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特許7539743電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/02 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G01V3/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023527219
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2021082602
(87)【国際公開番号】W WO2022095325
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-06
(31)【優先権主張番号】202011227505.3
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】王幇兵
(72)【発明者】
【氏名】王佳馨
(72)【発明者】
【氏名】唐衛紅
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/200905(WO,A1)
【文献】特開2003-227877(JP,A)
【文献】特開2008-051502(JP,A)
【文献】特開平03-257395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法であって、
事前に設定された測定領域内にできるだけ測定点を均一に配置し、且つ地表条件に応じて電極対を構成する2つの電極の位置および2つの電極相互の方向を柔軟に選択しながら、各測定点に一つの電極対を配置し、且つ各測定点にユニックな測定点識別子番号を付与し、すべての電極対の2つの電極の位置座標と測定点番号を収集し且つ記録するステップであって、電極対の長さaは、a=(1/2~1/3)Hであり、Hは、設計された探査深さであるステップ(1)と、
在測定点における電極対を給電電極対とし、現在測定点を中心とする予め定めた半径の有効測定円形領域を設定し、有効測定円形領域内に位置するすべての測定点にそれぞれ配置されている電極対を測定電極対として、測定する動作を測定点の番号に従って給電電極対とする測定点を測定領域内の各測定点に順に移動させながら、すべての測定点を給電電極対とするまで繰り返すステップ(2)とを含み、
前記有効測定円形領域は、現在測定点における給電電極対の二つの電極の中点oを円心とし、Rを有効測定半径として描かれた円の内部の領域であり、ここで、有効測定半径Rは、R=(6~8)aである、ことを特徴とする電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法。
【請求項2】
電極対ABは、給電電極対とし、その有効測定円形領域における一つの測定電極対MNが測定を一回完了した後に、MNが給電電極対とする時に、その有効測定円形領域におけるABは、測定電位対として繰り返し測定をしない、ことを特徴とする請求項1に記載の電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法。
【請求項3】
電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法であって、以下のようなステップを含み、
ステップ1:観測システムの図面設計、
高解像度の衛星又は航空リモートセンシング画像を選んで、リモートセンシング画像における測定領域の範囲にマークを付け、測定領域内にできるだけ測定点を均一に配置し、且つ地表条件に応じて電極対を構成する2つの電極の位置と2つの電極相互の方向を柔軟に選択しながら、各測定点に一つの電極対を配置し、且つ各測定点にユニックな測定点識別子番号を付与し、すべての電極対の2つの電極の位置座標と測定点番号を収集し且つ記録し、ここで、電極対の長さaは、a=(1/3~1/2)Hであり、Hは、設計された探査深さであり、
ステップ2:現場校正、
ステップ1で設計された測定点と電極対の2つの電極の位置に対して現場調査検出を行い、各測定点の地表状況を検査し、リモートセンシング画像上に設計された測定点に対応する現場状況が測定点配置条件を満たさなければ、測定点位置を調整し又は測定点をキャンセルし、且つ測量機を採用してすべてのステップ2の校正を経た後の現場測定点の電極対の2つの電極の位置座標と測定点番号を収集し、そして現場測定点に対応する電極対の位置に電極対番号付きマーカーを差し込み、
