(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20240819BHJP
F16L 37/084 20060101ALI20240819BHJP
A62C 33/00 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L37/084
A62C33/00 A
(21)【出願番号】P 2020139292
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲治
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-287377(JP,A)
【文献】特開平11-201357(JP,A)
【文献】特開2003-185079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C33/00
F16L37/084-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、
前記先端部を含む円筒部と、
前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、
前記後端部に設けられ、前記先端部に近づくに連れて外径が増す第1テーパ面と、
を有し、
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、
前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具と、
前記押し輪側の前記固定具の端部から前記装着部と前記固定具との間に挿入されたリングと、
をさらに備え、
前記リングは、前記軸方向において前記後端部に対向するとともに前記円筒部よりも前記半径方向に突出した凸部を備え、
前記凸部は、前記後端部に近づくに連れて外径が増す第2テーパ面を有している、
結合金具。
【請求項2】
前記第2テーパ面の最大外径は、前記第1テーパ面の最小外径よりも大きい、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記第2テーパ面の前記最大外径は、前記第1テーパ面の最大外径よりも小さい、
請求項2に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1~4参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の凸部である係止部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と係止部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消防活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1~4においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)の鍔部(フランジ部)よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させて鍔部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0007】
特許文献3に開示された結合金具においては、押し輪(係合解除環体)の鍔部(周縁フランジ)に傾斜端面が設けられている。これにより、障害物が鍔部に当たったとしても両者が滑り、押し輪が押し込まれない。
【0008】
特許文献4に開示された結合金具においては、差し金具および受け金具にホースを装着するための短管に傾斜縁部が設けられている。これにより、障害物が傾斜側縁に当たったとしても両者が滑り、押し輪が押し込まれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-14477号公報
【文献】特開2018-31464号公報
【文献】特開平11-201357号公報
【文献】特開平11-287377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1~4に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係る結合金具においては、差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪は、前記先端部を含む円筒部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、前記後端部に設けられ、前記先端部に近づくに連れて外径が増す第1テーパ面と、を有している。前記差し口は、前記軸方向において前記後端部に対向するとともに前記円筒部よりも前記半径方向に突出した凸部を備えている。前記凸部は、前記後端部に近づくに連れて外径が増す第2テーパ面を有している。
【0012】
前記第2テーパ面の最大外径は、前記第1テーパ面の最小外径よりも大きいことが好ましい。前記第2テーパ面の前記最大外径は、前記第1テーパ面の最大外径よりも小さいことが好ましい。
【0013】
前記差し金具が外周面に設けられた装着部を有し、前記差し口が前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備えてもよい。この場合において、前記凸部は前記固定具の一部であってもよい。
【0014】
前記差し金具が外周面に設けられた装着部を有し、前記差し口が前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具と、前記押し輪側の前記固定具の端部から前記装着部と前記固定具との間に挿入されたリングと、をさらに備えてもよい。この場合において、前記凸部は前記リングの一部であってもよい。
