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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】配偶子形成
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/075 20100101AFI20240819BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240819BHJP
   C12N 5/076 20100101ALI20240819BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240819BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240819BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240819BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240819BHJP
【FI】
C12N5/075
C12N5/0735
C12N5/076
C12N5/10
C12N15/113 130Z
C12Q1/04
C12Q1/68
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020554931
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086642
(87)【国際公開番号】W WO2019122355
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】1721724.1
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520222450
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハジュコヴァ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】リーチ,ハリー
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】BIOLOGY OFREPRODUCTION, 2010, vol. 83, no. 6, pp.890-892
【文献】STEM CELLS, 2016, vol.34, no. 9, pp. 2418-2428
【文献】MOLECULAR CELL, 2016, vol.63, no. 6, pp. 1066-1079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/075
C12N 5/0735
C12N 5/076
C12N 5/10
C12N 15/113
C12Q 1/04
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減数分裂能のある細胞を作製するインビトロの方法であって、
(i)前駆細胞を提供するステップであって、前記前駆細胞は、幹細胞又は始原生殖細胞様細胞(PGCLC)である、ステップと、
(ii)前記前駆細胞のゲノムDNAのメチル化を阻害するステップと、
(iii)前記前駆細胞をポリコーム抑制複合体の阻害剤で処理するステップと、その後、
(iv)前記前駆細胞を、一定期間、前記前駆細胞が減数分裂能のある細胞になるのに適した培養条件下で増殖させるステップと、
を含み、
ステップ(ii)及びステップ(iii)は、同時に、又はいずれかの順序で連続的に、実行することができ、前記阻害するステップ(ii)及び処理するステップ(iii)は、増殖させるステップ(iv)中に前記前駆細胞による生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子の発現を誘導するのに十分であり、前記前駆細胞は、ステップ(i)及び/又は(ii)の後にTet1を発現するか、又はTet1の発現を開始する、方法。
【請求項2】
前記前駆細胞は、対象から得られたサンプルに由来し、前記対象は哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象はヒト対象である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記幹細胞はiPS細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記GRR遺伝子の発現は、転写活性化因子の動員に関連するか、又はそれによって誘導され、前記転写活性化因子はTetlである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Tetl発現は外因的に提供又は増進される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iv)の前又は最中に、前記前駆細胞にTetlタンパク質が外因的に導入される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
外因的に提供された又は外因的に導入されたTetlは、1つ以上の特定のゲノム領域を標的とするTetl融合コンストラクトである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
(v)前記細胞内における1つ又は複数のGRR遺伝子の発現レベルを検出するステップ、を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(iv)の後に、前記減数分裂能のある細胞に対してステップ(v)が実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRC1阻害剤及び/又はPRC2阻害剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRC1阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PRC1阻害剤はPRT4165である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリコーム抑制複合体の阻害剤はRNAi分子である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(ii)は、ゲノムDNAメチル化を低減する薬剤を用いて前記前駆細胞を処理することによって実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲノムDNAメチル化を低減する薬剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、DNAメチル化の蓄積を防ぐ薬剤、又はDNAメチル化の維持を阻害する薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ゲノムDNAメチル化を低減する薬剤はDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はDNMT1阻害剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はSGI1027又は5-アザシチジンである、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤はRNAi分子である、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(ii)は、遺伝子編集を用いて、DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子又はDNAメチル化機構の成分を不活性化することによって実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
配偶子形成を誘導するために、前記減数分裂能のある細胞をレチノイン酸で処理することを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記配偶子形成は精子形成である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記配偶子形成は卵形成である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
メチル化阻害剤と、ポリコーム抑制複合体の阻害剤とを備えるキットであって、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法による減数分裂能のある細胞のインビトロ作製のためのキット。
【請求項26】
レチノイン酸を更に含む、請求項25に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロで配偶子形成を誘導する方法に関する。本発明の方法に使用する試薬及びキットも提供される。本発明は、医学の分野、特に不妊の研究及び治療において利用される。
【背景技術】
【0002】
配偶子形成は、配偶子が生成されるプロセスである。動物では、配偶子形成は、生殖腺(雄では精巣、雌では卵巣)における減数分裂能のあるゴノサイト(gonocyte)の分裂及び分化を介して進行する。雄では、精巣において精子形成が発生し、減数分裂と有糸分裂の両方を含む多段階プロセスにおいて精原幹細胞(SSC)から精子を生成する。SSCは出生後の精巣のゴノサイトから生じ、このゴノサイトは、同様に、胚発生中に生殖隆起に遊走する始原生殖細胞(PGC;Phillips他、2010年)から生じる。
【0003】
PGC(ゴノサイトの胚性前駆細胞)の特異化は、マウスでは胎生6.25日(E6.25)あたりに始まる。特異化に続いて、発生期のPGCは、ゲノムの5-メチルシトシン(5mC)の全体的な還元3,6,7,10を含む、顕著な全体的なエピジェネティック変化2-9を経る。発生中の胚内の遊走に続いて、PGCが発生中の胚性生殖腺に到達すると、全体的なDNA脱メチル化を含むエピジェネティックリプログラミングが進行する。生殖腺PGCのこのDNA脱メチル化に関与する分子メカニズムは、精力的な研究の的になっており3,4,6,12-19,21、最近発表された所見では、5mCオキシゲナーゼTet1が生殖腺PGCのDNA脱メチル化の正しい進行に関与する重要な因子であることが示唆されている12,14,16,17。しかしながら、このエピジェネティックリプログラミングの正確な本質は、捉えどころのないままである。最近の研究では(Hill他、2018年)、生殖腺のエピジェネティックリプログラミングが、PGCからゴノサイトへの移行(減数分裂能のあるゴノサイトを生成する(よって、配偶子形成を開始できるようにする)ために必要となる)に決定的に関与していることが示されている。重要なことに、生殖腺のリプログラミングプロセスは、最近まで生殖腺の体細胞環境に関してのみ克服されてきた障壁となっている5,24,25,27
【0004】
最近の研究では、いくつかの生殖系列関連遺伝子の誘導発現を介して、体細胞前駆細胞が減数分裂能のある細胞に変換されることが報告されている(Medrano他、2016年)。他の研究では、Tet1が、雌の配偶子形成の活性化中に特定の生殖系列関連遺伝子を調節する重要な因子であることが確認されている16。しかしながら、Tet1発現の操作が体細胞前駆細胞を減数分裂能のある細胞に変換するのに十分であることは、示されていない。
【0005】
ヒトでは、不妊は深刻な健康問題である。例えば、男性の不妊は人口の7%に及び、不妊男性の約10%が無精子症である(Galdon他、2016年)。減数分裂能のある細胞の提供は、配偶子形成のインビトロ再現における重要なステップであり、研究や医学、特に不妊に関連して、有用性が見出されるであろう。
【発明の概要】
【0006】
発明者らは、生殖系列発生のPGCからゴノサイト段階への進行に必要となる一連の遺伝子の効果的な活性化には、2つの異なる生化学的条件が必要となることを発見した(本明細書とHill他(2018年)では、該遺伝子を「生殖系列リプログラミング応答性遺伝子(GRR遺伝子)」と呼ぶ)。これらの遺伝子は(体細胞前駆細胞、多能性細胞又は初期生殖細胞から減数分裂能のある細胞への変換にも必要となる)、第1にDNAメチル化の低減により、第2にポリコーム駆動抑制の除去により、活性化することができる。これらの生化学的条件が整うと、転写因子と活性化因子(エピジェネティック活性化因子Tet1を含む)は、GRR遺伝子発現を駆動することが可能である。Tet1等の転写活性化因子の動員及び/又はGRR遺伝子の発現は、前駆(体細胞)細胞の減数分裂能のある細胞への変換を示す。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、減数分裂能のある細胞を作製するインビトロ法を提供し、本方法は、
(i)前駆細胞を提供するステップと、
(ii)前駆細胞のゲノムDNAのメチル化を阻害するステップと、
(iii)前駆細胞をポリコーム抑制複合体の阻害剤で処理するステップと、その後、
(iv)前駆細胞を、一定期間、前駆細胞が減数分裂能のある細胞になるのに適した培養条件下で増殖させるステップと、
を含み、ステップ(ii)及びステップ(iii)は、同時に、又はいずれかの順序で連続的に、実行することができる。
【0008】
一部の実施形態では、前駆細胞は、対象から得られたサンプルに由来する。前駆細胞は、幹細胞、始原生殖細胞様細胞(PGCLC)又は初期生殖細胞であってよい。一部の実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は精原幹細胞である。
【0009】
一部の実施形態では、阻害ステップ(ii)及び処理ステップ(iii)は、増殖ステップ(iv)中に前駆細胞による生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子の発現の誘導につながる。GRR遺伝子の発現は、転写活性化因子、例えばTet1の動員に関連するか、又はそれによって誘導することができる。Tet1は前駆細胞によって発現されてよく、かつ/又は、Tet1は外因的に提供されてよい(例えば、外因的にTet1を発現する核酸を送達することにより、Tet1の内因性発現を増進又は刺激することにより、かつ/又は、Tet1を外因性タンパク質の形態で提供することにより)。外因的に提供されるTet1は、1つ以上の特定のゲノム領域を標的とする融合コンストラクトの形態であってよい。例えば、Tet1融合コンストラクトは、本明細書に開示されるGRR遺伝子のうち1つ以上の発現に関与するプロモーター配列又はエンハンサー配列を標的としてよい。転写活性化因子として効果的なレベルのTet1を提供することにより、GRR遺伝子の発現が増進される。本発明の方法により、GRR遺伝子発現を増進することが可能であり、これらの方法は、Tet1発現を増加又は誘導すること、及び/又は、Tet1を1つ以上のGRR遺伝子に標的化することを含んでよい。
