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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】PYY類似体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/575 20060101AFI20240819BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61K38/22
A61K38/26
A61P43/00 121
A61K47/02
A61P3/04
A61P3/10
A61P1/18
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020547445
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 GB2018053513
(87)【国際公開番号】W WO2019110982
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】1720188.0
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505167543
【氏名又は名称】アイピー2アイピーオー イノベ-ションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ロバート・ブルーム
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/006566(WO,A2)
【文献】特表2013-518090(JP,A)
【文献】国際公開第2015/177572(WO,A1)
【文献】米国特許第08603969(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-51/12
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物摂取量の減少、カロリー摂取量の減少、食欲の減少、およびエネルギー代謝の変化のうちの1つ以上を引き起こすPYY類似体であって、
天然のヒトPYY(Tyr1 Pro2 Ile3 Lys4 Pro5 Glu6 Ala7 Pro8 Gly9 Glu10 Asp11 Ala12 Ser13 Pro14 Glu15 Glu16 Leu17 Asn18 Arg19 Tyr20 Tyr21 Ala22 Ser23 Leu24 Arg25 His26 Tyr27 Leu28 Asn29 Leu30 Val31 Thr32 Arg33 Gln34 Arg35 Tyr36、配列番号1)の配列とは、
-Tyr1が存在しない、
-Ser23が、Ala23で置換されている、
-Asp11が、Gly11で置換されている、及び
-Leu30が、His30で置換されている、
という点で異なり、
さらに、以下のさらなる点:
-Glu10が、Lys10、もしくはGln10で置換されている、
-Ala12が、AIB12で置換されている、
-Leu17が、Ile17で置換されている、
-Asn18が、Leu18、もしくはAla18で置換されている、
-Arg19が、His19で置換されている、
-Ala22が、Ile22で置換されている、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Val31が、Leu31で置換されている、のうちの1つ以上で、天然のヒトPYYの配列とは異なり得、
Arg19が置換されていなければ、Ala22がIle22で置換されている、PYY類似体、
または前記類似体の塩。
【請求項2】
C末端残基が、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する、請求項1に記載のPYY類似体。
【請求項3】
-残基2~9、13~16、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35が、置換されていない、請求項1または2に記載のPYY類似体。
【請求項4】
-Glu10が、置換されていないか、Lys10またはGln10で置換されている、
-残基12が、置換されていない、
-Leu17が、置換されていない、
-Asn18が、Leu18、またはAla18で置換されている、
-Arg19が、His19で置換されている、
-Ala22が、置換されていない、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Val31が、置換されていないか、またはLeu31で置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のPYY類似体。
【請求項5】
-Glu10が、置換されていない、
-残基12が、置換されていない、
-Leu17が、置換されていない、
-Asn18が、置換されていないか、Leu18で置換されている、
-Arg19が、His19である
-Ala22が、置換されていない、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Val31が、置換されていないか、Leu31で置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のPYY類似体。
【請求項6】
-Asn18が、AIB18、Ala18、またはLeu18で置換されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のPYY類似体。
【請求項7】
-Asn18が、Leu18で置換されている、請求項6に記載のPYY類似体。
【請求項8】
-Val31が、置換されていない、請求項1~3、6または7のいずれか一項に記載のPYY類似体。
【請求項9】
C末端残基が、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド基(-C(O)NH)で終端する、請求項1~3、または6から8のいずれか一項に記載のPYY類似体。
【請求項10】
配列番号18、19、23、24、32、33、及び35からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載のPYY類似体。
【請求項11】
配列Pro-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Gly-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Leu-His-Tyr-Tyr-Ala-Ala-Leu-Arg-His-Phe-Leu-Asn-His-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH(配列番号23)を有する化合物Y1419、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1または2に記載のPYY類似体。
【請求項12】
薬学的に許容される担体と、請求項1~11のいずれか一項に記載のPYY類似体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
さらなる治療剤を含む、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
GLP-1受容体のアゴニストである、さらなる治療剤を含む、請求項12または13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
Zn2+イオンを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
医薬品として使用するための、請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害の予防または治療のための、または膵島機能の喪失を予防するための、または膵島機能を回復するための医薬品として使用するための、請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
対象の糖尿病または肥満の予防に使用するための医薬品として使用するための、請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
対象の糖尿病または肥満を治療または予防する方法で使用するための組成物であって、治療上許容される/有効量の請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む、組成物。
【請求項20】
対象において糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害を予防もしくは治療する、膵島機能の喪失を予防する、ならびに/または膵島機能を回復する、食欲を低減する、食物摂取量を低減する、ならびに/またはカロリー摂取量を低減する方法で使用するための組成物であって、治療有効量の、請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む、組成物。
【請求項21】
糖尿病および/または肥満を予防または治療する方法で使用するための組成物であって、治療有効量の請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む、組成物。
【請求項22】
対象が過体重、肥満、および/または糖尿病である、請求項16~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物、または請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記PYY類似体または薬学的組成物が、非経口投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物、または請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記PYY類似体または薬学的組成物が、皮下投与される、請求項16~18のいずれか一項に記載の薬学的組成物、または請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
美容目的で対象に体重減少を引き起こすか、または体重増加を予防する方法で使用するための組成物であって、有効量の、請求項1~11のいずれかに記載のPYY類似体、または請求項12~15のいずれかに記載の薬学的組成物を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせてのいずれかで、特にGLP-1類似体と組み合わせて糖尿病および肥満等の障害を治療するのに有用である、ペプチドYY(PYY)類似体に関する。
【背景技術】
【0002】
米国国民健康栄養調査(NHANES、2011~2012)によれば、米国の成人の3分の2超が過体重または肥満である。米国では、20歳以上の男性の78%および女性の74%が過体重または肥満のいずれかである。さらに、大部分の米国の小児は過体重または肥満である。
【0003】
肥満の原因は、複雑かつ多元的である。肥満が、単純な自己制御の問題ではなく、食欲抑制およびエネルギー代謝に関与する複合疾患であるという証拠が増えてきている。さらに、肥満は、人口の罹患率および死亡率の増加に関連する様々な条件に関連している。肥満の病因は、決定的には立証されていないが、遺伝的、代謝的、生化学的、文化的、および心理社会的な因子が一因となるものと考えられる。一般的に、肥満は、過剰な体脂肪が個体を健康リスクにさらす状態であると言われてきた。
【0004】
肥満が罹患率および死亡率の増加と関連しているという強力な証拠が存在する。循環器疾患リスクおよび2型糖尿病疾患リスク等の疾患リスクは、肥満度指数(BMI)の増加とは無関係に増加する。実際、このリスクは、24.9超のBMIの各ポイントを、女性の心疾患リスクの5パーセントの増加として、および男性の心疾患リスクの7パーセントの増加として、定量化されている(Kenchaiah et al.,N.Engl.J.Med.347:305,2002、Massie,N.Engl.J.Med.347:358,2002を参照のこと)。さらに、肥満の人の体重減少が重要な疾患リスク因子を減少させるという実質的証拠が存在する。たとえ過体重および肥満の両方の成人におけるわずかな体重減少であっても、例えば、初期体重の10%等であっても、高血圧、高脂血症、および高血糖等のリスク因子の減少に関連してきた。
【0005】
食事制限および運動は、体重増加を減少させる簡単な方法を提供するが、過体重および肥満の個体は、効果的に体重を減少させるためにこれらの因子を十分に制御できないことが多い。薬物療法が利用可能であり、包括的な体重減少プログラムの一部として使用することができるいくつかの減量薬が、食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって認可されている。しかしながら、これらの薬物の多くは深刻な不利な副作用を有する。より侵襲性の低い方法が不成功に終わり、かつ患者が肥満に関連する罹患率または死亡率の高いリスクがある場合、慎重に選択された、臨床的に重度の肥満を有する患者にとっては、減量手術が1つの選択肢である。しかしながら、これらの処置はリスクが高く、限られた数の患者における使用にのみ好適である。体重の減少を望むのは、肥満対象だけではない。推奨範囲内、例えば、推奨範囲の上部の体重を有する人々は、理想体重により近づくように体重を減少させることを望む場合がある。したがって、過体重および肥満の対象おいて体重減少に効果を及ぼすために使用することができる薬剤の必要性が依然として存在する。
【0006】
PYYは、内臓のL細胞によって生成される36アミノ酸のペプチドであり、大腸および直腸に最高濃度で見られる。2つの内因性形態のPYYおよびPYY3-36は、循環に放出される。PYY3-36はさらに、酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による、PYYのTyr-Proアミノ末端残基の切断によって生成される。PYY3-36は、受容体のYファミリーのY2受容体に結合する(De Silva and Bloom,Gut Liver,2012,6,p10-20)。げっ歯類およびヒトへのPYY3-36の末梢投与は、食物摂取量の顕著な阻害をもたらし、PYY類似体が肥満等の状態の治療に有用であり得るという見込みにつながることを、研究は示している(例えば、Batterham et al,Nature,2002,418,p650-654、Batterham et al,New England Journal of Medicine,2003,349,p941-948を参照のこと)。
