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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】固形状毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20240819BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240819BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/81
A61Q5/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158717
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052366
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 範子
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド イクバル
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06312676(US,B1)
【文献】特開2018-095603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aと、下記成分Bと、下記成分Cと、下記成分Dと、下記成分Eとを含み、
前記成分Aの含有量が2.0質量%以上、20.0質量%以下であり、
前記成分Bの含有量が0.5質量%以上、15.0質量%以下であり、
前記成分Cの含有量が3.0質量%以上、40.0質量%以下であり、
前記成分Dの含有量が35.0質量%以上、90.0質量%以下であり、
前記成分Eの含有量が0.05質量%以上、5.0質量%以下であり、
前記成分D100質量%中、下記成分D1の含有量が15.0質量%以上である、固形状毛髪化粧料組成物。
成分A:脂肪酸塩
成分B:皮膜形成ポリマー
成分C:水
成分D:下記成分D1、又は、下記成分D1及び下記成分D2
成分D1:多価アルコール
成分D2:炭素数が1以上、4以下である1価アルコール
成分E:炭素数が12以上、22以下である1価アルコール
【請求項2】
前記成分D1が、下記成分D11を含む、請求項1に記載の固形状毛髪化粧料組成物。 成分D11:グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる多価アルコール
【請求項3】
下記成分Fを含む、請求項1又は2に記載の固形状毛髪化粧料組成物。
成分F:無機塩
【請求項4】
下記成分Gを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の固形状毛髪化粧料組成物。
成分G:粉体
【請求項5】
スティック状である、請求項1~のいずれか1項に記載の固形状毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に塗布されて用いられる固形状毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形状、液状、ジェル状及びグリース状等の様々な性状の毛髪化粧料組成物が用いられている。性状が異なる毛髪化粧料組成物では、異なる組成設計が行われている。これらの中でも、ヘアスティックなどの固形状の毛髪化粧料組成物(固形状毛髪化粧料組成物)は、毛髪化粧料組成物を手に取ることなく、髪に塗布することができ、使用性に優れる。
【0003】
従来、このような固形状毛髪化粧料組成物としては、固形ワックス又は固形油分と液状油分とを含み、水性成分を全く含まないか又はほとんど含まない、油性の毛髪化粧料組成物が用いられている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、カルナウバワックスを含む油性固形化粧料が開示されている。上記カルナウバワックスは、鹸化価が45以上65以下であり、酸価が0以上0.8以下であり、融点が78℃以上82℃以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-100975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のような油性の固形状毛髪化粧料組成物は、油性原料特有のべたつき及び見た目のぎらつきが生じ、また、洗髪時に洗い落ちが悪いといった欠点を有する。
【0007】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、水及び水性原料を主体とした固形状毛髪化粧料組成物を鋭意検討した。固形状毛髪化粧料組成物では、スティック状などの形状を形成しかつその形状を維持するための硬さを有することと、毛髪への塗布性が高いこととの両立が重要である。
【0008】
本発明の目的は、水及び水性原料を主体とした水性の組成物であるにもかかわらず、良好な硬さを有し、かつ塗布性を高めることができる固形状毛髪化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)と、下記成分(D)とを含み、前記成分(A)の含有量が2.0質量%以上、20.0質量%以下であり、前記成分(B)の含有量が0.5質量%以上、15.0質量%以下であり、前記成分(C)の含有量が3.0質量%以上、40.0質量%以下であり、前記成分(D)の含有量が35.0質量%以上、90.0質量%以下であり、前記成分(D)100質量%中、下記成分(D1)の含有量が15.0質量%以上である、固形状毛髪化粧料組成物を提供する。
【0010】
成分(A):脂肪酸塩
成分(B):皮膜形成ポリマー
成分(C):水
成分(D):下記成分(D1)、又は、下記成分(D1)及び下記成分(D2)
成分(D1):多価アルコール
成分(D2):炭素数が1以上、4以下である1価アルコール
【0011】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、前記成分(D1)が、下記成分(D11)を含むことが好ましい。
【0012】
成分(D11):グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる多価アルコール
