(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240819BHJP
G01N 25/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N25/00 Q
(21)【出願番号】P 2021091688
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和男
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-182753(JP,A)
【文献】特開平09-105768(JP,A)
【文献】実開平05-092700(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第115405199(CN,A)
【文献】中国実用新案第203769594(CN,U)
【文献】中国実用新案第206540808(CN,U)
【文献】中国実用新案第207978445(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と扉とに囲まれた領域の一部又は全部に位置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節可能な環境試験装置において、
前記本体部の天井面側であって、前記扉の近傍に露受け部材があり、
前記露受け部材は、上面が開口する凹部を有し、当該凹部は前記物品配置室の幅方向にのびており、前記凹部には前記幅方向にのびる二つの側面壁があり、当該二つの側面壁のうち少なくともいずれか一方に通風口が設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
前記通風口は複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記通風口は、前記凹部の底面から離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記本体部と前記扉との間に空隙部があり、前記露受け部材の一部が前記空隙部側にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記露受け部材は、前記幅方向の端部のうち少なくとも一方の端部が、前記物品配置室の側面の近傍にあり、前記端部側において前記側面壁に欠落部があることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記二つの側面壁の双方に前記通風口が設けられ、一方の前記側面壁に設けられた前記通風口の位置と、他方の前記側面壁に設けられた前記通風口の位置が相違することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項7】
送風手段を有し、当該送風手段によって、前記物品配置室の奥側から前記扉側に向かって送風されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品配置室の内部に所望の環境を形成することができる環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の性能や耐久性を調べる装置として、環境試験装置が知られている。また環境試験装置は、薬品や食品の安定性試験に使用される場合もある。なお安定性試験には、長期保存試験、加速試験及び苛酷試験の3種類がある。
環境試験装置は、試験室(物品配置室)を有しており、温度環境(例えば、高温や低温)や湿度環境(例えば、高湿度や低湿度)等の所定の環境を試験室内に人工的に作り出すことができるものである。
一般的な環境試験装置は、本体部と扉とを有し、本体部と扉によって囲まれた空間の一部又は全部が試験室として構成される。本体部は少なくとも一面が開放されており、扉が当該開放部を覆うように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境試験装置の試験室(物品配置室)は、一般に断熱壁で構成される本体部と扉で囲われて構成されている。しかしながら本体部と扉との境界部分は、構造上、断熱性能が他の領域に比べて劣る傾向にある。
そのため、扉の近傍に位置する本体部の一部分に結露が生じる場合がある。例えば試験室内を高温高湿環境に調節した場合、本体部内の温度及び湿度は、外部よりも高いものとなる。そして本体部と扉との境界部分は断熱性が劣るので、外部の気温の影響により、境界部分近傍の本体部の内壁の温度が他の領域よりも低くなり、境界部分近傍にある空気が境界部分近傍の本体部の内壁で冷却される。その結果、本体部と扉との境界部分近傍の本体部の内壁に結露が生じることとなる。
【0005】
