IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チルドレンズ メディカル センター コーポレーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】がんを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20240819BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240819BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240819BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240819BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20240819BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALN20240819BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20240819BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P43/00 121
A61P35/04
A61P35/02
A61P35/00
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K39/395 D
A61K39/395 P
A61K47/60
A61K31/4745
A61K31/506
A61K31/5517
A61K31/5377
A61K31/404
C12N15/113 130Z
C12N9/99 ZNA
C12Q1/48 Z
C12Q1/68
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021500545
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019041555
(87)【国際公開番号】W WO2020014581
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】62/697,053
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/751,129
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/839,912
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンゼ ローラ
【審査官】清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536307(JP,A)
【文献】特表2016-510044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0004173(US,A1)
【文献】特表2008-509978(JP,A)
【文献】J.Pharmacol.Pharmacother.,2016年,Vol.7,pp.62-71
【文献】LAURA HINZE; ET AL,SYNTHETIC LETHALITY OF WNT PATHWAY ACTIVATION AND ASPARAGINASE IN DRUG-RESISTANT ACUTE LEUKEMIAS,BIORXIV,2018年09月12日,P1-33,https://doi.org/10.1101/415711
【文献】Mol.Cancer Ther.,2016年,Vol.15, No.7,pp.1485-1494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/46
A61P 43/00
A61P 35/04
A61P 35/02
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 39/395
A61K 47/60
A61K 31/4745
A61K 31/506
A61K 31/5517
A61K 31/5377
A61K 31/404
C12N 15/113
C12N 9/99
C12Q 1/48
C12Q 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギナーゼを含む、がんを有する対象におけるがんを処置するための薬学的組成物であって、GSK3αを阻害する作用物質と組み合わせて該対象に投与され、該作用物質が、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418からなる群より選択される小分子であり、該がんがアスパラギナーゼに耐性である、薬学的組成物。
【請求項2】
GSK3αを阻害する作用物質を含む、がんを有する対象におけるがんを処置するための薬学的組成物であって、アスパラギナーゼと組み合わせて該対象に投与され、該作用物質が、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418からなる群より選択される小分子であり、該がんがアスパラギナーゼに耐性である、薬学的組成物。
【請求項3】
GSK3αを阻害する作用物質およびアスパラギナーゼを含む、がんを有する対象におけるがんを処置するための薬学的組成物であって、該作用物質が、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418からなる群より選択される小分子であり、該がんがアスパラギナーゼに耐性である、薬学的組成物。
【請求項4】
前記がんが、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、およびリンパ腫からなるリストから選択される、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記がんが固形腫瘍である、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記アスパラギナーゼが、L-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)、SC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)、およびエルウィニア(Erwinia)アスパラギナーゼ(エルウィナーゼ)からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記小分子がBRD0705である、請求項1~7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
GSK3αを阻害することが、GSK3αの発現レベルおよび/または活性を阻害することである、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項10】
GSK3αの前記発現レベルおよび/または活性が、適切な対照と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上阻害される、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記対象に抗がん療法が以前に実施されている、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記対象に抗がん療法が以前に実施されていない、請求項1~3のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
対象ががんを有すると診断されている、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
アスパラギナーゼを含む、がんを有する対象におけるがんを処置するための薬学的組成物であって、該がんがGSK3αの阻害をもたらす変異を含み、該変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在し、該がんが固形腫瘍である、薬学的組成物。
【請求項15】
前記変異が、がん細胞においてWNTシグナル伝達経路の活性化をもたらす、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子の発現を変化させる、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記がんが、がん腫、黒色腫、または腫からなるリストから選択される、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記がんが転移性である、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記変異が、前記対象から得られた生体サンプルにおいて同定されている、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、請求項20記載の薬学的組成物。
【請求項22】
a. がんを有する対象から生体サンプルを得る段階;
b. 該サンプルをアッセイし、GSK3αの阻害をもたらす変異を有するとしてがんを同定する段階; および
c. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法に使用するための薬学的組成物であって、
アスパラギナーゼを含み、該変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在する、薬学的組成物。
【請求項23】
a. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして対象を同定するアッセイ法の結果を受け取る段階; および
b. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法に使用するための薬学的組成物であって、
アスパラギナーゼを含み、該変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在する、薬学的組成物。
【請求項24】
前記がんが固形腫瘍である、請求項22または23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、請求項22または23記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記がんが転移性である、請求項22または23記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、請求項22記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月12日付で出願された米国仮特許出願第62/697,053号; 2018年10月26日付で出願された米国仮特許出願第62/751,129号; および2019年4月29日付で出願された米国仮特許出願第62/839,912号の米国特許法第119条(e)項の下での恩典を主張するものであり、その各々の内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、がんの処置に関する。
【0003】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01 CA193651の下で政府支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
白血病は、診断の約30%を占める最も一般的な小児がんである。2つの主要なサブタイプ; 急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)がある。AMLはあまり一般的ではなく、小児白血病の診断のおよそ18%を占めている。これらの白血病のタイプは成人にも発生し、AMLは高齢者でより一般的になる。2つのサブタイプの病因は、細胞系統と発生率および危険因子の疫学研究との両方に基づいてかなり異なる可能性が高い。ALLまたはAMLのような白血病と診断された患者の予後を改善するには、積極的化学療法が必要とされる。
【0005】
非必須アミノ酸であるアスパラギンを枯渇させる細菌酵素であるアスパラギナーゼは、急性白血病治療の不可欠な構成要素である1,2。アスパラギナーゼの抗腫瘍効果は、細胞外アスパラギンおよびグルタミンの枯渇によって引き起こされる可能性が高く、アミノ酸欠乏状態および後続のタンパク質合成阻害をもたらす。しかしながら、他の機構はまだ同定されないままである。ALLにおける有効性にもかかわらず、アスパラギナーゼは他の白血病および固形腫瘍の処置においてたまにしか使われていない。以前のインビトロ研究では、フランス-アメリカ-イギリスのサブタイプ全体で急性骨髄性白血病(AML)でのアスパラギナーゼに対するさまざまな応答が観察されている。アスパラギナーゼ耐性は、耐性の生物学的基礎が十分に理解されていない白血病患者に共通する臨床的問題のままである。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において記載される本発明は部分的に、GSK3αの阻害がアスパラギナーゼに対してがん細胞、例えば、白血病細胞を感受性化したという発見に関連している。したがって、本明細書において記載される1つの局面は、がんを有する対象にアスパラギナーゼとGSK3αを阻害する作用物質とを投与する段階を含む、がんを処置するための方法を提供する。
【0007】
いずれかの局面の1つの態様において、がんは、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、およびリンパ腫である。
【0008】
いずれかの局面の1つの態様において、がんは固形腫瘍である。
【0009】
いずれかの局面の1つの態様において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)から選択される白血病である。
【0010】
いずれかの局面の1つの態様において、がんはアスパラギナーゼに耐性である。
【0011】
いずれかの局面の1つの態様において、がんはアスパラギナーゼに耐性ではない。
【0012】
いずれかの局面の1つの態様において、アスパラギナーゼは、L-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)、SC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)、およびエルウィニア(Erwinia)アスパラギナーゼ(エルウィナーゼ)からなる群より選択される。
【0013】
いずれかの局面の1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質は、小分子、抗体、ペプチド、ゲノム編集システム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびRNAiからなる群より選択される。
【0014】
いずれかの局面の1つの態様において、小分子は、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418からなる群より選択される。いずれかの局面の1つの態様において、小分子はBRD0705である。
【0015】
いずれかの局面の1つの態様において、RNAiは、マイクロRNA、siRNA、またはshRNAである。
【0016】
いずれかの局面の1つの態様において、GSK3αを阻害することは、GSK3αの発現レベルおよび/または活性を阻害することである。例えば、GSK3αの発現レベルおよび/または活性は、適切な対照と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上阻害される。
【0017】
いずれかの局面の1つの態様において、対象に抗がん療法が以前に実施されている。
【0018】
いずれかの局面の1つの態様において、対象に抗がん療法が以前に実施されていない。
【0019】
いずれかの局面の1つの態様において、本方法は、投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断する段階をさらに含む。
【0020】
いずれかの局面の1つの態様において、本方法は、投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断するアッセイ法から結果を受け取る段階をさらに含む。
【0021】
本明細書において記載される別の局面は、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有する対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置するための方法を提供する。
【0022】
いずれかの局面の1つの態様において、変異は、がん細胞においてWNTシグナル伝達経路の活性化をもたらす。
【0023】
いずれかの局面の1つの態様において、変異は、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在する。
【0024】
いずれかの局面の1つの態様において、変異は、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子の発現を変化させる。
【0025】
いずれかの局面の1つの態様において、がんは結腸がんまたは膵臓がんである。
【0026】
いずれかの局面の1つの態様において、がんは転移性である。
【0027】
いずれかの局面の1つの態様において、投与の前に、対象は、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有するとして同定される。
【0028】
いずれかの局面の1つの態様において、変異は、対象から得られた生体サンプルにおいて同定される。いずれかの局面の1つの態様において、生体サンプルは組織サンプルまたは血液サンプルである。
【0029】
いずれかの局面の1つの態様において、がんはがん療法に耐性である。いずれかの局面の1つの態様において、がんはがん療法後に再発したものである。例示的ながん療法としては、化学療法、放射線療法、免疫療法、手術、ホルモン療法、幹細胞療法、標的療法、遺伝子療法、および精密療法(precision therapy)が挙げられる。
【0030】
本明細書において記載される別の局面は、(a) がんを有する対象から生体サンプルを得る段階; (b) サンプルをアッセイし、GSK3αの阻害をもたらす変異を有するとしてがんを同定する段階; および(c) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置する方法を提供する。
【0031】
本明細書において記載されるさらに別の局面は、(a) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして対象を同定するアッセイ法の結果を受け取る段階; および(b) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置する方法を提供する。
【0032】
定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられるいくつかの用語および語句の意味が、以下に提供される。特に明記しない限り、または文脈から暗に示されない限り、以下の用語および語句は以下に示す意味を含む。本技術の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、定義は、特定の態様を説明するのに助けるために提供するものであり、主張する本発明を限定する意図はない。特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本技術が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用法と、本明細書において提供されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、本明細書内に提供される定義が優先されるものとする。
【0033】
本明細書において用いられる場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」、または「改善」は、目的ががん、例えば白血病、結腸がん、または膵臓がんと関連した状態の進行または重症度を、反転させる、軽減する、改善する、阻害する、遅らせる、または阻止することである、治療的処置をいう。用語「処置すること」は、がんの少なくとも1つの有害作用または症状を低減することまたは軽減することを含む。処置は一般に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減される場合には、「有効」である。あるいは、疾患の進行が低減または停止される場合には、処置は「有効」である。つまり、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置がない場合に予想されるであろうものと比べて症状の進行または悪化の、休止または少なくとも緩徐化も含む。有益なまたは所望の臨床結果には、1つもしくは複数の症状の軽減、疾患の程度の縮減、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患の進行の遅延もしくは緩徐化、疾患状態の改善もしくは緩和、寛解(部分的であれ全体的であれ)、および/または検出可能であれ検出不能であれ、死亡率の減少が含まれるが、これらに限定されることはない。疾患の「処置」という用語はまた、疾患の症状または副作用からの解放の供与(待機的処置を含む)を含む。
【0034】
本明細書において用いられる場合、「投与すること」という用語は、対象への作用物質の少なくとも部分送達をもたらす方法または経路により、本明細書において開示される治療用物質(例えば、GSK3αを阻害する作用物質、および/もしくはアスパラギナーゼ)または薬学的組成物を対象の中に配置することをいう。本明細書において開示される作用物質を含む薬学的組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0035】
本明細書において用いられる場合、「対象」はヒトまたは動物を意味する。通常、動物は霊長類、げっ歯類、家畜、または狩猟動物のような脊椎動物である。霊長類には、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザル(Rhesus)が含まれる。げっ歯類には、例えば、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば、家ネコ、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥科の種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズ、およびサケが含まれる。いくつかの態様において、対象は哺乳類、例えば霊長類、例えばヒトである。用語「個体」、「患者」、および「対象」は、本明細書において互換的に用いられる。
【0036】
好ましくは、対象は哺乳類である。哺乳類はヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであることができるが、これらの例に限定されることはない。ヒト以外の哺乳類を、疾患、例えばがんの動物モデルに相当する対象として有利に用いることができる。対象は雄性または雌性であることができる。
【0037】
対象は、以前に、処置を必要としている疾患もしくは障害(例えば、がん)またはそのような疾患もしくは障害に関連した1つもしくは複数の合併症を患っているまたはそれらを有すると診断されたあるいは同定された、かつ任意で、疾患もしくは障害の処置(例えば、1つもしくは複数のがん療法)または該疾患もしくは障害に関連した1つもしくは複数の合併症の処置(例えば、1つもしくは複数のがん療法)を既に受けたものであることができる。あるいは、対象はまた、そのような疾患もしくは障害または関連した合併症を有すると以前に診断されていないものであることができる。例えば、対象は、疾患もしくは障害または疾患もしくは障害に関連した1つもしくは複数の合併症の1つもしくは複数のリスク因子を示すもの、あるいはリスク因子を示さない対象であることができる。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「作用物質」は、例えば、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに結合するか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの刺激を部分的にもしくは完全に遮断するか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化を低下させるか、抑止するか、遅延させるか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを不活性化するか、脱感受性化するか、またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性を下方制御する、分子、タンパク質、ペプチド、抗体、または核酸をいう。GSK3αを阻害する作用物質は、例えば、ポリペプチドの発現、例えば、翻訳、翻訳後プロセッシング、安定性、分解、または核もしくは細胞質局在化、あるいはポリヌクレオチドの転写、転写後プロセッシング、安定性、または分解を阻害するか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに結合するか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの刺激、DNA結合、転写因子活性もしくは酵素活性を部分的にもしくは完全に遮断するか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性化を低下させるか、抑止するか、遅延させるか、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを不活性化するか、脱感受性化するか、またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性を下方制御する。作用物質は直接的または間接的に作用することができる。
【0039】
本明細書において用いられる「作用物質」という用語は、限定されるものではないが、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどのような任意の化合物または物質を意味する。「作用物質」は、合成および天然に存在するタンパク性および非タンパク性の実体を含むがこれらに限定されない、任意の化学的な、実体または部分であることができる。いくつかの態様において、作用物質は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにそれらの修飾および組み合わせを含むがこれらに限定されない核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物である。ある種の態様において、作用物質は、化学的な部分を有する小分子である。例えば、化学的な部分には、マクロライド、レプトマイシン、および関連する天然物またはそれらの類似体を含む、非置換もしくは置換アルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分が含まれる。化合物は、所望の活性および/もしくは特性を有することが知られていてもよいか、または多様な化合物のライブラリーから選択されてもよい。
【0040】
前記作用物質は、1つまたは複数の化学クラスからの分子、例えば、有機分子であることができ、これには有機金属分子、無機分子、遺伝子配列などが含まれうる。作用物質はまた、1つまたは複数のタンパク質、キメラタンパク質(例えば関連分子もしくは相違分子の機能的に重要な領域のドメインスイッチングもしくは相同組み換え)からの融合タンパク質、合成タンパク質、または置換、欠失、挿入、および他の変種を含む他のタンパク質変種でありうる。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「小分子」という用語は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物(例えば、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を含みうるが、これらに限定されない、化学物質(chemical agent)をいう。
