(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】温度駆動式バルブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/70 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
F16K31/70 A
(21)【出願番号】P 2021575913
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020066746
(87)【国際公開番号】W WO2021004739
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】102019118211.5
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレル,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】フールマン,カストル
(72)【発明者】
【氏名】セイバート,カール-ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】シルツ,アーノルド
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03804326(US,A)
【文献】特開昭52-140027(JP,A)
【文献】特開2010-203616(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016100344(DE,A1)
【文献】国際公開第2015/135706(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1538020(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を収容する2つの分離されたチャンバ(4,5)を備えるガス圧力ばね(1)であって、
前記チャンバ(4,5)が、バルブアセンブリ(6)を通って互いに接続され、前記バルブアセンブリ(6)が、
a)流体を収容する2つのチャンバ(4,5)の流体伝導接続のためのチャネル部(13)であって、前記流体のための貫通開口(16)を有するチャネル部(13)と、
b)開放温度範囲内の開放構成および閉鎖温度範囲内の閉鎖構成を有する少なくとも1つの切換手段(8)であって、
b1)前記切換手段(8)が、移動軸(A)に沿って前記チャネル部(13)に対して温度駆動式に少なくとも部分的に可動で、
b2)前記貫通開口(16)の開口法線が、前記切換手段(8)側を向き、
b3)前記チャネル部(13)が、前記移動軸(A)の周りでチャネル壁(9)にて円周方向に密閉される、少なくとも1つの切換手段(8)と、
c)前記チャネル壁(9)の周りに円周方向に延びる少なくとも1つの封止手段(10)であって、
c1)前記封止手段(10)が、取付位置で、前記チャネル壁(9)の少なくとも1つの封止面(9A)に当接し、前記封止面(9A)の面法線が前記切換手段(8)側を向き、
c2)前記少なくとも1つの封止手段(10)が、前記取付位置で、前記少なくとも1つの封止面(9A)および前記閉鎖構成にある前記少なくとも1つの切換手段(8)と封止式に協働して、前記貫通開口(16)を閉鎖し、
c3)前記少なくとも1つの封止手段(10)が、前記取付位置で、前記移動軸(A)に沿って前記開放構成にある前記少なくとも1つの切換手段(8)から隔置され、その結果1次流体経路(11)が、前記貫通開口(16)を通って前記少なくとも1つの切換手段(8)と前記少なくとも1つの封止手段(10)との間で前記2つのチャンバ(4,5)を流体伝導式に接続する、少なくとも1つの封止手段(10)と、
を備える、ガス圧力ばね(1)において、
d)前記チャネル壁(9)内の少なくとも1つの凹部(14)であって、
d1)前記移動軸(A)に沿った前記少なくとも1つの凹部(14)
が、前記移動軸(A)に沿った前記封止面(9A)
と前記取付位置にある前記封止手段(10)を介して密閉され、
d2)前記封止手段(10)が前記移動軸(A)に沿って前記少なくとも1つの封止面(9A)から隔置される前記封止手段(10)の動作位置で、2次流体経路(15)が、前記少なくとも1つの凹部(14)を通って前記2つのチャンバ(4,5)を互いに流体伝導式に接続する、少なくとも1つの凹部(14)を含
