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特許7539862分離装置、関連する方法、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】分離装置、関連する方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/02 20060101AFI20240819BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20240819BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240819BHJP
   C12M 1/26 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
C12N1/02
C12M3/06
C12M1/00 Z
C12M1/26
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021502811
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019073198
(87)【国際公開番号】W WO2020052996
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】16/128,121
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・ユーエスエー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェレマイア・マイスナー
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・マリー・ゲティングス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・アンジェラ・モートン
(72)【発明者】
【氏名】エーリック・リーミング・クヴァム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ウィリアム・キャッスル
(72)【発明者】
【氏名】アニンディア・カンティ・デ
(72)【発明者】
【氏名】ジャレッド・ティモシー・ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・パトリック・ギャリガン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント・フランシス・ピッツィ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506715(JP,A)
【文献】特開平06-098752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養流体に懸濁した粒子を含むバイオプロセス流体を清澄化するための方法であって、
流体入口(200、300)および流体出口(204、304)を含む分離装置(196、296)の複数のメソ流体チャネル(208)を通してバイオリアクタ(182)から未清澄化バイオプロセス流体を流して、前記未清澄化バイオプロセス流体の粒子の少なくとも一部を分離し、実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するステップと、
前記清澄化されたバイオプロセス流体を前記分離装置の前記流体出口から収集するステップと、
を含み、
前記分離装置の前記流体入口と流体出口との間の前記バイオプロセス流体の滞留時間は、10分から40分の範囲であり、前記分離装置は、作業面に対して10°未満の角度(230)で動作する、
方法。
【請求項2】
前記分離装置は、前記作業面に対して5°以下の角度で動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離装置は、前記作業面に対して約0°の角度で動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子は、細胞、凝集細胞、担体上の付着細胞、珪藻土、樹脂ビーズ、またはこれらの組合せを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記実質的に清澄化されたバイオプロセス流体は、生物療法的に活性な生成物、細胞、タンパク質、ウイルス、ワクチン、DNA、RNA、またはこれらの組合せを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分離装置の容量および前記複数のメソ流体チャネルを通って流れる前記バイオプロセス流体の流量は、前記滞留時間内に10,000リットルまでの前記バイオプロセス流体を処理するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分離装置の容量および前記複数のメソ流体チャネルを通って流れる前記バイオプロセス流体の流量は、前記滞留時間内に4,000リットルまでの前記バイオプロセス流体を処理するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分離装置の容量および前記複数のメソ流体チャネルを通って流れる前記バイオプロセス流体の流量は、前記滞留時間内に2,000リットルまでの前記バイオプロセス流体を処理するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記清澄化されたバイオプロセス流体を収集するステップに続き、前記分離された粒子を前記分離装置の前記複数のメソ流体チャネルから回収するステップをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオプロセス流体からの前記粒子の分離を助けるため、前記分離装置を通して前記未清澄化バイオプロセス流体を流すステップの前に、前記未清澄化バイオプロセス流体に凝集剤を加えるステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分離装置を通して前記未清澄化バイオプロセス流体を流すステップの前に、前記未清澄化バイオプロセス流体のpHを下げるステップと、
前記未清澄化バイオプロセス流体を前記分離装置から収集した後、前記清澄化されたバイオプロセス流体のpHを中性pHに上げるステップと、
をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分離装置の最終容量に達する前に前記分離装置を洗浄するステップをさらに含み、前記分離装置を洗浄するステップは、前記分離装置を通して別個の流体を流し、前記分離装置において分離された前記粒子を除去するステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分離装置の最終容量に達する前に、別個の流体が前記分離装置の前記流体出口から前記分離装置の前記流体入口へ流れるよう、前記分離装置の前記出口からの流れを逆転させて、前記分離された粒子を前記バイオリアクタまたは別個の容器へ戻すステップをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分離装置において捕捉された前記分離された粒子を回収するステップをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
バイオプロセス流体から標的分子を単離するためのシステム(180)であって、
単回使用の使い捨て分離装置(196、296)であって、前記分離装置の複数のメソ流体チャネル(208)を画定する複数の周囲結合層(330、334、336、344)を含む、分離装置において、各層は生体適合性ポリマー材料を含み、前記分離装置は、前記バイオプロセス流体から粒子の少なくとも一部を分離して実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するように構成され、前記分離装置は、作業面に対して10°未満の角度(230)で動作する、単回使用の使い捨て分離装置(196、296)と、
前記清澄化されたバイオプロセス流体をさらに処理するように構成された前記分離装置の出口に流体結合された二次精製システム(184)と、
を含み、
前記層は、頂部層(344)、底部層(334)、および1つまたは複数の介在層(336)を含み、前記周囲結合層は、積層された並列の構成で複数のメソ流体チャネルを画定し、
前記分離装置は、前記層の端部(331)に配置された複数のスペーサ(332)を含み、各介在層の前記スペーサは穴(333)を含み、前記頂部層および前記底部層のそれぞれは、穴を含む1つのスペーサおよび穴を含まない1つのスペーサを含み、前記穴を含む前記頂部層の前記スペーサは、前記穴を含む前記底部層の前記スペーサとは反対側の装置の端部に配置されている、システム(180)。
【請求項16】