【0010】
また、本発明の方法は、細胞における1つ以上のGRR遺伝子の発現レベルの検出及び/又は定量化を含んでよい。GRR遺伝子を表1に列挙する。発現レベルを検出及び/又は定量化する方法は、当技術分野で周知である。例えば、遺伝子のmRNAレベルは、例えばRT-PCRによって測定することができる。タンパク質発現レベルを、例えばELISA等のアッセイによって測定することができる。1つ以上のGRR遺伝子の発現は、前駆細胞から減数分裂能のある細胞への変換の前、最中又は後に測定することができる。好ましくは、1つ以上のGRR遺伝子の発現は、ステップ(iv)の後に、減数分裂能のある細胞において測定される。測定されるGRR遺伝子は、Dazl、Hormad1、Sycp2、Sycp3、Mae1、Fkbp6のうち1つ以上であってよい(表1を参照)。本発明の一部の実施形態では、ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRC1阻害剤である(PRC1複合体が選択的に阻害されることを意味する)。本発明の他の実施形態では、ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRC2阻害剤である(PRC2複合体が選択的に阻害されることを意味する)。更なる実施形態では、ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRC1とPRC2の両方を阻害する。
【0011】
一部の実施形態では、ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、PRT4165である。他の実施形態では、ポリコーム抑制複合体の阻害剤は、ポリコーム抑制複合体の構成要素、例えば、PRC1又はPRC2の構成要素の発現を選択的にノックダウンするRNAi分子である。
【0012】
本発明の一部の実施形態では、DNAメチル化の阻害(方法のステップ(ii))は、ゲノムDNAメチル化を低減する薬剤で前駆細胞を処理することによって実行される。本開示に関連して、細胞を「処理する」とは、細胞を薬剤に「接触させる」こと、すなわち曝露することを意味するものと理解される。更に、「阻害する」は、「低減する」と「完全に防止する」の両方を含む。例えば、前駆細胞は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤により、DNAメチル化の蓄積を防止する薬剤により、又はDNAメチル化の維持を阻害する薬剤により、処理されてよい(それと接触させられてよい)。5-アザ-2-デオキシシチジン(5-アザ-dc)は、DNAメチル化を阻害し、DNAメチル化の維持も阻害する薬剤である。
【0013】
ゲノムDNAメチル化を低減する薬剤がDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、DNMT1阻害剤であってよい。例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、SGI1027又は5-アザシチジンであってよい。或いは、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、DNAメチル化機構の構成要素の発現をノックダウンするRNAi分子であってよい。RNAi分子は、siRNA分子又はmiRNA分子(又はいずれかの前駆体)であってよい。
【0014】
代替の実施形態では、DNAメチル化の阻害(方法のステップ(ii))は、DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子を不活性化するための遺伝子編集等の技術を用いることによって、実行されてよい。したがって、DNAメチル化を阻害する様々な手段を、減数分裂能のある細胞の作製に用いることができる。例えば、メチル化機構の遺伝子ノックアウトや、メチル化機構の化学的遮断を用いることができる。
【0015】
第2の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法によって作製された、減数分裂能のある細胞を提供する。減数分裂能のある細胞は、レチノイン酸で処理されてよい。レチノイン酸は、減数分裂能のある細胞において配偶子形成を誘導することが知られている。
【0016】
したがって、第3の態様では、本発明は、減数分裂能のある細胞をレチノイン酸で処理することにより、本発明の減数分裂能のある細胞において配偶子形成を誘導する方法を提供する。一部の実施形態では、配偶子形成は精子形成である。他の実施形態では、配偶子形成は卵形成である。
【0017】
更なる態様では、本発明は、減数分裂能のある細胞のインビトロ作製のためのキットを提供する。本発明のキットは、メチル化阻害剤と、ポリコーム抑制複合体の阻害剤とを含む。一部の実施形態では、キットはレチノイン酸も含む。また、キットは、本発明の方法に用いられる適切なハードウェア、例えば試験管、培養プレート等を含んでよい。
【0018】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物の受胎能を評価する方法を提供する。本発明のこの態様では、1つ以上の生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子の核酸配列及び/又はエピジェネティック状態及び/又は遺伝子発現レベルが、哺乳動物から得られた細胞において決定される。
【0019】
関連する態様では、本発明は、細胞の減数分裂能を決定する方法を提供し、本方法は、細胞のゲノムDNA中の1つ以上の生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子の核酸配列、エピジェネティック状態及び/又は発現を決定することを含む。また、本発明は、表1に示される1つ以上のGRR遺伝子の発現又はエピジェネティック状態又は発現を検出するプローブから成る又は本質的に成る、プローブの群を有するキット及び/又はアッセイプレートを提供する。
【表1】
【0020】
本明細書に記載されるように、本発明の一部の実施形態は、GRR遺伝子(例えば配列、エピジェネティック状態又は発現レベル)を検出すること、又はGRR発現を誘導することを伴う。これらの実施形態は、表1から選択される1つ以上のGRR遺伝子、例えば表1から選択されるいずれか2個、いずれか3個、いずれか4個、いずれか5個、いずれか6個、いずれか7個、いずれか8個、いずれか9個、いずれか10個、いずれか11個、いずれか12個、いずれか13個、いずれか14個、いずれか15個、いずれか16個、いずれか17個、いずれか18個、いずれか19個、又はいずれか20個の遺伝子を含む、又はそれから成る、又は本質的にそれから成る一群の遺伝子の検出又は誘導を伴ってよい。一部の実施形態では、表1から選択される遺伝子は、Dazl、Hormad1、Sycp2、Sycp3、Mae1、Fkbp6のうちの1つ以上を含んでよい。他の実施形態では、表1から選択される遺伝子は、Dazl、Hormad1、Sycp2、Sycp3、Mae1、Fkbp6のいずれか又は全てを除外してよい。
【0021】
治療用途
【0022】
本発明の方法及び製品は、特に不妊の治療において治療用途がある。例えば、本明細書に記載されるように、本発明の方法によって作製される減数分裂能のある細胞は、例えばレチノイン酸(RA)での処置により、配偶子形成を経るように誘導することができる。このようにして作製されたガメトサイト(すなわち精母細胞;卵母細胞)は、本発明の更なる態様を構成する。本発明のガメトサイトには、例えば、不妊個体への養子移植に治療用途がある。本発明の精母細胞は、雄の不妊患者の精巣に養子移入され得ることが想定される。本発明の卵母細胞は、雌の不妊患者の卵巣に養子移入され得ることが想定される。これらのガメトサイトは、例えば、患者の細胞に由来するiPS細胞、精原幹細胞(SSC)又はPGCLCに対して発明の方法を実施することによって、患者自身の細胞に由来することができる。このアプローチにより、患者へのガメトサイトの自家養子移植が可能になる。
【0023】
本発明の更なる態様では、配偶子は、インビトロにおける本発明の上記ガメトサイトに由来する。このようにして、本発明は、治療的に用いることのできる、雄性配偶子、精子(精液)と雌性配偶子、卵子(卵)を提供する。例えば、本発明の配偶子は、体外受精(IVF)用途に用いることができる。
【0024】
前駆細胞
【0025】
本明細書で説明されるように、本発明の方法は、体細胞前駆細胞を減数分裂能のある細胞に変換することが可能である。このサブセクションでは、前駆細胞として用いることのできる様々な種類の細胞について論じる。
【0026】
自然界では、減数分裂能のあるゴノサイトの前駆体は、始原生殖細胞である。PGC様細胞(PGCLC)の生成を目的とした現在のインビトロ系5,24-26では、PGC発生の初期段階のみ再現に成功しており、生殖腺リプログラミングは、依然として、生殖腺体細胞の環境の状況でのみ克服し遂行することのできる障壁となっている5,24,25,27。本発明の一部の実施形態では、前駆細胞は、前述の従来技術の方法によって得られるPCGLCである。
【0027】
本発明の他の実施形態では、前駆細胞は幹細胞、例えば胚性幹細胞である。ヒト胚性幹細胞は、前駆細胞の一種である。当技術分野では、ヒト胚を破壊することなくヒト胚性幹細胞を得ることができることが知られている(Chung他、2008年)。マウス胚性幹細胞はまた、本発明の有効性を有用に示す一種の前駆細胞である。発明者らは、PGCにおけるGRR遺伝子のエピジェネティック調節が、血清成長マウス胚性幹細胞におけるそれと非常に類似していることを見出した。
【0028】
胚起源ではない多能性幹細胞もまた、本発明の方法における前駆細胞として用いることができる。多能性幹細胞は、以下を含む方法によって得ることができる。
【0029】
核移植によるリプログラミング。この技術は、体細胞から卵母細胞又は接合子への核の移植を伴う。場合によっては、これは、動物‐ヒトハイブリッド細胞の生成につながる可能性がある。例えば、細胞は、ヒト体細胞と動物卵母細胞若しくは接合体との融合、又はヒト卵母細胞若しくは接合体と動物体細胞との融合によって、作製することができる。
【0030】
胚性幹細胞との融合によるリプログラミング。この技術には、体細胞の胚性幹細胞との融合が含まれる。この技術は、上記の1のように、動物‐ヒトハイブリッド細胞の作成にもつながり得る。
【0031】
培養による自発的リプログラミング。この技術には、長期培養後の非多能性細胞からの多能性細胞の生成が含まれる。例えば、多能性胚性生殖(EG)細胞は、始原生殖細胞(PGC)の長期培養によって生成されてきた(Matsui他、1992年)。骨髄由来細胞の長期培養後の多能性幹細胞の発生も報告されている(Jiang他、2002年)。彼らは、これらの細胞を多能性成体前駆細胞(MAPC)と命名した。Shinohara他はまた、新生マウスの精巣からの生殖系列幹(GS)細胞の培養過程において多能性幹細胞を生成することができることを示し、彼らはこれを多能性生殖系列幹(mGS)細胞と名付けた(Kanatsu-Shinohara他、2004年)。
【0032】
限定要因によるリプログラミング。例えば、マウス胚性又は成体線維芽細胞への転写因子(Oct-3/4、Sox2、c-Myc及びKLF4等)のレトロウイルス媒介導入によるiPS細胞の生成が、例えばKaji他、2002年によって記述されており、彼らはまた、2Aペプチドに関連するc-Myc、Klf4、Oct4及びSox2のコード配列を含む単一の多タンパク質発現ベクターの非ウイルス性トランスフェクションについても記述しており、これは、マウス線維芽細胞とヒト線維芽細胞の両方をリプログラミングすることができる。この非ウイルス性ベクターによって作製されたiPS細胞は、多能性マーカーのロバストな発現を示し、インビトロ分化アッセイ及び成体キメラマウスの形成によって機能的に確認されたリプログラミング状態を示す。彼らは、胚性線維芽細胞から、多能性マーカーのロバストな発現を伴うリプログラミングされたヒト細胞株を確立することに成功した。人工多能性幹細胞には、胚の破壊を引き起こさない方法、より具体的には、ヒト又は哺乳動物の胚の破壊を引き起こさない方法によって、それらを得ることができるという利点がある。
【0033】
多能性幹細胞はまた、インビトロで卵割を停止し、桑実胚及び胚盤胞への発生に失敗した停止胚から得ることができ、単為生殖によって得ることができ、又は、単一の割球又は生検割球からのhESC系統に由来することができる。
【0034】
したがって、本発明の態様は、当該細胞が由来し得るヒト又は動物の胚の破壊を必然的に伴う方法によってのみ作製されていない細胞を用いることによって、実行又は実施することができる。この任意の限定は、特に、欧州特許庁の大審判廷の2008年11月25日の決定G0002/06を考慮することを目的としている。
【0035】
他の実施形態では、ガメトゴニウム(gametogonium)(配偶子幹細胞)を前駆細胞として用いることができる。例えば、精原幹細胞(SSC)は、本発明の方法に用いられる1つの好ましい前駆細胞タイプである。SSCは、精巣から、例えば精巣生検から抽出することができる。精巣吸引物は、SSCを含む細胞標品(抽出物)の供給源のひとつである。本発明の方法は、そのような精巣抽出物に対して直接実施することができ、又は、濃縮、選択及び/又は精製されたSSCに対して実施することができると想定される。
【0036】
前駆細胞は、対象から得ることができる。対象は、哺乳動物の対象、例えばヒトの対象であってよい。本発明の一部の実施形態では、対象は不妊患者である。
【0037】
RNA干渉(RNAi)
【0038】
本発明はまた、ポリコーム抑制複合体の構成要素又はDNAメチル化機構の構成要素の治療的ダウンレギュレーションのための、当技術分野で既知の技術の使用を含む。これらは、RNA干渉(RNAi)の使用を含む。
【0039】
遺伝子発現を調節するために、スモールRNA分子を採用することができる。これらは、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAの標的化分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、マイクロRNA(miRNA)によるmRNAの発生学的に調節された配列特異的翻訳抑制、標的化転写遺伝子サイレンシングを含む。
【0040】
