(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】温浴帽
(51)【国際特許分類】
A61H 33/06 20060101AFI20240819BHJP
A42B 1/04 20210101ALI20240819BHJP
A42B 1/12 20060101ALI20240819BHJP
A42B 1/22 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61H33/06 U
A42B1/04 A
A42B1/12 A
A42B1/22 C
A42B1/22 B
(21)【出願番号】P 2024085415
(22)【出願日】2024-05-27
【審査請求日】2024-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520406429
【氏名又は名称】合同会社シーワイズ
(74)【代理人】
【識別番号】110004174
【氏名又は名称】弁理士法人エピファニー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 春陽
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-266148(JP,A)
【文献】特開昭63-283642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0110542(US,A1)
【文献】登録実用新案第3159146(JP,U)
【文献】特開平08-070928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H33/06
A42B1/00-1/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タオル生地を筒状に形成した筒体と、
前記筒体の一方の端部に開口が形成された第1端部の周長を調節可能に構成された調節部と、を備え、
前記調節部は、
連結要素と、前記連結要素が係合する受容要素と、を備え、
前記連結要素と前記受容要素とは、
着脱可能に係合し、前記筒体の周方向において係合する位置を変更することにより、前記第1端部の周長を調節し、かつ、調節された前記第1端部の周長を係合により保持
し、
前記筒体は、
前記第1端部と当該筒体の他方の端部である第2端部との間に形成された中間部と、
前記中間部の前記第1端部寄りの部分に内側に突出した襞部と、を備える、
温浴帽。
【請求項2】
請求項
1に記載の温浴帽であって、
前記襞部は、
前記中間部を形成するタオル生地と連続したタオル生地により形成され、前記中間部の内面を一周するように設けられている、
温浴帽。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載の温浴帽であって、
前記襞部は、
前記筒体の中心軸を含む断面において、
前記中間部から内側に向かって延びる第1布地及び第2布地と、
前記第1布地及び前記第2布地の先端同士を接続する折返し部と、から構成されている、
温浴帽。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の温浴帽であって、
前記連結要素及び前記受容要素のうち何れか一方は、
前記筒体の外面側に突出して配置された帯状の構造体に設置され、
前記筒体に設置された他方と係合して前記筒体の外面に固定される、
温浴帽。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の温浴帽であって、
前記調節部として前記第1端部を一周するように通された帯を備え、
前記第1端部は、
前記中間部を形成するタオル生地の延長部分が折り返されて二重に重ねられた二重構造部と、
前記二重構造部の二重のタオル生地の内側の隙間と外部とを連通するスリットと、を備え、
前記帯は、
前記隙間内を移動可能に配置された中央部と、
一方の端部であり前記筒体に固定された固定側端部と、
前記スリットから前記筒体の外面側に引き出されている自由側端部と、を備え、
前記自由側端部は、
前記連結要素又は前記受容要素が設けられている、
温浴帽。
【請求項6】
タオル生地を筒状に形成した筒体と、
前記筒体の一方の端部に開口が形成された第1端部の周長を調節可能に構成された調節部と、を備え、
前記調節部は、
連結要素と、前記連結要素が係合する受容要素と、
前記第1端部を一周するように通された帯と、を備え、
前記連結要素と前記受容要素とは、
