(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲート、miRNAの組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240819BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20240819BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240819BHJP
C07K 14/005 20060101ALI20240819BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20240819BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240819BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20240819BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240819BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240819BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240819BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240819BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240819BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240819BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240819BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240819BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/195
C07K14/47
C07K14/005
C12N9/22
C12Q1/68
G01N33/533 ZNA
G01N33/53 M
G01N33/574 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12M1/34 D
C07K16/00
C12N15/09 200
C12N15/62 Z
C12N15/55
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2023501366
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2021105838
(87)【国際公開番号】W WO2022007970
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】202010663579.5
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011058041.8
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011389005.X
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011400346.2
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523007432
【氏名又は名称】上海米然生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王奕然
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-510371(JP,A)
【文献】特表2010-507099(JP,A)
【文献】Cell,2019年,179,604-618
【文献】Nat Protoc.,2019年,14 (5),1661-1685
【文献】nature,2014年,511,362-365, methods
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68- 1/6897
G01N 33/533
G01N 33/53
G01N 33/574
C12N 9/22
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNase H突然変異体コンジュゲート
が
【化1】
として示さ
れ、ここで、RNase Hvは、RNase H突然変異体であり、RNA又はRNA-DNAハイブリッド鎖に結合することができるが、RNAを切断することができず、ここで、
L
x
は
Gly-Gly、Gly-Gly-Gly又はAla-Glyであり
、SHは
システインであり、Fは
蛍光官能基であり、nは
3であることを特徴とする、蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲート。
【請求項2】
前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて
、前記Fは、励起波長が300nm~700nmの間であり、発光波長が300nm~700nmの間である、前記SHと共有結合架橋を形成することができる
蛍光物質であ
る、請求項
1に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲート。
【請求項3】
前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、前記RNase Hは、細菌、ヒト又はウイルスのRNaseに由来し、
前記RNase Hvは、RNAの加水分解を触媒するRNase Hのドメインに1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を行って、前記ドメインがRNAの加水分解を触媒する機能を失うが、RNA:DNAハイブリッド鎖に結合する機能を維持し、又は向上させる、請求項1に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲート。
【請求項4】
前記Fは、Alexa Fluor
(登録商標)555
C2Maleimide又はAlexa Fluor
(登録商標)532
C5Maleimideであ
り;及び
前記RNase Hvのアミノ酸配列は、配列番号20に示された通りであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲート。
【請求項5】
(1)(L
x-
SH)
nとRNase Hvを割合で混合し、共役させてRNase Hv-(L
x-
SH)
nを得る工程;
(2)工程(1)で得られたRNase Hv-(L
x-
SH)
nに2~10倍過剰量のFを加えて
RNase H突然変異体コンジュゲートを
得る工程を含む
方法であるか、又は
、
(a)N末端又はC末端に(L
x-
SH)
nを有するRNase Hvを発現させてRNase Hv-(L
x-
SH)
nを得る工程;
(b)2~10倍過剰量のFを加えて
RNase H突然変異体コンジュゲートを得る工
程を含む方法であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲートの調製方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲートを含
むことを特徴とする、RNA検出用のキット。
【請求項7】
前記キットは、DNAプローブをさらに含み、
前記DNAプローブは固定化DNAプローブであり、前記固定化DNAプローブはマイクロスフェア又は平面媒体に固定化されており;及び/又は、前記DNAプローブのヌクレオチド配列は配列番号1~13に示された通りであることを特徴とする、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
(1)最初にDNAプローブをRNAにハイブリダイズさせ、次に請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲートを加える工程;又は、
(2)DNAプローブとRNA、請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記RNase
H突然変異体コンジュゲートを同時に加えて、蛍光を検出する工程;
を含
むことを特徴とする、RNAの検出方法。
【請求項9】
前記DNAプローブと前記RNase H突然変異体コンジュゲートとの比率は、2000~100000:1であり;及び
前記RNAの検出は、多重RNAのシングルチューブ検出又はマルチチューブ検出であり;前記シングルチューブ検出は、1回の反応で1つ又は複数のRNAを検出することであり;前記マルチチューブ検出は、各反応で1つのRNAのみを検出することであり;及び
前記DNAプローブは固定化DNAプローブであり、前記固定化DNAプローブはマイクロスフェア又は平面媒体に固定化され;及び/又は、前記RNAはmRNA、ノンコーディングRNA又はmiRNAであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記固定化DNAプローブの3’末端は前記マイクロスフェア又は前記平面媒体に固定化され;及び/又は、前記miRNAはmature miRNA又はprecursor miRNAであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
RNAの解析及び検出における使用のための、請求項1~
4のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲート又は請求項6
もしくは7に記載の前記キット。
【請求項12】
請求項11に記載の使用のための、請求項1~4のいずれか1項に記載の前記RNase H突然変異体コンジュゲート又は請求項6もしくは7に記載の前記キットであって、
前記RNAはmRNA、ノンコーディングRNA又はmiRNAであり、及び/又は、前記RNAの解析及び検出はがんの検出用である、RNase H突然変異体コンジュゲート又はキット。
【請求項13】
(1)被検試料に含まれ
るmiRNAの組み合わせの濃度を入力するために使用される入力モジュールを含み;
前記miRNAの組み合わせは、miR-191、miR-454、miR-1285、miR-126を含むか、又は前記miRNAの組み合わせは、miR-191、miR-454、miR-1285、miR-126、miR-181a-2
*
、miR-203a、miR-15b、miR-21、miR-365、miR-486-5p、miR-375、miR-429、miR-141、miR-193b、miR-125b、miR-206、miR-155、miR-574-5p、miR-19a及びmiR-200b
を含み
、前記miRNAの
濃度は以下の工程によって取得され:
(i)最初にDNAプローブとmiRNAをハイブリダイズさせ、次に
請求項1~4のいずれか1項に記載のRNase H突然変異体コンジュゲートを加え、
蛍光官能基の蛍光シグナルを検出し、標準曲線に基づいてmiRNAの濃度を算出し、又は、
(ii)DNAプローブ、miRNA及び
請求項1~4のいずれか1項に記載のRNase H突然変異体コンジュゲートを同時に加え、
蛍光官能基の蛍光シグナルを検出し、標準曲線に基づいてmiRNAの濃度を算出して得
、
(2)LC
scoreを算出するための解析モジュールを含み、ここで、LC
score=0.5409+(β
1×C
1+…+β
n×C
n)、CはmiRNAの濃度(nM)、nはmiRNAの番号、βは当該番号のmiRNAに対応する加重割り当てを表し、その値の範囲は1~2
0であり、miRNAの番号及び加重割り当ては次の表に示された通りであり:
【表1】
nの値
は4であり、前記解析モジュールは、LC
score=0.5409+0.3350×C
miR-191-0.4206×C
miR-454-0.2034
×C
miR-1285+0.3019×C
miR-126を統計して得、又はnの値
は20であり、前記解析モジュールは、LC
score=0.5409-0.1142×C
miR-125b+0.3019×C
miR-126-0.2034×C
miR-1285+0.0666×C
miR-141+0.0821×C
miR-155-0.460×C
miR-15b+0.1077×C
miR-181a-2*+0.3350×C
miR-191+0.1581×C
miR-193b+0.2011×C
miR-19a+0.0459×C
miR-200b-0.1861×C
miR-203a-0.0656×C
miR-206+0.2339×C
miR-21-0.0582×C
miR-365-0.2875×C
miR-375-0.1120×C
miR-429-0.4206×C
miR-454+0.2970×C
miR-486-5p+0.0706×C
miR-574-5pを統計して
得ることを特徴とする、肺がん診断システム。
【請求項14】
(
3)判断モジュールをさらに含み、LC
score
≧0.5の場合、被験試料が肺がんであると判断し、LC
score
<0.5の場合、被験試料が健康であると判断することを特徴とする、請求項13に記載の肺がん診断システム。
【請求項15】
前記DNAプローブのヌクレオチド配列は、配列番号6~7および21~36に示された通りであることを特徴とする、請求項13または14に記載の肺がん診断システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、出願日が2020年7月10日である中国特許出願202010663579.5の優先権、出願日が2020年9月30日である中国特許出願202011058041.8の優先権、出願日が2020年12月1日である中国特許出願202011389005.Xの優先権、出願日が2020年12月1日である中国特許出願202011400346.2の優先権を主張する。本出願は、上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、バイオアッセイの分野に属し、蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲート及びRNAの検出におけるその使用に関し、特に疾患の1つ以上のmiRNAの組み合わせを同時に検出する技術に関し、また、miRNAの組み合わせ、それを含むキット及び肺がんの診断におけるその使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
腫瘍やその他の慢性疾患の早期診断に関心が高まっている。新しい腫瘍診断マーカーには、ctDNA及びRNAが含まれる。最新の臨床研究の進歩により、RNAマーカー、特にマイクロRNA(miRNA)が、主に感度と特異性の点で、早期腫瘍診断においてより有意な利点があることを示している(Liuら,Ann.Onc.,2020,31(6),745~759;Fehlmannら,JAMA Oncol,2020,6(5),714~723)。miRNAは、約19~25個のヌクレオチド長の一類の内因性の低分子RNAであり、胚発生、細胞分化、器官形成などの重要なプロセスにおいて重要な制御機能を担っている。したがって、腫瘍の発生と発達におけるmiRNAマーカーの役割を監視することは、腫瘍診断、予後マーカー及び治療標的としての使用の基礎となっている。末梢血中のmiRNAは、非侵襲的なリキッドバイオプシーの理想的な標的であり、患者の早期診断を可能にし、動的かつ継続的に監視することを容易にする。しかし、低分子RNA、特にmiRNAの解析又は検出は依然として課題となっている。
【0004】
