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特許7539913球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/06 20060101AFI20240819BHJP
   H01Q 15/08 20060101ALI20240819BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20240819BHJP
   H01Q 13/10 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01Q19/06
H01Q15/08
H01Q21/20
H01Q13/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021555443
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019052930
(87)【国際公開番号】W WO2020190331
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/819,117
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519307458
【氏名又は名称】ジョン メツァリングア アソシエイツ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】JOHN MEZZALINGUA ASSOCIATES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンフォード、ランス
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0324171(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109378585(CN,A)
【文献】特表2008-503904(JP,A)
【文献】特表2003-514477(JP,A)
【文献】特開昭52-060591(JP,A)
【文献】特開2000-028700(JP,A)
【文献】Roman O. Ryazantsev,Concave spherical feed array for luneberg lens,2013 International Siberian Conference on Control and Communicaitons (SIBCON),2013年09月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/06
H01Q 15/08
H01Q 21/20
H01Q 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球対称屈折率分布型レンズと、
該球対称屈折率分布型レンズの周りに第1の円弧構成で配置される第1の複数のフレアノッチ放射器であって、該第1の複数のフレアノッチ放射器のそれぞれが、該球対称屈折率分布型レンズの中心の方に向いた中心放射軸を画定する進行波スロットと、前記進行波スロットの両側の前縁とを有し、前記前縁のそれぞれは、前記球対称屈折率分布型レンズの外面に接触する、第1の複数のフレアノッチ放射器と
を備える、アンテナ。
【請求項2】
前記第1の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの赤道面に沿って配置される、請求項に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの緯度方向平面に沿って配置される、請求項に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記緯度方向平面が、4度の緯度を有する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記緯度方向平面が、10度の緯度を有する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第1の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの仰角軸周りの360度の円弧を取り囲む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第1の複数のフレアノッチ放射器が、18個のフレアノッチ放射器を備える、請求項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記第1の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの仰角軸周りの180度の円弧を取り囲む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第1の複数のフレアノッチ放射器が、9個のフレアノッチ放射器を備える、請求項に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記第1の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの仰角軸周りの120度の円弧を取り囲む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