(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ブリッジ回路のパワー半導体スイッチをオフにする方法、ブリッジ回路、およびブリッジ回路を含むインバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20240819BHJP
【FI】
H02M7/483
(21)【出願番号】P 2021548249
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020054048
(87)【国際公開番号】W WO2020169512
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】102019104145.7
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シュティッケルマン,ウーヴェ
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109088559(CN,A)
【文献】特開2013-085325(JP,A)
【文献】Michael Gleissner, Robert Maier, Mark-M. Bakran,Comparison of fault-tolerant multilevel inverters,2017 19th European Conference on Power Electronics and Applications (EPE'17 ECCE Europe),IEEE,2017年,Pages 1-10,https://ieeexplore.ieee.org/document/8099102,DOI: 10.23919/EPE17ECCEEurope.2017.8099102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路(1)のパワー半導体スイッチをオフにする方法であって、
前記ブリッジ回路(1)の第1のDC電圧接続部(2)は、第1のパワー半導体スイッチ(T1)を介して第1の中間点(3)に接続され、前記第1の中間点(3)は、第2のパワー半導体スイッチ(T2)を介して前記ブリッジ回路(1)のAC接続部(4)に接続され、前記AC接続部(4)は、第3のパワー半導体スイッチ(T3)を介して、第2の中間点(5)に接続されており、前記第2の中間点(5)は、第4のパワー半導体スイッチ(T4)を介して前記ブリッジ回路(1)の第2のDC電圧接続部(6)に接続され、前記ブリッジ回路(1)の中性接続部(7)は、第5のパワー半導体スイッチ(T5)を介して第1の中間点(3)に接続され、第6のパワー半導体スイッチ(T6)を介して第2の中間点(5)に接続されており、
前記方法は、前記ブリッジ回路(1)内のすべてのパワー半導体スイッチ(T1~T6)がスイッチオフ状態にある構成(K-O)が確立されるスイッチオフプロセスを含み、
前記スイッチオフプロセスの過程で、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)及び前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)が同時にスイッチオン状態になる構成(K-3、K-5、K-9)が意図的に確立される一方、前記第1パワー半導体スイッチ(T1)及び前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)はスイッチオフ状態にあることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記スイッチオフプロセスの開始時に存在し、前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)と、前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)と、及び前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3パワー半導体スイッチ(T3)のいずれかとがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチ(T2、T3、T4、T5)がスイッチオフ状態にある構成(K-A、K-B)から開始して、
前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)が、前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)が、前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、
前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法において、
前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)および前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)が、前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行するように同時に制御されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、
前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行した後に、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)がスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記スイッチオフプロセスの開始時に存在し、前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)と、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)と、及び前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)のいずれかとがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチ(T1、T2、T3、T6)はスイッチオフ状態にある構成から開始して、
前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)および前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)が、前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行するように同時に制御されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、前記第6のパワー半導体が前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行した後、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)または前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)がスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、
