(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】骨格多面体単位胞、コイル状単位胞、又はメッシュ単位胞から組み立てられたインプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/12 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A61F2/12
(21)【出願番号】P 2021566000
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020030141
(87)【国際公開番号】W WO2020242694
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-04
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512315555
【氏名又は名称】テファ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リメム,スカンダー
(72)【発明者】
【氏名】リツク,サイード
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,サイモン エフ.
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107638231(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0151081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0290650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0223928(US,A1)
【文献】国際公開第2017/050837(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0222161(US,A1)
【文献】国際公開第2018/177856(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280145(US,A1)
【文献】国際公開第2015/164982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性格子を含む乳房インプラントであって、
前記格子は、接続された単位胞を更に含み、
前記単位胞は
、ポリマーストラット又は繊維から形成される
縁部及び頂部を有する骨格多面体
の構造タイプであ
り、
前記ストラット又は繊維は、(i)0.1から200Nの破断荷重、(ii)22%から1000%の破断伸び、及び、(iii)0.05から10GPaの弾性率、のうちの2つ以上の特性を有する、乳房インプラント。
【請求項2】
前記単位胞は、圧縮性である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記ストラット又は繊維
は、第1の頂部から第2の頂部までの縁部に沿った長さを有し、
前記長さは、3mmから3cm、又は3mmから8mmである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記格子内
において、単位胞は
相互に同一である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ストラット又は繊維は、50μmから5mmの厚さ又は直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前
記格子は、複数の細孔を含み、
前記格子の前記細孔は、少なくとも0.5mmの
幅又は直径を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記格子の弾性率は、前記インプラントが圧縮性であり圧縮された後にそれらの形状を復旧することができるように、0.01kPaから1MPaの間である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ストラット
又は繊
維は、
(i
)1から100N又は2から50Nの破断荷重、
(ii
)100%から700%の破断伸び、
(iii
)0.1から3GPa又は0.2から0.8GPaの弾性率
のうちの1つ以上の特性を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記格子は、再吸収性である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記ポリマーストラット又は繊維は、4-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、コハク酸、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、及びグリコールのうちの1つ以上のモノマーを含むポリマー又はコポリマーから製作され、或いは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート又はそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーを含み、選択的に、前記ポリマー又はコポリマーは架橋されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
(i)自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤、及び診断装置のうちの1つ以上、
(ii)選択的にインプラントを固定するための、1つ以上のアンカー、留め具、又はタブ、又は、
(iii)血管茎又は他の組織塊を挿入するための1つ以上の開口部
を更に含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
請求項1に記載のインプラント
を製造する方法であって、
(i)ポリマー組成物を注入成形することによって前記単位胞の前記ストラット又は繊維を形成し、前記単位胞を組み立てて前記インプラントの前記格子を形成すること、
(ii)前記単位胞の前記ストラット又は繊維を3D印刷することによって前記インプラントの前記格子を形成すること、
及び、
(iii
)溶融押出堆積印刷によって前記インプラントの前記格子を形成すること、
からなる群から選択されるいずれか1つのプロセスによって
前記インプラントを製造する工程を含む、方法。
【請求項13】
前
記格子は、ドーム状の形状を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
乳房インプラントを製造する方法であって、
ポリマーストラット又は繊維から形成される縁部及び頂部を有する骨格多面体の構造タイプの接続された単位胞を含む多孔性格子を形成することを含み、
前記格子は、
(i)ポリマー組成物を注入成形して単位胞のストラット又は繊維を形成することによって、複数の単位胞を形成し、前記単位胞を組み立てて格子を形成すること、
(ii
)格子のポリマーストラット又は繊維の3D印刷によって、ポリマー組成物から前記格子を直接形成すること
、及び、
(
iii)溶融押出堆積印刷により格子を形成すること、
の何れか1つによって
形成され、
前記ストラット又は繊維は、(i)0.1から200Nの破断荷重、(ii)22%から1000%の破断伸び、及び、(iii)0.05から10GPaの弾性率、のうちの2つ以上の特性を有する、方法。
【請求項15】
前記ポリマー組成物は、4-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、ε-カプロラクトン、コハク酸、アジピン酸、1,4-ブタンジオール、及びグリコールのうちの1つ以上のモノマーを含むポリマー又はコポリマーから選択され、又は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート又はそのコポリマー、又はポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーを含み、選択的に、前記ポリマー組成物は架橋されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ストラット又は繊維は、
(i)50μmから5mm、150μmから2mm、又は200μmから1.5mmの厚さ又は直径、
(ii
)1から100N又は2から50Nの破断荷重、
(iii
)100%から700%の破断伸び、
(iv
)0.1から3GPa又は0.2から0.8GPaの弾性率
のうちの1つ以上の特性を有する、請求項14の方法。
【請求項17】
前記インプラントは、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、幹細胞、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、抗菌剤、抗生剤、生物活性剤、及び診断装置のうちの1つ以上を前記格子に組み込むプロセスで形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記格子は、注入成形
又は3D印
刷によって形成され、0.01KPaから1MPaの弾性率を有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、「IMPLANTS ASSEMBLED FROM SKELETAL POLYHEDRON UNIT CELLS, COILED UNIT CELLS OR MESH UNIT CELLS」と題する、2019年5月31日に出願された米国仮出願第62/855,835号の利益を主張し、その全ての内容は、あらゆる目的のために全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、一般に、インプラント、より具体的には、3次元単位胞から形成された吸収性インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 乳房切除後の乳房再建は、乳がん治療の不可欠且つ重要な部分になっており、手術により患者に美的及び心理社会的利益の両方を提供するものである。現在米国では、乳房再建術の65%近くが、手術の最初のステップで永久的な乳房インプラント用のポケットを生成するために組織拡張器を使用している。一部の患者では、組織拡張器を使用せずに乳房インプラント用のポケットを形成することができる。ポケットが生成されると、組織拡張器が取り外され、2番目のステップで永久乳房インプラントに取り替えられる。
【0004】
[0004] 乳房インプラントはまた、乳房のサイズを増大するために、乳房増大又は乳房固定術で使用することができる。後者の手術では、乳房挙上が乳房増大と組み合わされる。最も一般的には、乳房インプラントは乳房組織の下のポケットに置かれるが、場合によっては胸壁の下に移植される。
【0005】
[0005] 乳房インプラントは、寸法、形状、表面の質感が異なる。多種多様な異なる寸法が利用可能であり、外科医と患者は、様々な突出、高さ、幅、及び全体積の範囲から選択することができる。形状に関しては、丸い、又は解剖学的に形作られたインプラントがあり、インプラントの表面は、滑らかで、マイクロテクスチャ又はマクロテクスチャであってもよい。一般に、丸いインプラントは滑らかな表面を有するが、解剖学的に形作られたインプラントはくぼんだマイクロ又はマクロテクスチャの表面を有する。
【0006】
[0006] 乳房の再建と増大を検討している患者は増加しているが、永久的な乳房インプラントを乳房に配置することには消極的である。これは特に乳房切除を受けて現在乳房再建を検討している女性に言えることである。これらの患者の中には、永久的な異物を乳房に配置したくない場合や、永久的な乳房インプラントで発生し得る合併症のリスクを冒したくない場合がある。合併症には、再手術を必要とする被膜収縮、インプラントの破裂又は収縮、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)の発症、感染、及び乳房の非対称性を引き起こすインプラントの移動のリスクが含まれる。
【0007】
[0007] Hutmacherの国際特許出願公開第2016/038083号は、組織又は個々の細胞の空隙への侵入を防ぐように設計された空間占有構造で充填された空隙を含むインプラントを開示している。移植後6~8週間で、移植細胞で充填することができる空隙スペースを残して、インプラントを除去する。空隙スペースは、移植細胞を支持するために、結合組織と血管系の予め形成された床を提供する。インプラント足場構造は、生分解性材料で製作することができる。
【0008】
[0008] Rehnkeの米国特許出願公開第2018/0206978号は、乳房増大患者に使用できるプリーツ足場から製作された内部ブラジャー装置を開示している。
【0009】
[0009] Danzeの国際特許出願公開第2018/078489号は、インプラントのフレーム内で互いに積み重ねられた生体吸収性テキスタイルの2枚のシートを含む、2つの横方向開口部を有する3次元生体吸収性フレームを含む軟組織の体積を取替又は増加させるためのインプラントを開示している。
【0010】
[0010] 特に、乳房インプラントの設計には、移植時に特定の所望の外観の新しい乳房組織を作り出すことができる革新はほとんどない。したがって、組織の内部成長のための足場として機能するだけでなく、触ると柔らかく、圧縮でき、圧縮から復旧でき、乳房の通常の感じを回復する乳房の組織を再生できる乳房インプラントが依然として必要とされている。より具体的には、新しい乳房組織を形成するために使用することができ、好ましくは乳房組織と同様の弾性率を有し、好ましくは乳房組織と同様の感じを有するインプラントが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011] 本明細書に記載のインプラントは、乳房、乳首、顔面、及び臀部を含む体の一部の再成形、並びに、空隙の充填、喪失又は欠損した組織の再建、損傷した組織構造の支持、既存の組織構造の増強、軟組織の体積の増加、組織又は臓器の機能の回復、軟組織の自然な感じの回復、ヘルニアの修復、組織の再生、修復、強化、及び再建を支援するための生物学的及び合成材料の送達において外科医を支援する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012] 実施形態において、吸収性インプラントは、複数の単位胞から形成されたフレームワーク又は格子を含む。単位胞は、ポリマーストラット又は繊維、コイル又はバネから形成された縁部及び頂部を有する骨格多面体、或いはメッシュ編地又は発泡体から形成された単位胞であり得る。
【0013】
[0013] 実施形態において、インプラントは多孔性であり、組織の内部成長のための足場を提供し、細胞、コラーゲン、自家脂肪、吸引脂肪組織、又は注入可能な脂肪を更に含んでもよい。
【0014】
[0014] 実施形態において、インプラントは圧縮性であり、圧縮後にそれらの形状を復旧する。
【0015】
[0015] 実施形態において、インプラントは、軟組織の修復、再生、及び取替に使用される。実際、本明細書に記載のインプラントは、例えば、形成外科装置、乳房インプラント、乳房挙上装置、乳房増大装置、乳頭インプラント、顔面再建装置、臀部インプラント、頬骨増大装置、美容修復装置、軟組織再生装置、ヘルニアインプラント、ヘルニアプラグ、創傷治癒装置、組織工学足場、血管茎を送達するための足場、組織修復/再生誘導装置、増量又は充填装置、空隙充填剤、膀胱尿管逆流の治療のための装置、細胞播種装置、又は薬物送達装置を含む広範囲の装置から選択される任意の1つのタイプの装置として動作可能であり得る。
【0016】
[0016] 実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞のポリマーストラット又は繊維、又は骨格多面体の単位胞を形成するコイル又はバネは、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0017】
[0017] 実施形態において、インプラントは、1つのタイプの単位胞のみを有し、各単位胞は同一である。そのようなインプラントは、これらの特性値のすべてが骨格多面体内で同じである骨格多面体から形成されてもよい。他の実施形態において、インプラントは、2つ以上のタイプの単位胞を有する。そのようなインプラントは、ポリマーストラット及び繊維、又は、コイル及びバネが異なる特性値を有する骨格多面体から形成されてもよい。
【0018】
[0018] 実施形態において、インプラントは、再吸収性ポリマーストラット又は繊維を含む。
【0019】