【0013】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、下記成分(E)を含むことが好ましい。
【0014】
成分(E):炭素数が12以上、22以下である1価アルコール
【0015】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、下記成分(F)を含むことが好ましい。
【0016】
成分(F):無機塩
【0017】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、下記成分(G)を含むことが好ましい。
【0018】
成分(G):粉体
【0019】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、スティック状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、水及び水性原料を主体とした水性の組成物であるにもかかわらず、良好な硬さを有し、かつ塗布性及び整髪力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、「脂肪酸塩」と、「皮膜形成ポリマー」と、「水」と、「多価アルコール、又は、多価アルコール及び炭素数が1以上、4以下である1価アルコール」とを含む。
【0023】
本明細書においては、上記「固形状毛髪化粧料組成物」を、「毛髪化粧料組成物」と略記する場合がある。
【0024】
本明細書においては、上記「脂肪酸塩」を「成分(A)」と称する場合がある。
【0025】
本明細書においては、上記「皮膜形成ポリマー」を「成分(B)」と称する場合がある。
【0026】
本明細書においては、上記「水」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0027】
本明細書においては、上記「多価アルコール、又は、多価アルコール及び炭素数が1以上、4以下である1価アルコール」を「成分(D)」と称する場合がある。
【0028】
本明細書においては、上記「多価アルコール」を「成分(D1)」と称する場合がある。
【0029】
本明細書においては、上記「炭素数が1以上、4以下である1価アルコール」を「成分(D2)」と称する場合がある。
【0030】
本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)と、成分(D)とを含む。本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(D)として、成分(D1)を含むか、又は、成分(D1)と成分(D2)との双方を含む。本発明の毛髪化粧料組成物では、成分(A)の含有量が2.0質量%以上、20.0質量%以下であり、成分(B)の含有量が0.5質量%以上、15.0質量%以下であり、成分(C)の含有量が3.0質量%以上、40.0質量%以下であり、成分(D)の含有量が35.0質量%以上、90.0質量%以下である。本発明の毛髪化粧料組成物では、成分(D)100質量%中、成分(D1)の含有量が15.0質量%以上である。
【0031】
本発明の毛髪化粧料組成物では、上記の構成が備えられているので、水及び水性原料を主体とした水性の組成物であるにもかかわらず、良好な硬さを有し、かつ塗布性を高めることができる。本発明の毛髪化粧料組成物は、良好な硬さを有するため、例えば、スティック状に成形することができる。このため、本発明の毛髪化粧料組成物では、毛髪化粧料組成物を容器から手で取ることなく、毛髪にそのまま塗布して使用することができる。また、本発明の毛髪化粧料組成物は、塗布時の抵抗が小さく、かつ組成物にもろさがほとんどないため、良好な塗布性を有する。このため、本発明の毛髪化粧料組成物では、毛髪へ塗布したときに、該毛髪化粧料組成物を毛髪へ良好かつ均一に移行させることができる。
【0032】
また、本発明の毛髪化粧料組成物では、整髪性を高めることができる。
【0033】
さらに、本発明の毛髪化粧料組成物では、油性の固形状毛髪化粧料組成物とは異なり、塗布後の毛髪のべたつき及びぎらつきを抑えることができ、また、洗髪時に毛髪化粧料組成物を容易に洗い流すことができる。
【0034】
本発明の毛髪化粧料組成物は、さらに、炭素数が12以上、22以下である1価アルコールを含んでいてもよい。
【0035】
本明細書においては、上記「炭素数が12以上、22以下である1価アルコール」を「成分(E)」と称する場合がある。
【0036】
本発明の毛髪化粧料組成物は、さらに、無機塩を含んでいてもよい。
【0037】
本明細書においては、上記「無機塩」を「成分(F)」と称する場合がある。
【0038】
本発明の毛髪化粧料組成物は、さらに、粉体を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書においては、上記「粉体」を「成分(G)」と称する場合がある。
【0040】
上記のように、本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)とを少なくとも含む。本発明の毛髪化粧料組成物は、さらに、成分(E)を含んでいてもよく、成分(F)を含んでいてもよく、成分(G)を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(A)~(G)以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0042】
上記の成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、成分(G)や他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0043】
以下、本発明の毛髪化粧料組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0044】
(成分(A))
成分(A)は、脂肪酸塩である。成分(A)は、固化剤として機能する。成分(A)を用いることにより、毛髪化粧料組成物に硬さが付与され、毛髪化粧料組成物の性状を固形状とすることができる。また、成分(A)を用いることにより、洗髪時に毛髪化粧料組成物を容易に洗い流すことができる。成分(A)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
成分(A)を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
【0046】