前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)および前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)がスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチ(T1、T2、T3、T4)がスイッチオフにある構成が、前記スイッチオフプロセスの過程で確立された後、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)および第6のパワー半導体スイッチ(T6)が、前記スイッチオフプロセスの過程で、スイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記中性接続部(7)の電位に対して正である電位が、前記第1のDC電圧接続部(2)に印加され、前記中性接続部(7)の電位に対して負の電位が前記第2のDC電圧接続部(6)に印加され、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)および前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)がスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチ(T1、T2、T3、T4)がスイッチオフ状態にある構成が、前記スイッチオフプロセスの過程で確立された後、この構成から開始して、前記AC接続部(4)に正の電流が存在する場合、前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)がスイッチオン状態に移行し、前記AC接続部(4)に負の電流が存在する場合、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)がスイッチオン状態に移行し、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)および前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)が前記スイッチオフプロセスの過程でこの前にスイッチオフ状態に移行した後、前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)または前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)が、それぞれスイッチオフ状態に再び移行することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記第5パワー半導体スイッチ(T5)および前記第6パワー半導体スイッチ(T6)がスイッチオフ状態に移行した時点、および/または前記AC接続部(4)で電流のゼロ交差が発生した時点から、事前に定義可能な時間が経過した後、前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)または前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)が、それぞれ、前記スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することを特徴とする方法。
【請求項15】
第1のパワー半導体スイッチ(T1)、第2のパワー半導体スイッチ(T2)、第3のパワー半導体スイッチ(T3)、第4のパワー半導体スイッチ(T4)、第5のパワー半導体スイッチ(T5)、第6のパワー半導体スイッチ(T6)を有するブリッジ回路(1)において、
前記ブリッジ回路(1)の第1のDC電圧接続部(2)は、前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)を介して第1の中間点(3)に接続され、前記第1の中間点(3)は、前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)を介して前記ブリッジ回路(1)のAC接続部(4)に接続され、前記AC接続部(4)は、前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)を介して第2の中間点(5)に接続され、前記第2の中間点(5)は、前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)を介して前記ブリッジ回路(1)の第2のDC電圧接続部(6)に接続され、前記ブリッジ回路(1)の中性接続部(7)は、前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)を介して第1の中間点(3)に接続され前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)を介して前記第2の中間点(5)に接続され、さらに、スイッチオフ状態からスイッチオン状態に、またはその逆に移行すべく、前記ブリッジ回路(1)の前記パワー半導体スイッチ(T1~T6)を制御するための制御ユニット(8)を備え、前記制御ユニット(8)が、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されることを特徴とするブリッジ回路(1)。
【請求項16】
請求項15に記載のブリッジ回路(1)において、
前記パワー半導体スイッチ(T1~T6)は、前記スイッチオン状態の前記第1のパワー半導体スイッチ(T1)が、前記第1のDC電圧接続部(2)から前記第1の中間点(3)への電流の流れを可能にし、前記スイッチオン状態の前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)が、前記第1の中間点(3)から前記AC接続部(4)への電流の流れを可能にし、前記スイッチオン状態の前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)が、前記AC接続部(4)から前記第2の中間点(5)への電流の流れを可能にし、前記スイッチオン状態の前記第4のパワー半導体スイッチ(T4)が、前記第2の中間点(5)から前記第2のDC電圧接続部(6)への電流の流れを可能にし、前記スイッチオン状態の前記第5のパワー半導体スイッチ(T5)が、前記第1の中間点(3)から前記中性接続部(7)への電流の流れを可能にし、前記スイッチオン状態の前記第6のパワー半導体スイッチ(T6)が、前記中性接続部(7)から前記第2の中間点(5)への電流の流れを可能にするように構成されており、
逆並列ダイオード(D1-D6)が、各パワー半導体スイッチ(T1~T6)にそれぞれ配置されており、各パワー半導体スイッチ(T1~T6)の前記スイッチオン状態で可能になる電流の流れ方向と反対の電流の流れを可能にするように、それぞれ構成されていることを特徴とするブリッジ回路。
【請求項17】
請求項15または16に記載のブリッジ回路(1)において、
