(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】難燃性エポキシ系組成物及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 73/02 20060101AFI20240819BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20240819BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240819BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240819BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20240819BHJP
B32B 43/00 20060101ALI20240819BHJP
B32B 3/12 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B29C73/02
C09K21/04
C09K21/02
C08L63/00 C
C08K3/016
B32B43/00
B32B3/12 Z
(21)【出願番号】P 2021533818
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 US2019066963
(87)【国際公開番号】W WO2020131946
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マカダムス, レナード
(72)【発明者】
【氏名】コーリ, ダリップ ケー.
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522113(JP,A)
【文献】特表2015-507648(JP,A)
【文献】特表2008-525599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0164373(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102432836(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/02
B32B 1/00- 43/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムサンドイッチパネルにおけるボイドを充填する方法であって:
複合材料の2枚のシートの間に配置されたハニカムコアを含むハニカムサンドイッチパネルを提供する工程であって
、ハニカムコアが、ポッティング組成物で充填されるべき1つ又は複数のボイドを含む、工程;
ハニカムコアの1つ又は複数のボイド内にポッティング組成物を導入する工程;
ポッティング組成物を有するハニカムサンドイッチパネルを硬化する工程;
を含み、
ポッティング組成物が、
a)少なくとも1のエポキシド官能価を有する少なくとも1種類のエポキシド化合物を含むエポキシ成分;
b)少なくとも1種類の硬化剤;
c)少なくとも1種類の潜在性硬化促進剤;
d)1ミクロン未満の粒径を有するナノサイズのコア・シェルゴム(CSR)粒子を含む強靭化成分;
e)ハロゲン不含である難燃性成分;及び
f
)組成物の密度を低減するための中空微小球;
を含む、ハロゲン不含、硬化性エポキシ系組成物であり、
潜在性硬化促進剤が、
アミン-エポキシ付加物、アミン-ウレイド付加物、及びアミン-ウレタン付加物から選択され、
難燃性成分が、
(i)少なくとも1種類のポリリン酸塩;
(ii)少なくとも1種類の金属ホウ酸塩;及び
(iii)アルカリ土類金属水酸化物及び水酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種類の化合物;の混合物を含み、且つ
硬化後、硬化
されたポッティング組成物が、密度0.8g/cm
3未満を有する、方法。
【請求項2】
強靭化成分がさらに、エラストマー材料
及び/又は熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種類のポリリン酸塩が、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸の金属塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エラストマー材料が、天然ゴム、スチレンブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ネオプレン、ブチルニトリル、ポリスルフィドエラストマー、アクリル系エラストマー、アクリロニトリルエラストマー、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリエステルゴム、ジイソシアネート結合縮合エラストマー、エチレン-プロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ化炭化水素、及びその組み合わせから選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
エラストマー材料が、液体エラストマ
ーから選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
