(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ファスナー部品
(51)【国際特許分類】
A44B 18/00 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A44B18/00
(21)【出願番号】P 2023512242
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2021082285
(87)【国際公開番号】W WO2022122345
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】102020007585.1
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500009857
【氏名又は名称】ゴットリープ ビンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘーペ, ラルス
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0020591(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0050553(US,A1)
【文献】特開2005-185458(JP,A)
【文献】特開平11-181261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 13/00-18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平面的な基材部(10)を備えたファスナー部品であって、片側に、複数のマッシュルームヘッド状のファスナー要素が配置され、各ファスナー要素は基材部(10)の一体化部分として、回転した双曲線のように形成され、かつ長手方向軸に沿って延びる固体のステム部(17)を有し、このステム部(17)の自由端部にヘッド部(16)が隣接し、ヘッド部(16)の縁部領域はフック可能部を形成して、少なくとも部分的にステム部(17)を超えて突出し、ヘッド部(16)は上側にクレータ状の窪み(20)を有するファスナー部品において、
更に複数のクレータ状の窪み(23)がファスナー要素の反対側である基材部(10)の更なる側(22)に組み入れられ、少なくともいくつかのファスナー要素の両方のクレータ状の窪み(20、23)は、夫々の窪み(20、23)が割り当てられたステム部(17)の長手方向軸に対して同心にまたは主に同心に延びており、各更なるクレータ状の窪み(23)は、基材部(10)の厚さの30%から
60%の最大クレータ深さを有することを特徴とする、ファスナー部品。
【請求項2】
各更なるクレータ状の窪み(23)が、前記基材部(10)の更なる側部(22)の面から始まり、クレータ基部(24)へ突出することなく、更なる側部(22)の面から連続的に伸びる、請求項1に記載のファスナー部品。
【請求項3】
夫々の更なるクレータ状の窪み(23)は、長手方向の断面において理想化されて見られるように、基材部(10)の更なる側部(22)から始まって、クレータ基部(24)の方向において、湾曲部の凸状の経路から凹状の経路に移行している、請求項1又は2に記載のファスナー部品。
【請求項4】
湾曲部の凹状の経路は、凸状の経路よりも大きく曲がらない、請求項3に記載のファスナー部品。
【請求項5】
製造方向に対応する基材部(10)の長手方向(25)に沿って見た、各更なるクレータ状の窪み(23)は、長手方向の断面で見て、断面の反対側よりも基材部(10)の更なる側部(22)に向かう側部上でより平坦に延びる、請求項1乃至4の何れかに記載のファスナー部品。
【請求項6】
更なるクレータ状の窪み(23)が各ファスナー要素に割り当てられ、全てのファスナー要素は同一の構成であり、更なるクレータ状の窪み(23)は互いに同じ構成である、請求項1乃至5の何れかに記載のファスナー部品。
【請求項7】
ファスナー要素の夫々のステム部(17)が、基材部(10)に向かうフット側の少なくとも遷移地点(18)において、均一に延びる回転体を形成し、遷移地点(18)は、ファスナー要素のフック点(21)を有するヘッド側の拡幅部(16)へのステム部(17)の遷移地点よりも小さな曲率を有し、隣接して対向する更なるクレータ状の窪み(23)の全ての位置における湾曲部の経路は、ステム部(17)のヘッド側の湾曲部の経路に関する曲率よりも小さい曲率を有する、請求項1乃至6の何れかに記載のファスナー部品。
【請求項8】
