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特許7539819画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20240819BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01B11/02 H
E04G21/12 105Z
E04G21/12 105E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020188927
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077872
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有田 真一
(72)【発明者】
【氏名】徳井 圭
(72)【発明者】
【氏名】北浦 竜二
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-189526(JP,A)
【文献】特開2020-95009(JP,A)
【文献】特開2020-26663(JP,A)
【文献】特開2020-165748(JP,A)
【文献】特開2018-17654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 1/00- 1/14
5/00-15/14
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の鉄筋の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測装置であって、
前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部と他方の鉄筋の端部とに設定される計測点を取得する計測点取得部と、
各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得部と、
鉄筋方向を特定する方向特定部と、
各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測部と、
を備えていることを特徴とする画像計測装置。
【請求項2】
前記計測部によって算出された前記長さの値または当該値に関連する情報と、当該長さが前記鉄筋方向に沿った長さであることを示す情報とを、前記撮像画像に重畳させて表示するよう表示部を制御する表示制御部を更に備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像計測装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記鉄筋方向に伸びる直線に対し、各前記計測点の前記三次元座標の位置からそれぞれ垂線を下ろした交点の間の距離を、前記継ぎ手の長さとして計測する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像計測装置。
【請求項4】
前記鉄筋方向に伸びる直線は、前記一方の鉄筋におけるエッジ上の複数の三次元座標に近似した直線であることを特徴とする請求項3に記載の画像計測装置。
【請求項5】
前記鉄筋方向に伸びる直線は、前記一方の鉄筋の中心軸であることを特徴とする請求項3に記載の画像計測装置。
【請求項6】
前記方向特定部は、
前記鉄筋の三次元座標に基づいて鉄筋平面を特定する鉄筋平面特定部と、
前記鉄筋平面内における前記鉄筋方向を特定する鉄筋方向特定部と、
を有し、
前記計測部は、各前記計測点と、前記鉄筋方向と、前記鉄筋平面とに基づいて、前記鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像計測装置。
【請求項7】
2本の鉄筋の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測方法であって、
前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部と他方の鉄筋の端部とに設定される計測点を取得する計測点取得工程と、
各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得工程と、
鉄筋方向を特定する方向特定工程と、
各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測工程と、
を含むことを特徴とする画像計測方法。
【請求項8】