み、
d3)前記少なくとも1つの凹部(14)が、前記チャネル壁(9)の外面(9B)内に前記移動軸(A)に沿って、前記移動軸(A)の周りに円周方向に延びる流体輸送のための溝を備える、
ことを特徴とす
るガス圧力ばね(1)。
【請求項2】
前記外面(9B)が、円筒形であり、かつ/または前記移動軸(A)に同軸である、
ことを特徴とする請求項
1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項3】
前記チャンネル壁(9)の前記外面(9B)は円筒形であり、
前記移動軸(A)の周りの前記円周方向における前記少なくとも1つの凹部(14)の幅(B)が、前記チャネル壁(9)の
前記外面(9B)の外側半径(R)より小さい、
ことを特徴とする請求項
1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項4】
前記封止手段(10)が、前記移動軸(A)を横断して、前記チャネル壁(9)に対して明確に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項5】
無負荷状態における前記移動軸(A)に沿った前記封止手段(10)の厚さが、前記開放構成にある前記切換手段(8)の前記移動軸に沿った前記貫通開口(16)からの距離より大きい、
ことを特徴とする請求項
4に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項6】
前記封止手段(10)が、前記切換手段(8)の前記開放構成で、前記移動軸(A)に沿って前記チャネル壁(9)に対して可動である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項7】
a)無負荷状態における前記移動軸(A)に沿った前記封止手段(10)の厚さが、前記開放構成にある前記切換手段(8)の前記移動軸に沿った前記封止面(9A)からの距離より小さく、
b)前記封止手段(10)の前記厚さが、前記閉鎖構成にある前記切換手段(8)の前記移動軸に沿った前記封止面(9A)からの距離以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項8】
前記切換手段が、前記開放温度範囲と前記閉鎖温度範囲との間の切換温度で前記移動軸(A)に沿って変形するバイメタルを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項9】
前記チャネル部(13)、前記貫通開口(16)の前記開口法線、および/または前記封止面(9A)の前記面法線が、前記移動軸(A)に平行である、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【請求項10】
a)前記バルブアセンブリ(6)が、切換温度を下回る開放温度範囲内で開放され、その結果前記少なくとも2つのチャンバ(4,5)が流体接続され、
b)前記バルブアセンブリ(6)が、前記切換温度を上回る閉鎖温度範囲内で閉鎖され、その結果前記少なくとも2つのチャンバ(4,5)が互いから液密に分離される、
ことを特徴とする請求項1に記載のガス圧力ばね(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を収容する2つのチャンバの流体伝導接続のためのチャネル部であって、流体のための貫通開口を有するチャネル部と、開放温度範囲内の開放構成および閉鎖温度範囲内の閉鎖構成を有する少なくとも1つの切換手段であって、移動軸に沿ってチャネル部に対して温度駆動式に少なくとも部分的に可動で、貫通開口の開口法線が、切換手段側を向き、チャネル部が、移動軸の周りでチャネル壁にて円周方向に密閉される、少なくとも1つの切換手段と、チャネル壁の周りに円周方向に延びる少なくとも1つの封止手段であって、封止手段が、取付位置で、チャネル壁の少なくとも1つの封止面に当接し、封止面の面法線が、切換手段側を向き、少なくとも1つの封止手段が、取付位置で、少なくとも1つの封止面および閉鎖構成にある少なくとも1つの切換手段と封止式に協働して、貫通開口を閉鎖し、少なくとも1つの封止手段が、取付位置で、移動軸に沿って、開放構成にある少なくとも1つの切換手段から隔置され、その結果1次流体経路が、貫通開口を通って少なくとも1つの切換手段と少なくとも1つの封止手段との間で2つのチャンバを流体伝導式に接続する、少なくとも1つの封止手段と、を備える温度駆動式バルブアセンブリに関する。
