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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】小型時計組立体の弾性関節接合
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/00 20060101AFI20240819BHJP
   A44C 5/14 20060101ALI20240819BHJP
   A44C 5/24 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A44C5/00 501D
A44C5/14 Z
A44C5/24
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020132743
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021045533
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】19192106.3
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ ピアザ, フィリップ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130312(JP,A)
【文献】米国特許第04226001(US,A)
【文献】特開2013-132555(JP,A)
【文献】特開平10-196199(JP,A)
【文献】特開2017-122482(JP,A)
【文献】特開昭54-138947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計部品の二つの部品(3、4;3’、4’;3’’、4’’)と回転軸(A1;A1’;A1’’)と、弾性要素(10、10’;10’’)とを有する装置であって、前記二つの部品(3、4;3’、4’;3’’、4’’)は前記回転軸(A1;A1’;A1’’)の周りで前記弾性要素(10、10’;10’’)を有する弾性関節接合(100;100’;100’’)によって互いに連結され、前記二つの部品(3、4;3’、4’;3’’、4’’)の相対移動は前記弾性要素(10、10’;10’)に対して実施され、
前記弾性要素(10、10’;10’’)少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)を含み、前記少なくとも二つの重ね合わされたばねは、前記二つの部品との当接部を備える外側ばねと、前記外側ばねに覆われるように設けられ、両端部で前記外側ばねよりも長さが短く形成されている内側ばねと、を重ね合わされたばねである、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は別個の要素の形を取る
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弾性要素(10、10’;10’’)の前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は、互いに移動可能である、及びまたは前記ばねのそれぞれの表面の少なくとも一部に固定される
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記弾性要素(10、10’;10’’)の前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は、前記二つの部品(3、4;3’、4’;3’’、4’’)が相対的に回転運動する際に、前記少なくとも二つの重ね合わされたばねが同じ方向に力が作動するように重ね合わされている
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記弾性要素(10、10’;10’’)は軸(A2;A1’;A2’’)の周りに配置される
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記弾性要素(10、10’;10’’)の前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は、曲がったブレードの形を取る
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性要素(10、10’;10’’)の前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は、ブレードの形を取り、少なくとも一つの第一ブレードが第二ブレードを覆う