記第1の複数のフレアノッチ放射器が、6個のフレアノッチ放射器を備える、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記第1の複数のフレアノッチ放射器のそれぞれが、縁を有する伝導板を備え、該伝導板が、前記赤道面に対して平行な縁に沿って前記球対称屈折率分布型レンズと接触する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記第1の円弧構成上に配置された第2の複数の放射器をさらに備え、該第2の複数の放射器のそれぞれが、前記球対称屈折率分布型レンズの中心の方に向いた中心放射軸を有し、該第2の複数の放射器のそれぞれが、前記第1の複数のフレアノッチ放射器における対応する放射器の伝導面に対して直交する平面を有する、請求項12に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記球対称屈折率分布型レンズの周りに第2の円弧構成で配置された第2の複数の放射器をさらに備え、該第2の円弧構成が、前記球対称屈折率分布型レンズの第2の緯度方向平面に沿って配置され、該第2の複数の放射器のそれぞれが、前記球対称屈折率分布型レンズの中心の方に向いた中心放射軸を有する、請求項に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記第1の複数のフレアノッチ放射器が、単一RF給電部に結合された放射器の隣接サブセットを備える、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記放射器の隣接サブセットが、
前記放射器のサブセット内の1つまたは複数の中心放射器と、
前記放射器のサブセット内の2つ以上の周囲放射器と
を備え、
該周囲放射器には、該1つまたは複数の中心放射器へ供給される対応する信号と比べて減衰された信号が供給される、請求項15に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記球対称屈折率分布型レンズが、前記アンテナの最低動作周波数および最小セクタ・ビーム幅に比例する直径を有する、請求項1に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関し、より詳細には、小型マルチビーム・アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
セクタ間の利得パターンのオーバーラップを最小限に抑えたマルチセクタ・カバレッジを提供することができる小型アンテナが強く望まれている。セクタ利得パターン間のサイドローブのオーバーラップによって、著しいセクタ間干渉が引き起こされることがあり、それがアンテナのSINR(信号対干渉および雑音比)を著しく悪化させることがある。アンテナを小型にすればするほど、セクタ間干渉の問題がより深刻になる。したがって、セクタ間干渉問題の軽減は、一般に、アンテナのサイズの増大を伴う。
【0003】
従来のマルチビーム・アンテナのさらなる不備は、マルチビーム・アンテナがそれらのビーム構成において一般に固定されていることである。したがって、所与のアンテナは、3個の120度セクタ、または6個の60度セクタなどを有することができるが、一旦固定されると再構成することができない。
【0004】
したがって、セクタ間干渉を実質的に軽減する一方で、異なる数および角度範囲のセクタについてそれ自体を動的に再構成するための能力を提供することもできる小型マルチビーム・アンテナが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、関連技術の制限および欠点による問題のうちの1つまたは複数を取り除く、球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナを対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、球対称屈折率分布型レンズと、球対称屈折率分布型レンズの周りに第1のリング構成で配置される第1の複数の放射器であって、第1の複数の放射器のそれぞれが、球対称屈折率分布型レンズの中心の方に向いた中心放射軸を有する、第1の複数の放射器とを備える、アンテナに関する。
【0007】
前記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単なる例示および説明であり、特許請求する本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0008】
本明細書に組み込まれその一部を形成する添付の図面は、球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナを示している。説明とあわせて、図面は、さらに、本明細書に記載の球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナの原理を説明する役割を果たし、それによって当業者は球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナを作製し、使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a】本開示による例示的なアンテナを示す図である。
【0010】
図1b】本開示による例示的なフレアノッチ放射器(flared-notch radiator)を示す図である。
【0011】