【0002】
さらに、本発明は、流体を収容する少なくとも2つの分離されたチャンバを備えるガス圧力ばねに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術において、ガス圧力ばねは、例えば、乗用車、ステーションワゴン、およびバンのエンジンカバー、テールゲート、および後部ドアのための重量補償を完全または部分的に提供し、これらを容易に開放し、完全または部分的に開放された位置で維持可能にするために使用される。さらに、ガス圧力ばねの力の伝達が、明確に温度依存性であることも知られている。ガス圧力ばねにて低い温度で生成される力は、高い温度で生成される力よりはるかに小さくなる可能性がある。
【0004】
したがって、ガス圧力ばねは、非常に低い温度(例えば、-30℃)でもエンジンカバー、テールゲート、後部ドアなど(以下、「負荷」)を開いた状態で維持可能になるほど十分に大きい力を生成する設計とされなければならない。同時に、ガス圧力ばねに対するこの要件の結果、高い温度(例えば、20~50℃)で、それに対応するより大きい力がガス圧力ばねにて提供される。したがって、使用者またはモータ式駆動装置がガス圧力ばねの力に逆らって負荷を再び閉じることがより困難になる。
【0005】
また、例えば、使用者は、高い温度(例えば、夏の数か月)で大きい力を印加することに慣れ、次いで大幅に低い温度で、負荷を閉じるために過度の力を印加し、その結果負荷が特定の状況下で損傷するおそれがあるため、温度に対する力の変動性が高いこと自体が、使用者にとって問題となる。
【0006】
温度の低下により既知の体積でガス圧力が下がるという比例的な影響により、ガス圧力ばねは、低い温度で減少した持上力または伸長力を提供する。この問題を回避するために、例えば、独国特許出願第112006000335号明細書により、温度に応じてガス圧力ばねの主チャンバと2次チャンバとの間の流体接続を有効にするか否かが決まる温度平衡化バルブを、ガス圧力ばね本体内に設置することが知られている。例えば4℃を上回る温度でバルブが閉じているとき、ガス圧力ばねは主チャンバのみを使用して動作する。このときガス圧力ばねは、主チャンバ内に収容されたガス質量およびガス体積に基づいて、力の伝達を提供する。
【0007】
例えば、4℃を下回る低い温度では、バルブが開き、その結果ガス圧力ばねは、両方のチャンバとともに動作し、両方のチャンバのガス質量全体およびガス体積全体に基づく力の伝達を提供する。追加の2次チャンバにより、力の伝達が増大する。
【0008】
よって、理想的なケースでは、これによりガス圧力ばねの力の温度依存性を低減させて、低い温度で十分に大きい力を提供し、高い温度で大きすぎない力を提供できる。
【0009】
独国特許出願第112006000335号明細書の温度平衡化バルブアセンブリは、バルブ通過部分の周りに配置されたOリングと協働するバイメタルばねのバルブ手段を用い、温度平衡化バルブアセンブリの閉鎖位置でシールを形成し、チャンバを接続するバルブ通過部分を通る流体経路を閉じる。低い温度で、バイメタルばねは、開放位置へ跳ね返り、両方のチャンバがともにガス圧力ばねの有効体積を提供する。
【0010】
しかしながら、この解決策の場合、実際には、ガス圧力ばねの信頼性をさらに改善するための最適化が望ましいことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願第112006000335号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、高い費用効果で簡単に製造できる温度駆動式バルブアセンブリ、ならびにガス圧力ばねのより確実かつ安全な動作を可能にするそのバルブアセンブリを含むガス圧力ばねを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、技術的課題を解決する請求項1に記載の温度駆動式バルブアセンブリを提供する。同様に、その課題は、請求項9に記載のガス圧力ばねにて解決される。有利な実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0014】