[0019] 実施形態において、インプラントは、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞のための足場であり得るが、好ましくは、自家脂肪、吸引脂肪組織、脂肪充填、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含むがこれらに限定されない自家組織及び細胞のための足場であり得る。実施形態において、インプラントは、脂肪組織工学足場であってもよい。実施形態において、インプラントはコラーゲンを含んでもよい。実施形態において、インプラントは、血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にするための1つ以上の開口部を有してもよい。インプラントは、組織の内部成長を促進するように設計されている。インプラントは、軟組織構造の修復、取替、再生、及び増大に使用するように設計されている。移植後、インプラントには結合組織と血管が侵入し、十分に統合されるように設計されている。好ましくは、インプラントは、多孔性で、吸収性であり、制御された方式で分解し、そしてインビボで患者の組織によって取り替えられる。インプラントはマクロ多孔性であってもよい。インプラントは、好ましくは、インビボでの予測可能な分解速度、及び予測可能な強度保持を有するポリマー材料を含む。インプラントは、組織の触覚の回復又は維持とともに組織塊を回復又は増大することを可能にすることができ、これは、乳房、乳首、顔面、首部、臀部及び皮膚を含む用途にとって特に重要である。
【0020】
[0020] 実施形態において、インプラントは、複数の単位胞から形成された格子を含有する。単位胞を繰り返してインプラントの体積を形成してもよく、必要に応じて、単位胞の表面をトリミングしてインプラントの最終形状を形成してもよい。インプラントの繰り返し単位胞により、予測可能な特性を有したインプラントを生成することが可能になる。インプラントは、好ましくは3次元の形状である。実施形態において、単位胞は、ポリマーストラット又は繊維から形成された縁部及び頂部を有する骨格多面体である。他の実施形態において、単位胞は、ポリマーから形成されたコイル又はバネである。更に他の実施形態において、単位胞は、ポリマーから形成されたメッシュ編地である。更に別の実施形態において、単位胞は、ポリマーから形成された発泡体である。単位胞は、格子が空間占有構造であるように、中空又は多孔性である。実施形態において、格子の単位胞は、1つ以上の異なる単位胞に接合されている。格子は、2つ以上の単位胞、好ましくは50以上の単位胞を含んでもよい。格子の単位胞は、好ましくは移植前に、又は、より好ましくは移植後に、細胞によってコロニー形成され、格子の細孔は、組織、血管、又はそれらの組み合わせによって侵入され得る。格子が吸収性である場合、格子の分解により、組織、血管、又はそれらの組み合わせによる格子構造へのさらなる侵入が可能になり、このプロセスは、格子が完全に吸収されるまで継続することができる。実施形態において、格子は、例えば、血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にするための1つ以上の開口部を含んでもよい。実施形態において、1つ以上の開口部は、格子内に横通路を形成してもよい。
【0021】
[0021] 実施形態において、インプラントは異方性特性を有することができ、つまり、インプラントが異なる方向に異なる特性を有することを意味する。インプラントは、一方向に第1の弾性率を有し、第2の方向に第2の異なる弾性率を有してもよい。インプラントは、それらの体積密度に対して高い強度を有してもよい。
【0022】
[0022] 実施形態において、インプラントは、多孔性格子を含む軟組織インプラントであり、格子は、接続された単位胞を更に含み、単位胞は、骨格多面体であり、骨格多面体の縁部及び頂部は、ポリマーストラット又は繊維から形成される。実施形態において、インプラントは、多孔性格子を含む軟組織インプラントであり、格子は、接続された単位胞を更に含み、単位胞は、コイル又はバネであり、コイル又はバネは、ポリマーストラット又は繊維から形成される。更に他の実施形態において、インプラントは、多孔性格子を含む軟組織インプラントであり、格子は、接続された単位胞を更に含み、単位胞は、繊維によって接続されたメッシュ編地の上部プレート及び下部プレートで編まれ、好ましくは、単位胞は、経編みされている。実施形態において、単位胞は発泡体であり、好ましくは圧縮性発泡体である。
【0023】
[0023] 実施形態において、インプラントは、形成外科装置、乳房インプラント、乳房挙上装置、乳房増大装置、乳頭インプラント、顔面再建装置、臀部インプラント、頬骨増大装置、美容修復装置、軟組織再生装置、ヘルニアインプラント、ヘルニアプラグ、創傷治癒装置、組織工学足場、血管茎又は他の組織塊のための足場、組織修復/再生誘導装置、増量又は充填装置、空隙充填剤、膀胱尿管逆流の治療のための装置、細胞播種装置、又は薬物送達装置である。
【0024】
[0024] 好ましい実施形態において、インプラントは吸収性乳房インプラントであり、選択的に、移植前、移植中、又は移植後、或いはそれらの任意の組み合わせで、患者からの自家組織で塗布される。自家組織は、好ましくは、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞のうちの1つ以上である。乳房インプラントは、好ましくはマクロ多孔性である。乳房インプラントのマクロ多孔度は、比較的大量の乳房組織のインプラント内での血管新生と組織の内部成長を促進するために、インプラントが、十分な自家脂肪、生体材料、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び/又は生物活性剤を収容することを可能にするように設計されている。選択的に、乳房インプラントは、血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にするために、横通路を含む1つ以上の開口部を更に含んでもよい。インプラントは、(i)乳房切除を受けている、(ii)乳房挙上を受け、増大が必要である、(iii)乳房縮小を受け、縮小された乳房の支持及び挙上が必要である、(iv)以前にシリコーン乳房インプラントによる乳房手術を受けており、シリコーンインプラントを除去して、その後に若々しい外観と豊満で大きなサイズを生成する乳房の再建を所望する、患者に使用することができる。インプラントは、乳房組織を除去した後、乳房に自然な乳房組織の感じを回復させたい患者に使用してもよい。インプラントは、胸からの乳房の突出を増加するために使用することができ、脂肪移植と組み合わせて乳房に体積を追加することができる。
【0025】
[0025] 実施形態において、インプラントは、乳房挙上装置、乳房増大装置、又は永久乳房インプラントの取替又は代替物である。実施形態において、インプラントは、乳房増大、乳房再建及び乳房固定を含む乳房手術手順における使用に適した形状及びサイズを有する。
【0026】
[0026] 実施形態において、インプラントは乳房インプラントであり、更により好ましくは、圧縮され、圧縮から復旧することができる。実施形態において、インプラントは、乳房の特定の所望の外観を生成する形状で設計されている。理想的には、乳房インプラントは乳房組織と同様の弾性率を有する。実施形態において、移植された乳房インプラントは、乳房組織と同様の感じを有する。乳房インプラントの移植後、乳房は硬く感じられることはなく、触ると柔らかく、自然な乳房のように感じられる。更に、実施形態において、乳房インプラントは、触覚を維持するか、又は触覚を回復しながら、乳房の回復又は乳房の増大を可能にする。
【0027】
[0027] 実施形態において、インプラントは、インプラント部位での支持がインプラントから新しい組織に移行することを可能にするのに十分長い間、強度を保持する。インプラントは、患者の組織の再構築を指示するために、長期間その形状が維持される必要がある。インプラントが乳房インプラントとして使用される場合、支持がインプラントから新しい組織に移行するまで、インプラントは乳房の支持を提供する。好ましくは、この移行期間中、乳房組織に関して、支持の喪失がないか、又は支持の喪失が最小限である。乳房インプラントの形状は、組織の内部成長をインプラントに向け、所望の乳房の形状を生成するために、長期間維持される。
【0028】
[0028] 実施形態において、インプラントは、所定の3次元形状を有する。乳房インプラントの場合、インプラントは、皮膚と乳房マウンド又は乳房の胸壁との間に皮下移植することができる、所定の3次元形状を有する。乳房インプラントは、胸筋前、乳腺下、又は胸筋下の位置に移植されてもよい。インプラントにより、外科医は、乳房の上部極と下部極の体積比、胸壁からの乳房の突出の程度、及び乳房の上部極と下部極の曲率を簡単に制御することが可能になる。外科医は、移植前に血管茎又は他の組織塊をインプラントに挿入してもよい。
【0029】
[0029] 実施形態において、インプラントは、細胞、幹細胞、分化細胞、脂肪細胞、筋細胞、血小板、茎、血管茎、組織塊、細胞外脂肪基質タンパク質、ゲル、ヒドロゲル、ヒアルロン酸、コラーゲン、生物活性剤、薬物、抗生剤、及びその他の材料をインプラント部位に送達する手段を外科医に提供するように機能する。好ましくは、インプラントによって送達されるか、或いはインプラントに塗布又は注入される細胞及び組織は、自家由来である。インプラントは、自家脂肪移植に使用されてもよい。インプラントに追加、塗布、又は注入された細胞は、膵島細胞、肝細胞、及び患者の病気の治療のための遺伝子を含有するように遺伝子改変された幹細胞を含んでもよい。インプラントは、成長因子、細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、サイトカインなどの細胞シグナリング分子、並びに細胞移動、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外基質蓄積を促進する分子を含む、細胞の内部成長を刺激するための生物活性剤を含んでもよい。インプラントはまた、組織の癒着を防ぐための薬剤、又は細胞増殖を防ぐための薬剤、特にインプラント構造への細胞の侵入を遅らせるための薬剤を塗布又は含有してもよい。そのような薬剤は、すべての格子上又は格子内に、或いは格子の1つ以上の特定の領域にのみ存在してもよい。
【0030】
[0030] 実施形態において、インプラントは、軟組織の体積又は組織塊を取替及び/又は増加させるために移植することができる。実施形態において、インプラントは、細胞及び組織のための成長室を更に含んでもよい。実施形態において、インプラントは、血管茎又は他の組織塊をインプラントに挿入することを可能にするために、又はインプラントが血管茎又は他の組織塊を挟むように、1つの、又は2つ以上の開口部を含んでもよい。
【0031】
[0031] 実施形態において、インプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率値を有する。インプラントが乳房インプラントである場合、弾性率は、好ましくは0.01kPaから1MPa、より好ましくは0.1kPaから100kPaである。
【0032】
[0032] 実施形態において、インプラントは、例えば、低侵襲の送達手順を可能にするために、移植のために一時的に変形することができる。インプラントの格子は、移植後に、細胞、組織及び/又は吸引脂肪組織のうちの1つ以上を注入することによって充填されてもよい。血管茎又は他の組織塊は、格子の細胞、組織、及び/又は吸引脂肪組織による充填前又は後に挿入されてもよい。
【0033】
[0033] 実施形態において、インプラントは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)及びそれらのコポリマーから、又はポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)及びそれらのコポリマーから製作することができる。PBSポリマー及びコポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応性混合剤のうちの1つ以上を更に含んでもよい。PBS及びP4HBポリマー及びコポリマーは、同位体濃縮されてもよい。好ましい実施形態において、インプラントの格子単位胞は、注入成形、押出、編み、織り、発泡、又は3D印刷によって、P4HB、PBS、又はP4HBとPBSのコポリマーから製作することができる。実施形態において、格子は、脂肪吸引された脂肪の微小球を所定の位置に保持し、壊死につながる可能性のある脂肪の貯留を防ぐことができる材料で製作されている。
【0034】
[0034] 実施形態において、インプラントを調製するために使用されるポリマーは、50から1,000kDa、より好ましくは90から600kDa、更により好ましくは200から450kDaの重量平均分子量を有する。
【0035】
[0035] 実施形態において、インプラントは、インプラントあたり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有する。実施形態において、インプラントは、エチレンオキシド、電子ビーム、又はガンマ線照射によって滅菌されている。
【0036】
[0036] 実施形態において、インプラントは、複数の第1のタイプの単位胞を格子に形成することによって製造され、(i)単位胞は、ポリマー組成物を注入成形して単位胞のストラット又は繊維を形成することによって形成され、単位胞を組み立てて格子が形成され、(ii)単位胞は、繊維の経編みによって形成され、単位胞を組み立てて格子が形成され、(iii)格子は、格子のポリマーストラット又は繊維の3D印刷によって、ポリマー組成物から直接形成され、又は(iv)単位胞は、発泡によって形成され、発泡体単位胞を組み立てて格子が形成される。そのように形成された格子は、(i)0.01kPaから1MPaの弾性率を有し、(ii)成形又は印刷後にトリミングされ、又は(iii)インプラントを固定するための1つ以上のタブ又はアンカーを含んでもよい。注入成形によってそのように形成された格子は、単位胞を互いに付着させて格子を形成することを可能にする留め具を更に含んでもよい。
【0037】
[0037] 実施形態において、インプラントは、移植中に一時的に変形されるか、又は低侵襲技術によって送達されてもよい。
【0038】
[0038] 実施形態において、インプラントの単位胞は、表面粗さ(Ra)を有して形成される。表面粗さは、インプラント上での細胞付着及び組織形成を促進する。表面粗さはまた、隣接する組織へのインプラントの付着を促進し、組織の内部成長を促進し、移植後の装置の動きを防ぐのに役立つ。実施形態において、インプラントの単位胞のストラット又は繊維は、0.02から75ミクロン、より好ましくは0.1から50、又は0.5から30ミクロン、更により好ましくは5から30ミクロンの表面粗さを有する。実施形態において、インプラントの単位胞は、これらの表面粗さの値で3D印刷される。好ましくは、インプラントの単位胞は、ポリマー粉末の選択的レーザー溶融(SLM)、又はポリマーペレットの溶融押出堆積(MED)によって3D印刷される。実施形態において、単位胞は、表面粗さを有する押出繊維から形成される。実施形態において、表面粗さを有する押出繊維は、繊維押出中に溶融破壊を誘発し、テクスチャドニップローラーを使用して押出後に繊維表面に粗さを形成し、鋸歯状の穴などの特徴のあるダイ穴を通して繊維を押し出し、押し出された繊維を、例えば、ミクロンサイズの溶媒の液滴を使用して、繊維表面にディボットを生成する溶媒蒸気ミストで処理することにより形成されてもよい。実施形態において、インプラントは、0.02から75ミクロン、より好ましくは0.1から50ミクロンの表面粗さを有するストラット又は繊維を含む単位胞から形成され、ストラット又は繊維は、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。実施形態において、インプラントは、0.02から75ミクロン、より好ましくは0.1から50ミクロンの表面粗さを有するストラット又は繊維を含む単位胞から形成され、インプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPaの弾性率を有する。実施形態において、表面粗さを有するインプラントは乳房インプラントである。
【0039】
[0039] 実施形態において、インプラントは永久的ではなく、予測可能な速度で分解し、予測可能な強度保持を有するため、インプラントから新しい組織に支持が移行することが可能になる。
【0040】
[0040] 実施形態において、インプラントは、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含むがこれらに限定されない自家組織で塗布されるか、又はそれらの貯蔵器として機能することができる足場構造を有する。
【0041】
