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特許7539881誘導された制御性T(iTREG)細胞を使用したALS治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】誘導された制御性T(iTREG)細胞を使用したALS治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240819BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20240819BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20240819BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240819BHJP
   A61K 31/513 20060101ALN20240819BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20240819BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P25/28
A61K31/7056
A61P43/00 121
A61K31/675
C12N5/0783
A61K31/513
A61K45/00
A61P37/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526727
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019061818
(87)【国際公開番号】W WO2020102731
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】62/768,176
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/927,075
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521208468
【氏名又は名称】ラパ セラピューティクス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー,ダニエル,ハーディング
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508715(JP,A)
【文献】国際公開第2018/106958(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/059122(WO,A1)
【文献】Neurol. Neuroimmunol. Neuroinflamm.,2018年07月,5(4),e465, page 1-7,doi: 10.1212/NXI.0000000000000465
【文献】Molecular Medicine Reports,2009年,2,pp.615-620
【文献】医学のあゆみ,2015年,252(1),pp.105-110
【文献】Expert Opinion on Investigational Drugs,2017年,26(4),pp.403-414,DOI:10.1080/13543784.2017.1302426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋萎縮性側索硬化症の治療を必要とする対象において筋萎縮性側索硬化症を治療する方法に使用するための、製造されたT REG 細胞を含む組成物であって、前記方法が、
前記対象を1つ以上の一次治療サイクルに供することであって、前記1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれが、
前記対象にペントスタチンを投与すること、および/または
前記対象にシクロホスファミドを投与することを含む、一次治療サイクルに供することと、
前記対象を、
前記対象に治療有効量の製造されたTREG細胞を含む組成物を投与することを含む1つ以上の免疫療法治療サイクルに供することと、を含
前記製造されたT REG 細胞が、前記対象から得られたT細胞を脱分化し、IL-2、TGF-βおよびIL-4を含む培養培地中で脱分化T細胞を培養することにより製造される、組成物
【請求項2】
ペントスタチンが、0.5mg/m~4mg/mの用量で使用される、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記シクロホスファミが、50mg~400mgの用量使用される、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
前記製造されたTREG細胞が前記対象の体重1kg当たり1×10細胞~前記対象の体重1kg当たり5×10細胞の用量で使用される、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記製造されたTREG細胞が、1:1、3:1、10:1、1:3、および1:10から選択されるセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリー細胞の比率を含む、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
前記製造されたTREG細胞は、以下の特性
フローサイトメトリーによって測定した場合、GATA3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD73を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD103を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3とGATA3の両方を発現するCD4またはCD8細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD150を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも20%、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-4の少なくとも5pg/mL/1×10細胞/日の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-2の少なくとも100pg/mL/1×10細胞/日の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IFN-γの100pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、GM-CSFの100pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、TNF-αの10pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-17の10pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、および
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の組成物
【請求項7】
筋萎縮性側索硬化症の治療を必要とする対象において筋萎縮性側索硬化症治療に使用するための組成物であって、
療有効量の製造されたTREG細胞前記製造されたT REG 細胞が、前記対象から得られたT細胞を脱分化し、IL-2、TGF-βおよびIL-4を含む培養培地中で脱分化T細胞を培養することにより製造される、組成物
【請求項8】
前記治療有効量の製造されたTREG細胞が、前記対象の体重1kg当たり1×10細胞から前記対象の体重1kg当たり5×10細胞の用量でる、請求項に記載の組成物
【請求項9】
前記製造されたTREG細胞が1:1、3:1、10:1、1:3、および1:10から選択されるセントラルメモリー対エフェクターメモリー細胞の比率を含む、請求項に記載の組成物
【請求項10】
前記製造されたTREG細胞は、以下の特性
フローサイトメトリーによって測定した場合、GATA3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD73を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD103を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3とGATA3の両方を発現するCD4またはCD8細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD150を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも20%、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-4の少なくとも5pg/mL/1×10細胞/日の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-2の少なくとも100pg/mL/1×10細胞/日の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IFN-γの100pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、GM-CSFの100pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、TNF-αの10pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-17の10pg/mL/1×10細胞/日未満の発現、および
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、請求項に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月16日に出願された米国仮出願第62/768,176号、および2019年10月28日に出願された米国仮出願第62/927,075号に対する優先権を主張し、そのそれぞれの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法は、がんおよび感染性疾患、自己免疫、および神経変性疾患の効果的な治療のための新たな介入である。より高い増殖電位および他の重要な属性に変換される、より原始的な分化状態を有するT細胞の移入は、養子移入後のインビボ効果の改善と関連付けられることがますます明らかになる。しかしながら、ほとんどの形態の養子T細胞療法は、典型的にはさらなる細胞分化をもたらすエクスビボ製造工程を必要とする。これは、成人ヒトからのT細胞が、既に主に進行した分化状態(エフェクターメモリー細胞と称される)にあり、多くの場合、チェックポイント阻害分子の制御下にある老化状態で存在するため、非常に問題である。培養開始時のよりナイーブなT細胞サブセットの単離(精製)を含む、この制限を緩和するためにアプローチを取ることができるが、このアプローチは、成人ヒト末梢血中に存在する少数のナイーブT細胞によって部分的に制限される。したがって、原始的な分化状態での単離されたT細胞は、非常に必要とされている。
【0003】
高度に分化した細胞でさえ、より原始的な状態に向かって脱分化するための固有の能力を有することは周知である。実際、最も極端な例では、分化細胞を操作して、人工多能性幹細胞(iPSC)状態を達成することができ、それによって、そのようなiPS細胞は、胚性幹細胞と重要な特徴を共有し、次いで、異なる組織運命への再分化に向けてさらに調節することができる。そのようなiPSC方法論を使用した細胞療法は、多くの潜在的な臨床応用を有する。分化した体細胞からのiPS細胞の生成は、最初は、ウイルスまたは非ウイルス媒介アプローチを介して、Sox2、Oct3/4、KLF4、およびc-myc、またはSox2、Oct3/4、Nanog、およびLin28を含む、主要転写因子の移入によって実証された。
【0004】
しかしながら、体細胞をiPS細胞に変換する能力は非効率であり、体細胞分化の程度に部分的に依存する。一例として、成熟マウス免疫T細胞をiPS細胞に変換する能力は、マウス造血幹細胞をiPS細胞に変換するのと比較しても300倍低い効率である。それにもかかわらず、遺伝子移入法を用いて、成熟ヒト末梢血T細胞がiPS細胞状態への変換能力を維持することが実証された。過去10年間にわたって、研究者らはまた、T細胞分化の初期段階に関連する転写因子を特徴付けてきた。しかしながら、種々の種類の幹細胞前駆体からのT細胞の再分化は、典型的には1~2ヶ月かかる比較的非効率的なプロセスである。
【0005】
脱分化の生物学はますます特徴付けられるようになっているが、脱分化に関連する特異的転写因子および転写因子動態に関しては、依然として、多くは未知である。また、脱分化を達成する遺伝子導入方法は、手間がかかり、細胞運命自殺遺伝子プログラミングなどの追加の遺伝子介入を通じて対処されなければならない奇形腫の生成などの合併症と関連付けられることを認識することも重要である。潜在的な代替として、様々な薬理学的介入を利用して、ある程度の脱分化を達成することができる。一例として、免疫抑制剤シクロスポリンの使用による細胞培養中のカルシニューリン阻害は、マウスiPS細胞の促進のためのSox2転写因子の遺伝子送達の必要性を置き換える分子変化をもたらした。加えて、ラパマイシン(mTOR)の哺乳類標的を阻害する免疫抑制薬であるラパマイシンは、転写因子KLF2の飢餓誘発性上方制御を介して末期エフェクターT細胞に対して脱分化の効果をもたらすことができ、これにより、T中心メモリー分子CD62LおよびCCR7が増加する。加えて、ラパマイシンおよびmTORシグナル伝達の結果として生じる阻害は、分化状態が低下したナイーブT細胞における細胞静止の維持に重要である。mTOR経路はmTORC1複合体(Raptorサブユニットを含む)およびmTORC2複合体(Rictorサブユニットを含む)の両方からなることに留意することが重要である。mTORC1およびmTORC2の両方の阻害は、メモリーT細胞の促進および維持の増加と関連している。注目すべきことに、ラパマイシンは、mTORC1のみを直接阻害することができるが、mTORC1の長期のラパマイシン媒介阻害では、mTORC2の下流の阻害が生じ得る。mTOR阻害または他の経路の阻害を介したT細胞成長因子シグナル伝達の低減は、より原始的な分化状態のT細胞に関連する別の主要分子、すなわち、IL-7受容体α(CD127)を上方制御することも知られている。さらなる研究では、薬理剤ラパマイシンまたはWnt-β-カテニンシグナル伝達活性化剤TWS11を介したT細胞のmTOR経路の阻害は、マウスおよびヒトT細胞において以前に特定され、特徴付けられた、分化の少ないT幹細胞メモリー集団に向かってヒトナイーブT細胞の脱分化を促進した。さらなる実験モデル研究において、AKTシグナル伝達経路の薬理学的阻害、またはPI3キナーゼおよび血管活性腸ペプチドシグナル伝達経路の併用阻害は、養子移植時に、分化状態が低下し、T細胞機能が増加したT細胞の生成をもたらした。
【0006】
ラパマイシン中のヒトT細胞のエクスビボ培養を介したmTORの遮断は、サイトカイン分泌分子および細胞溶解エフェクター分子などのエフェクター分化に関連する分子のT細胞発現を低減することが実証されている。
【0007】
加えて、ビタミンDの1,25-ヒドロキシル化形態(本明細書で使用される「ビタミンD」)は、ヒトT細胞エフェクター機能を阻害することができる。ヒトT細胞増殖に対するビタミンDの阻害効果は、シクロスポリンAまたはラパマイシンなどの薬剤を使用して、免疫抑制性薬物曝露と相乗的であり得る。しかしながら、以前の研究は、T細胞エフェクターに対するビタミンDの阻害効果は、Th2型分子ではなくTh1型分子に対して比較的特異的であることを示した。さらに、ビタミンDは、免疫抑制性制御性T(TREG)細胞集団を促進することが示された。
【0008】
ある程度矛盾する所見において、ヒトCD8T細胞が高レベルのビタミンD受容体を発現することが決定され、最も高い値を有する個体は、高レベルのT細胞エフェクター機能および免疫老化を有する傾向があった。
【0009】
より最近の研究では、マイコバクテリウム結核感染症のマウスモデルを使用して、ビタミンDが、IFN-γ産生およびオートファジーに関わる機構を介して細胞内病原体のマクロファージ排除に重要であることが実証された。加えて、ヒト非小細胞癌細胞株において、ビタミンDシグナル伝達は、放射線と組み合わせたときに抗腫瘍効果に寄与するオートファジーの細胞傷害性形態を促進することができる。最後に、ビタミンD受容体シグナル伝達は、正常なヒト乳房組織におけるオートファジーを促進する。このようなビタミンD受容体シグナル伝達の喪失は、乳癌を発症する危険性の増加と関連付けられた。先天性免疫(マクロファージの文脈)におけるビタミンDをオートファジーに関連付けるこの証拠にもかかわらず、適応免疫中のT細胞におけるオートファジーに対するビタミンDの効果、およびこの文脈において、T細胞オートファジーに対するビタミンDおよびラパマイシンの潜在的な効果が冗長であるかどうかに関するデータは乏しい。
【0010】
T細胞生物学におけるビタミンDの潜在的な役割に関するこれらのやや相反する結果は、mRNAレベルおよびマイクロRNAレベルの両方において、最近発見された、ゲノム全体に対するビタミンDの広範な効果に関連している可能性が高い。そのため、免疫に対するビタミンDの効果は、文脈に依存するフレームワークで評価される必要がある。
【0011】
免疫寛容性を維持するためには、制御性T(TREG)細胞が不可欠である。TREG細胞の量または質の減少は、いくつか例を挙げると、I型糖尿病(T1DM)、多発性硬化症、関節リウマチ、および全身性エリテマトーデスを含む多数の原発性自己免疫疾患の根本的な原因である。加えて、TREG欠乏症は、原発性神経変性疾患の自然史における加速に関連している。最後に、TREG欠乏症は、固形臓器および造血細胞移植設定における重篤な合併症、最も顕著には、増加した移植片拒絶率および移植片対宿主疾患(GVHD)の率に関連する。免疫恒常性の維持におけるTREG細胞のこの重要な役割を考慮すると、疾患の治療のためにTREG細胞を促進するために多くの実験的アプローチが開発されている。そのような有望なアプローチの1つは、TREG細胞の養子移入であり、これは、2つの主要なサブタイプで存在する:(1)年齢とともに関与し、それによって養子移入に利用可能なnTREG細胞の数を減少させる、胸腺に由来する天然(n)TREG細胞(「nTREG」または「天然TREG」)、および(2)より多くのエフェクターT細胞のプールから末梢で変換される誘導性(i)TREG細胞。nTREG細胞は数が限られているため、nTREG細胞を養子T細胞療法に用いる試みは、nTREG細胞の単離およびその後の増殖のためのエクスビボ製造方法に依存している。養子細胞療法のためのnTREG細胞の臨床試験は、実施の初期段階にあり、主にGVHDの予防およびT1DMの治療のための第I相/第II相臨床試験にある。対照的に、iTREG細胞(本開示のTREGおよびTREG/Th2細胞を含むエクスビボ産生TREG細胞)を養子細胞療法で使用する可能性に関しては、他の課題、すなわち、(1)末梢エフェクターT細胞は比較的豊富であるが、それらは主に、限定的な複製および治療可能性を有するエフェクターメモリー成熟状態で存在すること、ならびに(2)そのような末梢エフェクターT細胞は、疾患発症に寄与するT細胞サブセット、すなわち、Th1型およびTh17型サブセットに向かう高度な既存のエフェクター分化を有すること、が存在する。したがって、iTREG細胞療法が高度に実現可能になるには、以下、(1)増殖電位の増加およびTREG細胞治療電位の明らかな改善を有する、分化の少ないメモリー表現型へのエフェクターT細胞の脱分化を引き起こすこと、ならびに(2)TREG表現型に向かってT細胞分化を促進しながら、病原性Th1型およびTh17型経路を消滅させること、の両方を含むエクスビボ製造方法を開発する必要があるであろう。
【0012】
ITREG細胞の製造は、治療される対象(自家療法の場合)または正常なドナー(同種遺伝子療法の場合)からのリンパ球含有末梢血単核細胞の収集によって開始される。典型的には、この収集は、定常状態、すなわち、いかなる成長因子の投与も行わずに行われる。しかしながら、同種異系の文脈において、収集は、DiPersio JF,Stadtmauer EA,Nademanee A,et al.Plerixafor and G-CSF versus placebo and G-CSF to mobilize hematopoietic stem cells for autologous stem cell transplantation in patients with multiple myeloma.Blood.2009;113(23):5720-5726に記載されるように、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)またはプレリキサフォルなどの分子を投与する文脈において行われることもある。本開示では、本発明者らは、抗TNF-α治療薬は、TREG表現型の培養入力T細胞を濃縮する目的でiTREG製造のためのリンパ球の収集の前に投与することができることを記載している。すなわち、本発明者らは、細胞表面の膜結合型TNF-αを相対的に保存しながら、無血清、無細胞TNF-αを優先的に阻害する組換え受容体である抗TNF-α剤エタネルセプトが、RNA配列決定によって測定される場合に、T細胞受容体(TCR)レパートリーの大きな変化を誘導することを実証する。膜結合TNF-αは、TNFR2受容体を介してTREG細胞に陽性シグナルを提供するため、本発明者らの方法は、iTREG細胞製造の前にTREG細胞を濃縮するための堅牢な介入を提供する。抗TNF-αモノクローナル抗体であるアダリムマブを含むが、これらに限定されない、無血清、無細胞TNF-αを優先的に阻害する他の治療薬も、この介入に使用することができる。
【0013】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、進行性障害をもたらし、典型的には呼吸不全による死亡をもたらす、大脳皮質、脳幹、および脊髄に関与する原発性神経変性疾患である。ALSは、様々な遺伝的事象に起因する患者の10%において家族性疾患であり、残りの患者は、孤発性ALSを有し、病因は知られていないが、環境要因を伴う場合がある。最新のレジストリデータ(2013年)は、米国におけるALSの罹患率が約16,000例であったことを示し、これらのデータはまた、ALSが白人、男性および、60~69歳の群の個人に過度に影響を与えることを示している。退役軍人、そして潜在的にプロのアメリカンフットボール選手は、ALSを発症する危険性が増加しているように見え、それによって、化学的曝露または外傷性脳損傷がこの疾患を発症する危険性を増加させる可能性があることを示唆している。ALSは、様々な臨床的提示および進行速度を有する異種疾患である。ALS患者の平均生存期間は診断から2~4年であるが、生存期間は数ヶ月と短くなることも、または10年を超えることもあり得る。患者報告のALSFRS-Rスコア(ALS機能評価スケール、改訂版)などの疾患スコアシステムは、疾患進行の線形および非線形態様を考慮していないため、ALS患者における予後を推定することは困難である。疾患進行速度の推定におけるこの難易度は、ALSにおける臨床試験の限界を表し、本発明者らが開発した免疫学的モニタリングを含む潜在的な疾患バイオマーカーが、プロトコル療法の構成要素として強調されるべきであることを示す。ALSの臨床的発症は潜行性であり、ほとんどの患者が上肢または下肢の脱力感、または発話または嚥下困難(延髄の発症)を呈する。ALSは、血液、脊髄液、または放射線学的検査が確定していないため、除外の診断として残っている。その結果、ALSは通常、他の疾患が除外された後の、除外の診断である。他の疾患を除外するこのプロセスは、典型的には最大1年かかることがあり、それによって治療的試みおよび臨床試験の発生を遅らせることができる。最終的にALSと診断される時点で、最大50%の運動ニューロンが機能しなくなる可能性があるため、参照におけるこの遅延は、当然の成り行きである可能性が高い。この状況を考慮すると、通常、診断後の比較的早い時点でALS患者を治験に利用することが推奨される。
【0014】
ALSは原発性神経変性疾患であり、神経炎症は二次的な増殖因子として作用する。この結論の証拠は、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)の機能異常が、家族性および孤発性のALS患者の大部分において生じるという観察から部分的に導き出される。TDP-43は、健常状態では核に限定され、凝集しやすいRNAおよびDNA結合タンパク質であり、それによって、ALS患者のニューロンに見られる細胞質封入体を占める。TDP-43経路の変化をもたらす正確な機構は、まだ完全に解明されていないが、様々な細胞ストレス事象、またはRNA中間体を介して自身を複製する遺伝子要素(後方移植性要素、RTE)の増幅が関与しているように見える。最終的には、かかる事象は、プログラム壊死を含むニューロンにおける多面的プログラム細胞死をもたらす。注目すべきことに、ALS患者に生じる壊死細胞死パターンは、より秩序あるアポトーシス細胞死と比較して特に免疫原性であることが示されている。実際に、ALSにおける運動ニューロン死の既知の分子媒介物であるTNF-αは、細胞死の壊死形態を産生することができる。壊死細胞死は、自己免疫誘導のために適応免疫系に提示することができる自己抗原の放出をもたらすことができる。加えて、タンパク質凝集体自体が免疫原性であり得るため、ALS患者で生じるタンパク質凝集体(TDP-43、SOD-1、p62を含むがこれらに限定されない)が、神経変性後に発する自己免疫応答の標的である可能性がある。実際、最近、ALS患者からの単球が、TDP-43を含有するエクソソームでパルスされると炎症性表現型を発症することが示されている。
【0015】
原発性神経変性に応答して、先天性インフラマソームおよび適応性末梢免疫系が結合して、さらなる不正なALS疾患進行をもたらすという広範な証拠が存在する。ALSのスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)トランスジェニックマウスモデルにおいて、脊髄のCD3T細胞浸潤およびミクログリア細胞活性化は、疾患進行に寄与する炎症促進因子として認識された。さらに、ALSのPU.1ノックアウトマウスモデルにおける宿主ミクログリア細胞と比較して炎症傾向が低下した野生型ミクログリア細胞の移植は、神経変性を減少させ、生存率を改善した。加えて、ALSのSOD1マウスモデルにおいて初めて、CD4T細胞の保護的役割が記載され、それによって、ALSにおける末梢免疫T細胞プールの両刃の剣のような性質を示した(増殖因子または保護因子のいずれかとして作用する)。ALS患者では、末梢適応免疫系T細胞の有害な役割の直接的証拠は、脊髄に浸潤するT細胞がオリゴクローナルT細胞受容体(TCR)レパートリーを発現することを実証することによって確認できる。さらに、末梢免疫系から出るプロフェッショナル抗原提示細胞(樹状細胞)は、炎症性末梢由来単球および常駐CNSミクログリア細胞と密接に関連して、ALS患者脊髄組織内で単離することができる。さらに、ALS患者において、精製された単球は、先天性炎症分子IL-1-βの増加を含む炎症促進RNA発現プロファイルを発現し、次いで、CD4T-ヘルパー-1(Th1)、CD8T細胞傷害性-1(Tc1)、およびCD4Th17媒介性神経変性免疫を促進するIL-23経路を駆動することができる。その後の研究では、ALSのSOD1マウスモデルにおける保護CD4T細胞サブセットの表現型は、抗制御Th2型サイトカインIL-4およびIL-10を通じて部分的に媒介される機構を通じて炎症を低減する制御T(TREG)細胞集団として特徴付けられた。
【0016】
この生物学は、以下、ミクログリア細胞は、神経変性を駆動する脳内の重要な細胞構成要素であり、ミクログリア細胞とCNS浸潤末梢CD4T細胞が相互作用し、疾患の病因に影響を与える、ということを示す神経炎症研究における豊富なデータと一致する。マウスモデリング結果と一致して、FoxP3REG細胞およびTh2型T細胞について濃縮された末梢免疫系を有する患者は、主に炎症促進性Th1型免疫プロファイルを有する患者と比較して、ALSの進行速度が低下した。さらに、ALS患者のTREG細胞が機能不全であり、そのような機能不全が疾患進行率および重症度と相関することが最近見出された。現在の臨床試験は、ALSの治療のためのnTREG細胞+低用量IL-2投与の複数回の注入の使用を評価している(ClinicalTrials.gov;NCT03241784);IL-2は、STAT5シグナル伝達経路を刺激するサイトカインであり、それによってnTREG細胞のインビボ増殖を促進することができる。
【0017】
誘導された(i)TREG細胞は、nTREG細胞集団のように胸腺に由来せず、むしろ、iTREGは、Th1細胞などの他の病原性の胸腺後T細胞サブセットから転換される集団である。nTREGおよびiTREGの両方は、炎症応答の抑制において重要かつ非冗長な役割を果たすが、iTREG療法の開発は、制御性T細胞の効力および製造の容易さの点で比較的有利である。さらに、ALSの養子iTREG療法は、本発明者らが本開示にて説明する免疫モニタリング技法および宿主治療レジメン(ペントスタチン、シクロホスファミド、ラミブジン)と併用される場合に特に効果的である。
【0018】
1995年にALS治療のために承認された最初の薬剤であったリルゾール(Rilutek(登録商標))は、ALSの罹患率と死亡率を低減するのにわずかに有効である。60を超える分子がALS療法のために調査されたという著しい臨床研究にもかかわらず、ささやかな臨床的成功を示したのは、抗酸化エダラボンおよびチロシンキナーゼ阻害剤マシチニブという、2つの追加の分子のみであった。最近、ALSの治療のためにFDAが承認したエダラボン(Radicava(登録商標))は、最小限の臨床的利益を提供し、高価であり、2週間オン、2週間オフの毎日の連続点滴療法を必要としており、マシチニブはFDAに承認されていない。ALSの治療のためのラパマイシンの第II相試験が現在開始されている(ClinicalTrials.gov識別子:NCT03359538)。ラパマイシンはまた、この薬剤がTREG細胞再構築を促進する傾向に起因して、ALSで使用するのに好ましい薬剤となり得る。しかしながら、ラパマイシンによる長期療法は、実質的な毒性を有し、薬理学的モニタリングを必要とし、いくつかのモデルにおいて実際にALSを悪化させるという点で矛盾した効果を有する可能性があり、養子移入されたT細胞集団の拡大を限定し得る。
【0019】
したがって、非常に限られた治療選択しかない現在の状態を考慮すると、ALSの治療のための新規戦略を評価することが非常に必要である。本出願では、本発明者らは、誘導性(i)制御性T(TREG)細胞療法を中心とするALSの新規な治療アプローチを記載する。
【発明の概要】
【0020】
本開示は、T細胞の脱分化およびかかる細胞のTREGまたはTREG/Th2細胞への分化のための方法を対象とする。
【0021】
いくつかの実施形態において、初期の脱分化方法は、定常状態で採取された入力細胞集団(薬物投与なし)で培養を開始することを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象(自家の文脈で)、あるいは膜結合TNF-αの相対的保存を伴って、TNF-αの無血清、無細胞形態の阻害に対して優先的に選択的な抗TNF-α治療薬で治療されていたか、または治療されている正常なドナー(同種異系の文脈で)から採取された入力細胞集団を用いて脱分化培養を開始することを含む。かかる治療剤としては、皮下注射によって週当たり25~50mgの従来用量で投与することができる組換え受容体エタネルセプト、または静脈内注射によって週40mgまたは隔週40mgの従来用量で投与することができるモノクローナル抗体アダリムマブが挙げられるが、これらに限定されない。これらの事例の全てにおいて、抗TNF-α治療薬の投薬量は、所望のバイオマーカー変化に従って調整することができ、これには、RNA配列決定分析によるTCRレパートリーの変化、ならびにフローサイトメトリーによって測定される2型TNF受容体(TNFR2)へ向かうシフト、および1型TNF受容体(TNFR1)から離れるシフトが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、本方法は、ビタミンD、テムシロリムス、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含む培養培地中で、対象からのT細胞を含む細胞の培養入力集団を細胞密度で植え付けることと、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に1:1以下のビーズ:T細胞比で添加して、T細胞を刺激することと、または最も極端な例では、抗CD3/抗CD28共刺激を添加しないことと、上記の培養入力集団および培養培地を一定期間インキュベートして、脱分化T細胞を得ることと、を含む。また、任意のビーズ共刺激の不在下でこの脱分化手順を実行することも可能である。
【0024】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の脱分化したT細胞を採取することをさらに含み得る。
【0025】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の脱分化したT細胞を採取した後に、上記の脱分化したT細胞の少なくとも一部をパッケージ中にパッケージ化することと、上記の脱分化したT細胞の上記の部分を含有する上記のパッケージを冷凍することと、をさらに含み得る。
【0026】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、細胞の上記の培養入力集団を上記の培養培地に植え付ける前に、上記の対象からの細胞の上記の培養入力集団を採取することをさらに含み得る。
【0027】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルを測定することをさらに含んでよく、ここで、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルがそれぞれ、T細胞の対照集団と比較して少なくとも50%、より好ましくは90%低減されるまで、上記の期間が続き、T細胞の上述の対照集団は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造される。
【0028】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORおよびハウスキーピングタンパク質の発現レベルを測定することをさらに含んでもよく、上記の期間は、製造されたT細胞における、ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団における、それぞれ、ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルよりも少なくとも50%、より好ましくは90%低減されるまで続く。
【0029】
本開示はまた、上記の実施形態のいずれかの方法によって産生される脱分化T細胞を対象とする。
【0030】
本開示はまた、脱分化細胞の集団を含む組成物であって、上記の脱分化細胞の集団の少なくとも一部が、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されるT細胞の対照集団と比較して、少なくとも50%、より好ましくは90%低く、RAPTORまたはRICTORを発現する、組成物を対象とする。
【0031】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の脱分化細胞の上記の集団の少なくとも一部を測定することをさらに含んでよく、それによって、これらは、T細胞の対照集団と比較して、以下の分子のRNA発現の少なくとも10%、より好ましくは50%の変化を発現し、すなわち、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γを含むが、これらに限定されないT細胞エフェクター分子の低減;Nanog、KLF4、およびKLF10を含むが、これらに限定されない分化状態の低下した細胞に関連する転写因子の増加;CD127、IL-7受容体α鎖を含むが、これらに限定されないナイーブT細胞サブセット上で優先的に発現する分子の発現の増加;T-BETおよびSTAT1を含むが、これらに限定されないTH1型分化に関連する転写因子の低減;ならびにHIF-1αを含むが、これらに限定されない細胞生存を促進する転写因子の相対的保存を発現する。
【0032】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の脱分化した細胞の上記の集団の少なくとも一部を測定することをさらに含み得、それによって、それらは、オートファジーを経験した細胞を示す分子の発現の少なくとも10%、より好ましくは50%変化して発現する。一例として、上記の脱分化細胞は、対照T細胞と比較して、ウェスタンブロット分析によるp62の発現の増加を有する。また、Yoshii SR.Mizushima N.Monitoring and Measuring Autophagy.International Journal of Molecular Sciences.2017;18(9):1865に記載されている方法などのオートファジーを測定する他の方法も適用してもよい。
【0033】
本開示はまた、上記の実施形態のいずれかの方法によって産生される脱分化T細胞を対象とする。
【0034】
本開示はまた、脱分化細胞の集団を含む組成物を対象としており、上記の脱分化した細胞の上記の集団の少なくとも一部分は、T細胞の対照集団と比較して、以下の分子のRNA発現の少なくとも10%、より好ましくは50%の変化を発現し、すなわち、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γを含むが、これらに限定されないT細胞エフェクター分子の低減;Nanog、KLF4、およびKLF10を含むが、これらに限定されない分化状態の低下した細胞に関連する転写因子の増加;CD127、IL-7受容体α鎖を含むが、これらに限定されないナイーブT細胞サブセット上で優先的に発現する分子の発現の増加;T-BETおよびSTAT1を含むが、これらに限定されないTH1型分化に関連する転写因子の低減;ならびにHIF-1αを含むが、これらに限定されない細胞生存を促進する転写因子の相対的保存を発現する。
【0035】
本開示はまた、上記の脱分化細胞によって定義される脱分化細胞の集団を含む組成物であって、オートファジーを経験した細胞を示す分子の発現の少なくとも10%、より好ましくは50%変化して発現する組成物を対象とする。一例として、上記の脱分化細胞は、対照T細胞と比較して、ウェスタンブロット分析によるp62の発現の増加を有する。また、Yoshii SR,Mizushima N.Monitoring and Measuring Autophagy.International Journal of Molecular Sciences.2017;18(9):1865に記載されている方法などのオートファジーを測定する他の方法も適用することができる。
【0036】
本開示はまた、脱分化細胞の集団を含む組成物を対象としており、上記の脱分化細胞の上記の集団の少なくとも一部は、T細胞の対照集団と比較して、RAPTORおよびRICTORの両方の50%未満を発現する。
【0037】
本開示は、脱分化T細胞をTREGまたはTREG/Th2細胞に分化させるための方法を対象とする。
【0038】