ヘテロクロマチン複合体の標的化と、特定の染色体座でのエピジェネティック遺伝子サイレンシングにおける、RNAi機構とスモールRNAの役割も実証されている。二本鎖RNA(dsRNA)依存性の転写後サイレンシングは、RNA干渉(RNAi)としても知られており、dsRNA複合体が特定の相同遺伝子を標的として、短時間でサイレンシングを行うことができる現象である。それは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するためのシグナルとして機能する。20-nt siRNAは、一般に、遺伝子特異的サイレンシングを誘導するのに十分な長さであるが、宿主応答を回避するのに十分な短さである。標的遺伝子産物の発現の減少は広範囲に及ぶ可能性があり、siRNAの少数の分子によって90%のサイレンシングが誘導される。
【0041】
当技術分野では、これらのRNA配列は、それらの起源に応じて、「短鎖又は低分子干渉RNA」(siRNA)又は「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方のタイプの配列を用いて、相補的RNAに結合し、mRNA除去(RNAi)をトリガーするか、又はmRNAのタンパク質への翻訳を停止することにより、遺伝子発現をダウンレギュレートすることができる。siRNAは、長い二本鎖RNAを処理することによって得られる。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、内在的にコードされた小さな非コードRNAであり、短いヘアピンの処理によって得られる。siRNAとmiRNAはどちらも、部分的に相補的な標的配列をもつmRNAの翻訳をRNA切断なしで阻害し、完全に相補的な配列をもつmRNAを分解することができる。
【0042】
したがって、本発明は、ポリコーム抑制複合体の構成要素、例えば、PRC1及び/又はPRC2の発現のダウンレギュレーションのための、これらの配列の使用を提供する。
【0043】
siRNAは典型的には二本鎖であり、RNAを介した標的遺伝子の機能のダウンレギュレーションの効果を最適化するために、siRNAによるmRNA標的の認識を仲介するRISC複合体によるsiRNAの正しい認識を確実にし、siRNAが宿主応答を低減するのに十分なほど短くなるように、siRNA分子の長さを選択することが好ましい。
【0044】
miRNAは、典型的には一本鎖であり、miRNAがヘアピンを形成できるようにする部分的に相補的な領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるがタンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列と、おおよその逆補体を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写されると、miRNA配列とその逆相補塩基対が、部分的に二本鎖のRNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、当技術分野において既知である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して例として説明する。
【0046】
図1】エピジェネティックリプログラミング時の5mC及び5hmCの動態。a)マウスPGC発生時の重要事象。b-c)mESCとE9.5~E13.5 PGC(LC/MS)での個別の5mC(b、左)と5hmC(b、右)及び複合5mC/5hmC(c)レベル。(b)のアスタリスクは平均値を指す。調整p値は、ANOVAとテューキーポストホックテストに基づく。(c)の棒グラフは、(b)に示した生物学的複製の中央値を示す。d)E10.5とE12.5の間のゲノムの一意にマッピングされた部分から反復要素への5hmCの再分布。p値は、ANOVAとテューキーポストホックテストの組合わせに基づく。e)E10.5及びE12.5のPGCにおける代表的な5hmC免疫染色。スケールバーは10μmを表す。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する詳細は、統計と再現性のセクションで見ることができる。
図2】Tet1は、DNA脱メチル化を保護するが駆動しない。a-b)E13.5野生型及びTet1-KO PGCにおける5hmC(a)又は5mC(b)に対する代表的な免疫染色。スケールバーは10μmを表す。c-d)野生型及びTet1-KO PGCにおける全体的な5hmC(c)及び5mC(d)のレベル(LC/MS)。サンプル数をグラフ上に示す。アスタリスクは平均値を指す。p値は、両側Studentのt検定に基づく。e)上図:E14.5 Tet1-KO PGCの可変メチル化領域の割合(p<0.05、>10%メチル化の差、RnBeadsソフトウェアから得られたp値)。下図:全てのE14.5高メチル化2kBウィンドウのE12.5(中央)及びE14.5(下)のTet1-KO(赤)と野生型(青)PGCの複合5mC/5hmCレベル(RRBS)。E10.5野生型PGCのDNA修飾レベルも示されている(上部パネル)。メジアン複合5mC/5hmCレベルは、垂直線で示される。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する詳細は、統計と再現性のセクションで見ることができる。
図3】生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子。a)HCP遺伝子クラスターのPGC発生の連続段階における、複合プロモーター5mC/5hmCレベル(右)、プロモーター5hmCレベル(中央)、又は遺伝子発現レベル(右)(方法を参照)。上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。b)野生型PGCにおけるE10.5とE14.5の間のアップレギュレーションの有意性に基づいてランク付けされた、メチル化及び脱メチル化HCP(クラスター3、図3A)のTSSを中心とするゲノム配列。各横線は1つの遺伝子を表す。赤の強度は、各列の上部に示される特徴の相対的な濃縮を示す。TSS+/-5kbを示す。c)生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子に関連する遺伝子オントロジー(GO)term。調整p-値はDAVIDソフトウェアに基づく。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する詳細は、統計と再現性のセクションで見ることができる。
図4】GRR遺伝子活性化のエピジェネティック原理。a)Tet1-KO PGCにおけるGRR遺伝子発現動態;p値は、両側対応ありウィルコクソン検定に基づく。b)E12.5又はE14.5のTet1-KO(赤)と野生型(青)PGCのGRR遺伝子での複合5mC/5hmCレベル(RRBS)。比較のために、mESC30(%;WGBS)での複合5mC/5hmCレベルを示す。p値は、対応あり両側ウィルコクソン検定に基づく。c-d)GRR遺伝子及びその他の関連遺伝子セットについて、Dnmt-TKO(緑)又はTet1-KO Dnmt-TKOと野生型mESC(c)の間、又は、野生型+6h PRT4165処理(紫)、Dnmt-TKO+6h DMSO処理(緑)若しくはDnmt-TKO+6h PRT4165処理(黄)と野生型+6h DMSO処理mESC(in d)の間の、Log2倍率変化。FWER調整p値は、GSEAソフトウェアに基づく(詳細については方法を参照)。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。
図5】WGBSデータセットの特性とAbaSeq法の検証。a)各対称CpGのWGBSカバレッジの分布。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。b)AbaSeq法15の概要。c-e)E14 mESCの全ての2kBウィンドウ(最小4つの対称CpG)での5hmCレベル間の相関を示す密度ヒートマップ:(c)TAB-Seq35(x軸)及びAbaSeq15(y軸);(d)TAB-Seq35(x軸)及びhMeDIP36(y軸);又は(e)AbaSeq15(x軸)及びhMeDIP36(y軸)。(c-e)については、ピアソン相関係数(ρ)を示す。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図6】E10.5 PGCの5hmCレベルの更なる分析。a)E10.5 PGC(y軸)及びE14 mESC15(y軸)での2kBウィンドウ(最小4つの対称CpG)当たりの5hmCレベル間の相関を示す密度ヒートマップ。ピアソン相関係数(ρ)を示す。b)E10.5 PGC(左)又はE14 mESCの様々な調節エレメントでの5hmCレベル(AbaSeq)15。ANOVA及びダネットポストホックテストに基づくp値。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。c)E10.5 PGCの異なるレベルで発現した遺伝子全体のE10.5 PGCにおける5hmCレベル(上部パネル、AbaSeq)と複合5mC/5hmCレベル(下部パネル、WGBS)を示すメタ遺伝子プロット。d-e)CpGアイランド(d)又はアクティブな推定エンハンサー(e)全体のE10.5 PGCにおける5hmCレベル(上部パネル、AbaSeq)と複合5mC/5hmCレベル(下部パネル、WGBS)を示すメタ遺伝子プロット。f)TAB-Seq35(%;明るい緑)又はAbaSeq15(リードカウント;濃い緑色)によって決定されたE14 mESC、又はAbaSeq(リードカウント;オレンジ)によって決定されたE10.5 PGCにおける、ICRでの5hmCレベルを示す棒グラフ。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図7】PGCにおける5mC及び5hmCの動態の更なる分析。a)E10.5とE12.5の間のPGCにおけるゲノムの一意にマッピングされた部分内の様々な特徴での、複合5mC/5hmC(WGBS;左)レベル又は5hmC(AbaSeq;右)レベル。上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。b)E10.5とE12.5の間のPGCにおける様々なコンセンサス反復要素での複合5mC/5hmC(WGBS;左)レベル又は5hmC(AbaSeq;右)レベル。アスタリスクは平均値を指す。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図8】5hmCは、マウス生殖腺PGCのDNA脱メチル化に続く新たな低メチル化領域を標的とする(図9aも参照)。E10.5生物学的複製(左)、E10.5及びE11.5 PGC(中央)、E10.5及びE12.5 PGC(右)の5hmCレベル間のピアソン相関(ρ)を示す密度ヒートマップ。b)ステージ全体の5hmC(オレンジ、AbaSeq)又は複合5mC/5hmC(灰、WGBS)の平均レベルに対して正規化された、各ステージの5hmC(オレンジ、AbaSeq)レベルと複合5mC/5hmC(灰色、WGBS)レベルを示す平均Zスコア。平均の標準誤差は、小さすぎて表示することができない。c-f)E10.5(c、e)またはE11.5(d、f)PGCにおける合計(c、d;y軸:AbaSeqリードカウント)又は相対(e、f;y軸:(AbaSeqリードカウント)/(%;WGBS)の比)5hmCレベル化間の相関を示す密度ヒートマップと、E10.5 PGCにおける最小20%複合5mC/5hmCを用いた全ての2kBウィンドウについて、これら2つのステージ(x軸:%;WGBS)間のPGCでの複合5mC/5hmCレベルの変化。g)E10.5 PGCにおける最小20%複合5mC/5hmCを用いた全ての2kBウィンドウについて、E11.5 PGCにおける相対5hmCレベル(y軸:(AbaSeqリードカウント)/(%;WGBS)の比)とE11.5 PGCにおける複合5mC/5hmCレベル(x軸:%;WGBS)との間の相関を示す密度ヒートマップ。h)1)E10.5又はE11.5のいずれかで合計5hmCレベルに濃縮(緑、上側調整ポアソンp値<0.05)、又は2)E10.5とE11.5の両方で合計5hmCが枯渇(赤、下側調整ポアソンp値<0.05)のいずれかである、E10.5 PGCにおける最小20%合計DNA修飾を用いた2kBウィンドウについて、E10.5とE11.5の間のPGCにおける複合5mC/5hmCレベルの減少を示す密度プロット。i)1)E10.5又はE11.5のいずれかで合計5hmCレベルに濃縮(緑、上側調整ポアソンp値<0.05)、又は2)E10.5とE11.5の両方で合計5hmCが枯渇(赤、下側調整ポアソンp値<0.05)のいずれかである、E10.5 PGCにおける最小20%複合5mC/5hmCを用いた2kBウィンドウについて、E10.5 及びE11.5 PGCの複合5mC/5hmCレベル。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。p値は、両側ウィルコクソン検定に基づく。なお、密度ヒートマップの場合:1)スピアマン相関(ρs)を示し、2)赤線は、一般化された加法モデルによって決定された平滑化平均を表す。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図9】生殖腺PGCのDNA脱メチル化における5mC酸化を示唆する提案モデル。a)受動希釈が後に続く酸化のモデルにより、2つのステージ間で複合5mC/5hmCレベルが減少する程度(つまり、%;WGBS)と、この減少の直前のステージとこの減少に続くステージの両方での5hmCの合計レベルとの、正の相関が予測される。b)能動メカニズムを介したDNA脱メチル化のトリガーにおける5mC酸化に関係するモデルにより、2つのステージ間で複合5mC/5hmCレベルが減少する程度(つまり、%;WGBS)と、この減少の直前のステージにおける相対5hmCレベルとの間の、正の相関が予測される(5hmCから5fCへの更なる酸化は、5mCから5caCへの完全な酸化における律速段階である39ので)。c)DNA脱メチル化の大波に続くDNA低メチル化の保護における5mCの酸化に関係するモデルから、DNA脱メチル化の大部分が2つのステージ間で失われた領域(つまり、新たに低メチル化された領域)の5hmCの相対レベルは、DNA脱メチル化の大波の直後のステージにおいて高くなり、残留メチル化及び/又は異常なデノボメチル化が除去されることが予測される。よって、2つのステージ間で複合5mC/5hmCレベルが減少する程度(つまり%、WGBS)と、この減少直後のステージにおける相対5hmCレベルとの間には、限定的な相関を見ることができる。