請求項1から6の何れか1項に記載の画像計測装置としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムであって、前記計測点取得部、前記座標取得部、前記方向特定部、および前記計測部としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像計測装置に関する技術であり、特に、画像処理により鉄筋の継ぎ手を精度良く計測することが可能な画像計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタル画像を画像処理することにより被写体の3次元位置を算出する装置の開発が進められている。また、このような装置を配筋検査に適用し、鉄筋径や鉄筋間隔を検査する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、対象鉄筋に合焦した状態で撮影した画像を取得して対象鉄筋の径を算出する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-3364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配筋検査の一つに、鉄筋の継ぎ手長さの計測がある。画像処理で継ぎ手長さを計測するためには、継ぎ手の両端を設定し、設定した点の三次元座標から長さを算出する方法が考えられる。しかし、鉄筋は、形状が円筒形であり、鉄筋表面には一定間隔で節が設けられているため、継ぎ手の両端の三次元座標が一義的に決まらない場合が有り、同じ継ぎ手長さであっても設定された計測点の位置関係によって計測結果が異なり、精度良く継ぎ手の長さを計測することが困難である。
【0005】
本発明の一態様は、画像上で設定された2つの計測点に基づき、鉄筋の継ぎ手長さを精度良く計測することができる画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測装置は、2本の鉄筋の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測装置であって、前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部と他方の鉄筋の端部とに設定される計測点を取得する計測点取得部と、各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得部と、鉄筋方向を特定する方向特定部と、各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測部と、を備えている。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測方法は、2本の鉄筋の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測方法であって、前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部と他方の鉄筋の端部とに設定される計測点を取得する計測点取得工程と、各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得工程と、鉄筋方向を特定する方向特定工程と、各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測工程と、を含む。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測プログラムは、前記画像計測装置としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムであって、前記計測点取得部、前記座標取得部、前記方向特定部、および前記計測部としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、画像上で設定された2つの計測点に基づき、鉄筋の継ぎ手長さを精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る画像計測装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像計測装置によって計測される対象である鉄筋の継ぎ手の構成を示す側面図である。
図3】鉄筋の継ぎ手の長さを計測するにあたって懸念される問題を説明する図である。
図4】鉄筋の継ぎ手の長さを計測するにあたって懸念される問題を説明する図である。
図5】鉄筋の継ぎ手の長さを計測するにあたって懸念される問題を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る画像計測装置による継ぎ手長さの計測の概念を説明する図である。
図7図1に示す画像処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
図8】本発明の一実施形態に係る画像計測装置による継ぎ手長さの計測の他の概念を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る画像計測装置による継ぎ手長さの計測を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態に係る画像計測装置による表示部への表示内容を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る画像計測方法の処理フローを示す図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る画像計測装置の画像処理部の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る画像計測方法を説明する図