図1c】複数のフレアノッチ放射器を有する放射器リングの一部分を示す図である。
【0012】
図1d】アンテナの仰角軸に対して直交する向きからの例示的なアンテナを示す図である。
【0013】
図2】より急な緯度方向にある放射器リングを有する例示的なアンテナを示す図である。
【0014】
図3】本開示による例示的なルーネベルグ・レンズの切断図である。
【0015】
図4】アンテナのルーネベルグ・レンズ内の同心シェルおよび中心球体ならびにその放射器リングの切断図をもたらす、本開示による例示的なアンテナの上面図である。
【0016】
図5】ルーネベルグ・レンズによって発せられた例示的なビームを示す、1つのフレアノッチ放射器110がRF信号を発している例示的なアンテナを描く図である。
【0017】
図6】120度セクタを作り出すために、それぞれ20度のビーム幅を有する、相互に起動される6個の隣り合ったフレアノッチ放射器110に対応する例示的な利得パターンを示す図である。
【0018】
図7a】2つの放射器リングを有する例示的なアンテナの一斜視図である。
【0019】
図7b】2つの放射器リングを有する例示的なアンテナの別の斜視図である。
【0020】
図8a】180度の部分円弧放射器リングを有する例示的なアンテナを示す図である。
【0021】
図8b】120度の部分円弧放射器リングを有する例示的なアンテナを示す図である。
【0022】
図9】垂直偏波放射器(polarized radiator)および水平偏波放射器の両方を有する、本開示による例示的なアンテナを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付の図面を参照して、本明細書に記載の原理による球状ルーネベルグ・レンズにより増強された小型マルチビーム・アンテナの実施形態を詳細に参照する。異なる図面にある同じ参照数字は、同じまたは同様の要素を識別することができる。
【0024】
図1aは、本開示による例示的なアンテナ100を示している。アンテナ100は、複数のフレアノッチ放射器110を含む放射器リング105を含む。放射器リング105は、ルーネベルグ・レンズ115のような球対称屈折率分布型レンズを囲繞する。図示の例では、放射器リング110は、18個のフレアノッチ放射器(ビバルディ放射器またはテーパスロット放射器としても既知である)を有する。さらにこの例において、アンテナ100は、1695MHzから4300MHzまでの周波数範囲内で動作するように構成され、ルーネベルグ・レンズの直径は400mmであり、18個のフレアノッチ放射器110はそれぞれ約20度の幅の利得パターンを放射するように構成される。放射器リング105は、ルーネベルグ・レンズ105の球体中心を横切る仰角軸120周りに軸対称に配置されるように、ルーネベルグ・レンズ105の球体中心に中心がくるようにルーネベルグ・レンズ115を取り囲むことができる。
【0025】
ルーネベルグ・レンズ115は、同心円的に変化する屈折率を有する球体である。これらは、マイクロ波の技術分野で既知である。ルーネベルグ・レンズ115は、球体中心からその外面に向けて連続的に変化する屈折率を有することができる。あるいは、ルーネベルグ・レンズ115は、階段勾配の屈折率の有してもよい。ルーネベルグ・レンズ115は、各フレアノッチ放射器110によって発せられたRF波面を実質的に集束させ平坦化する役割を果たし、ここで、各フレアノッチ放射器110は、ルーネベルグ・レンズ115の球体中心の方に向けて放射する。受信機のように、ルーネベルグ・レンズ115は、所与のフレアノッチ放射器110によって画定されるアパーチャ内へと実質的に平坦な波面を集束させる。例示的なアンテナ100のルーネベルグ・レンズ115は、400mmの直径を有するが、様々な直径が可能であり、それらは開示の範囲内にある。例示的なルーネベルグ・レンズ115については、以下にさらに詳細に述べる。ルーネベルグ・レンズは、例えば適当な誘電正接の、誘電率が3のアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を含む、あらゆる適当な材料から作ることができる。他の熱可塑性ポリマーを使用することもできる。ルーネベルグ・レンズは、3D印刷または他の適当な方法で作ることができる。
【0026】
図1bは、本開示による例示的なフレアノッチ放射器110を示している。フレアノッチ放射器110は、進行波スロット145、スロット・ライン150およびスロット・ライン終端キャビティ155を画定するカットアウトを有する伝導板112を有する。フレアノッチ放射器110は、外側導体132および内側導体134を有する同軸給電部130をさらに含む。図1bに示されるように、外側導体132は、伝導板112が同軸給電部130と対合する箇所で伝導板112に結合されている。内側導体134は、誘電体(図示せず)によって覆われた、伝導板112が同軸給電部130と対合する箇所で伝導板112に貫入し、スロット・ライン150を通り、スロット・ライン150の他方側で伝導板112に結合されている。
【0027】
進行波スロット145は、実質的にフレアノッチ放射器110の利得パターンについての中心軸を画定する中心放射軸135を画定することができる。フレアノッチ放射器110は、進行波スロット145の両側に1つずつある、2つの前縁140をさらに有する。前縁140は、フレアノッチ放射器110の、ルーネベルグ・レンズ115の外面に接触する部分を画定する。
【0028】
フレアノッチ放射器110は、所望の周波数および帯域幅に従って設定される寸法パラメータの通常の変形形態であってよい。