エラストマー材料が、アミン末端ブタジエンアクリロニトリル(ATBN)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、及びカルボキシル末端ブタジエン(CTB)から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エラストマー材料が、エポキシ-エラストマー付加物である、請求項
2に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーが
、非晶質ポリスルホンから選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項9】
熱可塑性ポリマーが、ポリエーテルスルホン-ポリエーテルエーテルスルホン(PES-PEES)コポリマーである、請求項
2に記載の方法。
【請求項10】
潜在性硬化促進剤が、アミン-エポキシ付加物
である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ナノサイズのCSR粒子が、レーザー散乱技術によって決定される、10~300nmの範囲の粒径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
中空微小球が、異なる密度を有する微小球を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
中空微小球の一部が、0.1~0.4g/cm
3の範囲の密度を有し、且つ中空微小球のもう一部が、0.01~0.03g/cm
3の範囲の密度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポッティング組成物が、組成物の全重量に対して重量パーセンテージ(wt%)で:
a)エポキシ成分を5~60重量
%、
b)硬化剤を合計で1~50重量
%、
c)潜在性硬化促進剤を0.5~1重量%、
d)強靭化成分を2~40重量
%、
e)難燃性成分を3~50重量
%、及び
f)中空微小球を5~50重量
%、
含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
硬化すると、難燃性である低密度、ハロゲン不含エポキシ系組成物であって、
a)少なくとも1のエポキシド官能価を有する少なくとも1種類のエポキシド化合物を含むエポキシ成分;
b)少なくとも1種類の硬化剤;
c)少なくとも1種類の潜在性硬化促進剤;
d)1ミクロン未満の粒径を有するナノサイズのコア・シェルゴム(CSR)粒子を含む強靭化成分;
e)ハロゲン不含である難燃性成分;及び
f)組成物の密度を低減するための中空微小球;
を含み、
潜在性硬化促進剤が、
アミン-エポキシ付加物、アミン-ウレイド付加物、及びアミン-ウレタン付加物から選択され、
難燃性成分が、
(i)少なくとも1種類のポリリン酸塩;
(ii)少なくとも1種類の金属ホウ酸塩;及び
(iii)アルカリ土類金属水酸化物及び水酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種類の化合物;の混合物を含み、
中空微小球が、密度0.5g/cm
3未満を有する、組成物。
【請求項16】
エポキシ成分(a)と中空
微小球(f)の重量比(a)/(f)が1~1.1であり、且
つエポキシ成分の重量パーセンテージが、全組成物の50%未満である、請求項15に記載の低密度、ハロゲン不含エポキシ系組成物。
【請求項17】
強靭化成分がさらに、エラストマー又はエポキシ-エラストマー付加物を含む、請求項15又は16に記載の低密度、ハロゲン不含エポキシ系組成物。
【請求項18】
強靭化成分がさらに、熱可塑性ポリマーを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の低密度、ハロゲン不含エポキシ系組成物。
【請求項19】
潜在性硬化促進剤が、アミン-エポキシ付加物
である、請求項15~18のいずれか一項に記載の低密度、ハロゲン不含エポキシ系組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年12月18日出願の米国仮特許出願第62/781,190号の利益を主張する。
【0002】
構造の重量を最小限に抑えると同時に、強度及び剛性を維持するために、ハニカムサンドイッチパネルが航空機内部の床及び壁などの構造に使用されている。ハニカムサンドイッチパネルは一般に、2つのプリプレグ表面シートの間に介在するハニカムコアからなる。プリプレグ表面シートは、硬化性樹脂、例えばエポキシ系組成物で含浸された強化用繊維で構成される。各プリプレグ表面シートとハニカムコアの一方の面との間に硬化性接着剤フィルムを適用することによって、プリプレグ表面シートはハニカムコアに接着して積層される。
【0003】
従来から、ポッティングコンパウンドが、構造性能を改善するため、且つ結合を高めるために、特定の用途でハニカム構造のコア内に挿入されている。さらに、ハニカムコアサンドイッチパネルと同時硬化することができる、エッジ用ポッティングコンパウンドで、ハニカムコアサンドイッチパネルの露出エッジを封止することによって、ハニカムコアのボイド内への水分の侵入が低減される、又は有効に排除され得る。しばしば、この目的に使用されるかかるポッティングコンパウンドは、「一液型」と呼ばれ、つまりそれらは予め混合されており、1つの工程で適用される。一液型ポッティングコンパウンドは通常、高粘度、パテ状コンパウンドである。一般に、これらのようなポッティングコンパウンドは、スパチュラ又はこてを用いて、手作業で複合セル構造に適用することができる。代替方法として、かかるポッティングコンパウンドは、ロボット又は自動システムによっても適用され得て、材料はハニカムコア内にポンプ注入され、挿入される。
