備領域・本滅菌領域・滅菌養生領域からなる滅菌領域を搬送させ、包装資材ごと滅菌処理することができる。なお、水蒸気やガスが流通可能であれば、紫外線、電子線、ガンマ線の流通も可能であることは明白である。
このような包装資材としては、例えば、医薬用機器類のうち、ゴム栓やピストン等のゴム弾性を有する材料製の物品を投入する、
図3(A)~(C)に示すような、袋状を呈する資材があり、このような袋状資材の全体もしくは一部が、水蒸気(高圧水蒸気を含む)、ガス(エチレンオキサイド、その他の滅菌処理に使用されるガス)の流通が可能な市販の材質(例えば、静幸産業社製商品名“滅菌用バッグ”、アムコ社製商品名“クリーンテックスバッグ”等)で調製されている。
【0024】
図3(A)に示す袋状包装資材30は、概略長方形状を呈し、その長手方向の一方の端部近傍の一方の面(以下、表面)に円形の開口部32を有し、開口部32の外周部を囲って合成樹脂等製の外周部材33が設けられており、好ましくは水蒸気やガスの流通が可能な材料製の蓋34(
図4参照)がこの外周部材33を利用して開口部32を閉じる構成となっている。
なお、この袋状包装資材30は、内袋311と外袋312を含む多重構造を呈し、内袋311が図示するように、開口部32から袋の外部に引き出せるようになっている。
【0025】
図3(B)に示す袋状包装資材30′は、
図3(A)の資材と同様、概略長方形状を呈し、長手方向の一方の端部近傍の表面にスリット状の開口部32′を設け、図示はしないが、開口部32′に、スナップやチャック等の閉口手段を設けてもよく、この開口部32′から袋30と同様に、図示はしないが、内袋を引き出すようにしてもよい。袋30′は多重構造ではなく、1重構造であってもよい。
また、開口部は、
図3(C)に示すように、長方形の袋30″の一方の短辺32″の全長に渡って、または中央部や一方若しくは双方の端部等適宜の箇所に部分的に設けることもでき、この袋30″にあっても、袋30′の場合と同様に、開口部32″に、図示はしないがスナップやチャック等の閉口手段を設けてもよいし、外袋と内袋の2重構造とし、開口部32″から内袋を引き出せるようにすることもできる。
【0026】
このような袋状の包装資材30~30″内に滅菌対象の医療用機器類を収納するには、例えば本願出願人による特願2017-143571提案の「物品投入装置」で行われ、包装資材30~30″ごと、
図1や
図2に示す滅菌領域で上記したような滅菌処理に付される。
また、例えば、
図4に示すような金網製のパイプ状体4を使用し、このパイプ状体4内に上記の医療用機器類を収納した包装資材30(又は30′又は30″)を入れ、このパイプ状体4を適宜の角度ずつの回転や反転を行ったり、あるいは
図2に示すような本滅菌領域が複数設けられている場合に、例えば、第1本滅菌領域で高圧水蒸気による滅菌、第2本滅菌領域で紫外線照射による滅菌、第3本滅菌領域でガスによる滅菌のように、複数回の、しかも異なる手法による滅菌を行うことによって、滅菌することもできる。
もちろん、このような領域間の移動を上記の金属網製パイプ状体4ごと行うことにより、移動途上で、あるいは各滅菌領域での滅菌途上で、上記のような適宜の角度ずつの回転や反転を加えて滅菌をすることもできる。
【0027】
さらには、本願出願人による特願2016-90235のコンテナー、あるいはその改良品を包装資材として使用し、内部にバイヤル、シリンジのシリンダーやロッドを収納し、コンテナーごと、
図1や
図2に示す滅菌領域で上記したような滅菌処理が行われる。
例えば、
図5に示すコンテナー5と
図6(A)(B)に示すホルダー6との組み合わせを包装資材として使用する。
本例のコンテナー5は、
図5に示すように、平面形状が概略矩形の箱形を呈し、上部開口部に外側に延伸する環状フランジ部51と、該フランジ部51より所定長底面側となる位置に環状に設けられた第1の段差部(以下、第1棚状部)521と、該第1棚状部521より一定の間隔L1だけ上方に、該第1棚状部521と略同形の第2の段差部(以下、第2棚状部)522を備えている。
【0028】
上記のコンテナー5に組み合わせて使用するホルダー6は、
図6(A)の平面図と同図(B)の断面図に示すように、板状の基板部61と、この基板部61より下方に突出する複数のコップ状部62とを備えている。
基板部61の周囲が上記のコンテナー5の第1棚状部521と第2棚状部522の間に入り込み、第1棚状部521で支持(この支持は、基端部61を第1棚状部521上に載置するのみで、固定はしない)されて、本発明の包装資材の他の例を構成する。
このとき、基板部61の厚みL2は、第1棚状部521と第2棚状部522の間隔L1より小さく、言い換えれば第1棚状部521と第2棚状部522の間隔L1が基板部62の厚みL2より大きくして、ホルダー6がこの間隔L1内で上下に移動可能に構成することが好ましい。もちろん、この移動の間にホルダー6が、第1棚状部521または第2棚状部522から外れてしまわないように、第1棚状部521と第2棚状部522の幅(コンテナー5の内周壁から内周側に突き出している部分-言い換えれば“棚の幅”-)の寸法を設計することが好ましい。すなわち、上記の棚幅が小さすぎればホルダー6の基板部61が外れ易く、大きすぎればコンテナー5の内容積が相対的に小さくなってホルダー6のコンテナー5内への収納作業が厄介となるため、これらを考慮して設計することが好ましい。