[0041] 実施形態において、インプラントは、組織体積を増加又は取り替えるために、血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にする1つ以上の開口部を含む。
【0042】
[0042] 実施形態において、インプラントは、任意の形状、例えば、乳房の特定の所望の外観を提供する形状に容易に設計することができる。
【0043】
[0043] 本発明のこれらの利点、並びに他の目的及び利点は、添付の図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】[0044]本発明の一実施形態による、複数の接続された骨格多面体単位胞を含むインプラントの斜視図である。
【
図2A】[0045]
図1に示されるインプラントの1つの骨格多面体単位胞の底面図である。
【
図2B】[0045]
図1に示されるインプラントの1つの骨格多面体単位胞の等角図である。
【
図2C】[0045]
図1に示されるインプラントの1つの骨格多面体単位胞の正面図である。
【
図2D】[0045]
図1に示されるインプラントの1つの骨格多面体単位胞の左側面図である。
【
図3】[0046]
図1に示されるインプラントが指で圧縮されている様子を示している。
【
図4】[0047]本発明の一実施形態による、コイル状円筒形単位胞の斜視図である。
【
図5】[0048]本発明の一実施形態による、単位胞を一緒に組み立てるための留め具を含むコイル状単位胞の斜視図である。
【
図6】[0049]本発明の一実施形態による、3D印刷によって熱可塑性ポリマーから生成されたコイル状単位胞の斜視図である。
【
図7】[0050]本発明の一実施形態による、複数の
図5に示されるコイル状単位胞から形成されたインプラントの格子構造の斜視図である。
【
図8】[0051]本発明の一実施形態による、インプラントの格子構造を形成するために、複数の
図4に示されるコイル状円筒形単位胞を3D印刷することによって形成されたインプラントの格子構造の上面斜視図である。
【
図9A】[0052]本発明の一実施形態による、骨格多面体単位胞及び多孔性外殻を含む吸収性乳房インプラントの側面図である。
【
図9B】[0053]
図9Aに示されるインプラントの上面図であり、多孔性外殻を示している。
【
図10A】[0054]本発明の一実施形態による、骨格多面体単位胞を含む別の乳房インプラントの上面斜視図である。
【
図10B】[0055]
図10Aに示されるインプラントの断面図であり、インプラントの骨格多面体単位胞を示している。
【
図11】[0056]本発明の一実施形態による別のインプラントの上面斜視図である。
【
図12】[0057]本発明の一実施形態によるメッシュ単位胞の図である。
【
図13】[0058]本発明の一実施形態による直方体形状の圧縮性単位胞の上面図である。
【
図14】[0059]
図13に示される直方体形状の圧縮性単位胞の側面斜視図である。
【
図15】[0060]本発明の一実施形態による、圧縮性アセンブリユニットを形成するために一緒に縫い合わされた4つの直方体形状の圧縮性単位胞の側面斜視図である。
【
図16A】[0061]本発明の一実施形態による多孔質圧縮性発泡体ユニットを形成するためのプロセスを示す図である。
【
図16B】[0061]本発明の一実施形態による多孔質圧縮性発泡体ユニットを形成するためのプロセスを示す図である。
【
図16C】[0061]本発明の一実施形態による多孔質圧縮性発泡体ユニットを形成するためのプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[0062] 本発明を詳細に説明する前に、本発明は、記載された発明に様々な変更又は修正を加えることができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく等価物に置き換えることができるので、本明細書に記載の特定の変形に限定されないことを理解されたい。本開示を読む当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び図示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の任意の特徴から容易に分離又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。更に、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為又はステップを、本発明の目的、精神又は範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。そのようなすべての変更は、本明細書でなされた特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0046】
[0063] 本明細書に記載されている方法は、論理的に可能な、記載されている事象の任意の順序、並びに事象の記載順序で実行することができる。更に、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の他の任意の記載値又は介在値との間のすべての介在値が本発明に含まれることが理解される。また、記載された本発明の変形例の任意の選択的特徴は、独立して、又は本明細書に記載された特徴のいずれか1つ以上と組み合わせて、説明及び請求され得ることが意図される。
【0047】
[0064] 本明細書に記載のすべての既存の主題(例えば、刊行物、特許、特許出願及びハードウェア)は、主題が本発明の主題と矛盾する可能性がある場合(その場合、本明細書に存在するものが優先する)を除いて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
[0065] 単一のアイテムへの参照には、同じ項目が複数存在する可能性が含まれる。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の表現(“a”、“an”、“said”及び“the”)は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。クレームは、任意の選択的要素を除外するために起草される場合があることに更に留意されたい。したがって、この陳述は、請求要素の列挙に関連して「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用する、又は「否定的な」制限を使用するための先行する基礎として機能することを意図している。
【0049】
[0066] 更に理解しやすくするために、以下に定義を説明する。ただし、本明細書に記載のように別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有することも理解されたい。
【0050】
[0067] I.定義
[0068] 本明細書で一般的に使用される「吸収性」とは、材料が体内で分解され、分解産物が除去されるか、又は体内から排泄されることを意味する。「吸収性」、「再吸収性」、「分解性」、及び「侵食性」という用語は、接頭辞「生体」の有無に関係なく、本明細書では互換的に使用でき、分解が主に加水分解によるものであるか、代謝過程によって媒介されるものであるかにかかわらず、分解され、徐々に体に吸収、排泄、又は排出される材料を説明する。
【0051】
[0069] 本明細書で一般的に使用される「生物活性剤」は、治療剤、予防剤又は診断剤、好ましくは宿主組織の治癒及び再生を促進する薬剤、並びに感染を予防、阻害又は排除する治療剤を指す。「剤」は、そのような薬剤を単一で含み、また、複数で含むことを意図している。
【0052】
[0070] 本明細書で一般的に使用される「生体適合性」とは、インビボでの装置の意図された用途に適切である材料又は装置に対する生物学的応答を意味する。これらの材料の任意の代謝物も生体適合性である必要がある。
【0053】
[0071] 本明細書で一般的に使用される「ブレンド」は、2つ以上の異なるモノマーから形成されるコポリマーとは対照的に、異なるポリマーの物理的組み合わせを意味する。
【0054】
[0072] 本明細書で一般的に使用される「ポリ-4-ヒドロキシブチレートのコポリマー」は、1つ以上の異なるヒドロキシ酸単位を有する4-ヒドロキシブチレートを含有する任意のポリマーを意味する。コポリマーは同位体濃縮されていてもよい。
【0055】
[0073] 本明細書で一般的に使用される「ポリ(ブチレンサクシネート)のコポリマー」は、1,4-ブタンジオール及びコハク酸単位、並びに1つ以上の異なるジオール又は二酸単位を含有する任意のポリマーを意味する。コポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応性混合剤のうちの1つ以上を含んでもよい。コポリマーは同位体濃縮されていてもよい。
【0056】
[0074] 本明細書で一般的に使用される「エンドトキシン含有量」は、インプラント又はサンプル中に存在するエンドトキシンの量を指し、リムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイによって決定される。
【0057】
[0075] 本明細書で一般的に使用される「分子量」は、特に明記しない限り、数平均分子量(Mn)ではなく、重量平均分子量(Mw)を指し、ポリスチレンに対するGPCによって測定される。
【0058】
[0076] コイル又はバネを説明するために本明細書で一般的に使用される「ピッチ」は、隣接するコイルのワイヤ間の距離を意味し、ワイヤの中心から隣接するワイヤの中心まで測定される。
【0059】
[0077] 「ポリ(ブチレンサクシネート)とは、1,4-ブタンジオール単位とコハク酸単位を含有するポリマーを意味する。ポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応性混合剤のうちの1つ以上を含んでもよい。ポリマーは同位体濃縮されていてもよい。
【0060】
[0078] 「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」は、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ以上で調製されたポリマー及びコポリマーを含む。
【0061】
[0079] 本明細書で一般的に使用される「ポリ-4-ヒドロキシブチレート」は、4-ヒドロキシブチレート単位を含有するホモポリマーを意味する。本明細書では、P4HB又はTephaFLEX(登録商標)生体材料(米国マサチューセッツ州レキシントン、Tepha社製)と呼ぶことがある。ポリマーは同位体濃縮されていてもよい。
【0062】
[0080] 本明細書で使用される「胸筋前」は、皮膚の下方、及び、胸筋を覆っているか又はその上方を意味する。
【0063】
[0081] 本明細書で使用される「骨格多面体」は、多面体の縁部及び頂部からなる周囲フレームワークを意味し、その内部は、充填されない限り中空である。
【0064】
[0082] 本明細書で使用される「軟組織」は、硬化又は石灰化されていない体組織を意味する。軟組織には、骨や歯のエナメル質などの硬組織は含まれない。
【0065】
[0083] 「強度保持」とは、材料がヒト又は動物への移植後に特定の機械的特性を維持する時間の長さを指す。例えば、再吸収性の繊維又はストラットの引張強度が動物に移植されたときに3ヶ月で半分に減少した場合、3ヶ月での繊維又はストラットの強度保持は50%である。
【0066】
[0084] 本明細書で使用される「乳腺下」は、乳房組織の下方及び胸筋の上方を意味する。
【0067】
[0085] 本明細書で使用される「胸筋下」は、少なくとも部分的に胸筋の下方を意味する。
【0068】
[0086] 本明細書で使用される「表面粗さ」(Ra)は、評価長さ内に記録された、平均線からのプロファイル高さ偏差の絶対値の算術平均である。
【0069】
[0087] 本明細書で使用される「体積密度」は、インプラントの格子の単位胞を形成する材料の体積を、インプラントの格子内の空隙の体積で割った比率を意味する。例えば、体積密度が20%のインプラントは、体積で20%の材料及び体積で80%の空隙を含有する格子を有する。体積密度は、任意の添加剤、生物活性剤、細胞、組織を格子に適用する前に測定される。
【0070】
[0088] II.インプラントを調製するための材料
[0089] 実施形態において、インプラントを使用して、乳房、乳首、顔面、及び臀部を含む体の一部を再成形し、並びに、空隙を充填し、ヘルニアを修復し、組織の再生、増大、修復、強化、再建を支援するための生物学的及び合成材料を送達することができる。インプラントは軟組織インプラントであり、軟組織の再生、増大、修復、強化、及び再建に使用できることを意味する。インプラントは、乳房切除、乳房固定、乳房増大中に永久乳房インプラントを使用する必要性、並びに他の外科手術において永久インプラントを使用する必要性を排除することができる。インプラントは生体適合性があり、好ましくは、インプラントが分解するにつれて、インビボで患者の組織に取り替えられる。インプラントは、空隙を充填するか、又は組織、特に軟組織を増大するのに特に適している。インプラントは、強固で剛直な構造から、力が加えられると柔らかく一時的に変形する構造まで、様々な特性を有することができる。特性は、軟組織に類似するように設計することができる。乳房用に製作されたインプラントは圧縮されてもよく、圧縮後に形状を復旧することができる。選択的に、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後に、自家組織、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞で塗布することができる。インプラントは、血管茎又は他の組織塊の挿入を可能にするために、1つ以上の開口部、又は横通路を含む通路を更に含んでもよい。
【0071】
[0090] A.インプラントを調製するためのポリマー
[0091] 実施形態において、インプラントは、複数の単位胞から形成される格子を含有する。単位胞の形状又は種類は、変更されてもよい。単位胞の形状は、ポリマーストラット又は繊維から形成された縁部及び頂部を有する骨格多面体であってもよい。代替的に、単位胞は、ポリマーから形成されたコイル又はバネであってもよい。第3のタイプの単位胞は、単位胞の上部及び下部がメッシュから形成され、上部メッシュ及び下部メッシュがストラット又は繊維で一緒に接続されて単位胞を形成するメッシュ単位胞である。第4のタイプの単位胞は、発泡体単位胞、好ましくは多孔質圧縮性単位胞である。インプラントの格子構造は、2つ以上の単位胞を接合することによって形成される。一緒に接合される単位胞は、同じであっても異なっていてもよい。格子は、2つ以上の単位胞、好ましくは50以上の単位胞を含んでもよい。格子は、選択的に、1つ以上の開口部、又は1つ以上の横通路を含む1つ以上の通路などの他の特徴を含んでもよい。
【0072】
[0092] インプラントの格子は、超高分子量ポリエチレンと、超高分子量ポリプロピレンと、ナイロンと、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリ(エチレンオキシド)などのポリエステルとを含む、エチレンとプロピレンのポリマー及びコポリマーを含む、非分解性の熱可塑性ポリマーなどの永久材料を含んでもよい。ただし、インプラントの格子は、好ましくは分解性材料、より好ましくは熱可塑性又はポリマー分解性材料を含み、更により好ましくは、インプラントの格子は完全に分解性材料から製作される。
【0073】
[0093] 好ましい実施形態において、インプラントの格子は、1つ以上の吸収性ポリマー又はコポリマー、好ましくは吸収性熱可塑性ポリマー及びコポリマー、更により好ましくは吸収性熱可塑性ポリエステルから製作される。インプラントの格子は、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及び、VICRYL(登録商標)ポリマー、MAXON(登録商標)とMONOCRYL(登録商標)ポリマーなどのグリコール酸と乳酸のコポリマーを含み、他の生体適合性又は生分解性ポリマー、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、又はポリカプロラクトン、及びそれらのコポリマー(ランダムコポリマー及びそれらのブロックコポリマーを含む)のブロックを伴う、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリ(ホスファゼン)、ポリヒドロキシアルカノエート、合成的又は生物学的に調製されたポリエステル、ポリカーボネート、チロシンポリカーボネート、ポリアミド(合成及び天然のポリアミド、ポリペプチド、及びポリ(アミノ酸)を含む)、ポリエステルアミド、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエーテル(ポリエチレングリコール、PEG、ポリエチレンオキシド、PEOなど)、ポリビニルピロリドン又はPVP、ポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリアセタール、ポリケタール、ポリホスフェート、(リン含有)ポリマー、ポリホスホエステル、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンサクシネート、ポリ(マレイン酸)、シルク(組換えシルク及びシルク誘導体及び類似物を含む)、キチン質、キトサン、修飾キトサン、生体適合性ポリサッカライド、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性又は水溶性ポリマーを含む、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトンを含むがこれらに限定されないポリマーから調製することができる。