前記基材部(10)の更なる側部(22)への終端した地点における更なるクレータ状の窪み(23)の最大径は、前記ステム部(17)のフット端部(18)とヘッド端部(16)との間の任意の点におけるステム部(17)の直径よりも
大きい、請求項1乃至7の何れかに記載のファスナー部品。
【請求項9】
粘着剤が、更なるクレータ状の窪み(23)に導入される、請求項1乃至8の何れかに記載のファスナー部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に従い、少なくとも1つの平面状の基材部を備えたファスナー部品に関し、該基材部の片面に、複数のマッシュルームヘッド状のファスナー要素が配置されている。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許公開公報100 39 937号には、そのようなファスナー部品及びタッチファスナー部品の製造方法がそれぞれ記載されている。公知のタッチファスナ-部品は、基材部に一体的に接続され、対称的な構造である複数のフック手段を備え、このフック手段は、各々がヘッド部を備えたステム部の形態であり、成形可能な材料が圧縮工具と成形工具の間の成形ゾーンに送られ、製造工程を実行する。公知の解決方法では、少なくとも夫々の型キャビティの長手方向の断面で見ると、対向する境界壁は、端から端まで凸状の経路を備えているので、ステム部の断面形状と、それぞれの基材部の1つのフック手段のためのヘッド部との間で定常的な遷移が達成され、滑らかな脱型処理が可能になる。
【0003】
ほぼ直線的なステム部を有する、より従前のファスナー部品の解決策は、ドイツ特許公開公報196 46 318号のような更なる刊行物の主題事項である。
大部分は直線的なステム部を有する以前のファスナー部品の解決策は、ドイツ特許公開公報196 46 318号などのさらなる刊行物の主題事項である。
【0004】
この先行技術を出発点として、本発明は、機能性が向上し、適用領域が拡大されたファスナー部品を作り出すために、既知の解決策を更に改良するという問題に取り組む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の特徴を全面的に有するファスナー部品は、この問題を解決する。なぜなら、請求項1の特徴的な部分によれば、複数のクレータ状の窪みがファスナー要素の反対側である基材部の更なる側に導入され、少なくともいくつかのファスナー要素の両方のクレーター状の窪みは、夫々の窪みが割り当てられたステム部の長手方向軸に対して同心にまたは主に同心に延びており、各更なるクレータ状の窪みは、基材部の厚さの30%から60%、好ましくは50%の範囲の最大クレータ深さを有する。基材部の平らな側部と比較して、更なる機能性が生まれ、また、このような機能性を追加することで、ファスナー部品の適用範囲が拡大される結果となる。
【0006】
まず、基材部の後方領域におけるクレータ状の更なる窪みは、重量の顕著な減少をもたらし、コピー機やプリンター用の普通紙程度の質量(単位面積あたりg/m2)、即ち、値<80g/m2が達成される。当該タイプのファスナー部品は、大量生産された製品であり、例えば、何千平方メートルものロールとして各々の使用場所(自動車産業、紙おむつ産業、衣料産業等)に出荷されなければならないので、このようなファスナー部品の技術的特性を損なうことなく、関連する程度まで輸送コストを削減することができ、これは、第3の構成要素のスリングウエアまたはループウエアを備えた繰り返し着脱可能で閉鎖可能なタッチファスナを形成することからなり、このようなタッチファスナは、最終消費者の間でさえも、ベルクロ(登録商標)ファスナーとして技術用語で知られている。この効果には、ヘッド部のクレータ状の窪みによる軽量化も寄与している。
【0007】
上記した基材部のクレータ状の窪みは、重量を減らすだけでなく、既知の製造工程(チルロール工程)を用いてファスナー部品を製造するために必要なプラスチック材料の全体的な量を減らす役割を果たし、コスト削減と環境保護に貢献する。
【0008】
さらに、さらなるクレータ状またはへこみ状の窪みを有するファスナー部品のそのような基材部は、例えば、ドイツ特許公開公報100 39 937号の開示に従った例によって作製されたような、公知のファスナ部品よりも低い曲げ剛性を有することが示されている。
このことは、いわゆる「ソフトウェア」解決策において特に重要な役割を果たし、このようなファスナー部品は、失禁用おむつや赤ちゃん用おむつに夫々使用されており、その機能性は、しなやかさによって着用者に快適さを提供することを意図している。
【0009】