【0015】
他の実施形態に係る結合金具において、前記押し輪は、前記先端部を含む円筒部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、を有している。さらに、前記円筒部に対する前記後端部の突出量は、4.8mm以下である。
【0016】
前記差し金具が外周面に設けられた装着部を有し、前記差し口が前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備えてもよい。この場合において、前記固定具に対する前記後端部の突出量は4.5mm以下であることが好ましい。
【0017】
前記差し金具が外周面に設けられた装着部を有し、前記差し口が前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備えてもよい。この場合において、前記後端部の外径は前記固定具の外径よりも小さいことが好ましい。
【0018】
さらに他の実施形態に係る結合金具において、前記押し輪は、前記先端部を含む円筒部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、を有している。さらに、前記差し口は、前記差し金具が通されるとともに前記後端部を覆う柔軟なカバーを備えている。
【0019】
前記差し金具が外周面に設けられた装着部を有し、前記差し口が前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備えてもよい。この場合において、前記カバーの一部が前記固定具と前記装着部の間に位置してもよい。
【0020】
さらに他の実施形態に係る結合金具において、前記押し輪は、前記先端部を含む円筒部と、前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、を有している。前記差し金具は、前記押し輪が装着される小径部と、前記小径部よりも外径が大きく、内周面にホースを装着するための装着部が形成された大径部と、を有している。さらに、前記後端部の外径は、前記大径部の最大外径以下である。
【0021】
前記大径部は、前記押し輪に近づくに連れて外径が減少するテーパ面を有してもよい。この場合において、前記テーパ面の最小外径は、前記後端部の外径よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る結合金具の概略的な側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した受け口をしめ輪側から軸方向に沿って見た図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
【
図4】
図4は、消防用ホースに接続された第1実施形態に係る結合金具の概略的な側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る結合金具の作用を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る結合金具の誤脱防止効果を検証した結果を示す表である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る差し口の概略的な側面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る押し輪に適用し得る他の形状例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る押し輪に適用し得るさらに他の形状例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る結合金具の誤脱防止効果を検証した結果を示す表である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る差し口の他の一例を示す概略的な側面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る押し輪の他の一例を示す概略的な側面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る差し口の概略的な側面図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係る差し口の他の例を示す概略的な側面図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態に係る差し口のさらに他の例を示す概略的な側面図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態に係る差し口の概略的な側面図である。
【
図19】
図19は、第5実施形態に係る結合金具の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
いくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
各実施形態においては、主に消防分野で消防用ホースの結合に使用される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用のホースの結合など種々の用途で利用できる。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る結合金具Cの概略的な側面図である。結合金具Cは、受け口Fと、差し口Mとを備えている。受け口Fは、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口Mは、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0026】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。また、軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。