着脱可能に係合し、前記筒体の周方向において係合する位置を変更することにより、前記第1端部の周長を調節し、かつ、調節された前記第1端部の周長を係合により保持
し、
前記第1端部は、
前記第1端部と前記筒体の他方の端部である第2端部との間に形成された中間部を形成するタオル生地の延長部分が折り返されて二重に重ねられた二重構造部と、
前記二重構造部の二重のタオル生地の内側の隙間と外部とを連通するスリットと、を備え、
前記帯は、
前記隙間内を移動可能に配置された中央部と、
一方の端部であり前記筒体に固定された固定側端部と、
前記スリットから前記筒体の外面側に引き出されている自由側端部と、を備え、
前記自由側端部は、
前記連結要素又は前記受容要素が設けられている、
温浴帽。
【請求項7】
請求項1
、2、6の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記第2端部は、
開口が形成されており、
開口を拡縮可能に構成されている、
温浴帽。
【請求項8】
請求項7に記載の温浴帽であって、
前記第2端部は、
開口を一周するように通された紐により拡縮可能に構成され、
前記中間部を形成するタオル生地の延長部分が折り返されて二重に重ねられた紐用二重構造部と、
前記紐用二重構造部の二重のタオル生地の内側の隙間と外部とを連通する紐用スリットと、を備え、
前記紐は、
前記紐用二重構造部に挿通され、前記紐用スリットから端部が引き出されている、
温浴帽。
【請求項9】
請求項8に記載の温浴帽であって、
前記紐の端部は、
コードストッパーが取り付けられている、
温浴帽。
【請求項10】
請求項1
、2、6の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記筒体は、
パイルを備え、JIS-L1907に規定される沈降法において5秒以内となるタオル生地から構成された、
温浴帽。
【請求項11】
請求項10に記載の温浴帽であって、
前記筒体は、
バスケット法(大丸法)による吸水性評価において1分以内となるタオル生地から構成された、
温浴帽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タオル生地で構成された温浴帽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、使用者の頭部に被せるようにした保護帽子がある。このような従来技術によれば、サウナ入浴時の高温な周囲熱や放射熱により、髪の毛や頭部の皮膚がダメージを受けるのを軽減することができる。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている保護帽子では、使用者の頭に被せるように形成された帽子部を備えている。保護帽子は、帽子部が有底筒状に構成されており、帽子部の底部が使用者の頭頂側に、帽子部の開口部が顔面側に位置するようにして用いられる。このような保護帽子は、帽子部の開口側が使用者の頭の周長よりも大きく設定されており、様々な使用者の頭の大きさに対応して被れるように構成されている。また、帽子部は、開口部から底部に至るまでの長さが、保護帽子を被った状態で使用者の顔面が露出する程度の寸法で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている保護帽子は、帽子部の開口部が頭部の周長よりも大きく設定されているため、使用者の頭部にフィットしにくい、という課題があった。
【0006】
本発明の課題は、使用者の頭部にフィットする温浴帽を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る温浴帽は、タオル生地を筒状に形成した筒体と、前記筒体の一方の端部に開口が形成された第1端部の周長を調節可能に構成された調節部と、を備え、前記調節部は、連結要素と、前記連結要素が係合する受容要素と、を備え、前記連結要素と前記受容要素とは、着脱可能に係合し、前記筒体の周方向において係合する位置を変更することにより、前記第1端部の周長を調節し、かつ、調節された前記第1端部の周長を係合により保持するものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の手段によれば、第1端部の周長を調節部により調整でき、温浴施設において温浴帽の内部の湿潤した環境を保持できる。また、温浴帽の筒体がタオル地で構成されており、水分を十分に含むことができるため、温浴帽の内部は、タオル地からの水分により湿潤状態を長く保つ事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る温浴帽100の背面側から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る温浴帽100の正面側から見た斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示された温浴帽100を裏返した状態を示している。