前記分離装置は、流体入口マニホールド(206、306)および流体出口マニホールド(210、310)を含み、流体入口および流体出口は、前記スペーサの前記穴から形成され、前記複数のメソ流体チャネルは、前記流体入口マニホールドおよび前記流体出口マニホールドに流体結合されてこれらの間に配置されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記分離装置の前記複数のメソ流体チャネルの各メソ流体チャネルは、2ミリメートルから20ミリメートルの範囲内の高さ(212)を含み、各メソ流体チャネルの前記高さは、前記スペーサによって画定されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記分離装置の前記複数のメソ流体チャネルの各メソ流体チャネルは、2ミリメートルから10ミリメートル、たとえば2ミリメートルから6ミリメートルの範囲内の高さ(212)を含み、各メソ流体チャネルの前記高さは、前記スペーサによって画定されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記分離装置の入口(200、300)に流体結合されるとともに前記バイオプロセス流体を前記分離装置へ流すように構成されたバイオリアクタ(182)を含む、請求項15から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記分離装置は2,000Lまでの容量を含み、前記分離装置に特定の流量で前記バイオプロセス流体が提供されるとき、前記提供されたバイオプロセス流体の前記流量に対する前記分離装置の前記容量の比率が、10分から40分の範囲内になるようになっている、請求項15から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記分離装置は、並列および/または直列に接続された複数の分離装置を含む、請求項15から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記分離装置は、バイオリアクタに流体結合された並列に接続された複数の分離装置を含み、並列の前記分離装置は、並列の前記分離装置に前記バイオプロセス流体を交互に供給することができるように交互配置で動作する、請求項15から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記分離装置内の前記バイオプロセス流体の滞留時間は、10分から40分の範囲である、請求項15から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記二次精製システムは、深層濾過(188)、膜濾過(190)、クロマトグラフィ(186)、遠心分離(191)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項15から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
バイオプロセス流体から標的分子を単離するためのシステムであって、
バイオリアクタ(182)と、
分離装置(196、296)であって、前記分離装置の入口(200、300)で前記バイオリアクタに流体結合されるとともに、前記バイオリアクタから前記バイオプロセス流体の流れを受け取って、前記バイオプロセス流体から粒子の少なくとも一部を分離して実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するように構成された、分離装置において、前記分離装置は、前記粒子を分離するための複数の並列のメソ流体チャネル(208)を含み、前記分離装置は、作業面に対して10°未満の角度(230)で動作する、分離装置(196、296)と、
前記分離装置の出口(204、304)に流体結合されるとともに、前記清澄化されたバイオプロセス流体をさらに処理するように構成された1つまたは複数の追加の精製サブシステム(184)であって、前記追加の精製サブシステムは、クロマトグラフィック分離(186)、二次深層濾過(188)、研磨膜(190)、またはこれらの任意の組合せを含む、1つまたは複数の追加の精製サブシステム(184)と、
を含む、システム。
【請求項26】
前記分離装置は、少なくとも100万細胞/mLの細胞密度を有する前記バイオプロセス流体を処理するように構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記分離装置内の前記バイオプロセス流体の滞留時間は、16分から30分の範囲である、請求項25または26に記載のシステム。
【請求項28】
請求項15から27のいずれか一項に記載のシステムにおいて実行される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粒子状物質を流体から分離するのに有用なメソ流体チャネルを含むシステムおよび装置に関する。特定の態様において、本開示は、本明細書で提供されるシステムおよび装置を用いて粒子を分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品の生産は、細胞密度および生成物力価が高くなる傾向にあり、このため単回使用の採取システムが経済的および物流的に有利になっている。2,000L以上の細胞培養容積用の単回使用バイオリアクタは、バッチ生産力価が増加し続けているため、ステンレス鋼インフラストラクチャに対する経済的に魅力的な代替手段を提供する。多くのバイオ医薬品は、クロマトグラフィシステムを介した下流精製の前に未精製採取ステップにおいて生産細胞から最初に分離される。この採取ステップのための容積変更可能な解決策は、タンパク質または他の産物(たとえばウイルス)が生産されるときの遠心分離および/または深層濾過を含む。深層濾過は、一次および二次清澄化を介してそれぞれインタクト細胞および細胞デブリを除去する単回使用採取方法として採用されてきたが、このプロセスは、バイオリアクタの細胞密度が徐々に増加するにつれて、細胞固化および目詰まりを被り、これは製造生産性にとって望ましくない。加えて、深層濾過の総濾過面積は、一次採取用の細胞密度に比例して拡大する傾向があり、これは在庫の床スペースにとって望ましくなく、3000万細胞/mLより大きな細胞密度では技術的および経済的に法外である。遠心分離は、大きな固定資産(ステンレス鋼)の製造現場に適した代替手段となり得るが、遠心分離は、資本設備の支出、バッチ間の滅菌準備時間、および遠心分離設備のメンテナンスのため、小さな単回使用の文脈においては法外となり得る。加えて、遠心分離ベースの採取は、バイオリアクタ原料が高い細胞密度(たとえば培養液質量の10%を超える固体)を含むとき、満足できない製品損失を被り得る。細胞分離に取り組む過去の試みでは通常、水平から分離チャネルに向かって30と80°との間の角度で細胞含有流体を縦方向に流すことを含む傾斜を使用している。細胞分離は、細胞が別個のチャンバへ流入するための分離チャネルを通る縦方向の流体流に対して横方向である。分離は、40L/日未満の流量での灌流動作用の、ファウリングが生じやすい、濾過装置となる分離チャネルを通過する細胞に限定され、これはバッチ細胞培養一次清澄化動作には適用可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、流体から、特に細胞密度の高いバイオリアクタ原料から、細胞および/または分散粒子(細胞凝集体、担体上の付着細胞、樹脂ビーズおよび珪藻土を含む)を効率的に分離するための装置および方法を提供する必要性が存在する。複雑な設備なしに、大きなサンプル(たとえば、≧2,000L)から細胞および/または粒子を迅速かつ効率的に分離および収集する必要性は、満たされていないままである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、細胞培養流体に懸濁した粒子を有するバイオプロセス流体を清澄化するための方法が、バイオリアクタから分離装置内の複数のメソ流体チャネルを通して未清澄化バイオプロセス流体を流して、未清澄化バイオプロセス流体から粒子の少なくとも一部を分離し、実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するステップと、清澄化されたバイオプロセス流体を分離装置の出口から収集するステップと、を含み、分離装置内のバイオプロセス流体の滞留時間は、流体の全部または一部が最初に装置に入った時間に対して10分から40分の範囲である。
【0005】
他の実施形態において、バイオプロセス流体から標的分子を単離するためのシステムが、単回使用の使い捨て分離装置であって、分離装置の1つまたは複数のメソ流体チャネルを画定する複数の周囲結合層を有する、分離装置において、各層は生体適合性ポリマー材料を含み、分離装置は、バイオプロセス流体から粒子の少なくとも一部を分離して実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するように構成された、単回使用の使い捨て分離装置と、清澄化されたバイオプロセス流体をさらに処理するための構成で分離装置の流出口で流体結合されたクロマトグラフィシステムと、を含む。
【0006】
他の実施形態において、バイオプロセス流体から標的分子を単離するためのシステムが、バイオリアクタと、分離装置であって、分離装置の入口でバイオリアクタに流体結合されるとともに、バイオリアクタからバイオプロセス流体を受け取って、バイオプロセス流体から粒子の少なくとも一部を分離して実質的に清澄化されたバイオプロセス流体を生成するように構成された、分離装置において、分離装置は、粒子を分離するための複数の並列のメソ流体チャネルを含み、複数のメソ流体チャネルの各メソ流体チャネルは、2ミリメートルから20ミリメートルの範囲内の高さを含む、分離装置と、分離装置の出口に流体結合されるとともに、清澄化されたバイオプロセス流体をさらに処理するように構成された1つまたは複数の追加の精製サブシステムであって、追加の精製サブシステムは、クロマトグラフィック分離、二次深層濾過、研磨膜、またはこれらの任意の組合せを含む、追加の精製サブシステムと、を含む。
【0007】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとよりよく理解され、図面全体にわたって同様の符号が同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の態様による、分離装置を含むバイオプロセシングシステムの一実施形態の概略図である。
図2】本開示の態様による、図1の分離装置の一実施形態の側面図の概略図である。
図3】本開示の態様による、図2の分離装置の一実施形態の側面図の概略図であり、ある角度での分離装置を示している。
図4A】本開示の態様による、図2の分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、入口および出口構成を示している。