【0029】
伝導板112は、銅、アルミニウム、真鍮または他の金属から形成することができる。さらに、伝導板112は、薄板から形成してもよい。各フレアノッチ放射器110(したがって放射器リング105)を薄板から形成することによって、放射器リング105の反対側(ルーネベルグ・レンズ115の他の側)におけるフレアノッチ放射器110の利得パターンとの干渉を減少させることができる。
【0030】
図1cは、複数のフレアノッチ放射器110を有する放射器リング105の一部分を示している。図には、ルーネベルグ・レンズ115(図示せず)の外面に接触する複数のフレアノッチ放射器の組み合わせられた前縁140、および、ルーネベルグ・レンズ115の球体中心でそれぞれ交差することができるそれぞれの中心放射軸135が示されている。
【0031】
図1dは、仰角軸120に対して直交する方向からの例示的なアンテナ100を示している。図示のように、例示的なアンテナ100では、放射器リング105は、4度の緯度オフセットを有するようにルーネベルグ・レンズ115上に配向され、配置されている。したがって、放射器リング105の各フレアノッチ放射器110は、その中心放射軸135が、4度の緯度オフセットから、ルーネベルグ・レンズ115の球体中心で交差するように配向される。さらに、各フレアノッチ放射器110の前縁140は、実質的に、各前縁140が、仰角軸120に対して直交するルーネベルグ・レンズ115の赤道面125より上の緯度4度の緯度方向平面に沿ってルーネベルグ・レンズ115と接触するように、ルーネベルグ・レンズ115と接触している。
【0032】
放射器リング105の例示的な4度の緯度方向オフセットによって、各フレアノッチ放射器110はその利得パターンを角度4度下に向ける。そうすることで、放射器リング105(およびルーネベルグ・レンズ115)の反対側にあるフレアノッチ放射器110の存在によって引き起こされる干渉が減少する。さらに、フレアノッチ放射器110の利得パターンを下に向けることは、アンテナ100が所期のカバレッジ・エリアにおいてユーザ機器(UE)に取り付けられる配備において、有利となり得る。
【0033】
図2は、本開示による他の例示的なアンテナ200を示している。図2の例示は、赤道面125に沿った眺めであり、仰角軸120が垂直方向に向いているという点で、図1dと同じ向きである。アンテナ200の違いは、放射器リング205が、フレアノッチ放射器110の前縁140が赤道軸125から10度オフセットした緯度方向平面に沿ってルーネベルグ・レンズ115に接触するように配置されていることである。したがって、フレアノッチ放射器110の中心放射軸135は、赤道面125に対して10度の角度、かつ仰角軸120に対して80度の角度で、ルーネベルグ・レンズ115の球体中心で交差する。
【0034】
アンテナ100のように、放射器リング205の例示的な10度の緯度方向オフセットによって、各フレアノッチ放射器110はその利得パターンを角度10度下に向け、したがってアンテナ200はアンテナ100と比べてそれぞれの利得パターンをさらに下に向けることになる。そうすることで、放射器リング205(およびルーネベルグ・レンズ115)の反対側にあるフレアノッチ放射器110の存在によって引き起こされるアンテナ200が受ける干渉がアンテナ100と比べてさらに減少する。同様に、フレアノッチ放射器110の利得パターンを下に向けることは、アンテナ100が所期のカバレッジ・エリアにおいてUEに取り付けられる展開においてより有利となり得る。アンテナ200の問題点としては、4度のオフセットのものよりも10度の緯度方向オフセットの放射器リング205の製造の方が複雑となり得ることである。
【0035】
アンテナ100/200に対する変形形態も可能であり、開示の範囲に入る。例えば、放射器リング105は、平坦であり、ルーネベルグ・レンズ115の赤道面125の周りに形成することもできる。これによって、放射器リングの製造がより簡単になり、コストが掛からなくて済むようになる。これは、各フレアノッチ放射器110についての、放射器リング105およびルーネベルグ・レンズ115の反対側にあるものによる干渉の増大という代償を払うことになり得るが、それは、特に放射器リング105が非常に薄い金属から形成される場合、許容することができる。さらに、アンテナ100/200がどのように配備され得るか、およびその予想カバレッジに応じて、放射器リング105の緯度方向角度は、10度を上回ってもよい。放射器リング105の緯度方向角度が大きいほど、干渉の影響が減少するが、緯度が高いほど放射器リング105の直径が減少することを考えると、フレアノッチ放射器110ための場所がより小さくなる、というトレードオフが存在する。したがって、トレードオフは、干渉の減少と、より少ないフレアノッチ放射器110の間にある。そのような変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。
【0036】
図3は、本開示による例示的なルーネベルグ・レンズ115の切断図である。例示的なルーネベルグ・レンズ115は、中心球体310の周りに形成された一連の同心シェル305から作ることができる。この例では、個別のシェル305はそれぞれ均一な別個の屈折率を有する。各シェル305の屈折率は、以下の関係に従って予め決定することができる。
【数1】
式中、εγは比誘電率、Rはレンズ半径、rは所与のシェル305からルーネベルグ・レンズ115の球体中心までの半径方向距離である。例示的な一実施形態では、ルーネベルグ・レンズ115は、200mmの外面半径を有し、中心球体310の周りに形成された9個のシェル305から形成され得る。これらのそれぞれの比誘電率は、下表のとおりとなり得る。