前記第2のパワー半導体スイッチ(T2)および前記第3のパワー半導体スイッチ(T3)は電界効果トランジスタとして具体化され、他のパワー半導体スイッチ(T1、T4、T5、T6)はバイポーラトランジスタとして具体化されることを特徴とするブリッジ回路。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の少なくとも1つのブリッジ回路(1)を備えるインバータ(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリッジ回路内のパワー半導体スイッチをオフにする方法に関する。また、本発明は、そのような方法を実行するように構成された制御ユニットを有するブリッジ回路、およびそのようなブリッジ回路を含むインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリッジ回路は、ある形式の電流から別の形式に変換するためのパワーエレクトロニクスコンバータ回路、例えば、直流を交流に変換するためのインバータで使用される。ブリッジ回路は通常、直列および/または並列に接続された複数のパワー半導体スイッチの配置を含み、パワー半導体スイッチ間のリンク点は、ブリッジ回路の接続部を形成する。様々な数のパワー半導体スイッチの様々な配置は、当業者に知られているブリッジ回路の多様な異なるトポロジーをもたらす。
【0003】
ある形式の電流から別の形式の電流に変換するために、ブリッジ回路のパワー半導体スイッチは、特定のスイッチングパターンに従って動作中にオンとオフが切り替えられる。特に障害が発生した場合、たとえば過電流または過電圧が発生した場合、またはコンバータ回路の通常のシャットダウン中に、ブリッジ回路内のすべてのパワー半導体スイッチを、障害が発生した場合でも可能な限り迅速にスイッチオフ状態に移行させる必要がある。この場合、先行技術によれば、ブリッジ回路内のすべてのパワー半導体スイッチの制御信号を、ブリッジ回路内のパワー半導体スイッチをスイッチオフに移行する信号状態に即座に同時に変更することは明らかであり、広く普及している。
【0004】
電子部品の許容誤差のために、特に電界効果トランジスタやバイポーラトランジスタなどの様々な技術のパワー半導体スイッチがブリッジ回路内で使用される場合、ブリッジ回路内の個々のパワー半導体スイッチは、スイッチオフ状態に移行するように制御された後、他のスイッチよりも迅速にスイッチオフ状態に移行する状況が発生する可能性がある。
【0005】
マルチレベルトポロジーのブリッジ回路では、機能原理の問題として、ブリッジ回路の入力接続部の様々な電位にリンクされた電圧レベルがブリッジ回路の出力接続部に適用される。その結果、ブリッジ回路内のすべてのパワー半導体スイッチが同時に制御される場合、上記のように異なるパワー半導体スイッチをスイッチオフ状態に移行させる速度が異なるために、ブリッジ回路に追加で存在するフリーホイールダイオードを介して発生する電流と連動して、コンバータ回路の通常の動作中よりも高い電圧が、ブリッジ回路内の個々のパワー半導体スイッチに一時的に印加される。これらのより高い電圧は、ブリッジ回路内の個々のパワー半導体スイッチの破壊につながる可能性がある。
【0006】
たとえば、EP2779345A1公報は、第1のDC電圧接続部が4つのパワー半導体スイッチを含む直列回路を介して第2のDC電圧接続部に接続され、直列回路の第2の及び第3のパワー半導体スイッチ間のリンクポイントがAC接続部を形成する3レベルトポロジーのブリッジ回路を開示している。直列回路の第1のパワー半導体スイッチと第2のパワー半導体スイッチの間、および直列回路の第3のパワー半導体スイッチと第4のパワー半導体スイッチの間のリンクポイントは、それぞれ、別のパワー半導体スイッチを介して中性接続部に接続され、したがって、これはさらに2つのパワー半導体スイッチのリンクポイントも形成する。このようなブリッジトポロジーは、ANPCブリッジ回路(アクティブニュートラルポイントクランプブリッジ回路)とも称される。
【0007】
ANPCブリッジ回路では、分割DCリンク回路は通常、ブリッジ回路のDC電圧接続部に接続され、分割DCリンク回路の中心点は、ブリッジ回路の中性接続部に接続される。ANPCブリッジ回路の通常の動作中、DCリンク電圧の最大でも半分が各パワー半導体スイッチに印加される。対照的に、すべてのパワー半導体スイッチが同時に制御されてスイッチオフ状態に移行する場合、完全なDCリンク電圧、すなわち動作中に発生する電圧の値の2倍が個々のパワー半導体スイッチに印加される状況が生じる可能性がある。
【0008】
したがって、上記のEP2779345A1公報は、ANPCブリッジ回路内のパワー半導体スイッチが、同時にではなく特定の順序でスイッチオフ状態に移行するように制御される、異なる形態のスイッチオフプロセスを説明している。この場合、直列回路の第1または第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの開始時にスイッチオン状態にある場合、前記スイッチは、上記のEP2779345A1公報に記載されているスイッチオフプロセスの過程で、他のすべてのパワー半導体スイッチの前に、すなわち最初に、常にスイッチオフ状態に移行する。
【0009】
故障が発生した場合に可能な限り迅速に安全な状態を確立することに関して、ブリッジ回路内で異なる技術のパワー半導体スイッチを使用する場合、上記EP2779345A1公報のように、まず第一に、直列回路の第1または第4のパワー半導体スイッチではなく、直列回路の第2または第3のパワー半導体スイッチを制御して、他のすべてのパワー半導体スイッチの前にスイッチオフ状態に移行させることが有利である。
【0010】
上記のEP2779345A1公報に記載されているスイッチオフプロセスでは、特に、直列回路の第1および第2のパワー半導体スイッチ間、並びに、直列回路の第3及び第4のパワー半導体スイッチ間のリンクポイントの電位が変動する可能性があることも考慮されておらず、このため、DCリンク電圧の半分を超える電圧がスイッチオフプロセスの過程で個々のパワー半導体スイッチに印加される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、スイッチオフプロセスの過程で個々のパワー半導体スイッチで発生するブリッジ回路の通常の動作中よりも高い電圧なしに、ブリッジ回路内のすべてのパワー半導体スイッチがスイッチオフ状態にある構成を確立することが可能な、ブリッジ回路及び対応するブリッジ回路内のパワー半導体スイッチをオフにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明によれば、独立請求項1に記載の方法、独立請求項15に記載のブリッジ回路、およびこのようなブリッジ回路を含む独立請求項18に記載のインバータを用いて達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