【0027】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。さらに受け金具1は、消防用ホースの端部に挿入される装着部11を第1端部1a側の外周面に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。装着部11には、消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。
【0028】
受け口Fは、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面に装着された保護部材4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。保護部材4は例えば樹脂材料で形成され、その外周面は受け口Fおよび差し口Mにおいて最も半径方向Drに突出している。
【0029】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。さらに差し金具2は、消防用ホースの端部に挿入される装着部21を第1端部2a側の外周面に有するとともに、係止部22を第2端部2b側に有している。係止部22は、例えば周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の凸部である。装着部21には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。
【0030】
差し口Mは、装着部21と係止部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の止め輪5と、軸方向Dxにおいて係止部22と止め輪5の間に設けられた押し輪6とをさらに備えている。止め輪5は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0031】
押し輪6は、係止部22と対向する先端部6aと、軸方向Dxにおいて先端部6aの反対側に位置する後端部6bと、先端部6aを含む円筒部60とを有している。円筒部60は、外周面2cを囲っている。係止部22および止め輪5により、押し輪6が差し金具2に対し抜け止めされている。押し輪6は、係止部22と止め輪5の間において軸方向Dxにスライド可能である。
【0032】
後端部6bは、全周にわたり円筒部60に対し半径方向Drに突出している。このような形状の後端部6bは、鍔部やフランジ部と呼ぶこともできる。さらに、後端部6bは、軸方向Dxにおいて先端部6aに近づくに連れて外径が増すテーパ面T1(第1テーパ面)を有している。
【0033】
図2は、受け口Fを軸方向Dxに沿ってしめ輪3側から見た図である。図示したように、軸AX1(AX2)を中心とした周方向Dθを定義する。しめ輪3の内部には、3つの爪7A,7B,7Cが配置されている。爪7A,7B,7Cは、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。なお、受け口Fが備える爪の数は3つに限られない。
【0034】
図3は、受け口Fと差し口Mが連結された状態(結合状態)における結合金具Cの部分断面図である。受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する端部3aを有している。端部3aは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。
【0035】
受け口Fは、拡径部12の内側に配置されたシール材8と、爪7A,7B,7Cを保持する爪座9とをさらに備えている。シール材8は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座9は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと端部3aの間に配置されている。
【0036】
爪7Aは、爪座9と第2端部1bの間において、半径方向Drと平行に移動可能である。爪7Aは、例えば板ばねである弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。なお、爪7B,7Cも爪7Aと同じく爪座9と第2端部1bの間において半径方向Drと平行に移動可能であり、弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0037】
受け口Fと差し口Mを結合する際には、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、係止部22が弾性部材70の付勢力に抗して爪7A,7B,7Cを半径方向Drに押し上げる。これにより、
図3に示すように第2端部2bと拡径部12の内面とが接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0038】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材8のリップが係止部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。
【0039】
さらに、爪7A,7B,7Cが弾性部材70の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪7A,7B,7Cのそれぞれの一部が係止部22と軸方向Dxに対向する。すなわち、係止部22と爪7A,7B,7Cが軸方向Dxに係合するために、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0040】