【表1】
【0037】
上述の例示的なルーネベルグ・レンズ115は、20度のビーム幅をそれぞれ有する18個のフレアノッチ放射器110を用いて1695MHzから4300MHzまでの周波数範囲内で動作するように、アンテナ100/200のサイドローブを最低限に抑えた、明確なビームの十分な集束をもたらすことができる。上述したようなルーネベルグ・レンズ115に対する変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。例えば、ルーネベルグ・レンズ115は、三次元格子スカフォールド(three dimensional grid scaffold)によって支持された3Dプリントの要素を含む屈折率分布型球体から、ならびに、中心で最大屈折率を有し表面で最小屈折率を有する勾配屈折率を有する球体を形成するための他の技術から形成することができる。
【0038】
図4は、ルーネベルグ・レンズ115内の異なるシェル305および中心球体310ならびに放射器リング105/205の切断図をもたらす、アンテナ100/200の仰角軸120に沿った上面図である。
【0039】
図5は、1つのフレアノッチ放射器110が2650MHzでRF信号を発する例示的なアンテナ200を示している。この例示では、活動状態のフレアノッチ放射器110は、ルーネベルグ・レンズ115に隠れており、したがって図5には示されていない。集束ビーム500は、ルーネベルグ・レンズ115の、活動状態のフレアノッチ放射器とは反対の側を通って発せられる。
【0040】
アンテナ100/200は、異なるビーム幅および異なる数の独立したビームをもたらすように異なる構成で動作することができる。例えば、各フレアノッチ放射器110が独立して動作する場合、アンテナ100/200は、最小限のオーバーラップでそれぞれ20度のビーム幅の18個の別個のセクタを可能にすることができる。あるいは、アンテナ100/200がより広いカバレッジのより少ないセクタを有することができるように、異なる組み合わせの隣接したフレアノッチ放射器110に共通に給電してもよい。給電回路(図示せず)に応じて、アンテナ100/200は、異なるセクタ・カバレッジまたはビーム走査をもたらすように動的に再構成することができる。例えば、アンテナ100/200は、フレアノッチ放射器110が、それぞれ6個のフレアノッチ放射器からなる3つの円弧にグループ化され得るように構成することができる。この結果、各セクタが120度のカバレッジを有する3セクタ・アンテナになる。同様に、アンテナ100/200は、60度のカバレッジの6個のセクタ、または30度のカバレッジの12個のセクタで動作するように給電されてもよい。そのような変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。
【0041】
図6は、120度セクタを作り出すそれぞれ20度のビーム幅の相互に起動される6個の隣り合ったフレアノッチ放射器110に対応する例示的な利得パターン600を示している。図示のように、利得パターン600は、最小の後方ローブ605、および隣接セクタとの最小のオーバーラップ610(速いロールオフ)を有する。隣接のフレアノッチ放射器110を起動することによって可能になるビーム整形は、ビーム品質の十分な向上および最小のセクタ間干渉を実現することができる。
【0042】
この例に関してさらに、複数の隣り合うフレアノッチ放射器110の起動では、隣接のフレアノッチ放射器群の中心にあるフレアノッチ放射器110にはより大きな電力が給電され中心のフレアノッチ放射器110から離れて配置されたフレアノッチ放射器110にはより小さな電力が給電され得るように、各フレアノッチ放射器110には異なる電力レベルが割り当てられ得る。起動フレアノッチ放射器110のこの異なる給電は、ビーム整形の向上に寄与することができる。このような変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。
【0043】
図7aおよび7bは、アンテナ100/200と実質的に同様とすることができるが、追加の放射器リング705を有する例示的なアンテナ700を示している。放射器リング105および705の緯度方向平面は、方位角方向に(仰角軸120周りに)任意の数のセクタ組み合わせをもたらすだけでなく仰角方向に(仰角軸120に沿って)2つの別個のセクタをもたらすようにセットすることができる。放射器リング105および705は、放射器リング705の半径に応じて決まり得る、同じ数または異なる数のフレアノッチ放射器110を有することができる。さらに、フレアノッチ放射器110は、仰角軸に沿った、および方位角方向におけるビーム整形およびセクタ化が向上した結合ビーム(combined beam)を形成するように、あるフレアノッチ放射器110が、他の上側/下側リングのその片方と対になることができるように組み合わせることができる。これは、単一の20度ビーム、60度セクタ、120度セクタなどについて行うことができる。
【0044】