さらに、夫々の更なるクレータ状の窪みは、例えば、後日、夫々のファスナー部品をその使用場所で第3の構成要素に取り付けるために必要な接着剤を保持するための、集積空間および貯留部を夫々形成するオプションも提供する。既知の解決策では、ファスナー部品は常に、基材部の背面に接着剤塗布層で多かれ少なかれ完全に覆われている必要があり、これは一方で、接着剤の必要量を増加させ、その結果、総製品コストも増加させ、一方で、接着剤塗布層は、意図しない接着剤塗布層の脱離をもたらし得るが、本発明に係る本解決策ではこれは回避される。なぜなら、接着剤塗布層は、個々の更なるクレータ状の窪みによって大部分が保護されるからである。さらに、ドイツ特許10 2004 058 257号に例示されているように、改善されたオプションがあり、これはタッチファスナー部品のためのいくつかのフィルム状のプラスチックシートを後部から重ね合わせ、さらなるクレータ状の窪みを介して、外側の基材層を、内側の基材層に「引っ掛ける」ことができ、ファスナー製品のための重ね合わされたフィルム状の基材シートまたは基材層の改善された接着を達成する。
【0010】
本発明によるファスナー部品では、各々の更なるクレータ状の窪みが、基材部の厚さの30%から60%の間、望ましくは50%の最大のクレータ深さを有すると規定される。特に、基材部に対する壁の厚さの選択は、基材部における各更なるクレータ状窪みの調和のとれたクレータ状の形状をもたらす。
【0011】
クレータ基部とその残りのクレータ形状を有する各更なるクレータ状の窪みは、本質的に、それぞれのマッシュルームヘッド状のファスナー要素のステム部に同心状に延在し、このステム部は、この窪みに隣接してかつこれと反対の基材部から突出し、基材部に一体的に接続される。断面で見ると、ファスナー要素がその上に載置される一種のブリッジ構造は、割り当てられたステム部に対して長手方向にファスナー要素への負荷方向で見たときに、増加した支持力が生じるように作られ、ファスナー部品のファスナー特性を向上させる。好ましくは、全てのファスナー要素に割り当てられた窪みが提供されるに規定されており、全てのファスナー要素は、全ての窪みと同様に互いに対して同じ構成になっている。このようにして、夫々のファスナー部品に対して、ファスナー部品の長手方向軸および横方向の軸に沿って広範な対称性を有する規則的な構造が、全体として達成される。
【0012】
上記のように、新規性を有するファスナー部品は、後部にクレータ状またはへこみ状の窪みを有するように構成されたファスナー部品の用途の可能な領域であるように、機能性を増加させる。更なるクレータ状の窪みは、外側から基材部に機械的に導入することが容易にでき、例えば、追加の成形ローラに配置された突起を、まだ可塑化されていない基材部の後部領域に貫通させ、プラスチック材料を圧縮しながら、プラスチック材料内にさらなるクレータ状の窪みが導入される。他の1つの製造オプションは、高圧(水、空気など)を伴うノズル状の流体を用いることによって、基材部の後部領域の材料を変位させると同時に、前述の窪みを生成することである。
しかし、このようにして使用される製造工程では、最終的にそれぞれのファスナー部品のグラム数が減少する結果にはならない。何故なら基本的にプラスチック材料はファスナー部品から取り除かれることなく移動するだけだからである。対照的に、プラスチック材料は、各更なるクレータ状の窪みを作るために、微小電気めっきで使用されるようなエッチング工程を使用して、基材部の裏面から除去される。プラスチック材料を除去することにより、ファスナー部品のグラム数が低減される。
【0013】
しかしながら、製造工程の適切な制御により、基材部に、好ましくはそれぞれのマッシュルームヘッド状の構造と反対に、さらなるクレータ状の窪みが生成されることは、タッチファスナ閉鎖技術の分野における平均的な当業者にとって驚くべきことである。例えば、ステム部とヘッド部用のキャビティを有する成形ローラでの脱型工程が制御されて、閉塞材料の抜き出し時に、ファスナー部品の脱型中に成形ローラの各キャビティに抵抗がかかり、下層の樹脂材料がクレータ状に引き込まれ、基材部の後部にある各更なるクレータ状またはへこみ状の窪みは、成形工程中に準自動的に作成される。これは先行技術に類例がない。
【0014】
本発明に係るファスナー部品の好適な実施形態では、各更なるクレータ状の窪みは、基材部の平面的な更なる側部から始まり、そこからクレータ基部まで突出することなく連続的に延びていることを規定する。ファスナー部品の製造時に突出したクレータリムが生じないため、ファスナー部品に対する更なる加工性も損なわれることはない。
【0015】