本発明に係る温度駆動式バルブアセンブリは、流体を収容する2つのチャンバの流体伝導接続のためのチャネル部であって、流体のための貫通開口を有するチャネル部と、開放温度範囲内の開放構成および閉鎖温度範囲内の閉鎖構成を有する少なくとも1つの切換手段とを備える。切換手段は、移動軸に沿ってチャネル部に対して温度駆動式に少なくとも部分的に可動で、貫通開口の開口法線が、切換手段側を向き、チャネル部は、移動軸の周りでチャネル壁にて円周方向に密閉される。チャネル部は、例えば、実質的に円筒形であり、かつ/または移動軸に同軸である。
【0015】
本発明の意味範囲内で、「~に沿って」という用語は、例えば0°~10°、特に0°~5°、好ましくは0°~1°の角度を含め、実質的に平行な向きを指す。貫通開口の開口法線は、特に、移動軸に沿って向けることができる。
【0016】
バルブアセンブリは、チャネル壁の周りに円周方向に延びる少なくとも1つの封止手段を備え、封止手段は、取付位置でチャネル壁の少なくとも1つの封止面に当接する。封止面の面法線は、切換手段側を向き、少なくとも1つの封止手段は、取付位置で、少なくとも1つの封止面および閉鎖構成にある少なくとも1つの切換手段と封止式に協働して、貫通開口を閉鎖する。少なくとも1つの封止手段は、取付位置で、移動軸に沿って、開放構成にある少なくとも1つの切換手段から隔置され、したがって1次流体経路が、貫通開口を通って少なくとも1つの切換手段と少なくとも1つの封止手段との間で2つのチャンバを流体伝導式に接続する。
【0017】
封止手段は、例えば、Oリングとして構成できる。切換手段は、例えば、バイメタルばねを構成でき、特にOリングおよびバイメタルばねは、閉鎖構成で、シールを形成できる。Oリングおよびバイメタルばねを含むバルブアセンブリは、例えば、記載の利点を実現するOリングおよびバイメタルばねを含む独国特許出願第112006000335号明細書の段落[0030]~[0041]に記載されているTCV配置のように構成できる。独国特許出願第112006000335号明細書の記載の段落[0030]~[0041]は、参照により本明細書に包含される。
【0018】
封止手段は、特に、閉鎖構成にある切換手段とともに、貫通開口の周りに、好ましくは移動軸に同軸に、円周方向に延びるシールを形成できる。
【0019】
バルブアセンブリは、チャネル壁に少なくとも1つの凹部を備える。移動軸に沿った少なくとも1つの凹部の突出は、特に、移動軸に沿った封止面の突出にて完全に密閉される。これは、凹部が移動軸から封止面を越えて外側へ軸方向に突出しないことを意味する。好ましくは、凹部全体が、少なくとも封止面のうち移動軸に最も近い点と同じだけ移動軸に近接している。特に、凹部は、封止面および閉鎖構成にある切換手段にて形成されるシールの周りで封止面を通ってチャンバを流体伝導式に接続するバイパスを形成しない。したがって、バルブアセンブリは、凹部にかかわらず、閉鎖構成で確実に閉鎖される。
【0020】
一実施形態において、凹部は、移動軸に対して、取付位置で径方向に完全に封止手段の範囲内にある。このようにして、封止手段を取付位置から動かすことによってのみ、2次流体経路を解放できるため、2次流体経路が閉鎖構成でいかなる望ましくない漏れも引き起こさないことを確保できる。
【0021】
封止手段が移動軸に沿って少なくとも1つの封止面から隔置される封止手段の動作位置で、2次流体経路が、少なくとも1つの凹部を通って2つのチャンバを互いに流体伝導式に接続する。このようにして、封止手段が動作位置で封止面から離れる方へ動き、開放構成にある切換手段に当接したとき、1次流体経路を閉鎖できる。このとき開放構成でも、流体は1次流体経路を通ってチャンバの一方から他方へ進むことはできない。
【0022】
本発明者らは、周知のガス圧力ばねに対する試験において、バイメタルばねにてOリングがその意図される位置から同伴されることが、ほとんどの場合、周知の温度駆動式バルブアセンブリが低い温度で開かない原因になることを発見した。このようにして、Oリングおよびバイメタルばねはバイメタルばねの開放構成でも互いに当接するため、Oリングとバイメタルばねとの間の1次流体経路は閉じたままである。
【0023】