成分(A)を構成する脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエレオステアリン酸等が挙げられる。
【0047】
成分(A)を構成する脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸であることが好ましく、ステアリン酸であることがより好ましい。この場合には、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができる。
【0048】
成分(A)を構成する脂肪酸の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。成分(A)を構成する脂肪酸の炭素数が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができる。
【0049】
脂肪酸とアルカリ剤とを混合して脂肪酸塩(成分(A))を得た後に、該成分(A)と成分(A)以外の成分とを混合することにより、固形状毛髪化粧料組成物を得てもよい。また、例えば、成分(A)以外の成分を含む混合液中に、脂肪酸とアルカリ剤とを配合して、成分(A)を含む固形状毛髪化粧料組成物を得てもよい。なお、脂肪酸塩は、脂肪酸石鹸とも呼ばれる。
【0050】
アルカリ剤は、中和剤として用いることができる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等の無機アルカリ;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、イソプロパノールアミン、モルホリン及びアルギニン等の有機アルカリ等が挙げられる。入手が容易であり、かつ取り扱い性に優れるので、アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はトリエタノールアミンであることが好ましい。
【0051】
毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にする観点からは、成分(A)は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。
【0052】
上記脂肪酸金属塩としては、脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸カリウム塩、脂肪酸マグネシウム塩、脂肪酸カルシウム塩、及び脂肪酸バリウム塩等が挙げられる。成分(A)は、ステアリン酸金属塩であることがより好ましく、ステアリン酸ナトリウム又はステアリン酸カリウムであることが更に好ましい。
【0053】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、2.0質量%以上、20.0質量%以下である。成分(A)の含有量が2.0質量%未満であると、毛髪化粧料組成物が軟らかくなったり、固化しにくかったりすることがある。このため、毛髪化粧料組成物を固形状とすることができなかったり、毛髪化粧料組成物が良好な硬さを有さず、曲がりやすくなったり、折れやすくなったりすることがある。成分(A)の含有量が20.0質量%を超えると、毛髪化粧料組成物が硬くなりすぎ、該毛髪化粧料組成物を毛髪へ塗布しても、該毛髪化粧料組成物が毛髪へ移行しにくいことがある。
【0054】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(A)の含有量は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下である。成分(A)の含有量が上記下限以上であると、毛髪化粧料組成物をより一層良好に固化させることができる。成分(A)の含有量が上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができ、該毛髪化粧料組成物を毛髪へ塗布したときに、該毛髪化粧料組成物を毛髪へ良好に移行させることができる。
【0055】
(成分(B))
成分(B)は、皮膜形成ポリマーである。成分(B)は、整髪成分として機能する。成分(B)を用いることにより、塗布後の毛髪に皮膜を良好に形成させることができる。このため、整髪力を高めることができ、例えば、毛髪を所望の方向に曲げてくせ付ける特性、毛髪を立ち上げる特性、毛髪をタイトにまとめる特性などを高めることができる。成分(B)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
成分(B)としては、アニオン性皮膜形成ポリマー、カチオン性皮膜形成ポリマー、両性皮膜形成ポリマー、及びノニオン性皮膜形成ポリマー等が挙げられる。
【0057】
上記アニオン性皮膜形成ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマー、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロリルアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(スチレン/アクリル酸アルキル)共重合体、(スチレン/アクリル酸アミド)共重合体、ウレタン-アクリル系共重合体、及びポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」との双方を意味する。
【0058】
上記カチオン性皮膜形成ポリマーとしては、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、及び(ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体等が挙げられる。
【0059】
上記両性皮膜形成ポリマーとしては、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N,Nジメチル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)アミン=N-オキシド・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、及び(イソブチレン/ジエチルアミノプロピルマレイミド/マレイン酸)共重合体等が挙げられる。
【0060】
上記ノニオン性皮膜形成ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体及びポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0061】