ステップ3:ステップ2で採集されたデータに基づいて観測システムをアップデートし観測システムにおける現在測定点における電極対を給電電極対とし、現在測定点を中心とする予め定めた半径の有効測定円形領域内に位置するすべての測定点にそれぞれ配置されている電極対を測定電極対として、測定し、
前記有効測定円形領域は、現在測定点における給電電極対の二つの電極の中点oを円心とし、Rを有効測定半径として描かれた円の内部の領域であり、ここで、有効測定半径R=(6~8)aであり、
ステップ4:測定点の番号に従って、観測システムによって給電電極対とそれに対応する測定電極対シーケンスを順に指定し、ステップ3の測定を行う動作を測定領域内のすべての測定点給電電極対とするまで繰り返し、各グループ給電-測定電極対の見掛け比抵抗を得、
ステップ5:測定プロセスで得られたすべての見掛け比抵抗に基づき、地下の検知ターゲットに対して反転結像を行う、ことを特徴とする電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法。
【請求項4】
前記ステップ4では、有効測定円形領域に基づいて各給電電極対の測定電極対シーケンスを取得する時に、この測定電極対シーケンスにおいてこの給電電極対と給電-測定ペアリング関係があった電極対が存在すれば、それを測定電極対シーケンスから削除する、ことを特徴とする請求項に記載の電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法。
【請求項5】
前記ステップ5で反転結像を行った後に、ある箇所における検知ターゲットの分解能が設計要求を満たすことができなければ、検知ターゲットの周囲に電極対を補充し、且つ新たに補われた電極対を給電電極対のみとし、その有効測定円形領域におけるすべての他の電極対を測定電極対とし、ステップ3~ステップ5の方法を採用して補充探査測定を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的方法探査技術分野に属し、具体的には電極のランダム分散型三次元高
密度電気的方法データ採集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度抵抗率法は、一般的な電気的方法探査の上で発展してきたアレイ探査方法である
。従来高密度電気的方法は、ケーブルを介してすべての電極を直列接続して機器上に接続
し、機器内部プログラム制御スイッチにより装置タイプ(例えばヴェナー、双極子-双極
子、単極-単極など)に従って設置され、すべての電極から装置設置要求を満たす給電(
A、B)と測定(M、N)電極組み合わせを選んで自動測定を行い、さらに計算して装置
パラメータに対応する見掛け比抵抗値ρを得、次にデータ処理(主に反転結像である)
によって、測定領域の地下抵抗率の分布状況を取得することである。高密度電気的方法の
優位性は、すべての電極を一度で配置すればよく、機器によりプログラム制御によって電
極組み合わせを選択し、自動測定を実現し、人力を節約するだけでなく、さらにデータ採
集効率を向上させることである。
【0003】
高密度電気的方法野外測定は、主に二次元検線探査と三次元面積性探査の二つの測定方
式を有し、三次元探査は、測定領域地下の孤立した異常ターゲット又は一定走向を有する
地質体空間分布状況の発見に寄与し、都市地下空間調査などの近地表探査分野で極めて良
好な使用が得られる。現在三次元高密度電気的方法は、規則格子状の電極配置とS型ルー
プケーブル配置方式を採用することが多く、このような長ケーブルを介してすべての電極
を直列接続すること及び規則格子状設計要求は、ますます複雑な地表条件下の探査需要(
河川、道路、高層ビル、舗装地面などの地表障害物は、規則格子状の電極配置を制限する
)に適応しなくなり、いくつかの特に設計された変則な三次元観測システムの出現を促し
、例えばL型、星形、環状、多角形などである。しかしながら、これらの特に設計された
観測システムの多くは、特殊な地表条件の探査需要に適応するために発生した一時応急設
計であり、一般的適用性と汎用性を考慮せず、完璧、規範、システム化の実用解決方案を
形成しにくい。
【0004】
現在通常の三次元高密度電気的方法は、以下のような不足が存在する。
【0005】
1.規則格子状を採用して電極を配置することしかできず、都市又は複雑な環境条件で
、電極を規則的に配置するための適切で、整っている矩形領域を探し出しにくく、高密度
電気的方法の都市などの複雑な地表条件での応用を厳しく制限する。
【0006】
2.長ケーブルを採用してすべての電極を直列接続し、測定は、電極のケーブルにおけ
