(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】軸封装置およびこれを備える撹拌機並びにガス漏出防止方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/40 20060101AFI20240819BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20240819BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20240819BHJP
F16J 15/54 20060101ALI20240819BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20240819BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240819BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240819BHJP
F16J 15/14 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
F16J15/40 Z
C02F11/02 ZAB
B01F35/00
F16J15/54
F16C33/76 Z
F16C33/66 Z
F16C19/16
F16J15/14 G
(21)【出願番号】P 2020017339
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299840(JP,A)
【文献】特表2005-523814(JP,A)
【文献】特開2013-017924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/40-15/453
F16J 15/54-15/56
F16J 15/00-15/14
F16C 33/72-33/82
F16C 33/30-33/66
F16C 19/00-19/56
C02F 11/02
B01F 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気側と外気側とを仕切る隔壁を有する消化槽と、該消化槽の隔壁の上部から
軸線を縦にして槽内に垂下され
て前記隔壁に軸支部を介して回転自在に外気側から内気側まで配置される回転軸を有する軸流ポンプと、
前記回転軸の周囲で内気側と外気側との間を軸封する軸封装置と、を備える撹拌機であって、
前記軸封装置は、前記回転軸と一体で回転するように前記消化槽の内気雰囲気内に配置されるとともに上部が前記消化槽内に開口し且つ軸封用の液体が前記回転軸の全周を囲繞した状態で内部に貯留される回転槽と、自身上端部が前記隔壁に支持されるとともに自身下端部が前記消化槽内に張り出して前記回転槽内の液体に浸漬された状態で前記回転軸を囲繞する遮蔽筒と、を有し、
前記軸支部は、前記消化槽内に張り出すとともに前記回転槽の内面に直に対向して設けられていることを特徴とする撹拌機。
【請求項2】
前記回転軸の外周面と前記遮蔽筒の内周面との半径方向での対向距離は、前記回転槽の内周面と前記遮蔽筒の外周面との半径方向での対向距離よりも広い請求項1に記載の撹拌機。
【請求項3】
内気側と外気側とを仕切る隔壁を有する消化槽と、該消化槽の隔壁の上部から軸線を縦にして槽内に垂下されて前記隔壁に軸支部を介して回転自在に外気側から内気側まで配置される回転軸を有する軸流ポンプと、を備える撹拌機に用いられ、
前記消化槽の閉塞空間内に軸線が縦に配置される回転軸の周囲を通り前記閉塞空間内のガスが前記回転軸下部の内気側から上部の外気側に向かうガス漏出を防止する方法であって、
前記消化槽の内気雰囲気内において、前記内気側と前記外気側との間を遮蔽するように前記回転軸の全周を囲繞する液体で満たすことにより
、前記回転軸下部の内気側から上部の外気側に
前記軸支部を介して向かう
前記閉塞空間内のガスの漏出を防止することを特徴とする
撹拌機のガス漏出防止方法。
【請求項4】
前記回転軸の周囲を満たす液体を、上部に開口するとともに前記回転軸の全周を囲繞するように設けられた回転槽に対し、該回転槽の上部の開口
に前記軸支部の上部から
前記消化槽内にオーバーフローさせるように供給して前記回転槽内に貯留する請求項3に記載の
撹拌機のガス漏出防止方法。
【請求項5】
前記軸支部を、当該軸支部の潤滑を兼ねた前記液体