【
図4】実施の形態1に係る温浴帽100の断面構造の模式図である。
【
図5】実施の形態1に係る温浴帽100の第1端部15のスリット17周辺の拡大図である。
【
図6】実施の形態1に係る温浴帽100を着用した状態の一例である。
【
図7】実施の形態1に係る温浴帽100のタオル生地90の断面構造の一例である。
【
図8】実施の形態1に係る温浴帽100の変形例の第2端部14のスリット19周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態が図面を参照して詳しく説明されている。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る温浴帽100の背面側から見た斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る温浴帽100の正面側から見た斜視図である。温浴帽100は、タオル地を筒状にした筒体10を備えるものであり、筒体10の一方の開口部10aを形成する第1端部15を顔面側に位置させ、筒体10の他方の開口部10bを形成する第2端部14を頭頂側に位置させて着用するものである。温浴帽100は、サウナ、風呂などの温浴施設内での使用を想定されたものであり、サウナハット又はサウナキャップとも呼ばれるが、サウナでの使用のみに限定されるものではない。
【0012】
第1端部15は、内部に帯30が通されており、帯30が開口部10aに沿って一周するように配置されている。帯30の自由側端部31及び固定側端部32は、第1端部15に設けられたスリット17から引き出されている。また、第2端部14は、内部に紐20が通されており、紐20が開口部10bに沿って一周するように配置されている。紐20は、端部21及び22が第2端部14に設けられたスリット19から引き出されている。
【0013】
温浴帽100は、使用者の頭部に装着され、帯30により開口部10aの周長を頭部の周長に合うように調節できる。また、温浴帽100は、使用者の頭部に装着され、筒体10の内部に頭髪を収容した状態で紐20を引っ張ることにより開口部10bを閉じることができる。これにより、温浴帽100の内部の空間は、外部の空間から略遮断され、外気の侵入を抑えることができ、温浴帽100の内部の空間の空気が外部に逃げるのを抑えることができる。
【0014】
(筒体10の構造)
次に筒体10の詳細構造を説明する。筒体10は、帯状のタオル地の両端を接続し、環状にして形成されたものである。筒体10を構成する帯状のタオル地は、重ねて縫い合わされ、例えばいわゆるロック割り縫い(割り伏せ縫い)で仕上げられている。中央の縫目13は、筒体10を形成する帯状のタオル地の接続部である。
【0015】
図3は、
図1及び
図2に示された温浴帽100を裏返した状態を示している。筒体10を構成する帯状のタオル地の両端部は、縫目13により接続されるが、縫目13から先端側の部分は折り返され、縫目13a及び13bのそれぞれにより固定されている。この構造により、筒体10は、内側に突出する構造が抑えられ、接続部の厚みも抑えられるため、頭部の装着感に障害を及ぼさないようになっている。なお、筒体10の接続部の構造は、袋縫い、折り伏せ縫いなどの他の方法により仕上げられていてもよい。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る温浴帽100の断面構造の模式図である。
図4は、
図2のA-A部の断面構造であり、筒体10の中心軸を含む断面の
図2の手前側にある筒体10の一部の断面構造を示すものである。
図4において、筒体10の左側は温浴帽100の外側の空間であり、右側が温浴帽100の内部の空間である。縫目13により筒状になったタオル生地の両端は開口が形成されている。その開口を形成するタオル生地の端は、筒体10を形成するタオル生地の延長部分15c又は14cが内側に折り返され、タオル生地が二重になった二重構造部が形成される。折り返されたタオル地の端は、縫目14a又は15aにより固定されている。折り返されたタオル地により二重になった部分は、第1端部15及び第2端部14になる。第1端部15及び第2端部14は、二重になったタオル地の隙間15b、14bが設けられ、それぞれ紐20又は帯30が通せるように形成されている。つまり、第1端部15は、帯30の挿通路である隙間15bを備え、第2端部14は、紐20の挿通路である隙間14bを備える。帯30及び紐20のそれぞれは、第1端部15又は第2端部14から引き出される量を調整することにより、開口部10a、10bの周長を調整できる。
