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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電気機械素子および電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20240819BHJP
   H02K 3/12 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H02K3/28 Z
H02K3/12
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020030154
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2020174513
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】19168692.2
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505462622
【氏名又は名称】ダンフォス アクチ-セルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シーヴォ,タパニ
(72)【発明者】
【氏名】ピースパネン,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】トイッカ,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ビョークホルム,ミカ
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-093097(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108448873(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0068657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127391(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0306424(US,A1)
【文献】特開2013-162615(JP,A)
【文献】特開2017-112676(JP,A)
【文献】特開昭55-018826(JP,A)
【文献】特開2006-141143(JP,A)
【文献】特開2003-111492(JP,A)
【文献】特開2013-121222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
H02K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械素子(300)であって、
-前記電気機械素子の外部の交流システムに接続するための電気端子(101、201、301)と、
-前記電気端子に接続され、各々が第1の端部(109、111)および第2の端部(110、112)を有する相巻線(106a~106c、107a~107c)を各々含む、少なくとも2つの多相巻線部分(103、104、203~205)を含む、少なくとも1つの多相巻線(102、202、302)と、
-コア構造(317)に設けられ、前記多相巻線部分の前記相巻線を含むスロットと、
を備え、
前記多相巻線部分は、前記多相巻線の各位相が、考慮中の前記位相に属する前記相巻線の鎖(113a~113c、213a~213c)であるように、互いに連続して接続され、そのため、考慮中の前記位相に属する前記各相巻線の第2の端部から、考慮中の前記位相に属する前記電気端子の1つまでの電流経路は、考慮中の少なくとも前記相巻線を含み、
前記各多相巻線部分は、考慮中の前記多相巻線部分の前記相巻線の前記第2の端部を互いに接続するためのスイッチ(114a、114b、115a、115b、214a、214b、215a、215b、216a、216b、314a、314b、315a、315b)を含み、
前記スロットは、前記多相巻線部分の第1の部分(103)に割り当てられる第1断面部分と、前記多相巻線部分の第2の部分(104)に割り当てられる第2断面部分と、を備え、
前記第1断面部分に通電可能であり、
前記第2断面部分に前記第1断面部分と同時に通電可能であり、
前記多相巻線部分の前記第1の部分(103)の前記相巻線の各巻線の導体断面積は、前記多相巻線部分の前記第2の部分(104)の前記相巻線の各巻線の導体断面積よりも大きい
ことを特徴とする、電気機械素子。
【請求項2】
前記各多相巻線部分のスイッチ(114a、114b、115a、115b、214a、214b、215a、215b、216a、216b)は、考慮中の前記多相巻線部分の前記スイッチの数が前記多相巻線の前記位相の数よりも1つ少なくなるように、考慮中の前記多相巻線部分の前記相巻線(106a~106c、107a~107c)の前記第2の端部間に接続される、請求項1に記載の電気機械素子。
【請求項3】
前記多相巻線部分の前記第1の部分(103)は、前記電気端子(101)と、前記多相巻線部分の前記第2の部分(104)との間にある、請求項1または2に記載の電気機械素子。
【請求項4】
前記多相巻線部分すべての前記相巻線部分は、同じ巻数を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械素子。
【請求項5】