【0004】
エポキシ樹脂は、高い強度及びモジュラス、基材への高い付着性、良好な耐薬品性及び耐食性、優れた寸法安定性及び電気的性質など、その魅力的な特性のために、様々な用途でマトリックス樹脂として広く使用されている。特に、エポキシ樹脂は航空宇宙産業分野で使用されており、強化用繊維と組み合わせて、航空機部品の製造用の複合材料を形成し、又は構造フィルム接着剤の材料として使用されている。エポキシ樹脂の有用性が見出される一分野は、ハニカムサンドイッチパネルのボイドを充填するためのポッティングコンパウンドである。
【0005】
さらに、航空宇宙産業、例えば航空機内部で適用される材料は一般に、種々の規制機関によって課せられる特定の重要な規定を満たす必要がある。かかる規定はしばしば、航空機の供給元メーカー(OEM)によって提供され、米国の連邦航空局(Federal Aviation Administration)(FAA)によって示される、連邦航空局の要求基準から、或いはOEMによって望まれる性能特徴によって導き出される。要求基準としては、高い圧縮強さなどの機械的性能、高い難燃性、及び燃焼時の煙及び毒性ガスの発生の少なさが挙げられる。機械的性能及び難燃性の要求基準は、比較的低い重量で達成される必要があり;したがって、難燃性組成物がその硬化状態で低密度であることが必要とされる。最後に、市販のセッティングにおける前記材料の加工は、例えば、押出し成形などの従来の加工技術によって可能でなければならない。
【0006】
従来から、燃焼規制を満たすように設計されたエポキシ系組成物は、ハロゲン系難燃剤を含有する。かかる難燃性エポキシ系組成物は、臭素又は他のハロゲンが存在することから、危険であり、且つ有毒であることが知られている。したがって、ハロゲン系材料と同じ燃焼規制を満たすことができるハロゲン不含組成物が必要とされている。しかしながら、前記ハロゲン系難燃剤を使用することなく、特に、芳香族エポキシで構成される樹脂に対して、所望の燃焼特性を達成することは難しい。
【0007】
さらに、特にハニカムコア充填用途にポッティングコンパウンドとして使用される場合には、従来の難燃性エポキシ系組成物は、硬化すると微細な微小亀裂を示すことが判明している。かかる微小亀裂は、通常の硬化サイクルにおいて加熱し、続いて冷却した結果として、エポキシマトリックス内に形成する内部応力の結果である。微小亀裂は、ハニカムコアを含有する硬化複合構造の性能特性に有害な影響を及ぼす。これらの微小亀裂は、ハニカムコアのセル壁に沿って存在することが多く、コア内への水分及び水の侵入が可能となる。
【0008】
したがって、ハニカムサンドイッチパネル用のポッティングコンパウンドとして使用することができ、且つ硬化材料の耐湿性を向上させるために、硬化時に微小亀裂に耐えることができる、低密度、ハロゲン不含、難燃性エポキシ系組成物が依然として必要とされている。
【0009】
本明細書において、硬化時に微小亀裂に耐えることができ、その結果、硬化材料の耐湿性が向上し、長期間の材料の機械的性能全体が向上する、ハロゲン化種を含有しない低密度、難燃性エポキシ系組成物が開示される。
【0010】
一般に、本開示内容のハロゲン不含、難燃性エポキシ系組成物は:
a)少なくとも1のエポキシド官能価を有する少なくとも1種類のエポキシド化合物を含むエポキシ成分、
b)少なくとも1種類の硬化剤(curative)(又は硬化剤(hardener))、
c)少なくとも1種類の促進剤、
d)ナノサイズのコア・シェルゴム(CSR)粒子を含む強化用成分、
e)ハロゲンを含有しない難燃性成分、及び
f)組成物の密度を低減するための、低密度充填剤成分、
を含む。
【0011】
組成物の全重量に対する、エポキシ系組成物における成分の重量パーセンテージ(wt%)での相対量は、以下の通りであり得る:
a)エポキシ成分5~60重量%、好ましくは、20~45重量%、
b)硬化剤を合計で1~50重量%、好ましくは20~30重量%、
c)促進剤0.5~1重量%、
d)強化用成分2~40重量%、好ましくは、8~18重量%、
e)ハロゲン不含、難燃性成分3~50重量%、好ましくは25~40重量%及び
f)低密度充填剤成分5~50重量%、好ましくは15~22重量%。
【0012】
一部の実施形態において、エポキシ成分の重量パーセンテージは、組成物全体の50重量%未満であり、エポキシ成分(e)と低密度充填剤成分(f)の重量比(e/f)は1~1.1である。
【0013】
本明細書で開示される難燃性エポキシ系組成物は、低密度を有することを特徴とし、それによって軽量構造を有することが望ましい用途でのその使用が可能となる。本明細書において、「低密度」という用語は、重量/体積1g/cm3以下を有する組成として定義される。難燃性エポキシ系組成物を硬化すると、硬化材料は、密度0.8g/cm3未満を有し、一部の実施形態では、0.7g/cm3未満又は0.6g/cm3未満を有する。このような低密度は、エポキシ系組成物における低密度充填剤成分の割合が高いためである。密度は、金型にエポキシ系組成物をキャストし、250°Fにて60分間硬化させることによって測定することができる。硬化試料を金型から取り出し、その正確な寸法を決定する。各試料を計量し、密度をg/cm3で算出する。