本発明に係るファスナー部品の更なる好適な実施形態では、理想化された長手方向から見た断面において、夫々の更なるクレータ状の窪みは、基材部の更なる側部から始まって、クレータ基部24の方向に曲率の凸部から凹部の方向に遷移することが規定される。
その結果、正弦カーブや余弦カーブのような調和的な曲率が得られ、クレータ形成に沿った材料応力も低くなる。特に、中央の凹部のカーブが、その後に続くリムにおける凸部のカーブほど大きくない場合に有利であることが証明されている。
【0016】
本発明に係るファスナー部品のさらに好ましい実施形態では、製造方向に対応する基材部の長手方向に見て、長手方向の断面で見た各更なるクレータ状の窪みは、基材部の更なる側部に向かって一側部で反対側の断面側部よりも平坦に延びていることが規定される。このクレータの形成は、各ファスナー要素の離型工程で成形ローラに起因し、離型工程の円滑化に寄与している。
【0017】
本発明に係るファスナー部品の更なる好適な実施形態では、ファスナー要素の夫々のステム部は、少なくとも基材部に向かうそのフット端部の遷移地点では、均一に延びる回転体を形成していることが規定され、該遷移地点は、ファスナー要素のフック地点を有するヘッド端部の拡幅部へのステム部の遷移部よりも小さな曲率を有し、隣接し対向する窪みの各点における湾曲部の経路は、ステム部のヘッド端部の湾曲部の経路に係る曲率よりも小さい曲率を有する。このようにして、型からの各ファスナー要素のスムーズな離型と、整合する基材部の各更なるクレータのための窪みの同時形成との間に妥協点が生じる。
【0018】
本発明に係るファスナー部品の更なる好適な実施形態では、基材部の更なる側部へ終端した(expiring)地点における更なるクレータ状の窪みの最大径が、ステム部のフット端部とヘッド端部の間の任意の点におけるステム部の直径より大きく、ヘッド部の最も広い点でのヘッド部の範囲よりも大きいのが好ましいことを規定する。一方、夫々のヘッド部分は良好なフック可能部を提供すると同時に、クレータ基部の方向に基材部の平坦な下側からのブリッジ状の遷移部により良好な支持を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明によるファスナー部品は、一実施形態に基づいて、その製造の説明を含めて、より詳細に以下に説明される。
【
図1】本発明に係るファスナー部品を得るための処理を行う装置を高度に概略的に簡略化し、部分的に破断した側面図を示す。
【
図2】
図1の表現に従って、型キャビティを通る大きく拡大された長手方向の断面図を示す。
【
図3】
図2に従って、型キャビティを用いて製造できる単一のファスナー要素を示す。
【
図5】ファスナー要素の上面図を示し、単一のものは
図3に示される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明によるファスナー部品を得るための製造工程を実行する装置の一部の概略図を示す。この装置は、プラスチック材料、特に熱可塑性材料のための供給装置としての押出機ヘッド1を有し、このプラスチック材料は、プラスチックまたは液体の状態にあり、圧力工具と成形工具との間のギャップにストリップとして供給され、ここで、当該ストリップの幅は、それぞれ、製造されるファスナー部品およびタッチファスナー部品の幅と一致する。圧力工具は圧力ローラ3であるのに対し、成形工具は全体的に符号5で示される成形ローラである。
両ローラは、
図1の矢印7及び9で示された回転方向に駆動され、両ローラの間にコンベアギャップを形成し、該コンベアギャップの間を通ってプラスチックストリップが移送方向に搬送され、その一方、同時に、プラスチックストリップは、成形領域としての隙間において、ファスナー部品の基材部10に成形され、成形ローラ5の成形要素は、成形ローラ5に対して静止している側の基材部10を必要に応じて成形し、ファスナー要素を形成する。
【0021】
このために、成形ローラ5は、個々の型キャビティ12を有するスクリーン11をその円周上に有する。このような型キャビティ12の一例を
図2に拡大して示される。さらに、詳細は示されていないが、型キャビティ12は、そのスクリーン11を有する成形ローラ5の外周にわたって規則的に分布されており、その分布および数は自由に選択することができる。
【0022】
図2は、使用される各型キャビティ12を通る長手方向の断面を示し、ここで、長手方向の断面において互いに対向する境界壁13は、端から端まで、凸状の経路14を備えて提供される。なお、前記2つの境界壁13は、型キャビティ12の回転対称構造を考慮すると、基本的には成形ローラ5のスクリーン11の材料で区切られた閉塞を形成する壁15の一部に過ぎないことは言うまでもない。これらの型キャビティ12は、いずれの場合においても、それぞれヘッド部16を備えたステム部17の形態のファスナ要素を製造するために使用することができ、ヘッド部16、ステム部17及び反対側の基材部10は、互いに一体に結合される。したがって、