前記多相巻線部分の前記第1の部分(103)の各相巻線の巻数は、前記多相巻線部分の前記第2の部分(104)の各相巻線の巻数よりも少ない、請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械素子。
【請求項6】
前記多相巻線部分の前記第2の部分の前記各相巻線の巻数は、前記多相巻線部分の前記第1の部分の前記各相巻線の巻数の少なくとも2倍である、請求項に記載の電気機械素子。
【請求項7】
前記多相巻線部分の前記第2の部分の前記各相巻線の巻数は、前記多相巻線部分の前記第1の部分の前記各相巻線の巻数の少なくとも3倍である、請求項に記載の電気機械素子。
【請求項8】
前記多相巻線部分の前記第1の部分は、前記電気端子と、前記多相巻線部分の前記第2の部分との間にある、請求項からのいずれか一項に記載の電気機械素子。
【請求項9】
前記電気機械素子(300)は、交流電気機械の固定子の一部である、請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械素子。
【請求項10】
前記電気機械素子(300)は、内部回転子型交流電気機械の固定子の一部である、請求項1からのいずれか一項に記載の電気機械素子。
【請求項11】
互いに対して回転可能に支持されている第1および第2の機械素子(300、318)を含む電気機械であって、前記第1の機械素子は、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気機械素子である、電気機械。
【請求項12】
前記第2の機械素子(318)は、前記第1の機械素子と相互作用する磁束を作り出すための永久磁石材料を含む、請求項11に記載の電気機械。
【請求項13】
前記第1の機械素子(300)は、前記電気機械の固定子の一部であり、前記第2の機械素子(318)は、前記電気機械の回転子である、請求項11または12のいずれか一項に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気機械に関する。より詳細には、本開示は、少なくとも1つの多相巻線、例えば、三相巻線を含む電気機械素子に関する。電気機械素子は、例えば、電気機械の固定子の一部または電気機械の回転子の一部とすることができる。さらに、本開示は、電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石機械の設計では、永久磁石機械の公称回転速度は、約40%以上安全に超えることはできない。例えば、公称回転速度が2000回転/分「rpm」である場合、最大推奨速度は約2800rpmであることを意味する。この制限は、永久磁石機械の逆起電力「EMF」が、永久磁石機械の回転速度の関数として直線的に増加するためである。障害状況では、交流「AC」システム、例えば、永久磁石機械に接続されている変換器は、必ずしも永久磁石機械の逆起電力を抑制することができるとは限らない。過回転中の抑制されていない逆起電力および上述の種類の障害状況は、永久磁石機械および/または永久磁石機械に接続されたACシステムを損傷する可能性がある過電圧状況の原因となる。
【0003】
上述の技術的問題は、別の方法では必要とされるであろう、より高い公称回転速度を有する永久磁石機械を選択することにより、解決されることも少なくない。しかしながら、この回避策は、所与のピーク電流で到達することができる最大ピークトルクを制限する。したがって、ACシステム、例えば、永久磁石機械に接続されている変換器は、より高いピーク電流用に設計する必要がある。また、所与の定常状態電流で到達することができる達成可能な定常状態トルクは減少するため、ACシステムもより高い定常状態電流用に設計する必要がある。
【0004】
誘導機で実装される可変速駆動装置には、誘導機の公称回転速度の選択に関連する独自の課題がある。誘導機に関連して、公称回転速度は、界磁を弱めることなく、つまり、誘導機の破壊トルクを低下させることなく、公称固定子電圧で達成可能な速度である。上述の公称回転速度が高ければ高いほど、必要なトルクを所与の磁束、例えば、誘導機の公称磁束で生成するために必要な固定子電流が高くなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下は、様々な実施形態のうちのいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された要約を提示する。この要約は、本発明の広範な概要ではない。本発明の主要または重要な素子を特定することも、本発明の範囲を詳述することも意図していない。以下の要約は、例示的な実施形態のより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化された形で単に提示するものである。
【0006】
本発明によれば、電気機械用の新たな電気機械素子が提供される。電気機械素子は、例えば、電気機械の固定子の一部または回転子の一部とすることができる。本発明による電気機械素子は、
-電気機械素子の外部の交流システムに接続するための電気端子と、
-前記電気端子に接続され、各々が第1の端部および第2の端部を有する相巻線を各々含む、少なくとも2つの多相巻線部分を含む、少なくとも1つの多相巻線と、
を備える。
【0007】
多相巻線部分は、多相巻線の各位相が、考慮中の位相に属する相巻線の鎖であるように、互いに連続して接続され、そのため、考慮中の位相に属する各相巻線の第2の端部から、考慮中の位相に属する電気端子の1つまでの電流経路は、考慮中の少なくとも相巻線を含む。各多相巻線部分は、考慮中の多相巻線部分の相巻線の第2の端部を互いに接続するためのスイッチを含む。したがって、各多相巻線部分は、考慮中の多相巻線部分の相巻線の第2の端部にスターポイントを有するように配置することができる。