【0042】
本明細書において用いられる「RNAi」という用語は、干渉RNAまたはRNA干渉をいう。RNAiは、分子による特定のmRNAの破壊による選択的な転写後遺伝子サイレンシングの手段をいい、該分子は、mRNAに結合して、mRNAのプロセッシングを阻害する、例えばmRNA翻訳を阻害するか、またはmRNA分解をもたらす。本明細書において用いられる場合、「RNAi」という用語は、siRNA、shRNA、内因性マイクロRNA、および人工マイクロRNAを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの干渉RNAをいう。例えば、それは、RNAの下流プロセッシングの機構に関係なく、siRNAと以前に同定された配列を含む(すなわちsiRNAは、mRNAの切断をもたらすインビボプロセッシングの特定の方法を有すると考えられているが、そのような配列は、本明細書において記載される隣接配列との関連でベクターに組み込むことができる)。
【0043】
本明細書において用いられる場合、「がん療法」または「がん処置」という用語は、がんの処置に有用な治療法をいう。抗がん治療剤の例としては、例えば、手術、化学療法剤、免疫療法、増殖抑制物質、細胞毒性剤、放射線療法において用いられる剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、およびがんを処置するための他の作用物質、例えば抗HER-2抗体(例えば、ハーセプチン(登録商標))、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害物質)、HER1/EGFR阻害物質(例えば、エルロチニブ(タルセバ(登録商標)))、血小板由来成長因子阻害物質(例えば、グリーベック(商標) (メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害物質(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的:ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMAまたはVEGF受容体、TRAIL/Apo2のうちの1つまたは複数に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、ならびに他の生物活性物質および有機化学物質などが挙げられるが、これらに限定されることはない。それらの組み合わせも、本明細書において記載される方法で用いることが企図される。
【0044】
本明細書において記載される方法および組成物は、GSK3αのレベルおよび/または活性が阻害されることを必要とする。本明細書において用いられる場合、「グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3α(GSK3α)」は、グリコーゲンシンターゼを含むいくつかの調節タンパク質、およびJUNのような転写因子の制御に関与する多機能Ser/Thrプロテインキナーゼをいう。GSK3αはWNTおよびPI3Kシグナル伝達経路においても役割を果たし、アルツハイマー病に関連するβ-アミロイドペプチドの産生も調節する。GSK3α配列はいくつかの種、例えば、ヒトGSK3α (NCBI Gene ID: 2931)ポリペプチド(例えば、NCBI Ref Seq NP_063937.2)およびmRNA (例えば、NCBI Ref Seq NM_019884.2)で知られている。GSK3αは、天然に存在する変種、分子、およびそれらの対立遺伝子を含む、ヒトGSK3αをいうことができる。GSK3αは、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの、哺乳類GSK3αをいう。SEQ ID NO:1の核酸配列は、GSK3αをコードする核酸配列を含む。
【0045】
SEQ ID NO: 1は、GSK3αをコードする核酸配列である。
【0046】
用語「減少する」、「低減した」、「低減」、または「阻害する」は全て、統計的に有意な量の減少を意味するように本明細書において用いられる。いくつかの態様において、「減少する」、「低減した」、「低減」、または「阻害する」は典型的には、適切な対照(例えば所与の処置のないこと)と比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれ以上の減少を含むことができる。本明細書において用いられる場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害または低減を包含しない。「完全阻害」は、適切な対照と比較して100%の阻害である。
【0047】
本明細書において用いられる場合、「参照レベル」は、正常な、さもなければ影響を受けない細胞集団または組織(例えば、健常対象から得られた生体サンプル、または以前の時点で対象から得られた生体サンプル、例えば、がんと診断される前に患者から得られた生体サンプル、または本明細書において開示される作用物質と接触されていない生体サンプル)をいう。
【0048】
本明細書において用いられる場合、「適切な対照」は、未処理の、そうでなければ同一の細胞または集団(例えば、非対照細胞と比較して、本明細書において記載される作用物質を投与されなかった対象、または本明細書において記載される作用物質のサブセットのみによって投与された対象)をいう。
【0049】
用語「統計学的に有意な」または「有意に」は、統計的有意性をいい、一般には2標準偏差(2SD)またはそれ以上の差異をいう。
【0050】
本明細書において用いられる場合、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、本方法または組成物に不可欠である、組成物、方法、およびその各成分に関連して用いられるが、不可欠であるかどうかにかかわらず、明記されていない要素の包含も受け入れる。
【0051】
本明細書において用いられる場合、用語「本質的に~からなる」は、所与の態様に必要とされる要素をいう。この用語は、その態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に著しく影響を及ぼさない、要素の存在を許容する。用語「からなる」は、態様のその記載において列挙されていない任意の要素を除く、本明細書において記載される組成物、方法、および各成分をいう。
【0052】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって明らかに別のことが示される場合を除き、複数形の言及物を含む。同様に、「または」という語は、文脈によって明らかに別のことが示される場合を除き、「および」を含むものと意図される。本明細書において記載されるものと同様または同等な方法および材料を、本開示の実践または試験において用いることができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。「例えば(e.g.)」という略号は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書において用いられる。したがって「例えば(e.g.)」という略号は「例えば(for example)」という用語と同義である。
[本発明1001]
がんを有する対象にアスパラギナーゼとGSK3αを阻害する作用物質とを投与する段階を含む、がんを処置するための方法。
[本発明1002]
前記がんが、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、およびリンパ腫からなるリストから選択される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記がんが固形腫瘍である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)である、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記がんがアスパラギナーゼに耐性である、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記がんがアスパラギナーゼに耐性ではない、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記アスパラギナーゼが、L-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)、SC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)、およびエルウィニア(Erwinia)アスパラギナーゼ(エルウィナーゼ)からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1008]
GSK3αを阻害する前記作用物質が、小分子、抗体、ペプチド、ゲノム編集システム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびRNAiからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記小分子が、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418からなる群より選択される、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記小分子がBRD0705である、本発明1008の方法。
[本発明1011]
前記RNAiがマイクロRNA、siRNA、またはshRNAである、本発明1008の方法。
[本発明1012]
GSK3αを阻害することが、GSK3αの発現レベルおよび/または活性を阻害することである、本発明1001の方法。
[本発明1013]
GSK3αの前記発現レベルおよび/または活性が、適切な対照と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上阻害される、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記対象に抗がん療法が以前に実施されている、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記対象に抗がん療法が以前に実施されていない、本発明1001の方法。
[本発明1016]
投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断する段階をさらに含む、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断するアッセイ法から結果を受け取る段階をさらに含む、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1018]
GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有する対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置するための方法。
[本発明1019]
前記変異が、がん細胞においてWNTシグナル伝達経路の活性化をもたらす、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在する、本発明1018の方法。
[本発明1021]
前記変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子の発現を変化させる、本発明1018の方法。
[本発明1022]
前記がんが、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫からなるリストから選択される、本発明1018の方法。
[本発明1023]
前記がんが固形腫瘍である、本発明1018の方法。
[本発明1024]
前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、本発明1018の方法。
[本発明1025]
前記がんが転移性である、本発明1018の方法。
[本発明1026]
投与の前に、前記対象が、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有するとして同定される、本発明1018の方法。
[本発明1027]
前記変異が、前記対象から得られた生体サンプルにおいて同定される、本発明1026の方法。
[本発明1028]
前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記がんががん療法に耐性である、本発明1001または1018の方法。
[本発明1030]
前記がんががん療法後に再発したものである、本発明1001または1018の方法。
[本発明1031]
前記がん療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、手術、ホルモン療法、幹細胞療法、標的療法、遺伝子療法、および精密療法(precision therapy)である、本発明1029または1030の方法。
[本発明1032]
a. がんを有する対象から生体サンプルを得る段階;
b. 該サンプルをアッセイし、GSK3αの阻害をもたらす変異を有するとしてがんを同定する段階; および
c. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法。
[本発明1033]
a. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして対象を同定するアッセイ法の結果を受け取る段階; および
b. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法。
[本発明1034]
前記がんが固形腫瘍である、本発明1032および1033の方法。
[本発明1035]
前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、本発明1032および1033の方法。
[本発明1036]
前記がんが転移性である、本発明1032および1033の方法。
[本発明1037]
前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、本発明1032および1033の方法。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1A~1Hは、Wnt経路の活性化がアスパラギナーゼに対して白血病細胞を感受性化することを示す。図1Aは、Cas9を発現するCCRF-CEM細胞に、GeCKOゲノムワイドガイドRNAライブラリーを生物学的に複製して形質導入したことを示す。ピューロマイシン選択の後、各群をビヒクルまたはアスパラギナーゼ(10 U/L)による処理に分け、処理5日後にガイドRNAの提示(representation)を評価した。図1Bは、MAGeCK分析を用いて計算されたロバストランキング集計(RRA)スコアによって評価されるように、GeCKOライブラリーによって網羅される遺伝子がアスパラギナーゼ処理条件での枯渇の有意性によってランク付けされて示されていることを示す。マイクロRNA遺伝子は示されていないことに留意されたい。図1Cは、CCRF-CEM細胞に表示のshRNAを形質導入し、表示の遺伝子の発現についてRT-PCR分析により、β-アクチンに対し正規化してノックダウン効率を評価したことを示す。36を超えるCT値は、検出されなかった(N.D.)と定義されたことに留意されたい。有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析を用いて計算された。図1Dは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、活性(非リン酸化)β-カテニン(Ser33/37/Thr41)またはGAPDHのウエスタンブロット分析に供したことを示す。図1Eは、CCRF-CEM細胞を最初にレンチウイルス7xTcf-EGFP (TopFLASH)レポーターで形質導入し、次に表示のshRNAで形質導入し、レポーター駆動型EGFP蛍光をフローサイトメトリーによって評価したことを示す。有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析を用いて評価された。図1Fは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理したことを示す。相対的生存率を、トリパンブルーの生体色素染色に基づき生存細胞をカウントすることによって評価し、細胞数を、shLucで形質導入したアスパラギナーゼなしの対照での細胞数に対して正規化した。図1Gは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、アスパラギナーゼ(10 U/L)で48時間処理し、カスパーゼ3/7活性アッセイを評価したことを示す。有意性は、多重比較のためにチューキーの調整を伴う二元配置分散分析によって評価された。図1Hは、CCRF-CEM細胞を100 ng/mlのWnt3Aリガンドまたはビヒクル対照、および表示の用量のアスパラギナーゼで処理したことを示す。処理8日後の生存細胞の数をトリパンブルー生体色素染色によってカウントし、結果をWnt3aなし、アスパラギナーゼなしの対照での結果に対して正規化した。全ての棒グラフおよび相対生存率曲線は、3つの生物学的複製の平均を表し、エラーバーは標準誤差(s.e.m.)を表している。 P ≦ 0.05; ** P ≦ 0.01; *** P ≦ 0.001; **** P ≦ 0.0001。n.s., P > 0.05。
図2図2A~2Dは、GSK3阻害はアスパラギナーゼ誘発性細胞毒性に対して、正常な造血前駆細胞ではなく、異なる急性白血病サブタイプを感受性化することを示す。図2A~2B、表示の細胞を、表示の用量のアスパラギナーゼとともに8日間、GSK3阻害物質CHIR99021 (1 μM)またはビヒクル対照で処理した。生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントし、CHIRなし、アスパラギナーゼなしの対照でのカウントに対して正規化した。図2Cは、正常CD34+ヒト造血前駆細胞を表示の用量のアスパラギナーゼとともに、CHIR99021 (1 μM)またはビヒクルで処理したことを示す。トリパンブルー生体染色によって生存細胞の数をカウントし、処置の4日目にカウントし、CHIRなし、アスパラギナーゼなしの対照でのカウントに対して正規化した。これらの正常な造血前駆細胞は、培養で4日を超えて維持することができなかったことに留意されたい。図2Dは、CCRF-CEM細胞をCHIR99021 (1 μM)またはビヒクル、および表示の化学療法薬で8日間処理したことを示す。生存細胞の数を、トリパンブルー色素排除によってカウントし、CHIRなし、化学療法なしの対照でのカウントに対して正規化した。示されている全てのウエスタンブロットは、CHIR 99021 (1 μM)またはビヒクルによる処理後の活性(非リン酸化)β-カテニン(Ser33/37/Thr41)またはGAPDHのレベルを示している。示されている結果は、少なくともn = 3の生物学的複製の平均であり、エラーバーはs.e.mを表している。
図3図3A~3Iは、タンパク質のWnt依存性安定化がアスパラギナーゼに対する感受性化を媒介することを示す。図3Aは、構成的に活性なΔN90 β-カテニン対立遺伝子をコードする発現コンストラクト、またはベクター対照でCCRF-CEM細胞を形質導入したことを示す。形質導入の効果を表示のタンパク質についてのウエスタンブロット分析によって評価し、標準的なWnt/β-カテニンシグナル伝達に及ぼす効果を、7xTcf-EGFP (TopFLASH)レポーター発現によって評価した(上)。統計的有意性をウェルチのt検定によって評価した。次に、表示のコンストラクトで形質導入した細胞を、表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、生存細胞の数をトリパンブルー生体色素染色によってカウントした(下)。生存細胞カンウトを、ベクターで形質導入した、アスパラギナーゼなしの対照に対して正規化した。図3Bは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、APC mRNAおよび標準的なWnt/β-カテニンシグナル伝達に及ぼす効果を、それぞれRT-PCR分析および7xTcf-EGFP (TopFLASH)レポーター活性により評価したことを示す(上)。統計的有意性を、3群では多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析および2群ではウェルチのt検定を用いて計算した。表示のshRNAで形質導入した細胞を表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、生存細胞の数を(図3A)のようにカウントした。図3Cは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、その後、表示の用量のアスパラギナーゼとともに、デュアルmTORC1/mTORC2阻害物質AZD2014 (10 nM)またはビヒクル対照で8日間処理したことを示す。生存細胞の数を、トリパンブルー生体色素染色によってカウントし、AZD2014なし、アスパラギナーゼなしの対照での生存細胞カウントに対して正規化した。示されている場合は、形質導入した細胞をAZD2014で処理し、ホスホ-p70S6キナーゼ(Thr389)またはGAPDHのウエスタンブロット分析に供した。図3Dは、CCRF-CEM細胞をビヒクルまたはアスパラギナーゼ(10 U/L)で48時間処理し、前方散乱高(forward scatter height)のフローサイトメトリー分析(FSC-H)により細胞サイズを評価したことを示す。図3Eは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、アスパラギナーゼ(10 U/L)で48時間処理したことを示す。細胞サイズを、前方散乱高のフローサイトメトリー分析(FSC-H)によって評価した。有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析によって評価された。図3Fは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、細胞透過性メチオニン類似体アジドホモアラニンの18時間パルスによってインキュベートし、その後、標識から放出し、アスパラギナーゼ(10 U/L)で処理したことを示す。アジドホモアラニンをクリックケミストリーによって蛍光標識し、標識保持の程度を表示の時点でフローサイトメトリーにより測定した。図3Gは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入したことを示す。示されている場合は、細胞をまた、野生型FBXW7、または基質結合能力が損なわれたR465C FBXW7点突然変異体をコードする発現コンストラクトで形質導入した。形質導入効率を、表示のタンパク質のウエスタンブロット分析によって評価した。次に、細胞を表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントした。shLucを形質導入した、アスパラギナーゼなしの対照での細胞カウントに対して細胞カウントを正規化した。図3Hは、CCRF-CEM細胞をビヒクルまたはプロテアソーム阻害物質ボルテゾミブ、および表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理したことを示す。生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントし、ボルテゾミブなし、アスパラギナーゼなしの対照での細胞カウントに対して正規化した。図3Iは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNA、およびGFP対照もしくはプロテアソームサブユニットPSMA4の高活性変異体(ΔN3-PSMA4)をコードする発現コンストラクトまたはビヒクル対照で形質導入したことを示す。次に、細胞を表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントした。細胞カウントを、GFPを形質導入した、アスパラギナーゼなしの対照での細胞カウントに対して正規化した。示されている結果は、少なくともn = 3の生物学的複製の平均であり、エラーバーはs.e.mを表している。 P ≦ 0.05; ** P ≦ 0.01; *** P ≦ 0.001; **** P ≦ 0.0001。n.s., P > 0.05。
図4図4A~4Fは、ヒト白血病におけるGSK3α阻害およびアスパラギナーゼの合成致死性を示す。図4Aは、CCRF-CEM細胞を表示の用量のアスパラギナーゼとともに、ビヒクル、GSK3α選択的阻害物質BRD0705、またはGSK3β選択的阻害物質BRD0731で8日間処理したことを示す。生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントし、ビヒクルで処理した対照でのカウントに対して正規化した。表示のタンパク質のタンパク質レベルを、ウエスタンブロット分析(挿入図)によって評価した。リン酸化部位特異的GSK3抗体(p-GSK3)は、GSK3αのTyr279位およびGSK3βのTyr216位の自己リン酸化を認識する27。GSK3パラログは分子量によって区別できることに留意されたい。図4Bは、CCRF-CEM細胞を表示のshRNAで形質導入し、ノックダウンの効果を全GSK3またはGAPDHについてのウエスタンブロット分析(挿入図)によって評価したことを示す。次に、細胞を表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、トリパンブルー生体染色に基づく生存細胞カウントを実施した。細胞カウントをshLuc、アスパラギナーゼなしの対照に対して正規化した。図4Cは、CCRF-CEM細胞を、shRNAターゲティングを回避するGSK3α発現コンストラクト有りまたは無しで、表示のshRNAで形質導入したことを示す。表示のタンパク質の発現を、全GSK3またはGAPDHについてのウエスタンブロット分析(挿入図)によって評価した。次に、細胞を表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理し、生存細胞の数をトリパンブルー生体染色によってカウントした。細胞カウントをshLuc、アスパラギナーゼなしの対照に対して正規化した。図4Dは、患者由来の異種移植片からのT-ALL細胞がNRG免疫不全マウスに注入されたことを示す。白血病(末梢血中の5%以上の白血病細胞)の移植後、マウスをアスパラギナーゼまたはビヒクルで静脈内に1回投薬、およびBRD0705またはビヒクルで12時間ごとに12日間経口胃管栄養法により処置した。生存率をカプランマイヤー分析によって計算した。P値を、ビヒクル処置マウスをアスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせで処置したマウスと比較する対数順位検定によって計算した。ビヒクル、アスパラギナーゼ単独、またはBRD0705単独で処置されたマウスの生存率の差は有意ではなかった。これらの群の各々とアスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせ(コンボ)で処置されたマウスとの差異は、全てP < 0.0001であった。図4Eは、(図4D)に示される実験におけるマウスの体重を示す。図4Fは、提案されたモデルを示す。
図5】ヒトT-ALL細胞株のアスパラギナーゼ感受性を示す。表示のヒトT-ALL細胞株を100 U/Lアスパラギナーゼまたはビヒクル対照で48時間処理し、トリパンブルー生体色素染色に基づいて生存細胞をカウントすることにより生存率を評価した。各細胞株について、結果をビヒクル処理細胞での生存率に対して正規化した。棒グラフは、二つ組の実験の平均を表す。遺伝子スクリーニングの場合、SUPT1またはKOPTK1細胞では効率的なCRISPR/Cas9ゲノム編集を実現できなかったため、CCRF-CEM細胞を選択した。