整髪力をより一層高める観点からは、成分(B)は、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩及び/又はビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0062】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、0.5質量%以上、15.0質量%以下である。成分(B)の含有量が0.5質量%未満であると、整髪力が低下することがある。成分(B)の含有量が15.0質量%を超えると、塗布時に成分(B)が析出するなどして塗布性が低下することがある。また、成分(B)の含有量が15.0質量%を超えると、整髪後にフレーキングが生じることがある。
【0063】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(B)の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。成分(B)の含有量が上記下限以上であると、整髪力をより一層高めることができる。成分(B)の含有量が上記上限以下であると、製剤安定性及び塗布性をより一層高めることができ、また、整髪後のフレーキングの発生を効果的に抑えることができる。
【0064】
(成分(C))
成分(C)は、水である。成分(C)を用いることにより、成分(A)を良好に溶解させることができ、かつ溶解後に冷却等することにより成分(A)を析出させて、毛髪化粧料組成物の性状を固形状とすることができる。
【0065】
成分(C)は、精製水であることが好ましい。
【0066】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(C)の含有量は3.0質量%以上、40.0質量%以下である。成分(C)の含有量が3.0質量%未満であると、成分(A)を充分に溶解させることができないことがある。成分(C)の含有量が40.0質量%を超えると、毛髪化粧料組成物が固化しにくいことがある。このため、毛髪化粧料組成物を固形状とすることができなかったり、固形状毛髪化粧料組成物が良好な硬さを有さず、曲がりやすくなったり、折れやすくなったりすることがある。また、成分(C)の含有量が40.0質量%を超えると、塗布性が低下することがある。
【0067】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(C)の含有量は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、好ましくは37.0質量%以下、より好ましくは35.0質量%以下である。成分(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができる。
【0068】
(成分(D))
成分(D)は、多価アルコール(成分(D1))、又は、成分(D1)及び炭素数が1以上、4以下である1価アルコール(成分(D2))である。すなわち、成分(D)は、成分(D1)であるか、又は、成分(D1)と成分(D2)との混合物である。本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(D)として、成分(D1)のみを含んでいてもよく、成分(D1)と成分(D2)との双方を含んでいてもよい。本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(D2)を含まなくてもよい。成分(D)は、成分(A)の貧溶媒である。成分(D)を用いることにより、成分(A)の全溶媒中における飽和溶解度を低下させ、成分(A)が析出しやすくなり、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができる。また、成分(D)を用いることにより、塗布時に毛髪化粧料組成物が毛髪へ移行しやすくなり、塗布性を高めることができる。なお、成分(D)を用いず、かつ成分(A)~成分(C)を用いて良好な硬さを有する毛髪化粧料組成物を調製しようとすると、塗布時に毛髪化粧料組成物が毛髪に移行しにくくなり、塗布性が低下する。これは、毛髪化粧料組成物が破断しにくくなる(ねばりが強くなりすぎる)ためと考えられる。成分(D)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
<成分(D1)>
成分(D1)は、多価アルコールである。成分(D1)を用いることにより、毛髪化粧料組成物のもろさが抑えられ、塗布性が向上する。これは、毛髪化粧料組成物中での成分(A)の結晶サイズが適度に細かくなるためであると推定される。また、成分(D1)を用いることにより、塗布時のフレーキングを抑えることができ、さらに、整髪力も向上する。なお、成分(D)として、成分(D1)を用いない場合には、毛髪化粧料組成物がもろくなりすぎ、塗布時に組成物が塊で毛髪に付着しやすくなり、均一に塗布できないことがある。成分(D1)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
成分(D1)としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリエチレングリコール、及び糖アルコール等が挙げられる。
【0071】
上記ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下である。上記数平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができる。上記ポリエチレングリコールの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0072】
上記糖アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、グリコシルトレハロース及びトレハロース等が挙げられる。
【0073】
毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にする観点及び塗布性をより一層高める観点からは、成分(D1)は、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる多価アルコール(少なくとも1の多価アルコール)を含むことが好ましい。
【0074】