そのため使用者が扉を開いたときに、試験室の天井からしずくが落ちる場合があり、しずくが使用者に当たったり、しずくが目の前に落ちたりして、使用者に不快感を与える場合がある。また落下したしずくが、被試験物等の物品にかかる場合もある。
【0006】
本発明は、従来技術の上記した課題を解決するものであり、しずくの落下を抑制することができる環境試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、本体部と扉とに囲まれた領域の一部又は全部に位置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節可能な環境試験装置において、前記本体部の天井面側であって、前記扉の近傍に露受け部材があり、前記露受け部材は、上面が開口する凹部を有し、当該凹部は物品配置室の幅方向にのびており、前記凹部には前記幅方向にのびる二つの側面壁があり、当該二つの側面壁のうち少なくともいずれか一方に通風口が設けられていることを特徴とする環境試験装置である。
【0008】
本態様の環境試験装置は、物品を配置する物品配置室を有し、当該物品配置室を所定の環境に調節することができる。
本態様の環境試験装置は、物品配置室の本体部の天井面側であって、扉の近傍に露受け部材がある。露受け部材は、上面が開口する凹部を有し、当該凹部は物品配置室の幅方向にのびている。そのため結露水を受けることができる。
また本態様で採用する露受け部材は、凹部の側面壁に通風口が設けられているので、凹部内の温度や湿度は、物品配置室内の他の領域とほぼ同じとなる。そのため、露受け部材自身の温度が物品配置室内の他の領域の温度とほぼ同じになるので、露受け部材の底面等には結露が発生しにくい。
即ち、本体部と扉との境界部分近傍の内壁に結露が発生する理由は、前記した様に、外部の気温の影響により、境界部分近傍の内壁の温度が他の領域の温度よりも低くなり、境界部分近傍にある空気が境界部分の内壁で冷却されるためである。
これに対して本態様で採用する露受け部材は、内部の温度が物品配置室内の他の領域の温度と略等しい。そのため露受け部材の底面等には結露が発生しにくい。
本態様の環境試験装置では、天井に発生する結露水を凹部で受けることによって、結露水が落下することを阻止し、且つ露受け部材自身には、結露が生じにくい。
【0009】
上記した態様において、前記通風口が複数設けられていることが望ましい。
【0010】
本態様によると、露受け部材内の環境が他の部位の環境により近いものとなる。
【0011】
上記した各態様において、前記通風口は、凹部の底面から離れた位置に設けられていることが望ましい。
【0012】
本態様の環境試験装置で採用する露受け部材は、通風口が凹部の底面から離れた位置に設けられているので、通風口から結露水が漏れにくい。
【0013】
上記した各態様において、前記本体部と前記扉との間に空隙部があり、前記露受け部材の一部が前記空隙部側にあることが望ましい。
【0014】
本態様によると、本体部と扉の境目部分に発生した結露も捕捉することができる。
【0015】
上記した態様において、前記露受け部材は、前記幅方向の端部のうち少なくとも一方の端部が前記物品配置室の側面の近傍にあり、前記端部側において前記側面壁に欠落部があることが望ましい。
【0016】
本態様の露受け部材は、端部側において前記側面壁に欠落部があるので、端部をより物品配置室の側面に近づけることができる。
【0017】
上記した態様において、前記二つの側面壁の双方に前記通風口が設けられ、一方の前記側面壁に設けられた前記通風口の位置と、他方の前記側面壁に設けられた前記通風口の位置が相違することが望ましい。
【0018】
本態様によると、一方の側面壁の通風口から入った送風が、対向する側面壁と衝突し、送風の一部が凹部の長手方向に沿って流れる。その結果、凹部内に溜まった結露水の移動が促進される。
【0019】
上記した態様において、送風手段を有し、当該送風手段によって、物品配置室の奥側から扉側に向かって送風されることが望ましい。
【0020】
本態様によると、通風口に対して直接的に送風される。そのため凹部内が通風状態となり、天井に付着した結露水の剥離が促進される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の環境試験装置は、結露水の落下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の斜視図である。
【
図2】
図1の環境試験装置の物品配置室周辺を概念的に示す断面図である。
【
図3】(a)は、
図2のA-A断面図であり、(b)は、その天井壁と右側壁の境界部分の拡大図であり、(c)は、(b)に図示された露受け部材を破断して表示した拡大図である。
【
図4】(a)は露受け部材を上方から観察した斜視図であり、(b)は、露受け部材を天地逆にして観察した斜視図である。
【
図5】(a)、(b)は、
図1の環境試験装置の扉と本体部の境界部分近傍の断面図であり、結露水が除去されて流れる様子を示す。