【0017】
筒体10の第1端部15と第2端部14との間の部分であってタオル地が筒状に形成されている部分を中間部11と呼ぶ。中間部11、第1端部15及び第2端部14は、一枚のタオル地から構成されている。これにより、温浴帽100は、部品点数が少なく、強度も確保できるという利点がある。
【0018】
筒体10は、内側に突出した襞部16を備える。中間部11は、一枚のタオル生地が筒状に形成されたものであるが、中央より第1端部15寄りの部分に内側に突出する襞部16が形成されている。襞部16は、中間部11を構成するタオル生地と連続したタオル生地により形成されている。つまり、襞部16は、中間部11を構成するタオル生地の一部を折り曲げて形成されている。襞部16は、断面構造において、中間部11から内側に向かって延びる第1布地16b及び第2布地16cと、第1布地16b及び第2布地16cの先端同士を接続する折返し部16dと、から構成されている。襞部16は、筒体10の内側の一周に亘って設けられている。
【0019】
襞部16は、一体のタオル生地を二重に重ねた構造を有し、中間部11から内側に突出している。襞部16は、第1端部15の近傍に設けられている。温浴帽100が頭部に装着された状態において、第1端部15は、額付近に位置する。襞部16は、第1端部15の近傍の頭頂側の部分に位置する。そのため、襞部16は、頭部に接触しやすく、筒体10と頭部との間に生じる隙間を塞ぐように機能する。
【0020】
また、実施の形態1において、襞部16が中間部11から内側に突出する長さは、2cmの長さに設定されている。第1端部15側に先端を向けた状態において襞部16の先端は、第1端部15の縫い目15aから1cmの位置に配置される。第1端部15は、顔面側に向けて着用されるため、襞部16は、概ね額又は頭髪の生え際周辺に位置し、頭部と接触することにより、効率よく汗などの水分を吸着できる。
【0021】
(第1端部15)
図5は、実施の形態1に係る温浴帽100の第1端部15のスリット17周辺の拡大図である。第1端部15は、内部に帯30が一周するように通されている。帯30の中央部33は、第1端部15の内部の隙間15bを移動可能に配置されている。帯30の一方の端部である固定側端部32は、スリット17から引き出されており、折り返されて筒体10の表面に固定されている。固定側端部32には、面ファスナー38が設けられている。また、帯30の他方の端部である自由側端部31は、スリット17から引き出されており、先端部に面ファスナー39を備える。例えば、自由側端部31には面ファスナーのループ側が設置され、固定側端部32には面ファスナーのフック側が設置されている。
【0022】
面ファスナーのループ側及びフック側は、自由側端部31又は固定側端部32を互いに係合できる組み合わせになっていれば、自由側端部31又は固定側端部32の何れに設けられていても良い。また、固定側端部32に設けられている面ファスナー38は、必ずしも帯30上に設けられていなくとも良い。例えば、面ファスナー38は、筒体10の外面に直接固定されていても良い。なお、実施の形態1において帯30、面ファスナーが設けられた自由側端部31及び面ファスナーが設けられた固定側端部32(面ファスナー38が筒体10の外面に直接固定されている場合は、筒体10の面ファスナー38が固定されている部分)を併せて調節部と呼ぶ場合がある。また、面ファスナー38及び39の一方を連結要素と呼び、他方を受容要素と呼ぶ場合がある。調節部は、連結要素と受容要素とを着脱可能に係合することにより、第1端部15の開口の周長を調節可能にし、調節された周長に維持できるものである。連結要素又は受容要素は、相互に係合可能な形状を融資、筒体10の第1端部15の周方向において係合する位置を変更することにより、第1端部15の周長を調節するものである。
【0023】
なお、帯30は、第1端部15のサイズ調整のために使用されるものであるから、引っ張ったときの伸縮性が低いものが使用されるとよい。
【0024】
固定側端部32は、筒体10に固定されているが、第1端部15の内部を通された中央部33及び自由側端部31は、筒体10に固定されていないため、外に引っ張ることにより開口部10aを縮めることができる。帯30は、固定側端部32の一箇所で筒体10に固定されているため、帯30の中央部33は、隙間15bの内部を移動でき、開口部10aが縮むことによるタオル生地の偏りが生じないように調整することが可能である。この構造により、温浴帽100は、頭部の周長が異なる様々な使用者が着用することが可能となり、それぞれの使用者の頭部にちょうど良いサイズに調整することも可能となっている。