本明細書において、上記「グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる多価アルコール」を「成分(D11)」と称する場合がある。
【0075】
したがって、成分(D1)は、成分(D11)を含むことが好ましい。本発明の毛髪化粧料組成物は、成分(D11)を含むことが好ましい。
【0076】
塗布性を高める観点から、成分(D)100質量%中、成分(D1)の含有量は15.0質量%以上である。
【0077】
成分(D)100質量%中、成分(D1)の含有量は、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは85.0質量%以下である。成分(D1)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、塗布性をより一層高めることができる。また、成分(D1)の含有量が上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物が硬くなりすぎることを抑えることができる。なお、成分(D)100質量%中、成分(D1)の含有量は100質量%であってもよい。
【0078】
<成分(D2)>
成分(D2)は、炭素数が1以上、4以下である1価アルコールである。成分(D)は、成分(D2)を含むことが好ましい。成分(D2)を用いることにより、毛髪化粧料組成物が硬くなりすぎることを抑え、塗布性をより一層高めることができる。成分(D2)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
成分(D2)は、炭素数が2以上、4以下である1価アルコールであることが好ましい。
【0080】
成分(D2)としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等が挙げられる。
【0081】
毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にする観点及び塗布性をより一層高める観点からは、成分(D2)は、エタノール、又はイソプロパノールであることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。また、エタノールを用いることにより、毛髪への塗布後に、毛髪化粧料組成物が乾燥するまでの時間を短くすることができ、短時間で成分(B)による皮膜を形成させることができる。
【0082】
毛髪化粧料組成物の硬さを良好にする観点及び塗布性を高める観点から、本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(D)の含有量は、35.0質量%以上、90.0質量%以下である。
【0083】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(D)の含有量は、好ましくは40.0質量%以上、より好ましくは45.0質量%以上、好ましくは85.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下である。成分(D)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さをより一層良好にすることができ、また、塗布性をより一層高めることができる。
【0084】
(成分(E))
成分(E)は、炭素数が12以上、22以下である1価アルコールである。成分(E)は用いられてもよく、用いられなくてもよい。成分(E)を用いることにより、毛髪化粧料組成物の硬さ及び塗布性を調整しやすくなる。成分(E)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
成分(E)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、及びオレイルアルコール等が挙げられる。
【0086】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(E)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。成分(E)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、毛髪化粧料組成物の硬さを容易に調整することができる。
【0087】
(成分(F))
成分(F)は、無機塩である。成分(F)は用いられてもよく、用いられなくてもよい。成分(F)を用いることにより、塩析効果が発揮され、毛髪化粧料組成物の硬さを調整しやすくなる。成分(F)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
成分(F)としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム)、及びリン酸カリウム等が挙げられる。
【0089】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(F)の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。成分(F)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、塩析効果が効果的に発揮され、毛髪化粧料組成物の硬さを容易に調整することができる。
【0090】
(成分(G))
成分(G)は、粉体である。成分(G)は用いられてもよく、用いられなくてもよい。成分(G)を用いることにより、整髪力をより一層高めることができ、また、毛髪をマット(艶消し)で自然な仕上がりとすることができる。また、成分(G)を用いることにより、毛束を適度にばらけさせることができる。成分(G)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
成分(G)としては、シリカ(無水ケイ酸)、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、群青、紺青、カーボンブラック、酸化チタン、二酸化チタン、酸化亜鉛、珪藻土、ベントナイト、ラポナイト、及び雲母チタン等が挙げられる。
【0092】
成分(G)は、シリカ、タルク、珪藻土、ベントナイト、及びカオリンからなる群から選ばれる粉体(少なくとも1の粉体)であることが好ましい。
【0093】
成分(G)は、顔料であってもよく、顔料でなくてもよい。成分(G)として、顔料を用いることにより、毛髪を着色することができる。