2次流体経路は、1次流体経路に対する2つのチャンバの代替の流体伝導接続を提供する。このようにして、封止手段が動作位置で1次流体経路を閉じているときでも、バルブアセンブリは確実に開く。
【0024】
2次流体経路は、好ましくは、切換手段が開放構成にあり、かつ封止手段が切換手段とともにその取付位置から動いたときのみ開く。このようにして、バルブアセンブリが閉鎖構成で確実に閉鎖されたままであることが確保される。
【0025】
封止手段は、例えば、取付位置で、移動軸に沿って軸方向および移動軸に対して径方向の両方において、チャネル壁に少なくとも部分的に当接できる。動作位置で、例えば封止手段は、軸方向において、チャネル壁、特に封止面に当接しない。
【0026】
開放構成にあるバルブアセンブリのより確実な開放を確保する本発明に代替の実施形態では、2次流体経路を有効にする凹部を省略できる。この目的で、封止手段は、例えばチャネル壁に固定できる。固定は、例えば、特に封止手段をチャネル壁の溝に少なくとも部分的に配置することによって、移動軸に沿って明確になる。固定は、例えば、特に封止手段をチャネル壁に接着接合することによって、実質的となる。しかし、チャネル壁に対する封止手段の明確な固定は、作製するのが高価である。封止手段の接着接合も同様に、作製費用を増大させ、長期使用の際、特に車両内で使用されるガス圧力ばねの場合に起こるように、頻繁な大きい温度変動が生じた場合、十分に確実ではなくなる。
【0027】
2次流体経路は、必ずしも切換手段が開放構成になるたびに作用しないが、バルブアセンブリの信頼性を高めるための冗長性として働く。また、複数の2次流体経路を提供して冗長性をさらに増大させるために、複数、例えば2つ、3つ、4つ、または5つの凹部を設けることができる。複数の凹部は、特に、例えば粉塵粒子にて凹部のうちの1つが阻止されたときでも、バルブアセンブリが確実に開くことを確保する。
【0028】
チャネル壁の均一の機械歪みおよび簡単な作製を確保するために、複数の凹部は、好ましくは、移動軸の周りに均一に、すなわち規則的な角度間隔で分散される。
【0029】
少なくとも1つの凹部は、好ましくは、チャネル壁の外面に移動軸に沿って、移動軸の周りに円周方向に延びる流体輸送のための溝を備え、またはそのような溝であり、外面は、好ましくは円筒形であり、かつ/または移動軸に同軸である。特に簡単な形態では、凹部は、特に溝の長手方向軸が移動軸に実質的に平行に延びるとき、外面の溝として形成できる。
【0030】
このとき溝は、封止手段がその取付位置にあるとき、封止手段にて覆うことができ、封止手段がその取付位置から動いたときのみ、流体通過のために、溝が解放される。
【0031】
移動軸の周りの円周方向における少なくとも1つの凹部の幅は、好ましくは、チャネル壁の円筒形の外面の外側半径より小さい。このようにして、チャネル壁に対する封止手段の明確な固定に負の影響を与えるほど凹部が大きくないことが確保される。好ましくは、チャネル壁の外面の半径は、凹部の幅より1~3倍大きく、より好ましくは1.5~2倍大きく、特に好ましくは1.7~1.8倍大きい。
【0032】
別の実施形態において、凹部は、円形の円筒部の形態を有する。円形の円筒形の凹部は、小型の構成要素の場合でも、十分に低い製造公差で比較的容易に作製できる。同時に、この凹部は、ダンピング流体に対して過度に大きい流れ抵抗を与えない。
【0033】
好ましくは、封止手段は、移動軸を横断して、チャネル壁に対して明確に固定され、無負荷状態における移動軸に沿った封止手段の厚さは、好ましくは、開放構成にある切換手段の移動軸に沿った貫通開口からの距離より大きい。
【0034】
移動軸に沿った明確な固定より実質的に容易にできる移動軸を横断する明確な固定は、バルブアセンブリにおける封止手段の制御されていない動きを防止する。特に、封止手段の厚さが十分に大きいことで、封止手段が切換手段と貫通開口との間に入ることを防止する。封止手段が切換手段と貫通開口との間に入ると、封止手段が切換手段の機能を妨げるおそれがある。
【0035】
封止手段は、例えば、移動軸に沿って延びるチャネル部の周りで円周方向に延びるOリングを構成でき、それによって移動軸を横断して明確に固定される。
【0036】
封止手段は、切換手段の開放構成で、好ましくは、移動軸に沿ってチャネル壁に対して可動である。凹部にて提供された2次流体経路によって、移動軸に沿った動きに対する封止手段の入念な固定は必要とされない。