【0025】
なお、実施の形態1においては帯30の自由側端部31及び固定側端部32のそれぞれに面ファスナーが設けられているが、面ファスナーは他の留め具に変更することもできる。例えば、ボタン、フックなどに置き換えても良い。ボタンの場合、例えば自由側端部31に複数のボタン穴が形成されており、筒体10の外面に設けられたボタンとボタン穴とが係合することにより自由側端部31を筒体10の外面に固定できる。この場合、ボタン及びボタン穴が、連結要素及び受容要素に相当する。フックを用いた場合、自由側端部31にフックが引っかかる複数の穴が形成されており、筒体10の外面に設けられたフックを複数の穴の何れかに引っ掛けることにより、第1端部15の周長を調整してもよい。つまり、連結要素及び受容要素は、相互に係合可能な構造を備え、2つの部材を連結し、かつ、分離できるようにするものである。
【0026】
また、調節部は、上記で説明した帯30を、第1端部15を一周するように設置したものに限定されない。例えば、受容要素が設けられた短い帯の一端を筒体10の外面に固定し、筒体10の外面に短い帯が突出するように設けられ、その短い帯に設けられた受容要素を筒体10の外面に設けられた連結要素に係合させる構造であってもよい。つまり、一例として、筒体10の外面から突出した短い帯に面ファスナー39を設け、面ファスナー38を筒体10の外面に設け、面ファスナー38及び39を係合させて固定してもよい。この場合、短い帯を筒体10の周方向に引っ張り、面ファスナー39を面ファスナー38に係合させるが、このとき短い帯と筒体10の固定部分と筒体10の外面に設けられた面ファスナー38との間のタオル地が、周方向に折りたたまれることにより第1端部15の周長が調節されることになる。
【0027】
さらには、調節部は帯30を用いた構造でなくともよい。調節部は、筒体10の第1端部15に設置された連結要素及び受容要素を備え、連結要素及び受容要素係合することにより第1端部15の開口の周長が調整可能であればよい。例えば、筒体10にボタン穴を複数設け、ボタンを筒体10の表面に設け、ボタンとボタン穴とを係合させてもよい。
【0028】
また、第1端部15は、上記のようにサイズが調整可能になっており、頭部と筒体10との間に隙間が生じないように調整することができる。これにより、第1端部15側から内部に外部の空気が侵入するのを抑制することができる。だだし、第1端部15を頭部に密着するように縮めなくとも、筒体10の内面には襞部16が設けられているため、襞部16により外部の空気の侵入を防ぐことができる。
【0029】
(第2端部14)
第2端部14は、内部に紐20が一周するように通されている。紐20の端部21及び22は、スリット19から引き出されており、引っ張ることによって筒体10の開口部10bを閉じることができる。つまり、紐20は、第2端部14の開口部10bを拡縮できるものである。紐20は、中央部に筒体10との固定部23が設けられていても良い。紐20が中央部において筒体10と固定されていることにより、紐20が第2端部14から引き抜かれて外れることがないため、温浴帽100の使用時に開口部10bが閉じられない不具合を防止できる。
【0030】
以上のように、温浴帽100は、筒体10を備え、第1端部15を頭部の周長に合わせることができるとともに、第2端部14を閉じることができるため、例えば頭髪の長い使用者が頭髪をまとめて筒体10の内側に収め、第2端部14を閉じることにより、頭髪を含めた頭部全体を温浴帽で覆うことができる。特に、サウナの高温環境下においては、第1端部15及び第2端部14の両端からの外気の侵入を抑制ことができるため、頭部及び頭髪を高温から保護することができる。
【0031】
また、温浴帽100は、第1端部15及び第2端部14からの高温の外気の侵入を抑制するとともに、内部の空気の流出を抑制することができる。これにより、高温環境下においても、頭部及び頭髪が湿った状態を維持しやすいという利点がある。特に、温浴帽100は、吸水性の高いタオル生地により構成されており、使用時に水分を含み易く、高温環境下に長時間さらされていても湿った状態を維持しやすく、温浴帽100の内部にも水分を供給できるため、頭髪を湿潤状態に保ちやすい。
【0032】
なお、第2端部14は、開口部10bが設けられておらず、予め閉じられた構造であってもよい。つまり、筒体10は第2端部14が閉じられた、片側閉鎖筒、有底筒状、袋状であってもよい。第2端部14が予め閉じられていることにより第2端部14からの外気の侵入及び内部の空気の流出を抑制できる。