図4B】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4C】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4D】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4E】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4F】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4G】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図4H】本開示の態様による、図4Aの分離装置の一実施形態の斜視図の概略切り取り図であり、他の入口および出口構成を示している。
図5】本開示の態様による、図2の分離装置の複数を含むモジュラー分離装置の一実施形態の側面図の概略図である。
図6】本開示の態様による、図2の分離装置の複数を含む交互バイオプロセシングシステムの一実施形態の概略図である。
図7】本開示の態様による、図2の分離装置を利用して流体から粒子を分離するための方法の一実施形態のフローチャートである。
図8】本開示の態様による、図1の分離装置の追加の一実施形態の斜視図の概略図である。
図9】本開示の態様による、図8の分離装置の一実施形態の部分分解図の概略図であり、分離装置の層を示している。
図10】本開示の態様による、図9の分離装置の入口での層の斜視図の概略図である。
図11図9の分離装置の出口での層の斜視図の概略図である。
図12】本開示の実施形態による、図9の分離装置の上面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供する努力において、実際の実装形態のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。あらゆる工学または設計プロジェクトの場合と同様、あらゆるこのような実際の実装形態の開発において、実装形態ごとに変化し得る、システム関連およびビジネス関連の制約との適合のような、開発者の特定の目標を達成するために多数の実装形態特有の決定を行わねばならないということが理解されるべきである。また、このような開発努力は複雑で時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとっては設計、作製、および製造の日常的な仕事であろうことが理解されるべきである。
【0010】
本明細書で議論するいくつかの実施形態において、バイオ医薬品プロセスにおいて細胞培養流体を採取または清澄化するために分離装置を用いることができる。このようなプロセスにおいて、細胞のような粒子を含む流体から回収されるべき目標物質は、清澄化された流体、分離された粒子、またはこれらの組合せであり得る。上記を念頭に置いて、図1は、清澄化された基流体、分離された粒子、またはこれらの組合せを分離および回収するための分離装置196を含むバイオプロセシングシステム180を示す。
【0011】
バイオプロセシングシステム180は、生物学的反応またはプロセスが実行されるバイオリアクタ182、あるいは生物学的に活性な環境を促進する任意の他の装置またはシステムを含むことができる。いくつかの実施形態において、バイオリアクタ182内で反応が起こった後、細胞および/または他の分散粒子を含む基流体の未清澄化溶液をバイオリアクタ182から分離装置196へ流すことができる。装置196は、細胞および/または他の粒子を基流体から分離するために用いることができる。したがって、溶液が一定の流量で分離装置を通って流れるとき、装置196は、図2に関してより詳細に議論するように、溶液から落下する細胞および/あるいは細胞、凝集細胞、担体上の付着細胞、珪藻土、樹脂ビーズ、またはこれらの組合せのような他の粒子を捕捉または含有して実質的に清澄化された流体を生成することができ、これはバイオプロセスの標的を含むことができる。清澄化された流体は、細胞、生物療法的に活性な生成物、タンパク質(たとえば抗体)、ウイルス、ワクチン、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、清澄化された流体は装置196を出ることができ、および1つまたは複数の追加の装置196(たとえば、一連の装置196)を通って流れることができ、またはクロマトグラフィック分離サブシステム186、二次深層濾過システム188、研磨膜サブシステム190(たとえば、膜濾過サブシステム)、遠心分離サブシステム191、または任意の他の精製サブシステムのような、清澄化された流体をさらに清澄化または精製するバイオプロセシングシステム180の1つまたは複数の追加の精製サブシステム184(二次精製システムとも呼ばれる)を通って流れることができる。
【0012】
装置196は単回使用の使い捨て装置とすることができ、これはすでに滅菌され、したがってバイオ医薬品製造フロアでの洗浄および滅菌のためのステップを排除することができる。これはたとえばガンマ線照射によって事前滅菌することができる。装置196はそれぞれ、剛性または可撓性プラスチックのような剛性または可撓性材料で作製することができ、または剛性および可撓性材料の両方で作製することができる。図2図5は、比較的剛性の構造を備えた分離装置を示す一方、以下図8図12に示す装置は、比較的可撓性の構造を備えた分離装置を示す。分離装置本体または内部の一部または全部を形成するために用いられる材料は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル共重合体のような、任意の高密度プラスチックまたはポリマーとすることができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、装置196内で溶液から沈降する細胞および/または他の粒子が、バイオプロセシングシステム180を用いるバイオプロセスの意図された産物であれば、細胞および/または他の粒子は装置196から回収することができる。未清澄化溶液が装置196を通って流れ、このため細胞および/または他の粒子が溶液から沈降すると、装置の最終保持容量に達する前に、装置196の入口に流体結合された共通または別個の流体導管を動作させて装置に含まれる産物を洗い流し、産物回収を改善して産物収量を増加させることができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、装置196内で溶液から沈降する細胞および/または他の粒子が、バイオプロセシングシステム180を用いるバイオプロセスの意図された産物であれば、細胞および/または他の粒子は装置196から回収することができる。未清澄化溶液が装置196を通って流れ、このため細胞および/または他の粒子が溶液から沈降すると、装置の最終保持容量に達する前に、装置196の出口に流体結合された共通または別個の流体導管を動作させて、装置196内の流れを装置の出口から入口へ逆転させることができる。逆流は、装置196内に保持された細胞および/または他の粒子(たとえば、被保持物)を、バイオリアクタ182ならびに/あるいは装置196および/またはバイオリアクタ182に流体結合された別個の滅菌容器192へ戻すことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、装置196内で溶液から沈降する細胞および/または他の粒子が、バイオプロセシングシステム180を用いるバイオプロセスの意図された産物であれば、細胞および/または他の粒子は装置196から回収することができる。未清澄化溶液が装置196を通って流れ、このため細胞および/または他の粒子が溶液から沈降すると、装置の最終保持容量に達する前に、保持された細胞および/または他の粒子の流体を、バッファまたは媒体のような、代替の適合性流体と交換することができる。装置196の出口に流体結合された共通または別個の流体導管の係合を動作させて、装置196内の同じまたは代替の適合性流体を用いて装置の出口から入口へ流れを逆転させることができる。逆流は、装置196内に保持された細胞および/または他の粒子(たとえば、被保持物)を、バイオリアクタ182ならびに/あるいは装置196および/またはバイオリアクタ182に流体結合された別個の滅菌容器192へ戻すことができる。
【0016】
加えて、またはあるいは、いくつかの実施形態において、バイオプロセシングシステム180は、未清澄化溶液内の細胞および/または他の粒子を、装置196内で未清澄化溶液からより迅速に沈降させ、したがって、装置196およびバイオプロセシングシステム180全体としての効率を高めることができる方法で動作させることができる。たとえば、いくつかの実施形態において、溶液のpHは、装置196に入る前に調整することができる。流体または他の材料をバイオリアクタ182への入口を介して加えてpHを調整することができ、これを監視することができる。pHは、装置196を通って流れる前に、たとえば、pH4.5~5に下げることができる。pHが低くなると、溶液中の細胞および/または他の粒子を大きな凝集体へと蓄積(たとえば、凝集)させることができ、細胞および/または他の粒子が分離装置196内でより迅速に溶液から落下して、より清澄化された流体産物を生成することが可能になる。装置196からの清澄化された流体のpHは、回収前または追加の精製サブシステム184の1つまたは複数を用いてさらに清澄化される前に、装置196または追加の貯蔵バッグ194内へ塩基を加えることによって、溶液の開始pH、たとえばpH7に中和することができる。いくつかの実施形態において、追加の粒子または添加剤を細胞培養流体(たとえば、未清澄化溶液)に加えて、装置196の沈殿性能を改善するのを助けることができる。たとえば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMC)または珪藻土(DE)のような凝集剤を細胞培養流体に加えることができる。凝集剤は、粒子、ならびに細胞培養流体中の他のデブリをより大きな粒子へと凝集させ、これは、細胞培養流体のより大きな粒子と流体との間の密度差に基づいてより速く沈殿することができる。これは次には、特により高い粒子密度(たとえば、細胞密度)で、装置196の分離性能を改善することができる。いくつかの実施形態において、より大きな粒子は装置196から回収することができる。このような実施形態において、加えられた凝集剤の正味電荷を用いて、DNAまたは宿主細胞タンパク質(HCP)のような、細胞培養流体中の荷電種を捕捉することもできる。
