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特許7539915リソグラフィによる遮熱コーティングの完全性の保護及び向上
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】リソグラフィによる遮熱コーティングの完全性の保護及び向上
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/11 20160101AFI20240819BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20240819BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20240819BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240819BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C23C4/11
F01D5/28
F23R3/42 C
F02C7/00 C
F02C7/00 D
F01D9/02 102
F23R3/42 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021557097
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020025713
(87)【国際公開番号】W WO2020205733
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】16/373,714
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】シュワブ、レイシー リン
(72)【発明者】
【氏名】モーレイ、キャスリーン ブランシュ
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/11
F01D 5/28
F23R 3/42
F02C 7/00
F01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(500)の表面上の遮熱コーティング(240)を保護するための方法(100)であって、当該方法が、
前記部品(500)の少なくとも一部分をセラミックスラリーで被覆するステップ(110)と、
リソグラフィックプロセスによってセラミック層(260)を露光して凝固させるため光のパターンを前記部品(500)に投影するステップ(130)と、
前記セラミックスラリーの未露光部分を前記部品(500)から除去するステップ(140)と
を含んでおり、
前記セラミック層(260)が、複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素を備えており、
当該方法が、
所望の数のセラミック層(260)が得られるまで、前記被覆するステップ(110)、前記投影するステップ(130)及び前記除去するステップ(140)を繰り返すステップ(150)であって、前記複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素の密度が前記所望の数のセラミック層(260)の層の間で異なるステップと、
前記セラミック層(260)上に遮熱コーティング(240)を施工するステップ
をさらに含む、方法(100)。
【請求項2】
前記部品(500)を加熱して前記セラミック層(260)及び前記遮熱コーティング(240)の少なくとも一方を焼結するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素が、長方形(550)、台形(551)又はダブテール(552)の形状を有している、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記部品(500)が、ガスタービンで使用されるように構成されたブレード、ノズル、燃焼器、トランジションピース又はシュラウドである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記リソグラフィックプロセスが、フォトリソグラフィ、光リソグラフィ又は紫外線リソグラフィのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記リソグラフィックプロセスが、マスクによるプロセス又はマスクレスプロセスである、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記セラミックスラリーが、ジルコニア、アルミナ、シリカ、炭化物、チッ化物、ケイ酸塩又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項8】