【0033】
また、サウナの利用者は、洗髪などを行った後にサウナに入る場合がある。洗髪時にトリートメントを頭髪に塗布し、ある程度の時間放置することにより、トリートメントの成分が頭髪に浸透する。温浴帽100は、トリートメントを塗布した状態の頭髪を完全に覆うことができ、かつ湿潤状態に保持することができるため、洗髪後のサウナ浴に適している。また、温浴帽100は、水分を含み易いため、サウナ内の高温環境下においては、いわゆる蒸しタオルのような状態になっており、頭髪を保護するだけでなく、頭髪の状態を向上させることもできる。
【0034】
また、先行特許文献特開2001-340419号公報をみてもわかるように、従来の温浴帽は、サウナ内で頭部への熱の影響を抑えるために使用されるものであり、少なくとも頭部を覆う部分がフェルト生地又はデニム地などの吸水性の比較的低い生地で構成されている。これは、サウナ内で急速に水分が蒸発することにより頭髪が痛むため、サウナに入る前から頭髪を乾かした状態を維持し続けるように、従来の温浴帽は水分を含みにくい速乾性の生地で構成されているものである。しかし、実施の形態1に係る温浴帽100は、極力隙間なく頭部を覆うような構造にし、温浴帽100の内部の水分をなるべく蒸発しにくい状態に維持できるだけでなく、比較的吸水性の高いタオル生地で構成されていることにより、サウナ内での高熱環境下においても頭部及び頭髪の水分を維持できるものである。さらには、温浴帽100は、水分を含んだ状態で使用することを想定しているものであるから、サウナと併設されている湯船に浸かる際にも使用でき、例えばサウナと温泉が併設されたような温浴施設においても着用したまま活動できるという利点がある。
【0035】
図6は、実施の形態1に係る温浴帽100を着用した状態の一例である。温浴帽100は、第1端部15の周長を調整できるだけでなく、内部に襞部16を備えるため、襞部16により温浴帽100の内側の空間を外部から略遮断できる。そのため、第1端部15を頭部にきつく密着させなくても温浴帽100の内部の空間が外部の環境の影響を受けるのを抑制できる。例えば
図6に示す状態においては、第1端部15と使用者の額の間には若干の隙間があるように着用されている。しかし、襞部16は、内側に突出して設けられており、温浴帽100の着用時に頭部及び額に接触した状態になるため、汗が頭部から顔面に流下するのを抑制する効果も得られる。
【0036】
(温浴帽100を構成するタオル生地について)
温浴帽100を構成するタオル生地は、サウナ内の高温環境において温浴帽100の内側を湿潤状態に保ちつつ、汗を吸収できるものである。したがって、タオル生地は、吸水性の高い構造を有することが望ましい。
【0037】
図7は、実施の形態1に係る温浴帽100のタオル生地90の断面構造の一例である。温浴帽100に使用されるタオル生地90は、パイル93を備える。パイル93は、緯糸(横糸)91又は経糸(縦糸)92の間に緩めた状態の糸を通し、先端が輪になるように構成されている。パイル93は、タオル生地90の両面に形成されており、吸水性が高い構造になっている。
【0038】
温浴帽100に使用されるタオル生地90としては、パイル長が10mm以上のものが望ましい。例えば、タオル生地90は、パイル長が12mmであり、パイル93がサイロ調糸精紡交撚糸(サイロスパン糸)で実質的に14番手の太さになるように構成されている。つまり、パイル93は、28番手の短繊維の糸を2本組み合わせて14番手の太さになるように構成されている。また、タオル生地90の経糸92は、例えば30番手の糸を2本より合わせて15番手の太さにした糸で構成されている。また、緯糸91は、16番手の糸で構成されている。ただし、各糸の構成はこれだけに限定されるものではない。パイル93は、例えば24番手~32番手の範囲内の糸を組み合わせた実質的に12番手~16番手の範囲内の太さの糸で構成されていてもよい。経糸92は、12番手~18番手の範囲内の糸であってもよく、1本の糸で構成されていてもよいし、2本の糸を組み合わせて構成されていても良い。緯糸91は、14番手~18番手の範囲内の糸であってもよい。上記の各糸の構成は一例であり、タオル生地90は、緯糸91、経糸92及びパイル93の構成の組み合わせ方によって、上記に示した範囲外の番手の糸を用いるのを除外するものではない。また、温浴帽100に使用されるタオル生地90は、パイル93の密度が1インチあたり40本~48本となるように構成されている。例えば、タオル生地90は、パイル93がパイル長12mmで1インチあたり44本設けられている。パイル密度は、緯糸91、経糸92及びパイル93の各糸の構成に応じて上記に示した範囲外の設定を除外するものではない。