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る画像計測方法を説明する図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る画像計測方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を使って本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図における表現は理解しやすいように誇張して記載しており、実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1から図11を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の画像計測装置の構成を示す図である。本実施形態の画像計測装置100は、撮像部101、撮像部102、画像処理部103、表示部104、入力部105、記録部106、を備えている。画像計測装置100は、鉄筋の計測において、鉄筋の継ぎ手長さを計測するために用いることができる。特に、図2に示すように鉄筋同士の端部近傍を、互いの鉄筋方向(延伸方向)が平行になるように重ねて継いだ部分の長さを計測することに好適に用いることができる。なお、この部分は「重ね継ぎ手」と称されることもあるが、本明細書では、この部分のことを「鉄筋の継ぎ手」あるいは単に「継ぎ手」と称する。
【0014】
撮像部101および撮像部102は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった固体撮像素子、レンズ、などにより構成され、設定された露出やフォーカス位置などの撮影条件により画像を取得する。
【0015】
画像処理部103は、画像処理により継ぎ手長さの計測処理を行う。詳細は後述するが、画像処理部103は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によるソフトウェア処理、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によるハードウェア処理によって画像処理を実現することができる。
【0016】
表示部104は、撮像部101や撮像部102で取得した画像、および、継ぎ手長さの計測結果を確認するためのディスプレイである。表示部104は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどのディスプレイにより構成される。
【0017】
入力部105は、マウスや表示部104のタッチパネルにより構成される。
【0018】
記録部106は、フラッシュメモリや磁気ディスクなどの記録媒体を備え、画像や、画像処理部103が算出する継ぎ手の長さの計測結果を記録することができる。
【0019】
(画像処理部103の構成)
図2に、第1の鉄筋1と第2の鉄筋2で構成される継ぎ手を示す。図2に示す継ぎ手長さを計測するとき、例えば、図3に示すように、継ぎ手に含まれる第1の鉄筋1の端部1aに第1の計測点11を設定する。また、当該継ぎ手に含まれる第2の鉄筋2の端部2aに計測点12を設定する。そして、継ぎ手長さを計測しようとするとき、第1の計測点11と第2の計測点12の三次元座標に基づいて第1の計測点11と第2の計測点12とを最短で結ぶ距離を算出する。すると、継ぎ手の方向に対して2つの計測点11,12が斜めに設定されているため、当該距離は、実際に計測したい継ぎ手長さよりも長く計測されてしまう。つまり、計測の精度が低いと言える。
【0020】
また、図4に示すように、継ぎ手の方向と同じ方向、つまり、同一鉄筋上に2つの計測点401,402を設定することも考えられる。しかしながら、鉄筋の端部ではない位置に鉄筋2の端部を示す計測点402を設定するのは困難な場合が多く、計測精度が低下する。更に、図4において、計測点402は鉄筋の端と異なり特徴量が少ない可能性があり、視差算出精度が低下して計測精度が低下したり、継ぎ手の方向と合致する位置に高精度で計測点402を設定できず計測精度が低下したりする。
【0021】
また、図5は、図3のように設定した第1の計測点11および第2の計測点12を、鉄筋方向から見た図である。ここで「鉄筋方向」とは、鉄筋の延伸方向、あるいは鉄筋の長手方向と換言することができる。図5に示すように、第2の計測点12は、第2の鉄筋2の節2bに設定されている。このような場合、例えば図3における第1の計測点11および第2の計測点12は紙面に平行な面上に存在せず継ぎ手の方向に対して斜めに設定されるため、節2bの分だけさらに計測精度が低下してしまう。また、鉄筋1,2が断面円形であるため、鉄筋端(図示する断面の鉄筋の縁)に計測点を設定した場合でも、当該鉄筋端の位置により計測結果が変化してしまうことになる。即ち、鉄筋は、形状が円筒形であることや、鉄筋表面に一定間隔で節が設けられること等により、継ぎ手の両端の三次元座標が一義的に決まらない場合が有り、同じ継ぎ手長さであっても設定された継ぎ手両端の三次元座標の位置関係によって継ぎ手長さの計測結果が異なり、精度良く継ぎ手の長さを計測することが困難となる場合がある。
【0022】