受け金具1と差し金具2を離脱させる際に、作業者は、押し輪6を爪7A,7B,7Cに向けて押す。このとき、押し輪6の先端部6aにより爪7A,7B,7Cが半径方向Drに押し上げられ、係止部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される。
【0041】
図4は、消防用ホースHに接続された結合金具Cの概略的な側面図である。消防用ホースHは、糸材で織成されたジャケットと、このジャケットの内側に形成されたライニング層とを備えている。
【0042】
受け口Fは、円筒状の固定具R1をさらに備えている。差し口Mは、円筒状の固定具R2をさらに備えている。固定具R1は、消防用ホースHの一端を受け金具1の外周面(上述の装着部11)に締め付ける。固定具R2は、消防用ホースHの他端を差し金具2の外周面(上述の装着部21)に締め付ける。固定具R1,R2は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の金属製である。
【0043】
図4の例においては、保護布G1が固定具R1によって消防用ホースHとともに受け金具1の外周面に締め付けられている。また、保護布G2が固定具R2によって消防用ホースHとともに差し金具2の外周面に締め付けられている。保護布G1は、受け口Fの近傍において消防用ホースHの外面を覆っている。保護布G2は、差し口Mの近傍において消防用ホースHの外面を覆っている。
【0044】
このような消防用ホースHは、差し口Mを他の消防用ホースHの他の受け口Fに連結すること、または受け口Fを他の消防用ホースHの差し口Mに連結することで、当該他の消防用ホースHに接続することができる。
【0045】
図5は、
図4に示した差し口Mを拡大した図である。本実施形態において、固定具R2は、押し輪6の円筒部60よりも半径方向Drに突出した凸部PT1を有している。凸部PT1は、軸方向Dxにおいて押し輪6の後端部6bに対向している。
【0046】
凸部PT1は、後端部6bに近づくに連れて外径が増すテーパ面T2(第2テーパ面)を有している。例えば、固定具R2の厚さは、凸部PT1を含め全体的に一様である。この場合、凸部PT1の内周面と差し金具2の外周面との間には、後端部6bに近づくに連れて大きくなる隙間が形成される。このような形状の凸部PT1は、フレア部と呼ぶこともできる。凸部PT1は、例えば差し金具2に対して固定具R2を加締める際に、後端部6b側の端部の外径を絞らないようにすることで形成できる。
【0047】
テーパ面T1の軸方向Dxにおける幅は、テーパ面T2の軸方向Dxにおける幅よりも小さい。また、軸方向Dxに対するテーパ面T1の角度は、軸方向Dxに対するテーパ面T2の角度よりも大きい。
【0048】
ここで、押し輪6の円筒部60の外形をφ1、テーパ面T1の最小外径(テーパ面T1の図中左端の外径)をφ2、テーパ面T1の最大外径(テーパ面T1の図中右端の外径)をφ3、固定具R2のうち凸部PT1以外の部分の外径をφ4、テーパ面T2の最大外径(図中右端の外径)をφ5と定義する。なお、テーパ面T2の最小外径(テーパ面T2の図中左端の外径)は、外径φ4と一致する。外径φ1~φ5の中心は、いずれも軸AX2上にある。
【0049】
図5の例においては、テーパ面T2の最大外径φ5がテーパ面T1の最小外径φ2よりも大きく、かつテーパ面T1の最大外径φ3よりも小さい(φ2<φ5<φ3)。
【0050】
図6は、本実施形態に係る結合金具Cの作用を説明するための図である。ここでは、別々の消防用ホースに接続された受け口Fおよび差し口Mが連結され、かつ矢印Aで示す方向に引かれた状態を示している。図中の符号Oは、例えば階段などの障害物である。
【0051】
一般的な結合金具には、テーパ面T1,T2が設けられていない。この場合、結合金具で結合された消防用ホースを用いた消火活動において、結合金具が何らかの障害物Oに当たると、押し輪の後端部が意図せず押されて受け口と差し口が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延や、隊員、要救助者の死傷などに繋がりかねない。
【0052】
これに対し、本実施形態に係る結合金具Cのようにテーパ面T1,T2が設けられていれば、矢印Aで示す方向に結合金具Cが引かれたとしても、障害物Oとテーパ面T1,T2とが滑動して押し輪6が強い力で押されにくい。そのため、受け口Fと差し口Mの離脱が抑制される。
【0053】
特に、上述のようにテーパ面T2の最大外径φ5がテーパ面T1の最小外径φ2よりも大きい場合、障害物Oとテーパ面T2とが滑動した直後に、障害物Oがテーパ面T1に当たる。そのため、後端部6bのうちテーパ面T1以外の部分に障害物Oが当たる場合に比べて押し輪6が押されにくくなり、結合金具Cの誤脱防止効果が向上する。
【0054】
さらに、上述のようにテーパ面T2の最大外径φ5がテーパ面T1の最大外径φ3よりも小さい場合、結合金具Cの結合を解除する作業が容易となる。すなわち、仮に最大外径φ5が最大外径φ3よりも大きい場合、作業者は凸部PT1が邪魔で押し輪6の後端部6bを指で押しにくい。これに対し、最大外径φ5が最大外径φ3よりも小さければ、凸部PT1よりも突出した後端部6bを指で押しやすくなる。
【0055】
図7は、本実施形態に係る結合金具Cの誤脱防止効果を検証した結果を示す表である。検証に際し、発明者は、一般的な65A町野金具の差し口MであるサンプルA1と、これを改良して作製した本実施形態に係る差し口MのサンプルA2,A3,A4とを用意した。サンプルA1,A2,A3,A4の差し金具2には、固定具R2、保護布G2および消防用ホースHを取り付けた。
【0056】