【0074】
[0094] インプラントの格子は、好ましくは1~24ヶ月の時間枠、より好ましくは3~18ヶ月の時間枠内に、移植後に実質的に再吸収され、少なくとも2週間から6ヶ月間、ある程度の残留強度を保持する吸収性ポリマー又はコポリマーから調製される。
【0075】
[0095] ポリマー及びコポリマーの、好ましくは吸収性ポリマーのブレンドを使用して、インプラントの格子を調製することもできる。吸収性ポリマーの特に好ましいブレンドは、グリコール酸、乳酸、1,4-ジオキサノン、炭酸トリメチレン、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシブチレート、ε-カプロラクトン、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、グルタル酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸のポリマー、又はそれらのコポリマーを含むがこれらに限定されない吸収性ポリマーから調製される。
【0076】
[0096] 特に好ましい実施形態において、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(米国マサチューセッツ州レキシントン、Tepha社のP4HB(商標)ポリマー)又はそのコポリマーを使用して、インプラントの格子を製作する。コポリマーは、3-ヒドロキシブチレートなどの別のヒドロキシ酸とのP4HB、及びグリコール酸又は乳酸モノマーとのP4HBを含む。ポリ-4-ヒドロキシブチレートは、生体適合性及び再吸収性を有する、強力で柔軟性のある熱可塑性ポリエステルである(Williamsら、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB):組織の修復と再生のための新世代の再吸収性医療機器(a new generation of resorbable medical devices for tissue repair and regeneration)、Biomed.Tech.、2013年、58(5)、p.439-452)。移植時に、P4HBはそのモノマーに加水分解し、モノマーはクレブス回路を介して二酸化炭素と水に代謝される。好ましい実施形態において、P4HBホモポリマー及びそのコポリマーは、(ポリスチレンと比較して、GPCにより)50kDaから1,200kDaの範囲内、より好ましくは100kDaから600kDa、更により好ましくは200kDaから450kDaの重量平均分子量Mwを有する。処理及び機械的特性には、50kDa以上のポリマーの重量平均分子量が好ましい。
【0077】
[0097] 別の好ましい実施形態において、インプラントの格子は、少なくともジオール及び二酸を含むポリマーから調製される。特に好ましい実施形態において、格子を調製するために使用されるポリマーは、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)であり、ここで、ジオールは、1,4-ブタンジオールであり、二酸は、コハク酸である。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマーは、他のジオール、他の二酸、又はそれらの組み合わせとのコポリマーであってもよい。例えば、ポリマーは、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、マロン酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、及びシュウ酸のうちの1つ以上を更に含むポリ(ブチレンサクシネート)コポリマーであってもよい。好ましいコポリマーの例は、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-ブチレンジメチルサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート-コ-エチレンサクシネート)及びポリ(ブチレンサクシネート-コ-プロピレンサクシネート)である。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はコポリマーはまた、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ以上を更に含んでもよい。例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーは、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメシン酸、クエン酸、グリセロールプロポキシレート、及び酒石酸の1つ以上の薬剤を添加することによって分岐又は架橋されてもよい。ポリ(ブチレンサクシネート)ポリマー又はそのコポリマーを分岐又は架橋するための特に好ましい薬剤は、ヒドロキシカルボン酸単位である。好ましくは、ヒドロキシカルボン酸単位は、2つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基、2つのヒドロキシル基と1つのカルボキシル基、3つのカルボキシル基と1つのヒドロキシル基、又は2つのヒドロキシル基と2つのカルボキシル基を有する。好ましい一実施形態において、インプラントの格子は、分岐剤又は架橋剤としてリンゴ酸を含むポリ(ブチレンサクシネート)から調製される。このポリマーは、リンゴ酸で架橋されたポリ(ブチレンサクシネート)、コハク酸-1,4-ブタンジオール-リンゴ酸コポリエステル、又はリンゴ酸で架橋されたポリ(1,4-ブチレングリコール-コ-コハク酸)と呼ばれてもよい。リンゴ酸、及び他の架橋剤、カップリング剤、分岐剤及び鎖延長剤への言及は、薬剤が処理中にさらなる反応を受けた、これらの薬剤で調製されたポリマーを含むことを理解されたい。例えば、薬剤は、重合中に脱水を受けてもよい。したがって、ポリ(ブチレンサクシネート)-リンゴ酸コポリマーは、コハク酸、1,4-ブタンジオール及びリンゴ酸から調製されたコポリマーを指す。別の好ましい実施形態において、リンゴ酸は、ポリ(ブチレンサクシネート)とアジペートとのコポリマーを調製するための分岐剤又は架橋剤として使用されてもよく、これは、リンゴ酸で架橋されたポリ[(ブチレンサクシネート)-コ-アジペート]と呼ばれてもよい。本明細書で使用される場合、「ポリ(ブチレンサクシネート)及びコポリマー」は、鎖延長剤、カップリング剤、架橋剤及び分岐剤のうちの1つ以上で調製されたポリマー及びコポリマーを含む。特に好ましい実施形態において、ポリ(ブチレンサクシネート)及びそのコポリマーは、少なくとも70重量%、より好ましくは80重量%、更により好ましくは90重量%のコハク酸及び1,4-ブタンジオール単位を含有する。本明細書に記載のポリ(ブチレンサクシネート)及びそれらのコポリマー、並びに他のものを含む、二酸及びジオールを含むポリマーは、ポリスチレン標準と比較して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に基づき、好ましくは10,000から400,000、より好ましくは50,000から300,000、更により好ましくは100,000から200,000の重量平均分子量(Mw)を有する。特に好ましい実施形態において、ポリマー及びコポリマーは、50,000から300,000、より好ましくは75,000から300,000の重量平均分子量を有する。好ましい一実施形態において、格子を製作するために使用されるポリ(ブチレンサクシネート)又はそのコポリマーは、1.23から1.26g/cm3の密度、-31℃から-35℃のガラス転移点、113℃から117℃の融点、190℃/2.16kgfで2から10g/10分の溶融流量(MFR)、30から60MPaの引張強度のうちの1つ以上の特性、又はすべての特性を有する。
【0078】
[0098] 別の実施形態において、P4HB及びそのコポリマー、並びにPBS及びそのコポリマーを含む、インプラントの格子を調製するために使用される、本明細書に記載のポリマー及びコポリマーは、水素、炭素及び/又は酸素の既知の同位体が濃縮されているポリマー及びコポリマーを含む。水素には、1H(軽水素)、2H(重水素)、3H(三重水素)の3つの天然同位体があり、その中で最も一般的なのは1H同位体である。ポリマー又はコポリマーの同位体含有量は、例えば、ポリマー又はコポリマーが特定の同位体又は複数の同位体の天然比よりも高い比率を含有するように濃縮することができる。ポリマー又はコポリマーの炭素及び酸素含有量はまた、13C、14C、17O又は18Oを含むがこれらに限定されない、炭素及び酸素の同位体の天然比よりも高い比率を含有するように濃縮することができる。炭素、水素及び酸素の他の同位体は、当業者に知られている。P4HB又はそのコポリマー、或いはPBS又はそのコポリマーが濃縮された好ましい水素同位体は、重水素、すなわち重水素化P4HB又はそのコポリマー又は重水素化PBS又はそのコポリマーである。重水素化率は、最大で少なくとも1%、最大5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85%、又はそれ以上にすることができる。
【0079】
[0099] 好ましい実施形態において、格子を調製するために使用される、P4HB及びそのコポリマー、並びにPBS及びそのコポリマーを含むポリマー及びコポリマーは、低い水分含有量を有する。これは、高い引張強度、長期間の強度保持、及び良好な貯蔵寿命を有するインプラントを生成できることを保証するために好ましい。好ましい実施形態において、インプラントを調製するために使用されるポリマー及びコポリマーは、1,000ppm(0.1重量%)未満、500ppm(0.05重量%)未満、300ppm(0.03重量%)未満、より好ましくは100ppm(0.01重量%)未満、更により好ましくは50ppm(0.005重量%)未満の水分含有量を有する。
【0080】
[00100] インプラントを調製するために使用される組成物は、望ましくは、低いエンドトキシン含有量を有する。好ましい実施形態において、エンドトキシン含有量は十分に低いため、ポリマー組成物から生成されたインプラントは、リムルスアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイによって決定されるように、装置あたり20エンドトキシン単位未満のエンドトキシン含有量を有する。一実施形態において、インプラントの格子を調製するために使用されるポリマー組成物は、ポリマー又はコポリマーの、2.5EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する。例えば、P4HBポリマー又はコポリマー、或いはコポリマーのPBSポリマーは、ポリマー又はコポリマーの、2.5EU/g未満のエンドトキシン含有量を有する。
【0081】
[00101] B.添加剤
[00102] 一定の添加剤をインプラントに、好ましくは格子を製作するために使用されるポリマー組成物に組み込むことができる。一実施形態において、これらの添加剤は、配合プロセス中に本明細書に記載のポリマー又はコポリマーとともに組み込まれて、後で処理されて格子を生成することができるペレットを生成する。例えば、ペレットを注入成形、押出、又は印刷して、格子又は格子の単位胞を形成してもよい。別の実施形態において、ペレットを粉砕して、例えば3D印刷によるさらなる処理に適した粉末を生成してもよい。或いは、例えば3D印刷によるさらなる処理に適した粉末は、添加剤とポリマー又はコポリマーとをブレンドすることによって直接形成されてもよい。必要に応じて、処理に使用する粉末を篩分けし、最適な粒子サイズ範囲を選択してもよい。別の実施形態において、添加剤を、溶液ベースのプロセスを使用してインプラントの格子を調製するために使用されるポリマー組成物に組み込んでもよい。
【0082】
[00103] 好ましい実施形態において、添加剤は生体適合性であり、更により好ましくは、添加剤は生体適合性及び再吸収性の両方である。
【0083】
[00104] 一実施形態において、添加剤は、核剤及び/又は可塑剤であってもよい。これらの添加剤を、所望の結果を生み出すのに十分な量でインプラントの格子を調製するために使用されるポリマー組成物に添加してもよい。一般に、これらの添加剤は、1重量%から20重量%の間の量で添加してもよい。ポリマー、コポリマー、又はブレンドの結晶化速度を上げるために、核剤を組み込んでもよい。そのような薬剤は、例えば、格子の製造を容易にするために、並びに、格子の機械的特性を改善するために使用されてもよい。好ましい核剤には、クエン酸カルシウムなどの有機酸の塩、PHAポリマー及びコポリマーのポリマー又はオリゴマー、PGA、タルク、微粉化マイカなどの高融点ポリマー、炭酸カルシウム、塩化アンモニウム、並びに、チロシン及びフェニルアラニンなどの芳香族アミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
[00105] インプラントの格子を調製するためにポリマー組成物に組み込むことができる可塑剤には、マレイン酸ジ-n-ブチル、ラウレイン酸メチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジ(2-エチルヘキシル)(ジオクチル)、パラフィン、ドデカノール、オリーブ油、大豆油、ポリテトラメチレングリコール、オレイン酸メチル、オレイン酸n-プロピル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシタル油酸2‐エチルヘキシル、グリセリントリアセテート、メチルリノール酸、フマル酸ジブチル、アセチルリシノール酸メチル、クエン酸アセチルトリ(n-ブチル)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ(n-ブチル)、クエン酸トリエチル、ダイマー酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、リシノール酸ブチル、グリセリルトリ-(リシノール酸アセチル)、リシノール酸メチル、アセチルリシノール酸n-ブチル、リシノール酸プロピレングリコール、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジ(n-ヘキシル)、リン酸トリブチル、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい可塑剤は、クエン酸エステルである。
【0085】
[00106] C.生物活性剤、細胞及び組織
[00107] インプラントは、積載、充填、塗布、又はその他の方法で生物活性剤を組み込むことができる。生物活性剤は、様々な理由でインプラントに含まれていてもよい。例えば、生物活性剤は、インプラントへの組織の内部成長を改善し、組織の成熟を改善し、活性剤の送達を提供し、インプラントの湿潤性を改善し、感染を防ぎ、そして細胞付着を改善するために含まれてもよい。生物活性剤はまた、インプラントの格子構造に組み込まれてもよい。
【0086】
[00108] インプラントは、成長因子、細胞接着ポリペプチドを含む細胞接着因子、細胞分化因子、細胞動員因子、細胞受容体、細胞結合因子、サイトカインなどの細胞シグナリング分子、並びに細胞移動、細胞分裂、細胞増殖及び細胞外基質蓄積を促進する分子を含む、細胞の内部成長を刺激するように設計された活性剤を含有することができる。このような活性剤は、線維芽細胞成長因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インターロイキン-1-B(IL-1 B)、インターロイキン-8(IL-8)、及び神経成長因子(NGF)、及びそれらの組み合わせを含む。本明細書で使用される場合、「細胞接着ポリペプチド」という用語は、細胞表面分子を介して細胞を結合することが可能な、分子あたり少なくとも2つのアミノ酸を有する化合物を指す。細胞接着ポリペプチドには、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリノーゲン、コラーゲンタイプI、II、及びV、並びに、同様の細胞接着特性を有する合成ペプチドを含む、細胞接着において役割を果たすことが知られている任意の細胞外基質のタンパク質が含まれる。細胞接着ポリペプチドはまた、結合ドメインを含有するフラグメント又は配列を含む、前述のタンパク質のいずれかに由来するペプチドを含む。