【0094】
本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、成分(G)の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。成分(G)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、整髪力をより一層高めることができる。
【0095】
(他の成分)
本発明の毛髪化粧料組成物は、上述した成分(A)~(G)以外の成分を含んでいてもよい。成分(A)~(G)以外の成分としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、清涼剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、及び香料等が挙げられる。上記他の成分は、それぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が用いられてもよい。
【0096】
本発明の毛髪化粧料組成物は、炭化水素油、エステル油、ロウ、油脂、及び植物油からなる群より選ばれる油性成分を含まないか、又は、上記油性成分を10.0質量%未満で含むことが好ましい。本発明の毛髪化粧料組成物が上記油性成分を含む場合に、本発明の毛髪化粧料組成物100質量%中、上記油性成分の含有量は、好ましくは10.0質量%未満、より好ましくは5.0質量%未満、更に好ましくは3.0質量%未満、特に好ましくは1.0質量%未満である。
【0097】
(固形状毛髪化粧料組成物の他の詳細)
本発明の毛髪化粧料組成物の性状は、25℃で固形状である。上記固形状には、ペースト状は含まれず、ジェル状は含まれず、グリース状は含まれない。本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、流動性を有さない。本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、25℃で静置状態にて、形状を保持することができる。より具体的には、外径22mm及び長さ30mmの円柱状に成型された本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、25℃で静置状態にて、形状を保持することができる。
【0098】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、非乳化型固形状毛髪化粧料組成物であることが好ましい。
【0099】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、固形油分などの油性成分を含まないか、又は油性成分の含有量を少なくすることができるので、水性固形状毛髪化粧料組成物である。本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、油性固形状毛髪化粧料組成物とは異なる。
【0100】
塗布性及び使用性に優れるので、本発明の固形状毛髪化粧料組成物の形状はスティック状であることが好ましい。本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、スティック状毛髪化粧料組成物であることが好ましい。
【0101】
整髪性に優れるので、本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、固形状整髪剤組成物であることが好ましい。本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、ヘアスティック(スタイリングスティック)であることがより好ましい。
【0102】
25℃の環境下で、本発明の固形状毛髪化粧料組成物に対して、速度20mm/分でアダプター(2mmφ、円柱状)を10mm押し込んだときの応力は、好ましくは40gf以上、より好ましくは70gf以上、好ましくは700gf以下、より好ましくは600gf以下である。上記応力は、例えば、サン科学社製「RHEO METER」で測定することができる。
【0103】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物の製造方法として、公知の固形状毛髪化粧料組成物の製造方法を採用することができる。本発明の固形状毛髪化粧料組成物の製造方法としては、例えば、成分(A)が成分(C)に溶解する温度(例えば60℃以上、75℃以下)で各成分を混合して混合液を得る混合工程と、上記混合液を鋳型に充填する充填工程と、冷却(例えば20℃以下に冷却)して固化させる固化工程とを備える方法等が挙げられる。
【0104】
上記固化工程では、圧縮成型されていてもよく、圧縮せずに成型されていてもよい。
【0105】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、特に限定されないが、例えば、容器に収容された形態で用いることができる。上記容器は、ジャー容器(非繰り出し型の容器)、又はスティック型の繰り出し容器であることが好ましい。
【0106】
本発明は、水及び水性原料を用いて毛髪化粧料組成物の性状を固形状としたこと、及び、固形状毛髪化粧料組成物が良好な硬さと高い塗布性とを有することに特徴がある。
【0107】
従来用いられている油性の固形状毛髪化粧料組成物では、油性成分に起因して、塗布後の毛髪にべたつきが生じたり、見た目のぎらつきが生じたりすることがある。また、油性の固形状毛髪化粧料組成物では、洗髪時に毛髪化粧料組成物が洗い落ちにくい。
【0108】
油性の固形状毛髪化粧料組成物が有するこれらの問題を解決するために、本発明者らは、水及び水性原料を用いた水性の固形状毛髪化粧料組成物の調製を試みた。さらに、本発明者らは、固形状の毛髪化粧料組成物として必要な、賦形性(硬さ)、毛髪への塗布性、整髪力を同時に満たす固形状毛髪化粧料組成物を鋭意検討した。その結果、本発明の固形状毛髪化粧料組成物を得た。
【0109】
本発明の固形状毛髪化粧料組成物では、特定の成分(A)~(D)が特定の配合量で用いられているので、水性の固形状毛髪化粧料組成物とすることができ、水性の固形状毛髪化粧料組成物において、良好な硬さを有し、かつ塗布性及び整髪性を高めることができる。
【0110】
なお、成分(D)を用いず、かつ脂肪酸塩[成分(A)]及び水[成分(C)]を用いた場合、析出した成分(A)によって、ある程度の硬さを有する固形状の組成物を得ることはできる。また、成分(A)と成分(C)とに加えて、皮膜形成ポリマー[成分(B)]を用いることにより、良好な整髪性を発揮しうる。