に浸漬することにより、前記閉塞空間内のガスが前記回転軸下部のガス側から上部の外気側に向かうガスの漏出を防止するとともに
前記軸支部を潤滑する請求項3または4に記載の
撹拌機のガス漏出防止方法。
【請求項6】
前記軸支部を、前記回転槽の上部の開口面よりも高い位置に配置し、当該軸支部の潤滑用とは別の前記液体により、前記閉塞空間内のガスが前記回転軸下部のガス側から上部の外気側に向かうガスの漏出を防止する請求項
4に記載の撹拌機のガス漏出防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線が縦に配置される回転軸まわりのガス雰囲気をシールする軸封技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軸線が縦に配置される回転軸を備える機械設備として、
図4に一例を示すように、消化槽110と、この消化槽110の中央に垂下される回転軸131を有する軸流ポンプ130と、を備える汚泥消化装置100が知られている(例えば特許文献1参照)。
この種の汚泥消化装置100では、消化槽110中央の軸流ポンプ130の回転軸先端に設けられた撹拌スクリュ132の周囲を囲うように、ドラフトチューブ120が軸線を縦にして設置される。ドラフトチューブ120は、ドラフトチューブ120の上側開口部121が、消化槽110の内壁面に対してタイロッド140によって固定される。
【0003】
この種の汚泥消化装置100では、軸流ポンプ130を作動させることで、消化槽110内の汚泥が、ドラフトチューブ120の上側開口部121からドラフトチューブ120内に導入され、ドラフトチューブ120の下側開口部122から導出されて消化槽110内を循環する。これにより、消化槽110内の汚泥が撹拌されつつ、消化槽110内の汚泥が嫌気性バクテリアの作用によって減容されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の汚泥消化装置100では、
図5に要部を拡大図示するように、軸流ポンプ130は、消化ガス雰囲気中の回転軸131には、軸受け部150と、多段のゴムシール161によるガスシール部160とに、給脂装置から給脂配管163を介してグリスを給脂しており、ガスシール部160によって、閉塞空間である消化槽110内の消化ガスに対し、回転軸下部の内気側から上部の外気側に向かうガス漏出を防止している。
【0006】
しかし、ゴムシール161の寿命は比較的に短命であり、ゴムシール161が摺動および消化ガスのダメージを受けてガスシール部160の軸封機能が低下すると、その軸封機能が低下した部分を消化ガスが通って、軸受け部150やその上部のモータ部133内に侵入し、軸受け部150およびモータ133を含む駆動部が、消化ガスによる腐食により損傷するという問題がある。
また、可燃性の消化ガスが着火するおそれや異臭が拡散するおそれがある。また、従来は、グリスを給脂するための補器として給脂装置を要する上、この種の消化槽撹拌機は、24時間、365日休みなく稼働し続けるため、完全にグリスを入れ替えるメンテナンスが困難な事情もある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ガス雰囲気中に軸線を縦に配置される回転軸をシールする、軸封装置およびこれを備える撹拌機並びにガス漏出防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る軸封装置は、内気側と外気側とを仕切る隔壁と、該隔壁に回転自在に支持されるとともに軸線を縦にして外気側から内気側まで配置される回転軸と、を有する機械装置に用いられ、前記回転軸の周囲で内気側と外気側との間を軸封する軸封装置であって、前記回転軸と一体で回転するように内気雰囲気内に配置されるとともに上部が開口し且つ軸封用の液体が前記回転軸の全周を囲繞した状態で内部に貯留される回転槽と、自身上端部が前記隔壁に支持されるとともに自身下端部が前記回転槽内の液体に浸漬された状態で前記回転軸を囲繞する遮蔽筒と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る撹拌機は、内気側と外気側とを仕切る隔壁を有する消化槽と、該消化槽の隔壁の上部から槽内に垂下される回転軸を有する軸流ポンプと、を備え、前記回転軸の周囲で内気側と外気側との間を軸封する軸封装置として、本発明の一態様に係る軸封装置を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る軸封装置によれば、回転軸と一体で回転するように内気雰囲気内に配置されるとともに軸封用の液体が内部に貯留される回転槽と、自身上端部が前記隔壁に支持されるとともに自身下端部が前記回転槽内の液体に浸漬された状態で前記回転軸を囲繞する遮蔽筒と、を備えるので、駆動部内への消化ガスの侵入を防止できることは勿論、非接触構造なので、摩耗箇所も存在しないため極めて長寿命である。