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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】クロマトグラフィ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/86 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021577099
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020066646
(87)【国際公開番号】W WO2020260074
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】1909275.8
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】アナ・ステルン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-317198(JP,A)
【文献】特開2008-241274(JP,A)
【文献】特開2016-133353(JP,A)
【文献】特開昭54-006597(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029790(WO,A1)
【文献】特開昭61-178923(JP,A)
【文献】特開2016-003954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0266708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/80,30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成されるクロマトグラフィ装置(400)によって実施されるコンピュータ実装方法(600)であって、
前記クロマトグラフィ装置のカラム(441)についての基準データを得るステップ(610)であって、前記基準データが1組の分子サイズについての溶出特性を示す、ステップ(610)と、
溶出進行度および対応する前記クロマトグラフィ装置の溶出液中の分子の濃度を示す定量的尺度を得るステップ(620)と、
前記溶出液中の前記分子の分子サイズを示すサイズ尺度を推定するステップ(630)と、
前記定量的尺度および前記サイズ尺度を示す表現(300)をレンダリングするステップ(640)と、
前記クロマトグラフィ装置のユーザに前記表現を表示するためのディスプレイを制御するステップ(650)と
を含み、
前記分子サイズが、前記基準データに含まれる予め規定された関係式、および前記溶出進行度を使用して推定され、
前記予め規定された関係式が曲線を示しており、前記予め規定された関係式が、ゲル相分配係数(Kav)および対応する分子サイズを含む値の対の曲線の当てはめを実施することによって得られる、コンピュータ実装方法(600)。
【請求項2】
前記溶出進行度が溶出量(Ve)であり、前記ゲル相分配係数(Kav)が前記カラムの総体積(Vt)、前記溶出量(Ve)、およびカラムの空隙量(V0)に依存する、請求項に記載の方法(600)。
【請求項3】
前記ゲル相分配係数(Kav)が、関係式
【数1】
によって与えられる、請求項に記載の方法(600)。
【請求項4】
前記予め規定された関係式が多項式である、請求項からのいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項5】
前記定量的尺度が前記溶出液の紫外光吸収である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項6】
前記溶出進行度が溶出プロセス運転時間または溶出量を示す、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項7】
前記表現(300)が、第1の軸上に提示される前記定量的尺度、および第2の軸上の前記分子サイズを有する図である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項8】
前記分子サイズ、および分子サイズの1つまたは複数の予め規定された間隔を使用して、溶出液の分別を活動化または非活動化するステップをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項9】
溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成されるクロマトグラフィ装置(400)であって、
カラム(441)と、
ディスプレイ(411)と、
回路を備える制御ユニット(410)であって、前記回路が
処理回路(412)、および
