(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】位置判定システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20240819BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240819BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240819BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
E05B49/00 K
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2020107998
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義規
(72)【発明者】
【氏名】岩井 浩紀
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085884(JP,A)
【文献】特開平09-182171(JP,A)
【文献】特開2018-141771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室外に設けられた室外通信部と端末の間、及び前記車両の室内に設けられた室内通信部と前記端末との間の各々で、電波が通信されて受信信号強度が測定された場合に、これら前記受信信号強度の受信信号強度データを取得するデータ取得部と、
前記室外通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データと、前記室内通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データとの大小比較の結果から、前記端末が、前記車両の室外及び室内のどちらに位置するかを判定する位置判定部と、を備え、
前記室外通信部は、前記車両のフロントフェンダの内部に配置されており、
前記フロントフェンダの内部は、
金属材料からなる前記フロントフェンダと、樹脂材料からなるタイヤハウスカバーとに囲われた空間であり、
前記室外通信部は、前記タイヤハウスカバーに取り付けられている位置判定システム。
【請求項2】
前記室外通信部は、前記車両における車幅方向の両側に設けられた前記フロントフェンダの内部にそれぞれ設けられ、
前記位置判定部は、前記車幅方向の一方側の前記室外通信部と前記端末との通信で得た前記受信信号強度データと、前記車幅方向の他方側の前記室外通信部と前記端末との通信で得た前記受信信号強度データと、前記室内通信部と前記端末との通信で得た前記受信信号強度データとの大小比較により、前記車両の室外において前記車幅方向の一方側のエリア、前記車両の室外において前記車幅方向の他方側のエリア、及び前記車両の室内のエリアのうちいずれのエリアに前記端末が位置するかを判定する
請求項1に記載の位置判定システム。
【請求項3】
前記電波は、前記室外通信部と前記端末との間、及び前記室内通信部と前記端末との間の各々で、複数の異なる周波数で通信される
請求項1又は請求項2に記載の位置判定システム。
【請求項4】
前記受信信号強度データは、前記室外通信部と前記端末との間、及び前記室内通信部と前記端末との間の各々で、複数測定された前記受信信号強度の平均値を含む
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の位置判定システム。
【請求項5】
前記車両には、前記電波を遮蔽する障害物が設けられ、
前記室内通信部は、前記車両の室外に位置する前記端末との間で通信する場合に、前記障害物によって、前記電波の前記受信信号強度が低下するような位置に設けられている
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の位置判定システム。
【請求項6】
前記車両には、前記電波を透過する透過部材が、前記車両の車高方向において前記車両の床面から離隔して配置されるように設けられ、
前記室内通信部は、前記床面の近傍に設けられている
請求項5に記載の位置判定システム。
【請求項7】
前記室外通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データとしての第1受信信号強度データと、前記室内通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データとしての第2受信信号強度データとのうち少なくとも一方を補正する補正部を備え、
前記補正部は、前記第2受信信号強度データに対する前記第1受信信号強度データの比を、補正前より補正後の方が大きくなるように補正する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の位置判定システム。
【請求項8】
前記補正部は、前記第1受信信号強度データと前記第2受信信号強度データとの少なくとも一方を、補正量によって補正し、
前記補正量は、前記電波の伝搬経路において、前記フロントフェンダの内部と前記車両の外部との間で伝搬する際に生じる前記受信信号強度の損失を補うように設定されている請求項7に記載の位置判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末が車両と通信する際に、車両に対する端末の位置を判定する位置判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両において、ユーザに所持される端末と車両に搭載される車載機とが無線により通信接続して両者の間の無線通信が実行され、車両の制御を行う通信システムが知られている。通信システムとしては、車載機からの送信電波に端末が自動で応答して無線通信によりID認証を行うスマート照合システムが周知である。