【0007】
PYYはまた、対象の代謝の変化にも関与しており、2型糖尿病のインスリンおよびグルカゴン分泌障害を回復可能であるという証拠に従い、2型糖尿病の治療薬として提案されている。過体重であることが糖尿病のリスクを増加し、糖尿病であることが過体重になる可能性を増加するので、肥満と糖尿病の関係は複雑である。2つの状態間がつながる場合、PYYは、ますます認識されている役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2011/092473
【文献】WO2012/101413
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kenchaiah et al.,N.Engl.J.Med.347:305,2002
【文献】Massie,N.Engl.J.Med.347:358,2002
【文献】Batterham et al,Nature,2002,418,p650-654
【文献】Batterham et al,New England Journal of Medicine,2003,349,p941-948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
WO2011/092473およびWO2012/101413(Imperial Innovations Limited)は、PYYのある特定の類似体について開示している。しかしながら、肥満および/または糖尿病等のエネルギー代謝の障害の治療または予防の治療剤として効果的であるように好適な特性を有する、さらなる化合物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、天然のヒトPYY(Tyr1 Pro2 Ile3 Lys4 Pro5 Glu6 Ala7 Pro8 Gly9 Glu10 Asp11 Ala12 Ser13 Pro14 Glu15 Glu16 Leu17 Asn18 Arg19 Tyr20 Tyr21 Ala22 Ser23 Leu24 Arg25 His26 Tyr27 Leu28 Asn29 Leu30 Val31 Thr32 Arg33 Gln34 Arg35 Tyr36、配列番号1)の配列とは、
-Ser23が、Ala23、Glu23、Lys23、Gln23、もしくはAIB23(好ましくはAla23)で置換されている点で異なり、
さらに、以下のさらなる点:
-Tyr1が存在しない、
-残基2~9、13~16、20、21、24、25、もしくは26のうちの1つ以上が、保存的置換の対象である、
-Glu10が、Ala10、Lys10、もしくはGln10で置換されている、
-Asp11が、Gly11で置換されている、
-Ala12が、AIB12で置換されている、
-Leu17が、Ile17もしくはAIB17で置換されている、
-Asn18が、Leu18、AIB18、もしくはAla18で置換されている、
-Arg19が、His19もしくはLys19で置換されている、
-Ala22が、Val22もしくはIle22で置換されている、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Leu30が、His30で置換されている、
-Val31が、Leu31で置換されている、のうちの1つ以上で、天然のヒトPYYの配列とは異なり得、
C末端残基が、任意選択的に、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する、PYY類似体、
またはその化合物の誘導体、またはその化合物もしくは誘導体の塩を提供する。
【0012】
本発明は、食物摂取量の減少、カロリー摂取量の減少、食欲の減少、およびエネルギー代謝の変化を引き起こすために、特定のアミノ酸残基が欠失および/または置換されているPYY類似体を対象に投与することもできるという発見に基づく。多くの場合、本発明のPYY類似体は、天然PYYよりも改善された効力、および/またはより長い作用期間、および/またはより少ない副作用を呈する。
【0013】
本発明のPYY類似体はまた、GLP-1受容体のアゴニストとの併用療法における使用に特に好適である。これは、PYYとGLP-1類似体とが広く互換性を有し、同様の化学的性質を有することが、それらを組み合わせて製剤化することに役立つので、単回注射として便利に投与することができる。加えて、PYY類似体とGLP-1類似体とは、異なる別々の機序によって食欲を阻害するので、併用療法を受けている患者は、いずれかの薬剤単独で治療される場合よりも望ましい薬効から「離脱する」傾向が少ない。最後に、異なる作用機序によって、食欲抑制に対する相加効果または相乗効果が可能になり、より強力な療法になる
【0014】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体および任意選択的にさらなる治療剤とともに、本発明によるPYY類似体を含む薬学的組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、医薬品として使用するための、本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を提供する。PYY類似体または薬学的組成物は、対象の、糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害の予防もしくは治療での用途、膵島機能の喪失の予防での用途、ならびに/または膵島機能の回復での用途を見出す。
【0016】
別の態様では、本発明は、糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害の予防もしくは治療のための、膵島機能の喪失の予防のための、ならびに/または対象の膵島機能の回復のための、医薬品の製造のために本発明によるPYY類似体の使用を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患、または障害、または他の望ましくない生理学的状態を治療または予防する方法を提供する。PYY類似体または薬学的組成物は、対象の、糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害を予防もしくは治療する、膵島機能の喪失を予防する、ならびに/または膵島機能を回復する、食欲を低減する、食物摂取量を低減する、ならびに/またはカロリー摂取量を低減するための方法での用途を見出す。
【0018】
別の態様では、本発明はまた、有効量の本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む組成物を対象に投与することを含む、美容目的で対象の体重減少を引き起こすか、または体重増加を予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】本発明の特定の好ましい実施形態に関係するいくつかのPYY類似体のアミノ酸配列を列挙する表である。参照のために、ヒトPYYの自然発生する配列が含まれている。「REF」という見出しの最初の列は、付随する配列表で使用されている配列番号を提供する。天然のヒトPYYは、REF=1である。
図1-2】図1-1の続きである。
図1-3】図1-2の続きである。
図1-4】図1-3の続きである。
図2】実施例に記載のインビトロでの受容体効力実験の結果を示す
図3-1】実施例に記載の化合物Y242の有効性を実証するインビボ実験(n=5~8)の結果を示す。
図3-2】図3-1の続きである。
図4-1】実施例に記載の化合物Y1419の有効性を実証するインビボ実験(n=7~8)の結果を示す。
図4-2】図4-1の続きである。
図5-1】本発明の他の化合物の有効性を実証するインビボ実験の結果を示す
図5-2】図5-1の続きである。
図6-1】実施例に記載のインビトロでの受容体効力実験の結果を示す
図6-2】図6-1の続きである。
図6-3】図6-1の続きである。
図6-4】図6-1の続きである。
図6-5】図6-1の続きである。
図6-6】図6-1の続きである。
図6-7】図6-1の続きである。
図6-8】図6-1の続きである。
図6-9】図6-1の続きである。
図6-10】図6-1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表
本出願に列挙されるアミノ酸配列は、アミノ酸に関する標準的な略語を使用して示される。ここに示される特定の配列は、本発明の特定の好ましい実施形態に関連している。本出願は、機械可読式配列表を含み、PYY類似体は、図1に提供されている実施例の番号と同じである配列番号識別子が割り当てられている。
【0021】
定義
本開示の種々の実施形態の検討を容易にするために、以下の具体的な用語の説明が提供される。
動物:生きた多細胞脊椎生物、例えば、哺乳動物および鳥類を含む分類。哺乳動物という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒトおよび動物対象の両方を含む。
【0022】
食欲:食物に対する自然な欲求または渇望。一実施形態において、食欲は、食物に対する欲求を評価するための調査によって測定される。食欲増進は、概して、摂食行動の増加をもたらす。
【0023】
食欲抑制剤:食物に対する欲求を減少させる化合物。市販の食欲抑制剤には、限定されないが、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミンフェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、ならびにフルオキセチンが含まれる。
【0024】
肥満度指数(BMI):肥満度を測定するための数式であり、時にはケトレー指数とも呼ばれる。BMIは、体重(kg)を身長(m)で除すことによって算出される。「正常」と認められている男女両方の現在の基準は、20~24.9kg/mのBMIである。一実施形態において、25kg/m超のBMIを使用して、肥満の対象を識別することができる。グレードIの肥満は、25~29.9kg/mのBMIに相当する。グレードIIの肥満は、30~40kg/mのBMIに相当し、グレードIIIの肥満は、40kg/m超のBMIに相当する(Jequier,Am.J Clin.Nutr.45:1035-47,1987)。理想体重は、身長、体格、骨格、および性別に基づいて、種および個体の間で異なる。
【0025】
保存的置換:ポリペプチドにおける、生物学的に同様の別の残基によるアミノ酸残基の置換。「保存的変異」という用語はまた、置換アミノ酸、すなわち、親アミノ酸の代わりに、1つ以上の原子が別の原子または基で置換されているアミノ酸の使用を含むが、ただし、ポリペプチドがその活性を保持するものとするか、または置換ポリペプチドに対して生成される抗体もまた非置換ポリペプチドと免疫応答するものとする。限定的ではないが典型的な保存的置換は、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIle間での互いへの置換;ヒドロキシル含有残基SerとThrとの相互交換、酸性残基AspとGluとの相互交換、アミド含有残基AsnとGlnとの間の相互交換、塩基性残基LysとArgとの相互交換、芳香族残基PheとTyrとの相互交換、および小型アミノ酸Ala、Ser、Thr、Met、およびGlyの相互交換である。さらなる保存的置換は、別の類似する空間配置または立体配置によるアミノ酸の置換、例えば、AsnのAspとの相互交換、またはGlnのGluとの相互交換を含む。
【表1】
【0026】
非保存的置換:ポリペプチドにおける、生物学的に同様ではない別の残基によるアミノ酸残基の置換。例えば、実質的に異なる電荷、実質的に異なる疎水性、または実質的に異なる空間配置もしくは立体配置を有する別の残基によるアミノ酸残基の置換。
【0027】
糖尿病:内因性インスリン欠乏および/またはインスリン感受性欠陥のいずれかによって、細胞が、それらの膜を通した内因性グルコースの輸送が不全であること。糖尿病は、インスリンの不十分な分泌、または標的組織のインスリン抵抗性に起因する、炭水化物代謝、タンパク質代謝、および脂肪代謝の障害である慢性症候群である。糖尿病は、インスリン依存性真性糖尿病(IDDM、1型)およびインスリン非依存性真性糖尿病(NIDDM、2型)の2つの主要な形態で発症し、これらは、病因、病態、遺伝的特徴、発症年齢、および治療において異なる。
【0028】
糖尿病の2つの主要な形態は、どちらも、グルコース恒常性の制御のために必要とされる量および正確なタイミングでインスリンを送達することができないということを特徴とする。1型糖尿病またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)は、内因性インスリンの不十分なレベルをもたらすβ細胞の破壊によって引き起こされる。II型糖尿病またはインスリン非依存性糖尿病は、インスリンに対する体の感受性、およびインスリン生成における相対的欠乏の両方における欠陥から生じる。
【0029】
食物摂取量:個体によって消費される食物の量。食物摂取量は、体積または重量によって測定することができる。例えば、食物摂取量は、個体によって摂取される食物の総量であってもよい。または、食物摂取量は、タンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、鉱物、または個体の任意の他の食物成分の量であってもよい。「タンパク質摂取量」は、個体によって消費されるタンパク質の量を指す。同様に、「脂肪摂取量」、「炭水化物摂取量」、「コレステロール摂取量」、「ビタミン摂取量」、および「ミネラル摂取量」は、個体によって消費されるタンパク質、脂肪、炭水化物、コレステロール、ビタミン、またはミネラルの量を指す。
【0030】
正常な日常の食生活:所与の種の個体の平均的な食物摂取量。標準的な日常の食生活は、カロリー摂取量、タンパク質摂取量、炭水化物摂取量、および/または脂肪摂取量の観点から表すことができる。ヒトの標準的な日常の食生活は、概して以下を含む:約2,000、約2,400、または約2,800~それより著しく高いカロリー。さらに、ヒトの標準的な日常の食生活は、概して、約12g~約45gのタンパク質、約120g~約610gの炭水化物、および約11g~約90gの脂肪を含む。低カロリー食は、ヒト個体の標準的なカロリー摂取量の約85%以下、好ましくは約70%以下である。