そこで、本実施形態の画像計測装置100は、図6に示すように、設定された第1の計測点11と第2の計測点12に基づいて継ぎ手長さを計測するときに、第1の鉄筋1または第2の鉄筋2の鉄筋方向に沿って継ぎ手長さを計測する。これは、第1の鉄筋1および第2の鉄筋2の鉄筋方向が継ぎ手方向と平行と考えられるためである。具体的には、図1に示す画像処理部103が、撮像部101および撮像部102が生成する撮像画像上において継ぎ手に含まれる第1の鉄筋1の端部1aと第2の鉄筋2の端部2aとに設定される計測点11,12の三次元座標と、第1の鉄筋1の鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った継ぎ手の長さを計測する。
【0023】
図7に、画像処理部103の構成を示すブロック図を示す。図7に示すように、画像処理部103は、計測点取得部31と、座標取得部32と、方向特定部33と、計測部34と、表示制御部35とを備える。
【0024】
計測点取得部31は、撮像画像上において設定される2つの計測点11、12を取得する。第1の計測点11および第2の計測点12は、入力部105により入力され、計測点取得部31は、入力された箇所に対応する画像上の座標を検出することによって、第1の計測点11および第2の計測点12の情報を取得する。例えば、入力部105がマウスやタッチパネルで構成される場合、ユーザーによって継手領域の両側の位置が入力されるため、計測点取得部31は、その画像上の座標情報を取得する。このとき、計測点取得部31は、入力された位置に近い継手領域の端面を検出して継手端面上で計測点を設定することで、ずれた位置に入力された場合でも、精度よく継手領域の両端で計測点が取得できるため、より精度よく計測することができる。
【0025】
座標取得部32は、第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標を取得する。座標取得部32は、撮像部101と撮像部102で撮影された画像から視差を算出し、視差に基づいて第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標を算出する。
【0026】
視差は2つの画像間の被写体のずれ量であり、ブロックマッチングなどにより算出することができる。ブロックマッチングは、基準となる画像(例えば撮像部101が生成する画像)の注目画素に基準窓を設定し、参照する画像(例えば撮像部102が生成する画像)に参照窓を順次設定し、基準窓と参照窓の画素の類似度または相違度を評価する。評価にはSAD(Sum of Absolute Difference)やSSD(Sum of Squared Difference)などが使用される。
【0027】
撮影された被写体までの距離Zと視差Dの関係はD=f×B/Zである。fは撮像部の焦点距離であり、Bは2つの撮像部間の距離である。また、画像上の座標(x、y)における距離Zの被写体の三次元座標(X、Y、Z)は、X=x×Z/f、Y=y×Z/f、により算出することができる。
【0028】
ここで、本実施形態の画像計測装置100では、三次元情報を2つの撮像部で取得される画像から算出する方法で説明するが、3つ以上の撮像部から算出したり、TOF(Time Of Flight)により取得したりしても構わない。
【0029】
方向特定部33は、第1の鉄筋1の鉄筋方向を特定する。鉄筋方向は、三次元直線を基準に特定された方向であってもよいし、三次元平面内において特定された方向であってもよい。実施形態1では、鉄筋方向が三次元直線を基準に特定される構成について記載し、実施形態2では、鉄筋方向が三次元平面内において特定される構成について記載する。鉄筋方向は、鉄筋エッジ1eの方向から算出することができる。鉄筋エッジ1eは、撮像画像上における第1の鉄筋1の長手方向に沿って延びる互いに平行の2本の端辺である。鉄筋エッジ1eは、節1bと節1bとの間の部分である。方向特定部33は、例えば、撮像画像に対してエッジ検出をし、検出されたエッジに対してハフ変換をして鉄筋のエッジを表す鉄筋エッジ直線を算出する。そして、方向特定部33は、鉄筋エッジ直線近傍のエッジ群の三次元座標を算出する。更に方向特定部33は、算出された三次元点群の近似直線を算出して鉄筋エッジ三次元直線を算出し、2本の鉄筋エッジ三次元直線から鉄筋方向を三次元直線として算出する(図6中に一点鎖線で鉄筋方向50を示す)。
【0030】
計測部34は、第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標と、鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った継ぎ手の長さを計測する。具体的には、計測部34は、方向特定部33によって特定された鉄筋方向の三次元直線に、第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標の位置からそれぞれ垂線を下ろした交点の間の距離を、継ぎ手の長さ(図6中の破線で示す長さ)として計測する。
【0031】
ここで、本実施形態では、鉄筋方向を鉄筋エッジから算出しているが、これに限定されない。例えば、鉄筋領域のエッジ群に対して三次元座標を算出し、鉄筋を円柱と仮定して、エッジ群が円柱表面に存在することから、円柱の中心軸を鉄筋方向として算出することができる。図8は、図5のように第1の計測点11および第2の計測点12を設定したときの鉄筋方向を左右方向にとった図である。鉄筋方向に、第1の計測点11および第2の計測点12から垂線が伸び、鉄筋方向に沿って継ぎ手長さが計測される。