【
図6】露受け部材の平面断面図であり、矢印は露受け部材内における風の流れを示す。
【
図7】(a)、(b)は、露受け部材の変形例の断面図である。
【
図8】(a)、(b)は、本発明の他の実施形態の環境試験装置の扉と本体部の境界部分近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の環境試験装置1について説明する。
図1、
図2、
図3に示すように、本実施形態の環境試験装置1は、断熱壁2で形成された本体部3を有している。本体部3は、前面側に開口部11を有する筐体である。本体部3の開口部11は、開口と枠部で構成される。
【0024】
本体部3の開口部11の枠部は、
図1、
図2の様に奥行き方向の位置が異なる外枠部42と内枠部43を有している。
外枠部42は、本体部3の筐体全体の間口であり、本体部3の正面壁である。内枠部43は、外枠部42よりも小さく、本体部3のやや奥まった位置にある。
本体部3は、内枠部43よりも奥側の領域に内槽を有している。本体部3の内槽は、天井壁5、底壁6、奥壁7、及び左右側壁8、10を有している。天井壁5と左右の側壁8、10の接合部は、
図3の様に、なだらかな円弧状部17となっている。底壁6と左右の側壁8、10の接合部も、なだらかな円弧状部17となっている。ただし、これら接合部は、円弧状に限定されず、テーパー形状であってもよい。また、直交していてもよい。
図1、
図2の様に本体部3の内枠部43には、本体側パッキン45が取り付けられている。
【0025】
本体部3の開口部11には扉15が設けられている。扉15についても断熱性を有している。
扉15は、正面形状が四角形である。扉15の裏面側(本体部3側)は、辺部にパッキン取付け領域46がある。扉15の中央部は、パッキン取付け領域46よりも後方に張り出した膨出部63となっている。
パッキン取付け領域46には、扉側パッキン47が設けられている。
扉15は開き戸であり、
図1の様に、一辺側がヒンジ16を介して本体部3に支持されている。
扉15は、本体側パッキン45及び扉側パッキン47を介して本体部3の開口部11と接している。即ち、扉15のパッキン取付け領域46が扉側パッキン47を介して本体部3の外枠部42と接しており、扉15の膨出部63の外周近傍が、本体側パッキン45を介して本体部3の内枠部43と接している。
従って扉15の膨出部63と、本体部3の内枠部43の間には、本体側パッキン45が介在される空隙部48がある。
【0026】
本実施形態では、本体部3及び扉15によって断熱槽が形成されている。本体部3の内槽側であって断熱槽の内部には
図2の様に仕切り壁20があり、仕切り壁20によって、断熱槽内が物品配置室22と空調部25に分かれている。物品配置室22は、試験室として使用される。物品配置室22には、被試験物(物品)が載置される。
【0027】
本実施形態では、本体部3と扉15とに囲まれた領域の一部が物品を配置する物品配置室22となっている。より具体的には、断熱槽内において、扉15と仕切り壁20の間の空間が物品配置室22である。
本発明はこの構成に限定されるものではなく、本体部3と扉15とに囲まれた領域の全部が物品配置室であってもよい。この場合別途の空調機器から、温度等が調節された空気が、物品配置室に供給されることとなる。
仕切り壁20には、上下の端部に開口が設けられている。上部の開口は空気吹き出し部26として機能し、下部の開口は空気導入部23として機能する。
物品配置室22と空調部25は、空気吹き出し部26と空気導入部23の二か所で連通している。
【0028】
空調部25は、物品配置室22と環状に連通する空調通風路であり、内部に空調機器(環境調整機器)27と送風機30が配置されている。空調機器27は、加湿装置31、冷却装置32及び加熱装置33によって構成されている。
送風機30を起動すると、物品配置室22内の空気が空気導入部23から空調部25内に導入される。そして空調部25が通風状態となり、空調機器27に空気が接触して熱交換や湿度調整がなされ、空気吹き出し部26から物品配置室22内に調整後の空気が吹き出される。
【0029】
また空気吹き出し部26の近傍に、温度センサー37と湿度センサー38が設けられている。
温度センサー37と湿度センサー38の信号は、図示しない制御装置に入力される。そして当該制御装置で、温度センサー37と湿度センサー38の各検出値と各設定値が比較される。
環境試験装置1を使用する際には、送風機30を運転して空調部25内を通風状態とし、温度センサー37及び湿度センサー38の検出値が設定環境の温度及び湿度に近づく様に、空調機器27が制御される。
即ち送風機30を運転することによって、物品配置室22内の空気が、空気導入部23から空調部25に導入され、空調部25内の空調機器27を通過して温度・湿度が整えられる。そして温度・湿度が調整された空気が、空気吹き出し部26から物品配置室22に戻され、物品配置室22内に所望の温度・湿度の環境が作られる。