【0031】
動物において、カロリーおよび栄養必要量は、動物の種および大きさに応じて異なる。例えば、ネコでは、1ポンド当たりの総カロリー摂取量、ならびにタンパク質、炭水化物、および脂肪の配分率は、ネコの年齢および繁殖状態によって異なる。しかしながら、ネコについての一般的なガイドラインでは、40cal/lb/日(18.2cal/kg/日)である。約30%~約40%はタンパク質であるべきであり、約7%~約10%は炭水化物であるべきであり、約50%~約62.5%は脂肪摂取に由来するべきである。当業者は、任意の種の個体の通常の日常の食生活を容易に識別することができる。
【0032】
肥満:過剰な体脂肪が個人を健康リスクにさらし得る状態(Barlow and Dietz,Pediatrics 102:E29,1998;National Institutes of Health,National Heart,Lung,and Blood Institute(NHLBI),Obes.Res.6(suppl.2):51S-209S,1998を参照のこと)。過剰な体脂肪は、エネルギー摂取量とエネルギー消費量の不均衡の結果である。例えば、肥満を評価するために肥満度指数(BMI)が用いられてもよい。一般的に用いられる1つの慣習において、25.0kg/m~29.9kg/mのBMIは過体重であり、30kg/m以上BMIは肥満である。
【0033】
別の慣習では、肥満を評価するために胴囲が用いられる。この慣習において、男性では102cm以上の胴囲が肥満であると見なされ、女性では89cm以上の胴囲が肥満であると見なされる。有力な証拠が、個体の罹患率および死亡率の両方に肥満が影響することを示している。例えば、肥満の個体は、中でも、心疾患、インスリン非依存性(-2型)糖尿病、高血圧、脳卒中、癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)、脂質異常症、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、受精能低下、および変形性関節症のリスクが増加する(Lyznicki et al.,Am.Fam.Phys.63:2185,2001を参照のこと)。
【0034】
過体重:理想体重よりも重い個体。過体重の個体は、肥満である可能性があるが、必ずしも肥満ではない。例えば、過体重の個体は、体重の減少を望む任意の個体である。1つの慣習において、過体重の個体は、25.0kg/m~29.9kg/mのBMIを有する個体である。
【0035】
ペグ化されたおよびペグ化:共有結合を形成するようにポリ(アルキレングリコール)、好ましくは活性化ポリ(アルキレングリコール)を反応させるプロセス。促進剤、例えばアミノ酸、例えばリジンを使用してもよい。「ペグ化」は、ポリ(エチレングリコール)、またはメトキシポリ(エチレングリコール)等のその誘導体を使用して行われることが多いが、本明細書ではこの用語は、メトキシポリ(エチレングリコール)の使用に限定されず、任意の他の有用なポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(プロピレングリコール)の使用も含む。
【0036】
pI:pIは、等電位点の略語である。場合によって用いられる代替的な略語は、IEPである。pIは、特定の分子が正味電荷を有しないpHである。そのpI未満のpHでは、タンパク質またはペプチドは、正味の正電荷を有する。そのpIを上回るpHでは、タンパク質またはペプチドは、正味の負電荷を有する。タンパク質およびペプチドは、ポリアクリルイミドゲル中に含有されるpH勾配を利用した電気泳動方法である等電点電気泳動と呼ばれる技法を使用して、それらの等電位点に従って分離することができる。
【0037】
ペプチドYY(PYY):本明細書で使用されるPYYという用語は、ペプチドYYポリペプチド、下部小腸(回腸)および結腸の内側を覆う細胞によって血液中に分泌されるホルモンを指す。様々な種の自然発生する野生型PYY配列を、表1に示す。
【表2】
【0038】
末梢投与:中枢神経系以外の投与。末梢投与は、脳への直接投与を包まない。末梢投与は、限定されないが、血管内、筋肉内、皮下、吸入、経口、直腸内、経皮、または鼻腔内投与を含む。
【0039】
ポリペプチド:モノマーが、アミド結合を通じて一緒に結合しているアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかが使用され得、L-異性体が好ましい。本明細書で使用される「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、任意のアミノ酸配列を包含し、糖タンパク質等の修飾配列を含む。「ポリペプチド」という用語は、厳密には、自然発生するタンパク質、ならびに組み換えによって、または合成によって生成されるタンパク質も網羅する。「ポリペプチド断片」という用語は、ポリペプチドの一部分、例えば、受容体との結合において少なくとも1つの有用な配列を呈する断片を指す。「ポリペプチドの機能的断片」という用語は、ポリペプチドの活性を保持しているポリペプチドの全ての断片を指す。生物学的機能性ペプチドはまた、対象となるペプチドが、その望ましい活性を減少させない別のペプチドに融合された融合タンパク質を包むことができる。
【0040】
皮下投与:皮下投与は、皮膚の真皮と深部組織との間に見られる脂肪の皮下層への物質の投与である。皮下投与は、例えば、シリンジまたは「ペン」型注射デバイスを装着した皮下注射針を使用した注射によるものであってもよい。他の投与方法、例えば、マイクロニードルが使用されてもよい。皮下注射針を用いた注射は、典型的には、受け手の利益になるようにある程度の疼痛を伴う。そのような疼痛は、局所麻酔薬または鎮痛薬の使用によって抑制することができる。しかしながら、注射の知覚される疼痛を軽減するために通常用いられる方法は、注射の直前および注射中に対象の気をそらすことに過ぎない。疼痛は、比較的小さいゲージの皮下注射針を使用することによって、比較的少量の物質を注射することによって、および対象が注射部位に「刺すような」感覚を経験することを引き起こし得る過度に酸性またはアルカリ性の組成物を回避することによって、最小限に抑えることができる。pH4~pH10のpHを有する組成物は通常、許容できるほど快適であると見なされている。
【0041】
治療有効量:障害の進行を予防するか、もしくは障害の退行を引き起こすのに十分であるか、または障害の徴候もしくは症状を軽減することが可能であるか、または所望の結果を達成することが可能である、用量。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の治療有効量は、体重増加を阻害もしくは停止するのに十分な量、あるいは食欲を低下させるのに十分な量、あるいはカロリー摂取量もしくは食物摂取量を減少させるか、またはエネルギー消費量を増加させるのに十分な量である。
【0042】
本発明の第1の態様によれば、天然のヒトPYY(Tyr1 Pro2 Ile3 Lys4 Pro5 Glu6 Ala7 Pro8 Gly9 Glu10 Asp11 Ala12 Ser13 Pro14 Glu15 Glu16 Leu17 Asn18 Arg19 Tyr20 Tyr21 Ala22 Ser23 Leu24 Arg25 His26 Tyr27 Leu28 Asn29 Leu30 Val31 Thr32 Arg33 Gln34 Arg35 Tyr36、配列番号1)の配列とは、
-Ser23が、Ala23、Glu23、Lys23、Gln23、もしくはAIB23(好ましくはAla23)で置換されている点で異なり、
さらに、以下のさらなる点:
-Tyr1が存在しない、
-残基2~9、13~16、20、21、24、25、もしくは26のうちの1つ以上(好ましくは、残基11、18、19、23、27、および30、または少なくとも残基11、18、19、23、27、および30、または11、18、19、23、27、および30から選択された残基のうちの少なくとも4つもしくは5つ)が、保存的置換の対象である、
-Glu10が、Ala10、Lys10、もしくはGln10で置換されている、
-Asp11が、Gly11で置換されている、
-Ala12が、AIB12で置換されている、
-Leu17が、Ile17もしくはAIB17で置換されている、
-Asn18が、AIB18、Ala18、もしくはLeu18(好ましくはLeu18)で置換されている、
-Arg19が、His19もしくはLys19(好ましくはHis19)で置換されている、
-Ala22が、Val22もしくはIle22で置換されている、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Leu30が、His30で置換されている、
-Val31が、Leu31で置換されている、のうちの1つ以上で、天然のヒトPYYの配列とは異なり得、
C末端残基が、任意選択的に、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する、PYY類似体、
またはその化合物の誘導体、またはその化合物もしくは誘導体の塩が提供される。
【0043】
上の式(I)のアミノ酸配列は、左上がN末端、右下がC末端で示されている。別途記載のない限り、式(I)の配列のアミノ酸残基は、L-アミノ酸である。
【0044】
好ましい一実施形態において、Tyr1は存在しない。Tyr1の除去は、Y1受容体を上回るY2受容体に対するPYY類似体の選択性を増加し、Y2受容体のアゴニズムは、摂食の阻害を担う。
【0045】
好ましい一実施形態において、残基2~9は非置換である。
【0046】
別の好ましい実施形態において、残基2~9は非置換であり、Tyr1は存在しない。
【0047】
別の実施形態において、Tyr1は存在せず、残基2~9は非置換であり、Glu10はLys10で置換されている。
【0048】
別の実施形態において、Tyr1は存在せず、残基2~9は非置換であり、Glu10はGln10で置換されている。
【0049】
別の特に好ましい実施形態において、Tyr1は存在せず、残基2~10は非置換である。
【0050】
一実施形態によれば、
-Tyr1は、存在しない
-残基2~9、13~16、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35は、非置換である。
【0051】
特に好ましい一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-残基2~10、12~17、20~22、24~26、28、29および31~36は非置換である。任意選択的に、残基14はまた、非置換であり得る。
【0052】
一実施形態によれば、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、AIB18、Ala18、もしくはLeu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0053】
一実施形態によれば、
-Tyr1は、存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、AIB18、Ala18、もしくはLeu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0054】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35は、非置換である、
-Asn18は、AIB18、Ala18、もしくはLeu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0055】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35は、非置換である、
-Asn18は、AIB18、Ala18、もしくはLeu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0056】
一実施形態によれば、
-Glu10は、非置換である、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、非置換である、
-Arg19は、His19である
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Ala23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0057】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、非置換である、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、非置換である、
-Arg19は、His19である
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Ala23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端し、任意選択的に残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35の全ては、非置換である。
【0058】
いくつかの実施形態において、Asp11は、Gly11で置換されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、Asn18は、AIB18、Ala18、またはLeu18、好ましくはLeu18で置換されている。
【0060】
一実施形態によれば、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0061】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0062】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている。
【0063】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、Lys10もしくはGln10で置換されている、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0064】