ブリッジ回路のパワー半導体スイッチをオフにするための本発明に係る方法は、ブリッジ回路の第1のDC電圧接続部は、第1のパワー半導体スイッチを介して第1の中間点に接続され、第1の中間点は、第2のパワー半導体スイッチを介してブリッジ回路のAC接続部に接続され、AC接続部は、第3のパワー半導体スイッチを介して、第2の中間点に接続されており、第2の中間点は、第4のパワー半導体スイッチを介してブリッジ回路の第2のDC電圧接続部に接続され、ブリッジ回路の中性接続部は、第5のパワー半導体スイッチを介して第1の中間点に接続され、第6のパワー半導体スイッチを介して第2の中間点に接続されており、前記方法は、ブリッジ回路内のすべてのパワー半導体スイッチがスイッチオフ状態にある構成が確立されるスイッチオフプロセスを含む。そうすることにより、スイッチオフプロセスの過程で、第5のパワー半導体スイッチ及び第6のパワー半導体スイッチが同時にスイッチオン状態になる構成が意図的に確立される一方、第1パワー半導体スイッチ及び第4のパワー半導体スイッチはスイッチオフ状態にある。
【0014】
第5のパワー半導体スイッチと第6のパワー半導体スイッチが同時にスイッチオン状態にあるという事実の結果として、この構成は、第1のパワー半導体スイッチと第2のパワー半導体スイッチとの間の第1の中間点の電位、及び第3のパワー半導体スイッチと第4のパワー半導体スイッチとの間の第2の中間点の電位の双方の電位を、ブリッジ回路の中性接続部に存在する電位に恒久的にクランプし、その結果、もはや浮遊することができなくなる。その結果、最大で第1のDC電圧接続部と中性接続部との間に印加される電圧、または第2のDC電圧接続部と中性接続部との間に印加される電圧は、ブリッジ回路内の各パワー半導体スイッチに印加することができる。この場合、第1のパワー半導体スイッチおよび第4のパワー半導体スイッチのスイッチオフ状態は、第1のDC電圧接続部と中性接続部との間、および第2のDC電圧接続部と中性接続部との間の短絡を防止する。
【0015】
ブリッジ回路の通常の動作中に、例えば、第1のパワー半導体スイッチと、第6のパワー半導体スイッチと、及び第2のパワー半導体スイッチまたは第3パワー半導体スイッチのいずれかとがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチがスイッチオフ状態にある構成が発生する。スイッチオフプロセスの開始時にこの構成から開始して、本発明に係る方法の一実施例では、第1のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第5のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行し得る。
【0016】
そうすることで、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチが、スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第1のパワー半導体スイッチが、スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行し得る。
【0017】
しかしながら、第1のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することもできる。
【0018】
代替的に、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチおよび第1のパワー半導体スイッチが、スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行するように同時に制御される。スイッチオフ状態への移行の時間的関係は、パワー半導体スイッチのそれぞれのスイッチング速度に起因する。
【0019】
本発明に係る方法のさらなる実施例では、第5のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行した後に、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行する。第1のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第5のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行するという条件に関連して、この実施形態では、第1のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチもまた、スイッチオフプロセスの過程で、スイッチオフ状態に暗黙的に移行する。
【0020】
ブリッジ回路の通常の動作中に、例えば、第4のパワー半導体スイッチと、第5のパワー半導体スイッチと、及び第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチのいずれかとがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチはスイッチオフ状態にある構成が生じる。スイッチオフプロセスの開始時にこのような構成から開始して、本発明に係る方法のさらなる実施例では、第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第6のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行し得る。
【0021】
そうすることで、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行し得る。
【0022】
しかしながら、第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行することもできる。
【0023】
代替的に、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチおよび第4のパワー半導体スイッチが、スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行するように同時に制御され得る。スイッチオフ状態への移行の時間的関係は、パワー半導体スイッチのそれぞれのスイッチング速度に起因する。
【0024】
本発明に係る方法のさらなる実施例では、第6のパワー半導体がスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行した後、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチがスイッチオフ状態に移行する。第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、第6のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行するという条件に関連して、第4のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行した後、この実施例では、第2のパワー半導体スイッチまたは第3のパワー半導体スイッチもまた、スイッチオフプロセスの過程で暗黙的にスイッチオフ状態に移行する。
【0025】
本発明に係る方法のさらなる実施例では、第5のパワー半導体スイッチおよび第6のパワー半導体スイッチがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチがスイッチオフにある構成が、スイッチオフプロセスの過程で確立された後、第5のパワー半導体スイッチおよび第6のパワー半導体スイッチが、スイッチオフプロセスの過程で、スイッチオフ状態に移行する。