いくつかの実施形態において、本方法は、IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地中で、本開示の脱分化T細胞、または他の方法で脱分化されたT細胞を培養することと、3:1(ビーズ:T細胞の比)の比率で抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを添加することと、上記の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加することと、脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ることと、を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、本方法は、IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地中で、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して少なくとも50%未満のRAPTORまたはRICTORの発現の低減を有する脱分化T細胞を培養することと、3:1(ビーズ:T細胞の比)の比率で抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを添加することと、上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ることと、を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本方法は、IL-2およびTGF-βを含む培養培地中で、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して少なくとも90%未満のRAPTORまたはRICTORの発現の低減を有する脱分化T細胞を培養することと、3:1(ビーズ:T細胞の比)の比率で抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを添加することと、上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG細胞を得ることと、を含む。
【0041】
上記の実施形態のいずれかにおいて、培養培地は、ペメトレキセドをさらに含むことができる。
【0042】
本開示はまた、上記の方法のいずれかによって産生されるTREGまたはTREG/Th2細胞を対象とする。
【0043】
本開示はまた、筋萎縮性側索硬化症の治療を必要とする対象における筋萎縮性側索硬化症の治療方法を対象とする。
【0044】
いくつかの実施形態において、本方法は、上記の対象を1つ以上の一次治療サイクルに供することを含み、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することと、上記の対象を、治療有効量の製造されたTREG細胞を含む組成物を上記の対象に投与することを含む1つ以上の免疫療法治療サイクルに供することと、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の治療サイクル、第2の治療サイクル、任意選択で、1つ以上の追加の治療サイクル、および1つ以上の免疫療法治療サイクルを含み、上記の第1の治療サイクルは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の第2の治療サイクルは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することと、製造されたTREG細胞を上記の対象に投与することとを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、方法は、上記の対象に、治療有効量の製造されたTREG細胞を投与することを含む、1つ以上の治療サイクルを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、方法は、治療有効量の製造されたTREG細胞を上記の対象に投与することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1A】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞の正規化されたGAPDH mRNA発現を示す。
図1B】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞の正規化されたグランザイムB mRNA発現を示す。
図1C】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞の正規化されたIL-10 mRNA発現を示す。
図1D】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞の正規化されたIFN-γ mRNA発現を示す。図1A図1Dは、ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせがヒトCD4+およびCD8+細胞中のエフェクター分子発現を低減させることを例示している。
図2A】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞の正規化されたNANOG mRNA発現を示す。
図2B】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞についての正規化されたKLF4 mRNA発現を示す。
図2C】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞についての正規化されたKLF10 mRNA発現を示す。
図2D】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞についての正規化されたIL-7受容体mRNA発現を示す。図2A図2Dは、ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせが、ヒトCD4+およびCD8+T細胞中の幹細胞関連転写因子および原子的T細胞分子IL-7受容体-αの発現を増加させることを例示する。
図3A】様々な条件下で処理した対照細胞および細胞の正規化されたT-BET mRNA発現を示す。
図3B】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞についての正規化されたSTAT1 mRNA発現を示す。
図3C】様々な条件下で処理された対照細胞および細胞についての正規化されたHIF-1-α mRNA発現を示す。図3A図3Cは、ビタミンDとテムシロリムスとの組み合わせが、T細胞生存期間に関連する転写因子、HIF-1-αの発現を減少させることなく、エフェクターTh1/Tc1細胞に関連する転写因子の発現を減少させることを示す。
図4】様々な条件下で処理された細胞についてのアクチン発現によって正規化されたp62発現を示し、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、オートファジー関連分子p62の発現を誘導することを示す。
図5】様々な条件下で処理された細胞についてのアクチン発現によって正規化されたRAPTOR発現を示し、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、mTORC1関連分子RAPTORの発現を低減することを示す。
図6】様々な条件下で処理された細胞についてのGAPDH、p70S6K、SGK1、Raptor、およびRictor発現のウェスタンブロットを示し、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、mTORC1関連分子Raptor、およびmTORC2関連分子Rictorの発現を低減することを示す。
図7】様々な条件下で処理された細胞のアクチン発現によって正規化されたBIM発現を示し、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、プロアポトーシス分子BIMの発現を低減することを例示する。図8は、脱分化区間中の、後続のT細胞収率に対する培養成分の効果を例示する(培養の13日目における)。
図8】(培養の13日目における)後続のT細胞収率に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示する。
図9A】様々な条件下で処理した細胞についてCD45RA+であるCD4細胞のパーセントを示す。
図9B】様々な条件下で処理した細胞についてのCD62L+およびCCR7+であるCD4細胞のパーセントを示す。
図9C】様々な条件下で処理した細胞についてのCD62L+、CCR7+、およびCD127+であるCD4細胞のパーセントを示す。図9A図9Cは、(培養の13日目における)メモリーマーカーのCD4+T細胞発現に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示する。
図10A】様々な条件下で処理した細胞についてのCD62L+およびCCR7+であるCD8細胞のパーセントを示す。
図10B】様々な条件下で処理した細胞についてのCD62L+、CCR7+、およびCD127+であるCD8細胞のパーセントを示す。図10Aおよび図10Bは、メモリーマーカーのCD8+T細胞発現に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示する。
図11A図11A図11Dは、分極中性培地中で培養された脱分化T細胞の炎症性Th1/Th17サイトカイン分析を示す。図11A:様々な条件下で処理された細胞についてのIFN-γ分泌を示す。
図11B】様々な条件下で処理された細胞についてのGM-CSF分泌を示す。
図11C】様々な条件下で処理された細胞についてのTNF-α分泌を示す。
図11D】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-17分泌を示す。
図12A図12A図12Dは、分極中性培地における培養された脱分化T細胞のIL-2およびTh2型サイトカイン分析を示す。図12A:様々な条件下で処理された細胞についてのIL-2分泌を示す。
図12B】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-4分泌を示す。
図12C】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-5分泌を示す。
図12D】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-13分泌を示す。
図13】ハイブリッドTh2/TREG分極条件において、Th1分極条件と比較して、脱分化T細胞の好ましい拡張を示す。
図14A】様々な条件下で処理された細胞についての全CD4+細胞のうちのCD4+CD45RA+細胞のパーセントを示す。
図14B】様々な条件下で処理された細胞の全CD4+細胞のうちのCD4+CD62L+CCR7+細胞のパーセントを示す。
図14C】様々な条件下で処理された細胞の全CD4+細胞のうちのCD4+CD62L+CCR7+CD127+細胞のパーセントを示す。図14A図14Cは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、ナイーブおよびトリプル陽性TセントラルメモリーCD4+T細胞の生成をもたらすことを例示する。
図15A】様々な条件下で処理された細胞の全CD8細胞のうちのCD8+CD62L+CCR7+細胞のパーセントを示す。
図15B】様々な条件下で処理された細胞についての全CD8細胞のうちのCD8+CD62L+CCR7+CD127+細胞のパーセントを示す。図15Aおよび図15Bは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、トリプル陽性TセントラルメモリーCD8+T細胞の生成をもたらすことを例示する。
図16A】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-2分泌を示す。
図16B】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-4分泌を示す。
図16C】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-5分泌を示す。図16A図16Cは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型:IL-2、IL-4、およびIL-5分泌を伴うT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図17A】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-10分泌を示す。
図17B】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-13分泌を示す。
図17C】様々な条件下で処理された細胞についてのIL-17分泌を示す。図17A図17Cは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型:IL-10、IL-13、およびIL-17分泌を伴うT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図18A】様々な条件下で処理された細胞についてのIFN-γ分泌を示す。
図18B】様々な条件下で処理された細胞についてのTNF-α分泌を示す。
図18C】様々な条件下で処理された細胞についてのGM-CSF分泌を示す。図18A図18Cは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型:IFN-γ、TNF-α、およびGM-CSF分泌を伴うT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図19A】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD4+T細胞のパーセントを示す。
図19B】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD4+FOXP3+T細胞のパーセントを示す。
図19C】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD4+Tbet+T細胞のパーセントを示す。
図19D】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD4+GATA3+T細胞のパーセントを示す。図19A図19Dは、ペメトレキセドを含有するハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、FOXP3およびGATA3転写因子を発現するCD4+T細胞の生成をもたらすことを例示する。
図20A】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD8+T細胞のパーセントを示す。
図20B】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD8+FOXP3+T細胞のパーセントを示す。
図20C】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD8+Tbet+T細胞のパーセントを示す。
図20D】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中のCD8+GATA3+T細胞のパーセントを示す。図20A図20Dは、ペメトレキセドを含有するハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、FOXP3およびGATA3転写因子を発現するCD8+T細胞の生成をもたらすことを例示する。
図21A】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてIL-4分泌を示す。
図21B】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてIL-5分泌を示す。
図21C】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてIL-13分泌を示す。図21A図21Cは、ハイブリッドTh2/TREG極性条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、優勢なTh2サイトカイン表現型:IL-4、IL-5、およびIL-13分泌を伴って発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図22A】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてIL-2分泌を示す。
図22B】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてIFN-γ分泌を示す。
図22C】日ごと、および培養阻害剤ごとの、培養物中の細胞についてGM-CSF分泌を示す。図22A図22Cは、ハイブリッドTh2/TREG極性条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、優勢なTh2サイトカイン表現型:IL-2、IFN-γ、およびGM-CSF分泌を伴って発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図23A】抗TNF-α療法エタネルセプト療法が、RNA配列決定によって測定される場合に、TCRレパートリーの著しい変化をもたらし、それによって、アフェレーシスによるリンパ球の収集の前の対象治療のための新しいアプローチを表すことを例示する。
図23B】抗TNF-α療法エタネルセプト療法が、RNA配列決定によって測定される場合に、TCRレパートリーの著しい変化をもたらし、それによって、アフェレーシスによるリンパ球の収集の前の対象治療のための新しいアプローチを表すことを例示する。
図24-1】ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、以下の分子:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLAの増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図24-2】(図24-1の続き)
図25-1】ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、以下の分子:TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図25-2】(図25-1の続き)
図26A-1】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時および培養後のCD4+およびCD8+T細胞中のFOXP3発現を示す。
図26A-2】(図26A-1の続き)
図26B-1】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時および培養後のCD4+およびCD8+T細胞中のGATA3発現を示す。
図26B-2】(図26B-1の続き)
図27A-1】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時および培養後のCD4+およびCD8+T細胞中のCD73発現を示す。
図27A-2】(図27A-1の続き)
図27B-1】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時および培養後のCD4+およびCD8+T細胞中のCD103発現を示す。
図27B-2】(図27B-1の続き)
図28A】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時、培養後のCD4+およびCD8+T細胞における、ならびにmTOR阻害剤に曝露していない対照T細胞について、フローサイトメトリーによって測定されるCD150頻度を示す。
図28B】フローサイトメトリーによって測定される、培養開始時および培養後のCD4+T細胞についてのCD27対CD95発現を示す。
図29-1】異なって培養された細胞および対照細胞についてのIL-4、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-17、およびGM-CSFを示す。
図29-2】(図29-1の続き)
図29-3】(図29-1の続き)
図30A-1】RAPA-501細胞を伴う、または伴わない場合について、Th1/Tc1細胞のトランスウェルアッセイのためのサイトカイン含有量を示す。
図30A-2】(図30A-1の続き)
図30B-1】実施例24におけるCD4およびPD1のアッセイのフローサイトメトリー結果を示す。
図30B-2】(図30B-1の続き)
図31A】RAPA-501細胞への曝露を伴う、または伴わない場合について、ヒトミクログリア細胞についてのIL-6、IP-10、およびIFN-γ分泌を示す。
図31B】RAPA-501細胞への曝露を伴う、または伴わない場合について、ヒトミクログリア細胞についてのIL-6、IP-10、およびIFN-γ分泌を示す。
図32】PCレジメンおよび全体的な治療アプローチを概略的に示す。
図33】PC前およびPC後レジメンによるリンパ球収集を概略的に示す。
図34】iTREG細胞の反復用量のそれぞれの前のPCレジメンを概略的に示す。
図35】iTREG細胞で治療された患者のモニタリングを概略的に示す。
図36A】抗TNF-α療法エタネルセプト療法が、RNA配列決定によって測定される場合に、TCRレパートリーの著しい変化をもたらし、それによって、アフェレーシスによるリンパ球の収集の前の対象治療のための新しいアプローチを表すことを示す。
図36B】抗TNF-α療法エタネルセプト療法が、RNA配列決定によって測定される場合に、TCRレパートリーの著しい変化をもたらし、それによって、アフェレーシスによるリンパ球の収集の前の対象治療のための新しいアプローチを表すことを示す。
図37-1】ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、以下の分子:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLAの増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図37-2】(図37-1の続き)
図38-1】ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、以下の分子:TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。
図38-2】(図38-1の続き)
図39】代替プロトコル設計を示す。
図40A】CD4細胞についてのフローサイトメトリーによって測定されるRAPA-501 GATA3およびFOXP3を示す。
図40B】CD8細胞についてのフローサイトメトリーによって測定されるRAPA-501 GATA3およびFOXP3を示す。
図41-1】本開示の脱分化方法の例示的なワークフローを示す。
図41-2】(図41-1の続き)
図41-3】(図41-1の続き)
図42】本開示のハイブリッドTREG/Th2細胞の推定される作用機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、T細胞脱分化および得られる細胞のための方法、脱分化T細胞からヒトハイブリッド制御性T/Th2細胞(ハイブリッドTREG/Th2細胞)を製造するための方法、ならびに誘導制御性T(iTREG)細胞を使用したALS治療のための方法を提供する。
【0050】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0051】
特許請求の範囲および本開示における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すよう明示的に示されない限り、または代替物が互いに排他的である場合を除き、「および/または」を意味するように使用される。
【0052】
「約」という用語の使用は、数値と共に使用される場合、+/-10%を含むことが意図される。例えば、多数のアミノ酸が約200として特定される場合、これには180~220(プラスまたはマイナス10%)が含まれる。
【0053】
「患者」、「個体」、および「対象」という用語は、本明細書で互換可能に使用され、ヒト患者が好ましく、治療される哺乳動物対象を指す。場合によっては、本発明の方法は、マウス、ラット、およびハムスターを含むげっ歯類、ならびに霊長類を含むがこれらに限定されない、実験動物、獣医用途、ならびに疾患のための動物モデルの開発において使用されることが見出される。
【0054】
「試料」は、最も広義に本明細書で使用される。細胞、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体などを含む試料は、体液、細胞調製物の可溶性画分、または細胞が成長した培地;細胞から単離または抽出された染色体、器官、または膜;溶液中もしくは基質に結合したゲノムDNA、RNA、もしくはcDNA、ポリペプチド、またはペプチド;細胞、組織、組織プリント、指紋、皮膚、または毛髪などを含み得る。
【0055】
「治療」は、障害の病理または症状の発症を予防または改変することを意図して行われる介入である。したがって、「治療」は、療法的治療および予防または防止的な措置の両方を指すことができる。治療を必要としているものには、既に障害を患っているもの、および障害が防止されるべきであるものが含まれる。腫瘍(例えば、癌)治療において、治療剤は、腫瘍細胞の病理を直接減少させるか、または腫瘍細胞に、他の治療剤、例えば、放射線および/または化学療法による治療に対する感受性をさらに付与することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「治療サイクル」は、概して、一次治療サイクル、第1の治療サイクル、第2の治療サイクル、または1つ以上の追加の治療サイクルのいずれかを指すことができる。
【0057】
本明細書で使用される「免疫細胞」は、B細胞とも呼ばれるBリンパ球、T細胞とも呼ばれるTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、リンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒球、肥満細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞、腫瘍浸潤(TIL)細胞、ハイブリドーマを含む遺伝子改変免疫細胞、薬物修飾免疫細胞、ならびに上記細胞型の誘導体、前駆体または前身物質を含むが、これらに限定されない、アッセイされ得る免疫系の任意の細胞を含むことを意味する。
【0058】
「T細胞」または「Tリンパ球」は、胸腺に由来し、CD3複合体のタンパク質(例えば、再配列されたT細胞受容体、細胞の抗原/MHC特異性を担うT細胞表面上のヘテロ二量体タンパク質)に関連するヘテロ二量体受容体を有するリンパ球のサブセットである。T細胞応答は、他の細胞に対するそれらの効果(例えば、標的細胞死滅、B細胞などの他の免疫細胞の活性化)、またはそれらが産生するサイトカインについてのアッセイによって検出され得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「脱分化T細胞」という用語は、本開示の方法のいずれかによって脱分化されたT細胞を指す。ある特定の態様では、脱分化T細胞は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDなしで同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現が低下している。「脱分化T細胞」は、患者から収集されたT細胞、すなわち、天然に存在するT細胞を含まない。
【0060】
本明細書で使用される場合、「抗CD3/抗CD28」という用語は、抗CD3/抗CD28抗体を指すと理解されるべきである。例えば、「抗CD3/抗CD28磁性ビーズ」は、それに関連する抗CD3/抗CD28抗体部分を有する磁性ビーズを指すと理解されるべきである。抗CD3/抗CD28共刺激が提供されないことが開示される事例では、抗CD3/抗CD28磁性ビーズなどの特定の形態によっても、これはまた、他の形態の抗CD3/抗CD28との共刺激を除外することができることが理解されるべきである。
【0061】
抗CD3/抗CD28抗体による共刺激が実施される本開示において、この共刺激は、任意の形態の抗CD3/抗CD28抗体で提供されてもよいことも理解されたい。例として限定されるものではないが、共刺激が抗CD3/抗CD28ビーズを使用することによって行われると示される場合、抗CD3/抗CD28ナノ粒子または微粒子を使用することができる。抗CD3/抗CD28共刺激が提供されないことが開示される事例では、抗CD3/抗CD28磁性ビーズなどの特定の形態によっても、これはまた、他の形態の抗CD3/抗CD28との共刺激を除外することができることが理解されるべきである。
【0062】
本明細書で使用される「ヒトハイブリッドTREG/Th2細胞」、「iTREG」、および「TREG/Th2細胞」という用語は、別途記載されない限り、本開示の方法によって分化された細胞を指す。本開示の「ヒトハイブリッドTREG/Th2細胞」、「iTREG」および「TREG/Th2細胞」は、患者から収集したT細胞、すなわち、天然に存在するT細胞を含まない。
【0063】
本明細書で使用される場合、「製造されたTREG細胞」という用語は、本開示の脱分化および再分化方法によって産生される細胞を指し、別途記載されない限り、TREG細胞およびヒトハイブリッドTREG/Th2細胞を含むと理解され得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「対照Th1/Tc1細胞」は、別途記載されない限り、ビタミンD、テムシロリムス、またはIL-2シグナル伝達阻害剤で処理されておらず、むしろ、20IU/mLのIL-2および20,000IU/mLのIFN-αを補充した培地中で3:1(ビーズ:T細胞)の比率で抗CD3/抗CD28磁性被覆ビーズで共刺激され、それ以外の場合、それらを比較している細胞と同じように培養された細胞を指す。細胞(または対照T細胞)の対照集団が、テムシロリムス、ビタミンDおよびIL-2シグナル伝達阻害剤を含む培養添加物なしで処理されたものと称される場合、または脱分化細胞の文脈において、この集団(またはT細胞)は、20IU/mLのIL-2および20,000IU/mLのIFN-αを補充した培地中で3:1の比率で抗CD3/抗CD28磁性被覆ビーズ(ビーズ:T細胞)とさらに共刺激され、それ以外の場合、それらを比較している細胞と同じように培養された、すなわち、それらが「対照Th1/Tc1細胞」であることも理解されたい。
【0065】
本開示は、新規の薬理学的組み合わせおよび定義されたT細胞共刺激条件を使用して、分化されたエフェクターメモリーT細胞を分化の少ないセントラルメモリー型T細胞に変換することに基づく、低減された分化状態のT細胞のエクスビボ生成のための新しい方法論を提供する。
【0066】
図41に示されるように、本開示の脱分化したT細胞は、チェックポイント阻害剤受容体(PD1、CTLA4、TIM3、およびLAG3など)、メモリーマーカー(CD45ROなど)、ならびに運命分子(TBET、RORγ、FOXP3、およびGATA3など)の発現が少ないか、または全く発現しない静止表現型を有し得る。再分化T細胞は、GATA3およびFOXP3発現を特徴とするハイブリッド運命、ならびにCD45RAおよびCD150発現を特徴とする幹細胞メモリーを有することができ、チェックポイントタンパク質発現はない。
【0067】
図42には、本開示のハイブリッドTREG/Th2細胞の推定される作用機序が示され、これは、CD39またはCD73受容体を介した炎症によって、およびTNF-αによってハイブリッドTREG/Th2細胞を活性化することができ、これにより細胞が病原性T細胞を調節して殺傷を防止することを可能にすることができる。
【0068】
T細胞脱分化のための方法および得られる細胞
本発明者らは、新規の薬理学的組み合わせおよび定義されたT細胞共刺激条件を使用して、分化されたエフェクターメモリーT細胞を分化の少ないセントラルメモリー型T細胞に変換することに基づく、低減された分化状態のT細胞のエクスビボ生成のための新しい方法論を提供する。
【0069】
一実施形態において、本方法は、ビタミンD、テムシロリムス、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含む培養培地中で、対象からのT細胞を含む細胞の培養入力集団を細胞密度で植え付けることと、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に1:1以下のビーズ:T細胞比で添加して、または任意の共刺激ビーズを添加することなく、T細胞を刺激することと、培養入力集団および培養培地を一定期間インキュベートして、脱分化T細胞を得ることと、を含む。いくつかの実施形態において、対象は、細胞の培養入力集団の収集の前に抗TNF-α療法で治療されている。いくつかの実施形態において、抗TNF-α療法は、エタネルセプトまたはアダリムマブである。いくつかの実施形態において、抗CD3/抗CD28との共刺激は、実施されない。
【0070】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記の培養培地はIL-2を含有することはできず、上記の培養培地にIL-2を添加することはできない。
【0071】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記の細胞密度は、1mL当たり約1.5×106T細胞~1mL当たり18×106T細胞であり得る。例として限定されるものではないが、1mL当たり6×106T細胞~18×106T細胞、1mL当たり12×106T細胞~18×106T細胞、1mL当たり1.5×106T細胞~12×106T細胞、1mL当たり1.5×106T細胞~6×106T細胞、1mL当たり6×106T細胞~1mL当たり12×106T細胞、または1mL当たり1.5×106T細胞、1mL当たり3×106T細胞、1mL当たり6×106T細胞、1mL当たり9×106T細胞、12×106T細胞、1mL当たり15×106T細胞、または18×106T細胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、例として限定されるものではないが、1mL当たり9×106T細胞または1mL当たり18×106T細胞などのより高い密度で細胞培養を開始することが好ましい場合があることが予想される。
【0072】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記のテムシロリムスは、約0.3μM~約10μMの濃度で存在することができる。例として限定されるものではないが、上記のテムシロリムスは、約0.3μM~約1μM、0.3μM~約0.75μM、0.3μM~約0.5μM、0.5μM~約1μM、0.75μM~約1μM、0.5μM~約0.75μM、0.3μM~約10μM、0.3μM~約5μM、0.3μM~約3.3μM、1μM~約3.3μM、5μM~約10μM、3.3μM~約10μM、3.3μM~約5μMの濃度で、または例として限定されるものではないが、約0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、もしくは1μM、2μM、3μM、3.3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、もしくは10μMの濃度で、上記の培養培地中に存在することができる。
【0073】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記のIL-2シグナル伝達阻害剤は、抗IL-2受容体抗体またはその断片であり得る。例として限定されるものではないが、上記のIL-2シグナル伝達阻害剤は、バシリキシマブまたはダクリズマブであり得る。例として限定されるものではないが、上記のIL-2シグナル伝達阻害剤は、5~50μg/mL、5~40μg/mL、5~30μg/mL、5~20μg/mL、5~10μg/mL、10~50μg/mL、20~50μg/mL、30~50μg/mL、40~50μg/mL、30~40μg/mL、20~40μg/mL、10~40μg/mL、5~40μg/mL、5~30μg/mL、5~20μg/mL、5~10μg/mL、10~20μg/mL、10~30μg/mL、20~30μg/mL、または例とし限定されるものではないが、5μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mL、25μg/mL、30μg/mL、35μg/mL、40μg/mL、45μg/mL、もしくは50μg/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する。
【0074】
上記の実施形態のいずれかにおいて、例として限定されるものではないが、上記の期間は、約1.5日~約5日、1.5日~約3.5日、1.5日~約2.5日、2.5日~約3.5日、2.5日~約5日、3.5日~約5日、または約1.5日、2日、2.5日、3日、3.5日、4日、4.5日、または5日であり得る。いくつかの実施形態において、mTORC1およびmTORC2還元のレベルは、最適な培養区間を決定するためのガイドとして使用され得る。いくつかの実施形態において、以下を含むがこれらに限定されない、脱分化細胞の他の分子シグネチャーを使用して、最適培養区間を決定することができる:T細胞エフェクター分子のRNA発現(すなわち、IFN-γの減少)、転写因子のRNA発現(すなわち、KLF4の増加)、オートファジーシグネチャーの証拠(すなわち、p62の増加)、およびナイーブT細胞サブセット上に存在するマーカーの上方制御(すなわち、CD127の増加)。
【0075】
上記の実施形態のいずれかにおいて、例として限定されるものではないが、上記のビーズ:T細胞の比は、1:3であり得るか、または共刺激を行うことはできない。例として限定されるものではないが、上記のビーズ:T細胞の比は、1:1~1:12、1:1~1:3、1:3~1:12であり得る。さらなる例として限定されるものではないが、上記のビーズ:T細胞の比は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、または1:12であり得る。最後に、最も極端な例では、抗CD3/抗CD28共刺激を利用することはできない、すなわち、いくつかの実施形態において、初期脱分化プロセス中に抗CD3/抗CD28共刺激を行わない。
【0076】
上記の実施形態のいずれかにおいて、細胞の培養入力集団の共刺激は、推奨されるものよりも低い濃度で使用され得る抗CD3/抗CD28含有ナノ粒子を使用して達成され得る。例として限定されるものではないが、このようなナノ粒子は、推奨用量の約0.01倍~約0.1倍、約0.025倍~約0.1倍、約0.05倍~約0.1倍、約0.075倍~約0.1倍、約0.01倍~約0.075倍、約0.01倍~約0.05倍、約0.01倍~約0.025倍、約0.025倍~約0.075倍、約0.025倍~約0.05倍、約0.05倍~約0.075倍、または約0.01倍、約0.025倍、約0.05倍、約0.075倍、または約0.01倍で使用することができる。例として、Miltenyi(登録商標)T Cell TransAct(商標)などの試薬は、1×106T細胞当たり10μLの推奨用量と比較して減少した用量で使用することができ、例えば、例として、1.1μL(9倍の減少)または約0.11倍であるが、これに限定されない。最後に、最も極端な例では、抗CD3/抗CD28共刺激を利用することはできない、すなわち、いくつかの実施形態において、初期脱分化プロセス中に抗CD3/抗CD28共刺激を行わない。
【0077】
あるいは、製造されたT細胞を産生するために抗CD3/抗CD28共刺激を使用する場合、共刺激源は、溶解性抗CD3/抗CD28微粒子によって提供され得る。例として限定されるものではないが、溶解性抗CD3/抗CD28微粒子は、製造業者が推奨する強度(例えば、Cloudz(登録商標);Bio-Techne)の20%で使用することができる。さらなる例として、溶解性抗CD3-抗CD28微粒子は、製造業者の推奨強度の5%、10%、15%、20%、25%、または30%で使用され得る。
【0078】
上記の実施形態のいずれかにおいて、抗CD3/抗CD28刺激は、実施される場合、所望の脱分化の細胞特性を達成するのに十分な量の抗CD3/抗CD28を使用して実施することができる。
【0079】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記の培地は、5%のヒト血清をさらに含むことができる。例として限定されるものではないが、上記の培養培地は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%のヒト血清、およびそれらの間の値を含む任意の範囲を含むことができる。
【0080】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記の培地は、X-Vivo 20培地を含むことができる。T細胞を培養するための任意の適切な培養培地が使用され得る。
【0081】
上記の実施形態のいずれかにおいて、例として限定されるものではないが、上記のビタミンDは、約0.03nM~約1nM、0.03nM~約0.5nM、0.03nM~約0.1nM、0.03nM~約0.05nM、0.05nM~約0.1nM、0.05nM~約0.5nM、0.05nM~1nM、0.1nM~約1nM、0.1nM~約0.5nM、または0.5nM~約1nMで、または例として限定されるものではないが、上記のビタミンDは、約0.03nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、または1nMの濃度で存在することができる。