既存のRNAの解析又は検出方法には、PCR増幅原理に基づくリアルタイムPCR(Real-time PCR)蛍光検出又は逆転写PCR(reverse transcription PCR)に続く遺伝子チップハイブリダイゼーション法が含まれる。これらの既存の方法では、標的miRNAを検出するためにライゲーションに続いてPCR増幅が必要であるため、系統誤差があり(詳細については、Raabeら,Nucleic Acids Res,2014,42(3),1414~1426;Levinら,Nat Methods,2010,7(9),709~715;Jayaprakashら,Nucleic Acids Res,2011,39(21),e141を参照)、スループットが限られた少数の低分子RNAしか同定できず、迅速、正確かつ経済的なハイスループット検出を実現できず、重要な価値を有するRNAマーカーの翻訳と使用が困難になっている。組織や体液中のmiRNAを正確に定量化し、効果的に検出する方法は、当該マーカーを疾患の解析、検出及び医薬品開発で広く商業的に使用するための結節点となる共通課題となっている。この共通課題を解決するには、PCR増幅を伴わないmiRNAの検出が核心となっている。PCR増幅を伴わないmiRNAの検出方法には、S9.6モノクローナル抗体を使用してDNA/RNAハイブリッド鎖を認識し、S9.6モノクローナル抗体を認識する第2のポリクローナル抗体を使用して検出シグナルを生成させる方法がある(Huら,Nucleic Acids Res,2006,34(7),e52)。この検出方法は、多段階の洗浄と溶液添加が必要であり、45℃で16時間のハイブリダイゼーション条件を必要とするため、実用化には限界がある。PCR増幅を伴わないRNAの検出のもう一つの方法は、ギャップハイブリダイゼーション(gap hybridization)法であり、標的RNAを含む4つの一本鎖核酸分子をハイブリダイゼーションさせ、検出できる標的RNA配列は、最長の相補的なプローブ配列に依存する。異なるRNAの場合、検出システムで異なる配列の相補的なプローブを使用する必要がある。そのため、限られた配列範囲の限られた数のmiRNAしか同定できず、汎用のmiRNA検出技術として使用することはできない(Pohlmannら,2010,Anal Chem,82,4434~4440)。Thermo社の子会社であるpanomics社が開発したもう1つのギャップハイブリダイゼーション法はQuantiGene chemistryであるが、これは関連する検出プローブによって制限されるだけではなく、RNA/DNAハイブリダイゼーション反応を54℃で20時間実行する必要があり、RNAの熱安定性に大きな挑戦となり、検出プロセスでは複数回の洗浄と試薬追加が必要であり、使用には大きな制限がある(Kibriyaら,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev,2014,23(12),2667~2672)。
【0005】
したがって、DNA/RNAハイブリッド鎖を1ステップで直接認識し、それを検出可能なシグナルに変換できるRNA検出技術が急務となっている。Carterらは、突然変異したRNase Hを使用して、DNA/RNAハイブリッドを認識することによってRNA配列を検出した(US7560232B2,RNA/DNAハイブリッドの捕捉、検出及び定量化の方法、及びそれに有用な修飾RNase H)。しかし、この方法は、RNAの検出の感度、検出の利便性、及び実用性の点で、実用化シナリオの要件を満たすことができない。
【0006】
さらに、腫瘍、その他の慢性疾患、及び公衆衛生上の緊急事態では、迅速かつ正確な試料のスクリーニング、同定、解析、又は検出が必要である。多重バイオマーカーの検出は、主に1つの試料中に存在するか、又は疑いのある複数のマーカー標的を同時に検出し、単一標的検出技術を用いて1つの試料中の検出すべき複数の標的を解析し、同じ試料に対して操作を繰り返す必要があり、作業量を増加し、検出サイクルを延長し、試料の汚染と検出担当者及び生物学的安全性に関するリスクを増加させるだけでなく、最も重要なこととして、検出結果の信頼性に大きな課題をもたらす。したがって、同じ種類の異なる標的に対する多重バイオアッセイ技術は非常に重要である(Zhang Pingpingら,多重バイオアッセイ技術の研究の進歩,軍事医学,2012,36,173~177)。
【0007】
バイオマーカーのハイスループット検出が可能な機器の開発に伴い、臨床に関連する診断検出は、感度や特異性の基本的な検出要件を満たすことから、検出性能(感度、特異性、再現性、結果の信頼性、及び試料必要量)及び運用性能(簡便性、迅速性)といった多次元要件へと進歩した。臨床診断用のバイオマーカーも、抗原抗体反応によって認識される最も基本的なサイトカイン(腫瘍マーカーCEA、PSAなど)から、SNP、TMBなどのPCRによる核酸突然変異の検出へと進歩している。現代のバイオテクノロジーのさらなる発展に伴い、疾患の理解及びモニタリングの必要性は、サイトカインの変化や核酸突然変異の検出から、RNA発現プロファイリング/エピジェネティクスなどの最新レベルのオミクス研究へと進歩している。(中国特許201880058078,短い核酸の多重検出;Chuangら,Pediatric Research,2007,61,24~29;Fransquetら,58,5~14;Yaoら,Curr Opin Chem Biol,2019,51,11~17)。
【0008】
最新の臨床研究の進歩は、RNAマーカー、特にマイクロRNA(miRNA)が、主に感度と特異性の点で、早期腫瘍診断においてより有意な利点があることを示している(Liuら,Annual of Oncology,2020,31,745~759;Fehlmannら,JAMA Oncol2020,6,714~723)。同じmiRNAが複数のタンパク質をコードする遺伝子に影響を与える可能性があり、同じ遺伝子がまた複数のmiRNAの影響を受ける可能性があり、その作用は複雑なネットワークモードである。したがって、腫瘍の発生と発達におけるmiRNAマーカーの役割を監視することは、腫瘍診断、予後マーカー及び治療標的の使用の基礎となっている。体液中のmiRNAマーカーは、非侵襲的なリキッドバイオプシーの理想的な標的であり、患者の早期診断を可能にし、動的かつ継続的に監視することに便利である(Brackenら,Nat Rev Genet,2016,17,719~732;Hayesら,Trends in Molecular Medicine,2014,20,460~469;Lebanonyら,J Clin Oncol,2009,27,2030~2037;Giladら,J Mol Diagn,2012,14,510~517)。要約すると、これらの要件を満たすmiRNAマーカーは、多重miRNAの標的を検出することを必要とする。
【0009】
現在、RNA(miRNA)の発現レベルを検出する様々な方法が開発されている。PCRの原理に基づくmiRNAの検出方法はいくつかあり、定量PCR法(quantitative real-time PCR)は、miRNAの定量的検出に最も一般的に使用されている方法である。その他には、ステムループに基づくRT-PCR法(stem-loop RT-PCR)、ポリAテールに基づくRT-PCR法などが一般的に使用されている。しかし、定量PCRから得られた特定のmiRNAの発現レベルの検出データは、研究者によって大きく異なる。Marziらは、血液中のmiR-34aの含有量が低く、検出できないため、外部参照として合成外因性miR-34aを追加したことを報告し(Marziら,Clinical Chemistry,2016,62,743~754)、一方、他の多くの研究群の検出データでは、逆にmiR-34aを容易に検出できることが示されていた(Cuiら,Acta Pharmacologica Sinica,2013,34,309~313;Gallardoら,Carcinogenesis,2009,30,1903~1909)。miRNAマーカーの検出結果における方向性の偏りに対しては、RT-PCR検出システム自体の要因を解決する必要があることに加えて、シングルチューブで複数のmiRNAを同時に検出できる技術は、正反対の検出結果を回避することができる(Tentoriら,Lab Chip,2018,18(16),2410~2424;Microsyst Nanoeng,2020,6,51;Zhangら,Chem.Sci.,2020,11,3812~3819)。
【0010】
多重miRNA検出技術はmiRNA検出分野の焦点であるが、現在、迅速なハイスループット検出が可能な普遍的に適用できる成熟したシステムはない。Thermo社の子会社であるpanomics社が開発したQuantiGene plexは、1ウェルで3~80種類のmRNA(メッセンジャーRNA)の同時測定を実現した。しかし、miRNAの多重検出では、miRNAの長さが19~25ヌクレオチドに制限されているため、1ウェルで同時に多重検出を行うという目標を達成できなく、即ち、各反応ウェルで1種類のmiRNAしか検出できない(QuantiGene TM Singleplex microRNA,www.thermofisher.com)。
【0011】
さらに、肺がんは、罹患率と死亡率が最も高い悪性腫瘍であり、がん死亡者全体の20%以上を占めしている。中国では、毎年80万人以上が新たに肺がんと診断され、新規症例の60~80%が進行期である。早期肺がん患者の5年生存率は90%(ステージ0)~60%(ステージI)であるが、ステージII~IVの患者では40%~5%に急落する。肺がん患者の多くは、初期には特に臨床症状がなく、発症した患者の8割はすでに進行期であり、最適な治療期間や手術の機会を失っている。したがって、早期肺がんを効果的に診断することは、肺がん患者の治癒率及び生存率を向上させる鍵となる。
【0012】
胸部CTで発見される早期肺がんはほとんど結節であり、微小結節や小結節の性質を判断することが困難であり、肺の多くの疾患は、一般的に結核、炎症、感染症、真菌、部分無気肺、出血など結節として現れるが、これらからどう肺がんを特定するかは、肺がんの予防と治療にとって大きな挑戦である。肺結節の発生率は25~35%であり、中国では3~5億人が検診を受ける必要がある。結節には多くの種類があり、既存の画像診断では早期がんの場合の診断が非常に困難であるため、早期悪性結節の患者は最良の治療介入のタイミングを失われる。画像診断では、主に密度に基づいて純粋なすりガラス状結節、部分充実型すりガラス状結節、純粋な充実型すりガラス状結節を分け、さらに結節のサイズ、成長速度、内部石灰化、空胞形成、辺縁構造、末梢血管、隣接する胸膜の変化などを組み合わせて解析し、多くの人的要因がある。2011年の米国験全米肺スクリーニング試験(NLST)では、低線量スパイラルCT検診群の39.1%が肺がんの疑いがあり、そのうち96.4%が肺がんではなく偽陽性であることが判明したため、胸部画像によって結節をスクリーニングすることができるが、最も早期の肺がんに対して診断することはできないが、何度も検査を繰り返すと電離放射線被ばくによる障害が発生する。したがって、肺結節患者のバイオマーカーによって良性及び悪性の肺結節を適時に診断する必要があり、それによって適時の臨床介入を可能にさせ、進行性肺がんの発生率を大幅に低下させ、生存率を向上させる。
【0013】
肺がんの一般的な早期スクリーニングと診断の多くは、腫瘍マーカー、胸部CT、気管支鏡検査、及び結節穿刺生検に依存する。臨床で一般的に使用される肺がん関連腫瘍マーカーは、カルチノエンブリオニック抗原(CEA)、神経特異エノラーゼ(NSE)、サイトケラチン19フラグメント(CYFRA21-1)、扁平上皮細胞がん関連抗原(SCC)、ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro-GDP)、炭水化物抗原125(CA125)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ-π(GST-π)、アリール炭化水素水酸化酵素(AHH)、テロメラーゼなどを含むが、肺がんの早期診断の感度が非常に低く、早期肺がん患者を見落とす結果になる(Liuら,BioMed Res.Int.,2017,2013989)。
【0014】
現在、CTガイド下の病変穿刺や様々なファイバー気管支鏡検査などの他の診断方法はすべて侵襲的な検査であり、患者に所定のリスクをもたらし、病変部位と作業者の両方に所定の要求がある。近年登場したリキッドバイオプシー技術は、腫瘍や転移巣から血液中に放出された循環腫瘍細胞(CTC)と循環腫瘍DNA(ctDNA)をモニタリングすることができ、主に肺がんの有効性と予後に関する研究に用いられている。したがって、非侵襲的で正確かつ効率的な早期肺がん診断マーカーを開発して、悪性肺結節を早期に特定し、それによって肺がんの早期診断率を向上させ、肺がんによる死亡率を低下させ、健康診断コストを削減し、国民の生活の質を効果的に向上させ、国民に奉仕することが急務となっている。
【0015】
国内外の多くの先端バイオテクノロジー企業が、肺結節/早期肺がんの診断用バイオマーカーを開発し、主にctDNAの突然変異とメチル化、自己免疫抗体、及びmiRNAなどに集中している。しかし、いずれも感度不足や製品化の困難さなどの限界があり、臨床ニーズに応えられない。現在の研究開発のホットスポットであるctDNAによる肺がんの早期診断を例にとると、Grail Bio社の肺がんステージIにおける早期肺がんのマーカーとしてのctDNAメチル化の診断感度は20~40%の範囲にあり(Taylor,Ann Oncol.,2020,31(9),1266~1267)、肺がんの早期診断のニーズに応えられず、操作が難しく、検出コストがかかる。遺伝子のDNAメチル化を肺がんのマーカーとして利用し、肺胞洗浄液によってサンプリングした後、剥離細胞のメチル化をPCRで検出するが、サンプリングが難しく、検出操作が煩雑であり、肺腺がんに対する感度は66%に過ぎない。英国のOncoimmune社や杭州のCancerProbe社によって代表される7つの自己免疫抗体による肺がんの検出の感度は約40~50%である。
【0016】
miRNAは、転写後の段階で生物学的に作用し、エピジェネティクスの主要な要因の一つである。それは早期がんマーカーとして、早期がんの診断において感度の利点があり、ステージIの肺がんの感度は80~98%に達することができる(Hassanein,Cancer Prev Res.,2012,5(8),992~1006;Iqbal,Mol Aspects Med.,2018,17,S0098~2997)。miRNAは、長さが約19~25ヌクレオチドの一類の内因性微小RNAであり、胚発生、細胞分化、器官形成などの重要なプロセスにおいて重要な調節機能を担っている。したがって、腫瘍の発生と発達におけるmiRNAマーカーの役割を監視することは、腫瘍診断、予後マーカー及び治療標的としての使用の基礎となっている。末梢血中のmiRNAは、非侵襲的なリキッドバイオプシーの理想的な標的であり、患者の早期診断を可能にし、動的かつ継続的に監視することを容易にする。
【0017】
しかし、低分子RNA、特にmiRNAの解析又は検出は依然として課題となっている。既存のRNAの解析又は検出方法には、PCR増幅原理に基づくリアルタイムPCR(Real-time PCR)蛍光検出又は逆転写PCR(reverse transcription PCR)に続く遺伝子チップハイブリダイゼーション検出法が含まれている。これらの既存の方法は、PCR増幅による系統誤差のため(Raabeら,Nucleic Acids Res.,2014,42(3):1414~1426)、スループットが限られた少数の低分子RNAしか同定できず、迅速、正確かつ経済的なハイスループット検出を実現できず、重要な価値があるRNAマーカーの翻訳と使用が困難になっている。組織や体液中のmiRNAを正確に定量化し、効果的に検出する方法は、当該マーカーを疾患の解析、検出及び医薬品開発で広く商業的に使用するための結節点となる共通課題となっている。この共通課題を解決するためには、PCR増幅を伴わないmiRNAの検出が核心となっている。したがって、DNA/RNAハイブリッド鎖を1ステップで直接認識し、それを検出可能なシグナルに変換できるRNA検出技術が急務となっている。さらに、この方法は、RNAの検出の感度、検出の利便性、及び実用性の点で、実用化シナリオの要件を満たすことができる(Kibriyaら,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev,2014,23(12),2667~2672)。
【0018】
〔発明の概要〕
DNA/RNAハイブリッド鎖を直接認識し、検出可能なシグナルを変換して生成することができ、PCR増幅を必要としないRNA検出技術を欠く先行技術の欠点を解決するために、本発明は、蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲート及びその使用を提供し、さらに、本発明は、miRNAの組み合わせ、それを含むキット及び肺がんの診断におけるその使用を提供する。具体的には、機能が類似した特定の分子によって修飾されたRNase H突然変異体と、高いシグナル強度を生成する蛍光物質を特異的に定点架橋して修飾し、RNAマーカー満足できる疾患研究分野への本格的な使用を提供する。ここで、野生型RNase Hは、DNA/RNAハイブリッド鎖に結合し(
図1のA)、結合したRNAを加水分解することができ、その加水分解機構は