【0111】
ここで、スティック状の固形状毛髪化粧料組成物を毛髪に塗布する場合、良好な塗布性を発揮するためには、塗布時のせん断応力によって、固形状毛髪化粧料組成物が一部破断して毛髪に付着する(組成物が毛髪に移行する)ことが必要である。しかしながら、成分(D)を含まず、かつ成分(A)~(C)を含む固形状組成物では、組成物のねばりが強すぎるためと考えられるが、塗布時に組成物が毛髪に移行しにくく、塗布性が低下する。
【0112】
これに対して、本発明では、成分(A)~(C)に加えて、成分(A)の貧溶媒である成分(D)が用いられており、かつこれらの成分が特定の含有量で用いられているので、成分(A)の析出性をより一層高めることができ、かつ、組成物に適度なねばりを付与することができる。さらに、本発明では、成分(D)の必須成分として、多価アルコール[成分(D1)]が特定の含有量で用いられているので、組成物が硬さを有しながらも、もろくなりにくい。これは、成分(D1)によって、析出する成分(A)の結晶サイズが適度に細かくなるためであると推定される。このため、本発明の固形状毛髪化粧料組成物では、水及び水性原料を主体とした水性の組成物であるにもかかわらず、良好な硬さと高い塗布性とを両立することができる。
【0113】
さらに、本発明の固形状毛髪化粧料組成物は、水性であるため、塗布後の毛髪のべたつき及びぎらつきを抑えることができ、また、洗髪時に毛髪化粧料組成物を容易に洗い流すことができる。
【実施例
【0114】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0115】
実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
【0116】
(成分(A))
ステアリン酸ナトリウム
ミリスチン酸ナトリウム
【0117】
(成分(B))
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩:ポリクオタニウム-11(INCI名:Polyquaternium-11)
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体:(ビニルピロリドン/VA)コポリマー(INCI名:VP/VA Copolymer)
(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー:(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP(INCI名:AMP-ACRYLATES/DIACETONEACRYLAMIDE COPOLYMER)
アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体:(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー(INCI名:HYDROXYETHYL ACRYLATE/METHOXYETHYL ACRYLATE COPOLYMER)
N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体:(メタクリル酸エチルベタイン/アクリレーツ)コポリマー(INCI名:METHACRYLOYL ETHYL BETAINE/ACRYLATES COPOLYMER)
【0118】
(成分(C))
精製水
【0119】
(成分(D))
成分(D1):
プロピレングリコール
ジグリセリン
グリセリン
1,3-ブチレングリコール
ジプロピレングリコール
ポリエチレングリコール(PEG-4)
ポリエチレングリコール(PEG-6)
ポリエチレングリコール(PEG-32)
マルチトール
【0120】
成分(D2):
エタノール
イソプロパノール
【0121】
(成分(E))
セチルアルコール
ステアリルアルコール
【0122】
(成分(F))
塩化ナトリウム
【0123】
(成分(G))
シリカ:商品名「AEROSIL 300」、日本アエロジル社製
【0124】
(実施例1~30及び比較例1~6)
毛髪化粧料組成物及び毛髪化粧料の調製:
下記の表1~6に示す配合成分を、表1~6に示す配合量(配合単位は質量%)で配合し、加温下で混合して混合液を調製した。次いで、得られた混合液を円筒状の鋳型に充填した。次いで、冷却固化させて、スティック状の固形状毛髪化粧料組成物を調製した。表中の配合量(毛髪化粧料組成物100質量%中の配合量)は、純分の配合量(単位:質量%)で示した。なお、比較例1,3,4では、後述のように、固形状毛髪化粧料組成物を得ることができなかった。
【0125】
(評価)
得られた固形状毛髪化粧料組成物について、以下の評価を行った。なお、評価は専門パネル3名で行い、協議して結果を決定した。
【0126】
(試験例1:毛髪化粧料組成物の硬さ(1))
得られた固形状毛髪化粧料組成物の外観を目視観察し、さらに指で触って、下記の基準で評価した。なお、比較例1では、毛髪化粧料組成物が液状であり、固形状に成形させることができなかった。比較例3では、成分(C)が用いられていないので、成分(A)が溶解せず、製剤化させることができなかった。比較例4では、毛髪化粧料組成物がやわらかすぎて、固形状に成形させることができなかった。
【0127】
<毛髪化粧料組成物の硬さ(1)の評価基準>
○(良好):スティック状の形状を維持しており、指で押してもへこみは生じない
△(使用可能):スティック状の形状を維持しているが、指で押すとへこみが生じる
×(不良):スティック状の形状を維持できない、又は、固形状に成形できない
××(不良):製剤化させることができない
【0128】
(試験例2:毛髪化粧料組成物の硬さ(2))
実施例1~26及び比較例5,6で得られた固形状毛髪化粧料組成物について、以下を行った。すなわち、25℃の環境下で、固形状毛髪化粧料組成物に対して、速度20mm/分でアダプター(2mmφ、円柱状)を10mm押し込んだときの応力を測定した。なお、応力を測定するための装置は、サン科学社製「RHEO METER」を用いた。
【0129】
(試験例3:塗布性)
得られた固形状毛髪化粧料組成物を、カットウィッグ(ユーカリジャパン社製)に、前髪をななめ後方へ固定するように、15回塗布して整髪した。その際の、塗布のしやすさを下記の基準で評価した。なお、試験例1の評価結果が不良であった毛髪化粧料組成物については、評価していない。