【0003】
特許文献1には、車両に対する端末の位置を判定する位置判定システムを備えたスマート照合システムが開示されている。この位置判定システムでは、車載機と端末とが通信接続した場合、車両に搭載された通信部から送信された電波を端末が受信したときの受信信号強度を測定し、この受信信号強度が整合する位置を、端末の位置として判定する。スマート照合システムでは、位置判定システムによって端末が車両の近傍に位置するか否かが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0235486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通信部は、車両外部に露出しないように、車両の内部に収納される。そのため、通信部から送信された電波が車両の外郭を形成する金属製のボディ部品に遮蔽されて、車両外部に位置する端末が受信する電波の受信信号強度が低下することがあった。これにより、端末の位置を正しく判定できないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、端末の位置を正しく判定可能にした位置判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための位置判定システムは、車両の室外に設けられた室外通信部と端末の間、及び前記車両の室内に設けられた室内通信部と前記端末との間の各々で、電波が通信されて受信信号強度が測定された場合に、これら前記受信信号強度の受信信号強度データを取得するデータ取得部と、前記室外通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データと、前記室内通信部及び前記端末の通信で得た前記受信信号強度データとの大小比較の結果から、前記端末が、前記車両の室外及び室内のどちらに位置するかを判定する位置判定部と、を備え、前記室外通信部は、前記車両のフロントフェンダの内部に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の位置判定システムは、端末の位置を正しく判定可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の認証システムに設けられた位置判定システムの構成を示すブロック図。
【
図3】室外通信部及び室内通信部の配置を示す上面図。
【
図4】室外通信部及び室内通信部の配置を示す側面図。
【
図6】車両と携帯端末との認証の流れを示すフロー図。
【
図7】車両の室外に端末が位置する場合の電波の伝搬経路を示す上面図。
【
図8】車両の室内に端末が位置する場合の電波の伝搬経路を示す上面図。
【
図9】室外通信部から送信される電波の伝搬経路を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、位置判定システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両1は、無線通信を通じて端末2の正否を認証する認証システム3を備えている。端末2は、電話機能を有し、近距離無線通信を用いて車両1と通信可能な高機能携帯電話、所謂スマートフォンであることが好ましい。本例の認証システム3は、車両1からの通信を契機に近距離無線通信によってID照合を実行する近距離無線照合システムである。近距離無線通信は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信であることが好ましい。
【0011】
車両1は、ID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5、エンジン6を制御するエンジンECU7とを備えている。これらECUは、車内の通信線8を通じて接続されている。通信線8は、例えばCAN(Controller Area network)やLIN(Local Interconnect network)からなる。
【0012】
照合ECU4のメモリ9には、車両1に登録された端末2の電子キーID及びキー固有鍵が書き込み保存されている。認証システム3においては、照合ECU4と端末2との間で自動的に相互通信による一連のID照合が実行され、そのID照合が成立したことを一条件としてドアロックの施解錠及びエンジンの始動が許可される。
【0013】
ボディECU5は、車両ドア10を施解錠するメカ部分としてのドアロック装置11の作動を制御する。車両ドア10には、車両ドア10の開閉を操作するための車外ドアハンドル12が設けられている。車外ドアハンドル12には、例えばドア解錠するときのトリガとして車外ドアハンドル12に対するユーザのタッチ操作を検出するタッチセンサ13が設けられている。また、車外ドアハンドル12には、例えばドア施錠するときに操作するロックボタン14が設けられている。ボディECU5は、ID照合が成立し、かつ車両1の室外に端末2が位置しているときに、タッチセンサ13及びロックボタン14の検出信号を基に、ドアロック装置11の作動を制御する。
【0014】