図10】エピジェネティックリプログラミング中のTet1-KO PGCにおけるTet1-3発現と遺伝子座特異的DNAメチル化。a)E12.5 Tet1-KO及び野生型PGCにおけるTet1総転写産物(左)又は欠失エクソン4(右)の発現。DESeq2によって計算された調整p値(左)と、Studentのt検定によって計算されたp値(右)。アスタリスクは平均値を指す。b)E12.5野生型及びTet1-KO PGCにおけるTet1タンパク質のN末端に対する代表的な免疫染色。スケールバーは10μmを表す。c)E12.5 Tet1-KO及び野生型PGCにおけるTet2及びTet3の発現。DESeq2によって計算された調整p値。アスタリスクは平均値を指す。d-e)E14.5 Tet1-KO PGCにおいて高メチル化と呼ばれるICR及び生殖系列遺伝子プロモーターについて、E12.5とE14.5のTet1-KO及び野生型PGCの雌(d)又は雄(e)における平均複合5hmC/5mCレベル(RRBS)。平均DNA修飾レベルとp値は、RnBeadsソフトウェアによって計算した(詳細については方法を参照されたい)。f-g)E12.5(f)とE13.5(g)の雌のTet1-KO及び野生型PGCにおける、Dazlプロモーター(左)、Peg3 ICR(中央)及びIG-DMR ICR(右)の遺伝子座特異的バイサルファイトシーケンシング。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図11】生殖系列リプログラミング中のプロモーターDNAメチル化クラスター分析。a)プロモーター領域での複合5mC/5hmC動態のK平均クラスタリングによってグループ化された全ての遺伝子のPGC発生の連続段階における、複合プロモーター5mC/5hmCレベル(WGBS、右)、プロモーター5hmCレベル(AbaSeq、中央)又は遺伝子発現レベル(RNA-Seq、右)。b-c)プロモーター領域での複合5mC/5hmC動態のK平均クラスタリングによってグループ化された、低CpGプロモーター(LCP;b)又は中間CpGプロモーター(ICP;c)のいずれかを含む遺伝子の3つのクラスターのPGC発生の連続段階における、複合プロモーター5mC/5hmCレベル(WGBS、右)、プロモーター5hmCレベル(AbaSeq、中央)又は遺伝子発現レベル(RNA-Seq、右)を示す箱ひげ図。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図12】通常エピジェネティックリプログラミングと同時に活性化されるレトロトランスポゾンでの野生型及びTet1-KO PGCのDNA修飾と発現動態。a-b)野生型PGCにおいてE10.5とE14.5の間に性別非依存(a)、雄特有(b、青のボックス)又は雌特有(b)の方法で有意にアップレギュレートされた(調整p値<0.05;Sleuth)代表的な反復要素について、野生型PGCにおける複合5mC/5hmC動態(%;WGBS;左端)、野生型PGCにおける相対5hmC動態(AbaSeqリードカウントはE10.5に正規化、中央左)、野生型又はTet1-KO PGCのいずれかにおける発現動態(TPM(transcripts per million);RNA-Seq;中央右)、野生型及びTet1-KO PGCにおける複合5mC/5hmC動態(%;RRBS;右端)全てのケースに平均値を示す。E14.5の野生型PGCとTet1-KO PGCの間の差次的反復発現分析の調整p値は、Sleuthソフトウェアに基づく。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図13】PGC及びmESCにおけるTet1及び5mCによるGRR遺伝子調節の特性解析。a)GRR遺伝子プロモーター及び他の関連プロモーターにおけるCpG密度;p値は、両側ウィルコクソン検定に基づく。b)PGCにおけるGRR遺伝子プロモーター並びに非活性化メチル化HCP及び脱メチル化HCPでの平均5hmC動態;p値は、両側対応ウィルコクソン検定に基づく。c)GRR遺伝子及び他の関連遺伝子セットについて、Tet1-KOと野生型のE14.5雄(青)又は雌(ピンク)PGCの間のLog2倍数変化。FWER調整p値は、GSEAソフトウェアに基づく(詳細については方法を参照されたい)。d)GRR遺伝子及び他の関連遺伝子セットについて、Dnmt1-CKO24mESと野生型mESC(緑)の間、又はE14.5雌(ピンク)又は雄(青)の野生型PGCとE10.5野生型PGCの間のLog2倍数変化。FWER調整p値は、GSEAソフトウェアに基づく(詳細については方法を参照されたい)。e)E12.5(右)及びE14.5(左)Tet1-KO PGCにおけるGRRプロモーターでの複合5mC/5hmCレベル(x軸;Tet1-KO(RRBS;%)-WT(RRBS;%))と、GRR遺伝子発現の変化(y軸;log2(Tet1-KO/WT))との間の相関。スピアマン相関を示す。f)野生型、Dnmt-TKO及びTet1-KO Dnmt-TKO mESCにおけるTet1及びラミンBタンパク質発現を示す代表的なウエスタンブロット。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。全ての図について、サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図14】mESCにおけるGRR遺伝子プロモーターのエピジェネティック特性解析。a)血清含有培地で増殖した野生型mESCにおける、GRR遺伝子と、E10.5とE14.5の間に雄雌両方のPGCで活性化された非GRR遺伝子と、非GRRメチル化及び脱メチル化HCP遺伝子のTSSを中心としたゲノム配列。各横線は1つの遺伝子を表し、赤の強度は、各列の上部に示される特徴の相対濃縮を示す。TSSと、TSSの5kb上流及び下流の配列を示す。b-f)以下のレベルを表す箱ひげ図:(b)複合5mC/5hmCレベル(WGBS)30;(c)5hmC(AbaSeq)15;(d)Tet1(ChIP-Seq)21;(e)Ring1b(ChIP-Seq)38及び(f)血清含有培地で増殖した野生型mESCにおけるGRR遺伝子及び他の関連遺伝子セットのいずれかのプロモーターでのH2Aubレベル(ChIP-Seq)37。全ての箱ひげ図について、上側ヒンジと下側ヒンジは第1と第3の四分位数に対応し、中央線はメジアンに対応し、最大値と最小値はそれぞれ1.5×四分位範囲内の最高値又は最低値に対応する。p値は、両側ウィルコクソン検定に基づく。g)血清含有培地で増殖した野生型及びTet1-KO mESCにおけるGRR遺伝子(左)と、PGCリプログラミング中に最初にメチル化され、続いて脱メチル化される非GRR HCP遺伝子(右)の、TSS周辺のメジアンH3K4me3レベル(ChIP-Seq)30を示すメタ遺伝子プロット。p値は、TSS-1kB/500bpの領域の対応両側ウィルコクソン検定に基づく。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図15】PGC及びmESCにおけるPRC1及び5mCによるGRR遺伝子調節の特性解析。a)野生型と比較した場合の、E11.5及び/又はE12.5 PRC1条件付きノックアウトPGCにおいて、GRR遺伝子と有意にアップレギュレートされた遺伝子との間の重複26。超幾何検定に基づくp値。b)野生型又はDnmt-TKO mESC+6h DMSO、及び野生型又はDnmt-TKO mESC+6h PRT4165(PRC1阻害剤)における、H2Aub及びH2Aレベルを示す代表的なウエスタンブロット。c)mESCにおける5mC及び/又はPRC1リプログラミングに対する依存性に応じたGRR遺伝子の分類(詳細については方法を参照)。サンプルサイズとサンプルの収集方法に関する具体的な詳細については、統計と再現性セクションで見ることができる。
図16】内因性のPGCからゴノサイトへの移行のモデル。PGCからゴノサイトへの移行と正常な配偶子形成に関与する生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子のタイムリーかつ効率的な活性化には、全体的なDNA脱メチル化の開始と、Tet1動員と、PRC1媒介抑制の除去との相互作用が必要である。GRR遺伝子活性化には、Tet1のDNA脱メチル化依存機能(異常な残留/デノボプロモーターDNAメチル化に対する保護)と非依存機能(遺伝子プロモーター36へのOGTの潜在的な動員、SET1/COMPASS38を介したH3K4me3の蓄積を促進する等)の両方が重要である。
図17】レチノイン酸に応答した遺伝子発現の変化。マウス胚性幹細胞(mESC)をレチノイン酸(RA)で処理した。J1細胞株は、Dnmt1/Dnmt3a/Dnmt3bトリプルノックアウトであるので、J1「TKO」細胞がDNAメチル化機構を欠いていることとの比較に用いられた。黒いバーはそれぞれ、J1対照と比較して、TKO細胞におけるDazl発現、Hormad1発現及びMae1発現の倍率変化を示す(いずれもRAで処理されていない)。灰色のバーはそれぞれ、RAで処理されていないJ1細胞と比較した、RAで処理されたJ1細胞におけるDazl発現、Hormad1発現及びMae1発現の倍率変化を示す。白いバーはそれぞれ、RAで処理されていないJ1細胞と比較した、RAで処理されたTKO細胞におけるDazl発現、Hormad1発現及びMae1発現の倍率変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、上記の例示的な実施形態に関連して説明されているが、本開示を考慮したとき、当業者には多くの均等な修正及び変形が明らかになるであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示であり、限定ではないと見なされる。本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に対する様々な変更を行うことができる。
【0048】
エピジェネティックリプログラミングにより、始原生殖細胞からゴノサイトへの移行が可能となる
【0049】
配偶子は、全能性接合子を生成する能力を通して次世代を生み出すことのできる、高度に特殊化した細胞である。マウスでは、生殖細胞は、およそ胎生期(E)6.25図1a)から始まる始原生殖細胞(PGC)としての発生中の胚において、最初に特定される。その後の発生中の生殖腺への移行に続いて、PGCは、E10.5/E11.5で、5-メチルシトシン(5mC)のゲノム全体の喪失を含む2-5,7-11広範なエピジェネティックリプログラミングの高まりを経る2-11図1a)。このプロセスの根本的な分子メカニズムは謎のままであり、結果として、我々は、インビトロでこの生殖系列発生のステップを再現することができない12-14。統合的アプローチを用いて、発明者らは、この複雑なリプログラミングプロセスには、配偶子の生成と減数分裂に関与する生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子の重要なセットの活性化を可能にするために、プロモーター配列の特性と、DNA(脱)メチル化と、ポリコーム(PRC1)複合体と、Tet1のDNA脱メチル化に依存する機能と依存しない機能の両方との間の調整された相互作用が含まれることとを示す。また、我々の結果から、生殖腺PGCにおけるDNA脱メチル化を保護するが駆動はしないというTet1の役割も、予想外に明らかとなった。まとめると、我々の成果により、生殖腺の生殖系列リプログラミングの基本的な生物学的役割が明らかになり、また、インビトロで完全な配偶子形成を再現することに役立つであろうPGCから生殖細胞への移行のエピジェネティック原理が特定される。
【0050】
生殖腺の生殖系列リプログラミングの潜在的な役割と根本的な分子メカニズムに対処するために、発明者らは、まず、以前からPGCのDNA脱メチル化に関与いるとされている3,6,9-115mCと5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)の動態及び関係を調査することに着手した。発明者らは、これを定量的に、そして全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS、図5a)及びAbaSeq15図5b-e)と組み合わせた液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いて単一塩基分解能で実施した。WGBSは、5mCと5hmCの複合レベルに関する情報を提供し16、AbaSeq15は、特定のサンプル内のゲノム全体、LC/MSと組み合わせた場合はサンプル間で、5hmCレベルのロバストな部位特異的定量化と正確な比較を可能にする(方法、図5b-eを参照)。
【0051】
LC/MSにより、発明者らは、ゲノム5mCの全体レベルは、遊走(E9.5)PGCと初期生殖腺(E10.5)PGCの間で安定しており、その後、E10.5とE11.5の間の大幅な減少と、E11.5とE13.5の間のはるかに限定されたDNA脱メチル化が生じることを観察した(図1b)。5hmCに関して、LC/MS分析により、驚くべきことに、PGCにおける全体レベルが、血清を含む培養条件で増殖したマウス胚性幹細胞(mESC)のレベルよりも低いことが明らかとなった(図1b)。更に、PGCにおける全体5hmCレベルは、E9.5とE13.5の間で比較的一定であり、E12.5から雌においてわずかな減少が見られる(図1b)。重要なことに、5hmCレベルは、E10.5での合計5mCレベル又はE10.5とE11.5の間で失われた5mCの量よりも常に1桁低く(図1b-c)、以前に示唆されているように3,17、DNA脱メチル化が全体的に5hmCレベルの相互増加を伴わないことを実証している(図9a)。
【0052】
我々のLC/MS測定結果と一致して、WGBS分析により、E10.5とE11.5の間の複合5mC/5hmCのほぼ完全な喪失が、ゲノムの一意にマッピングされた領域(uniquely mapped region)内の特徴で明らかになり、E11.5とE12.5の間では更に限定されたDNA脱メチル化が観察された(図7a)。以前に示唆されたように8、LINE-1AやERV-IAPレトロトランスポゾン等の一部の反復要素は、E12.5 PGCにおいて比較的高いレベルの複合5mC/5hmCを保ったが、DNAメチル化の喪失もコンセンサス反復配列で観察された(図7b)。E10.5 PGCでのAbaSeqによる5hmC局在の詳細な分析により、全体的なレベルは低いものの(図1b)、PGCでの5hmC局在は、インプリント制御領域(ICR;図6a、b、f)でさえ、血清成長mESCのそれと著しく類似していることが明らかになった。全体として、5hmCは、推定活性エンハンサーで濃縮され、遺伝子間領域及び遺伝子体に存在し、プロモーターで枯渇し、CpGアイランドの大部分では非存在であった(図6b-f).転写に関しては、プロモーター領域の5mCと5hmCの両方が、遺伝子発現レベルと逆の関係を示す(図6c)。遺伝子体内では、5mCと5hmCは、検出可能な発現のない遺伝子と比較して発現遺伝子で明らかに濃縮されているが、5hmCでは遺伝子発現との非線形関係が観察される一方、複合5mC/5hmCレベルは明確な正の相関を示す(図6c)。