一実施形態によれば、
-Glu10は、非置換である、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19である
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Ala23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0065】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-Glu10は、非置換である、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-残基12は、非置換である、
-Leu17は、非置換である、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19である
-Ala22は、非置換である、
-Ser23は、Ala23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する、
-任意選択的に、残基2~9、12~17、20、21、24、25、26、28、29、32、33、34、および35の全ては、非置換である。
【0066】
一実施形態によれば、
-Tyr1は存在しない、
-残基2~10、12~17、20、21、22、24、25、26、28、29、31、32、33、34、35、および36は非置換である、
-Asp11は、Gly11で置換されている、
-Asn18は、Leu18で置換されている、
-Arg19は、His19で置換されている、
-Ser23は、Ala23で置換されている、
-Tyr27は、Phe27で置換されている、
-Leu30は、His30で置換されている、
-Val31は、Leu31で置換されている、
-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0067】
好ましい一実施形態によれば、以下の10の基準のうちの少なくとも9つに該当する:
1-Tyr1は、存在しない、
2-残基2~10、12~17、20、21、22、24、25、26、28、29、31、32、33、34、35、および36は非置換である、
3-Asp11は、Gly11で置換されている、
4-Asn18は、Leu18で置換されている、
5-Arg19は、His19で置換されている、
6-Ser23は、Ala23で置換されている、
7-Tyr27は、Phe27で置換されている、
8-Leu30は、His30で置換されている、
9-Val31は、非置換である、
10-C末端残基は、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する。
【0068】
本発明は、少なくとも基準1および2、ならびに少なくとも7つの他の基準に該当するか、または基準1、2、および10、ならびに少なくとも6つの他の基準に該当するか、または全ての基準1~10に該当する、上の実施形態が考慮される。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、Leu30は、His30で置換されている。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、Val31は、非置換である。
【0071】
ある特定の実施形態によれば、2、5、8、および14位の自然発生するPro残基が保持される。これらの残基は、分子の三次構造を安定させるのに重要である水素結合を形成することが見出されている。したがって、ある特定の好ましい実施形態によれば、
-Ser23が、Ala23、Glu23、Lys23、Gln23、もしくはAIB23(好ましくはAla23)で置換されているという点で、天然のヒトPYYの配列とは異なるPYY類似体が提供される。
【0072】
そのような化合物は、次の点:
-Tyrが、存在しない、
-1つ以上の残基3、4、6、7、9、13、15、16、20、21、24、25、または26が、保存的置換の対象である、
-Glu10が、Ala10、Lys10、もしくはGln10で置換されている、
-Asp11が、Gly11で置換されている、
-Ala12が、AIB12で置換されている、
-Leu17が、Ile17もしくはAIB17で置換されている、
-Asn18が、AIB18、Ala18、もしくはLeu18(好ましくはLeu18)で置換されている、
-Arg19が、His19もしくはLys19(好ましくはHis19)で置換されている、
-Ala22が、Val22もしくはIle22で置換されている、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Leu30が、His30で置換されている、
-Val31が、Leu31で置換されている、
C末端残基が、任意選択的に、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端する、
のうちの1つ以上において、天然のヒトPYYの配列、またはその化合物の誘導体、またはその化合物もしくは誘導体の塩とさらに異なり得る。
【0073】
全ての実施形態によれば、C末端残基が、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端することが好ましい。アミド基が存在しないことによって、Y2受容体のアゴニズムの著しい減少を生じる。
【0074】
全ての実施形態によれば、Ser23は、代替的アミノ酸残基と置換されている。23位の置換は、天然配列からの許容される変化として以前に開示されているが、23位の置換を含有する以前のPYY類似体(例えば、出願人の以前の特許出願に開示のY242)は、本明細書に提示の比較研究で示されている本発明のペプチドと同じ利点を呈さなかった。
【0075】
いくつかのの実施形態によれば、Ser23は、Glu23、Ala23、AIB23、またはGln23で置換されている。
【0076】
好ましい特定の配列には、本明細書に開示の配列、具体的にはY1319、Y1371、Y1372、Y1419、Y1421、Y1518、Y1528、Y1558、Y1568、Y1572、Y1579、Y1553、またはY1581(特にY1419)として識別される配列が含まれる。本発明は、好ましい配列として、Y1319、Y1371、Y1372、Y1419、Y1421、Y1518、Y1528、Y1558、Y1568、Y1572、Y1579、Y1553、またはY1581(特にY1419)の配列に対応する配列を包含し、これらは1つまたは2つの(例えば、保存的置換が行われている)置換、およびそれが基づく配列の活性(例えば、本明細書に開示のアッセイのうちの1つにおける活性の少なくとも20、50、または70%)を保持する。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、薬学的に許容される担体および任意選択的にさらなる治療剤とともに、本発明によるPYY類似体を含む薬学的組成物が提供される。
【0078】
第2の治療剤は、抗肥満剤、食欲抑制剤、または抗糖尿病剤であり得る。好ましくは、治療剤は、GLP-1類似体もしくはグルカゴン類似体、またはそれらのいずれかの誘導体である。
【0079】
以下でさらに論じられるある特定の実施形態によれば、組成物は、Zn2+イオンを含む。
【0080】
本発明の別の態様によれば、医薬品として使用するための、本発明によるPYY類似体または本発明による薬学的組成物が提供される。
【0081】
ある特定の実施形態によれば、医薬品は、糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害の予防もしくは治療のための、または膵島機能の喪失を予防するための、または膵島機能を回復させるためのものである。
【0082】
ある特定の実施形態によれば、医薬品は、対象の糖尿病または肥満の予防に使用するためのものである。
【0083】
本発明のさらなる態様によれば、治療上許容される/有効量の本発明によるPYY類似体、または本発明による薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患、または障害、または他の望ましくない生理学的状態を治療または予防する方法が提供される。
【0084】
本発明のさらなる態様によれば、治療有効量の本発明によるPYY類似体、または本発明による特許請求の範囲で定義される薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の、糖尿病および/もしくは肥満等のエネルギー代謝障害を予防もしくは治療する、膵島機能の喪失を予防する、ならびに/または膵島機能を回復する、食欲を低減する、食物摂取量を低減する、ならびに/またはカロリー摂取量を低減する方法が提供される。
【0085】
本発明のさらなる態様によれば、治療有効量の本発明によるPYY類似体、または本発明による薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の糖尿病および/または肥満を治療または予防する方法が提供される。
【0086】
本発明の全ての態様に関して、対象は、過体重、肥満、および/または糖尿病であり得る。あるいは、対象は、健康な体重の対象であってもよい。
【0087】
本発明によるPYY類似体または薬学的組成物は、非経口投与される。したがって、そのような投与に好適な形式で提供され得る。例えば、注射デバイスで提供されてもよい。
【0088】
好ましくは、PYY類似体または薬学的組成物は皮下投与され、そのような投与に好適な形式で提供されてもよい。
【0089】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の本発明によるPYY類似体を対象に投与することを含む、美容目的で対象の体重減少を引き起こすか、または体重増加を予防する方法が提供される。そのような場合の対象は、肥満、過体重であってもよく、またはいくつかの好ましい実施形態によれば健康な体重の対象であってもよい。
【0090】
本発明のペプチドホルモン類似体は、当該技術分野で周知の組み換え法によって生成されてもよいか、または代替として、それらは、同様に当該技術分野で周知の合成法によって生成されてもよい。
【0091】
本発明によるPYY類似体は、好ましくは、ヒトPYYよりも、食物摂取量の低減に持続的な効果を有するか、または食物摂取量の低減により強い効果を有する。好ましくは、それらは、少なくとも天然のヒトPYYと同じくらい強力であるがより持続的に、食物摂取量の低減に効果を有する。食欲抑制の持続時間の増加は、「離脱」として知られる影響を回避するのに、特に重要であり得る。短期間の食欲抑制剤は、1回の食事によって補われる食欲または時間を減少させることができ、その食事において、対象は、典型的にはより少ない食物を摂取する。しかしながら、その後食欲抑制剤が代謝されるか、または対象として循環から除去される場合、対象は、次の食事時間までにその「正常な」食欲を回復し得る。対象が以前の食事時間に少量の食事を取っていることを考慮すると、対象は、実際には、2回目の食事時には食欲が増加している場合がある。対象がその食欲を満たした場合、2回の食事にわたる食物摂取量の合計が、食欲抑制剤が用いられなかった場合の食物摂取量よりも少なくないということもあり得る。すなわち、対象は、食欲抑制剤の効果から「離脱」した可能性がある。「離脱」は、追加の用量の食欲抑制剤を使用することによって、またはより長い作用持続時間を有する食欲抑制剤を使用することによって低減することができる。より長い間対象の食欲を低減させている場合、特定の1回の食事の総量には現実的な限界があるため、1回の食事の不足分を次の食事で補うことができる程度が低減される。
【0092】
好ましくは、本発明のPYY類似体は、Y2受容体に対して選択的である。すなわち、Y1、Y3、Y4、Y5、およびY6等の他の受容体と比較して、Y2により高い親和性で結合する。それらの受容体は、結合親和性、薬理学、および配列に基づいて認識される。全てではないにしても、ほとんどの受容体は、Gタンパク質共役受容体である。Y1受容体は、一般にシナプス後部であると考えられており、末梢における神経ペプチドYの既知の作用のうちの多くを仲介する。当初、この受容体は、13-36断片等の神経ペプチドYのC末端断片への低い親和性を有すると説明されていたが、等しい親和性で完全長の神経ペプチドYおよびペプチドYYと相互作用する(PCT公開第WO93/09227号を参照のこと)。
【0093】
薬理学的には、Y2受容体は、神経ペプチドYのC末端断片への親和性を呈することによって、Y1とは区別される。Y2受容体は、神経ペプチドY(13-36)の親和性によって最も頻繁に区別されるが、神経ペプチドYの3-36断片およびペプチドYYは改善された親和性および選択性を提供する(Dumont et al.,Society for Neuroscience Abstracts 19:726,1993を参照のこと)。Y1およびY2の両方の受容体を通じた信号伝達は、アデニル酸シクラーゼの阻害と結びついている。Y2受容体への結合はまた、N型カルシウムチャネルの選択的阻害によって、シナプスの細胞内カルシウムレベルを低減することが見出された。加えて、Y1受容体のようにY2受容体は、セカンドメッセンジャーへの異なる結合を呈する(米国特許第6,355,478号を参照のこと)。Y2受容体は、海馬、黒質外側、視床、視床下部、脳幹を含む、多様な脳領域に見られる。ヒト、マウス、サル、およびラットのY2受容体がクローニングされている(例えば、米国特許第6,420,352号および米国特許第6,355,478号を参照のこと)。好ましくは、本発明のPYY類似体は、Y1、Y3、Y4、Y5、および/またはY6への結合親和性よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍大きい親和性でY2に結合する。
【0094】