【0082】
上記の実施形態のいずれかにおいて、本方法は、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORおよびハウスキーピングタンパク質の発現レベルを測定することをさらに含むことができ、上記の期間は、製造されたT細胞におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、T細胞の対照集団と比較して少なくとも50%低減されるまで続き、上記のT細胞の対照集団は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造される。いくつかの実施形態において、この期間は、製造されたT細胞におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較してそれぞれ50%以上低減されるまで続く。例として、これらに限定されないが、この期間は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現レベルがそれぞれ、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上低減されるまで続けることができる。
【0083】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記のハウスキーピングタンパク質は、アクチンであり得る。いくつかの実施形態において、ハウスキーピングタンパク質は、GAPDHであり得る。上記の実施形態のいずれかにおいて、発現レベルを測定する工程は、ウェスタンブロット分析によって実行され得る。
【0084】
上記の実施形態のいずれかにおいて、この期間は、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されるT細胞の対照集団と比較して少なくとも50%低減されるまで続けることができる。いくつかの実施形態において、RAPTORまたはRICTORの発現レベルの低減は、T細胞の対照集団と比較して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上であることができる。
【0085】
上記の実施形態のいずれかにおいて、初期の脱分化培養の期間は、RNA発現パターンが、テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下で培養された対照T細胞と比較して少なくとも10%、より最適に50%異なるまで続けることができ、すなわち、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γを含むが、これらに限定されないT細胞エフェクター分子の低減;Nanog、KLF4、およびKLF10を含むが、これらに限定されない低減された分化状態の細胞に関連する転写因子の増加;CD127、IL-7受容体α鎖を含むが、これらに限定されないナイーブT細胞サブセット上で優先的に発現される分子の発現の増加;T-BETおよびSTAT1を含むが、これらに限定されないTh1型分化に関連する転写因子の低減;ならびにHIF-1αを含むがこれに限定されない、細胞生存を促進する転写因子の相対的保存となるまで続けることができる。
【0086】
上記の実施形態のいずれかにおいて、初期の脱分化培養の期間は、テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下で培養された対照T細胞と比較して、RNA発現パターンが少なくとも10%、より最適には50%異なるまで続けることができ、すなわち、オートファジーを受けた細胞を示す分子の発現に少なくとも10%、より好ましくは50%の変化が存在するまで続けることができる。一例として、上記の脱分化細胞は、対照T細胞と比較してウェスタンブロット分析によるp62の発現の増加を有し、例として限定されるものではないが、Yoshii SR,Mizushima N.Monitoring and Measuring Autophagy.International Journal of Molecular Sciences.2017;18(9):1865に記載されている方法などのオートファジーを測定する他の方法も適用してもよい。
【0087】
上記の実施形態のいずれかにおいて、培養培地は、ヒト血清、テムシロリムス、ビタミンD、IL-2シグナル伝達阻害剤、またはそれらの任意の組み合わせを含有せず、培養開始時に培養培地に存在しないことができる。そのような実施形態において、ヒト血清、テムシロリムス、ビタミンD、またはIL-2シグナル伝達阻害剤は、細胞の培養物入力集団の接種とほぼ同時に、またはその後の時間に培養培地に添加することができる。
【0088】
例として限定されるものではないが、1,25-ビタミンD(「カルシトリオール」)の静脈内製剤を使用することができる。この製剤は、培養培地に完全に可溶性であり、腎臓において天然に産生される1,25ヒドロキシル化を有するので、培養にビタミンDを添加するときに存在しなければならないために、好ましい。カルシトリオールの商品名には、Rocaltrol、Calcijex、およびDecostriolが含まれる)。Maestro et al;Vitamin D receptor 2016:novel ligands and structural insights;Expert Opinion on Therapeutic Patents;Volume 26,2016;issue 11に記載されるように、リトコール酸を含むがこれらに限定されない、他のビタミンD受容体(VDR)リガンドがカルシトリオールに置換され得ることも想定される。
【0089】
いくつかの実施形態において、本開示の方法のいずれかによって得られる脱分化T細胞が提供される。いくつかの実施形態において、脱分化T細胞の集団を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、脱分化T細胞の少なくとも一部は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、50%未満のRAPTORまたはRICTORを発現する。いくつかの実施形態において、脱分化T細胞は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、50%未満のRAPTORまたはRICTORを発現する。例として限定するものではないが、上記の脱分化T細胞または脱分化T細胞の集団は、それぞれ、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%、またはそれ未満のRAPTORまたはRICTORを発現することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、脱分化T細胞集団または脱分化T細胞は、テムシロリムス、ビタミンD、IL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされる対照T細胞集団と比較して、グランザイムBを含むがこれに限定されない細胞溶解分子について、および/またはIFN-γを含むがこれらに限定されないサイトカイン分子については、RNA発現の低下によって特徴付けることができる。そのような低下は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、脱分化T細胞集団または脱分化T細胞は、テムシロリムス、ビタミンD、IL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされる対照T細胞集団と比較して、Nanog、KLF4、およびKLF10を含むがこれらに限定されないiPSCに関連する転写因子について、および/またはIL-7受容体、CD127を含むがこれらに限定されないナイーブT細胞に関連する分子については、RNA発現の増加によって特徴付けることができる。そのような増加は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、脱分化T細胞集団または脱分化T細胞は、テムシロリムス、ビタミンD、IL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされる対照T細胞集団と比較して、ほぼ同等のHIF-1-α発現を同時に維持しながら、T-BetおよびSTAT1を含むがこれらに限定されないTh1エフェクターT細胞に関連する転写因子については、RNA発現の低下によって特徴付けることができる。そのような低下は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上であり得る。例として限定されるものではないが、HIF-1-α発現は、約20%、15%、10%、または5%、または対照T細胞集団内であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、脱分化T細胞の集団または脱分化T細胞は、テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされたT細胞の対照集団と比較して、p62のタンパク質発現の増加によって特徴付けることができる。そのような増加は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上であり得る。
【0094】
ヒトハイブリッド制御性T/Th2細胞(ハイブリッドTREG/Th2細胞)および脱分化T細胞からのTREGの製造方法
本開示では、本発明者らは、Th1型およびTh17型分極の枯渇と組み合わせた早期分化状態のために増強されたiTREG細胞の生成をもたらすエクスビボ製造プロセスを提供する。この方法には、2工程のプロセスが必要であり、第1の工程は、T細胞の脱分化からなり、第2の工程は、iTREG細胞製造からなる。この脱分化T細胞基質からのヒトiTREG細胞の製造は、新規のサイトカインの組み合わせ(IL-2およびTGF-βサイトカインの標準的なiTREG使用+Th2分化と古典的に関連するサイトカインIL-4の追加の使用)、および任意選択で、本明細書に記載の新規の薬剤ペメトレキセドを使用して行うことができる。いくつかの実施形態において、iTREG細胞は、ペメトレキセドなしで生成され得る。かかる細胞は、TREGおよびTh2分子の両方の発現を有するため、この方法によって生成される細胞は、「ヒトハイブリッドTREG/Th2細胞」と称される。
【0095】
いくつかの実施形態において、本方法は、IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地中で、本開示の脱分化T細胞を培養することと、例えば3:1(ビーズ:T細胞の比)の比率で抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを添加することと、上記の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加することと、脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ることと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示の脱分化したT細胞の集団を培養することを含む。抗CD3/抗CD28ビーズの比は、共刺激が細胞を分化するのに十分である限り、変化させることができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本方法は、IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地中で、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較してRAPTORまたはRICTORの発現の低減を有する脱分化T細胞を培養することと、例えば3:1(ビーズ:T細胞の比)の比率で抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを添加することと、上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ることと、を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示の脱分化したT細胞の集団を培養することを含む。抗CD3/抗CD28ビーズの比は、共刺激が細胞を分化するのに十分である限り、変化させることができる。いくつかの実施形態において、RAPTORまたはRICTORの発現は、例えば、アクチンまたはGAPDHであるが、これらに限定されないハウスキーピングタンパク質によって正規化される。
【0097】
上記の実施形態のいずれかにおいて、IL-2は、約100IU/ml~10,000IU/ml、100IU/ml~1,000IU/ml、1,000IU/ml~10,000IU/ml、または約100IU/ml、1,000IU/ml、または10,000IU/mlの濃度で上記の培養培地中に存在することができる。
【0098】
上記の実施形態のいずれかにおいて、培養培地は、IL-4.をさらに含むことができる。上記の実施形態のいずれかにおいて、IL-4は、約100IU/mL~1000IU/Ml、100IU/mL~1000IU/mL、100IU/mL~250IU/mL、100IU/mL~500IU/mL、250IU/mL~1000IU/mL、500IU/mL~1000IU/mL、250IU/mL~500IU/mL、または、100IU/mL、200IU/mL、300IU/mL、400IU/mL、500IU/mL、600IU/mL、700IU/mL、800IU/mL、900IU/mL、もしくは1000IU/mLの濃度で、上記の培養培地中に存在することができる。いくつかの実施形態において、例として限定されるものではないが、減少したTh2分極を達成することが望ましい場合、100IU/mLなどのより低い濃度を使用することができる。
【0099】
上記の実施形態のいずれかにおいて、TGF-βは、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在することができる。例として限定されるものではないが、TGF-βの濃度は、約5ng/mL、6ng/mL、7ng/mL、8ng/mL、9ng/mL、または10ng/mLであり得る。
【0100】
分化のための上記の実施形態のいずれかにおいて、上記のビーズ:T細胞の比は、3:1であり得る。いくつかの実施形態において、同じ効果を有する等価量の代替形態の抗CD3/抗CD28を使用することができる。いくつかの実施形態において、共刺激の量は、細胞を飽和させるのに十分である。上記の実施形態のいずれかにおいて、共刺激の量は、ヒトハイブリッドTREG/Th2細胞におけるGATA3およびFOXP3の発現を増加させるのに十分であり得る。
【0101】
上記の実施形態のいずれかにおいて、培地は、ペメトレキセドをさらに含むことができる。例として限定されるものではないが、ペメトレキセドは、約1nM~100nM、5nM~100nM、10nM~100nM、25nM~100nM、50nM~100nM、75nM~100nM、50nM~75nM、25nM~75nM、10nM~50nM、10nM~25nMの濃度で、または5nM、10nM、25nM、50nM、75nM、もしくは100nMのような値で存在し得る。いくつかの実施形態において、培地はペメトレキセドを含まず、ペメトレキセドは培地に添加されない。
【0102】
上記の実施形態のいずれかにおいて、上記の脱分化T細胞をインキュベートするための上記の期間は、例として限定されるものではないが、3日~40日、2日~20日、3日~10日、3日~6日、6日~10日、10日~40日、10日~20日、10日~15日、15日~40日、20日~40日、30日~40日、20日~30日、または15日~30日、または15日~20日であり得る。いくつかの実施形態において、例として限定されるものではないが、非常に限定的な分化状態のハイブリッドTh2/TREG細胞であれば、3日~10日などの培養のより短い間隔を検討することができる。
【0103】
本開示はまた、IL-4を使用せずに上記の方法のいずれによって産生される方法およびTREG細胞を対象とする。
【0104】
いくつかの実施形態において、本開示の方法によって産生されるTREGまたはTREG/Th2細胞は、対照Th1/Tc1細胞と比較して、CD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40のうちの少なくとも1つのフローサイトメトリーによる増加した発現を有し得る。いくつかの実施形態において、この増加は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上であり得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示の方法によって産生されるTREGまたはTREG/Th2細胞は、対照Th1/Tc1細胞と比較して、炎症性サイトカインの分泌の減少を有することができる。例として限定されるものではないが、そのようなサイトカインは、IFN-γおよびTNF-αを含むことができる。いくつかの実施形態において、この減少は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上であり得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、本開示の方法によって産生されるTREGまたはTREG/Th2細胞は、対照Th1/Tc1細胞と比較して低減されたTBETを有し、FOXP3発現を増加させ、および/または対照Th1/Tc1細胞と比較して増加したIL-4分泌およびGATA3の増加した発現を有し得る。いくつかの実施形態において、この減少または増加は、例として限定されるものではないが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%以上であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、GATA3を発現するCD4+またはCD8+細胞の少なくとも5%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、GATA3を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、または少なくとも60%を有することができる。いくつかの実施形態において、細胞がGATA3を発現するかどうかは、フローサイトメトリーによって決定される。。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞の対照T細胞集団特徴と比較して、GATA3を発現するCD4またはCD8T細胞の増加した頻度を示すことができる。いくつかの実施形態において、増加した頻度は、50%以上の増加であり得る。例として限定されるものではないが、増加は、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、2000%、3000%以上であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、FoxP3を発現するCD4+またはCD8+細胞の少なくとも5%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、FoxP3を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも45%を有することができる。いくつかの実施形態において、細胞がFoxP3を発現するかどうかは、フローサイトメトリーによって決定される。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞の対照T細胞集団特徴と比較して、FOXP3を発現するCD4またはCD8T細胞の増加した頻度を示すことができる。いくつかの実施形態において、増加した頻度は、50%以上の増加であり得る。例として限定されるものではないが、増加は、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、2000%、3000%以上であり得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD73を発現するCD4+またはCD8+細胞の少なくとも10%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD73を発現するCD4+T細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD73を発現するCD8+T細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%を有することができる。いくつかの実施形態において、細胞がCD73を発現するかどうかは、フローサイトメトリーによって決定される。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞の対照T細胞集団特徴と比較して、CD73を発現するCD4またはCD8T細胞の増加した頻度を示すことができる。いくつかの実施形態において、増加した頻度は、50%以上の増加であり得る。例として限定されるものではないが、増加は、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、2000%、3000%以上であり得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD103を発現するCD4+またはCD8+細胞の少なくとも10%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD103を発現すCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%を有することができる。いくつかの実施形態において、細胞がCD103を発現するかどうかは、フローサイトメトリーによって決定される。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞の対照T細胞集団特徴と比較して、CD103を発現するCD4またはCD8T細胞の増加した頻度を示すことができる。いくつかの実施形態において、増加した頻度は、50%以上の増加であり得る。例として限定されるものではないが、増加は、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、2000%、3000%以上であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、フローサイトメトリーで測定されると、FOXP3およびGATA3の両方を発現するCD4またはCD8細胞の少なくとも5%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、FOXP3およびGATA3の両方を発現するCD4またはCD8細胞の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、または50%を有することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD150を発現するCD4+またはCD8+細胞の少なくとも20%を有することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、CD150を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%を有することができる。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞集団は、mTOR阻害剤に曝露することなくインキュベートされたT細胞の対照集団と比較して、CD150を発現する細胞の増加した頻度を得ることができる。いくつかの実施形態において、細胞がCD150を発現するかどうかは、フローサイトメトリーによって決定される。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞の対照T細胞集団特徴と比較して、CD150を発現するCD4またはCD8T細胞の増加した頻度を示すことができる。いくつかの実施形態において、増加した頻度は、50%以上の増加であり得る。例として限定されるものではないが、増加は、50%、100%、200%、300%、500%、1000%、2000%、3000%以上であり得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも5pg/mL/1×106細胞/日のIL-4を発現することができる。例として限定されるものではないが、TREGまたはTREG/Th2細胞集団は、1日当たり少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100pg/mL/1×10細胞のIL-4を発現することができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも100pg/mL/1×106細胞/日のIL-2を発現することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも100pg/mL/1×106細胞/日のIFN-γまたはGM-CSFを発現することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に10pg/mL/1×106細胞/日未満のTNF-αまたはIL-17を発現することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞は、GATA3およびFOXP3の両方を発現することができる。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞は、GATA3、FOXP3、CD103およびCD73を発現することができる。いくつかの実施形態において、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団は、フローサイトメトリーによって測定されるように、GATA3を発現するT細胞の少なくとも5%、FOXP3を発現するT細胞の少なくとも5%、CD103を発現するT細胞の少なくとも5%、およびCD73を発現するT細胞の少なくとも5%によって特徴付けることができる。
【0118】
上記の実施形態のいずれかにおいて、TREGまたはTREG/Th2細胞、またはその集団は、特性に互換性がある限りにおいて、上記の特性の少なくとも1つまたは任意の組み合わせを有することができる。
【0119】
誘導制御性T(iTREG)細胞を用いたALS治療のための方法
このプロトコルでは、本発明者らは、ALSのiTREG細胞療法を強化する免疫枯渇および免疫抑制法としてペントスタチンプラスシクロホスファミドレジメンを使用する。このPCレジメンは、ALS病原体に関連するTh1型免疫細胞を枯渇させ、抑制する能力のために直接的な有益な効果を有し得る。加えて、PCレジメンは、より効果的なiTREG細胞療法のために免疫T細胞空間を増加させる宿主調節として機能する。具体的には、このプロトコルでは、本発明者らは、新しいALS患者集団におけるレジメンの任意の潜在的な有害作用を軽減するために、PCレジメンの投与量を軽減した。このプロトコルでは、本発明者らは、ペントスタチンの開始用量を4mg/mから1mg/mに減らし、ペントスタチンの注入回数を1サイクル当たり4回の注入という以前の値から、1サイクル当たり1回の注入という現在のプロトコル値に減らし、初期シクロホスファミドの用量を1日当たり200mgから1日当たり100mgに減らした。第2に、本発明者らは、PCレジメンによって付与される免疫枯渇の程度に関する述べられた目標の観点から、PCレジメンの強度を減少させた。ALS患者集団ではより慎重なアプローチが義務付けられているため、現在のプロトコルPCレジメンは、ALCカウントをより控えめに、すなわち、1マイクロリットル当たり750個未満の細胞に減らすことを試みた。一般に、この免疫枯渇レベルは、高い日和見感染率の観点から、深刻な長期免疫不全に関連していない。
【0120】
理論に束縛されることなく、PCレジメンは、ALS病原体の進行に関与するTh1/Tc1型適応免疫サブセットを枯渇させ、抑制することが予想される。しかしながら、この療法は、ALSにおける基礎となる原発事象、すなわち、誤って折り畳まれたRNA種、有害なRNA/DNA産物のクリアランスのための不十分なオートファジー、およびその後のP2X7受容体駆動型NLRP3インフラマソームのレベルでの先天性炎症のRNA/DNA活性化に対処しない。ALSモデルにおいて動作可能であることが示されているこのようなインフラマソーム活性化は、その後、Th1/Tc1サブセットによって主に媒介される適応性T細胞炎症を駆動する最も早期かつ最も強力な炎症促進シグナルの1つであるIL-1-β活性化を駆動する。実際、NLRP3阻害は、多様な神経変性疾患の治療に対する新規のアプローチを表すことが最近提案されている。ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)は、ALSの治療にも役割を果たし得る、HIV疾患の治療について承認された抗ウイルス剤である。ALSを有する患者は、一部には、ALSの主要な機序的構成要素であるTDP-43蓄積による調節によって、モデル系における疾患発症を駆動するヒト内因性レトロウイルス-K(HERV-K)のレベルの増加を有することができる。この生物学の臨床翻訳に向けて、ダルナビル、リトナビル、ラルテグラビル、およびジドブジンのHIV抗ウイルスカクテルを評価する臨床試験(NCT02437110)が開始されている。NRTI分子ラミブジン(3TC)はまた、ALSにおいて生じるNLRP3活性化を駆動するP2X7受容体を阻害することも記載されている。これらの観察に部分的に基づいて、ALSにおける先天性炎症事象、すなわち細胞内RNA種の蓄積、炎症性経路の活性化、および結果として生じる全身性Th1駆動型炎症の生成を模倣する疾患であるエカルディ・グティエール(Aicardi-Goutieres)症候群(AGS)を有する患者における炎症を低減するためのラミブジン、ジドブジン、およびアバカビルの3つの薬物レジメンの能力を評価するための第II相臨床試験(NCT02363452)が開始されている。ラミブジンは、NLRP3インフラマソームの強力な阻害剤として特徴付けられており、ALS患者集団において十分に忍容される治療計画を生成することが望まれるため、本発明者らは、本プロトコルにおいてラミブジンによる単剤NRTI療法を追求することを選択した。
【0121】
したがって、理論に束縛されることなく、(PCレジメンを介して)第1のTh1/Tc1応答を枯渇させて抑制し、次いで駆動力インフラマソーム活性化を制御する連続的な戦略は、ALSに関与する複雑な神経炎症ネットワークに持続可能な調節を提供するための新しいアプローチを表すことが期待される。ALS治療プラットフォームにおけるラミブジンの使用は、iTREG細胞療法をプラットフォームにさらに組み込むという、次の工程に関しても有益であり得る。すなわち、3つの治療様式(ペントスタチン/シクロホスファミド、ラミブジン、およびiTREG細胞)のそれぞれは、P2X7駆動のNLRP3媒介性インフラマソームから離れ、免疫抑制分子、アデノシンに向かってATPの輸送をシャントすることによって少なくとも部分的に動作する。第1に、ペントスタチンは、アデノシンデアミナーゼを阻害することによってアデノシンを増加させ、それによってアデノシンのイノシンへの変換を防止する。第2に、ラミブジンは、P2X7の既知の阻害剤であり、それによってインフラマソームを直接阻害する。第3に、iTREG細胞は、ATPをアデノシンに向かって処理するCD39およびCD73媒介性エクトヌクレオチダーゼ活性を提供する。この最後のプロセスに関して、ミクログリア細胞は本質的にCD39およびCD73を利用して神経炎症を抑制することに留意することが重要である。
【0122】
要約すると、これらのデータは、ALSにおける原発性神経変性プロセスが二次炎症応答を生じさせるという証拠を提供し、一方では疾患進行をまだ促進することができるが、一方では、インフラマソーム活性化の制御、Th1/Tc1型サブセットの枯渇および抑制、ならびにTREG型サブセットの促進を含む複数の工程での治療介入となることができるという証拠を提供している。この情報を考慮すると、ALS患者における免疫調節療法の評価には、大きな関心がある。ALS患者における神経炎症の最適な制御には、上記の各構成要素に対処する3段階の治療、すなわち、(1)先天性インフラマソーム活性化の制御(以下に記載されるように、ラミブジン投与による);(2)既存のTh1型炎症細胞の低減(以下にさらに詳細に記載されるように、ペントスタチン/シクロホスファミドレジメンによる);および(3)養子T細胞移入によるiTREG細胞の促進、が必要であるという仮説を、本発明者らは立てた。このような組み合わせアプローチが必要となり得る理由はいくつかある。まず、基礎となるインフラマソーム活性化が維持療法によって対処されない場合、宿主調節療法およびTREG細胞療法中に達成された免疫学的および治療的利得は、基礎となる一次神経変性プロセスによって侵食されている可能性が高い。第2に、制御されていないTh1駆動の炎症を有する宿主への最適化されたTREG細胞集団単独注入でさえ、多くの理由のための困難な免疫学的課題を表す:既存のTh1型細胞は、養子移入されたTREG細胞の際に分化可塑性を発現することができ、それによって保護的TREG集団を疾患の発症に寄与し得る病原性サブセットに変換することができる。第3に、養子移植されたT細胞集団の有効性は、IL-7およびIL-15などのT細胞成長因子の存在によって大きく定義することができる免疫T細胞空間の程度と複雑に連結されており、そのような免疫空間の創出は、ペントスタチン+シクロホスファミド(PC)レジメンを含む宿主調製レジメンによって作製され、これは、同種造血幹細胞移植において何十年も利用されており、現在は癌治療のために養子T細胞移植を使用する分野で利用されている。注目すべきことに、神経変性疾患または自己免疫疾患のTREG細胞療法を伴う以前の臨床試験は、PCレジメンなどの宿主調製レジメンを組み込んでいない。
【0123】
いくつかの実施形態において、本方法は、上記の対象を1つ以上の一次治療サイクルに供することを含み、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することと、上記の対象を、治療有効量の製造されたTREG細胞を含む組成物を上記の対象に投与することを含む1つ以上の免疫療法治療サイクルに供することと、を含む。当業者は、当該技術分野において既知の、本明細書に開示される方法によって、治療有効量を決定することができる。
【0124】
上記の実施形態において、1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にヌクレオシド逆転写酵素阻害剤を投与することをさらに含む。上記のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、NLRP3インフラマソームの阻害剤であり得るか、または上記のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ラミブジンであり得る。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することをさらに含むことができる。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの間に上記の対象にペントスタチンを投与する上記の工程は、前記1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの1日目および4日目に実行されることができる。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの間に上記の対象にペントスタチンを投与する上記の工程は、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの1、2、3、4、および5日目に実行されることができる。上記の方法は、2つ以上の免疫療法治療サイクルを含むことができ、上記の2つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、例として限定されるものではないが、0~4週間、0~3週間、0~2週間、0~1週間、および例として限定されるものではないが、0週間、1週間、2週間、3週間、または4週間などの間の任意の値で離れている。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、18週間の長さであり得る。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にアデノシン受容体調節剤を投与することをさらに含むことができる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,326,983号に開示されるもの、ラミブジン、ジドブジン、スタブジン、コルジセピン、アジドチミジン、アバカビル、
【化1】
それらの化学誘導体、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない他のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤を使用することができる。
【0125】
上記の実施形態において、例として限定されるものではないが、上記の1つ以上の一次治療サイクルは、2週間~5週間、2週間~4週間、2週間~3週間、3週間~4週間、または4週間~5週間であり得、例として限定されるものではないが、2週間、3週間、4週間、または5週間などのそれらの間の任意の値であり得る。上記の方法は、2つ以上の一次治療サイクルを含むことができ、上記の2つ以上の一次治療サイクルのそれぞれは、0~2週間離れている。例として限定されるものではないが、上記の2つ以上の一次治療サイクルのそれぞれは、0~1週間または1~2週間、および例えば、例として限定されるものではないが、1日、1週間、または2週間などの、それらの間の任意の値で、離れている。
【0126】
上記の実施形態において、本方法は、上記の1つ以上の一次治療サイクルの前に、上記の対象から末梢リンパ球を採取することをさらに含み得る。方法は、上記の対象から末梢リンパ球を採取した後、上記の製造されたTREG細胞を得るために上記の末梢リンパ球を培養することをさらに含み得る。方法は、上記の1つ以上の一次治療サイクルの後に、上記の対象から末梢リンパ球を採取することをさらに含んでもよい。方法は、上記の1つ以上の一次治療サイクル後に上記の対象から末梢リンパ球を採取した後、上記の製造されたTREG細胞を得るために上記の末梢リンパ球を培養することをさらに含んでもよい。方法は、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれの後、上記の対象における絶対リンパ球数(ALC)を測定することと、ALCが1μl当たり750未満の場合、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルに進むこととをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、標的ALC値は、変化してもよく、例として、1マイクロリットル当たり0、250、500、750、1000、1250、または1500細胞であり得るが、これらに限定されない。
【0127】
上記の実施形態において、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルの第1のサイクルと、上記の1つ以上の一次治療サイクルの最後のサイクルとは、0~2週間離れている。例として限定されるものではないが、上記の2つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、0~1週間または1~2週間、および例として限定されるものではないが、0週間、1週間、または2週間などの間の任意の値で、離れている。
【0128】
上記の実施形態において、例として限定されるものではないが、ペントスタチンの用量は、0.5mg/m~4mg/m、1mg/m~4mg/m、2mg/m~4mg/mの用量、ならびに例として限定されるものではないが、0.5mg/m、1mg/m、1.5mg/m、2mg/m、2.5mg/m、3mg/m、3.5mg/m、および4mg/mなどの間の任意の値であり得る。上記のペントスタチンは、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれの任意の日に投与することができる。例として限定されるものではないが、ペントスタチンは、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれの1日目、または1日目および4日目に、対象に投与することができる。