【0130】
<塗布性の評価基準>
○(良好):固形状毛髪化粧料組成物を均一に塗布できる
△1(使用可能):固形状毛髪化粧料組成物の小さな塊が毛髪に付着するものの、ほぼ均一に塗布できる
△2(使用可能):固形状毛髪化粧料組成物が毛髪にやや付着しにくいものの、ほぼ均一に塗布できる
×1(不良):固形状毛髪化粧料組成物の大きな塊が毛髪に付着し、均一に塗布できない
×2(不良):固形状毛髪化粧料組成物が毛髪にほとんど付着しない
【0131】
(試験例4:整髪力)
上記試験例3で整髪した直後に、整髪した毛髪を目視観察し、下記の評価基準で評価した。なお、試験例1の評価結果が不良であった毛髪化粧料組成物については、評価していない。
【0132】
<整髪力の評価基準>
○(良好):前髪をななめ後方へ固定した毛髪が、浮きがなく頭の形状に沿って密着している
△(使用可能):前髪をななめ後方へ固定した毛髪が、わずかに浮きがあるものの、その形状を維持している
×(不良):前髪をななめ後方に固定して保持することができない
【0133】
また、実施例1~6及び14~27で得られた固形状毛髪化粧料組成物については、以下の試験例5~7を行った。
【0134】
(試験例5:べたつきのなさ)
上記試験例3で整髪した直後に、整髪した毛髪を手で触り、油っぽいべたつきが感じられるか否かを確認したところ、実施例1~6及び14~27で得られた固形状毛髪化粧料組成物で整髪した毛髪はいずれも、油っぽいべたつきは感じられなかった。
【0135】
(試験例6:ぎらつきのなさ)
上記試験例3で整髪した直後に、整髪した毛髪を目視観察し、油っぽいぎらつきが感じられるか否かを確認したところ、実施例1~6及び14~27で得られた固形状毛髪化粧料組成物で整髪した毛髪はいずれも、油っぽいぎらつきは感じられなかった。
【0136】
(試験例7:洗い落ち性)
上記試験例3で整髪した24時間後に、カットウィッグを約40℃の温水で洗髪し、タオルドライした後、ドライヤーで乾燥した。乾燥後の毛髪を手で触ったところ、実施例1~6及び14~27で得られた固形状毛髪化粧料組成物で整髪した毛髪では、洗浄及び乾燥後の毛髪への組成物の残存感がなかった。
【0137】
組成及び試験例1~4の結果を下記の表1~6に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
以下に、本発明の毛髪化粧料組成物の処方例を示す。
【0145】
(処方例1)ヘアスティック
ステアリン酸ナトリウム 8.0質量%
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 2.0質量%
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩 2.0質量%
精製水 残 部
プロピレングリコール 15.0質量%
ジグリセリン 25.0質量%
エタノール 15.0質量%
セチルアルコール 1.0質量%
塩化ナトリウム 0.5質量%
ケトグルタル酸 0.2質量%
ジラウロイルグルタミン酸リシンNa 0.1質量%
合計 100質量%
【0146】
(処方例2)ヘアスティック
ステアリン酸ナトリウム 7.0質量%
アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体 1.0質量%
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩 2.0質量%
精製水 残 部
プロピレングリコール 15.0質量%
ジグリセリン 25.0質量%
エタノール 15.0質量%
セチルアルコール 1.0質量%
塩化ナトリウム 0.5質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
エデト酸4ナトリウム 0.05質量%
加水分解ケラチン液 0.1質量%
合計 100質量%
【0147】
(処方例3)ヘアスティック
ステアリン酸ナトリウム 6.0質量%
パルミチン酸ナトリウム 2.0質量%
(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー 0.5質量%
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩 2.0質量%
精製水 残 部
プロピレングリコール 20.0質量%
ジグリセリン 20.0質量%
エタノール 15.0質量%
セチルアルコール 1.0質量%
塩化ナトリウム 0.5質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
シリカ 3.0質量%
エデト酸4ナトリウム 0.05質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01質量%
香料 適 量
合計 100質量%
【0148】
(処方例4)ヘアスティック
ステアリン酸ナトリウム 7.0質量%
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 2.0質量%
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩 2.0質量%
精製水 残 部
プロピレングリコール 20.0質量%
ジグリセリン 25.0質量%
エタノール 10.0質量%
塩化ナトリウム 1.0質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
エデト酸4ナトリウム 0.05質量%
マイカ 1.0質量%
パール顔料 0.5質量%
香料 適 量
合計 100質量%
【0149】
(処方例5)ヘアスティック
ステアリン酸ナトリウム 8.0質量%
ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 2.0質量%
ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩 1.0質量%
精製水 残 部
プロピレングリコール 15.0質量%
ジグリセリン 25.0質量%
グリセリン 5.0質量%
エタノール 10.0質量%
塩化ナトリウム 1.0質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
エデト酸4ナトリウム 0.05質量%
シリカ 1.0質量%
タルク 1.0質量%
酸化チタン 0.5質量%
香料 適 量
合計 100質量%