【0014】
本明細書に開示される難燃性エポキシ系組成物は、その中に硬化剤を含有し、したがって、それ自体で硬化することができるため、「一液型」システムと呼ばれる。一液型システムと異なり、「二液型」システムには、別々に保管される硬化剤成分とエポキシ成分が必要であり、使用時に混合する必要がある。
【0015】
本開示内容のエポキシ系組成物は、従来の多くの混合及びブレンド技術によって調製することができる。例えば、エポキシ系組成物の成分は、Rossミキサーなど標準混合装置を使用して周囲条件にて添加され、ブレンドされ得る。特定の組成の性質に応じて、成分は混合中に任意選択的に、加熱又は冷却され得る。さらに、組成物に真空を引いて、組成物の粘度及び密度がコントロールされ得る。好ましくは、エポキシ樹脂を最初に、5~60分の設定時間の間ブレンドし、続いてゴム添加剤及び硬化剤を添加する。低密度充填剤成分は一般に、最終成分として添加される。均一になるまで、混合を続ける。
【0016】
エポキシ成分
難燃性エポキシ系組成物において有用な有機エポキシド化合物は、開環によって重合可能であるオキシラン環を有するいずれかの有機化合物である。エポキシドとして当技術分野で公知のかかるエポキシド化合物としては、モノマー及びポリマーエポキシ化合物が挙げられ、脂肪族、芳香族、脂環式、又は複素環式化合物であり得る。エポキシド化合物は、1以上、より好ましくは2~4の官能価を有する広い範囲の脂肪族及び芳香族エポキシから選択することができる。本発明に適しているエポキシド化合物は、限定されないが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及びビスフェノールZエポキシ樹脂から誘導される。より好ましくは、本発明のエポキシド化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及びビスフェノールZのジグリシジルエーテルから誘導される。
【0017】
分子当たり複数のエポキシド官能基を有する多官能性エポキシ樹脂(又はポリエポキシド)が特に好適である。ポリエポキシドは、飽和、不飽和、環式、若しくは非環式、脂肪族、芳香族、又は複素環式ポリエポキシド化合物であってよい。好適なポリエポキシドの例としては、アルカリの存在下でエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって調製される、ポリグリシジルエーテルが挙げられる。したがって、好適なポリフェノールは、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、フッ素4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールZ(4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール)及び1,5-ヒロキシナフタレンである。ポリグリシジルエーテルのベースとして他の好適なポリフェノールは、フェノールとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとのノボラック樹脂タイプの既知の縮合生成物である。
【0018】
好適なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル、例えば、Dow Chemical Co.から入手可能なEPON(商標)828(液体エポキシ樹脂)、D.E.R.331、D.E.R.661(固形エポキシ樹脂);アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、例えばHuntsman Corp.から市販のARALDITE(登録商標)MY0510、MY0500、MY0600、MY0610;及びMomentiveから市販のEpikote(登録商標)158が挙げられる。追加の例としては、DEN428、DEN431、DEN438、DEN439、及びDEN485としてDow Chemical Coから市販されているフェノール系ノボラックエポキシ樹脂;ECN1235、ECN1273、及びECN1299としてCiba-Geigy Corp.から市販されているクレゾール系ノボラックエポキシ樹脂;TACTIX(登録商標)71756、TACTIX(登録商標)556、及びTACTIX(登録商標)756としてHuntsman Corp.から市販されている炭化水素ノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】
硬化剤及び促進剤
本明細書で開示される、硬化剤、触媒又は硬化剤としても知られるエポキシ硬化剤は、エポキシ官能基と反応することができる、又はエポキシ官能基を重合することができる反応性材料である。難燃性エポキシ系組成物は好ましくは、一液型システムであることから、組成物が加熱された場合に、組成物中のエポキシ樹脂の架橋又は硬化を達成することができる1種又は複数種のエポキシ硬化剤を含有する。本明細書において詳述される硬化剤は、触媒作用で機能するか、又は一部の実施形態において、エポキシ樹脂の1種又は複数種と反応することによって硬化プロセスに直接関与し得る。一部の実施形態において、2又は3種類の硬化剤の組み合わせが使用される。
【0020】