サンプルA1は、テーパ面T1,T2を有しておらず、押し輪6の円筒部60の外形φ1は70.4mm、固定具R2の外径φ4は71mmである。一方、サンプルA2,A3,A4はテーパ面T1,T2を有しており、いずれにおいても押し輪6の円筒部60の外形φ1は70.4mm、テーパ面T1の最小外径φ2は73mm、固定具R2のうち凸部PT1を除く部分の外径φ4は71mmである。なお、外径φ4は他の外径に比べて精度を高めることが困難であり、71~72mmの範囲で変動し得る。
【0057】
サンプルA2,A3,A4は、テーパ面T1の最大外径φ3およびテーパ面T2の最大外径φ5において相違する。すなわち、サンプルA2においては最大外径φ3が90mmかつ最大外径φ5が76mmであり、サンプルA3においては最大外径φ3が86mmかつ最大外径φ5が76mmであり、サンプルA4においては最大外径φ3が84mmかつ最大外径φ5が78mmである。
【0058】
検証に際しては、各サンプルA1,A2,A3,A4の差し口Mに受け口Fを結合し、
図6に示したように角部を有する障害物O(ここでは階段)の上から差し口Mと受け口Fを垂らし、無理に力を加えず引き寄せる程度に差し口Mの消防用ホースHを水平に引っ張った。このような動作をサンプルA1,A2,A3,A4のそれぞれにつき10回行い、押し輪6が障害物Oに引っ掛かるかどうかを記録した。その結果が
図7の「試験回数」の欄に記入されており、マルは押し輪6の引っ掛かりが無かったことを示し、バツは引っ掛かりが生じたことを示す。
【0059】
サンプルA1に関しては、10回中で9回の引っ掛かりが生じた。一方、サンプルA2,A3,A4に関しては、いずれにおいても引っ掛かりが生じなかった。これにより、本実施形態のようにテーパ面T1,T2を設けることで押し輪6の引っ掛かりが低減し、結果として誤脱防止に寄与することが実証された。
【0060】
[第2実施形態]
第2実施形態においては、誤脱防止の観点から結合金具Cに適用し得る他の構造例を開示する。特に言及しない構成には第1実施形態と同様のものを適用し得る。
【0061】
図8は、第2実施形態に係る結合金具Cが備える差し口Mの概略的な側面図である。この差し口Mは、上述のテーパ面T1,T2および凸部PT1を有していない。さらに、押し輪6の後端部6bが
図5に示した例よりも小径である。
【0062】
ここで、本実施形態における後端部6bの外径(最大外径)をφ6、円筒部60に対する後端部6bの突出量(=(φ6-φ1)/2)をd1、固定具R2に対する後端部6bの突出量(=(φ6-φ4)/2)をd2と定義する。
【0063】
押し輪6が障害物に当たることによる結合金具Cの誤脱を抑制する観点から、突出量d1,d2は小さい方が好ましい。詳しくは後述するが、突出量d1が4.8mm以下、あるいは突出量d2が4.5mm以下であると良好な誤脱防止効果を得ることができる。
【0064】
図9および
図10は、押し輪6に適用し得る他の形状例を示す斜視図である。
図9の例においては、後端部6bの全周にわたりテーパ面T1が設けられている。
図10の例においては、後端部6bに一対のテーパ面T1a,T1bが設けられ、これらテーパ面T1a,T1bの間に平坦面S1a,S1bが設けられている。平坦面S1a,S1bは、例えばテーパ面T1a,T1bよりも半径方向Drに対する傾斜が浅い面であり、一例では半径方向Drと平行な平面である。
【0065】
図9の例のようにテーパ面T1が設けられていれば、第1実施形態と同様に後端部6bが障害物に当たった場合でも両者が滑動する。そのため、後端部6bの突出量d1,d2を小さくしたことによる効果に相乗し、より誤脱が防止されやすくなる。
【0066】
一方、後端部6bの突出量d1,d2を小さくし且つテーパ面T1を設けると、指で後端部6bを押しにくくなる。これに対し、
図10に示す形状であれば、平坦面S1a,S1bを指で押すことにより結合金具Cの解除作業が容易となる。なお、第1実施形態に係る押し輪6に対し、同様の平坦面S1a,S1bを設けてもよい。
【0067】
図11は、第2実施形態に係る結合金具Cの誤脱防止効果を検証した結果を示す表である。検証に際し、発明者は、一般的な65A町野金具の差し口MであるサンプルA1(
図7のサンプルA1と同じ)と、これを改良して作製した本実施形態に係る差し口MのサンプルB1,B2,B3,B4とを用意した。サンプルA1,B1,B2,B3,B4の差し金具2には、固定具R2、保護布G2および消防用ホースHを取り付けた。
【0068】
サンプルA1,B1,B2,B3,B4のいずれにおいても、円筒部60の外形φ1は70.4mmであり、固定具R2の外径φ4は71mmである。なお、外径φ4は71~72mmの範囲で変動し得る。
【0069】
サンプルA1においては、後端部6bの外径φ6が90mm、円筒部60に対する後端部6bの突出量d1が9.8mm、固定具R2に対する後端部6bの突出量d2が9.5mmである。サンプルB1においては、外径φ6が80mm、突出量d1が4.8mm、突出量d2が4.5mmである。サンプルB2においては、外径φ6が78mm、突出量d1が3.8mm、突出量d2が3.5mmである。サンプルB3においては、外径φ6が76mm、突出量d1が2.8mm、突出量d2が2.5mmである。
【0070】
サンプルA1,B1,B2,B3,B4はテーパ面T1を有していないが、サンプルB4は
図9に示したようなテーパ面T1を有している。サンプルB4においては、サンプルB1と同じく外径φ6(テーパ面T1の最大外径φ3)が80mm、突出量d1が4.8mm、突出量d2が4.5mmである。
【0071】
検証は、第1実施形態にて説明したものと同様の方法でサンプルA1,B1,B2,B3,B4につき10回ずつ行った。その結果が
図11の「試験回数」の欄に記入されており、マルは押し輪6の引っ掛かりが無かったことを示し、バツは引っ掛かりが生じたことを示す。