【0037】
移動軸に沿った封止手段の厚さは、無負荷状態で、好ましくは、開放構成にある切換手段の移動軸に沿った封止面からの距離より小さく、封止手段の厚さは、好ましくは、閉鎖構成にある切換手段の移動軸に沿った封止面からの距離以上である。この設計によって、封止手段は、封止面と閉鎖構成にある切換手段との間の空間を封止式に閉鎖でき、開放構成では、封止手段と切換手段および/または封止面との間の第1および/または第2の流体経路は、2つのチャンバの流体伝導接続のために自由なままとできる。
【0038】
切換手段は、好ましくは、開放温度範囲と閉鎖温度範囲との間の切換温度で移動軸に沿って変形するバイメタルを備え、またはそのようなバイメタルである。バイメタル、特に円板形のバイメタル、例えばバイメタルばねは、特に費用効果が高く確実な保守のいらない温度駆動式の切換手段である。バイメタルばねは、特に、記載の利点を実現する独国特許出願第112006000335号明細書に記載されているバイメタルばねのように構成および/または配置できる。対応する段落[0030]~[0041]は、参照により本明細書に包含される。
【0039】
チャネル部、貫通開口の開口法線、および/または封止面の面法線は、好ましくは、移動軸に平行である。上述した構成要素のうちの1つまたは複数、好ましくはすべての移動軸に対して平行な向きによって、バルブアセンブリは、作製することが特に簡単である。加えて、封止手段は、特に、切換手段が移動軸に沿って封止面に向かって閉鎖構成へ動く場合、封止面と封止式に確実に協働できる。
【0040】
加えて、本発明に係る課題は、流体を収容するための少なくとも2つの分離されたチャンバを備えるガス圧力ばねにて解決され、チャンバは、本発明に係るバルブアセンブリを介して互いに接続される。
【0041】
バルブアセンブリによって、例えばガス圧力ばねのばね力を温度制御式に増大または減少させるために、2つのチャンバ間の流体伝導接続を温度駆動式に確実に開閉できる。
【0042】
一実施形態において、バルブアセンブリは、切換温度を下回る開放温度範囲内で開放され、その結果少なくとも2つのチャンバが流体接続され、バルブアセンブリは、切換え温度を上回る閉鎖温度範囲内で閉鎖され、その結果少なくとも2つのチャンバが互いから液密に分離される。
【0043】
このようにして、切換え温度を下回ると、2つのチャンバが共同でガス圧力ばねの有効ガス体積を提供でき、切換え温度を上回ると、チャンバのうちの1つのみがガス圧力ばねの有効ガス体積を提供する。したがって、切換温度を下回ると第2のチャンバを接続することで、温度が低くなるにつれて通常は減少するガス圧力ばねのばね力の温度依存性を少なくとも部分的に確実に補償できる。
【0044】
本発明のさらなる利点、目的、および特徴について、本発明による主題が例として示されている以下の説明および添付の図面を用いて説明する。これらの図では、その機能に関連して少なくとも実質的に一致する特徴を同じ参照番号にて指定でき、これらの特徴は必ずしも、すべての図で指定および説明されているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明に係るガス圧力ばねの一実施形態の縦断面図である。
【
図2】閉鎖バルブ位置にある従来技術の温度駆動式バルブアセンブリの縦断面図である。
【
図3】封止手段がその取付位置にある、開放構成にある従来技術の
図2の温度駆動式バルブアセンブリの縦断面図である。
【
図4】封止手段が動作位置にある、閉鎖構成にある従来技術の
図2および
図3の温度駆動式バルブアセンブリの縦断面図である。
【
図5】閉鎖構成にある本発明に係る温度駆動式バルブアセンブリの一実施形態の縦断面図である。
【
図6】封止手段がその取付位置にある、開放構成にある本発明に係る
図5の温度駆動式バルブアセンブリの縦断面図である。
【
図7】封止手段が動作位置にある、開放構成にある本発明に係る
図5および
図6の温度駆動式バルブアセンブリの縦断面図である。
【
図8】本発明に係る温度駆動式バルブアセンブリの一実施形態のチャネル部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1