【0008】
多相巻線の巻数は、多相巻線部分のうちのどれが、その相巻線の第2の端部にスターポイントを有するかを選択することによって変更することができる。したがって、本発明による電気機械素子を含む電気機械の公称回転速度は、多相巻線部分のうちのどれが、スターポイントを有するかを選択することによって、変更することができる。
【0009】
例示的かつ非限定的な実施形態による機械素子は、各々が上記の種類の多相巻線である2つ以上の多相巻線を備える。機械素子は、例えば、30度の電気角度の物理的な位相変位を有する2つの三相巻線を備えてもよい。
【0010】
本発明によれば、互いに対して回転可能に支持されている第1および第2の機械素子を含む新たな電気機械も提供され、第1の機械素子は、本発明による電気機械素子である。第1の機械素子は、例えば、電気機械の固定子の一部とすることができ、第2の機械素子は、電気機械の回転子とすることができる。
【0011】
様々な例示的かつ非限定的な実施形態は、添付の従属請求項に記載されている。
【0012】
構造および動作方法の両方に関する様々な例示的かつ非限定的な実施形態は、その追加の目的および利点とともに、添付の図面と併せて読まれたときに、特定の例示的かつ非限定的な実施形態の以下の説明から最もよく理解されるであろう。
【0013】
この文書では、「備える」および「含む」という動詞は、列挙されていない特徴の存在を除外または要求しないオープン制限として使用される。従属請求項に列挙されている特徴は、特に明記されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本文書を通して「a」または「an」、すなわち単数形の使用は複数を排除しないことを理解されたい。
【0014】
例示的かつ非限定的な実施形態およびそれらの利点は、例示の意味で、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a図1aは、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子の多相巻線の回路図を示す。
図1b図1bは、図1aに示される多相巻線を含む永久磁石機械の動作を示す。
図1c図1cは、図1aに示される多相巻線を含む永久磁石機械の動作を示す。
図1d図1dは、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子のコア構造のスロット内に位置付けられた導電体を示す。
図2図2は、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子の多相巻線の回路図を示す。
図3図3は、例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的かつ非限定的な実施形態の説明
以下の説明で提供される特定の実施例は、添付の特許請求の範囲および/または適用可能性を制限するものとして解釈されるべきではない。説明で提供されている実施例の表および群は、特に明記されていない限り網羅的ではない。
【0017】
図1aは、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子の多相巻線102の回路図を示す。電気機械素子は、例えば、電気機械の固定子の一部または電気機械の回転子の一部とすることができる。電気機械素子は、電気機械素子の外部の交流「AC」システムに接続するための電気端子101を備える。ACシステムは、例えば、電気機械素子を含む電気機械を駆動するように構成された周波数変換器などの変換器とすることができる。多相巻線102は、電気端子101に接続されており、多相巻線102は、2つの多相巻線部分103および104を備える。多相巻線部分103は、相巻線106a、106b、および106cを備え、多相巻線部分104は、相巻線107a、107b、および107cを備える。各相巻線は、第1の端部および第2の端部を有する。図1aでは、相巻線106aおよび107bの第1の端部は、参照番号109および111でそれぞれ示されている。相巻線106aおよび107bの第2の端部は、参照番号110および112でそれぞれ示されている。多相巻線部分103および104は、多相巻線102の各位相が、考慮中の位相に属する相巻線の鎖であるように、互いに連続して接続され、そのため、考慮中の位相に属する各相巻線の第2の端部から、考慮中の位相に属する電気端子の1つまでの電流経路は、考慮中の少なくとも相巻線を含む。図1aでは、位相aに属する相巻線の鎖は参照番号113aで示され、位相bに属する相巻線の鎖は参照番号113bで示され、位相cに属する相巻線の鎖は参照番号113cで示される。
【0018】
多相巻線部分103は、相巻線106a、106b、および106cの第2の端部にスターポイントを形成するために、相巻線106a、106b、および106cの第2の端部を互いに接続するためのスイッチ114aおよび114bを備える。 同様に、多相巻線部分104は、相巻線107a、107b、および107cの第2の端部にスターポイントを形成するために、相巻線107a、107b、および107cの第2の端部を互いに接続するためのスイッチ115aおよび115bを備える。多相巻線102の巻数は、多相巻線部分103および104のどちらがその相巻線の第2の端部にスターポイントを有するかを選択することによって、変更可能である。図1aに示されるように、各多相巻線部分のスイッチは、各多相巻線部分のスイッチの数が多相巻線102の位相の数よりも1つ少なくなるように、考慮中の多相巻線部分の相巻線の第2の端部間に接続される。この例示の場合では、各多相巻線部分のスイッチの数は2個であり、多相巻線102の位相の数は3個である。上述のスイッチの各々は、例えば、電気機械式スイッチまたは電子半導体スイッチとすることができる。電気機械式スイッチは、例えば、リレー接触器を含んでもよく、電子半導体スイッチは、例えば、逆平行接続されたゲートターンオフ「GTO」サイリスタを含んでもよい。