複数の層で形成され、前記複数の層のうちの1つはボンドコーティング(230)である部品(500)について、前記部品(500)の表面上の遮熱コーティング(240)を保護するための方法(100)であって、当該方法が、
前記ボンドコーティング(230)をセラミックスラリーで被覆するステップ(110)と、
リソグラフィックプロセスによってセラミック層(260)を露光して凝固させるため光パターンを前記部品(500)に投影するステップ(130)と、
前記セラミックスラリーの未露光部分を前記部品(500)から除去するステップ(140)と
を含んでおり、
前記セラミック層(260)が、複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素を備えており、
当該方法が、
所望の数のセラミック層(260)が得られるまで、前記被覆するステップ(110)、前記投影するステップ(130)及び前記除去するステップ(140)を繰り返すステップ(150)であって、前記複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素の密度が前記所望の数のセラミック層(260)の層の間で異なるステップと、
前記ボンドコーティング(230)及び前記セラミック層(260)上に遮熱コーティング(240)を施工するステップ
をさらに含む、方法(100)。
【請求項9】
前記複数の層が、前記ボンドコーティング(230)の下に金属間化合物層又は中間層(220)をさらに含む、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記部品(500)を加熱して前記セラミック層(260)及び前記遮熱コーティング(240)の少なくとも一方を焼結するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記複数の応力上昇要素(550)又は複数のアンカー要素が、長方形(550)、台形(551)又はダブテール(552)の形状を有している、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記部品(500)が、ガスタービンで使用されるように構成されたブレード、ノズル、燃焼器、トランジションピース又はシュラウドである、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記リソグラフィックプロセスが、フォトリソグラフィ、光リソグラフィ又は紫外線リソグラフィのうちの少なくとも1つである、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記リソグラフィックプロセスが、マスクによるプロセス又はマスクレスプロセスである、請求項13に記載の方法(100)。
【請求項15】
前記セラミックスラリーが、ジルコニア、アルミナ、シリカ、炭化物、チッ化物、ケイ酸塩又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮熱コーティングに関し、より詳細には、遮熱コーティングリソグラフィによって施工された層、パターン、応力要素又は犠牲層に関する。
【0002】
ガスタービンエンジンの高温セクション部品遮熱コーティング(TBC)で保護されることが多々あり遮熱コーティングはそのの部品基材の温度を下げて部品の寿命を延ばす。セラミック材料、特にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、その高温性能、低い熱伝導率、並びにプラズマ溶射、フレーム溶射及び物理蒸着(PVD)技術による成膜が比較的容易であるので、TBC材料として用されている。空気プラズマ溶射(APS)などのプラズマ溶射プロセスは、或る程度の不均一性及び多孔性を特徴とする非柱状コーティングをもたらし、比較的低い設備コスト及び施工の容易さという利点を有する。ガスタービンエンジンの最高温度の領域に使用されるTBCは、歪みに耐える柱状結晶粒組織をもたらすPVD、とりわけ電子ビームPVD(EBPVD)によって成膜される。
【0003】
TBCを有効にするには、部品に強力に付着し、多数回の加熱及び冷却サイクルを通して付着したままでなければならない。後者の要件は、セラミック材料とそれによって保護される基材(典型的には超合金であるが、セラミックマトリックス複合(CMC)材料も使用されるとの間の熱膨張係数(CTE)の差のため、きわめて厳しい。着を促進し、TBCの耐用年数を延ばし、下方に位置する基材を酸化及び高温腐食の攻撃による損傷から保護するために耐酸化性ボンドコートが使用されることが多い。超合金基材使用されるボンドコートは、典型的には、MCrAlX(式中、Mは鉄、コバルト及び又はニッケルであり、Xはイットリウムその他の希土類元素である)などの上塗りコーティング又は拡散アルミナイドコーティングの形態である。セラミックTBCの成膜及び後のエンジン動作時などの高温への曝露の際に、これらのボンドコートは、TBCをボンドコートに付着させる強い付着の薄いアルミナ(Al)層又はスケールを形成する。
【0004】