【0017】
図2は、溶液の基流体から細胞および/または粒子を分離するために用いることができる分離装置196(たとえば、水平または実質的に水平の配向で動作するように構成された非傾斜沈降装置)の一実施形態を示す。好ましい実施形態において、装置196は、粒子が流れるときに装置196に滞留する時間と、粒子が重力によって装置に沈殿してある沈殿効率を達成するのにかかる時間とのバランスをとることを通して動作可能に機能する。具体的には、所与の容積の装置を通る粒子含有流体の流量で、粒子沈殿時間より長い滞留時間が可能になれば、粒子は捕捉されることになる。粒子含有流体の流量の結果、滞留時間が粒子沈殿時間より少なければ、粒子は効率的に保持されないであろう。滞留時間は、装置容積を流量で割ることによって簡単に計算される。
【0018】
装置196は、流体入口200を介して、細胞懸濁液のような細胞培養流体198(たとえば、基流体に懸濁した細胞および/または他の粒子を含む未清澄化溶液)、または粒子を含む他の流体の入力を受け取ることができる。装置196は、特定の流量で、バイオリアクタ182、または他の供給源から細胞培養流体198を受け取ることができる。装置196は、細胞および/または他の粒子のような粒子を細胞培養流体198から分離して、装置196の流体出口204を介して清澄化された流体202の回収を可能にするために用いられる補助重力沈降装置とすることができる。回収された清澄化された流体202内に採取プロセスの目標産物を含むことができる。
【0019】
装置196の本体205は、流体入口マニホールド206、複数のメソ流体チャネル208(たとえば、ミリメートルからセンチメートルの範囲内の高さを有するチャネル)、および流体出口マニホールド210を含むことができる。流体入口マニホールド206は、流体入口200を複数のメソ流体チャネル208へ結合することができる。装置196は、積層または並列の構成で配置された任意の数のメソ流体チャネル208(たとえば、2、3、4、5、6など)を含み、図示の実施形態に示すように、装置196の本体205の分離部分211に一連の積層メソ流体チャネルを提供することができる。メソ流体チャネル208の積層構成により、細胞培養流体198の粒子が沈殿するための表面積を増やすことが可能になる一方、細胞培養流体198が移動する容積を増やすことも可能になり、これにより装置196が増加した容積の細胞培養流体198を効率的に処理することが可能になり得る。したがって、装置196は、高い細胞密度(たとえば、>2000万細胞/mL)を有する様々な容積で細胞培養流体198を十分に清澄化することができる。装置196は、2,000L、4,000L、または10,000Lまでの容量を有することができる。
メソ流体チャネル208は、高さ212がミリメートルからセンチメートルの高さ、たとえば高さ212が2mmと20mm(2cm)との間、または2mmと10mmとの間、または2mmと6mmとの間の範囲とすることができる。装置196のメソ流体チャネル208のすべてが同じ高さ212を有することができ、またはいくつかの実施形態において、メソ流体チャネル208は、高さ212をミリメートルからセンチメートルの範囲内で変化させることができる。メソ流体チャネル208はそれぞれ、流体入口マニホールド206と流体出口マニホールド210との間に配置されてこれらに流体結合されている。したがって、各メソ流体チャネル208は、メソ流体チャネル208のチャネル入口214で流体入口マニホールド206に結合し、チャネル出口216で流体出口マニホールドに結合することができる。流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210は、マニホールド206、210がメソ流体チャネル208の流路に垂直に配置されるように配置することができる。流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210はそれぞれ、細胞培養流体198をメソ流体チャネル208から分配および収集するため、流体入口マニホールド206の容量および流体出口マニホールド210の容量が各メソ流体チャネル208の容量より大きくなるようなサイズにすることができる。したがって、装置196は、いくつかの実施形態において、マイクロ流体の特徴を欠いていることがある。結果として、ミリメートルから2センチメートルまでのメソ流体チャネル208の高さ212により、装置196の総容量を増加させることができる。
【0020】
動作中、細胞培養流体198は、特定の流量で装置196に提供することができる。これは、細胞培養流体198がメソ流体チャネル208を通過する流量である。細胞培養流体198は流体入口マニホールド206に入ることができ、複数のメソ流体チャネル208間で実質的に均等に分配することができる。細胞培養流体198がメソ流体チャネル208を横断するとき、細胞培養流体198に含まれる粒子(たとえば、細胞)と細胞培養流体198の周囲の流体との間の密度差により、粒子が沈殿して各メソ流体チャネル208の下方内面218に集めることができる。メソ流体チャネル208の下方内面上の細胞培養流体198の粒子の沈殿は、細胞培養流体198内のより高密度粒子に作用する分離力220によってさらに引き起こすことができる。分離力220は周囲の重力とすることができ、このためメソ流体チャネル208内の粒子の沈殿を引き起こす別個のまたは追加の力が必要とされない。細胞培養流体198が装置196を通って流れるときのメソ流体チャネル208内の細胞培養流体198の粒子の沈殿により、流体出口204を介して出力として回収することができる細胞培養流体198の実質的に清澄化された流体層202(たとえば>80%粒子除去)を生むことができる。したがって、細胞培養流体198の流体層202内のバイオ医薬品プロセスの、タンパク質のような産物を回収することができる。
【0021】
本明細書で用いるとき、滞留時間とは、細胞培養流体198が装置196の流体入口から流体出口まで装置196を横断するのにかかる時間の量、したがって、細胞培養流体198の粒子が沈降することを可能にするために細胞培養流体198がメソ流体チャネル208内にあり得る時間の量を説明している。装置196の滞留時間は、装置196の総容積の、装置196を通る細胞培養流体198の流量に対する比率として定義される。装置196についての滞留時間は、約10分から40分またはより小さな範囲内、たとえば16分から30分、23分から27分、または任意の他の適切な範囲またはこのような範囲の組合せの範囲とすることができる。装置196内の細胞培養流体198のこの範囲の滞留時間により、粒子の沈殿が可能になって効率的な分離期間(たとえば、2,000Lで8時間未満の処理期間)内に実質的に清澄化された流体層202を提供する。
【0022】
したがって、処理されるべき細胞培養流体198の目標容積および装置196の容量が分かれば、細胞培養流体198の流量は、上の範囲内で目標滞留時間(たとえば、24分、25分、26分など)を提供するように設定または調整することができる。上の範囲内の滞留時間により、Table 4(表1)およびTable 5(表2)を参照してより詳細に議論するように、高細胞密度細胞培養流体であり得る細胞培養流体198の粒子の効率的な沈殿、および管理可能な期間内での細胞培養流体198の流体層202の清澄化を提供することができる。このように、装置196は、処理されるべき目標容積および/または特定の採取用途に対して規模変更可能であり得る。
【0023】
細胞培養流体198がメソ流体チャネル208を横断するとき、細胞培養流体の粒子と流体との間の密度差および分離力220(たとえば、周囲の重力)のため、細胞培養流体198の粒子は下方内面218に沈殿する。加えて、装置196は、細胞培養流体198の清澄化された流体層202を回収するために利用することができる。好ましい実施形態において、装置196は、いかなる微孔性またはマイクロ流体の特徴を含まない。さらに、清澄化された流体層202が装置196の出口204を介して回収されるので、装置196は、細胞培養流体198の処理後に廃棄することができる単回使用装置とすることができる。
【0024】
図3は、作業面232および分離力220の供給源234に対して角度230で配置された分離装置196を示す。いくつかの実施形態において、細胞培養流体198の処理中、装置196は、図2に示すように、作業面232および分離力220の供給源234に対して実質的に平行に(すなわち、非傾斜)、または作業面232に対して0°の角度または約0°の角度(たとえば、0°±5°)で配置することができる。すなわち、作業面232は、分離力220(たとえば、重力)に垂直に配向された面とすることができる。通常、作業面232は水平面である。いくつかの実施形態において、細胞培養流体198の処理中、装置196は、図3に示すように、作業面232および分離力220の供給源234に対して角度230で配置することができる。角度230により、メソ流体チャネル208のチャネル入口214がチャネル出口216より低く配置されるように装置を配置または配向することができる。
【0025】
装置196は、角度230で配置されていなくても(たとえば、0°の角度または約0°の角度でも)、細胞培養流体198の流体層202から粒子を実質的に分離するように動作することができる。細胞培養流体の粒子と流体層202との間の密度差および分離力220は、傾斜がない場合でさえ、流体層202から粒子を十分に分離するように作用することができる。装置196が角度230で配置されている実施形態において、角度230により、装置196の動作のための力としてではなく、装置196から空気を排出するのを助けるという利点を提供することができる。
【0026】