エンジンECU7は、車両1のエンジン6の作動を制御する。車両1には、エンジン6の電源遷移を操作するためのエンジンスイッチ15が設けられている。エンジンスイッチ15は、例えばプッシュ式のスイッチであることが好ましい。エンジンECU7は、所定の条件下でエンジンスイッチ15が操作されることでエンジン6の遷移を制御する。なお、ここでいう所定の条件とは、ID照合が成立していること、車両1の室内に端末2が位置していること、車両1のブレーキペダル(図示略)が踏まれていること、車両1のトランスミッションがパーキングレンジに入っていること、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
車両1は、端末2と近距離無線通信を行なうための室外通信部16と室内通信部17とを備えている。室外通信部16は、車両1の室外側に設けられている。室内通信部17は、車両1の室内側に設けられている。室外通信部16及び室内通信部17は、端末2とBLE(Bluetooth Low Energy)通信を行う。また、室外通信部16及び室内通信部17の各々は、固有の通信部IDを有している。通信部IDは、各通信部を識別するために用いられる。
【0016】
本実施形態のBLE通信では、端末2側がマスタであり、車両1側がスレーブである。なお、マスタとスレーブの関係はこの限りではなく、車両1側がマスタで、端末2側がスレーブでもよい。室外通信部16及び室内通信部17は、車両1の近傍エリアに定期的にアドバタイズメッセージを送信する。
【0017】
端末2は、端末2の作動を制御する端末制御部20と、端末2においてネットワーク通信を行なうネットワーク通信モジュール21と、端末2においてBLE通信を行う端末通信部22とを備えている。
【0018】
端末2を車両1の電子キーとして使用するにあたり、端末2は、車両1に端末2の電子キーID及びキー固有鍵を登録する電子キー登録を行う。例えば、端末2は、ネットワーク通信を通じてサーバ(図示略)から電子キーID及びキー固有鍵を取得し、メモリ24に書き込み保存する。さらに、端末2は、BLE通信を通じて車両1に接続し、端末2の電子キーID及びキー固有鍵を登録する。なお、端末2及び車両1の接続には、ユーザIDなどを利用したユーザ認証が課されることが好ましい。
【0019】
端末2は、車両1からのアドバタイズメッセージを受信した場合、そのアドバタイズメッセージに連なる一連の通信接続処理を実行する。そして、端末2は、車両1とのBLE通信接続を確立すると、端末2の電子キー登録が完了していることを前提に、車両1との相互通信を通じて自動的にID照合を実行する。例えば、ID照合において、照合ECU4及び端末制御部20は、互いに電子キーIDを通信して電子キーIDの照合を行うとともに、キー固有鍵を用いたチャレンジレスポンス認証等の暗号認証を行う。照合ECU4は、これら照合や認証が成立することを確認すると、ID照合を成立と判定する。なお、これら一連のID照合は、ユーザによる端末2の操作をすることなく、また、車両1の操作をすることなく自動的に処理が実行される。
【0020】
認証システム3は、車両1と端末2とが通信を行うとき、車両1に対する端末2の位置を判定する位置判定システム30を備えている。本例の位置判定システム30は、車両1と端末2とがID照合を行うとき、端末2が車両1の室内外のどちらに位置するかを判定する。また、この位置判定は、ID照合の通信時のどのタイミングで実施されてもよい。すなわち、位置判定は、ID照合前、ID照合後、ID照合途中のいずれで実施されてもよい。
【0021】
位置判定システム30は、車両1に対する端末2の位置を判定する位置判定部31を備えている。本実施形態の位置判定部31は、車両1の照合ECU4に設けられている。本実施形態の場合、位置判定部31は、室外通信部16及び室内通信部17から通信部IDを含んだ電波SdをBLE送信させる。電波Sdは、例えば位置検出のために送信される位置検出信号である。なお、一連の位置判定の過程において、電波Sdの送信は、室外通信部16及び室内通信部17のそれぞれから複数回、実行される。また、室外通信部16及び室内通信部17からの電波Sdの送信電力は、同じである。
【0022】
位置判定システム30は、室外通信部16及び室内通信部17と端末2との間の電波Sdの受信信号強度を、各周波数の電波Sd毎に測定する測定部32を備えている。本実施形態の測定部32は、端末2の端末制御部20に設けられている。測定部32は、室外通信部16及び室内通信部17からの電波Sdを、端末通信部22を介して受信すると、この電波Sdの受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定する。測定部32は、受信した電波Sdごとに受信信号強度を測定し、その測定結果を照合ECU4へ送信する。受信信号強度の測定結果は、例えば電波Sdに含まれていた通信部IDに紐づけられて送信される。
【0023】
位置判定システム30は、照合ECU4において、測定部32からの測定結果を受信した場合に、受信信号強度データを取得するデータ取得部33を備えている。受信信号強度データは、例えば受信信号強度の平均値である。
【0024】
図2に示すように、車両1は、複数のボディ部品40によって外郭が覆われている。ボディ部品40は、例えば金属材料からなるパネル状の部品である。なお、車両1は、車長方向、車幅方向、及び車高方向を有している。
図2では、車長方向をX軸、車幅方向をY軸、車高方向をZ軸で示している。ボディ部品40には、車両1の前側において車幅方向の両側に設けられた2つのフロントフェンダ41が含まれる。各フロントフェンダ41は、車両1の前輪の上側に設けられている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、室内通信部17及び室外通信部16は、車両1の室内及び室外にそれぞれに設けられている。ここで、室内とは、例えばルーフなどのボディ部品40と車両ドア10とに囲われた車室44の内を指す。また、室外とは、該車室44の外を指す。また、車室44の外郭の一部には、電波Sdを透過する透過部材45が設けられている。透過部材45には、車両前方に設けられたフロントガラス、車両ドア10に設けられたサイドガラス、及び車両後方のリアガラスなどのガラス部材が含まれる。透過部材45は、車高方向において、車室44の床面44aから離隔して配置されている。