【0087】
[00109] インプラントは、格子構造の表面の湿潤性を改善して、流体がインプラント表面に容易に吸着されることを可能にし、細胞付着を促進し、及び/又は、インプラント表面の水接触角を変更するように設計された湿潤剤を組み込むことができる。湿潤剤の例には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのポリマー、又はPLURONICS(登録商標)などのこれらのコポリマーが含まれる。他の適切な湿潤剤には、界面活性剤又は乳化剤が含まれる。
【0088】
[00110] インプラントは、湿潤特性を更に改善し、インプラントの格子構造全体で細胞増殖を促進するために、ゲル、ヒドロゲル、又はリビングヒドロゲルハイブリッドを含有することができる。ヒドロゲルハイブリッドは、ゼラチン、メタクリル化ゼラチン(GelMa)、シルクゲル、ヒアルロン酸(HA)ゲルなどの生体適合性ヒドロゲルにカプセル化された生細胞から構成されている。
【0089】
[00111] インプラントに組み込むことができる他の生物活性剤には、抗菌剤、特に抗生剤、消毒剤、腫瘍剤、抗瘢痕剤、抗炎症剤、麻酔薬、小分子薬、癒着防止剤、細胞増殖阻害剤、抗血管新生因子及び血管新生促進因子、免疫調節剤、及び血液凝固剤が含まれる。生物活性剤は、コラーゲン及び抗体などのタンパク質、ペプチド、キトサンなどの多糖類、アルギン酸塩、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体、核酸分子、ステロイドなどの低分子化合物、ヒドロキシアパタイト及びセラミックなどの無機材料、又は、多血小板血漿などの複雑な混合物であってもよい。適切な抗菌剤には、バシトラシン、ビグアニド、トリクロサン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、リファンピン、バンコマイシン、セファロスポリン、銅、亜鉛、銀、及び金が含まれる。核酸分子は、DNA、RNA、siRNA、miRNA、アンチセンス又はアプタマーを含んでもよい。
【0090】
[00112] インプラントはまた、無細胞真皮マトリックス材料及び小腸粘膜下組織(SIS)を含む同種移植片材料及び異種移植片材料を含有してもよい。一実施形態において、インプラントは、血管茎又は他の組織塊を含有してもよい。血管茎又は他の組織塊は、好ましくは自家組織である。
【0091】
[00113] 別の実施形態において、インプラントは、治療薬又は予防薬の制御放出のためのシステムを組み込むことができる。
【0092】
[00114] 一実施形態において、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後、或いはそれらの任意の組み合わせで、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞で塗布される。特に好ましい実施形態において、インプラントは、移植前、移植中、又は移植後、或いはそれらの任意の組み合わせで、患者からの自家組織及び細胞で塗布される。自家組織及び細胞は、好ましくは、自家脂肪、吸引脂肪組織、脂肪組織(fat tissue)、注入可能な脂肪、脂肪組織(adipose tissue)、脂肪細胞、線維芽細胞、並びに、前脂肪細胞又は脂肪組織由来前駆細胞としても知られるヒト脂肪組織由来幹細胞及び線維芽細胞様幹細胞を含む幹細胞のうちの1つ以上である。好ましい一実施形態において、インプラントは、本明細書に記載されるように、自家組織及び細胞で塗布されてもよく、また、血管茎又は他の組織塊を更に含んでもよい。本明細書で明らかなように、インプラントの格子構造は、乳房インプラントなどのインプラントの形状だけでなく、自家組織及び細胞を保持して組織の内部成長を促進することができる大きな表面積も作成するように設計されている。
【0093】
[00115] III.骨格多面体単位胞、コイル状単位胞、メッシュ単位胞及び発泡体単位胞からインプラントを調製するための方法
[00116] インプラントの製造には、様々な方法を使用することができる。
【0094】
[00117] A.インプラントの形状
[00118] 一実施形態において、インプラントは、製造されたときにそれらが3次元であるように設計されている。
【0095】
[00119] それらの形状により、外科医は、組織体積を増加し、空隙を充填し、喪失又は欠損した組織又は組織構造を再建し、組織の輪郭を描き、組織を増大し、組織又は臓器の機能を回復し、損傷した組織構造を支持又は修復し、既存の組織構造を増強し、軟組織の体積を増加し、体の一部を再成形することが可能になる。例えば、インプラントは、乳房、乳首、顔面、臀部を再成形、取替、又は修復するために使用することができる。一実施形態において、インプラントは、永久的なインプラントを使用することなく、軟組織構造の形状を変更又は改造することを可能にする。
【0096】
[00120] 本明細書に記載の範囲内で、複数のインプラントの形状及び寸法があり、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、インプラントの3次元の形状及び寸法に関して限定されないことを理解されたい。インプラントは、インプラントとしての使用に適した任意のサイズと形状に組み立てるか、印刷することができる。例えば、球、半球、円柱、円錐、ドーム、直方体、四面体、三角形又は正四角柱、十二面体、円環体、楕円体などの3次元形状、及び、コンピュータ支援設計の補助で選択的に生成できるカスタム形状を有するインプラントを簡単に調製することができる。例えば、乳頭を再建するための円筒形のインプラント、又は乳房を再建するためのドーム状のインプラントを生成することができる。インプラントの寸法は、組織体積を増大させるか、以前の組織体積を代替するか、組織の体積分布を変更するか、組織の外観を変更するか、又は既存の組織体積をより小さな体積に取り替えるようなサイズにしてもよい。
【0097】
[00121] 好ましい実施形態において、インプラントは、シリコーン乳房インプラントなどの永久的な乳房インプラントを使用せずに、乳房の軟組織体積を変更するために使用できる形状で提供される。実施形態において、インプラントは、乳房のサイズを増大させ、乳房切除術後の乳房の組織体積及び形状を取り替え、乳房の特定の外観を生成するように使用するための形状及びサイズで調製することができる。例えば、インプラントは、乳房に移植されたときに、上部極体積(UPV)対下部極体積(LPV)の特定の比率を有する乳房を生成するように調製することができる。実施形態において、インプラントは、インプラントの移植が、乳房全体の体積の25から35%のUPV、及び乳房全体の体積の65から75%のLPVをもたらすような体積寸法を有する乳房インプラントである。上部極と下部極の組織の特定の体積比で乳房を造形することに加えて、インプラントの寸法と形状を選択して、下部極、上部極、及び胸壁からの乳房の突出範囲の非常に望ましい形状を提供することもできる。実施形態において、インプラントは、(a)乳房の下部極が非常に魅力的な下部極曲率、具体的には魅力的な凸状形状を有するように設計され、(b)乳房の上部極が真っ直ぐ又はわずかに凹状の曲率を有するように設計され、(c)乳房が乳房壁から突出する距離が定義されている乳房インプラントである。したがって、本発明のインプラントを使用して、(i)UPVとLPVの比を定義し、(ii)上部極と下部極の曲率を定義し、(iii)胸壁からの乳房の突出程度を定義し、(iv)乳房上の乳首の角度を定義する特定の形状を有することにより、非常に魅力的な再建乳房を生成できることは明らかであろう。
【0098】
[00122] インプラントの追加的な形状は、2019年1月30日に出願された、「FULL CONTOUR BREAST IMPLANT」と題する米国特許出願第16/262,018号に記載されている。
【0099】
[00123] 乳房で使用するために設計されたインプラントは、乳房固定及び乳房再建における使用を可能にするのに十分な大きさのサイズで調製することができる。これらのインプラントは、乳房の幅にまたがるのに十分な幅がある。一実施形態において、乳房手術で使用されるインプラントには4つのサイズ及び形状、すなわち、小、中、大、及び特大が存在する。これらのインプラントの4つの寸法を表1に示しており、ここで、IMF-UPは、インプラントの、(移植後の乳房の乳房下溝(IMF)に最も近く位置する)乳房の最低点と、(移植後、乳房と上部極の胸壁との交差点に最も近く位置する)乳房の最高点との間の縦方向の距離であり、MD-LTは、インプラントの内側から外側まで測定したインプラントの幅であり、CHST-NACは、胸壁に移植されたときのインプラントの最大の突出距離であり、LP半径は、下部極におけるインプラントの曲率半径である。表1から明らかなように、乳房手術用のインプラントは、12から20.8cmのIMF-UP距離、10.8から19.2cmのMD-LT寸法、5から11.9cmのCHST-NAC寸法、4.2-7.6cmのLP半径を有してもよい。上部極に形状を与える領域のインプラントの寸法は変化し得る。この領域では、インプラントの形状は、好ましくはわずかに凹状又は真っ直ぐである。
【0100】
【0101】
[00124] 実施形態において、インプラントは、外側の多孔性殻を有して調製されてよい。例えば、
図9A及び
図9Bは、骨格多面体単位胞及び多孔性外殻を用いて乳房インプラントを構築する技法を示している。
図9Aは、インプラントの多孔性外殻490の内側に見える単位胞482を有するインプラント480の断面を示し、
図9Bは、インプラントを覆う多孔性外膜490の上部を示している。インプラントは、例えば、自家脂肪、細胞、コラーゲン又は生物活性剤で塗布することができる大きな表面積を有する。
【0102】
[00125] B.単位胞
[00126] 異なる形状の格子を含むインプラントは、同じ又は異なるタイプの単位胞を使用して生成され得る。単位胞を組み立てて格子を形成してもよく、3D印刷されて格子を形成してもよい。格子は、2つ以上の単位胞を含んでもよいが、より好ましくは、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、1,000、10,000、又はそれ以上の単位胞を含んでもよい。格子の単位胞は、同じタイプ又は異なるタイプであってもよい1つ以上の単位胞に接合される。単位胞は中空又は多孔性であるため、単位胞から形成された格子が定義された体積を充填し、空間占有構造を生成する。一実施形態において、単位胞は、100μmから1mm、より好ましくは250μmから750μmの幅又は直径の細孔を有する。別の実施形態において、格子に組み込まれた単位胞は、同じサイズの細孔、又はサイズが混合された細孔を有してもよい。単位胞から製作されたインプラントの格子は、大きな表面積と空隙体積を提供する低体積密度を有する。単位胞の寸法は、細胞によってコロニー形成され、組織、血管、又はそれらの組み合わせによって侵入され得る低体積密度の格子を、単位胞から形成することを可能にする。単位胞の寸法はまた、インプラントの格子を、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞、好ましくは、自家脂肪、吸引脂肪組織、脂肪充填、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含むがこれらに限定されない自家組織及び細胞で塗布することを可能にする。好ましい実施形態において、単位胞の寸法は、単位胞から形成された格子の内側を、脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞で塗布することを可能にする。単位胞の寸法はまた、格子をコラーゲン及び/又はヒアルロン酸又はその誘導体で塗布することを可能にするように設計されている。細胞及びコラーゲン及びヒアルロン酸などの他の組成物は、移植前、移植後、又は移植の前後の両方で格子上に塗布することができる。好ましくは、単位胞の寸法は、注入によって生物活性剤、細胞、脂肪及び他の組成物を送達するために、針の格子構造への挿入を可能にするのに十分な大きさである。実施形態において、格子は、12~21のゲージを有する針を格子の単位胞に挿入することを可能にする単位胞で構築されている。この特性により、注入器を使用して、格子に損傷を与えることなく、細胞、組織、コラーゲン、生物活性剤、及び脂肪を含む添加剤を格子に積載することができる。好ましくは、格子は、0.5から3mmの外径を有する針の挿入を可能にする。
【0103】
[00127] 単位胞のサイズ及び形状は、異なる体積密度を有する異なるタイプの格子を提供するように選択されてもよい。繰り返し単位胞から形成されるインプラント格子の特性は非常に予測可能であり、単位胞の寸法、及び単位胞の調製に使用される材料に基づいて予測することができる。異なる物理的特性を有する単位胞は、単位胞の寸法、単位胞の形状、及び単位胞を調製するために使用される材料を選択することによって調製されてもよい。特定の単位胞の寸法と材料を選択することで、単位胞から、強固、硬質、又は剛直なものから、弾性、軟質、又は圧縮性のものまでの特性を有する格子を生成できるようになる。実施形態において、格子の機械的特性は、単位胞の形状を変えず、代わりに単位胞のストラット又は繊維の直径又は幅を変更することによって変更されてもよい。例えば、所与のポリマーから製作された所与の単位胞の必要なストラットの厚さ又は直径は、弾性率又は圧縮強度などの所望の機械的特性が知られている場合に計算することができる。好ましい実施形態において、単位胞の寸法及び材料は、単位胞から調製されたインプラント格子が、インプラントが移植される軟組織のものと同様の特性を有するように選択される。例えば、単位胞の寸法及び材料は、乳房組織のものと同様の機械的特性を有するインプラント格子を提供するように選択されてもよい。別の好ましい実施形態において、単位胞は圧縮することができ、選択的に、圧縮力が解除されたときに元の形状を復旧する。
【0104】
[00128] i.骨格多面体単位胞
[00129] 実施形態において、単位胞は、ポリマーストラット又は繊維から形成された縁部及び頂部を有する骨格多面体である。骨格単位胞の縁部及び頂部、又はストラット/繊維は、異なる寸法、厚さ、長さ、角度を有してもよく、強固、剛直、可撓性、弾性、バネ様であってもよく、配向又は非配向ポリマーから製作されてもよい。一実施形態において、格子は、四面体、直方体、五面体、六面体、七面体、八面体、二十面体、十面体、十二面体、十四面体、及び角柱、反角柱、並びにそれらの切頭多面体のうちの1つ以上の形状を有する骨格単位胞から調製されてもよい。角柱、反角柱、切頂十二面体の形状をした単位胞の例としては、六角柱、反八角柱、切頂十二面体がある。一実施形態において、骨格単位胞は、細長い多面体から形成される。好ましい実施形態において、骨格単位胞は、4、6、8、12又は20の面を有する。特に好ましい実施形態において、骨格単位胞は十二面体であり、更により好ましくは菱形十二面体である。したがって、例えば、菱形十二面体形状の単位胞を、例えば、乳房、乳首、顔又は臀部に移植するためのインプラントの格子に形成することができる。又は、格子は八角形の単位胞から形成されてもよい。他の実施形態において、格子は、2つ以上の異なる骨格単位胞、例えば、十二面体及び八角形の組み合わせから製作されてもよい。
【0105】
[00130] 実施形態において、インプラントは、骨格多面体から形成され、骨格多面体を形成する単位胞の縁部及び頂部は、0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径又は幅を有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞の縁部及び頂部は、0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの破断荷重を有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞の縁部及び頂部は、22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸びを有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞の縁部及び頂部は、0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値を有する。単位胞の縁部及び頂部の直径、幅、破断荷重、破断伸び、及び弾性率の値は、骨格多面体又は単位胞全体で同じであってもよく、又は、これらの値は、骨格多面体又は単位胞全体で異なっていてもよい。単位胞の縁部及び頂部を形成するポリマーストラットは、好ましくは、(i)0.1から200Nの破断荷重、(ii)22から1,000%の破断伸び、及び(iii)0.05から10GPaの弾性率のうちの1つ以上の特性を有する。