角度230は、実質的に0°~30°の間の角度、または実質的に0°~10°の間の角度、たとえば、10°、5°、または約0°(たとえば、0°±5°)とすることができる。したがって分離装置196は本明細書では非傾斜沈降装置として参照することができる。対照的に、傾斜沈降装置はボイコット効果に依存しており、これには沈降を達成するために約30°以上の動作角度が要求されることがある。いくつかの実施形態において、装置196は、分離プロセス全体を通して角度230で配置することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、装置196は、間欠的または周期的に角度230まで傾斜してメソ流体チャネル208から空気を排出し、装置196の分離効率を高めることができる。
【0027】
図4A図4Hは、装置196の流体入口200、流体入口マニホールド206、流体出口マニホールド210、および流体出口204の異なる構成の実施形態を示す。装置196のいくつかの構成において、装置196は、1つまたは複数の流体入口200および1つまたは複数の流体出口204(たとえば、1、2、3)を含むことができる。加えて、装置196は、流体入口200をチャネル入口214に結合する流体入口マニホールド206の1つまたは複数、流体出口204をチャネル出口216に結合する流体出口マニホールド210の1つまたは複数、または流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210の両方を含むことができる。さらに、いくつかの構成において、装置196は、1つまたは複数の流体入口マニホールド206からチャネル入口214間で細胞培養流体を分配することができる1つまたは複数の横方向入口チャネル236および/またはチャネル出口216から清澄化された流体層202を収集して清澄化された流体層202を1つまたは複数の流体出口マニホールド210に分配することができる1つまたは複数の横方向出口チャネル238を含むことができる。
【0028】
図4Aは、複数の流体入口マニホールド206を有する装置196の構成を示しており、それぞれ流体入口200の1つを分離部分211のメソ流体チャネル208の1つまたは複数のチャネル入口214に結合している。複数の流体入口200へ流入した細胞培養流体198は、複数の流体入口マニホールド206を介して1つまたは複数のチャネル入口214間で分配される。加えて、装置196は複数の流体出口マニホールド210を含み、それぞれメソ流体チャネル208の1つまたは複数のチャネル出口216に結合されている。細胞培養流体198が装置196を通って流れるときに細胞および/または他の粒子がそれから落下するときに生成される清澄化された流体層202は、複数の流体出口マニホールド210を介してメソ流体チャネル208を出て、それぞれの流体出口204を介して装置196を出る。複数の流体入口200および流体出口204により、装置を通る細胞培養流体198の流量を増やすことが可能になり、したがって装置196が特定の期間内に効率的に処理することができる細胞培養流体198の容積を増やすことができる。
【0029】
図4Bは、単一の流体入口マニホールド206に結合された単一の流体入口200、ならびに単一の流体出口マニホールド210に結合された単一の流体出口204を有する装置196の構成を示す。加えて、流体入口マニホールド206は、1つまたは複数の横方向入口チャネル236に結合されている。横方向入口チャネル236は、流体入口マニホールド206に流入した細胞培養流体198が横方向入口チャネル236を介してチャネル入口214のそれぞれに分配されるよう、流体入口マニホールド206に垂直に配置することができる。さらに、チャネル出口216は、横方向出口チャネル238を介して流体出口マニホールド210に結合されている。横方向出口チャネル238は、各チャネル出口216からの清澄化された流体層202が横方向出口チャネル238に集められ、単一の流体出口マニホールド210に分配されて装置196を出るよう、メソ流体チャネル208に垂直に配置することができる。横方向入口チャネル236および/または横方向出口チャネル238を含めることにより、装置196を通る特定の流量で細胞培養流体198を実質的に均等に分配することを依然として可能にしながら、装置196の輪郭の最小化を提供することができる。
【0030】
図4Cは、横方向入口チャネル236および横方向出口チャネル238にそれぞれ結合された複数の流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210を有する装置196の構成を示す。図4Bに示す構成と同様に、横方向入口チャネル236は、流体入口マニホールド206に流入した細胞培養流体198が横方向入口チャネル236を介してチャネル入口214のそれぞれに分配されるよう、流体入口マニホールド206に垂直に配置することができる。加えて、横方向出口チャネル238は、各チャネル出口216からの清澄化された流体層202が横方向出口チャネル238に集められ、複数の流体出口マニホールド210に分配されて装置196を出るよう、メソ流体チャネル208に垂直に配置することができる。図4Cに示す構成のようないくつかの構成において、流体入口マニホールド206は、流体出口マニホールド210の真向かいに、またはこれと並んで、装置196の両端部240で配置することができる。
【0031】
図4Dは、横方向入口チャネル236および横方向出口チャネル238にそれぞれ結合された単一の流体入口マニホールド206および単一の流体出口マニホールド210を有する装置196の構成を示す。図4Dに示す構成は、装置196の側面242に対する端部240の周りの流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210の位置を除いて、図4Bに示すものと同様である。図4Bおよび図4Dは両方とも、流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210が装置の両端部240で互いに真向かいに配置されている構成を示すが、図4Dは、図4Bに示すように、装置の側面242間の中心位置に配置されるのではなく、側面242の1つに隣接して配置された流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210を示す。
【0032】
図4Eは、単一の流体入口200および流体入口マニホールド206を有する装置196の構成を示しており、これは横方向入口チャネル236を介してチャネル入口214に結合されている。加えて、装置196は、複数の流体出口マニホールド210のそれぞれの1つを介して1つまたは複数のチャネル出口216にそれぞれ結合された複数の流体出口204を含む。反対の構成において、図4Fは、複数の流体入口マニホールド206のそれぞれの1つを介して1つまたは複数のチャネル入口214にそれぞれ結合された複数の流体入口200を有する装置196の構成を示す。加えて、図4Fに示す装置196は、横方向出口チャネル238を介して1つまたは複数のチャネル出口に結合された単一の流体出口204および流体出口マニホールド210を含む。両方の構成において、図4Eに示す単一の流体入口マニホールド206および図4Fに示す単一の流体出口マニホールド210は、装置196の各側面242間の中心位置ではなく、装置196の一側面242に隣接してそれぞれ配置されている。さらに、図4Eおよび図4Fの両構成に示すように、複数の流体入口マニホールド206および/または複数の流体出口マニホールド210が存在するとき、これらは装置196の側面242間に等間隔で配置することができる。
【0033】
図4Gは、複数の流体入口マニホールド206のそれぞれの1つを介して装置196の1つまたは複数のチャネル入口214にそれぞれ結合された複数の流体入口200を有する装置196の構成を示す。加えて、図4Gの装置196は、横方向出口チャネル238を介して1つまたは複数のチャネル出口216に結合された複数の流体出口204および流体出口マニホールド210を含む。複数の流体入口マニホールド206および複数の流体出口マニホールド210があるが、装置196に存在するそれぞれの量は対応していない。たとえば、図4Gの装置196は、3つの流体入口マニホールド206および2つのみの流体出口マニホールド210を含む。このような構成において、流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210はそれぞれ、装置196の側面242間で等間隔にすることができるが、流体出口マニホールド210は、装置196のそれぞれの端部240で流体入口マニホールド206の真向かいに配置することができない。
【0034】
図4Hは、単一の流体入口200および対応する単一の流体入口マニホールド206、ならびに単一の流体出口204および対応する単一の流体出口マニホールド210を有する装置196の構成を示す。加えて、流体入口マニホールド206は、横方向入口チャネル236を介して1つまたは複数のチャネル入口214に結合され、流体出口マニホールド210は、横方向出口チャネル238を介して1つまたは複数のチャネル出口216に結合されている。図4Hに示す構成において、流体入口マニホールド206は、装置196の一方の側面242に隣接して端部240に沿って配置されている。流体出口マニホールド210は、装置196の反対側面242に隣接する反対側の端部240に沿って配置され、このため流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210は、互いの真向かいに配置されていない。
【0035】
図4A図4Hに示す装置196の代替構成は、装置196の非限定的な例を示しており、すべての可能な構成を示すことを意味していない。装置196は、任意の適切な量の流体入口200、流体入口マニホールド206、流体出口204、流体出口マニホールド210を含むことができ、横方向入口チャネル236および/または横方向出口チャネル238を含んでも含まなくてもよい。流体入口200および流体出口204、ならびに流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210の量を変えることにより、装置196全体の圧力降下のカスタマイズまたは選択が可能になり、したがって、装置196を通る細胞培養流体198の流量を変えることができる。これにより、目標用途に基づいて装置196のカスタマイズが可能になり得る。装置196の流体入口200と流体出口204との間の流体経路は、線形または蛇行構成で一方向とすることができる。加えて、横方向入口チャネル236および/または横方向出口チャネル238を含めることにより、装置196を通る特定の流量で細胞培養流体198の実質的に等しい分配を依然として可能にしながら、装置196の輪郭の最小化を提供することができる。
