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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】泡噴出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B65D47/34 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021091502
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183946
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129459(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105377709(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0033081(KR,A)
【文献】特開2004-121898(JP,A)
【文献】特開2007-050323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部を有しており内容物を収容可能な容器本体と、前記容器本体の内容物を泡状に噴出可能な噴出器とを有しており、
前記噴出器は、前記口部に装着可能な装着キャップと前記装着キャップに設けられたガイド筒の内側を貫通するステムとを有しており当該ステムを通して前記内容物と外気との混合物を圧送可能なポンプと、前記混合物を噴出させる噴出口が形成されている噴出ヘッドと、を有しており、
前記噴出ヘッドは、下向きに押圧可能な天壁と、前記天壁から垂下しており前記噴出口に通じる通路が形成されているとともに前記ステムに接続可能な接続筒と、前記天壁から垂下しており前記接続筒を取り囲むとともに前記装着キャップの前記ガイド筒を取り囲むカバー筒とを有しており、
前記カバー筒には、前記天壁に近い位置に、当該カバー筒を貫通する空気穴が形成されており、さらに、前記カバー筒には、前記空気穴から前記カバー筒の下端に至るまで下方に向かって延びている薄肉部が形成されている、泡噴出容器。
【請求項2】
前記薄肉部は、前記カバー筒の外周面に形成された凹部によって形作られている、請求項1に記載された泡噴出容器。
【請求項3】
前記薄肉部の周方向幅は、前記空気穴の周方向幅以上である、請求項1又は2に記載された泡噴出容器。
【請求項4】
前記カバー筒の下端部の内周面には、径方向内側に突出しているとともに周方向に延びている凸部が形成されており、前記凸部と前記ガイド筒との間には、隙間が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載された泡噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡噴出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
泡噴出容器は、容器本体と、容器本体の内容物を泡状に噴出させる泡噴出器とを有している。泡噴出器は、容器本体に装着される装着キャップと噴出ヘッドとを有しており、当該噴出ヘッドの押下げおよびその解除を繰り返すことによって動作させる。これによって、容器本体の内容物は、噴出ヘッドの噴出口を通して泡状に噴出させることができる。
【0003】
一方、泡噴出器の内部には、噴出ヘッドの押下げを解除したときに負圧が生じる。この負圧は、泡噴出器の内部に外部からの水分を吸入してしまうことがある。こうした水分吸入を防止するため、従来の泡噴出容器には、噴出ヘッドに設けられたカバー筒によって、装着キャップに設けられたガイド筒とステムとの間の隙間を覆う一方、当該カバー筒に空気穴を形成したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-275777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の泡噴出容器において、空気穴は、噴出ヘッドのカバー筒のうちの、天壁に近い位置に形成されている。このため、噴出ヘッドを製造する際に、カバー筒に空気穴を形成することは容易なことではない。したがって、上記従来の泡噴出容器は、噴出ヘッド、ひいては当該泡噴出容器の製造が容易ではなかった。
【0006】