図1のBに示されたとおりである。本発明の蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲートは、RNase Hの突然変異、修飾及び化学標識に由来し、RNA、特に低分子RNAを効率的に認識し、疾患スクリーニング、早期診断、治療効果の評価又は医薬品開発に関連する解析と検出に使用される。その検出原理は図
3に示された通りであり、DNAなどの検出プローブを担体の表面に固定化し、検出標的RNAとの相補的なハイブリダイゼーションによってDNA/RNAハイブリッド鎖を形成し、当該ハイブリッド鎖は蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲートによって認識される。RNase H突然変異体コンジュゲート上に生成した蛍光強度を検出することにより、標的RNAの発現量を得ることができる。本発明は、マイクロRNA(19~25nt)、ロングノンコーディングRNA(長鎖非コードRNA)、メッセンジャーRNA及びそのフラグメントなどの一本鎖RNAを含む、長さが15~200個のヌクレオチドのRNAを検出することができる。さらに、本発明のmiRNAの組み合わせは、肺がんの診断において高い感度と特異性を有し、バイオマーカー又はその組み合わせが高い感度を有する場合、その特異性が影響を受けること、及びその逆も、当技術分野において一般的に知られている。本発明のmiRNAの組み合わせのハイライトの1つは、感度と特異性の相対的なバランスを実現できることであり、肺がんの検出用の診断剤の調製又は肺がんの治療用の医薬のスクリーニングにおいて幅広い用途を有する。
【0019】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第1態様は、蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲートを提供することであり、ここで、前記RNase H突然変異体コンジュゲートは、(i)RNase Hv-(Lx-SH-F)nで示されるか、又は(ii)RNase Hv-Lx-リガンド、受容体-Fを含み、前記リガンドは前記受容体と結合することができ、ここで、RNase Hvは、RNase H突然変異体であり、RNA又はRNA-DNAハイブリッド鎖に結合することができるが、RNAを切断することができず、ここで、Lはリンカーであり、xは1~10であり、SHはスルフヒドリル基を含むアミノ酸であり、Fは発光性官能基であり、nは1~7である。
【0020】
好ましい実施形態では、前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、(i)前記SHがシステインであるか、又は(ii)前記リガンド及び受容体がそれぞれビオチン、ストレプトアビジン、又はTag、抗Tag-Abであり、
及び/又は、前記Lは、アラニン、プロリン、バリン又はグリシンなどの非極性アミノ酸である。
【0021】
ここで、リガンドがビオチンである場合、ストレプトアビジン-Xによってビオチンを認識することができ、Xは低分子、蛍光性フィコエリスリン、量子ドット、酵素などである可能性がある。
【0022】
好ましい実施形態では、前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、RNase HvのC末端又はN末端に(Lx-SH-F)n又はLx-リガンドが結合しており、xは1~3であり、nは3~5であり、前記抗Tag-Abはウサギ抗体又はヒト抗体であり、及び/又は、前記抗Tag-Abはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり、
好ましくは、前記Lxは、Gly、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly又はAla-Glyであり、及び/又は、前記Tagは、his Tagである。
【0023】
AbがTagを認識してそれと結合できる限り、Tag及びAbの特定の配列又は構造を限定する必要がないことが当業者には知られている。したがって、スキーム(ii)において、前記RNase H突然変異体コンジュゲートが従来理解されているコンジュゲートではないこと、例えば、TagとAbが固定化学結合によって結合されておらず、AbとTagの分子表面の非共有結合に依存していることも当業者には知られているはずである。このような非共有結合は可逆的結合であり、すなわち、形成された複合体は強固ではなく、いつでも解離する可能性があり、解離したTagとAbは元の物理化学的特性と生物活性を保持する。例えば、ビオチンとアビジンの相互作用は、既知の最も強度が高い非共有結合であり、親和定数(K)は1015mol/Lであり、抗原と抗体の親和性(K=105~1011mol/L)の少なくとも1万倍高い。ストレプトアビジンは、フィコエリスリンとストレプトアビジン-フィコエリスリン複合体を形成して、ビオチンを認識することができる。
【0024】
より好ましい実施形態では、前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、(i)前記Fは、励起波長が300nm~700nmの間であり、発光波長が300nm~700nmの間である、前記SHと共有結合で架橋することができる発光物質であるか、又は、(ii)前記Fはフィコエリスリンであり、ストレプトアビジンとストレプトアビジン-フィコエリスリン複合体を形成する。好ましくは、(i)前記Fの励起波長が480nm~580nmの間であり、前記Fは発光波長が520nm~680nmの間である発光物質である。より好ましくは、前記Fは、Alexa Fluor 555又はAlexa Fluor 532である。
【0025】
より好ましい実施形態では、前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、前記RNase Hは、細菌、ヒト又はウイルスのRNaseに由来する。好ましくは、前記細菌はE.coli K12であり、前記ウイルスはHIVウイルスである。
【0026】
より好ましい実施形態では、前記RNase H突然変異体コンジュゲートにおいて、前記RNase Hvは、RNAの加水分解を触媒するRNase Hの構造ドメインに1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を行い、その結果、前記構造ドメインがRNAの加水分解を触媒する機能を失うが、RNA:DNAハイブリッド鎖に結合する機能を維持し、又は向上させる。好ましくは、前記RNase Hvのアミノ酸配列は、配列番号20に示された通りである。
【0027】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第2態様は、上記のRNase H突然変異体コンジュゲートの調製方法を提供することであり、ここで、前記RNase H突然変異体コンジュゲートがRNase Hv-(Lx-SA-F)nなどの場合、前記方法は以下の工程を含む。
【0028】
(1)(Lx-SA)nとRNase Hvを比率で混合し、共役させてRNase Hv-(Lx-SA)nを得、
(2)工程(1)で得られたRNase Hv-(Lx-SA)nに2~10倍過剰量のFを加えてRNase Hv-(Lx-SA-F)nを得、好ましくは、FはAlexa Fluor 555又はAlexa Fluor 532である。
【0029】
好ましくは、工程(1)の前にRNase Hvを調製することをさらに含み、
又は、前記方法は、以下の工程を含み、
(a)N末端又はC末端に(Lx-SA)nを有するRNase Hvを発現させてRNase Hv-(Lx-SA)nを得、
(b)2~10倍過剰量のFを加えてRNase Hv-(Lx-SA-F)nを得、
(ii)前記RNase H突然変異体コンジュゲートがRNase Hv-Lx-リガンド、受容体-Fを含む場合、前記方法は、以下の工程を含み、
(A)N末端又はC末端にLxを有するRNase Hv-Lxを発現させ、RNase Hv-Lxをリガンドと結合させてRNase Hv-Lx-リガンドを形成させ、
(B)受容体を2~10倍過剰量のFと混合して受容体-Fを得る。
【0030】
前記RNase Hvは、好ましくは、配列番号20に示されるRNase H突然変異体である。
【0031】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第3態様は、RNA検出用のキットを提供することであり、ここで、前記キットは、上記のRNase H突然変異体コンジュゲートを含む。
【0032】
好ましくは、前記キットは、DNAプローブをさらに含む。
【0033】
より好ましくは、前記DNAプローブは固定化DNAプローブであり、前記固定化DNAプローブはマイクロスフェア又は平面媒体に固定化されており、及び/又は、前記DNAプローブのヌクレオチド配列は配列番号1~13に示された通りである。
【0034】
さらに好ましくは、前記固定化DNAプローブの3’末端は、マイクロスフェア又は平面媒体に固定化されている。
【0035】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第4態様は、RNAの検出方法を提供することであり、前記方法は、以下の工程を含む。
【0036】
前記RNase H突然変異体コンジュゲートがRNase Hv-(Lx-SA-F)nである場合、
(1)最初にDNAプローブをRNAにハイブリダイズさせ、次に上記のRNase H突然変異体コンジュゲートを加え、又は、
(2)DNAプローブとRNA、本発明の第1態様に記載のRNase H突然変異体コンジュゲートを同時に加えて、蛍光を検出し、
前記RNase H突然変異体コンジュゲートがRNase Hv-Lx-リガンド、受容体-Fを含む場合、
DNAプローブとRNA、本発明の第1態様に記載のRNase Hv-Lx-リガンドを同時に加え、DNAとRNAが形成したハイブリッド鎖を前記RNase Hv-Lx-リガンドと結合させた後、2~10倍過剰の受容体-Fを加えて、蛍光を検出する。
【0037】
好ましくは、前記DNAプローブと前記RNase H突然変異体コンジュゲートとの比率は、2000~100000:1である。
【0038】
より好ましくは、前記RNAの検出は、多重RNAのシングルチューブ検出又はマルチチューブ検出であり、前記シングルチューブ検出は、1回の反応で1つ以上のRNAを検出することであり、前記マルチチューブ検出は、各反応で1つのRNAのみを検出することである。
【0039】
さらに好ましくは、前記DNAプローブは固定化DNAプローブであり、前記固定化DNAプローブはマイクロスフェア又は平面媒体に固定化されており、及び/又は、前記RNAはmRNA、ノンコーディングRNA又はmiRNAであり、より好ましくは、前記固定化DNAプローブの3’末端はマイクロスフェア又は平面媒体に固定化されており、及び/又は、前記miRNAはmature miRNA又はprecursor miRNAである。
【0040】
本発明は、高感度、特異的、便利かつ正確なハイスループットmiRNA検出を実現して、疾患診断、治療、新薬開発などにおける多次元的な解析又は検出のニーズに応えるために、汎用的なシングルチューブにおけるRNAの定量又は定性分析又は検出方法、特に、複数のmiRNAの定量又は定性分析又は検出方法を提供する。本システムは、DNA/RNA認識分子RH3CFと、異なる蛍光がコード化した、マイクロスフェアの表面に架橋した配列特異的DNAプローブをコアとして、複数の標的miRNAを同時に認識して解析する。
【0041】
異なる標的RNAの検出、特にmiRNAの検出用のハイブリダイゼーション法には、配列特異的プローブが必要である。多重RNAの検出用のシングルチューブ反応では、異なる認識可能な培地表面又は特定の培地位置に標的に相補的なプローブを固定化する必要がある。本発明は、異なる蛍光クロマトグラムによってコード化されたカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェアを使用し、異なる配列を有するプローブを架橋した後、固相マイクロスフェアのコード又は位置によって特異的応答性標的miRNAを反映させることができる。固相担体の表面にはDNAプローブが架橋されており、励起されて異なる波長を発生できる液相チップで使用されている様々なコード化されたマイクロスフェアは、その表面は活性化されてカルボキシル基を担持している。したがって、アミノに修飾した末端を有するDNAプローブを調製し、化学架橋剤N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)を介してワンステップ反応でプローブとマイクロスフェアを架橋させることができる。異なるDNAプローブ配列で架橋されたマイクロスフェアを混合してシングルチューブを形成し、異なるmiRNAを検出することができる。
【0042】
多重RNAシングルチューブ同時検出の原理は
図9に示された通りである。最初に異なる検出標的RNA配列ごとに異なる蛍光クロマトグラムによってコード化されたマイクロスフェアを混合し、次に検出すべき標的RNAと、DNA/RNAで認識された蛍光分子コンジュゲートRH3CFを加え、懸濁液中のマイクロスフェアプローブはDNA/RNAの配列相補性ハイブリダイゼーションによって検出標的RNAと特異的に結合して二本鎖を形成し、RH3CFをDNA/RNA二本鎖に結合させて、DNA/RNAハイブリッドがレポーター蛍光で標識される。フロー蛍光検出原理に基づくLuminex装置が検出と解析に使用され、マイクロスフェアは、マイクロチャネルを1列で通過し、同時に2色レーザーによって励起され、赤色レーザーは、マイクロスフェアの蛍光コードを決定し、マイクロスフェアを分類し、それによって異なる反応タイプを識別し(すなわち定性的)、別の緑色レーザーは、マイクロスフェア上のレポーター分子の蛍光強度を測定し、マイクロスフェアに結合したレポーター蛍光分子の数を決定し、それによってマイクロスフェアに結合した標的分子の数を決定する(すなわち定量的)。したがって、2色レーザーの同時検出により、反応のリアルタイムの定性及び定量分析を完了し、その結果、本発明の技術ではシングルチューブで多重RNAマーカーを検出することができる。
【0043】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第5態様は、RNAの解析及び検出用の試薬の調製における、上記のRNase H突然変異体コンジュゲート又はキットの使用を提供することである。
【0044】
好ましくは、前記RNAは、mRNA、ノンコーディングRNA又はmiRNAであり、及び/又は、前記試薬は、がんの検出用の診断薬である。
【0045】
より好ましくは、前記miRNAは、mature miRNA又はprecursor miRNAである。
【0046】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第6態様は、miR-191及び/又はmiR-454を含むmiRNAの組み合わせを提供することである。好ましくは、miR-1285及び/又はmiR-126をさらに含む。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、前記miRNAの組み合わせは、miR-181a-2*及び/又はmiR-203aをさらに含む。好ましくは、miR-15b及び/又はmiR-21をさらに含む。より好ましくは、miR-365及び/又はmiR-486-5pをさらに含む。さらにより好ましくは、miR-375及び/又はmiR-429をさらに含む。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、前記miRNAの組み合わせは、miR-141及び/又はmiR-193bをさらに含む。好ましくは、miR-125b及び/又はmiR-206をさらに含む。より好ましくは、miR-155及び/又はmiR-574-5pをさらに含む。さらにより好ましくは、miR-19a及び/又はmiR-200bをさらに含む。
【0049】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第7態様は、本発明の技術的解決策の第6態様に記載のmiRNAの組み合わせを含む組成物を提供することである。
【0050】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第8態様は、本発明の技術的解決策の第6態様に記載のmiRNAの組み合わせの検出用のプローブを含むキットを提供することである。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では、前記プローブのヌクレオチド配列は、配列番号1~20に示された通りである。好ましくは、前記プローブの5’末端は自由末端であり、及び/又は、3’末端は固定化末端であり、好ましくは、3’末端はNH2-C6修飾を有する。より好ましくは、前記キットは、本発明の技術的解決策の1つにおけるmiRNAの組み合わせをさらに含み、及び/又は、前記キットは、CEA、NSE、CYF21-1、SCC、CA125及び/又はCA199の検出用の試薬をさらに含む。