本発明によるPYY類似体は、好ましくは、溶液中(すなわち、例えば、pH7.4等の組織液または血漿中に見られるもの等の生理学的状態に近い溶液中)の正味のイオン電荷が低いかまたは全く有さない、例えば、好ましくは、本発明のPYY類似体は、pH7.4で+1、0、または-1の正味のイオン電荷を有する。例えば、2つの酸性基および2つの塩基性基を有するPYY類似体は、0の正味のイオン電荷を有するであろう。6.4未満の水中のpKaを有する酸性基は、pH7.4で-1のイオン電荷に寄与すると見なされる。8.4超のpKaを有する塩基性基は、pH7.4で+1のイオン電荷に寄与すると見なされる。低い正味のイオン電荷、特にインビボ条件下での正味のイオン電荷が存在しないことによって、PYY類似体のインビボ溶解度が制限され、これが高濃度ペプチドの皮下投与後の吸収の遅延に寄与し、したがって循環に長く存在すると仮説が立てられている。
【0095】
本発明によるPYY類似体は、天然PYYの場合のように、26位にヒスチジンを含有する。本発明によるPYY類似体は、好ましくは、19および/または30位にもHisを含有する。本発明の好ましい一態様によれば、本発明によるPYY類似体は、ヒスチジンの代わりに、天然PYY分子の19および30位に対応するアミノ酸のうちの少なくとも1つをさらに含有する。より好ましくは、PYY類似体の30位のアミノ酸は、ヒスチジンである。特に好ましい一実施形態において、本発明のPYY類似体は、19、26、および30位に3つのヒスチジン残基を含有する。
【0096】
さらなる説明として、ヒスチジンは、pH7.4で荷電しない(すなわち、循環における生理学的状態下または皮下投与後の皮下で)という点で、独特のアミノ酸である。しかしながら、ヒスチジンのNH側鎖のpIは約6.0であるので、pH5(またはそれ以下)では完全に荷電する。ある特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYY類似体は、ヒスチジンのイオン化、好ましくはそのようにより低いpHでの全体的な正味の電荷を呈するように、生理学的pH(pH7.4)で全体的な電荷が低いかまたは全く有さず、好ましくは約5のpHを有する組成物の一部として製剤化される(例えばpH4.5~pH6.0-およそpH4または5未満のpHは、注射部位で疼痛を増加する可能性があるので、注射用組成物としては望ましくない場合がある)。荷電した残基の数の増加によって、バイアル中の注射用組成物の溶解度が増加し、したがって、比較的濃度の高いペプチド溶液の少量での注射を提供することが可能になる。しかしながら、皮下注射の後、類似体は、イオン化した残基の数、特にイオン化ヒスチジン残基の数が低下する生理学的pHに曝され、したがって溶解度が減少する。これにより、ペプチドの皮下での沈殿が引き起こされる。
【0097】
His残基の存在は、この効果を向上する。
【0098】
ある特定の好ましい実施形態によれば、本発明によるPYY類似体は、以下の好ましい特色の組み合わせを有する:
1)pH7.4で正味のイオン電荷を全く有さないかまたはこれが低く(例えば、+1、0、または-1)、固有の溶解度を減少させるために全体的に比較的少ない荷電基および親水基を有し得る、ペプチド配列。
2)投与前の保存のためにpH5で正味の正電荷および良好な溶解度を生じて、低粘度の投与溶液(pH5)を可能にする、多数のヒスチジンの存在。
3)少量かつ高濃度の皮下投与に好適であり、pH5ではなくpH7.4で溶解度定数を超えること。
【0099】
このpH依存性の溶解度の効果の差異を引き起こすのに特に有利なアミノ酸残基であるヒスチジンに加えて、ヒスチジン残基を含有するペプチドの溶解度の差異は、亜鉛イオンとともに製剤化すると大幅に向上する。これは、亜鉛イオンが水溶液中の非荷電ヒスチジン残基に結合するためである。亜鉛イオンは同時に最大4つの非荷電ヒスチジンに結合可能であると考えられている。これによって、亜鉛がいくつかの個々のペプチド分子のヒスチジン残基と協働することが可能になり、それによってペプチド分子が他の同様のペプチド分子に弱く架橋して、溶解度の低下をもたらす。しかしながら、亜鉛イオンは荷電したヒスチジンには結合しない。したがって、亜鉛イオンを含有する組成物中のヒスチジン含有ペプチドは、pH7.4では弱いイオン結合によって架橋するが、pH5.0では架橋しない。したがって、亜鉛イオンに結合したHis残基の存在は、皮下注射後のペプチドの沈殿を向上するが、投与前のバイアルまたはシリンジ内での溶解度には影響しない。これは、およそ7の全体的なpIを有するペプチドは、ほぼ中性のpHで荷電残基を有さず、亜鉛イオンを含む製剤中のヒスチジン残基を含むペプチドは、バイアルまたはシリンジ内では有利に溶解するが、投与後に皮下に沈殿することを意味する。したがって、亜鉛イオンを含む製剤中のヒスチジンを含むpH7の中性ペプチドは、バイアルおよびシリンジ内では有利に溶解するが、投与後は皮下に沈殿する。さらに、亜鉛イオンが徐々に注入部位から洗い流されると、注入後の亜鉛イオンの濃度が低下するので、亜鉛によって向上した沈殿は、徐々に元に戻る。したがって、皮下吸収の遅延が観察され、薬物動態ははるかに良好であるが、バイオアベイラビリティは喪失しない。所与のヒスチジン含有中性ペプチドの吸収速度は、添加する亜鉛の量によって制御することができる。
【0100】
少なくとも1つの追加のヒスチジン残基の導入は、好ましくは、1~3個の介在アミノ酸残基によって互いに分離された2つのヒスチジン残基(一対のヒスチジン残基)のうちの少なくとも1つが出現した、本発明のPYY類似体を生じる。そのような間隔は、水溶液中で単一の亜鉛イオンが一対の両方のヒスチジン残基との会合を形成するのに最適であると思われる。本発明の1つの有利な実施形態において、26および30位のアミノ酸残基は、各々ヒスチジン残基である。
【0101】
好ましくは、本発明による類似体は、6.5~8.5の全体的なpIを有する。これは、生理学的なpH(例えばpH7.4)では、類似体が、有意な全体的な電荷が低くないかまたはこれを全く有さないことを意味する(例えば、上記のように、本発明のPYY類似体は、pH7.4で+1、0、または-1の正味のイオン電荷を有する)。分子の全体的なpIは、当業者に周知の技法を使用して計算してもよく、あるいは、等電点電気泳動を使用することによって実験で決定してもよい。
【0102】
この効果を十分に活用するために、発明者らは、以下の特色の組み合わせが特に好ましいことを見出した。
【0103】
1)pH7.4で正味のイオン電荷が低いか全く有さないペプチド配列(例えば、+1、0、または-1)。
【0104】
2)投与前の保存のために、pH5で正味の正電荷および良好な溶解度を生じる3つのヒスチジンの存在。
【0105】
3)少量の水性媒体中での治療用量のPYY類似体の皮下投与を可能にするpH5での高い溶解度、およびpH7.4での低い溶解度。
【0106】
4)pH7.4で非荷電ヒスチジン残基および隣接分子の架橋を生じるが、投与前pHまたはおよそpH5では荷電ヒスチジンを架橋しない、亜鉛イオンの存在。
【0107】
19および30位にHis残基を有する類似体が特に有利であり得、したがって好ましいことが見出されている。発明者らは、配列の最後の6つのアミノ酸が化合物の活性にとって重要であると思われているにもかかわらず、失活することなく、天然のLeu30をHis30に置換することができることを見出した。
【0108】
したがって、ある特定の好ましい実施形態によれば、
-Ser23が、Ala23、Glu23、Lys23、Gln23、もしくはAIB23(好ましくはAla23)で置換されている、
-Arg19が、His19で置換されている、
-Leu30が、His30で置換されている、という点で、天然PYYの配列とは異なるPYY類似体が提供される。
【0109】
そのような化合物は、次の点:
-Tyrが、存在しない、
-残基2、4、6、7、9、13、15、16、20、21、24、25、または26のうちの1つ以上が、保存的置換の対象である、
-Glu10が、Ala10、Lys10、もしくはGln10で置換されている、
-Asp11が、Gly11で置換されている、
-Ala12が、AIB12で置換されている、
-Leu17が、Ile17もしくはAIB17で置換されている、
-Asn18が、AIB18、Ala18、もしくはLeu18(好ましくはLeu18)で置換されている、
-Ala22が、Val22もしくはIle22で置換されている、
-Tyr27が、Phe27で置換されている、
-Val31が、Leu31で置換されている、のうちの1つ以上で、天然のヒトPYYの配列とはさらに異なり得、
C末端残基が、任意選択的に、カルボン酸基(-COH)の代わりに、一級アミド(-C(O)NH)基で終端し、または化合物の誘導体、もしくは化合物もしくは誘導体の塩。
【0110】
好ましくは、残基2、4、6、7、9、13、15、16、20、21、24、25、および26は置換されていない。
【0111】
誘導体
本発明のPYY類似体は、アミド化、グリコシル化、カルバミル化、アシル化、例えばアセチル化、硫酸化、リン酸化、環化、脂質化、ペグ化、および融合タンパク質を形成するための別のペプチドまたはタンパク質との融合を含む周知のプロセスによって修飾された結果としての、誘導体であり得る。本発明のPYY類似体は、分子内のランダムな位置で、または分子内の所定の位置で修飾されてもよく、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の付着した化学的部分を含んでもよい。
【0112】
本発明のPYY類似体は、当該技術分野で既知の組み換え方法を使用して、類似体が別のタンパク質またはポリペプチド(融合パートナー)と融合された融合タンパク質であってもよい。代替として、そのような融合タンパク質は、任意の既知の方法によって合成的に合成されてもよい。任意の好適なペプチドまたはタンパク質が、融合パートナーとして使用され得る(例えば、血清アルブミン、炭酸脱水酵素、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、またはチオレドキシン等)。好ましい融合パートナーは、体内で有害な生物学的活性を有しない。そのような融合タンパク質は、融合パートナーのカルボキシ末端をPYY類似体のアミノ末端に連結することによって、またはその逆によって作製することができる。任意選択的に、切断可能なリンカーを使用して、PYY類似体を融合パートナーに連結してもよい。結果として得られる切断可能な融合タンパク質は、本発明の化合物の活性型が放出されるように体内で切断されてもよい。そのような切断可能なリンカーの例は、限定されないが、リンカーD-D-D-D-Y、G-P-R、A-G-G、およびH-P-F-H-Lを含み、これらは、それぞれ、エンテロキナーゼ、トロンビン、ユビキチン切断酵素、およびレニンによって切断され得る。例えば、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,410,707号を参照されたい。本発明の全ての態様のうちのある特定の実施形態によれば、PYY類似体は融合タンパク質ではない。
【0113】
本発明のPYY類似体は、生理学的に機能的な誘導体であり得る。本明細書では、「生理学的に機能的な誘導体」という用語は、対応する未修飾の本発明のPYY類似体と同じ生理学的機能を有する、本発明のPYY類似体の化学誘導体を表すために使用される。例えば、生理学的に機能的な誘導体は、体内で本発明のPYY類似体に変換可能であり得る。本発明によれば、生理学的機能性誘導体の例は、エステル、アミド、およびカルバメートを含み、好ましくは、エステルおよびアミドを含む。
【0114】
本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルおよびアミドは、C1-20アルキル-、C2-20アルケニル-、C5-10アリール-、C5-10アル-C1-20アルキル-、または好適な部位、例えば、酸性基に付着したアミノ酸-エステルもしくは-アミドを含んでもよい。好適な部分の例は、4~26個の炭素原子、好ましくは5~19個の炭素原子を有する疎水性置換基である。好適な脂質基には、これらに限定されないが、ラウロイル(C1223)、パルミチル(C1531)、オレイル(C1529)、ステアリル(C1735)、コール酸塩、およびデオキシコール酸塩が含まれる。
【0115】
スルフヒドリル含有化合物を脂肪酸誘導体で脂質化するための方法は、米国特許第5,936,092号、米国特許第6,093,692号、および米国特許第6,225,445号に開示されている。ジスルフィド結合を介して脂肪酸に連結された本発明の化合物を含む本発明の化合物の脂肪酸誘導体は、神経細胞および組織への本発明の化合物の送達のために使用されてもよい。脂質化は、対応する非脂質化化合物の吸収率と比較して化合物の吸収を著しく増加させると同時に、化合物の血中滞留および組織滞留を長期化させる。さらに、脂質化誘導体のジスルフィド結合は、細胞中で比較的不安定であり、したがって、脂肪酸部分からの分子の細胞間放出を容易にする。好適な脂質含有部分は、4~26個の炭素原子、好ましくは5~19個の炭素原子を有する疎水性置換基である。好適な脂質基には、これらに限定されないが、パルミチル(C1531)、オレイル(C1529)、ステアリル(C1735)、コール酸塩、およびデオキシコール酸塩が含まれる。
【0116】
環化方法は、ジスルフィド架橋の形成による環化、および環化樹脂を使用した頭-尾環化を含む。環化ペプチドは、それらの構造制約の結果として、例えば、酵素分解に対する耐性の増加を含む、向上した安定性を有し得る。環化は、特に、非環化ペプチドがN末端システイン基を含む場合に好都合である。好適な環化ペプチドには、単量体および二量体の頭-尾環化構造が含まれる。環化ペプチドは、1つ以上の付加的な残基、特に、ジスルフィド結合の形成の目的で組み込まれる付加的なシステイン、または樹脂ベースの環化の目的で組み込まれる側鎖を含んでもよい。
【0117】
本発明のPYY類似体は、PYY類似体のペグ化構造であってもよい。本発明のペグ化化合物は、ポリペプチドの溶解度、安定性および循環時間の増加、または免疫原性の減少等の追加の利点を提供することができる(米国特許第4,179,337号を参照のこと)。
【0118】