【0026】
室内通信部17は、室内において床面44aの近傍に配置されている。ここで、床面44aの近傍とは、例えば車高方向において、透過部材45の下側の見切り線45aよりも下側の位置である。なお、室内通信部17は、車長方向及び車幅方向において、車室44の中央付近に設けられることが好ましい。室内通信部17は、例えば、センターコンソール、又は運転席や助手席の下側などに配置される。
【0027】
室外通信部16は、車両1の室外において、車幅方向の両側にそれぞれ設けられている。本実施形態の各室外通信部16は、車幅方向において、対称となる位置に設けられている。本実施形態の場合、室外通信部16は、車両1の車幅方向一方側に設けられた第1室外通信部16aと、車両1の車幅方向他方側に設けられた第2室外通信部16bとを含む。以降、車幅方向一方側を右側、車幅方向他方側を左側と記載する。なお、室内通信部17、第1室外通信部16a及び第2室外通信部16bは、同様のBLE通信ユニットである。
【0028】
図5に示すように、フロントフェンダ41は、車両1の外部に露出する外面41aと、その反対側の内面41bとを有している。また、フロントフェンダ41の下部には、タイヤハウスカバー43が設けられている。タイヤハウスカバー43は、樹脂材料からなる。さらに、フロントフェンダ41の内面41bは、車両1の内部部品50との間に間隔を空けて対向している。内部部品50には、例えばエンジンルームを形成するインサイドパネルやボディフレーム、及びエンジンルーム内の種々の装置などが含まれる。
【0029】
各室外通信部16は、フロントフェンダ41の内部に配置されている。フロントフェンダ41の内部の一例は、フロントフェンダ41、内部部品50、及びタイヤハウスカバー43に囲われた空間である。本実施形態の場合、各室外通信部16は、フロントフェンダ41の内部において、フロントフェンダ41の内面41bに取り付けられている。
【0030】
測定部32は、第1室外通信部16aから送信された電波Sdの受信信号強度A、第2室外通信部16bから送信された電波Sdの受信信号強度B、室内通信部17から送信された電波Sdの受信信号強度Cを測定する。
【0031】
データ取得部33は、受信信号強度Aの平均値を計算し、その計算結果を第1室外通信部16aと端末2との通信で得た受信信号強度データDa(以降、データDa)とする。また、データ取得部33は、受信信号強度Bの平均値を計算し、その計算結果を第2室外通信部16bと端末2との通信で得た受信信号強度データDb(以降、データDb)とする。データ取得部33は、受信信号強度Cの平均値を計算し、その計算結果を室内通信部17と端末2との通信で得た受信信号強度データDc(以降、データDc)とする。データDa及びデータDbが「第1受信信号強度データ」に該当する。データDcが「第2信号強度データ」に該当する。
【0032】
位置判定部31は、データDa、データDb、及びデータDcの大小を比較することにより、端末2が車両1の室内及び室外のどちらに位置するかを判定する。本実施形態の位置判定部31は、室外において右側のエリアEa、室外において左側のエリアEb、及び室内のエリアEcのいずれのエリアに端末2が位置するかを判定する(
図7参照)。
【0033】
位置判定システム30は、第1受信信号強度データとしてのデータDa,Dbと、第2受信信号強度データとしてのデータDcとの少なくとも一方を補正する補正部34を備えている。補正部34は、データDcに対するデータDa,Dbの比が、補正前よりも補正後の方が大きくなるように補正を行う。すなわち、データDcに対するデータDaの比「Da/Dc」の値が大きくなるように補正を行う。また、データDcに対するデータDbの比「Db/Dc」の値が大きくなるように補正を行う。本実施形態の補正部34は、予め設定された補正量Fによって補正を行う。補正量Fは、室外通信部16から送信された電波Sdの伝搬経路において、フロントフェンダ41の内部から車両1の外部へ伝搬する際に生じる受信信号強度の損失を補うように設定されている。位置判定部31は、補正部34によって補正された後のデータDa、データDb、及びデータDcを用いての大小比較を行う。
【0034】
以下、本実施形態の作用について説明する。
図6に示すように、S101(Sはステップの略、以下同様)では、照合ECU4は、端末2とのBLE通信接続を確立するために、各室外通信部16及び室内通信部17からアドバタイズメッセージを車両1の近傍エリアに順に繰り返し送信する。端末2は、車両1の近傍エリアに進入し、アドバタイズメッセージを受信すると、通信が確立した通信部との間で車両1とのBLE通信接続を開始する。
【0035】
S102では、車両1及び端末2は、アドバタイズメッセージに連なる一連の通信接続の処理に従い、機器認証が成立すると、自動で通信接続する。両者の通信接続は、端末2が車両1とのBLE通信の範囲外へ移動するまで継続される。
【0036】
S103では、車両1及び端末2が通信接続されると、車両1及び端末2は、ID照合を開始する。ID照合には、電子キーIDの送受信及びキー固有鍵を用いた暗号認証が含まれる。照合ECU4は、電子キーIDの照合及びキー固有鍵を用いた暗号認証のいずれかが不成立の場合、ID照合が不成立したと判定する。ID照合が不成立した場合、車両1の作動は禁止される。一方、照合ECU4は、ID照合が成立すれば、処理を継続する。