る位置のシリアル順序に従って行われる。重い長ケーブル接続は、作業負荷を増加させる
だけでなく、そして障害物(河川、大型建築物、幹線道路など)の存在もしばしば現場ケ
ーブル配置作動が実施しにくいことを引き超す。
【0007】
3.現在の高密度電気的方法の三次元探査は、規則格子状で測定点/検線を配置するこ
とを採用し、測定点移動順序は、検線に沿う二つの直交方向に従って進めることしかでき
ず、疑似三次元測定でしかなく、完全意味上の電極位置ランダム配置ではない。そして従
来高密度電気的方法機器は、毎回すべての電極のうちの四つの電極(給電/測定)のみを
用い、採集効率が比較的低い。
【0008】
電極のランダム分散型高密度電気的方法の探査は、現場地表条件に応じて、接地条件が
良好な地点を柔軟に選択して電極を配置することができ、都市などの複雑な地表条件での
探査需要に特に適切である。理想的な状況で、電極のランダム分散型高密度電気的方法は
、毎回測定する時に一つの電極対を採用して給電し、他のすべての電極対に対して電位差
測定を行い、複数の採集ステーションの同時並行測定を実現するが、給電と測定電極対と
の距離が遠すぎる時に、機器の測定によって得られた電位差は、ノイズレベルよりも低く
、正確な見掛け比抵抗値を取得しにくい。このような採集方式は、大量の無効操作と無効
データを発生させる。施工効率とデータ採集品質に厳しい影響を与える。電極のランダム
分散型三次元高密度電気的方法は、革新性探査技術とし、極めて良好な応用可能性と普及
見込みを有するが、新たな技術とし、観測システム設計、データ採集とデータ処理などの
多くの態様でいくつかの解決されていない鍵技術的難題が依然として存在する。1.観測
システム設計問題、どのように効果的、簡潔なデータ採集観測システムを設計し、電極の
ランダム分散型システムの技術優位性を最大限に発揮するか。2.測定ステーションスク
ロール問題、機器又は採集ステーションの数が測定領域全体を覆う需要を満たしにくい時
に、どのようにすでに用い切った採集ステーションを検索して測定すべきステーションに
移動し、スクロール測定を実現するか。3.補充探査測定点配置問題、データを処理した
後に興味を持っている地下ターゲット結像解像度(分解能)が足りないことを発見する時
に、どのように測定点を高効率的に増加させて検知ターゲットの分解能を迅速に改善する
か。
【0009】
都市化あゆみの加速につれて、ランダム分散型高密度電気的方法は、都市などの複雑な
地表環境探査において発展可能性を最も有する最先端方向になる。しかしながら電極のラ
ンダム分布によって観測システム配置の随意性と複雑性を大幅に増加させ、探査深さと分
解能が比較的大きい不決定性を有し、データ採集プロセスにおける測定点測定順序、装置
スクロール方式などの観測システムとデータ採集方法の設計は、依然としてこの方法の普
及応用を制約する技術ボトルネックである。
【発明の概要】
【0010】
従来の技術の不足に対し、本発明は、電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法観
測方法とデータ採集方法を提案し、具体的な技術案は、以下のとおりである。
【0011】
電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法について、
事前に設定された測定領域内にできるだけ測定点を均一に配置し、且つ地表条件に応じ
て電極対の端点位置と方向を柔軟に選択し、各測定点に一つの電極対を配置し、且つ各測
定点にユニックな測定点識別子番号を付与し、すべての電極対の端点位置座標と測定点番
号を収集し且つ記録するステップであって、電極対の長さa=(1/2~1/3)Hであ
り、Hは、設計された探査深さであるステップ(1)と、
すべての測定点の給電を完了するまで、測定点の番号に従い、給電所を各測定点に順に
移動し、現在測定点における電極対を給電電極対とし、現在測定点に対応する有効測定円
形領域内の電極対を測定電極対として測定し、測定領域全体のスクロール測定を完了する
ステップ(2)とを含み、
前記有効測定円形領域は、現在測定点における給電電極対の二つの電極の中点oを円心
とし、Rを有効測定半径として描かれた円の内部の領域であり、ここで、有効測定半径R
=(6~8)aである。
【0012】
さらに、電極対ABは、給電電極対とし、その有効測定円形領域における一つの測定電
極対MNが測定を一回完了した後に、MNが給電電極対とする時に、その有限測定円形領
域におけるABは、測定電位対として繰り返し測定をしない。
【0013】
電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法は、以下のようなステッ