メモリ(415)を備え、前記メモリ(415)が前記処理回路(412)により実行可能な命令を含み、前記命令が前記処理回路によって実行されるときに、前記クロマトグラフィ装置が、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、制御ユニット(410)と
を備えるクロマトグラフィ装置(400)。
【請求項10】
コンピュータ実行可能な命令が制御ユニット(410)中に含まれる処理回路上で実行されるときに、前記制御ユニット(410)に請求項1からに記載の方法(600)のいずれかを実施させるコンピュータ実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項11】
求項1に記載のコンピュータプログラムを有する、コンピュータ可読記憶媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィ装置を制御するための方法に関する。本発明は、方法を実施するクロマトグラフィ装置にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィは、化学的混合物または化学的試料を分析し調製するためのよく知られているプロセスである。試料は、典型的には、緩衝液組成または樹脂と呼ばれる流体中で懸濁する場合がある。混合物の様々な試料成分は、クロマトグラフィカラムを異なる速度で沈下し、それらを分離させる。このプロセスは、サイズ排除クロマトグラフィと呼ばれることがある。
【0003】
サイズ排除クロマトグラフィでは、大きい分子は、樹脂中の細孔に入らず、したがって、少量に到達するため、最初に溶出する。小さい分子は、細孔の中へと拡散し、したがって、カラムを通過するにつれ大量に到達する。これはたとえば、https://en.wikipedia.org/wiki/Size-exclusion_chromatographyでさらに説明される。
【0004】
この分離を使用して、試料成分を分別ステップ中で分離することができ、分別ステップでは、溶出と呼ばれるプロセスにおいて、たとえばクロマトグラフィ装置の出口弁によって、異なる1つまたは複数の分別容器に移動相を導くことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/Size-exclusion_chromatography
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の解決策での問題は、異なる容器中の分子の分子量を推定するため、ユーザは、溶出後および分別後分析を実施するように強いられ、ここで、クロマトグラフィプロセス時間または溶出量が分析されて、異なる容器中の分子の分子量を推定することである。そのような溶出後分析を実施するのは面倒であって時間がかかる操作である。
【0007】
従来の解決策でのさらなる問題は、それらの推定される分子量に応じて、分子をそれぞれ集めるまたは廃棄するために、分別を活動化または非活動化することが不可能であることである。
【0008】
したがって、クロマトグラフィ装置で分別を制御するための改善した方法が必要である。
【0009】
本発明の実施形態の目的は、上で述べた欠点および問題を低減または解決する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上のおよびさらなる目的が本明細書に記載される主題によって実現される。本発明のさらなり有利な実装形態が、本明細書でさらに規定される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、上で言及した目的および他の目的は、溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成されるクロマトグラフィ装置によって実施されるコンピュータ実装方法によって実現され、方法は、クロマトグラフィ装置のクロマトグラフィカラムについての基準データを得るステップであって、基準データが1組の分子サイズについての溶出特性を示す、ステップと、溶出進行度および対応するクロマトグラフィ装置の溶出液中の分子の濃度を示す定量的尺度を得るステップと、溶出液中の分子の分子サイズを示すサイズ尺度を推定するステップと、定量的尺度およびサイズ尺度を示す表現をレンダリングするステップと、クロマトグラフィ装置のユーザに表現を表示するためのディスプレイを制御するステップとを含む。
【0012】
第1の態様による第1の実施形態では、分子サイズは、基準データに含まれる予め規定された関係式と溶出進行度を使用して推定される。
【0013】
第1の実施形態による第2の実施形態では、予め規定された関係式が曲線を示しており、予め規定された関係式は、ゲル相分配係数および対応する分子サイズを含む値の対の曲線の当てはめを実施することによって得られる。