【0026】
このケースでは、スイッチオフプロセスの過程で、第5のパワー半導体スイッチおよび第6のパワー半導体スイッチがスイッチオン状態にあり、他のすべてのパワー半導体スイッチがスイッチオフ状態にあるから開始して、AC接続部に正の電流が存在する場合、まず第3のパワー半導体スイッチがスイッチオン状態に移行し、AC接続部に負の電流が存在する場合、第2のパワー半導体スイッチがスイッチオン状態に移行し得る。第5のパワー半導体スイッチおよび第6のパワー半導体スイッチがスイッチオフプロセスの過程でこの前にスイッチオフ状態に移行した後、第3のパワー半導体スイッチまたは第2のパワー半導体スイッチが、それぞれスイッチオフ状態に再び移行する。このケースでは、中性接続部の電位に対して正の電位が第1のDC電圧接続部に印加され、中性接続部の電位に対して負の電位が第2のDC電圧接続部に印加されるという事実から、正電流または負電流としての電流方向が生じ、正の電位から負の電位または中性接続部の電位に流れる電流は、正の電流と称され、逆に、負の電位から正の電位または中性接続部の電位に流れる電流は、負の電流と称される。
【0027】
上記の実施例では、第5パワー半導体スイッチおよび第6パワー半導体スイッチがスイッチオフ状態に移行した時点、および/またはAC接続部で電流のゼロ交差が発生した時点から、事前に定義可能な時間が経過した後、第3のパワー半導体スイッチまたは第2のパワー半導体スイッチが、それぞれ、スイッチオフプロセスの過程でスイッチオフ状態に移行し得る。
【0028】
本発明に係るブリッジ回路は、第1のパワー半導体スイッチ、第2のパワー半導体スイッチ、第3のパワー半導体スイッチ、第4のパワー半導体スイッチ、第5のパワー半導体スイッチ、第6のパワー半導体スイッチを有し、ブリッジ回路の第1のDC電圧接続部は、第1のパワー半導体スイッチを介して第1の中間点に接続され、第1の中間点は、第2のパワー半導体スイッチを介してブリッジ回路のAC接続部に接続され、AC接続部は、第3のパワー半導体スイッチを介して第2の中間点に接続され、第2の中間点は、第4のパワー半導体スイッチを介してブリッジ回路の第2のDC電圧接続部に接続され、さらに、ブリッジ回路の中性接続部は、第5のパワー半導体スイッチを介して第1の中間点に接続され第6のパワー半導体スイッチを介して第2の中間点に接続される。本発明に係るブリッジ回路は、さらに、スイッチオフ状態からスイッチオン状態に、またはその逆に移行すべく、ブリッジ回路のパワー半導体スイッチを制御するための制御ユニットを備え、制御ユニットが、本発明に係る方法を実行するように構成されることを特徴とする。
【0029】
本発明に係るブリッジ回路の一実施例では、パワー半導体スイッチは、スイッチオン状態の第1のパワー半導体スイッチが、第1のDC電圧接続部から第1の中間点への電流の流れを可能にし、スイッチオン状態の第2のパワー半導体スイッチが、第1の中間点からAC接続部への電流の流れを可能にし、スイッチオン状態の第3のパワー半導体スイッチが、AC接続部から第2の中間点への電流の流れを可能にし、スイッチオン状態の第4のパワー半導体スイッチが、第2の中間点から第2のDC電圧接続部への電流の流れを可能にし、スイッチオン状態の第5のパワー半導体スイッチが、第1の中間点から中性接続部への電流の流れを可能にし、スイッチオン状態の第6のパワー半導体スイッチが、中性接続部から第2の中間点への電流の流れを可能にするように構成されている。同時に、逆並列ダイオードが、各パワー半導体スイッチにそれぞれ配置されており、各パワー半導体スイッチのスイッチオン状態で可能になる電流の流れ方向と反対の電流の流れを可能にするように、それぞれ構成されている。
【0030】
本発明に係るブリッジ回路のさらなる実施例では、第2のパワー半導体スイッチおよび第3のパワー半導体スイッチは電界効果トランジスタ、特にSiC MOSFETとして具体化され、他のパワー半導体スイッチはバイポーラトランジスタ、特にSi技術のIGBTとして具体化される。
【0031】
本発明によるブリッジ回路のようなパワー半導体スイッチの配置は、例えば、いわゆるANPCブリッジ回路に見られ、これは、3レベルのトポロジーとして、3つの電圧レベルをブリッジ回路のAC電圧接続部に印加する。しかしながら、その構成はまた、3を超える電圧レベルを有するマルチレベルトポロジーの一部であり得る。この場合、さらなるパワー半導体スイッチは、第1のDC電圧接続部および第2のDC電圧接続部において第1~第4のパワー半導体スイッチと直列に接続され、その連結点は、さらなる中間点を形成し、これは、ブリッジ回路の中性接続部に接続することも、ダイオードまたはパワー半導体スイッチを介してブリッジ回路の中性接続部に接続することもできる。さらなるパワー半導体スイッチを制御するための示唆は、このケースでは本発明の示唆から容易に導き出すことができ、それによれば、可能な複数の中性接続部の1つに接続されたパワー半導体スイッチが同時にスイッチオン状態にある構成は、スイッチオフプロセスの過程で意図的に確立される。
【0032】
本発明に係るインバータは、本発明に係る少なくとも1つのブリッジ回路を含む。本発明に係るこのようなインバータは、例えば本発明による2つのブリッジ回路もまた、オフセット方式でクロックされる、例えば単相インバータであり、しかしながら、例えば、本発明に係る少なくとも3つのブリッジ回路がオフセット方式でクロックされる三相インバータであってもよい。
【0033】
本発明に係る方法の本説明において、状態への移行に関して言及された時間的関係は、常に、スイッチオンまたはスイッチオフ状態への移行の完了に関連しており、すなわち、プロセスの完了が上述の関係に準拠している場合、スイッチオンまたはスイッチオフ状態に移行するためのプロセスも時間の点で非常によく重複する可能性がある。しかしながら、パワー半導体スイッチをスイッチオンまたはスイッチオフ状態に移行するための制御プロセスは、別のパワー半導体スイッチのスイッチオンまたはスイッチオフ状態への移行が完了した場合のみ実行することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、図に基づいて以下により詳細に説明される。この場合、図は、本発明の実施形態を説明するために使用されるが、本発明を図示される態様に限定するものではない。
【
図2】
図2は、本発明に係る方法におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図5】
図5は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図7】
図7は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図8】
図8は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図9】
図9は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図10】
図10は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【
図11】