TBC系の耐用年数は、典型的には、ボンドコートの酸化、大きな界面応力及び結果として生じる熱疲労によって駆動される破砕事象又は異物による損傷(FOD)によって制限される。FODは、典型的には、タービンの動作の最中に発生し、異物によって引き起こされるTBCの衝撃が、遮熱コーティングを損傷させる可能性があり、損傷させることが多い。TBCの摩耗又は脱落につれて、TBCを組み込んだタービン部品の性能及び寿命が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/085376号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、部品の表面上のコーティングを保護するための方法が提供される。本方法は、部品の少なくとも一部分をセラミックスラリーで被覆するコーティングステップを含む。投影ステップ、リソグラフィックプロセスによってセラミック層を露光及び凝固させるため部品へと光パターンを投影する、。除去ステップ、セラミックスラリーの未露光部分を部品から除去する。セラミック層は、複数の応力上昇要素又は複数のアンカー要素を含む。
【0007】
別の態様によれば、部品の表面上のコーティングを保護するための方法が提供される。部品は、複数の層で形成され、層のうちの1つはボンドコーティングである。コーティングステップボンドコーティングをセラミックスラリーで被覆する。投影ステップ、リソグラフィックプロセスによってセラミック層を露光及び凝固させるため部品へと光パターンを投影する。除去ステップ、セラミックスラリーの未露光部分を部品から除去する。セラミック層は、複数の応力上昇要素又は複数のアンカー要素を含む。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【0009】
ここで図面を参照すると、いくつかの図では、同様の構成要素には同様の番号した
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一態様による部品の表面の遮熱コーティングを強化又は保護するための方法を示している。
図2】本開示の一態様による部品の一部分の概略の断面図を示している。
図3】本開示の一態様による犠牲層の一部分の拡大断面図を示している。
図4】本開示の一態様による複数の隆起部を有する摩耗用又は犠牲コーティングのためのパターンの上面図を示している。
図5】本開示の一態様による部品の一部分の概略の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0012】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。また、本発明の「一実施形態」、「一態様」或いは「実施形態」又は「態様」というとき、記載された特徴を含む追加の実施形態又は態様の存在を除外するものと解釈すべきではない。ターボ機械は、限定されるものではないが、航空機エンジン、ガスタービン、蒸気タービン及び圧縮機など、ロータと流体との間でエネルギーを伝達する機械として定義される。
【0013】
本明細書に開示される態様によれば、異物による損傷(FOD)及び腐食に起因する他の損傷に対する保護のための犠牲コーティングを含む改善された遮熱コーティングを提供する方法が開示される。さらに、部品を、パターン加工による表面を備えて製造することができ、これらの表面を機械加工しなければならないことによって生じる損傷を低減又は排除することができる。さらに、遮熱コーティングの性能も、より高い温度での性能が向上したセラミック製の応力上昇要素又はアンカー構造の使用によって改善することができる。
【0014】
図1が、本開示の一態様による部品の表面の遮熱コーティングを強化又は保護するための方法100を示している。部品は、機械部品、ターボ機械部品であってよい。あくまでもこれらに限られるわけではない例として、部品は、タービンブレード(又はバケット)、ノズル、燃焼器、トランジションピース又はタービンシュラウドであってよく、これらの部品はいずれも、ガスタービンにおいて使用されるように構成されてよい。ステップ110において、部品は、セラミックスラリーでコーティングされる。例えば、部品の全部又は一部をセラミックスラリーに浸すことができ、或いはセラミックスラリーを部品に噴き付けても、ブラッシングしてもよい。ドクターブレード法を使用して部品の全部又は一部をセラミックスラリーで被覆することも可能である。セラミックスラリーは、光反応性ポリマーを含む。セラミックスラリーは、アルミナ(Al)、炭化ケイ素(SiC)、チッ化ケイ素(Si)、シリカ(SiO)、1以上のケイ酸塩又はジルコニア及びこれらの組み合わせで構成されてよい。セラミックスラリーは、結合剤、可塑剤及び分散剤以上と混合してもよい。セラミックスラリーは、部品の表面を被覆する。
【0015】