本発明の解決課題は、噴出ヘッドを製造するに際し、当該噴出ヘッドに空気穴を形成することを容易にすることである。すなわち、本発明の目的は、外部からの液体の侵入を抑制する機構部を容易に製造が可能な、泡噴出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る泡噴出容器は、口部を有しており内容物を収容可能な容器本体と、前記容器本体の内容物を泡状に噴出可能な噴出器とを有しており、前記噴出器は、前記口部に装着可能な装着キャップと前記装着キャップに設けられたガイド筒の内側を貫通するステムとを有しており当該ステムを通して前記内容物と外気との混合物を圧送可能なポンプと、前記混合物を噴出させる噴出口が形成されている噴出ヘッドと、を有しており、前記噴出ヘッドは、下向きに押圧可能な天壁と、前記天壁から垂下しており前記噴出口に通じる通路が形成されているととともに前記ステムに接続可能な接続筒と、前記天壁から垂下しており前記接続筒を取り囲むとともに前記装着キャップの前記ガイド筒を取り囲むカバー筒とを有しており、前記カバー筒には、前記天壁に近い位置に、当該カバー筒を貫通する空気穴が形成されており、さらに、前記カバー筒には、前記空気穴から下方に向かって延びている薄肉部が形成されている。
【0008】
本発明に係る泡噴出容器において、前記薄肉部は、前記カバー筒の外周面に形成された凹部によって形作られていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る泡噴出容器において、前記薄肉部の周方向幅は、前記空気穴の周方向幅以上であるようにすることができる。
【0010】
本発明に係る泡噴出容器において、前記カバー筒の下端部の内周面には、径方向内側に突出しているとともに周方向に延びている凸部が形成されており、前記凸部と前記ガイド筒との間には、隙間が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部からの液体の侵入を抑制する機構部を容易に製造が可能な、泡噴出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る、泡噴出容器を、軸線を含む断面で示す断面図であり、図面右側には、噴出ヘッドを押圧する前の初期状態を示し、図面左側には、噴出ヘッドを押圧した噴出状態を示す。
図2図1の領域Aの拡大図と、当該拡大図の領域Bの拡大図である。
図3図1の泡噴出容器の、噴出ヘッドのカバー筒に形成された空気穴付近を、当該カバー筒の外周面側から示す矢視図である。
図4図1の泡噴出容器を、X-X断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、泡噴出容器について説明をする。
【0014】
以下の説明において、軸線Oは、泡噴出容器1の中心線である。本実施形態では、泡噴出容器1の中心線は、容器本体2の中心線および噴出器3の中心線と同軸である。
【0015】
また、以下の説明において、「上下方向」とは、軸線Оに沿って延びている方向をいう。特に、本実施形態において、「上」とは、容器本体の口部の側を意味することを含む。また、本実施形態において、「下」とは、容器本体の底部の側を意味することを含む。
【0016】
さらに、以下の説明において、軸線Oに延在する方向を軸線方向ともいい、軸線Oの周りに延在する方向を周方向ともいう。また、以下の説明において、軸線Oに対して直交する方向を径方向ともいう。
【0017】
図1を参照すれば、符号1は、本発明の一実施形態に係る、泡噴出容器である。泡噴出容器1は、口部21を有しており内容物を収容可能な容器本体2と、前記容器本体の内容物を泡状に噴出可能な噴出器3とを有している。
【0018】
本実施形態において、容器本体2は、いわゆるボトル容器である。容器本体2は、口部21に連なる肩部22を有しており、当該肩部22に連なる胴部(図示省略)の下端は、底部(図示省略)によって閉じられている。容器本体2の内側には、内容物を収容可能な収納空間Sが形成されている。収納空間Sには、液体又は半液体の内容物を充填させることができる。口部21の内側には、収納空間Sに通じる開口A2が形成されている。容器本体2は、例えば、合成樹脂を用いたブロー成形によって形成することができる。ただし、容器本体2の製造方法は、ブロー成形に限定されるものではなく、様々な方法によって製造することができる。
【0019】
噴出器3は、口部21に装着可能な装着キャップ15と装着キャップ15に設けられたガイド筒15bの内側を貫通するステム14とを有しており当該ステム14を通して前記内容物と外気との混合物を圧送可能なポンプ4と、前記混合物を噴出させる噴出口A5が形成されている噴出ヘッド5と、を備えている。
【0020】