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記弾性要素(10、10’;10’’)の前記少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)は、0.1mmと0.25mmの間の、または0.12mmと0.2mmの間の、または0.13mmと0.19mmの間の厚みを有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記弾性要素(10、10’;10’’)は、異なる厚みを有する少なくとも二つの重ね合わされたばね(10a、10b、10a’、10b’;10a’’、10b’’)を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の二つの部品(3、4;3’、4’)の間に配置される前記弾性関節接合のための装置を含み、前記二つの部品は、第一部品と第二部品で構成される、
小型時計外部装置。
【請求項11】
前記小型時計外部装置は腕時計のバンドのための留め具であり、前記留め具は、互いに相対的に移動可能な第一の留め具ブレード(6a)と第二の留め具ブレード(6b)を含む少なくとも二つの留め具ブレード(6a、6b)を含み、前記第一部品は、把持部材(32)と係止フック(31)を含む第一の可動バンド連結部材(3)であり、前記第二部品は、第二のバンド連結部材(4)であり、前記二つの部品は前記第一の留め具ブレード(6a)に取り付けられ、前記係止フック(31)は、前記第一の留め具ブレード(6a)が自由端とは反対側の第二端で関節接合される前記第二の留め具ブレード(6b)の係止ブロック(7)と協働可能となるように、前記第一の留め具ブレード(6a)の前記自由端に配置される
請求項10に記載の小型時計外部装置。
【請求項12】
前記第一の可動バンド連結部材(3)は、係止フックを有する把持部材の形を取り、前記第二のバンド連結部材(4)は留め具のカバーの形を取り、その上で前記第一の可動バンド連結部材(3)が回動する
請求項11に記載の小型時計外部装置。
【請求項13】
前記弾性要素(10、10’)は前記係止フック(31)に対してトルクを発揮し、それにより前記係止フック(31)を前記第二の留め具ブレード(6b)の前記係止ブロック(7)との係合に対応する位置に移動させ、前記弾性要素(10、10’)は当該位置において張力を受け、それにより、前記係止フック(31)が前記係止ブロック(7)と係合しまたは係合解除する際に、前記係止フック(31)は前記弾性要素(10、10’)に対して回動される
請求項11または12に記載の小型時計外部装置。
【請求項14】
前記小型時計外部装置はバンド延長装置であり、前記第一部品は、第一の、回転可能な可動連結部材(3’)であり、前記第二部品は、第二の、留め具カバーに対して並進移動可能な可動連結部材(4’)である
請求項10に記載の小型時計外部装置。
【請求項15】
前記小型時計外部装置は留め具であり、前記第一部品は、第一の、爪(31’)を含む回転可能な可動連結部材(3’)であり、前記第二部品は、並進移動可能な可動連結部材(4’)であり、前記留め具は、前記第一の、回転可動連結部材(3’)が前記留め具に対して固定可能な閉じ位置を占めることができ、ここで前記爪(31’)は前記留め具に配置された補足的な歯部(7’)の歯と協働し、前記弾性要素(10’’)は回転可動連結部材(3’)を前記留め具に配置された前記補足的な歯部(7’)に向かって押圧する、
請求項14に記載の小型時計外部装置
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計部品の二つの部品(3、4;3’、4’)の間に配置される前記弾性関節接合のための装置、または請求項10から15のいずれか一項に記載の小型時計外部装置を含む、腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型時計組立体の二つの部品の間にある弾性関節接合連結部材(elastic articulated link)の装置に関し、より詳細には、小型時計外部装置の、とりわけ腕時計バンドにおける、バンドの留め具にまたはバンドの連結部材に配置される、二つの部品に関する。本発明はさらに、そのような装置を含む外部装置、より一般的にはこのような装置を含む時計部品、留め具、バンドおよび腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計、とりわけ腕時計の外部装置における二つの部品の間に、弾性関節接合を装備することが必要な状況がいくつかある。