プを含み、
ステップ1:観測システムの図面設計、
高解像度の衛星又は航空リモートセンシング画像を選んで、リモートセンシング画像に
おける測定領域の範囲にマークを付け、測定領域内にできるだけ測定点を均一に配置し、
且つ地表条件に応じて電極対の端点位置と方向を柔軟に選択し、各測定点に一つの電極対
を配置し、且つ各測定点にユニックな測定点識別子番号を付与し、すべての電極対の端点
位置座標と測定点番号を収集し且つ記録し、ここで、電極対の長さa=(1/3~1/2
)Hであり、Hは、設計された探査深さであり、
ステップ2:現場校正、
ステップ1で設計された測定点と電極対の端点位置に対して現場調査検出を行い、各測
定点の地表状況を検査し、リモートセンシング画像上に設計された測定点に対応する現場
状況が測定点配置条件を満たさなければ、測定点位置を調整し又は測定点をキャンセルし
、且つ測量機を採用してすべてのステップ2の校正を経た後の現場測定点の電極対の端点
位置座標と測定点番号を収集し、そして現場測定点に対応する電極対の位置に電極対番号
付きの明らかなマーカーを差し込み、
ステップ3:ステップ2で採集されたデータに基づいて観測システムをアップデートし
、測定点の番号に従い、観測システムにおける現在測定点における電極対を給電電極対と
し、各給電電極対の有効測定円形領域内の測定電極対シーケンスを順番に生成し、
前記有効測定円形領域は、現在測定点における給電電極対の二つの電極の中点oを円心
とし、Rを有効測定半径として描かれた円の内部の領域であり、ここで、有効測定半径R
=(6~8)aであり、
ステップ4:すべての測定点の給電をいずれも完了するまで、観測システムによって給
電電極対とそれに対応する測定電極対シーケンスを順に指定し、並行測定を行い、各グル
ープ給電-測定電極対の見掛け比抵抗を得、
ステップ5:測定プロセスで得られたすべての見掛け比抵抗に基づき、地下の検知ター
ゲットに対して反転結像を行う。
【0014】
さらに、前記ステップ4では、有効測定円形領域に基づいて各給電電極対の測定電極対
シーケンスを取得する時に、この測定電極対シーケンスにおいてこの給電電極対と給電-
測定ペアリング関係があった電極対が存在すれば、それを測定電極対シーケンスから削除
する。
【0015】
さらに、前記ステップ5で反転結像を行った後に、ある箇所における検知ターゲットの
分解能が設計要求を満たすことができなければ、検知ターゲットの周囲に電極対を補充し
、且つ新たに補われた電極対を給電電極対のみとし、その有効測定円形領域におけるすべ
ての他の電極対を測定電極対とし、ステップ3~ステップ5の方法を採用して補充探査測
定を行う。
【0016】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0017】
1.前提とする電極配置原則を予め設定せず、地表条件と検知深さ要求に応じて測定点
位置、ピッチと電極配置方向を柔軟に配置すればよく、ランダム分布電極の柔軟性を最大
限に発揮し、真の三次元探査を実現する。本発明の方法は、特に都市などの複雑な地表環
境条件での三次元探査需要に適切である。
【0018】
2.有効測定半径によって最適化拘束メカニズムを構築し、接近測定点を最適化して選
んで、無効又は繰り返し測定を回避し、測定によって信頼できるデータを得ることを確保
し且つデータ採集効率を最大限に向上させる。
【0019】
3.規範化のシステムスクロール設計は、スクロール測定領域の間のシームレス連結を
確保し、採集ステーションスクロール測定を簡単、整然、高効率にし、完全な測定領域の
連続測定を実現する。
【0020】
4.補充探査暗号化測定点プロセスは、より簡便で迅速であり、採集/処理一体化設計
によって、結像結果分解能を効果的に改良し、また採集効率を向上させ、補充探査作動を
より迅速で高効率にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ランダム双極子装置概略図である。
図2】本発明で用いられる現場観測システム図面設計の配置図である。
図3】本発明の観測システム設計と測定点スクロール方式概略図である。
図4】本発明のデータ採集方法のフローチャートである。
図5】本発明の補充探査最適化測定点の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面と好ましい実施例に基づいて本発明を詳細に記述し、本発明の目的と効
果は、より明らかになり、理解すべきこととして、ここで記述された具体的な実施例は、
ただ本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