任意ステップ120において、部品は、セラミックスラリーから取り去られる。ここで、部品のうちのセラミックスラリーと接触した部分が、セラミックスラリーでコーティングされる。ここで、部品は、リソグラフィック装置へと運ばれる。「リソグラフィ」又は「リソグラフィック」という用語は、フォトリソグラフィ、光リソグラフィ及び又は紫外線リソグラフィを含むように定義され、一般に、光を使用してマスクから基材又はベース材料上の感光性レジスト又はスラリーに幾何学的パターンを転写するプロセスを指す。或いは部品にロボットシステムによってセラミックスラリーを噴き付けることができ、このロボットシステムは、後に所望の光パターンで部品の露光を行うためのミラー及び光学系を備えることができる。ステップ130において、リソグラフィ装置は、マスク又は制御された光源を介して部品へと光パターンを投影する。得られた光パターンは、部品の表面上のセラミックスラリーの一部を露光し、これらの領域のスラリーをセラミック層へと凝固させる。セラミックスラリーのうちの露光されていない部分は、液状又は粘性の状態のままである。リソグラフィプロセスは、光の投影パターンを得るためにマスクを使用することができ、或いはマスクが使用されず、光源がおそらくは1つ以上のミラーを介して部品上に所望のパターンを生成するマスクレスプロセスであってよい。
【0016】
ステップ140において、セラミックスラリー又はセラミック層のうちの露光されていない部分が、任意の適切な手段(例えば、流体での洗浄又は灌注)によって除去される。除去後に、セラミック層のうちの露光されて凝固した部分だけが、部品の表面に残る。ステップ150において、ステップ110、120、130、140及び又は150を繰り返すか否かが決定される。さらなるセラミック層が所望される場合、これらのステップ(又はその一部)を繰り返すことができる。或いは、所望の数のセラミック層が得られた場合、この方法はステップ160に進むことができる。
【0017】
所望の数のステップ110~150が完了した後に、生のセラミック層又は未硬化のセラミック層が得られる。得られた「生の」セラミック層を硬化させて固めるために、部品は、ステップ160において、部品を焼結させるために加熱される。部品は、結合剤を除去するように加熱され、セラミック層について所望の密度を得るために、所定の時間にわたって所望の高い温度に保持される。加熱プロセスの後に、完成したセラミック層は、使用できる状態である。
【0018】
図2が、本開示の一態様による部品200の一部分の概略の断面図を示している。図3が、本開示の一態様による犠牲層260の上面図を示している。部品200は、規定のマクロ組織及びミクロ組織を有する複数の層で構成される。ベース層/材料又は基材層210を、ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの組み合わせを含む超合金材料で形成することができる。タービンブレード、ベーン、シュラウド及び他の部品などの多くのガスタービン用途において、ベース層210は、一方向凝固又は単結晶のニッケル基超合金である。金属間層又は中間層220を、ベース層又は基材210上に堆積させることができる。
【0019】
経験から、セラミック絶縁層又はTBCを、(特定の用途において)金属の基材210上に直接堆積させるべきではないことが示されており、その理由は、部分的には、これら2つの異なる材料間の接着が充分に大きくないためであり、部分的には、セラミックと金属との熱膨張の差によって熱サイクルの最中にセラミックに亀裂及び欠けが生じるためである。すなわち、タービンがオンにされ、さまざまな出力レベルで運転され、オフにされるにつれて、部品200が加熱及び冷却されると、熱膨張係数の差により、脆いセラミックに亀裂が発生する。亀裂が特定の領域を通って伝播し、最終的にセラミックの破片が影響を受けた領域の基材から分離し、このプロセスは当技術分野において剥離として知られている。次いで、これらの領域内の露出した金属基材が、高温ガスによって急速に劣化する。ブレードの一領域で剥離が発生すると、故障までの寿命がきわめて短くなる可能性がある。
【0020】
良好な接着を保証し、剥離の不具合を回避するために、遮熱コーティング系は、TBCと基材210との間にボンドコーティング230及び中間層220を含む。1つの好ましい中間層は、化合物NiAl又はNi2Al3などの金属間ニッケルアルミナイド又はNiAl-Crなどの修飾金属間化合物である。中間層220は、例えばパックセメンテーション又は物理蒸着などの任意の許容可能な堆積技術によって基材210上に堆積させられる。中間層220は、堆積時に約0.001インチ~約0.005インチの厚さであってよく、或いは個々の用途において必要とされるとおりの任意の他の厚さであってよい。
【0021】
ボンドコーティング230を、中間層220上に堆積させることができる。適切なボンドコート又はコーティング230として、限定されるものではないが、ニッケル及び白金アルミナイドなどの従来からの拡散コーティング、MCrAlYコーティングどが挙げられる。アルミニウムに富むボンドコートは、ボンドコート230の酸化によって成長する酸化アルミニウム(アルミナ)スケールを発生させることが知られている。アルミナスケールは、TBCをボンドコート230及び基材210に化学的に結合させる。ボンドコーティング230の厚さは、当業者であれば理解できるように、所期の用途に合わせた任意の適切な厚さであってよく、ボンドコーティング230は、具体的な用途に応じて省略されてもよい。