【0030】
次に、本実施形態の環境試験装置1の特徴的構成について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、物品配置室22の本体部3側の天井壁(天井面)5であって、扉15の近傍に、露受け部材50の一部又は全部が設けられている。
露受け部材50は、
図4の様な上面が開口する凹部51を有する溝状の部材である。即ち露受け部材50は、第1側面壁52、底面壁53、第2側面壁55及び取り付け壁56を有している。露受け部材50は、取り付け姿勢を基準として物品配置室22の幅方向の両端面が開口している。
第1側面壁52は、取り付け姿勢を基準として正面壁であって垂直壁となる壁である。第2側面壁55は、第1側面壁52と平行に配される壁である。底面壁53は、第1側面壁52と第2側面壁55の下辺同士を繋ぐものである。
取り付け壁56は、第2側面壁55の上辺から水平に張出した壁面であり、取り付け姿勢を基準として物品配置室22の奥行方向の幅が狭い壁面である。
本実施形態では、露受け部材50は、第1側面壁52、底面壁53及び第2側面壁55で三面が囲われた凹部51を有し、当該凹部51は直線的にのびていて溝状を呈している。
【0031】
第1側面壁52には、通風口57が設けられている。第2側面壁55にも、通風口58が設けられている。
通風口57、58はいずれも長孔状である。
【0032】
図6の様に、第1側面壁52の通風口57の位置と、第2側面壁55の通風口58の位置は左右方向に合致せず、両者は千鳥配置となっている。
即ち通風口57は、第1側面壁52の長手方向に一定の間隔で設けられている。通風口58も、第2側面壁55の長手方向に一定の間隔で設けられている。
しかしながら
図6の様に、両者の左右方向の位置はずれており、通風口57に対向する位置に通風口58はない。
【0033】
図5の様に、通風口57、58の下端部は、底面壁53の上面(内面)よりも十分に上の位置にある。そのため、
図5の様に、底面壁53の上面と、第1側面壁52及び第2側面壁55の一部であって通風口57、58の下端部がある位置まで延びる壁によって、下部凹部60が構成される。
下部凹部60は、水路として機能する。
なお
図5は、送風の流れを説明するために、第1側面壁52に設けられた通風口57と第2側面壁55に設けられた通風孔58が対向している様に図示しているが、前記したように、通風口57、58は、千鳥状に配置されている。そのため、実際には、通風口57、58は対向していない。
図2についても同様に、第1側面壁52に設けられた通風口57と第2側面壁55に設けられた通風孔58が対向している様に図示しているが、実際には、通風口57、58は対向していない。
【0034】
図4の様に、第1側面壁52の両端部および第2側面壁55の両端部には欠落部70がある。即ち第1側面壁52と第2側面壁55の上辺61、62は、大半が直線状であるが、両端部が斜辺65となっている。そのため第1側面壁52の両端部および第2側面壁55の両端部に、三角形の欠落部70が形成されている。
欠落部70の形状は、三角形に限定されるものではない。即ち第1側面壁52と第2側面壁55の両端部に位置する上辺61、62は、斜辺に限定されるものではなく、例えば階段状であってもよく、円弧状であってもよい。
なお、欠落部70は必須ではなく、欠落部70は無くてもよい。また第1側面壁52や第2側面壁55の長手方向の一方の端部だけに欠落部70があってもよい。
【0035】
露受け部材50は上面が開口しており、天井から落下する結露を受け止めて集め、物品配置室22の両側壁8、10側に水を流す溝を構成する部材である。
露受け部材50は、
図2の様に、扉15の近傍に位置する物品配置室22の天井壁5に取り付けられている。
具体的には、露受け部材50は、物品配置室22内において、取り付け壁56が本体部3の天井壁5に図示しないねじ等によって固定されている。従って、露受け部材50の第1側面壁52は扉15に対向し、第2側面壁55は仕切り壁20に対向する。
【0036】
取り付けられた状態において、露受け部材50は、本体部3の内枠部43の上辺と平行となっている。露受け部材50の長手方向の両端は、
図3の様に、本体部3の左右の側壁8、10の近傍に至っている。
本実施形態では、天井壁5と左右の側壁8、10の接合部がなだらかな円弧状部17となっている。
これに対して、露受け部材50の第1側面壁52の両端部および第2側面壁55の両端部には欠落部70がある。そのため
図3の様に、第1側面壁52及び第2側面壁55の両端部が、円弧状部17と干渉せず、露受け部材50の底面壁53は、本体部3の左右の側壁8、10に極めて近い位置にある。
【0037】
露受け部材50の第1側面壁52は、