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係る回転軸用の軸封装置によれば、シール機能と潤滑機能とを兼ね備える上、上部に開口する回転槽内に軸封用の液体(例えばオイル)を貯留するだけの簡単な構造なので、軸封用の液体の入れ替えも回転槽内の液体をオーバーフローさせるだけで簡単に補給できる。
さらに、補器としての給脂装置も不要であり、また、軸受け部の潤滑性についても優れている。そのため、本発明の一態様に係る軸封装置によれば、撹拌機に装備される軸流ポンプの回転軸のような、ガス雰囲気中の回転軸をシールする用途に好適である。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス漏出防止方法は、閉塞空間内に軸線が縦に配置される回転軸の周囲を通り前記閉塞空間内のガスが前記回転軸下部の内気側から上部の外気側に向かうガス漏出を防止する方法であって、前記内気側と前記外気側との間を遮蔽するように前記回転軸の周囲を液体で満たすことにより、前記閉塞空間内のガスが前記回転軸下部の内気側から上部の外気側に向かうガスの漏出を防止することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るガス漏出防止方法によれば、内気側と外気側との間を遮蔽するように回転軸の周囲を液体で満たすので、これにより、閉塞空間内のガスが回転軸下部の内気側から上部の外気側に向かうガスの漏出を防止できる上、非接触構造なので、摩耗箇所も存在しないため極めて長寿命である。
【発明の効果】
【0014】
上述のように、本発明によれば、ガス雰囲気中に軸線が縦に配置される回転軸をシールするに際し、回転軸まわりのガス雰囲気をより長期に亘ってシールできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一態様に係る軸封装置を備えた機械装置の一実施形態である汚泥消化装置(撹拌機)の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
【
図2】
図1の汚泥消化装置における軸封装置の部分の拡大図である。
【
図3】本発明の一態様に係る軸封装置の他の例(第一変形例)を説明する図である。
【
図4】従来のガスシール部を備えた汚泥消化装置の一例の説明図であり、同図では、軸線に沿った断面を示している。
【
図5】
図4の汚泥消化装置における、従来のガスシール部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。ただし、上述した従来例と同一または対応する構成には、同一の符号を付して説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の汚泥消化装置100は、汚泥を入れる消化槽110と、消化槽110内に縦に配置されたドラフトチューブ120と、ドラフトチューブ120の上部に配置された軸流ポンプ130と、を備える。
ドラフトチューブ120は、その軸線が消化槽110の中心に沿って鉛直に配置され、ドラフトチューブ120の下部が複数の支持脚115によって消化槽110の底部112に固定される。
【0018】
軸流ポンプ130は、モータ部133と、回転軸131とを備え、回転軸131の先端に撹拌スクリュ132が設けられている。撹拌スクリュ132の部分が、ドラフトチューブ120の上側開口部121内に配置される。
モータ部133は、消化槽110の蓋部113に取り付けられて消化槽110の外部に配置される。ドラフトチューブ120の上側開口部121は、複数のタイロッド140によって消化槽110の壁部111に支持される。
【0019】
本実施形態の汚泥消化装置100では、軸流ポンプ130を作動させることで、消化槽110内の汚泥が、ドラフトチューブ120の上側開口部121からドラフトチューブ120内に導入され、ドラフトチューブ120の下側開口部122から導出されて消化槽110内を循環する。これにより、消化槽110内の汚泥が撹拌されつつ、消化槽110内の汚泥が、嫌気性バクテリアの作用によって減容されるようになっている。