【0014】
第2の実施形態による第3の実施形態では、溶出進行度が溶出量であり、ゲル相分配係数がカラムの総体積、溶出量、およびカラムの空隙量に依存する。
【0015】
第3の実施形態による第4の実施形態では、ゲル相分配係数Kavが、関係式Kav=((Ve-V0))/((Vt-V0))によって与えられ、Veが溶出量であり、V0がカラムの空隙量であり、Veが溶出量である。
【0016】
第1から第4の実施形態のいずれかによる第5の実施形態では、予め規定された関係式が多項式である。
【0017】
第1の態様または前の実施形態のいずれかによる第6の実施形態では、定量的尺度は、溶出液の紫外光吸収を示す。
【0018】
第1の態様または前の実施形態のいずれかによる第7の実施形態では、溶出進行度は、溶出プロセス運転時間または溶出量を示す。
【0019】
第1の態様または前の実施形態のいずれかによる第8の実施形態では、表現は、第1の軸上に提示される定量的尺度、および第2の軸上の分子量の推定を有する図表である。
【0020】
第1の態様または前の実施形態のいずれかによる第9の実施形態では、方法が、分子サイズ、および分子サイズの1つまたは複数の予め規定された間隔を使用して、分別を活動化または非活動化するステップをさらに含む。
【0021】
第1の態様の少なくとも1つの利点は、溶出液中の分子の分子量および/または分子サイズを動的に判定し、それによって、分別後分析を実施するという面倒、複雑で時間がかかる操作を回避できることである。さらなる利点は、実時間でユーザに分子量および/または分子サイズの表現を動的にレンダリングおよび提示することにより、クロマトグラフィプロセスの期間を短くすることができ、それによって、一度所望の分子量および/または分子サイズを備える溶出液が取り出されたらクロマトグラフィプロセスをユーザに終了させることが可能になることである。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、上で言及した目的および他の目的は、溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成されるクロマトグラフィ装置によって実現され、クロマトグラフィ装置は、カラム、ディスプレイ、および回路を備える制御ユニットを備える。回路が処理回路およびメモリを備え、前記メモリが前記処理回路が実行可能な命令を含み、それによって、前記クロマトグラフィ装置は、第1の態様による方法を実施するように構成される。
【0023】
本発明の第2の態様の利点は、少なくとも、本発明の第1の態様についてと同じである。
【0024】
本発明の実施形態のより完全な理解は、1つまたは複数の実施形態の以下の詳細な記載を考慮することによって、そのさらなる利点の実現とともに、当業者にもたらされることになる。図面のうちの1つまたは複数で図示される同様の要素を識別するために、同様の参照番号が使用されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術のクロマトグラフィ装置によってレンダリングおよび/または表示される例を示す図である。
図2A】従来の図の例を示す図である。
図2B】従来の図の例を示す図である。
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態による図である。
図4】本開示の1つまたは複数の実施形態によるクロマトグラフィ装置の図である。
図5】本発明の1つまたは複数の実施形態による制御ユニットの図である。
図6】本開示の1つまたは複数の実施形態による方法のフローチャートである。
図7】本開示の1つまたは複数の実施形態による予め規定された関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態のより完全な理解は、1つまたは複数の実施形態の以下の詳細な記載を考慮することによって、そのさらなる利点の実現とともに、当業者にもたらされることになる。図面のうちの1つまたは複数で図示される同様の要素を識別するために、同様の参照番号が使用されることを理解されたい。
【0027】
本記載および対応する請求項中の「または(or)」は、「および」と「または」をカバーする数学的ORと理解するべきであり、XOR(排他的OR)と理解するべきでない。本開示および請求項中の不定冠詞「a」は、「1つ」に限定されず、「1つまたは複数」、すなわち複数と理解することもできる。
【0028】
本開示では、流体を保持するのに好適な入れ物を意味する、容器または貯蔵器に対して互換的に言及が行われることになる。
【0029】
本開示では、処理回路と処理手段に対して互換的に言及が行われることになる。
【0030】