【0052】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第9態様は、肺がん診断システムを提供することであり、前記肺がん診断システムは、以下のモジュールを含む。
【0053】
(1)被検試料に含まれる本発明の技術的解決策の第6態様に記載のmiRNAの組み合わせの濃度を入力するために使用される入力モジュールを含み、好ましくは、前記被検試料は血清試料からのものであり、
(2)LCscoreを算出するための解析モジュールを含み、ここで、LCscore=0.5409-+(β1×C1+…+βn×Cn)、CはmiRNAの濃度(nM)、nはmiRNAの番号、βは当該番号のmiRNAに対応する加重割り当てを表し、その値の範囲は1~20、好ましくは1又は2~20の偶数であり、miRNAの番号及び加重割り当ては次の表に示された通りである。
【0054】
【0055】
例えば、nの値が2の場合、前記解析モジュールは、番号1と2のmiRNA、すなわちmiR-191とmiR-454の加重割り当てと濃度の積の和をカウントし、すなわち、LCscore=0.5409+β1×C1+β2×C2=0.5409+0.3350×CmiR-191-0.4206×CmiR-454を得る。
【0056】
nの値が4の場合、前記解析モジュールは、番号1~4の4つのmiRNAの加重割り当てと濃度の積の和をカウントし、すなわち、LCscore=0.5409+β1xC1+β2xC2+β3xC3+β4xC4=0.5409+0.3350xCmiR-191-0.4206xCmiR-454-0.2034xCmiR-1285+0.3019xCmiR-126を得る。以下同様。
【0057】
好ましい特定の実施形態では、nの値は20であり、前記解析モジュールは、20個のmiRNAの加重割り当てと濃度の積の和をカウントし、すなわち、LCscore=0.5409-0.1142×CmiR-125b+0.3019×CmiR-126-0.2034×CmiR-1285+0.0666×CmiR-141+0.0821×CmiR-155-0.460×CmiR-15b+0.1077×CmiR-181a-2*+0.3350×CmiR-191+0.1581×CmiR-193b+0.2011×CmiR-19a+0.0459×CmiR-200b-0.1861×CmiR-203a-0.0656×CmiR-206+0.2339×CmiR-21-0.0582×CmiR-365-0.2875×CmiR-375-0.1120×CmiR-429-0.4206×CmiR-454+0.2970×CmiR-486-5p+0.0706×CmiR-574-5pを得る。
【0058】
好ましくは、(3)判断モジュールをさらに含み、LCscore≧0.5の場合、被験試料が肺がんであると判断し、LCscore<0.5の場合、被験試料が健康であると判断する。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態では、前記肺がん診断システムは、プリントモジュールをさらに含み、前記プリントモジュールは、入力モジュール、解析モジュール及び判断モジュールによって生成された結果を印刷することができる。
【0060】
いくつかのより好ましい実施形態では、前記入力モジュールにおいて、以下の工程によって前記miRNAの情報を取得する。
【0061】
(1)最初にDNAプローブとmiRNAをハイブリダイズさせ、次にRNase H突然変異体コンジュゲートを加え、発光性官能基の蛍光シグナルを検出し、標準曲線に基づいてmiRNAの濃度を算出し、又は、
(2)DNAプローブ、miRNA及びRNase H突然変異体コンジュゲートを同時に加え、発光性官能基の蛍光シグナルを検出し、標準曲線に基づいてmiRNAの濃度を算出し、
前記RNase H突然変異体コンジュゲートはRNase Hv-(Gly-Gly-Cys-AF532)3であり、ここで、RNase HvはRNase H突然変異体であり、AF532は発光性官能基である。好ましくは、前記RNase Hvのアミノ酸配列は、配列番号21に示された通りである。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、前記肺がん診断システムは、CEA、NSE、CYF21-1、SCC、CA125、CA199及び/又は他の肺がん早期診断キットの検出結果を組み合わせて、試料が肺がん患者由来であるか否かを判断する。
【0063】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第10態様は、コンピュータ可読媒体を提供することであり、前記コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラムを格納し、前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行される場合、本発明の技術的解決策の第9態様に記載の肺がん診断システムの機能を実現することができる。
【0064】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第11態様は、肺がん診断システムを含む検出装置を提供することであり、前記検出装置は、
(1)本発明の技術的解決策の第10態様に記載のコンピュータ可読媒体と、
(2)前記コンピュータプログラムを実行して肺がん診断システムの機能を実現するためのプロセッサとを含む。
【0065】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第12態様は、肺がんの検出用の診断剤の調製又は肺がんの治療用の医薬のスクリーニングにおける、本発明の技術的解決策の第6態様に記載のmiRNAの組み合わせの使用を提供することであり、前記肺がんは、好ましくは、早期肺癌である。
【0066】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決策の第13態様は、肺がんの診断方法を提供することであり、前記方法は、以下の工程を含む。
【0067】
(1)被検試料に含まれる本発明の技術的解決策の第6態様に記載のmiRNAの組み合わせの濃度を取得し、好ましくは、前記被検試料は血清試料からのものであり、
(2)式に従ってLCscoreを計算し、ここで、LCscore=0.5409+(β1×C1+…+βn×Cn)であり、好ましくは、LCscore=0.5409-0.1142×CmiR-125b+0.3019×CmiR-126-0.2034×CmiR-1285+0.0666×CmiR-141+0.0821×CmiR-155-0.460×CmiR-15b+0.1077×CmiR-181a-2*+0.3350×CmiR-191+0.1581×CmiR-193b+0.2011×CmiR-19a+0.0459×CmiR-200b-0.1861×CmiR-203a-0.0656×CmiR-206+0.2339×CmiR-21-0.0582×CmiR-365-0.2875×CmiR-375-0.1120×CmiR-429-0.4206×CmiR-454+0.2970×CmiR-486-5p+0.0706×CmiR-574-5pであり、
(3)LCscore≧0.5の場合、被験試料が肺がんであると判断し、LCscore<0.5の場合、被験試料が健康であると判断する。
【0068】
本技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0069】
本発明で使用されるすべての試薬及び原料は市販品として入手できる。
【0070】
本発明の正の進歩的な効果は:
I、蛍光架橋型RNase H突然変異体コンジュゲート及びその使用:
1、シングルチューブ反応により、多重RNAの検出がを実現する。シングルチューブ反応により、同一試料中の複数の異なる標的RNA分子を同時に解析することができる。検出スループットはマイクロスフェアの種類数に等しく、現在は最大500種類である。
【0071】
2、PCR増幅を必要としない。検出結果がより正確になり、検出結果の偽陰性が減少する。
【0072】
3、血液、唾液、及び尿など様々な体液からのmiRNAマーカーを解析することができる。
【0073】
4、低試料消費量と高感度:同じ反応ウェルで500種類の異なるRNA分子を同時に検出することができるため、試料消費量を大幅に削減し、nMスケールまで低い濃度の試料を検出することができ、ほとんどのバイオアッセイのニーズを満たすることができる。
【0074】
5、高速:液相系であるため、反応時間を大幅に短縮し、多重RNA分子を30分以内に検出することができる。
【0075】
6、低コスト:試料の複数の指標を同時に検出することにより、時間、試料、試薬、消耗品、および労動力を節約して、検出コストを削減し、解析効率を向上させることができる。
【0076】
7、柔軟性:ユーザーは、プローブ付きマイクロスフェアを追加又は削除するだけで、様々な検出項目のニーズを満たすことができる。
【0077】
8、汎用性:miRNAのライゲーション又はラベル化を必要とせず、様々な長さ(15~200nt)のRNA、例えばmiRNA、特に短いmiRNAを検出することができる。
【0078】
II、miRNAの組み合わせ及びその使用:
1、がんなどの疾患、特に早期肺癌の診断に関連するmiRNAを効率的にスクリーニングする方法を提供する。
【0079】
2、数学的モデリングにより、複数の指標を統合的判断し、単一マーカー指標の解析性能を向上させる。
【0080】
3、がん、特に早期肺がんを診断できるmiRNAマーカー及びその組み合わせ。
【0081】
4、穿刺不要で最大直径6mmのT1N0M0ステージの肺がんを効果的に診断できる非侵襲的な血液検出。
【0082】
5、迅速検出:採血から検出結果までわずか120分。
【0083】
6、低コスト:試料の複数の指標を同時に検出することにより、時間、試料、試薬、消耗品、労動力を節約し、検出コストを削減し、解析効率を向上させることができる。
【0084】
7、汎用性:ユーザーは、異なる配列を有するプローブを使用するだけで、様々な疾患検出項目のニーズを満たすことができる。
【0085】
8、大量の試料検証によって得られた発現量の異なるmiRNAは、薬剤のスクリーニングの標的として利用できる。
【0086】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、RNase Hが結合したRNA:DNAハイブリッド鎖基質の構造(A)及びその加水分解機序(B)である。
【0087】
図2は、
RNase H発現のSDS-PAGE検出であり、ここで、Mはprotein markerであり、レーン1はRH3C(RNase H(E48Q)-3C)であり、レーン2はRH3CF(RNase H(E48Q)-3(Alexa Fluor A532))であり;Aは12%SDS-PAGEの染色前の蛍光検出であり、Bは12%SDS-PAGEのクーマシーブリリアントブルーG250染色であり、Cは希釈液の直接蛍光検出である。
【0088】
【0089】
図4は、miRNA let7aの検出シグナルと感度である。
【0090】
図5は、検出シグナルに対する異なる配列、種類、比率、固定方向のプローブの影響と結果である。
【0091】
図6は、検出シグナルに対する特定の部位に共有結合的に架橋可能な1、3、5、7個のシステインCysをそれぞれ担持したRNase H(E48Q)の架橋型コンジュゲートの影響である。
【0092】
図7は、検出シグナルに対する異なるリンカーアミノ酸をそれぞれ担持したRNase H(E48Q)複合体の影響である。
【0093】
図8は、検出シグナルに対する異なる蛍光バンドでのAF532及びAF555と共有結合で架橋したRNase H(E48Q)-3Cのコンジュゲートの影響である。
【0094】
図9は、シングルチューブでの多重miRNAの同時検出の原理を示す模式図である。
【0095】
図10は、miRNAのミスマッチした塩基の特異性を検出したものである。
【0096】
図11は、シングルチューブ反応において2つのmiRNAの同時検出した結果である。
【0097】
図12は、シングルチューブ反応において血液由来のmiR-34aを同時に検出した結果である。
【0098】
図13は、シングルチューブ反応において血液、尿、唾液中の多重miRNAを同時に検出した結果である。
【0099】
図14は、肺がんのmiRNAマーカーのスクリーニング及び検証プロセスである。
【0100】
図15は、機械学習とモデル構築のフローチャートである。
【0101】
図16は、肺がん診断システムの検出装置のアプリケーションインタフェースである。
【0102】
図17は、his-tagを認識できるモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を介したRNaseH突然変異体によるRNAの検出の原理及び検出結果である。
【0103】
図18は、実施例18の模式図であり;
図において、9は電子デバイス、91はプロセッサ、92はメモリ、93はバス、94は外部デバイス、95はI/Oインタフェース、96はネットワークアダプタであり;
921はRAM、922はキャッシュメモリ、923はROM、924はプログラムモジュール、925はユーティリティである。
【0104】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。
【0105】
【0106】
上記の表において、括弧の後の下付きのアラビア数字は基又はアミノ酸残基の数を表し、例えば、(Gly)3は3つの連続したGly、すなわち、Gly-Gly-Glyの構造を表す。
【0107】
実施例1:9種類のE.coli RNase H及び特定の分子形質転換突然変異体を有するプラスミドの構築
1、E.coli RNase Hを発現するプラスミドの構築
大腸菌E.coli K12のゲノムDNAを抽出した。100ngのE.coli K12のゲノムDNA、5μLの10×PCRバッファー、4μLのdNTP混合物(各2.5mM)、各0.5μLの100μMのフォワード及びリバースプライマー、0.5μLのpfx50 DNAポリメラーゼ(5U/μL)を含む50μLのPCR反応系に滅菌脱イオン水を50μLにまでに加えて、PCR増幅を実行した。PCR反応条件は:最初に94℃で2分、次に94℃で30秒間、60℃で40秒間、68℃で3分間のサイクルを30回行い、最後に68℃で5間とした。
【0108】
増幅されたPCR産物をPromega社のPCR産物精製キットで処理し、最終産物である精製されたPCR産物をクローニングベクターpET33bと制限酵素Nco I及びXho Iでそれぞれ37℃で2時間反応させ、1%アガロースDNA電気泳動分離によって標的断片を回収した。制限酵素作用後のpET33bとPCR産物をT4 DNAリガーゼでライゲーションし、DH5αコンピテント細胞に形質転換させた。形質転換液をカナマイシンLB固体培地に塗布し、37℃で一晩反転させ、次の日耐性モノクロンをカナマイシン含有LB液体培地に入れ、37℃、200r/minで一晩培養した後、シーケンシング会社に送ってシーケンシングを行い、His精製タグ付きRNase H(Protein ID:1)を発現できる発現プラスミドpET33b-rhを得た。
【0109】
2、E48Q突然変異を導入したRNase H(E48Q)突然変異体の構築
図1は、RNase Hが結合したRNA:DNAハイブリッド鎖基質の構造(A)及びその加水分解機構(B)を示す。pET33b-rhプラスミドベクター上で、プライマー特異的突然変異(部位特異的突然変異誘発)によって48Gluを48Glnに変化させてE48Q突然変異体の形質転換を完了させ、E48Q突然変異を導入したpET33b-rh(E48Q)を得た。具体的な実験工程は以下の通りである。
【0110】
PCR増幅:突然変異部位に点突然変異を導入した逆相補プライマーのペアを合成した。0.5μLのpET33-rhプラスミド(約50ng)、5μLの10×バッファー、4μLのdNTP混合物(各2.5mmol/L)、各2.0μLの100μMのフォワード及びリバースプライマー、0.5μLのpfx50 DNAポリメラーゼ(5U/μL)を含む50μLのPCR反応系に50μLになるまで滅菌脱イオン水を加え、PCR増幅を実行した。PCR反応条件:最初に94℃で30秒間、次に94℃で30秒間、60℃で40秒間、68℃で3分間のサイクルを18回行い、最後に68℃で5分間とした。
【0111】
オリジナル鋳型のDpn I消化:10μLのPCR産物に1μLのDpn Iを加え、37℃で2時間培養した。オリジナル鋳型プラスミドを消化し、切除した。
【0112】