【0022】
遮熱コーティング(TBC)240は、1つ以上のボンドコート層230を覆って堆積させられる。遮熱コーティング240は、任意の適切なセラミック材料を単独で又は他の材料と組み合わせて含むことができる。例えば、遮熱コーティング240は、完全又は部分的に安定化されたイットリア安定化ジルコニアなど、並びに当技術分野で知られている他の低伝導性の酸化物コーティング材料を含むことができる。他の適切なセラミックの例として、これに限られるわけではないが、非安定化ジルコニア、或いはカルシア、マグネシア、セリア、スカンジア、イットリア、希土類酸化物又は他の酸化物のうちの1つ以上によって部分的又は完全に安定化されたジルコニアなどの他の既知のセラミック遮熱コーティングの中でもとりわけ、約7~8重量%のイットリアで安定化された約92~93重量%のジルコニアが挙げられる。遮熱コーティング240は、ハフニア、ジルコニア、或いはイットリア、スカンジア、マグネシア、カルシア、セリア及びランタニド系列の酸化物のうちの1つ以上によって安定化されたハフニアとジルコニアとの混合物を含んでもよい。
【0023】
遮熱コーティング240を、任意の適切な方法によって施工することができる。堆積のための1つの適切な方法は、電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)によるが、空気プラズマ溶射(APS)などのプラズマ溶射堆積プロセスも、燃焼器の用途に使用することができる。適切なEB-PVDによって施工されたセラミック遮熱コーティング240の密度は、他の適切な密度の中でもとりわけ約4.7g/cmであってよい。遮熱コーティング240を、任意の所望の厚さ及びミクロ組織まで施工することができる。例えば、コーティング240は、約75μm~約3,000μmの間の厚さを有することができる。厚さは、例えば最適な冷却のレベル及び熱応力のバランスをもたらすために、所与の部品の場所ごとに変化してもよい。TBC240の上部は、層240と同一又は同様の材料で形成された粗面化層又は多孔質層250をさらに含んでもよい。層250の粗面化及び又は多孔質の性質は、犠牲層260の形態のセラミック層の結合を容易にする。
【0024】
犠牲層(又はセラミック層)260は、層240及び250と同一又は同様の材料で構成されてよく、或いは犠牲層は、希土類ケイ酸塩から構成されてよい。適切な希土類ケイ酸塩として、限定されるものではないが、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム及びこれらの混合物のケイ酸塩が挙げられる。希土類ケイ酸塩は、一ケイ酸塩M2SiO5、二ケイ酸塩M2Si2O7又はこれらの組み合わせの形態であってよい。さらに、一ケイ酸塩、二ケイ酸塩又は組み合わせを、希土類酸化物M2O3と組み合わせて堆積させてもよい。或いは、犠牲層260を、リソグラフィック法によって堆積させられる結果として緻密なミクロ組織を有することができるアルミナで構成してもよい。犠牲層260の機能は、下方に位置する遮熱コーティング層240、260の異物による損傷を制限、低減又は排除することである。犠牲層260の適切な厚さは、約0.1~約200μmの間であってよい。犠牲層260は、図1に関連して説明したセラミックスラリー及びセラミック層、並びに前述の方法によって形成される。
【0025】
犠牲層260は、異物による損傷又は衝撃を受けたときに層260がどのように破損するかについて特定の制御を可能にする微視的及び巨視的な弱点及び破断面を有する。破断面は、化学的性質、ミクロ組織、構成どによって衝撃力を吸収し、下方に位置するTBC層240、250への正味の衝撃及び応力を低減することによって、異物による損傷を抑えるように設計される。例えば、犠牲層260は、その表面によって定められる複数の平行であり、さらには/或いは交差する破断面を有することができる。
【0026】
図3が、犠牲層(又はセラミック層)260の一部分の拡大断面図を示している。犠牲層は、下方に位置する遮熱コーティング層240及び又は250の異物による損傷を低減する複数の要素で構成される。犠牲層260は、複数の巨視的な支持部材310を含む。巨視的な支持部材310を、列311に配置することができ、各々の巨視的な支持部材を、(図3の図に関して)垂直方向及び又は水平方向に隣接する巨視的な支持部材に連結させることができる。巨視的な支持部材310は、おおむね立方体、長方形、ダイヤモンド又は多角形の形状を有することができる。巨視的な支持部材は、その外面に破断面を定める。例えば、巨視的な支持部材310によって定められる破断面は、下方に位置する基材層の表面に対して+45度及び-45度である。45度よりも大きい角度又は小さい角度を使用してもよいことを、理解すべきである。