図1は、ガス圧力ばねの長手方向軸Lに沿って、本発明に係るガス圧力ばね1の一実施形態を縦断面図に示す。ガス圧力ばねは、ハウジング2と、ガス圧力ばね1の長手方向軸Lに沿ってハウジング2内で摺動可能なピストン3とを備える。ガス圧力ばね1は、2つのチャンバ4,5と、バルブ本体7を含む温度駆動式バルブアセンブリ6とをさらに備える。温度駆動式バルブアセンブリ6の温度に応じて、温度駆動式バルブアセンブリ6が、主チャンバ4と2次チャンバ5との間の流体伝導接続を確立するか否かが決まる。
【0047】
閉鎖温度範囲内で、例えば4℃を上回る温度で、バルブアセンブリは閉じ、ガス圧力ばね1は、主チャンバ4のみを使用して動作する。このときガス圧力ばね1は、主チャンバ4内に収容されたガス質量およびガス体積に基づいて、力の伝達を提供する。
【0048】
開放温度範囲内で、例えば4℃を下回ると、温度駆動式バルブアセンブリ6は開き、その結果ガス圧力ばね1は、両方のチャンバ4,5を使用し、両方のチャンバ4,5の全体的なガス体積に基づいて、力の伝達を提供する。したがって、主チャンバ4および2次チャンバ5の接続は、開放温度範囲内で増大された力の伝達を提供する。
【0049】
その結果、このようにして、ガス圧力ばねの力の温度依存性を低減でき、その結果低い温度の場合、十分に大きい力が提供され、高い温度の場合、過度の力は得られない。
【0050】
図2
図2~
図4は、それぞれバルブアセンブリ6の切換手段8の移動軸Aに沿って、従来技術の周知の温度駆動式バルブアセンブリ6を縦断面図に示す。バルブアセンブリ6は、切換手段8、例えばバイメタルばねを備え、切換手段8は、開放温度では開放構成に、閉鎖温度では閉鎖構成に、移動軸Aに沿って温度駆動式に少なくとも部分的に可動である。
【0051】
ガス圧力ばね1内に取り付けられた状態で、移動軸Aは、例えば、ガス圧力ばね1の長手方向軸Lと一致でき、バルブアセンブリ6は、例えば、この図によれば例えばバルブアセンブリ6の下に位置する主チャンバ4と、この図によれば例えばバルブアセンブリ6の上に位置する2次チャンバ5との間に配置できる。
【0052】
図2に示す閉鎖構成で、切換手段8は、バルブアセンブリ6のチャネル部13の貫通開口16の周りに配置された封止手段10、例えばOリング、および例えば移動軸Aに直交するチャネル部のチャネル壁9の封止面9Aと、封止式に協働する。したがって、閉鎖構成で、封止手段は、貫通開口16を液密に閉鎖するシールを形成し、例えばガス圧力ばね1の主チャンバ4を2次チャンバ5から切り離す。
【0053】
図3
図3は、切換手段8がその開放構成にある、
図2の温度駆動式バルブアセンブリ6を示す。例えば、切換温度(例えば、4℃)を下回ると、切換手段8は、移動軸Aに沿って封止面9Aから離れる方へ部分的に動き、例えば、バイメタルばねが、封止面9Aから離れる方へ湾曲し、それによってその取付位置のままの封止手段10と切換手段8との間に延びる1次流体経路11を開放する。
【0054】
1次流体経路11は、例えば、複数の入口12を通ってバルブアセンブリ6につながり、貫通開口16およびチャネル部13を通って、例えばバルブアセンブリ6から移動軸Aに沿ってバルブアセンブリ6の反対側につながり、例えばガス圧力ばね1の主チャンバ4を2次チャンバ5に接続する。
【0055】
図4
図4もまた、
図3と同様に、切換手段8がその開放構成にあるバルブアセンブリ6を示し、切換手段8は、閉鎖構成と比較すると、移動軸Aに沿って封止面9Aから離れる方へ部分的に動いている。しかし、封止手段10は、その取付位置から、切換手段8とともに移動軸Aに沿って封止面9Aから隔置された動作位置へ動いており、引き続き切換手段8に封止式に当接し、その結果入口12からチャネル部13への流体の流れは可能でない。その結果、切換手段8がその開放構成にある場合でも、バルブアセンブリ6は流体に対して閉鎖される。
【0056】
図5
図5~
図7は、それぞれバルブアセンブリの切換手段8の移動軸Aに沿って、本発明に係る温度駆動式バルブアセンブリ6の一実施形態を縦断面図に示す。
【0057】
バルブアセンブリ6は、開放温度における開放構成および閉鎖温度における閉鎖構成を有する切換手段8、例えばバイメタルばねを備え、切換手段8は、移動軸Aに沿って温度駆動式に少なくとも部分的に可動である。
【0058】
ガス圧力ばね1内に設置された状態で、移動軸Aは、例えば、ガス圧力ばね1の長手方向軸Lと一致でき、バルブアセンブリ6は、例えば、