【0037】
S104では、位置判定部31は、室外通信部16及び室内通信部17から電波Sdを送信する。電波Sdには、各々の通信部IDが含まれ、受信側の端末2は、各室外通信部16及び室内通信部17のうちいずれの通信部からの電波Sdなのかを識別可能となっている。また、電波Sdは、端末2が個別に各電波Sdを受け取ることができるように、各通信部の間で、タイミング又は周波数をずらして送信されることが好ましい。位置判定部31は、これら電波Sdの受信信号強度を端末2の測定部32で測定させる。測定部32は、各電波Sdの受信信号強度A,B,Cを測定すると、その測定結果を、照合ECU4に通知する。照合ECU4のデータ取得部33は、測定結果をメモリ9に記憶する。
【0038】
位置判定部31は、電波送信、受信信号強度測定、及び測定結果通知の一連の処理を、室外通信部16及び室内通信部17のそれぞれにおいて、繰り返し実行する。本実施形態の場合、この一連の処理は、周波数ホッピングにより周波数を変えて繰り返し実行される。なお、
図6では上記一連の処理を一回だけ図示している。これにより、第1室外通信部16a、第2室外通信部16b及び室内通信部17の各々について、端末2との間の通信で測定された受信信号強度の数値群が取得される。すなわち、データ取得部33は、第1室外通信部16aの受信信号強度A、第2室外通信部16bの受信信号強度B、及び室内通信部17の受信信号強度Cの各数値群を取得する。
【0039】
S105では、データ取得部33は、受信信号強度A、受信信号強度B、及び受信信号強度Cの各々に基づいて、データDa、データDb、及びデータDcを取得する。本実施形態のデータ取得部33は、受信信号強度A,B,Cの各々の数値群から、受信信号強度A,B,Cのそれぞれの平均値を算出する。そして、データ取得部33は、受信信号強度Aの平均値をデータDa、受信信号強度Bの平均値をデータDb、受信信号強度Cの平均値をデータDcとして取得する。
【0040】
ここで、車両1と端末2との間の電波Sdの伝搬経路と、受信信号強度の関係を説明する。
図7及び
図8に示すように、車両1と端末2との間には、第1室外通信部16aと端末2との間の電波Sdの伝搬経路P1と、第2室外通信部16bと端末2との間の電波Sdの伝搬経路P2と、室内通信部17と端末2との間の電波Sdの伝搬経路P3とが存在する。なお、伝搬経路P1,P2,P3には、送信された電波Sdが端末2に到達するまでに、直接波、回折波、反射波として通る種々の経路が含まれる。伝搬経路P1,P2,P3において電波Sdを遮蔽する障害物が存在する場合、電波Sdの受信信号強度が低下する。すなわち、障害物により、電波Sdの受信信号強度に損失が生じる。
【0041】
図7に示す通り、端末2が室外に位置する場合、室内通信部17から送信される電波Sdの伝搬経路P3には、車室44を形成する車両ドア10及びボディ部品40などの障害物が存在する。また、室内通信部17から送信された電波Sdは、障害物を回り込むように回折し、透過部材45を通過して室内から室外へ伝搬する。この回折により、電波Sdの受信信号強度には損失が生じる。
【0042】
室外において車両1の右側に端末2が位置する場合、伝搬経路P2は、伝搬経路P1に比べて伝播距離が長い。また、伝搬経路P2には、障害物として、ボディ部品40が存在する。一方、室外において車両1の左側に端末2が位置する場合、伝搬経路P1は、伝搬経路P2に比べて伝播距離が長い。また、伝搬経路P1には、障害物として、ボディ部品40が存在する。従って、室外において車両1の右側に端末2が位置する場合、通常、受信信号強度A,B,Cのうち、受信信号強度Aが最も大きくなる。また、室外において車両1の左側に端末2が位置する場合、通常、受信信号強度A,B,Cのうち、受信信号強度Bが最も大きくなる。
【0043】
図8に示す通り、端末2が室内に位置する場合、伝搬経路P1及び伝搬経路P2には、車室44を形成する車両ドア10及びボディ部品40などの障害物がある。また、室外通信部16から送信された電波Sdは、障害物を回り込むように回折し、透過部材45を通過して室外から室内へ伝搬する。そのため、通常、受信信号強度A,B,Cのうち、受信信号強度Cが最も大きくなる。
【0044】
上記のように、受信信号強度A,B,Cの大小を比較することによって、端末2が、室外において右側のエリアEa、室外における左側のエリアEb、及び室内のエリアEcのいずれに位置するかを判定することが可能となる期待があった。また、データDa,Db,Dcとして、受信信号強度A,B,Cの平均値の大小を比較することによって、受信信号強度A,B,Cの測定ごとに生じるばらつきによる判定結果への影響を抑制できる。
【0045】
図9に示すように、室外通信部16から送信される電波Sdは、フロントフェンダ41の内部から車両1の外部へ伝搬する間、すなわち、フロントフェンダ41の内面41b側からフロントフェンダ41の外面41a側へ伝搬する間に、フロントフェンダ41を回り込むように回折する。この回折により、受信信号強度A及び受信信号強度Bには、損失が生じる。すなわち、伝搬経路P1及び伝搬経路P2において、フロントフェンダ41の内部から車両1の外部へ伝搬する間に、電波Sdの受信信号強度A,Bには損失が生じる。これに対して、本実施形態の場合、補正部34が設けられている。
【0046】