図5の様に、本体部3の内枠部43よりも扉15側に突出している。即ち、露受け部材50の第1側面壁52は、本体部3の内槽(天井壁5)よりも扉15側に突出している。
本実施形態の環境試験装置1では、扉15の膨出部63の外周近傍が、本体側パッキン45を介して本体部3の内枠部43と接しており、扉15の膨出部63と本体部3の内枠部43の間には、空隙部48がある。
露受け部材50の第1側面壁52は、本体部3の内枠部43よりも扉15側に突出しており、露受け部材50の前端は、空隙部48に至っている。空隙部48には、本体側パッキン45があるので、露受け部材50の凹部51の一部は、本体側パッキン45の下方に位置する。
【0038】
環境試験を実施する際には、物品配置室22内を高温高湿環境に調節する。
前記した様に、本体部3と扉15との境界部分は断熱性が劣るので、外部の気温の影響により、物品配置室22の境界部分の内壁の温度が低くなり、境界部分の空気が冷却される。その結果
図5(a)の様に、本体部3と扉15との境界部分近傍の天井壁5に結露100が生じる。
結露100が成長すると、天井壁5から離れて落下し、下の露受け部材50の凹部51に捕捉される。そして結露100が集まった水101は、凹部51を長手方向に流れ、物品配置室22の側壁8、10の近傍に至る。
集められた水101は、
図3(c)の様に、露受け部材50から本体部3の側壁8、10に移り、本体部3の側壁8、10を伝って下の床面(底壁6)に流れ落ちる。そして図示しない排水口から外部に排水される。
【0039】
本実施形態の環境試験装置1は、結露100の自然落下を待つだけではなく、結露100の落下を促進することが可能である。さらに本実施形態の環境試験装置1は、上記したような水101の自由な流れを待つだけではなく、水101の流れを促進することが可能である。
以下、説明する。
本実施形態では、仕切り壁20に設けられた空気吹き出し部26から温度等が調節された空気が、物品配置室22に供給される。本実施形態では、空気吹き出し部26は、天井壁5の近傍にあるから、空気吹き出し部26から吹き出された送風は、天井壁5に沿って流れる。
ここで、露受け部材50の第2側面壁55は、仕切り壁20と対向しており、第2側面壁55の通風口58は、空気吹き出し部26に向かって開口している。
そのため空気吹き出し部26から吹き出された送風は、直接的に通風口58から露受け部材50の凹部51内に入り、反対側の通風口57から抜ける。その結果、凹部51内が通風環境となり、風に吹かれて結露100が落下する。
【0040】
また空気吹き出し部26側の通風口58から導入された送風の多くは、
図6の様に第1側面壁52の内面と衝突して、向きを変え、凹部51の長手方向に流れる。その結果、凹部51を流れる水101に対して順方向の送風が発生し、水101の側壁8、10側に向かう流れを促進する。
【0041】
また露受け部材50自身に結露が生じる懸念は低い。
即ち凹部51内は通風環境であり、物品配置室22の空気が凹部51内を通り抜ける。そのため凹部51内の温度は、物品配置室22内の他の領域の温度と略同じである。また、露受け部材50の第2側面壁55は、本体部3の天井壁5から物品配置室22内に突出しており、直接的に風が当たる。露受け部材50の底面壁53は、本体部3の天井壁5から離れており、本体部3の天井壁5からの熱影響を受けにくい。
露受け部材50の表面温度は、物品配置室22内の他の領域の温度と略同じである。そのため露受け部材50の表面で空気が冷却されることはなく、露受け部材50の表面に結露が生じる懸念は低い。
【0042】
また本実施形態では、露受け部材50の一部が、本体部3から扉15側に突出しており、露受け部材50の凹部51の一部は、本体側パッキン45の下方に位置する。
そのため、本実施形態では本体側パッキン45に生じた結露も露受け部材50の凹部51で受けることができる。
【0043】
本実施形態の環境試験装置1によると、開口部11の近傍の天井壁5の結露が露受け部材50で捕捉されるので、使用者にしずくが落下することが抑制される。また内部の物品に水がかかることも抑制される。
【0044】
以上説明した露受け部材50では、凹部51の断面形状が四角形であるが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、
図7(a)に示す様な三角形に近いものでもよく、
図7(b)に示す様な五角形、その他半円形等であってもよい。
【0045】
以上説明した露受け部材50では、第1側面壁52と第2側面壁55が略同じ形状である例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、
図8(a)に示す露受け部材80のように、第1側面壁52の高さを第2側面壁55の高さよりも低くしてもよい。
また、
図8(b)に示す露受け部材81のように、第1側面壁52の上部側を外側に曲げた形状としてもよい。
図8(a)、