【0036】
図5は、モジュラーサブユニットとして分離装置196の2つ以上を含むモジュラー分離装置246の一実施形態を示す。図示の実施形態において、各装置196の1つまたは複数の流体入口マニホールド206および1つまたは複数の流体出口マニホールド210は、それぞれ、流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210の長さが増加してモジュラー分離装置246のための流体入口マニホールド206および流体出口マニホールド210を形成するように結合することができる。各装置196は、流体入口マニホールド206と流体出口マニホールド210との間に結合された1つまたは複数のメソ流体チャネル208を含むので、モジュラー分離装置246は、追加の装置196が追加されるにつれて増加した数のメソ流体チャネル208を含むことになる。
【0037】
モジュラーサブユニットとして装置196を用いることにより、目標細胞培養流体198の容積の効率的な処理を可能にする特定の容量をモジュラー分離装置246に提供することができる。いくつかの実施形態において、装置196(たとえば、モジュラーサブユニット)は、メソ流体チャネル208の数を増加または減少させることを可能にし、流体入口200および/または流体出口204の位置および/または量を変え、流体入口マニホールド206および/または流体出口マニホールド210、またはこれらの任意の組合せの存在または不在を変えることができる。装置196を用いるモジュラー分離装置246のモジュール性により、目標用途に基づいて装置196の使用を可能にすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、図8図12を参照して以下で議論する装置296を含む装置196、およびモジュラー分離装置246は、交互配置で動作させることができ、1つまたは複数の装置が細胞培養流体に流体結合されて実質的に清澄化された産物を生成する一方、追加の1つまたは複数の装置が流体結合されて細胞および/または他の粒子を反応器または別個の容器に回収する。このようなプロセスにより、細胞および/または他の粒子を回収しながら細胞培養流体の半連続的または連続的処理が可能になる。加えて、このような配置により、システム処理容量を増やすことが可能になり得る。したがって、図6は、並行して動作するように配置された装置196の2つを有する交互バイオプロセスシステム250を示す。装置196の2つに関して議論するが、交互バイオプロセスシステム250は、2より多くの装置196に適用可能とすることができ、および/またはモジュラー分離装置246を含むことができるということが理解されるべきである。
【0039】
交互バイオプロセスシステム250において、装置196は、並列動作構成で配置することができ、それぞれの流体入口200、バイオリアクタ182または細胞培養流体198の他の供給源によってそれぞれ流体結合されている。いくつかの実施形態において、装置196の流体入口200へ細胞培養流体198を圧送するために入口ポンプ252を用いることができる。動作中、細胞培養流体は、装置196の第1の装置254を通って流れることができる一方、装置196の第2の装置256への流れは遮断される。細胞培養流体は、第1の装置254のメソ流体チャネル208を通って流れることができ、その中で細胞および/または他の粒子が細胞培養流体から沈降することができる。第1の装置254の最終容量に達する前に、バイオリアクタからの細胞培養流体の流れは第2の装置256に送られ、第1の装置254へ流入することを遮断することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、細胞培養流体から沈降する細胞および/または他の粒子がバイオプロセスの意図された産物であれば、第1の装置254は、同じ流体、あるいはバッファまたはパージ空気のような代替の適合性流体258を用いて、沈殿した細胞および/または粒子を洗浄することができる。保持された細胞および/または他の粒子の流体は、第1の装置254の出口に流体結合された共通または別個の流体導管を用いて、同じまたは代替の適合性流体258と交換することができ、このため装置254内の同じまたは代替の適合性流体を用いて第1の装置254の流体出口204から流体入口200まで流れが逆転する。いくつかの実施形態において、交互バイオプロセスシステム250は、第1の装置254の流体出口204内への代替適合性流体258の逆流を作成するために用いることができるパージポンプ260を含むことができる。逆流は、第1の装置254内に保持された細胞および/または他の粒子(たとえば、被保持物)をバイオリアクタ182、ならびに/あるいは収集ライン262を介して装置196および/またはバイオリアクタ182に流体結合された別個の滅菌容器へ戻すことができる。第1の装置254は次いで、追加の分離に用いる準備をすることができる。いくつかの実施形態において、第1の装置254は、第1の装置254の流体入口200に流体結合された共通または別個の流体導管を用いて、代替適合性流体258(たとえば、バッファ)を第1の装置254に流すことによって洗浄することができる。代替適合性流体258を第1の装置254に流すためにバッファポンプ264を用いることができる。
【0041】
バイオリアクタ182からの細胞培養流体が第2の装置256を通って流れることができる一方、第1の装置254内に保持された細胞および/または他の粒子は除去される。第2の装置256の最終容量に達する前に、バイオリアクタからの細胞培養流体の流れは第1の装置254に送られ、第2の装置256へ流入することを遮断することができる。したがって、第2の装置256は次いで、保持された細胞および/または他の粒子を洗浄することができる。細胞培養流体、清澄化流体、および代替適合性流体の流れを制御するために交互バイオプロセスシステム250全体を通して複数のバルブ266を用いることができる。したがって、第1および第2の装置254、256は、細胞培養流体の半連続的または連続的処理を可能にすることによって効率および分離容量を高めるために交互配置で用いることができる。
【0042】
図7は、装置196を用いて細胞培養流体198を清澄化する方法270の一実施形態のフローチャートである。2,000L、4,000L、または10,000Lまでの容量を有することができる装置196の単回使用、使い捨ての性質のため、いくつかの実施形態において、装置196は、使用前に滅菌(たとえば、ガンマ滅菌)および/またはパッケージすることができる。ステップ272で、目標細胞培養流体198の容積の効率的な処理を可能にする特定の容量を有する装置196を提供することができる。先に議論したように、装置196は、流体入口マニホールド206と流体出口マニホールド210との間に規則的に積層および配置された複数のメソ流体チャネル208を含むことができる。メソ流体チャネル208の量およびサイズ(たとえば、高さ)は、装置196の特定の容量を考慮に入れることができる。いくつかの実施形態において、装置196は、モジュラーサブユニットを含むようにモジュール式とすることができる。このような実施形態において、モジュラーサブユニットを用いて、目標細胞培養流体198の容積の効率的な処理を可能にする特定の容量を装置196に提供することができる。いくつかの実施形態において、モジュラーサブユニットにより、メソ流体チャネルの数を増加または減少させることが可能になり、流体入口200および/または流体出口204の位置および/または量を変え、流体入口マニホールド206および/または流体出口マニホールド210、またはこれらの任意の組合せの存在または不在を変えることができる。いくつかの実施形態において、装置196は、作業面232および分離力220の供給源234に対して実質的に0°の角度230(たとえば、0°±5°)で提供することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、装置196は、1°~29°の範囲内または1°~10°の間の角度230で提供することができる。角度230は、たとえば分離力を生成するための、装置の動作に必要ではないかもしれないが、装置196から空気を排出するためにのみ用いることができる。
【0043】
次に、ステップ274で、未処理の細胞培養流体198を、流体層202に懸濁した粒子(たとえば、細胞)を含む細胞懸濁液として、バイオリアクタのような供給源から提供することができる。未処理の細胞培養流体198は、1~2億粒子/mL(たとえば、細胞/mL)の細胞密度範囲内のような、高密度の粒子を含む任意の密度の粒子を含むことができる。いくつかの実施形態において、細胞培養流体198に追加の粒子を加えて装置196の沈殿性能を改善するのを助けることができる。たとえば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMC)のような凝集剤を細胞培養流体198に加えることができる。凝集剤は、粒子、ならびに細胞培養流体198中の他のデブリをより大きな粒子へと凝集させることができ、これは、細胞培養流体198のより大きな粒子と流体との間の密度差に基づいてより速く沈殿することができる。これは次には、特により高い粒子密度(たとえば、細胞密度)で、装置196の分離性能を改善することができる。いくつかの実施形態において、粒子は装置196から回収することができる。このような実施形態において、加えられた凝集剤の電荷を用いて、DNAのような、細胞培養流体198中の荷電種を捕捉することもできる。いくつかの実施形態において、イオン交換またはアフィニティービーズを細胞培養流体198に加えて、回収されるべき産物またはタンパク質を捕捉することができる。ビーズは装置196内に沈殿することができ、ビーズおよび産物は装置から回収することができる。したがって、いくつかの実施形態において、装置196は、沈殿した粒子を回収するためのポートを含むことができる。