【0027】
列311の間の介在領域に、セラミック材料の複数の平行なシート320が配置され、シート320は、介在する支持要素330によって支持される。シート320は、互いに平行、かつ下方に位置する基材層の表面に平行な複数の破断面を定める。例えば、シート320によって定められる破断面は、下方に位置する基材層に対して0度又は180度だけ傾けられると考えられる。支持要素330も、セラミック材料で形成され、おおむね三角形又は角錐形の形状であってよい。平行なシート320に衝突する異物は、衝突の衝撃力を吸収し、衝撃が充分に強い場合には剥がれ落ちることができる。シート320への衝撃に関して、衝撃力は、巨視的な支持部材310に向かって水平方向に向けられ、この時点で、衝撃力は、+/-45度の角度に向けられる。支持要素330は、セラミック層260及びシート320に強度を付加し、支持要素330の間隔又は位置周波数を、セラミック層260内の位置又は深さに基づいて変えることができる。一例にすぎないが、セラミック層260の上方の層は、セラミック層260の下方の層よりも密度の低い支持要素330を有していてもよく、或いはその逆であってもよい。さらに、複数の破断面は、基材210の上面に対して約10~80度、10~70度、10~60度、10~50度、10~40度、10~30度、20~89度、20~80度、30~80度、40~80度、50~80度、30~70度又は40~60度の間の角度を形成することができる。傾斜した破断面は、入射する異物(点線のFOD線によって示される)の力をより横方向に向け直し、したがって、力は、下方に位置するTBC層に到達する前に犠牲層260をより多く通過する。さらに、犠牲層260の一部分を破砕するために必要な力が、TBC層に到達するFODの衝撃の正味の力を減少させる。
【0028】
リソグラフィックプロセスは、犠牲層の高度に制御された堆積を可能にし、したがって、きわめて複雑な多数の破断面を含み、力を吸収する形状構成を、犠牲/セラミック層260について生成することができる。犠牲層260の各々の破断面及び各々のレベルが、全体としての衝撃力の一部を吸収することによって、下方に位置するTBC層240、250を保護する。
【0029】
図4が、複数の隆起部410を定めている摩耗性又は犠牲コーティングのためのパターン405の代替の例示的な実施形態の図を示している。隆起部410を形成する層は、図1に関連して説明したセラミックスラリー及びセラミック層、並びに前述の方法によって形成される。パターン405は、湾曲部分420及び直線部分430を含む。湾曲部分420を、タービンブレード先端がパターンと摩耗可能に連絡している場合、パターンのうちのタービンブレード先端の前部に対応する部分に配置することができる。直線部分430は、タービンブレード先端がパターン405と摩耗可能に連絡している場合、隆起部410のうちのタービンブレード先端の後部に対応する部分に配置される。直線部分430は、隆起部410の第1の端部に位置する。複数の隆起部410が、各々の隆起部410が直線部分430において他の隆起部410と互いに実質的に平行であるように、TBC層240、250上に配置される。隆起部のパターンは、ブレード外面に局所的に位置してもよい。さらに、各々の隆起部410は、湾曲部分420及び直線部分430の両方において隣り合う隆起部410の間の距離が等しくなるように配置される。各々の隆起部410の間の距離440は、約1μm~約14mmの間の範囲であってよく、各々の隆起部410の間の好ましい距離440は、約50μm~約7mmの範囲である。隆起部410の一部分は、基準線451に対して角度450が形成されるように直線部分430に配置される。角度450は、約20度~約70度の範囲である。湾曲部分420は、湾曲部分420を通る平均反り線形状に実質的に一致するように構成された半径を含む。リソグラフィ印刷の隆起部410の利点は、機械加工が不要(又は少なくともきわめて最小限)であり、機械加工がないことで、機械加工プロセスによって引き起こされるであろう残留応力を排除(又は低減)することによって部品の寿命が延びることである。隆起部は、任意の所望の構成をとることができ、例えば、隆起部410は、直線状、湾曲状、曲線状、一方側又は他方側へと傾斜、或いは(ターボ機械に対して)半径方向に沿って幅がテーパ状であってよく、隆起部のマトリックス又はクロスハッチ又は六角形のグループを形成してもよい。隆起部410を利用する部品の一例は、これに限られるわけではないが、ガスタービンにおいて使用されるように構成されたシュラウドである。
【0030】
図5が、本開示の一態様による部品500の一部分の概略の断面図を示している。部品500は、複数の層で構成される。ベース層/材料又は基材層210を、ニッケル、コバルト、鉄又はこれらの組み合わせを含む超合金材料で形成することができる。タービンブレード、ベーン、シュラウド及び他の部品などの多くのガスタービン用途において、ベース層210は、一方向凝固又は単結晶のニッケル基超合金である。金属間層又は中間層220を、ベース層又は基材210上に堆積させることができる。