【0053】
検討された発生ステージにわたる5hmCパターンの詳細な分析により、5hmCの大部分がゲノムの一意にマッピングされた領域から失われ、反復要素に再局在化していることが明らかになった(図1d、図7a-b)。この再局在化は、免疫蛍光染色によっても明らかに明白であった(図1e)。よって、我々のデータは、ゲノムの一意にマッピングされた領域全体にわたって、PGCにおいて5mCと5hmCの両方が失われていることを示すが、5hmCの異なるキネティクスでは、より緩やかな減少を示している(図8b)。しかしながら、これは、ステージ間のピアソンとスピアマンの相関が悪いことから分かるように、細胞分裂による5hmCの受動希釈3とは一致しなかった(図8a、図9a)。逆に、発明者らは、5hmCはPGCにおける動的マークであると結論付けている。
【0054】
次に、全ての初期メチル化2kbウィンドウ(つまり、E10.5で最小20%メチル化)について、E10.5とE12.5の間の生殖腺PGCにおける5hmC蓄積とDNA脱メチル化の関係を調査した。5hmC中間体を含むDNA脱メチル化から、5hmCの出現と5mCの喪失との直接的な相関が予測される(図9a-b)。発明者らの驚いたことに、E10.5又はE11.5での合計又は相対5hmCレベルと、これらのステージ間で複合5mC/5hmCレベルが低下する程度との間に、相関は観察されなかった(図8c-f)。しかしながら、全ての初期メチル化2kbウィンドウについて、E11.5での相対5hmCレベルと複合5mC/5hmCレベルの間に負の相関が観察される(図8g)。よって、5hmCは、元のDNAメチル化レベルに関係なく、E11.5で新たに低メチル化された領域での複合5mC/5hmCのうちはるかに高い割合を占める。5hmC枯渇領域は、5hmCに富む領域よりもE11.5で5mCをわずかに多く含むが、E10.5とE11.5の両方のPGCにおいて5hmCが枯渇した配列でも、これら2つのステージ間でかなりのDNA脱メチル化が起こり(図8h-i)、これは、検出可能な5hmCの存在が生殖腺PGCにおける5mCの喪失の前提条件ではないことを示している。よって、我々の所見から、全体的なDNA脱メチル化の最初の高まりではなく、生殖細胞におけるDNA脱メチル化後の遺伝子座特異的5mCレベルの調節において、5hmCの関与が示唆される(図9c)。
【0055】
この所見を拡大するために、発明者らは、以前に公開されたTet1-KOマウスモデル18を使用した(図10a-c)。初期LC/MS分析により、E10.5 Tet1-KO生殖細胞において、Tet1の喪失が全体的な5hmCレベルの約50%の低下につながることが明らかになった(図2c)。E12.5での高レベルのTet1発現と一致して3,9,11図10a-c)、LC/MS分析により、Tet1が脱メチル化PGCにおける主要な5mCオキシゲナーゼであることが確認され、E14.5 Tet1-KO生殖細胞において、全体的な5hmCレベルの約85%の低下が観察された(図2a、c)。重要なことに、Tet1-KO PGCと野生型PGCの両方のゲノムは、E13.5までに5mCのほぼ完全な枯渇に達し(図2b、d)、Tet1を介した5mC酸化が、生殖腺PGCにおけるDNA脱メチル化の大部分に直接関与していないことを明らかにした。
【0056】
LC/MS測定結果の裏付けとして、E14.5 Tet1-KO PGCでは、RRBS(Reduced Representation Bisulfite Sequencing)により、限られた数の異なるメチル化領域のみが検出された(図2e)。興味深いことに、これらの領域は、Tet1-KOと野生型PGCの両方で最初に広範なDNA脱メチル化を経て、その後、特にT11-KO PGCのE12.5とE14.5の間で、5mCレベルが増加している(図2e)。対照的に、野生型生殖細胞では、これらのステージの間に5mCレベルは安定し、かつ/又は、わずかに更に低下している(図2e)。同じDNA脱メチル化/再メチル化キネティクスは、以前に報告された9,10、RRBSによってE14.5 Tet1-KO PGCにおいて高メチル化されていることが判明した生殖系列遺伝子プロモーター及びICRのいくつかの例でも観察された(図10d-e)。5mCの大幅な濃縮は、脱メチル化PGCでの標的化バイサルファイトシーケンシングによってDazlプロモーターにおいて実際に観察されるが、Peg3及びIG-DMR ICRで観察される高メチル化の程度は、実際には非常に限定的である(図10f-g)。更に、3つの領域全てについて、完全なメチル化を保っているクローンはほとんどなかったが、多くのクローンには、Tet1-KO PGCにおける異常な残留/デノボDNAメチル化を除去する確率論的失敗と一致する不均一なメチル化パターンがあった(図10f-g)。
【0057】
次に、観察された5mCと5hmCの動態を、E10.5-E14.5 PGCに由来するRNA-Seqデータセットと組み合わせて分析した(図11)。プロモーターDNAメチル化動態に基づく全ての遺伝子の初期クラスター分析により、ほとんどのプロモーターが完全に脱メチル化される一方で、全体的なDNA脱メチル化中に、高レベルの5mC/5hmCを保っている転写サイレンシングプロモーターの小さなサブセットが存在することが明らかになった(クラスター2、図11a)。これらのプロモーターは、このエピジェネティック状態を決定する可能性の高い内因性レトロウイルスを含むLINE1及びLTRと大幅に重複する(それぞれp値=9.5×10-24、7.2×10-83、超幾何検定)(図7b)。全体として、高レベルのプロモーター5mC及び5hmCがE10.5リプログラミング前PGCにおける転写抑制と関連しているが、これらのマークの喪失は、一般に転写活性化にはつながらない(図11a)。
【0058】
遺伝子の転写活性に対する5mCの影響は、哺乳動物ではプロモーターCpG量に大きく依存することが示されているので19、発明者らは、特にhigh-CpG(HCP)、intermediate-CpG(ICP)又はlow-CpG(LCP)のいずれかのプロモーター19を伴う遺伝子でクラスター分析を実施した(図3a及び図11b-c)。興味深いことに、これにより、生殖系列エピジェネティックリプログラミングの過程でDNAが脱メチル化されるとともに、進行的な転写活性化を示す、一群のHCP遺伝子が生じた(クラスター3、図3a)。差次的発現分析により、これらの遺伝子は、PGCにおいてエピジェネティックリプログラミングと同時にアップレギュレートされた全ての遺伝子間で有意な濃縮を示し(p値<0.001、超幾何検定)、45の遺伝子が両方の性別で共通して活性化されることが確認された(図3a-c)。プロモーターのメチル化動態とその活性化のタイミングを考慮して、発明者らは、これらの45の遺伝子を「生殖系列リプログラミング応答性」(GRR)遺伝子と呼ぶ(図3c)。興味深いことに、GRR遺伝子は、Dazl、Sycp1-3、Mael、Hormad1及びRad51cを含む、配偶子の生成と減数分裂に関与する因子の有意な濃縮を示す(図3c)。
【0059】
GRR遺伝子(n=45)がDNA脱メチル化を経るHCP遺伝子のサブセット全体(n=226;図3a-c)の25%未満を構成したことを考慮すると、DNA脱メチル化は、メチル化されたHCPの転写活性化のための重要な因子であり、更に他の因子が必要である可能性が高い。実際、GRR遺伝子プロモーターは、他のメチル化HCP及び脱メチル化HCPと比較して、非常に高いCpG密度と5hmCレベルの両方を示した(図13a-b)。また、プロモーターとしては異例なことに、DNA脱メチル化の大きな高まりの直後に、PGCのGRR遺伝子プロモーターで5hmCレベルが一時的に増加したことも留意された(図7a、13b)。更に、それらの高いCpG密度と5hmCレベル20,21と一致して、GRR遺伝子プロモーターは、mESC21とPGC9の両方においてTet1によって結合されることが示されている(図3b)。
【0060】
観察されたTet1の結合は、GRR遺伝子のアップレギュレーションの程度がTet1-KO PGCではかなり低いので、機能的に関連がある(図4a、図13c)。GRR遺伝子プロモーターは、E12.5までにTet1の非存在下で通常のDNA脱メチル化を経るが、E14.5 Tet1-KO PGCの後半でわずかな高メチル化を示す(図4b)。しかしながら、この限定的なDNA高メチル化は、発現の低下との弱い相関しか示さない(図13e)。更に、Tet1-KO生殖細胞におけるGRR遺伝子の発現の低下は、メチル化の差異がない場合、E12.5で既に明白であり(図4a-b、図13e)、Tet1が5mC除去におけるその役割の外で転写調節因子として機能している可能性があることを示唆している21,22。GRR遺伝子に加えて、転移因子(TE)は、生殖腺エピジェネティックリプログラミング中に5hmCの蓄積を示す(図7b、図12)。DNAメチル化の低下に加えて、一部のTEは、特に進化的な若いレトロトランスポゾンから、エピジェネティックリプログラミングと同時に転写活性化を示す(図12)。興味深いことに、Tet1の欠如は、正常に活性化されたTEの転写活性化の程度も低下させるようである(図12)。
【0061】
エピジェネティックリプログラミングとGRR遺伝子の活性化との間の因果関係を更にメカニズム的に探るために、発明者らは、インビトロモデルに目を向けた。血清成長mESCは生殖系列に制限されないが、GRR遺伝子プロモーターでのエピジェネティック修飾が、リプログラミング前の生殖腺PGCにおいてインビボで観察されるものと非常に類似しているので、血清成長mESCは、理想的な系である(図14a-d)。本発明者らがインビボで観察したものと一致して、プロモーターDNAの脱メチル化は、インビトロでも、GRR遺伝子活性化にとって優位なエピジェネティックリプログラミング事象である。Dnmt-TKO23 mESCは、GRR遺伝子の発現の増加を示す(図4c)。しかしながら、DNAメチル化が完全に存在しない場合でも、Tet1-KO Dnmt-TKO mESCはGRR遺伝子をグループとして活性化できないので、これはTet1の存在に大きく依存する(図4c、図13f)。
【0062】
これらのインビトロ所見は、5mCとTet1の役割に関する我々のインビボデータを明確に裏付けたが、Dnmt-TKO mESC(図4c)、又はDnmt1(図13d)の条件付き削除によって早期DNA脱メチル化を受けたE10.5 PGC(Dnmt1-CKO)24図13d)では、GRR遺伝子がアップレギュレートされた程度は、比較的穏やかであった。よって、発明者らは、潜在的には他のエピジェネティック障壁を含む他の因子がGRR遺伝子発現を調節し得ると仮定した。これに関して、生殖腺エピジェネティックリプログラミングは、以前から様々な異なるレベルでのエピジェネティック情報の抹消と関連付けられており4,25、ポリコーム抑制複合体1(PRC1)の除去は、DNA脱メチル化E11.5/E12.5 PGCにおける減数分裂開始のタイミングを調整することが以前に示されている26。驚くべきことに、PGCにおけるPRC1削除に続いて異常にアップレギュレートされた遺伝子は、GRR遺伝子の有意な濃縮を示し(図15a)、血清成長mESCのGRR遺伝子のプロモーターは、Ring1b結合及びH2AK119ubで濃縮される(図14a、e、f)。これに鑑みて、発明者らは、Dnmt-TKO mESCに関連してPRC1の非常に特異的な化学的阻害を用いて、DNAメチル化とPRC1活性の両方を同時に無効にして、GRR遺伝子調節におけるDNAメチル化とPRC1の両方の役割を検証し、このようにして生殖腺エピジェネティックリプログラミングを模倣した。PRT416527によるmESCの培養により、わずか6時間の培養後にPRC1を介したH2Aユビキチン化が有意に阻害された(図15b)。5mC/PRC1抑制の二重阻害は、驚くべきことに、45のGRR遺伝子のうち33の活性化につながり、5mC又はPRC1抑制の単独阻害では、それぞれ25の遺伝子と10の遺伝子が活性化された(図4d、図15c)。組み合わせると、これらの所見は、生殖腺エピジェネティックリプログラミングが、GRR遺伝子の発現を増強するために、エピジェネティック系の複合的な抹消4,25を伴うことを示している。
【0063】
我々の研究により、配偶子形成の正しい進行に重要な一連の生殖系列リプログラミング応答性(GRR)遺伝子が特定された。これらの遺伝子は、5mCと5hmCの両方が高レベルである独特なプロモーター配列特性を有し、Tet1及びPRC1の標的である。本開示は、DNAメチル化の喪失とPRC1抑制の組合わせが、GRR遺伝子の活性化に独自に必要であり、このエピジェネティックに平衡を保った状態ではさらに、Tet1が完全かつ効率的な活性化を強化する必要があることを示す。Tet1は、エピジェネティックリプログラミングの完了後すぐに減数分裂前期を開始する雌PGCで特に重要であるようであり9、よって、これらの遺伝子のタイムリーな高発現が必要となる。重要なことに、発明者らはE14.5 Tet1-KO PGCのGRR遺伝子プロモーターでわずかな高メチル化を観察したが、我々の研究は、Tet1がDNA脱メチル化に依存しないメカニズムも介してGRR遺伝子の転写を刺激することを、明確に記録している21,22。これに関連して、以前の研究では、Tet1がOGTを遺伝子プロモーターに動員して22、それにより、SET1/COMPASS28を介したH1K4me3の蓄積を促進し、転写活性化につながることが示されている。更なる裏付けでは、mESCのGRR遺伝子プロモーターは、低いが検出可能なH3K4me3によってマークされ、そのレベルは、Tet1が存在しない場合、DNAメチル化の変化なしに大幅に低下する(図4b、図14g)。Tet1は、エンハンサー等の非プロモーターシスエレメントでの5mC/5hmCレベルの調節を介して、転写を更に増強することができる。最後に、重要なこととして、我々の研究は、Tet1が、生殖腺PGCにおけるエピジェネティックリプログラミング中の全体的なDNA脱メチル化の開始には直接関与しないことを示したが、むしろ発明者らは、その後の異常な残留及び/又はデノボDNAメチル化の除去におけるTet1の重要な役割を定義する(図16)。これは、接合子のDNA脱メチル化中のデノボDNAメチル化29に対する保護におけるTet3駆動5mC酸化の役割を連想させ、全体的なリプログラミング事象では、新たに取得したエピジェネティック状態を安定させるために、5mCを除去した後のデノボDNAメチル化からの効率的な保護が必要であることを示唆している。まとめると、我々の研究は、生殖腺エピジェネティックリプログラミングがエピジェネティック情報の複合抹消を伴うという考えを強化し、また、このプロセスの中心的な機能は、GRR遺伝子のタイムリーで効率的な活性化を確認し、それにより配偶子形成への進行を可能にすることであることを示唆している(図16)。