図6図6A~6Cは、アスパラギンシンテターゼ(ASNS)がアスパラギナーゼで処理されたCCRF-CEM細胞での枯渇の陽性対照であることを示す。図6Aは、アスパラギンシンテターゼ触媒ドメインを標的にする陽性対照ガイドRNAによって誘導される変異の予測位置がASNSタンパク質上に示されていることを示す(https://www.uniprot.org/uniprot/P08243)。図6Bは、Cas9を発現するCCRF-CEM細胞に、アスパラギンシンテターゼ(ASNS)の触媒ドメインを標的にする陽性対照ガイドRNA、またはセーフハーバーゲノム遺伝子座AAVS1を標的にする陰性対照を形質導入し、PCR増幅および標的遺伝子座の次世代配列決定によって切断効率を評価したことを示す。図6Cは、Cas9を発現するCCRF-CEM細胞に、ASNSまたはAAVS1を標的にするガイドRNAのプール(各遺伝子座を標的にするガイドRNA n = 3)を形質導入し、その後、ビヒクル(PBS)または10 U/Lのアスパラギナーゼで処理したことを示す。処理5日後、ガイドRNAの提示を次世代配列決定によって評価した。各ガイドRNAの存在量を、ビヒクル処理細胞でのその存在量に対して正規化した。バーは平均 +/- 標準誤差を示し、ウェルチのt検定を用いて統計的有意性を計算した。****, P < 0.0001。n.s., P ≧ 0.05。
図7】用いられたゲノムワイドなガイドRNAライブラリー内のガイドRNAの提示を示す。2つの異なる半ライブラリープール(AおよびB)において維持されているGeCKOゲノムワイドガイドRNAライブラリーを増幅し、次世代配列決定を用いて各半ライブラリーでのガイドRNAの提示を評価した。
図8】mTORC1阻害がアスパラギナーゼに対する感受性化をレスキューしないことを示す。CCRF-CEM細胞を、表示のshRNAに感染させ、表示の用量のアスパラギナーゼおよびラパマイシン(1 nM、左)またはRAD001 (10 nM、右)で8日間処理した。相対的生存率を、トリパンブルーの生体色素染色を用いて生存細胞をカウントすることによって評価し、細胞カウントをshLuc形質導入対照(アスパラギナーゼなし、mTORC1阻害物質なし)での細胞カウントに対して正規化した。相対生存率曲線は、3つの生物学的複製の平均を表し、エラーバーはs.e.mを表している。
図9】wnt経路の活性化がパルス中の標識取り込みの程度に影響を与えないことを示す。表示のshRNAで形質導入したCCRF-CEM細胞を、アジドホモアラニン(AHA)とともに18時間インキュベートした。パルス後、細胞を引き続き固定し、タグ付きAHAの蛍光強度をフローサイトメトリーによって評価した。示された結果は、n = 3の生物学的複製の平均であり、エラーバーはs.e.mを表している。統計的有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析によって評価された。 P ≦ 0.05; ** P ≦ 0.01; *** P ≦ 0.001; **** P ≦ 0.0001。n.s., P > 0.05。
図10】ボルテゾミブは中間用量で非常に毒性であることを示す。CCRF-CEM細胞を表示の用量のボルテゾミブで48時間処理した。トリパンブルー生体色素染色に基づき生存細胞をカウントし、細胞カウントをボルテゾミブなしの対照に対して正規化することによって細胞生存率を評価した。棒グラフは三つ組の実験の平均を表し、ドットは各個々の実験の結果を表している。
図11】shRNAノックダウンがGSK3α (左)およびGSK3β (右)のmRNA発現の有意な減少につながることを示す。ノックダウン効率を試験するために、表示の遺伝子の定量的逆転写酵素PCR (qRT-PCR)を実施した。結果をshLuc細胞に対して正規化した。有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析によって評価された。エラーバーは3つの生物学的複製のs.e.mを表す。 P ≦ 0.05 ** P ≦ 0.01 *** P ≦ 0.001 **** P ≦ 0.0001。n.s., P > 0.05。
図12図12Aおよび12Bは、白血病負荷の確認を示す。図12Aは、骨髄細胞が対照NRGマウスから採取されたことを示す。図12Bは、ヒトT-ALL PDXを注入し、ビヒクルで処置したNRGマウス(図4Dからの)を示す。細胞を表示の抗体で染色し、ヒト細胞に対する陽性をフローサイトメトリーによって評価した。
図13】Wnt/STOPシグナル伝達の活性化が結腸がん細胞をアスパラギナーゼに対して感受性化させることを示す。用いられた表示のヒト結腸がん細胞株は、GSK3下流の標準的なWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化するAPCのハーバー変異を担持し、したがってベースライン時に活性なWnt/STOPシグナル伝達を有していない。細胞を、ビヒクルまたはヒト組み換えRSPO3 (75 ng/ml)およびWnt3A (100 ng/ml)で処理して、Wnt/STOPシグナル伝達を活性化するWnt受容体シグナル伝達のリガンド依存性活性化を誘導し、表示の用量のアスパラギナーゼで8日間処理した。RSPO3およびWnt3Aでの処理によるWnt/STOPシグナル伝達の活性化は、アスパラギナーゼ感受性化を誘導することに留意されたい。
図14図14A~14Cは、アスパラギナーゼと組み合わせたGSKα選択的阻害物質の強力な治療活性を示す。図14Aは、GSKα選択的阻害物質およびアスパラギナーゼの投薬の概略図を示す。アスパラギナーゼを、I.V投与を介して1000 U/kgにて単回用量でマウスに投与する。GSKα選択的阻害物質(BRD0705)またはビヒクルを15 mg/kgで12時間ごとにマウスに投与する。図14Bは、ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病(化学療法耐性)マウスを移植した免疫不全マウスの生存率%を示す。図14Cは、ヒトMLL再構成Bリンパ芽球性白血病(化学療法後の再発時に患者から収集されたサンプル)を移植された免疫不全マウスの生存率%を示す。GSKα選択的阻害物質およびアスパラギナーゼを組み合わせて投与した場合、単剤療法としての各々と比較して、両方の白血病モデルで生存性が大幅に増加する。
図15図15A~15Iは、GSK3の上流でWntシグナル伝達を活性化する変異がアスパラギナーゼ過感受性を誘導することを示す。図15Aは、SW-480およびHCT-15細胞を、組み換えRスポンジン3 (75 ng/ml)およびWnt3a (100 ng/ml)またはビヒクルの存在下、表示の用量のアスパラギナーゼで10日間処理したことを示す。生存細胞の数をカウントし、全ての細胞カウントをビヒクル、アスパラギナーゼなしの細胞での細胞カウントに対して正規化した。二元配置分散分析を各細胞株に対して実施し、アスパラギナーゼ用量とWntリガンドとの間の相互作用項を含めた。Wntリガンド対ビヒクルの主効果のp値が各プロットに提示されており、相互作用項は全体的に有意であった(p < 0.0001)。図15Bは、SW-480およびHCT-15細胞を表示の用量のアスパラギナーゼとともに、GSK3阻害物質CHIR99021 (CHIR, 1 μM)またはビヒクルで10日間処理したことを示す。生存率を(図15A)のように評価した。統計的有意性を、二元配置分散分析を用いて計算し、アスパラギナーゼ用量とGSK3阻害物質との間の相互作用項を含めた。Wntリガンド対ビヒクルの主効果のp値が各プロットに提示されており、全ての相互作用項が有意であった(p < 0.0001)。図15Cは、正常ヒト結腸上皮に由来するCCD-841細胞を表示の用量のアスパラギナーゼとともに、CHIR99021 (1 μM)またはビヒクルで10日間処理し、生存細胞カウントを(図15A)に記載されているように評価したことを示す。二元配置分散分析を各細胞株に対して実施し、アスパラギナーゼ用量とGSK3阻害物質との間の相互作用項を含めた。CHIR99021対ビヒクルの主効果のp値がプロットに提示されており、全ての相互作用項は全体的に有意ではなかった(p = n.s.)。図15Dは、SW-480およびHCT-15細胞を表示のshRNAで形質導入し、次に表示の用量のアスパラギナーゼで処理したことを示す。生存細胞をカウントすることにより、処置10日後に生存率を評価した。全ての細胞カウントを、shLucで形質導入したビヒクル処理対照での細胞カウントに対して正規化した。図15Eは、表示の細胞株を表示の用量のアスパラギナーゼの存在下、ビヒクル、GSK3α選択的阻害物質BRD0705 (1 μM)またはGSK3β選択的阻害物質BRD3731 (1 μM)で10日間処理したことを示す。生存率を(図15A)のように評価した。図15Fは、Rspo3転座とともに、p53とKrasの両方の変異を有するマウス腸オルガノイドを、基礎オルガノイド培地(Wnt3AおよびRスポンジン1タンパク質を含まない)中で培養し、ビヒクルまたはアスパラギナーゼ(100 U/L)で10日間処理したことを示す。Axio Imager A1顕微鏡を用いて生存オルガノイドをカウントすることにより、生存率を評価した。画像を3回の実験の代表から取得し、ImageJソフトウェアで分析した。両側ウェルチのt検定を用いて、統計的有意性を計算した。図15Gは、p53とKrasの変異を有するApc欠損オルガノイドを、基礎オルガノイド培地(Wnt3AおよびRスポンジン1タンパク質を含有しない)中で培養し、ビヒクル、アスパラギナーゼ(100 U/L)、BRD0705 (1 μM)またはコンボ(100 U/Lアスパラギナーゼ + 1 μM BRD0705)で10日間処理したことを示す。生存率を(図15F)のように評価した。画像を3回の実験の代表から取得し、ImageJソフトウェアで分析した。群間の差異は、参照群としてビヒクル群を用い、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析を使用して分析された。**** p ≦ 0.0001。n.s., p > 0.05。図15Hは、表示のオルガノイドを基礎オルガノイド培地中で培養し、表示のコンストラクトで形質導入し、ビヒクル、アスパラギナーゼ(100 U/L)、BRD0705 (1 μM)またはコンボ(100 U/Lアスパラギナーゼ + 1 μM BRD0705)で10日間処理したことを示す。生存率を(図15F)のように評価した。画像を3回の実験の代表から取得し、ImageJソフトウェアで分析した。群間の差異は、多重比較のためにチューキーの調整を伴う一元配置分散分析を用いて分析された。**** p ≦ 0.0001。n.s., p > 0.05。図15Iは、表示のオルガノイドを基礎オルガノイド培地中で培養し、表示のコンストラクトで形質導入し、ビヒクル、アスパラギナーゼ(100 U/L)、BRD0705 (1 μM)またはコンボ(100 U/Lアスパラギナーゼ + 1 μM BRD0705)で10日間処理したことを示す。生存率を(図15F)のように評価した。画像を3回の実験の代表から取得し、ImageJソフトウェアで分析した。群間の差異は、多重比較のためにチューキーの調整を伴う一元配置分散分析を用いて分析された。 p ≦ 0.05; *** p ≦ 0.001; **** p ≦ 0.0001。n.s., p > 0.05。全てのエラーバーはSEMを表す。図17A~17Dおよび図18A~18Bも参照されたい。
図16図16A~16Iは、結腸直腸がんにおけるWnt経路活性化およびアスパラギナーゼの合成致死性を活用する方法を示す。図16Aは、実験スキーマを示す。Rspo3融合またはApc欠損とともに、p53とKrasの両方の変異を有するマウス腸オルガノイドを、雄性ヌードマウスに皮下注入した(1群あたりn=9)。腫瘍の移植が確認されたら(キャリパ測定により100 mm3超の腫瘍体積)、マウスを処置群にランダムに割り当て、表示のように処置した。図16Bは、(図16A)に示される実験において腸オルガノイドを注入されたマウスの腫瘍体積を示す。処置開始はグラフの矢印で示されており、キャリパ測定によって一日おきに腫瘍体積を評価した。二元配置分散分析を、Rspo3融合オルガノイドを移植したマウスに対して実施し、ビヒクルとアスパラギナーゼとの間の相互作用項を含めた。処置開始後のアスパラギナーゼ対ビヒクルの主効果のp値がプロットに提示されている。全てのエラーバーはSEMを表す。図16Cは、表示のオルガノイドを注入されたマウスにわたるアスパラギナーゼ処置に対する応答のウォーターフォールプロットを示す; 各バーは個々のマウスを表す。図16Dは、表示のオルガノイドを注入し、ビヒクルまたはアスパラギナーゼで処置したマウスのカプランマイヤー無増悪生存曲線を示す。対数順位検定を用いて、Rspo3融合オルガノイドを注入し、アスパラギナーゼ対ビヒクルで処置したマウスの無増悪生存期間の差異を試験した。図16Eは、実験スキーマを示す。ヒト患者由来のAPC変異体CRC異種移植片を、雄性ヌードマウスに皮下に移植した(1群あたりn=8)。(図16A)に記載されているように、腫瘍移植時にマウスを処置した。図16Fは、(図16E)に示される実験においてヒトCRC PDXを移植されたマウスの腫瘍体積を示す。矢印は処置の始点および終点を示す。腫瘍体積をキャリパ測定によって一日おきに評価した。二元配置分散分析を実施し、ビヒクルとコンボとの間の相互作用項を含めた。処置開始後のコンボ対ビヒクルの主効果のp値がプロットに提示されており、全ての相互作用項は全体的に有意であった(p < 0.0001)。全てのエラーバーはSEMを表す。図16Gは、ヒトCRC PDXを移植されたマウスにおけるアスパラギナーゼ、BRD0705またはコンボ処置に対する応答のウォーターフォールプロットを示す; 各バーは個々のマウスを表す。図16Hは、アスパラギナーゼ、BRD0705またはコンボで処置したマウスのカプランマイヤー無増悪生存曲線を示す。対数順位検定を用いて、コンボ対ビヒクルで処置したマウスの無増悪生存期間の差異を試験した。図16Iは、図16Eに示される実験からのAPC変異体CRC PDXを移植されたマウスの代表的な画像を示す。画像は、イソフルランで麻酔したマウスから処置30日後に撮影された。図19A~19Cも参照されたい。
図17図17A~17Dは、(図15A~15Iに関連して) GSK3α阻害およびアスパラギナーゼが結腸直腸がん細胞においてミトコンドリアアポトーシスを誘導することを示す。図17Aは、SW-480細胞を表示のコンストラクトで形質導入し、ノックダウン効率をRT-PCR分析によって評価したことを示す。統計分析は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析を用いて計算された。図17Bは、HCT-15細胞に表示のコンストラクトを感染させ、ノックダウン効率を(図17A)に記載されるように評価したことを示す。図17Cは、SW-480細胞にshLuciferaseまたはshGSK3αを感染させ、続いてビヒクル(PBS)またはアスパラギナーゼ(100 U/L)で処理したことを示す。カスパーゼ3/7活性を、カスパーゼGlo 3/7アッセイ法を用いて評価し、ビヒクル対照であるshLuciferaseに対して正規化した。統計的有意性は、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析によって計算された。図17Dは、HCT-15細胞に表示のコンストラクトを感染させ、ビヒクル(PBS)またはアスパラギナーゼ(100 U/L)で処理したことを示す。(図17A)に記載されているようにカスパーゼ活性を評価した。****p ≦ 0.0001。n.s., p > 0.05。
図18図18A~18Bは、(図15A~15Iに関連して) Wntリガンドによる処理がアスパラギナーゼで誘導された細胞サイズの減少を反転させることを示す。図18Aは、HCT-15細胞をヒトRスポンジン3 (75 ng/ml)およびWnt3Aタンパク質(100 ng/ml)とともに、ビヒクルまたはアスパラギナーゼ(100 U/L)で処理し、細胞サイズをBeckton-Dickinson LSR-II機器にてフローサイトメトリー前方散乱高(FSC-H)により評価したことを示す。図18Bは、散布図が個々の生物学的複製の結果を描いており、水平バーは平均を示し、エラーバーはSEMを示していることを示す。群間の差異を、多重比較のためにダネットの調整を伴う一元配置分散分析を用いて分析した。** p ≦ 0.01; **** p ≦ 0.0001。
図19図19A~19Cは、(図16A~16Iに関連して) 処置が十分に許容され、ヌードマウスの体重減少を誘導しないことを示す。図19Aは、オルガノイドを注入され、表示のように処置されたマウスの体重を示す。値を、処置開始前の体重に対して正規化した。エラーバーはSEMを表す。図19Bは、ヒトCRC PDXを移植したマウスの体重を示す。値を、処置開始前の体重に対して正規化した。エラーバーはSEMを表す。図19Cは、ヒトCRC PDXを移植し、ビヒクルまたは組み合わせ処置(アスパラギナーゼ + BRD0705)で処置したマウスのビリルビンレベルを示す。
図20】GSK3αの例示的な小分子阻害物質の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
がんを処置する方法
本明細書において記載される本発明は部分的に、GSK3α阻害物質の投与を介したGSK3αの阻害がアスパラギナーゼによる処置に対して、がん細胞、例えば、白血病細胞を感受性化したという発見に関連している。具体的には、GSK3α阻害物質による処置は、アスパラギナーゼ耐性細胞を感受性化し、それらはアスパラギナーゼによる処置の影響を受けやすくなった。したがって、本発明の1つの局面は、がんを有する対象にアスパラギナーゼとGSK3αを阻害する作用物質とを投与する段階を含む、がんを処置するための方法を提供する。
【0055】
本発明のさらなる局面は、アスパラギナーゼが、APC変異体ヒト結腸直腸がん(CRC)に対してもマウス腸オルガノイドに対してもほとんど有効性を有しなかったが、Wntリガンド誘導性のGSK3阻害を刺激するR-スポンジン転座という状況で非常に細胞毒性であったという所見に部分的に基づいている。APC変異体CRCでは、GSK3αの薬理学的阻害がアスパラギナーゼ感受性化に十分であった。したがって、Wnt経路の活性化は、CRCにおいて用いられうる治療上の脆弱性となる。
【0056】
大部分のCRCは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化する変異を有するが、切除不能な疾患を有する患者の転帰は依然として不良である。アスパラギナーゼおよびタンパク質のWnt依存性安定化の合成致死的な相互作用をCRC療法に用いることができることが特に企図された。本明細書において実施例2に提供されるデータは、ヒトCRC細胞およびマウス腸オルガノイドにおいてアスパラギナーゼでの処理が、GSK3のWntリガンド誘導性阻害を伴う腫瘍に対して非常に毒性があったが、GSK3を阻害することなくβ-カテニンを活性化すると予測されるAPC変異を有するCRCに対しては毒性がなかったことを示す。APC変異体CRCは、組み換えWnt/R-スポンジンリガンドでの処理により、またはGSK3αの選択的阻害により、アスパラギナーゼに対して感受性化された。
【0057】
したがって、本明細書において、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有する対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置するための方法も提供される。1つの態様において、GSK3αは、GSK3αの阻害をもたらす変異を有しない実質的に同一の細胞(例えば、変異を有しないがん細胞、またはがんではない野生型細胞)と比較して、少なくとも50%阻害される。1つの態様において、GSK3αは、GSK3αの阻害をもたらす変異を有しない同一の細胞と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、またはそれ以上阻害される。当業者は、例えば、GSK3αのmRNAおよびタンパク質レベルをそれぞれ測定するためのPCRに基づくアッセイ法またはウエスタンブロッティングを介して、がん細胞が、GSK3αを阻害する変異を有するかどうかを判定することができる。GSK3α活性を評価する機能的アッセイ法をさらに用いて、GSK3αが阻害されているかどうかを判定することができる。例えば、当業者は、β-カテニンの核移行が起こらないかどうかを判定し、GSK3αが阻害されることを示すことができる。
【0058】
さまざまな態様において、本明細書において記載される方法は、がんを有する対象を診断する段階または処置(例えば、アスパラギナーゼ、および/もしくはGSK3αを阻害する作用物質)を施す前にがんを有する対象を診断するアッセイ法の結果を受け取る段階を含む。熟練した臨床医は、当技術分野において公知のさまざまなアッセイ法を用いて、がんを有すると対象を診断することができる。例示的なアッセイ法としては、(1) 熟練した臨床医が、腫瘍を示しうるしこりについて、またはがんの存在を示しうる皮膚の色の変化もしくは臓器の肥大のような、異常について対象の体の領域を触診する身体検査、(2) がんによって引き起こされた異常を同定するための、尿検査および血液検査のような、臨床検査が挙げられる。例えば、白血病を有する人では、完全血球算定と呼ばれる一般的な血液検査は、異常な数または種類の白血球を明らかにしうる; (3) がんまたは腫瘍の兆候がないか骨および内臓器官を検査する非侵襲的画像検査。がんの診断に用いられる画像検査は、数ある中でもコンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、超音波およびX線; ならびに(4) 熟練した臨床医が、検査のためにがんを有すると疑われる身体の領域から細胞のサンプルを収集する、生検を含みうる。生検は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて得ることができる。当技術分野において公知の標準を用いてがん細胞の存在を同定するために、生検サンプルが検査される。
【0059】
がんを診断するためのアッセイ法は、本明細書において記載される処置方法を実施する臨床医によって実施される必要はない。例えば、第1の臨床医は、アッセイ法を実施して診断し、本明細書において記載される処置の方法を実施する第2の臨床医にアッセイ法の結果を提供することができる。
【0060】
1つの態様において、投与の前に、対象は、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有すると同定される。1つの態様において、GSK3aを阻害する変異は、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)から選択される遺伝子中の変異である。1つの態様において、変異はGSK3α遺伝子中に存在する。変異は、例えば、生体サンプルのゲノム配列決定およびその配列を遺伝子の野生型配列と比較することによって、対象から得られた生体サンプルにおいて同定することができる。例示的な生体サンプルは、組織サンプルまたは血液サンプルを含む。生体サンプルは、当技術分野において公知の標準的な技法を用いて対象から得ることができ、例えば、生体サンプルは、生検または標準的な採血から得ることができる。
【0061】
表1は、上記に列挙された遺伝子の遺伝子ID番号およびエイリアスを示す。表1に列挙された遺伝子(例えば、RSPO1)は、天然に存在するその変種、分子、および対立遺伝子を含めて、その遺伝子のヒト形態(例えば、ヒトRSPO1)をいうことができると理解されるべきである。表1に列挙された遺伝子は、その遺伝子の哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどの形態をいうことができる。表1に列挙された遺伝子の核酸配列は、ワールドワイドウェブwww.ncbi.nlm.nih.gov/gene/でNCBI遺伝子IDを検索することにより容易に同定することができる。
【0062】
(表1)例示的な遺伝子に関する情報
【0063】
別の態様において、GSK3aを阻害する変異は、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)から選択される遺伝子の発現を変化させる変異である。本明細書において用いられる場合、「発現を変化させる」とは、健常な個体から得られたサンプル由来の同等の組織(例えば、細胞型)における遺伝子の発現とは著しく異なる遺伝子のレベル(例えば、増加もしくは減少)または機能(例えば、遺伝子産物の産生)の変化をいう。当業者は、例えば、所与の遺伝子について遺伝子産物もしくはmRNAレベルをそれぞれ評価するためにウエスタンブロッティングもしくはPCRに基づくアッセイ法を用い、または例えば、遺伝子の下流の機能が正常に行われるかどうかを判定するための機能的アッセイ法を介し、所与の遺伝子について遺伝子発現が変化するかどうかを判定することができる。
【0064】
1つの態様において、変異は、WNT経路、例えば、標準的なWNT経路の活性化をもたらす。標準的なWnt経路は、細胞質におけるβ-カテニンの蓄積および核へのその最終的な移行を引き起こし、TCF/LEFファミリーに属する転写因子の転写コアクチベーターとして作用させる。Wntがないと、破壊複合体が通常はβ-カテニンを分解するため、β-カテニンは細胞質に蓄積しない。この破壊複合体は以下のタンパク質: アキシン、大腸腺腫性ポリポーシス(APC)、プロテインホスファターゼ2A (PP2A)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 (GSK3)およびカゼインキナーゼ1α(CK1α)を含む。破壊複合体はβ-カテニンをユビキチン化のために標的にし、その後、ユビキチン化によってプロテアソームに送られて消化されることにより、β-カテニンを分解する。しかしながら、WntがFzおよびLRP5/6に結合するとすぐに、破壊複合体の機能が破壊される。これは、負のWnt調節因子アキシン、および破壊複合体の原形質膜への移行を引き起こすWntによるものである。破壊複合体における他のタンパク質によるリン酸化が、その後、アキシンをLRP5/6の細胞質尾部に結合させる。アキシンは脱リン酸化され、その安定性およびレベルが低下する。その後、Dshはリン酸化を介して活性化されるようになり、そのDIXおよびPDZドメインは破壊複合体のGSK3活性を阻害する。これにより、β-カテニンが蓄積して核に局在化し、その後、TCF/LEF (T細胞因子/リンパ系増強因子)転写因子と一緒に遺伝子導入を介して細胞応答を誘導することが可能になる。Wnt経路の活性化をもたらす変異は、任意の遺伝子内の変異であることができ、Wnt経路内の遺伝子に限定されないことが理解されるべきである。Wnt経路を活性化する変異は、例えば、Wnt経路の構成要素、例えば、アキシンを、Wnt経路の上流で調節する遺伝子中に存在することができる。
【0065】
1つの態様において、WNTシグナル伝達は、適切な対照と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、またはそれ以上活性化される。本明細書において用いられる場合、「適切な対照」は、WNTシグナル伝達を活性化することが知られているいずれの変異も持たない、他の点では同一の細胞集団におけるWNTシグナル伝達のレベルおよび/または活性をいう。当業者は、例えば、免疫蛍光法を介して細胞内の核β-カテニンの増加を同定することによって、またはβ-カテニンの核レベルをプローブするためのがん細胞の核画分のウエスタンブロッティングによって、WNTシグナル伝達が活性化されるかどうかを評価することができる。がん細胞における核β-カテニンレベルは、WNT活性化変異を持たない野生型細胞における核β-カテニンレベルと比較する必要がある。
【0066】
本発明の別の局面は、(a) がんを有する対象から生体サンプルを得る段階; (b) サンプルをアッセイし、GSK3αの阻害をもたらす変異を有するとしてがんを同定する段階; および(c) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置する方法を提供する。
【0067】
さらに別の局面は、(a) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして対象を同定するアッセイ法の結果を受け取る段階; および(b) GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置する方法を提供する。
【0068】
がん
本明細書において用いられる場合、「がん」は、正常な細胞制御を失い、無秩序な増殖、分化の欠如、局所組織浸潤、および転移をもたらす細胞の過剰増殖をいう。がんは組織型(例えば、それらが発生する組織)およびそれらの原発部位(例えば、がんが最初に発生する身体の位置)に基づいて分類され、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫であることができる。「がん」は、固形腫瘍をいうこともできる。本明細書において用いられる場合、「腫瘍」という用語は、例えば、悪性型または良性型の細胞または組織の異常な増殖をいう。「がん」は転移性であることができ、これは、がん細胞がその一次起源部位から播種し、二次部位に移動したことを意味する。
【0069】