本発明の化合物の誘導体化のための化学的部分はまた、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール等の、水溶性ポリマーから選択されてもよい。本発明の化合物誘導体化のためのポリマー部分は、任意の分子量であってもよく、また分岐鎖または非分岐鎖であってもよい。取扱いおよび製造を容易にするために、本発明の化合物の誘導体化のためのポリエチレングリコールの好ましい分子量は、約1kDa~約100kDaであり、「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製において、ある分子は記載される分子量よりも大きく、ある分子は記載される分子量よりも小さいであろうことを示している。所望の治療プロファイル、例えば、所望の持続放出の期間、存在する場合は生物学的活性に及ぼす効果、取扱い易さ、抗原性の程度または欠如、および治療用タンパク質または類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果に依存して、他の分子量のポリマーを使用してもよい。例えば、ポリエチレングリコールは、約200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、10,500、11,000、11,500、12,000、12,500、13,000、13,500、14,000、14,500、15,000、15,500、16,000、16,500、17,000、17,500、18,000、18,500、19,000、19,500、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、または100,000kDaの平均分子量を有し得る。
【0119】
一実施形態において、本発明のPYY類似体は、誘導体ではない。
【0120】
医薬品での使用に好適である本発明のPYY類似体の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されない対イオンを有する塩は、例えば、本発明のPYY類似体、ならびにその薬学的に許容される塩および/または誘導体の調製における中間体として使用するために、本発明の範囲内である。
【0121】
本発明による好適な塩は、有機または無機の酸または塩基を用いて形成される塩を含む。薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびイセチオン酸を用いて形成されるものが含まれる。
【0122】
塩基を有する薬学的に許容される塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、カリウム塩およびナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩、ならびに有機塩基、例えば、ジシクロヘキシルアミンおよびN-メチル-D-グルコミンを有する塩を含む。
【0123】
有機化学の当業者には、多くの有機化合物が、それらが反応するか、またはそれらから沈殿もしくは結晶化される溶媒と複合体を形成し得ることが理解されるであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は、「水和物」として知られている。原薬が結晶格子に水等の溶媒を化学量論的または非化学量論的量のいずれかで組み込むと、水和物等の溶媒和物が存在する。薬物製造プロセスの任意の段階で、または原薬もしくは剤形の保管時に溶媒の組み込みに直面する場合があるので、原薬は水和物の存在について日常的にスクリーニングされる。溶媒和物については、参照により本明細書に組み込まれる、S.Byrnら、Pharmaceutical Research 12(7),1995,954-954、およびWater-Insoluble Drug Formulation,2nd ed.R.Liu,CRC Press,page 553に記載されている。したがって、本発明のPYY類似体、ならびにその誘導体および/または塩は、したがって、溶媒和物の形態で存在し得ることが当業者には理解されるであろう。医薬品での使用に好適である本発明のPYY類似体の溶媒和物は、関連する溶媒が薬学的に許容されるものである。例えば、水和物は、薬学的に許容される溶媒和物の一例である。
【0124】
状態:
本発明はまた、医薬品として使用するための、本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を提供する。PYY類似体および薬学的組成物は、糖尿病および肥満等の状態の治療および/または予防での用途を見出す。PYY類似体、およびPYY類似体を含む薬学的組成物はまた、対象の食欲の低減、対象の食物摂取量の低減、および/または対象のカロリー摂取量の低減に用途を見出す。
【0125】
本発明はまた、糖尿病および/または肥満の予防または治療のための医薬品の製造のための、本発明によるPYY類似体の使用を提供する。本発明はまた、対象の食欲の低減、対象の食物摂取量の低減、および/または対象のカロリー摂取量の低減のための医薬品の製造のための、本発明によるPYY類似体の使用を提供する。
【0126】
本発明はまた、治療有効量の本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の疾患、または障害、または他の望ましくない生理学的状態を治療または予防する方法を提供する。
【0127】
本発明はまた、治療的有効量の本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の糖尿病および/もしくは肥満の予防もしくは治療、食欲の低減、食物摂取量の低減、ならびに/またはカロリー摂取量の低減の方法を提供する。
【0128】
一実施形態において、PYY類似体または薬学的組成物は、非経口投与される。一実施形態において、PYY類似体または薬学的組成物は皮下投与される。一実施形態において、PYY類似体または薬学的組成物は、静脈内、筋肉内、鼻腔内、経皮または舌下投与される。
【0129】
本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物が投与される対象は、過体重であり得、例えば、肥満であり得る。代替として、または加えて、対象は、例えば、インスリン抵抗性もしくは耐糖能障害、またはその両方を有する糖尿病患者であってもよい。対象は、真性糖尿病を有してもよく、例えば、対象は、2型糖尿病を有し得る。対象は、過体重、例えば、肥満であってもよく、真性糖尿病、例えば、2型糖尿病を有し得る。あるいは、対象は、I型糖尿病であり得る。
【0130】
本発明のPYY類似体は、ランゲルハンス島細胞、具体的にはベータ細胞を保護すると考えられており、正常な生理学的機能、例えば毒素(例えばストレプトゾトシン)、病原体または自己免疫応答に立ち向かうときに、適切な刺激に応答してインスリンを分泌する能力を保持することを可能にする。本発明のPYY類似体はまた、毒素、病原体、または自己免疫応答への曝露後の生理学的機能の低下後の、膵島機能、具体的にはベータ細胞機能の回復または救済に効果的であると考えられている。機能の回復は、低下前に呈する機能のうちの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%であり得る。したがって、本発明はまた、膵島機能(例えばベータ細胞機能)の喪失の予防、および/または膵島機能(例えば、ベータ細胞機能)の回復に使用するための、本発明のPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を提供する。本発明はさらに、膵島機能(例えばベータ細胞機能)の喪失を予防するための、および/または膵島機能(例えばベータ細胞機能)を回復するための医薬品の製造のための本発明のPYY類似体の使用を提供する。本発明はさらに、対象に、有効量の本発明のPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の膵島機能(例えばベータ細胞機能)の喪失を予防および/または膵島機能(例えばベータ細胞機能)を回復する方法を提供する。
【0131】
本発明のPYY類似体の膵島保護特性は、副作用として膵島毒性を有するさらなる治療剤と組み合わせて投与するのに有用になる。そのような治療剤の一例は、ストレプトゾシンである。したがって、本発明はまた、副作用として膵島毒性を有するさらなる治療剤と組み合わせた、本発明によるPYY類似体を提供する。本発明はまた、本発明によるPYY類似体、および副作用として膵島毒性を有するさらなる治療剤を薬学的に許容される担体とともに含む、薬学的組成物を提供する。
【0132】
加えて、または代替として、対象は、肥満もしくは過体重であることがリスク因子となる障害を有し得るか、またはその障害のリスクがあり得る。そのような障害には、限定されないが、循環器疾患、例えば、高血圧、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、および脂質異常症;脳卒中;胆嚢疾患;変形性関節症;睡眠時無呼吸;生殖障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群;癌、例えば、乳癌、前立腺癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、および食道癌;静脈瘤;黒色表皮腫;湿疹;運動不耐性;インスリン抵抗性;高血圧高コレステロール血症;胆石症;変形性関節症;整形外科的外傷;インスリン抵抗性、例えば、-2型糖尿病およびシンドロームX;ならびに血栓塞栓性疾患が含まれる(Kopelman,Nature 404:635-43、Rissanen et al,British Med.J.301,835,1990を参照のこと)。
【0133】
肥満に関連する他の障害は、うつ病、不安症、パニック発作、片頭痛、月経前症候群、慢性疼痛状態、線維筋痛症、不眠症、衝動性、強迫性障害、およびミオクローヌスを含む。さらに、肥満は、全身麻酔の合併症の発生率増加に関して認識されているリスク因子である(例えば、Kopelman,Nature 404:635-43,2000を参照のこと)。(例えば、Kopelman,Nature 404:635-43,2000を参照のこと)。一般に、肥満は、寿命を短縮し、上に列挙したような併存症の重大なリスクを伴う。
【0134】
肥満に関連する他の疾患または障害は、先天性欠損症、神経管欠損症の発生率の増加と関連する母体肥満、手根管症候群(CTS);慢性静脈不全(CVI);日中の眠気;深部静脈血栓症(DVT);末期腎疾患(ESRD);痛風;熱中症;免疫応答障害;呼吸機能障害;不妊症;肝疾患;腰痛;産婦人科合併症;膵炎;ならびに腹部ヘルニア;黒色表皮腫;内分泌異常;慢性低酸素血症および高炭酸ガス血症;皮膚科的な影響;象皮病;胃食道逆流症;踵骨棘;下肢浮腫;ブラストラップによる疼痛、皮膚損傷、頸部痛、乳房下の皮膚のひだにおける慢性臭および感染等の考慮すべき問題を引き起こす乳房肥大症(mammegaly);大きな前腹壁腫瘤、例えば、歩行を妨げ、頻繁な感染症、臭い、着衣困難、腰痛を引き起こす頻繁な脂肪織炎を伴う腹部脂肪織炎;筋骨格疾患;偽性脳腫瘍(または良性頭蓋内圧亢進症)、および滑脱裂孔ヘルニアである。
【0135】
本発明はさらに、対象のエネルギー消費を増加させるための方法を提供する。方法は、例えば、治療有効量の本発明のPYY類似体を対象に末梢投与し、それによりエネルギー消費を変化させることを含む。エネルギーは、あらゆる生理学的プロセスにおいて燃焼される。体は、それらのプロセスの効率を調整することによって、または起こっているプロセスの数および性質を変化させることによって、エネルギー消費率を直接変化させることができる。例えば、消化中、体は、エネルギーを消費し、腸を通して食物を移動させて食物を消化し、細胞内では、程度の差はあるが、熱を発生するように細胞代謝の効率を変化させることができる。
【0136】
一態様において、本発明の方法は、食物摂取量を協調的に変化させ、かつエネルギー消費量を相互的に変化させる弓状回路の操作に関与する。エネルギー消費量は、細胞代謝、タンパク質合成、代謝率、およびカロリー利用の結果である。したがって、本発明のこの態様において、本発明によるPYY類似体の投与は、エネルギー消費の増加、およびカロリーの利用効率の減少を生じる。
【0137】
本発明はまた、本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、対象の脂質プロファイルを改善するための方法を提供する。本発明はまた、本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、栄養素の利用可能性を低減することによって軽減することができる状態または障害を軽減するための方法を提供する。
【0138】
食欲は、当業者に既知の任意の手段によって測定することができる。例えば、食欲の減少は、心理的評価によって評価することができる。例えば、本発明の化合物の投与は、知覚される空腹、飽満、および/または満腹に変化を生じる。空腹は、当業者に既知の任意の手段によって評価することができる。例えば、空腹は、限定されないが、視覚的評価スコア(VAS)質問表等の質問表を使用する空腹感および感覚知覚の評価等による、心理学的アッセイを使用して評価される。特定の非限定的な一例では、空腹は、食物、飲料に対する欲求、予想される食物消費、吐き気、および匂いまたは味に関する知覚に関する質問に答えることによって評価される。
【0139】
本発明のPYY類似体は、体重管理および治療、例えば、肥満の低減または予防、具体的には以下の、体重増加の予防および低減、体重減少の誘発および促進、ならびに肥満度指数によって測定される肥満の低減、のうちのいずれか1つ以上のために使用することができる。本発明のPYY類似体は、食欲、飽満、および空腹のうちのいずれか1つ以上、具体的には以下の、食欲の低減、抑制、および阻害;飽満および飽満感覚の誘発、増加、向上、および促進;ならびに空腹および空腹感覚の低減、阻害、および抑制、のうちのいずれか1つ以上の制御に使用することができる。本発明のPYY類似体は、所望の体重、所望の肥満度指数、所望の外見、および良好な健康のうちのいずれか1つ以上を維持するのに使用することができる。したがって、本発明はまた、有効量の本発明によるPYY類似体、またはPYY類似体を含む組成物を対象に投与することを含む、美容目的で対象の体重減少を引き起こすか、または体重増加を予防する方法を提供する。
【0140】
対象は、体重減少を所望する対象、例えば、外見における変化を所望する男性または女性の対象であり得る。対象は、空腹感の減少を望んでいる場合があり、例えば、対象は、例えば、現役の兵士、航空管制官、または長距離ルートのトラック運転手等の高レベルの集中力を必要とする長時間の業務に関与する個人であり得る。
【0141】