DH5αコンピテント細胞への形質転換:大腸菌コンピテント細胞の説明書に従って操作し、消化後のオリジナル鋳型プラスミドから得られたPCR産物3μLを採取し、大腸菌DH5αに形質転換させ、形質転換液をカナマイシンLB固体培地に塗布し、37℃で一晩反転させ、次の日耐性モノクロンをカナマイシン含有LB液体培地に入れ、37℃、200r/minで一晩培養した後、シーケンシング会社に送ってシーケンシングを行い、pET33b-rh(E48Q)を得た。
【0113】
3、E48Q突然変異体(RHv)からの様々なCys数とリンカーを持つRHv突然変異体を構築
上記2の方法に従い、本発明者らが前に改良した技術(Wangら,Molecular and Cellular Probes,2010,24:15~19)と組み合わせて、RNase H(E48Q)を発現するプラスミドから開始して、RNase H(E48Q)に相当するタンパク質のN末端に1個のシステインを付加し、C末端のHis-tagの前に3個、5個、7個のシステインを付加した発現プラスミドを順次構築して、発現したタンパク質であるRH1CF(Protein ID:3)、RH3CF/RH3CF(GG)(Protein ID:4)、RH5CF(Protein ID:5)及びRH7CF(G)(Protein ID:6)をそれぞれ得た。
【0114】
同様に、RNase H(E48Q)を発現するプラスミドから開始して、タンパク質のC末端に異なるリンカーの種類と長さを持つ発現プラスミドを構築し、表1のタンパク質構造であるRH3C(G)(Protein ID:7)、RH3C(AG)(Protein ID:8)、RH3C(GGG)(Protein ID:9)をそれぞれ発現して得た。
【0115】
実施例2:RNase H突然変異体RHv由来の7種類の異なる構造を有するタンパク質(Protein ID:3~9)の発現及び精製
pET33b-rh(E48Q)-3C(Protein ID:3)を例として、タンパク質の発現のために大腸菌E.coli Bl21(DE3)にpET33b-rh(E48Q)-3Cysプラスミドを形質転換した。OD600の読み取り値が約0.6になるまで接種して培養し、最終濃度が1.0mMになるまで誘導剤IPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトシド、Isopropylβ-D-Thiogalactoside)を加えて標的タンパク質の発現を誘導し、誘導の4時間後に遠心分離によって菌体を回収した。PBS中で菌体を超音波で破砕し、遠心分離によって回収した上清をNi-NTA樹脂に結合させ、イミダゾールで溶出させて標的タンパク質RNase H(E48Q)-3Cys(略してRH3C)を得、PBSで透析しておいた(図2では、Aは12%SDS-PAGEの染色前の蛍光検出であり、Bは12%SDS-PAGEのクーマシーブリリアントブルーG250染色であり、Cは希釈液の直接蛍光検出である)。
【0116】
実施例3:構造の異なる7種類のタンパク質(Protein ID:3~9)の蛍光物質の標識と精製
RH3Cを例として、分子改変によってRNase Hタンパク質のC末端に導入された3つのシステインを蛍光標識し、特定の蛍光標識されたRNase H(E48Q)-(Alexa Fluor A532)3、すなわちRH3CFを得た。
【0117】
Bradford法によりRH3Cを定量化した。1mg/mLのAlexa FluorTM532 C5 Maleimide(品番:A10255、Thermo Fisher)に1mg/mLのRH3Cを加え、30℃で光を避け、1時間反応させた。10kDa限外ろ過チューブで3回遠心分離して、未架橋の遊離Alexa FluorTM 532 C5 Maleimideを除去し、得られた主要生成物はRNase H(E48Q)-(Alexa Fluor 532)3(略してRH3CF)であった(図2)。
【0118】
同じ方法を使用して、Protein ID 3~9の特定の分子修飾を施した7種類の蛍光修飾コンジュゲートをそれぞれ得た。
【0119】
実施例4:プローブ及びカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェアの共有結合架橋コーティング
図3は、固定化DNAプローブの検出原理の模式図である。合成オリゴヌクレオチドDNAプローブ及びRNA配列は表2に示されたとおりである。ここで、配列番号1~14の配列に示されるプローブの3’末端は、NH2-C6の修飾が含まれた。
【0120】
【0121】
*表2のDNA/LNAプローブにおいて、P3は検出プローブの3’末端が固相担体に固定化されていることを意味し、P5は検出プローブの5’末端が固相担体に固定化されていることを意味する。小文字のcとtはLNA(Locked nucleic acid、ロックド核酸)修飾を意味する。
【0122】
10種類のカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェア(品番:LC10001-01、LC10001-02、LC10001-03、LC10001-04、LC10001-05、LC10001-06、LC10001-07、LC10001-08、LC10001-09及びLC10001-10、Luminex社)を選択し、以下の方法に従って、プローブ及びマイクロスフェアの共有結合架橋コーティングを実行した。
【0123】
(1)プローブをそれぞれ再蒸留水に溶解させて100μMの濃度にした。
【0124】
(2)マイクロスフェアの洗浄:各マイクロスフェアを50μL(6.0×105個のマイクロスフェアを含む)取り、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させ、上清を廃棄した。50μLの0.1M MES、pH4.5溶液を加え、15秒間振とうしてマイクロスフェアを懸濁させ、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させ、上清を廃棄した。50μLの0.1M MES、pH4.5溶液を加えてマイクロスフェアを再懸濁させた。
【0125】
(3)プローブ及びマイクロスフェアの共有結合架橋:前の工程の対応するマイクロスフェア懸濁液に2.0μLの100μMプローブを加え、よく混合し、2.5μLの10mg/mL EDC(3-(エチルイミノメチリデンアミノ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン塩酸塩、3-(ethyliminomethylideneamino)-N,N-dimethylpropan-1-amine, hydrochloride)溶液を加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。
【0126】
(4)再度、2.5μLの10mg/mL EDC溶液を加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。
【0127】
(5)遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。1.0mLの0.1%SDSを加えてマイクロスフェアを再懸濁させ、シェーカーで混合し、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。
【0128】
(6)上清を廃棄し、100μLのTE(pH8.0)でマイクロスフェアを再懸濁させた。
【0129】
実施例5:定量検出曲線
1、実施例4の条件に従って、オリゴヌクレオチドDNAプローブP3-let7a(配列番号1)及びカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェア(品番:LC10001-01、Luminex社)の共有結合で架橋してコーティングを実行した。
【0130】
2、miRNAの検出
(1)標準品:合成miRNA let7a(配列番号14)を最終濃度10μMとなるようにTEに溶解させた。次にそれぞれ50nM、20nM、10nM、500pM、200pM、100pM、50pM及び20pMに希釈した。
【0131】
(2)混合:2.0μL体積のmiRNA、2.0μLのマイクロスフェア混合液及び1.0μLの10nM濃度のRH3CFを15.0μLのハイブリダイゼーション溶液(500mMのNaCl、0.05%のTween 20、1mMのMgCl2、50mMのTris-HCl、pH7.5)に加えてよく混合し、ボルテックスシェーカーで5秒間よく混合した。miRNA let7aの各濃度の標準品を5回重複して検出した。
【0132】
(3)ハイブリダイゼーション反応:事前に設定した42℃のウォーターバスに20分間入れた。
【0133】
(4)検出:80μLのハイブリダイゼーション希釈液(100mMのNaCl、0.05%のTween 20、20mMのTris-HCl、pH7.5)を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて検出した。
【0134】
(5)データ解析とフィッティング:
図4に示された通りである。
【0135】
検出感度は、反応系内の5~10pMのmiRNA let7aであった。
【0136】
実施例6:配列、種類、固定方向が異なるプローブの組み合わせの影響
本発明で調製したRH3CFは、カルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェア(品番:LC10001-01、Luminex社)の表面に固定化された検出プローブと標的RNAとで形成されたDNA/RNAハイブリッドを認識することによって、濃度依存の蛍光シグナルを得た。したがって、固相担体に固定化された様々な種類のプローブ(DNA、ロックド核酸LNAなど)及びそれらの表面の様々な修飾は、非特異的なシグナルノイズに影響を与え、結果として検出シグナルが異なり、最終的に検出システムの最小検出限界に影響を与える。本発明は、異なるプローブ配向の固定を比較した。
【0137】
1)DNAプローブの5’末端と3’末端の固定化による検出シグナルの違い
2)異なる比率の5’末端と3’末端に同一配列のDNAプローブを固定化した
3)標的プローブの3’末端と5’末端に同一配列のプローブを固定化した
4)標的プローブの3’末端と5’末端に異なる配列と異なる長さのプローブを固定化した
5)3’末端に同一配列のDNA及びLNAプローブを固定化した
本発明の本実施形態で使用されるプローブ及びそれらの修飾を表2に示されたとおりである。
【0138】
本実施形態では、配列番号1~4の組み合わせのプローブを、表3の比率と体積に従って、8本の反応チューブにそれぞれ50μLのカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェアを加えた。よく混合し、10mg/mLのEDC溶液2.5μLを加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。再度、10mg/mLのEDC溶液2.5μLを加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。1.0mLの0.1%SDSを加えてマイクロスフェアを再懸濁させ、シェーカーで混合し、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。最後に、上清液を廃棄し、100μLのTE(pH8.0)を加えてマイクロスフェアを再懸濁させた。様々な種類のプローブの混合修飾されたマイクロスフェア検出プローブを得た。
【0139】
【0140】
合成したmiRNA let7aを最終濃度10nMとなるようにTEに溶解させた。2.0μL体積のmiRNA、2.0μLのマイクロスフェア混合物及び1.0μLの1μM RH3CFを15.0μLのハイブリダイゼーション溶液(500mMのNaCl、0.05%のTween 20、1mMのMgCl
2、50mMのTris-HCl、pH7.5)に加えてよく混合し、ボルテックスシェーカーで5秒間よく混合した。事前に設定した42℃のウォーターバスに20分間入れた。80μLのハイブリダイゼーション希釈液(100mMのNaCl、0.05%のTween 20、20mMのTris-HCl、pH7.5)を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて検出した。各組み合わせを3回繰り返し、結果は
図5に示されたとおりである。そのうち、組み合わせ1、5~8の信号対雑音比(S/N)が最も高く、所定の割合の非標的プローブDNA配列(例えば、上記の表3で用いたP5~6A)を、標的プローブ配列と同時に固相担体に固定すると(例えば、組み合わせ5、7)、固相担体上のプローブの密度を制御して最適化するだけでなく、同時に固相表面の修飾を達成して非特異的吸着を低減させた。本実施形態におけるP3-let7aのような標的プローブの密度を最適化し、検出標的RNAに相補的ではない配列で表面を修飾することにより、非特異的吸着によって生成されたノイズシグナルを低減しながら検出シグナルを改善することができ、最終的に検出下限を向上させる目的を達成した。本実施形態では、LNAプローブはDNAプローブよりも優れた検出性能を示さず、その理由は、LNA修飾後、完全なハイブリダイゼーションに必要な温度を4℃/ヌクレオチドに上昇させる必要があるためであり可能性があり、本実施形態の温度反応条件はLNAに対して最適とは言えない。逆に、LNAとDNAを所定の割合で混合することにより、LNAプローブの検出性能を向上させることができ(例えば、組み合わせ6と組み合わせ8の比較)、これは、LNAプローブの最適条件を最適化する必要性を別の側面から説明した。
【0141】
本発明は、RNase H分子に基づくDNA/RNA認識が明確な方向性を有することを初めて確認し、検証した。プローブの3’末端の固定化、又はRNA認識のためのプローブの5’末端をフリーでアクセス可能な状態に保つことは、本発明及び他のソースからのRNase Hの結合及び認識に必要な経路である。配列が同じで固定方向が異なるプローブを混合することにより、検出シグナルは徐々に減少し、5’末端に固定化されたプローブを100%とした場合のS/N比は1.2となり、本発明の貢献度が検証された。
【0142】
実施例7:検出シグナルに対する特定の部位で共有結合的に架橋可能な1、3、5、7個のシステインCysをそれぞれ担持したRNase H(E48Q)の架橋型コンジュゲートの影響の比較
特定の部位で共有結合的に架橋可能な1、3、5、7個のシステインCysをそれぞれ担持したRNase H(E48Q)の架橋型コンジュゲートは、それぞれRH1CF、RH3CF、RH5CF及びRH7CFである。
【0143】
合成したmiRNA let7a(配列番号14)をTEに溶解させて、10nMに希釈した。表3の番号1(配列番号1)のP3-let7aプローブマイクロスフェアを実施例6と同じ条件で選択し、最終濃度1nMのlet7a miRNAによって生成されたシグナルを試験した。各組み合わせを3回繰り返し、結果は
図6に示されたとおりである。特異的に修飾された分子末端に担持されるCysの最適な数は3であり、最も高い検出シグナルを得ることができた。E.coli RNase H自体は3個のCysアミノ酸を担持しており、これらの3個のアミノ酸は高次構造の内部/非表面領域に分布しており、部位特異的修飾や架橋が容易ではなかった。
図6は、単一のCysによって生成される蛍光シグナルが最も低いことを示しているが、本実施形態における5個及び7個のCysのような複数のCysは、理論的にはより多くのCysを介してより多くの蛍光基を導入することによって、より強い蛍光シグナルを生成することができた。しかし、蛍光分子修飾が多すぎると、RNase H自体にある程度のタンパク質変性の利点をもたらし、RNase Hの結合能力が低下し、結果として検出シグナルが全体的に増加しなかった。したがって、本発明におけるRNase Hの分子修飾は、最良のバランスを反映し、3個のCysが最良の効果を生み出すことができた。
【0144】
実施例8:検出シグナルに対するRNase H(E48Q)末端Cys前のリンカーの長さと種類の影響
表1で調製したRH3CF(G)、RH3C/RH3C(GG)、RH3CF(AG)及びRH3CF(GGG)については、RNase H(E48Q)に対応する蛋白質のC末端のHis-tagの前にシステインリンカー(Gly-Cys)3、(Gly-Gly-Cys)3、([Gly]3-Cys)3及び([Gly]3-Cys)3の異なる組み合わせをそれぞれ4種類加え、Protein ID 6~9の4種類のタンパク質を得た。
【0145】
10nMのmiRNA let7aを実施例7の条件に従って試験し、各組み合わせを3回繰り返し、結果を以下の