図1に示された成形装置は、本発明のファスナー部品を、技術用語でチルロール製造工程とも呼ばれる一種の鋳造または押出加工によって製造することを可能にする。
【0023】
さらに
図2に示すように、形成されるヘッド部16の方向(
図2の方向から見た上方領域)における各経路14の曲率は、ステム部17と基材部10との接続に用いられるフット部18の方向において(足先側または下端側)より際立っている(pronounced)。
ステム部17の長手方向から見て、ヘッド部16の方向において、中央より上方、好ましくはより上側の第3の方向から開始して、より大きな曲率を有する経路14が設けられている場合には、これは、成形装置から生産されるファスナー部品の成形にも特に有利であることが証明されている。
【0024】
電気めっき処理は、その回転対称構造を有する前述の型キャビティ12を双曲面形状で得るために有効であることが証明されており、円筒状の型キャビティ(図示せず)は、凸状経路14が生成されるまで、最初にコーティング材料でコーティングされる。さらに、凸状経路14は、レーザまたはエッチング工程を使用して、固体材料のスクリーンまたはグリッドから生成することも可能である。
【0025】
基材部10の上面に複数のファスナー要素が配置されており、
図3に示す単一のファスナ-要素は、
図1による製造装置を含めて上述した方法によって得ることができる。対称構造は、
図2による型キャビティ12における生産に直接起因する。このファスナー要素は、例えば、0.4mmの高さを有し、閉鎖したヘッド部16の幅が0.6mmのオーダーであるように、幾何学的に非常に小さくすることができる。本実施形態におけるステム部17の断面は、約0.25mmである。対照的に、基材部10の厚さは、例えば、0.05mm及び2mmの厚さを有するように、さらに小さくされ得る。上記のサイズ寸法は実際的な例として考えられるに過ぎず、もちろん、異なるサイズ比率も実行され得る。
【0026】
さらに、
図5の説明によれば、複数のこのようなファスナー要素を基材部10上に配置することができる。平面視で存在するヘッド部16の六角頭部形状は、それ以上の仕上げ加工を必要としない。夫々のヘッド部16の六角形状の代わりに、他のヘッドの幾何学的形状も、上記の成形工程によって容易に達成することができる。
スクリーン11は、固体の成形ローラ本体19の上に載っているため、ヘッド部の夫々の上面とローラ本体19の外周側面との間に空気が巻き込まれ、その結果、空気はヘッド部の上面の中心に向かって動き、そこで外側から見てクレータ状の凸状の凹部又は窪み20を形成し、これはヘッド部16の縁部に向かって剛性を高めるのに役立つ。図示のように、夫々のヘッド部16のリムは、リム端部でステム部17を越えて突出し、従って、整合するファスナ-部分のヘッド部またはループ材料(図示せず)の係合のための円周方向の下掛け可能部21を形成して、繰り返し開閉可能なタッチファスナ(フックアンドループファスナ)を作り出す。必要に応じて、他のヘッド部の幾何学的形状も実施することができる。
【0027】
さらに
図2から分かるように、更なるクレータ状の窪み23が基材部10のファスナー要素と反対側の別の側部22に設けられ、この更なるクレータ状の窪み23が、
図4の基材部10の底面図における例として示されている。なお、基材部10上に立設する複数のファスナー要素に関しては、基材部10内に対応する複数の更にクレータ状の窪み23もあることは言うまでもない。さもなければ、基材部10の上面26と下側22とが互いに平行な面状に延びている。
【0028】
夫々の更なるクレータ状の窪み23は、基材部10の更なる面側22から出発して、突起部なしにクレータ基部24まで連続的に延びている。各更なる窪み23は、
図3に示された表現に従った長手方向の断面で見ると、基材部10の更なる側面22から始まって、クレータ基部24の方向に曲率の凸部から凹部の方向に遷移する。クレータ基部24の領域における凹部の曲率が、凸部の曲率よりも強く曲げられていない方が、製造技術の点で有利であることが証明されている。しかしながら、他の軌跡および曲率も、工程要件に応じて選択可能であり、この場合、曲率軌跡は、基材部10の内側から見られる。
【0029】
さらに、
図3の方向で見ると、製造方向に対応する基材部10の長手方向25における各クレータ状の窪み20は、一方の側(ここでは
図3の視線方向で見て右側)で見た長手方向の断面において、反対側の断面側(