本発明はまた、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか、または悪化する状態または障害の治療、予防、寛解、または緩和に使用されてもよい。「カロリー(または栄養素)利用性を低減することによって緩和され得る状態または障害」という用語は、本明細書では、比較的高い栄養素利用性によって引き起こされるか、複雑化するか、もしくは悪化するか、または栄養素利用性を低減することによって、例えば、食物摂取量を減少させることによって緩和され得る対象の任意の状態もしくは障害を表すために使用される。インスリン抵抗性であるか、グルコース不耐性であるか、または任意の型の真性糖尿病、例えば、1型、2型、もしくは妊娠性糖尿病を有する対象も、本発明による方法から恩恵を受けることができる。
【0142】
本発明は、代謝障害、例えばエネルギー代謝障害の治療に関する。カロリー摂取量の増加と関連する状態または障害を含むそのような障害には、限定されないが、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、肥満、2型糖尿病を含む糖尿病、摂食障害、インスリン抵抗性症候群、およびアルツハイマー病が含まれる。
【0143】
本発明によれば、PYY類似体は、好ましくはヒトの治療に使用される。しかしながら、本発明の化合物は、典型的にはヒト対象を治療するために使用されるが、それらは、他の脊椎動物、例えば、他の霊長類;家畜、例えば、ブタ、ウシ、および家禽;競技動物、例えば、ウマ;またはコンパニオンアニマル、例えば、イヌおよびネコにおいて、同様のまたは同一の状態を治療するためにも使用することができる。
【0144】
組成物
有効成分を単独で投与することは可能であるが、有効成分は、薬学的製剤または組成物中に存在することが好ましい。したがって、本発明はまた、薬学的に許容される担体および任意選択的に他の治療成分とともに、本発明によるPYY類似体を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、以下に記載するような薬学的製剤の形態をとり得る。
【0145】
本発明による薬学的製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、および関節内を含む)、吸入(種々の種類の定量加圧エアロゾル、噴霧器、または吸入器によって生成され得る微粒子ダストまたはミストを含む)、直腸内、および局所(皮膚、経皮、経粘膜、頬側、絶佳、および眼内を含む)投与に好適なものを含むが、最も好適な経路は、例えば、受け手の状態および障害に依存し得る。
【0146】
製剤は、単位投与形態で都合よく提示され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。全ての方法は、有効成分を、1つ以上の補助成分を構成する担体と関連させるステップを含む。一般に、製剤は、有効成分と、液体担体もしくは微細固体担体またはその両方とを均一かつ密接に関連させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0147】
経口投与に好適な本発明の製剤は、各々が所定量の有効成分を含有するカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤として;散剤もしくは顆粒剤として;水性液もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョン等の個別の単位として提供されてもよい。有効成分はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提示されてもよい。種々の薬学的に許容される担体およびそれらの製剤が、標準的な製剤専門書、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。またWang,Y.J.and Hanson,M.A.,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42):2S,1988も参照されたい。
【0148】
錠剤は、圧縮または成形によって、任意選択的に1つ以上の補助成分を用いて、作製されてもよい。圧縮錠は、任意選択的に、結合剤、滑剤、不活性希釈剤、滑沢剤、界面活性剤、または分散剤と混合された、粉末または顆粒等の流動的な形態の有効成分を、好適な機械内で圧縮することによって調製されてもよい。成形錠は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、好適な機械内で成形することによって製造されてもよい。錠剤は、任意選択的に、コーティングするかまたは分割線を付けてもよく、有効成分の緩徐または制御された放出を提供するように製剤化されてもよい。本化合物は、例えば、即時放出または長期放出に好適な形態で投与することができる。即時放出または長期放出は、本化合物を含む好適な薬学的組成物の使用によって、または特に長期放出の場合には、皮下インプラントもしくは浸透圧ポン等のデバイスの使用によって達成することができる。本化合物はまた、リポソームとして投与することができる。
【0149】
好ましくは、本発明による組成物は、例えば、注射による皮下投与に好適である。ある特定の実施形態によれば、組成物は、金属イオン、例えば、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、またはコバルトイオンを含有してもよい。そのようなイオンの存在は、溶解度を制限することができ、したがって皮下投与の部位から循環系への吸収を遅延させることができる。特に好ましい実施形態において、組成物は、亜鉛イオンを含有する。亜鉛イオンは、任意の好適な濃度で、例えばペプチド分子に対して10:1~1:10、8:1~1:8、5:1~1:5、4:1~1:4、3:1~1:3、2:1~1:2、または1:1のモル比で存在し得る。一実施形態において、薬学的組成物は、5未満のpHを有し、薬学的組成物は亜鉛イオンを含む。
【0150】
経口投与のための例示的な組成物は、例えば、嵩を出すための微結晶セルロース、懸濁剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロース、および甘味剤または香味剤を含有し得る懸濁液(当該技術分野で既知のもの等);ならびに、例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよび/もしくはラクトース、ならびに/または他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、および滑剤(当該技術分野で既知のもの等)を含有し得る即時放出錠剤を含む。本発明のPYY類似体、またはその変異体、誘導体、塩、もしくは溶媒和物はまた、舌下および/または頬側投与によって、口腔を通じて送達されてもよい。成形錠、圧縮錠、または冷凍乾燥錠は、使用され得る例示的な形態である。例示的な組成物は、本発明の化合物(複数可)をマンニトール、ラクトース、スクロースおよび/またはシクロデクストリン等の速溶性の希釈剤とともに配合しているものを含む。また、そのような製剤には、セルロース(avicel)またはポリエチレングリコール(PEG)等の高分子量の賦形剤が含まれてもよい。そのような製剤にはまた、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez)等の粘膜への付着を補助するための賦形剤、およびポリアクリルコポリマー(Carbopol 934)等の放出を制御するための薬剤が含まれ得る。滑剤、流動促進剤、香味剤、着色剤、および安定剤も、製造および使用を容易にするために添加され得る。
【0151】
非経口投与用の製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象とする受け手の血液と等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性滅菌注射液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量または多用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアル中に提示されてもよく、また使用直前に、滅菌液体担体、例えば、生理食塩水または注射用蒸留水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよい。即時注射液および懸濁液は、前述の種類の滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製され得る。非経口投与用の例示的な組成物は、例えば、好適な無毒性の、非経口的に許容される希釈剤もしくは溶剤、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、または他の好適な分散剤もしくは湿潤剤、および合成モノグリセリドもしくはジグリセリドを含む懸濁剤、およびオレイン酸もしくはCremaphorを含む脂肪酸を含有し得る、注射可能な液剤または懸濁液を含む。水性担体は、例えば、約3.0~約8.0のpH、好ましくは約3.5~約7.4、例えば3.5~6.0、例えば3.5~約5.0のpHの等張緩衝液であってもよい。有用な緩衝剤は、クエン酸ナトリウム-クエン酸およびリン酸ナトリウム-リン酸、ならびに酢酸ナトリウム/酢酸緩衝剤を含む。組成物は、好ましくは、酸化剤、ならびにPYYおよび関連分子に有害であることが知られている他の化合物を含まない。含まれ得る賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿製剤等の他のタンパク質である。必要に応じて、薬学的組成物はまた、微量の無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有してもよい。
【0152】
一実施形態において、薬学的組成物は、ヒトへの皮下投与のためのシリンジまたは他の投与デバイス中に存在する。
【0153】
鼻内エアロゾルまたは吸入投与用の例示的な組成物は、例えば、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、生物学的利用能を向上させるための吸収促進剤、および/または他の可溶化剤もしくは分散剤(当該技術分野で既知のもの等)を含有し得る生理食塩水中の溶液を含む。好都合には、鼻内エアロゾルまたは吸入投与用の組成物において、本発明の化合物は、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロ-メタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体の使用により、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するための弁を提供することによって決定することができる。吸入器または注入器において使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、好適な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を含有するように製剤化することができる。特定の非限定的な一例において、本発明の化合物は、アクチュエータとしても知られるエアロゾルアダプタを通して、定量弁からエアロゾル剤として投与される。任意選択的に、安定剤も含まれ、かつ/または肺深部への送達のための多孔性粒子が含まれる(例えば、米国特許第6,447,743号を参照のこと)。
【0154】
直腸内投与用の製剤は、カカオバター、合成グリセリドエステル、またはポリエチレングリコール等の通常の担体とともに停留浣腸または坐剤として調製されてもよい。そのような担体は、典型的には、常温では固体であるが、直腸腔内では液化かつ/または溶解して薬物を放出する。
【0155】
口腔内における局所投与、例えば、頬側または舌下投与用の製剤は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント等の香味付けした基剤中に有効成分を含むロゼンジ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア等の基剤中に有効成分を含むパステル剤を含む。局所投与用の例示的な組成物は、Plastibase(ポリエチレンを用いてゲル化された鉱油)等の局所用担体を含む。
【0156】
好ましい単位投与量製剤は、PYY類似体の本明細書で前述の有効用量またはその適切な一部を含有する製剤である。
【0157】
具体的に前述した成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤の種類を考慮して、当該技術分野で常用される他の薬剤を含んでいてもよく、例えば、経口投与に好適な製剤は香味剤を含んでもよいことを理解されたい。
【0158】
本発明のPYY類似体はまた、持続放出系として好適に投与される。本発明の持続放出系の好適な例には、好適なポリマー材料、例えば、成形物品の形態の半透性ポリマーマトリックス、例えば、フィルムもしくはマイクロカプセル;例えば、許容される油中のエマルジョンとして、好適な疎水性材料;またはイオン交換樹脂;および本発明の化合物の難溶性誘導体、例えば、難溶性塩が含まれる。持続放出系は、例えば、粉剤、軟膏剤、ゲル剤、ドロップ剤、もしくは経皮貼付剤として、または経口もしくは鼻内噴霧剤として、経口、直腸内、非経口、大槽内、腟内、腹腔内、局所投与されてもよい。
【0159】
投与用の調製物は、本発明の化合物の制御放出を提供するように好適に製剤化することができる。例えば、薬学的組成物は、生分解性ポリマー、多糖類ゲル化および/もしくは生体接着性ポリマー、両親媒性ポリマー、式(I)の化合物の粒子の界面特性を変更することが可能な薬剤のうちの1つ以上を含む粒子の形態であってもよい。これらの組成物は、活性物質の制御放出を可能にする、ある特定の生体適合性の特色を呈する。米国特許第5,700,486号を参照されたい。
【0160】
本発明のPYY類似体は、ポンプによって(Langer(上記)、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201,1987、Buchwald et al.,Surgery 88:507,1980、Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574,1989を参照のこと)、または例えばミニポンプを使用する連続皮下注入によって送達することができる。また、静脈内バッグ溶液が用いられてもよい。適切な用量を選択する際の重要な要因は、全体重もしくは除脂肪体重に対する体脂肪の比の減少によって、あるいは、医師によって適切であると見なされる、肥満の管理もしくは予防または肥満関連状態の予防を測定するための他の基準を用いて測定されることで得られる結果である。他の制御放出系については、Langer(Science 249:1527-1533,1990)による考察で論じられている。本開示の別の態様では、本発明の化合物は、例えば、米国特許第6,436,091号、米国特許第5,939,380号、米国特許第5,993,414号に記載の埋め込みポンプによって送達される。