【0064】
方法
【0065】
統計と再現性
【0066】
全ての統計的検定は、図の説明文及び/又は方法セクションに明確に記載されており、可能な場合は正確なp値又は調整されたp値が示される。WGBSデータ(図3a-b、図5a、図6c-e、図7a-b、図8図11図12)では、データは、n=1(E10.5 PGCサンプル)又はn=2(その他全てのサンプル)の生物学的複製からの細胞に由来し、プールされた胚からの各複製を用いた(E10.5:n=39胚/4リットル;E11.5:n=8胚/1リットル;E12.5M/F:n=4胚/1リットル)。AbaSeqデータ(図1d、図3a-b、図5c-e、図6a-f、図7a-b、図8図11図12図13b)では、データは、n=2生物学的複製からの細胞に由来し、プールされた胚からの各複製を用いた(E10.5:n=40胚/4リットル;E11.5:n=8胚/1リットル;E12.5M/F:n=4胚/1リットル)。mESCのRNA-Seqでは、サンプルは、n=1細胞株からの独立培養されたn=2サンプルに対応するn=2生物学的複製に由来する。PGC LC/MS、RNA-Seq及びRRBSのデータについては、サンプルが由来する胚数/リットルに関する完全な詳細を参照されたい。ウエスタンブロット(図13f、図15b)は3回実施して同様の結果が得られ、代表的なブロットを示す。全ての免疫染色(図1e、図2a-b、図10b)は2回実施して同様の結果が得られ、代表的な画像を示す。従来のバイサルファイトシーケンシング(図10f-g)は2回実施し、代表的なメチル化プロファイルを示す。以前に公開されたWGBS(図14a-b)、TAB-Seq(図5c-e)、AbaSeq(図5c-e、6b、14a、14c)及びChIP-Seq(図3b、図14a、14c-g)の、mESC(受入番号については方法を参照)から得られたデータセットの分析では(H2Aub ChIP-Seqデータセット(n=1)以外)、分析の再現性を保証するために、生物学的複製を組合わせ(表示)と個別(表示なし)の両方で分析した。
【0067】
マウス
【0068】
全ての動物実験は、英国内務省指定施設における内務省プロジェクトライセンスの下で、かつそれに従って実施した。Tet1-KO PGCとの直接比較を除いて、野生型PGCは、非近交系MF1の雌を混合バックグラウンドGOF18ΔPE-EGFP5トランスジェニックの雄と交配させることによって産生された胚から単離した。E12.5以降の胚の性別は、生殖腺の目視検査によって決定した。Tet1-KO PGCの研究では、Tet1ノックアウトマウス株(B6;129S4-Tet1tm1.1Jae/J)18をJackson Laboratoryから購入し、GOF18ΔPE-EGFP5トランスジェニックマウス系統に対して繁殖させた。野生型及びTet1- KO PGCは、Tet1-ヘテロ接合GOF18ΔPE-EGFP-ホモ接合型の雌雄間の交配から産生された胚から単離した。Tet1-ヘテロ接合GOF18ΔPE-EGFP-ホモ接合型の雌雄を交配させることによって産生された胚のジェノタイピングでは、エクソン4欠失を確認するために、2つの異なるプライマーセット(下記参照)を用いて、PCRを常に2回実施した。E12.5以降の胚の性別は、生殖腺の目視検査によって決定し、更にSryのPCRによって確認した。全てのケースにおいて、正午での膣プラグの出現がE0.5として定義されるように、交配のタイミングを決定している。
【0069】
分子生物学
【0070】
この研究では、以下のジェノタイピングプライマーを使用した:TCAGGGAGCTCATGGAGACTA(Tet1フォワードプライマー1);AACTGATTCCCTTCGTGCAG(Tet1フォワードプライマー2);TTAAAGCATGGGTGGGAGTC(Tet1リバースプライマー);TTGTCTAGAGAGCATGGAGGGCCATGTCAA(Sryフォワードプライマー);CCACTCCTCTGTGACACTTTAGCCCTCCGA(Sryリバースプライマー)。
【0071】
フローサイトメトリーによるPGC単離
【0072】
PGC単離は、以前に記述されたように実施した4。簡単に言うと、胚幹(E10.5)又は生殖隆起(E11.5-E14.5)を、0.05%トリプシン-EDTA(1×)(Gibco)又はTrypLE Express(Thermo)を用いて、37℃で3分間消化した。酵素消化に続いて、15%ウシ胎児血清(Gibco)を含むDMEM/F-12(Gibco)で中和し、ピペッティングによって手動で解離させた。遠心分離後、細胞をヒアルロニダーゼ(300μg/ml;Sigma)を補充したDMEM/F-12に再懸濁し、手動ピペッティングによって単一細胞懸濁液を生成した。遠心分離後、細胞を、ポリビニルアルコール(10μg/ml)とEGTA(0.4mg/ml、Sigma)を補充した氷冷PBSに再懸濁した。Aria IIu(BD Bioscience)又はAria III(BD Bioscience)フローサイトメーターを用いてGFP陽性細胞を単離し、ポリビニルアルコール(10μg/ml)とEGTA(0.4mg/ml、Sigma)を補充した氷冷PBSにソートした。
【0073】
Tet1-KO Dnmt-TKO mESCの生成
【0074】
Tet1-KO Dnmt-TKO mESC株は、CRISPR/Cas9を介したゲノム編集によって生成した。Tet131(GGCTGCTGTCAGGGAGCTCA)を標的とするsgRNAを含むpX330(Add遺伝子、#42230)を、リポフェクタミン3000を用いて、5×10個のDnmt-TKO mESC23において、レポーターGFPプラスミドと同時トランスフェクションした。翌日、GFP陽性細胞をFACS(BD FACS Aria III)によって96ウェルプレートにソートした。細胞を1週間培養した後、凍結してgDNAを抽出した。Surveyor assay(IDTのSurveyor Mutation検出キットと、QiagenのTaq DNAポリメラーゼ)を用いて、コロニーを変異についてスクリーニングした。Tet1-KO Dnmt-TKO mESC選択クローンを、ジェノタイプシーケンシングによって更に分析し、フレームシフト変異の存在を確認した。Tet1の喪失は、RNA-Seqとウエスタンブロットによって確認した。ジェノタイプシーケンシングとsurveyor assayには、以下のプライマーを使用した:5’TTGTTCTCTCCTCTGACTGC3’及び5’TGATTGATCAAATAGGCCTGC3’。
【0075】
mESC細胞培養
【0076】
J1(野生型)、Dnmt-TKO23及びTet1-KO Dnmt-TKO mESCを0.1%ゼラチン上、フィーダーを含まないFCS/LIF培地で培養した。FCS/LIF培地は、10%FCS、0.1mM MEM非必須アミノ酸、2mM 1-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM 2-メルカプトエタノール及びマウスLIF(ESGRO、Millipore)を補充したGMEM(Gibco)からなる。阻害剤実験では、mESCを1.5×10/cmの密度で播種し、一晩放置した。翌朝、培地を50μM PRC1阻害剤PRT4165(Ismail他,2013)またはDMSO対照のいずれかを含むFCS/LIF培地と交換し、分析のため、指示された時間に細胞をペレット化した。
【0077】
AbaSeqライブラリの作製
【0078】
QIAamp DNA Micro Kit(Qiagen)を用いて、10,000個のソート済みPGCから全DNAを単離した。5hmCプロファイリング用のAbaSeqライブラリは、以前記述された15ように構築した。手短に言えば、ゲノムDNAをグルコシル化し、次にAbaSI酵素(NEB)によって消化した。ビオチン化P1アダプターをAbaSI消化したDNAにライゲーションし、Covaris S2ソニケーター(Covaris)を用いて、製造元の指示に従って断片化した。次に、切断されたP1ライゲーション済みDNAを、製造元の仕様に従ってDynabeads MyOne Streptavidin C1ビーズ(Life Technologies)と混合することによって捕捉した。NEBNext End Repair Module(NEB)とNEBNext dA-tailing Module(NEB)をそれぞれ20℃と37℃で30分間使用することにより、ビーズに末端修復とdAテーリングを実施した。P2アダプターを、dAテーリングされたDNAのランダムに切断された末端にライゲーションした。最後に、Phusion DNAポリメラーゼ(NEB)を用いて、300nMフォワードプライマー(PCR_I)と300nMリバースプライマー(PCR_IIpe)を追加して、DNA全体を16サイクル増幅した。ライブラリは、AMPure XPビーズ(Beckman-Coulter)を用いて精製し、Illumina HiSeq 2000機器で配列決定した。
【0079】
全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS)ライブラリの作製
【0080】
QIAamp DNA Micro Kit(Qiagen)を用いて、10,000個のソート済みPGCから全DNAを単離した。一部のケースでは、続くDNA単離において、メチル化されていないλファージDNA(Promega)をスパイクして、バイサルファイト変換率を評価した。製造元の指示に従い、Covaris S2ソニケーター(Covaris)を用いてDNAを断片化した。メチル化されたアダプターと以下の変更を加えて、NEBNext Library Prepプロトコルに従ってライブラリを作製した。アダプターのライゲーションに続いて、Imprint Modification Kit(Sigma)を用いてバイサルファイト変換を実行した。Illumina Sequencing(Bioo Scientific)マスターミックス用のNEXTflex Bisulphite-Seq KitとNEBNext Library Prepユニバーサル及びインデックスプライマー(NEB)を用いて、PCR濃縮を16サイクル実施した。ライブラリは、AMPure XPビーズ(Beckman-Coulter)によって精製した。ライブラリは、Illumina HiSeq 2000又は2500機器で配列決定した。
【0081】
RRBS(Reduced representation bisulphite sequencing)ライブラリの作製
【0082】
個々のTet1-KO胚又は野生型胚から分離されたFACSソート済みPGCからの全DNAを、ZR-Duet DNA-RNA MiniPrepキット(Zymo)を用いて分離し、同じジェノタイプ、ステージ及び性別の2~6個の胚(1,000~8,000細胞に相当)からのDNAをプールし、Savant SpeedVac Concentrator(Thermo)を用いて製造元の指示に従って最終量26μLに濃縮した。ゲノムDNAをNEBバッファー2中の20ユニットのMspI酵素(NEB)により、37℃で3時間消化し、消化されたDNAをAMPure XPビーズ(Beckman-Coulter)を用いて精製した。メチル化されたアダプターと以下の変更を加えて、NEBNext Ultra DNA Library Prepプロトコルに従ってライブラリを作製した。アダプターのライゲーションに続いて、Imprint Modification Kit(Sigma)を用いてバイサルファイト変換を実行した。KAPA Uracil DNAポリメラーゼマスターミックス(KAPA Biosystems)とNEBNext Library Prepユニバーサル及びインデックスプライマー(NEB)を用いて、PCR濃縮を18サイクル実施した。ライブラリは、AMPure XPビーズ(Beckman-Coulter)によって精製した。以前に記述されたように32、プールされたライブラリは、「ダークシークエンシング」プロトコルを用いて、Illumina HiSeq 2500機器で配列決定された。
【0083】
RNA-Seqライブラリの作製
【0084】
Tet1-KO PGCの研究では、個々のTet1-KO胚又は野生型胚から分離されたソート済みPGCからの全RNAを、ZR-Duet DNA-RNA MiniPrepキット(Zymo)を用いて分離し、同じジェノタイプ、ステージ及び性別の2~6個の胚(1,000~8,000細胞に相当)からのRNAをプールし、RNA Clean and Concentrator 5キット(Zymo)を用いて最終量6μLに濃縮した。MF1雌とGOF18ΔPE-EGFP雄を交配することによって産生された胚から分離された野生型PGCの研究では、600~1,000のソート済みE10.5 PGCからの全RNAを、Nucleospin RNA XSキット(Macherey-Nagel)を用いて分離した。SMARTer Ultra Low Input RNAキット(Clontech)を用いて、100pg及び3ngの全RNAを使用し、製造元の指示に従って、cDNA合成及び増幅(15サイクル)を実行した。増幅されたcDNAは、製造元の指示に従い、Covaris S2ソニケーター(Covaris)によって断片化した。せん断されたcDNAを、NEBNext DNA Library Prepキット(NEB)を用いて、製造元の指示に従い、15サイクルの増幅を用いてシーケンスライブラリーに変換した。mESCの研究では、ZR-Duet DNA-RNA MiniPrepキット(Zymo)を用いて全RNAを分離した。製造元の指示に従い、NEBNext Ultra Library Prep Kit(NEB)とNEBNext Poly(A) mRNA Magnetic Isolation Module(NEB)を用いて、500ngの全RNAから始めて、cDNA合成とライブラリ作製を実施した。全てのライブラリをAMPure XPビーズ(Beckman-Coulter)で精製し、Illumina HiSeq 2500装置で配列決定した。
【0085】
バイオインフォマティクス
【0086】
全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS)及びTet支援バイサルファイトシーケンシング(TAB-Seq)のアライメント及び下流分析
【0087】