【0020】
ここで、消化槽110の内部は、汚泥が撹拌されてバイオマス作用によって減容される際、硫化水素やメタンガス等を多く含む消化ガスによるガス雰囲気となるところ、この種の消化ガスが槽内からモータ部133に侵入すると、軸流ポンプ130の機械構造部分が早期に腐食する。
そのため、本実施形態の汚泥消化装置100では、
図2に要部を拡大図示するように、内部がガス雰囲気に爆される消化槽110内に垂下される回転軸131と、大気側に支持されているモータ部133との間を、軸封装置50によってシールしている。
【0021】
詳しくは、本実施形態の軸封装置50は、軸線が縦に配置される回転軸131まわりのガス雰囲気をシールするものである。軸封装置50は、回転軸131と一体で回転するとともに上部が開口し且つ内部にオイルFが貯留される回転槽であるオイルバス51と、軸流ポンプ30の固定部側からみて下方に位置するオイルバス51に対してその上部の開口から内部のオイルFに浸漬されるように垂下される円筒状の遮蔽筒であるシール筒52と、を有する。
【0022】
オイルバス51は、回転軸131と一体に固定されるベース51aを有する。本実施形態では、回転軸131に段部131dが形成されており、ベース51aの下面が段部131dの円環状の上面に載置された位置で固定される。このベース51aの下面の側から円形のバス底面部51bが一体で回転するように複数のボルトによって固定されている。
【0023】
オイルバス51は、バス底面部51bの周囲の部分が上方に向けて立ち上げられて円筒状のバス円筒面51cとされ、バス底面部51bの上部側とバス円筒面51cの内側とによって画成された部分にオイルFを貯留可能になっている。
これにより、オイルバス51は、回転軸131と一体で回転するように内気雰囲気内に配置されるとともに上部が開口し且つ軸封用の液体としてのオイルFが内部に貯留可能に構成される。なお、消化槽110の内圧と回転軸131の回転に対する遠心力とによるオイルバス51内のオイルFの液位の変動を考慮した上で、オイルバス51内のオイルFをオーバーフローさせるようにバス円筒面51cの高さを決定する。
【0024】
また、シール筒52は、連結部52aの上端側となる基端部が隔壁111に支持されるとともに連結部52aの先端が、下方に向けて曲げ返されて回転軸131を囲繞する遮蔽筒部52bとされている。シール筒52は、少なくとも遮蔽筒部52bの下端52dが、オイルバス51のオイルFに浸漬された状態で回転軸131を囲繞するように配置される。
【0025】
本実施形態の軸封装置50に対して軸封用の液体としてのオイルFを供給する際は、軸受け部150の上部に配管されたオイル供給管53からフレッシュオイルをバス円筒面51cの上端51tからオーバーフローするまで給油する。これにより、給油されたオイルFは、軸受け部150よりも下方のオイルバス51に、バス円筒面51cの上端51tからオーバーフローするまで満たされていく。なお、本実施形態のように、軸封用の液体によって軸受け部150の潤滑も兼ねる場合は、オイルFとして、軸受用オイルを使用する(水は不可)。フレッシュオイルとの入替えは、バス円筒面51cの上部の開口部からオイルFをオーバーフローさせて容易に行うことができる。
このとき、本実施形態では、バス円筒面51cの上端51tの水平位置は、軸受け部150の軸受け本体151の上面よりも油面Hが高い位置に設定されている。これにより、本実施形態の軸封装置50は、軸封用液体としてのオイルF中に軸受け部150の軸受け本体151が浸漬され、軸受け本体151の潤滑油を兼ねるようになっている。
【0026】
次に、本実施形態の軸封装置50の作用効果について説明する。
本実施形態の汚泥消化装置100は、消化槽110の内部雰囲気が危険な消化ガスとなるところ、軸流ポンプ130の回転軸131のガスシールとして、回転軸131と一体で回転するように内気雰囲気内に配置されるとともに軸封用のオイルFが内部に貯留されるオイルバス51と、自身上端部が隔壁111に支持されるとともに自身下端部がオイルバス51内のオイルFに浸漬された状態で回転軸131を囲繞する遮蔽筒52と、を備えるので、軸流ポンプ130の駆動部内への消化ガスの侵入を防止できることは勿論、非接触構造なので長寿命である。
【0027】