【0129】
上記の実施形態において、シクロホスファミドは、50mg~400mgの用量で対象に投与することができる。例として限定されるものではないが、シクロホスファミドの用量は、50、100、150、200、250、300、350、または400mgと、400、350、300、250、200、150、100、または50mgとの任意の組み合わせの間の用量と、例として限定されるものではないが、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、または400mgなどの間の任意の値とすることができる。例として限定されるものではないが、シクロホスファミドは、上記の1つ以上の一次治療サイクルのそれぞれの1日目、2日目および3日目、または1日目、2日目、3日目、4日目および5日目に投与されることができる。
【0130】
上記の実施形態において、上記のペントスタチンおよびシクロホスファミドは、上記の対象に、単一の組成物で投与され得る。上記の単一組成物は、上記の対象に静脈内投与することができる。上記の対象にペントスタチンおよびシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の対象にペントスタチンを含む第1の組成物を投与することと、上記の対象にシクロホスファミドを含む第2の組成物を投与することと、を含むことができる。
【0131】
上記の実施形態において、上記のラミブジンは、上記の対象に、1日150mg~150mgの用量で1日2回投与することができる。
【0132】
上記の実施形態において、上記の製造されたTREG細胞は、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの間に、例として限定されるものではないが、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり2×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり3×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり4×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり4×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり3×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり2×10細胞、およびそれらの間の任意の値、例として限定されるものではないが、対象の体重1kg当たり1×10細胞、対象の体重1kg当たり2×10細胞、対象の体重1kg当たり3×10細胞、対象の体重1kg当たり4×10細胞、または対象の体重1kg当たり5×10細胞などの用量で、上記の対象に投与することができる。例として限定されるものではないが、1注入当たり、製造されたTREG細胞の約1×10~約200×10細胞を投与することができる。さらなる例として限定されるものではないが、製造されたTREG細胞の1注入当たり、約1×10~約200×10、10×10~約200×10、50×10~約200×10、100×10~約200×10、少なくとも1×10、10×10、50×10、100×10、または200×10細胞を投与することができる。いくつかの実施形態において、約40×10細胞/注入が投与され得る。いくつかの実施形態において、約120×10細胞/注入が投与され得る。上記の製造されたTREG細胞は、1:1、3:1、10:1、1:3、および1:10から選択されるセントラルメモリー対エフェクターメモリー細胞の比率を含むことができる。製造されたTREG細胞を含む上記の組成物は、正常なTREG細胞をさらに含むことができる。上記の製造されたTREG細胞は、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの8日目に上記の対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、iTREGおよびnTREGは、対象に組み合わせて投与され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の治療サイクル、第2の治療サイクル、任意選択で、1つ以上の追加の治療サイクル、および1つ以上の免疫療法治療サイクルを含み、上記の第1の治療サイクルは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の第2の治療サイクルは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の1つ以上の追加の治療サイクルは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することを含み、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することと、製造されたTREG細胞を上記の対象に投与することとを含むことができる。
【0134】
上記の実施形態において、上記の第1の治療サイクルは、14日間の長さであり得る。上記の対象にペントスタチンを投与する上記の工程は、上記の第1の治療サイクルの1日目に実行されることができる。ペントスタチンを、上記の第1の治療サイクル中に1mg/mの用量で上記の対象に投与することができる。シクロホスファミドを、上記の第1の治療サイクル中に100mgの用量で上記の対象に投与することができる。上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の第1の治療サイクル中に繰り返すことができ、例として限定されるものではないが、上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の第1の治療サイクルの1、2、および3日目に実行することができる。
【0135】
上記の実施形態において、上記の第2の治療サイクルは、14日間の長さであり得る。上記の第2の治療サイクル中に、上記の対象にペントスタチンを投与する上記の工程は、上記の第2の治療サイクルの1日目に実行されることができる。ペントスタチンを、上記の第2の治療サイクル中に2mg/mの用量で上記の対象に投与することができる。上記の第2の治療サイクル中に上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の第2の治療サイクル中に繰り返すことができる。例として限定されるものではないが、上記の第2の治療サイクル中に上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の第2の治療サイクルの1、2、および/または3日目に実施することができる。シクロホスファミドを、上記の第2の治療サイクル中に100mgの用量で上記の対象に投与することができる。
【0136】
上記の実施形態において、上記の対象は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルに供され得る。上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれは、それぞれ14日間の長さであり得る。上記の1つ以上の追加の治療サイクルは、0~2週間離すことができる。例として限定されるものではないが、上記の2つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれは、0~1週間、または1~2週間、例えば、例として限定されるものではないが、0週間、1週間、または2週間の間の任意の値で離すことができる。上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に上記の対象にペントスタチンを投与する上記の工程は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルの1日目および/または4日目に実行され得る。ペントスタチンは、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に、2mg/mの用量で上記の対象に投与され得る。上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に繰り返され得る。上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に上記の対象にシクロホスファミドを投与する上記の工程は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの1、2、3、4、および/または5日目に実行され得る。シクロホスファミドは、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に100mg~200mgの用量で上記の対象に投与され得る。上記の追加のサイクルは、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に上記対象にペントスタチンを投与する前に、上記の対象のクレアチニンクリアランス(CrCl)を測定することと、上記のCrClに基づいて上記の対象に投与されるペントスタチンの用量を調整することと、をさらに含み、CrCl>60mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは2mg/mで投与され、60mL/分/1.73m>CrCl>30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは1mg/mで投与され、CrCl<30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは投与されない。上記の追加のサイクルは、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの間に上記対象にシクロホスファミドを投与する前に、絶対好中球数(ANC)を測定することと、ANCに基づいて前記対象に投与されるシクロホスファミドの用量を調節することと、をさらに含むことができ、1マイクロリットル当たりANC>1000の場合、シクロホスファミドは100mgの用量で投与され、1マイクロリットル当たりANCが500~999の場合、シクロホスファミドは、50mgの用量で投与され、1マイクロリットル当たりALC<50または1マイクロリットル当たりANC<500の場合、シクロホスファミドは投与されない。上記の1つ以上の追加の治療サイクルは、少なくとも2つの追加の治療サイクルを含むことができ、上記の少なくとも2つの追加の治療サイクルの最終サイクルは、上記の少なくとも2つの治療サイクルの上記の最終サイクルの間に上記の対象にシクロホスファミドを投与する前に、絶対リンパ球数(ALC)および絶対好中球数(ANC)を測定することと、ALCおよびANCに基づいて、上記の対象に投与されるシクロホスファミドの用量を調整することとを含み、シクロホスファミドは、ALC>1250/マイクロリットルの場合、200mgの用量で投与することができ、シクロホスファミドは、ANC>1000/マイクロリットルおよび750<ALC<1250/マイクロリットルの場合、100mgの用量で投与することができ、シクロホスファミドは、ANCが500~999/マイクロリットルの場合、50mgの用量で投与することができ、シクロホスファミドは、ANC<500/マイクロリットルおよび/またはALC<750/マイクロリットルの場合、投与されなくてもよい。
【0137】
上記の実施形態において、上記の治療サイクル、上記の第2の治療サイクル、および上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれは、0~2週間離すことができる。例として限定されるものではないが、上記の治療サイクル、上記の第2の治療サイクル、および上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれは、0~1週間、または1~2週間、例として限定されるものではないが、0週間、1週間、または2週間の間の任意の値で離すことができる。
【0138】
上記の実施形態において、方法は、上記の第1の治療サイクルで上記対象にペントスタチンを投与する前に、上記の対象のクレアチニンクリアランス(CrCl)を測定することと、上記のCrClに基づいて上記の対象に投与されるペントスタチンの用量を調整することと、をさらに含むことができ、CrCl>60mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは1mg/mで投与され、60mL/分/1.73m>CrCl>30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは0.5mg/m2で投与され、CrCl<30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは投与されない。
【0139】
上記の実施形態において、方法は、上記の第1の治療サイクルで上記対象にシクロホスファミドを投与する前に、絶対好中球数(ANC)を測定することと、ALCおよびANCに基づいて上記の対象に投与されるシクロホスファミドの用量を調節することと、をさらに含むことができ、1マイクルリットル当たりANC>1000の場合、シクロホスファミドは100mgの用量で投与され、1マイクルリットル当たりANCが500~999の場合、シクロホスファミドは50mgの用量で投与され、1マイクルリットル当たりANC<500の場合、シクロホスファミドは投与されない。
【0140】
上記の実施形態において、方法は、上記の第2の治療サイクルで上記対象にペントスタチンを投与する前に、上記の対象のクレアチニンクリアランス(CrCl)を測定することと、CrClに基づいて上記の対象に投与されるペントスタチンの用量を調整することと、をさらに含むことができ、CrCl>60mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは2mg/mで投与され、60mL/分/1.73m>CrCl>30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは1mg/mで投与され、CrCl<30mL/分/1.73mの場合、ペントスタチンは投与されない。
【0141】
上記の実施形態において、方法は、上記の第2の治療サイクルで上記対象にシクロホスファミドを投与する前に、絶対好中球数(ANC)を測定することと、ANCに基づいて上記の対象に投与されるシクロホスファミドの用量を調節することと、をさらに含むことができ、1マイクルリットル当たりANC>1000の場合、シクロホスファミドは100mgの用量で投与されることができ、1マイクルリットル当たりANCが500~999の場合、シクロホスファミドは50mgの用量で投与されることができ、1マイクルリットル当たりANC<500の場合、シクロホスファミドは投与されない。
【0142】
上記の実施形態において、方法は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの前に、上記の対象における絶対リンパ球数(ALC)を測定することと、ALCに基づいて上記の対象の上記の治療を調整することと、をさらに含むことができ、1マイクロリットル当たり、ALC<750の場合、上記の患者を上記1つ以上の免疫療法治療サイクルに供することを含む維持治療サイクルを、上記の対象に実施し、1マイクロリットル当たり、ALC>750の場合、上記の患者を上記の1つ以上の追加の治療サイクルに供する。
【0143】
上記の実施形態において、方法は、上記の1つ以上の追加の治療サイクルのそれぞれの前に、上記の対象における絶対リンパ球数(ALC)を測定することと、上記のALCに基づいて上記の対象の上記の治療を調整することと、をさらに含むことができ、1マイクロリットル当たり、ALC<750の場合、上記の対象にヌクレオシド逆転写酵素阻害剤を投与することを含む維持治療サイクルを、上記の対象に実施し、上記の維持治療サイクルの前に上記の1つ以上の追加の治療サイクルをさらに投与せず、1マイクロリットル当たり、ALC>750の場合、上記の1つ以上の追加の治療サイクルに対象患者を継続させる。
【0144】
上記の実施形態において、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、例として限定されるものではないが、18週間の長さであり得る。いくつかの実施形態において、免疫療法治療サイクルを、0~4週間離すことができる。免疫療法治療サイクルは、無期限を含めて繰り返すことができる。免疫療法サイクルの繰り返しは、レジメンに従って、または再発の場合であり得る。例として限定されるものではないが、免疫療法サイクルは、1年に1~4回発生することができる。ペントスタチンは、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの1日目および4日目に、2mg/mの用量で上記の対象に投与することができる。シクロホスファミドは、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの1日目、2日目、3日目、4日目、および/または5日目に、100mgの用量で上記の対象に投与することができる。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にヌクレオシド逆転写酵素阻害剤を投与することをさらに含み得る。上記のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ラミブジンであり得る。上記のラミブジンは、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの間、1日150mg~1日2回150mgの用量で上記の対象に投与することができる。上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれは、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの間に、上記の対象のクレアチニンクリアランス(CrCl)を測定することと、上記のCrClに基づいて上記の対象に投与されるラミブジンの用量を調整することと、をさらに含むことができ、CrCl>50mL/分/1.73mの場合、ラミブジンは1日2回150mgで投与され、50mL/分>CrCl>30mL/分/1.73mの場合、ラミブジンは150mgで投与され、CrCl<30mL/分/1.73mの場合、ラミブジンは投与されない。
【0145】
上記の実施形態において、方法は、治療有効量の製造されたTREG細胞を上記の対象に投与することを含むことができる。
【0146】
上記の実施形態において、上記の製造されたTREG細胞は、上記の1つ以上の免疫療法治療サイクルのそれぞれの8日目に上記の対象に投与することができる。例として限定されるものではないが、製造されたTREG細胞は、上記の免疫療法サイクルの任意の日、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日目に、対象に投与することができる。
【0147】
上記の実施形態において、上記の製造されたTREG細胞は、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞で、例として限定されるものではないが、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり2×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり3×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり4×10細胞~対象の体重1kg当たり5×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり4×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~3×10細胞、対象の体重1kg当たり1×10細胞~対象の体重1kg当たり2×10細胞、および例として限定されるものではないが、対象の体重1kg当たり1×10細胞、対象の体重1kg当たり2×10細胞、対象の体重1kg当たり3×10細胞、対象の体重1kg当たり4×10細胞、または対象の体重1kg当たり5×10細胞などの間の任意の値で、投与されることができる。
【0148】
上記の1つ以上の治療サイクルのそれぞれは、上記の対象にペントスタチンを投与すること、および/または上記の対象にシクロホスファミドを投与することをさらに含むことができる。ペントスタチンは、1mg/m~2mg/mの用量、および例として限定されるものではないが、1mg/m、1.5mg/m、または2mg/mの間の任意の値で、上記の対象に投与することができる。上記のシクロホスファミドの用量は、100mg~200mg、例として限定されるものではないが、100mg、150mg、または200mgなどの間の任意の値であり得る。上記のペントスタチンは、上記の1つ以上の治療サイクルのそれぞれの1日目および4日目に上記の対象に投与することができる。上記のシクロホスファミドは、上記の1つ以上の治療サイクルのそれぞれの1、2、3、4、および/または5日目に、上記の対象に投与することができる。上記の対象は、ペントスタチンおよびシクロホスファミドで以前に治療されていてもよい。上記の1つ以上の治療サイクルのそれぞれは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤を上記の対象に投与することをさらに含み得る。上記のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、NLRP3インフラマソームの阻害剤であり得る。上記のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤は、ラミブジンであり得る。上記の1つ以上の治療サイクルのそれぞれは、4週間離すことができる。
【0149】
上記の実施形態において、本方法は、上記の製造されたTREG細胞と同時に、上記の対象に正常なTREG細胞を投与することをさらに含むことができる。上記の実施形態において、本方法は、上記の1つ以上の治療サイクルの前に、上記の対象から末梢リンパ球を採取することをさらに含むことができる。上記の実施形態において、本方法は、上記の対象から末梢リンパ球を採取した後、上記の末梢リンパ球を培養して、上記の製造されたTREG細胞を得ることをさらに含むことができる。
【実施例
【0150】
以下の実施例は、本開示の方法ならびに結果として生じる脱分化およびiTREGまたは再分化T細胞をより良く例証するために提供される。これらの実施例は、本開示に開示される方法、細胞、および組成物の範囲を限定したり、またはそうでなければ変更したりするよう意図されるものではない。
【0151】
実施例1:ビタミンDとテムシロリムスの組み合わせはT細胞エフェクター分子を減少させる
本発明者らは、ヒトT細胞エフェクター分子発現に対するビタミンD、mTOR阻害(ラパマイシン、テムシロリムスの非経口形態を使用)、およびビタミンD+テムシロリムスの組み合わせの個々の効果を直接評価した(図1を参照)。
【0152】
図1A~1Dは、ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせがヒトCD4およびCD8細胞中のエフェクター分子発現を低減させることを例示している。列#2~#5について、T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比;1:3)、高用量のテムシロリムス(1μM)、ビタミンD(0.1または1.0nM)、およびX-Vivo 20培地中での培養を含む、3日間の脱分化間隔に供した。第1の列は、対照培養物(テムシロリムスなし、ビタミンDなし、3:1のビーズ対T細胞の比の使用、およびI型分極サイトカインIFN-αの含有(20,000IU/mL、別段の定めがない限り、この量は、対照培養物のために以下の実施例1~11で使用される))を表す。第2の列は、低ビーズ対T細胞の比およびテムシロリムスを有したが、ビタミンDを含まなかった培養物を表し、対照的に、第3の列は、ビタミンD(0.1nM)を有したが、テムシロリムスを含まなかった培養物を表す。第4の列は、高用量(「HD」)ビタミンD(1.0nM)を有するが、テムシロリムスを含まない培養物を表す。第5の列は、テムシロリムスと組み合わせた高用量ビタミンD(1.0nM)の両方を有した培養物を表す。脱分化区間の最後に、細胞を採取し、RNAを単離し、Luminex Quantigene法によりRNA発現分析を行った。示される全ての結果は相対RNA発現を表し、結果はTh1/Tc1対照培養物についての1.0の値に対して正規化される。
【0153】
低レベルのT細胞共刺激(1:3の抗CD3/抗CD28ビーズ対T細胞の比;文献で使用される典型的な比は逆の3:1である)、テムシロリムス(1μM)、0.1もしくは1.0nMのいずれかの用量のビタミンD、またはテムシロリムスと高用量のビタミンDの組み合わせを含む、3日間の培養間隔を使用した。培養後、RNAを収集し、エフェクター分子発現レベルを対照培養物と比較した。
【0154】
図1Aが示すように、様々な培養物は、GAPDHを含むハウスキーピング対照遺伝子の同様のRNA発現を有した。対照的に、ビタミンDまたはテムシロリムスを受けなかった対照Th1/Tc1細胞培養物と比較して、テムシロリムス、ビタミンD、またはテムシロリムス+ビタミンDの組み合わせの培養添加は、細胞傷害性分子グランザイムB(図1B)ならびにサイトカイン分子IL-10(Th2サイトカイン、図1C)およびIFN-γ(Th1サイトカイン、図1D)を含むT細胞エフェクター分子のRNA発現の低下をもたらした。したがって、脱分化マーカーとしてのグランザイムBおよびIFN-γは、ビタミンDが0.1~1.0nMの濃度で有効であることを示す。1μMの用量のテムシロリムスは単独で脱分化剤として有益に作用し(列2、グランザイムBおよびIFN-γの低減)、組み合わせて使用した場合にビタミンDの効果を抑制しない(列5)。
【0155】
したがって、低レベルの共刺激(1:3の抗CD3/抗CD28ビーズ対T細胞の比)および短い3日間の培養間隔を使用して、テムシロリムス、ビタミンD、またはテムシロリムス+ビタミンDの組み合わせの添加を利用して、Th1およびTh2サイトカインエフェクターならびに細胞傷害性エフェクター機構の両方を低減することができる。
【0156】
実施例2:ビタミンDとテムシロリムスの組み合わせは、脱分化と関連する主要転写因子を変化させる
本発明者らは、また、低レベルの共刺激後の主要転写因子の発現に対するビタミンD、テムシロリムス、または組み合わせの効果を評価した。
【0157】
図2A図2Dは、ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせが、ヒトCD4およびCD8T細胞中の幹細胞関連転写因子および原子的T細胞分子IL-7受容体-αの発現を増加させることを例示する。ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせがヒトCD4およびCD8T細胞中のエフェクター分子発現を低減させることを例示している。列#2~#5について、T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比;1:3)、高用量のテムシロリムス(1μM)、ビタミンD(0.1または1.0nM)、およびX-Vivo 20培地中での培養を含む、3日間の脱分化間隔に供した。第1の列は、対照培養物(テムシロリムスなし、ビタミンDなし、3:1のビーズ対T細胞の比の使用、およびI型分極サイトカインIFN-αの含有)を表す。第2の列は、低ビーズ対T細胞の比およびテムシロリムスを有したが、ビタミンDを含まなかった培養物を表し、対照的に、第3の列は、ビタミンD(0.1nM)を有したが、テムシロリムスを含まなかった培養物を表す。第4の列は、高用量(「HD」)ビタミンD(1.0nM)を有するが、テムシロリムスを含まない培養物を表す。第5の列は、テムシロリムスと組み合わせた高用量ビタミンD(1.0nM)の両方を有した培養物を表す。脱分化区間の最後に、細胞を採取し、RNAを単離し、Luminex Quantigene法によりRNA発現分析を行った。示される全ての結果は相対RNA発現を表し、結果はTh1/Tc1対照培養物についての1.0の値に対して正規化される。
【0158】
図2Aが示すように、テムシロリムスまたはテムシロリムス+ビタミンDの組み合わせは、Nanog転写因子の上方制御をもたらし、これは、iPSC状態に向かった体細胞の脱分化に必要な数少ない重要因子のうちの1つとして認識される。以前、ヒト線維芽細胞において、ラパマイシンを使用したmTOR阻害は、Nanog発現を増加させることが見出された。対照的に、ビタミンD受容体シグナル伝達は、iPSC状態に関連する転写因子の発現を低減させることが見出された。
【0159】
したがって、低レベルの共刺激を使用して、テムシロリムスは、iPSC転写因子Nanogを増加させ、このテムシロリムスの促進効果は、0.1~1.0nMの範囲の濃度でビタミンDによって無効化されない。
【0160】
比較すると、テムシロリムスもビタミンDも単独では、iPSC状態に関連する古典的転写因子の1つでもあるKLF4分子のRNA発現を増加させなかった。しかしながら、テムシロリムス+ビタミンD(1.0nM)の組み合わせは、KLF4 RNA発現を増加させた。したがって、T細胞脱分化の試みにおいては、テムシロリムスおよびビタミンDの両方を含むことが好ましい。図2Bが示すように、テムシロリムスまたはビタミンDのいずれも単独では有益な脱分化分子KLF4の上方制御に作用しないが、テムシロリムス(1μM)およびビタミンD(1.0nM)の組み合わせは、KLF4を相乗的に上方制御する。
【0161】
関連する転写因子KLF10は、テムシロリムスとビタミンD(1.0nM)の組み合わせを利用したときにも上方制御された。図2Cが示すように、1μMの用量のテムシロリムスは、脱分化分子KLF10、Nanog、およびIL-7受容体αを有益に上方制御するために単独で作用する。ビタミンDは、これらの分子を上方制御するために単独で作用するわけではないが、組み合わせて使用する場合、テムシロリムスの効果を抑制するものではない(列5)。
【0162】
最後に、本発明者らは、分化状態が低下したT細胞において上方制御されているIL-7受容体αのRNA発現について培養細胞を評価した。重要なことに、テムシロリムス単独ではできたが、ビタミンD単独では、IL-7受容体αを上方制御することはできなかった。それにもかかわらず、図2Dに示すように、ビタミンD(1.0nM)とテムシロリムスの組み合わせは、IL-7受容体αの上方制御をもたらした。
【0163】
要約すると、これらのデータは、テムシロリムスと組み合わせた低レベルの共刺激を使用して、T細胞分化を強制することができることを示し、より完全な脱分化パターンのために、培養にテムシロリムスとビタミンDを含むことが好ましい。
【0164】
実施例3:ビタミンDとテムシロリムスの組み合わせは、HIF-1-α発現を維持しながら、Th1分化に関連する主要転写因子を低減する
本発明者らは、また、Th1型分化に関連する主要転写因子、すなわちT-BETおよびSTAT1の発現に対する、ビタミンD、テムシロリムス、またはその組み合わせの効果を評価した。
【0165】
図3A~3Cは、ビタミンDとテムシロリムスとの組み合わせが、T細胞生存期間に関連する転写因子、HIF-1-αの発現を減少させることなく、エフェクターTh1/Tc1細胞に関連する転写因子の発現を減少させることを示す。ビタミンDおよびテムシロリムスの組み合わせがヒトCD4およびCD8細胞中のエフェクター分子発現を低減させることを例示している。列#2~#5について、T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比;1:3)、高用量のテムシロリムス(1μM)、ビタミンD(0.1または1.0nM)、およびX-Vivo 20培地中での培養を含む、3日間の脱分化間隔に供した。第1の列は、対照培養物(テムシロリムスなし、ビタミンDなし、3:1のビーズ対T細胞の比の使用、およびI型分極サイトカインIFN-αの含有)を表す。第2の列は、低ビーズ対T細胞の比およびテムシロリムスを有したが、ビタミンDを含まなかった培養物を表し、対照的に、第3の列は、ビタミンD(0.1nM)を有したが、テムシロリムスを含まなかった培養物を表す。第4の列は、高用量(「HD」)ビタミンD(1.0nM)を有するが、テムシロリムスを含まない培養物を表す。第5の列は、テムシロリムスと組み合わせた高用量ビタミンD(1.0nM)の両方を有した培養物を表す。脱分化区間の最後に、細胞を採取し、RNAを単離し、Luminex Quantigene法によりRNA発現分析を行った。示される全ての結果は相対RNA発現を表し、結果はTh1/Tc1対照培養物についての1.0の値に対して正規化される。
【0166】
重要なことに、各薬剤または薬剤の組み合わせは、T-BET RNA(図3A)およびSTAT1 RNA(図3B)の両方を下方制御した。図3A~3Cに示すように、0.1~1.0nMの用量のビタミンDは、単独で作用して、分化分子T-BETおよびSTAT1を有益に下方制御する。1μMの用量のテムシロリムスは、1.0nMのビタミンDと組み合わせても、生存促進転写因子HIF-1αを有害に下方制御しない。しかしながら、1μMの用量のテムシロリムスは、分化分子T-BETおよびSTAT1を有益に下方制御するために単独で作用し、ビタミンDと組み合わせても同様の結果をもたらす(これら2つの薬剤は拮抗剤ではない)。
【0167】
かなり対照的に、1μMの用量のテムシロリムス、0.1~1.0nMの用量のビタミンD、または組み合わせは、抗腫瘍効果に重要なT細胞生存因子として重要な主要転写因子HIF-1-αを下方制御しなかった(図3C)。
【0168】
要約すると、これらのデータは、低レベル共刺激、テムシロリムス、およびビタミンDの組み合わせを使用して、全体的なT細胞生存に必要な主要な転写因子であるHIF-1-αを阻害することなく、Th1生成に必要な転写因子を低減することができることを示す。
【0169】
実施例4:ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせは、オートファジーシグネチャーを増加させる
本発明者らは、また、幹様脱分化状態を促進するために重要な、ビタミンD、テムシロリムス、またはその組み合わせがオートファジーの過程に及ぼす効果を評価した。オートファジーのレベルは、その後のオートファジー基質p62の上方制御によって、ウェスタンブロット解析によって部分的に決定することができる。
【0170】
図4は、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、オートファジー関連分子p62の発現を誘導することを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を脱分化プロトコルに供し、これは、低レベル共刺激(1:3のビーズ対T細胞の比)、テムシロリムス(図4に示されるように「TEM」、1.0または0.3μMの濃度)、ビタミンD(示されるように「D」、0.01、0.03、0.1、0.3、または1.0nMの濃度)、ならびに抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml、示されるように「DAC」)を使用して3日間の培養を含んだ。3日間培養間隔後、T細胞を採取し、タンパク質を単離し、オートファジー関連遺伝子p62、およびハウスキーピング遺伝子アクチンについてウェスタンブロット分析を行った。
【0171】
図4が示すように、上方制御されたp62によって測定した場合、T細胞培養物中のビタミンDの含有は、オートファジーの増加にとって重要であった。0.01~0.1nMの用量のビタミンDは、0.3~1.0μMの濃度のテムシロリムスと協働して、脱分化中にオートファジーマーカーp62を有益に上方制御する。すなわち、図4、培養#6(第5の列)では、ウェスタンブロット分析でのp62発現は非常に少なく、これは、低レベルのオートファジーと一致する。図の凡例が示すように、この培養条件は、低レベルの共刺激、テムシロリムス、抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブを受けたが、ビタミンDを受けなかった。
【0172】
対照的に、他の培養条件は、それぞれビタミンD補充を受け、それぞれがp62発現を増加させた(ビタミンDの有効用量範囲、0.01nM~1.0nM)。この図4はまた、抗IL-2受容体モノクローナル抗体添加を伴わないビタミンDおよびテムシロリムス添加を伴わないビタミンDが、T細胞オートファジーの誘導に十分であったことも実証する。
【0173】
要約すると、これらのデータは、低レベル共刺激を有するビタミンDを含むことが、単独で、または他のT細胞阻害剤、すなわち、抗IL-2受容体試薬またはmTOR阻害剤テムシロリムスと組み合わせて、T細胞オートファジーを誘導するための効率的な方法であることを示す。
【0174】
実施例5:ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせは、mTORC1複合体の最適な破壊をもたらす。
本発明者らは、mTORC1シグナル伝達複合体の重要な成分であるRaptorの発現に対する様々なT細胞培養条件の効果も評価した。重要なことに、mTORC1の阻害は、体細胞のiPSC状態へのリプログラミングに重要であることが最近発見されている。
【0175】
図5は、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、mTORC1関連分子、RAPTORの発現を低下させることを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を脱分化プロトコルに供し、これは、低レベル共刺激(1:3のビーズ対T細胞の比)、テムシロリムス(図5に示されるように「TEM」、1.0または0.3μMの濃度)、ビタミンD(示されるように「D」、0.01、0.03、0.1、0.3、または1.0nMの濃度)、ならびに抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50ng/ml、示されるように「DAC」)を使用して3日間の培養を含んだ。3日間培養間隔後、T細胞を採取し、タンパク質を単離し、mTORC1複合体タンパク質Raptorおよびハウスキーピング遺伝子アクチンについてウェスタンブロット分析を行った。
【0176】
図5が示すように、RAPTOR発現の減少によって示されるように、mTORC1複合体の最適な阻害は、T細胞を、テムシロリムス(1.0μM)、ビタミンD(0.1nM)、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブ(50μg/nl)と組み合わせて低いビーズ対T細胞の比(1:3)で共刺激したときに生じた(第1の列に示す;培養1)。
【0177】
図5が示すように、ダクリズマブの省略は、RAPTOR発現のわずかな増加をもたらし、それによって、最適なmTORC1阻害のための抗IL-2受容体試薬の役割を示す。したがって、抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブ(用量、50μg/mL)は、mTORC1サブユニット分子であるRaptor(列2)を抑制する上で有益な役割を果たす。
【0178】
図5が示すように、ビタミンDによるmTORC1サブユニット分子RAPTORの最適な阻害は、0.03~0.1nMのビタミンD用量であり、この範囲よりも低いかまたはそれよりも高い濃度は、RAPTORの最適未満の抑制をもたらす。したがって、0.03nMまで低いレベルのビタミンDは、RAPTORの最適阻害に十分である。しかしながら、ビタミンDレベルを0.01nMに低下させると、最適以下のRAPTOR阻害をもたらす。さらに、0.1nMの濃度を超えてビタミンDレベルを増加させることは、より高いレベルのRAPTOR発現を有した培養物7(0.3nMの濃度のビタミンD)によって示されるように、有害であり得る。
【0179】
さらに、図5が示すように、RAPTORの最適な下方制御は、0.3μMの濃度でテムシロリムスを補充した培養物9がより高いレベルのRAPTOR発現を有していたため、テムシロリムス用量が最適に1.0μMであるビタミンDとテムシロリムスの組み合わせを必要とする。
【0180】
実施例6:ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせは、mTORC1複合体およびmTORC2複合体の両方を破壊する。
本発明者らは、また、ラパマイシンの阻害効果に直接感受性ではないが、mTORC1遮断の延長をもたらす条件の影響を受ける可能性があるmTORC2複合体も評価した。重要なことに、mTORC2の阻害は幹細胞様状態を促進することができる。