【0003】
特許文献1には、例えば、バンド留め具の二つの可動ブレードを弾性的に係止及び係止解除するための解決法を示す。第一可動ブレードは、一つ以上の弾性要素の効果の下で、係止ブロックに対して係止フックを引掛けることにより、第二ブレード上に折り重ねられた位置に係止される。
【0004】
この例によると、良好な係止の安定性を保証しつつ、留め具を開くのに必要な力を最適化することが可能となるため、閉じ状態の保証および操作性の面から、非常に満足な解決法となる。
【0005】
さらに、留め具を有する解決法において、従来の設定と呼ばれる、バンドに対する留め具の配置の第一設定が一般的にある。しかしながら、最終的に得られる長さはしばしば完璧ではなく、最適な長さではない。そのため、引用文献2に記載されるような既存の留め具は、従来の第一設定を補足する、バンド長さの第二設定のための解決法を備える。この第二設定は、道具や特別な技術を必要とすることなく、非常に簡単で容易な操作を行うことにより、バンド長さを変更し、初期設定を変えることを可能とする。この第二設定はとりわけ、例えば温度や雰囲気圧力によって、およびバンドの着用のために苦労して腕を使うことによって、腕周りに変化があった場合でも、それに対応する初期設定の容易な修正を容易にすることにより、装着者の快適さを向上することを可能とする。この解決法は、二つの外装部品間、とりわけバンドの二つの連結部材間の、弾性関節接合に依拠する。
【0006】
最後に、上述した既存の弾性関節接合による解決法は有効ではあるが、これらの解決法をさらに向上する必要がある。実際、これらの解決法の信頼性や操作性と、使用者によるこれらの解決法の操作の感覚との最適な折衷が常に求められており、この使用者による感覚は弾性関節接合を採用する商品の質に関して知覚される印象に直接的に繋がるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第1654950号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2606762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、本発明の概括的な目的は、弾性組立体の効率と知覚される質との最適な折衷を達成する、小型時計組立体の二つの部品間の弾性関節接合連結部材による解決法を提案することにある。
【0009】
とりわけ、このような解決法は、特にバンドの留め具に採用することを求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目標を達成するために、本発明は、小型時計組立体の二つの部品の間に配置される弾性関節接合連結部材の装置に基づき、当該連結部材は、少なくとも二つの重ね合わされたばねを含む、少なくとも一つの弾性要素を含む。
【0011】
本発明は、特許請求の範囲により詳細に定義される。
【0012】
本発明の上述した目的、特徴及び有利点は、添付の図面に関連して非制限的に与えられる特定の実施形態に係る後述の説明において、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る留め具を上から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る留め具の上面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る留め具の第一構成における、留め具の断面III-IIIにおける断面図である。
図4図4は、図3の断面図における詳細の拡大図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る留め具の第一構成における、留め具の断面V-Vにおける断面図である。
図6図6は、図5の断面図における詳細の拡大図である。
図7図7は、第一構成から第二構成に移行する留め具における弾性関節接合の作動に際する、図4と同様の図を示す。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る弾性関節接合における、弾性要素の分解斜視図を示す。
図9図9は、従来例の解決法との比較における、本発明の第一実施形態に係る留め具の係止解除または開放の力を示すグラフである。
図10図10は、その係止解除の力が図9に示される従来例の解決法に係る弾性関節接合の断面図である。
図11図11は、その係止解除の力が図9に示される従来例の解決法に係る弾性関節接合の断面図である。