本開示では、「サイズ尺度」という用語は、分子のボリュームおよび/または分子量を示す、たとえば、溶離液中に含まれてクロマトグラフィプロセスで処理される分子の、分子のボリュームおよび/または分子量を示す尺度である。そのようなサイズ尺度の例は、推定分子量および/または推定分子サイズである。
【0031】
図1は、従来技術のクロマトグラフィ装置400によってレンダリングおよび/または表示される図を示す。図は、溶出液中の分子の濃度を示す定量的尺度を示す垂直軸110を含む。たとえば、クロマトグラフィ装置400のクロマトグラフィカラムから出てくる、溶出液の紫外線(UV)光吸収の尺度。言い換えると、定量的尺度は、たとえば、吸収された光たとえばUV光などを測定するセンサといったセンサによって登録される、溶出液に含まれる分子の濃度を示す。図は、クロマトグラフィおよび/または分別プロセスの進行度を示す水平軸120をさらに含む。進行度の例は、クロマトグラフィプロセス時間または溶出量であってよい。図1からわかるように、定量的尺度の3つのピーク131、132、133を登録することができる。各ピークは、典型的には、特定の分子量および分子サイズを有する特定の分子に対応する。
【0032】
しかし、定量的尺度がクロマトグラフィ装置400のユーザに可視化/表示/提示される場合であってさえ、ユーザは、ピーク131、132、133のいずれかによって表される分子の分子量および/または分子サイズを評価する手段を持たず、プロセス時間または溶出量に依拠することが必要である。言い換えると、ユーザは、たとえば、ピーク131、132、133に基づいて、手動で分別を制御することができるが、ピーク131、132、133のいずれかによって表される分子の分子量および/または分子サイズを識別するために、分別後分析に依拠しなければならないことになる。
【0033】
一例では、ユーザは、サイズ排除クロマトグラフィを使用して特定の分子量を有するタンパク質を取り出すことに関与する。ユーザは、次いで、クロマトグラフィおよび分別プロセス、またはクロマトグラフィランを完了させなければならず、次いで、求められるタンパク質を識別するための分別後分析を実施することになる。分別後分析は、典型的には、較正曲線を得ること、および、クロマトグラフィプロセス時間または溶出量を分子量および/または分子サイズに変換するための式を適用することによって実施される。
【0034】
分別後分析を実施するのは面倒、複雑で時間がかかる操作であり、溶出液中の分子の分子量および/または分子サイズを判定できる前にクロマトグラフィプロセスが完了する必要がさらにある。
【0035】
図2Aは、従来の図の例を示す。図1に関して記載されるように、図は、垂直軸110および水平軸120を有する。さらに、図は、表示ボックスを備え、表示曲線220上に置かれるマーカ210の定量的尺度値Y(垂直軸)および進行度値X(水平軸)を詳述する。曲線は、定量的尺度値対対応する進行度を示す。この例では、定量的尺度Yは、吸収単位mAUで与えられる。進行度値Xは、クロマトグラフィ溶出量Veで与えられる。
【0036】
図2Bは、従来の図の例を示す。図1に関して記載されるように、図は、垂直軸110および水平軸120を有する。さらに、図は、表示ボックスを備え、表示曲線220上に置かれるマーカ210の定量的尺度値Y(垂直軸)および進行度値X(水平軸)を詳述する。曲線は、定量的尺度値対対応する進行度を示す。この例では、定量的尺度Yは、吸収単位mAUで与えられる。進行度値Xは、クロマトグラフィ処理時間Teで与えられる。
【0037】
図3は、本開示の1つまたは複数の実施形態による図300を示す。本開示の方法では、1組の分子サイズについての溶出特性を示す基準データが使用されて、クロマトグラフィ装置400のクロマトグラフィプロセス時間または溶出量を使用して、推定分子量および/または推定分子サイズなどといったサイズ尺度を動的に判定する。
【0038】
次いで、表現がレンダリングおよび/または表示される。表現は、典型的には、図300中で、定量的尺度および/またはサイズ尺度を示す。
【0039】
図300は、溶出液中の分子の濃度を示す定量的尺度を示す垂直軸310を含む。たとえば、図1図2に関して記載されるものと同様である。図は、サイズ尺度を示す水平軸320をさらに含む。この例では、原子質量単位ダルトンまたはキロダルトンkDaによって表される。
【0040】
これは、サイズ排除クロマトグラフィプロセスを高速化し、溶出液に含まれる分子のサイズおよび/または重さについての情報をユーザに動的に提供することによって、プロセスをより効果的にするという利点を有する。
【0041】
図4は、本開示の1つまたは複数の実施形態によるクロマトグラフィ装置400を示す。クロマトグラフィ装置400は、典型的には、少なくとも1つの入口455を備えることができる。入口は、任意選択で、たとえば溶離液などといった流体を保持するように構成される貯蔵器451に結合することができる。入口455は、たとえば、チューブまたはホースなどといった管状要素として実装することができる。入口455は、カラム441に結合するように構成することができる。カラム441は、クロマトグラフィ装置400中に含むことができ、またはクロマトグラフィ装置400の外に配置することができる。