ポンプ4は、液室4aと空気室4bとを有している。ポンプ4は、噴出ヘッド5の押下げおよび当該噴出ヘッド5の押下げの解除を繰り返すことによって動作させる。本実施形態では、ポンプ4は、まず噴出ヘッド5を押し下げることによって、液室4aと空気室4bとを負圧状態にする。次いで、噴出ヘッド5の押下げを解除すると、液室4aには、吸入パイプ16を通して容器本体2の内部に収容された内容物が導入されると同時に、空気室4bには、外気(空気)が導入される。その後、噴出ヘッド5を再び押し下げると、液室4aに導入された内容物と、空気室4bに導入された空気とはそれぞれ、ステム14に向けて圧送される。ステム14の内部では、内容部と空気とが混合された状態で泡生成要素13を通過する。これにより、内容部と空気との混合物は、泡状の混合物として、噴出ヘッド5の噴出口A5から噴出される。
【0021】
本実施形態において、ポンプ4は、シリンダ6、ポペットバルブ7、コイルスプリング8、液圧ピストン9、ピストンガイド10、空気圧ピストン11、ボール弁12、泡生成要素13およびステム14、装着キャップ15および吸入パイプ16を有している。
【0022】
本実施形態において、シリンダ6は、液室4aを形成する液室シリンダ6aと、空気室4bを形成する空気室シリンダ6bと、を有している。シリンダ6は、容器本体2の口部21に形成された開口A2に挿入させることができる。本実施形態において、シリンダ6は、軸線Оに沿って延びている。シリンダ6の下端には、下端開口A1が形成されている。シリンダ6の下端開口A1には、吸入パイプ16が接続されている。したがって、本実施形態において、シリンダ6は、吸入パイプ16を通して容器本体2の収納空間Sに通じる。
【0023】
ポペットバルブ7は、シリンダ6に形成された下側開口A1を開放可能に閉じている。ポペットバルブ7は、内容物の流れが下側開口A1を通してシリンダ6の内部に導入される方向のときに下側開口A1を開く方向に動作し、シリンダ6の内部に導入された内容物が下側開口A1を通して排出される方向のときに下側開口A1を閉じる方向に動作する。
【0024】
コイルスプリング8は、液室シリンダ6aの内部に配置されている。コイルスプリング8は、シリンダ6に対して液圧ピストン9を弾性的に支持している。
【0025】
液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内部に配置されている。液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内周面に対して摺動させることができる。液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内部に、ポペットバルブ7とともに液室4aを形成する。液圧ピストン9は、筒状部材である。液圧ピストン9の内部には、内部通路R1が形成されている。ポペットバルブ7は、当該ポペットバルブ7の摺動によって、液室4aと下側開口A1との間、または、液室4aと内部通路R1との間を開閉させることができる。
【0026】
ピストンガイド10は、筒状部材である。ピストンガイド10の内部には、内部通路R2が形成されている。ピストンガイド10の内部には、液圧ピストン9の上端部が固定されている。
【0027】
空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内部に配置されている。空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内周面に対して摺動させることができる。空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内部に、ピストンガイド10とともに空気室4bを形成する。空気圧ピストン11は、筒状部材である。空気圧ピストン11の内部には、ピストンガイド10が配置されている。空気圧ピストン11は、ピストンガイド10の外周面に対して摺動させることができる。空気圧ピストン11とピストンガイド10との間には、内部通路R3が形成されている。内部通路R3は、空気圧ピストン11とピストンガイド10との間に摺動によって開閉させることができる。加えて、空気圧ピストン11は、外気導入口A11を有している。
【0028】
ボール弁12は、ピストンガイド10の上端内側に配置されている。ボール弁12は、内部通路R2を通して圧送された内容物によって開放される逆止弁である。
【0029】