図6に示す通り、S106では、補正部34は、データDa及びデータDbを補正する。補正部34は、データ取得部33が算出したデータDa及びデータDbを、予め設定された補正量Fにより補正する。補正部34は、補正前より補正後の方が、データDcに対するデータDaの比「Da/Dc」の値が大きくなり、データDcに対するデータDbの比「Db/Dc」の値が大きくなるように、補正を行う。補正部34は、例えばデータDaに補正量Fを加算した値を、補正後のデータDaとして記憶する。また、補正部34は、例えばデータDbに補正量Fを加算した値を、補正後のデータDbとして記憶する。また、補正量Fは、フロントフェンダ41の内部から車両1の外部へ伝搬する間に生じる受信信号強度A,Bの損失を補うように設定されている。そのため、上記損失による位置判定への影響を抑制できる。
【0047】
S107では、位置判定部31は、補正後の、データDa、データDb及びデータDcの大小を比較することにより、端末2が車両1のどのエリアに位置するかを判定する。例えば、位置判定部31は、データDa,Db,Dcのうち、データDaが最も大きい場合、端末2がエリアEaに位置していると判定する。また、位置判定部31は、データDa,Db,Dcのうち、データDbが最も大きい場合、端末2がエリアEbに位置していると判定する。さらに、位置判定部31は、データDa,Db,Dcのうち、データDcが最も大きい場合、端末2がエリアEcに位置していると判定する。
【0048】
ボディECU5は、ID照合が成立し、かつエリアEa又はエリアEbに端末2が位置していると判定されているときに、タッチセンサ13及びロックボタン14の検出信号を基に、ドアロック装置11の作動を制御する。なお、ボディECU5は、端末2の位置しているエリアEa,Ebに応じて、作動させる車両ドア10を制御してもよい。
【0049】
エンジンECU7は、ID照合が成立し、かつ端末2がエリアEcに位置していると判定されていることを一条件に、エンジンスイッチ15が操作されることでエンジン6の遷移を制御する。このように、位置判定システム30により、端末2が車両1のいずれのエリアに位置するかを判定することで、端末2の位置に応じた車両1の作動が可能になる。
【0050】
ところで、電波Sdは、金属材料によって遮蔽され易い。また、室外通信部16は、雨や日光など、外環境による劣化などを避けるため、車両1の外部に露出しないように設けられる。仮に、室外通信部16が金属製のボディ部品40によって囲われるように配置される場合、室外通信部16から車両1の外部へと伝搬する電波Sdがボディ部品40により遮蔽されてしまう。その結果、端末2が室外に位置する場合でも、室外通信部16からの電波Sdの受信信号強度が低下してしまい、端末2が室外に位置するという判定ができなくなる虞があった。
【0051】
本実施形態の場合、室外通信部16は、フロントフェンダ41の内部に設けられている。室外通信部16から送信される電波Sdは、樹脂材料からなるタイヤハウスカバー43を通過して車両1の外部へ伝搬する。そのため、フロントフェンダ41の内部に設けることにより、室外通信部16からの電波Sdの受信信号強度の低下が抑制できる。
【0052】
室内通信部17は、室内において車室44の床面44aの近傍に設けられている。これによれば、室内通信部17から送信される電波Sdは、透過部材45を通って室外へと伝搬する。また、室内から室外へと伝搬する電波Sdは、車高方向において、床面44aの近傍から、車室44を形成する車両ドア10及びボディ部品40などの障害物を回り込むように回折する。この回折により、端末2が室外に位置する場合の受信信号強度Cが低下する。従って、端末2が室外に位置する場合に、受信信号強度Cを、受信信号強度A,Bに対して相対的に小さくできる。
【0053】
以下、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両1には、車両1の室外に設けられた室外通信部16と、室内に設けられた室内通信部17と、が設けられている。位置判定システム30は、室外通信部16と端末2との間、及び室内通信部17と端末2との間で、それぞれ電波Sdが通信されて測定された受信信号強度A,B,CのデータDa,Db,Dcを取得するデータ取得部33を備えている。また、位置判定システム30は、室外通信部16及び端末2の通信、及び室内通信部17及び端末2の通信の各々で得たデータ同士の大小比較の結果から、端末2が、車両1の室外及び室内のどちらに位置するかを判定する位置判定部31と、を備えている。さらに、室外通信部16は、車両1のフロントフェンダ41の内部に配置されている。この構成によれば、室外通信部16と端末2の間において、電波Sdは、フロントフェンダ41の下部に設けられた樹脂材料からなるタイヤハウスカバー43を介して通信される。従って、車両1の外部に端末2が位置する場合に、室外通信部16と端末2の間で、車両1の金属製のボディ部品40によって電波Sdが遮蔽されて受信信号強度A,Bが低下するという事象が発生しにくくなる。これにより、正しく位置判定できる。
【0054】
(2)室外通信部16は、フロントフェンダ41において、車両1の外部に露出する外面41aとは反対の内面41bに設けられている。この構成によれば、室外通信部16を、フロントフェンダ41の内面41bに固定できる。
【0055】
(3)室外通信部16は、車両1における車幅方向の両側に設けられたフロントフェンダ41の内部に、それぞれ設けられた第1室外通信部16a及び第2室外通信部16bを含んでいる。データ取得部33は、第1室外通信部16aと端末2との通信で得たデータDaと、第2室外通信部16bと端末2との通信で得たデータDbと、室内通信部17と端末2との通信で得たデータDcとを取得する。位置判定部31は、データDa、データDb、及びデータDcの大小比較により、車両1の室外において車幅方向一方側のエリアEa、室外において車幅方向他方側のエリアEb、及び車両1の室内のエリアEcのうちいずれのエリアに端末2が位置するかを判定する。この構成によれば、端末2が、車両1の室外及び室内のどちらに位置するかを判定するとともに、さらに室外において、エリアEa及びエリアEbのいずれに位置するかを判定できる。これは、ユーザにとっての利便性の向上に寄与できる。