【0023】
ランダム双極子装置(図1)は、最も一般的な状況での双極子電極配置方式であり、野
外複雑な地表条件での装置のいずれか配置により適応する。ランダム双極子の給電電極対
ABと測定電極対MNのそれぞれの長さ(双極子モーメントa)、AB中点oとMN中点
との間の距離(電極間距離L)及び測定点密度は、検知結果分解能と検知深さに重要
な影響を与え、観測システム設計の鍵になる。
【0024】
1.パラメータ設計
双極子モーメント:ランダム分散型システムの最大優位性は、現場地表条件に応じて電
極対の位置と配置方向を柔軟に配置することができることである。観測システムを設計す
る時に電極対ABとMNの長さ(双極子モーメントa)は、異なってもよいが、野外配置
する時に近似している長さを採用するようにアドバイスし、このようにシステム設計と施
工により有利である。電極対の長さと探査深さは、分解能に関連し、電極対長さが短いほ
ど、分解能が高くなるが、探査深さが小さくなる。a=(1/2~1/3)H(Hは、設
計された探査深さである)を採用して電極対の設計長さを考慮するようにアドバイスし、
例えば探査深さHが150mである時に、電極対の設計長さa=50mを考慮してもよい
【0025】
有効測定半径:機器の検知精度により制限され、双極子装置の電極間距離L(図1にお
けるooピッチ)が6~8倍の双極子モーメントa範囲以外に位置する時に、MNの測
定によって得られた電位差は、ノイズフロアレベルよりも低く、機器は、電位差を精確に
読み取り且つ真の見掛け比抵抗値を得ることに難しく、換言すれば、即ち電極間距離が8
倍の双極子モーメントよりも大きい時に、測定によって得られた見掛け比抵抗値は、信頼
度が比較的低い。そのため、各給電電極対中心oには、一つの有効測定半径Rは、存在し
、R=(6~8)*aであり、R半径の円内で設計されたMN電位測定点は、測定結果の
信頼性を最大限に保証することができる。双極子モーメントa=50mであれば、有効測
定半径R=400m(図3図5における輪における測定電極対は、いずれも給電点に対
応する信頼できる測定点である)である。
【0026】
これに基づき、本発明は、「有効測定円形領域」の概念を提案し、即ち各給電電極対A
Bの中心点oを円心とし、有効測定半径R(R=n*aであり、nは、一般的に6~8で
あり、現場試験結果に基づいて適切に調整することができる)で円を描いて一つの円形領
域を形成し、この円形領域内に設計されたMN電位測定点は、いずれも測定結果の信頼性
を保証することができる。有効測定円形領域は、本発明のコア概念であり、本発明の電極
のランダム分散型三次元高密度電気的方法観測方法とデータ採集方法は、いずれもこの有
効測定円形領域に基づいて広がっている。
【0027】
測定点密度:ランダム分散型システムは、電極対の配置位置と方向に対して特に要求を
有しないが、一つの測定領域においてできるだけ条件を作り出して均一に配置し、地下タ
ーゲットに対する均一な検知に有利である。双極子モーメントaを決定した後に、測定点
ピッチは、双極子モーメントaの1~4倍のほうがよく、近距離、中距離、遠距離でいず
れも一定数の測定点が分布することを確保する。
【0028】
以下では、上記の有効測定円形領域に基づいて広がっている電極のランダム分散型三次
元高密度電気的方法観測方法とデータ採集方法をそれぞれ紹介する。
【0029】
本発明の電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法観測方法は、
事前に設定された測定領域内にできるだけ測定点を均一に配置し、且つ地表条件に応じ
て電極対の端点位置と方向を柔軟に選択し、各測定点に一つの電極対を配置し、且つ各測
定点にユニックな測定点識別子番号を付与し、すべての電極対の端点位置座標と測定点番
号を収集し且つ記録するステップであって、電極対の長さa=(1/2~1/3)Hであ
り、Hは、設計された探査深さであるステップ(1)と、
すべての測定点の給電を完了するまで、測定点の番号に従い、給電所を各測定点に順に
移動し、現在測定点における電極対を給電電極対とし、現在測定点に対応する有効測定円
形領域内の電極対を測定電極対として測定し、測定領域全体のスクロール測定を完了する
ステップ(2)とを含み、
前記有効測定円形領域は、現在測定点における給電電極対の二つの電極の中点oを円心
とし、Rを有効測定半径として描かれた円の内部の領域であり、ここで、有効測定半径R
=(6~8)aである。
【0030】
本発明の電極のランダム分散型三次元高密度電気的方法データ採集方法について、具体
的なフローは、以下のとおりである。