図12図12は、本発明の別の実施形態に係る弾性要素を示す模式図である。
図13図13は、本発明の第二実施形態に係る第一構成における留め具の断面図である。
図14図14は、本発明の第二実施形態に係る留め具の弾性関節接合を示す、図13の断面図を詳細に示す図である。
図15図15は、本発明の第二実施形態に係る第二構成の留め具における弾性関節接合を示す、図14と同様の断面図である。
図16図16は、本発明の別の実施形態に係る、カレンダーカムレバー装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、後述の通り、小型時計外部装置の二つの部品間に弾性関節接合を装備する弾性力に関して有利な挙動を可能とする、少なくとも二つの重ね合わされたばねを含む、少なくとも一つの弾性要素の使用に依拠する。さらに有利には、これら二つのばねは別個である。さらに有利には、二つのばねのうちの一方は、二つのばねのうちの他方の表面の全面を覆う。
【0015】
図1から7は、二つの関節接合されたブレード 6a、6bを含む、本発明の第一実施形態に係るバンドの留め具200を示す。この留め具は、特許文献1に記載されたものに似た作用を有し、その詳細はここでは説明しない。本発明の第一実施形態の留め具は、後述される通り、二つの重ね合わされたばねを含む弾性要素を有する点で、主に従来技術の解決法とは異なる。
【0016】
留め具200はカバーを有しない。留め具200は、2本のバンド300の端部連結部材をそれぞれのブレードに直接配置するよう設計される。バンドはとりわけ、可動連結部材3を有し、可動連結部材3は、とりわけ第三ピン9を介して互いに固定された中央連結部材4と二つの外側連結部材5a、5bに対して移動可能なように、第一軸A1の第一ピン1に取り付けられる。係止フック31が、より少ない遊びを有して、第二軸A2の第二ピンまたはリベット2を介して可動連結部材3に固定される。この組立体は留め具200の第一可動ブレード6aに配置される。
【0017】
図1から6は留め具200の第一の閉じた構成を示し、この構成においては、係止フック31は留め具の第二ブレード6bに固定された係止ブロック7と協働する。
【0018】
可動連結部材3の、とりわけフック31の、中央連結部材4に対する関節接合は、二つの同一のまたは実質的に同一の弾性要素10、10’を有する弾性関節接合100を形成する。各弾性要素10、10’は、一方では係止フック31に、他方では外側連結部材5a、5bに固定されたバンドの中央連結部材4の間で、予応力をかけられる。この中央連結部材4は装置の固定当接部4aを形成する。各弾性要素はこのように、係止フック31に対して力を加え、それにより係止フック31を係止ブロック7と噛み合った閉じた構成に移動させ、それを維持する。図2および図3から6に示す通り、第一実施形態に係る留め具は、留め具の長手方向正中面Pの両側に実質的に対称に配置される二つの弾性要素10、10’を含む。
【0019】
この実施形態において、弾性関節接合100はそのため二つの実質的に同一の弾性要素10、10’を含む。弾性要素10は二つの重ね合わされたばね10a、10bを含む。これら二つのばね10a、10bは共に曲がったブレード形状を取る。二つのばね10a、10bは丸みを帯びた形状を含み、それによりばねはフック31の凹部33内において、第二軸A2の周りに配置されることが可能となる。同じく、二つのばね10a’、10b’は共に、実質的に曲がったブレードの形を取る。図6で特に見ることができるように、ばね10a’、10b’は丸みを帯びた形状を含み、それによりばねはフック31の凹部33’内において、第二軸A2の周りに配置されることが可能となる。
【0020】
二つのばね10a、10bは別個の要素である。この実施形態によると、二つのばね10a、10bは別個の要素に属する。各ばね10a、10bは単一の及びまたは一体の組立体を形成する。
【0021】
第一ばね10bは、第二軸A2により近いため、内側ばねと呼ばれる。内側ばねは、外側ばねと呼ばれる第二ばね10aに覆われる。この第二の、外側ばね10aは、第一の、内側ばね10bにはまり、有利にはその表面の全面を覆う。外側ばね10aは、第一の、内側ばね10bよりも長い長さを有する。第二ばね10aの第一端102aは、中央連結部材4の第一当接部4aにばねが支持されることを可能とし、固定当接部を形成する。第二ばね10aの第二端101aは、フック31の第一の凹部33の当接部33aにばねが支持されることを可能とする。ばねはこのようにして二つの端部101a、102aの間において予応力をかけられ、前述した通り、フック31に応力を伝達する。第二の、外側ばね10aもまた、接触面において第一ばね10bに支持され、同様に、弾性力を第二の外側ばね10aに伝える。弾性要素10の挙動は、このようにして、二つのばね10a、10bの挙動の組み合わせに対応する。