【0042】
クロマトグラフィ装置400は、たとえばプロセッサおよびメモリといった回路を備える制御ユニット410をさらに備えることができる。メモリは、処理回路によって実行可能な命令を含むことができ、それによって、前記制御ユニット410および/またはクロマトグラフィ装置が、本明細書に記載されるステップまたは方法のいずれかを実施するよう動作可能である。制御ユニット410は、図5に関してさらに記載される。
【0043】
クロマトグラフィ装置400は、カラム441の流体出口に結合され、UVセンサ431、導電率センサ432、および出口弁420のいずれかのうちの選択物に結合される、スプリッタ470を任意選択で備えることができる。スプリッタ470は、カラム441から受け取った流体を、UVセンサ431、導電率センサ432、および出口弁420のいずれかに向けるように構成することができる。任意選択でスプリッタ470は、制御ユニットに通信可能に結合して、制御ユニット410からの1つまたは複数の制御信号に応じて、UVセンサ431、導電率センサ432、および出口弁420のいずれかへの流体の結合を実施することができる。
【0044】
UVセンサ431は、制御ユニット410に通信可能に結合して、スプリッタ470によって提供される流体のUV光吸収などといった定量的尺度を測定するために構成することができる。クロマトグラフィ装置400は、制御ユニット410に通信可能に結合されて、スプリッタ470によって提供される流体のたとえば導電率といった定量的尺度を測定するために構成される導電率センサ432をさらに備えることができる。UVセンサ431および/または導電率センサ432は、制御ユニット410に、測定データを含む制御信号として測定される定量的尺度を提供するようにさらに構成することができる。
【0045】
クロマトグラフィ装置400は、スプリッタ470に結合される出口弁420をさらに備えることができる。出口弁420は、1つまたは複数の出口または出口ポート421~423を有することができ、たとえば、制御ユニット410から受け取った制御信号に応じて、1つまたは複数の出口421~423にスプリッタ470によって提供される流体を提供するように構成される。言い換えると、溶出液の分別を実施する。
【0046】
図5は、本発明の1つまたは複数の実施形態による制御ユニット410を示す。制御ユニット410は、たとえば、電子制御ユニット、サーバ、オンボードコンピュータ、固定計算デバイス、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、腕時計型コンピュータ、スマートウォッチ、スマートフォン、またはスマートTVの形であってよい。制御ユニット410は、有線またはワイヤレス通信用に構成される送受信器404に通信可能に結合される処理回路412を備えることができる。制御ユニット410は、少なくとも1つの任意選択のアンテナをさらに備えることができる(図示せず)。アンテナは、送受信器404に結合することができ、WiFi、Bluetooth、3G、4G、5Gなどといった通信ネットワーク中の有線またはワイヤレス信号を送信および/または放出および/または受信するように構成される。一例では、処理回路412は、処理回路および/または中央処理装置および/またはプロセッサモジュールおよび/または互いに協働するように構成される複数のプロセッサのうちの選択物のいずれかであってよい。さらに、制御ユニット410は、メモリ415をさらに備えることができる。メモリ415は、たとえばハードRAM、ディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、フラッシュドライブ、または他の取外し可能もしくは固定媒体ドライブ、または当技術分野で知られている任意の他の好適なメモリの選択物を備えることができる。メモリ415は、処理回路によって実行可能な命令を含み、本明細書に記載されるステップまたは方法のいずれかを実施することができる。処理回路412は、送受信器404、メモリ415、pHセンサ431、導電率センサ432、出口弁420、およびスプリッタ470のいずれかのうちの選択物に通信可能に結合することができる。制御ユニット410は、上述のユニットもしくは外部ノードのいずれかへの制御信号を直接送受信する、または、有線および/もしくはワイヤレス通信ネットワークを介して制御信号を送受信するように構成することができる。
【0047】
有線/ワイヤレス送受信器404および/または有線/ワイヤレス通信ネットワークアダプタは、処理回路412との間、他の外部ノードとの間の信号として、データ値またはパラメータを送受信するように構成することができる。たとえば、測定された定量的尺度。