難燃性エポキシ系組成物に使用され得る硬化剤の具体的な例としては、限定されないが、脂肪族及び芳香族第1級アミン、脂肪族及び芳香族第3級アミン、三フッ化ホウ素錯体、グアニジン、例えば置換グアニジン、及びビス尿素が挙げられる。具体的な例としては、ジシアンジアミド(DICY)、2,4-トルエンビス-(ジメチル尿素)(例えば、CVC Thermoset SpecialtiesからのCA150)、4,4’-メチレンビス-(フェニルジメチル尿素)(例えば、CVC Thermoset SpecialtiesからのCA152)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3-DDS)及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4-DDS)が挙げられる。1種又は複数種の硬化剤が存在し得る。
【0021】
好ましい実施形態において、エポキシ硬化剤は、4-メチルテトラヒドロキシフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、5-メチル-2,3-ジカルボキシノルボルネン無水物、フタル酸無水物、及びテトラヒドロメチルフタル酸無水物などの無水物硬化剤から選択される。
【0022】
ポッティングコンパウンドの硬化条件を改善するために、促進剤を用いることが標準的である。エポキシ硬化剤と同じであっても、又は同じでなくてもよい促進剤が通常、エポキシド硬化反応が起こる速度を増加するために、組成物中に存在する。かかる促進剤の例としては、限定されないが、芳香族第3級アミン、イミダゾール、イミダゾール誘導体、イミダゾール様化合物等が挙げられる。具体的な例としては、例えば2-(2-(2-メチルイミダゾリル)-エチル)-4,6-ジアミノ-s-トリアジンが挙げられる。しかしながら、かかる促進剤は、最終エポキシ系組成物の潜在性(latency)を低下させる傾向を有し、その結果、ポットライフ(又は貯蔵寿命)が短くなる。製造セッティングにおいて、かかる材料は、非常に短時間で使用できなくなる。
【0023】
本開示の難燃性エポキシ系組成物に潜在性硬化促進剤として特定のアミン付加物を添加することによって、硬化キネティクスが変化し、ポットライフ(又は貯蔵寿命)が長くなり得ることが判明した。かかる促進剤としては、アミン-エポキシ付加物、アミン-ウレイド付加物、及びアミン-ウレタン付加物が挙げられる。これらのアミン付加物は、室温(21~25℃)にて固形であり、エポキシ成分に不溶性である。高温にて、アミン付加物は、周囲のエポキシ樹脂内に溶解し、促進剤として機能する。
【0024】
複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、三級アミノ基とOH、SH、NH、NH2、COOH、及びCONHNH2からなる群から選択される少なくとも1つの官能基の両方をその分子に有する化合物と、を反応させることによって、アミン-エポキシ付加物を合成することができる。ポットライフの低下を生じることなく、エポキシ硬化の速度を促進する能力を有することから、かかるアミン-エポキシ付加物促進剤が好ましい。
【0025】
アミン-ウレイド付加物は、アミンを尿素、チオ尿素又はその誘導体と反応させることによって製造される。例えば、アミン-ウレイド付加物は、アミンをエチレン尿素及びホルムアルデヒドと反応させることによって製造され得て、その反応は水性媒体中で行われる。アミン-ウレタン付加物は、アミンを、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート及びベンジルイソシアネートなどのイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート及びビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能性イソシアネート化合物と反応させることによって製造される。
【0026】
アミン付加物促進剤の合成に、一級アミノ基、二級アミノ基又は三級アミノ基を有するアミンなど、いずれかのアミン化合物を使用することができる。適切なアミン化合物の例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン及び4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂肪族アミン;4,4’-ジアミノジフェニル-メタン、及び2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;及び2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン及びピペラジンなどの窒素原子含有複素環式化合物が挙げられる。
【0027】
強靭化成分
本開示の難燃性エポキシ系組成物は、ナノサイズのコア・シェルゴム(CSR)粒子を含む強靭化成分を含む。本明細書で使用される「ナノサイズ」という用語は、1ミクロン未満のナノメートル範囲のサイズを意味する。その強靭化成分は、エポキシ系組成物の硬化から誘導される硬化エポキシマトリックスの機械的強度を高める。さらに、かかる強靭化成分が存在することによって、硬化材料の微小亀裂の形成が排除され、それによって、材料が水分を吸収する傾向が低減されることが判明した。
【0028】