【0181】
図6は、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、mTORC1関連分子、RAPTOR、およびmTORC2関連分子、Rictorの発現を低下させることを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を脱分化プロトコルに供し、これは、低レベル共刺激(1:3のビーズ対T細胞の比)、テムシロリムス(図6に示されるように「TEM」、1.0μMの濃度)、ビタミンD(示されるように「D」、0.03、0.1、0.3、または1.0nMの濃度)、ならびに抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50ng/ml、示されるように「DAC」)を使用して3日間の培養を含んだ。3日間培養間隔後、T細胞を採取し、タンパク質を単離し、mTORC1複合体タンパク質Raptor;mTORC2複合体タンパク質、Rictor;ポストmTORC1タンパク質、p70S6K;ポストmTORC2タンパク質、SGK1、およびハウスキーピング遺伝子、GAPDHについてウェスタンブロット分析を行った。
【0182】
図6が示すように、3つの阻害剤のうちのいずれも含有しなかった対照培養物と比較して、テムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体抗体ダクリズマブを含有する培地中のT細胞培養物は、mTORC1分子RAPTORおよびmTORC2分子Rictorの両方において減少した。ポストmTORC1分子p70S6KおよびポストmTORC2分子SGK1のレベルは比較的保持された。したがって、ビタミンD(0.03~1.0nMの濃度)は、mTORC2サブユニットであるRictorの下方制御のための組み合わせ剤分化の間に有効であった。そして、1μMの濃度のテムシロリムスは、mTORC2サブユニットであるRictorの下方制御性のための組み合わせ剤分化の間に有効であった。さらに、抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブ(用量、50μg/mL)は、テムシロリムスおよびビタミンDがmTORC2サブユニットRictorを下方制御する能力を廃棄しなかった。
【0183】
したがって、低レベルの共刺激ならびにテムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の3部阻害レジメンを使用したT細胞培養は、RAPTORおよびRictorサブユニットの両方を低減するための新規な方法を表す。
【0184】
実施例7:ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせは、プロアポトーシスBcl2ファミリーメンバー遺伝子BIMの発現を低減する。
ミトコンドリアのレベルでのオートファジー(ミトファジー)の結果、ミトコンドリアタンパク質の質を改変することができ、特に、ミトファージでは、BIMなどのアポトーシス前駆ファミリーメンバーから抗アポトーシス前駆ファミリーメンバー遺伝子へのbcl2ファミリーメンバー遺伝子に向かう有利なシフトがあり得る。さらに、アポトーシス傾向を減少させる培養方法は、脱分化能力の増加と関連付けられる。
【0185】
図7は、ビタミンD、テムシロリムス、および抗IL-2受容体遮断の組み合わせが、プロアポトーシス分子、BIMの発現を低下させることを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を脱分化プロトコルに供し、これは、低レベル共刺激(1:3のビーズ対T細胞の比)、テムシロリムス(図7に示されるように「TEM」、1.0または0.3μMの濃度)、ビタミンD(示されるように「D」、0.01、0.03、0.1、0.3、または1.0nMの濃度)、ならびに抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50ng/ml、示されるように「DAC」)を使用して3日間の培養を含んだ。3日間培養間隔後、T細胞を採取し、タンパク質を単離し、プロアポトーシス関連遺伝子BIM、およびハウスキーピング遺伝子アクチンについてウェスタンブロット分析を行った。
【0186】
これを評価するために、本発明者らは、低強度の共刺激(1:3のビーズ対T細胞の比)および種々の阻害剤の存在で培養したT細胞におけるBIMレベルを測定した。図7が示すように、テムシロリムス、ビタミンD(0.1nM)、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブの組み合わせを含有するT細胞培養物は、最低レベルのBIM発現を有した。しかし、なお、図7は、抗IL-2受容体モノクローナル抗体ダクリズマブ(用量、50μg/ml)が、プロアポトーシス分子であるBIMを抑制する上で有益な役割を果たすことを示す(列2)。3つの阻害剤のそれぞれは、いずれかの単一の阻害剤の不在がBIMレベルを増加させたため、BIM阻害において役割を果たすように見えた。
【0187】
したがって、本発明者らは、併用阻害剤レジメンは、アポトーシス傾向のミトコンドリア制御における好ましいシフトを誘導するための方法を表すと結論付ける。
【0188】
実施例8:3つの阻害剤脱分化レジメンは、阻害剤の除去後に後続の増殖能力を有するT細胞をもたらす。
低レベルの共刺激、テムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体からなる3日間のレジメンが再分化可能な脱分化状態をもたらしたことを実証するために、本発明者らは、培養から阻害剤を除去した後、高レベルの共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)を使用して、培養3日目に細胞を再刺激する実験を行った。10日後(総培養の13日後)、T細胞を採取し、数え上げ、フローサイトメトリーによって評価した。
【0189】
図8は、(培養の13日目における)後続のT細胞収率に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比、示されるように1:3もしくは1:1)、テムシロリムス(1μM、または低用量[「Lo」]、0.1μM)、ビタミンD(0.1nM、または1.0nMの高用量[「HD」]、または0.01nMの低用量)、抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml)、ならびに5%のヒトAB血清を補充したX-Vivo 20培地中での培養を含む3日間の脱分化区間に供した。第1の列は、対照培養物(テムシロリムス、ビタミンD、または抗IL-2R抗体は含まない)を表す。第2の列は抗IL-2R抗体を有さない培養物を表し、第4の列は血清補充を有さない培養物を表し、第5の列は低用量ビタミンDを表し、第6の列は高用量ビタミンDを使用した結果を表し、第7の列は低用量テムシロリムスを使用した結果を表し、第8の列はテムシロリムスを有さない培養物を表し、第9の列はより高いビーズ比を使用した結果を表す。3日間の区間の後、培地を阻害剤なしの新鮮なX-Vivo 20に交換し、高レベル共刺激(3:1ビーズ対T細胞の比)を提供し、T細胞成長サイトカインIL-2(100IU/ml)およびIL-7(10ng/ml)を添加した。培養の13日目に、生存T細胞を列挙し、全体的な収率を0日目の入力数と比較して示す。
【0190】
図8は、再分化段階の後のT細胞数を示す。これらのデータが示すように(列#3)、低レベルの共刺激、テムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体を使用して最初の3日間の脱分化区間にわたって維持されたT細胞は、満足のいくT細胞収率(培養入力の250%超)を有した。
【0191】
かなり対照的に、列#4に表される培養液中で非常に低い収率が観察され、これは、最初の3日間の培養区間中に血清補充を受けなかった。したがって、このデータは、最初の3日間の培養区間が、5%のAB血清を補充したX-Vivo 20培養培地を含む必要があることを実証する。
【0192】
また、ビタミンD濃度を0.01nMに低下させるか、またはビタミンD濃度を1.0nMに増加させると、非常に低い収率がもたらされた(データは、それぞれ列#5および#6に示される)。したがって、ビタミンDの好ましい濃度は、0.1nMである。
【0193】
さらに、テムシロリムス濃度を0.1μMに低下させると、得られたT細胞収率が低下した(列#7)。このため、テムシロリムスの好ましい濃度は1.0μMである。
【0194】
最後に、共刺激レベルが脱分化区間中に増加した場合(ビーズ対T細胞の比が1:3から1:1に変化し、結果が最後の列#9に示される)、得られたT細胞数は非常に低かった。図8に示すように、脱分化中に低レベルの共刺激を使用する必要があり(1:3の共刺激ビーズ対T細胞の比)、これは、1:1に比率を増加させると、脱分化状態からT細胞を製造する能力が大幅に低下するためである(最後の列)。そのため、培養の脱分化段階における好ましいビーズ対T細胞の比は、1:3である。
【0195】
実施例9:最初の3成分の培養区間は、低減された分化と一致する細胞表面分子を発現するCD4T細胞の生成をもたらす。
培養の再分化段階中の様々な時点で、得られたCD4T細胞を、フローサイトメトリーによるメモリーマーカーの発現について評価した。
【0196】
図9A図9Cは、(培養の13日目における)メモリーマーカーのCD4T細胞発現に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示する。ヒトCD4+およびCD8+T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比、1:3)、テムシロリムス(1μMまたは0.1μM[低用量「Lo」])、ビタミンD(0.1nMまたは0.01nM[低用量「Lo」])、抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml)、ならびに5%のヒトAB血清を補充したX-Vivo 20培地中での培養を含む3日間の脱分化区間に供した(上記図9A~9Cに示されるように)。3日間の区間の後、培地を阻害剤なしの新鮮なX-Vivo 20に交換し、高レベル共刺激(3:1ビーズ対T細胞の比)を提供し、T細胞成長サイトカインIL-2(100IU/ml)およびIL-7(10ng/ml)を添加した。T細胞を、CD4およびCD45RAマーカーの共発現(上記パネルに示される結果、培養の13日目に評価した);CD4、CD62L、およびCCR7マーカーの共発現(左下パネル;培養3日目に評価した);ならびにCD4、CD62L、CCR7、およびCD127マーカーの共発現(右下パネル;培養10日目に評価した)の評価のためのフローサイトメトリーに供した。全ての結果は、培養開始時のCD4T細胞の値と比較して示される(図9A~9Cの最後の列、「0日目入力値」)。
【0197】
図9Aに示すように、0日目の入力T細胞からの値と比較して、最初にテムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせで増殖したT細胞は、ナイーブT細胞上で発現されるCD45RAマーカーの比較的保存された発現を有した(列#3)。かなり対照的に、初期の培養区間中におけるこれら3つの分子の不在とは、ナイーブT細胞集団の枯渇をもたらした(培養#1)。さらに、初期の培養区間中におけるテムシロリムスの排除は、ナイーブT細胞集団(培養#6)の枯渇をもたらした。
【0198】
図9Bに示されるように、低レベルの共刺激を組み込んだ3日の区間中に最初に増殖したT細胞培養物のそれぞれは、セントラルメモリー分子CD62LおよびCCR7のT細胞発現の増加を有した。
【0199】
最後に、図9Cに示すように、最初にテムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせで増殖したT細胞では、CD62L、CCR7、およびIL-7受容体α(CD127)に対してトリプル陽性であったT細胞の発現が大幅に増加した(0日目の入力細胞と比較して)。初期の3日間培養中の3つの阻害剤の排除(列#1)は、初期の培養区間がこのトリプル陽性集団の拡大を促進する能力を無効にした。加えて、初期の培養区間からテムシロリムスのみを低減または排除することもまた、トリプル陽性T細胞の頻度を大幅に低減させた(列#5および6)。
【0200】
要約すると、これらのデータは、3つの薬物の初期培養区間が、非常に限定されたT細胞分化の状態であるCD62L、CCR7、およびCD127の共発現を含む、主に末期のエフェクターメモリー集団から低分化T細胞集団へのCD4+T細胞の転換をもたらすことを示す。
【0201】
実施例10:最初の3成分の培養区間は、低減された分化と一致する細胞表面分子を発現するCD8T細胞の生成をもたらす。
培養の再分化段階中の様々な時点で、得られたCD8T細胞を、フローサイトメトリーによるメモリーマーカーの発現について評価した。
【0202】
図10A図10Bは、メモリーマーカーのCD8T細胞発現に対する脱分化区間中の培養成分の効果を例示す。ヒトCD4+およびCD8+T細胞を、低レベルの抗CD3/抗CD28共刺激(ビーズ対T細胞の比、1:3)、テムシロリムス(1μMまたは0.1μM[低用量「Lo」])、ビタミンD(0.1nMまたは0.01nM[低用量「Lo」])、抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml)、ならびに5%のヒトAB血清を補充したX-Vivo 20培地中での培養を含む3日間の脱分化区間に供した(上記図10A~10Bに示されるように)。3日間の区間の後、培地を阻害剤なしの新鮮なX-Vivo 20に交換し、高レベル共刺激(3:1ビーズ対T細胞の比)を提供し、T細胞成長サイトカインIL-2(100IU/ml)およびIL-7(10ng/ml)を添加した。T細胞を、CD8、CD62L、およびCCR7マーカーの共発現(左パネル;培養10日目に評価した);ならびに、CD8、CD62L、CCR7、およびCD127マーカーの共発現(右パネル;培養10日目に評価した)の評価のためのフローサイトメトリーに供した。全ての結果は、培養開始時のCD8T細胞の値と比較して示される(図10A~10Bの最後の列、「0日目入力値」)。
【0203】
図10Aに示されるように、低レベルの共刺激を組み込んだ3日の区間中に最初に増殖したT細胞培養物のそれぞれは、セントラルメモリー分子CD62LおよびCCR7のCD8T細胞発現の増加を有した。
【0204】
最後に、図10Bに示すように、最初にテムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の組み合わせで増殖したT細胞では、CD62L、CCR7、およびIL-7受容体α(CD127)に対してトリプル陽性であったCD8T細胞の発現が大幅に増加した(0日目の入力細胞と比較して)。初期の3日間培養中の3つの阻害剤の排除(列#1)は、初期の培養区間がこのトリプル陽性集団の拡大を促進する能力を無効にした。加えて、初期の培養区間からテムシロリムスのみを低減または排除することもまた、トリプル陽性T細胞の頻度を大幅に低減させた(列#5および6)。
【0205】
要約すると、これらのデータは、3つの薬物の初期培養区間が、非常に限定されたT細胞分化の状態であるCD62L、CCR7、およびCD127の共発現を含む、主に末期のエフェクターメモリー集団から低分化T細胞集団へのCD8T細胞の転換をもたらすことを示す。
【0206】
実施例11:脱分化したT細胞は、低サイトカイン電位に向かって本質的なバイアスを有する
図11A~11Dは、低レベルの共刺激(抗CD3/抗CD28ビーズ対T細胞の比が1:3であり、これは、Kalamasz D、Long SA、Taniguchi R、Buckner JH、Berenson RJ、Bonyhadi M.Optimization of human T-cell expansion ex vivo using magnetic beads conjugated with anti-CD3 and Anti-CD28 antibodies)Journal of immunotherapy(Hagerstown、Md:1997).2004;27(5):405-418に記載されている慣用的な方法と比較して低減されている)、mTOR阻害剤テムシロリムス;ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の使用を含む、脱分化プロセスの成分を強調している。
【0207】
図11A~11Dは、分極中性培地中で培養された脱分化T細胞の炎症性Th1/Th17サイトカイン分析を示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を、示されるように、以下の培養成分:テムシロリムス(Yは1μMの濃度を示し、Y、Loは、0.1μMの濃度を示す)、ビタミンD(Yは0.1nMの濃度を示し、Y、Loは、0.01nMの濃度を示す)、抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml)、低比率(ビーズ対T細胞の比、1:3)で抗CD3/抗CD28(3/28)被覆された磁性ビーズとの共刺激、ならびに5%ヒト血清での補充を含む3日間の脱分化手順に供した。3日後、脱分化T細胞を、T細胞分極を誘導する点において強力ではない、T細胞増殖サイトカインrhu IL-2(100IU/ml)およびrhu IL-7(10ng/ml)を補充した培地中で共刺激した(典型的なビーズ対T細胞の比3:1)。培養10日後(合計、培養の13日目)、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。
【0208】
脱分化T細胞状態が、特定のサイトカイン分泌パターンに向かって固有の偏りを示したかどうかを評価するために、本発明者は、高レベルの共刺激(ビーズ対T細胞の比、3:1)およびいずれの阻害剤も含有せず、T細胞成長サイトカインIL-2およびIL-7のみを含有する培地中での維持を使用して、脱分化T細胞を培養した。
【0209】
図11A~11Dで詳細が示されるように、脱分化前駆状態のそれぞれから再分化された結果として生じたT細胞は、IFN-γ(ほとんどの値が1000pg/ml未満)、TNF-α(ほとんどの値が100pg/ml未満)、およびIL-17(全ての値が10pg/ml未満)を含む、炎症性サイトカインの分泌レベルが非常に低かった。注目すべきことに、GM-CSFは、いくつかの条件下で、はるかに高いレベル、場合によっては10,000pg/mlを超えるレベルで分泌された。GM-CSF値は、より高い用量のテムシロリムス(1.0μM)およびより高い用量のビタミンD(0.1nM)からなる脱分化状態で調節された。したがって、結果として生じるGM-CSFのT細胞サイトカイン分泌の調節のために、これらより高い濃度のテムシロリムスおよびビタミンDを組み込んだ脱分化方法からT細胞を拡張することが望ましい。
【0210】
特に、脱分化間隔中に低濃度のビタミンD(0.01nM)を含めることは、より高い濃度のビタミンD(0.1nM)の使用と比較して、やや高いレベルのIFN-γおよびTNF-αももたらした。したがって、炎症性サイトカインIFN-γの結果として生じるT細胞分泌の調節に関して、約0.1nMの濃度のビタミンDを使用することが好ましい。
【0211】
さらに、図12A~12Dに示されるように、脱分化前駆状態T細胞のそれぞれから再分化された結果として生じるT細胞は、IL-2の非常に低いレベルの分泌を有したが、再び、より高い濃度のテムシロリムスおよびビタミンDを組み込んだ状態では、これらの薬剤のより低い濃度を使用した条件と比較して、レベルは低かった。
【0212】
図12A~12Dは、分極中性培地における培養された脱分化T細胞のIL-2およびTh2型サイトカイン分析を示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を、示されるように、以下の培養成分:テムシロリムス(Yは1μMの濃度を示し、Y、Loは、0.1μMの濃度を示す)、ビタミンD(Yは0.1nMの濃度を示し、Y、Loは、0.01nMの濃度を示す)、抗IL-2受容体モノクローナル抗体(ダクリズマブ、50μg/ml)、低比率(ビーズ対T細胞の比、1:3)で抗CD3/抗CD28(3/28)被覆された磁性ビーズとの共刺激、ならびに5%ヒト血清での補充を含む3日間の脱分化手順に供した。3日後、脱分化T細胞を、T細胞分極を誘導する点において強力ではない、T細胞増殖サイトカインrhu IL-2(100IU/ml)およびrhu IL-7(10ng/ml)を補充した培地中で共刺激した(典型的なビーズ対T細胞の比3:1)。培養10日後(合計、培養の13日目)、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。
【0213】
得られたT細胞はまた、Th2型サイトカインIL-4(20pg/ml未満の値)およびTh2型サイトカインIL-5(60pg/ml未満の値)の非常に低レベルの分泌を有した。しかしながら、IL-13のレベルは、いくつかのT細胞培養条件において上昇し、より低い濃度でこれらの薬剤を使用した条件と比較して、より高い濃度のテムシロリムスおよびビタミンDを組み込んだ条件において、より低いサイトカイン分泌が検出された。
【0214】
要約すると、これらのデータは、工程1脱分化プロセス後の強力な分極シグナルなし(IFN-α、IL-4、またはTGF-βの添加なし)のT細胞成長サイトカイン(IL-2およびIL-7)を含有する培地におけるT細胞の再分化が、低サイトカイン電位のT細胞に向かって固有の偏りを有することを示し、特に、本発明者らは、低レベルの有害なサイトカインIFN-γ、TNF-α、およびIL-17を実証した。この観察は、脱分化工程が、1.0μMの濃度のテムシロリムス、0.1nMの濃度のビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体を含む培地中に低レベルの共刺激および増殖を組み込む場合、特に強力である。
【0215】
実施例12:ハイブリッドTREG/Th2分極条件下および新規薬剤ペメトレキセドの存在下での脱分化T細胞の好ましい拡張
本発明者らは、T細胞再分化がTREG分極サイトカインIL-2およびTGF-β、またはTh1分極サイトカイン、IFN-αを組み込んだときの脱分化成分の効果を評価した。
【0216】
実際、TBETまたはGATA3のいずれかが、免疫耐性を維持するためのTREG細胞能力を維持することが示されている。それにもかかわらず、TREG細胞機能におけるTBETまたはGATA3のいずれかの役割についてのこの証拠にもかかわらず、自己免疫におけるTBETおよび結果として生じるTh1型経路の非常に強い結合のために、本発明者らは、製造されたTREG細胞におけるGATA3発現を優先することを選択した。したがって、本発明者らは、工程1の脱分化プロセス、およびその後の、TREG分極シグナル(IL-2、TGF-β)および主なTh2分極シグナル(IL-4)の両方を含む工程2の再分化プロセスのいずれかが、ヒト「ハイブリッド」TREG-Th2細胞を生成し得るかどうかを評価した。TREG細胞エクスビボ培養物へのIL-4の意図的な添加が、TREG表現型を促進または抑制するかのいずれかであることが示されたため、実験マウスモデルからの文献の結果は、この点に関して混合される。TREG細胞製造における外因性IL-4の役割に関するこの矛盾するマウス文献に加えて、ヒトTREG細胞に対するIL-4のエクスビボ役割に関する情報は乏しいが、本研究では、IL-4がヒトTREG細胞機能を保持したことが見出された。
【0217】
iTREG細胞は、iTREG細胞が病原性Th1型またはTh17型サブセットに変換することができるインビボ分化可塑性の傾向を有すると特徴付けられているため、ハイブリッドTh2成分を有するヒトiTREG細胞は養子T細胞療法に好ましい場合がある。他方では、Th2型表現型への分化がiTREG製造内でコード化される場合、Th2バイアスは、Th1/Th17表現型への可塑性を予測可能に制限する。
【0218】
さらに、本発明者らは、医薬品ペメトレキセドがiTREG細胞表現型を促進するのに有益であり得るかどうかを評価した。優先的なiTREG細胞生成のための薬剤の使用のための前例が存在し、最も顕著には、mTOR阻害剤ラパマイシンは、iTREG細胞へ向かうシフトと関連付けられている。しかしながら、ペメトレキセドは、iTREG促進効果を有することを特徴付けられていない。ペメトレキセドは葉酸塩抗代謝物として複雑な作用機序を有する。
【0219】
図13は、ハイブリッドTh2/REG分極条件において、Th1分極条件と比較して、脱分化T細胞の好ましい拡張を示す。ヒトCD4+およびCD8+T細胞を3日の脱分化手順(「工程1」)に供した。図13に示されるように、この工程1の脱分化介入には、変動的に、阻害剤なし(「なし」)、テムシロリムス単独(「T」、1.0μM)、ビタミンD単独(「D」、0.1nM)、抗IL-Rモノクローナル抗体バシリキシマブ単独(「B」、10μg/ml)、または阻害剤の様々な組み合わせ(T、D、もしくはT、D、B)が含まれた。3日後、脱分化したT細胞を、変動的にTh1分極条件(rhu IFN-α、10,000IU/ml)、TREG分極(rhu IL-2、100IU/ml、rhu TGF-β、10ng/ml)、またはハイブリッドTh2-TREG分極条件(IL-2、TGF-β、さらにrhu IL-4[1000IU/ml])で補充された培地中で共刺激した(典型的なビーズ対T細胞の比、3:1)。加えて、新規の阻害分子ペメトレキセドなしで(「0」)、または示されるような可変濃度のペメトレキセド(10nM[「10」]、33nM[「33」]、または100nM[「100」]の存在下で、可変分極条件の存在下で、T細胞培養を行った。合計10日間の培養後、n=24個の培養物を採取し、生細胞を列挙し、上でグラフ化した(y軸は細胞数×10個、入力細胞数は1.5×10個であった)。
【0220】
図13が示すように、工程1の脱分化後のT細胞の再分化能力は、脱分化中に添加される特異的成分、再分化中に添加される特異的サイトカイン、および再分化中のペメトレキセドの存在に依存した。
【0221】
注目すべきことに、工程1の脱分化後に十分な数のT細胞を再分化しようとする試みは、Th1型分極の条件下では成功しなかった(図13、培養物#9~#16を参照;全てのT細胞の収率は、T細胞入力数未満であった)。脱分化条件がテムシロリムスおよびビタミンDを単独で、または抗IL-2受容体試薬と組み合わせて含む場合、Th1型経路に沿って再分化する非常に限定された能力が観察され、ペメトレキセドが工程2培養中に添加されていないか、または10~100nMの範囲の濃度で添加されていない場合も観察された。
【0222】
かなり対照的に、工程1の脱分化後の十分な数のT細胞の再分化の試みは、ハイブリッドTREG-Th2分極の条件下で成功した(図13、培養物#2および#5を参照)。注目すべきことに、最も厳しい脱分化条件(テムシロリムス、ビタミンD、および抗IL-2受容体モノクローナル抗体の含有)において、TREG-Th2分極条件における十分なT細胞は、10nMの濃度でペメトレキセドを工程2培養物に添加した場合にのみ観察された。
【0223】
この最も厳しい脱分化工程1の条件を使用して、工程2中に純粋なTREG分極条件(IL-4を含まない、IL-2+TGF-β)で十分な数のT細胞を再分化させる試みは、ペメトレキセドの存在下であっても成功しなかった(培養物#20および#21)。
【0224】
要約すると、数値の観点から、TREG-Th2ハイブリッド分極条件(IL-2、TGF-β、およびIL-4)を使用し、10nMの濃度でペメトレキセドを使用して、T細胞再分化の成功を最適に行う。
【0225】
実施例13:ハイブリッドTREG/Th2条件における脱分化T細胞の培養は、限定的な分化状態のCD4およびCD8T細胞の生成をもたらす
本発明者らは、また、T細胞メモリー状態に対する様々なサイトカイン分極条件/様々なペメトレキセド条件における、この工程1の脱分化プロセス、続いて工程2の再分化の効果を評価した。すなわち、限られた分化状態のT細胞が養子細胞療法のための治療的有用性を向上させたことを研究は示している。したがって、限られたT細胞分化は、工程1/工程2のT細胞製造方法の有利な特徴であろう。
【0226】
図14A図14Cは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、ナイーブおよびトリプル陽性TセントラルメモリーCD4T細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、図13に記載のように、変動的な分極培養条件およびペメトレキセドの変動的な存在を含有する培地中で3日間の脱分化手順およびその後の培養に供した。N=24の培養条件の合計のうち、好ましい細胞収率を有する培養物のみをさらに評価し、ペメトレキセド(「+」)を含有する全ての培養物が10nMの濃度であったことが示された。上記のTREG条件は、(「TReg、IL4なし」)と示されない限り、全てIL-2、TGF-β、およびIL-4(「TReg」)を含有した。合計10日間の培養後、培養物を採取し、フローサイトメトリーによって、以下の含有量について評価した:ナイーブCD4T細胞(CD45RAを共発現した総CD4T細胞の%として発現した;図14A)、セントラルメモリーCD4T細胞(CD62LおよびCCR7の両方を共発現した総CD4T細胞の%を発現した;図14B)、ならびにトリプル陽性セントラルメモリーCD4T細胞(CD62L、CCR7、およびCD127を共発現した総CD4T細胞の%を発現した;図14C)。
【0227】
図14Aに示すように、ハイブリッドTREG-Th2状態における工程2の再分化(10nM濃度のペメトレキセドを伴う、または伴わない)は、養子T細胞療法の実験マウスモデルにおいて好ましい、CD4CD45RAナイーブT細胞サブセットを高頻度でもたらした。
【0228】
加えて、図14Cに示すように、ハイブリッドTREG-Th2状態における工程2の再分化(10nM濃度のペメトレキセドを伴う、または伴わない)は、メモリーマーカーCD62L、CCR7、およびCD127のトリプル陽性共発現を有するCD4T細胞サブセットを高頻度でもたらした。このトリプル陽性メモリー表現型は、非常に原始的な分化状態を有するT細胞のマーカーである。
【0229】
図14Cに示すように、CD62L、CCR7、およびCD127についてトリプル陽性であったCD4T細胞の頻度は、純粋なTREG分極条件と比較して、ハイブリッドTREG-TH2分極条件においてより高かった。
【0230】
また、図14Cに示すように、テムシロリムスおよびビタミンDだけでなく、抗IL-2受容体モノクローナル抗体も含むより厳しい工程1の分化条件の使用は、ハイブリッドTREG-Th2分極条件を使用して、CD62L、CCR7、およびCD127に対してトリプル陽性であったCD4細胞を最も高い頻度でもたらした。
【0231】
図15A図15Bは、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、トリプル陽性TセントラルメモリーCD8T細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、図13に記載のように、変動的な分極培養条件およびペメトレキセドの変動的な存在を含有する培地中で3日間の脱分化手順およびその後の培養に供した。N=24の培養条件の合計のうち、好ましい細胞収率を有する培養物のみをさらに評価し、ペメトレキセド(「+」)を含有する全ての培養物が10nMの濃度であったことが示された。上記のTREG条件は、(「TReg、IL4なし」)と示されない限り、全てIL-2、TGF-β、およびIL-4(「TReg」)を含有した。合計10日間の培養後、培養物を採取し、フローサイトメトリーによって、以下の含有量について評価した:セントラルメモリーCD8T細胞(CD62LおよびCCR7の両方を共発現した総CD8T細胞の%を発現した;図15A)、ならびにトリプル陽性セントラルメモリーCD8T細胞(CD62L、CCR7、およびCD127を共発現した総CD8T細胞の%を発現した;図15B)。
【0232】
また、図15Bに示すように、CD62L、CCR7、およびCD127についてトリプル陽性であったCD8細胞の頻度は、純粋なTREG分極条件と比較して、ハイブリッドTREG-TH2分極条件においてより高かった。さらに、図15A~15Bに示すように、テムシロリムスおよびビタミンDだけでなく、抗IL-2受容体モノクローナル抗体も含むより厳しい工程1の分化条件の使用は、ハイブリッドTREG-Th2分極条件を使用して、CD62L、CCR7、およびCD127に対してトリプル陽性であったCD8T細胞を最も高い頻度でもたらした。
【0233】
要約すると、これらのデータは、ハイブリッドTREG-Th2サイトカイン分極(IL-2、TGF-β、およびIL-4)を使用し、ならびに工程1の脱分化後にペメトレキセド(10nM)を使用したT細胞再分化が、好ましく限定的な分化状態のCD4およびCD8T細胞をもたらすことを示す。
【0234】
実施例14:ハイブリッドTREG/Th2分極条件における脱分化T細胞の培養は、原始的なTh2細胞サイトカイン表現型を有するT細胞をもたらす
工程1の脱分化後の工程2の培養条件で再分化したT細胞をサイトカイン分泌パターンについても評価した。サイトカイン分泌は、T細胞エフェクター機能の指標であり、したがって、TREG細胞が、特にIL-17、IFN-γおよびTNF-αなどの主要な炎症性サイトカインに関して低下したサイトカイン分泌の可能性を有することが一般的に望ましい。提案されたハイブリッドTREG-Th2細胞集団の場合、かかる細胞はまた、Th2サイトカインのいくつかの分類を分泌することが予想される。
【0235】
図16A図16Cは、高レベルのIL-2およびIL-4分泌ならびに低レベルのIL-5 分泌に示されるように、ハイブリッドTh2/TReg分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型を伴うT細胞の産生をもたらすことを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を、図13に記載のように、変動的な分極培養条件およびペメトレキセドの変動的な存在を含有する培地中で3日間の脱分化手順およびその後の培養に供した。N=24の培養条件の合計のうち、好ましい細胞収率を有する培養物のみをさらに評価し、ペメトレキセド(「+」)を含有する全ての培養物が10nMの濃度であったことが示された。上記のTREG条件は、(「TReg、IL4なし」)と示されない限り、全てIL-2、TGF-β、およびIL-4(「TReg」)を含有した。合計10日の培養後、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。
【0236】
図16Aに示すように、培養にペメトレキセドを添加したか否かにかかわらず、ハイブリッドTREG-TH2サイトカイン分極条件(IL-2、TGF-β、およびIL-4)で再分化したT細胞は、IL-2分泌について最も高い値を有した。この結果は、T細胞におけるIL-2分泌が、ハイブリッド培養条件において再分化されたT細胞が有する、早期分化状態におけるT細胞の特徴であるという事前の理解と一致した。
【0237】
図17A図17Cは、低レベルのIL-10、IL-13、およびIL-17分泌に示されるように、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型を伴うT細胞の産生をもたらすことを示す。ヒトCD4およびCD8T細胞を、図13に記載のように、変動的な分極培養条件およびペメトレキセドの変動的な存在を含有する培地中で3日間の脱分化手順およびその後の培養に供した。N=24の培養条件の合計のうち、好ましい細胞収率を有する培養物のみをさらに評価し、ペメトレキセド(「+」)を含有する全ての培養物が10nMの濃度であったことが示された。上記のTREG条件は、(「TReg、IL4なし」)と示されない限り、全てIL-2、TGF-β、およびIL-4(「TReg」)を含有した。合計10日の培養後、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。
【0238】
図18A図18Cは、低レベルのIFN-γ、TNF-α、およびGM-CSF分泌に示されるように、ハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の培養が、原子的Th2細胞サイトカイン表現型を伴うT細胞の産生をもたらすことを示す。
ヒトCD4およびCD8T細胞を、図13に記載のように、変動的な分極培養条件およびペメトレキセドの変動的な存在を含有する培地中で3日間の脱分化手順およびその後の培養に供した。N=24の培養条件の合計のうち、好ましい細胞収率を有する培養物のみをさらに評価し、ペメトレキセド(「+」)を含有する全ての培養物が10nMの濃度であったことが示された。上記のTREG条件は、(「TReg、IL4なし」)と示されない限り、全てIL-2、TGF-β、およびIL-4(「TReg」)を含有した。合計10日の培養後、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。
【0239】
さらに、図16Bに示すように、培養にペメトレキセドを添加したか否かにかかわらず、ハイブリッドTREG-TH2条件(IL-2、TGF-β、およびIL-4)で再分化したT細胞は、IL-4分泌について最も高い値を有した。IL-4は、Th2分極を指示する主要サイトカインであるため、ハイブリッド条件で製造されたT細胞は、実際にTh2分極される。一方、それらの限定的な分化状態と一致して、ハイブリッド状態で再分化された細胞は、高レベルのエフェクターTh2サイトカイン(IL-5、図16Cを参照;IL-10、図17Aを参照;IL-13、図17Bを参照)またはエフェクターTh1/Th17サイトカイン(IFN-γ、図18Aを参照;TNF-α、図18Bを参照;GM-CSF、図18Cを参照;IL-17、図17Cを参照)を分泌しなかった。
【0240】
重要なことに、T細胞再分化プロセスにおけるIL-4包含の欠如は、より高いレベルの炎症性サイトカインIFN-γ、TNF-α、およびGM-CSFをもたらした(図18A~18Cを参照)。
【0241】
要約すると、これらのデータは、工程1の脱分化細胞からのTREG表現型へ向かうT細胞の再分化は、この条件から出るT細胞が炎症性疾患に関連するサイトカインの分泌能力を大幅に低下させるため、ハイブリッドTREG-Th2分極条件を最適に利用しているはずであることを示す。
【0242】
実施例15:ハイブリッドTREG/Th2条件における脱分化T細胞の培養は、強化されたハイブリッドTREG/Th2転写因子プロファイルを有するT細胞をもたらす
T細胞サイトカイン表現型は、主要な転写因子によって決定される。転写因子とT細胞サブセットとの関連は次の通りである:FOXP3がTREG細胞発達を指示し、TBETがTh1型細胞発達を指示し、GATA3がTh2型発達を指示する。
【0243】
本発明者らの製造方法でこれらの転写因子を評価するために、T細胞を最初に工程1の脱分化手順に供し、その後、ハイブリッドTREG-TH2培養条件(IL-2、TGF-β、およびIL-4)で再分化させた。加えて、本発明者らは、ペメトレキセドの効果を古典的なmTOR阻害剤と比較した。本発明者らの実験では、mTOR阻害剤(ラパマイシン;Sirolimus(登録商標))の経口製剤を使用する代わりに、薬物の水溶性の親形態であるテムシロリムス(Toracel(登録商標))を利用した。
【0244】
iTREG表現型は不安定であると見なされ、したがって、本発明者らは、培養の20日目および32日目を含む遅延した時点で、ハイブリッドTREG-Th2培養条件を使用して再分化されたT細胞の安定性を評価した。加えて、表現型安定性を厳密に試験するために、培養の24日目から32日目の間に、T細胞は高レベルの共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)を受け、サイトカインまたは薬理剤を含まない培地中で増殖させた。
【0245】
図19A図19Dは、ペメトレキセドを含有するハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、FOXP3およびGATA3転写因子を発現するCD4T細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、3日間の脱分化手順に供し、その後、共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)し、薬理阻害剤テムシロリムス(1.0μM)またはペメトレキセド(10nM)を伴うか、または伴わずに、ハイブリッドTh2/TREG分極条件(IL-2;TGF-β;IL-4)を含有する培地中で増殖させた。培養物を、培養の14日目および24日目の両方で、3/28ビーズで再刺激した。培養の24日目に、転写因子発現の安定性を評価するために、培養培地は、外因性サイトカインまたは薬理阻害剤を含有しなかった。培養の12日目、20日目、および32日目に、T細胞を採取し、以下の転写因子、FOXP3、Tbet、およびGATA3について表面フローサイトメトリー(CD4マーカー)および細胞内染色を行った。上のデータは、培養集団全体のうちのCD4細胞のパーセント(図19A)、TREG転写因子FOXP3を発現したCD4細胞のパーセント(図19B)、Th1転写因子Tbetを発現したCD4細胞のパーセント(図19C)、およびTh2転写因子GATA3を発現したCD4細胞のパーセント(図19D)を示す。