【0048】
一実施形態では、送受信器404は、外部ノードと直接またはワイヤレス通信ネットワークを介して通信する。
【0049】
1つまたは複数の実施形態では、制御ユニット410は、ユーザからの入力または指示を受け取り、処理回路412にユーザ入力または指示を示すユーザ入力信号を送信するように構成される入力デバイス417をさらに備えることができる。
【0050】
1つまたは複数の実施形態では、制御ユニット410は、処理回路412から、テキストまたはグラフィカルユーザ入力オブジェクトなどといったレンダリングオブジェクトを示す表示信号を受け取り、テキストまたはグラフィカルユーザ入力オブジェクトなどといったオブジェクトとして受信信号を表示するように構成されるディスプレイ418をさらに備えることができる。
【0051】
一実施形態では、ディスプレイ418は、ユーザ入力デバイス417と一体化され、処理回路412から、テキストまたはグラフィカルユーザ入力オブジェクトなどといったレンダリングオブジェクトを示す表示信号を受け取り、テキストまたはグラフィカルユーザ入力オブジェクトなどといったオブジェクトとして受信信号を表示するように構成される、および/または、ユーザからの入力または指示を受け取り、処理回路412にユーザ入力または指示を示すユーザ入力信号を送信するように構成される。
【0052】
さらなる実施形態では、制御ユニット410は、クロマトグラフィ装置400に関係する物理的特性を受信および/または獲得および/または測定し、処理回路412に物理的特性を示す1つまたは複数のセンサ信号を送信するように構成される1つまたは複数の追加センサ(図示せず)をさらに備える、および/または、1つまたは複数の追加センサに結合することができる。たとえば、温度センサが測定した周囲大気温度。
【0053】
1つまたは複数の実施形態では、処理回路412は、入力デバイス417および/またはディスプレイ418および/または追加センサおよび/または図4に関係して記載されるユニットのいずれかと、通信可能にさらに結合される。
【0054】
一実施形態では、クロマトグラフィ装置400が提供され、溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成される。クロマトグラフィ装置400は、カラム441、ディスプレイ418、および回路を備える制御ユニット410を備え、回路は、処理回路412およびメモリ415を備える。前記メモリ415は、前記処理回路412が実行可能な命令を含むまたは含有し、それによって、前記クロマトグラフィ装置400が、本明細書に記載される方法ステップのいずれかを実施するように構成される。
【0055】
図6は、本開示の1つまたは複数の実施形態による方法のフローチャートを示す。クロマトグラフィ装置400によって実施されるコンピュータ実装方法600は、溶離液から様々なサイズを有する分子を分離するように構成された。方法は、以下を含む。
【0056】
ステップ610:クロマトグラフィ装置のクロマトグラフィカラムについての基準データを得るステップであって、基準データが1組の分子およびそれぞれの分子サイズについての溶出特性を示す、ステップ。1組の分子サイズについての溶出特性は、たとえば、特定の分子サイズの値の集合、ならびに、試料がカラム441に導入されるときから、特定の分子サイズを有する所望の分子が溶出液中に現れるおよび/またはクロマトグラフィ装置400のカラムから出るときまでのクロマトグラフィプロセス進行時間または運転時間を含むことができる。1組の分子サイズについての溶出特性は、たとえば、試料がカラム441に導入されるときから、特定の分子サイズを有する所望の分子が溶出液中に現れるおよび/またはクロマトグラフィ装置400のカラムから出るときまでに測定されるたとえば溶出量といったクロマトグラフィプロセス進行量をさらに含むことができる。
【0057】
一実施形態では、基準データは、メモリ、たとえば制御ユニットのメモリ415から基準データを取り出すことによって得られる。一実施形態では、基準データは、サーバまたは仮想サーバまたはクラウドサーバなどといった別のノードからの制御信号を受信することによって得られる。制御信号は、たとえば、通信ネットワークを介して送受信することができる。
【0058】
一実施形態では、基準データは、分子識別情報、分子量、分子サイズ、量、クロマトグラフィプロセス時間、溶出量のうちのいずれかの選択物の集合を含む。基準データは、クロマトグラフィ装置400によって処理される参照分子についての、分子識別情報、分子量、分子サイズ、量、クロマトグラフィプロセス時間、溶出量のうちのいずれか1つを登録することによって得ることができる。
【0059】