【0044】
次に、ステップ276で、未処理の細胞培養流体198を特定の流量で装置196のメソ流体チャネル208に流すことができる。細胞培養流体198が装置196を通って流れる特定の流量は、上述の範囲内で滞留時間(たとえば装置容量の流量に対する比率)を提供して装置196の性能および効率を高めるため、装置196の容量に基づいて決定することができる。次に、ステップ278で、細胞培養流体198が装置196のメソ流体チャネル208を通って流れるときの滞留時間にわたって、細胞培養流体198内の粒子の少なくとも一部を細胞培養流体198の流体層202から分離することができる。先に議論したように、細胞培養流体198の粒子と流体層202との間の密度差および分離力220のため、粒子はメソ流体チャネルの下方内面218に沈殿することができる。いくつかの実施形態において、分離力220は周囲の重力とすることができる。装置196により、細胞培養流体198内の粒子の約90%~99.9%までの装置196内での分離および保持が可能になり得る。
【0045】
次に、ステップ280で、粒子を実質的に欠く流体層202の流れを、装置の流体出口204を介して収集することができる。収集された清澄化された流体層202は、採取プロセスの目標産物を含むことができる。次に、ステップ282で、目標産物が清澄化された流体層202に収集されれば、装置196は単回使用の使い捨て分離装置とすることができるので、装置196を廃棄することができる。したがって、装置196は、広い粒子密度範囲を含む細胞培養流体の効率的な清澄化を可能にし得る単回使用の使い捨て分離装置を提供することができる。加えて、またはあるいは、いくつかの実施形態において、先に議論したように、分離装置196を通る流れは、ステップ284で、装置196の最終容量に達する前に逆転させることができる。装置196を通る流れを逆転させることにより、細胞培養流体198が装置196を通って流れたときにこれから落下した細胞および/または他の粒子がバイオリアクタまたは回収用の別個の容器へ戻ることが可能になり得る。方法270は、装置196の使用について説明しているが、方法270は、図8図12に関して以下で議論する分離装置の実施形態にも用いることができるということが理解されるべきである。
【0046】
図8は、可撓性材料から作製された(好ましくは、ガンマ適合性ポリマー、たとえばポリエチレンまたはエチレン酢酸ビニル共重合体で製造される)分離装置296の一実施形態を示しており、分離装置296は、細胞および/または他の粒子の細胞培養流体198からの分離のための1つまたは複数のチャネルを有するバッグ構成を形成するようになっている。装置296は、分離のための使用後に廃棄することができる単回使用の装置とすることができる。装置296は、流体入口300を介して細胞培養流体198の入力(たとえば、基流体に懸濁した細胞および/または他の粒子を含む未清澄化溶液)を受け取ることができる。装置296は、バイオリアクタ182、または他の供給源から細胞培養流体198を特定の流量で受け取ることができる。装置296の本体305は、1つまたは複数の流体入口マニホールド306、1つまたは複数のメソ流体チャネル308(たとえば、ミリメートルからセンチメートルの範囲内の高さを有するチャネル)、および1つまたは複数の流体出口マニホールド310を含むことができる。流体入口マニホールド306は、流体入口300を1つまたは複数のメソ流体チャネル308に結合することができる。装置296は、装置296の本体305の分離部分311に一連の積層メソ流体チャネルを提供する積層された構成または並列の構成に配置された任意の数のメソ流体チャネル308(たとえば、1、2、3、4、5、6など)を含むことができる。
【0047】
1つまたは複数のメソ流体チャネル308はそれぞれ、高さが2mmと20mm(2cm)との間のような、ミリメートルからセンチメートルの高さの範囲の高さとすることができる。1つまたは複数のメソ流体チャネル308はそれぞれ、流体入口マニホールド306と流体出口マニホールド310との間に配置されてこれらに流体結合されている。流体入口マニホールド306および流体出口マニホールド310は、マニホールド306、310が1つまたは複数のメソ流体チャネル308の流路に垂直に配置されるように配置することができる。流体入口マニホールド306および流体出口マニホールド310を含む装置296の構造は、図9図11に関してより詳細に議論するように、周囲結合された可撓性プラスチックまたはポリマー層から形成することができる。
【0048】
上で議論した装置196と同様、動作中、細胞培養流体198は、特定の流量で装置296に提供することができる。これは、細胞培養流体198がメソ流体チャネル308を通過する流量である。細胞培養流体198は流体入口マニホールド306に入ることができ、1つまたは複数のメソ流体チャネル308間で実質的に均等に分配することができる。細胞培養流体198が1つまたは複数のメソ流体チャネル308を横断するとき、細胞培養流体198に含まれる細胞および/または他の粒子(たとえば、細胞)と細胞培養流体198の周囲の流体との間の密度差により、細胞および/または他の粒子を沈殿させて各メソ流体チャネル308の下方内面に集めることができる。
【0049】
1つまたは複数のメソ流体チャネル308内の細胞培養流体198の細胞および/または他の粒子の沈殿は、細胞培養流体198内のより高密度粒子に作用する分離力320によってさらに引き起こすことができる。分離力320は周囲の重力とすることができ、このため1つまたは複数のメソ流体チャネル308内の細胞および/または他の粒子の沈殿を引き起こす別個のまたは追加の力が必要とされない。細胞培養流体198が装置196を通って流れるときのメソ流体チャネル308内の細胞培養流体198の粒子の沈殿により、流体出口304を介して出力として回収することができる細胞培養流体198の実質的に清澄化された流体層202(たとえば、実質的に細胞および/または粒子のない流体層)を生むことができる。したがって、細胞培養流体198の流体層202内のバイオ医薬品プロセスの、タンパク質のような産物を回収することができる。
【0050】
上記のように、本明細書で用いるとき、装置296の滞留時間は、装置196、296の総容積の、装置196、296を通る細胞培養流体198の流量に対する比率として定義される。装置296についての滞留時間は、約10分から40分またはより小さな範囲、たとえば16分から30分、23分から27分、または任意の他の適切な範囲またはこのような範囲の組合せの範囲とすることができる。装置296内の細胞培養流体198のこの範囲の滞留時間により、粒子の効率的な沈殿が可能になって効率的な分離期間内に実質的に清澄化された流体層202を提供する。したがって、処理されるべき細胞培養流体198の目標容積および装置296の容量が分かれば、細胞培養流体198の流量は、上の範囲内で目標滞留時間(たとえば、24分、25分、26分など)を提供するように設定または調整することができる。上の範囲内の滞留時間により、Table 4(表1)およびTable 5(表2)を参照してより詳細に議論するように、高細胞密度細胞培養流体(たとえば、100万から2000万細胞/mL)であり得る細胞培養流体198の粒子の効率的な沈殿、および管理可能な期間内での細胞培養流体198の流体層202の清澄化を提供することができる。このように、装置296は、処理されるべき目標容積および/または特定の採取用途に対して規模変更可能であり得る。
【0051】
図9は、装置296を形成するために用いられる2つの層330を示す分離装置296の部分分解図を示す。装置296は、生体適合性フィルムまたはポリマーの周囲結合層330から形成することができる。各層330は、図示の実施形態に示すように、山形の形状、または他の多角形の形状を有することができる。したがって、層330は、流体入口マニホールド306および流体出口マニホールド310に向かって角度を付けることができる。各層330の各端部331はスペーサ332を含み、これは層330より厚い材料で作製することができる。スペーサ332のいくつかはスペーサ332を通る穴333を含むことができ、これは製造中に作製される。スペーサは、層330の各端部331に熱溶接される。スペーサ332の穴333は、層が装置296へと周囲結合されるときにマニホールド(たとえば、導管)を形成し、スペーサ332間のスペースはメソ流体チャネル308を形成する。
【0052】
装置296は、底部層334、1つまたは複数の介在層336、および頂部層(図示せず)を含むことができる。図示の実施形態は、周囲結合338を介して一方の側に沿って1つの介在層336に結合された底部層334を示す。底部層334および頂部層はそれぞれ、穴333を有する1つのスペーサ332のみを含むことができる一方、介在層336はそれぞれ、層336の両方の端部331に穴333を有するスペーサ332を含む。底部層334は、底部層334の一方の端部331で穴333を備えた1つのスペーサ332を含むことができ、底部層334の反対側の端部331で穴333のない1つのスペーサ332を含むことができる。頂部層はまた、一方の端部331で穴333を備えた1つのスペーサ332を含むことができ、反対側の端部331で穴333のない1つのスペーサ332を含むことができるが、底部層334の穴333を含むスペーサ332は、頂部層の穴333を含むスペーサ332とは反対側の端部331にある。すなわち、底部層は頂部層に対して180°配向されている。この配向により、層330が共に周囲結合されたときに流体入口マニホールド306および流体出口マニホールド310が提供され、1つまたは複数のメソ流体チャネル308をまず流れることなしに流れが装置296から出られないようになっている。
【0053】