【0031】
ステップ1:観測システムの図面設計、
最も新たな高解像度の衛星又は航空リモートセンシング画像を選択し、リモートセンシ
ング画像における測定領域の範囲にマークを付け、そして設計された双極子モーメントと
測定点密度に従い、測定領域内にできるだけ測定サイトと電極対の端点位置を均一に配置
する。電極対の方向は、地表配置条件(十分な双極子モーメント長さを確保する)及び良
好な接地条件(建物、硬い路面と河川などの障害物を避ける)により決められる。地表に
村、大型地上建物などの硬質地表が存在する時に、この領域を避け、その周りの領域に測
定点密度を増加させてもよい。そしてリモートセンシング画像上に縮尺通りに電極対を描
き、且つユニックな測定ステーション識別子番号を順に付与する。
【0032】
ステップ2:現場校正、
リモートセンシング画像をタイムリーにアップデートしないと、図における地表状況と
実際現場状況との不一致(特に都市の新開発領域である)をしばしば引き起こし、現場調
査検査を行う必要がある。各測定点の地表状況を検査する。設計された測定点現場が探査
施工条件を満たさなければ、現場条件に応じて測定点位置を調整するか又はこの測定点を
キャンセルするかを決める必要がある。そして修正結果をタイムリーで詳細に記録し且つ
観測システムをアップデートする。
【0033】
修正して確認された現場測定点に対し、GPSなどの測量機を採用して電極対の測定点
位置座標と番号を収集し、後続の採集方案の最適化設計に用いる。
【0034】
そして現場電極対の位置に電極対番号付きの明らかなマーカーを差し込み、後続のデー
タを採集する時のサイト測定点の探しを容易にする。
【0035】
ステップ3:データ採集及びその最適化
(1)先ずステップ2で採集されたデータに基づいて観測システムをアップデートする
【0036】
(2)計算して有効測定サイトセットを生成し、
各給電電極対ABについて、AB中点oを円心とし、有効測定半径Rで円を描き、円内
杭番号は、要求を満たす測定電極対セットである。具体的なプログラミング計算実現プロ
セスは、AB点座標に基づいて中点o座標(x、y)を計算し、次に他のすべての電
極対の中点o´座標(x、y)を計算し、公式(1)に基づいてoo´の間の距離L
を計算し、
(1)
L<Rの電極対が有効測定円形領域内に位置して要求を満たす測定ステーション点であ
り、これらの点が有効測定サイトセットを共に構成することである。説明すべきこととし
て、有効測定サイトセットは、ある選択された給電サイトに対するものであり、給電サイ
トが変わるにつれて、対応する測定サイトセットも変化し、給電サイトと測定サイトセッ
トは、一対多の関係が存在する。
【0037】
図3における杭番号の28番のサイトを例にし、杭番号の28番のサイトに給電する時
に、それに対応する有効測定サイトセットは、28番の電極対の中点を円心とし、R=4
00m(ここでa=50m、n=8とすると)を半径として円を描き、円における杭番号
3~7、13~15、18、25~30、36~41、47~50、58~61、66番
の電極対は、いずれも条件に合う、28番の給電電極対に対応する測定電極対セットであ
る。
【0038】
(3)有効測定サイトセットの最適化。
【0039】
電気的方法によって探査された給電点ABと測定点MN%は、互換性原理を満たし、即
ち給電ABと測定点MNの位置を互換する場合に、理想的な状況で測定によって得られた
見掛け比抵抗値は、等しい。互換性原理を利用し、最適化して繰り返し測定点の数を少な
くし、データ採集効率を向上させることができる。図3における3番と28番の電極対距
離は、有効測定半径R以下であり、3番の電極対を給電電極対ABとし、28番を測定電
極対MNとして測定を一回実行したことがあれば、互換性原理に基づき、28番を給電電
極対ABとし、3番を測定電極対MNとする測定結果が前述測定結果に等しいため、この
繰り返し測定操作をキャンセルしてもよい。有効測定半径の拘束によって採集作業量を大
幅に低減させることができ、互換性原理則によって採集プロセスをさらに最適化し、有効
採集円形領域における採集点をさらに少なくする(約半分少なくし、図3における円環に
おける灰色杭番号部分)。このようにデータ採集効率を向上させるだけでなく、3番の採
集ステーションを早くアイドルにし、配置すべき測定ステーションの新たなステーション
に移動して測定を待つ(測定ステーションスクロール)。
【0040】
(4)データ採集ブロックスクロール測定:分散型採集ステーション又は多チャンネル
機器システムを採用して三次元測定を行う時に、採集ステーションの個数又は機器システ