【0056】
(4)電波Sdは、室外通信部16と端末2との間、及び室内通信部17と端末2との間の各々で、複数の異なる周波数で通信される。この構成によれば、単一の周波数の電波Sdで測定する場合と比べて、他の電波の干渉などによる影響を抑制できる。これにより、受信信号強度A,B,Cの測定ごとに生じるばらつきによる判定結果への影響を抑制できる。
【0057】
(5)データDa,Db,Dcは、各室外通信部16と端末2との間、及び室内通信部17と端末2との間の各々で、複数測定された受信信号強度A,B,Cの平均値を含む。この構成によれば、受信信号強度A,B,Cの測定ごとに生じるばらつきによる判定結果への影響を抑制できる。
【0058】
(6)車両1には、電波Sdを遮蔽する車両ドア10やボディ部品40などの障害物が設けられている。室内通信部17は、車両1の室外に位置する端末2との間で通信する場合に、障害物によって、電波Sdの受信信号強度Cが低下するような位置に設けられている。この構成によれば、室内から室外へと伝搬する電波Sdが、その伝搬経路上で障害物によって影響を受けることにより、端末2が室外に位置する場合の受信信号強度Cを低下させることができる。従って、端末2が室外に位置する場合に、受信信号強度Cを、受信信号強度A,Bに対して相対的に小さくできる。そのため、位置判定部31は、端末2が室外に位置する場合に、端末2が室外に位置すると判定し易くなるので、それだけ判定精度が向上する。
【0059】
(7)車両1には、電波Sdを透過する透過部材45が、車両1の車高方向において車両1の車室44の床面44aから離隔して配置されるように設けられている。また、室内通信部17は、床面44aの近傍に設けられている。この構成によれば、室内通信部17により通信される電波Sdは、透過部材45を通って室外へと伝搬する。室内通信部17により通信される電波Sdは、車高方向において、床面44aの近傍から、車室44を形成する車両ドア10及びボディ部品40などの障害物を回り込むように回折する。この回折により、端末2が室外に位置する場合の室内通信部17の受信信号強度Cが低下する。従って、端末2が室外に位置する場合に、室内通信部17の受信信号強度Cを、室外通信部16の受信信号強度A,Bに対して相対的に小さくできる。そのため、位置判定部31は、端末2が室外に位置する場合に、端末2が室外に位置すると判定し易くなるので、それだけ判定精度が向上する。
【0060】
(8)位置判定システム30は、第1受信信号強度データとしてのデータDa,Dbと、第2受信信号強度データとしてのデータDcとのうち少なくとも一方を補正する補正部34を備えている。補正部34は、前記第2受信信号強度データに対する前記第1受信信号強度データの比を、補正前より補正後の方が大きくなるように補正する。この構成によれば、室外通信部16及び端末2の間で通信される電波Sdの受信信号強度A,Bを、受信信号強度Cに対して相対的に大きくする。これにより、例えば端末2が室外に位置するときに室外の判定をし易くなり、それだけ室外における判定精度を向上できる。
【0061】
(9)補正部34は、データDa,DbとデータDcとの少なくとも一方を、補正量Fによって補正する。補正量Fは、電波Sdの伝搬経路P1,P2において、フロントフェンダ41の内部と車両1の外部との間で伝搬する際に生じる受信信号強度A,Bの損失を補うように設定されている。この構成によれば、フロントフェンダ41の内部に設けられたことにより生じる受信信号強度A,Bの損失に応じた補正を行うことができる。
【0062】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・補正部34は、予め設定された補正量Fによって乗算することにより、補正を行ってもよい。
【0063】
・補正部34は、データDaを補正する場合と、データDbを補正する場合とで、異なる補正量によって補正を行ってもよい。
・補正部34による補正の方法は、予め設定された補正量Fを用いることに限定されない。例えば、受信信号強度A,B,Cの演算に基づく演算を用いて補正を行ってもよい。
【0064】
・補正部34は、第1受信信号強度データを補正してもよいし、第2受信信号強度データを補正してもよいし、これらの両方を補正してもよい。
・補正部34は、第2受信信号強度データに対する前記第1受信信号強度データの比を、補正前より補正後の方が小さくなるように補正してもよい。
【0065】
・補正部34は、省略されてもよく、位置判定において補正前のデータDa,Db,Dcが比較されてもよい。
・データDa,Db,Dcは、受信信号強度A,B,Cの平均値に限定されず、受信信号強度A,B,Cそのものであってもよいし、中央値又は最大値であってもよい。すなわち、受信信号強度A,B,Cに関するデータであればよい。
【0066】
・位置判定部31は、少なくとも室外通信部16及び端末2の通信で得た受信信号強度データと、室内通信部17及び端末2の通信で得た受信信号強度データとの大小比較の結果から、位置判定を行えばよい。例えば、「Da>Dc、且つDc>Db」が成り立つ場合に、エリアEaと判定するようにしてもよいし、「Db>Dc、且つDc>Da」が成り立つ場合にエリアEbに端末2が位置すると判定するようにしてもよい。すなわち、エリアの判定方法は特に限定されない。