さまざまな態様において、本明細書において処置されるがんは、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、または固形腫瘍である。
【0070】
がん腫は、上皮組織から発生するがんである。がん腫は全てのがんのおよそ80~90%を占める。がん腫は、分泌可能な臓器または腺(例えば、乳房、肺、前立腺、結腸、または膀胱)に影響を与えうる。2つのサブタイプのがん腫: 臓器または腺で発生する腺がん、および扁平上皮から発生する扁平上皮がんが存在している。腺がんは一般に粘膜に発生し、肥厚したプラーク状の白色粘膜として観察される。それらは多くの場合、発生する軟組織を通して容易に広がる。例示的な腺がんとしては、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、食道がん、および結腸直腸がんが挙げられるが、これらに限定されることはない。扁平上皮がんは、身体のいずれの領域からでも発生しうる。がん腫の例としては、前立腺がん、結腸直腸がん、マイクロサテライト安定結腸がん、マイクロサテライト不安定結腸がん、肝細胞がん、乳がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、腎細胞がん、非浸潤性乳管がん、乳管がんが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0071】
肉腫は、支持組織および結合組織、例えば骨、腱、軟骨、筋肉、および脂肪から発生するがんである。肉腫腫瘍は通常、それらが成長する組織に類似している。肉腫の非限定的な例としては、骨肉腫もしくは骨形成性肉腫(骨に由来する)、軟骨肉腫(軟骨に由来する)、平滑筋肉腫(平滑筋に由来する)、ラブドミオ肉腫(骨格筋に由来する)、中皮肉腫もしくは中皮腫(体腔の内膜に由来する)、線維肉腫(線維性組織に由来する)、血管肉腫もしくは血管内皮腫(血管に由来する)、脂肪肉腫(脂肪組織に由来する)、神経膠腫もしくは星状細胞腫(脳に見られる神経性結合組織に由来する)、粘液肉腫(原始胚性結合組織に由来する)、または間葉性もしくは混合性中胚葉腫瘍(混合性結合組織型に由来する)が挙げられる。
【0072】
黒色腫は、色素を含有するメラニン形成細胞から形成されるがんの1つの種類である。黒色腫は通常、皮膚に発生するが、口、腸、または眼に生じることもある。
【0073】
骨髄腫は、骨髄の形質細胞から発生するがんである。骨髄腫の非限定的な例としては、多発性骨髄腫、形質細胞腫およびアミロイドーシスが挙げられる。
【0074】
リンパ腫は、体液を浄化して白血球またはリンパ球を産生する、リンパ系の腺または節(脾臓、扁桃腺および胸腺)において発生する。白血病とは異なり、リンパ腫は固形腫瘍を形成する。リンパ腫は特定の臓器、例えば胃、乳房、または脳においても発生しうる; これはリンパ節外性リンパ腫といわれる)。リンパ腫は、2つの部類; ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫に亜分類される。ホジキンリンパ腫におけるリードシュテルンベルク細胞の存在は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫を診断的に区別する。リンパ腫の非限定的な例としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、有毛細胞白血病(HCL)が挙げられる。1つの態様において、がんはDLBCLまたは濾胞性リンパ腫である。
【0075】
白血病(「血液がん」としても知られている)は、血球の産生部位である骨髄のがんである。白血病は未熟な白血球の過剰産生と関連していることが多い。未熟な白血球は適切に機能せず、患者を感染しやすくする。白血病は赤血球にさらに影響を及ぼし、血液凝固不良および貧血による倦怠感を引き起こしうる。
【0076】
いずれかの局面の1つの態様において、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)である。白血病の例としては、骨髄性または顆粒球性白血病(骨髄性および顆粒球性白血球系の悪性腫瘍)、リンパ性、リンパ球性、またはリンパ芽球性白血病(リンパ性およびリンパ球性血液細胞系の悪性腫瘍)、および真性赤血球増加症または赤血病(さまざまな血球産物の悪性腫瘍であるが、赤血球が優勢である)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0077】
1つの態様において、がんは固形腫瘍である。固形腫瘍の非限定的な例としては、副腎皮質腫瘍、胞巣状軟部肉腫、軟骨肉腫、結腸直腸がん、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、内胚葉洞腫瘍、類上皮血管内皮腫、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍(固形腫瘍)、骨および軟部組織の巨大細胞腫瘍、肝芽腫、肝細胞がん、黒色腫、腎腫、神経芽細胞腫、非横紋筋肉腫軟部肉腫(NRSTS)、骨肉腫、傍脊柱肉腫、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。固形腫瘍は骨、筋肉、または臓器において見出すことができ、肉腫またはがん腫であることができる。
【0078】
いずれかの局面の1つの態様において、がんはがん療法に耐性である。いずれかの局面の1つの態様において、がんはアスパラギナーゼに耐性である。アスパラギナーゼなどの療法に耐性のがんは、以前は処置に応答したが、現在は継続的処置の存在にもかかわらず成長または存続が可能ながんである。治療法に対する耐性は、例えば、がん細胞における後天性の変異、がん細胞における遺伝子増幅、またはがん細胞が処置の取り込みを妨げる機構を発現するために起こりうる。いずれかの局面の1つの態様において、がんは、がん療法またはアスパラギナーゼに耐性ではない。
【0079】
1つの態様において、がんは転移性である(例えば、がんはその一次位置から少なくとも1つの二次位置に播種した)。
【0080】
1つの態様において、がんは、がん療法の実施の後に再発したものである。「再発がん」は、一定期間の改善後の疾患の徴候および症状または疾患の再発として定義される。
【0081】
アスパラギナーゼ、およびGSK3αを阻害する作用物質
非必須アミノ酸であるアスパラギンを分解する抗白血病酵素であるアスパラギナーゼは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置するために用いられる化学療法薬である。他のいくつかの血液障害を処置するために用いることもできる。アスパラギナーゼは当技術分野において、例えば、エルウィナーゼ、クリサンタスパーゼまたはL-アスパラギナーゼとしても公知である。アスパラギナーゼは、L-アスパラギンのアスパラギン酸およびアンモニアへの変換を触媒し、したがって白血病細胞から循環血中アスパラギンを奪い、これによって細胞死を引き起こす。
【0082】
1つの態様において、アスパラギナーゼはL-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)、SC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)、エルウィニアアスパラギナーゼ(エルウィナーゼ、組み換えクリサンタスパーゼ、または半減期伸長もしくはペグ化を伴う組み換えクリサンタスパーゼ)である。
【0083】
L-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)およびSC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)は全て、SEQ ID NO: 23の配列を有する遺伝子産物をコードする、その天然型かまたはポリエチレングリコールにコンジュゲート(ペグ化)されているかのいずれかの、大腸菌(Escherichia coli)アスパラギナーゼ遺伝子ansBに基づいている。
【0084】
エルウィニアアスパラギナーゼ(エルウィナーゼ、組み換えクリサンタスパーゼ、または半減期伸長を伴う組み換えクリサンタスパーゼ)は、SEQ ID NO: 24の配列を有する遺伝子産物をコードする、その天然型かまたはポリエチレングリコールにコンジュゲート(ペグ化)されているかのいずれかの、黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi) (ディッケヤ・クリサンテミィ(Dickeya chrysanthemi)としても公知)由来のansB遺伝子に基づいている。
【0085】
1つの態様において、アスパラギナーゼは、SEQ ID NO: 23または24の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上の配列同一性を有する配列を含む配列を有する遺伝子産物をコードする。1つの態様において、アスパラギナーゼは、SEQ ID NO: 23または24の配列全体を含む配列を有する遺伝子産物をコードする。別の態様において、アスパラギナーゼは、SEQ ID NO: 23または24の配列を有する遺伝子産物をコードし、ここでその断片はアスパラギナーゼの所望の機能、例えば、抗白血病酵素活性を保持する。
【0086】
アスパラギナーゼを精製および送達するための方法、ならびにアスパラギナーゼを含む組成物は、例えば、米国特許第3440142号; 同第3511754号; 同第3511755号; 同第3597323号; 同第3652402号; 同第3620925号; 同第3686072号; 同第3773624号; 同第4617271号; 同第6368845号; 同第7666652号; 同第9181552号; 同第9920311号; 同第10273444号; 米国特許出願公開第2002/0102251号; 同第2003/0186380号; 同第2010/00183765号; 同第2012/0100249号; 同第2013/0023029号; および国際出願番号WO1999/039732にさらに記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0087】
1つの局面において、GSK3αを阻害する作用物質はアスパラギナーゼと組み合わせて、がん、例えば白血病を有する対象に投与される。1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質は、小分子、抗体もしくは抗体断片、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ゲノム編集システム、またはRNAiである。
【0088】
本明細書において記載される作用物質は、GSK3αをその阻害のために標的にする。作用物質は、例えば投与時に、細胞内のGSK3αの存在、量、活性、および/またはレベルを阻害する場合、GSK3αを阻害するのに有効であると見なされる。1つの態様において、適切な対照と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、またはそれ以上、GSK3αのレベルおよび/または活性を阻害する作用物質。本明細書において用いられる場合、「適切な対照」は、作用物質の投与前のGSK3αのレベルおよび/もしくは活性、または作用物質と接触していなかった細胞集団におけるGSK3αのレベルおよび/もしくは活性をいう。GSK3αの阻害は、WNTシグナル伝達経路の活性化を防ぐ。当業者は、GSK3α mRNAもしくはタンパク質レベルをそれぞれ評価するためのPCRに基づくアッセイ法もしくはウエスタンブロッティングを用いて、または抗GSK3α抗体の免疫蛍光法を介してGSK3αタンパク質を可視化することによってGSK3αの存在、量またはレベルが低減されたかどうかを判定することができる。当業者は、抗ホスホβ-カテニン特異的抗体を用いたウエスタンブロッティングまたは免疫蛍光法により下流基質β-カテニンがリン酸化されるかどうかを判定するような、GSK3αの下流効果を評価する機能的アッセイ法を用いてGSK3αの活性が低減されたかどうかを判定することができる。
【0089】
作用物質は、例えば、細胞内のGSK3αの転写または翻訳を阻害することができる。作用物質は、細胞内のGSK3αの活性(例えば、GSK3αの発現)の活性を阻害するか、または活性を変化させる(例えば、活性がもはや発生しない、もしくは低減した速度で発生する)ことができる。
【0090】
1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質は、プログラムされた細胞死を促進し、例えば、細胞を死滅化する。作用物質がGSK3αの阻害に有効であるかどうかを判定するには、RT-PCRおよびウエスタンブロッティングをそれぞれ用いて、所与の標的(例えば、GSK3α)のmRNAおよびタンパク質のレベルを評価することができる。GSK3αの活性(例えば、WNT活性化)を検出する生物学的アッセイ法を用いて、プログラムされた細胞死が発生したかどうかを評価することができる。
【0091】
前記作用物質は、投与された形態で直接機能しうる。あるいは、作用物質は細胞内で修飾または用いられて、細胞への核酸配列の導入ならびにGSK3αの核酸および/またはタンパク質阻害物質の産生をもたらすその転写のような、GSK3αを阻害する何ものかを産生することができる。いくつかの態様において、作用物質は、合成および天然の非タンパク質性実体を含むがこれらに限定されない、任意の化学的な、実体または部分である。ある種の態様において、作用物質は、化学部分を有する小分子である。例えば、化学部分は、マクロライド、レプトマイシン、および関連する天然産物またはそれらの類似体を含む、非置換もしくは置換アルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分を含む。作用物質は、所望の活性および/もしくは特性を有することが知られているか、または多様な化合物のライブラリーから同定することができる。
【0092】
さまざまな態様において、作用物質は、GSK3αを阻害する小分子である。GSK3αの例示的な小分子阻害物質としては、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、チデグルシブ(NP031112)、およびAR-A014418が挙げられる。GSK3αの例示的な小分子阻害物質の化学構造を表2に示す。
【0093】
(表2)GSK3αの例示的な小分子阻害物質の化学構造
【0094】
さらに、1つの態様において、小分子は、例えば表2に列挙されているように、本明細書において記載される小分子のいずれかの誘導体、変種、もしくは類似体、または本明細書において記載される小分子のいずれかと実質的に類似している。分子は、通常は分子の一部ではない追加の化学的な部分を含む場合、および/または化学的に修飾されている場合、別の分子の「誘導体」であると言われる。そのような部分は、分子の発現レベル、酵素活性、溶解性、吸収、生物学的半減期などを改善することができる。あるいは、部分は、分子の毒性を減少させ、分子の望ましくない副作用などを排除または軽減することができる。そのような効果を媒介することができる部分は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R. Gennaro, Ed., MackPubl., Easton, PA (l990)に開示されている。分子の「変種」は、分子全体またはその断片のいずれかと構造および機能が実質的に類似している分子をいうよう意図される。両方の分子が実質的に類似した構造を有する場合、および/または両方の分子が類似の生物学的活性を保有する場合、分子は別の分子と「実質的に類似している」と言われる。したがって、2つの分子が同様の活性を保有するならば、一方の分子の構造が他方に見られない場合、または構造が同一でない場合でも、その用語が本明細書において用いられる場合、それらは変種と見なされる。分子の「類似体」は、分子全体またはその断片のいずれかと機能が実質的に類似している分子をいうよう意図される。
【0095】
1つの態様において、GSK3αの小分子阻害物質、例えば、表2に列挙されている小分子は、E3ユビキチンリガーゼ動員要素にコンジュゲートされている。本明細書において用いられる場合、「コンジュゲート」は、連結され、結び付けられ、会合され、結合され(共有結合的もしくは非共有結合的に)、またはそれらの任意の組み合わせによって、より大きな実体を形成する2つまたはそれ以上のより小さな実体(例えば、小分子およびE3ユビキチンリガーゼ動員要素)をいう。コンジュゲートされたE3ユビキチンリガーゼ動員要素はE3を動員し、これがE2からタンパク質基質へのユビキチンの移動を媒介する。ユビキチンのタンパク質基質への結合は、ユビキチンプロテアソームシステムを介した分解のためにタンパク質に印を付ける。したがって、E3ユビキチンリガーゼ動員要素にコンジュゲートされたGSK3αの小分子阻害物質は、例えば、GSK3αに結合し、その後、その分解を促進するであろう。E3ユビキチンリガーゼ動員要素は、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、またはHIF1-αのヒドロキシプロリン分解モチーフを模倣するVHLリガンドを含むことができるが、これらに限定されることはない。例示的なE3ユビキチンリガーゼ動員要素の化学構造は、本明細書において表3に提示されており、例えば、Pavia, SL, and Crews, CM. Current Opinion in Chemical Biology. 2019. 50; 111-119にさらに記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。コンジュゲートされたE3ユビキチンリガーゼ動員要素の使用は、米国特許第7,208,157B2号および同第9,770,512号にさらに記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0096】
1つの態様において、E3ユビキチンリガーゼ動員要素にコンジュゲートされた小分子は、リンカーをさらに含む。リンカーの仕様(例えば、長さ、配列など)が、小分子およびE3ユビキチンリガーゼ動員要素の最大効果のために最適化されることが本明細書において特に企図される。例えば、リンカーは、小分子のその標的(例えば、関心対象のタンパク質上の結合ポケット)への結合またはE2からタンパク質基質へのユビキチンの移動を妨害しないようにデザインされるであろう。
【0097】
(表3)
【0098】
さまざまな態様において、GSK3αを阻害する作用物質は、GSK3αに特異的な抗体もしくはその抗原結合断片、または抗体試薬である。本明細書において用いられる場合、用語「抗体試薬」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、かつ所与の抗原に特異的に結合するポリペプチドをいう。抗体試薬は、抗体または抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。いずれかの局面のいくつかの態様において、抗体試薬は、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチドを含むことができる。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および軽(L)鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)を含むことができる。もう1つの例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含む。用語「抗体試薬」は、抗体の抗原結合断片(例えば、一本鎖抗体、FabおよびsFab断片、F(ab')2、Fd断片、Fv断片、scFv、CDR、およびドメイン抗体(dAb)断片(例えば、de Wildt et al., Eur J. Immunol. 1996; 26(3):629-39を参照されたい; これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))ならびに完全抗体を包含する。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、またはIgM (ならびにそれらのサブタイプおよび組み合わせ)の構造的特徴を有することができる。抗体は、マウス、ウサギ、ブタ、ラットおよび霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類)を含む任意の供給源に由来することができ、霊長類化抗体であることもできる。抗体はまた、ミディボディ、ナノボディ、ヒト化抗体、キメラ抗体などを含む。
【0099】
1つの態様において、抗体または抗体試薬は、GSK3αをコードするアミノ酸配列(SEQ ID NO: 2)に対応するアミノ酸配列に結合する。
【0100】
別の態様において、抗GSK3α抗体または抗体試薬は、SEQ ID NO: 2の配列を含むアミノ酸配列に結合するか; またはSEQ ID NO: 2の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくはそれ以上の配列同一性を有する配列を含むアミノ酸配列に結合する。1つの態様において、抗GSK3α抗体または抗体試薬は、SEQ ID NO: 2の配列全体を含むアミノ酸配列に結合する。別の態様において、抗体または抗体試薬は、SEQ ID NO: 2の配列の断片を含むアミノ酸配列に結合し、ここで該断片はその標的、例えばGSK3αに結合し、GSK3α活性および/または発現を阻害するのに十分である。
【0101】
1つの態様において、抗GSK3α抗体または抗体試薬は、E3ユビキチンリガーゼ動員要素にコンジュゲートされている。1つの態様において、E3ユビキチンリガーゼ動員要素にコンジュゲートされた抗GSK3α抗体または抗体試薬は、リンカーをさらに含む。
【0102】
1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。本明細書において用いられる場合、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、マイクロRNAの配列のような、DNAまたはmRNA配列に相補的な合成された核酸配列をいう。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常、標的に結合し、転写、翻訳、またはスプライシングのレベルで発現を停止することにより、DNAまたはRNA標的の発現をブロックするようにデザインされている。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞条件下で遺伝子、例えば、GSK3αとハイブリダイズするようにデザインされた相補的核酸配列である。したがって、標的に対して十分に相補的である、すなわち、細胞環境の状況において十分によくハイブリダイズし、十分な特異性を有して、所望の効果を与えるオリゴヌクレオチドが選択される。例えば、GSK3αを阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それぞれ、ヒトGSK3α遺伝子のコード配列(例えば、SEQ ID NO: 1)の一部分に相補的な少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30塩基、またはそれ以上の塩基を含みうる。
【0103】
1つの態様において、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALENS、メガヌクレアーゼ、およびCRISPR/Casシステムを含むが、これらに限定されない、任意のゲノム編集システムを用いて、GSK3αが細胞のゲノムから欠失される。1つの態様において、1つまたは複数のガイドRNAをコードする核酸を細胞のゲノムに組み込むために用いられるゲノム編集システムは、CRISPR/Casシステムではなく; これにより、少量のCas酵素/タンパク質を保持する細胞での望ましくない細胞死を抑止することができる。本明細書においてCas酵素またはsgRNAのいずれかがそれぞれ異なる誘導性プロモーターの制御下で発現され、それによってそれぞれの一時的な発現がそのような干渉を抑止することを可能にすることも企図される。
【0104】
1つまたは複数のsgRNAをコードする核酸およびRNA誘導エンドヌクレアーゼをコードする核酸がそれぞれインビボで投与される必要がある場合、アデノウイルス関連ベクター(AAV)の使用が特に企図される。ゲノム編集/断片化システムの両方の構成要素(例えば、sgRNA、RNA誘導エンドヌクレアーゼ)に核酸を同時に送達するための他のベクターは、エプスタインバーウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびB型肝炎ウイルス(HBV)のような、レンチウイルスベクターを含む。RNA誘導ゲノム編集システムの各構成要素(例えば、sgRNAおよびエンドヌクレアーゼ)は、当技術分野において公知のようにまたは本明細書において記載のように別個のベクターで送達することができる。
【0105】
1つの態様において、作用物質はRNA阻害によってGSK3αを阻害する。所与の遺伝子の発現阻害物質は阻害性核酸であることができる。いずれかの局面のいくつかの態様において、阻害性核酸は阻害性RNA (iRNA)である。RNAiは一本鎖または二本鎖であることができる。
【0106】
iRNAは、siRNA、shRNA、内因性マイクロRNA (miRNA)、または人工miRNAであることができる。1つの態様において、本明細書において記載のiRNAは標的、例えばGSK3αの発現および/または活性の阻害をもたらす。いずれかの局面のいくつかの態様において、作用物質は、GSK3αを阻害するsiRNAである。いずれかの局面のいくつかの態様において、作用物質は、GSK3αを阻害するshRNAである。
【0107】
当業者は、例えば公的に使用可能なデザインツールを用いて、GSK3αを標的にするようにsiRNA、shRNA、またはmiRNAをデザインすることができよう。siRNA、shRNAまたはmiRNAは通常、Dharmacon (Layfayette, CO)またはSigma Aldrich (St. Louis, MO)のような企業を使って作製される。
【0108】
いずれかの局面のいくつかの態様において、iRNAはdsRNAであることができる。dsRNAには、dsRNAが使用される条件の下でハイブリダイズして二本鎖構造を形成するのに十分に相補的な2本のRNA鎖が含まれる。dsRNAの1つの鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に対して実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である相補性の領域を含む。標的配列は、標的の発現中に形成されたmRNAの配列に由来することができる。他鎖(センス鎖)には、適切な条件の下で組み合わされると、2本の鎖がハイブリダイズして二本鎖構造を形成するような、アンチセンス鎖に相補的な領域が含まれる。
【0109】
iRNAのRNAは、安定性または他の有益な特性を増強するために化学的に修飾することができる。本発明において特徴付けられる核酸は、参照により本明細書に組み入れられる「Current protocols in nucleic acid chemistry」, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているものなどの、当技術分野において十分に確立された方法によって合成および/または修飾されうる。
【0110】
1つの態様において、作用物質は、GSK3αを阻害するmiRNAである。マイクロRNAは、22ヌクレオチドの平均長を有する小さな非コードRNAである。これらの分子は、通常は3'非翻訳(3'UTR)領域中の、mRNA分子内の相補配列に結合することによって作用し、それによって標的mRNAの分解またはmRNA翻訳の阻害を促進する。マイクロRNAとmRNAとの間の相互作用は、不完全なワトソン・クリック塩基対合を通じてmRNAへの配列特異的結合を指令するマイクロRNAの6~8ヌクレオチド領域である「シード配列」として知られるものによって媒介される。900種類超のマイクロRNAが哺乳類において発現されることが知られている。これらの多くは、そのシード配列に基づいてファミリーに分類され、それによって類似のマイクロRNAの「クラスタ」を同定することができる。miRNAは細胞内で、例えば、裸のDNAとして発現されうる。miRNAは、細胞内で発現される核酸によって、例えば、裸のDNAとしてコードされうるか、またはベクター内に含まれる核酸によってコードされうる。
【0111】