ムチャンネルの数により制限され、測定システムは、測定領域全体の完全覆いを一度で実
現することが不可能であり、複数のサブブロックに分けて一つずつ測定する必要がある。
サブブロックの間の連結、スティッチングは、終始に三次元高密度電気的方法観測システ
ム設計とデータ採集の技術難題であり、丹念に設計と施工して初めてデータを完全に連結
し且つ測定領域全体を覆うことを確保することができる。
【0041】
本発明は、採集ステーションスクロールプロセスに対して以下のような約定と操作を行
う。各採集ステーションは、機器システムにアクセスされた後にいずれも登録登記を行い
且つ測定点位置に従ってユニックな番号を設定し、システムは、有効測定円形領域の定義
及びデータの最適化後の結果に従って各給電電極に対応する測定電極対シーケンスを自動
的に計算し、給電所が次の番号に順に移動する時に、システムは、すべての条件に合う測
定ステーション及びその測定電極対がいずれもすでにシステムに正常にアクセスされたか
どうかを自動的に計算し且つ検索する。そうであれば、新たな給電と測定プロセスを開始
する。そうでなければ、システムは、警報して提示し、用いる必要がある測定採集ステー
ションがシステムにアクセスされていないように注意喚起し且つその位置と番号を表示し
、現場操作者は、測定領域全体の完全な覆いを完了するまで、提示に基づいて前のすでに
用いられた採集ステーションを後続の測定ステーションの位置に移動し、且つシステムに
アクセスし、新たな位置の採集ステーション番号を登録登記し、採集ステーションの数が
足りない時のスクロール測定を実現することができる。
【0042】
ランダム分散型システム設計と有効測定円形領域概念に基づく採集スクロールプロセス
操作は、大幅に簡略化される。スクロール操作の次の測定区間と前の一つの測定区間との
つながりと結合問題を設計、計算する必要がなく、給電所の番号順序に従い、給電所に対
応する有効測定円形領域におけるすべての測定ステーションの電位差を測定すればよく、
即ち一回の測定操作を完了し、そして番号順序に従って次の番号に移動して給電所とし、
この給電所に対応するすべての測定ステーションの電位差を採集し、一回のスクロール測
定を実現し、そして給電所が順に次にスクロールし、最後の点が完了すると、採集プロセ
スが終了し、測定領域全体のスクロール測定を完了する。スクロール期間において、シス
テム提示に基づいて給電がすでに完了された採集ステーションが配置すべきステーション
の測定点に移動、補充する操作を交互に行う。
【0043】
図4は、ランダム分散型高密度電気的方法観測システム設計とデータ採集プロセス最適
化の完全なフローを示す。検知ターゲットの探査深さと分解能要求に応じて双極子モーメ
ントaと有効測定半径Rを計算し、且つすべての電極対番号及びその位置情報を設計、収
集、整理する。各給電電極対番号に対応する測定電極対番号セットを計算且つ最適化して
生成する。採集プロセスにおいて、給電電極対は、小さい番号から番号順序に従って逓増
し、対応する測定電極対セットは、計算された番号順序に従い又は並行測定する。そして
番号逓増順序に従って次の番号を給電電極対として選択する。すべての測定点の給電を完
了するまで、上記給電測定プロセスを繰り返し、それによって測定領域全体のスクロール
測定を完了する。
【0044】
図3を例にし、ランダム分散型高密度電気的方法データ採集プロセス最適化と観測シス
テムスクロールプロセス実現原理を説明する。28番のサイトを給電電極対とすると、前
の1-27番の電極対は、有効測定半径以外にあり、この点測定プロセス(例えば1、2
、6などのサイト)に参加しないか、または給電/測定電極互換理論に基づき、すでに測
定を一回実行したことがあり且つABMNの四つの点の間の見掛け比抵抗値(例えば3、
4、5測定ステーション)を得るため、最適化後に番号28よりも小さい測定ステーショ
ンは、いずれも後続の測定プロセスに参加せず、且つこれらの測定ステーションの電極と
採集ステーションを移動して後続の他の空白サイトに補充してもよい。円における上半部
分29、30、36~41、47~50、58~61、68などの測定ステーションは、
採集を必要とする測定ステーションである。同様に、次の測定ステーション29番を測定
する時に、1-27番の番号以外、28番の番号を測定したこともあり、30~31、3
6~40、48~50、58~59などの番号を測定すればよい。スクロール測定全体は
、1番の測定ステーション給電から開始し、136番の測定ステーションの完了まで持続
して測定が終了し(137番の給電所に対応する測定ステーションがなく、考慮しない)
、測定全体を完了する。