ステム14は、ピストンガイド10の上端部の内外周面に固定されている。ピストンガイド10とステム14との間には、内部通路R4が形成されている。内部通路R4は、ボール弁12を介して内部通路R2に通じている。ステム14は、筒状部材である。ステム14の内部には、内部通路R5が形成されている。内部通路R5は、内部通路R4に通じているとともに、ボール弁12を介して内部通路R2に通じている。加えて、ステム14の内部には、泡生成要素13が配置されている。泡生成要素13は、ポンプ4の動作によって圧送された混合物を泡状の混合物に生成する。本実施形態において、泡生成要素13は、編み目状のメッシュ部材13aと、メッシュ部材13aを保持する環状の保持部材13bと、によって形成されている。本実施形態では、2つの泡生成要素13が軸線方向に間隔を置いて配置されている。また、本実施形態において、ステム14は、空気圧ピストン11の上端部に対して摺動可能なシール筒14aを有している。シール筒14aは、空気圧ピストン11とステム14との間に、外気導入口A11に通じる中継空間Saを形成する。シール筒14aは、ステム14が押下げられるときに空気圧ピストン11に対して下側に摺動することによって中継空間Saを密封する。これにより、空気室4bには外気は導入されない。逆に、シール筒14aは、ステム14が上側に移動するときに空気圧ピストン11に対して上側に摺動することによって、中継空間Saを開放する。これにより、ステム14と装着キャップ15のガイド筒15bとの間に形成された隙間からの外気を中継空間Saを介して空気室4bに導入させることができる。ただし、本発明によれば、上記構成に代えて、空気圧ピストン11に外気導入口を形成し、当該外気導入口に空気室4bに生じた負圧によって開放可能な逆止弁(図示省略)を設けることができる。
【0030】
装着キャップ15は、シリンダ6の上端部に固定されている。装着キャップ15は、シリンダ6の上側開口を覆っている。装着キャップ15は、ポンプ4のポンプカバーとして機能する。装着キャップ15は、容器本体2の口部21に装着される装着部15aを有している。本実施形態において、装着キャップ15は、装着部15aを容器本体2の口部21にねじ付けることによって装着されている。ガイド筒15bは、軸線方向に延びているとともに装着部15aに連なっている。ガイド筒15bの内部には、軸線方向に延びている貫通穴A15が形成されている。ステム14は、貫通穴A15を貫通している。これによって、ステム14の上端部は、貫通穴A15を通して装着キャップ15よりも上側に突出している。
【0031】
噴出ヘッド5は、下向きに押圧可能な天壁51と、天壁51から垂下しており噴出口A5に通じる通路R7が形成されているととともにステム14に接続可能な接続筒52と、天壁51から垂下しており接続筒52を取り囲むとともにガイド筒15bを取り囲むカバー筒53とを有している。
【0032】
カバー筒53には、天壁51に近い位置に、当該カバー筒53を貫通する空気穴A53が形成されている。さらに、カバー筒53には、空気穴A53から下方に向かって延びている薄肉部53aが形成されている。
【0033】
本実施形態において、天壁51は、板状の天壁である。本実施形態において、天壁51は、軸線方向から視た軸線方向視で、円形をしている。ただし、天壁51の軸線方向視における形状は、使用者が噴出ヘッド5を押し下げることができる形状であれば、特に円形に限定されるものではない。
【0034】
接続筒52は、天壁51から下向きに延びている。接続筒52の内部には、内部通路R6が形成されている。接続筒52の内部には、ステム14の上端部が固定されている。これによって、内部通路R6は、泡生成要素13を介して内部通路R5に通じる。また、噴出ヘッド5には、内部通路R6に通じる内部通路R7が形成されている。内部通路R7は、噴出口A5を通して外界に通じている。本実施形態において、内部通路R7は、ノズル56の内部に形成されている。ノズル56は、カバー筒53よりも軸直方向外側に突出している。
【0035】
カバー筒53もまた、天壁51から下向きに延びている。図2を参照すれば、空気穴A53は、カバー筒53のうち、天壁51と隣接する位置に形成されている。すなわち、本実施形態において、空気穴A53の上面は、天壁51の下面によって形成されている。
【0036】
また、カバー筒53には、薄肉部53aが形成されている。薄肉部53aは、空気穴A53の下端から下方に向かって延びている。本実施形態において、薄肉部53aは、空気穴A53からカバー筒53の下端に至るまで延びている。この場合、カバー筒53を軸線方向に沿って当該軸線方向の全体で変形させることができる。ただし、本発明によれば、薄肉部53aは、カバー筒53の下端の手前で終端させることもできる。
【0037】
薄肉部53aは、カバー筒53に形成された凹部によって形作ることができる。本実施形態において、薄肉部53aは、例えば、図2に示すように、カバー筒53の外周面に形成された凹部53bによって形作られている。本実施形態では、薄肉部53aの径方向厚さt53は、凹部53bの径方向深さd53よりも薄い。この場合、薄肉部53aをより容易に変形させることができる。ただし、本発明によれば、薄肉部53aの径方向厚さt53は、凹部53bの径方向深さd53と等しく、或いは、凹部53bの径方向深さd53よりも厚くすることができる。