好ましい実施形態において、強靭化成分はさらに、エラストマー材料(又はエラストマー)を含む。ナノサイズのCSR粒子とエラストマー材料を組み合わせることによって、相乗効果が生まれる。ナノサイズのCSR粒子は、マトリックスからデボンド(de-bonding)し、続いてせん断帯降伏に伴う大規模なプラスチックボイドを成長させることによって脆い硬化エポキシマトリックスを強靭にするように機能する。エラストマー材料は、CSR粒子とマトリックスとの間の応力を効率的に移行するように機能する。
【0029】
ナノサイズのCSR粒子及びエラストマー材料を含む強靭化成分は、エポキシ系組成物全体に対して8~18重量%の範囲内の量で存在する。「重量%」という用語は、重量パーセンテージを意味する。一部の実施形態において、強靭化成分におけるCSR粒子(A)とエラストマー材料(B)の重量比(A/B)は、1~2、好ましくは1~1.5である。
【0030】
ナノサイズのCSR粒子の粒径は、レーザー散乱粒径分布アナライザーを使用したレーザー散乱技術によって決定される、10nm~300nmの範囲にあり得る。CSR粒子は、非弾性ポリマー材料(すなわち、周囲温度を超える、例えば、約50℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性又は熱硬化/架橋ポリマー)で構成される硬質シェルによって囲まれる、弾性又はゴム状性質材料(すなわち、約0℃未満、例えば、約-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマー)で構成される軟質コアを有し得る。例えば、そのコアは、例えば、ジエンホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンと1つ又は複数のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート等とのコポリマー)で構成されてもよく、他方、シェルは、好適には高いガラス転移温度を有する1つ又は複数のモノマー、例えば(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、シアン化ビニル(例えば、アクリロニトリル)、不飽和酸及び無水物(例えば、アクリル酸)、(メタ)アクリルアミド等のポリマー又はコポリマーで構成されてもよい。シェルにおいて使用されるポリマー又はコポリマーは、金属カルボキシレートの形成によって(例えば、二価金属カチオンの塩を形成することによって)イオン性架橋される酸基を有してもよい。また、シェルポリマー又はコポリマーは、分子1個当たり2個以上の二重結合を有するモノマーの使用によって共有結合性架橋され得る。また、ポリブチルアクリレート又はポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)など、他の弾性ポリマーが、好適にはコアのために使用されてもよい。
【0031】
CSR粒子は、3つ以上の層で構成されてもよい(例えば、1つのエラストマー材料の中央コアが異なったエラストマー材料の第2のコアによって囲まれてもよく、又はコアが、異なった組成物の2つのシェルによって囲まれてもよく、又は粒子は、軟質コア/硬質シェル/軟質シェル/硬質シェルの構造を有してもよい)。通常、コアは粒子の約50~約95重量%を占め、シェルは粒子の約5~約50重量%を占める。CSR粒子は、商標Kane Ace(商標)MXでKaneka Texas Corporationから市販のものなど、液体樹脂マトリックスシステム中に予め分散され得る。コア・シェルゴム粒子は、樹脂成分(A)において使用される二官能性、三官能性及び四官能性エポキシ樹脂のうちの1つに予め分散されることが好ましい。例として、CSR粒子を含有する適切な樹脂マトリックスシステムとしては、MX120(CSRを約25重量%有する液体ビスフェノールAエポキシ)、MX125(CSRを約25重量%有する液体ビスフェノールAエポキシ)、MX153(CSRを約33重量%有する液体ビスフェノールAエポキシ)、MX156(CSRを約25重量%有する液体ビスフェノールAエポキシ)、MX130(CSRを約25重量%有する液体ビスフェノールFエポキシ)、MX136(CSRを約25重量%有する液体ビスフェノールFエポキシ)、MX257(CSRを約37重量%有する液体ビスフェノールAエポキシ)、MX416及びMX451(CSRを約25重量%有する液体多官能性エポキシ)、MX215(CSRを約25重量%有するエポキシ化フェノールノボラック)、及びMX551(CSRを約25重量%有する脂環式エポキシ)が挙げられる。
【0032】
強靭化成分において使用されるエラストマーとしては、限定されないが、天然ゴム、スチレンブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、イソプレン-ブタジエンコポリマー、ネオプレン、ブチルニトリル、ポリスルフィドエラストマー、アクリル系エラストマー、アクリロニトリルエラストマー、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリエステルゴム、ジイソシアネート結合縮合エラストマー、エチレン-プロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ化炭化水素等が挙げられる。一部の実施形態において、エラストマーは、液体エラストマー、例えばアミン末端ブタジエンアクリロニトリル(ATBN)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、及びカルボキシル末端ブタジエン(CTB)から選択される。エポキシ-エラストマー付加物も適している。一般に、エラストマー及びエポキシ樹脂は、例えば高せん断ミキサーで混合され、実質的に均一な混合物として付加物が形成される。付加物のためのエラストマーは、上記で開示されるエラストマーから選択され得る。一実施形態において、エポキシ-エラストマー付加物は、エポキシ樹脂、ビスフェノール、及び液体エラストマーポリマー(室温、20~25℃にて液状)の反応生成物である。付加物を形成するための適切な液体エラストマーとしては、上記のエラストマー、特にATBN、CTBN、及びCTBが挙げられる。