前記作用物質は、RNAi分子(例えば、siRNAまたはmiRNA)などを用いて、標的遺伝子(例えば、GSK3α)の遺伝子サイレンシングをもたらしうる。これは、作用物質の存在なしで細胞に見出されるmRNAレベルの少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、約100%の標的に対する細胞内のmRNAレベルの減少を伴う。1つの好ましい態様において、mRNAレベルは少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、約100%低減する。当業者は、例えば、siRNA、shRNA、またはmiRNAを細胞にトランスフェクションし、ウエスタンブロッティングを介して細胞内に見出される遺伝子(例えば、GSK3α)のレベルを検出することにより、siRNA、shRNA、またはmiRNAが、例えばGSK3αを、その下方制御について効果的に標的にするかどうかを容易に評価することができよう。
【0112】
前記作用物質は、ベクターに含まれてもよく、したがってベクターをさらに含んでもよい。外因性遺伝子を標的哺乳類細胞に移入するのに有用な多くのそのようなベクターが使用可能である。ベクターはエピソーム、例えばプラスミド、サイトメガロウイルス、アデノウイルスなどのようなウイルス由来ベクターであってもよいか、または相同組み換えもしくはランダム組み込み、例えばMMLV、HIV-1、ALVなどのようなレトロウイルス由来ベクターを通じて、標的細胞ゲノムに組み込まれてもよい。いくつかの態様において、レトロウイルスおよび適切なパッケージング細胞株の組み合わせもまた、キャプシドタンパク質が標的細胞に感染するために機能する場合に、用途がありうる。通常、細胞およびウイルスは培地中で少なくとも約24時間インキュベートされる。次に、細胞は、いくつかの用途において、例えば24~73時間の、短い間隔で、または少なくとも2週間、培地中で増殖させられ、分析前に、5週またはそれ以上の間、増殖させられうる。一般的に用いられるレトロウイルスベクターは「欠損が」あり、すなわち増殖性感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。ベクターの複製には、パッケージング細胞株での増殖が必要とされる。
【0113】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、宿主細胞への送達または異なる宿主細胞の間の移入のためにデザインされた核酸コンストラクトをいう。本明細書において用いられる場合、ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性であることができる。「ベクター」という用語は、適切な制御要素と関連した場合に複製が可能となる任意の遺伝要素であって、細胞に遺伝子配列を移入することができる、遺伝要素を包含する。ベクターは、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0114】
本明細書において用いられる場合、「発現ベクター」という用語は、その中に含まれ、ベクター上の転写調節配列と連結されている核酸配列からのRNAまたはポリペプチド(例えば、GSK3α阻害物質)の発現を指令するベクターをいう。発現される配列は、多くの場合に細胞に対して異種であるが、必ずしも異種であるわけではない。発現ベクターは、追加的な要素を含む場合があり、例えば、発現ベクターは、2つの複製システムを有することで、それが2つの生物に、例えば発現についてヒト細胞に、ならびにクローニングおよび増幅について原核生物宿主に維持されることを可能にしうる。「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質を産生することならびに適宜、タンパク質を分泌することに関与する細胞過程をいい、この細胞過程は、該当する場合、非限定的に例えば、転写、転写産物プロセッシング、翻訳ならびにタンパク質の折り畳み、修飾およびプロセッシングを含む。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られるポリペプチドを含む。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列と機能的に連結される場合にインビトロまたはインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域、例えば5'非翻訳(5'UTR)配列または「リーダー」配列および3'UTR配列または「トレーラー(trailer)」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)に先行および後続する領域を含む場合または含まない場合がある。
【0115】
組み込みベクターは、その送達されるRNA/DNAが宿主細胞染色体に恒久的に組み入れられている。非組み込みベクターはエピソームのままであり、これは、その中に含まれる核酸が宿主細胞染色体に組み込まれることは決してないことを意味する。組み込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ハイブリッドアデノウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
【0116】
非組み込みベクターの一例は、非組み込みウイルスベクターである。非組み込みウイルスベクターは、そのゲノムを宿主DNAに組み込まないため、組み込みレトロウイルスがもたらすリスクを排除する。一例はエプスタインバーoriP/核抗原-1 (「EBNA1」)ベクターであり、これは、自己複製の制限を可能にし、哺乳類細胞において機能することが知られている。エプスタインバーウイルスの2つの要素oriPおよびEBNA1を含むため、EBNA1タンパク質のウイルスレプリコン領域oriPへの結合は、哺乳類細胞におけるプラスミドの比較的長期間のエピソーム存在を維持する。oriP/EBNA1ベクターのこの特定の特徴により、組み込みのないiPSCの作製に理想的である。別の非組み込みウイルスベクターは、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0117】
別の非組み込みウイルスベクターはRNAセンダイウイルスベクターであり、これは感染細胞の核に侵入することなくタンパク質を産生することができる。F欠損センダイウイルスベクターは2、3回の継代の間、感染細胞の細胞質に残存するが、数回の継代(例えば、10回の継代)後に急速に希釈され、完全に失われる。
【0118】
非組み込みベクターの別の例は、ミニサークルベクターである。ミニサークルベクターは、プラスミド骨格が放出され、発現される真核生物プロモーターおよびcDNAのみが残っている環状ベクターである。
【0119】
本明細書において用いられる場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、ウイルスベクター粒子中にパッケージングされる能力を有する核酸ベクターコンストラクトをいう。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに本明細書において記載されるポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。ベクターおよび/または粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで核酸を細胞中に移入する目的で用いられうる。多数の形態のウイルスベクターが当技術分野において公知である。
【0120】
投与
いくつかの態様において、本明細書において記載される方法は、本明細書において記載されるアスパラギナーゼと組み合わせて、GSK3αを阻害する作用物質を投与する段階を含む、がん(例えば、白血病、結腸がんまたは膵臓がん)を有するまたは有すると診断された対象の処置に関する。いくつかの態様において、本明細書において記載される方法は、本明細書において記載されるアスパラギナーゼを投与する段階を含むGSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有するまたは有すると診断された対象の処置に関する。がんを有する対象は、医師により状態を診断する現行の方法を用いて同定することができる。この疾患を特徴付け、診断に役立つがんの症状および/または合併症は、当技術分野において周知である。例えばがん、の診断に役立ちうる検査は、血液検査および非侵襲的画像診断を含む。特定のがんの家族歴は、対象が状態を有する可能性が高いかどうかを判定するうえでも役立ち、またはがんの診断を下すうえでも役立つ。
【0121】
本明細書において記載される作用物質(例えば、GSK3αを阻害する作用物質)およびアスパラギナーゼは、がん(例えば、白血病、結腸がんまたは膵臓がん)を有するまたは有すると診断された対象に組み合わせて投与することができる。本明細書において記載される作用物質またはアスパラギナーゼの投与は、種々の方法で、例えば、単回用量で、複数回用量の繰り返しで、持続注入を介して、パルス投与を介して実施することができる。1つの態様において、本明細書において記載される作用物質またはアスパラギナーゼは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間ごとに; あるいは1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごとに; あるいは1、2、3、もしくは4週ごとに; あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月、またはそれ以上ごとに少なくとも1回対象に投与することができる。本明細書において記載される作用物質またはアスパラギナーゼの投薬は、対象において、例えば、作用物質の効果(例えば、GSKαの阻害)が連続的、またはほぼ連続的であるように、作用物質の半減期に基づいて決定されることが本明細書において特に企図される。例えば、所与のGSKα阻害物質の半減期が12時間である場合、それは、対象におけるGSKαの継続的な阻害を維持するように、対象に12時間ごとに投与されるであろう。
【0122】
1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質、およびアスパラギナーゼは、同じ方法で投与され、例えば、GSK3αを阻害する作用物質、およびアスパラギナーゼは、単回用量で、複数回用量で、持続注入を介して、パルス投与を介して投与される。1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質、およびアスパラギナーゼは、異なる方法で投与され、例えば、GSK3αを阻害する作用物質は持続注入を介して投与され、アスパラギナーゼは単回用量で投与される。
【0123】
1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質、およびアスパラギナーゼは、投与のために1つの組成物中で一緒に製剤化される。1つの態様において、GSK3αを阻害する作用物質、およびアスパラギナーゼは、別個の組成物中で製剤化され、別個の組成物として投与される。
【0124】
いくつかの態様において、本明細書において記載される方法は、所与のがんの少なくとも1つの症状を軽減するために、有効量の作用物質を対象に投与する段階を含む。本明細書において用いられる場合、「所与のがんの少なくとも1つの症状を軽減すること」は、がんに関連する任意の状態または症状を改善することである。同等の未処理対照と比較して、そのような低減は、任意の標準的な技法により測定された場合、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれ以上である。本明細書において記載される作用物質および/またはアスパラギナーゼを対象に投与するための種々の手段が、当業者に知られている。1つの態様において、作用物質は全身的または局所的に(例えば罹患臓器、例えば結腸に)投与される。1つの態様において、作用物質は静脈内に投与される。1つの態様において、作用物質は連続的に、間隔を置いて、または散発的に投与される。作用物質の投与経路は、送達される作用物質のタイプ(例えば、抗体、小分子、RNAi)に合わせて最適化され、熟練した施術者が決定することができる。
【0125】
本明細書において用いられる「有効量」という用語は、がんの少なくとも1つまたは複数の症状を軽減するために必要ながん(例えば、白血病、結腸がんまたは膵臓がん)を有するまたは有すると診断された対象に投与されうる作用物質(例えば、GSK3αを阻害する作用物質)および/またはアスパラギナーゼの量をいう。用語「治療的有効量」はそれゆえ、典型的な対象への投与時に特定の抗がん効果をもたらすのに十分である作用物質および/またはアスパラギナーゼの量をいう。本明細書において用いられる有効量はまた、さまざまな状況で、がんの症状の発現を遅延させるのに、がんの症状の経過を変化させるのに(例えば、がんの進行を遅らせるのに)、またはがんの症状を反転させるのに十分な作用物質および/またはアスパラギナーゼの量を含む。したがって、正確な「有効量」を指定することは一般に実用的ではない。しかしながら、任意の所与の場合に、当業者は日常の実験のみを用いて適切な「有効量」を判定することができる。
【0126】
1つの態様において、作用物質および/またはアスパラギナーゼは、連続的に(例えば、一定期間にわたって一定のレベルで)投与される。作用物質の連続投与は、例えば、表皮パッチ、連続放出製剤、またはオンボディ型インジェクタによって、達成することができる。
【0127】
有効量、毒性、および治療有効性は、細胞培養物または実験動物での標準の薬学的手順によって評価することができる。投与量は、採用される剤形および使用される投与経路に依って変化しうる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50比として表すことができる。大きい治療指数を示す組成物および方法が好ましい。治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイ法から最初に推定することができる。また、一定用量を動物モデルにおいて処方して、細胞培養または適切な動物モデルにおいて判定された通りのIC50 (すなわち、症状の半最大阻害を達成する作用物質濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の投与量の効果は、例えば、数ある中でも、神経機能、または血液検査を測定する、適切なバイオアッセイ法によってモニターすることができる。投与量は、医師が判定し、必要に応じて調整し、認められる処置効果に合わせることができる。
【0128】
投与量
「単位剤形」は、この用語が本明細書において用いられる場合、適切な1回の投与のための投薬量をいう。例として、単位剤形は、送達デバイス、例えば、シリンジまたは静脈内点滴バッグに配置された治療用物質の量であることができる。1つの態様において、単位剤形は、単回投与で投与される。別の態様において、2つ以上の単位剤形を同時に投与することができる。
【0129】
典型的には、投与量の範囲は0.001 mg/kg体重と5 g/kg体重を含めて、0.001 mg/kg体重~5 g/kg体重である。いくつかの態様において、投与量の範囲は0.001 mg/kg体重~1 g/kg体重、0.001 mg/kg体重~0.5 g/kg体重、0.001 mg/kg体重~0.1 g/kg体重、0.001 mg/kg体重~50 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~25 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~10 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~5 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~1 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~0.1 mg/kg体重、0.001 mg/kg体重~0.005 mg/kg体重である。あるいは、いくつかの態様において、投与量の範囲は0.1 g/kg体重~5 g/kg体重、0.5 g/kg体重~5 g/kg体重、1 g/kg体重~5 g/kg体重、1.5 g/kg体重~5 g/kg体重、2 g/kg体重~5 g/kg体重、2.5 g/kg体重~5 g/kg体重、3 g/kg体重~5 g/kg体重、3.5 g/kg体重~5 g/kg体重、4 g/kg体重~5 g/kg体重、4.5 g/kg体重~5 g/kg体重、4.8 g/kg体重~5 g/kg体重である。1つの態様において、用量の範囲は5 μg/kg体重~30 μg/kg体重である。あるいは、用量の範囲は血清レベルを5 μg/mL~30 μg/mLに維持するように用量設定されるであろう。
【0130】
本明細書において記載される作用物質および/またはアスパラギナーゼの投与量は、医師が判定し、必要に応じて調整し、認められる処置効果に合わせることができる。処置の期間および頻度に関して、熟練した臨床医は、処置がいつ治療効果をもたらすかを決定するために対象をモニターし、さらに細胞を投与するか、処置を中止するか、処置を再開するか、または処置計画に対して他の変更を行うかを決定するのが一般的である。投与量は、サイトカイン放出症候群のような、有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、および性別によって異なり、当業者によって決定されることができる。いずれかの合併症が発生した場合、個々の医師が投与量を調整することもできる。
【0131】
組み合わせ処置
1つの局面において、本明細書において記載される作用物質およびアスパラギナーゼは、がんの処置のために組み合わせて投与される。本明細書において用いられる「組み合わせて」投与されるとは、障害による対象の苦痛の経過中に2つ(またはそれ以上)の異なる処置(例えば、アスパラギナーゼ、およびGSK3αを阻害する作用物質、またはがん療法)が対象に送達される、例えば、対象が障害(例えば、がん)と診断された後に、かつ障害が治癒されもしくは取り除かれる前に、または他の理由で処置が中止される前に、2つまたはそれ以上の処置が送達されることを意味する。いくつかの態様において、1つの処置の送達は、第2の処置の送達が始まる時に依然として行われているので、投与という点で重複している。これは本明細書において「同時」または「同時送達」といわれることもある。他の態様において、一方の処置の送達は、他方の処置の送達が始まる前に終了する。いずれかの場合のいくつかの態様において、処置は、組み合わせた実施のためにより効果的である。例えば、第2の処置はより効果的であり、例えば、第2の処置を少なくしても同等の効果が見られるか、または第2の処置が第1の処置の非存在下で実施された場合に見られるよりも大幅に、第2の処置が症状を低減するか、または第1の処置で同様の状況が見られる。いくつかの態様において、送達は、症状の低減、または障害に関連する他のパラメータが、他方の非存在下で送達された一方の処置で観察されるものよりも大きいようなものである。2つの処理の効果は、部分的に相加的である場合、完全に相加的である場合、または相加的よりも大きい場合がある。送達は、送達された第1の処置の効果が、第2の処置が送達される時に依然として検出可能であるようなものであることができる。本明細書において記載される作用物質および少なくとも1つのさらなる治療は同時に、同じもしくは別々の組成物中で、または連続的に投与することができる。連続投与の場合、本明細書において記載される作用物質および/またはアスパラギナーゼを最初に投与することができ、さらなる作用物質を2番目に投与することができ、または投与の順序を逆にすることができる。作用物質および/または他の治療剤、手順、もしくはモダリティは、活動性障害の期間中、または寛解もしくは活動性の低い疾患の期間中に投与することができる。作用物質は、別の処置の前に、処置と同時に、処置後に、または障害の寛解中に投与することができる。
【0132】
組み合わせて投与される場合、作用物質およびアスパラギナーゼ、または全ては、個別に、例えば単剤療法として、用いられる各作用物質の量もしくは投与量よりも多い、少ない、またはその量もしくは投与量と同じ量または用量で投与することができる。ある種の態様において、作用物質、さらなる作用物質(例えば、第2もしくは第3の作用物質)、または全ての投与される量または投与量は、個別に用いられる各作用物質の量または投与量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%)。他の態様において、所望の効果(例えば、がんの処置)をもたらす作用物質、さらなる作用物質(例えば、第2もしくは第3の作用物質)、または全ての量または投与量は、同じ治療効果を達成するために個別に必要とされる各作用物質の量または投与量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低い)。
【0133】
1つの態様において、がん療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、手術、ホルモン療法、幹細胞療法、標的療法、遺伝子療法、および精密療法からなる群より選択される。
【0134】
本明細書において記載されるいずれかの方法の他の態様において、がん療法は、増殖抑制物質、細胞毒性剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、抗HER-2抗体、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト、HER1/EGFR阻害物質、血小板由来成長因子阻害物質、COX-2阻害物質、インターフェロン、およびサイトカイン(例えば、G-CSF、顆粒球-コロニー刺激因子)からなる群より選択される。
【0135】
他の態様において、がん療法は、13-シス-レチノイン酸、2-CdA、2-クロロデオキシアデノシン、5-アザシチジン、アザシチジン、5-フルオロウラシル、5-FU、6-メルカプトプリン、6-MP、6-TG、6-チオグアニン、酢酸アビラテロン、アブラキサン、アキュテイン(登録商標)、アクチノマイシン-D、アドリアマイシン(登録商標)、アドルシル(登録商標)、アフィニトール(登録商標)、アグリリン(登録商標)、Ala-Cort(登録商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、アルカバン-AQ(登録商標)、アルケラン(登録商標)、オールトランスレチノイン酸、αインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナンドロン(登録商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、Ara-C、アラネスプ(登録商標)、アレディア(登録商標)、アリミデックス(登録商標)、アロマシン(登録商標)、アラノン(登録商標)、三酸化ヒ素、アルゼラ(商標)、アスパラギナーゼ、ATRA、アバスチン(登録商標)、アキシチニブ、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、BEXXAR(登録商標)、ビカルタミド、BiCNU、ブレノキサン(登録商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブルスファン、ブスルフェクス(登録商標)、C225、カバジタキセル、ロイコボリンカルシウム、カンパス(登録商標)、カンプトサール(登録商標)、カンプトテシン-11、カペシタビン、カプレルサ(登録商標)、カラック(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチンウエハ、カソデックス(登録商標)、CC-5013、CCI-779、CCNU、CDDP、CeeNU、セルビジン(登録商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、シトロボラム因子、クラドリビン、コルチゾン、コスメゲン(登録商標)、CPT-11、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタドレン(登録商標)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサール-U(登録商標)、サイトキサン(登録商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンα、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーム、ダウノキソーム(登録商標)、デカドロン、デシタビン、デルタ-コルテフ(登録商標)、デルタソン(登録商標)、デニロイキン、ディフティトックス、デノスマブ、デポサイト(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、デキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ディオデックス、ドセタキセル、ドキシル(登録商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドロキシア(商標)、DTIC、DTIC-Dome(登録商標)、デュラロン(登録商標)、エクリズマブ、エフデックス(登録商標)、エリガード(商標)、エレンス(商標)、エロキサチン(商標)、エルスパル(登録商標)、エムシト(登録商標)、エピルビシン、エポエチンα、エルビタックス、エリブリン、エルロチニブ、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチオールエトポホス(登録商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、ユーレキシン(登録商標)、エベロリムス、エビスタ(登録商標)、エキセメスタン、ファレストン(登録商標)、ファスロデックス(登録商標)、フェマラ(登録商標)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラ(登録商標)、フルダラビン、フルオロプレックス(登録商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(登録商標)、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲムザール、グリーベック(商標)、グリアデル(登録商標)ウェーファ、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ハラヴェン(登録商標)、ハロテスチン(登録商標)、ハーセプチン(登録商標)、ヘキサドロール、ヘキサレン(登録商標)、ヘキサメチルメラニン、HMM、ヒカムチン(登録商標)、ヒドレア(登録商標)、ヒドロコートアセテート(登録商標)、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、ヒドロコートンリン酸、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、イダマイシン(登録商標)、イダルビシン、イフェックス(登録商標)、IFN-α、イホスファミド、IL-11、IL-2、メシル酸イマチニブ、イミダゾールカルボキサミド、インライタ(登録商標)、インターフェロンα、インターフェロンα-2b (PEGコンジュゲート)、インターロイキン-2、インターロイキン-11、イントロンA(登録商標)(インターフェロンα-2b)、イピリムマブ、イレッサ(登録商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イクサベピロン、イキセムプラ(商標)、ジェブタナ(登録商標)、キドロラーゼ(t)、ラナコート(登録商標)、ラパチニブ、L-アスパラギナーゼ、LCR、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、ロイキン(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、ロイスタチン(商標)、リポソームAra-C、リキッドプレッド(登録商標)、ロムスチン、L-PAM、L-サルコリシン、ルプロン(登録商標)、ルプロンデポ(登録商標)、マツラン(登録商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メドラロン(登録商標)、メドロール(登録商標)、メガス(登録商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(商標)、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチコルテン(登録商標)、マイトマイシン、マイトマイシン-C、ミトキサントロン、M-プレドニソール(登録商標)、MTC、MTX、ムスタルゲン(登録商標)、ムスチン、ムタマイシン(登録商標)、ミレラン(登録商標)、ミロセル(商標)、ミロタルグ(登録商標)、ナベルビン(登録商標)、ネララビン、ネオサル(登録商標)、ニューラスタ(商標)、ニューメガ(登録商標)、ニューポゲン(登録商標)、ネキサバル(登録商標)、ニランドロン(登録商標)、ニロチニブ、ニルタミド、ニペント(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、ノバルデックス(登録商標)、ノバントロン(登録商標)、エヌプレート、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、オファツムマブ、オンコスパル(登録商標)、オンコビン(登録商標)、オンタック(登録商標)、オンキサル(商標)、オプレルベキン、オラプレッド(登録商標)、オラソン(登録商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、パンレチン(登録商標)、パラプラチン(登録商標)、パゾパニブ、ペディアプレッド(登録商標)、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG-INTRON(商標)、PEG-L-アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、プラチノール(登録商標)、プラチノール-AQ(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレロン(登録商標)、プロカルバジン、PROCRIT(登録商標)、プロロイキン(登録商標)、プロリア(登録商標)、カルムスチンインプラントを伴うプロリフェプロスパン20、プロベンジ(登録商標)、プリントール(登録商標)、ラロキシフェン、レブリミド(登録商標)、リューマトレックス(登録商標)、リツキサン(登録商標)、リツキシマブ、ロフェロン-A(登録商標)(インターフェロンα-2a)、ロミプロスチム、ルベックス(登録商標)、塩酸ルビドマイシン、サンドスタチン(登録商標)、サンドスタチンLAR(登録商標)、サルグラモスチム、シプリューセル-T、ソリリス(登録商標)、ソル-コルテフ(登録商標)、ソル-メドロール(登録商標)、ソラフェニブ、SPRYCEL(商標)、STI-571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、スーテント(登録商標)、タモキシフェン、タルセバ(登録商標)、タルグレチン(登録商標)、タシグナ(登録商標)、タキソール(登録商標)、タキソテレ(登録商標)、テモダル(登録商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、サロミド(登録商標)、テラシス(登録商標)、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(登録商標)、チオホスホアミド、チオプレックス(登録商標)、チオテパ、TICE(登録商標)、トポサル(登録商標)、トポテカン、トレミフェン、トリセル(登録商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレアンダ(登録商標)、トレチノイン、トレキサル(商標)、トリセノックス(登録商標)、TSPA、TYKERB(登録商標)、バルルビシン、バルスター、バンデタニブ、VCR、ベクチビックス(商標)、ベルバン(登録商標)、ベルカード(登録商標)、ベムラフェニブ、ベプシド(登録商標)、ベサノイド(登録商標)、ビアジュール(商標)、ビダザ(登録商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンカサルPfs(登録商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM-26、ボリノスタット、ヴォトリエント、VP-16、ブモン(登録商標)、ザーコリカプセル、キセロダ(登録商標)、Xゲバ(Xgeva)(登録商標)、ヤーボイ(登録商標)、ザノサー(登録商標)、ゼルボラフ、ゼバリン(商標)、ジネカード(登録商標)、ゾラデックス(登録商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザ、ゾメタ(登録商標)、およびザイティガ(登録商標)からなる群より選択される。
【0136】
非経口剤形
本明細書において記載される作用物質および/またはアスパラギナーゼの非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内を含むが、これらに限定されない、さまざまな経路によって対象に投与することができる。非経口剤形の投与は、通常、混入物に対する患者の自然防御を回避するので、非経口剤形は、好ましくは、無菌であるか、または患者への投与の前に滅菌することができる。非経口剤形の例としては、注射の準備ができている溶液、注射用の薬学的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁される準備ができている乾燥製品、注射の準備ができている懸濁液、制御放出性の非経口剤形、および乳濁液が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0137】
本開示の非経口剤形を提供するために用いられうる適切なビヒクルは、当業者には周知である。例としては、非限定的に、滅菌水; 注射用水USP; 生理食塩溶液; グルコース溶液; 限定されることはないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸加リンゲル注射液のような、水性ビヒクル; 限定されることはないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールのような、水混和性ビヒクル; ならびに限定されることはないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルのような、非水性ビヒクルが挙げられる。
【0138】
制御放出性および遅延放出性の剤形
本明細書において記載される局面のいくつかの態様において、作用物質および/またはアスパラギナーゼは、制御放出性または遅延放出性の手段によって対象に投与される。理想的には、医療処置での最適にデザインされた制御放出調製物の使用は、最少量の薬物を用い、最小限の時間で状態を治癒または制御することによって特徴付けられる。制御放出製剤の利点には、1) 薬物の活性延長; 2) 投薬頻度の低減; 3) 患者のコンプライアンス増大; 4) 合計薬物の使用減少; 5) 局所または全身副作用の低減; 6) 薬物蓄積の最小化; 7) 血中レベルの変動低減; 8) 処置の有効性の改善; 9) 薬物活性の増強または消失の低減; および10) 疾患または状態の制御速度の改善が挙げられる。(Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 2 (Technomic Publishing, Lancaster, Pa.: 2000))。制御放出製剤を用いて、式(I)の化合物の作用の発現、作用の持続期間、治療ウィンドウ内の血漿中レベル、およびピーク血中レベルを制御することができる。特に、制御放出性または延長放出性の剤形または製剤を用いて、作用物質の最大の有効性を達成する一方で、薬物の過少投与(すなわち、最低治療レベルを下回る)および薬物の毒性レベルの超過の両方から起こりうる、可能性のある有害作用および安全性の問題を最小限にすることを確実にできる。
【0139】
種々の公知の制御放出性または持続放出性の剤形、製剤、および装置は、本明細書において記載されるいずれかの作用物質で用いるのに適合されうる。例としては、米国特許第3,845,770号; 同第3,916,899号; 同第3,536,809号; 同第3,598,123号; 同第4,008,719号; 同第5674,533号; 同第5,059,595号; 同第5,591,767号; 同第5,120,548号; 同第5,073,543号; 同第5,639,476号; 同第5,354,556号; 同第5,733,566号; および同第6,365,185号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されることはなく、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。これらの剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、ゲル、透過性膜、浸透性システム(OROS (登録商標) (Alza Corporation, Mountain View, Calif. USA)のような)、多層コーティング、微粒子、リポソームもしくはミクロスフェア、またはこれらの組み合わせを用い1種類または複数種類の活性成分の遅延放出または制御放出を提供して、さまざまな比率での所望の放出特性を提供することができる。さらに、イオン交換材料を用いて、開示された化合物の固定化され、吸着された塩形態を調製することができ、したがって薬物の制御送達をもたらすことができる。特定の陰イオン交換体の例としては、DUOLITE(登録商標) A568およびDUOLITE(登録商標) AP143 (Rohm&Haas, Spring House, Pa. USA)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0140】
有効性
例えば、がんの処置のための、本明細書において記載される作用物質および/またはアスパラギナーゼの有効性は、当業者によって決定されることができる。しかしながら、がんの兆候もしくは症状の1つもしくは複数が有益な方法で変化する場合には、他の臨床的に認められた症状が改善され、もしくはさらに好転される場合には、または所望の応答が、例えば、本明細書において記載される方法による処置後に少なくとも10%誘導される場合には、「有効な処置」という用語が本明細書において用いられるように、処置は「有効な処置」と見なされる。有効性は、例えば、マーカー、指標、症状、および/もしくは本明細書において記載される方法によって処置される状態(例えば、がん)の発生率または適切な任意の他の測定可能なパラメータを測定することにより評価することができる。有効性は、入院によって評価されるように個体が悪化しないこと、または医学的介入の必要性(すなわち、がんの進行)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、かつ/または本明細書において記載されている。
【0141】
有効性は、例えば、本明細書において記載される状態の動物モデル、場合によっては、所与のがんのマウスモデルまたは適切な動物モデルにおいて評価することができる。実験動物モデルを用いる場合、例えば、腫瘍サイズの低減、または転移の予防など、マーカーの統計的に有意な変化が観察される場合に、処置の有効性が証明される。
【0142】
特定される全ての特許、特許出願、および刊行物は、例えば、本発明に関連して用いられうるこのような刊行物において記載されている方法を記載かつ開示することを目的として明確に参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、単にこれらの開示が本出願の出願日以前であるために提供されるものである。これに関していかなる内容も、先行発明であるとの理由でまたは何らかの他の理由で本発明者らがそのような開示に先行する権利を有しないことの承認と解釈されるべきではない。これらの文献の内容に関する日付または表現についての全ての言明は、本出願人らに入手可能な情報に基づいており、これらの文献の日付または内容の正確さに関する承認をなすものではない。
【0143】
本明細書において記載される本発明は、番号が付けられた以下の項目においてさらに説明されうる。
1. がんを有する対象にアスパラギナーゼとGSK3αを阻害する作用物質とを投与する段階を含む、がんを処置するための方法。
2. 前記がんが、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、およびリンパ腫からなるリストから選択される、項目1の方法。
3. 前記がんが固形腫瘍である、項目1の方法。
4. 前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)である、項目2の方法。
5. 前記がんがアスパラギナーゼに耐性である、項目1の方法。
6. 前記がんがアスパラギナーゼに耐性ではない、項目1の方法。
7. 前記アスパラギナーゼが、L-アスパラギナーゼ(Elspar)、ペグアスパルガーゼ(PEG-アスパラギナーゼ; Oncaspar)、SC-PEGアスパラギナーゼ(カラスパルガーゼペゴル)、およびエルウィニアアスパラギナーゼ(エルウィナーゼ)からなる群より選択される、項目1の方法。
8. GSK3αを阻害する前記作用物質が、小分子、抗体、ペプチド、ゲノム編集システム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびRNAiからなる群より選択される、項目1の方法。
9. 前記小分子が、BRD0705、BRD4963、BRD1652、BRD3731、CHIR-98014、LY2090314、AZD1080、CHIR-99021 (CT99021) HCl、CHIR-99021 (CT99021)、BIO-アセトキシム、SB216763、SB415286、NP031112、アベマシクリブ(LY2835210)、AT-9283、RGB-286638、PHA-793887、AT-7519、AZD-5438、OTS-167、9-ING-41、およびチデグルシブ(NP031112)からなる群より選択される、項目8の方法。
10. 前記小分子がBRD0705である、項目8の方法。
11. 前記RNAiがマイクロRNA、siRNA、またはshRNAである、項目8の方法。
12. GSK3αを阻害することが、GSK3αの発現レベルおよび/または活性を阻害することである、項目1の方法。
13. GSK3αの前記発現レベルおよび/または活性が、適切な対照と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上阻害される、項目12の方法。
14. 前記対象に抗がん療法が以前に実施されている、項目1の方法。
15. 前記対象に抗がん療法が以前に実施されていない、項目1の方法。
16. 投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断する段階をさらに含む、項目1~15のいずれかの方法。
17. 投与する段階の前に、がんを有すると対象を診断するアッセイ法から結果を受け取る段階をさらに含む、項目1~15のいずれかの方法。
18. GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有する対象に、アスパラギナーゼを投与する段階を含む、がんを処置するための方法。
19. 前記変異が、がん細胞においてWNTシグナル伝達経路の活性化をもたらす、項目18の方法。
20. 前記変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子中に存在する、項目18の方法。
21. 前記変異が、R-スポンジン1 (RSPO1)、R-スポンジン2 (RSPO2)、R-スポンジン3 (RSPO3)、R-スポンジン4 (RSPO4)、リングフィンガータンパク質43 (RNF43)、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3α(GSK3A、より一般的にはGSK3αと呼ばれる)からなる群より選択される遺伝子の発現を変化させる、項目18の方法。
22. 前記がんが、がん腫、黒色腫、肉腫、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫からなるリストから選択される、項目18の方法。
23. 前記がんが固形腫瘍である、項目18の方法。
24. 前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、項目18の方法。
25. 前記がんが転移性である、項目18の方法。
26. 投与の前に、対象が、GSK3αの阻害をもたらす変異を含むがんを有するとして同定される、項目18の方法。
27. 前記変異が、前記対象から得られた生体サンプルにおいて同定される、項目26の方法。
28. 前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、項目27の方法。
29. 前記がんががん療法に耐性である、項目1または18の方法。
30. 前記がんががん療法後に再発したものである、項目1または18の方法。
31. 前記がん療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、手術、ホルモン療法、幹細胞療法、標的療法、遺伝子療法、および精密療法である、項目29または30の方法。
32. a. がんを有する対象から生体サンプルを得る段階;
b. 該サンプルをアッセイし、GSK3αの阻害をもたらす変異を有するとしてがんを同定する段階; および
c. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法。
33. a. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして対象を同定するアッセイ法の結果を受け取る段階; および
b. GSK3αの阻害をもたらす変異を有するがんを有するとして同定された対象に、アスパラギナーゼを投与する段階
を含む、がんを処置する方法。
34. 前記がんが固形腫瘍である、項目32および33の方法。
35. 前記がんが結腸がんまたは膵臓がんである、項目32および33の方法。
36. 前記がんが転移性である、項目32および33の方法。
37. 前記生体サンプルが組織サンプルまたは血液サンプルである、項目32および33の方法。
【実施例
【0144】
実施例1
アスパラギナーゼ処理白血病細胞の適合性を促進する分子経路を同定するために、アスパラギナーゼ耐性であるT-ALL細胞株CCRF-CEMにおいてゲノムワイドCRISPR/Cas9機能喪失遺伝子スクリーニングを実施した(図5)。ドロップアウトスクリーニングの条件は、アスパラギンを合成する酵素であるアスパラギンシンテターゼ(ASNS)を標的にする陽性対照ガイドRNAを用いて最適化された(図6)6
【0145】
ASNSの上方制御はアスパラギナーゼに対する耐性を誘導しうる7が、これがアスパラギナーゼ応答の唯一の決定因子ではない8,9。次に、Cas9を発現するCCRF-CEM細胞をGeCKOゲノムワイドガイドRNAライブラリーで形質導入し10 (図1aおよび図7)、ビヒクルまたは検出可能な毒性を欠いた10 U/L用量のアスパラギナーゼのいずれかで処理し、ガイドRNAの提示を評価した。ASNSは、アスパラギナーゼ処理細胞において最も有意に枯渇した遺伝子であり、Wntシグナル伝達の2つの調節因子NKD2およびLGR6がそのすぐ後に続いた(図1b)。
【0146】
NKD2はディシュベルトタンパク質を結合し抑制することによりWntシグナル伝達を負に調節するが11、LGRタンパク質は、Wntシグナル伝達を活性化または抑制すると報告されているR-スポンジン受容体である12,13。これらの遺伝子がWntシグナル伝達をどのように調節するかを試験するために、CCRF-CEM細胞にNKD2もしくはLGR6を標的にするshRNA、またはshLuciferase対照を形質導入した(図1c)。NKD2またはLGR6のノックダウンは、活性(非リン酸化)β-カテニンのレベルを増加させ(図1d)、ならびに標準的なWnt/β-カテニン転写活性のTopFLASHレポーターの活性を増加させた14 (図1e)。したがって、NKD2およびLGR6はT-ALL細胞におけるWntシグナル伝達の負の調節因子である。NKD2またはLGR6の喪失がこれらの細胞をアスパラギナーゼに対して感受性化することを検証するために、CCRF-CEM細胞をこれらのshRNAで形質導入し、アスパラギナーゼで処理した。NDK2またはLGR6のノックダウンは、細胞をアスパラギナーゼに対して非常に感受性化し(図1f)、アポトーシスの誘導を示すアスパラギナーゼ誘導性カスパーゼ活性化を増強した(図1g)。この効果は、WntリガンドWnt3Aでの処理により表現型模写された(図1h)。したがって、Wnt経路の活性化はT-ALL細胞をアスパラギナーゼに対して感受性化する。
【0147】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3 (GSK3)活性の阻害は、Wnt誘導性シグナル伝達における重要な事象であり15、この効果がGSK3パラログGSK3αとGSK3βの両方のATP競合阻害物質CHIR99021によって表現型模写されうるかどうかについての判定を促す。CHIR99021は、T-ALL、急性骨髄性白血病および低二倍体B-ALLを含む、処置耐性急性白血病の異なるサブタイプに相当する細胞株のパネル全体で有意なアスパラギナーゼ感受性化を誘導した(図2a, b)。重要なことに、CHIR99021は正常なヒトCD34+造血前駆細胞に対するアスパラギナーゼの毒性を増加させず(図2c)、白血病細胞に対する選択的効果を示唆するものであった。また、微小管阻害物質ビンクリスチン、ヌクレオシド類似体6-メルカプトプリン、糖質コルチコイド受容体アゴニストであるデキサメタゾン、およびDNA損傷剤ドキソルビシンを含めて、他の一般的に使用される抗白血病薬に対して白血病細胞を感受性化しなかった(図2d)。したがって、GSK3阻害は、T-ALLでだけでなく、他の一般的な急性白血病変種でも同様にアスパラギナーゼ毒性を増強することができる。
【0148】
標準的なWntシグナル伝達は、β-カテニン依存性転写活性の活性化因子として最もよく知られており17,18、β-カテニン活性化がアスパラギナーゼ感受性化を誘導するのに十分であるかどうかという疑問につながる。したがって、CCRF-CEM細胞を、構成的に活性なΔN90 β-カテニン対立遺伝子、またはβ-カテニンアンタゴニスト遺伝子APC19を標的にするshRNAで形質導入し、それらをアスパラギナーゼで処理した。驚くべきことに、TopFLASHレポーター活性によって評価されるように、これらの改変は、β-カテニン誘導性転写の効果的な活性化にもかかわらず、アスパラギナーゼ感受性に及ぼす目に見える効果を欠いていた(図3a~b)。Wnt経路はまた、mTOR複合体mTORC120とmTORC221の両方を活性化することにより、タンパク質合成および代謝も調節する。しかしながら、mTORC1阻害物質ラパマイシンおよびRAD001での処理、またはデュアルmTORC1/2阻害物質AZD2014での処理は、アスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化の効果を及ぼさなかった(図3cおよび図8)。結局、これらのデータは、アスパラギナーゼ感受性化がβ-カテニンまたはmTOR活性と無関係であることを示している。
【0149】
Wntシグナル伝達の活性化は、Wnt依存性タンパク質安定化と呼ばれる効果(Wnt/STOP)である、GSK3依存性タンパク質ユビキチン化およびプロテアソーム分解を阻害することにより総細胞タンパク質含量および細胞サイズを増加させる4,22,23。Wnt経路のこの機能は、アスパラギナーゼ感受性化に関連していると考えられる。アスパラギナーゼ誘発性細胞毒性に非常に耐性のあるCCRF-CEM細胞でさえも、酵素処理後の細胞サイズの測定可能な減少が観察され(図3d)、この効果はWnt経路の活性化によって反転された(図3e)。Wnt経路の活性化がアスパラギナーゼ処理細胞のタンパク質分解を阻害するかどうかを試験するために、パルスチェイス実験を用いて総タンパク質半減期を測定した。CCRF-CEM細胞を最初に、NKD2およびLGR6を標的にするWnt活性化shRNAで、またはshLuciferase対照で形質導入した。次に、細胞をメチオニン類似体アジドホモアラニン(AHA)のパルスとともにインキュベートし、引き続いて細胞をアスパラギナーゼで処理する追跡を行い、タンパク質分解によるAHA放出の速度をフローサイトメトリーにより測定した。Wnt経路の活性化は、パルス期間中のAHA標識取り込みの程度に影響を与えなかった(図9); しかしながら、LGR6またはNDK2のshRNAノックダウンは、これらの細胞においておよそ40%総タンパク質半減期を増加させた(図3f)。これらの所見は、Wnt経路の活性化がアスパラギナーゼ処理細胞においてタンパク質分解を阻害することを示す。
【0150】
E3ユビキチンリガーゼ成分FBXW7は、GSK3によってリン酸化される標準的なホスホ-デグロンを認識し、FBXW7の過剰発現により、Wnt/STOPシグナル伝達によって安定化されたタンパク質のサブセットの分解が回復する4。したがって、FBXW7の過剰発現はWnt/STOP誘導性のアスパラギナーゼ感受性化を反転させることもできると考えられた。CCRF-CEMをWnt活性化shRNAまたはshLuciferase対照で形質導入した後に、同じ細胞を、野生型FBXW7、または標準的なホスホ-デグロンへの結合が損なわれたFBXW7 R465C点変異体対立遺伝子のいずれかをコードする発現コンストラクトで形質導入した24。野生型FBXW7の過剰発現は、アスパラギナーゼ過感受性を引き起こすWnt経路活性化の能力を遮断したが、R465C変異体は効果がなかった(図3g)。しかしながら、FBXW7は特定の腫瘍性タンパク質を標的にできるT-ALL腫瘍抑制因子であり25、プロテアソーム活性の直接操作がアスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化を調節できるかどうかという疑問を生じる。単剤毒性を欠いた10 nM用量を使い、ボルテゾミブを用いて26Sプロテアソームの触媒活性を阻害することで26、アスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化を表現型模写した(図3h)。プロテアソーム活性の直接刺激を試験して、この効果がWnt経路活性化のアスパラギナーゼ選択的毒性を反転させるのに十分であるかどうかを判定し、その発現が広範囲のプロテアソーム基質の分解を刺激するのに十分であるプロテアソームサブユニットPSMA4の高活性開門(open-gate) (ΔN3)変異体を用いた5。CCRF-CEM細胞を最初に、対照またはWnt活性化shRNAで形質導入し、次に構成的に活性なプロテアソームサブユニットΔN3-PSMA4またはGFP対照で形質導入した。構成的に活性なΔN3-PSMA4プロテアソームサブユニットの発現は、アスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化を完全に遮断した(図3i)。これらの所見は、Wnt経路の活性化が、タンパク質のプロテアソーム分解を阻害することによって白血病細胞をアスパラギナーゼに対して感受性化することを示している。
【0151】
既述の研究の治療可能性を探求するために、GSK3は、中用量で非常に毒性が高いプロテアソーム阻害物質ボルテゾミブとは対照的に、その阻害がこれらの細胞に対して検出可能な毒性を有しなかったため、治療標的として焦点を当てた(図10)。細胞株において用いられた汎GSK3 (pan-GSK3)阻害物質は、インビボ研究に適した薬物動態特性を欠いているが、好ましい薬理学的特性を有する各GSK3パラログのアイソフォーム選択的阻害物質が最近開発された27。GSK3α選択的阻害物質BRD0705はCCRF-CEM細胞をアスパラギナーゼに対して効果的に感受性化するが、GSK3β選択的阻害物質BRD0731は中程度の効果しか有しない(図4a)。この結果がGSK3アイソフォーム間の余剰性、またはGSK3β阻害物質BRD0731によるGSK3αの部分的阻害を反映しているかどうかを判定するために、shRNAを用いてGSK3αまたはGSK3βを選択的に枯渇させた。GSK3αの枯渇は、アスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化を表現型模写したが、GSK3βノックダウンは効果を有しなかった(図4bおよび図11)。GSK3αを標的にするshRNAの効果は、shRNAターゲティングを回避するGSK3α発現コンストラクトの形質導入によってレスキューされた(図4c)。
【0152】