【0246】
図19A~19Dの詳細として、TREG-Th2条件で再分化されたT細胞は、培養物中で経時的にCD4細胞優勢に向かって徐々に移行した(図19A)。図19Bに示すように、CD4細胞は、培養物中のテムシロリムスまたはペメトレキセドの存在に関わらず、培養の12日目から32日目まで、FOXP3を高頻度かつ安定的に発現した。
【0247】
図19Cとして、薬理学的阻害剤の存在なしでも、Th1転写因子TBETによる非常に低い頻度の汚染があった。しかしながら、最も一貫して低減したTBET値が、ペメトレキセドも含むハイブリッド分極条件において観察された。最後に、図19Dに示すように、ペメトレキセドを補充したハイブリッドTREG-TH2条件で製造されたT細胞において、培養終了Th2関連GATA3発現が最も高いことが観察された。
【0248】
図20A図20Dは、ペメトレキセドを含有するハイブリッドTh2/TREG分極条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、FOXP3およびGATA3転写因子を発現するCD8T細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、3日間の脱分化手順に供し、その後、共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)し、薬理阻害剤テムシロリムス(1.0μM)またはペメトレキセド(10nM)を伴うか、または伴わずに、ハイブリッドTh2/TREG分極条件(IL-2;TGF-β;IL-4)を含有する培地中で増殖させた。培養物を、培養の14日目および24日目の両方で、3/28ビーズで再刺激した。培養の24日目に、転写因子発現の安定性を評価するために、培養培地は、外因性サイトカインまたは薬理阻害剤を含有しなかった。培養の12日目、20日目、および32日目に、T細胞を採取し、以下の転写因子、FOXP3、Tbet、およびGATA3について表面フローサイトメトリー(CD8マーカー)および細胞内染色を行った。上のデータは、培養集団全体のうちのCD8細胞のパーセント(図20A)、TREG転写因子FOXP3を発現したCD8細胞のパーセント(図20B)、Th1転写因子Tbetを発現したCD8細胞のパーセント(図20C)、およびTh2転写因子GATA3を発現したCD8細胞のパーセント(図20D)を示す。
【0249】
図20Aに示すように、CD8細胞含有量は、培養物中で経時的に徐々にかつ控えめに減少した。TREG細胞機能は概してCD4細胞サブセットに起因するが、CD8REG細胞もまた十分に記載されており、CD4およびCD8T細胞サブセットの両方を含有するTREG集団の使用が、抗原特異性の多様化のために有利であり得ることに留意されたい。したがって、本発明者らが説明する方法は、CD4-およびCD8-方TREGの両方を生成するため、部分的に有利である可能性がある。
【0250】
図20Bが示すように(右上パネル)、この方法を使用して製造されたCD8T細胞は、実際に、培養中で経時的に安定し、薬理阻害剤の存在とは独立して安定したFOXP3発現のために濃縮された。
【0251】
図20Cが示すように(左下パネル)、TREG-Th2分極条件における再分化は、一般的に、低レベルのTh1転写因子TBETのCD8T細胞発現をもたらしたが、最も低いレベルは、ペメトレキセドの存在下で一貫して観察された。
【0252】
最後に、図20Dが示すように(右下のパネル)、TREG-TH2条件における再分化は、GATA3転写因子の発現の増加によって示されるように、実際には、Th2型分化にもシフトしたCD8T細胞をもたらした。
【0253】
図40A~40Bはまた、CD4およびCD8サブセットの両方における再分化TREG-Th2細胞についてのGATA3およびFOXP3のフローサイトメトリーを示す。
【0254】
要約すると、これらの転写因子分析は、ハイブリッドTREG-Th2培養条件+ペメトレキセド添加における再分化は、それがTBETの発現を限定しながら、FOXP3およびGATA3の両方を発現するCD4およびCD8T細胞の両方を保存することができるため、最適であり得ることを示している。
【0255】
実施例16:ハイブリッドTREG/Th2条件における脱分化T細胞の培養は、Th2サイトカイン分泌プロファイルを増強したT細胞をもたらす
転写因子測定に加えて、本発明者らは、サイトカイン分泌能について、ハイブリッドTREG-Th2分極条件において再分化したT細胞も評価した。図21A~21Dに示すように、TREG-Th2分極条件で増殖した全ての再分化培養物は、IL-4分泌が可能なT細胞をもたらし、それによって、薬理阻害剤の不在下であってもTh2極性を達成するためのこの方法の固有の能力を実証する。
【0256】
図21A~21Dは、ハイブリッドTh2/TREG極性条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、優勢なTh2サイトカイン表現型:IL-4、IL-5、およびIL-13分泌を伴って発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、3日間の脱分化手順に供し、その後、共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)し、薬理阻害剤テムシロリムス(1.0μM)またはペメトレキセド(10nM)を伴うか、または伴わずに、ハイブリッドTh2/TREG分極条件(IL-2;TGF-β;IL-4)を含有する培地中で増殖させた。培養物を、培養の14日目および24日目の両方で、3/28ビーズで再刺激した。培養の24日目に、転写因子発現の安定性を評価するために、培養培地は、外因性サイトカインまたは薬理阻害剤を含有しなかった。培養の12日目、20日目、および32日目に、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。Th2サイトカインIL-10も評価した:全ての値は、1×10細胞/mL/24時間当たり20pg/ml未満であった。
【0257】
注目すべきことに、テムシロリムスは、エフェクターTh2サイトカインIL-5(図21B)およびIL-13(図21C)を分泌するTREG-Th2条件におけるT細胞の再分化能力を鈍化させたが、ペメトレキセドの使用は、IL-5およびIL-13を分泌するT細胞の能力を完全に保持した。したがって、これらのデータは、ペメトレキセドがTREG-Th2ハイブリッドサブセットの製造とより互換性があるため、ペメトレキセドの使用が、mTOR阻害剤テムシロリムスなどの従来のTREG促進剤の使用と比較して好ましいというさらなる証拠を提供する。
【0258】
さらに、TREG-Th2分極条件で再分化した全てのT細胞は、IL-2(図22A)、IFN-γ(図22B)、IL-17(全て20pg/ml未満の値)、およびTNF-α(全て20pg/ml未満の値)の比較的低レベルの発現を有した。
【0259】
図22A~22Dは、ハイブリッドTh2/TREG極性条件における脱分化T細胞の拡張された培養が、優勢なTh2サイトカイン表現型:IL-2、IFN-γ、およびGM-CSF分泌を伴って発現するT細胞の生成をもたらすことを例示する。ヒトCD4およびCD8T細胞を、3日間の脱分化手順に供し、その後、共刺激(3:1のビーズ対T細胞の比)し、薬理阻害剤テムシロリムス(1.0μM)またはペメトレキセド(10nM)を伴うか、または伴わずに、ハイブリッドTh2/TREG分極条件(IL-2;TGF-β;IL-4)を含有する培地中で増殖させた。培養物を、培養の14日目および24日目の両方で、3/28ビーズで再刺激した。培養の24日目に、転写因子発現の安定性を評価するために、培養培地は、外因性サイトカインまたは薬理阻害剤を含有しなかった。培養の12日目、20日目、および32日目に、T細胞を採取し、洗浄し、3/28ビーズ(3:1比)で24時間再刺激し、得られた上清を採取し、Luminexマルチ分析物法によってサイトカイン含有量について試験した。示される全ての結果は、1×10細胞/ml/24時間当たり、pg/ml単位でサイトカインレベルとして発現される。炎症性サイトカインIL-17およびTNF-αも評価した:全ての値は、1×10細胞/mL/24時間当たり20pg/mL未満であった。
【0260】
注目すべきことに、GM-CSF分泌は、ペメトレキセドをさらに補充したTREG-TH2ハイブリッド培養条件において再分化されたT細胞においてより高い程度で観察された(10nM、図22C)。文献における実験研究から推論すると、TREG-Th2ハイブリッド集団内の増強されたGM-CSFの能力が必ずしも有害または有益のいずれかであるかどうかは明らかではない。
【0261】
要約すると、これらのデータは、TREG-Th2分極状態におけるT細胞の再分化が、炎症性疾患に関連するTh1型およびTh17型サイトカインの分泌能力が低いT細胞をもたらすために、好ましいことを示す。ペメトレキセドをハイブリッドTREG-Th2分極条件に含めることは、Th2サイトカイン産生能力の増加をもたらすために有利であり、これは、Th1型およびTh17型サブセットに向かう分化可塑性に対する防御をさらに提供するであろう。
【0262】
実施例17:入力T細胞TCRレパートリーを有益に改変させるための、アフェレーシスによるリンパ球収集前の選択抗TNF-α試薬の使用
図23Aおよび23Bは、TNF-α阻害剤エタネルセプトでの治療後の、T細胞TCR特異性の広範な上方制御および下方制御を検出するためのRNAに基づくT細胞受容体配列決定の使用を示す。図23では、RNAは、エタネルセプト療法による治療前および治療後のALS患者から末梢血単核細胞から単離された。Rosati E、Dowds CM、Liaskou E、Henriksen EKK、Karlsen TH、Franke A.Overview of methodologies for T-cell receptor repertoire analysis.BMC Biotechnol.2017;17(1):61によって以前記載されているように、RNAをTCRレパートリープロファイリングに供した。図23Aにおいて、約25%のTCR特異性が治療後試料中で上方制御されていたことが実証される(赤色で示されるように);著しく対照的に、約25%のTCR特異性が治療後試料中で下方制御されていた(青色で示されるように)。右上図(B)に示されるように、いくつかのT細胞クローンが、エタネルセプト前の0.01の頻度(アッセイの検出限界付近)から、247~486の範囲の治療後の値に増加したため、エタネルセプト療法は、顕著なT細胞クローン拡張をもたらし、それによって4-logを超えるT細胞拡張と一致した。右下の図23Bに示されるように、いくつかのT細胞クローンが、エタネルセプト前の259~598の頻度(アッセイの検出限界付近)から、0.01の治療後の値に減少したため、エタネルセプト療法は、顕著なT細胞クローン収縮をもたらし、それによって4-logを超えるT細胞収縮と一致した。
【0263】
図23A~Bは、TNFR1発現Th1型細胞を促進するTNF-αの血清無細胞形態を優先的に阻害するエタネルセプトによる抗TNF-α療法が、T細胞受容体の上方制御および下方制御における広範な変化と関連していることを示す。これらの観察結果は、対象を、エタネルセプト、またはTNF-αの血清無細胞形態を優先的に阻害する任意の他の抗TNF-α治療薬(モノクローナル抗体、アダリムマブなど)で前処理することを利用して、T細胞受容体レパートリーを抗原特異性に基づいて、Th1型表現型のT細胞から離れる方向にシフトさせ、それによって抗原特異性に基づいてTREG表現型のT細胞を濃縮することができることを示す。
【0264】
実施例18:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の発現のために富化された細胞産物としてのTREG-Th2ハイブリッド集団の特徴付け。
図24は、製造されたiTREG/Th2ハイブリッド集団が、対照Th1/Tc1培養物と比較して、CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の発現の増加を有することを示す。図24において、iTREG/Th2ハイブリッド集団を、T細胞分化の初期相、続いて、IL-2、TGF-β、およびIL-4を含有する培地における再分化を使用して、以前詳述された方法によって生成した。ITREG/Th2製造の11日目に、細胞を採取し、CD4+およびCD8+T細胞発現の関連する分子、すなわちCD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の評価のためにフローサイトメトリーに供し、Th1/Tc1分極を評価する3つの別個の対照条件と比較した。
【0265】
図24は、記載の条件に従って製造されたハイブリッドTREG-Th2細胞が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによる以下の細胞表面分子:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の発現の増加を有することを示す。
【0266】
図24が例示するように、iTREG/Th2ハイブリッド細胞産物は、対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%、より好ましくは50%高いレベルのCD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4を発現するCD4+およびCD8+T細胞を有する。
【0267】
IL-2受容体であるCD25は、自己免疫、特にCD8+T細胞駆動応答を管理するTREG細胞の能力にとって重要である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCD25の発現は、望ましい特徴である。
【0268】
TREG細胞上の発現が増加した共刺激分子であるCD27は、TREGの阻害機能に寄与することが示されている。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCD27の発現は、望ましい特徴である。
【0269】
2B4(CD244)は、最近、糖分解および細胞分裂の減衰によってCD8+T細胞応答を阻害することが示される。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上での2B4の発現は、望ましい特徴である。
【0270】
BTLA(CD272)は共阻害受容体であり、BTLAとヘルペスウイルス進入媒介体HVEMとのライゲーションは、TREG細胞誘導およびエフェクター免疫応答の阻害を促進する。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上のBTLAの発現は、望ましい特徴である。
【0271】
CTLA4は、最近マラリア感染への免疫を制限する能力によって証明されるように、TREG細胞の重要なエフェクター分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCTLA4の発現は、望ましい特徴である。
【0272】
実施例19:TGIT、TIM 3、ICOS、LAIR1、およびOX40の発現のために富化された細胞産物としてのTREG-Th2ハイブリッド集団の特徴付け。
図25は、製造されたiTREG/Th2ハイブリッド集団が、対照Th1/Tc1培養物と比較して、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の発現の増加を有することを示す。図25において、iTREG/Th2ハイブリッド集団を、T細胞分化の初期相、続いて、IL-2、TGF-β、およびIL-4を含有する培地における再分化を使用して、以前詳述された方法によって生成した。ITREG/Th2製造の11日目に、細胞を採取し、CD4+およびCD8+T細胞発現の関連する分子、すなわちTIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の評価のためにフローサイトメトリーに供し、Th1/Tc1分極を評価する3つの別個の対照条件と比較した。図25は、記載の条件に従って製造されたハイブリッドTREG-Th2細胞が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによる以下の細胞表面分子:TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の分子の増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを示す。
【0273】
図25が例示するように、iTREG/Th2ハイブリッド細胞産物は、対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%、より好ましくは50%高いレベルのTIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40を発現するCD4+およびCD8+T細胞を有する。
【0274】
TIGITは、制御性T細胞機能と関連する細胞表面共阻害受容体分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上のTIGITの発現は、望ましい特徴である。
【0275】
TIM3は、TREG細胞の阻害効果を媒介する共阻害受容体である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのTIM3の発現は、望ましい特徴である。
【0276】
ICOSは、中枢神経系における免疫反応性の制御のための制御性T細胞による免疫抑制を維持するのに役立つと最近決定された共刺激分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上のICOSの発現は、望ましい特徴である。
【0277】
LAIR1(CD305)は、活性化されたエフェクターメモリーT細胞の抑制を含む、複数の工程で炎症を遮断することができる多面的阻害分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのLAIR1の発現は、望ましい特徴である。
【0278】
OX40は、共刺激分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのOX40の発現は、望ましい特徴である。
【0279】
実施例20:TREG/Th2ハイブリッド集団のGATA3およびFOXP3発現の特徴付け
定常状態のアフェレーシス試料を得、Ficoll勾配によってリンパ球について濃縮し、次いでG-Rex培養容器に播種し、ビタミンD(0.3nM)、テムシロリムス(3.0μM)およびバシリキシマブ(30μg/mL)を含有する完全培地中でインキュベートした。初期の脱分化期間後、T細胞を、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを用いて、3:1のビーズ対T細胞の比で共刺激し、サイトカイン(IL-4(1000IU/mL)、IL-2(10,000IU/mL)およびTGF-β(100ng/mL))を添加した。6日間の培養後、T細胞を採取し、表面マーカー(CD4およびCD8)ならびに細胞内分子発現(GATA3およびFOXP3)について染色し、フローサイトメトリーによって評価した。図26A~Bの結果は、フローサイトメトリーによって測定されるように、培養開始時および培養後(Th2/TREG)のCD4+およびCD8+T細胞についてのFOXP3およびGATA3発現を示す。提供されるパーセンテージは、CD4+またはCD8+および細胞内マーカーに対して陽性と見なされる細胞の量を示す(ボックスで示される)。
【0280】
図26A~Bに示される結果は、製造されたTh2/TREG細胞産物の表現型を示す結果を示す。II型サイトカイン表現型のT細胞は、それらの転写因子GATA3の発現によって部分的に特徴付けられ得るが、制御性T細胞集団は、それらのFoxP3転写因子の発現によって部分的に特定され得る。培養開始時に、非常に低い頻度のT細胞がGATA3またはFoxP3のいずれかを発現した。かなり対照的に、Th2/TREG培養条件で製造されたT細胞産物は、GATA3に対して単一陽性、FOXP3に対して単一陽性、またはGATA3およびFOXP3の両方に対して二重陽性(図示せず)のいずれかであった高頻度のT細胞を発現した。重要なことに、示されるように、この転写因子プロファイルは、製造されたCD4+(上部パネル)およびCD8+(下部パネル)T細胞の両方で発現した。IL-4を含まない対照製造培養物は、GATA3陽性T細胞の頻度を大幅に低下させ、それによって、Th2/TREGハイブリッド集団(図示せず)の製造におけるIL-4の重要な役割を実証した。
【0281】
本開示に詳述されるTREG/Th2方法に従って製造されたT細胞産物の表現型特徴付けの大部分は、培養の終了時に確認することができる。しかしながら、T細胞産物は冷凍保存され得ること、したがって、解凍後の状態におけるT細胞の表現型特徴付けが、対象に養子移入される実際の産物を反映することに留意することが重要である。解凍後の状態のTREG/Th2細胞は、対照Th1/Tc1細胞と比較して以下によって特徴付けることができる:(a)フローサイトメトリーによるCD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の発現の増加;(b)Luminexサイトカイン分泌分析によるIFN-gおよびTNF-aの低減ならびにIL-4の分泌の増加;ならびに(c)T細胞運命転写因子の発現の変化、すなわち、TBETの低減ならびにFOXP3およびGATA3の増加。
【0282】
実施例21:TREG/Th2ハイブリッド集団のCD73およびCD103発現の特徴付け
定常状態のアフェレーシス試料を得、Ficoll勾配によってリンパ球について濃縮し、次いでG-Rex培養容器に播種し、ビタミンD(0.3nM)、テムシロリムス(3.0μM)およびバシリキシマブ(30μg/mL)を含有する完全培地中でインキュベートした。初期の脱分化期間後、T細胞を、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを用いて、3:1のビーズ対T細胞の比で共刺激し、サイトカイン(IL-4(1000IU/mL)、IL-2(10,000IU/mL)およびTGF-β(100ng/mL))を添加した。6日間の培養後、T細胞を採取し、表面マーカー(CD4およびCD8)、ならびにエクトヌクレオチダーゼ分子CD73、またはインテグリン分子CD103について染色し、フローサイトメトリーによって評価した。図27A~Bの結果は、フローサイトメトリーによって測定されるように、培養開始時および培養後(Th2/TREG)のCD4+およびCD8+T細胞についてのCD73およびCD103発現を示す。提供されるパーセンテージは、CD4+またはCD8+、およびエクトヌクレオチダーゼ分子またはインテグリン分子それぞれに対して陽性と見なされる細胞の量を示す(ボックスで示される)。
【0283】
制御性T細胞集団は、免疫抑制性アデノシン基質に対して炎症促進性ATPを加水分解するように作用するCD39およびCD73エクトヌクレオチダーゼ分子の発現を含む、いくつかの定義された機構によって病原性エフェクターT細胞集団を抑制することができる。実際、CD39を発現するTREG細胞は、増加した抑制機能を有し、炎症性腸疾患の解消と関連付けられている。さらに、ヒトTREG細胞の抑制機能は、CD73によって部分的に媒介される。図27Aに以下に示すように、Th2/TREG培養条件で製造されたT細胞は、TREG関連エフェクター分子CD73の発現の増加を有することができ、CD39はまた、TREG/Th2製造T細胞(図示せず)上で高度に発現された。CD39/CD73エクトヌクレオチダーゼに加えて、TREG細胞機能は、上皮リンパ球局在を指示するインテグリンであるCD103の発現とも相関している。実際、CD103およびIL-2受容体シグナル伝達は、腸粘膜における免疫耐性を維持するために協力し、さらに、CD103発現TREG細胞は、実験的慢性GVHDの改善に重要である。図27Bに以下に示すように、Th2/TREG培養条件で製造されたT細胞は、TREG関連エフェクター分子CD103の発現の増加を有し得る。
【0284】
実施例22:TREG/Th2ハイブリッド集団のCD150およびCD27/CD95発現の特徴付け
定常状態のアフェレーシス試料を、Ficoll勾配によってリンパ球について濃縮し、G-Rex培養容器に播種し、ビタミンD(0.3nM)、テムシロリムス(3.0μM)およびバシリキシマブ(30μg/mL)を含有する完全培地中でインキュベートした。この初期の脱分化期間後、T細胞を、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを用いて、3:1のビーズ対T細胞の比で共刺激し、サイトカイン(IL-4(1000IU/mL)、IL-2(10,000IU/mL)およびTGF-β(100ng/mL))を添加した。6日間の培養後、T細胞を採取し、表面マーカーについて染色し、CD4、CD8、CD150、CD27、CD95、CD45RA、CD62L、およびCCR7について多色フローサイトメトリー分析に供した。結果を図28A~Bに示す。
【0285】
TREG(RAPA-501)条件で培養したT細胞を、培養入力T細胞(「0日目」)と比較し、mTOR阻害剤なしで増殖した対照培養T細胞(「対照」)とも比較した。図28Aに示すように、RAPA-501細胞産物内に含まれるCD4+およびCD8+T細胞サブセットの両方は、培養入力T細胞と比較して、また対照培養T細胞と比較して、幹細胞マーカーCD150の発現を大幅に増加させた。図28Bに示すように、RAPA-501細胞産物は、培養入力細胞と比較して、T幹細胞メモリー(TSCM)表現型についても濃縮された。この条件で得られたT細胞がエフェクターメモリーCD45RO+であったため、対照培養はこの集団を欠いた(図示せず)。左パネル(培養入力T細胞)および右パネル(RAPA-501細胞)は、TSCMマーカーCD45RA、CD62L、およびCCR7上でゲートした後のTSCMマーカーCD95およびCD27の発現を示し、これらのTSCMマーカーの発現において同様の差がCD8+T細胞について観察された(図示せず)。
【0286】
実験モデルにおいて、養子T細胞療法の有効性は、T細胞集団の移植の成功およびインビボ持続性に依存する。重要なことに、T細胞分化状態は、インビボ持続性を指示するのに役立ち、より少ない分化細胞は持続性を増加させる。本発明者らの初期研究では、Tセントラルメモリー(TCM)表現型を発現したマウスラパマイシン耐性T細胞は、対照T細胞と比較してインビボ生着可能性が増加した。さらに、ヒトラパマイシン耐性T細胞は、異種移植片対宿主疾患のヒト間マウスモデルにおける生着も増加した。他の研究者は、Tエフェクターメモリー(TEM)集団と比較して分化が低下したT細胞が、TCMサブセット、ナイーブT細胞サブセット、および最近ではT幹細胞メモリー(TSCM)サブセットを含む、インビボ持続性を増加させ、増加したインビボ効果を媒介することを決定した。T細胞分化状態とインビボT細胞機能との間のこの関係は、TREG細胞に対して、以下のように動作可能である。(1)TCM表現型のTREG細胞は、TEM表現型のTREG細胞と比較して実験的GVHDを低減する際により効果的であった;および(2)幹細胞マーカーCD150を発現したTREG細胞は、幹細胞移植片拒絶の防止に非常に効果的であった。図28Aに以下に示すように、Th2/TREG培養条件で製造されたT細胞を、CD150マーカーの発現を含むT幹細胞サブセットと一致する減少した分化状態で細胞について濃縮した。
【0287】
実施例23:TREG/Th2ハイブリッド集団のサイトカイン分泌の特徴付け
定常状態のアフェレーシス試料を、Ficoll勾配によってリンパ球について濃縮し、G-Rex培養容器に播種し、ビタミンD(0.3nM)、テムシロリムス(3.0μM)およびバシリキシマブ(30μg/mL)を含有する完全培地中でインキュベートした。初期の脱分化期間後、T細胞を、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを用いて、3:1のビーズ対T細胞の比で共刺激し、サイトカイン(IL-4(1000IU/mL)、IL-2(10,000IU/mL)およびTGF-β(100ng/mL))を添加した。この培養は、条件「A」と称される。条件「B」は、同じ培養条件であったが、IL-4添加はなかった。条件「C」は、ラパマイシン(1μM)、IL-2(100IU/mL)、およびTGF-β(10ng/mL)の標準TREG培養条件を反映する。条件「D」は、mTOR阻害剤を含まないIFN-αの存在下で製造されたTh1型対照培養物を反映する。培養後、T細胞を採取し、抗CD3/抗CD28ビーズで刺激し、得られた上清をLuminexアッセイによってサイトカイン含有量について試験した。
【0288】
製造されたTh2/TREG細胞のサイトカイン分泌を評価することが重要であり得る。まず、細胞産物が、その後のTh2分化のためのドライバーサイトカインであるIL-4を分泌することができることが重要である。第2に、養子移植されたT細胞集団がIL-2を分泌することが可能であることが望ましく、というのも、この能力は、外因性IL-2を必要とせずにT細胞がより容易にインビボで増殖することを可能にする前駆体機能を示すためである。最後に、Th2/TREG細胞集団がTh1型またはTh17型サイトカインIFN-α、TNF-α、IL-17、およびGM-CSFの分泌を減少させることが重要である。図29が示すように、製造されたTh2/TREG細胞産物は、Th1型またはTh17型サイトカインの分泌を最小限に抑えながらIL-4およびIL-2を分泌した。
【0289】
実施例24:TREG/Th2ハイブリッド集団によるTh1/Tc1抑制の特徴付け
定常状態のアフェレーシス試料を、Ficoll勾配によってリンパ球について濃縮し、G-Rex培養容器に播種し、ビタミンD(0.3nM)、テムシロリムス(3.0μM)およびバシリキシマブ(30μg/mL)を含有する完全培地中でインキュベートした。初期の脱分化期間後、Th2/TREG細胞のエクスビボ製造のために、T細胞を、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを用いて、3:1のビーズ対T細胞の比で共刺激し、サイトカイン(IL-4(1000IU/mL)、IL-2(10,000IU/mL)およびTGF-β(100ng/mL))を添加した。並行して、T細胞をI型分極サイトカインIFN-αの存在下で培養して、エフェクターTh1/Tc1細胞を生成した。Th1/Tc1培養物をRAPA-501細胞培養物と同じドナー(自家、「AUTO」)または無関係ドナー(同種異系、「ALLO」)から生成した。エクスビボ培養後、Th1/Tc1エフェクターT細胞をトランスウェルプレートの底部チャンバーに播種し、3:1のビーズ対T細胞の比で抗CD3/抗CD28被覆ビーズで共刺激した。Th1/Tc1細胞共刺激の24時間後、RAPA-501細胞を1:1のTh1/Tc1対RAPA501の比でトランスウェルプレートの上部チャンバーに添加した。(A)サイトカイン含有量のRAPA-501調節。24時間(RAPA-501細胞を上部チャンバーに添加する前)および48時間の培養(RAPA-501細胞の添加あり、またはなしのいずれか)で、培養上清を回収し、Luminexアッセイによってサイトカイン含有量について試験した。IL-2、IFN-γ、GM-CSF、およびTNF-α含有量について、pg/ml/24時間/1×106細胞/ml単位で結果が表される。(B)PD1のTh1/Tc1細胞発現のRAPA-501細胞調節は、抗原非依存的に行われる。48時間で、24時間時点でRAPA-501細胞を添加した後、または添加なしのいずれかの後に、自家または同種異系のTh1/Tc1細胞を採取し、その後、Th1/Tc1細胞をPD1発現の評価のためのフローサイトメトリーに供した。
【0290】
RAPA-501細胞産物の開発中に、本発明者らは、観察されたT細胞抑制の分子機構を特徴付ける実験を行った。潜在的な機序を評価するための1つの方法は、トランスウェルアッセイであり、それによって、エフェクターT細胞およびRAPA-501細胞は、細胞間の接触を防止するが、サイトカインなどの小さな可溶性媒介体による細胞通信を可能にするフィルターによって分離される。図30A~Bは、RAPA-501細胞が接触に依存しない様式でエフェクターT細胞を調節することを示す(トランスウェル容器で実施される実験)。RAPA-501細胞は、T細胞受容体に依存しない方法で作用して、エフェクターT細胞のサイトカイン分泌能力を抑制した。すなわち、RAPA-501細胞を含有するトランスウェルチャンバーに共刺激ビーズを添加しなかったため、RAPA-501細胞は、IL-2、IFN-γ、GM-CSF、およびTNF-αを含む炎症性サイトカインレベルを調節するために共刺激を必要としなかった(図30A)。TREG細胞がIL-2を消費する能力は、一般に説明される現象であるが、以前の研究では、IL-2を消費するための細胞間接触の要件が特定された。したがって、RAPA-501細胞は、接触に依存しない様式で複数の炎症性サイトカインのレベルをある程度独自的に調節することができるように見える。これらの結果は、RAPA-501細胞がサイトカインの中和のための好適な候補となることを示唆する。第2に、本発明者らは、RAPA-501細胞が、接触に依存しない様式で(トランスウェル実験の使用)でエフェクターT細胞生物学の追加の態様、すなわち、エフェクターT細胞上でプログラムされた死-1(PD-1)チェックポイント分子発現の促進を調節したことを見出した。重要なことに、図30Bに示すように、RAPA-501細胞は、自家および同種異系Th1/Tc1細胞の両方でPD1発現を上方制御し、それによって、RAPA-501細胞抑制機能の1つの機序が可溶性媒介体によってTCR非依存的に発生することをさらに明らかにする。
【0291】
実施例25:TREG/Th2ハイブリッド集団によるCNSマイクログリア細胞サイトカイン分泌抑制の特徴付け
ヒトミクログリア細胞(HMC3細胞株)を最初にIFN-γ(10ng/ml;24時間)で活性化し、次にLPS(10ng/ml;3時間)で活性化し、次いで、処理したHMC3細胞を、上記のように作製したRAPA-501細胞を上部チャンバーに添加することなく(左パネル)、または添加して(右パネル)、トランスウェルの下部チャンバーに播種した(RAPA-501対HMC3の比、1:40)。RAPA-501細胞を、特許出願に記載されている方法を使用して生成し、ハイブリッドTh2/TREG表現型のT細胞を生成した。24時間後、無細胞上清を採取し、LuminexアッセイによってIL-6、IFN-γ、およびIP-10の含有量について評価した(pg/ml/1×106細胞/ml/24時間で測定したサイトカイン分泌)。結果を図31に示す。
【0292】
ミクログリア細胞は、ALSにおける炎症促進因子に発達することができるCNS常駐抗原提示細胞である。製造されたヒトTh2/TREG細胞がヒトミクログリア細胞炎症を抑制する能力は、以前、我々が知るところではなかった。これに対処するために、本発明者らは、ヒトミクログリア細胞株HMC 3を、IFN-γ中で順次培養し、続いてLPSエンドトキシンによって、炎症促進状態に誘導した。図31A~31Bが示すように、RAPA-501 Th2/TREG細胞産物を炎症促進性ミクログリア細胞に添加することは、炎症促進性サイトカインIL-6、IP-10、およびIFN-γの培養上清含量を低下させた。この実験では、観察された免疫抑制効果は、トランスウェル容器内で、1対40の非常に希釈されたTREG対炎症性ミクログリア細胞の比で発生し、それによって、RAPA-501細胞が(トランスウェル設計によって示されるように)接触に依存しない様式で、かつ高い効力(1:40のTREG対ミクログリア細胞の比によって示されるように)CNS炎症を低減することができることを示した。
【0293】
実施例26:ペントスタチン、シクロホスファミド、およびラミブジン宿主調節プラットフォームを使用するALSのiTREG細胞療法。
図32は、PCレジメンおよび全体的な治療アプローチの詳細である。PCレジメンは、示されるように、サイクル1~4にわたってペントスタチンまたはシクロホスファミドの用量を漸増させながら、2週間のサイクルで投与される(PCレジメンの合計期間は8週間)。ペントスタチンは、14日間のサイクルの1日目、または1日目および4日目のいずれかに投与され、シクロホスファミド(Cy)は、14日間のサイクルの1、2、および3日目、または1、2、3、4、および5日目のいずれかに投与される。サイクル4について、ALCが1マイクロリットル当たり1250細胞未満である場合、Cy用量は1日当たり200mgに増加する。PCレジメンの投与によって免疫枯渇および免疫抑制が実現された後、最初のiTREG細胞注入は、治療の8週目に行われる。インフラマソーム阻害剤ラミブジンを、プロトコル8週目から26週目まで150mg BIDの用量で連続投与する。
【0294】
図33は、iTREG細胞の製造に関するさらなる詳細を提供し、PCレジメン前およびPCレジメン後のアフェレーシスレジメンによるリンパ球の収集を示す。ALS患者からのリンパ球は、PCレジメンの直前または直後に行われる定常アフェレーシス(10~15リットルの収集)によって収集される。PCレジメン前の収集は、T細胞がより多く見出され、免疫抑制されないため、iTREG製造により有利であり得る。比較すると、PCレジメン後の収集は、iTREG培養物を汚染する炎症性Th1/Tc1細胞が製造前にインビボで枯渇するため、有利であり得る。ITREG製造後、製品は、注入#2、#3、および#4によって示されるように、iTREG細胞の反復投与を可能にするために、治療用量で凍結保存される。
【0295】
図34は、複数のiTREG細胞注入の戦略をさらに詳細に説明し、iTREG細胞の反復用量のそれぞれの前のPCレジメンの並びを示す。PCレジメンを、各iTREG注入の前に以下に投与する:(1)疾患の発症に寄与する炎症性Th1/Tc1細胞を枯渇させ、抑制すること、および(2)養子移入されたiTREG集団のインビボ拡大を可能にするIL-7およびIL-15などの恒常性サイトカインのインビボレベルを増加させること。PCレジメンは、1日目および4日目に2mg/mの用量のペントスタチンと、1~5日目に1日100mgの一定用量のシクロホスファミドとを組み合わせたものからなる。2日間の休憩後、iTREG細胞を投与する(レジメンの8日目)。インフラマソーム阻害剤ラミブジンは、iTREG細胞療法中に炎症駆動を制限するために、8週目以降継続的に投与される。
【0296】
図35は、iTREG細胞で治療された患者のモニタリングに関するさらなる詳細を提供し、示されるように、ALSのモニタリングが、患者報告ALSFRS-Rおよび臨床医報告Appelスコアの両方によっておよそ毎月行われることを示す。ALS患者の炎症状態を監視するための免疫ラボは、示されるように、およそ毎月評価される。
【0297】
実施例27:入力T細胞TCRレパートリーを有益に改変させるための、アフェレーシスによるリンパ球収集前の選択抗TNF-α試薬の使用
図36A~36Bは、TNFR1発現Th1型細胞を促進するTNF-αの血清無細胞形態を優先的に阻害するエタネルセプトによる抗TNF-α療法が、T細胞受容体の上方制御および下方制御における広範な変化と関連していることを示す。図36~36Bは、TNF-α阻害剤、エタネルセプトによる治療後のT細胞TCR特異性の広範な上下制御を検出するためのRNAに基づくT細胞受容体配列決定の使用を示す。図36~36Bでは、RNAは、エタネルセプト療法による治療前および治療後のALS患者から末梢血単核細胞から単離された。Rosati E、Dowds CM、Liaskou E、Henriksen EKK、Karlsen TH、Franke A.Overview of methodologies for T-cell receptor repertoire analysis.BMC Biotechnol.2017;17(1):61によって以前記載されているように、RNAをTCRレパートリープロファイリングに供した。図36Aで示されるように、約25%のTCR特異性が治療後試料中で上方制御されていたことが実証される(赤色で示されるように);著しく対照的に、約25%のTCR特異性が治療後試料中で下方制御されていた(青色で示されるように)。図36Bに示されるように、いくつかのT細胞クローンが、エタネルセプト前の0.01の頻度(アッセイの検出限界付近)から、247~486の範囲の治療後の値に増加したため、エタネルセプト療法は、顕著なT細胞クローン拡張をもたらし、それによって4-logを超えるT細胞拡張と一致した。図36Bに示されるように、エタネルセプト療法は、いくつかのT細胞クローンが、259~598の前エタネルセプトの頻度から0.01の治療後の値に減少し、それによって、4-logを超えるT細胞クローン収縮と一致するため、顕著なT細胞クローン収縮をもたらした。これらの観察は、対象を、エタネルセプトまたはTNF-αの血清非細胞形態(モノクローナル抗体、アダリムマブなど)を優先的に阻害する任意の他の抗TNF-α治療薬で予め治療することを利用して、抗原特異的にTh1型表現型のT細胞から離れるようにT細胞受容体レパートリーをシフトさせることができ、それによって、TREG型表現型のT細胞を豊富にすることを示す。