【0106】
[00131] 実施形態において、骨格多面体から形成されたインプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、骨格多面体を形成する単位胞のポリマーストラット又は繊維は、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0107】
[00132] 実施形態において、インプラントは、骨格多面体から形成された乳房インプラントであり、インプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、骨格多面体を形成する単位胞のポリマーストラット又は繊維は、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0108】
[00133]
図1を参照すると、菱形骨格十二面体である接続された単位胞から製作された格子を含む乳房インプラント10を示している。インプラント10は、大きな表面積及び空隙体積を提供する、低い体積密度を有する。
【0109】
[00134]
図2Aから
図2Dは、
図1に示される格子インプラント10を作成するために使用される菱形骨格十二面体単位胞20の様々な図を示している。菱形骨格十二面体単位胞20は、ポリマーストラット22から製作された単位胞の縁部及び頂部によって形成された12個の開口面/空間を有する。単位胞の内部は中空である。
【0110】
[00135]
図3は、特定の寸法及び特定のポリマー材料を備えた単位胞を調製することにより、所望の特性を有する格子を構成することを示している。
図3に示される例において、格子を含む乳房インプラント30が示され、指32からの比較的軽い圧力によって格子が圧縮可能であり、格子構造を圧縮するのに十分であることは明らかである。指を離すと、格子は
図1に示す元の形状を取り戻す。圧縮性格子を含むインプラントは、格子の圧縮性を乳房組織の特性を模倣するように設計することができるため、乳房における使用に特に適している。したがって、患者が乳房をマッサージするときに乳房に硬いインプラントを感じることはない。
【0111】
[00136] 再び
図2Aから
図2Dを参照すると、骨格多面体単位胞内のストラット又は繊維の長さ(L)は、好ましくは1から300mm、より好ましくは2mmから10mm、更により好ましくは3mmから8mmである。実施形態において、ストラット又は繊維は、単位胞からなる格子への、0.5から3mmの外針直径(OD)を有する針の挿入を可能にする単位胞を形成するのに十分な長さである。
【0112】
[00137] 単位胞の高さ(H)は、変更されてもよい。実施形態において、高さ(H)は、1から500mm、より好ましくは5から20mm、更により好ましくは12から18mmの範囲である。
【0113】
[00138] 骨格多面体単位胞内のストラットの幅(W)又は繊維の直径は、好ましくは50μmから5mm、より好ましくは150μmから2mm、更により好ましくは200μmから1.5mm、又は500μmから1mmである。インプラント設計の利点の1つは、特定の弾性率又はその他の機械的特性を有する格子を生成するために必要なストラットの幅又は繊維の直径、及びストラット又は繊維の長さを、所与の材料に対して計算できることである。
【0114】
[00139] 特に好ましい一実施形態において、骨格単位胞は圧縮性であり、更により好ましくは、圧縮後に元の寸法に復旧することができる。特に好ましい実施形態は、圧縮後に元の寸法を復旧することができる骨格単位胞を含む圧縮性乳房インプラントである。異なる形状のインプラントは、同じ又は異なる単位胞を使用して生成されてもよく、ここで、単位胞は骨格単位胞である。
【0115】
[00140] ii.コイル又はバネを有する単位胞
[00141] 他の実施形態において、インプラントの格子を形成するために使用される単位胞は、ポリマーから形成されたコイル、バネ、又はスパイラルである。コイル及びバネを有する単位胞の例は、
図4に示されている。この例において、単位胞は、上部リング及び下部リング48、50を支持する3つのらせん状ストラット又はワイヤ42、44、46からなるコイル状円筒形単位胞40である。
図4に示される単位胞の上部リングと下部リングは、10mmの外径、8mmの内径、2mmの円形断面を有する。らせん状ストラット又はワイヤは、1センチメートルあたり0.75の一定のピッチで互いに120度の角度を有している。一実施形態において、コイル及び/又はバネである単位胞の外径は、2から30mm、より好ましくは5から15mmの範囲である。一実施形態において、らせん状ストラット又はワイヤの外径は、0.2から3mmであってもよい。一実施形態において、これらの単位胞のらせん状ストラットは、互いに10から180度の角度を有してもよく、らせん状ストラットのピッチは、1cmあたり0.5から5であってもよい。単位胞のらせん状ストラットの数は、好ましくは1から20であるが、より好ましくは2から5である。
【0116】
[00142] コイル又はバネを含む単位胞の必要な寸法仕様は、特定の弾性率又は圧縮強度などの特定の機械的特性を格子に提供するために、所与の材料に対して計算されてもよい。特に好ましい一実施形態において、コイル及び/又はバネから製作された単位胞は圧縮性であり、更により好ましくは、圧縮後に元の寸法に復旧することができる。異なる形状のインプラントは、同じ又は異なる単位胞を使用して生成されてもよく、ここで、単位胞はコイル及び/又はバネである。
【0117】
[00143] 実施形態において、インプラントは、コイル又はバネを含む単位胞から形成され、コイル又はバネは、0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径又は幅を有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞のコイル又はバネは、0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの破断荷重を有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞のコイル又はバネは、22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸びを有する。実施形態において、骨格多面体を形成する単位胞のコイル又はバネは、0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値を有する。単位胞のコイル又はバネの直径、幅、破断荷重、破断伸び、及び弾性率の値は、骨格多面体又は単位胞全体で同じであってもよく、又は、これらの値は、骨格多面体又は単位胞全体で異なっていてもよい。単位胞のコイル又はバネは、好ましくは、(i)0.1から200Nの破断荷重、(ii)22から1,000%の破断伸び、及び(iii)0.05から10GPaの弾性率のうちの1つ以上の特性を有する。
【0118】
[00144] 実施形態において、コイル又はバネの格子から形成されたインプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、格子を形成するコイル又はバネは、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0119】
[00145] 実施形態において、インプラントは、コイル又はバネの格子から形成された乳房インプラントであり、乳房インプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、格子を形成するコイル又はバネは、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0120】
[00146] 好ましい実施形態において、コイル及び/又はバネから製作された単位胞は、単位胞を格子に組み立てるために使用することができる留め具を更に含む。留め具を更に含むコイル及びバネで製作された単位胞60の一例は、
図5に示されている。この例において、単位胞の上部リング62及び下部リング64は留め具を含む。留め具は、単位胞を一緒に接合することを可能にする任意の適切な機構を使用することができる。
図5に示される例において、単位胞は、単位胞を格子に組み立てるために一緒に接合されてもよい雄型コネクタ66及び雌型コネクタ68を含む。
図5では、雄型留め具及び雌型留め具が、90度の角度で分離された単位胞の上部リングと下部リングの両方に表示されている。
図5には表示されていないが、図示の単位胞は、単位胞の上部リングと下部リングのそれぞれに2つの雄型コネクタ及び2つの雌型コネクタを含み、雄型コネクタと雌型コネクタが交互に90度間隔で配置されている。単位胞を接続するために使用される留め具の数は、単位胞の上部リング及び下部リング上で4より多いか又は少なくてもよいが、好ましくは、上部リング及び下部リングはそれぞれ、2つの雄型コネクタ及び2つの雌型コネクタを90度間隔で交互に含む。必要に応じて、留め具を単位胞のらせん状ストラットに配置してもよい。
【0121】
[00147] iii.メッシュ単位胞
[00148] 更に別の実施形態において、単位胞は、メッシュ及び繊維から形成される。単位胞は、メッシュから形成された上部プレート及びメッシュから形成された下部プレートを有してもよい。上部プレート及び下部プレートは繊維で接合され、メッシュ単位胞を形成する。好ましくは、上部プレート及び下部プレートは、繊維の交絡によって、より好ましくは、上部プレート及び下部プレートをモノフィラメント繊維と交絡することによって接合される。
【0122】
[00149]
図12は、上部プレート110及び下部プレート120、並びに、上部プレート及び下部プレートを接合するストラット130を示すメッシュ単位胞100の図である。上部プレート及び下部プレートはメッシュで形成されている。メッシュからの繊維インレイ140は、上部プレート及び下部プレート上に示され、メッシュの交絡ループ142も示されている。
図12に示されるストラットは、好ましくは繊維、より好ましくはモノフィラメント繊維から形成される。メッシュ単位胞は、大きな表面積及び空隙体積を提供する、低い体積密度を有する。上部プレート及び下部プレート、並びにストラットは、異なる寸法、角度、及び長さを有してもよく、強固、剛直、可撓性、弾性、バネ状であってもよく、配向又は非配向ポリマーから製作されてもよい。メッシュ単位胞は、任意の適切な形状に形成されてもよい。一実施形態において、メッシュ単位胞は、細長い多面体形状を含む多面体形状を有する。好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は6つの面を有する。特に好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は直方体である。メッシュ単位胞の内側は、中空であってもよく、又はさらなる繊維を含んでもよい。例えば、メッシュ単位胞は、上部プレート及び下部プレートを接合するさらなる繊維を含んでもよい。メッシュ単位胞はまた、単位胞の表面積を増加させる上部プレートと下部プレートとの間に配置されたさらなる繊維を含んでもよい。後者は、例えば脂肪に結合するための単位胞の結合能力の増加をもたらし得る。
【0123】
[00150] 好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は圧縮性であり、更により好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は圧縮性であり、圧縮後に復旧する。圧縮性メッシュ単位胞から形成された格子を有するインプラントは、そのように形成された格子が圧縮性であり、乳房組織の特性を模倣するように設計できるため、乳房での使用に特に適している。
【0124】
[00151] メッシュ単位胞のストラット又は繊維の長さは、好ましくは1から300mm、より好ましくは2mmから10mm、更により好ましくは3mmから8mmである。実施形態において、ストラット又は繊維は、単位胞からなる格子への、0.5から3mmの外針直径を有する針の挿入を可能にする単位胞を形成するのに十分な長さである。
【0125】
[00152] メッシュ単位胞を調製するために使用される繊維の直径は、好ましくは20μmから2mm、より好ましくは50μmから1mm、更により好ましくは80μmから500μm、又は100μmから250μmである。
【0126】
[00153] 実施形態において、インプラントは、繊維を有するメッシュ単位胞から形成され、繊維は、0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの破断荷重を有する。実施形態において、インプラントは、繊維を有するメッシュ単位胞から形成され、繊維は、22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸びを有する。実施形態において、インプラントは、繊維を有するメッシュ単位胞から形成され、繊維は、0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値を有する。メッシュ単位胞を形成する繊維は、好ましくは、(i)0.1から200Nの破断荷重、(ii)22から1,000%の破断伸び、及び(iii)0.05から10GPaの弾性率のうちの1つ以上の特性を有する。
【0127】
[00154] 実施形態において、繊維を有するメッシュ単位胞から形成されたインプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、メッシュ単位胞の繊維は、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0128】
[00155] 実施形態において、インプラントは、メッシュ単位胞から形成された乳房インプラントであり、インプラントは、0.01kPaから290MPa、より好ましくは0.1kPaから10MPa、更により好ましくは0.1kPaから1MPa、又は0.1kPaから100kPaの弾性率を有し、メッシュ単位胞の繊維は、(i)0.025から3mm、より好ましくは0.1から2mm、更により好ましくは0.15から1mmの直径、(ii)0.1から200N、より好ましくは1から100N、更により好ましくは2から50Nの初期破断荷重、(iii)22%から1,000%、より好ましくは100%から700%の破断伸び値、及び、(iv)0.05から10GPa、より好ましくは0.1から3GPa、更により好ましくは0.2から0.8GPaの弾性率値のうちの1つ以上の特性を有する。
【0129】
[00156] iv.発泡体単位胞
[00157] さらなる実施形態において、単位胞は、発泡体、好ましくは圧縮性発泡体で形成されている。発泡体単位胞は、好ましくは、相互接続された細孔を含む。細孔は、単一サイズ(すなわち、各細孔が同じサイズを有する)又は異なるサイズであってもよい。発泡体単位胞は、大きな表面積及び空隙体積を提供する、低い体積密度を有する。発泡体単位胞は、任意の適切な形状に形成されてもよい。一実施形態において、発泡体単位胞は、細長い多面体形状を含む多面体形状を有する。好ましい実施形態において、発泡体単位胞は6つの面を有する。特に好ましい実施形態において、発泡体単位胞は直方体である。
【0130】
[00158] 一実施形態において、発泡体単位胞は、雄型アンカー及び雌型アンカーを更に含む。アンカーは、複数の単位胞を接合してインプラントの格子を形成することを可能にする。
【0131】
[00159]
図16Cを参照すると、発泡体340の細孔330を示す、雄型アンカー310及び雌型アンカー320を有する圧縮性発泡体単位胞300の断面図である。発泡体340は、好ましくはポリマー、より好ましくは吸収性ポリマーから形成される。
【0132】
[00160]
図16A、
図16B及び
図16Cは、本発明の一実施形態による発泡体単位胞を形成するための一方法を示している。特に、
図16Aは、浸出可能なポロゲンビーズ340で充填された型穴336を示している。選択的に、型穴は、本明細書で更に説明される、雌型形成アンカー部位344、及び雄型形成アンカー部位346を特徴としてもよい。
【0133】
[00161]
図16Bを参照すると、ビーズ340は、揮発性溶媒中のポリマーの溶液350で覆われている。溶媒を蒸発させて、ポロゲンビーズをポリマーに閉じ込めたままにすることができる。開放発泡体単位胞300は、