【0031】
良好な接着を保証し、剥離の不具合を回避するために、遮熱コーティング系は、遮熱コーティング240と基材210との間にボンドコーティング230及び中間層220を含む。中間層220は、例えばパックセメンテーション又は物理蒸着などの任意の許容可能な堆積技術によって基材210上に堆積させられる。ボンドコーティング230が、中間層220上に堆積させられる。適切なボンドコート又はコーティング230として、限定されるものではないが、ニッケル及び白金アルミナイドなどの従来からの拡散コーティング、MCrAlYコーティングどが挙げられる。
【0032】
過去において、ボンドコートへのセラミックコーティングのより良好な接着を助けるために、金属のアンカー構造がボンドコートに追加されてきた。しかしながら、これらのアンカー構造に使用される金属材料は、金属がセラミックよりも低い温度で溶融して不具合を来すがゆえに、動作時の最大許容温度を制限する。図1に関連して説明した方法を使用して、ボンドコーティング230上に複数の応力上昇要素550又はアンカー構造をリソグラフィによって印刷することができる。リソグラフィによって印刷されたセラミックスラリー及び得られたセラミック層(応力上昇要素550を形成する)は、TBC層240と同一又は同様のセラミック材料であってよく、したがって、金属組織と比較して改善された温度性能を示す。応力上昇要素550(金属-セラミック複合材料であってもよい)は、TBC層240が所望の位置で所望の破断面に沿って割れるように促すことで、TBCコーティング240の不具合を低減するように構成及び配置される。例えば、応力上昇要素550の形状、位置、サイズ及び高さを、所望の場所で砕けるような自然な傾向をTBCコーティングにもたらすように個別に調整することができる。応力上昇要素550の形状は、長方形であってよく、或いは台形551又は応力上昇要素の(図5における)上部付近において寸法がより大きいダブテール552であってよい。この「ダブテール形状」は、TBCコーティング240をボンドコーティング230及び部品500に固定する。
【0033】
応力上昇要素550がリソグラフィによって堆積させられた後に、遮熱コーティング(TBC)240が、ボンドコーティング層230及び応力上昇要素550を覆って堆積させられる。遮熱コーティング240は、上述のように、任意の適切なセラミック材料を単独で又は他の材料と組み合わせて含むことができる。リソグラフィックプロセスは、きわめて複雑で力を案内する形状構成を生成することができるように、応力上昇要素550の高度に制御された堆積を可能にする。例えば、応力上昇要素550の第1のグループを、応力上昇要素の第2のグループよりも大きい高さ(又は厚さ)を有するように設計することができる。さらに、本明細書に記載の方法を、部品の損傷(例えば、FOD又は腐食による損傷)を修復するため又は部品の寿命を延ばすために、部品に対して実行してもよい。セラミック層は、異物による損傷又は腐食を被りやすいことが知られている部品上の位置だけに局所的に施工してもよいし或いはセラミック層を部品の表面全体に施工してもよい。
【0034】
例示的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲内で様々な変更をなすことができ、ある構成要素を均等なもので置き換えることができることは当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的な技術的範囲内で、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるべく数多くの修正を加えることができる。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態と思料される特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。さらに、「第1」、「第2」などの用語は、順序又は重要性を示すものではなく、ある構成要素を他の構成要素から区別するために用いられるものであり、また、不定冠詞は数量を示すものではなく、その不定冠詞が付されたものが1以上存在することを意味する。
【符号の説明】
【0035】
100 方法
200 部品
210 基材層、基材、ベース層
220 中間層
230 ボンドコーティング、ボンドコーティング層、ボンドコート、ボンドコート層
240 遮熱コーティング(TBC)、遮熱コーティング層、TBCコーティング、TBC層、セラミック遮熱コーティング
250 粗面化層又は多孔質層
260 犠牲層、遮熱コーティング層、セラミック層
310 支持部材
311 列
320 シート
330 支持要素
405 パターン
410 隆起部
420 湾曲部分
430 直線部分
440 距離
450 角度
451 基準線
500 部品
550 応力上昇要素
551 台形
552 ダブテール
図1
図2
図3
図4
図5