GSK3α阻害物質BRD0705およびアスパラギナーゼによる組み合わせ処置は、NRGマウスにより十分に許容され、成人におけるアスパラギナーゼの重要な用量制限毒性である血清ビリルビンレベルの増加またはかなりの体重変化がなかった(データは示されていない)。最後に、NRGマウスのコホートに、初代アスパラギナーゼ耐性T-ALL患者由来の異種移植片からの白血病細胞を注射した。末梢血において白血病移植が検出されたら、マウスをビヒクル、アスパラギナーゼ、BRD0705、またはアスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせで処置した。異種移植片はアスパラギナーゼおよびBRD0705単剤療法に対して非常に耐性があることが証明されたが、アスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせは非常に効果的でもあり、耐容性良好でもあった(図4d~eおよび図12)。
【0153】
これらの研究は、この酵素に耐性のある急性白血病におけるWnt/STOPシグナル伝達の活性化とアスパラギナーゼとの間のこれまで認識されていなかった合成致死的な相互作用を実証する。この所見は、アスパラギナーゼ耐性白血病がタンパク質分解を増加させて細胞内アスパラギンのプールを補充し、かくして細胞死を抑制することによってアスパラギンの枯渇に適応するモデルを支持している(図4f)。興味深いことに、Wnt/STOP活性化およびアスパラギナーゼの組み合わせは、白血病細胞に対して選択的に毒性であるが、正常細胞は効果的な代償機構を有するようである。この結果は、通常、増殖をアスパラギンの使用可能性に結び付けるチェックポイント、つまり発がん性変異によって容易に破壊される可能性のあるリンクを反映していると考えられる。Wnt/STOP活性化およびアスパラギナーゼの組み合わせは、関連する遺伝子変異を持つ腫瘍に対して幅広い有効性を有しうる。アスパラギナーゼ単剤療法は、結腸直腸がんにおけるリガンド誘導性Wntシグナル伝達を増強するRNF43の不活性化変異またはR-スポンジン転座のような、Wnt/STOPシグナル伝達を活性化する変異が推進する腫瘍において治療的使用を有することが本明細書において特に企図される28~30
【0154】
材料および方法
細胞株および細胞培養。 293T細胞、T-ALL細胞株、AML細胞株およびB-ALL細胞株はATCC (Manassas, VA, USA)、DSMZ (Braunschweig, Germany)、the A. Thomas Look laboratory (Boston, MA, USA)またはAlex Kentsis研究所(New York, NY, USA)から入手し、10%もしくは20%ウシ胎仔血清(FBS, Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)またはTET系承認済みFBS (Clontech, Mountain View, CA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)を含むDMEM、RPMI 1640またはMEMα(Thermo Fisher Scientific)中37℃、5% CO2で培養した。健常ドナーの動員末梢血由来ヒトCD34+前駆細胞はFred Hutchinson Cancer Research Center (Seattle, WA, USA)(例えばワールドワイドウェブsharedresources.fredhutch.org/products/cd34-cellsで見つけられる)から入手した。CD34+前駆細胞は、20% FBSならびに各50 ng/mlの終濃度まで組み換えヒトインターロイキン-3 (R&D systems, Minneapolis, MN)、組み換えヒトインターロイキン-6 (R&D systems, Minneapolis, MN)および組み換えヒト幹細胞因子(R&D systems, Minneapolis, MN)を補充したIMDM (Thermo Fisher Scientific)中で培養した。
【0155】
細胞株の同一性は、the Dana-Farber Cancer Institute Molecular Diagnostics LaboratoryでSTRプロファイリングを用いて検証され(ごく最近では2018年6月)、マイコプラズマ混入は、MycoAlert Mycoplasma Detection Kitを用い製造元の指示((Lonza, Portsmouth, NH; ごく最近では2018年3月)にしたがって除いた。
【0156】
レンチウイルスおよびレトロウイルスの産生、形質導入、および選択。 レンチウイルスは、既述2のように、OptiMEM (Invitrogen, Carlsbad, CA)およびFugene (Promega, Madison, WI)を用いてパッケージングベクターpsPAX2 (Didier Tronoからの寄贈品; addgeneプラスミド番号12260)およびVSV.G (Tannishtha Reya1からの寄贈品; addgeneプラスミド番号14888)とともに関心対象のpLKO.1プラスミドを同時トランスフェクションすることによって作製された。レトロウイルスは、パッケージングベクターgag/pol1 (Tannishtha Reyaからの寄贈品; addgeneプラスミド番号14887)およびVSV.Gとともにプラスミドを同時トランスフェクションすることによって産生された。
【0157】
レンチウイルスおよびレトロウイルス感染は、8 μg/mlのポリブレン(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)の存在下、ウイルス含有培地でT-ALL細胞株にウイルス接種すること(spinoculating) (1,500 g×90分)によって実施された。抗生物質による選択は、ネオマイシン(700 μg/mlで最低5日間; Thermo Fisher Scientific)、ピューロマイシン(1 μg/mlで最低48時間; Thermo Fisher Scientific)またはブラストサイジン(15 □g/mlで最低5日間; Invivogen)により感染24時間後に開始された。
【0158】
一過性トランスフェクションは、リポフェクトアミン(Lipofectamine) 2000試薬(invitrogen)を用いて実施された。手短に言えば、24ウェルプレート中の増殖培地2 mlに800,000個の細胞を播種した。関心対象のプラスミド5 μgおよびリポフェクトアミン10 μlをOptiMEM 300 μlと混合し、10分間インキュベートし、ウェルに添加した。抗生物質の選択は、48時間のインキュベーション後に開始された。
【0159】
プールされたASNS/AAVS1ライブラリー。 ASNSの触媒ドメインをコードするゲノム遺伝子座を標的にする3つのユニークなガイドRNA (例えば、ワールドワイドウェブwww.uniprot.org/uniprot/P08243で見つけられる)、およびPPP1R12C遺伝子の第1イントロンに位置するセーフハーバーAAVS1遺伝子座を標的にする3つのユニークなガイドRNA3を有するプールされたガイドRNAライブラリーを、記載のようにデザインした4。オリゴは、Cas9ターゲティングの効率を増加させることが以前に報告されている構造的に最適化された形態(複合改変と呼ばれる、A-Uフリップおよびステム延長)にガイドRNA足場が置き換えられた、lentiGuide-Puro改変型(Feng Zhangからの寄贈品, addgeneプラスミド番号52963)にクローニングされた5。手短に言えば、関連するゲノム遺伝子座を標的にするガイドRNAは、Zhang lab CRISPRデザインツール(例えば、ワールドワイドウェブcrispr.mit.edu/で見つけられる)を用いてデザインされた。100 μmのフォワードおよびリバースオリゴ1 μlを10×T4 DNA Ligation Buffer (NEB, Ipswich, MA) 1 μl、ddH2O 6.5 μl、T4 PNK (NEB) 0.5 μlと混合し、37℃で30分および95℃で5分間アニーリングした。次に、ホスホアニーリングオリゴ(1:500に希釈) 1 μlを、Quickリガーゼ(NEB) 1 μl、2×Quick Ligase緩衝液(NEB) 5 μlおよびddH2O 2 μlを用い室温で5分間BsmBI消化レンチウイルスpHK09-puroプラスミド1 μlにライゲーションした。
【0160】
ガイドRNA標的配列は次の通りであった。
【0161】
プールされたレンチウイルスは、上記のようにpsPAX2およびVSV.GベクターとともにこれらのガイドRNAの各々の等量を同時トランスフェクションすることによって産生された。Beckmann XL-90超遠心分離機(Beckman Coulter)を用い100,000 g (24,000 rpm)で4℃にて2時間ウイルスを濃縮した。ウイルス力価は記載のように、alamarBlue染色を用いて判定された(例えば、ワールドワイドウェブportals.broadinstitute.org/gpp/public/resources/protocolsで見つけられる)。lentiCas9-blast (Feng Zhangからの寄贈品; addgeneプラスミド番号52962)に感染したCCRF-CEM細胞(RPMI培地100 ml中でウェルあたり40,000個)を96ウェル形式でプレーティングし、感染多重度(MOI) 0.3のレンチウイルスで形質導入した。感染細胞を感染48時間後に、1 μg/mlのピューロマイシンで7日間選択した。感染細胞を24ウェル形式(RPMI培地1 ml中でウェルあたり細胞400,000個)でビヒクル(PBS)またはアスパラギナーゼにより処理した。アスパラギナーゼ処理開始5日後に細胞を収集し、DNeasy Blood and Tissue Kit (Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。ガイドRNA配列を、pHKO9配列決定プライマー
を用いてPCR増幅し、QIAquick PCR精製Kit (Qiagen)を用いてPCR精製し、MGH CCIB DNA Core施設にて次世代「CRISPR配列決定」を(例えば、ワールドワイドウェブdnacore.mgh.harvard.edu/new-cgi-bin/site/pages/crispr_sequencing_main.jspで見つけられる)を実施した。CrispRVariantsLite v1.1を用いて切断効率を評価した6
【0162】
ゲノムワイド機能喪失スクリーニングおよびデータ分析。 記載されているように、GeCKO v2ヒトライブラリーを用いてゲノムワイド機能喪失スクリーニングを実施した4,7。CCRF-CEM細胞を最初にlentiCas9-blastで形質導入し、ブラストサイジンで選択し、自己切除GFPコンストラクトpXPR_0118 (John Doench & David Rootからの寄贈品; addgeneプラスミド番号59702)を用いてCas9活性を確認した。GeCKO v2は2つの半ライブラリー(AおよびB)からなり、その各々が生物学的複製でMOI = 0.3にて1.8×108個のCas9発現CCRF-CEM細胞に形質導入された。形質導入24時間後から開始めて細胞をピューロマイシン(1 μg/ml)で選択し、これを8日間継続した。選択を生き延びた細胞の数および推定増殖速度に基づいて、網羅率はGeCKO半ライブラリーAで663倍、GeCKO半ライブラリーBで891倍と推定された。細胞は一日おきに分割し、ガイドRNA網羅率の損失を最小限に抑えるために、各分割時に維持する最小細胞数を各半ライブラリーで8400万個とした。10日目に開始して細胞を10 U/Lのアスパラギナーゼで処理し、処理5日後に細胞を収集した。Blood & Cell Culture DNA Maxi Kit (Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。上記のようにMGH CCIB DNA Core施設でCRISPR配列決定を用いてサンプルを配列決定した。ガイドRNAドロップアウトに基づく遺伝子枯渇の有意性は、MAGeCKソフトウェアを用いて計算された(例えば、ワールドワイドウェブsourceforge.net/projects/mageck/で見つけられる)9
【0163】
shRNAおよび発現プラスミド。 ピューロマイシン耐性を有するpLKO.1中の以下のレンチウイルスshRNAベクターは、Broad InstituteのRNAi Consortiumライブラリーにより作製され、Sigma-Aldrichから入手された: shLuciferase (TRCN0000072243)、shNKD2番号1 (TRCN0000187580)、shNKD2番号3 (TRCN0000428381)、shLGR6番号2 (TRCN0000063619) shLGR6番号4 (TRCN0000063621)、shAPC番号1 (TRCN0000010296)、shAPC番号2 (TRCN0000010297)、shGSK3α番号1 (TRCN0000010340)、shGSK3α番号4 (TRCN0000038682)、shGSK3β番号2 (TRCN0000039564)、shGSK3β番号6 (TRCN0000010551)。
【0164】
構成的に活性なβ-カテニン(ΔN90)対立遺伝子をコードするコンストラクトは、Bob Weinbergからの寄贈品であった(例えば、ワールドワイドウェブwww.addgene.org/36985/で見つけられる)10。野生型FBXW7 (CDC4としても公知)またはそのR465C変異体を発現する発現コンストラクトは、Bert Vogelsteinからの寄贈品であった(例えば、ワールドワイドウェブwww.addgene.org/16652/およびwww.addgene.org/16653/で見つけられる)11。7TGC (TxTcf-eGFP//SV40-mCherry) TopFLASHレポーターは、Roel Nusseからの寄贈品であった(例えば、ワールドワイドウェブwww.addgene.org/24304/で見つけられる)12。ΔN-PSMA4と称される、N末端アミノ酸番号2~10 (アイソフォームNP_002780.1に基づく)の欠失を持つヒトプロテアソームサブユニットPSMA4の過活性オープンゲート変異体は、Choiおよびその同僚ら13のデータに基づきデザインされ、GeneCopoeia (Rockville, MD)によりpLX304レンチウイルス発現ベクター中のC末端V5タグで合成された。GSK3α pWZL発現ベクターは既述されている14
【0165】
化学療法応答および化学療法誘導アポトーシスの評価
細胞(ウェルあたり25,000個)を96ウェルプレート中の完全増殖培地100 μlに播種し、化学療法剤またはビヒクルとともにインキュベートした。T-ALL細胞を48時間ごとに1:5の比率で分割した。手短に言えば、表示の用量の化学療法薬またはビヒクルを補充した新鮮培地80 μlと細胞20 μlを混合した。上記のようにAML細胞を72時間ごとに分割した。製造元の指示にしたがって、トリパンブルー生体色素染色(Invitrogen)に基づき生存細胞をカウントすることによって細胞生存率を評価した。化学療法薬にはPEG-アスパラギナーゼ(「オンカスパー(oncaspar)」, Shire, Lexington, MA)、デキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、ビンクリスチン(Selleckchem, Houston, TX)、ドキソルビシン(Sigma-Aldrich)、6-メルカプトプリン(Abcam, Cambridge, UK)、CHIR99021 (Selleckchem)、ボルテゾミブ(Selleckchem)、ラパマイシン(Selleckchem)、RAD001 (Selleckchem)、AZD2014 (Selleckchem)、およびWnt3A (R&D systems, Minneapolis, MN)を含めた。BRD0705およびBRD0731は記載されている15ように合成された。製造元の指示にしたがいCaspase Glo 3/7 Assay (Promega, Madison, WI)を用いてカスパーゼ3/7活性を評価した。
【0166】
TopFLASHレポーター。 手短に言えば、上記のレンチウイルス感染のセクションにおいて記載したように、400,000個のCCRF-CEM細胞をTopFLASHレポーター7TGC12で形質導入した。構成的mCherry選択マーカーを発現する細胞を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって選択し、WntリガンドWnt3Aで5日間処理し、Wnt誘導性GFP発現を有する細胞を、mCherryおよびGFP二重陽性細胞を選別することによって選択した。選択した細胞をWntリガンドから最低7日間放出し、次に発現プラスミドでさらに操作した。mCherry陽性細胞画分のGFP陽性をBeckton-Dickinson LSR-II機器にて評価した。
【0167】
ウエスタンブロットおよび抗体。 cOmpleteプロテアーゼ阻害物質(Roche, Basel, Switzerland)およびPhosSTOPホスファターゼ阻害物質(Roche)を補充したRIPA緩衝液(Merck Millipore)中で細胞を溶解した。Laemmliサンプル緩衝液(Bio-Rad, Hercules, CA)およびβ-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)をタンパク質溶解物20 μgと混合した後に、4~12% Novex bis-trisポリアクリルアミドゲル(Thermo Fisher Scientific)にて泳動した。ブロットをPVDF膜(Thermo Fisher Scientific)に転写し、0.1% Tweenを含むリン酸緩衝生理食塩水(Boston Bioproducts, Ashland, MA)中5%のBSA (New England Biolabs)でブロッキングし、以下の抗体でプローブした: 非ホスホβ-カテニン(Ser33/37/Thr41)抗体(1:1000, Cell Signaling Technologies ♯8814)、全β-カテニン抗体(1:1000, Cell Signaling Technologies ♯8480)、全GSK3α/β抗体(1:1000, Cell Signaling Technologies ♯5676)、ホスホ-GSK3α/β (Tyr279/216)抗体(Thermo Fisher Scientific ♯OPA1-03083)、Myc-タグ抗体(1:1000, Cell Signaling Technologies ♯2272)、ホスホ-p70 S6キナーゼ(Thr389)抗体(1:1000 Cell Signaling Technologies ♯9234)またはGAPDH (1:1000, Cell Signaling Technologies ♯2118)。西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Thermo Fisher Scientific)による西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(1:2000, Cell Signaling Technologies ♯7074S)の二次検出は、Amersham Imager 600 (GE Healthcare Life Sciences, Marlborough, MA)を用いて可視化された。
【0168】
細胞サイズの評価。 細胞(ウェルあたり400,000個)を、24ウェル形式で終濃度10 U/Lのアスパラギナーゼを含有する完全増殖培地1 mlにプレーティングした。48時間の処理後、前方散乱(FSC-H)をフローサイトメトリーによって評価した。
【0169】
定量的逆転写酵素PCR (qRT-PCR)およびプライマー
RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを単離し、SuperScript III第一鎖cDNA合成キット(Thermo Fisher Scientific)を用いてcDNAを作製した。Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix (Thermo Fisher Scientific)および7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を用いてqRT-PCRを実施した。使用したプライマーは次の通りであった。
【0170】
マウス。 6~8週齢のNOD rag gamma (NRG)マウスをJackson Laboratories (Bar Harbor, ME; ストック番号007799)から購入した。実験動物福祉局(Office of Laboratory Animal Welfare)によって定義された動物管理基準(Good Animal Practice)に厳密にしたがってマウスを取り扱った。全ての動物作業は、ボストンチルドレンズホスピタル(BCH)の施設内動物管理使用委員会の承認を得て行われた(プロトコル番号15-10-3058R)。
【0171】
マウスを致死未満量の放射線(4.5 Gy)に曝露し、その後、ヒト白血病細胞を注射した。全ての注射は尾静脈注射によって実施された。白血病細胞を注射したマウスでの白血病の発症をモニターするために採血を実施し、抗ヒトCD45-PE-Cy7 (1:400, BD♯ 560915)抗体染色を用いたヒトCD45発現についての染色により評価した。末梢血中5%以上のヒト白血病細胞に基づいて白血病移植が確認されたらすぐに、マウスの処置を開始した。アスパラギナーゼ(1,000 U/kg)またはPBSを、薬物処置1日目に単回用量として尾静脈注射により注射し、BRD0705 (15 mg/kg)またはビヒクルを12時間ごとに12日間強制経口投与により与えた。ビヒクルは既述のように処方された15。強制経口投与の前に、マウスをイソフルラン(Patterson Veterinary, Greeley, CO)で麻酔した。処置開始後、3日ごとに体重をモニターした。ビリルビンレベルを評価するために、下顎血静脈採取を実施し、ボストンチルドレンズホスピタル臨床検査室においてビリルビンレベルを測定した。この実験の主要エンドポイントは生存であった。15%を超える体重減少または進行性疾患の兆候/症状が現れたらすぐに、マウスを安楽死させた。白血病負荷の死後分析は、骨髄細胞を抽出することによって実施し、骨髄細胞を40 μMメッシュフィルタでろ過し、BD Biosciences Red Blood Cell Lysis試薬(BD ♯555899)を用いて赤血球を溶解した。分離された骨髄細胞を、BD Biosciencesの次の抗体を用いて白血病負荷の評価のために染色した: 抗ヒトCD4-APC-Cy7 (1:100, BD♯ 561839)および抗ヒトCD8-PerCP-Cy5.5 (1:100, BD♯ 560662)。
【0172】
パルスチェイスによるタンパク質安定性の評価。 既述16のように、メチオニン類似体L-アジドホモアラニン(AHA)の非放射性定量化を用いてタンパク質分解を評価した。手短に言えば、10%透析FBSを含有するメチオニン不含RPMI 1 ml中に400,000個のCCRF-CEM細胞を播種した。30分後、この培地を、終濃度50 mMでAHAおよび10%透析FBSを補充したRPMI 1 mlと18時間置き換えることにより、パルス段階を実施した。追跡段階では、培地を、10%透析FBSおよび10×L-メチオニン(2 mM)を含有するRPMIと2時間置き換えることにより、細胞をAHAから放出させた。その後、培地を通常の増殖培地と交換し、細胞を終濃度10 U/Lのアスパラギナーゼで処理した後、細胞の固定を行った。TAMRAアルキンクリックケミストリーを用いてAHA標識タンパク質をタグ付けし、蛍光強度をフローサイトメトリーによって測定した。バックグラウンド蛍光を説明するために、TAMRAアルキンタグを除いてAHA標識化のないサンプルを陰性対照として含めた。
【0173】
統計分析。 連続測定の二群比較の場合、両側ウェルチの不等分散t検定を用いた。三群比較の場合、一元配置分散分析モデル(ANOVA)を実施し、多重比較のためにダネットの調整を用いた。2つの効果の分析のため、二元配置ANOVAモデルを構築し、特に指示のない限り、2つの効果間の相互作用項を含めた。二元配置ANOVAの多重比較の事後調整には、チューキーの調整を含めた。対数順位検定を用いて群間の生存性の差異を試験し、カプランマイヤーの方法を用いて生存曲線を構築した。棒グラフとして示されているデータは、最低3回の生物学的複製の平均および標準誤差(s.e.m)を表す。報告された全てのp値は両側であり、0.05未満の場合は有意と見なされる。
【0174】
実施例1の参照文献
【0175】
実施例1の材料および方法の参照文献
【0176】
実施例2
序論
結腸直腸がん(CRC)は、依然として米国でがんによる死亡原因の第2位であり、転移性疾患を有する患者の転帰は悲惨である(Siegel et al., 2017; Siegel et al., 2019)。CRCの推定96%には、標準的なWnt /β-カテニンシグナル伝達を活性化する変異があり(Yaeger et al., 2018)、これらの変異は腸の悪性転換を促進する(Cheung et al., 2010; Su et al., 1992)。この経路の治療的阻害についての説得力のある理論的根拠にもかかわらず(Dow et al., 2015)、発がん性β-カテニン転写を直接阻害することは困難である(Nusse and Clevers, 2017)。CRCのおよそ15%が、染色体内R-スポンジン(RSPO)再配列およびRNF43変異のような、Wntシグナル伝達のリガンド依存性活性化を推進する変異を有するという発見(Giannakis et al., 2014; Han et al., 2017; Hao et al., 2012; Koo et al., 2012; Seshagiri et al., 2012)は、Wntリガンド活性の治療的阻害にかなりの関心を呼び起こした。これは薬理学的にはるかに扱いやすく、Wntリガンド誘導性のWnt経路活性化を標的にするいくつかの治療アプローチが開発されている[(Nusse and Clevers, 2017)に概説されている]。しかしながら、Wntリガンド活性を阻害すると、病的骨折を伴う重大な骨毒性が生じる(Tan et al., 2018)。これは、Wntリガンドの生殖細胞変異によっても引き起こされる狙い通りの毒性である(Fahiminiya et al., 2013; Zheng et al., 2012)。この毒性を軽減するための努力が進行中であるが、Wntシグナル伝達の阻害が、がん治療のための十分に好ましい治療指数を有するかどうかは、不明なままである。
【0177】
非必須アミノ酸であるアスパラギンを分解する抗白血病酵素であるアスパラギナーゼ(Rizzari et al., 2013)は、選択されていないCRC患者ではほとんど活性がなく(Clarkson et al., 1970; Ohnuma et al., 1970; Wilson et al., 1975)、そのほとんどがAPC変異を有する(Yaeger et al., 2018)。本発明者らは最近、GSK3上流のWntシグナル伝達の活性化が、薬物耐性急性白血病ではアスパラギナーゼに対する強力な感受性化を誘導するが、正常な造血前駆細胞では誘導しないことを見出した(Hinze et al., 2019)。Wnt誘導性シグナル伝達はキナーゼGSK3の阻害により媒介され(Siegfried et al., 1992; Stamos et al., 2014; Taelman et al., 2010)、GSK3阻害は白血病でのアスパラギナーゼ感受性化に十分であった。しかしながら、この効果はAPCまたはβ-カテニンとは無関係であると考えられた。代わりに、アスパラギナーゼ感受性化は、GSK3依存性タンパク質ユビキチン化およびプロテアソーム分解を阻害するWntシグナル伝達のβ-カテニン非依存性枝であるタンパク質のWnt依存性安定化(Wnt/STOP)により媒介された(Acebron et al., 2014)。タンパク質ユビキチン化およびプロテアソーム分解は、白血病でのアスパラギナーゼ耐性に必要なアミノ酸の異化源(Suraweera et al., 2012)であり(Hinze et al., 2019)、この適応応答はWnt誘導性のGSK3阻害によって遮断される。
【0178】