図3の視線方向で見て左側)よりも緩やかに傾斜している。
簡潔さのために、
図3は、それぞれの更なる窪み23が、基材部10の厚さの30%から60%の間、望ましくは約50%の最大クレータ深さを有することを示さない。しかし、特に
図4では、クレータ基部24を有するクレータ状の窪み23とその残りのクレータ形状が、夫々のマッシュルーム形ヘッド状のファスナー要素のステム部17に凡そ同心円状にクレータリムまで伸びており、これは、上述のように、このさらに別の窪み23に隣接して反対側に、所定の突出程度を以って基材部10に一体的に接続されていることが示されている。
【0030】
好ましくは、このような更なるクレータ状の窪み23は、各ファスナー要素に割り当てられ、全てのファスナー要素は、望ましくは、互いに対して更なるクレータ状の窪み23であるように、同一の構成である。これは、ファスナー要素の夫々のヘッド部16の上面にあるヘッド端部の凸状の凹部20にも同様に当てはまる。更に
図3に特に示すように、ファスナー要素の夫々のステム部17は、少なくともそのフット端部の遷移地点において、基材部10に向かってフット部18の形態で均一に延びる回転体を形成しており、遷移地点18は、ファスナー要素のフック部21の拡幅ヘッド端部へのステム部17の遷移部よりも小さな曲率を有する。更に、ステム部17の湾曲部の経路は、隣接して対向するさらなるクレータ状の窪み23の全ての位置において、ステム部17のヘッド端部の湾曲部の経路に関連する曲率よりも小さい曲率を有するのが好ましく、このようにして、本発明によるファスナー部品について特に高い引っ掛け強度を達成することができる。この文脈では、凸状のクレータ状の窪み20の最深点が、ステム部17の長さによって形成される所定の軸方向距離にて、更なるクレータ状の窪み23の最深点とは反対側に配置されていると有利である。
【0031】
更に
図3から判るように、基材部10の更なる側面22への出口点における更なるクレータ状の窪み23の最大径は、そのフット端部18とそのヘッド端部16との間の任意の点におけるステム部の直径よりも大きく、更なるクレータ状の窪み23の直径は、ヘッド部16の最も広い点でのヘッド部16の範囲(図示せず)よりも大きいのが好ましい。
【0032】
ファスナー部品のための好ましいプラスチック材料は、30%を超える破断伸びを有するものであり、上記に特定される寸法および厚さ寸法は、Wolff-Messtechnik(商標)社によってDM2000厚さ計を用いて測定されるのが好ましい。このようなファスナー部品を製造するための通常のプラスチック材料に加えて、生分解性材料も考慮することができ、これは、再生可能な原料または石油化学の原料またはその両方の組み合わせに基づいて製造することが望ましい。
【0033】
ファスナー部品がスクリーン11の型キャビティ12から離型される離型地点27(
図1参照)では、ファスナー部品はまだ部分的にプラスチック状態であり、完全に硬化していない状態である。下掛け可能部21は、依然として、夫々の型キャビティ12のキャビティ15内に少し残っており(
図2参照)、長手方向の引っ張り運動が、ステム部17を介して基材部10の下側の更なる側面22に開始され、その結果、トラフ状の更なる窪み23が基材部10の底部内に引き込まれる。
次いで、離型後、プラスチック材料の弾性によりリセット動作が生じ、夫々のファスナー要素を有するファスナー部品は、最終的に、
図3に示される形状が想定される。
【0034】
さらに、クレータ状またはへこみ状の窪み23を導入する別の方法は、外周に取り付けられた突起(図示せず)を有する圧力ローラ3及び/又は離型ローラ28(
図1参照)のいずれかを提供することであり、この突起は、導入される各更なるクレータ状の窪み23の輪郭と一致し、その後、ローラ3、28を介して基材部10の背面に刻印される。このようにして、更なる各々のクレータ状の窪み23は、ステム部17の延長部以外の位置において、基材部10にも作製することができる。このような印加される窪みは、上記した成形ローラ5の型キャビティからのファスナー部品の抽出中に生成される窪みのような、さらなるクレータ状の窪み23と組み合わせることもできる。
より詳細に図示されていない実施形態では、ノズルバーによって基材部10の後部にこのような窪みを追加的に、または代替的に導入することが可能であり、ここで、窪みは、加圧媒体(空気、水)をジェット状に適用することによって、基材部10の更なる側22に印加される。さらに、同様に図示されていないが、エッチングまたは他の除去工程によって、基材部10内にそれぞれ更なるクレータ状の窪み23を生成することが可能である。