一例では、参照分子は、知られている分子識別情報、知られている分子量、および知られている分子サイズを有する求められるタンパク質である。参照分子を含む溶液がクロマトグラフィ装置400によって処理され、クロマトグラフィプロセス時間および/または溶出量が、メモリ中、たとえば、制御ユニット410のメモリ中に記録および格納される。
【0060】
ステップ620:溶出進行度および対応するクロマトグラフィ装置の溶出液中の分子の濃度を示す定量的尺度を得るステップ。
【0061】
溶出進行度は、典型的には、たとえばクロマトグラフィ装置400を運転した経過時間であってよい。経過時間は、典型的には、たとえば図1に示されるように、試料がクロマトグラフィ装置400のカラムの中に最初に注入されたときからカウントされる。追加または代替として、溶出進行度は、典型的には、溶出量であってよい。溶出量は、典型的には、たとえば図1に示されるように、試料がクロマトグラフィ装置400のカラムの中に最初に注入された点から測定される。
【0062】
対応する定量的尺度は、典型的には溶出進行度とほぼ同時に登録され、こうして溶出進行度に対応する時点が得られる。
【0063】
追加または代替として、定量的尺度は、溶出液の紫外光吸収を示す。
【0064】
追加または代替として、溶出進行度は、溶出プロセス運転時間または溶出量を示す。
【0065】
ステップ630:溶出液中の分子の分子サイズを示すサイズ尺度を推定するステップ。
【0066】
一実施形態では、分子サイズは、基準データに含まれる予め規定された関係式を使用すること、および溶出進行度を使用することによって推定される。
【0067】
一実施形態では、予め規定された関係式は、曲線を示しまたは曲線を示しており、予め規定された関係式は、ゲル相分配係数Kavと対応する分子サイズを含む値の対の曲線の当てはめを実施することによって、すなわち曲線を得るために得られる。
【0068】
一実施形態では、図7に関係してさらに記載されるように、たとえば、y=k*x+mといった直線の式が値の対に当てはめられる。
【0069】
一実施形態では、溶出進行度が溶出量Veであり、ゲル相分配係数Kavがカラムの総体積Vt、溶出量Ve、およびカラムの空隙量V0に依存する。
【0070】
追加または代替として、ゲル相分配係数Kavが、関係式Kav=((Ve-V0))/((Vt-V0))によって与えられ、Veが溶出量であり、V0がカラムの空隙量であり、Veが溶出量である。
【0071】
追加または代替として、予め規定された関係式が多項式である。
【0072】
ステップ640:定量的尺度およびサイズ尺度を示す表現300をレンダリングするステップ。
【0073】
表現300は、図3に関係して記載されるような図を含むことができる。
【0074】
追加または代替として、表現300は、たとえば図3に関係して記載されるように、第1の軸上に提示される定量的尺度、および第2の軸上の分子サイズを有する図である。
【0075】
ステップ650:クロマトグラフィ装置のユーザに表現を表示するためのディスプレイを制御するステップ。
【0076】
一例では、クロマトグラフィ装置400のディスプレイ418は、処理回路からディスプレイ418に制御信号を送信することによって、表現300を表示するように制御される。
【0077】
一実施形態では、方法は、推定分子サイズ、および分子サイズの1つまたは複数の予め規定された間隔を使用して、分別を活動化または非活動化するステップをさらに含む。
【0078】
一例では、出口弁420が、たとえば、推定分子サイズおよび1つまたは複数の予め規定された間隔の分子サイズを使用して、制御ユニット410から受け取った制御信号に応答して、1つまたは複数の出口または出口ポート421~423へ溶離液を分配することによって、分別を活動化または非活動化する。
【0079】
図7は、本開示の1つまたは複数の実施形態による予め規定された関係を示す。図6に関係して前に記載したように、分子サイズは、基準データに含まれる予め規定された関係式を使用し、溶出進行度を使用することによって、推定することができる。溶出液中の分子の分子サイズを示すサイズ尺度は、この場合、予め規定された関係式を使用して推定することができる。
【0080】
図7では、線700の形で曲線が示される。ゲル相分配係数Kavと対応する分子サイズを含む値の対が、図中の拡大した黒点として示される。次いで線は、たとえば回帰または任意の他の好適な曲線当てはめ技法を使用して、値の対に曲線当てはめされる。
【0081】
値の対に曲線当てはめするため、多項式によって記載される曲線を代わりに使用できることが想定される。
【0082】
図7において、値の対に基づいた曲線当てはめを使用して、例示的な関係式y=0.3238x+0.9683が得られた。
【0083】
一実施形態では、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムは、コンピュータ実行可能な命令が制御ユニット410中に含まれる処理回路上で実行されると、制御ユニット410に本明細書に記載される方法ステップのいずれかを実施させるためのコンピュータ実行可能な命令を含む。