【0072】
サンプルA1に関しては、上述の通り10回中で9回の引っ掛かりが生じた。一方、サンプルB1においては10回中で引っ掛かりが生じたのは4回にとどまる。また、突出量d1,d2がサンプルB1よりも小さいサンプルB2においては10回中で引っ掛かりが生じたのは1回だけであり、突出量d1,d2がさらに小さいサンプルB3においては引っ掛かりが生じなかった。この検証に基づけば、突出量d1,d2を低減することで押し輪6の引っ掛かりが抑制され、結果として誤脱防止に寄与することが分かる。
【0073】
少なくともサンプルB1において引っ掛かりの頻度が試験回数の半数以下に低減されたことから、上述の通り突出量d1が4.8mm以下あるいは突出量d2が4.5mm以下であることが好ましい。また、サンプルB3においては引っ掛かりが生じなかったことから、突出量d1が2.8mm以下あるいは突出量d2が2.5mm以下であると一層好ましい。なお、押し輪6を指で押す操作を容易化する観点からは、突出量d2が2.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であると一層好ましい。
【0074】
サンプルB4は、突出量d1,d2がサンプルB1と同じであるにもかかわらず、引っ掛かりが一度も生じなかった。このことから、突出量d1,d2を小さくすることに加えてテーパ面T1を設けることで誤脱防止効果がより向上することが分かる。
【0075】
図12は、本実施形態に係る差し口Mの他の一例を示す概略的な側面図である。この図の例においては、固定具R2の外径φ4が後端部6bの外径φ6よりも大きい(φ4>φ6)。すなわち、突出量d2が負である。このような構成においては、障害物が後端部6bに当たりにくくなる。なお、外径φ4が外径φ6と一致する場合(突出量d2が零である場合)であっても同様の効果を得ることができる。
【0076】
図13は、本実施形態に係る押し輪6の他の一例を示す概略的な側面図である。この図の例においては、後端部6bが円筒部60に対し突出していない。すなわち、後端部6bの外径φ6が円筒部60の外形φ1と一致し、突出量d1が零である。このような構成においても、障害物によって押し輪6が押されにくくなる。
【0077】
以上、本実施形態にて開示した結合金具Cは、保管時の消防用ホースのサイズ低減にも寄与する。すなわち、一端に受け口Fが接続され、他端に差し口Mが接続された消防用ホースは、通常は差し口Mを中心に巻回された状態、または、当該ホースを全長の半分程度の位置で折ってこの折り返し部を中心に当該ホースを巻回し、巻回された当該ホースの外側に差し口Mおよび受け口Fが位置した状態で保管される。このとき、後端部6bの外径φ6が大きいと、巻回された消防用ホースのサイズも大きくなる。一方、本実施形態のように外径φ6が小さければ、巻回された消防用ホースのサイズを小さくできる。これにより、消防用ホースをコンパクトに纏めて保管できる。
【0078】
[第3実施形態]
第1実施形態においては、固定具R2に凸部PT1を設ける場合を例示した。第3実施形態においては、凸部PT1と同様の役割を担う他の凸部を備えた結合金具Cを開示する。特に言及しない構成には上述の各実施形態と同様のものを適用し得る。
【0079】
図14は、第3実施形態に係る結合金具Cが備える差し口Mの概略的な側面図である。この図の例において、差し口Mは、リング100を備えている。固定具R2は、凸部PT1を有していない。
【0080】
リング100は、円筒状のベース101と、ベース101の一端に設けられた凸部PT2とを有している。凸部PT2は、ベース101や円筒部60よりも半径方向Drに突出している。ベース101は、押し輪6側の固定具R2の端部から装着部21(
図1参照)と固定具R2との間に挿入されている。ベース101は、固定具R2によって差し金具2に締め付けられている。ベース101は、固定具R2と保護布G2との間に位置してもよいし、保護布G2とその内側の消防用ホースとの間に位置してもよい。
【0081】
凸部PT2は、軸方向Dxにおいて固定具R2と後端部6bの間に位置し、後端部6bに対向している。さらに、凸部PT2は、後端部6bに近づくに連れて外径が増すテーパ面T3(第2テーパ面)を有している。例えば、リング100の内径は、軸方向Dxにおける全体にわたって一定である。この場合においては、凸部PT2の位置でリング100の厚さが増す。リング100は、例えばゴムや合成樹脂などで形成することができる。
【0082】
テーパ面T3の最大外径と、円筒部60の外形φ1、テーパ面T1の最小外径φ2および最大外径φ3との関係は、第1実施形態のテーパ面T2の最大外径φ5と各外径φ1~φ3の関係と同様である。
【0083】
図15は、差し口Mの他の例を示す概略的な側面図である。この図の例においては、凸部PT2がテーパ面T4をさらに有している。テーパ面T4は、軸方向Dxにおいてテーパ面T4の反対側に位置する面であり、後端部6bと対向している。テーパ面T4は、後端部6bから離れるに連れて外径が増す形状を有している。このようなテーパ面T4を設けると、押し輪6側から凸部PT2に障害物が当たった場合に当該障害物とテーパ面T4が滑動する。そのため、凸部PT2が障害物に引っ掛かりにくくなる。
【0084】
図16は、差し口Mのさらに他の例を示す概略的な側面図である。この図の例においては、後端部6bが
図14に比べて小径の後端部6bを有している。円筒部60に対する後端部6bの突出量d1は、例えば第2実施形態にて述べたように4.8mm以下とすることが好ましい。その他、第2実施形態にて述べた各種の外径の大小関係を押し輪6や固定具R2に適用し得る。
【0085】
なお、
図16の例においては後端部6bにテーパ面T1が設けられていない。ただし、後端部6bにテーパ面T1が設けられてもよい。