【0039】
また、タオル生地90は、天然植物繊維を使用することにより吸水性を高めている。天然植物繊維は、セルロース系繊維であり、特に綿(木綿)が挙げられる。また、セルロース系繊維は、天然セルロースを所定の溶剤で溶解した後に繊維状に成形して得られた、いわゆる再生繊維であってもよい。
【0040】
温浴帽100に使用されるタオル生地90は、繊維製品の吸水性試験方法(JIS-L1907)に規定される沈降法により吸水性について評価された。具体的には、タオル生地90の10mm×10mmの試験片を3枚採取する。次に、試験片の測定面を下向きにして,水を入れた水槽中に浮かべた後,試験片が湿潤して水中に沈降し始めるまでの時間をストップウォッチで1秒単位まで測定した。温浴帽100に使用されるタオル生地90は、上記の沈降法の試験により5秒以内のものが望ましい。
【0041】
温浴帽100に使用されるタオル生地90としては、沈降法において5秒を超える吸水性の低いものを使用した場合、頭髪の水分及び汗を吸収しきれず、サウナ内での使用時に顔面に汗が滴り落ち、使用者に不快感が生じる場合がある。
【0042】
一方、温浴帽100に使用されるタオル生地90としては、吸水性の高いものを使用した場合、頭髪の水分を速く吸収してしまうため、サウナ内で頭髪が乾燥してしまうおそれがある。この場合、温浴帽100に予め水分を多く含ませることにより、頭髪の乾燥を回避することもできる。
【0043】
さらに、温浴帽100に使用されるタオル生地90は、バスケット法(大丸法)による試験により1分以内のものが望ましい。バスケット法(大丸法)は、ロール状の試料を試験カゴの中に入れて水に浮かべ、試験カゴが完全に水面下に沈むまでの時間を測定するものである。バスケット法(大丸法)において1分以内のタオル生地を使用することによって、温浴帽100は、タオル生地90が多くの水分を抱え込むことができるため、サウナ内での乾燥が抑えられ、頭髪の保護に適している。
【0044】
温浴帽100に使用されるタオル生地90は、繊維材が損傷しておらず吸水性及び保水性に優れるものが望ましい。
【0045】
温浴帽100に使用されるタオル生地90は、消臭性及び抗菌性が付加されたものが望ましい。特に、温浴帽100のように、サウナにおいて着用される場合、使用後に湿った状態でしばらく放置される場合がある。温浴帽100は、吸水性が高い生地により構成されているため、洗濯するまでの間に水分が保持されやすく、用途上、汗などの成分が含まれた状態に放置される場合がある。したがって、温浴帽100は、消臭性及び抗菌性が付加されたタオル生地を使用することにより清潔に繰り返しの使用にも耐えられる。
【0046】
(変形例)
図8は、実施の形態1に係る温浴帽100の変形例の第2端部14のスリット19周辺の拡大図である。温浴帽100は、第2端部14のスリット19から引き出された紐20の端部21及び22にコードストッパー24が取り付けられていても良い。温浴帽100の第2端部14は、紐20の端部21及び22を引っ張ることにより絞られ、開口部10bを閉じることができるが、温浴帽100を構成するタオル生地が比較的厚いため、閉じた際に自然に開いてしまう場合がある。コードストッパー24は、スプリング機構を有しており、穴24a及び穴25bに通した紐20の端部21及び22を固定できる。温浴帽100の開口部10bを絞った状態で、紐20上のコードストッパー24をスリット19の至近まで移動させ固定することにより、温浴帽100は、開口部10bを絞った状態に維持することが可能となる。温浴帽100は、コードストッパー24が設けられていない状態でも、紐20の端部21、22同士を結ぶことにより、開口部10bを絞った状態を維持できるが、コードストッパー24を設けることにより簡易に開口部10bを絞った状態を維持できる。
【0047】
以上に本発明を各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。上記の実施の形態において説明された各機能は、組み合わせて実施される場合もある。いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【0048】
また、上記に説明した温浴帽100は、以下の付記1~11に示す各特徴の組み合わせも含み得るものである。その組み合わせについて下記に示す。
[付記1]
タオル生地を筒状に形成した筒体と、
前記筒体の一方の端部に開口が形成された第1端部の周長を調節可能に構成された調節部と、を備え、
前記調節部は、
連結要素と、前記連結要素が係合する受容要素と、を備え、
前記連結要素と前記受容要素とは、