【0084】
一実施形態では、コンピュータプログラム製品が提供され、コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読記憶媒体を備え、コンピュータ可読記憶媒体は、その中に上で具体化されたコンピュータプログラムを有する。
【0085】
実施形態では、通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、グローバルシステムフォーモバイルネットワーク(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム、ロングタームエボリューション、高速ダウンリンクパケット接続(HSDPA)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多重アクセス(TDMA)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi-Fi、ボイスオーバインターネットプロトコル(VoIP)、LTEアドバンスト、IEEE802.16m、ワイヤレスマンアドバンスト、拡張高速パケットアクセス(HSPA+)、3GPPロングタームエボリューション(LTE)、モバイルWiMAX (IEEE 802.16e)、ウルトラモバイルブロードバンド(UMB)(以前は、エボリューションデータオプティマイズド(EV-DO)Rev.C)、シームレスハンドオフを用いる高速低遅延アクセス直交周波数分割多重(Flash-OFDM)、大容量空間分割多重アクセス(iBurst(登録商標))およびモバイルブロードバンドワイヤレスアクセス(MBWA)(IEEE 802.20)システム、高性能無線メトロポリタンエリアネットワーク(HIPERMAN)、ビーム分割多重アクセス(BDMA)、マイクロ波アクセスのための世界的相互運用法(Wi-MAX)および超音波通信などのうちの少なくとも1つを含むことができるがそれらに限定されない有線またはワイヤレス通信技術を使用して通信する。
【0086】
さらに、制御ユニット410が、本解決策を実施するために、たとえば、機能、手段、ユニット、要素などの形で必要な通信能力を備えることができることが当業者には理解される。他のそのような手段、ユニット、要素、および機能の例は、本解決策を実施するために互いに好適に配置される、プロセッサ、メモリ、バッファ、制御論理、エンコーダ、デコーダ、レートマッチャ、デレートマッチャ、マッピングユニット、マルチプライヤ、判定ユニット、選択ユニット、スイッチ、インターリーバ、デインターリーバ、モジュレータ、デモジュレータ、入力、出力、アンテナ、増幅器、受信器ユニット、送信器ユニット、DSP、MSD、TCMエンコーダ、TCMデコーダ、電力供給ユニット、電力供給器、通信インターフェース、通信プロトコルなどである。
【0087】
特に、本開示の処理回路および/または処理手段は、処理回路、プロセッサモジュールおよび互いに協働するように構成される複数のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、処理ユニット、処理回路、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、または命令を解釈して実行できる他の処理論理のうちの1つまたは複数のインスタンスを備えることができる。「処理回路」および/または「処理手段」という表現は、したがって、たとえば上で言及したもののうちのいずれか、いくつか、または全部などといった複数の処理回路を備える処理回路を表すことができる。処理手段は、データのバッファ機能、およびコール処理制御、ユーザインターフェース制御などといったデバイス制御機能を含む、データの入力、出力、および処理のためのデータ処理機能をさらに実施することができる。
【0088】
最後に、本発明は上で記載した実施形態に限定されず、添付する独立請求項の範囲内のすべての実施形態にやはり関連し、すべての実施形態を組み込むことを理解されたい。
【符号の説明】
【0089】
110 垂直軸
120 水平軸
131 ピーク
132 ピーク
133 ピーク
210 マーカ
220 表示曲線
300 表現
310 垂直軸
320 水平軸
400 クロマトグラフィ装置
404 送受信器
410 制御ユニット
412 処理回路
415 メモリ
417 入力デバイス
418 ディスプレイ
420 出口弁
421 出口、出口ポート
422 出口、出口ポート
423 出口、出口ポート
431 UVセンサ、pHセンサ
432 導電率センサ
441 カラム
451 貯蔵器
455 入口
470 スプリッタ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7