【0298】
実施例28:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の発現のために富化された細胞産物としてのTREG-Th2ハイブリッド集団の特徴付け。
図37は、記載の条件に従って製造されたハイブリッドTREG-Th2細胞が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによる以下の細胞表面分子:CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4の発現の増加を有することを示す。図37において、IL-2、TGF-β、およびIL-4を含有するハイブリッドTREG/Th2培地において、T細胞分化の初期相、続いて再分化を使用して、以前詳述された方法によって、iTREG/Th2ハイブリッド集団を生成した。細胞を回収し、関連する分子、すなわち、CD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4のCD4およびCD8T細胞発現の評価のためのフローサイトメトリーに供し、Th1/Tc1分極を評価する3つの別個の対照条件と比較した。
【0299】
図37が例示するように、iTREG/Th2ハイブリッド細胞産物は、対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%、より好ましくは50%高いレベルのCD25、CD27、2B4、BTLA、およびCTLA4を発現するCD4+およびCD8+T細胞を有する。
【0300】
IL-2受容体であるCD25は、自己免疫、特にCD8+T細胞駆動応答を管理するTREG細胞の能力にとって重要である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCD25の発現は、望ましい特徴である。
【0301】
REG細胞上の発現が増加した共刺激分子であるCD27は、TREGの阻害機能に寄与することが示されている。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCD27の発現は、望ましい特徴である。
【0302】
2B4(CD244)は、最近、糖分解および細胞分裂の減衰によってCD8T細胞応答を阻害することが示される。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上での2B4の発現は、望ましい特徴である。
【0303】
BTLA(CD272)は共阻害受容体であり、BTLAとヘルペスウイルス進入媒介体HVEMとのライゲーションは、TREG細胞誘導およびエフェクター免疫応答の阻害を促進する。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのBTLAの発現は、望ましい特徴である。
【0304】
CTLA4は、最近マラリア感染への免疫を制限する能力によって証明されるように、TREG細胞の重要なエフェクター分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのCTLA4の発現は、望ましい特徴である。
【0305】
実施例29:TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の発現のために富化された細胞産物としてのTREG-Th2ハイブリッド集団の特徴付け。
図38は、記載の条件に従って製造されたハイブリッドTREG-Th2細胞が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによる以下の細胞表面分子:TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の分子の増加したレベルを発現するT細胞の生成をもたらすことを示す。図38において、iTREG/Th2ハイブリッド集団を、T細胞分化の初期相、続いて、IL-2、TGF-β、およびIL-4を含有する培地における再分化を使用して、以前詳述された方法によって生成した。iTREG/Th2製造の11日目に、細胞を採取し、CD4およびCD8T細胞発現の関連する分子、すなわちTIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の評価のためにフローサイトメトリーに供し、Th1/Tc1分極を評価する3つの別個の対照条件と比較した。
【0306】
図38が例示するように、iTREG/Th2ハイブリッド細胞産物は、対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%、より好ましくは50%高いレベルのTIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40を発現するCD4+およびCD8+T細胞を有する。
【0307】
TIGITは、例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫における免疫抑制環境への寄与を含む、制御性T細胞機能と関連する細胞表面共阻害性受容体分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのTIGITの発現は、望ましい特徴である。
【0308】
TIM3は、例えば、頭頸部扁平上皮細胞癌に浸潤するT細胞の抑制を含む、TREG細胞の阻害効果を媒介する共阻害受容体である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのTIM3の発現は、望ましい特徴である。
【0309】
ICOSは、中枢神経系における免疫反応性の制御のための制御性T細胞による免疫抑制を維持するのに役立つと最近決定された共刺激分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのICOSの発現は、望ましい特徴である。
【0310】
LAIR1(CD305)は、活性化されたエフェクターメモリーT細胞の抑制を含む、複数の工程で炎症を遮断することができる多面的阻害分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのLAIR1の発現は、望ましい特徴である。
【0311】
OX40は共刺激分子である。したがって、iTREG/Th2製造細胞産物上でのOX40の発現は、望ましい特徴である。
【0312】
本開示に詳述される TREG/Th2方法に従って製造されたT細胞産物の表現型特徴付けの大部分は、培養の終了時に確認することができる。しかしながら、T細胞産物は冷凍保存され得ること、したがって、解凍後の状態におけるT細胞の表現型特徴付けが、対象に養子移入される実際の産物を反映することに留意することが重要である。解凍後の状態のTREG/Th2細胞は、対照Th1/Tc1細胞と比較して以下によって特徴付けることができる。(a)フローサイトメトリーによるCD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、およびOX40の発現の増加;(b)Luminexサイトカイン分泌分析によるIFN-gおよびTNF-aの低減ならびにIL-4の分泌の増加;ならびに(c)T細胞運命転写因子の発現の変化、すなわち、TBETの低減ならびにFOXP3およびGATA3の増加。
【0313】
iTREG産生のためのアフェレーシス。
ペントスタチン/シクロホスファミドレジメンによる治療の前に、対象はリンパ球アフェレーシス手順を受ける。この末梢リンパ球収集の目的は、養子T細胞療法のためのiTREG細胞を製造することである。
【0314】
アフェレーシスは、CS-3000または同等の機械上の10~15リットルの収集で構成される。アフェレーシス産物は、プロトコルスポンサー、Rapa Therapeuticsに送付され、iTREG細胞は、特殊培養条件を使用してエクスビボ培養によって製造される。
【0315】
研究目的
第1の目的ALS患者の炎症性サブセットにおけるPCレジメンおよび維持ラミブジン療法との関連での、iTREG細胞注入の安全性を決定する。
【0316】
第2の目的ITREG療法がALS患者の炎症マーカーを阻害する能力を決定する。予備的な方法で、患者報告および臨床医報告のALSスコアに対するiTREG療法の効果を決定する。
【0317】
参加資格の基準
World Federation of Neurology El Escorial Criteria(世界神経学会、エル・エスコリアル診断基準)に従って、臨床検査室支援により孤発性または家族性ALSの疑いがある、可能性がある、または発症が確定されたとして診断された、孤発性または家族性ALSを有する対象。年齢、18歳以上75歳以下カルノフスキー・パフォーマンス・ステータスが70%以上であること。MUGAまたは2D心エコー図による駆出分画率が医療機関の正常限界内であること。血清クレアチニンが2.0mg/dl以下である。ASTおよびALTは、正常値の上限の3倍以下である。ビリルビンが1.5以下(ギルバート病に起因する場合を除く)。肺機能検査で50%以上の補正DLCOである。
【0318】
二次試験エンドポイントを評価するために、対象は、スクリーニング間隔中に少なくとも2つの別個の血液試料を評価した後、末梢血液細胞集団における炎症マーカーの証拠を有さなければならない。潜在的な患者の炎症状態を評価するために使用されるアッセイには、フローサイトメトリー、サイトカイン分泌解析、およびウェスタンブロット解析による細胞シグナル伝達事象が含まれる。他の試験は、運動ニューロンタンパク質またはALS関連タンパク質凝集体などの潜在的な自己抗原に対するT細胞受容体レパートリーの試験またはインビトロ感作を含み得る。サイトカイン分泌は、刺激なしで(自律型サイトカイン分泌)、および抗CD3/抗CD28共刺激;LPSエンドトキシン曝露;CD40リガンド曝露;アデノシンA2およびA3受容体アゴニズムおよびアンタゴニズム;T細胞(PD1、TIM-3)および単球(CD47、CD200)チェックポイント阻害;ならびにRNA配列決定によるT細胞受容体クローン性の評価を含むが、これらに限定されない様々なモダリティの刺激を用いて評価される。潜在的な対象が試験に含めるのに十分な炎症を有すると見なされるかどうかの決定は、これらの試験の全てのマトリックス分析に基づいて行われ、その決定は、免疫アッセイが実施されるRapa Therapeutics Labの医療ディレクターと協議して試験PIまたはリードアソシエイト研究者によって行われる。
【0319】
除外基準には、リルゾール(Rilutek(登録商標))またはエダラボン(Radicava(登録商標))療法を積極的に服用している患者が含まれる(1ヶ月以上安定した用量で服用している場合を除く)。以下はまた、除外基準を表す:プロトコルの30日以内に任意の治験介入を受けたこと、予測の60%未満の肺バイタルキャパシティ測定、能動的非制御性感染、3つ以下の薬剤によって十分に制御されていない高血圧、登録後6ヶ月以内に脳血管事故の病歴、登録後6ヶ月以内に肺塞栓の病歴の記録、または臨床的に有意な心臓病理(登録前6ヶ月以内に心筋梗塞によって定義されるような、NYHYに従ったクラスIIIもしくはIVの心不全、制御不能な狭心症、重度の制御不能な心室不整脈、または急性虚血もしくは能動伝導系異常の心電図的証拠)。冠動脈バイパスグラフトまたは血管形成術の既往がある患者は、心臓学的評価を受け、症例ごとに検討される。HIV、B型肝炎、またはC型肝炎について血清陽性の患者は除外される。妊娠していることがわかっている、または妊娠が判明した患者は除外され、避妊を実施したくない妊娠年齢の患者も除外される。患者は、PIの裁量により、または参加を許可することが許容できない医学的または精神的リスクとなると見なされる場合は除外されることがある。
【0320】
PCレジメンによるALS 患者の治療
8週間のPCレジメンの目的は、ALS疾患の発症に寄与するTh1/Tc1細胞を部分的に枯渇させ、抑制することである。加えて、PCレジメンの直後にiTREG細胞注入が続く8週目以降の時点で、PCレジメンは、T細胞恒常性サイトカイン、特にIL-7およびIL-15の増加の創出を急性にもたらすことも意図される。
【0321】
PCレジメンは、14日間のサイクルとして投与されるが、ロジスティック障害が発生した場合、または任意の有害事象を評価および/または治療するために追加の時間が必要な場合、サイクル間の最大2週間の追加の遅延が許容される場合がある。サイクル#1について、ペントスタチン(1日目に1mg/m i.v.)は、シクロホスファミド(1、2、および3日目に1日100mg p.o.)と組み合わせて投与される。用量制限毒性が発生していない限り投与されるサイクル#2は、ペントスタチンの増加した用量(1日目に2mg/m i.v.)と、同じ用量のシクロホスファミド(1、2、および3日目に1日100mg p.o.)との組み合わせからなる。用量制限毒性が発生しておらず、かつ絶対リンパ球数が1マイクロリットル当たり750細胞を超える限り投与されるサイクル#3および#4は、5日間のシクロホスファミド(1、2、3、4、および5日目に1日100mg p.o.)と組み合わせた、2回用量のペントスタチン(1日目および4日目に2mg/m i.v.)からなる。
【0322】
ALC数がサイクル#3またはサイクル#4の前に1マイクロリットル当たり750細胞以下である場合、それ以上のサイクルは投与されず、患者はラミブジンによる維持療法に進む。サイクル#4の前に、絶対リンパ球数が1マイクロリットル当たり1250細胞を超える場合、シクロホスファミドの用量を倍増させる(1、2、3、4、および5日目に、1日に200mgのp.o.)。
【0323】
ペントスタチン投与に関する具体的な内容:(a)調製:ペントスタチンは、バイアル取扱説明書に従って、2mg/mlの濃度に、調剤部門によって再構成される。次に、適切な患者特異的用量を0.9%の塩化ナトリウムに添加して、合計体積50mLを構成する;(b)用量および投与:ペントスタチンの投与量は、腎機能障害について調整される(以下を参照);ペントスタチンの各用量は、30~60分にわたって静脈内投与される;(c)前投薬および抗嘔吐療法:注入の前に、30~60分にわたって0.9%塩化ナトリウムの1リットルを注入する。ペントスタチンは、催吐性であり得る。抗嘔吐レジメンガイドラインは以下の通りである(PIの裁量によりバリエーションは許容される):(1)ペントスタチンの各用量の60分前に静脈内注入によるデキサメタゾン12mg;(2)加えて、嘔吐対照のために必要であれば、各サイクルの最初の5日間に経口デキサメタゾンを投与してもよい;(3)オンダンセトロンは、ペントスタチンの各用量の60分前に静脈内注入による8mgの用量で投与してもよい;(4)残りの治療のために、オンダンセトロンは、サイクル中に必要であれば1日目から14日目の間、12時間ごとに8mg(錠剤)の経口用量で投与してもよい;ならびに(5)アプレピタントは、制御されていない吐き気および嘔吐を有する患者において、必要に応じて、抗嘔吐レジメンに添加してもよい。
【0324】
ペントスタチン用量低減に関連する仕様:ペントスタチンおよびCrClの各予定用量を計算する前に、血清クレアチニンレベルを得る。CrClは、24時間尿によって得られるか、またはCockcroft-Gault式によって計算される。対象がペントスタチンおよびシクロホスファミド療法中にクレアチニンレベルの上昇を経験する場合、その後の投与は、以下のように修正される:CrCl≧60(mL/分/1.73m)について:意図されるペントスタチン用量の100%を投与する(サイクル#1、#2についてはペントスタチン1mg/m;サイクル#3、#4についてはペントスタチン2mg/m);30≦CrCl<60について:意図されるペントスタチン用量の50%を投与する(サイクル#1、#2についてはペントスタチン0.5mg/m;サイクル#3、#4についてはペントスタチン1mg/m);CrCl<30について:ペントスタチンを保持する。
【0325】
ペントスタチンは、神経学的毒性(発作、昏睡)と関連することはほとんどないため、CNS毒性の評価に特に注意が必要である。PCレジメンが、グレード2以上の重篤度の任意の新しい神経学的毒性または既存の任意の神経学的毒性の悪化に関連する場合、施設PIに連絡して、さらなるペントスタチン療法およびさらなるプロトコル療法が許可されるかどうかを話し合う必要がある。
【0326】
シクロホスファミド投与の具体的な態様:水和。シクロホスファミドは膀胱炎を引き起こす可能性があるため、患者は十分な水分補給を維持することが重要である。最低限、尿に透明な色を保つために、患者は少なくとも1日に2~4リットルの液体を飲む必要がある。また、睡眠前に膀胱を空にすることも特に重要である。経口シクロホスファミドは、1、2、および3日目(サイクル#1および#2の場合)、または1、2、3、4、および5日目(サイクル#3および#4の場合)に、1日100mgの固定用量で投与される。しかしながら、サイクル#4の前に(1マイクロリットル当たり1250細胞を超えるALCによって定義されるように)ALCの実質的な低減を有さない患者に関して、サイクル#4のシクロホスファミド用量は、1、2、3、4、および5日目にわたって、1日当たり200mgに増加する。患者が経口療法に耐えることができない場合、シクロホスファミドのIV注入が許可される。IV用量は、意図される経口用量と同じである。IV注入の場合、シクロホスファミドは、バイアル取扱説明書に従って、HUMC調剤部門によって、20mg/mlの濃度に再構成される。次に、適切な用量(100mgまたは200mg)をD5Wまたは0.9%の塩化ナトリウム100ml中で希釈し、30分間にわたって静脈内に注入する。
【0327】
PCサイクルが好中球の絶対数の大幅な減少をもたらすことは予想されない。ただし、次のサイクルの直前の決定時にANCが特定の値を下回る場合、シクロホスファミドの用量は以下のように調整される:(1)1マイクロリットル当たり1000個以上の細胞のANC値については、意図される用量の100%が投与される;(2)1マイクロリットル当たり500~999細胞のANC値については、意図される用量の50%が投与される;および(3)ANC値が1マイクロリットル当たり500細胞である場合、シクロホスファミドは投与されない。加えて、1マイクロリットル当たり500細胞未満のANC値について、G-CSF療法を開始する決定は、PIによって検討され得る。
【0328】
8週間のPCレジメンの定量的目標は、ALC値を1マイクロリットル当たり約750細胞に低減することである。疾患の病因に寄与するT細胞のこの程度の枯渇および抑制は、神経炎症プロセスを制御するためにiTREG細胞の移植および生物学的活性を成功させることを可能にすると、本発明者らは仮説を立てる。しかしながら、潜在的には、宿主Th1/Tc1細胞におけるより厳しい低減が、iTREG細胞がそれらの完全な抑制機能を発揮することを可能にするために必要とされ得る。そのような場合、PCレジメンは、iTREG細胞療法の前に、1マイクロリットル当たり500、250、または0のALCなどのより低いALC値を標的にするために強化または延長され得る。他方では、潜在的には、iTREG細胞療法が非常に有効であり、1マイクロリットル当たり750細胞のALC値さえもあまりにも厳しいと見なされ得る。そのような場合、PCレジメンは、1マイクロリットル当たり1000、1250、または1500細胞などのより高いALC値を標的にするために、非集中化または持続時間の短縮が可能である。
【0329】
ラミブジン維持療法に関する実施
PCレジメンが完了したら、患者はラミブジンによる維持療法に進み、これはプロトコルの6ヶ月目の試験終了日まで続く。ラミブジン(経口錠剤)を150mg p.o BIDの用量で投与する。推定クレアチニンクリアランスが50ml/分未満に減少した場合、ラムビジンを1日1回の150mg p.oの用量に減少させ、ラミブジンを30ml/分未満の推定クレアチニンクリアランス値のために中止する。
【0330】
先に述べたように、ラミブジンの述べられた目的は、ALS病原体における近位事象を表すNLRP3インフラマソームを下方制御することである。したがって、本発明者らは、他のインフラマソーム阻害剤が当社のプロトコルプラットフォームでの使用に好適であるか、またはおそらく好ましいであろうことを想定している。例えば、潜在的に改善されたリスク:利益比を有するインフラマソーム阻害剤が開発されている。
【0331】
ラミブジンは、それらの作用機序は実際には補完的であるため、iTREG細胞療法に対して拮抗するとは予測されないことに留意することが重要である。この補完的な対照は、ラパマイシン(多種多様なT細胞応答を阻害することができる)およびIL-2(インビボでのTREG増殖を促進する点で狭い治療ウィンドウを有し、炎症性T細胞集団を促進することができる)などのTREG細胞療法のために提案される他の介入とは対照的である。
【0332】
支持療法
好中球減少症の場合、患者に全身性抗生物質予防薬を投与する必要はない。抗生物質を開始する決定は、プロトコルPIに依存する。
【0333】
全ての患者は、プロトコル療法の開始時から試験終了まで、アシクロビル(またはそのプロドラッグのバラシクロビル)を用いたHSVまたはVZVの経口抗ウイルス予防薬を投与され得る。
【0334】
全ての患者は、プロトコル療法の開始時から試験終了まで、経口抗真菌予防(第1選択薬:フルコナゾール)を投与され得る。プロトコルPIの承認に従って、代替薬が許可される。
【0335】
全ての患者は、治験参加時に(治験終了時の来院まで続く)、ニューモシスチスPJPの予防を開始する。患者は、経口コトリモキサゾール(トリメトプリム160mg/スルファメトキサゾール800mg)を、月曜日、水曜日、金曜日に1錠を経口投与される。プロトコルPIの承認に従って、代替のスケジュールまたは代替薬が許可される。
【0336】
ITREG細胞を用いるALS患者の治療:製品の製造および表現型
以前詳述したように、iTREG細胞産物は、PCレジメンの前の試験エントリの時点または8週間のPCレジメンの完了の時点のいずれかでアフェレーシスによって収集される自家T細胞から製造される。各アフェレーシス収集物は、固有の利点を有し得る:初期の収集物は、より高いT細胞収率を有し、一方、PC後の収集物は、Th1/Tc1細胞が比較的枯渇したT細胞集団から構成される。
【0337】
iTREG細胞は、炎症性表現型から抗炎症性TREG表現型へのエフェクターT細胞変換の原理に基づいて製造されるため、CD4、CD25、およびCD127の低発現を典型的に特徴とする比較的希少なnTREG集団を得るためにモノクローナル抗体/カラム選択方法またはフローサイトメトリーのいずれかを必要とする高価で手間のかかる天然TREG精製工程は必要ないであろう。加えて、CD8REG細胞が免疫抑制を媒介することが示されており、iTREG細胞療法に増加した多様性を提供する点で有益であり得るため、iTREG細胞集団からCD8T細胞を除去する必要はないであろう。
【0338】
CD62LおよびCCR7などの細胞表面マーカーの発現に基づいてセントラルメモリー型であると定義され得る限られた分化状態のTREG細胞が、インビボ調節機能を増加させたことが示されている。他方では、より分化したエフェクターメモリー状態のTREG細胞取得は、IL-10、CTLA-4などの抑制機能を媒介する分子、エクトヌクレオチダーゼ分子CD39およびCD73、ならびにパーフォリンおよびfasリガンドなどの細胞溶解分子などの上方制御を可能にすることも知られている。これらのデータは、セントラルおよびエフェクターメモリーサブセットの両方の集団を含有するiTREG細胞産物を注入することが有益であることを示し、したがって、本発明者らが利用するiTreg細胞産物は、両方のサブセットからの表現を有することを示す。
【0339】
加えて、iTREG細胞は、制御性T細胞分化プログラムを指示する転写因子であるFoxP3を発現する必要がある。さらに、FoxP3発現および結果として生じる制御機能が経時的に悪化し得ることが示されているため、iTREG細胞産物は、培養物中で長期間にわたって安定したFoxP3発現を有する必要がある。
【0340】
さらに、FoxP3は、正真正銘の炎症性T細胞サブセットによって一過性に発現することができるため、FoxP3単独では、制御性T細胞表現型の同定に十分ではないことがヒトにおいて示されている。したがって、FoxP3を発現するが、Th1/Tc1型転写因子TBETまたはTh1型サイトカインIL-2またはIFN-γなどの炎症性T細胞サブセットに関連する分子の共発現も比較的欠如しているiTREG細胞産物を製造することが重要である。
【0341】
最後に、iTREG細胞産物が制御性表現型から炎症表現型への分化可塑性の能力を低下させることが重要である。すなわち、TREG細胞は、それらの抑制表現型において比較的不安定であり得、これは、実際に神経変性疾患の媒介に寄与し得る炎症性T細胞サブセットへの形質転換をもたらし得ることが十分に文書で説明されている。したがって、iTREG細胞産物は、FoxP3を安定的に発現し、Th1/Tc1サブセットへの変換の減少した傾向も示す必要がある。Th1型サブセットへのTREG細胞分化可塑性に対するさらなる保護手段として、本発明者らは、任意のかかる分化がTh2型系統に向けられるように、意図的に、IL-4をiTREG細胞製造プロセスに組み込む。ここで、Th2型系統は、TREG細胞の維持およびTREG細胞抑制機能の重要性があると思われ、TREG細胞のデフォルト経路として説明されており、ALSの設定において抗炎症効果を媒介することができる。制御性T細胞のTh2様状態の潜在的に有益な役割についてのこの証拠にもかかわらず、TREG細胞療法の製造方法には、培養中に外因性IL-4を意図的に添加することが含まれていない(TREG製造の最近の実施例に例証されるように)。
【0342】
製造の最後に、iTREG細胞産物を、治療細胞用量(1~5×10細胞/kg)で少なくとも4つの単回使用アリコートに凍結保存する。
【0343】
ITREG細胞を用いるALS患者の治療:TREG細胞集団の組み合わせ
ITREG細胞集団を、レシピエント体重1kg当たり1~5×10細胞の用量で注入する。以前の研究と比較して相対的に低い、この用量のTREG細胞療法は、いくつかの因子によって促進される:PCレジメンは、iTREG細胞の生着に十分な免疫学的空間を提供する;iTREG細胞は、養子移植後の細胞持続性に関連する記憶プロファイルを発現する;およびiTREG細胞産物は、少なくとも4つの臨床的に関連する治療用量に凍結保存され、それによって複数の治療サイクルを可能にする。
【0344】
以前詳述したように、iTREG細胞産物は、多様なメモリー分化状態(セントラルメモリー[CM]プラスエフェクターメモリー[EM])を含有し、それにより、神経炎症の長期制御および即時制御の両方を可能にする。そのようなセントラルメモリー集団とエフェクターメモリー集団の比率を、臨床状況に応じて最適な結果のために制御することが可能であり、すなわち、臨床パラメーターに基づいて、CM:EM細胞のiTREG分布は、1:1、3:1、10:1、1:3、または1:10であり得る。
【0345】
同様に、臨床状況に応じて、CD4iTREG細胞対CD8iTREG細胞の比を制御して治療効果を向上させることが可能であろう。
【0346】
最後に、iTREGおよびnTREG細胞は異なるT細胞受容体レパートリーを発現し、したがって免疫抑制を媒介する点で補完的であり得るため、本発明者らは、iTREG細胞を使用する最適な療法がnTREG細胞の共投与によって達成され得ることを想定する。
【0347】
ITREG細胞を用いるALS患者の治療:薬剤との併用
ITREG細胞療法は、PCレジメンの免疫調節効果およびラミブジンのインフラマソーム阻害効果を含むプラットフォームと組み合わせたときに、神経炎症を制御するのに十分であり得る。
【0348】
しかしながら、本発明者らは、プラットフォームの変更によってiTREG細胞療法が最適化される可能性があることを想定している。例として限定されるものではないが、療法は、PCレジメンの強度を変更すること、ペントスタチンと相乗効果を発揮するために別の薬剤でシクロホスファミドを置換すること、またはPCレジメンに第3の成分を添加すること、例えば、抗TNF療法後の低用量IL-2療法を添加すること、によって最適化することができ、これらは、本発明者らの推論によれば、インビボでTREG細胞を予測可能に増加させる。例として限定されるものではないが、低用量IL-2療法は、Pham MN、von Herrath MG、Vela JL.Antigen-Specific Regulatory T Cells and Low Dose of IL-2 in Treatment of Type 1 Diabetes.Frontiers in Immunology.2015;6:651に記載されている。
【0349】
さらに、本発明者らは、ラミブジンが、最近合成された分子と同様のより強力またはより特異的なインフラマソーム阻害剤で置き換えられ得ることが想定される。
【0350】
最終的に、ALSにおける炎症のための駆動は、誤って折り畳まれたRNA要素の蓄積および不十分なオートファジーなどの、より近位の事象によって開始される。この点で、オートファジーを促進することができる薬剤、特にラパマイシンをALS療法に利用する根拠がある。しかしながら、ALSの治療のためのラパマイシンの臨床試験は現在開始されたばかりに過ぎず(ClinicalTrials.gov 識別子:NCT03359538)、さらに、このプロトコルは、ラパマイシン(実質的な毒性と関連付けられ得る)、一定用量のラパマイシン(患者間の薬物変動性の大きさをもたらし得る)、および比較的低い用量のラパマイシン(mTOR経路の強力な阻害および結果としてのオートファジーの促進に必要な高い薬物レベルを保証しない)の連続療法を評価している。これらの制限を回避するために、本発明者らは、iTREG細胞療法とラパマイシンを組み合わせて、以下のパラメーターを使用してオートファジーを促進する:薬物毒性を制限し、iTREG細胞のラパマイシン阻害の可能性を制限するための断続的なラパマイシン療法の使用(例として、mTOR阻害療法で1週間、mTOR療法で3週間の回復を加えたが、これに限定されない);mTOR経路のより一貫した阻害のための均質な薬物レベルを確保するためのラパマイシンレベルの血清検査と組み合わせた、ラパマイシンの負荷用量を含む、ラパマイシンの可変投与の使用;および約5~12ng/mlの典型的な標的に優先して30ng/mlの血清ラパマイシンレベルを達成するための、高用量ラパマイシン療法の使用。Mossoba ME,Halverson DC,Kurlander R,et al.High-Dose Sirolimus And Immune Selective Pentostatin Plus Cyclophosphamide Conditioning Yields Stable Mixed Chimerism and Insufficient Graft-Versus-Tumor Responses.Clinical cancer research.2015;21(19):4312-4320を参照されたい。
【0351】
さらに、ラパマイシン療法は、中枢神経系への薬物の浸透が不十分であるため、神経変性疾患におけるオートファジーの促進には最適ではない可能性がある。この点で、ラパマイシン類似体テムシロリムスによる静脈内療法でさえ、脳脊髄液中に薬物の有意なレベルをもたらさなかった。この制限を克服するために、本発明者らは、神経変性疾患の状況下でオートファジーを最適に促進するためにmTOR阻害剤の一貫したCSF薬物レベルを達成するために、リソソーム蓄積疾患の治療に利用されるのと同様の方法で、留置されたオンマヤリザーバーを通じてテムシロリムスを投与することを想定する。
【0352】
ITREG細胞を用いるALS患者の治療:免疫モニタリング
ALSのiTREG細胞療法の文脈において、疾患に関連する神経炎症経路を調節するその能力の観点から、細胞療法の成功を定量化することが重要であろう。つまり、神経変性疾患の臨床経過のモニタリングは、患者コホート全体の疾患進行における大きな変動性を考慮すると不十分である。神経炎症を最適に治療する能力は、様々な薬理学的薬剤との組み合わせを含む、iTREG細胞の複数回の注入を必要とするであろう。したがって、免疫バイオマーカーを利用して治療決定の指導を支援することが重要であろう。
【0353】
ITREG細胞注入および関連薬理剤の反復投与に関する治療決定は、本発明者らが開発した末梢血単核細胞の専門的な試験に基づく。これらの試験は、炎症性モニタリングに関連するいくつかの重要な問題に対処し、これには、自発的サイトカイン測定;サイトカイン測定におけるT細胞および単球の協調性;サイトカイン分泌のマスキング解除における組換えヒトCD40リガンド、T細胞チェックポイント阻害剤経路、および単球チェックポイント経路の役割;ウェスタンブロットによるタンパク質定量化などの様々な技術によるインフラマソーム活性化の評価;炎症性事象の指標としての末梢T細胞のアデノシン受容体生物学の評価;Th1関連分子TBET、IL-2、またはIFN-γとのFoxP3転写因子共発現を評価するためのフローサイトメトリーの使用;RNA配列決定によるT細胞受容体レパートリーの特徴付け;ならびに疾患発症中に発生するタンパク質凝集体などの潜在的な神経自己抗原に対する抗原特異的T細胞応答の検出が含まれる。
【0354】
プロトコル評価
医師または中級プロバイダーによる臨床評価は、14日間のサイクルが意図されるPCレジメンの各サイクルの1日目に実施される。患者は、14日間のPCサイクル中(理想的には、サイクルの8日目前後)に1回、現地のプロバイダーによって診察される。これらの来院では、差異的かつ完全な代謝パネルを有するCBC(完全な代謝パネルは、典型的には、電解質、クレアチニン、肝臓トランスアミナーゼ、およびビリルビンを含む約14の試験を含む;使用される特定のパネルは、プロトコルに必須ではない)が得られ、ラボ結果がプロトコル研究者に送付される。
【0355】
PCレジメンを含むインターバルの完了時(約2ヶ月目)、患者は、3、4、5、および6ヶ月目に毎月診察され、6ヶ月目の来院は、試験終了の来院を表す。これらの臨床評価の時点で実施される試験には以下が含まれる:(1)暫定的な病歴および身体検査;(2)差異的および血小板数を有するCBC;(3)完全な代謝パネル;ならびに(4)免疫サブセット列挙(TBNKパネル)。
【0356】
研究の免疫パラメーターを監視するために、一元的な監視とより深い分析を可能にするために、末梢血試料がRapa Therapeuticsに送られる。血液試料は、Rapa Therapeuticsに送られた上部緑色のヘパリン化チューブ(細胞アッセイ用)中の30mlと、上部赤色のチューブ(血清アッセイ用)中の5mlからなる。
【0357】
Rapa Therapeuticsに送られた同じ試料を使用して、本発明者らは、RNA発現、上清/ルミネックスアッセイ、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットによるリン酸化分析による細胞シグナル伝達事象によって測定される炎症促進性または抗炎症性サイトカインまたは細胞サブセットに対するPCレジメンおよびラミブジン維持療法の効果を調査する。
【0358】
血清は、ALSの潜在的なバイオマーカーについて評価される。例として、Beach TG.A Review of Biomarkers for Neurodegenerative Disease:Will They Swing Us Across the Valley? Neurology and Therapy.2017;6(Suppl 1):5-13に記載されるバイオマーカーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0359】
本発明者らは、患者のTCRレパートリーを特徴付け、治療介入がレパートリーに影響を与えるかどうかを評価する。
【0360】
インビトロ研究は、「免疫特性評価研究」の一般カテゴリに該当する。これらは、マルチパラメーターFACS解析による異なる細胞サブセットの分離、またはその後の特徴付けによる磁性ビーズによる分離に焦点を当てる。具体的には、末梢血単核細胞(PBMC)を、造血系統、免疫機能サブセット、サイトカイン産生、および活性化状態の指標となるマーカーの発現についてフローサイトメトリーによって分析する。細胞サブセットは、T細胞受容体レパートリー多様性について分析される。細胞は、Tリンパ球または単球機能の異なる経路を活性化することが知られている特定の抗原および有糸分裂原を含む多数の異なる刺激でインビトロで活性化され得る。アッセイには、T細胞増殖、サイトカイン産生、および遺伝子発現が含まれ得る。進行中のデータ分析に使用される特定のアッセイは、研究目的の変更を構成することなく、研究過程中に現場の技術および知識が進化するにつれて修正、削除、または置き換えられる。
【0361】
応答基準
患者報告のALSFS-Rスコアおよび臨床医報告のAppelスコアは、上記のように、様々な時点で測定される。
【0362】
毒性基準
毒性は、NCIの有害事象共通用語基準(CTCAE)に従って等級付けされる(http://ctep.info.nih.govから入手可能)。CTCAEバージョン4.0のコピーは、CTEPホームページからダウンロードできる。試験に関与する全ての治療領域および担当者は、CTCAEバージョン4.0のコピーにアクセスできる必要がある。
【0363】
試験薬(ペントスタチン、シクロホスファミド、ラミブジン)とおそらくまたは間違いなく関連する属性を有する任意のグレード4または5の毒性(CTCAEバージョン4.0)は、用量制限毒性(DLT)と見なされる。以下の毒性:生化学的グレード4の毒性(腎臓および肝臓値を除く)、グレード4の嘔吐、グレード4の発熱、および7日以内に解消する感染に関連するグレード4の毒性、はDLTとはみなされない。
【0364】
統計上の考慮事項
この研究デザインには、ペントスタチンおよびシクロホスファミドレジメンの安全性とラミブジン療法(プラットフォーム)の維持を評価するための標準的な3+3方法が組み込まれている。最初の3人の患者において、ペントスタチン/シクロホスファミドレジメンの完了を通じてDLTを発症する患者がいない場合、レジメンは、コホートを合計n=10人の患者に拡大するために安全であると判定される。他方では、最初の患者の3人のうち1人がDLTを発症した場合、増加分は、合計n=6人の患者に増加となる。そのような場合、最初の6人の患者のうち1人以下がDLTを発症する場合、コホート内のn=10の数への増加に進めることができる。
【0365】
このプラットフォームが正常に開発されると、本発明者らは、iTREG細胞注入の安全性と潜在的な有効性を評価する。最初に、パイロット試験を実施して、疾患に関連する神経炎症経路を阻害するiTREG細胞の複数回注入の能力を評価する。
【0366】
神経変性に関連するバイオマーカーを効果的に調節する能力が文書化されると、本発明者らは、iTREG細胞療法がALS患者の臨床転帰を改善することができるかどうかを評価するために(過去の対照データまたは無作為化コホート設計のいずれかを使用して)第II相臨床試験を実施する。
【0367】
リスク/ベネフィット分析
本試験に関わった患者の推定生存期間は、試験参加から約2~4年であると予測される。
【0368】
第1のプロトコル構成要素は、ペントスタチンおよびシクロホスファミドからなる4サイクルの免疫枯渇および免疫抑制レジメン(PCレジメン)からなる。本発明者らは、PCレジメンが、ALS進行に寄与する病原性免疫細胞を排除および抑制すると仮定し、したがって、患者は、生活の質の向上または最終的には疾患の進行の減少の形態でこの効果から利益を得る可能性がある。しかしながら、中枢神経系に関してPCレジメンの予期しない毒性がある場合がある。PCレジメンがこの新しいALS患者集団において比較的安全であることを確証するのに役立つように投薬修正が行われているが、PCレジメンが矛盾的な効果を有し、実際にALS進行速度を増加させるか、またはいくつかの他の神経学的毒性を引き起こす可能性がある。まれにペントスタチンは、心臓または腎臓などの他の臓器にも毒性を引き起こし得る。PCレジメンから予想される最も一般的な毒性は、リンパ球の枯渇であるが、この効果は治療の理論的根拠の一部である。他方では、PCレジメンは、骨髄系細胞を排除する可能性があり、それによって細菌または真菌感染の可能性を増加させる。PCレジメンは、T細胞免疫抑制と関連することが予想され、したがって、日和見性ウイルス感染を生じ得る。
【0369】