未加工のリードを、最初にTrim Galore(バージョン0.3.1)を用いて--paired--trim1オプションでトリミングした。アライメントは、マウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)に対して、Bismark(バージョン0.13.0)を用いて-n 1パラメーターで実行した。必要に応じて、λファージゲノムを過剰染色体として追加した。アラインされたリードをdeduplicate_bismarkで重複排除した。必要に応じて、バイサルファイト変換率を、λファージゲノムにアラインされたリードを用いて、Methpipe(バージョン3.3.1)のto-mrスクリプト(パラメーター:-m bismark)及びbsrateスクリプト(パラメーター:-N)を用いて計算した。CpGメチル化コールは、Bismarkメチル化エクストラクターを用いて、重複排除されたマッピング出力から抽出した。CpGコンテキスト内のメチル化シトシン及び非メチル化シトシンの数は、bismark2bedGraph及びcoverage2cytosineを用いて抽出した。対称CpGは、カスタムRスクリプトとマージした。全ての下流分析について、最小8倍のカバレッジをもつ対称CpGのみを使用した。マージされた生物学的複製からのデータに対して、全てのWGBS分析を実行した。特定の反復要素でDNA修飾レベルを評価するために、Bismark(バージョン0.14.4)を用いて、各データセットからの全てのリードを、-n 1パラメーターセットでRepbaseから構築されたコンセンサス配列に対してマッピングした。CpGメチル化コールは、Bismarkメチル化エクストラクター(バージョン0.14.4)を用いて、マッピング出力から抽出した。
【0088】
BEDtools(バージョン2.24.0)のmapBed機能を用いて、以下のゲノム特徴の複合5mC/5hmCレベルを計算した:1)全ての2kbウィンドウ(最低4つの対称CpGを含む);2)遺伝子プロモーター(Ensembl 67遺伝子開始サイト-1kB/+500bpとして定義);3)遺伝子体(Ensembl 67遺伝子開始サイトと遺伝子終了サイトに含まれる領域として定義);4)6日目PGCLCの推定活性エンハンサー33;5)インプリント制御領域;6)CpGアイランド(UCSC);7)遺伝子間領域。メタ遺伝子プロットでは、BEDtools(バージョン2.24.0)を用いて、ゲノム特徴を同じサイズのビンに分割した:1)遺伝子体(Ensembl 67の遺伝子開始サイトと遺伝子終了サイトに含まれる領域として定義)+/-0.5*遺伝子体長さ(100ビン);2)6日目PGCLCの推定活性エンハンサー33+/-1*推定活性エンハンサー長さ(90ビン);及び3)CpGアイランド(UCSC)+/-1*CpGアイランド長さ(90ビン)。全てのケースにおいて、複合5mC/5hmCレベルは、個々のCpGサイトの平均として表した。
【0089】
以前に公開されたもの19,34と同じパラメーターを用いて定義された、複合平均5mC/5hmCレベル、高CpG(HCP)、中間CpG(ICP)及び低CpG(LCP)プロモーターのk平均クラスタリング。簡単に言うと、LCPは、CpG比>0.45の500bpウィンドウを含まず、HCPは、CpG比>0.65でありGC量>55%である500-bpウィンドウを少なくとも1つ含み、ICPは先の基準を満たさない。
【0090】
血清含有培地で増殖させた野生型mESCの遺伝子座特異的メチル化レベルを決定するために、未加工のWGBSリードをGSE4851930からダウンロードし、上記のように処理した。E14 mESCのTAB-SeqリードはGSE3617335からダウンロードし、上記のように処理したが、例外として、最低12倍のカバレッジをもつ対称CpGのみを用いた。
【0091】
AbaSeqアライメントと下流分析
【0092】
ゲノムの一意にマッピング可能な部分について、以前に記述された15ようにAbaSeqリードを処理した。簡単に言うと、Trim Galoreを用いて、アダプター配列と低品質塩基について未加工のシーケンシングリードをトリミングした。トリミングされたリードを、Bowtie(バージョン0.12)を用いて、パラメーター-n 1 -l 25 --best --strata -m 1で、マウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)にマッピングした。5hmCの呼出しは、カスタムPerlスクリプトを用いたAbaSI酵素(5’-CN11-13↓N9-10G-3’/3’-GN9-10↓N11-13C-5’)の認識配列と切断パターンに基づいた。反復要素と非反復要素での5hmCの相対的な濃縮を評価するために、AbaSeqアライメントを2つの群に分けた:ユニーク(単一の最良のアライメント)と多義(等しいアライメントスコアをもつ複数の場所にマッピング)。両群を、mm9のRepeatMaskerトラック(UCSC Genome Browser)によって個別に定義された反復要素にマッピングした。mESCの5hmCレベルとの比較のために、AbaSeqリードをGSE4289815からダウンロードし、同じ方法でアラインした。
【0093】
ゲノムの一意にマッピングされた部分の対称CpGにおける相対5hmCレベルの定量化では、所与のサンプルの対称CpGあたりのカウント数を、所与のライブラリの一意にマッピングされたリードと多義にマッピングされたリードの合計数に正規化し、更に、LC/MSによって計算された各ステージについて、平均5hmCレベルに基づくステージ固有の正規化係数を乗じた(E14 ESC=1.64;E10.5=1.0;E11.5=1.13;E12.5F=0.76;E12.5M=1.0)。マウス(mm9)ENCODEプロジェクトによってブラックリストに記載されたゲノム間隔に該当する対称CpGは、全て、以降の全ての下流分析から除外した。別段の記載がない限り、マージされた生物学的複製からのデータに対して、全てのAbaSeq分析を実行した。
【0094】
BEDtools(バージョン2.24.0)のmapBed関数を用いて、WGBSデータセット(上記を参照)で実行されたものと同じゲノム特徴について、5hmCレベルを計算した。全てのケースで、5hmCレベルを、個々のCpGサイトの平均として表した。
【0095】
E10.5及びE11.5 PGCにおいて5hmCの濃縮領域又は枯渇領域を特定するために、mm9ゲノムを最初に2kbウィンドウ(最小4つの対称CpG)に分割し、各ウィンドウの平均5hmCレベルを、BEDtools(バージョン2.24.0)を用いて計算した。各2kBウィンドウにおける5hmC濃縮の有意性を決定するために、上側(5hmC濃縮領域を決定するため)又は下側(5hmC枯渇領域を決定するため)のポアソン確率p値を、ppois(x、λ)を用いて計算した。ここで、xは、各2kbウィンドウで観測された5hmC平均値であり、λは、E10.5での全ての2kbウィンドウの5hmC平均値の平均である。次に、Benjamini-Hochberg補正を適用して多重検定用に補正し、2kbウィンドウごとに最終的に調整された上側p値及び下側p値を取得した。調整済みの上側p値<0.05のウィンドウを、5hmCが比較的濃縮されているとみなし、調整された下側p値<0.05のウィンドウを、5hmCが比較的枯渇しているとみなした。
【0096】
特定の反復要素での5hmCの相対的濃縮を評価するために、Bowtieを用いて、各データセットからの全てのリードを、パラメーター-n 1 -M 1 --strata -bestでRepbaseから構築されたコンセンサス配列に対してマッピングした。最初に、所与のサンプル内の各配列にマッピングされたリード数を、その特定のサンプルのライブラリサイズに正規化し、次に、LC/MSによって計算された各ステージの平均5hmCレベルに基づくステージ固有の正規化係数(E10.5=1.0;E11.5=1.13;E12.5F=0.76;E12.5M=1.0)と、E10.5 PGCの所与の配列にマッピングされたリードの平均比率の両方に正規化した。
【0097】
RRBS(Reduced representation bisulphite sequencing)アライメントと下流分析
【0098】
最初に、未加工のRRBSリードを、Trim Galore(バージョン0.3.1)を用いて--rrbsパラメーターでトリミングした。Bismark(バージョン0.13.0)を用いて、-n 1パラメーターで、マウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)に対してアラインメントを実行した。CpGメチル化コールは、Bismarkメチル化エクストラクター(バージョン0.13.0)を用いて、マッピング出力から抽出した。CpGコンテキスト内のメチル化シトシン及び非メチル化シトシンの数は、bismark2bedGraphを用いて抽出した。
【0099】
RnBeads(バージョン1.0.0)とRnBeads.mm9(バージョン0.99.0)を用いて、filtering.missing.value.quantileを0.95に設定し、filtering.missing.coverage.thresholdを8に設定して、以下のゲノム特徴について、2つの検定群間のメチル化領域の差を特定した:1)全ての2kbウィンドウ(最小4つの対称CpGを含む);2)遺伝子プロモーター(Ensembl 67遺伝子開始部位-1kB/+500bpと定義);及び3)インプリント制御領域(mm9ゲノム)。RnBeadsの出力から、以下を抽出した:1)共通してカバーされている各検定領域の各群(つまり、ステージ、性別及び/又はジェノタイプ)の平均メチル化レベル;2)共通してカバーされている各検定領域の2群間のメチル化平均値の差;及び3)共通してカバーされている各検定領域の2群間のメチル化平均値の差の有意性を表すp値。可変メチル化領域は、p値<0.05である領域として特定され、メチル化の差は、2群間で10%を超えることを意味する。
【0100】
特定の反復要素でのDNA修飾レベルを評価するために、Bismark(バージョン0.14.4)を用いて、-n 1パラメーターセットでRepbaseから構築されたコンセンサス配列に対して、各データセットからの全てのリードをマッピングした。CpGメチル化コールは、Bismarkメチル化エクストラクター(バージョン0.14.4)を用いてマッピング出力から抽出した。CpGコンテキストでのメチル化シトシン及び非メチル化シトシンの数は、bismark2bedGraph及びcoverage2cytosineを用いて抽出した。可変メチル化コンセンサス反復は、p値<0.05(両側Studentのt検定により計算)の領域として特定され、メチル化の差は、2群間で10%を超えることを意味する。
【0101】
hMeDIPアライメントと下流分析
【0102】
E14 mESCの未加工hMeDIP-Seqリード及び入力リードをGSE2850036からダウンロードし、Bowtie(バージョン0.12.8)を用いてパラメーター-n 2 -l 25 -m 1でマウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)にアラインした。BEDtools multicovを用いて、hMeDIPの数と、各2kBウィンドウ(最小4つの対称CpGを含む)と重複する入力リードを特定した。各2kBウィンドウの最終5hmCレベルは、まず、重複しているhMeDIPリードの数(ライブラリサイズに正規化)を重複している入力リードの数(ライブラリサイズに正規化)によって正規化し、次に、この値を、2kBウィンドウ内に含まれる対称CpGの数で割ることによって決定した。
【0103】
ChIP-Seqアライメントと下流分析
【0104】
推定活性エンハンサーの呼出しでは、6日目のPGC様細胞(PGCLC)のH3K4me3、H3K27me3及びH3K27Acの未加工ChIP-SeqリードをGSE6020433からダウンロードし、野生型mESCのH3K4me3、H3K27me3、H3K4me1及びH3K27Acの未加工ChIP-SeqリードをGSE4851930からダウンロードした。必要に応じて、Bowtie(バージョン0.12.8又はバージョン1.0.0)を用いて、パラメーター-n 2 -l 25 -m 1及び-Cで、リードをマウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)にアラインした。後続のChIP-Seq分析は、マージされた生物学的複製からのデータに対して実行した。推定活性エンハンサーを特定するために、発明者らは、まず、ChromHMMを用いて8状態のクロマチンモデルを生成した。推定活性エンハンサーは、潜在的なプロモーター領域(Ensembl 67遺伝子開始サイト-1kB/500bp)と重複せず、6日目のPGCLCでは(H3K27Ac+/H3K4me3-/H3K27me3-)クロマチン状態内に含まれ、又は野生型mESCでは(H3K4me1+/H3K27Ac+/H3K4me3-/H3K27me3-)内に含まれる全ての領域として定義された。
【0105】
転写開始部位(Ensembl 67)周辺のエピジェネティックな修飾及び修飾因子の分析のために、野生型血清成長mESCにおけるTet1結合の未加工ChIP-SeqリードをGSE2484321からダウンロードし、野生型血清成長mESCにおけるH2AK119Ub1レベルの未加工ChIP-SeqリードをGSE3452037からダウンロードし、野生型血清成長mESCにおけるRing1b結合の未加工ChIP-SeqリードをERP00557538からダウンロードし、野生型及びTet1-KO血清成長mESCにおけるH3K4me3の未加工ChIP-SeqリードをGSE4851930からダウンロードした。Bowtie(バージョン0.12.8又はバージョン1.0.0)を用いて、パラメーター-n 2 -l 25 -m 1で、リードをマウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)にアラインした。後続のChIP-Seq分析は、マージされた生物学的複製からのデータに対して実行した。転写開始部位(TSS)周辺のChIP-Seqシグナルを計算するために、Ensembl 67遺伝子開始部位+/- 5kB(又は2kB)周辺のゲノム間隔を、BEDtools makewindowsを用いて100(又は40)の等しいサイズのビンに分割した。次に、BEDtools multicovを用いて、各ビンに重複している検定リード及び対照リードの数を計算した。各サンプルのビンごとの検定リード及び対照リードの総数を、適切なライブラリサイズに正規化し、各ビンの濃縮倍率を、正規化済みChIP-Seq検定サンプルリードの数を正規化済みChIP-Seq対照サンプルリードの数で割ることによって決定した。遺伝子プロモーターでのChIP-Seqシグナルの計算では、Ensembl 67遺伝子開始部位+500bp/-1kBのゲノム間隔を