つまり、本実施形態の軸封装置50によれば、軸流ポンプ130の駆動部内への消化ガスの侵入を防止できることは勿論、上述した、多段のゴムシール161によるガスシール部160に比べ、オイルバス51が回転軸131と共に一体で回転しており静止型のシールではない非接触構造なので、摩耗箇所も存在しないため極めて長寿命である。
さらに、本実施形態の軸封装置50によれば、シール機能と潤滑機能とを兼ね備える上、上部に開口するオイルバス51内に、軸封用の液体としてオイルFを貯留するだけの簡単な構造であり、また、オイルFの入れ替えもオイルバス51内のオイルFをオーバーフローさせるだけで簡単に補給できる。これにより、所望の供給量を容易に設定可能である。さらに、補器としての給脂装置も不要であり、また、軸受け部150の潤滑性についても優れている。
【0028】
なお、軸受け部150の潤滑について、初期出荷時は軸受け部150の軸受け本体151にグリスを塗布しておき、現地で組み立て後にオイルFで軸受け本体151のグリスを置換すればよい。
そして、オイルFの入れ替え時には、ポンプでオイル供給管53からフレッシュオイルを軸受け部150に送入することで容易に置換できる。なお、使用する軸封用液体として、生軸封用液体分解性のオイルFを用いることで、そのまま消化槽110内にオイルFをオーバーフローさせて槽内に落下させても問題はない。
【0029】
また、本実施形態の軸封装置50によれば、外気側と内気側の空間とを仕切る上での圧力バランスについても、オイルFのガス受圧面(遮蔽筒部52bの外側とバス円筒面51cの内側との対向隙間の部分)を狭くすることにより、大気側との圧力バランスを容易に調整できる。
また、回転軸131の稼働時にオイルFに作用する遠心力は、オイルバス51または遮蔽筒52の接液面(バス円筒面51cの内面または遮蔽筒部52bの外面)にラビリンス溝構造等を設けることによって容易に受容できる。
【0030】
さらにまた、本実施形態の軸封装置50によれば、回転軸131の回転方向が単一の方向であれば、遠心力によるオイルFの移動を拘束する方向に向けて、オイルバス51または遮蔽筒52の接液面に、多条の油溝を形成することができる。
なお、内気雰囲気のガスに対する大気との内外の圧力差により、消化槽110内では15cm程度、オイルFのガス受圧面の油面が下がるものの、軸受け部150の室内での油面Hは、オイルFのガス受圧面に比べて十分に広く設定できるため、数ミリ程度しか上昇しないので、軸封装置50のオイルFの油面管理も容易である。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の軸封装置50によれば、軸流ポンプ130の回転軸131のようなガス雰囲気中に軸線を縦に配置される回転軸をシールする用途に好適な軸封装置を提供できる。なお、本発明に係る回転軸用の軸封装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、消化槽110の閉塞空間内に、軸線が縦に配置される回転軸131の軸受け部150の軸受け本体151の潤滑を兼ねたオイルFで、閉塞空間内の消化ガスが回転軸131の下部の内気側から上部の外気側に向かうガス漏出を防止する例を示したが、これに限定されない。
【0032】
例えば、
図3に変形例を示すように、オイルFの油面Hの位置を軸受け本体151の位置よりも更に低くしてもよい。そして、オイルバス51が、回転軸131と一体で回転するように内気雰囲気内に配置されるとともに上部が開口し且つ軸封用のオイルFが内部に貯留され、遮蔽筒52が、自身基端部が隔壁に支持されるとともに自身先端部がオイルバス51内のオイルFに浸漬された状態で回転軸131を囲繞するように構成する。
このような構成であっても、閉塞空間内のガスが回転軸131の下部の内気側から上部の外気側に向かうガスの漏出を防止または抑制できる。なお、この場合において、回転軸131の軸受け部150の潤滑については、別途にグリスによって潤滑してもよい。なおまた、このような構成であれば、軸封用の液体は、軸受け本体151の潤滑を兼ねる必要がないため、軸封可能であればオイルに限らず種々の液体(例えば水)を採用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
50 軸封装置
51 オイルバス(回転槽)
52 遮蔽筒
100 汚泥消化装置(機械装置:撹拌機)
110 消化槽
111 壁部(隔壁)
112 底部
113 蓋部
115 支持脚
120 ドラフトチューブ
121 上側開口部
130 軸流ポンプ
131 回転軸
132 撹拌スクリュ
133 モータ
140 タイロッド
F オイル(軸封用液体)