第2のプロトコル構成要素は、抗ウイルス薬ラミブジンによる維持療法からなる。中枢神経系から発生する炎症を低減するために仮説通りに薬物が作用する場合、患者はこの療法から利益を得ることができる。ラミブジンは、一般に、主に胃腸副作用および膵炎以外には非常に耐容性の高い薬物である。
【0370】
第3のプロトコル構成要素は、iTREG細胞の複数の注入からなる。炎症を制御する細胞療法が、炎症が開始される微小環境内で直接生じるため、細胞療法が、薬物療法を通じて容易に複製することができない複数の分子作用機構を通じて動作するため、ならびに細胞療法の効果がメモリー細胞効果によって長く持続することができるため、患者は、この療法から利益を得ることができる。
【0371】
代替プロトコル設計
図39は、代替のプロトコル設計を提供する。リンパ球は、定常状態のアフェレーシスによって収集され、アフェレーシス産物は、Rapa Therapeutics(Rockville,MD)に出荷される。RAPA-501細胞製造後、n=4用量のRAPA-501細胞は、臨床的に指示された細胞用量で単回使用の注入バッグ中で凍結保存される。治療区間は6ヶ月、続いて6ヶ月の観察区間とする。コホート#1は、40×10細胞/注入の用量で4サイクルにわたって投与されるRAPA-501細胞を受ける。コホート#1は、安全性コホートを表し、標準的な3+3設計を利用する。0/3または1/6以下の患者が用量制限毒性(DLT)を経験した場合、コホート# 2への前進が生じる。コホート#2は、T細胞用量が120×10細胞/注入に増大することを除いて、上記の試験プロトコルと同じ4サイクルのRAPA-501細胞を投与される。コホート#3では、4つのRAPA-501細胞注入のそれぞれの前に、単剤(それぞれコホート#1または#2に従い、40または120×10細胞/注入のいずれか)+ PCレジメンによる宿主コンディショニングのいずれかとして安全に投与することができるRAPA-501細胞の最高用量を評価する。PCレジメンは、ペントスタチン(1日目および4日目に2mg/m)、シクロホスファミド(1日100mg、1~5日目)、6日目および7日目に無治療、ならびに8日目にRAPA-501細胞注入からなる。
【0372】
脱分化の実施形態:
1.T細胞の脱分化方法であって、
ビタミンD、テムシロリムス、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含む培養培地中に、対象由来のT細胞を含む細胞の培養入力集団を細胞密度で植え付けることと、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に1:1~1:12のビーズ:T細胞比で添加することと、
上記の細胞の培養入力集団および培養培地を一定期間インキュベートして、脱分化T細胞を得ることと、を含む、方法。
2.上記の脱分化T細胞を採取することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
3.上記の脱分化T細胞を採取した後に、
上記の脱分化T細胞の少なくとも一部分をパッケージ中にパッケージ化することと、
上記の脱分化T細胞の上記の一部を含有する上記のパッケージを冷凍することと、をさらに含む、実施形態2に記載の方法。
4.上記の細胞の培養入力集団を上記の培養培地に植え付ける前に、
上記の対象から上記の細胞の培養入力集団を採取すること、をさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.上記の培養培地はIL-2を含有せず、IL-2は上記の培養培地に添加されない、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.上記の細胞密度は、1mL当たり少なくとも1.5×106T細胞である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.上記のテムシロリムスが、約0.3μM~約1μMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.上記のテムシロリムスが、約1μMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
9.上記のIL-2シグナル伝達阻害剤が、抗IL-2受容体抗体またはその断片である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.上記のIL-2シグナル伝達阻害剤が、バシリキシマブまたはダクリズマブである、実施形態9に記載の方法。
11.上記のIL-2シグナル伝達阻害剤が、5~50μg/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.上記の期間が約3日間である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.上記のビーズ:T細胞比が、1:3である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.上記の培養培地が、5%のヒト血清をさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.上記の培養培地がX-Vivo 20培地を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.上記のビタミンDが、約0.03nM~約1nMで上記の培養培地中に存在する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.上記のビタミンDが、約0.1nMで上記の培養培地中に存在する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
18.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されるまで続くものである、実施形態1~11および13~17のいずれか1つに記載の方法。
19.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORおよびハウスキーピングタンパク質の発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、ハウスキーピングタンパク質の発現レベルについて正規化した後に、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORのそれぞれの発現レベルが少なくとも50%低減されるまで続くものである、実施形態1~11および13~17のいずれか1つに記載の方法。
20.上記のハウスキーピングタンパク質が、アクチンまたはGAPDHである、実施形態19に記載の方法。
21.発現レベルを測定する上記の工程は、ウェスタンブロット分析によって実行される、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
22.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されるまで続くものである、実施形態1~11および13~17のいずれか1つに記載の方法。
23.実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法によって産生される脱分化T細胞。
24.脱分化T細胞の集団を含む組成物であって、
上記の脱分化T細胞の上記の集団の少なくとも一部は、T細胞の対照集団と比較して、RAPTORまたはRICTORの両方の50%未満を発現し、T細胞の対照集団は、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤、およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造される、組成物。
25.T細胞の脱分化方法であって、
ビタミンDおよびテムシロリムスを含む培養培地中に、対象由来のT細胞を含む細胞の培養入力集団を細胞密度で植え付けることと、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に、ビーズ:T細胞比が1:1以下で添加して、上記のT細胞を刺激することと、
上記の細胞の培養入力集団および培養培地を一定期間インキュベートして、脱分化T細胞を得ることと、を含む、方法。
26.上記の脱分化T細胞を採取することをさらに含む、実施形態25に記載の方法。
27.上記の脱分化T細胞を採取した後に、
上記の脱分化T細胞の少なくとも一部分をパッケージ中にパッケージ化することと、
上記の脱分化T細胞の上記の一部を含有する上記のパッケージを冷凍すること、をさらに含む、実施形態26に記載の方法。
28.上記の細胞の培養入力集団を上記の培養培地に植え付ける前に、
上記の対象から上記の細胞の培養入力集団を採取すること、をさらに含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の方法。
29.上記の培養培地はIL-2を含有せず、IL-2は上記の培養培地に添加されない、実施形態25~28のいずれか1つに記載の方法。
30.上記の細胞密度が1mL当たり1.5×106T細胞である、実施形態25~29のいずれか1つに記載の方法。
31.上記のテムシロリムスが、約0.3μM~約1μMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態25~30のいずれか1つに記載の方法。
32.上記のテムシロリムスが、約1μMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態25~30のいずれか1つに記載の方法。
33.上記の期間が約3日間である、実施形態25~32のいずれか1つに記載の方法。
34.上記のビーズ:T細胞比が、1:3である、実施形態25~33のいずれか1つに記載の方法。
35.上記の培養培地が、5%のヒト血清をさらに含む、実施形態25~34のいずれか1つに記載の方法。
36.上記の培養培地がX-Vivo 20培地を含む、実施形態25~35のいずれか1つに記載の方法。
37.上記のビタミンDが、約0.03nM~約1nMで上記の培養培地中に存在する、実施形態25~36のいずれか1つに記載の方法。
38.上記のビタミンDが、約0.1nMで上記の培地中に存在する、実施形態25~37のいずれか1つに記載の方法。
39.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%低減されるまで続くものである、実施形態25~32および34~38のいずれか1つに記載の方法。
40.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTOR、RICTORおよびハウスキーピングタンパク質の発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、ハウスキーピングタンパク質の発現について正規化した後に、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが50%まで、またはより好ましくは90%まで低減されるまで続くものである、実施形態25~32および34~38のいずれか1つに記載の方法。
41.上記のハウスキーピングタンパク質が、アクチンまたはGAPDHである、実施形態40に記載の方法。
42.発現レベルを測定する上記の工程は、ウェスタンブロット分析によって実行される、実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法。
43.上記の細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルを測定することをさらに含み、
上記の期間が、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、細胞の培養入力集団におけるRAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されるまで続くものである、実施形態25~32および34~38のいずれか1つに記載の方法。
44.実施形態25~43のいずれか1つに記載の方法によって産生される脱分化T細胞。
45.これらの方法で特定される培養添加物を含むことなく培養されたT細胞の対照集団と比較して、以下のT細胞分化分子:グランザイムBを含むがこれらに限定されない細胞溶解分子、およびIFN-γを含むがこれらに限定されないサイトカイン分子について、RNAの発現が少なくとも10%低減し、より好ましくは50%低減することを特徴とする、脱分化T細胞集団。
46.これらの方法で特定される培養添加物を含むことなく培養されたT細胞の対照集団と比較して、以下のT細胞分化分子:Nanog、KLF4、およびKLF10を含むがこれらに限定されない人工多能性幹細胞に関連する転写因子、ならびにIL-7受容体、CD127を含むがこれらに限定されないナイーブT細胞に関連する分子について、RNAの発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加することを特徴とする、脱分化T細胞集団。
47.これらの方法で特定される培養添加物を含むことなく培養されたT細胞の対照集団と比較して、以下のT細胞分化分子:T-BetおよびSTAT1を含むがこれらに限定されないTh1エフェクターT細胞に関連する転写因子について、RNAの発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少することを特徴とするが、付随的に、HIF-1-αを含むがこれらに限定されない細胞生存に関連する転写因子については、同等の発現を有し得る、脱分化T細胞集団。
48.これらの方法で特定される培養添加物を含むことなく培養されたT細胞の対照集団と比較して、オートファジー関連分子p62のウェスタンブロット分析によるタンパク質レベルの上昇を含むがこれらに限定されない、オートファジーの分子マーカーの発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加することを特徴とする、脱分化T細胞集団。
49.抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に1:1~1:12のビーズ:T細胞比で添加する上記の工程が実行されない、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
50.上記のT細胞を刺激するために、抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを上記のT細胞および培養培地に1:1以下のビーズ:T細胞比で添加する上記の工程が実行されない、実施形態25~43のいずれか1つに記載の方法。
51.以下の特性:
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γのうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、Nanog、KLF4、KLF10、およびCD127のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、T-Bet およびSTAT1のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団の約20%以内のHIF-1-α発現、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、p62発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、
ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、ならびに
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を特徴とする、脱分化T細胞の集団。
52.以下の特性:
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γのうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、Nanog、KLF4、KLF10、およびCD127のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、T-Bet およびSTAT1のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞の約20%以内のHIF-1-α発現、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、p62発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造された対照T細胞と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、
ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造された対照T細胞と比較して、少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、ならびに
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を特徴とする、脱分化T細胞。
【0373】
再分化実施形態:
1.脱分化T細胞をTREG/Th2細胞に分化するための方法であって、
IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地で脱分化T細胞を培養すること、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを3:1の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加すること、
上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ること、を含む、方法。
2.上記の培養培地が、ペメトレキセドをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
3.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~2のいずれか1つに記載の方法。
4.上記のIL-4が、約1000IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.上記のペメトレキセドが、最大100nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態2に記載の方法。
7.上記のペメトレキセドが、約10nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態2に記載の方法。
8.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態6~7のいずれか1つに記載の方法。
9.上記のIL-4が、約1000IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態6~8のいずれか1つに記載の方法。
10.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態6~9のいずれか1つに記載の方法。
11.脱分化T細胞をTREG/Th2細胞に分化するための方法であって、
脱分化T細胞を培養することであって、上記の脱分化T細胞が、IL-2、IL-4、およびTGF-βを含む培養培地中で、対照T細胞と比較して少なくとも10%低減されたレベルでRAPTORおよびRICTORを発現する、培養すること、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを3:1の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加すること、
前記脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG/Th2細胞を得ること、を含む、方法。
12.上記の培養培地が、ペメトレキセドをさらに含む、実施形態11に記載の方法。
13.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態11~12のいずれか1つに記載の方法。
14.上記のIL-4が、約1000IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態11~13のいずれか1つに記載の方法。
15.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態11~14のいずれか1つに記載の方法。
16.上記のペメトレキセドが、最大100nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態12に記載の方法。
17.上記のペメトレキセドが、約10nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態12に記載の方法。
18.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態16~17のいずれか1つに記載の方法。
19.上記のIL-4が、約1000IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法。
20.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法。
21.上記の培養培地が、5%のヒトAB血清で補充されたX-Vivo 20である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.上記の期間が、3日~40日である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法によって産生される、TREG/Th2細胞。
24.脱分化T細胞をTREG細胞に分化するための方法であって、
IL-2およびTGF-βを含む培養培地中で、T細胞の対照集団と比較して、RAPTORおよびRICTORの発現が低下した脱分化T細胞を培養することと、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを3:1の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加することと、
上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG細胞を得ることと、を含む、方法。
25.上記の培養培地が、ペメトレキセドをさらに含む、実施形態24に記載の方法。
26.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態24~25のいずれか1つに記載の方法。
27.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態24~26のいずれか1つに記載の方法。
28.上記のペメトレキセドが、最大100nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態25に記載の方法。
29.上記のペメトレキセドが、約10nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態25に記載の方法。
30.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態28~29のいずれか1つに記載の方法。
31.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
32.脱分化T細胞をTREG細胞に分化するための方法であって、
脱分化T細胞を培養することであって、上記の脱分化T細胞が、IL-2およびTGF-βを含む培養培地中で、対照T細胞と比較して少なくとも10%低減されたレベルでRAPTORおよびRICTORを発現する、培養すること、
抗CD3/抗CD28被覆磁性ビーズを3:1の比率(ビーズ:T細胞の比)で添加すること、
上記の脱分化T細胞を一定期間インキュベートしてTREG細胞を得ること、を含む、方法。
33.上記の培養培地が、ペメトレキセドをさらに含む、実施形態32に記載の方法。
34.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態32~33のいずれか1つに記載の方法。
35.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態32~34のいずれか1つに記載の方法。
36.上記のペメトレキセドが、最大100nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態33に記載の方法。
37.上記のペメトレキセドが、約10nMの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態33に記載の方法。
38.上記のIL-2が、約100IU/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態36~37のいずれか1つに記載の方法。
39.上記のTGF-βが、約10ng/mLの濃度で上記の培養培地中に存在する、実施形態36~38のいずれか1つに記載の方法。
40.上記の培養培地が、5%のAB血清を補充したX-Vivo 20培地である、実施形態24~39のいずれか1つに記載の方法。
41.上記の期間が、3日~40日である、実施形態24~40のいずれか1つに記載の方法。
42.上記の脱分化T細胞が、T細胞の対照集団と比較して、RAPTORおよびRICTORの発現が低下している、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
43.実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生される、TREG細胞。
44.後続のT細胞培養のためにアフェレーシスによって収集されるリンパ球が、定常状態で得られるか、あるいは血清を中和する点において比較的選択的である抗TNF-α治療薬、TNF-αの無細胞形態、最も顕著には、組換え受容体分子エタネルセプト、またはモノクローナル抗体アダリムマブでの対象の治療後に得られる、実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生される、TREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞。
45.TREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞またはそれらの集団が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、以下の分子:CD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、OX40、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つのフローサイトメトリーによって増加した発現を有する、実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生されるTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞。
46.TREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞またはそれらの集団が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、IFN-γおよびTNF-αを含む炎症性サイトカインの分泌が低減している、実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生されるTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞。
47.上記のTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞またはそれらの集団が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、T細胞運命の転写因子の改変された発現を有し、最も顕著には、TBETの減少およびFOXP3の増加を有する、実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生されるTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞。
48.上記のTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞またはそれらの集団が、対照Th1/Tc1細胞と比較して、Th2サイトカインIL-4の分泌の増加、およびTh2転写因子GATA3の発現の増加を含む、追加の表現型形質を有する、実施形態1~22および24~42のいずれか1つに記載の方法によって産生されるTREG細胞またはハイブリッドTREG/Th2細胞。
49.GATA3を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも5%を有するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
50.FoxP3を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも5%を有するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団
51.CD73を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも10%を有するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
52.CD103を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも10%を有するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
53.CD150を発現するCD4+またはCD8+T細胞の少なくとも20%を有するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
54.3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも5pg/mL/1×106細胞/日のIL-4を発現するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
55.3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも100pg/mL/1×106細胞/日のIL-2を発現するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
56.3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に少なくとも100pg/mL/1×106細胞/日のIFN-γまたはGM-CSFを発現するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
57.3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後に100pg/mL/1×106細胞/日未満の TNF-αまたはIL-17Fを発現するTREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
58.以下の特性:
対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによって測定されるCD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、OXO40、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上の発現が、少なくとも10%増加している、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したIFN-γの分泌、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したTNF-αの分泌、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したTBETの発現、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%増加したFOXP3の発現、
フローサイトメトリーによって測定した場合、GATA3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD73を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD103を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、FOXP3とGATA3の両方を発現するCD4またはCD8細胞が少なくとも5%、
フローサイトメトリーによって測定した場合、CD150を発現するCD4またはCD8T細胞が少なくとも20%、
REGまたはTREG/Th2細胞の集団が産生されたT細胞特有のT細胞集団と比較して、GATA3、FoxP3、CD73、CD103、およびCD150のうちの1つ以上の発現が少なくとも50%増加している、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-4の少なくとも5pg/mL/1×10細胞/日の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-2の少なくとも100pg/mL/1×10細胞/日の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IFN-γの100pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、GM-CSFの100pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、TNF-αの10pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞比での抗CD3/抗CD28ビーズとの共刺激後のIL-17の10pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、および
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、TREGまたはTREG/Th2細胞の集団。
59.以下の特性:
対照Th1/Tc1細胞と比較して、フローサイトメトリーによって測定されるCD25、CD27、2B4、BTLA、CTLA4、TIGIT、TIM3、ICOS、LAIR1、OXO40、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上の発現が、少なくとも10%増加している、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したIFN-γの分泌、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したTNF-αの分泌、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%減少したTBETの発現、
対照Th1/Tc1細胞と比較して少なくとも10%増加したFOXP3の発現、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-4の少なくとも5pg/mL/1×10細胞/日の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IL-2の少なくとも100pg/mL/1×10細胞/日の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、IFN-γの100pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、GM-CSFの100pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞の比で抗CD3/抗CD28ビーズを用いて共刺激した後の、TNF-αの10pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
3:1のビーズ:T細胞比での抗CD3/抗CD28ビーズとの共刺激後のIL-17の10pg/mL/1×10細胞/日未満の分泌、
GATA3、FOXP3、CD73、およびCD103の発現、ならびに
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、TREGまたはTREG/Th2細胞。
60.脱分化T細胞が、以下の特性:
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γのうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、Nanog、KLF4、KLF10、およびCD127のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、T-Bet およびSTAT1のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団の約20%以内のHIF-1-α発現、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、p62発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、
ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造されたT細胞の対照集団と比較して、少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、ならびに
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
61.脱分化T細胞が、以下の特性:
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、グランザイムB、IL-10、およびIFN-γのうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、Nanog、KLF4、KLF10、およびCD127のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞と比較して、T-Bet およびSTAT1のうちの1つ以上のmRNA発現が少なくとも10%減少し、より好ましくは50%減少している、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞の約20%以内のHIF-1-α発現、
テムシロリムス、ビタミンD、およびIL-2シグナル伝達阻害剤を含まない同じ条件下でインキュベートされた対照T細胞集団と比較して、p62発現が少なくとも10%増加し、より好ましくは50%増加している、
テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造された対照T細胞と比較して、RAPTORまたはRICTORの発現レベルが少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、
ハウスキーピングタンパク質によって正規化されたRAPTORまたはRICTORの発現レベルが、テムシロリムス、IL-2シグナル伝達阻害剤およびビタミンDを含まない細胞の培養入力集団と同じ条件下で製造された対照T細胞と比較して、少なくとも50%、より好ましくは90%低減されている、ならびに
それらの組み合わせ、のうちの1つ以上を有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。


図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26A-1】
図26A-2】
図26B-1】
図26B-2】
図27A-1】
図27A-2】
図27B-1】
図27B-2】
図28A
図28B
図29-1】
図29-2】
図29-3】
図30A-1】
図30A-2】
図30B-1】
図30B-2】
図31A
図31B
図32
図33
図34
図35
図36A
図36B
図37-1】
図37-2】
図38-1】
図38-2】
図39
図40A
図40B
図41-1】
図41-2】
図41-3】
図42