図16Cに示されるように、ポリマーに閉じ込められたポロゲンビーズを浸出させることによって形成され、その結果、細孔330のアレイが発泡体354に残される。選択的に、雄型アンカー310及び雌型アンカー320は、本明細書に記載されるように発泡体ユニットを一緒に組み立てるために生成される。
【0134】
[00162] 圧縮性発泡体単位胞から形成された格子を有するインプラントは、そのように形成された格子が圧縮性であり、乳房組織の特性を模倣するように設計できるため、乳房での使用に特に適している。
【0135】
[00163] C.インプラントの構築
[00164] インプラントの製造には、様々な方法を使用することができる。インプラントは、2つ以上の単位胞から形成された格子を含むが、より好ましくは、複数の単位胞又は多数の単位胞から形成された格子を含む。単位胞は、格子の体積にわたって繰り返される。実施形態において、インプラントの格子は、(i)構造的支持、(ii)組織の内部成長のための足場、(iii)脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び生物活性剤を送達するための足場、(iv)機械的間隔を提供することができる構造、(v)血管茎などの格子構造への移植片の組み込みを可能にすることができる構造、(vi)針を使用した注入により、脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び生物活性剤を格子の内側に塗布できる構造、(vii)軟組織と類似した(特性値の±50%以内を意味する)又は同じ特性を有する構造、(viii)弾性率値が乳房組織の弾性率値の±50%以内、より好ましくは±25%以内の構造、(viii)体積密度に比べて高い強度を有する構造、(ix)圧縮設計及び/又はバネ設計の構造(力によって格子が変形し、力が取り除かれると元の形状に復旧できることを意味する)、及び(x)異方性の機械的特性を有する構造のうちの1つ以上の提供が可能である。
【0136】
[00165] 一実施形態において、インプラントは、単位胞の格子を製作することによって形成され、単位胞はコイル及びバネである。別の実施形態において、インプラントは、単位胞の格子を製作することによって形成され、単位胞は、ストラット又は繊維から形成された縁部及び頂部を有し、中空又は多孔性の内部を有する骨格多面体である。好ましくは、骨格多面体単位胞は、それらの角で隣接する骨格多面体単位胞と出会って格子を形成する。更に別の実施形態において、インプラントは、メッシュ単位胞の格子を製作することによって形成され、メッシュ単位胞は、単位胞の2つの対向する面にメッシュを含み、メッシュは、ストラット又は繊維によって接合される。さらなる実施形態において、インプラントは、発泡体単位胞の格子を製作することによって形成される。
【0137】
[00166] 好ましい実施形態において、インプラントの格子は、単位胞から形成され、単位胞は、ポリマーから形成される。単位胞は、骨格多面体の縁部及び頂部がポリマーストラット又は繊維から形成されるポリマーコイル及びバネ、骨格多面体であってもよく、或いは、単位胞はポリマー繊維に接続されたポリマーメッシュであるか、又は単位胞がポリマー発泡体であってもよい。
【0138】
[00167] 好ましい実施形態において、インプラントは、単位胞の格子から形成され、単位胞は、単位胞が格子の中心に配置されると、他の単位胞に囲まれるように、格子を通る開放細孔ネットワークを提供する低い体積密度を有する。例えば、格子の単位胞がすべて12面の十二面体の形状をしている場合、十二面体の各面は12個の隣接する単位胞に接続される。この方式で単位胞を接続すると、格子構造への組織の内部成長を促進し且つ可能にする、格子を通る連続経路が存在する格子ネットワークが作成される。連続経路により、格子構造全体を、脂肪及び脂肪細胞を含む、生物活性剤、コラーゲン、ヒアルロン酸、添加剤、細胞、及び組織のうちの1つ以上で塗布することもできる。格子を形成する単位胞の数は、必要な格子の体積と単位胞の単位体積に部分的に依存する。例えば、体積が1cm3の同一の単位胞から製作された体積が500cm3の格子は、最大500個の単位胞を含有する。
【0139】
[00168] インプラントの格子は、それらの体積密度によって定義されてもよい。好ましい実施形態において、格子を製作するために使用される材料の体積と格子内の空隙の体積との比であるインプラントの格子の体積密度は、1~50%である。より好ましい実施形態において、格子の体積密度は1%と25%との間であり、更により好ましい実施形態において、格子の体積密度は1%と17%との間である。定義を明確にするために、体積密度が25%の格子は、体積で25%の材料と75%の空隙スペースを有する。格子の体積密度とは、細胞又は他の物質を添加する前の体積密度を指す。体積密度が低く、例えば体積密度が50%未満の格子は、脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、及び生物活性剤によって占有され得る大きな空隙スペースを提供するため、好ましい。一実施形態において、空隙スペースの25%から100%、より好ましくは75%から100%が、脂肪、吸引脂肪組織、脂肪細胞、線維芽細胞及び幹細胞を含む、細胞、組織、コラーゲン、及び生物活性剤のうちの1つ以上で充填されている。
【0140】
[00169] 単位胞のストラット、繊維、コイル及びバネは、任意の適切な方法によって製造することができる。単位胞を製造するための好ましい方法は、3D印刷である。3D印刷はコンピュータ制御プロセスであり、付加製造アプローチを使用して3D CAD(コンピュータ支援設計)モデルから3次元オブジェクトを製造することができる。オブジェクトは、材料、通常はプラスチック又は金属を堆積、接合、又は固化することによって製造されてもよい。3D印刷は、単位胞の製造に使用されてもよく、格子構造の製造に使用されてもよい。後者の方法は、インプラントの格子が骨格多面体である単位胞を含む場合に特に好ましいが、コイル又はバネを含む単位胞を製造するために使用されてもよい。適切な3D印刷技術は、選択的レーザー溶融(SLM)、溶融押出堆積(MED)、融合ペレット堆積(FPD)、溶融フィラメント製造、凝固浴を使用したスラリーと溶液の印刷、及び結合溶液と粉末の顆粒を使用した印刷を含む。一実施形態において、インプラントの格子は、吸収性ポリマーの3D印刷によって、より好ましくは、ポリ-4-ヒドロキシブチレート及びコポリマー、並びに、ポリ(ブチレンサクシネート)又はコポリマーのうちの1つ以上の3D印刷によって形成され、ここで、選択的に、これらのポリマー及びコポリマーは架橋されている。特に好ましい実施形態において、インプラントは乳房インプラントであり、インプラントの単位胞及び/又は格子は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート及びコポリマー、並びに、ポリ(ブチレンサクシネート)又はコポリマーのうちの1つ以上の3D印刷によって形成され、ここで、選択的に、これらのポリマー及びコポリマーは架橋されている。
【0141】
[00170] 単位胞を3D印刷するための特に好ましい方法は、選択的レーザー溶融(SLM)である。
図6は、SLMによって調製されたコイル状円筒形単位胞400の例である。コイル状単位胞は、全高7.5mmの上部リング及び下部リングを支持する3つのらせん状ストラットで形成され、らせん状ストラットは、1センチメートルあたり0.75の一定ピッチで互いに120度の角度を有する。上部リング及び下部リングの外径と内径は、それぞれ10mmと8mmであり、リングは2mmの丸い断面で形成されている。3D印刷によって形成されたコイル状円筒形単位胞は、単位胞を融合することによって格子に組み立ててもよい。単位胞は、例えば、熱、圧力、及び/又は溶媒の適用によって融合されてもよい。
【0142】
[00171] 3D印刷を使用して、
図5の例に示されるように、留め具が組み込まれたコイル状円筒形単位胞を形成することもできる。印刷後、留め具66、68(
図5に示される)を含むコイル状円筒形単位胞は、
図7にされるように、単位胞の上部リングと下部リングの雄型コネクタと雌型コネクタを接続して、インプラントの格子構造410を形成することによって組み立てることができる。好ましい実施形態において、留め具を含むコイル状円筒形単位胞は、格子に組み立てられ、格子は圧縮性であり、圧縮後に元の形状を取り戻す。更により好ましい実施形態において、留め具を含むコイル状円筒形単位胞は、乳房インプラントの格子に組み立てられ、格子は圧縮性であり、選択的に、圧縮後に元の形状を取り戻す。
【0143】
[00172] 3D印刷を使用して、個々の単位胞から格子を組み立てる必要なく、インプラントの格子構造を直接形成することもできる。
図8は、
図4に示されるものと同様の、複数のコイル状円筒形単位胞440を3D印刷することによって形成されたインプラントの格子構造430の図であり、単位胞は、格子の印刷中に互いに接続されている。好ましい実施形態において、そのように形成された格子は圧縮性であり、圧縮後に元の形状を取り戻す。更により好ましい実施形態において、3D印刷された格子は乳房インプラントの格子であり、格子は圧縮性であり、圧縮後に元の形状を取り戻す。
【0144】
[00173] 他の好ましい実施形態において、骨格多面体単位胞を有する格子は、3D印刷によって直接形成されてもよい。骨格多面体単位胞から製作された3D印刷されたインプラント格子10の例は、
図1に示されている。好ましい実施形態において、インプラントの3D印刷された格子は、
図3に示されるように圧縮性であり、圧縮後に元の形状を取り戻すことができる。特に好ましい実施形態において、乳房インプラントの格子は、骨格多面体の格子を3D印刷することによって形成され、格子は圧縮性である。更により好ましくは、格子は、圧縮後に元の形状を取り戻す。実施形態において、乳房インプラントの3D印刷格子を含む3D印刷格子は、骨格多面体単位胞を含み、単位胞の形状は、四面体、直方体、五面体、六面体、七面体、八面体、二十面体、十面体、十二面体、十四面体、及び角柱、反角柱、並びにそれらの切頭多面体である。好ましい実施形態において、これらの骨格単位胞は、4、6、8、12又は20の面を有する。別の実施形態において、これらの骨格単位胞は、細長い多面体から形成される。特に好ましい実施形態において、乳房、乳首、顔面又は臀部インプラントを含む3D印刷インプラントの骨格単位胞は、十二面体であり、更により好ましくは菱形十二面体である。他の実施形態において、格子は、2つ以上の異なるタイプの骨格単位胞から3D印刷されてもよい。例えば、格子は、十二面体と八角形の組み合わせから印刷されてもよい。
【0145】
[00174] 他の実施形態において、格子の単位胞は、注入成形によって調製されてもよい。例えば、それぞれ
図4及び
図5に示される単位胞40、60は、注入成形によって調製されてもよく、単位胞を組み立てて格子を形成する。
図4に示されるタイプの注入成形された単位胞40は、例えば、熱、圧力、及び/又は溶媒を使用して、単位胞を一緒に融合することによって格子に形成されてもよい。
図5に示されるタイプの注入成形された単位胞60は、雄型コネクタ及び雌型コネクタを接続することによって格子に形成されてもよい。好ましい実施形態において、注入成形された単位胞は、圧縮性格子に形成され、選択的に、圧縮後に元の形状を取り戻す。特に好ましい実施形態において、注入成形された単位胞は、乳房、乳首、顔面、及び臀部のインプラントの、圧縮性である格子に形成される。好ましくは、これらの格子は、圧縮後にそれらの形状を取り戻す。
【0146】
[00175] メッシュ単位胞は、2つのメッシュを用意し、それらをストラット又は繊維で接続して単位胞を形成することによって調製されてもよい。好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は、両板編み機を使用して調製される。
図12から
図15を参照すると、メッシュ単位胞100の上部プレート110は、両板編み機の前床で編むことができ、メッシュ単位胞100の下部プレート120は、両板編み機の後床で編むことができる。繊維、好ましくはモノフィラメント繊維は、メッシュ単位胞を形成するために前床と後床との間に交絡されてもよい。好ましくは、メッシュ単位胞内のメッシュは、経編みであり、両板編み機を使用して調製されてもよい。特に好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は、メッシュ単位胞を形成するためにモノフィラメント繊維と交絡した単位胞の両側にメッシュ経編地を含む。特に好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は、モノフィラメント繊維と交絡したメッシュ経編地を含み、圧縮性である。
【0147】
[00176] 好ましい実施形態において、メッシュ単位胞は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート及びコポリマー、並びにポリ(ブチレンサクシネート)又はコポリマーのうちの1つ以上のポリマー又はコポリマーを有する繊維、好ましくはモノフィラメント繊維から調製される。ポリマー及びコポリマーは、分岐剤、架橋剤、鎖延長剤、及び反応性混合剤のうちの1つ以上を更に含んでもよい。これらのポリマー組成物を使用してメッシュ単位胞から製作された特に好ましいインプラントは、乳房インプラントとして使用されてもよい。
【0148】
[00177] メッシュ単位胞は、任意の適切な方法を使用してインプラントに組み立ててもよい。例えば、メッシュ単位胞は、融合によってインプラントの格子に形成されてもよい。例えば、熱、圧力及び/又は溶媒の適用によって行われる。より好ましくは、メッシュ単位胞は、繊維を使用して一緒に接続されてもよい。一実施形態において、メッシュ単位胞は、繊維を使用して一緒に縫い合わされてもよい。
【0149】
[00178] 一実施形態において、単位胞は発泡体で製作されており、発泡体単位胞はインプラントに組み立ててもよい。例えば、発泡体単位胞は、融合によってインプラントの格子に形成されてもよい。例えば、熱、圧力及び/又は溶媒の適用によって行われる。より好ましくは、発泡体単位胞を含むインプラントの格子は、雄型アンカー及び雌型アンカーを一緒に接続することによって、雄型アンカー及び雌型アンカーを含む発泡体単位胞から形成されてもよい。
【0150】
[00179] D.インプラントの格子の物理的特性
[00180] 一実施形態において、格子の機械的特性は、それらが組織の機械的特性に近似するように設計されている。一実施形態において、インプラントの格子の弾性率は、0.01kPaと290MPaとの間、より好ましくは0.1kPaと10MPaとの間、更により好ましくは0.1kPaと1MPaとの間、又は0.1kPaと100kPaとの間である。特に好ましい実施形態において、インプラントは乳房インプラントであり、乳房インプラントの格子は、0.01kPaから1MPa、より好ましくは0.01kPaから100kPaである弾性率を有する。別の実施形態において、インプラントは乳房インプラントであり、乳房インプラントの格子は、乳房組織の弾性率の±50%である弾性率を有する。他の実施形態において、インプラントの格子は、腺組織、脂肪組織、皮膚、胸筋膜、又は乳房組織の弾性率の±50%、より好ましくは±25%である弾性率を有する。参考までに、腺組織、脂肪組織、皮膚、胸筋膜、及び乳房組織の弾性率の値は、それぞれ、7.5から66kPa、0.5から25kPa、200から3,000kPa、100から2,000kPa、及び0.167から29kPaであると報告されている。特に好ましい実施形態において、骨格多面体単位胞、スパイラル又はコイル状単位胞、又はメッシュ単位胞を含む乳房インプラントの格子は、0.167kPa±50%から66kPa±50%の弾性率を有する。
【0151】
[00181]
図10Aは、乳房組織と同様の圧縮弾性率をインプラントに提供するバネ設計を有する乳房インプラント500の例を示している。インプラント500は、隣接するセグメント間のギャップ504を規定するセグメント502を含む。乳房インプラントの断面は、
図10Bに示されている。この例において、インプラントの格子は、積み重ねられたダイヤモンド形単位胞510から製作される。インプラントは、例えば、自家脂肪、細胞、コラーゲン又は生物活性剤で塗布することができる大きな表面積を有する。
【0152】
[00182]
図11は、乳房組織と同様の弾性率を有するように設計された乳房インプラント530の代替の実施形態を示す図である。
【0153】
[00183] 別の実施形態において、インプラントの格子は異方性特性を有してもよい。つまり、格子は異なる方向に異なる特性を有してもよい。例えば、格子は、一方向に第1の弾性率を有し、第2の方向に第2の異なる弾性率を有してもよい。一実施形態において、インプラントは乳房インプラントであってもよく、乳房インプラントの格子は、一方向に第1の弾性率を有し、第2の方向に第2の異なる弾性率を有してもよい。乳房インプラントの格子は、乳房の上から下の方向と、乳房の外側から内側の方向とで異なる特性を有してもよい。一実施形態において、格子の単位胞は、異方性特性を有する格子を提供するために一方向に伸長されてもよい。例えば、格子の単位胞は、第1の方向に増加した弾性率を有する格子を提供するために、第1の方向に伸長されてもよい。