【0029】
また、ホルダー6に具備されている上記のコップ状部62は、上部と下部とが開口し、上部開口径が下部開口径より大きい鉢型状を呈しており、この鉢型コップ状部62は、コップ状部62を網状体で構成(図示省略)したり、あるいは
図6(B)に示すように上記のコップ状体62の壁に複数のスリットSLを設けるなどして、コップ状部62内を高圧水蒸気やエチレンオキサイド等の滅菌用ガス、あるいは紫外線、電子線、ガンマ線等が通過できるような構成とする。
なお、
図6(A)の符号63は、鉢型コップ状部62の上部開口部を示している。
【0030】
図6(C)は、上記のような構成のホルダー6にバイアルVを収容した状態を示している。バイアルVは、ホルダー6のコップ状部62内に立姿勢で収容され、本例では、バイアルVの底部周縁がコップ状部62の下方内壁面に一部接触している。
このバイアルVのコップ状部62内への収容は、ホルダー6をコンテナー5内に組み込んだ(基板部61を第1棚状部521上に支持させた)後に行ってもよいし、バイアルVのコップ状部62内への収容後に、ホルダー6をコンテナー5内に組み込んでもよい。
【0031】
このようにして、コンテナー5内にホルダー6を使用してバイアルVを収納した後、コンテナー5の上部開口部を開口したまま、あるいは水蒸気又はガスの流通が可能なシート53(
図7参照)を環状フランジ部51の上面に貼着する。
そして、上記の開口したまま、あるいはシート53を貼着したコンテナー5を、
図7に示すように、上記と同様の金網製パイプ状体4内に入れ、図示しない固定具で金網製パイプ状体4に固定し、本滅菌領域で、上記と同様に、このパイプ状体4を適宜の角度ずつ回転させたり、あるいは
図2に示す第1本滅菌領域で高圧水蒸気による滅菌、第2本滅菌領域で紫外線照射による滅菌、第3本滅菌領域でガスによる滅菌を行うなどのように、複数回の、しかも異なる手法による滅菌を行うこともできる。
【0032】
なお、金網製パイプ状体4を適宜の角度ずつ回転させる際の回転角度は、上記の第1棚状部521と第2棚状部522の間隔L1と、基板部61の厚みL2の大きさに依存し、例えば、金網製パイプ状体4が時計回りに回転すると、内部に入れてあるコンテナー5も金網製パイプ状体4と共に時計回りに回転する。この回転に伴って、コンテナー5内のホルダー6は、コンテナー5の第1棚状体521上に支持されている基板部61が図面に対し左側端が次第に上方に傾斜して第2棚状部522に当たって傾斜が停止し、一方右側端は下方に傾斜するが、第1棚状部521とコンテナー5の内壁面で支持されており、第1棚状部521から落下することはない。
そして、金網製パイプ状体4を、所定の角度(例えば30°)回転させた時点で反転させ、続いて反時計回りに回転させると、基板部61の右側端が上記の動きをする。
このように、金網製筒状体4内に固定して入れてあるコンテナー5の回転に伴うホルダー6の回転時の左・右側端の傾斜角度が上記のL1に依存する。
【0033】
上記のようなホルダー6の動きの際に、ホルダー6に収納されたバイアルVは、
図6(C)の状態から、同図(D)(時計回り),(E)(反時計回り)のように動き、バイアルVと鉢型コップ状体62との間に非接触部NCが発生する。
非接触部NCの大きさは、滅菌用の高圧水蒸気やガス、あるいは紫外線や電子線が通過する大きさであれば足りるため、極めて僅かで充分である。
【0034】
なお、ホルダー6の基板部61の幅(棚状部上に支持される部分の幅)と、棚状部の棚幅の寸法によっては、上記の所定角度の時計回り・反時計回りの回転の際に、基板部61の周囲とコンテナー5の内壁面との接触で、第1棚状部521での支持が保たれ、該棚状部521から外れることはないため、第2棚状部522を不要とすることもできる。
また、ホルダー6の基板部61を支持する棚状部を、コンテナー5の内壁面の高さ方向に複数段設けておき、ホルダー6をコンテナー5に複数段組み込むこともできる。このような場合も、金網製パイプ状体4を、所定角度の時計回りと反時計回りに、言わば揺動回転させて、滅菌領域にて滅菌処理を行うことによって、滅菌処理を行うこともできる。
【0035】
また、本発明において、滅菌準備領域・本滅菌領域・滅菌養生領域からなる滅菌領域内の、包装資材に収納された状態での医療用機器類の移動は、例えばベルトコンベア、その他のロボット手段による自動方式であってもよいし、手押し台車による手動方式であってもよい。
更に、滅菌領域で滅菌処理が終了した上記の医療用機器類を収納した包装資材は、
図1に示す梱包・出荷領域に移送され、梱包領域内で出荷用に梱包されるが、この出荷用の梱包資材についても、少なくとも上記の包装資材が接触する内面が、予め滅菌処理されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
30,30′,30″ 袋状包装資材
4 金網製パイプ状体
5 コンテナー
521,522 棚状部
6 ホルダー
61 基板
62 カップ状部
63 カップ状部の上部開口部
PW 通路
V バイアル
NC 非接触部