図8(b)に示す実施形態によると、第1側面壁52と天井壁5等との間に隙間82が形成される。そのため、本体側パッキン45に生じた結露をより効率よく捕捉することができる。
隙間82は、空気吹き出し部26側の第2側面壁55に設けられてもよい。
【0046】
以上説明した実施形態では、露受け部材50は、取り付け壁56が本体部3の天井壁5に対してねじ等によって固定されている。
露受け部材50の固定手段及び固定箇所は、天井壁5に限定されるものではない。
固定手段は、鋲や溶接、はんだ付け等であってもよい。
露受け部材50の取り付け箇所は、左右側壁8、10の天井壁5近傍の位置であってもよい。即ち、露受け部材50の長手方向の両端部が、本体部3の左右側壁8、10にねじ等で固定され、露受け部材50が、本体部3の天井面側であって、扉15の近傍に設置された構成であってもよい。
【0047】
以上説明した露受け部材50は、長手方向の両端が開口し、長手方向の両端から水を流れ落とす構造であるが、本発明はこの構造に限定されるものではない。例えば、露受け部材50の長手方向の一端側を塞ぎ、他端側からのみ水101を落としてもよい。
或いは、露受け部材50の長手方向の両端を塞ぎ、露受け部材50の底面壁53に排水口を設け、当該排水口から水101を落としてもよい。
この構成の露受け部材は、上面だけが開口する溝の様な形状となり、底部に排水口が設けられた構造である。
【0048】
以上説明した実施形態では、露受け部材50の一部が、本体部3の内枠部43よりも扉15側に突出しており、露受け部材50の前端が空隙部48に至っているが、露受け部材50の全部が、本体部3の内槽内に収まっていてもよい。
【0049】
以上説明した実施形態では、露受け部材50の第1側面壁52と第2側面壁55の双方に通風口57、58を設けたが、いずれか一方の側面壁だけに通風口を設けてもよい。例えば、空気吹き出し部26側の第2側面壁55だけに通風口58を設けてもよい。この場合、空気吹き出し部26からの送風は、第2側面壁55の通風口58から露受け部材50内に入り、長手方向の両端から抜ける。
逆に、扉15側の第1側面壁52だけに通風口57を設けてもよい。この場合、空気吹き出し部26からの送風は、第2側面壁55の長手方向の両端から露受け部材50内に入り、通風口57から抜ける。
【0050】
以上説明した実施形態では、第1側面壁52と第2側面壁55の双方に、通風口57、58をそれぞれ複数個設けたが、通風口57、58の数は限定されるものでなく、1個でもよい。また、通風口57、58の形状や大きさも限定されるものではない。
通風口57、58が1個であっても、下部凹部60に相当する部位があることが望ましい。
【0051】
上記した環境試験装置1は、本体部3が奥行き方向の位置が異なる外枠部42と内枠部43を有し、対する扉15は膨出部63を有している。
この構成は、環境試験装置の一例を示したものに過ぎず、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば本体部3は、奥行き方向の位置が異なる複数の枠部から形成されていなくてもよい。また扉は、膨出部を有していなくてもよい。即ち本体部や扉は、フラットな形状であってもよい。
例えば本体部の開口近傍が外枠部42だけを有するフラットな形状であり、本体部の開口部の外面にパッキンが付いており、扉15の本体側の面が当該パッキンと接する構造であってもよい。
組合せとしては、少なくとも次の2つが考えられる。
(1)本体部の枠部と扉が両方ともフラットである構造。
(2)本体部の枠部がフラットで、扉に膨出部がある。
上記したいずれの場合であっても、パッキンは一つでも二つ以上でもよく、パッキンの設置位置は、本体部の枠側でもよく、扉側であってもよい。
【0052】
上記した実施形態では、第1側面壁52の通風口57の位置と、第2側面壁55の通風口58の位置がずれているが、両者が合致していてもよい。あるいは一部だけが重なる位置関係にものであってもよい。
通風口57、58の形状や位置が異なっていてもよい。例えば、通風口57が設けられた位置の高さと、通風口58が設けられた位置の高さとが違っていてもよい。通風口57に、形状や位置が異なるものが混在していてもよい。通風口58に、形状や位置が異なるものが混在していてもよい。
【0053】
以上説明した実施形態の扉15は、開き戸であるが、本発明は、引き戸を備えた環境試験装置にも応用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 環境試験装置
3 本体部
5 天井壁
8、10 側壁
15 扉
17 円弧状部
20 仕切り壁
22 物品配置室
26 空気吹き出し部
30 送風機
42 外枠部
43 内枠部
45 本体側パッキン
48 空隙部
50、80、81 露受け部材
51 凹部
52 第1側面壁
53 底面壁
55 第2側面壁
57、58 通風口
65 斜辺
70 欠落部