【0154】
[00184] インプラントの格子内への組織の内部成長を可能にするために、格子は、細胞及び血管がインプラントに侵入して増殖することを可能にするのに十分に長い強度保持を有する必要がある。実施形態において、インプラントの格子は、2週間で少なくとも25%、より好ましくは2週間で少なくとも50%、更により好ましくは4週間で少なくとも50%の強度保持を有する。他の実施形態において、インプラントの格子は、インプラントに作用する機械的力を支持し、格子から、再生された宿主組織への機械的力の安定した移行を可能にするように設計されている。特に、乳房インプラントの格子は、乳房インプラントに作用する機械的力を支持し、格子から、新しい宿主組織への機械的力の安定した移行を可能にするように設計されている。
【0155】
[00185] E.インプラントの他の特徴
[00186] インプラント、又はインプラントの格子は、所望のインプラント又は格子形状を提供するために、はさみ、刃、他の鋭利な切断器具、又はサーマルナイフでトリミング又は切断されてもよい。インプラント又は格子はまた、レーザー切断技術を使用して所望の形状に切断することができる。これは、この技術は用途が広く、重要なことに、鋭い縁部のない成形インプラント及び格子を提供できるため、繊維ベース、メッシュベース、及びストラットベースのインプラントの成形に特に有利であり得る。
【0156】
[00187] 実施形態において、インプラントは、インプラントを強化するため、又は移植を容易にするためのピラーを更に含んでもよい。ピラーは、例えば、移植後にインプラントを再成形するのを補助することができる。好ましくは、ピラーは、インプラントを強化するため、又はインプラントの移植を容易にするために、格子構造に組み込まれる。ピラーは、融合、成形、織り、編み、又は印刷を含む任意の適切な方法によってインプラントに組み込まれてもよい。好ましい実施形態において、ピラーは、吸収性ポリマー繊維又はストラットをインプラントの格子に融合することによって組み込まれる。実施形態において、ピラーは、0.1から5mm、より好ましくは0.5から3mmの範囲の直径又は幅を有してもよい。吸収性ポリマー繊維又はストラットは、配向されていてもよく配向されていなくてもよいが、好ましくは配向されておらず、より好ましくは非配向のポリ-4-ヒドロキシブチレート繊維又はストラットである。別の実施形態において、可撓性ピラーは、インプラントの格子上に直接印刷されるか、又は格子の印刷中に格子に組み込まれてもよい。
【0157】
[00188] インプラントは、棘又は鋲などのリテーナを含んでもよく、それによってインプラントは、縫合糸を使用せずに体内に固定され得る。インプラントは、好ましくは、インプラントの外側の境界又はインプラントの格子構造にリテーナを含有する。インプラントが乳房インプラントである場合、リテーナは、インプラントを胸壁に固定できるように、インプラント上に位置することが好ましい。
【0158】
[00189] インプラントは、例えば縫合糸及び/又はステープルを使用してインプラントを体内に固定することができるように、縫合糸タブを含んでもよい。タブの数は変更されてもよい。一実施形態において、タブの数は、インプラントに加えられる負荷に依存する。インプラントが重いかかさばる場合は、タブの数を増やすことが望ましい場合がある。実施形態において、インプラントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個のタブ、又はそれ以上を含むが、好ましくは4~12個を含む。インプラントが乳房インプラントである場合、乳房インプラントを胸壁に固定するために、インプラントは好ましくは4個以上のタブ、好ましくは4~12個のタブを含有する。タブの寸法は、好ましくは0.5cm×0.5cmから5cm×4cm、好ましくは2cm×2.5cmである。インプラントに付着されたタブは、機械的負荷に抵抗し、移植後のインプラントのその後の動きを防ぐために、インプラント内への組織の十分な内部成長を可能にするように、インビボで十分な強度保持を持たなければならない。好ましい実施形態において、インプラントに付着されたタブの縫合糸引き抜き強度は、10Nより大きく、より好ましくは20Nより大きい。
【0159】
[00190] F.インプラントの塗布と充填
[00191] 実施形態において、インプラントは塗布で製造され、及び/又は格子の一部又はすべてが担体として使用される。例えば、格子は、格子の空隙スペースの一部又は全体に、自家移植片、同種移植片又は異種移植片の組織及び細胞、並びに血管新生茎を含む細胞又は組織を集合化させることによって製造することができる。インプラントの空隙スペースに挿入し、その表面を塗布できる細胞の例には、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞が含まれる。好ましい実施形態において、自家脂肪、吸引脂肪組織、又は注入可能な脂肪が、インプラント上に塗布され、インプラントの空隙スペースに挿入される。別の好ましい実施形態において、血管新生茎は、インプラントの空隙スペースに挿入されてもよい。更に別の好ましい実施形態において、インプラントは、1つ以上の生物活性剤で塗布するか、部分的又は完全に充填されてもよい。インプラント上に塗布することができる、又はインプラントを部分的又は完全に充填するために使用することができる特に好ましい生物活性剤は、コラーゲン及びヒアルロン酸を含む。他の実施形態において、インプラントは、1つ以上の抗生剤で塗布されてもよい。
【0160】
[00192] 任意の適切な方法を使用して、インプラントを塗布し、その空隙スペースを細胞、組織、生物活性剤及び他の添加剤で充填することができる。実施形態において、インプラントは、注入、噴霧、又は浸漬塗布によって、細胞、組織、生物活性剤及び他の添加剤で充填されるか、又は塗布される。コラーゲンは、塗布及び凍結乾燥によってインプラントに適用されてもよい。特に好ましい実施形態において、インプラントは、格子を損傷することなくインプラントの格子に挿入可能な針を使用する注入によって、細胞、組織、生物活性剤及び/又は他の添加剤で塗布されてもよく、又は部分的又は完全に充填されてもよい。一実施形態において、細胞、組織、脂肪、吸引脂肪組織、生物活性剤、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び他の添加剤の注入に使用される針は、0.5mmから5mmの間の外径を有する。
【0161】
[00193] IV.インプラントを移植するための方法
[00194] 実施形態において、インプラントは体内に移植される。好ましくは、インプラントは、再建、再構築、修復、及び/又は再生の部位に移植される。好ましい実施形態において、結合組織及び/又は血管系は、移植後にインプラントの格子に侵入する。特に好ましい実施形態において、インプラントは吸収性材料を含み、結合組織及び/又は血管系もまた、吸収性材料が分解した空間に侵入する。格子の単位胞は、移植前に、又はより好ましくは移植後に細胞によってコロニー形成され得、そして格子の細孔は、組織、血管、又はそれらの組み合わせによって侵入され得る。
【0162】
[00195] インプラントは、移植前又は移植後に、移植細胞、幹細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、及び/又は組織で塗布又は充填されてもよい。実施形態において、インプラントは、移植の前又は後に、分化した細胞で塗布又は充填される。分化した細胞は、特定の形態と機能を有する。例としては、脂肪細胞や筋細胞がある。好ましくは、インプラントは、移植の前又は後に、注入によって、より好ましくは、インプラントの格子を損傷しない針を使用することによって、細胞で集合化する。インプラントはまた、移植前に、血小板、細胞外脂肪基質タンパク質、ゲル、ヒドロゲル、及び生物活性剤で塗布又は充填されてもよい。一実施形態において、インプラントは、例えば、抗生剤の溶液にインプラントを浸漬することによって、移植前に抗生剤で塗布されてもよい。
【0163】
[00196] インプラントは、乳房、乳首、顔面、臀部などの特定の場所において患者に自家細胞や組織を送達するために使用されてもよい。自家組織は、好ましくは、自家脂肪、吸引脂肪組織、注入可能な脂肪、脂肪細胞、線維芽細胞、及び幹細胞のうちの1つ以上である。
【0164】
[00197] インプラントは、脂肪組織を脂肪充填して患者に送達するために使用されてもよい。特に好ましい実施形態において、自家脂肪組織は、インプラントの移植の前又は後に調製され、インプラントの移植の前又は後に、インプラントに注入されるか、そうでなければ挿入されるか、又は塗布される。自家脂肪組織は、好ましくは、患者の体のドナー部位での脂肪吸引によって調製される。遠心分離後、脂肪細胞を含有する脂質相は血液要素から分離され、移植前にインプラントと組み合わされるか、注入されるか、又は移植後にインプラントに挿入される。一実施形態において、インプラントは、格子の総体積の1%から50%、より好ましくは格子の総体積の1%から20%に相当する量の吸引脂肪組織を注入されるか、又は充填される。
【0165】
[00198] 別の実施形態において、患者から採取した吸引脂肪組織の脂肪組織は、吸引脂肪組織をインプラントに追加する前に、非常に小さい繊維又は粒子などの生物学的又は合成の足場マトリックスと混合されてもよい。この実施形態において、追加されたマトリックスは、脂肪の微小球を保持又は結合し、それらをインプラントの格子内に分散及び保持するのに役立つ。いくつかの実施形態において、追加されたマトリックスの使用は、壊死につながる可能性のある脂肪の貯留を防ぐのを補助することができ、及び/又はインプラントの血管新生を増加させるのを補助することができる。
【0166】
[00199] 別の実施形態において、血管茎又は他の組織塊が患者から採取され、インプラントに挿入される。茎又は他の組織塊は、インプラントの移植前にインプラントに挿入され、次いで、茎又は他の組織塊を有するインプラントが患者に移植されてもよく、或いは茎又は他の組織塊は、インプラントが患者に移植された後にインプラントに挿入されてもよい。
【0167】
[00200] 好ましい実施形態において、インプラントは、患者の乳房に移植される。さらなる実施形態において、インプラントは、両方の乳房に移植され、固定される。実施形態において、インプラントは、修正手術を含む乳房固定及び増大手術中に患者に移植される。特に好ましい実施形態において、インプラントは、(i)乳房切除、(ii)乳房挙上、及び増大が必要な乳房挙上、(iii)乳房縮小、及び縮小乳房の支持、挙上又は再構築が必要な乳房縮小を受けており、又は(iv)シリコーン又は生理食塩水乳房インプラント手術を受けており、シリコーン又は生理食塩水インプラントの除去と、その後の乳房の再建により、より完全な又はより大きなサイズの乳房が提供されることを所望する患者に移植される。インプラントはまた、乳房の胸部からの突出を増加させるために乳房手術患者に移植されてもよく、そして選択的に、突出を増加させるために移植後に追加の脂肪移植片体積をインプラントに追加してもよい。追加の脂肪移植片体積は、インプラントの移植直後にインプラントに追加されてもよいが、フォローアップ訪問時に追加されてもよい。例えば、追加の脂肪移植片体積は、インプラントの移植後数日、数週間、又は数ヶ月のうちの1つ以上の機会にインプラントに追加されてもよい。本明細書に記載の手術はまた、乳房組織の除去、乳房組織の切除及び再分配とともに実施することができる。
【0168】
[00201] 一実施形態において、乳房へのインプラントの移植方法は、少なくとも、(i)患者の乳房組織へのアクセスを得るために少なくとも1つの切開を行うステップ、(ii)乳房の乳房マウンドから皮膚及び皮下筋膜を分離するステップ、(iii)乳房の乳房マウンドにインプラントを配置するステップ、(iv)乳房の乳房マウンドを取り囲む組織にインプラントを固定するステップ、及び(v)乳房の切開を閉じるステップを含む。好ましくは、この方法は、(a)吸引脂肪組織のサンプルを調製し、インプラントの移植前にサンプルでインプラントを塗布又は充填するステップ、(b)吸引脂肪組織のサンプルを調製し、インプラントの移植後に、好ましくはサンプルをインプラントに注入することにより、インプラントをサンプルで塗布又は充填するステップ、(c)インプラントの移植の前又は後に、血管茎をインプラントに挿入するステップ、及び(d)所定の位置にインプラントを縫合又はステープル留めするステップのうちの1つ以上を更に含む。好ましい実施形態において、インプラントは、乳腺下、胸筋下、又は胸筋前の位置に移植される。実施形態において、インプラントは、乳房マウンドを取り囲む組織に、更により好ましくは、乳房マウンドの下にある胸筋を取り囲む筋膜に縫合される。別の実施形態において、インプラントはタブを含み、タブは乳房マウンドを取り囲む組織に縫合される。
【0169】
[00202] インプラントはまた、移植前又は移植後に、脂肪移植片以外の細胞及び組織、並びにサイトカイン、血小板及び細胞外脂肪基質タンパク質で塗布又は充填されてもよい。例えば、インプラントは、軟骨又は真皮移植片で塗布又は充填されてもよい。インプラントはまた、膵島細胞、肝細胞、又は患者の病気の治療のための遺伝子を含有するように遺伝的に改変された幹細胞などの他の組織細胞で塗布又は充填されてもよい。
【0170】
[00203] 実施形態において、インプラントは体内に移植される。好ましくは、インプラントは、再建、再構築、修復、及び/又は再生の部位に移植される。好ましい実施形態において、結合組織及び/又は血管系は、移植後にインプラントの格子に侵入する。
【0171】
[00204] 一実施形態において、インプラントは、小さな切開を通して低侵襲的手段によって送達されることを可能にする特性を有する。インプラントは、例えば、小さな切開を通して送達できるように巻き上げる、又は折りたたむことができるように設計されてもよい。この低侵襲アプローチは、患者の罹患率、瘢痕、及び感染の可能性を減らすことができる。更により好ましい実施形態において、インプラントは、切開を通して適切なサイズの切開された組織面に送達された後、補助なしで元の3次元形状をとることを可能にする3次元形状及び形状記憶特性を有する。例えば、インプラントは、それを小径の円筒形に巻き上げることによって一時的に変形され、インサータを使用して送達され、その後、インビボで補助なしで元の3次元形状を取り戻してもよい。
【0172】
[00205] 実施例
[00206] 本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって更に理解される。
【0173】
[00207] 実施例1:SLS印刷によって形成された、接続された骨格多面体単位胞の多孔性格子を有するインプラント
[00208]
図1に示されるインプラントは、本明細書に記載されているように調製された。P4HB(Tepha社、Mw480kDa)のペレットを低温粉砕し、続いて連続的に篩分けして、40から60ミクロンの範囲の粒子サイズのP4HB粉末を得た。P4HB粉末は、-70°Cに冷却されて、高速交差衝突経路でクライオミル内に注入された、平均サイズが2mm×2mm×3mmのP4HBペレットから生成された。得られた粉末を、60ミクロンの篩振とう機を使用して篩にかけ、続いて40ミクロンの篩振とう機を使用して、60ミクロンより大きく40ミクロンより小さい粒子を切り捨てた。次に、篩分けしたP4HB粉末(40~60ミクロンの粒子)を乾燥させ、窒素でフラッシュし、ホイルで包装した。P4HB粉末は、650ppm未満の水分含有量を有していた。P4HB粉末は、3D選択的レーザー焼結(SLS)プリンターの粉末床に積載された。粉末層の厚さは100ミクロンに設定され、レーザー出力は0.3ワットに設定され、レーザービームの速度は20cm/sに設定された。これらの条件下で、使用された単位面積あたりのエネルギーは1J/cm
2であった。3DプリンターにSTLファイルをロードして、
図1に示されるインプラントの開放多孔性足場構造を印刷した。
【0174】
[00209] 得られた構造は、底面の直径が12cm、突出が5.5cm(底面から頂点までの高さ)のドーム又は球冠型の形状であった。インプラントは、完全に相互接続された多孔性構造で形成され、開放多孔性を有する。インプラントの開放多孔性設計は、細胞が足場に侵入し、移植後に増殖することを可能にする形態を提供する。骨格単位胞のストラットの直径は1.5mmであり、ノード又はクロスポイント間の距離(つまり、単位胞内のストラットの長さ(L))は10mmであった。インプラントの弾性率値は16kPaであり、形状記憶性であり、
図3に示されるように、軽い指の圧力で圧縮可能であった。