図11は、本発明に係る方法のさらなる実施例におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を含む表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明に係るブリッジ回路1を示しており、ブリッジ回路1の第1のDC電圧接続部2が、第1のパワー半導体スイッチT1、第2のパワー半導体スイッチT2、第3のパワー半導体スイッチT3および第4のパワー半導体スイッチT4を含む直列回路を介してブリッジ回路1の第2のDC電圧接続部6に接続されている。第1のパワー半導体スイッチT1と第2のパワー半導体スイッチT2との間の連結点は、第1の中間点3を形成し、第3のパワー半導体スイッチT3と第4のパワー半導体スイッチT4との間の連結点は、第2の中間点5を形成する。ブリッジ回路1のAC接続部4は、第2のパワー半導体スイッチT2と第3のパワー半導体スイッチT3との間の連結点によって形成されている。
【0036】
パワー半導体スイッチT1~T4は、スイッチオン状態の第1のパワー半導体スイッチT1が第1のDC電圧接続部2から第1の中間点3に電流を流し、スイッチオン状態の第2のパワー半導体スイッチT2が第1の中間点3からAC接続部4に電流を流し、スイッチオン状態の第3のパワー半導体スイッチT3がAC接続部4から第2の中間点5に電流を流し、スイッチオン状態の第4のパワー半導体スイッチT4が第2の中間点5から第2のDC電圧接続部6に電流を流すことを可能にする。逆並列ダイオードD1からD4は、パワー半導体スイッチT1~T4のそれぞれに配置され、それぞれ、スイッチオン状態のそれぞれのパワー半導体スイッチT1~T4で可能である電流の流れ方向と反対の電流の流れを可能にする。
【0037】
第1の中間点3と第2の中間点5との間に配置されるのは、第5のパワー半導体スイッチT5と第6のパワー半導体スイッチT6とを備える直列回路であり、その連結点はブリッジ回路1の中性接続部7を形成する。パワー半導体スイッチT5およびT6は、スイッチオン状態の第5のパワー半導体スイッチT5が、第1の中間点3から中性接続部7に電流を流し、スイッチオン状態の第6のパワー半導体スイッチT6が、中性接続部7から第2の中間点5に電流を流し得るように構成される。パワー半導体スイッチT5およびT6には、それぞれのパワー半導体スイッチT5またはT6のスイッチオン状態で可能になる電流の流れ方向と反対の電流の流れが、ダイオードD5およびD6を介して可能であるような方法で、それぞれ逆並列ダイオードD5およびD6が配置されている。
【0038】
本発明に係るブリッジ回路1は、制御入力を介してパワー半導体スイッチT1~T6に制御信号G1~G6を供給する制御ユニット8を有し、制御信号を使用して、パワー半導体スイッチT1~T6を制御し、スイッチオフ状態からスイッチオン状態に、またはその逆の状態に変換する。制御ユニット8は、制御方法を使用して、通常の動作中にパワー半導体スイッチT1~T6をオンおよびオフに切り替えるように構成される。このような目的のために、当業者には様々な制御方法が知られている。しかしながら、制御ユニット8は、特に、スイッチオフプロセスを使用して、パワー半導体スイッチT1~T6がすべてスイッチオフされた構成を確立するために、本発明による方法を実行するように構成される。
【0039】
図1の例示的な実施形態では、第2のパワー半導体スイッチT2および第3のパワー半導体スイッチT3は、電界効果トランジスタ、例えばSiC MOSFETとして具体化され、パワー半導体スイッチT1、T4、T5およびT6は、バイポーラトランジスタ、例えばSi技術のIGBTとして具体化される。パワー半導体スイッチT1~T6の技術のそのような選択は、例えば、通常の動作中に、パワー半導体スイッチT1、T4、T5およびT6が、AC接続部4に存在する交流の周波数でオンおよびオフに切り替えられ、パワー半導体スイッチT2およびT3が、比較的高周波のパルス幅変調信号(PWM信号)を使用して、互いに相補的な方法でオンおよびオフに切り替えられる制御方法を選択する場合、例えば、パワー半導体スイッチT1~T6のスイッチング損失およびオン状態損失に関してブリッジ回路の最適化を可能にする。
【0040】
例えば、AC接続部4で出力される電圧の符号に応じて、第1および第3のパワー半導体スイッチT1、T3または第4および第2のパワー半導体スイッチT4、T2が、高周波PWM信号を使用して互いに相補的な方法でオンおよびオフに切り替えられ、一方、他のそれぞれのパワー半導体スイッチT1~T6が、AC接続部4に存在する交流の周波数でオンとオフが切り替わるが、使用する制御方法とは完全に独立しているような制御方法を使用する場合、他のパワー半導体スイッチT1~T6、例えば、パワー半導体スイッチT1、T4またはパワー半導体スイッチT1~T4もまた、電界効果トランジスタとして具体化され、それぞれの他のものは、バイポーラトランジスタとして具体化され得る。また、すべてのパワー半導体スイッチT1~T6は、電界効果トランジスタとして具体化され、またはすべてのパワー半導体スイッチT1~T6は、バイポーラトランジスタとして具体化され得る。
【0041】
図2は、表の形で、第1、第2および第6のパワー半導体スイッチT1、T2およびT6がスイッチオン状態にあり、第3、第4および第5のパワー半導体スイッチT3、T4およびT5がスイッチオフ状態にある、スイッチオフ処理の開始時に存在する構成K-Aから開始し、構成すべてのパワー半導体スイッチT1からT6がスイッチオフ状態にある構成K-Oが確立される、本発明による方法によるスイッチオフプロセスの可能な実施形態を示している。この目的のために、最初に、第2のパワー半導体スイッチT2がスイッチオフ状態に移行された構成K-1が確立される。次のステップでは、パワー半導体スイッチT1がスイッチオフ状態に移行し、構成K-2になる。第3のステップでは、第5のパワー半導体スイッチT5がスイッチオン状態に移行する。これにより、本発明による方法の特徴のように、第5のパワー半導体スイッチT5および第6のパワー半導体スイッチT6が同時にスイッチオン状態にある一方、第1のパワー半導体スイッチT1及び第4のパワー半導体スイッチT4はスイッチオフ状態にある構成K-3となる。次に、構成K-Oを確立するために、第5および第6のパワー半導体スイッチT5およびT6がスイッチオフ状態に移行される。これを行う際に、本例に示すように、パワー半導体スイッチT5およびT6は、スイッチオフ状態に移行するように同時に制御することができるが、スイッチオフ状態に任意の順序で順次移行するように制御することもできる。
【0042】
図3は、本発明による方法の実施形態におけるスイッチオフプロセスの過程にわたる構成のさらなる可能性を表の形で示している。スイッチオフプロセスの開始時に存在し、第1、第3、および第6のパワー半導体スイッチT1、T3、およびT6がスイッチオン状態にあり第2、第4および第5のパワー半導体スイッチT2、T4およびT5はスイッチオフ状態にある構成K-Bから開始し、ここでは、最初に、第1のパワー半導体スイッチT1がスイッチオフ状態に移行された構成K-4を確立することによってK-Oが確立される。続いて、第3のパワー半導体スイッチT3がスイッチオフ状態に移行すると、構成K-2が得られ、そこから、第5パワー半導体スイッチT5をスイッチオン状態に移行することにより、構成K-3が確立される。次に、構成K-Oを確立するために、第5および第6のパワー半導体スイッチT5およびT6は、同時制御によってスイッチオフ状態に移行される。代替的に、パワー半導体スイッチT5およびT6はまた、それらが任意の順序で順次スイッチオフ状態に移行するように制御され得る。