図7aおよび図7bに示される例に関してさらに、例示的なアンテナ700は、より高い緯度方向平面に沿って配置された追加の放射器リング(図示せず)を有することもできる。この例では、放射器リングを仰角軸に沿って「より高く」すると、放射器リングの反対側にあるフレアノッチ放射器110による干渉が減少することから、より優れた性能になるが、より高い緯度の放射器リングのフレアノッチ放射器110はより少なくなり得る。例えば、レンズの頂部におけるより高いリング配置は、より大きなビーム・チルト角を生じさせ、レンズの下方、例えば赤道の上30度でのリング配置は、赤道の下30度のビーム・チルトを生じさせることになる。緯度を上げたより多くの放射器リングを有することの追加的な利点は、それによって、2つの次元である、仰角軸に沿った、ならびに方位角方向におけるセクタ化およびビーム整形が可能になることである。これは、多数の独立したビームがアンテナ700の実質的に半球のカバレッジ・エリア全体を取り囲むビーム整形を可能にすることができ、また、カバレッジ・エリア内にマルチユーザMIMO能力をもたらすことができる。さらに、より高い緯度の放射器リングのフレアノッチ放射器110には、ルーネベルグ・レンズ115の赤道面により近い放射器リングの対応するフレアノッチ放射器110と比べてより大きな電力が供給され得る。
【0045】
図8aおよび図8bはそれぞれ、例示的なアンテナ800aおよび800bを示しており、それらはともに部分円弧放射器リング、またはおよび「円弧構成」を有する。アンテナ800aは、アンテナ100/200の放射器リング105の2分の1とすることができる放射器「リング」805aを有する。放射器リング805aは、9個、または所望の最小ビーム幅に応じてより多いもしくはより少ないフレアノッチ放射器110を有することができる。アンテナ800aは、所期のカバレッジが180度の領域に限定される配備に有用であり得る。同様に、アンテナ800bは、アンテナ100/200の放射器リング105の3分の1の円弧を有する、放射器「リング」805bを有する。放射器リング805bは、6個、または所望の最小ビーム幅に応じてより多いもしくはより少ないフレアノッチ放射器110を有することができる。アンテナ800bは、所期のカバレッジが120度の領域に限定される配備に有用であり得る。アンテナ800a/800bの利点は、フレアノッチ放射器110が、ルーネベルグ・レンズ115の反対側にフレアノッチ放射器110を有することによる干渉を受けないことである。これは、特にアンテナ800bに当てはまる。ルーネベルグ・レンズ115の反対側にフレアノッチ放射器110が存在することで引き起こされる干渉は、(フレアノッチ放射器110の伝導板112によって画定される平面に対して直交し、かつ中心放射軸135に対して直交する)仰角軸に沿って最も顕著であり、この場合、サイドローブは、各フレアノッチ放射器110の中心放射軸135の上下に現れ得る。したがって、アンテナ800bは、この干渉に最も影響され得ない。
【0046】
図9は、本開示による例示的なアンテナ900を示している。上述の放射器リング105/805a/805bのフレアノッチ放射器110は、水平偏波のエネルギーを放射する(赤道面125が水平方向に向いていると仮定)。アンテナ900は、アンテナ100/200/800a/800bと実質的に同様とすることができるが、2偏波放射器リング905を形成する、放射器リング105/805a/805b上に配置された垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912が追加されている。垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912の追加によって、アンテナ900は、垂直偏波および水平偏波の両方を放射することが可能になる。これは、(両方の偏波状態の所与の信号を放射することで)アンテナ900と所与のUEとの間のリンク品質を向上させることができ、さらにまた、(2つの偏波状態の異なる信号を放射することによって)所与のUEへ追加のMIMO能力をもたらす。一変形形態では、アンテナ900は、放射器リング905が放射器リング805a/805bのように180度または120度の円弧をカバーすることができるように、部分円弧放射器リングを有することができる。ルーネベルグ・レンズ115の反対側のフレアノッチ放射器110の存在による干渉が、垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912の伝導面112およびその中心放射軸135に対して直交する方向にサイドローブを生じさせることがあること、および、垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912が、各最近接する垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912によって画定されるこの平面にそれぞれ配置されることを考えると、この干渉の影響は増大することがあり得る。
【0047】
他の変形形態では、アンテナ900は、アンテナ700a/700bおよびそれらの変形形態と同様に、多数の放射器リングを有することができ、この場合、各放射器リング905が垂直方向に向いたフレアノッチ放射器912を有することができる。これらの多数の放射器リング905は、ルーネベルグ・レンズ115の周り360度に及んでよく、または、部分円弧(例えば、180度もしくは120度など)を有してもよい。このような変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。
【0048】