【0086】
本実施形態のようにリング100が凸部PT2およびテーパ面T3を有する場合であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
[第4実施形態]
第4実施形態においては、誤脱防止の観点から結合金具Cに適用し得るさらに他の構造例を開示する。特に言及しない構成には上述の各実施形態と同様のものを適用し得る。
【0088】
図17は、第4実施形態に係る結合金具Cが備える差し口Mの概略的な側面図である。この図の例において、差し口Mは、柔軟なカバー200を備えている。カバー200は、押し輪6側の第1端部200aと、軸方向Dxにおいて第1端部200aの反対側に位置する第2端部200bとを有している。さらに、カバー200は、第1端部200a側の第1部分201と、第2端部200b側の第2部分202とを有している。カバー200は、例えば伸縮性に優れたゴムや布材などで形成することができる。
【0089】
第1部分201は、押し輪6の後端部6bを覆っている。第2部分202は、押し輪6側の固定具R2の端部から装着部21(
図1参照)と固定具R2との間に挿入され、固定具R2によって差し金具2に締め付けられている。第2部分202は、固定具R2と保護布G2との間に位置してもよいし、保護布G2とその内側の消防用ホースとの間に位置してもよい。
【0090】
図18は、カバー200の概略的な斜視図である。例えば、第1部分201は第2部分202よりも大きい内径および外径を有している。ただし、第1部分201と第2部分202の内径および外径が同じであってもよい。
【0091】
第1部分201は、第1端部200aにおいて円形の第1開口203を有している。第2部分202は、第2端部200bにおいて円形の第2開口204を有している。カバー200には、これら開口203,204を通じて差し金具2や押し輪6が通される。
【0092】
図18の例においては、第1開口203の周囲に環状の枠部205が設けられている。さらに、第1開口203の内径は、押し輪6の後端部6bの外径よりも小さい。枠部205は、例えばカバー200の他の部分よりも硬質であり、押し輪6の後端部6bに引っ掛かる。枠部205は、カバー200の他の部分と同じ材料で形成されてもよい。
【0093】
このようなカバー200が装着されていれば、後端部6bと固定具R2の間にカバー200の一部によって傾斜面が形成される。これにより、後端部6bに障害物が当たりにくくなる。また、後端部6bにカバー200の上から障害物が当たったとしても、障害物とカバー200の表面が滑動して押し輪6が押されにくくなる。結果として、受け口Fと差し口Mの誤脱が抑制される。
【0094】
なお、カバー200は伸縮性を有しているために、作業者が指でカバー200の上から後端部6bを押せば、後端部6bがカバー200で覆われた状態のまま押し輪6を結合解除位置まで押し込むことができる。
【0095】
このようなカバー200は、例えば第2実施形態にて開示したように外径の小さい後端部6bを有した結合金具Cに適用してもよい。また、第1実施形態や第3実施形態にて開示した結合金具Cにカバー200を適用することもできる。
【0096】
[第5実施形態]
第1乃至第4実施形態においては、受け金具1および差し金具2の外周面に消防用ホースや保護布が装着される結合金具Cを開示した。第5実施形態においては、受け金具1および差し金具2の内周面に消防用ホースや保護布が装着される結合金具Cを開示する。特に言及しない構成には上述の各実施形態と同様のものを適用し得る。
【0097】
図19は、第5実施形態に係る結合金具Cの部分断面図である。この結合金具Cにおいては、受け金具1の内周面のうち第1端部1a側の領域に装着部11が形成され、差し金具2の内周面のうち第1端部2a側の領域に装着部21が形成されている。
【0098】
消防用ホースおよび保護布を受け金具1に装着する際には、受け金具1の内側に消防用ホースおよび保護布が挿入され、さらにその内側に円筒状の固定具が挿入される。この状態で固定具を拡径させることにより、消防用ホースおよび保護布が装着部11に締め付けられる。同様に、消防用ホースおよび保護布を差し金具2に装着する際には、差し金具2の内側に消防用ホースおよび保護布が挿入され、さらにその内側に円筒状の固定具が挿入される。この状態で固定具を拡径させることにより、消防用ホースおよび保護布が装着部21に締め付けられる。
【0099】
差し金具2は、小径部23と、小径部23よりも外径および内径が大きい大径部24とを有している。小径部23は第2端部2b側に位置し、大径部24は第1端部2a側に位置している。小径部23の外周面には、押し輪6が装着されている。大径部24の内周面には、装着部21が形成されている。
【0100】
係止部22は、差し金具2とは別の部材であり、第2端部2bに装着されている。大径部24と係止部22によって押し輪6が抜け止めされるため、差し口Mは上述の止め輪5を備えていない。
【0101】
図19の例においては、押し輪6側の大径部24の端部にテーパ面T4が形成されている。テーパ面T4は、後端部6bから離れるに連れて外径が大きくなる形状を有している。
【0102】
ここで、後端部6bの外径をφ7、大径部24の外径(最大外径)をφ8、テーパ面T4の最小外径(テーパ面T4の図中右端の外径)をφ9と定義する。本実施形態においては、外径φ7が外径φ8以下である(φ7≦φ8)。
図19の例においては、外径φ7が外径φ8よりも小さい(φ7<φ8)。外径φ7が外径φ8以下であれば、後端部6bが大径部24によって保護されるため、障害物が後端部6bに当たりにくくなる。これにより、受け口Fと差し口Mの誤脱を抑制できる。
【0103】
テーパ面T4の最小外径φ9は、外径φ7より小さいことが好ましい(φ7>φ9)。この場合、受け口Fと差し口Mの結合を解除する作業において後端部6bを指で押しやすくなる。