【0033】
強靭化成分は、選択肢として、熱可塑性ポリマーを含み得る。適切な熱可塑性ポリマーとしては、非晶質ポリスルホン、つまりアリーレン残基の間に点在する、主にエーテル及びスルホン基を含有するポリマーが挙げられる。かかるポリスルホンとしては、ポリエーテルスルホン(PES)が挙げられる。スルホン基に加えて、エーテル及びアルキレン基を含有するポリスルホンは、主に非晶質であり、本明細書における目的に適している。米国特許第7084213号明細書に記載のアミン末端基を有する、ポリエーテルスルホン-ポリエーテルエーテルスルホン(PES-PEES)コポリマーも適している。かかるコポリマーは、150℃を超える、例えば180~200℃のTgを有する。存在する場合には、合わせたCSRとエラストマーに対する熱可塑性(TP)材料の比率(又はTP/(CSR+エラストマー))は0.133~0.333である。
【0034】
本明細書に開示されるガラス転移温度(Tg)は、上昇速度5℃/分にて示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0035】
難燃性成分
ハロゲン不含、難燃性成分は、
1)少なくとも1種類のポリマー亜リン酸ベースの難燃性材料;
2)金属ホウ酸塩を含む群から選択される少なくとも1種類の化合物;及び
3)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム族水酸化物を含む群から選択される少なくとも1種類の化合物;
の混合物を含む。
【0036】
適切なポリマー亜リン酸ベースの材料、又はポリリン酸塩は、酸素原子を共有することによって互いに連結される四面体リン酸塩構造から形成されるポリマーオキシアニオンを有する環状又は直鎖状の鎖で構成され得る。この文脈において使用される「亜リン酸ベース」という用語は、リンを含有することを意味する。かかるポリリン酸塩材料の例としては、限定されないが、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸の金属塩、例えばポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウム、及びポリリン酸塩カリウムが挙げられる。ポリリン酸塩は、エポキシ系組成物の総重量に対してエポキシ系組成物中に3~12重量%、好ましくは6~8重量%の範囲の量で存在する。
【0037】
難燃性材料の製造に赤リン元素が使用されることが知られている。しかしながら、赤リン元素の使用は、酸化剤に対する赤リンの燃焼性及び反応性から生じる健康上及び環境上の懸念を生じる。したがって、有毒なガスの発生が問題となる、航空宇宙産業などの産業でのその使用を除外することは有益であるだろう。他の相乗的難燃剤と組み合わせた場合に可燃性赤リンは、例外的な難燃性能を付与するが、難燃性組成物、特にエポキシ系組成物からの赤リンの除外によって、非燃焼特性が減少することが多い。他の難燃性コンパウンドと併せてポリリン酸塩(ポリマー材料)を使用することによって、赤リンベースのシステムと同様な、又はそれより優れた難燃特性を付与することが発見された。さらに、ポリリン酸塩は、非燃焼特性に関して非ポリマー亜リン酸材料と比べて特徴的な利点を提供する。ポリリン酸メラミンなどのポリリン酸エステルの使用によって、火炎伝搬に対する抵抗性が向上し、煙が発生する傾向が低い材料が得られることも判明した。さらに、ポリリン酸メラミンはリン酸メラミンと異なる挙動をすることが発見された。
【0038】
難燃性成分における金属ホウ酸塩としては、限定されないが、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、及びその混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、ホウ酸亜鉛が使用される。金属ホウ酸塩は、エポキシ系組成物の総重量に対して約0.1~約15重量%の範囲の量でエポキシ系組成物中に存在する。好ましい実施形態において、金属ホウ酸塩は、エポキシ系組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲の量で存在する。
【0039】
アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム族水酸化物としては、限定されないが、アルミニウム三水和物及び水酸化マグネシウムが挙げられる。一般に、金属水酸化物は、組成物の全重量に対して1~20重量%、好ましくは5~20重量%、又は10~20重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