【0038】
また、薄肉部53aの周方向幅W1は、適宜変更することができる。図3を参照すれば、本実施形態において、薄肉部53aの周方向幅W1は、空気穴A53の周方向幅W2と等しい。ただし、本発明によれば、薄肉部53aの周方向幅W1は、空気穴A53の周方向幅W2よりも小さく、或いは、空気穴A53の周方向幅W2よりも大きくすることもできる。
【0039】
図2の領域Bの拡大図を参照すれば、カバー筒53の下端部53eは、噴出ヘッド5を押し下げる前の初期状態において、装着キャップ15のガイド筒15bを取り囲んでいる。本実施形態において、ガイド筒15bの外周面とカバー筒53の内周面との間には、隙間が形成されている。
【0040】
本実施形態において、カバー筒53の下端部53eの内周面には、径方向内側に突出しているとともに周方向に延びている凸部58が形成されている。凸部58の突端とガイド筒15bの外周面との間には隙間C1が形成されている。隙間C1は、0.05mm~0.15mmとすることが好ましい。さらに好ましくは、隙間C1は、0.08mmである。また、カバー筒53の径方向最外側内周面(カバー筒53の内周面のうちの、最も径方向外側の内周面)とガイド筒15bの外周面との間の隙間C2は、0.13mmとすることができる。
【0041】
なお、本実施形態において、凸部58は、周方向に延びている、環状の凸部である。本実施形態において、空気穴A53の開口によって形成される開口面積S1は、隙間C2によって形成される隙間面積S2よりも大きく設定されている。ただし、本発明によれば、開口面積S1は、隙間面積S2以下とすることができる。
【0042】
本実施形態によれば、噴出ヘッド5に設けられたカバー筒53は、装着キャップ15に設けられたガイド筒15bを覆うことによって、噴出器3の内部に負圧が生じたときでも、噴出器3の外の水分(例えば、結露、シャワー水)などの液体がステム14とガイド筒15bとの間に形成された隙間を通して吸入されることを抑制する。また、本実施形態によれば、カバー筒53に空気穴A53を形成したことによって、噴出器3の外の液体が噴出ヘッド5に設けられたカバー筒53と、装着キャップ15に設けられたガイド筒15bとの間の隙間を通して吸入されることを抑制する。
【0043】
一方、噴出ヘッド5を製造する場合、噴出ヘッド5の製造方法としては、例えば、合成樹脂を原料として成形型を用いることによって成形する方法がある。この場合、空気穴A53は、前記成形型のキャビティ面に形成された型突起部分によって形成することができる。
【0044】
しかしながら、噴出ヘッド5の成形後に、当該噴出ヘッド5を成形型から型抜きするとき、前記型突起部分は、カバー筒53に沿って軸線方向に無理抜きする必要がある。
【0045】
本実施形態において、カバー筒53には、空気穴A53から下方に向かって延びている薄肉部53aが形成されている。この場合、噴出ヘッド5を型抜きするとき、前記型突起部分は、凹部53bに沿って移動させることができる。したがって、本実施形態によれば、噴出ヘッド5、すなわち、泡噴出容器1を容易に製造することができる。
【0046】
したがって、泡噴出容器1によれば、外部からの液体の侵入を抑制する機構部を容易に製造が可能な、泡噴出容器を提供することができる。特に、本実施形態において、薄肉部53aは、空気穴A53からカバー筒53の下端に至るまで下方に向かって延びている。この場合、薄肉部53a部分が変形し易くなるため、噴出ヘッド5をより容易に型抜きすることができる。
【0047】
また、本実施形態において、凸部58の突端とガイド筒15bの外周面との間に形成された隙間C1は、0.05mm~0.15mmの範囲であることが好ましい。この場合、外部から液体が吸引されるときでも、その吸引量を抑制することができる。一方、隙間C1が0.2mm以上になると液体が侵入し易くなる。
【0048】
また、本実施形態において、薄肉部53aは、カバー筒53の外周面に形成された凹部53bによって形作られている。この場合、噴出ヘッド5に設けられたカバー筒53と、装着キャップ15に設けられたガイド筒15bとの間に形成された隙間を抑えることができる。このため、カバー筒53とガイド筒15bとの間の隙間を通しての、液体の吸入がさらに抑制する。
【0049】
また、本実施形態において、薄肉部53aの周方向幅W1は、空気穴A53の周方向幅W2と同等程度としているが、薄肉部53aの周方向幅W1を空気穴A53の周方向幅W2以上にすることが好ましい。この場合、噴出ヘッド5のカバー筒53を維持するのに必要な薄肉部53aの剛性・強度を確保していれば、薄肉部53a形成範囲は限定されず、噴出ヘッド5を容易に成形することができる。
【0050】