【0106】
RNA-Seqアライメントと下流分析
【0107】
Tet1-KO及びTet1-WT PGCの研究では、最初に、Trimmomaticを用いて、シーケンシングリードからのIllumina及びSmart-seqアダプターをトリミングした。他のRNA-Seqライブラリでは、次世代シーケンシングの出力から生成されたfastqファイルを直接アライメントに用いた。Bowtie(バージョン0.12.8)及びTophat(バージョン2.0.2)を用いて、オプション-N 2 --b2-very-sensitive --b2-L 25で、RNA-Seqリードをマウスゲノム(mm9、NCBIビルド37)にアラインした。Ensembl Geneバージョン67のアノテーションを、Tophatを用いた遺伝子モデルとして用いた。HTSeq(バージョン0.5.3p9)を用いてアノテーション済み遺伝子あたりのリードカウントを計算し、カスタムRスクリプトを用いて、FPKM(fragments detected per kilobase per million of reads)の数を計算することによって、各遺伝子の発現レベルを定量化した。2つの生物学的複製の平均FPKM値に基づいて、遺伝子を発現レベルのビンに割り当てた。DESeq2(バージョン1.6.3)を用いて差次的発現分析を実施し、調整p値<0.05の遺伝子を差次的発現と見なした。野生型及びDnmt1-conditionalノックアウト並びにマッチド野生型E10.5のPGCにおける遺伝子発現レベルを決定するために、未加工RNA-SeqリードをGSE7493824からダウンロードし、上記のように処理した。
【0108】
エピジェネティックリプログラミング中にPGCでメチル化され脱メチル化するHCP(クラスター3、図4A)は、E10.5とE14.5のPGCにおける遺伝子発現の間の活性化(α)の有意性に基づいてランク付けした(図4B)。βが倍数変化の方向性を表し(つまり、log2(FC)<0の場合、β=-1;それ以外の場合、β=+1)、γがDESeq2によって計算された調整p値を表す場合、α=β×(1-γ)である。1)野生型、Dnmt-TKO及びTet1-KO Dnmt-TKOのmESC(図6A);2)野生型+6h DMSO処理、Dnmt-TKO+6h DMSO処理、野生型+6h PRT4165処理、Dnmt-TKO+6h PRT4165処理(図6C);3)Tet1-KO E14.5 PGC対野生型E14.5 PGC(図5B);又は3)Dnmt1-CKO E10.5 PGC対野生型E10.5 PGC(図13G)において、GRR遺伝子の発現レベルを比較するために、最初に、ペアワイズ差次的発現分析を、各条件対各他の条件について、DESeq2によって実行した。各ペアワイズ差次的発現検定では、各遺伝子に統計量αが割り当てられた。ここで、βがlog2(FC)を表し、γがDESeq2によって計算された調整p値を表す場合、α=β×(1-γ)である。その後、αに基づいてランク付けされた遺伝子リストを、GRR遺伝子セットとGSEAホールマーク遺伝子セットの組合わせの全般のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを検定するための遺伝子セット濃縮分析(GSEA)に使用し、その後、GSEA FWER調整p値を使用した。生殖系列リプログラミング応答性遺伝子とPGCにおいてPRC1によって抑制された遺伝子(図6B)の重複については、E11.5及び/又はE12.5 PRC1-KO PGCにおいてアップレギュレートされたコールされた遺伝子のリストを、26からダウンロードした。
【0109】
GRR遺伝子の分類(図14、表1)のために、最初にペアワイズ差次的発現分析を実施した。5mCリプログラミング依存GRR遺伝子を、1)Dnmt-TKO対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT、及びDnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT+PRC1阻害剤においてアップレギュレートされ、2)WT+PRC1阻害剤対WTではアップレギュレートされない遺伝子として定義した。PRC1リプログラミング依存GRR遺伝子を、1)WT+PRC1阻害剤対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT、及びDnmt-TKO+PRC1阻害剤対Dnmt-TKOにおいてアップレギュレートされ、2)Dnmt-TKO対WTではアップレギュレートされない遺伝子として定義した。5mC/PRC1リプログラミング依存GRR遺伝子を、以下のいずれかの遺伝子として定義した:1)WT+PRC1阻害剤対WT、Dnmt-TKO対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対Dnmt-TKO、及びDnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT+PRC1阻害剤においてアップレギュレートされる遺伝子;又は、2)Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対Dnmt-TKO、及びDnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT+PRC1阻害剤においてアップレギュレートされ、WT+PRC1阻害剤対WT及びDnmt-TKO対WTではアップレギュレートされない遺伝子。5mC/PRC1リプログラミング非依存又は不足のGRR遺伝子を、Dnmt-TKO対WT、Dnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT及びDnmt-TKO+PRC1阻害剤対WT+PRC1阻害剤、及びWT+PRC1阻害剤対WTではアップレギュレートされない遺伝子として定義した。これらの5つのクラスのうち1つに該当する遺伝子は、信頼度の低い分類(l.c.c.)遺伝子として記載した。
【0110】
免疫蛍光法によるTet1及び5mC/5hmCの検出
【0111】
最初に、胚幹(E10.5)又は生殖隆起(E12.5/E13.5)を、4℃で30分間、2%PFA(PBS中)で固定した。固定後、組織をPBSで10分間3回洗浄し、次にPBS中15%スクロース中で一晩インキュベートした。翌日、PBS中1%BSAで洗浄した後、組織をOCT Embedding Matrix(Thermo Scientific Raymond Lamb)に包埋し、液体窒素を用いて凍結した。その後、サンプルを-80℃で保存した。Leica CM 1950クライオスタットを用いて、凍結した包埋組織から10μmの切片を切り出した。切片をポリリジンスライド(Thermo Scientific)に定着させ、PBS中2%PFAで3分間、後固定した。
【0112】
Tet1の検出のために、切片をPBSで5分間3回洗浄した。0.1%Triton X-100を含む1%BSA/PBSで30分間室温でインキュベートした後、切片を同じ緩衝液中で、リストされた1次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。続いて、0.1%Triton X-100を含む1%BSA/PBSで切片を5分間3回洗浄し、同じ緩衝液中で2次抗体と暗所で室温で1時間インキュベートした。2次抗体のインキュベーションの後、PBSで5分間3回洗浄した。次に、DNAをDAPI(100ng/ml)で染色した。最後にPBSで10分間洗浄した後、切片をVectashield(Vector Laboratories)でマウントした。
【0113】
5hmC/5mCの検出のために、切片をPBSで5分間3回洗浄した。固定後の切片を、最初に0.5%Triton X-100(1%BSA/PBS中)で30分間透過処理し、続いて、1%BSA/PBS中のRNase A(10mg/ml;Roche)で、37℃で1時間処理した。PBSで5分間3回洗浄した後、切片を37℃で10~20分間4N HClでインキュベートして、ゲノムDNAを変性させ、その後PBSで10分間3回洗浄した。0.1%Triton X-100を含む1%BSA/PBSで30分間室温でインキュベートした後、切片を同じ緩衝液中で、リストされた1次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。続いて、0.1%Triton X-100を含む1%BSA/PBSで切片を5分間3回洗浄し、同じ緩衝液中で2次抗体と暗所で室温で1時間インキュベートした。2次抗体のインキュベーションの後、PBSで5分間3回洗浄した。次に、DNAをヨウ化プロピジウム(PI)(0.25mg/ml)で染色した。最後にPBSで10分間洗浄した後、切片をVectashield(Vector Laboratories)でマウントした。
【0114】
この研究では、以下の1次抗体を使用した:抗SSEA1(P.Beverly博士からG.Durcova Hills博士を介して贈与);抗MVH(Abcam 27591又はAbcam 13840);抗5hmC(Active motif 39791)、抗5mC(Diagenode C15200081-100);抗Tet1(GeneTex GTX125888);抗GFP(Abcam 5450)。この研究では、以下の2次抗体を使用した:Alexa Fluor647ヤギ抗マウスIgM(Invitrogen A21238);Alexa Fluor488ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen A11008);Alexa Fluor405ヤギ抗マウスIgG1:300(Invitrogen A31553);AlexaFluor488ヤギ抗マウスIgG1:300(Invitrogen A11001);Alexa Fluor405ヤギ抗ウサギIgG1:300(Invitrogen A31556);Alexa Fluor568ロバ抗ウサギIgG(Invitrogen A10042);Alexa Fluor488ロバ抗ヤギIgG(Invitrogen A11055)。
【0115】
遺伝子座特異的バイサルファイトシーケンシング
【0116】
ゲノムDNAのバイサルファイト処理は、Imprint DNA修飾キット(Sigma)を用いて実施した。Daz1プロモーターのセミネステッド増幅には、以下のプライマーを使用した:F1:GATTTTTGTTATTTTTTAGTTTTTTTAGGAT;F2:TTTATTTAAGTTATTATTTTAAAAATGGTATT;R:AGAAACAAGCTAGGCCAGCTGAGAGAATTCT。IG-DMR ICRのセミネステッド増幅には、以下のプライマーを使用した:F1:GTGTTAAGGTATATTATGTTAGTGTTAGG;F2:ATATTATGTTAGTGTTAGGAAGGATTGTG;R:TACAACCCTTCCCTCACTCCAAAAATT。Peg3 ICRのネステッド増幅には、以下のプライマーを用いた:F1:TTTTTAGATTTTGTTTGGGGGTTTTTAATA;F2:TTGATAATAGTAGTTTGATTGGTAGGGTGT;R1:AATCCCTATCACCTAAATAACATCCCTACA;R2:ATCTACAACCTTATCAATTACCCTTAAAAA。メチル化レベルは、重複バイサルファイト配列を除外したデフォルト設定を用いて、QUMAによって評価した。
【0117】
質量分析
【0118】
100~2,000のFACSソートPGCからのゲノムDNAを、製造元の指示に従いZR-Duet DNA/RNA Miniprepキット(Zymo Reasearch)を用いて抽出し、LC/MSグレードの水で溶出した。NEBが提供する消化酵素ミックスを用いて、DNAをヌクレオシドに消化した。既知量の合成ヌクレオシドと消化DNAで作られた希釈系列に、同量の同位体標識ヌクレオシド(T.Carell博士(LMU、ドイツ)から提供)をスパイクし、UHPLC1290システム(Agilent)とAgilent 6490トリプル四重極質量分析計を用いて、Agilent RRHD Eclipse Plus C18 2.1×100mm 1.8uカラムで分離した。個々のヌクレオシドの量を計算するために、同位体標識されたヌクレオシドに対する標識されていないヌクレオシドの比率を表す標準曲線を生成し、ピーク面積値を対応する量に変換するために使用した。定量化の閾値は、10を超える信号対雑音比(ピークツーピーク法で計算)である。
【0119】
ウエスタンブロット法
【0120】
mESCを、RIPA緩衝液(150mM塩化ナトリウム、1.0%Triton X-100、0.5%デオキシ塩素酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50mM Tris pH8.0)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche、11 697 498 001)中で超音波処理することによって溶解した。細胞片を14000gで5分間、4℃で遠心分離することによって除去した。BCAタンパク質アッセイを用いて、タンパク質を定量化した(Thermo、23227)。2μg(H2A及びH2Aubの場合)又は20μg(Tet1の場合)の各タンパク質抽出物を15%又は8%SDSポリアクリルアミドゲルにロードし、電気泳動後にPVDF膜に転写した。膜を5%BSAで1時間ブロックし、次に、以下の希釈率で1次抗体と4度で一晩インキュベートした:抗H2A抗体(Abcam、18255)1:2000;抗ユビキチンH2A抗体(Cell Signaling 8240)1:2000;抗Tet1抗体[N1](GeneTex GTX125888)1:1000;抗ラミンB抗体(C20)(Santa Cruz Biotechnologies、sc-6216)1:10000。ロバ抗ウサギIgG-HRP(Santa Cruz Biotechnologies、sc-2077)又はロバ抗ヤギIgG-HRP(Santa Cruz Biotechnologies、sc-2056)2次抗体を、室温で1時間インキュベートした。Luminata Crescendo Western HRP基質(EMD Millipore)を用いて、ブロットを展開した。
【0121】
参考文献
【0122】
アルファベット順の参考文献:
【0123】
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【0126】
上記で参照された全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16
図17