【0032】
図9は、鉄筋方向50に鉄筋1の中心軸を使用した場合で、第1の計測点11および第2の計測点12から鉄筋1の中心軸へそれぞれ垂線が伸び、当該鉄筋方向50に沿って中心軸の三次元直線と各垂線との交点間の距離を継ぎ手長さとして計測する態様を示す。
【0033】
更に別の態様として、鉄筋径や鉄筋間隔を計測するときに鉄筋位置や、鉄筋を示す直線が算出されている場合には、その情報を鉄筋方向として使用することもできる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1の鉄筋1を用いて鉄筋方向を特定しているが、これに限定されず、第2の鉄筋2を用いて鉄筋方向を特定してもよい。あるいは第1の鉄筋1および第2の鉄筋2を用いて鉄筋方向をそれぞれ算出したのち、その平均を鉄筋方向として特定してもよい。
【0035】
計測部34によって計測された結果は、テキストデータなどのファイルとして記録部106に記録したり、画像として表示部104に表示したりする。
【0036】
表示制御部35は、計測部34によって算出された継ぎ手の長さの数値と、当該長さが鉄筋方向に沿った長さであることを示す情報とを、撮像画像に重畳させて表示するよう表示部104(図1)を制御する。表示部104での表示は、図10に示すように、継ぎ手を撮影した画像に計測結果を重畳する。このとき、継ぎ手長さは2点間の距離ではないため、計測した方向が分かるように重畳する。図10に示す一例では、鉄筋方向を示す直線と、計測点から鉄筋方向を示す直線への垂線とを、画像上に投影して描画し、画像上で鉄筋方向と平行になる矢印と継ぎ手長さの計測値を描画する。
【0037】
(処理フロー)
図11に、画像計測装置100を用いた画像計測方法(継ぎ手計測)の処理フローを示す。
【0038】
先ず撮像部101と撮像部102によって生成された撮像画像が、表示部104に入力されて表示された状態で、表示画面上でユーザーが継ぎ手に含まれる第1の鉄筋1の端部1aと、第2の鉄筋1の端部2aとに計測点11、12を設定する。計測点11、12が入力されると、画像処理部103の計測点取得部31が計測点の情報を取得する(計測点取得工程、ステップS1)。
【0039】
次に、座標取得部32が、ステップS1において計測点取得部31が取得した計測点の情報を取得し、第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標を算出する(座標取得工程、ステップS2)。
【0040】
次に、方向特定部33によって、継ぎ手を構成する第1の鉄筋1のエッジ検出によって三次元直線を算出し、これを第1の鉄筋1の鉄筋方向として特定する(方向特定工程、ステップS3)。
【0041】
次に、計測部34によって、第1の計測点11および第2の計測点12の三次元座標と、鉄筋方向を示す三次元直線とを取得し、先述のように垂線を下ろして、当該三次元直線との交点間の距離を算出し、鉄筋方向に沿った継ぎ手長さを計測する(計測工程、ステップS4)。
【0042】
計測された継ぎ手長さは、表示制御部35によって、当該長さの値を、鉄筋方向とともに、表示部104に表示されるように制御される。なお、当該長さの値に加えて、継ぎ手長さが設計通りであるかの判定結果のような情報が表示部104に表示されるように制御されてもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、画像上で設定される2つの計測点に基づき、鉄筋の継ぎ手長さを精度良く計測することができる。
【0044】
〔変形例1〕
本実施形態の変形例として次のような態様もある。すなわち、本変形例の画像計測装置では、継ぎ手計測のほかに、任意の2点間の距離を計測する機能が実装されている。本変形例では、任意の2点間の距離を計測するモードと、先述の実施形態で説明した方法によって継ぎ手長さを計測する継ぎ手計測モードとが選択できる構成となっている。継ぎ手計測モードを選択した場合は先のように鉄筋方向に基づいて計測するというように、モード切り替えることが可能となる。
【0045】
〔変形例2〕
本実施形態では、マウスやタッチパネルなどの入力部105を用いて計測点を設定する方法を説明したが、計測点を自動で設定しても同様の効果が得られる。例えば、鉄筋面を撮影した画像において、複数の領域に分割して鉄筋位置を算出し、鉄筋の連続性を考慮してグループ化したときに、縦または横に配列する鉄筋に閾値以上のずれで隣接する場合は継ぎ手と判断し、当該領域のエッジを検出して鉄筋の端面を検出し、鉄筋端面に計測点を設定することが可能である。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0047】
上述の実施形態1では、三次元直線として特定した鉄筋方向を使用して継ぎ手長さを計測している。一方、本実施形態2では、継ぎ手を構成する鉄筋が含まれる鉄筋平面内において特定した鉄筋方向に基づいて、継ぎ手長さを算出する。
【0048】
具体的には、図12に示すように、本実施形態2では、実施形態1の方向特定部33に代えて、鉄筋平面特定部331と、鉄筋方向特定部332と、を有する方向特定部33’を具備する。