また、本実施形態において、カバー筒53の下端部53eの内周面には、径方向内側に突出しているとともに周方向に延びている凸部58が形成されており、凸部58とガイド筒15bとの間には、隙間C1が形成されている。この場合、液体の吸入を抑制しつつ、噴出ヘッド5の押下げ動作およびその復元動作をスムーズに行うことができる。
【0051】
また、本実施形態において、天壁51の径方向外側端縁は、外筒55を形成している。外筒55は、天壁51から下向きに延びている。外筒55は、空気穴A53を径方向外側から覆うように下向きに延びている。さらに、本実施形態において、カバー筒53と外筒55との間には、中間筒54が配置されている。中間筒54は、天壁51から下向きに延びている。中間筒54もまた、空気穴A53を径方向外側から覆うように下向きに延びている。これによって、空気穴A53からの液体の侵入を抑制している。なお、図2を参照すれば、カバー筒53の外周面と中間筒54の内周面との間の間隔(距離)d54は、1.2mm以上が好ましい。間隔d54が1.2mmよりも小さい場合、空気穴A53からの外気の取り込みが困難となる。
【0052】
なお、図4を参照すれば、本実施形態において、装着キャップ15とステム14との間には、ステム14の押下げを阻止するストッパ機構30が設けられている。ストッパ機構30は、ガイド筒15bの内周面に設けられた突起31と、ステム14の外周面に形成された軸線方向溝32および周方向段部33と、によって形成されている。周方向段部33は、軸線方向溝32の周方向一方端に通じている。図4の実線に示すように、突起31と軸線方向溝32とが、軸線方向視において、周方向に整列しているとき、ステム14は、ガイド筒15bの内側で上下移動することができる。これに対して、噴出ヘッド5が初期状態において、ステム14を、軸線Оを中心に時計回りに回転させると、図の二点鎖線で示すように、突起31は、周方向段部33上に位置する。この場合、ステム14を押し下げようとすると、突起31は、周方向段部33に接触する。したがって、この場合、ステム14は、ガイド筒15bの内側で上下移動することができない。また、ステム14を、軸線Оを中心に半時計回りに回転させると、再び図の実線で示すように、突起31と軸線方向溝32とを周方向に整列させることができる。これにより、ステム14は再び、ガイド筒15bの内側で上下移動することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態に係る、泡噴出容器について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で、様々に変更することができる。例えば、上述した実施形態において、カバー筒53の薄肉部53aは、カバー筒53の径方向外側(外周面)に設けられているが、カバー筒53の径方向内側(内周面)に設けることができる。また、ポンプ4は、容器本体の内容物と空気とを混合して泡状に噴出させる構成のものであれば、様々な種類のポンプを使用することができる。また、泡噴出容器は、台所、洗面台、浴室などの、水回りで使用するものであることが好ましい。内容物としては、液体石けん、洗剤、化粧料などが挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
1:泡噴出容器, 2:容器本体, 21:口部, 3:噴出器, 4:ポンプ, 4a:液室, 4b:空気室, 5:噴出ヘッド, 51:天壁, 52:接続筒, 53:カバー筒, 53a:薄肉部, 53b:凹部, 53e:カバー筒の下端部, A53:空気穴, 54:中間筒, 55:外筒, 56:ノズル, 58:凸部, 6:シリンダ, 6a:液室シリンダ, 6b:空気室シリンダ, 7:ポペットバルブ, 8:コイルスプリング, 9:液圧ピストン, 10:ピストンガイド, 11:空気圧ピストン, 12:ボール弁, 13:泡生成要素, 14:ステム, 14a:シール筒, 15:装着キャップ, 15a:装着部, 15b:ガイド筒, 30:ストッパ機構, 31:突起, 32:軸線方向溝, 33:周方向段部, A1:シリンダ6の下端に形成された下端開口, A2:容器本体の口部に形成された開口, A5:噴出口, A11:外気導入口, A15:貫通穴, R1:液圧ピストンの内部通路, R2:ピストンガイドの内部通路, R3:空気圧ピストンとピストンガイドとの間の内部通路, R4:ピストンガイドとステムとの間の内部通路, R5:ステムの内部通路, R6:接続筒の内部通路, R7:ノズルの内部通路, Sa:中継空間
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図2
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