【0067】
・位置判定部31は、端末2が車両1のどのエリアに位置するかを判定してもよいし、室内外のどちらに位置するかを判定してもよい。また、端末2が車両1の前側及び後側のどちらにあるかを判定するようにしてもよい。
【0068】
・電波Sdの送信間隔は、特に限定されず、位置判定システム30の仕様に応じて適宜変更してもよい。
・電波Sdには、電波送信元の通信部IDが含まれていなくてもよい。例えば、位置判定部31は、電波Sdの送信タイミングを制御して、受信信号強度の測定結果を受信したタイミングからどの通信部の測定結果なのかを識別してもよいし、電波Sdを送信したアンテナにより測定結果を受信することで識別してもよい。
【0069】
・室外通信部16及び室内通信部17の各々で、周波数が異なる電波Sdの群を一度に送信する態様としてもよい。
・電波Sdは、端末2側から送信されてもよい。
【0070】
・測定部32は、複数の電波Sdの群からその平均値を算出し、車両1側へ通知してもよい。すなわち、受信信号強度データの算出は、車両1側及び端末2側のどちらで行われてもよい。
【0071】
・測定部32は、車両1側に設けられてもよい。これは、端末2側から電波Sdが送信される態様に適用できる。
・複数送信される電波Sdの各周波数は、BLE通信の周波数ホッピングから決まるチャネルに限定されない。
【0072】
・電波Sdは、異なる複数の周波数で送信されることに限定されず、単一の周波数で送信されてもよい。
・電波Sdは、室外通信部16及び室内通信部17の各々から、複数送信されることに限定されず、単一の電波Sdが送信されてもよい。
【0073】
・電波Sdは、位置検出のために送信される位置検出信号でもよいし、アドバタイズメッセージでもよいし、認証システム3において送信される他の信号であってもよい。すなわち、電波Sdは、本実施形態に限定されない。
【0074】
・位置判定の基準となる大小関係は、本実施形態に限定されず、例えば車両1に位置判定システム30が実装された状態で実験された結果などを基に、適宜変更可能である。
・室内通信部17は、センターコンソール、運転席の下側、又は助手席の下側のいずれに配置されてもよいし、室内において他の場所に配置されてもよい。
【0075】
・室内通信部17が配置される床面44aの近傍とは、例えば透過部材45の下側の見切り線45aよりも下側から、床面44aまでの位置であってもよい。また、床面44aの近傍には、床面44aの下側において室内の空間に通じる場所が含まれてもよい。例えば、運転席や助手席などのシートレールの溝内に配置されてもよい。
【0076】
・透過部材は、ガラス部材に限定されず、例えば樹脂材料からなる部材でもよい。
・室内通信部17は、床面44aの近傍に設けられることに限定されず、室内において天井やインストルメントパネルなどに設けられてもよい。また、天井などに設ける場合、室外に位置する端末2と室内通信部17との間の伝搬経路上で電波Sdが回折するように、障害物を設けてもよい。
【0077】
・障害物は、車両ドア10やボディ部品40に限定されず、車両1に設けられる他の部品、例えばシート部材や、ルーフ部材、センターコンソールなどであってもよい。
・室外通信部16は、フロントフェンダ41の内面41bに設けられることに限定されず、例えば内部部品50側に固定されてもよいし、タイヤハウスカバー43に取り付けられてもよい。すなわち、フロントフェンダ41の内部において、室内通信部17の取り付けられる位置は特に限定されず、例えば受信信号強度の損失に応じて適宜変更できる。
【0078】
・室外通信部16が配置されるフロントフェンダ41の内部には、フロントフェンダ41、内部部品50、及びタイヤハウスカバー43に囲われた空間が含まれてもよいし、当該空間に連通する他の空間が含まれてもよい。したがって、フロントフェンダ41の内部は、本実施形態に限定されない。
【0079】
・室内通信部17の個数は特に限定されず、1つでもよいし、2つでもよいし、3つ以上でもよい。
・室外通信部16の個数は特に限定されず、1つでもよいし、2つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0080】
・認証システム3及び位置判定システム30の通信規格や帯域は、実施例に限定されず、例えばWi-Fi(登録商標)やZigBee(登録商標)を用いてもよい。またこれらシステムの間で異なる帯域を使用してもよい。
【0081】
・一連の認証において、ID照合と端末2の位置検出の順番は特に限定されない。例えば、位置検出の後にID照合を行ってもいいし、ID照合と位置検出との実行期間が重なるように行ってもよい。
【0082】
・位置判定システム30は、認証システム3に組み込まれるものに限定されず、車両1に単独で実装されてもよい。
・端末2は、スマートフォンに限定されず、車両1に紐付けられた電子キーであってもよい。また、タブレットコンピュータやラップトップコンピュータ等の他のスマートデバイスであってもよい。
【0083】
・照合ECU4は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)並びに、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0084】
1…車両、2…端末、16…室外通信部、16a…第1室外通信部、16b…第2室外通信部、17…室内通信部、30…位置判定システム、31…位置判定部、32…測定部、33…データ取得部、34…補正部、40…ボディ部品、41…フロントフェンダ、41a…外面、41b…内面、43…タイヤハウスカバー、44…車室、44a…床面、45…透過部材。