【0022】
図7は、留め具の二つの部品3、4を伴って、第一回転軸A1の周りに弾性関節接合連結部材を形成する装置の作動を示し、この二つの部品は回転軸A1の周りにおいて、二つの弾性要素10、10’を介して、弾性関節接合連結部材によって互いに連結される。本発明の第一実施形態によると、関節接合された連結部材により、留め具の係止/係止解除の機能が果たされる。図1から6には、第一の、閉じた構成にある留め具が図示され、ここでは係止フック31が留め具のブレード6bの係止要素7と噛み合う。可動連結部材3に固定された把持部材32を通じて、留め具200の開放が実施される。把持部材32の作動には、可動連結部材3の(図7の時計回り方向への)回転を引き起こす力Fdを必要とし、その力により係止フック31が係止ブロック7から引っ込められる。開放または係止解除に必要な力Fdは、中央連結部材4に対して可動連結部材3を、ひいてはフック31を、移動する効果の下で、二つのばね10a、10b、10a’、10b’の二つの弾性要素10、10’によって誘発された圧縮力Fの和によりほぼ与えられる。この力Fは中央連結部材4の当接部4aにおいて、ばねによって発揮される。これは二つのばね10b、10aの重ね合わせの方向に実質的に平行に配置され、この方向は当該当接部4aに近接した二つのばねの端部と考慮される。
【0023】
したがって開放の際には、把持部材32の影響の下で可動連結部材3が中央連結部材4に対して回転するため、二つの弾性要素は圧縮される。閉じる際には、係止フック31の端部と係止ブロック7の上部が接触するため、弾性要素は圧縮される。それにより係止フック31が引っ込み、可動連結部材3も引っ込むため、係止フック31は係止ブロック7の下に収容可能となる。すべてのケースにおいて、二つの弾性要素10、10’は中央連結部材4の当接部4aと凹部33、33’のそれぞれの当接部33a、33a’によって予応力をかけられる。
【0024】
この第一実施形態によると、二つのばね10a、10bは互いに固定されない。従って、第二の、外側ばね10aは、ばねの圧縮を受けて第一ばね10bに対して完全に自由に移動することができる。この構成により、各ばねの剛性を、ひいては可動連結部材3の所定の回転角度に対する留め具の開放または係止解除の力Fdを最大化しつつ、ばねを形成するブレードの応力を最適に分布させることが可能となる。さらに、この構成により、図8に模式的に示す通り、単に第二ばね10b、10b’を第一ばね10a、10a’とピン2の軸A2との間に挿入することにより、特に簡単に装備することのできる弾性関節接合連結部材を提供することができる。当然、変形例として、二つのばねが圧縮される際の相対的な移動を維持しつつ、例えばスポット溶接により、二つの重ね合わされたばねを局所的に固定することもできる。
【0025】
図9に、三つの異なるタイプの弾性関節接合A、B、Cに関して、可動連結部材3の回転角度15°について、図1および2に示される留め具の係止解除または開放力Fda、Fdb、Fdcを記録するグラフを示す。関節接合Aは従来から既知の第一弾性関節接合に対応し、これは図1及び2に示す通り、留め具の長手方向正中面Pの両側に沿って実質的に対称に配置される二つの同一のばねA10、A10’を含み、ばねA10を図10の断面図に示す。ばねA10、A10’は、折り返された一つの同じブレードの形を取り、その厚みは0.18mmである。関節接合Bは、関節接合Aと同様に、従来から既知の第二弾性関節接合に対応するが、関節接合Aの厚み0.18mmの代わりに、厚み0.21mmをそれぞれ有する二つのばねB10、B10’を含む。この関節接合Bは図11の断面図に示され、この図においてはより大きい厚みを有するばねB10が、その厚みの違いがより分かりやすいよう強調された状態で示される。最後に、関節接合Cは図4、5に示される、本発明の第一実施形態に係る弾性関節接合に対応し、これは重ね合わされたばねの二つの組み合わせからなり、外側ばね10a、10a’は0.18mmの厚みを有する二つの曲がったブレードであり、内側ばね10b、10b’は0.14mmの厚みを有する二つの曲がったブレードである。ここで、ばねやブレードは同じ鋼鉄材料からなり、特にNivaflex製である。
【0026】