着脱可能に係合し、前記筒体の周方向において係合する位置を変更することにより、前記第1端部の周長を調節し、かつ、調節された前記第1端部の周長を係合により保持する、
温浴帽。
[付記2]
付記1に記載の温浴帽であって、
前記筒体は、
前記第1端部と他方の端部である第2端部との間に形成された中間部を備え、
前記筒体は、
前記中間部の前記第1端部寄りの部分に内側に突出した襞部を更に備える、
温浴帽。
[付記3]
付記2に記載の温浴帽であって、
前記襞部は、
前記中間部を形成するタオル生地と連続したタオル生地により形成され、前記中間部の内面を一周するように設けられている、
温浴帽。
[付記4]
付記2又は3に記載の温浴帽であって、
前記襞部は、
前記筒体の中心軸を含む断面において、
前記中間部から内側に向かって延びる第1布地及び第2布地と、
前記第1布地及び前記第2布地の先端同士を接続する折返し部と、から構成されている、
温浴帽。
[付記5]
付記1~4の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記連結要素及び前記受容要素のうち何れか一方は、
前記筒体の外面側に突出して配置された帯状の構造体に設置され、
前記筒体に設置された他方と係合して前記筒体の外面に固定される、
温浴帽。
[付記6]
付記1~5の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記調節部として前記第1端部を一周するように通された帯を備え、
前記第1端部は、
前記第1端部と他方の端部である第2端部との間に形成された中間部を形成するタオル生地の延長部分が折り返されて二重に重ねられた二重構造部と、
前記二重構造部の二重のタオル生地の内側の隙間と外部とを連通するスリットと、を備え、
前記帯は、
前記隙間内を移動可能に配置された中央部と、
一方の端部であり前記筒体に固定された固定側端部と、
前記スリットから前記筒体の外面側に引き出されている自由側端部と、を備え、
前記自由側端部は、
前記連結要素又は前記受容要素が設けられている、
温浴帽。
[付記7]
付記1~6の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記筒体の他方の端部である第2端部は、
開口が形成されており、
開口を拡縮可能に構成されている、
温浴帽。
[付記8]
付記7に記載の温浴帽であって、
前記第2端部は、
開口を一周するように通された紐により拡縮可能に構成され、
前記第1端部との間に形成された中間部を形成するタオル生地の延長部分が折り返されて二重に重ねられた紐用二重構造部と、
前記紐用二重構造部の二重のタオル生地の内側の隙間と外部とを連通する紐用スリットと、を備え、
前記紐は、
前記紐用二重構造部に挿通され、前記紐用スリットから端部が引き出されている、
温浴帽。
[付記9]
付記8に記載の温浴帽であって、
前記紐の端部は、
コードストッパーが取り付けられている、
温浴帽。
[付記10]
付記1~9の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記筒体は、
パイルを備え、JIS-L1907に規定される沈降法において5秒以内となるタオル生地から構成された、
温浴帽。
[付記11]
付記1~10の何れか1項に記載の温浴帽であって、
前記筒体は、
バスケット法(大丸法)による吸水性評価において1分以内となるタオル生地から構成された、
温浴帽。
【符号の説明】
【0049】
10 :筒体
10a :開口部
10b :開口部
11 :中間部
13 :縫目
13a :縫目
14 :第2端部
14a :縫目
14b :隙間
15 :第1端部
15b :隙間
16 :襞部
16b :第1布地
16c :第2布地
16d :折返し部
17 :スリット
19 :スリット
20 :紐
21 :端部
22 :端部
23 :固定部
30 :帯
31 :自由側端部
32 :固定側端部
33 :中央部
38 :面ファスナー
39 :面ファスナー
90 :タオル生地
91 :緯糸(横糸)
92 :経糸(縦糸)
93 :パイル
100 :温浴帽
【要約】
【課題】
使用者の頭部にフィットする温浴帽を提供することである。
【解決手段】温浴帽は、タオル生地を筒状にして形成された筒体と、筒体の一方の端部であり開口が形成された第1端部の周長を調節可能に構成された調節部と、を備え、調節部は、連結要素と、連結要素が係合する受容要素と、を備え、連結要素と受容要素とは、着脱可能に係合し、筒体の周方向において係合する位置を変更することにより、第1端部の周長を調節し、かつ、調節された第1端部の周長を係合により保持するものである。
【選択図】
図1