例示的な放射器リング105/205/705/805a/805b/905は、20度のビーム幅をそれぞれ有する、20度の間隔に置かれたフレアノッチ放射器110を有するとして記載してきたが、これに対する変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。例えば、フレアノッチ放射器100の間隔をより近づけることによって、所与のセクタを形成するためにより多くのビーム(フレアノッチ放射器110当たり1つ)を一緒にする可能性を提供することができる。より具体的には、図6に示されるように、6個のフレアノッチ放射器110は、優れたビーム整形および速いロールオフの120度ビームを形成するように組み合わせられ得る。フレアノッチ放射器110の間隔を減少させることによって、120度ビームを形成するのにより多くのフレアノッチ放射器110を組み合わせることができ(例えば、6個ではなく9個のフレアノッチ放射器110を組み合わせる)、それによってビーム整形が向上する。互いにより近づけられたフレアノッチ放射器110は、各フレアノッチ放射器110の利得パターンにおけるサイドローブを増大させることがある。これらは、一般に、放射器リング105/205/705/805a/805b/905によって画定される平面内で組み合わせられ、その平面に対して直交する方向(例えば、上/下)には組み合わせられない。
【0049】
上述のように、上記の例示的なアンテナは1695MHzから4300MHzまでをカバーするが、変形形態も可能であり、開示の範囲に入ることを理解されよう。例えば、アンテナ100/200/700a/700b/800a/800b/900(以下、「例示的なアンテナ」)は、異なる周波数形態で動作するようにスケーリングすることができる。例えば、ルーネベルグ・レンズ115の直径を約1メートルにすると、低帯域(LB)周波数について、上述した能力のすべてを提供することができる。
【0050】
ルーネベルグ・レンズ115の直径と所期の周波数帯域の関係は以下のように説明することができる。所望の最小セクタのビーム幅が与えられると、ルーネベルグ・レンズ115の直径によって、例示的なアンテナが動作することができる周波数の下端が決まる。例えば、所望の最小セクタのビーム幅が60度の場合、2つのアプローチのうちの1つが可能である。1つ目のアプローチとして、ルーネベルグ・レンズ115の直径が固定されている場合、周波数は、単一フレアノッチ放射器110が60度のビーム幅をもたらすことになる最低周波数となる。この場合、セクタのビーム幅は単一フレアノッチ放射器110によって完全に画定されるので、ビーム整形の機会がないことになり得る。2つ目のアプローチとして、最低周波数が固定されている場合、ルーネベルグ・レンズ115の直径は、単一フレアノッチ放射器110のビーム幅が60度になるように定めることができる。したがって、周波数範囲の必要とされる下端および最小セクタ・ビーム幅が既知の場合、ルーネベルグ・レンズ115の直径は、これらの要件を満たす最小直径に設定することができる。
【0051】
例示的なアンテナの最低動作周波数は、ルーネベルグ・レンズ115の直径により決まるが、例示的なアンテナの最高動作周波数は、ルーネベルグ・レンズ115の完全性によって決定される。例えば、例示的なアンテナは、1695MHzから4300MHzまでの周波数範囲内で動作するように構成される。用いられるフレアノッチ放射器110に応じて、例示的なアンテナの最高周波数は、ミリ波帯へと広がることができる。周波数が高くなるにつれて、各個別のフレアノッチ放射器110のビーム幅がより狭いビームへ狭められる。動作周波数の上端の限界は、ルーネベルグ・レンズ115の完全性によって決まり、したがって、周波数が高いほど、より連続的かつ精密な屈折率の勾配が必要となる。したがって、図3および図4に関して記載したような一連の同心シェルから構成されるルーネベルグ・レンズ115は、高周波数ビームの適切な集束をもたらすのに十分な解決を提供できない恐れがある。この場合、屈折率勾配のより細かい粒状性を有するルーネベルグ・レンズ115が必要となり得る。
【0052】
例示的なアンテナは、異なる周波数形態について、それに従ってスケーリングすることができる。例えば、24GHzから30GHzまでの動作のためのアンテナについて、20度のビーム幅の18個の要素が意図される場合、ルーネベルグ・レンズ115の例示的な直径は、25mmから50mmの間となり得る。直径は、狭いビーム幅が望まれる場合、50mmを上回ってもよい。
【0053】
上述した例示的なアンテナは、一般に、広帯域アンテナと考えられる。広帯域性能は、一般に、フレアノッチ放射器110の使用によって可能になる。しかし、狭帯域アンテナについての変形形態も可能である。この場合、狭帯域放射器がルーネベルグ・レンズ115の外面に当接することができる放射面または縁を有するならば、フレアノッチ放射器以外の放射器を使用することもできる。これについての一例としては、プリント回路対数周期放射器(log periodic radiator)のような対数周期放射器が挙げられ得る。パッチ放射器を使用することもできるが、パッチの、ルーネベルグ・レンズ115の外面に当接する角度範囲は、レンズの集束動作を妨げ、それによって最適に満たないビーム形状が生じることがある。
【0054】
本発明の様々な実施形態について上記で述べてきたが、これらは一例に過ぎず、限定を意図するものではないことを理解されたい。当業者には、形態および細部における様々な変更を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができることが明らかであろう。したがって、本発明の広さおよび範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9