【0043】
図4は、本発明による方法におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を伴うさらなる例示的な実施形態を示す。スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Aから開始して、構成K-Oは、ここでは、構成K-2を確立するための第1のステップにおいて、第1および第2のパワー半導体スイッチT1およびT2を同時に制御することによって、上記の例示的な実施形態のようにそれらを順次スイッチオフ状態に移行させるのではなく、確立される。次に、これに基づいて、構成K-3は、第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオン状態に移行することによって確立される。次に、本例示的な実施形態では、最初に第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオフ状態に転送することによって構成K-2を確立し、次のステップで第6のパワー半導体スイッチT6をスイッチオフ状態に移行することにより、上記の例示的な実施形態のように、第5および第6のパワー半導体スイッチT5およびT6を同時に制御してスイッチオフ状態に移行させるのではなく、構成K-Oを確立する。もちろん、構成K-Oを確立するために、最初に第6のパワー半導体スイッチT6を移行させ、次に第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオフ状態に移行させるすることも同様に可能である。
【0044】
図5に示されるように、本発明による方法におけるスイッチオフプロセスの過程にわたる構成の例示的な実施形態では、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Bから開始して、構成K-Oは、最初に、第1のパワー半導体スイッチT1をスイッチオフ状態に移行することによって構成K-4を確立することによって確立される。次に、次のステップで、構成K-5は、第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオン状態に移行させることによって確立され、構成K-3は、次のステップで、第3のパワー半導体スイッチT3をスイッチオフ状態に移行させることによって確立される。したがって、本実施形態では、第3のパワー半導体スイッチT3は、第5のパワー半導体スイッチT5がスイッチオフプロセスの過程でスイッチオン状態に移行した後、スイッチオフ状態に移行する。この例示的な実施形態では、構成K-5およびK-3の形態で、これは、本発明による方法の特徴として、第5のパワー半導体スイッチT5および第6のパワー半導体スイッチT6は同時にスイッチオン状態にある一方、第1のパワー半導体スイッチT1および第4のパワー半導体スイッチT4はスイッチオフ状態にある2つの構成をもたらす。構成K-Oは、例えば、このケースの場合の同時制御によって、第5および第6のパワー半導体スイッチT5およびT6をスイッチオフ状態に移行させることによって最終的に確立される。
【0045】
図6の例示的な実施形態は、表の形態で、本発明による方法によるスイッチオフプロセスを示しており、構成K-Oは、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Cから開始して確立され、構成K-Cでは、第3、第4、および第5のパワー半導体スイッチT3、T4、およびT5がスイッチオン状態にあり、第1、第2、および第6のパワー半導体スイッチT1、T2、およびT6がスイッチオフにある。これを実現するために、まず、第3のパワー半導体スイッチT3をスイッチオフ状態に移行することにより構成K-6を確立し、次のステップで、第4のパワー半導体スイッチT4がスイッチオフ状態に移行した構成K-7を確立する。次に、第6のパワー半導体スイッチT6をスイッチオン状態に移行させると構成K-3が得られ、ここから、第5および第6のパワー半導体スイッチT5およびT6を、ここでは例えば同時制御の手段によって、スイッチオフ状態に移行させることによって、構成K-Oが確立される。
【0046】
図7の例示的な実施形態では、スイッチオフプロセスの開始時に存在し、第2、第4、および第5のパワー半導体スイッチT2、T4、T5がスイッチオン状態にあり、第1、第3および第6のパワー半導体スイッチT1、T3、T6がスイッチオフ状態にある構成K-Dから開始し、構成K-Oは、第4のパワー半導体スイッチT4がスイッチオフ状態に移行された構成K-8を最初に確立することによって確立され、次に、第2パワー半導体スイッチT2をスイッチオフ状態に移行することにより構成K-7を確立し、第6パワー半導体スイッチT6をスイッチオン状態に移行することにより構成K-3を確立し、最後に、本実施形態では、T5、T6を同時に制御することにより、第5および第6のパワー半導体スイッチT5、T6をスイッチオフ状態に移行することによって構成K-Oを確立する。
【0047】
図8は、表の形で、本発明による方法におけるパワー半導体スイッチの状態の構成を伴うさらなる例示的な実施形態を示している。スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Cから開始して、構成K-Oは、第1のステップでスイッチオフ状態に移行する第3および第4のパワー半導体スイッチT3、T4を同時に制御することによって、ここでは確立され、これにより、構成K-7となる。次に、これに基づいて、構成K-3は、第6のパワー半導体スイッチT6をスイッチオン状態に移行することによって確立される。次に、まず第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオフ状態に移行することによって構成K-2を確立し、次に、第6のパワー半導体スイッチT6をスイッチオフ状態に移行することにより、さらなるステップで構成K-Oを確立する。代替的に、当然ながら、まず第6のパワー半導体スイッチT6を移行させ、次に第5のパワー半導体スイッチT5をスイッチオフ状態に移行させて、構成K-Oを確立するか、あるいは例えば、
図2、3、5、6、7の実施例のように、双方のパワー半導体スイッチT5、T6を同時に制御して、スイッチオフ状態に移行させる。
【0048】
図9の例示的な実施形態は、本発明による方法におけるスイッチオフプロセスの過程にわたる構成を示し、ここで、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Dから開始して、構成K-Oは、最初に、第4のパワー半導体スイッチT4をスイッチオフ状態に移行することによって構成K-8を確立することによって確立される。次に、次のステップで、構成K-9は、第6のパワー半導体スイッチT6をスイッチオン状態に移すことによって確立され、構成K-3は、次のステップで、第2のパワー半導体スイッチT2をスイッチオフ状態に移行させることによって、確立される。したがって、この例示的なスイッチオフプロセスの過程で、第2のパワー半導体スイッチT2は、第6のパワー半導体スイッチT6がスイッチオン状態に移行した後、スイッチオフ状態に移行する。この例示的な実施形態では、構成K-9およびK-3の形態で、これは、本発明による方法の特徴として、第5のパワー半導体スイッチT5および第6のパワー半導体スイッチT6は同時にスイッチオン状態にある一方で、第1のパワー半導体スイッチT1および第4のパワー半導体スイッチT4はスイッチオフ状態にある2つの構成をもたらす。構成K-Oは、例えばこのケースの場合には同時制御によって、第5および第6のパワー半導体スイッチT5、T6をスイッチオフ状態に移行することによって最終的に確立される。