【0019】
例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械素子では、多相巻線部分103および104の両方の相巻線は、同じ巻数を有する。
【0020】
例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械素子では、多相巻線部分103および104のうちの第1の部分の各相巻線の巻数は、多相巻線部分の第2の部分の各相巻線の巻数よりも少ない。多相巻線部分の第1の部分は、例えば、多相巻線部分103とすることができ、この場合、多相巻線部分の第2の部分は、多相巻線部分104である。多相巻線部分104の各相巻線の巻数は、例えば、多相巻線部分103の各相巻線の巻数の少なくとも2倍または3倍とすることができる。
【0021】
図1bおよび図1cは、図1aに示される多相巻線102を含む、永久磁石機械131の動作を示す。図1bおよび図1cに示される例示の場合では、多相巻線部分103および104の両方の相巻線は、実質的に同じ巻数を有すると想定される。図1bに示される例示の状況では、スイッチ114aおよび114bは非導通状態にあり、スイッチ115aおよび115bは導通状態にある。図1cに示される例示の状況では、スイッチ114aおよび114bは導通状態にあり、スイッチ115aおよび115bは非導通状態にある。図1bおよび図1cに示される例示の場合では、交流「AC」システム130によって供給され得る最大実効値「RMS」固定子電流IはImaxであり、ACシステム130によって供給され得る最大RMS固定子電圧UはUmaxであると想定される。 さらに、永久磁石機械131は、非常に効果的に冷却され、ACシステム130が図1bおよび図1cに示される例示の状況の両方において制限因子であると想定される。さらに、永久磁石機械131の最大許容逆起電力はEmaxであると想定される。図1aおよび図1bは、RMS固定子電流がImaxであり、RMS固定子電圧Uが、最初にUmaxまで直線的に増加し、その後、RMS固定子電圧UがUmaxになるときに、回転速度nの関数としてトルクTおよび逆起電力Eを示す。逆起電力が最大許容逆起電力を超える、許容されない速度領域は、斜線のハッチングで示される。図1aおよび図1bに示されるように、永久磁石機械131は、回転速度nがnmax1未満であるとき、必要なトルクを作り出すためにより少ない固定子電流が必要とされるため、図1bに示される状態にあることが有利である。永久磁石機械131は、回転速度nがnmax1~nmax2の範囲内にあるとき、そうでなければ逆起電力が最大許容逆起電力Emaxを超えるため、図1cに示される状態にあることが有利である。
【0022】
図1dは、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子のコア構造のスロット内に位置付けられた導電体を示す。この例示の場合では、電気機械素子の多相巻線は、図1aに示すようなものである。導電体120、121、122、および123は、多相巻線部分103の相巻線のうちの1つの直列接続巻線を表し、導電体124、125、126、および127は、多相巻線部分104の相巻線のうちの1つの直列接続巻線を表す。各導電体120~127は、導電性材料、例えば、銅の単縦線、または、導電性材料の多数の並列接続電線の束とすることができる。
【0023】
スロットの断面積Aは、例えば、ii)スロット内の合計電流が、図1bおよび図1cに示される両方の状況で同じであるときに、i)スロット内の抵抗損失が、図1bおよび図1cに示される両方の状況で同じになるように、多相巻線部分103と104との間で共有することができる。
【0024】
直列接続された導電体120~123の抵抗は、
R1=NL/((A1/N)δf) (1)
式中、Lは、スロットの軸方向の長さ、つまり座標系199のz方向の長さであり、A1は、直列接続された導電体120~123が占める断面積であり、δは、導電性材料の導電率であり、fは、スロットの断面積Aに対する導電性材料の充填率であり、Nは、スロット内の直列接続された導電体120~123の数である。この例示の場合では、N=4である。
【0025】
同様に、直列接続された導電体124~127の抵抗は、
R2=NL/(A2/N)δf) (2)
式中、A2は、直列接続された導電体124~127が占める断面積である。簡単にするために、スロット内の直列接続された導電体124~127の数は、スロット内の直列接続された導電体120~123の数Nと同じである。
【0026】
図1bに示される状況では、直列接続された導電体120~123のみが電流を流す。図1cに示される状況では、直列接続された導電体120~127すべてが電流を流す。したがって、スロット内の合計電流は、
NI1=2NI2 (3)
の場合、図1bおよび図1cに示される両方の状況で同じであり、
式中、I1は、図1bに示される状況の固定子電流であり、I2は、図1cに示される状況の固定子電流である。スロット内の抵抗損失は、
1 21=I2 2(R1+R2) (4)