【0045】
(5)測定プロセスで得られたすべての見掛け比抵抗に基づき、地下の検知ターゲット
に対して反転結像を行う。
【0046】
地表条件の制限又は地下ターゲット情報の欠乏によって、初期探査と詳細探査プロセス
における観測システムパラメータ設定は、常に様々な欠点と不足が存在し、地下ターゲッ
トの検知ターゲット結像分解能に短所があり、検知結果の解釈精度と正確性に影響を与え
、補充探査プロセスによって検知定点を補充して結像効果を改善する必要がある。
【0047】
(6)補充探査
鍵測定点配置:理論分析とモデル計算結果から分かるように、検知ターゲットに接近す
る領域に測定点を配置することは、ターゲット結像分解能の改善に対して比較的高い重み
係数を有する。そのため、すでに発見された「ファジー」ターゲットに対し、ターゲット
に隣接する領域に適量の測定点を補充することは、比較的良い選択である。本発明は、前
期測定成果を十分に利用し、補充採集方案を最適化し、ターゲット異常付近領域から適切
な位置を選んで測定点(給電測定ステーションのみとする)を補充し、この測定ステーシ
ョンを中心として新たな測定ステーションセット(もとの観測システムにおける測定ステ
ーション位置と番号)を生成し、且つ給電/測定によって一グループの新たな見掛け比抵
抗データセットを得る。そして次の新たな補充測定点に移動し、このプロセスを繰り返す
【0048】
図5は、補充探査測定点の関連測定プロセスを表示する。測定領域上部に一つの低抵抗
破砕帯(北東-南西方向)が存在するとすると、この破砕帯の結像分解能を向上させるた
めに、測定点A1~A4の四つの測定点を補充する必要がある。A1測定点に対する補充
測定プロセスは、A1を給電測定ステーションとし、R=400mで円を描き、円に含ま
れたもとの配置された測定サイトがいずれも測定すべき点であり、55、68~71、8
5~96、117~121と123番の測定ステーションを含むことである。A1測定ス
テーションが新たに補われた給電測定ステーションであり、上記測定ステーションと任意
の互換測定を行ったことがないため、補充測定する時に放棄された測定ステーションを最
適化する必要がない。他のすべての関連測定ステーションの間は、前の探査においていず
れもすでに給電/測定操作を実行したことがあり、繰り返し測定する必要がない。A2~
A4測定点も上記プロセスに従って補充探査測定を行う。本発明では、補充された測定ス
テーションを給電測定ステーションのみとし、もとの観測システムにおける測定ステーシ
ョンと組み合わせ測定を実現し、且つ既存の探査成果データを十分に利用し、補充探査測
定プロセスは、極めて簡単で高効率である。
【0049】
(7)採集/処理一体化:
補充探査のための測定点の配置は、依然として一定の盲目性と不決定性が存在し、室内
処理の後に測定点補充効果を承知し且つ測定ステーションを改めて配置する必要があるか
どうかを決定することができるようになれば、繰り返し配置、ステーションキャンセルは
、人力と時間コストの巨大な浪費をもたらす。そのため、野外データ採集が完了した後に
、現場コンピュータの性能(反転処理ソフトウェアがすでにインストールされた)を利用
し、データ処理と反転結像を即座に行い、結像結果に基づいて測定点補充位置を選択し、
新たな給電測定ステーションを配置するとともに、有効測定円形領域における他の測定採
集ステーションを補い、一回のステーション補充測定を完了する。上記プロセスを繰り返
して他の補充ステーションのステーション補充測定を完了する。次にステーション補充測
定データともとの測定データを統合し、反転処理を行い且つ分解能改良効果を分析する。
期待効果を達成すれば、補充探査測定を完了する。効果を達成しなければ、測定点補充、
補充探査->再反転を繰り返し続け、最もよい分解能になるまで持続する。
【0050】
このような現場採集/処理一体化は、作動周期を極めて短縮させ且つ作業負荷を大幅に
軽減させ(ステーション配置とステーションキャンセル作業量を少なくする)、作動効率
を極めて向上させる。
【0051】
当業者であれば、理解できるように、上述したようなものは、ただ発明の好ましい実例
であり、発明を限定するためのものではなく、前述実例を参照しながら発明を詳細に説明
したが、当業者にとって、彼らは、依然として前述各実例に記載の技術案を修正し、又は
そのうちの一部の技術的特徴に対して同等の置き換えを行うことができる。発明の精神と
原則において、行われたあらゆる修正、同等の置き換えなどは、いずれも発明の保護範囲
内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5