【0049】
鉄筋平面特定部331は、鉄筋におけるエッジ上の三次元座標に基づいて鉄筋平面を特定する。鉄筋平面は、複数の鉄筋のエッジの三次元座標を算出し、その最小二乗平面から三次元平面として算出することができる。ここで、鉄筋平面は、計測対象の継ぎ手を構成する鉄筋からだけでなく、当該鉄筋が含まれる配筋上の鉄筋平面から算出すると好適である。つまり、継ぎ手を構成する鉄筋だけでなく、継ぎ手を構成する鉄筋と、当該鉄筋と平行に配置される複数の鉄筋群から算出する。これにより、配筋の鉄筋平面が安定して算出可能となる。ただし、これに限らず、鉄筋1の中心軸と鉄筋2の中心軸とを含む平面を算出してもよく、この平面からオフセットした面であってもよい。中心軸は、鉄筋領域のエッジ群に対して三次元座標を算出し、鉄筋を円柱と仮定して、エッジ群が円柱表面に存在することから、算出することが可能である。
【0050】
鉄筋方向特定部332は、鉄筋平面内における鉄筋方向を特定する。具体的には、鉄筋方向特定部332は、鉄筋平面上での鉄筋方向を表す三次元直線を特定する。例えば、鉄筋の中心軸を鉄筋平面に投影して、鉄筋平面上での鉄筋方向を特定する。ただし、これに限らず、画像からエッジ検出をし、エッジ検出した結果でハフ変換をして鉄筋のエッジを示す鉄筋エッジ直線を鉄筋毎に算出し、鉄筋毎に算出された2本の鉄筋エッジ直線から鉄筋平面上で各鉄筋の中央を通る鉄筋位置直線を算出することでも得られる。
【0051】
計測部34による鉄筋方向への継ぎ手長さの計測は、設定された計測点と、特定された鉄筋方向とを、特定された鉄筋平面に投影し、鉄筋平面上において三次元での長さ計測を行う。
【0052】
図13は、鉄筋平面への投影を模式的に示す図である。図13では、各鉄筋の中心軸を通る鉄筋方向を一点鎖線で示し、鉄筋平面Pを破線で示している。また図13には、鉄筋1の端部1aと第2の鉄筋2の端部2aとに設定される計測点11,12を鉄筋平面Pに投影した投影点11’,12’を示す。図14には、継ぎ手を構成する2本の鉄筋1,2をそれぞれ計測点11,12において鉄筋方向に対して垂直に切断した状態と、鉄筋平面Pとを図示している。図14にも示されているように、設定された計測点11,12が、鉄筋平面Pに投影されている(投影点11’,12’)。
【0053】
計測部34は、各計測点と、鉄筋方向と、前記鉄筋平面とに基づいて、鉄筋方向に沿った継ぎ手の長さを計測する。具体的には、計測部34は、鉄筋平面Pに基づいて、投影点11’,12’の三次元座標と、鉄筋方向とを用いて、投影点11’,12’同士の長さを算出し、鉄筋方向に沿った継ぎ手の長さを計測する。図15は、計測部34による計測工程を解り易く示している。図15は、鉄筋平面Pを上面から見た図である。図15に示すように、鉄筋平面P上の投影点11’,12’同士の、鉄筋方向に沿った距離を算出することにより、継ぎ手の長さを精度よく計測することができる。
【0054】
以上の方法により、鉄筋平面上における継ぎ手長さを鉄筋方向に精度よく算出することができる。本実施形態の態様は特に、鉄筋平面に複数の継ぎ手が存在し、当該複数の継ぎ手の長さを計測するときに、同じ平面内で鉄筋方向への長さを計測することになるため、継ぎ手長さの比較がしやすく好適である。例えば、継ぎ手長さ計測を実施するときに、複数の継ぎ手長さが計測された場合に、各継ぎ手を構成する鉄筋が同一平面にあると推定される場合は自動的に同一の鉄筋平面にしたり、同一の鉄筋平面で継ぎ手長さを計測する旨を通知したり、同一の鉄筋平面で継ぎ手長さを計測することをユーザーが選択できるように表示したりすることで、同一鉄筋平面での計測がユーザーが操作しやすい処理で実現することができる。
【0055】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像計測装置100の画像処理部103(計測点取得部31、座標取得部32、方向特定部33,33’、計測部34、および表示制御部35)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0056】
後者の場合、画像計測装置100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0057】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る画像計測装置100は、2本の鉄筋(第1の鉄筋1、第2の鉄筋2)の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測装置100であって、前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部(第1の鉄筋1の端部1a)と他方の鉄筋の端部(第2の鉄筋2の端部2a)とに設定される計測点(第1の計測点11、第2の計測点12)を取得する計測点取得部31と、各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得部32と、前記一方の鉄筋(第1の鉄筋1)の鉄筋方向を特定する方向特定部33,33’と、各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測部34と、を備えている。