図7に示されたとおりである。非極性リンカーを加える目的は、蛍光によって共有結合で架橋できる隣接する2つのシステイン間の距離を維持し、立体障害を減らし、共有結合で架橋した蛍光基の効果を向上させることである。したがって、1~3個のアミノ酸をリンカーとして選択して試験を行い、試験の結果は、4種類のリンカーの組み合わせが有意差を示さず、リンカーとして3つの連続したGlyの効果が最良であり、2個のGlyリンカーによって生成された検出シグナルよりもわずかに優れたことを示した。1~3個のリンカーの利点から見ると、3個のGlyリンカーが最良の検出シグナルを生成することができた。GlyをAlaに部分的に置換しても、結果への影響は限定的であった。2つのシステイン間の空間距離と構造を増加させ、蛍光基との架橋効率を向上させるためには、非極性アミノ酸と連結させて立体障害効果を低減する必要がある。グリシンは、側鎖基が立体的な化学構造を形成せず、β炭素原子を欠き、より柔軟なペプチド鎖を形成するため、より多くの空間構造を提供でき、隣接するアミノ酸の化学活性への影響が最も少なく、したがって本発明の技術にとって好ましいリンカーアミノ酸となった。既知のアミノ酸のうち、アラニンの側鎖基は、グリシンに次ぐ立体障害と疎水性を持ち、疎水性が弱く、疎水性蛍光基の介在を助長する弱疎水性環境を形成することができた。したがって、両方とも、特定の部位での分子修飾の調製及び標的分子の生物学的活性の維持において、好ましい連結アミノ酸であった。本実施形態では、3つ又は4つの連続した非極性アミノ酸のリンカーは、最終的に生成されるシグナルに有意差がなく、リンカーアミノ酸の空間距離、柔軟性及び疎水性の間の適度なバランスの必要性を反映した。
【0146】
実施例9:異なる蛍光バンドでの検出シグナルに対するAF532/AF555及びRH3C/RH7Cによる共有結合で架橋したコンジュゲートの影響
共有結合架橋:1mg/mLのRH3CとRH7Cをそれぞれ、1mg/mLのAlexa FluorTM555 C2 Maleimide(品番:A20346、Thermo Fisher)と実施例3の条件に従って架橋と精製を実行した。Alexa Fluor 555で標識されたRH3CF555及びRH7CF555を得た。
【0147】
シグナルの検出:10nMのmiRNA let7aを実施例7の条件従って試験し、RH3CFとRH7CF(AF532で蛍光標識)、RH3CF555とRH7CF555を比較した。各組み合わせを3回繰り返し、結果は
図8に示されたとおりである。AF532で標識したRH3CFは同じ濃度のmiRNAで最も高い検出シグナルを示し、AF555で標識したRH3CF555の検出シグナルは前者の90%であった。AF532とAF555でそれぞれ標識したRH7Cによって得られた結果は同様であった。したがって、本実施形態では、RH3CFが好ましい組み合わせであり、RH3CF555がその次に効果的である。本実施形態と実施例7とは、最良のシグナル変換及び分子認識を達成するために、当該特異的に修飾された分子に外因的に添加されたシステインの数のある程度の最適化があり、蛍光分子修飾が多すぎるとRNase H結合及び認識活性に影響があることを再び検証し、この原因は、ある程度のタンパク質変性が現れ、RNase Hの結合能力が低下し、結果として検出シグナルの全体的ば減少をもたらしたからである可能性がある。
【0148】
実施例10:転写合成された長さが64個であるヌクレオチドのRNA1a(配列番号9)の検出
5’末端がリン酸化修飾されたDNA RCA-1a(配列番号18)を合成した。当該設計は、ローリングサークル増幅のパドロック(padlock)の原理(Dengら,Chem.Sci.2017,8(5),3668~3675)に基づいて、長さが64個のオリゴヌクレオチドのRNAを生成することができ、当該配列はCovid-19のORF 1aに由来した。最初に20μLの体積で線形パドロックプローブRCA-1a-pをリン酸化させた。2μLの100μM線形プローブ、2μLの10×T4ポリヌクレオチドキナーゼ反応バッファー、15.5μLのDEPC処理H2O、及び0.5μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(10U/μL)を加えた。ライゲーション反応に、4μLのリン酸化パドロックプローブ(100nM)、4μLの10xT4 DNAリガーゼ反応バッファー、4μLのRp(配列番号17)標的DNA溶液(1μM)、27.5μLのDEPC処理H2O、及び0.5μLのT4 DNAリガーゼ(5U/μL)を加えた。T4 DNAリガーゼを加える前に、反応混合物を55℃で5分間加熱し、39℃で30分間アニーリングし、室温に冷却させた後、T4 DNAリガーゼを加え、30℃で30分間ライゲーション反応を実行した。ライゲーション反応物を、5μLの10xphi29 DNAポリメラーゼ反応バッファー、4μLのdNTPs(各10mMのdATP、dGTP、dCTP及びdTTP)、0.5μLのDEPC処理H2O、及び0.5μLのphi29 DNAポリメラーゼ(10U/μL)を含むRCA反応混合物に加えた。37℃で2時間RCA反応を実行し、65℃で10分間培養して反応を終了させた。陰性対照はphi29 DNAポリメラーゼを添加しない反応であった。
【0149】
シグナルの検出:2.0μLの陰性対照、0.2、0.5、及び2.0μL体積のローリングサークル反応によって合成されたORF 1aの長さが64個のヌクレオチドのRNAをそれぞれ、P3-1a(配列番号5)で架橋したプローブマイクロスフェア、1.0μLの1μM RH3CF、及び15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加えて混合した。45℃で20分間培養した。96マイクロウェルプレートに移し、検出のためにLuminex-200に入れた。陰性対照と、0.2、0.5、及び2.0μLを加えて読み取ったシグナルS/N値は、それぞれ1.12、4.81、8.22、12.10であった。実施例4のlet7aに対する標準曲線によると、対応する合成標的RNAの検出濃度は、それぞれ-0.10、0.26、0.62、1.0nMであった。陰性対照によって検出されたシグナルは、添加量が異なる1a RNAとは有意差があり、本発明の技術が、長さが19~25個のヌクレオチドmiRNAを検出できることに加え、分子生物学的には、プローブDNAが標的RNAの特定の配列領域の一部と二本鎖相補性を有するハイブリダイゼーションによって認識できる限り、他の長さのRNAを定性的に検出できることが示された。したがって、本発明の技術は、異なる長さのRNAの定性的検出に普遍的に適用可能である。
【0150】
実施例11:多重miRNAの同時検出の特異性
多重miRNAの同時検出の特異性は、配列が似ているRNAの1つ以上の部位の塩基変化を識別するシステムの能力(ミスマッチ識別能力)に依存する。miRNA let7a及びlet7bは3’末端付近で2つの塩基の違いがあり(
図10のA)、それぞれlet7a及びlet7bに完全相補的なプローブP-let7a(配列番号1)及びP-let7b(配列番号2)を用いてミスマッチ識別能力を検出した。
【0151】
2.0μL体積の10nM let7a(配列番号14)、2.0μLのP-let7a(LuminexマイクロスフェアLC10001-01と架橋した配列番号1)とP-let7b(LuminexマイクロスフェアLC10001-02と架橋した配列番号6)のマイクロスフェア混合液、1.0μLの10nM RH3CFを、15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加え、よく混合した。42℃で20分間反応させた後、80μLのハイブリダイゼーション希釈液を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて蛍光シグナルを検出した。5つの検出結果は
図10に示されたとおりであり、信号対雑音比(S/N)は、検出された蛍光強度を表した。P-let7bプローブとlet7a配列は2つのミスマッチした塩基を有し、RNAの3’末端付近の中央に位置しており、検出シグナルは完全に相補的なP-let7aの約5~8%であった(
図10のB)。したがって、本発明によって構築された多重検出システムは、let7aとlet7bのような類似のRNA配列を検出する際にも高い特異性を有することが分かった。
【0152】
実施例12:シングルチューブでの2つのmiRNAであるmiR-141及びmiR-155の同時検出
合成したmiRNAであるm155(配列番号15)及びm141(配列番号16)をそれぞれ最終濃度10μMとなるようにTEに溶解させ、1:1の比率で混合し、10nMに希釈した。2.0μL体積のm141とm155の混合液、P-m141(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号6)と、P-m155(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号7)、P-m375(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号8)と、P-RNU6(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号6)とを含む2.0μLのマイクロスフェア混合液、1.0μLの10nM濃度のRH3CFを、15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加え、よく混合した。42℃で20分間反応させた後、80μLのハイブリダイゼーション希釈液を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて蛍光シグナルを検出した。5つの検出結果の統計は
図11に示されたとおりであり、miR-141及びmiR-155は、対応するプローブP-m141及びP-m155で特異的なシグナルを生成した。標的miRNA配列と直接関係のないプローブP-m375及びP-RNU6も10~15%のシグナル値を示し、これは、多重プローブが多重検出の結果の判定には影響しないが、ある程度の不可避な交差を有することに起因した。
【0153】
実施例13:血液中のmiRNAであるmiR-34aの検出
PCR増幅を伴わないシングルチューブでの多重miRNAの同時検出の利点は、1つの反応チューブで複数の標的miRNAの含有量に関する情報を同時に得ることができ、RT-PCR増幅検出プロセスにおけるPCR阻害剤、CG含有量などの要因によるライゲーションや標識の偏りを回避し、結果として偽陰性の検出結果を回避することができる。本発明では、血液中のmiR-34aを検出することを例として比較した。海外の研究報告では、血液中のmiR-34aの含有量が低くて検出できないため、外部参照としてmiR-34aを加えた(Optimization and Standardization of Circulating MicroRNA Detection for Clinical Application The miR-Test Case,Clinical Chemistry,2016,62,743~754)。本実施形態では、静脈より5mLの血液を採取し、室温で2時間放置した後、3500gで15分間遠心分離して血清を得た。200μLの血清をmiRNA分離キット(品番DP-501、Beijing Tiangen Biochemical)で説明書に従って抽出し、全miRNAを得た。2.0μLの全miRNA、P-m141(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号6)、P-m155(LuminexマイクロスフェアLC10001-04で架橋した配列番号7)、P-m375(LuminexマイクロスフェアLC10001-04で架橋した配列番号8)と、P-m34a(LuminexマイクロスフェアLC10001-07で架橋した配列番号10)とを含む2.0μLの3つのマイクロスフェア混合液、1.0μLの10nM濃度のRH3CFを、15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加え、よく混合した。42℃で20分間反応させた後、80μLのハイブリダイゼーション希釈液を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて蛍光シグナルを検出した。検出を5回繰り返し、結果は
図12に示された通りである。本検出では、miR-34aの含有量が約10nMと最も高く、研究者がよく使用する他の2つのmiR-141及びmiR-155よりもはるかに高かった。多重バイオマーカー、特にmiRNAの検出では、PCR増幅を伴わないシングルチューブでの複数のmiRNAの検出は、マーカーの定性的及び定量的検出の両方でより正確であることが分かった。本実施形態は、本発明の技術的貢献を検証するものでもある。
【0154】
実施例14:シングルチューブでの血液、尿、唾液中の多重miRNAの同時検出
同じ健常者から静脈血、唾液、尿をそれぞれ採取した。血清中のmiRNAの単離は、実施例4の工程に従った。唾液に1mLのPBSバッファーを加え、均等にピペッティングし、0.5mLを取り、同体積のTrizolに加えて振とうして混合した。尿を3500gで5分間遠心分離した後、0.5mLを取り、同体積のTrizol加えて振とうして混合した。12000gで1分間遠心分離し、上清に0.2mLのクロロホルムを加えた後振とうして混合し、2分間静置した。12000gで15分間遠心分離し、上清を回収し、同体積のイソプロパノールを加え、室温で20分間静置した。12000gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿物を事前に冷却した75%エタノールで2回洗浄し、50μLのTEを加えてRNAを溶解させた。
【0155】
血清、唾液、尿から抽出したRNAをそれぞれ2.0μL、P-let7a(LuminexマイクロスフェアLC10001-01で架橋した配列番号1)、P-m141(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号6)、P-m155(LuminexマイクロスフェアLC10001-03で架橋した配列番号7)、P-m375(LuminexマイクロスフェアLC10001-05で架橋した配列番号8)、P-RNU6(LuminexマイクロスフェアLC10001-06で架橋した配列番号9)、P-m16(LuminexマイクロスフェアLC10001-08で架橋した配列番号11)、P-m151(LuminexマイクロスフェアLC10001-09で架橋した配列番号12)、P-m145(LuminexマイクロスフェアLC10001-10で架橋した配列番号13)とを含む8種類のマイクロスフェアの混合物、1.0μLの10nM濃度のRH3CFを、15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加えて混合し、42℃で20分間反応させ、80μLのハイブリダイゼーション希釈液を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて蛍光シグナルを検出した。検出を5回繰り返し、結果は
図13に示されたとおりであり、miR-145とmiR-375の含有量が比較的少なく、miR-16とlet7aの含有量が比較的多いことが分かった。さらに、血液(
図13のA)、
尿(
図13のB)、
唾液(
図13のC)はいずれもmiRNAを豊富に含み、疾患関連マーカーとして研究することができる。
【0156】
本発明の実施形態で選択した8つのmiRNAプローブは、miRNAマーカーの研究の通常のmiRNAに対して解析し、シングルチューブで複数のmiRNAを同時に検出する可能性を実証した。従来のReverse Transcription PCRでは、各反応チューブは一度に1つのmiRNAのみを検出できるのに対して、本発明のPCR増幅を伴わない検出では、1つの反応チューブで8つのmiRNAを検出することができた。理論的には、プローブの数が増えると、Luminex装置システムでは1つの反応チューブで最大500個のmiRNAを検出することができ、Luminex xMAPには500個のマイクロスフェアが搭載されており、500個の異なる指標を一度に検出する機能を持っている。本発明の使用は、マルチインディケーター検出用の他の装置システムにも適用可能である。
【0157】
本実施形態では、様々な体液源からのmiRNAを解析して、血液、尿、唾液のmiRNAを直接検出することができた。本発明の技術により、複数の液状検体源からのリキッドバイオプシーが実現できることを実証した。尿からのmiRNAマーカーの解析は、泌尿器系疾患においてより簡便で正確であり、広く研究されている。一方、唾液中のmiRNAマーカーの検出は、頭頸部がんなどの疾患の診断とモニタリングに使用することができる。
【0158】