図5では例えばバルブアセンブリ6の下に位置する主チャンバ4と、
図5では例えばバルブアセンブリ6の上に位置する2次チャンバ5との間に配置できる。
【0059】
図5に示す閉鎖構成で、切換手段8は、バルブアセンブリ6のチャネル部13の貫通開口16の周りに配置された封止手段10、例えばOリング、および例えば移動軸Aに直交するチャネル部13のチャネル壁9の封止面9Aと、封止式に協働する。したがって、閉鎖構成で、封止手段は、貫通開口16を液密に閉鎖するシールを形成し、シールは例えば、ガス圧力ばね1の主チャンバ4を2次チャンバ5から分離する。
【0060】
特に円筒形でかつ移動軸Aに同軸であるチャネル壁9、例えばチャネル壁9の外面9Bで、移動軸Aに沿って流体輸送のための凹部14、例えば溝が提供される。凹部は、例えば、移動軸Aに対してその取付位置で、径方向に完全に封止手段10内に位置する。よって凹部14は、図示の閉鎖構成でバルブアセンブリ6の締まり具合に影響しない。
【0061】
図6
図6は、切換手段8がその開放構成にある、
図5の温度駆動式バルブアセンブリ6を示す。例えば、切換温度(例えば、4℃)を下回ると、切換手段8は、移動軸Aに沿って封止面9Aから離れる方へ部分的に動き、例えば、バイメタルばねが、封止面9Aから離れる方へ湾曲し、それによってその取付位置のままの封止手段10と切換手段8との間を通る1次流体経路11を開放する。
【0062】
1次流体経路11は、例えば、複数の入口12を通ってバルブアセンブリ6につながり、貫通開口16およびチャネル部13を通って、例えばバルブアセンブリ6から移動軸Aに沿ってバルブアセンブリ6の反対側につながり、例えばガス圧力ばね1の主チャンバ4を2次チャンバ5に接続する。
【0063】
凹部14は、バルブアセンブリ6のこの構成における流動性能に実質的な影響を与えない。
【0064】
図7
図7もまた、
図6と同様に、切換手段8がその開放構成にあるバルブアセンブリ6を示し、切換手段8は、閉鎖構成と比較すると、移動軸Aに沿って封止面9Aから離れる側へ部分的に動いている。しかし、封止手段10は、その取付位置から、切換手段8とともに移動軸Aに沿って封止面9Aから隔置された動作位置へ動いており、引き続き切換手段8に封止式に当接し、その結果
図4に示す従来技術によるバルブアセンブリ6の類似の構成のように、1次流体経路11を通って切換手段8と封止手段10との間を通過する流体の流れは可能でない。
【0065】
しかし、従来技術とは異なり、
図7に示す本発明に係るバルブアセンブリ6の構成では、凹部14を通る2次流体経路15が開放される。2次流体経路15は、例えば、1次流体経路11のように、複数の入口12を通ってバルブアセンブリ6につながり、貫通開口16およびチャネル部13を通って、例えばバルブアセンブリ6から移動軸Aに沿ってバルブアセンブリ6の反対側につながり、例えばガス圧力ばね1の主チャンバ4を2次チャンバ5に接続する。
【0066】
2次流体経路15は、好ましくは、切換手段8が開放構成にあり、かつ封止手段10が切換手段8とともに移動軸Aに沿ってその取付位置から動作位置へ動いたときのみ開き、したがって特に1次流体経路11は閉じたままである。
【0067】
図8
図8は、本発明に係る温度駆動式バルブアセンブリ6の一実施形態のチャネル壁9の断面図を示す。バルブアセンブリ6の凹部14は、例えば、バルブアセンブリ6の切換手段8の移動軸Aに沿った流体輸送のための溝であり、凹部14は、例えば、移動軸に同軸のチャネル壁9の円筒形の外面9Bに位置する。
【0068】
凹部14は、移動軸Aの周りに円周方向の幅Bを有し、例えば曲率半径rを有する円形の円筒形状を有する。外面9Bの外側半径Rは、凹部14の幅Bより大きく、例えば幅Bより1.5倍~2倍大きい。この結果、凹部14が、外面9Bの周りに円周方向に延びるバルブアセンブリ6の封止手段(図示せず)の固定に影響しないことが確保される。
【符号の説明】
【0069】
1 ガス圧力ばね
2 ハウジング
3 ピストン
4 主チャンバ
5 2次チャンバ
6 バルブアセンブリ
7 バルブ本体
8 切換手段
9 チャネル壁
9A 封止面
9B 外面
10 封止手段
11 1次流体経路
12 入口
13 チャネル部
14 凹部
15 2次流体経路
16 貫通開口
A 移動軸
B 幅
L 長手方向軸
r 曲率半径
R 外側半径