図10は、装置296の流体入口マニホールド306を形成する端部331での層330を示す。層330が周囲結合338を介して共に結合されるときに流体入口マニホールド306を形成するため、底部層334は、流体入口マニホールド306を含む装置296の端部331で穴333を有するスペーサ332を含む。頂部層344は、流体入口マニホールド306を含む装置296の端部331で穴333のないスペーサ332を含み、1つまたは複数の介在層336は、流体入口マニホールド306を含む装置296の端部331で穴333を有するスペーサ332を含む。したがって、層330が共に周囲結合されるとき、底部層334の穴333は装置296の流体入口300になり、積層メソ流体チャネル308は層330間に形成される。たとえば、図示の実施形態において、装置296は、底部層334と隣接する介在層336との間、2つの介在層336の間、および頂部層344と隣接する介在層336との間に形成される3つのメソ流体チャネル308を含む。
【0054】
動作中、細胞培養流体198は、流体入口300を介して装置296へ、そして流体入口マニホールド306へ流入することができる。頂部層344の穴333のないスペーサ332が流体入口マニホールド306において流れの継続を遮断することになるため、細胞培養流体198は、装置296内への流れの方向においてメソ流体チャネル308に入ることができるのみである。流体入口マニホールド306は、メソ流体チャネル間で細胞培養流体198を実質的に均等に分配することになる。
【0055】
図11は、装置296の流体出口マニホールド310を形成する端部331での層330を示す。層330が周囲結合338を介して共に結合されるときに流体出口マニホールド310を形成するため、頂部層344は、流体出口マニホールド310を含む装置296の端部331で穴333を有するスペーサ332を含む。底部層334は、流体出口マニホールド310を含む装置296の端部331で穴333のないスペーサ332を含み、1つまたは複数の介在層336は、流体入口マニホールド310を含む装置296の端部331で穴333を有するスペーサ332を含む。したがって、層330が共に周囲結合されるとき、頂部層344の穴333は装置296の流体出口304になり、積層メソ流体チャネル308は層330間に形成される。たとえば、図示の実施形態において、装置296は、底部層334と隣接する介在層336との間、2つの介在層336の間、および頂部層344と隣接する介在層336との間に形成される3つのメソ流体チャネル308を含む。
【0056】
動作中、細胞培養流体198が装置296のメソ流体チャネル308を通って流れて、細胞および/または粒子が基流体層から分離することが可能になった後、清澄化された流体層202は、メソ流体チャネル308を出て流体出口マニホールド310へ流入することができる。流体出口マニホールド310は、各メソ流体チャネル308から流された清澄化された流体層202を収集することができ、頂部層344のスペーサ332における流体出口304を介して装置296から清澄化された流体層202を導出することができる。したがって、細胞培養流体198から落下した細胞および/または他の粒子は、周囲結合層330から形成されたメソ流体チャネル308内に留まることができ、清澄化された細胞培養流体202は、装置296の流体出口から回収することができる。
【0057】
図12は、装置296の一実施形態の上面図を示す。先に議論したように、流体入口マニホールド306の一部を形成する頂部層344のスペーサ332は穴333を含まないが、流体出口マニホールド310の一部を形成する頂部層344のスペーサ332は穴333を含み、これは装置296の流体出口304も形成する。いくつかの実施形態において、スペーサ332の穴333は部分的ギャップ350を含み、流体入口マニホールド306から1つまたは複数のメソ流体チャネル308への、および1つまたは複数のメソ流体チャネル308から流体出口マニホールド310への流れの容易さを向上させることができる。スペーサ332は、層330の材料より厚くすることができる。したがって、スペーサ332の厚さが、各メソ流体チャネル308の高さを画定することができる。加えて、いくつかの実施形態において、1つまたは複数のプレートを装置196の上方および/または下方で流体入口マニホールド306および/または流体出口マニホールド310でスペーサと整列させて、特定の所定のメソ流体チャネル高さまでスペーサを圧縮することができる。
【0058】
(実施例)
Table 4(表1):3つの異なるサイズの装置を用いて細胞培養流体を処理するための実験条件。
【0059】
【表1】
【0060】
分離装置の3つの実施形態(たとえば、分離装置196および246)を用いた細胞培養流体の処理の実験条件および結果を、上のTable 4(表1)および以下のTable 5(表2)に示す。細胞培養流体198、この場合はCHO細胞懸濁液を、直列積層に配置された5つの比較的広いメソ流体チャネルを有する装置、直列積層に配置された5つの比較的狭いメソ流体チャネルを有する装置、および1つのみの可撓性メソ流体チャネル(図20を参照してより詳細に議論する)を有する装置を通して処理した。
【0061】
mAb(HycloneのCHO生成Herceptin)を生成するように改変された内部モノクローナルCHO細胞株を、様々な培養液におけるActiPro(商標)培地で増殖させた。mLあたり1,000~2,000万個の細胞を達成するために500mLの振とうフラスコ(150rpm、7.5%のCO2、37C)を用い、一方、より高い細胞密度(3,000~4,000万細胞/mL)を流加10L攪拌タンク反応器(BioFlow(商標)310:150rpm、pH、DO、および温度制御)において培養した。採取した細胞をペレットへと遠心分離し、容積を減らして使用済み培地で再懸濁することを介して4000万細胞/mLを超える濃縮細胞密度が得られた。採取用の細胞を保持する容器を常に攪拌して均一な細胞密度を確保した。いくつかのサイズの分離装置を分離に用いた。すべての場合において、蠕動ポンプ(Easy Load(Model 7517-00)またはEasy Load II(モデル77202-60)ポンプヘッドのいずれかを備えたCole Parmer Master Flex L/S)を用いて、細胞を反応器からチュービング内へ消極的に移動させ、次いで細胞を採取器に積極的に移動させた。ポンプと採取器との間のチューブにおける細胞沈殿の変動を避けるため、チュービング距離を可能な限り最小化して水平に保った。加えて、分離装置が複数の流体入口または出口を有したら、均等な流れがポートのそれぞれに出入りするように流体入口マニホールドおよび流体出口マニホールドを水平にするように注意した。
【0062】
Table 4(表1)に示すように、直列積層に配置された5つの比較的広いメソ流体チャネル(たとえば、幅広5積層)を有する装置は、2,000Lの装置容積および85.7mL/分の装置を通る細胞培養流体の流量を有し、この結果、装置内での細胞培養流体の滞留時間は23.3分であった。直列積層に配置された5つの比較的狭いメソ流体チャネルを有する装置は、200mLの装置容積および7.9mL/分の装置を通る細胞培養流体の流量を有し、この結果、装置内での細胞培養流体の滞留時間は25.4分であった。さらに、1つのみの可撓性メソ流体チャネルを有する装置は、65mLの装置容積および2.7mL/分の装置を通る細胞培養流体の流量を有し、この結果、装置196内での細胞培養流体の滞留時間は24.1分であった。
【0063】
Table 5(表2):3つの異なるサイズの装置を用いた細胞培養処理の実験結果。
【0064】
【表2】
【0065】
これらの処理条件は、一度に処理することができる2,000Lまでの容量または装置容積を装置が有することができるということを示している。Table 5(表2)に示すように、記載した装置のそれぞれは、細胞培養流体の流体層から粒子(たとえば細胞)を効率的に分離し、97.2%~99.9%の間の装置内の細胞の保持率を提供する。したがって、図2を参照して先に議論した範囲内の、各装置196についての滞留時間により、細胞培養培地および装置容量に対する特定の流量が提供されたとき、先に議論した範囲内の特定の滞留時間で、各装置に提供された細胞培養流体を効率的に清澄化することができた。したがって、この装置は、遠心分離と同様の保持率であるが、より簡素で使い捨てすることができる装置で、細胞培養流体198からの細胞除去を提供することができる。
【0066】
本開示のいくつかの特徴のみを本明細書に例示および説明してきたが、多くの修正および変更が当業者に生じるであろう。したがって、添付の実施形態は、本開示の範囲内に入るようなすべてのこのような修正および変更を網羅するように意図されているということが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0067】
180 バイオプロセシングシステム
182 バイオリアクタ
184 追加の精製サブシステム
186 クロマトグラフィック分離サブシステム
188 二次深層濾過システム
190 研磨膜サブシステム
191 遠心分離サブシステム
192 滅菌容器
194 貯蔵バッグ
196 分離装置
198 細胞培養流体
200 流体入口
202 清澄化された流体、流体層
204 流体出口
205 本体
206 流体入口マニホールド
208 メソ流体チャネル
210 流体出口マニホールド
211 分離部分
212 高さ
214 チャネル入口
216 チャネル出口
218 下方内面
220 分離力
230 角度
232 作業面
234 供給源
236 横方向入口チャネル
238 横方向出口チャネル
240 端部
242 側面
246 モジュラー分離装置
250 交互バイオプロセスシステム
252 入口ポンプ
254 第1の装置
256 第2の装置
258 代替適合性流体
260 パージポンプ
262 収集ライン
264 バッファポンプ
266 バルブ
296 分離装置
300 流体入口
304 流体出口
305 本体
306 流体入口マニホールド
308 メソ流体チャネル
310 流体出口マニホールド
311 分離部分
320 分離力
330 周囲結合層
331 端部
332 スペーサ
333 穴
334 底部層
336 介在層
338 周囲結合
344 頂部層
350 部分的ギャップ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12