このように、実施例13及び14から、本技術は、検出スループットと精度の点で従来のRT-PCRよりも利点があるシングルチューブでの複数のmiRNAマーカーの検出を実証するだけではなく、血液、唾液及び尿においてもmiRNAを簡便に検出して解析することができ、miRNAマーカーのリキッドバイオプシーに実現性の高い解決策を提供した。
【0159】
実施例15:miRNAマーカーの組み合わせの発見及び肺がん診断
一、試料の収集と試料データの整理
本出願の発明者は、標準作業手順書(SOP)に基づいて基準を満たす血清試料を採取し、完全な人口統計データ、臨床データなどを体系的に収集し、試料データを選択することによって、発明者は肺がんのmiRNAマーカーのスクリーニング及び検証試験に用いる62人の血清試料を選択した。検出技術は、蛍光架橋型RNase Hv-(Gly-Gly-Cys-AF
532)
3(以下RH3CF)を利用してRNA-DNAハイブリッド鎖を直接認識し、PCR増幅を必要とぜずに検出可能なシグナルを変換して生成することができた(
図14)。
【0160】
二、スクリーニング及びmiRNAマーカーの発見段階
スクリーニング及びmiRNAマーカーの発見段階にある62人の血清試料のうち、32例が肺がん群、30例が対照群であった。肺がん群の選択基準は、初めて明確な病理学的診断を受けて治療は受けていない肺がん患者で、採血前に手術及び化学放射線療法を受けておらず、術前化学放射線療法を受けていないことであった。正常対照群の30例の選択基準は、腫瘍の既往歴がない正常対照集団で、CTスクリーニング後に明らかな異常はないことであった。肺がん群と正常対照群の性別と年齢を一致させた。発見段階の肺がんサンプル32例のうち、肺がんの病期分類は、肺腺がん21例、肺扁平上皮がん6例、小細胞肺がん2例、肉腫様がん2例、リンパ上皮腫様がん1例であった。TNM病期分類によると、T1ステージが5例、T2ステージが12例、T3ステージが3例、T4ステージが12例であった。早期から進行期までの肺がんのケースをカバーした。そのうち、男性が20人、女性が12人であった。平均年齢は60.8±11.0歳で、最年長は73歳、最年少は36歳であった。
【0161】
検出技術は、液相チップの1つの反応チューブで多重miRNAを検出する技術を採用し、文献調査と組み合わせて70種類のmiRNAを検出対象として選択し、具体的なプロセスは
図14に示されたとおりである。本発明で開示された全てのmiRNA配列は、miRBaseデータベース(http://www.mirbase.org/)に格納されている。
【0162】
1、チップの調製:
70種類のカルボキシル化ポリスチレンマイクロスフェア(品番LC10001-01~品番LC10001-70、Luminex社)を選択し、以下の方法に従って、プローブ及びマイクロスフェアの共有結合架橋コーティングを実行した。
【0163】
(1)プローブをそれぞれ再蒸留水に溶解させて100μMの濃度にした。
【0164】
(2)マイクロスフェアの洗浄:各マイクロスフェアを50μL(6.0×105個のマイクロスフェアを含む)取り、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させ、上清を廃棄した。50μLの0.1M MES、pH4.5溶液を加え、15秒間振とうしてマイクロスフェアを懸濁させ、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させ、上清を廃棄した。50μLの0.1M MES、pH4.5バッファーを加えてマイクロスフェアを再懸濁させた。
【0165】
(3)プローブ及びマイクロスフェアの共有結合架橋:前のステップで対応するマイクロスフェア懸濁液に2.0μLの100μMプローブを加えてよく混合し、2.5μLの10mg/mL EDC溶液を加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。
【0166】
(4)再度、2.5μLの10mg/mL EDC溶液を加えた。光を避け、37℃で30分間反応させた。
【0167】
(5)遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。1.0mLの0.1%SDSを加えてマイクロスフェアを再懸濁させ、シェーカーで混合し、遠心力10000gの条件で5分間遠心分離してマイクロスフェアを沈殿させた。
【0168】
(6)上清を廃棄し、100μLのTE(pH8.0)を加えてマイクロスフェアを再懸濁させた。
【0169】
(7)異なるプローブでコーティングしたコード化されたマイクロスフェアを混合して、液相チップを得た。
【0170】
2、血清の全RNAの抽出:miRNeasy Miniキット(Qiagen、217184)を用いて血清の全RNAを抽出した。
【0171】
3、混合:ステップ2で得られた2.0μL体積の全RNA、2.0μLのマイクロスフェア混合物及び1.0μLの10nM RH3CFを15.0μLのハイブリダイゼーション溶液(500mMのNaCl、0.05%のTween 20、1mMのMgCl2、50mMのTris-HCl、pH7.5)に加えてよく混合し、ボルテックスシェーカーで5秒間よく混合した。miRNA let7aの各濃度の標準品を5回重複して検出した。
【0172】
4、液相チップハイブリダイゼーション反応:事前に設定した42℃のウォーターバスに20分間入れた。
【0173】
5、検出:80μLのハイブリダイゼーション希釈液(100mMのNaCl、0.05%のTween 20、20mMのTris-HCl、pH7.5)を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて検出した。
【0174】
6、データの処理:チップの結果に従って、読み取った各miRNAの値を標準曲線と比較して、各反応ウェル中の各miRNAの濃度、すなわち血清中の各miRNAの相対発現量を取得した。miRNA標準曲線は以下の実験によって得られた。合成したmiRNAを最終濃度10μMとなるようにTE溶液に溶解させ、TE溶液で50nM、20nM、10nM、500pM、200pM、100pM、50pM、及び20pMの異なる濃度に順次希釈し、miRNAに対応プローブで架橋したマイクロスフェアとハイブリダイズさせた。本実施形態における血清から抽出したmiRNAの検出方法を用いて、血清miRNAを異なる濃度の合成したmiRNAの連続希釈溶液に置き換え、蛍光値を読み取り、標準曲線を作成した。
【0175】
7、機械学習とデータ解析:
本発明は、典型的な機械学習プロセスを利用してデータ解析、モデリング及びテストを実行し、以下の典型的なプロセスを採用した。典型的な機械学習プロセスは、入力データを与えることから始まり、アルゴリズムが一連のプロセスを通じてこれまでにない新しいデータに対して新しい推定値を与える機能を持つ推定関数を取得することであり、モデルの構築とも呼ばれる(
図15を参照)。
【0176】
一般に、回帰は連続モデルであり、ノイズの影響を大きく受けるため、分類問題では使用されない。ただし、ロジスティック回帰は、分類とマルチパラメーターの問題解決に使用できる。ロジスティック回帰は、特徴から結果へのマッピングに関数マッピングのレイヤーが追加されること、すなわち、最初に特徴が線形に合計され、次に関数g(z)を使用して予測することを除いて、本質的に線形回帰である。g(z)は連続値を0と1にマッピングすることができる。
【0177】
ロジスティック回帰の仮説関数は以下の通りであり、線形回帰の仮説関数は
【0178】
【0179】
のみである。
【0180】
【0181】
ロジスティック回帰は、0/1分類問題、すなわち、予測結果が0又は1である二値分類問題に使用される。ここで、二値はベルヌーイ分布を満たすと仮定し、すなわち、
【0182】
【0183】
である。
【0184】
したがって、ロジスティック回帰分類アルゴリズムは、分類するためにデータセットに対する回帰式を確立することである。回帰分類器の基本的な形式は、各特徴に回帰係数を掛け、次にその結果の値をすべて加算することである。このように、計算結果は、0~1の値になる。さらに、0.5以上を1カテゴリー、0.5以下を1カテゴリーに分類する。本発明において、各miRNAの値は、各特徴を表した。特性が既知の2種類の臨床サンプル(肺がん群と非肺がん群)のmiRNAデータを計算し、モデル化することによって、各miRNAに対応する係数を決定した。ロジスティック回帰のトレーニングに使用した20個の特定されたmiRNAバイオマーカーは、以下の定数係数方程式(β0、β1、β2、β3、β4、・・・βn)を生成し、0~1のLCscoreスコア(連続)を得た。本発明において、肺がんを正常対照から効果的に区別することができるmiRNAマーカーをスクリーニングして取得するために用いたロジスティック回帰の推定関数LCscoreは以下の通りである:
【0185】
【0186】
ここで、y=β0+β1*C1+・・・βi*Ci・・・+βn*Cn。
【0187】
ロジスティック回帰の原理を使用して、出発点の70個のmiRNAから、検出した62個のサンプルによって収集された各サンプルに対応するmiRNAの発現量(濃度)によって20個のmiRNAの特徴発現量をスクリーニングした。20個のmiRNAの番号及び加重割り当ては以下の表4に示された通りである。
【0188】
【0189】
例えば、nの値が2の場合、前記解析モジュールは、番号1と2のmiRNA、すなわちmiR-191とmiR-454の加重割り当てと濃度の積の和を統計し、すなわち、LCscore=0.5409+β1×C1+β2×C2=0.5409+0.3350×CmiR-191-0.4206×CmiR-454を得る。演算子×の左側は各miRNAの加重割り当てであり、右側はそのmiRNAの濃度(nM)である。
【0190】
nの値が4の場合、前記解析モジュールは、番号1~4の4つのmiRNAの加重割り当てと濃度の積の和をカウントし、すなわち、LCscore=0.5409+β1xC1+β2xC2+β3xC3+β4xC4=0.5409+0.3350xCmiR-191-0.4206xCmiR-454-0.2034xCmiR-1285+0.3019xCmiR-126を得る。以下同様。
【0191】
以下の式を使用して20個のmiRNAを解析すると、30個の対照と32個の肺がんを区別することができた(表5のスクリーニング段階)。
【0192】
LCscore=0.5409-0.1142×CmiR-125b+0.3019×CmiR-126-0.2034×CmiR-1285+0.0666×CmiR-141+0.0821×CmiR-155-0.460×CmiR-15b+0.1077×CmiR-181a-2*+0.3350×CmiR-191+0.1581×CmiR-193b+0.2011×CmiR-19a+0.0459×CmiR-200b-0.1861×CmiR-203a-0.0656×CmiR-206+0.2339×CmiR-21-0.0582×CmiR-365-0.2875×CmiR-375-0.1120×CmiR-429-0.4206×CmiR-454+0.2970×CmiR-486-5p+0.0706×CmiR-574-5p。
【0193】
演算子×の左側は各miRNAの加重割り当てであり、右側はそのmiRNAの濃度(nM)である。当該式は、20未満のmiRNAを検出するmiRNAの組み合わせのLCscoreにも適用できる。例えば、miRNAの数が4つだけの場合、前記解析モジュールは、番号1~4の4つのmiRNAの加重割り当てと濃度の積の和をカウントし、すなわち、LCscore=0.5409+β1×C1+β2×C2+β3×C3+β4×C4=0.5409+0.3350×CmiR-191-0.4206×CmiR-454-0.2034×CmiR-1285+0.3019×CmiR-126を得る。
【0194】
表5に示されたとおり、32個の肺がんサンプルのうち30個は、式を使用して正しく分類することができた。表中、真陽性はmiRNAの検出結果が肺がんの臨床病理診断と一致することを示し、真陰性は検出結果が陰性で臨床所見と一致することを示し、偽陽性はmiRNAの検出結果が陽性であるが、臨床所見が陰性であることを示し、偽陰性は検出結果が陰性であるが、実際には臨床病理学的に肺がんと判定することを示す。
図16は、上記モデルに従って構築された肺がん検出装置のアプリケーションインタフェースである。
【0195】
【0196】
相関分析によると、miR-126とmiR-454の組み合わせが最も高い相関を示した。
【0197】
出発点の70個のmiRNAは文献調査から得られたため、個々のmiRNAは複数の研究者によって良性及び悪性の肺結節/早期肺がんの診断に関連することが報告された。ただし、肺がん診断に関連するこれらの十分に研究され報告されたmiRNAの検出技術プラットフォームは、従来のmiRNAライゲーションとPCR増幅に基づいており、検出システムの偏りが大きい(Raabeら,Nucleic Acids Res.2014,42(3):1414~1426)ため、一部のmiRNAの変化のみが本物の変化であった。本発明は、以前の文献とデータ解析から介入し、可能性のある数千のmiRNAからの大規模なスクリーニングに臨床サンプルを使用する必要がなく、PCR増幅を伴わない多重miRNA検出技術を直接利用して、本検出システムに適した肺がん診断に関連するマーカーを見つけ出し、統計的に有意なマーカーを見つけ出し、疾病診断マーカーの探索における方法論上の革新と進歩である。
【0198】
三、検証段階
検証段階では、発見段階で見つかった20個のmiRNAによって調製したマイクロスフェアチップ(対応するプローブ配列については表6を参照)、血清分離、検査、及びデータ解析方法を使用して、臨床サンプルに対して二重盲検試験を行い、肺がんについてスクリーニングされた20個のmiRNAの精度を検証した。二重盲検試験のプロセスは、まず採取した血清検査に基づいて肺がんであるか否かの結果を出し、次にその結果を臨床症例の結果と比較することである。肺がん群の169例の患者と対照群の115例を選択した。
【0199】
【0200】
肺がんサンプルの判断に対する20個のmiRNAの精度を検証するための具体的な工程は以下の通りである。
【0201】
1、血清の全RNAの抽出:肺がん群の169例の患者と対照群の115例の血清の全RNAをそれぞれ抽出した。
【0202】
2、混合:ステップ1で得られた2.0μLの全RNA、2.0μLのマイクロスフェア混合物及び1.0μLの10nM RH3CFを15.0μLのハイブリダイゼーション溶液(500mMのNaCl、0.05%のTween 20、1mMのMgCl2、50mMのTris-HCl、pH7.5)に加えてよく混合し、ボルテックスシェーカーで5秒間よく混合した。
【0203】
4、液相チップハイブリダイゼーション反応:事前に設定した42℃のウォーターバスに20分間入れた。
【0204】
5、検出:80μLのハイブリダイゼーション希釈液(100mMのNaCl、0.05%のTween 20、20mMのTris-HCl、pH7.5)を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて検出した。
【0205】
6、データ処理と解析:チップの結果に従って、読み取った各miRNAの値、採用したPCA読み取り値をバックグラウンドとして、選択した20個のmiRNAの濃度(単位:nM)を算出し、すなわち血清中の20個のmiRNAの相対発現量を取得した。計算には上記の肺がん診断式を採用し、計算結果のLCscore≧0.5を肺がん、<0.5を健常とした。検出結果は、表5に示された検証段階の統計値で示された。1、2、4、6、8、10、12、14、16、18個のmiRNAの検証を上記と同様に実施した。
【0206】
発見段階の62個のサンプル及び検証段階の284個のサンプル(2段階合計346個のサンプル)について、20個のmiRNA(以下、20-miRと略称)マーカーの組み合わせを用いて肺がんの陽性判定を行い、対応する合計346個のサンプルのCEA、NSE、CYF21-1、SCC、CA125及びCA199についての特異性、感度及び総合一致率は以下の表7に示されたとおりである。ここで、肺がんサンプルの陽性結果は術後の病理検査によって確認され、正常対照145例には、術後の病理検査によって良性と確認された22例が含まれた。
【0207】
【0208】
表7において、真陽性は検出結果が肺がんの臨床結果と一致することを示し、真陰性は検出結果が陰性で臨床所見と一致することを示し、偽陽性は検出結果が陽性であるが、臨床所見が陰性であることを示し、偽陰性は検出結果が陰性であるが、臨床病理学的に肺がんと判定することを示す。検証段階の284個のサンプルには、肺がん患者169人と対照者115人が含まれ、平均年齢は54.3.8±11.8歳、最年長は72歳、最年少は42歳で、そのうち138人が男性、146人が女性であった。肺がん群の病期分類は、肺腺がん148例、肺扁平上皮がん13例、小細胞肺がん2例、インサイチュ扁平上皮がん3例、小細胞がん2例、食道がん3例であった。