【0104】
後端部6bは、
図3および
図9に示したテーパ面T1や、
図10に示したテーパ面T1a,T1bおよび平坦面S1a,S1bを有してもよい。
【0105】
以上の第1乃至第5実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。各実施形態にて開示した構成は、適宜に組み合わせることができる。
【0106】
なお、消防用ホースおよび保護布の装着方法としては、これらの上からワイヤを巻いて受け金具1および差し金具2の外周面に締め付ける方法も存在する。この場合においては、巻回されたワイヤが上述の各実施形態における固定具に相当する。例えば押し輪6の後端部6bの外径は、巻回されたワイヤの外径より小さくてもよい。また、
図14~
図16に示したリング100や
図17に示したカバー200が当該ワイヤによって差し金具2に装着されてもよい。
【0107】
図5に示した凸部PT1は、受け口Fの固定具R1に対してさらに設けられてもよい。また、
図14~
図16に示したリング100は、受け口Fに対してさらに設けられてもよい。
本願の出願当初の特許請求の範囲の記載を以下に付記する。
[1]
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、
前記先端部を含む円筒部と、
前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、
前記後端部に設けられ、前記先端部に近づくに連れて外径が増す第1テーパ面と、
を有し、
前記差し口は、前記軸方向において前記後端部に対向するとともに前記円筒部よりも前記半径方向に突出した凸部を備え、
前記凸部は、前記後端部に近づくに連れて外径が増す第2テーパ面を有している、
結合金具。
[2]
前記第2テーパ面の最大外径は、前記第1テーパ面の最小外径よりも大きい、
上記[1]に記載の結合金具。
[3]
前記第2テーパ面の前記最大外径は、前記第1テーパ面の最大外径よりも小さい、
上記[2]に記載の結合金具。
[4]
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備え、
前記凸部は、前記固定具の一部である、
上記[1]乃至[3]のうちいずれか1項に記載の結合金具。
[5]
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、
前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具と、
前記押し輪側の前記固定具の端部から前記装着部と前記固定具との間に挿入されたリングと、
をさらに備え、
前記凸部は、前記リングの一部である、
上記[1]乃至[3]のうちいずれか1項に記載の結合金具。
[6]
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、
前記先端部を含む円筒部と、
前記軸方向において前記先端部の反対側に位置する後端部と、
を有し、
前記円筒部に対する前記後端部の突出量は、4.8mm以下である、
結合金具。
[7]
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備え、
前記固定具に対する前記後端部の突出量は、4.5mm以下である、
上記[6]に記載の結合金具。
[8]
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備え、
前記後端部の外径は、前記固定具の外径よりも小さい、
上記[6]に記載の結合金具。
[9]
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、
前記先端部を含む円筒部と、
前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、
を有し、
前記差し口は、前記差し金具が通されるとともに前記後端部を覆う柔軟なカバーを備える、
結合金具。
[10]
前記差し金具は、外周面に設けられた装着部を有し、
前記差し口は、前記装着部にホースを締め付ける円筒状の固定具を備え、
前記カバーの一部が前記固定具と前記装着部の間に位置している、
上記[9]に記載の結合金具。
[11]
差し口が備える差し金具を受け口が備える受け金具に挿入することにより、前記差し金具に設けられた係止部と、前記受け金具に設けられた爪とが前記差し金具および前記受け金具の軸と平行な軸方向に係合し、前記差し金具の外周面に対し前記軸方向にスライド可能に設けられた押し輪の先端部を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記軸を中心とした半径方向に前記爪を押し上げることにより前記係止部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪は、
前記先端部を含む円筒部と、
前記軸方向において前記先端部の反対側に位置し、前記円筒部に対し前記半径方向に突出した後端部と、
を有し、
前記差し金具は、
前記押し輪が装着される小径部と、
前記小径部よりも外径が大きく、内周面にホースを装着するための装着部が形成された大径部と、
を有し、
前記後端部の外径は、前記大径部の最大外径以下である、
結合金具。
[12]
前記大径部は、前記押し輪に近づくに連れて外径が減少するテーパ面を有し、
前記テーパ面の最小外径は、前記後端部の外径よりも小さい、
上記[11]に記載の結合金具。
【符号の説明】
【0108】
C…結合金具、F…受け口、M…差し口、R1,R2…固定具、1…受け金具、2…差し金具、6…押し輪、6a…先端部、6b…後端部、60…円筒部、PT1,PT2…凸部、T1~T4…テーパ面、100…リング、200…カバー。