これらの三つの手段により、本発明の有利点を示すことができる。実際、同一の開放角度α、例えば15°において、本発明の関節接合Cによって生じる力Fdcは、関節接合Aによって生じる力Fdaと比較して50%ほど増加し、かつ、ばねを構成するブレード材料の弾性限度より少ない応力しか引き起こさない。関節接合Bによって生じる力Fdbは、実質的に力Fdcと同等である。しかしながら、(ミーゼス基準による)応力は、Nivaflex材料においては2500MPa程であるばねの構成材料の弾性限度を考慮すると、許容できるものではない。最新の教示によると、このような係止解除装置の開放または係止解除の力を増加することは、本質的には当該弾性関節接合にかかわるすべてのまたは一部のばねの厚みを増加させることを必要とし、そのことは関節接合Bの例のように、所定の厚みを超えてブレードを可塑化するリスクにつながる。言い換えれば、留め具の係止解除装置の最大開放力は、ばねを形成する各ブレードが耐えることのできる最大応力に依存し、これは期待される開放力に対して限定的である可能性がある。
【0027】
本発明に係る関節接合Cは、それぞれが二つの重ね合わされたばねを含む、弾性要素を含み、これら二つのばねは異なる厚みを有する。当然、変形例として、これらのばねは同一の厚みを有してもよい。また、二つのばねは、図8に示すように同じ幅La、La’、Lb、Lb’を有してもよいし、そうでなくてもよい。重ね合わされたばね10a、10bの材料は同じであってもなくてもよい。
【0028】
図9における曲面は、本発明の効果を示す例として提示される。変形例として、本発明に係る弾性要素の少なくとも二つのばねは、有利には、0.1mmと0.25mmの間の、または0.12mmと0.2mmの間の、または0.13mmと0.19mmの間の、他の厚みEa、Eb、Ea’、Eb’を有する。好ましくは、弾性要素の少なくとも二つのばねは鋼鉄、とりわけNivaflex製である。
【0029】
本発明に係る弾性関節接合は以下の有利点を有することが明らかである。
―弾性関節接合は、展開型の分岐部及びまたは留め具のカバーの弾性とは独立して、繰り返し可能な開放または係止解除の力を発生させる;
―弾性関節接合は、戻りトルクを最大化し、その操作における知覚を向上させることができる;
―技術水準に比べて増加した戻りトルクにも関わらず、ばねの構成材料において満足な応力レベルを維持することができる;
―弾性関節接合を具備する係止装置を有するすべての留め具の種類において簡単に採用することができる。
【0030】
もちろん、本発明に係る弾性要素は、提示された以外の形を取ることができる。第一に、この弾性要素は二つ以上の重ね合わされたばねを含むことができる。弾性要素は、例えば、三つ、四つまたはそれ以上の重ね合わされたばねを含むことができる。このように、本発明は複数の重ね合わされたばねを有する弾性要素を使用することに依拠する。さらに、本発明に係る関節接合は一つの弾性要素を含むことができる。
【0031】
さらに本発明は、カバーを付けた留め具に装備可能である。そのため、可動連結部材3は係止フックを有する把持部材の形を取ることができ、中央連結部材4は、その上で係止フックを有する把持部材が軸1の周りを回動する、カバーの形を取ることができる。このような留め具の場合、軸A1は、有利には、軸A2と一致させることができる。
【0032】
さらに、本発明の変形例によると、各ばねはどのような形を取ってもよい。例えば、図12に示す通り、二つの重ね合わされたばね10a、10bはブレードまたはビームの形、つまり平らで薄い要素、であってよく、第二の部品4、4に対して第一の部品3、3が回転した際に、曲がることによって変形するよう設計される。これに関連して、各ブレードは部品3と4に接する取付領域Eにおいて局地的に固定可能である。さらに、各ブレードは固定された部分があってもなくてもよい。
【0033】
もちろん、本発明の概念に係る弾性要素は、外部装置の二つの小型時計部品の間に配置されるあらゆる弾性関節接合に使用可能である。従って、図13から15は、例として、本発明の概念を、ここではその詳細を説明しない参考文献として採用された特許文献2に記載されるような、バンドの延長するための精密な延長装置200’に装備したものを示す。
【0034】
図13から15は、本発明の第二実施形態に係る、延長装置200’に装備された弾性関節接合100’を特により詳細に図示する。この実施形態において、関節接合は二つの重ね合わされたばね10a’’、10b’’の組を含む一つの弾性要素10’’を含む。これら二つの重ね合わされたばねは軸A1’のピン1(または回転軸)の周りに配置され、バンド300’の可動連結部材3’の回転軸を形成する。各ばねは、曲がったブレードにより得られたV字型であり、その基部は、ピン1’の丸みを帯びた表面の一部に沿うよう、丸みを帯びている。
【0035】