【0058】
前記の構成によれば、画像上で設定される2つの計測点に基づき、鉄筋の継ぎ手長さを精度良く計測することができる。具体的には、鉄筋方向を特定し、鉄筋方向に沿って継ぎ手長さを計測する。そのため、別々の鉄筋に計測点を設定しても、また、鉄筋の端面のどの位置に計測点を設定しても、計測結果が同一であり、信頼性の高い計測を実現することができる。
【0059】
本発明の態様2に係る画像計測装置100は、前記態様1において、前記計測部34によって算出された前記長さの値または当該値に関連する情報と、当該長さが前記鉄筋方向に沿った長さであることを示す情報とを、前記撮像画像に重畳させて表示するよう表示部104を制御する表示制御部35を更に備えていてもよい。
【0060】
前記の構成によれば、ユーザーに信頼性の高い計測結果を提示することができる。
【0061】
本発明の態様3に係る画像計測装置100は、前記態様1において、前記計測部34は、前記鉄筋方向に伸びる直線(三次元直線)に対し、各前記計測点(第1の計測点11、第2の計測点12)の前記三次元座標の位置からそれぞれ垂線を下ろした交点の間の距離を、前記継ぎ手の長さとして計測する構成であってもよい。
【0062】
前記の構成によれば、鉄筋方向に伸びる直線に計測点から垂線を下ろした交点間の距離を継ぎ手長さとして算出できるため、計測点が同一線上に設定されていなくても精度良く計測を行うことができる。
【0063】
本発明の態様4に係る画像計測装置100は、前記態様1において、前記鉄筋方向に伸びる直線は、前記一方の鉄筋におけるエッジ上の複数の三次元座標に近似した直線であってもよい。
【0064】
前記の構成によれば、一方の鉄筋におけるエッジ上の複数の三次元座標に近似した直線に計測点から垂線を下ろした交点間の距離を継ぎ手長さとして算出できるため、計測点が同一線上に設定されていなくても精度良く計測を行うことができる。
【0065】
本発明の態様5に係る画像計測装置100は、前記態様3において、前記鉄筋方向に伸びる直線は、前記一方の鉄筋の中心軸であってもよい。
【0066】
前記の構成によれば、鉄筋の中心軸に各計測点から垂線を下ろした交点間の距離を継ぎ手長さとして算出できるため、計測点が同一線上に設定されていなくても精度良く計測を行うことができる。
【0067】
本発明の態様6に係る画像計測装置100は、前記態様1において、前記方向特定部33´は、前記鉄筋の三次元座標に基づいて鉄筋平面を特定する鉄筋平面特定部331と、前記鉄筋平面内における前記鉄筋方向を特定する鉄筋方向特定部332と、を有し、前記計測部34は、各前記計測点と、前記鉄筋方向と、前記鉄筋平面とに基づいて、前記鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する構成であってもよい。
【0068】
前記の構成によれば、鉄筋平面上における継ぎ手長さを鉄筋方向に精度よく算出することができる。
【0069】
本発明の態様7に係る画像計測方法は、2本の鉄筋(第1の鉄筋1、第2の鉄筋2)の継ぎ手の撮像画像を用いて、当該継ぎ手の長さを計測する画像計測方法であって、前記撮像画像上において、前記継ぎ手に含まれる一方の鉄筋の端部(第1の鉄筋1の端部1a)と他方の鉄筋の端部(第2の鉄筋2の端部2a)とに設定される計測点(第1の計測点11、第2の計測点12)を取得する計測点取得工程(ステップS1)と、各前記計測点の三次元座標を取得する座標取得工程(ステップS2)と、前記一方の鉄筋(第1の鉄筋1)の鉄筋方向を特定する方向特定工程(ステップS3)と、各前記計測点の前記三次元座標と、前記鉄筋方向とに基づいて、当該鉄筋方向に沿った前記継ぎ手の長さを計測する計測工程(ステップS4)と、を含む。
【0070】
前記の構成によれば、画像上で設定される2つの計測点に基づき、鉄筋の継ぎ手長さを精度良く計測することができる。具体的には、鉄筋方向を特定し、鉄筋方向に沿って継ぎ手長さを計測する。そのため、別々の鉄筋に計測点を設定しても、また、鉄筋の端面のどの位置に計測点を設定しても、計測結果が同一であり、信頼性の高い計測を実現することができる。
【0071】
また、本発明の各態様に係る画像計測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記画像計測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより画像計測装置をコンピュータにて実現させる画像計測装置の画像計測プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 第1の鉄筋
1a 端部
1e 鉄筋エッジ
2 第2の鉄筋
2a 端部
11 第1の計測点
12 第2の計測点
11’,12’ 投影点
31 計測点取得部
32 座標取得部
33、33’ 方向特定部
34 計測部
35 表示制御部
50 鉄筋方向
100 画像計測装置
101、102 撮像部
103 画像処理部
104 表示部
105 入力部
106 記録部
331 鉄筋平面特定部
332 鉄筋方向特定部
図1
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