【0161】
埋め込み式の薬物注入デバイスは、患者に薬物または任意の他の治療剤の一定かつ長期の投薬または注入を提供するために使用される。本質的に、そのようなデバイスは、能動的または受動的のいずれかに分類され得る。本発明の化合物は、デポ剤として製剤化することができる。そのような長時間作用するデポ剤は、例えば、皮下もしくは筋肉内への埋め込みによって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、例えば、許容される油中エマルジョンとして、またはイオン交換樹脂として、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として好適な、ポリマーまたは疎水性材料と製剤化することができる。
【0162】
治療有効量の本発明のPYY類似体は、単回パルス用量として、ボーラス用量として、または経時的に投与されるパルス用量として投与してもよい。したがって、パルス用量において、本発明のPYY類似体のボーラス投与が提供され、その後、本発明の化合物が対象に投与されない期間が続き、その後、2回目のボーラス投与が続く。特定の非限定的な例において、本発明の化合物のパルス用量は、1日の間に、1週間の間に、または1か月の間に投与される。
【0163】
本発明はまた、同時、逐次、または別々の投与のために、さらなる治療剤とともに本発明によるPYY類似体を提供する。本発明はまた、本発明によるPYY類似体およびさらなる治療剤を含む薬学的組成物を提供する。さらなる治療剤の例には、追加の食欲抑制剤、食物摂取量を低減する、血漿グルコースを低下させる、または血漿脂質を変化させる薬剤が含まれる。追加の食欲抑制剤の特定の非限定的な例には、アンフェプラモン(ジエチルプロピオン)、フェンテルミン、マジンドール、およびフェニルプロパノールアミン、フェンフルラミン、デキスフェンフルラミン、およびフルオキセチンが含まれる。上述のように、本発明のPYY類似体は、追加の食欲抑制剤と同時に投与してもよいか、または連続的もしくは別々に投与してもよい。一実施形態において、本発明の化合物は、単回用量で食欲抑制剤と製剤化および投与される。
【0164】
本発明のPYY類似体は、効果、例えば、食欲抑制、食物摂取量の減少、またはカロリー摂取量の減少が所望される場合、いつでも、または限定されないが、効果が所望される時間の約10分、約15分、約30分、約60分、約90分、もしくは約120分前等、効果が所望される少し前に投与することができる。
【0165】
治療有効量の本発明のPYY類似体は、利用される分子、治療される対象、苦痛の重症度および種類、ならびに投与様式および経路に依存するであろう。例えば、本発明のPYY類似体の治療有効量は、約0.01μg/キログラム(kg)体重~約1g/kg体重、例えば、約0.1μg~約20mg/kg体重、例えば、約1μg~約5mg/kg体重、または約5μg~約1mg/kg体重と変動し得る。
【0166】
本発明の一実施形態において、本発明のPYY類似体は、5~1000nmol/kg体重、例えば、10~750nmol/kg体重で、例えば、20~500nmol/kg体重で、具体的には30~240nmol/kg体重で対象に投与されてもよい。75kgの対象の場合、そのような用量は、375nmol~75μmol、例えば、750nmol~56.25μmol、例えば、1.5~37.5μmol、具体的には2.25~18μmolの投与量に相当する。
【0167】
代替的な実施形態において、本発明のPYY類似体は、0.5~135ピコモル(pmol)/kg体重で、例えば、5~100ピコモル(pmol)/kg体重、例えば、10~90ピコモル(pmol)/kg体重、例えば、約72pmol/kg体重で対象に投与されてもよい。特定の非限定的な一例において、本発明のPYY類似体は、約1nmol以上、2nmol以上、または5nmol以上の用量で投与される。この例では、本発明のPYY類似体の用量は、一般に100nmol以下であり、例えば、用量は、90nmol以下、80nmol以下、70nmol以下、60nmol以下、50nmol以下、40nmol以下、30nmol以下、20nmol以下、10nmolである。例えば、投与量範囲は、特定の下限用量のいずれかと特定の上限用量のいずれかとの任意の組み合わせを含んでもよい。したがって、本発明の化合物の非限定的な用量範囲の例は、1~100nmol、2~90mol、5~80nmolの範囲内である。
【0168】
特定の非限定的な一例において、約1~約50nmolの本発明のPYY類似体が投与され、例えば、約2~約20nmol、例えば、約10nmolが皮下注射として投与される。正確な用量は、利用される特定のPYY類似体の効力、PYY類似体の送達経路、ならびに対象の年齢、体重、性別、および生理学的状態に基づいて、当業者によって容易に決定される。
【0169】
本発明のPYY類似体の好適な用量にはまた、食後の正常なPYYレベルによって引き起こされるカロリー摂取量、食物摂取量、もしくは食欲の低減、またはエネルギー消費の増加と等価である、カロリー摂取量、食物摂取量、もしくは食欲の低減、またはエネルギー消費の増加を生じる用量が含まれる。用量の例には、限定されないが、PYYの血清レベルが、約40pM~約60pM、または約40pM~約45pM、または約43pMであるときに実証される効果を生じる用量が含まれる。
【0170】
上で論じた用量は、例えば、1日に1回、2回、3回、または4回提供してもよい。あるいは、2、3、または4日ごとに1回提供してもよい。亜鉛を含有する徐放性製剤では、3、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日ごとに1回の用量を提供することが可能であり得る。ある特定の実施形態によれば、それらは、各食事が摂取される直前に1回投与され得る。
【0171】
本発明の特定の配列
本発明のある特定の特定の実施形態によれば、PYY類似体は、図1に示される特定の配列のうちの1つの所与のアミノ酸配列を有する。
【0172】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例
【0173】
材料および方法
ペプチド合成
ペプチドは、標準的な自動フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成(SPPS)法によって作製した。ペプチド合成は、三環式アミドリンカー樹脂上で行われた。アミノ酸は、Fmocストラテジーを使用して付着させた。C末端からN末端まで連続的に各アミノ酸を付加した。ペプチドカップリングは、試薬TBTUにより媒介した。樹脂からのペプチド切断は、捕捉剤の存在下でトリフルオロ酢酸を用いて達成した。以前記載の(WO03/026591)天然のPYY3-36 NHが得られ、三環式アミド樹脂およびFmoc化学反応を使用する新規合成も可能である。
【0174】
Tペプチドを逆相HPLCによって精製した。精製した全てのペプチドについて完全な品質管理を行い、2つの緩衝液系におけるHPLCによってペプチドの純度が95%より高いことが示された。酸加水分解後のアミノ酸分析により、アミノ酸組成を確認した。MALDI-MSは、予想された分子イオンを示した。
【0175】
結合研究
Morganら(Neuroendocrinol 1996.8 283-290)に記載のように、ヒトY2受容体(NPYR200000、Missouri S&T cDNA resource center)を過剰発現しているHEK 293細胞の膜調製物を、浸透溶解および分画遠心分離によって単離した。使用した緩衝液が、0.02MのHEPES(pH7.4)、5mMのCaCl、1mMのMgCl2、1%のウシ血清アルブミン、0.1mMのジプロチンA、0.2mMのPMSF、10μMのホスホラミドン、放射性同位体標識として125I-PYY1-36、およびヒトY2受容体を使用したことを除いて、Druceら(2009 Endocrinology 150(4)712-22)によって記載されているように受容体結合アッセイを完了した。
【0176】
インビトロ受容体効力研究
DiscoverX(登録商標)hY2 CHO-K1細胞(ウェルあたり10,000個の細胞(96ウェルプレート))を、0.2mMのIBMX、および0.02mMの(cAMP生成を刺激する)フォルスコリン、および試験ペプチドを濃度範囲で含有する培地に30分間再懸濁した。細胞を溶解することによって反応を停止し、Cisbio cAMP dynamic 2キットを使用して、60分後にcAMPを定量化した。試験したペプチドは、本発明の範囲内にあり、配列Pro-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Gly-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Leu-His-Tyr-Tyr-Ala-Ala-Leu-Arg-His-Phe-Leu-Asn-His-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH(配列番号23)を有する「Y1419」、および配列Pro-Ile-His-Pro-His-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-His-Tyr-Tyr-Ala-Ala-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-His-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH(配列番号44)を有する比較ペプチド「Y242」であった。
【0177】
動物
雄のWistarラット(Charles River Ltd(Margate,UK))を動物実験に使用した
【0178】
ラットの摂食研究
ラットは、IVCケージに個別に収容した。体重による層別化を用いて動物を治療群に無作為化した。全てのペプチド溶液は、投与直前に新しく調製した。全ての研究に使用したビヒクルは、5%v/vの水、および95%のNaCl(0.9%w/v)であった。ペプチドおよびビヒクルを、25または50nM/Kg体重のいずれかの用量で皮下注射によって投与した。動物に24時間ごとに6日間注射し、さらに24時間研究を継続し、最初の注射から研究終了まで合計7日間を与えた。研究期間中、動物は、食物および水を自由に取らせた。研究終了時に動物の体重を量り、もしあれば、減少した総重量を記録した。
【0179】
結果
図1aは、その全ての態様において本発明の範囲に包含される、多数の特定の配列を開示している。これらの配列の各々は、本発明の特定の実施形態である。各配列に割り当てられた番号は、本明細書の他の場所で参照される「Y」番号に対応する(すなわち、「1419」で始まる行は、類似体番号「Y1419」の配列を開示していると理解される)また、最初の行に、参照として自然発生するヒトPYYの配列も開示している。
【0180】
以下の表は、hY2 CHO-K1細胞(DiscoverX(登録商標))で過剰発現したヒト神経ペプチドY受容体Y2における、図1の実施例ペプチドの受容体効力データを提供する。ウェルあたり10,000個の細胞(96ウェルプレート)を、0.2mMのIBMX、および0.02mMの(cAMP生成を刺激する)フォルスコリン、および試験ペプチドを濃度範囲で含有する培地に30分間再懸濁した。細胞を溶解することによって反応を停止し、Cisbio cAMP dynamic 2キットを使用して、60分後にcAMPを定量化した。提供される値は、実施例化合物EC50対PYY2-36EC50の比である(例えば、「PYY2-36±SEMの平均比」の列では、0.5の値が、cAMPの放出を最大50%阻害するのに必要な実施例化合物の濃度が、必要なPYY2-36の濃度の半分であることを示し、2の値が、cAMPの放出を最大50%阻害するのに必要な実施例化合物の濃度が、PYY2-36のものの2倍であることを示すであろう)。本発明の実施例ペプチドは、前世代の好ましい化合物(比較目的のために表に含まれるY242)よりもはるかに強力な阻害剤であることを見ることができる。
【表3】
【0181】
図2は、化合物Y242および化合物Y1419が、フォルスコリン生成を阻害する異なる能力を示す。1419は、前世代の好ましい化合物よりもはるかに強力な阻害剤であることを見ることができる。
【0182】
図3および図4は、対照生理食塩水または生理食塩水中のペプチドの単回皮下注射を受けている、一晩絶食させた雄のWistarラットにおける、Y242(図3)およびY1419(図4)の活性を比較するラット摂食実験の結果を示す。ラットの食物摂取量および体重をその後6日間モニタリングし、示される値は、平均値+/-SEMである。比較化合物Y242は、最初の48時間、食物摂取量および体重の有望な低減を生じたが、その低減はより長い期間持続されないことを見ることができる(比較化合物は効果的であるが、1~2日後に再投与する必要があるであろうことの示唆)。化合物Y1419は、はるかに良好な結果を示し、初回の単回投与は投与後160時間でも依然として有効であり、これは、この化合物が週1回またはそれ以下の頻度で投与されるであろう医薬品としての使用に有望であることを示唆している。
【0183】
図5は、雄のWistarラット(Charles River)を絶食(24時間)させ、生理食塩水または本発明の実施例ペプチド(100nmol/kg)の単回皮下注射を与えた、摂食実験の結果を示す。投与前から投与後48時間までの体重変化と同様に、投与から投与後48時間までの総食物摂取量を測定した。
【0184】
図6は、本発明の示された様々な化合物の、フォルスコリン生成を阻害する能力を示す。PYY2-36のデータも、比較として含まれている。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図6-6】
図6-7】
図6-8】
図6-9】
図6-10】
【配列表】
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