【0209】
表8は、TNM病期分類による肺がんの各ステージの検出精度を示した。主に早期肺がんサンプルであった。検証段階における284個のサンプルのうち、術後の病理結果が良性であった症例を含むサンプル数は22個であった。20-miRの組み合わせのマーカーは、CEAなどの従来の血液マーカーと比較して、早期肺がんの検出感度を最大84.1%まで大幅に向上させることが分かる。346個のサンプルの総合一致率TTNも80.6%に達した。無症状の早期肺がんをタイムリーに検出するために大きな使用性がある。
【0210】
【0211】
四、結果判定に対する異なる数のmiRNAマーカーの組み合わせの影響
ロジスティック回帰によって20-miRマーカーに基づく肺がん陽性判定式LCscoreを得、式中の各miRNAの重み(係数)に応じてmiRNAの数を変えて結果解析を再実行し、実際の臨床結果と比較した。
【0212】
表9に示すように、単一のmiRNAマーカーはそれぞれmiR-191とmiR-454であり、毎回2つのmiRNAを追加した。例えば、miR-191とmiR-454をベースにmiR-1285とmiR-126を加えると4つのmiRNAマーカー(以下、4-miRト略称)になり、前記4-miRをベースにmiR-181a-2*とmiR-203aを加えると6つのmiRNAマーカーになり、最後は20個のmiRNAになった。miRNAマーカーの異なる数の組み合わせを用いて284個のサンプルすべてを再解析し、得られた検出結果は以下の表9に示されたとおりである。
【0213】
【0214】
表9に示すされたとおり、20個のmiRの組み合わせは、特異性と総合一致率の点で最も優れており、それぞれ69.6%と77.1%に達した、一方、4-miRの組み合わせ(miR-191/454/1285/126)は、感度の点で最も優れており、91.1%に達した。単一のmiRNA(miR-454)の肺がん診断としての総合一致率でさえ57.4%であり、サイトカインベースのマーカーよりも優れていた。単一から複数のmiRNAによる肺がん診断の感度は55.0~91.1%であり、サイトカインベースのマーカーよりもはるかに高かった。
【0215】
感度/特異性値の基準:中国CancerProbe社の肺がん早期診断キットのデータ:感度は40%~60%であり、特異性は90%であり;海外の早期CDT-肺がん検出キットの実績値:感度は30%~40%であり、特異性は80%~90%である。二重盲検試験を受けた本発明の性能検証段階では、2つの先行技術製品よりも優れており、したがって、異なる腫瘍マーカーによる早期肺癌の診断において、miRNAマーカーはサイトカインベースのマーカーよりも感度が良いだけではなく、同じく血液由来のctDNAメチル化を検出するマーカーよりも感度が良い。
【0216】
五、検出特異性の再検証と予測
早期肺がんの臨床的に明らかな症状がないことは、理論的には、対照群に早期肺がんが含まれており、実際の非肺がん集団ではない可能性を排除することはできない。これらの対照群のほとんどはCT画像やCEAなどの従来の腫瘍マーカーによってスクリーニングされたが、早期肺がんにおけるCT及び従来の腫瘍マーカーの感度は0.5~26.4%と低く(表7を参照)、登録された145人の非肺癌対照群のうち、22人は術後病理診断で他の良性病変と確認されたが、全対照群の22/145=15.2%しか占めていないため、100%非肺がんと完全に否定するのは困難であった。
【0217】
したがって、確立されたデータの計算と解析におけるある程度の不確実性は、検証段階での特異性の結果に影響を与える可能性がある。この推測を検証するために、本実施形態では、スクリーニング段階での高い特異性と検証段階での特異性の明らかな低下が、正常対照群の定性的な困難に起因するバイアスであるか否かに基づいて、肺がんリスクの低い集団を選択して、再検出と検証を実施した。17~18歳のボランティア42名を選択し、血清を採取し、20-miRの検出結果を応用して解析と判定を行った。低年齢層のボランティア42名のうち40名が陰性であり、特異性は95.2%であった。本研究で選択した低肺がんリスク群は、上記の346人のスクリーニング群及び検証群と年齢要因が大きく異なり、評価としては十分に妥当とは言えないが、実際には十分に意味のある非肺がん対照群が困難なことから、42人の低年齢群の検出結果は、部分的に証拠として使用することができる。
【0218】
実施例16:
蛍光標識されたhis-tagモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を介した非蛍光標識RNaseH突然変異体によるRNAの検出
抗His-tagモノクローナルmAb(品番:D199987-0100、上海生工)及び抗His-tagウサギポリクローナル抗体pAb(品番:D110002-0025、上海生工)を各1mg、それぞれ1mg/mLのAlexa FluorTM532 C5 Maleimide(品番:A10255、Thermo Fisher)に加え、30℃で光を避け、室温で1時間反応させた。次に、Eppendorf 5424R遠心分離機で10kDa限外濾過チューブ(品番:Microcon YM-10、Millipore)を使用して、5000g、30分間の条件で3回遠心分離して、遊離した未架橋のAlexa FluorTM 532 C5 Maleimideを除去し、主要生成物である蛍光標識したmAb-F及びpAb-Fを得た。
【0219】
2組の同一の反応を設定し、10nMのmiRNA let7a、P3-let7a(表2、配列番号1)架橋LuminexマイクロスフェアLC10001-01、1.0μLの10nM RH3Cを15.0μLのハイブリダイゼーション溶液に加えてよく混合し、42℃で20分反応させた。次にA532蛍光標識した約50nMのmAb-F及びpAb-Fをそれぞれ加えた。室温で30分反応させた。80μLのハイブリダイゼーション希釈液を加え、96マイクロウェルプレートに移し、Luminex-200に入れて蛍光シグナルを検出した。6つの検出結果は
図17に示された通りである。蛍光標識されたモノクローナル抗体mAbは、同じ濃度のRNAを検出した場合、ポリクローナル抗体よりも高いシグナルを生成した。蛍光標識された抗Hisモノクローナル抗体はHisタグ付きRH3Cを認識するため、反応系に存在するRNAを検出することができる。同様に、本発明では、任意の蛍光標識を有する任意の抗体によって認識され得る限り、Hisタグ以外の任意のタグを使用することができる。
【0220】
実施例17:ビオチン修飾のRH3C(Protein ID:4)及びRH5C(Protein ID:5)
実施例3と同様の方法でMaleimide-PEG11-Biotin(品番:21911、Thermo Fisher)を同条件で架橋と精製を行い、RH3C-biotin及びRH5C-biotinのコンジュゲートを得た。実施例7と同じ条件に従って、RH3C-biotin、RH5C-biotin及びRH3CFを用いて、最終濃度1nMのlet7a miRNAによって生成されたシグナルを試験した。ハイブリダイゼーション反応後、0.2uLのストレプトアビジン-フィコエリスリン複合体(SAPE)(品番:SA10041、Thermo Fisher)を加え、ストレプトマイシンとビオチンが結合するように室温で10分間反応させた後、シグナル試験を実施した。RH3C-biotin、RH5C-biotin、RH3CFで得られた検出シグナル(S/N)は、それぞれ9.95、9.15、10.13であった。RH3C-biotinによって生成されたシグナルは、RH5C-biotinのシグナルよりも強く、RH3CFのシグナルに近かった。蛍光基をビオチンに置き換えることにより、PCR増幅を伴わないRNA検出のアプリケーションも実現することができ、RH3C-biotinの効果はRH3CFと同様であったが、ビオチンとストレプトアビジンの反応によって蛍光基を取り込むためにSAPEを追加する必要がある。
【0221】
上記の実施形態を総合すると、本発明によって作成されたRNaseH突然変異体は、RNAの検出を実現する少なくとも3つの方法があることが分かった。第1に、突然変異体に対して直接に部位特異的蛍光標識によって検出し、第2に、突然変異体に対して部位特異的ビオチン標識に続いてSAPEなどのビオチンを特異的に結合できる分子によって認識されることによって検出し、第3に、RNaseH突然変異体が有するタグを通じて、認識することができる蛍光標識された抗体によって認識することによって検出する。
【0222】
実施例18:電子デバイス:腫瘍診断装置
本実施形態は、メモリと、プロセッサと、メモリに格納されたプロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラムとを含むコンピューティングデバイス(例えば、サーバデバイスであり得る)の形で表現され得る電子デバイス9、すなわち腫瘍診断装置を提供し、プロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより、本発明の実施例15におけるがん診断方法が実施され得る。
【0223】
図18に示されたように、電子デバイス9は、具体的には、
少なくとも1つのプロセッサ91と、少なくとも1つのメモリ92と、異なるシステムコンポーネント(プロセッサ91及びメモリ92を含む)を接続するためのバス93とを含み、ここで、
バス93は、データバス、アドレスバス、及びコントロールバスを含む。
【0224】
メモリ92は、ランダムアクセスメモリ(RAM)921及び/又はキャッシュメモリ922などの揮発性メモリを含み、読み出し専用メモリ(ROM)923をさらに含むことができる。
【0225】
また、メモリ92は、オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーション、他のプログラムモジュール及びプログラムデータを含むがこれらに限定されない(少なくとも1つの)プログラムモジュール924のセットを有するプログラム/ユーティリティ925を含み、これらの例のそれぞれ又はいくつかの組み合わせは、ネットワーク環境の実装を含むことができる。
【0226】
プロセッサ91は、メモリ92に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、本発明の実施例15におけるがん診断方法など、様々な機能アプリケーション及びデータ処理を実行する。
【0227】
電子デバイス9は、さらに、1つ以上の外部デバイス94(例えば、キーボード、ポインティングデバイスなど)と通信することができる。このような通信は、入出力(I/O)インタフェース95を介して行うことができる。さらに、電子デバイス9は、ネットワークアダプタ96を介して、1つ以上のネットワーク(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)及び/又はインターネットなどの公衆ネットワーク)と通信することもできる。ネットワークアダプタ96は、バス93を介して、電子デバイス9の他のモジュールと通信する。図には示されていないが、電子デバイス9と組み合わせて、マイクロコード、デバイスドライブ、冗長プロセッサ、外部ディスクドライブアレイ、RAID(ディスクのアレイ)システム、テープドライブ、データバックアップ記憶システムなどを含むがこれらに限定されない他のハードウェア及び/又はソフトウェアモジュールを使用できることが理解されるべきである。
【0228】
また、電子デバイス9が接続する外部デバイスにはプリンタが含まれており、診断後にプリンタ(結果プリントモジュール)を用いて判断モジュールの結果を印刷することができる。さらに、診断前に、上記の外部デバイス94におけるキーボード又は影響デバイス(入力モジュール)などの通信手段を介してmiRNAの結果を入力し、その結果を解析モジュールに提供することができる。
【0229】
上記の詳細な説明では、電子デバイスのいくつかのユニット/モジュール又はサブユニット/モジュールが言及されているが、そのような分割は単なる例であり、必須ではないことに留意されたい。実際、本出願の実施形態によれば、上述した2つ以上のユニット/モジュールの特徴及び機能は、1つのユニット/モジュールに具現化され得る。逆に、上述した1つのユニット/モジュールの特徴及び機能は、複数のユニット/モジュールによって具現化されるようにさらに分割することができる。
【0230】
実施例19:コンピュータ可読記憶媒体
本実施形態は、コンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読記憶媒体を提供し、プログラムがプロセッサによって実行されると、実施例15におけるがん診断方法のステップを実施する。
【0231】
ここで、使用することができる可読記憶媒体は、より具体的には、ポータブルディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ、光学記憶装置、磁気記憶装置、又は上記の任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0232】
可能な実施形態では、本発明は、プログラムコードを含むプログラム製品の形で実施することもでき、前記プログラム製品が端末デバイス上で実行されると、前記プログラムコードは、前記端末装置に本発明の実施例15におけるがん診断方法のステップを実施することを実行させるために使用される。
【0233】
ここで、1つ以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで本発明を実行するためのプログラムコードを書くことができ、前記プログラムコードは、ユーザデバイス上で完全に実行可能、ユーザデバイス上で部分的に実行可能、独立したソフトウェアパッケージとして実行可能、ユーザデバイス上で部分的に、リモートデバイス上で部分的に実行可能、又はリモートデバイスで完全に実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【
図1】
図1は、RNase Hが結合したRNA:DNAハイブリッド鎖基質の構造(A)及びその加水分解機序(B)である。
【
図2】
図2は、
RNase H発現のSDS-PAGE検出であり、ここで、Mはpr
otein markerであり、レーン1はRH3C(RNase H(E48Q)-3C)であり、レーン2はRH3CF(RNase H(E48Q)-3(Alexa Fluor A532))であり;Aは12%SDS-PAGEの染色前の蛍光検出であり、Bは12%SDS-PAGEのクーマシーブリリアントブルーG250染色であり、Cは希釈液の直接蛍光検出である。
【
図4】
図4は、miRNA let7aの検出シグナルと感度である。
【
図5】
図5は、検出シグナルに対する異なる配列、種類、比率、固定方向のプローブの影響と結果である。
【
図6】
図6は、検出シグナルに対する特定の部位に共有結合的に架橋可能な1、3、5、7個のシステインCysをそれぞれ担持したRNase H(E48Q)の架橋型コンジュゲートの影響である。
【
図7】
図7は、検出シグナルに対する異なるリンカーアミノ酸をそれぞれ担持したRNase H(E48Q)複合体の影響である。
【
図8】
図8は、検出シグナルに対する異なる蛍光バンドでのAF532及びAF555と共有結合で架橋したRNase H(E48Q)-3Cのコンジュゲートの影響である。
【
図9】
図9は、シングルチューブでの多重miRNAの同時検出の原理を示す模式図である。
【
図10】
図10は、miRNAのミスマッチした塩基の特異性を検出したものである。
【
図11】
図11は、シングルチューブ反応において2つのmiRNAの同時検出した結果である。
【
図12】
図12は、シングルチューブ反応において血液由来のmiR-34aを同時に検出した結果である。
【
図13】
図13は、シングルチューブ反応において血液、尿、唾液中の多重miRNAを同時に検出した結果である。
【
図14】
図14は、肺がんのmiRNAマーカーのスクリーニング及び検証プロセスである。
【
図15】
図15は、機械学習とモデル構築のフローチャートである。
【
図16】
図16は、肺がん診断システムの検出装置のアプリケーションインタフェースである。
【
図17】
図17は、his-tagを認識できるモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を介したRNaseH突然変異体によるRNAの検出の原理及び検出結果である。
【
図18】
図18は、実施例18の模式図であり; 図において、9は電子デバイス、91はプロセッサ、92はメモリ、93はバス、94は外部デバイス、95はI/Oインタフェース、96はネットワークアダプタであり; 921はRAM、922はキャッシュメモリ、923はROM、924はプログラムモジュール、925はユーティリティである。
【配列表】