CRCで自然発生する変異は、Wnt誘導性のアスパラギナーゼ感受性化からWnt/β-カテニンのリンクを解除すると予測されるため、CRCは本発明者らのモデルからの予測を試験するための独自の実験的背景を提供する。実際、ヒトCRCのおよそ80%にAPCの機能喪失型変異があり(Yaeger et al., 2018)、これはアスパラギナーゼに対する感受性化を誘導することなくβ-カテニンを活性化する。対照的に、症例のおよそ15%には、リガンド誘導性のWnt経路活性化を刺激するRSPO融合またはRNF43変異がある(Chartier et al., 2016; de Lau et al., 2011; Giannakis et al., 2014; Han et al., 2017; Seshagiri et al., 2012; Storm et al., 2016)。本発明者らのモデルは、GSK3を阻害することにより、Wntリガンドシグナル伝達がβ-カテニンの活性化とアスパラギナーゼに対するWnt誘導性の感受性化の両方を刺激するものと予測する。本研究の目的は、CRCで自然発生する変異との関連でこれらの予測を試験することであった。
【0179】
結果
GSK3上流のWnt経路の活性化はアスパラギナーゼ過感受性を誘導する
リガンド誘導性のWnt経路活性化がCRCにおいてアスパラギナーゼ過感受性を誘導するかどうかを試験するために、本発明者らはヒトAPC変異体CRC細胞株HCT-15およびSW-480から始めた(Barretina et al., 2012; Gayet et al., 2001)。これらの細胞株は両方ともアスパラギナーゼ単剤療法に耐性であることが証明されたが、組み換えリガンドRspo3およびWnt3aによる処理は、アスパラギナーゼに対する有意な感受性化を誘導した(図15A)。Wnt誘導性シグナル伝達はキナーゼGSK3の阻害により媒介され(Siegfried et al., 1992; Stamos et al., 2014; Taelman et al., 2010)、GSK3αとGSK3βの両方の小分子阻害物質であるCHIR-99021 (Bennett et al., 2002)によるこれらの細胞の処理は、アスパラギナーゼ感受性化を誘導するのに十分であった(図15B)。重要なことに、GSK3阻害とアスパラギナーゼの組み合わせは、正常なヒト結腸上皮に由来するCCD-841細胞に対してほとんど毒性がなかった(図15C) (Thompson et al., 1985)。
【0180】
哺乳類細胞は2つのGSK3パラログ(GSK3αおよびGSK3β)を有し、これらはいくつかの実験状況において標準的なWnt/β-カテニンシグナル伝達の調節には余剰である(Banerji et al., 2012; Doble et al., 2007; Wagner et al., 2018)。しかしながら、白血病における本発明者らの以前の所見(本明細書においておよびHinze et al., 2019において提示されている)と一致して、GSK3αのノックダウンはCRCにおけるアスパラギナーゼ感受性化に十分であるのに対し、GSK3βのノックダウンはほとんど効果がない(図15D図17A~17B)ことが分かった。GSK3α shRNAノックダウンと組み合わせたアスパラギナーゼによるHCT-15またはSW-480細胞の処理は、アポトーシス誘導のマーカーであるカスパーゼ3/7活性の誘導をもたらした(図17C~17D)。次に、最近になって記載されたアイソフォーム選択的GSK3阻害物質を用いて、これらの所見を薬理学的に検証した(Wagner et al., 2018)。実際、GSK3α選択的阻害物質BRD0705による処理は、HCT-15細胞とSW-480細胞の両方をアスパラギナーゼ誘導性の細胞毒性に対して感受性化したが、GSK3β選択的阻害物質BRD3731はほとんど効果がなかった(図15E)。
【0181】
次に、これらの所見がCRCで自然発生する内因性変異に照らして関連するかどうかを問うた。本発明者らは、内因性Wnt活性化変異のタイプを超えて、可能な限り類似した実験モデルにおいてこれを試験することを目的とした。したがって、本発明者らは、ヒトCRCの遺伝的性質を再現するようにデザインされた遺伝子操作マウス腸オルガノイドに目を向けた(Dow et al., 2015; Han et al., 2017)。Kras、p53およびWnt活性化変異の組み合わせは、転移性CRCで最も一般的な遺伝子型であるため(Yaeger et al., 2018)、これらの変異を担持する三重変異体オルガノイドが用いられた。内因性Wnt/β-カテニン活性化変異は、GSK3を阻害せずにもしくはアスパラギナーゼ感受性化を刺激せずにβ-カテニンを活性化すると予測されたApc欠損、またはβ-カテニンを活性化することも、アスパラギナーゼに対してWnt誘導性の感受性化を刺激することも予測されたPtprk-Rspo3融合のいずれかであった。これらのオルガノイドの処理により、アスパラギナーゼ単剤療法はRspo3融合オルガノイドに対して非常に毒性が高いのに対し、Apc欠損オルガノイドに対してはほとんど活性がないことが明らかになった(図15F~15G)。Apc欠損オルガノイドでは、GSK3α阻害物質BRD0705による単剤療法でもほとんど毒性がなかったが、BRD0705とアスパラギナーゼの組み合わせは強力な毒性があり(図15G)、GSK3αの阻害がアスパラギナーゼ感受性化に十分であることを示していた。
【0182】
アスパラギナーゼ感受性化はタンパク質のWnt依存性安定化により媒介される
本明細書において提示された研究は、薬物耐性白血病が、アスパラギンの異化源としてGSK3依存性タンパク質ユビキチン化およびプロテアソーム分解に依存することによってアスパラギナーゼ療法に耐性があることを示す。この適応応答は、タンパク質のWnt依存性安定化(Wnt/STOP) (Hinze et al., 2019)、つまりタンパク質分解を阻害して細胞サイズを増加させるWntシグナル伝達のGSK3依存性枝によって遮断される(Acebron et al., 2014; Huang et al., 2015; Taelman et al., 2010)。本発明者らは、アスパラギナーゼ単剤療法がCRC細胞株HCT-15の細胞サイズを有意に減少させ、この効果がWntリガンドでの処理によって反転することを見出した(図18A~18B)。アスパラギナーゼに対するWntリガンド誘導性の感受性化がWnt/STOPによって媒介されるかどうかを試験するために、本発明者らは最初に、E3ユビキチンリガーゼFBXW7の過剰発現がWnt誘導性GSK3阻害によって安定化されたタンパク質のサブセットの分解を回復するという事実を利用した(Acebron et al., 2014)。GSK3α阻害物質BRD0705と組み合わせたアスパラギナーゼのApc変異体オルガノイドに対する毒性は、野生型FBXW7の過剰発現によって反転するが、そのタンパク質基質に結合するその能力が損なわれたFBXW7 R465C点変異体対立遺伝子によっては反転しないことが分かった(図15H) (Koepp et al., 2001)。さらに、この組み合わせの毒性は、ある範囲のプロテアソーム基質のプロテアソーム分解を直接刺激するプロテアソームサブユニットPSMA4の高活性オープンゲート変異体の発現によって反転した(図15H) (Choi et al., 2016)。したがって、GSK3上流のWntシグナル伝達の活性化は、GSK3依存性タンパク質分解を阻害することによってアスパラギナーゼ感受性化を誘導する。
【0183】
結腸直腸がん治療のためのWnt経路活性化およびアスパラギナーゼの合成致死性の使用
これらの所見のインビボ治療可能性を試験するために、Apc欠損またはRspo3融合のいずれかとともに、Krasおよびp53変異を有する三重変異体マウス腸オルガノイドを注入された免疫不全マウスにおいて皮下腫瘍を作出した。明確に測定可能な腫瘍増殖によって評価されるように、腫瘍が移植されたら、マウスをビヒクルまたは単回用量のアスパラギナーゼによる処置にランダムに割り当てた(図16A)。アスパラギナーゼはApc欠損腫瘍にはほとんど効果がなかったが、Rspo3融合腫瘍に対しては有意な治療活性があった。実際、アスパラギナーゼ療法は、Rspo3融合腫瘍の疾患進行を著しく遅らせただけでなく(図16B)、かなりの体重減少を引き起こすことなしに(図19A)、ほとんどの処置マウスで腫瘍退縮を誘導し(図16C)、無増悪生存期間を延長した(図16D)。
【0184】
次に、APC変異体CRCの患者由来異種移植片(PDX)を用いインビボで、薬理学的GSK3α阻害がアスパラギナーゼ感受性化を誘導しうるかどうかを問うた。短縮型APC変異(p.T1556fsX3)およびKras p.G12R活性化変異を担持するヒト患者由来のCRC異種移植片を、免疫不全マウスに移植した。腫瘍移植後、マウスをビヒクル、アスパラギナーゼ(1000 U/kg×1用量)、GSK3α選択的阻害物質BRD0705 (25 mg/kg 12時間ごと×21日)、またはアスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせによる処置にランダムに割り当てた(図16E)。組み合わせ処置は耐容性良好であり、成人におけるアスパラギナーゼの一般的な毒性である感知できるほどの体重減少または血清ビリルビンレベルの増加がない(図19Bおよび19C)。アスパラギナーゼまたはBRD0705による単剤療法には活性がなかったが、アスパラギナーゼおよびBRD0705の組み合わせによる処置は、全ての処置マウスにおける腫瘍退縮、および無増悪生存期間の有意な延長を含めて、腫瘍増殖に対して強力な効果を及ぼした(図16F~16I)。
【0185】
考察
GSK3阻害およびアスパラギナーゼの合成致死的な相互作用を、CRC治療に用いることができることが本明細書において示される。GSK3の阻害は、Wnt誘導性シグナル伝達の重要なメディエータであり(Siegfried et al., 1992; Stamos et al., 2014; Taelman et al., 2010)、したがって、このキナーゼは上流のWnt経路変異の結果としてCRCのサブセットで内因的に阻害されると予測される。実際、Wntリガンド活性を増強するCRCの再発性発がん変化であるRspo3の過剰発現につながる染色体再配列を伴うCRC (Chartier et al., 2016; de Lau et al., 2011; Han et al., 2017; Seshagiri et al., 2012; Storm et al., 2016)は、アスパラギナーゼ単剤療法を大いにかつ選択的に感受性化することが分かった。本明細書において提示されるモデルは、Rspo2融合またはRspo受容体RNF43の変異のような、他の上流のWnt活性化変異を有する腫瘍もアスパラギナーゼ感受性であるはずと予測している。
【0186】
本明細書において記載される、アスパラギナーゼ単剤療法は、RNF43変異体膵臓がん、子宮内膜がんまたは胃がんのような、Wnt誘導性GSK3阻害を刺激すると予測される変異を有する他の腫瘍タイプで有効であることが本明細書において特に企図される(2014; Giannakis et al., 2014; Jiang et al., 2013; Wu et al., 2011)。
【0187】
これらの腫瘍においてGSK3機能が阻害されない限り、APC変異体CRCはアスパラギナーゼ単剤療法に耐性であることが分かった。この効果には、GSK3αの選択的阻害で十分であった。GSK3αとGSK3βのATP結合ポケットはアミノ酸が一つ異なるが、GSK3αのアイソフォーム選択的阻害物質が開発されており(Wagner et al., 2018)、これは現在、APCまたはCTNNB1 (β-カテニンをコードする)の変異を有する、CRC症例患者の大多数にとってこの合成致死的な治療相互作用を利用するための戦略を提供している。GSK3βの同時阻害はGSK3α阻害の治療的有用性に拮抗しないが、GSK3αおよびGSK3βは異なる実験状況においてβ-カテニン活性の調節には余剰である(Banerji et al., 2012; Doble et al., 2007; Wagner et al., 2018)。したがって、汎GSK3阻害物質は、発がん性β-カテニンシグナル伝達の広範な活性化のために毒性を有すると予想されるが、GSK3αのアイソフォーム選択的阻害は、より耐容性良好であると予想される。
【0188】
白血病での実施例1のなかで本明細書において提示される研究と合わせて(Hinze et al., 2019)、これらのデータは、GSK3依存性タンパク質分解の遮断が結腸がんおよび薬物耐性白血病の両方においてアスパラギナーゼに対する腫瘍選択的な感受性化を誘導することを実証する。これは、固形腫瘍における内因性アスパラギナーゼ耐性の機構が白血病における後天性耐性の機構と重複するが、正常細胞が酵素による処理に耐容することを可能にする機構とは根本的に異なるという予想外の結論につながる。GSK3α阻害およびアスパラギナーゼの合成致死的な相互作用が腸上皮および造血細胞と同じくらい多様な細胞系統に由来する腫瘍において保存されていることを考えると、このアプローチは、GSK3依存性タンパク質分解に依ってアスパラギナーゼでの処理に耐容している限り、広範囲のヒトがんにおいて有意義な治療活性を持つ可能性がある。
【0189】
材料の詳細
患者由来の異種移植片
ヘルシンキ宣言にしたがいインフォームドコンセントを得て、APC変異体結腸がんを有する患者から標本を採取した(Bullman et al., 2017)。ヒト対象研究は、Dana-Farber Cancer Institute Institutional Review boardによって承認された。以下に記載するように、患者由来の異種移植片を免疫不全マウスに移植した。マウス研究は全ての規制基準に準拠しており、ボストンチルドレンズホスピタルの施設内動物管理使用委員会によって承認された。
【0190】
細胞株、細胞培養、およびオルガノイド培養
293T細胞、結腸直腸がん細胞株、および正常結腸細胞を、ATCC (Manassas, VA, USA)、DSMZ (Braunschweig, Germany)から購入し、10%もしくは20%ウシ胎仔血清(FBS, Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)またはTET系承認済みFBS (Clontech, Mountain View, CA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)を含むDMEM、RPMI-1640またはLeibovitz’s L-15培地(Thermo Fisher Scientific)中で37℃、5% CO2にて培養した。
【0191】
Ptprk-Rspo3再配列およびLSL-KrasG12Dを保有するオルガノイドは、トランスジェニックマウスに由来する。Ptrpk-Rspo3再配列を、外因性R-スポンジンなしでオルガノイドを7日間培養することによって選択し、Ptprk-Rspo3融合接合部の配列決定によって検証した。Lenti-sgTrp53-Cas9-Creを用いて、KrasG12D活性化およびp53喪失を作製した(Han et al., 2017)。p53喪失の選択のため、オルガノイドを5 □Mヌトリン-3とともに7日間培養し、この選択中にKrasG12D活性化を間接的に選択した。p53喪失をsgRNAターゲティング部位の配列決定およびウエスタンブロットによって検証し、KrasG12D活性化をRNA配列決定によって検証した。
【0192】
マウス結腸オルガノイドを、advanced DMEM/F-12 (Thermo Fisher Scientific)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)、1 mM N-アセチルシステイン(Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)、および10 mM HEPES (Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)を含有する基礎オルガノイド培地中で培養した。既述(O'Rourke et al., 2016)のように、ネズミWnt3A (50 ng/ml, Merck Millipore, Darmstadt, Germany)、ネズミノギン(Noggin) (50 ng/ml)、ネズミEGF (R&D systems, Minneapolis, MN, 50 ng/ml)およびヒトR-スポンジン1 (R&D systems, Minneapolis, MN)を補充した基礎オルガノイド培地中でApc欠損オルガノイドを培養した。既述(O'Rourke et al., 2016)のように、ネズミノギン(50 ng/ml)、ネズミEGF (R&D systems, Minneapolis, MN, 50 ng/ml)およびヒトR-スポンジン1 (R&D systems, Minneapolis, MN)の存在下、基礎培地中でRspo3融合オルガノイドを培養した。
【0193】
細胞株の同一性は、the Dana-Farber Cancer Institute Molecular Diagnostics LaboratoryでSTRプロファイリングを用いて検証され(ごく最近では2018年6月)、マイコプラズマ混入は、MycoAlert Mycoplasma Detection Kitを用い製造元の指示((Lonza, Portsmouth, NH; ごく最近では2018年3月)にしたがって除いた。
【0194】
マウス
Nu/JマウスをJackson Laboratories (Bar Harbor, ME; ストック番号0007850)から購入した。7~9週齢の雄性ヌードマウスを実験に使用し、同腹仔を個別のケージ内に保管した。マウスを実験群にランダムに割り当て、実験動物福祉局によって定義された動物管理基準に厳密にしたがって取り扱った。全ての動物作業は、ボストンチルドレンズホスピタル(BCH)の施設内動物管理使用委員会の承認を得て行われた(プロトコル番号18-09-3784R)。
【0195】
結腸がん細胞株のレンチウイルス形質導入
レンチウイルスは、既述(Burns et al., 2018)のように、OptiMEM (Invitrogen, Carlsbad, CA)およびポリエチレンイミン(VWR, Radnor, PA)を用いてパッケージングベクターpsPAX2 (Didier Tronoからの寄贈品; addgeneプラスミド番号12260)およびVSV.G (Tannishtha Reyaからの寄贈品; addgeneプラスミド番号14888)とともに関心対象のpLKO.1プラスミドを同時トランスフェクションすることによって作製された。
【0196】
レンチウイルス感染は、8 μg/mlのポリブレン(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)の存在下、ウイルス含有培地で結腸直腸がん細胞株にウイルス接種すること(1,500 g×90分)によって実施された。抗生物質による選択は、ピューロマイシン(1 μg/mlで最低48時間; Thermo Fisher Scientific)またはブラストサイジン(15 μg/mlで最低5日間; Invivogen)により感染24時間後に開始された。
【0197】
マウス腸オルガノイドのレンチウイルス形質導入
レンチウイルス形質導入の前に、マトリゲルおよびオルガノイド培地を上下にピペッティングすることによって、0.95 cm2ウェルのマウス腸オルガノイドを完全に収集した。手短に言えば、破壊されたオルガノイドを300 gで5分間遠心分離し、細胞ペレットを冷0.25%トリプシン(Thermo Fisher Scientific) 250 μl中に再懸濁し、37℃で5分間インキュベートした。その後、トリプシンを、基礎オルガノイド培地750 μlを添加することによって不活性化し、遠心分離した(300 g×5分)。8 μg/mlのポリブレン(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)を補充した濃縮レンチウイルス250 μl中に細胞を再懸濁した。レンチウイルス感染の場合、オルガノイドとウイルスの混合物を37℃、5% CO2で12時間インキュベートした。その後、オルガノイド培地750 μlをウェルに添加し、混合物を300 gで5分間遠心分離した。ペレットを氷冷マトリゲル40 μλ中に再懸濁し、マトリゲル固化後、基礎オルガノイド培地250 μlを各ウェルに添加した。抗生物質による選択は、感染24時間後に開始された。
【0198】
方法の詳細
shRNAおよび発現プラスミド
ピューロマイシン耐性を有するpLKO.1の以下のレンチウイルスshRNAベクターはBroad InstituteのRNAi Consortiumライブラリーにより作製され、Sigma-Aldrichから入手された: shLuciferase (TRCN0000072243)、shGSK3α♯1 (TRCN0000010340)、shGSK3α♯4 (TRCN0000038682)、shGSK3β♯2 (TRCN0000039564)、shGSK3β♯6 (TRCN0000010551)。
【0199】
野生型FBXW7 (CDC4としても公知)またはそのR465C変異体を発現する発現コンストラクトは、遺伝子合成により合成され、GeneCopoeia (Rockville, MD)によってpLX304レンチウイルス発現ベクターにクローニングされた。
【0200】
ΔN-PSMA4と称される、ヒトプロテアソームサブユニットPSMA4の過活性オープンゲート変異体は、Choiおよびその同僚ら(Choi et al., 2016)のデータに基づき、PSMA4アイソフォームNP_002780.1 (転写産物NM_002789.6によってコードされる)のミノ酸番号2~10 (SRRYDSRTT)をコードするcDNA配列を欠失することによってデザインされた。このΔN-PSMA4コード配列は遺伝子合成により合成され、GeneCopoeia (Rockville, MD)により、このベクターが提供するC末端V5タグとインフレームでpLX304レンチウイルス発現ベクターにクローニングされた。
【0201】
結腸がん細胞株における化学療法応答およびアポトーシスの評価
細胞(ウェルあたり100,000個)を12ウェルプレート中の完全増殖培地100 μlに播種し、化学療法剤またはビヒクルとともにインキュベートした。細胞を48時間ごとに分割し、製造元の指示にしたがって、トリパンブルー生体色素染色(Invitrogen)に基づき生存細胞をカウントすることによって細胞生存率を評価した。化学療法薬にはアスパラギナーゼ(ペグアスパルガーゼ, Shire, Lexington, MA)、CHIR99021 (Selleckchem)、組み換えヒトWnt3Aタンパク質(R&D systems, Minneapolis, MN)および組み換えヒトR-スポンジン3タンパク質(R&D systems, Minneapolis, MN)を含めた。BRD0705およびBRD3731は記載されている(Wagner et al., 2018)ように合成された。製造元の指示にしたがいCaspase Glo 3/7 Assay (Promega, Madison, WI)を用いてカスパーゼ3/7活性を評価した。
【0202】
マウス腸オルガノイドにおける化学療法応答の評価
マウス腸オルガノイドにおける化学療法応答の評価のため、Apc欠損およびRspo3融合オルガノイドを基礎オルガノイド培地(ネズミWnt3A、ネズミノギンおよびヒトR-スポンジン1タンパク質を含有しない培地)中で培養した。全0.95 cm2ウェルのオルガノイドを新しいウェルに分割し、ウェルあたりおよそ25個のオルガノイドを得ることを目的とした。オルガノイドを、以前に公開されたプロトコル(O'Rourke et al., 2016)にしたがって分割した。マトリゲルおよび基礎オルガノイド培地にビヒクルまたは化学療法剤を補充し、48時間ごとに分割した。培養10日後、ウェルあたりのオルガノイド総数を光学顕微鏡によってカウントした。Axio Imager A1顕微鏡(Zeiss, Oberkochen, Germany)で100倍の対物レンズを用いて顕微鏡検査を実施し、CV-A10デジタルカメラ(Jai, Yokohama, Japan)およびCytovisionソフトウェア(Leica Biosystems, Wetzlar, Germany)を用いて画像を撮った。
【0203】
ウェルの端に接触しているオルガノイドはカウントから除外した。画像を3回の独立した実験の代表から取得し、ImageJソフトウェアで分析した(Schneider et al., 2012)。
【0204】
細胞サイズの評価
細胞(ウェルあたり100,000個)を、12ウェル形式で終濃度10 U/Lのアスパラギナーゼまたは100 ng/mlのWnt3Aリガンドを含有する完全増殖培地1 mlにプレーティングした。48時間の処理後、前方散乱(FSC-H)をフローサイトメトリーによりBeckton-Dickinson LSR-II機器で評価した。
【0205】
定量的逆転写酵素PCR (qRT-PCR)
RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを単離し、SuperScript III第一鎖cDNA合成キット(Thermo Fisher Scientific)を用いてcDNAを作製した。Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix (Thermo Fisher Scientific)および7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を用いてqRT-PCRを実施した。使用したプライマーを表S2に記載する。
【0206】
患者由来の異種移植片(PDX)およびオルガノイドのインビボ薬物処理
APC変異体ヒトCRC PDXの移植の場合、患者の腫瘍材料をPBS中に採取し、切除後24時間以内に移植のために湿った氷上に保持した。到着時、外科用メスを用いて壊死組織および支持組織を注意深く除去した。記載されている(Bullman et al., 2017)ように、およそ1 mm×1 mmの組織断片を雄性ヌードマウスの側腹領域に皮下に移植した。腸オルガノイド(Rspo3; p53; KrasまたはApc; p53; Kras)注入の場合、マウスごとに全9.5 cm2 1ウェルのオルガノイドを皮下注入した。
【0207】
腫瘍がおよそ150 mm3の体積に達したらすぐに、マウスの処置を開始した。APC変異体ヒトCRC PDXの場合、単回用量のアスパラギナーゼ(1,000 U/kg)またはPBSを処置1日目に尾静脈注射によって注射し、BRD0705 (15 mg/kg)またはビヒクルを12時間ごとに21日間経口胃管栄養法により与えた。ビヒクルを既述(Wagner et al., 2018)のように処方した。
【0208】
処置開始後、体重および腫瘍サイズを一日おきに評価した。腫瘍サイズをキャリパ測定によって評価し、質量のおおよその体積を、式(l × w × w) × (π/6)を用いて計算した。ここでlは腫瘍長軸であり、wは腫瘍短軸である。既述(Gao et al., 2015)のように、時間t時の腫瘍体積変化をそのベースライと比較することによって応答を判定した: %腫瘍体積変化 = 100% × ((Vt - V初期) / V初期。1500 mm3の腫瘍体積に達し、15%を超える体重減少を現し、および/または腫瘍潰瘍の兆候を示したらすぐに、マウスを安楽死させた。図16Bおよび2Fの場合、死亡したマウスの腫瘍体積を最後に記録した。
【0209】
腫瘍進行によって打ち切られたマウス
1500 mm3の腫瘍体積に達したマウスは図16Bおよび16Fであった。
【0210】
ビリルビンレベルを評価するために、眼窩後方採血を実施し、ボストンチルドレンズホスピタル臨床検査室においてビリルビンレベルを測定した。(単位, 検出限界)
【0211】
定量化および統計分析
連続測定の二群比較の場合、両側ウェルチの不等分散t検定を用いた。三群比較の場合、一元配置分散分析モデル(ANOVA)を実施し、多重比較のためにダネットの調整を用いた。2つの効果の分析のため、二元配置ANOVAモデルを構築し、2つの効果間の相互作用項を含めた。二元配置ANOVAの多重比較の事後調整には、チューキー・クラマーの調整を含めた。対数順位検定を用いて群間の生存性の差異を試験し、カプランマイヤーの方法を用いて生存曲線を構築した。棒グラフとして示されているデータは、別段の指示がない限り、最低3回の生物学的複製の平均および標準誤差(s.e.m)を表す。報告された全てのp値は両側であり、0.05未満の場合は有意と見なされる。
【0212】
実施例2の参照文献
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図15I
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図16I
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20-1】
図20-2】
【配列表】
0007539860000001.app