可動連結部材3’は、案内軸A2’を通じて留め具カバー6’の長手方向に並進移動可能な連結部材4’に対して、軸A1’の周りを回転するよう駆動可能である。弾性関節接合100’の効果の下に、可動連結部材3’の爪31’とカバー6’の歯部7’における歯7a’との協働により、バンド300’を予め定められた長さに構成することができる。このためには、第二の、外側ばね10a’’の第一及び第二端101a’’、102a’’はそれぞれ、爪31’を歯部7’に対して押し付けるよう、可動連結部材3’の第一当接部3a’および並進移動可能な可動連結部材4’の第二の当接部4a’に対して予応力を与えられる。
【0036】
図15に示すとおり、連結部材3’が弾性要素10’’に抗して時計回り方向へ回転することにより、爪31’が歯部7’から引っ込められ、並進移動可能な可動連結部材8’の、従って留め具のカバー6’に対する可動連結部材3’の、並進が許可される。この構成において、バンド300’の長さが調整可能となる。
【0037】
弾性要素10’’によって得られる利点は、第一実施形態に係る弾性要素のものと同じであり、とりわけ、ばねの各ブレードの構成材料において満足な応力レベルを維持しつつ、延長装置200’の開き力が所定の大きさにおいて最大化される。
【0038】
もちろん、前述の解決法のいくつかの要素は、変形例として、別の形を取ることができる。とりわけ、これまで見てきた通り、複数の重ね合わされたばねを有する一つ以上の弾性要素を一つの同じ弾性関節接合に使用することができる。
【0039】
ばねの重なり合いとは、ばね同士が直接または間接の接触表面を有し、それにより、弾性関節接合の作動の際に、相互の効果が組み合わされることにより、内部応力を最小化しつつ引き起こされた弾性力を最適化することができることを意味する。従って、これら二つのばねは有利には、弾性関節接合の作動の際にばねが引き起こす弾性力に平行な方向に重ね合わされる。
【0040】
さらに、延長装置200’の説明に見られる通り、弾性要素は有利には、弾性関節接合に必要な小型時計外部装置の二つの部品の回転軸の周りに配置可能である。もちろん、留め具200の説明において示された通り、弾性要素はこの回転軸からオフセットされ、及びまたは離されて配置されてもよい。弾性要素は他の軸周りに、または軸と独立して、配置されてもよい。
【0041】
この弾性要素の少なくとも二つのばねは、有利には、二つのブレードの形を取る。さらに有利には、第一ブレードが第二ブレードの全体を覆う。あるいは、二つのブレードの重なり合いは部分的であってもよい。
【0042】
さらに、弾性要素の少なくとも二つのばねは、有利には0.1mmと0.25mmの間の、または0.12mmと0.2mmの間の、または0.13mmと0.19mmの間の
厚みを有する。好ましくは、この少なくとも二つのばねは鋼鉄、とりわけNivaflex製である。
【0043】
本発明は、本発明によってそれ自体が影響を受ける腕時計と関連するバンド留め具に基づいて説明され、特に留め具の係止機構、またはバンドの延長装置に基づいて説明された。変形例として、本発明の原理は、動きが純粋な回転であるか、または他の変位と組み合わされる回転のようなより複雑な動きであるかに関わらず、二つの小型時計部品の間に配置されるどのような弾性関節接合連結部材にも実施可能である。本発明の原理はさらに、ムーブメントに弾性関節接合100’’を適用する際に装備可能である。例えば、このような弾性関節接合100’’は、図16に示す通り、カレンダーカムレバー装置200’’を規定するために活用可能である。例として、この装置200’’はムーブメントブランク4’’に対して第一軸A1’’周りに回動されるレバー3’’を含んでよい。レバー3’’の端3a’’は、ブランク4’’の(図16には示されない)凹部内の第二軸A2’’の周りに配置され、レバー3’’とブランク4’’の当接部4a’’との間に予応力を有して設けられる、二つのU字型のばね10a、10bを含むことを特徴とする弾性要素10によって、カレンダーカム5’’に対して弾性的に戻される。期待される利点は上述されたものと同じであり、すなわち、ばね10a、10bのブレード内の許容可能な応力レベルを維持しつつ弾性要素10の復帰力F’’が最大化される。
【符号の説明】
【0044】
3、4 連結部材
A1;A1’;A1’’ 軸
6a、6b ブレード
7’ 歯部
10、10’;10’’;10 弾性要素
10a、10b、10a’、10b’、10a’’、10b’’;10a、10b ばね
31 係止フック
100;100’;100’’ 弾性関節接合
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15
図16