の場合、図1bおよび図1cに示される両方の状況で同じであり、
式中、R1+R2は、直列接続された導電体120~127すべての抵抗である。
式1~3を式4に代入すると、
4/A1=1/A1+1/A2=(A1+A2)/(A12)=A/(A12) (5)
となり、
2=A/4およびA1=3A/4となる。したがって、この例示の場合では、スロットの断面積Aの75%は、多相巻線部分103に割り当てられ、スロットの断面積Aの25%は、多相巻線部分104に割り当てられる。したがって、この例示の場合では、多相巻線部分103の相巻線の各巻線の導体断面積は、多相巻線部分104の相巻線の各巻線の導体断面積の3倍である。 また、例えば、図1bおよび図1cに示される状況に関連する性能要件、および/または多相巻線部分の異なる部分に関連するコイル巻数間の比率などの要因に応じて、異なる導体断面積比を使用することも可能である。
【0027】
図2は、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械素子の多相巻線202の回路図を示す。電気機械素子は、電気機械素子の外部の交流システムに接続するための電気端子201を備える。多相巻線202は、電気端子201に接続され、3つの多相巻線部分203、204、および205を備える。多相巻線部分203~205の各々は、3つの相巻線を備え、各相巻線は、第1の端部および第2の端部を有する。多相巻線部分203~205は、多相巻線の各位相が、考慮中の位相に属する相巻線の鎖であるように、互いに連続して接続され、そのため、考慮中の位相に属する各相巻線の第2の端部から、考慮中の位相に属する電気端子の1つまでの電流経路は、考慮中の少なくとも相巻線を含む。図2では、位相aに属する相巻線の鎖は、参照番号213aで示され、位相bに属する相巻線の鎖は、参照番号213bで示され、位相cに属する相巻線の鎖は、参照番号213cで示されている。
【0028】
多相巻線202は、多相巻線部分203の相巻線の第2の端部を互いに接続するためのスイッチ214aおよび214b、多相巻線部分204の相巻線の第2の端部を互いに接続するためのスイッチ215aおよび215b、および多相巻線部分205の相巻線の第2の端部を互いに接続するためのスイッチ216aおよび216bを備える。多相巻線202の巻数は、多相巻線部分203~205のうちのどれが、その相巻線の第2の端部にスターポイントを有するかを選択することによって、変更可能である。
【0029】
図3は、例示的かつ非限定的な実施形態による、電気機械の部分断面図を示す。電気機械は、例示的かつ非限定的な実施形態による、第1の機械素子300を含む。電気機械は、第1の機械素子300に対して回転可能に支持されている第2の機械素子318を含む。この例示の場合では、機械素子300は、電気機械の固定子の一部であり、機械素子318は、電気機械の回転子である。第1の機械素子300は、例えば、図1aに示されるようなものとすることができる多相巻線302を備える。第1の機械素子300は、多相巻線302の多相巻線部分のうちのどれが、その相巻線の端部にスターポイントを有するかを選択するためのスイッチ314a、314b、315a、および315bを備える。
【0030】
図3に示される例示的な電気機械は、例えば、第2の機械素子318、すなわちロータが、第1の機械素子300と相互作用する磁束を作り出すための永久磁石材料を含む永久磁石機械とすることができる。例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械は、誘導機または電気的に励起された同期機であることも可能である。
【0031】
図3に示される例示的な電気機械では、電気機械素子300のコア構造317は、多相巻線302のコイル側を含むスロットを含む。例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械素子は、エアギャップ巻線である多相巻線を含むことも可能である。
【0032】
図3に示される例示的な電気機械は、内部回転子型放射状磁束機械である。例示的かつ非限定的な実施形態による電気機械素子は、軸方向磁束機械の一部または外部回転子型半径方向磁束機械の一部とすることも可能である。
【0033】
上記の説明で提供された特定の実施例は、添付の特許請求の範囲の適用可能性および/または解釈を制限するものとして解釈されるべきではない。この文書に記載されている実施例の表および群は、特に明記されていない限り、網羅的な表および群ではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0034】
101 電気端子
102 多相巻線
103,104 多相巻線部分
106a,106b,106c 相巻線
107a,107b,107c 相巻線
109 第1の端部
110 第2の端部
111 第1の端部
112 第2の端部
113a,113b,113c 相巻線の鎖
114a,114b,115a,115b スイッチ
120~127 導電体
130 交流システム
131 永久磁石機械
199 座標系
201 電気端子
202,204 多相巻線
203~205 多相巻線部分
213a,213b,213c 相巻線の鎖
214a,214b,215a,215b スイッチ
216a,216b スイッチ
300 第1の機械素子
302 多相巻線
314a,314b,315a,315b スイッチ
317 コア構造
318 第2の機械素子
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3