【0049】
図10は、例えば、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Aから開始して、構成K-3が、構成K-1およびK-2を介したスイッチオフプロセスの過程で確立される、本発明に係る方法のさらなる例示的な実施形態を示す。これに基づいて、ブリッジ回路1のAC接続部4に正電流I
acが存在するため、構成K-5は、第3のパワー半導体スイッチT3をスイッチオン状態に移行することによって確立される。次に、構成K-10は、このケースの場合に同時制御によって、第5および第6のパワー半導体スイッチT5、T6をスイッチオフ状態に移すことによって確立され、最後に、第3のパワー半導体スイッチT3は、構成K-10の確立が経過し、それによって構成K-Oが確立された後、所定の期間T
1の後に再びスイッチオフ状態に移行する。代替的に、または所定の期間T
1に加えて、構成K-10を確立した後のブリッジ回路1のAC接続部4での電流Iacのゼロ交差も、構成K-10から構成K-Oに移行するための基準として使用することができる。
【0050】
図11の本発明に係る方法の例示的な実施形態では、例えば、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-Cから開始して、構成K-3は、最初に、構成K-6およびK-7を介したスイッチオフプロセスの過程で確立される。次に、ブリッジ回路1のAC接続部4に負の電流I
acが存在するため、構成K-9は、第2のパワー半導体スイッチT2をスイッチオン状態に移行することによって確立される。次に、構成K-11は、この場合は同時制御によって、第5番目および第6のパワー半導体スイッチT5、T6をスイッチオフ状態に移行し、構成K-11が確立された後にブリッジ回路1のAC接続部4で電流Iacのゼロ交差が発生した後、構成K-Oは、第2のパワー半導体スイッチT2を再びスイッチオフ状態に移行させることによって確立される。代替的に、またはブリッジ回路1のAC接続部4での電流I
acのゼロ交差に加えて、構成K-10の確立後の所定の期間T
1の経過もまた、構成K-10から構成K-Oに移行するための基準として使用することができる。
【0051】
図2~11に示されるに示される実施形態に加えて、スイッチオフプロセスの開始時に存在する構成K-A、K-B、K-CまたはK-Dから開始して、本発明によるブリッジ回路1の通常の動作中に使用される制御方法、およびスイッチオフプロセスの開始時に存在する他の構成に応じて、本発明による方法で構成K-Oを確立するために使用されるスイッチオフプロセスの複数のさらなる変形例を導出することも可能であり、これらのスイッチオフプロセスは、本発明による方法の特徴として、構成K-3、K-5およびK-9のうちの少なくとも1つを含み、第5のパワー半導体スイッチT5および第6のパワー半導体スイッチT6は同時にスイッチオン状態にある一方、第1のパワー半導体スイッチT1および第4のパワー半導体スイッチT4はスイッチオフ状態にある。
【0052】
本発明に係る方法では、ある構成から次の構成に移行する毎に、この方法が、ブリッジ回路1内の電流および電位の過渡プロセスが終了するまで待機してから、パワー半導体スイッチT1~T6がそれぞれの次の構成に移行されるように制御される場合に有利である。これは、特に、構成K-3、K-5およびK-9において、中間点3、5で電位の値を確実に定義するために有利である。
【0053】
図12は、本発明に係るインバータ9を示している。このインバータは、まず第一に、本発明に係るブリッジ回路1を有する。分割DCリンク回路12は、インバータ9の第1の入力接続部10に接続されているブリッジ回路1の第1のDC電圧接続部2と、インバータ9の第2の入力接続部11に接続されているブリッジ回路1の第2のDC電圧接続部6との間に配置されている。ブリッジ回路1の中性接続部7は、分割DCリンク回路12の中心点13に接続されている。ブリッジ回路1のAC接続部4は、インダクタ14を介してインバータ9の第1の出力接続部16に接続されている。コンデンサ15は、第1の出力接続部16とブリッジ回路1の中性接続部7に接続されたインバータ9の第2の出力接続部17との間に配置されている。コンデンサ15とインダクタ14は共にインバータ9のラインフィルタ18を形成する。 。
【0054】
図12に示すインバータ9では、いわゆる中性電位Nがブリッジ回路1の中性接続部7に存在し、対照的に、正の電位DC+がブリッジの第1のDC電圧接続部2に存在し、負の電位DC-がブリッジ回路1の第2のDC電圧接続部6に存在する。
【0055】
本例では、
図12のインバータ9は、本発明に係る1つのブリッジ回路1を具える単相インバータとして具体化されている。しかしながら、単相インバータとして具体化された本発明に係るインバータはまた、オフセット方式で制御される本発明に係る2つのブリッジ回路1を有し、その第1のDC電圧接続部2および第2のDC電圧接続部6が接続されている。本発明に係るインバータはまた、三相インバータとして実施することができ、三相インバータは、オフセット方式で制御される本発明に係る少なくとも3つのブリッジ回路1を有し、その第1のDC電圧接続部2および第2のDC電圧接続部6が接続されている。
【0056】
本発明は、明示的に示された実施形態に限定されず、むしろ様々な方法で修正することができ、特に、当業者に示されるかまたは知られている他の実施形態と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ブリッジ回路
2 DC電圧接続部
3 中間点
4 AC接続部
5 中間点
6 DC電圧接続部
7 中性接続部
8 制御ユニット
9 インバータ
10 入力接続部
11 入力接続部
12 DCリンク回路
13 中心点
14 インダクタ
15 コンデンサ
16 出力接続部
17 出力接続部
18 ラインフィルタ
T1 パワー半導体スイッチ
T2 パワー半導体スイッチ
T3 パワー半導体スイッチ
T4 パワー半導体スイッチ
T5 パワー半導体スイッチ
T6 パワー半導体スイッチ
D1 ダイオード
D2 ダイオード
D3 ダイオード
D4 ダイオード
D5 ダイオード
D6 ダイオード
G1 制御信号
G2 制御信号
G3 制御信号
G4 制御信号
G5 制御信号
G6 制御信号
K-A 構成
K-B 構成
K-C 構成
K-D 構成
K-1 構成
K-2 構成
K-3 構成
K-4 構成
K-5 構成
K-6 構成
K-7 構成
K-8 構成
K-9 構成
K-10 構成
K-11 構成
K-O 構成
DC+ 電位
DC- 電位
N 電位