低密度充填剤成分
難燃性エポキシ系組成物の低密度充填剤成分は、中空無機微小球又はマイクロバルーンから選択される。その微小球は、小さな球形の中空体である。それぞれの微小球は、中空コアを封入する外部シェルからなる。微小球は、直径数百マイクロメートル以下、壁厚約11/2マイクロメートルの範囲で市販されている。好ましくは、現在の難燃性組成物において使用されている直径の範囲は、5~150ミクロンである。微小球は、ガラス、シリカ(SiO2)、ジルコニア、セラミック、及びカーボンなどの様々な材料から製造され得る。官能基で置換されたシロキサン(例えば、Dow Corningから市販のZ-6020及びZ-6040)などの適切なカップリング剤を適用して、マイクロバルーン表面を被覆してその特性を高めることができる。例として、商標Eccospheres(登録商標)でTrelleborgから市販のシリカ微小球が本明細書に開示される目的に適している。
【0041】
本明細書における目的に適した微小球は、密度0.5g/cm3未満、一部の実施形態では、0.1~0.4g/cm3又は0.1~0.3g/cm3の範囲の密度を示す。微小球の粒径は、1~300μmの範囲、一部の実施形態では、40~60μmの範囲であり得る。微小球粒径の測定は、光学顕微鏡又は走査電子顕微鏡(SEM)下にて、微小球の統計学的に有意な試料を解析することによって実施され得る。
【0042】
難燃性エポキシ系組成物の密度は、第1タイプの低密度中空微小球よりも低い密度を有する、第2タイプの低密度中空微小球の添加によってさらに低減され得る。第2タイプの低密度中空微小球の密度は、0.01~0.03g/cm3の範囲内である。第2タイプの低密度中空微小球の粒径は、20~100μm、好ましくは35~55μmの範囲であり得る。
【0043】
一部の実施形態において、微小球(合計)は、エポキシ系組成物全体の15~25重量%の量で存在する。
【0044】
特性及び用途
本開示内容の難燃性、ハロゲン不含エポキシ系組成物は、その初期粘度が低いだけでなく、時間が経つにつれて最低粘度が増加するため、押出し成形によって加工することができるという点で、望ましい加工性を有すると特徴付けられる。粘度の増加は、貯蔵寿命及び耐火性組成物の用途を制限し得る。材料が製造された直後の材料の押出し速度として定義される、初期押出し速度は、時間が経つにつれて著しく下がり、それによって材料の貯蔵寿命及び加工能力が制限される。例えば、その配合後の1日又は2日後に、押出し速度が低くなることは、エポキシ系組成物では一般的である。本開示内容の難燃性エポキシ系組成物は、成分の混合後初期には、100g/分を超える押出し速度を示し、その後、8日間まではその速度を維持する。
【0045】
加工性が優れているため、本開示内容の難燃性エポキシ系組成物は、限定されないが、ペースト、フィルム、粘性樹脂等の異なる様々な形態で供給され得て、且つ/又は使用され得る。
【0046】
本開示内容の耐火性エポキシ系組成物は、熱硬化性であり、つまり加熱すると、組成物は硬化を起こす。硬化条件は、用途に応じて、且つ組成物中で使用される硬化剤の選択に応じても異なり得る。一部の実施形態において、そのエポキシ系組成物は、5~240分と様々な硬化サイクルの間に、100~180℃の範囲内の温度で硬化性である。
【0047】
一部の実施形態において、耐火性エポキシ系組成物の熱硬化により得られる、硬化された材料は、煙の発生が少ないこと、及び燃焼時間が短いことなど、難燃性を特徴とする、十分にバランスのとれた特性を示す。かかる硬化材料はまた、燃焼中に毒性ガスをほとんど、ないし全く発生しない。例えば、硬化された(hardened)、硬化(cured)材料は以下の:
1. 90秒後に100未満、240秒後に200未満の有炎燃焼煙濃度;
2. 60秒垂直難燃試験における152mm未満の燃焼長さ;
3. 60秒垂直難燃試験における15秒未満の発炎時間;及び
4. 3秒未満のドリップ(drip)発炎時間;
を提供し得る。
【0048】
一部の実施形態において、硬化材料は、室温(20~25℃)にて少なくとも2500psi(17.2MPa)、例えば2500~5000psi(17.2~34.5MPa)の圧縮強さを有する。かかる圧縮強さは、ASTM D 695に準拠して決定される。本明細書に開示される強靭化成分(特に、CSR粒子とエラストマー材料の組み合わせ)の添加によって、得られる組成物の圧縮強さが増加し得ることが発見された。かかる強靭化成分が存在することによって、例えば、使用時の定荷重及び定力に遭遇する構造部品の、生活環の間中生じる圧縮力下での微小亀裂に対する耐性が提供される。
【0049】
本開示内容の耐火性エポキシ系組成物は、その密度が低いため、軽量構造を有することが望まれる構造部品での使用に適している。この組成物は、航空宇宙産分野において、例えば、航空機内部の材料、一般には、部品を接合、封止及び/又は断熱するための材料として特に有用である。特に適している用途は、サンドイッチパネルのハニカムコアにおける1つ又は複数のボイドを充填するための、例えばハニカムサンドイッチパネルのエッジを封止する、又はパネル内の損傷領域を修復するための、ポッティングコンパウンドとしてのその使用である。サンドイッチパネルの損傷は、損傷領域のハニカムコア内にポッティングコンパウンドを適用することによって修復することができる。ポッティングコンパウンドの適用は、注入、コーティング、又はこて塗りなどの従来の技術によって行うことができる。