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特許7539950酸性/アニオン性抗菌および殺ウイルス組成物ならびにその使用
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  • 特許-酸性/アニオン性抗菌および殺ウイルス組成物ならびにその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】酸性/アニオン性抗菌および殺ウイルス組成物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/30 20060101AFI20240819BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20240819BHJP
   A01N 41/04 20060101ALI20240819BHJP
   A01N 59/02 20060101ALI20240819BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240819BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A01N25/30
A01N37/36
A01N41/04 Z
A01N59/02 Z
A01P1/00
C11D1/22
C11D1/66
C11D3/20
C11D3/34
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151041
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2020517293の分割
【原出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2022173333
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】62/563,461
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンジョーン リー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ディー.マクシェリー
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー ファウバッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケイトリン レイク
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ヒンリックス
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ルエットク
(72)【発明者】
【氏名】リチャード スタアブ
(72)【発明者】
【氏名】デリック アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディー ロー
(72)【発明者】
【氏名】エリック オルソン
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02843034(EP,A1)
【文献】特開平09-067599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.5未満のpKaを有する少なくとも1つの強酸であって、ただし、前記強酸は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を包含しない、強酸と、
少なくとも一つの弱酸と、
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を含む少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
水と、を含む、すすぎなし抗菌組成物であって、
前記組成物が、不燃性である酸性pHを有する希釈可能な液体濃縮物であり、
前記少なくとも1つの強酸は、メタンスルホン酸又は重硫酸ナトリウムを含み、
前記少なくとも一つの弱酸は、乳酸又はクエン酸を含み、
前記組成物の使用溶液が、2~4のpHを有する、組成物。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、EO/POブロックコポリマーを有するアルコキシル化界面活性剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアニオン性界面活性剤が、0.1重量%~38重量%を構成し、1重量%~38重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分と、水を含む残部と、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弱酸が、0.1重量%~40重量%を構成し、前記少なくとも1つの強酸が、0.1重量%~6重量%を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の0.1重量%~38重量%を構成する非イオン性界面活性剤をさらに含み、および/または前記少なくとも1つのアニオン性界面活性剤が、0.2重量%~50重量%を構成し、任意に、1重量%~75重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分と、水を含む残部とをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記液体濃縮物が、拭き取り基材上に飽和している、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
抗菌組成物を使用する方法であって、
請求項1~7のいずれか一項に記載のすすぎなし抗菌組成物の使用溶液を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、
前記方法が、少なくとも3対数の微生物減少を達成する、方法。
【請求項9】
前記接触させることが、拭き取り、ディッピング、浸漬、または噴霧によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面が、硬質表面、予めクリーニングされた硬質表面、ノロウイルスで汚染された表面、バイオフィルムで汚染された表面、および/またはヒトもしくは哺乳動物の組織である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
接触させることが、5分未満でノロウイルスの完全な死滅を提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮物が、1/8オンス/ガロン~2オンス/ガロンの割合で希釈されて、前記使用溶液を形成する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物の適用が、個人用保護具の使用を必要としない、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
センサーおよび/またはインジケータが、前記組成物が殺生物効力を失う溶液のpH、使用溶液中のアニオン性界面活性剤の濃度、蛍光、および/また伝導率のうちの少なくとも1つを測定および検出するために使用される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記接触させる工程が、40°F~160°Fの水性使用温度で行われる、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの強酸および少なくとも1つの弱酸を含む、5ppm~10,000ppmの酸であって、ただし、前記強酸は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を包含しない、酸と、
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を含む少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
非イオン性界面活性剤と、
水と、を含む、すすぎなし抗菌組成物であって、
前記直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、10ppm~1,000ppmの量で存在し、
前記組成物が、不燃性の即時使用可能な組成物であり、
前記少なくとも1つの強酸は、メタンスルホン酸又は重硫酸ナトリウムを含み、
前記少なくとも一つの弱酸は、乳酸又はクエン酸を含み、
前記即時使用可能な組成物が、2~4のpHを有する、組成物。
【請求項17】
前記非イオン性界面活性剤が、EO/POブロックコポリマーを有するアルコキシル化界面活性剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記酸を50ppm~5,000ppmの量で含む、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
2重量%~75重量%の少なくとも1つの強酸であって、ただし、前記強酸は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を包含しない、強酸、及び8重量%~55重量%の少なくとも1つの弱酸と、
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を含む、13重量%~40重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、
少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および/または固化剤と、を含む、すすぎなし固形抗菌組成物であって、
前記固形組成物の使用溶液が、酸性のpHを有し、かつ不燃性であり、
前記少なくとも1つの強酸は、メタンスルホン酸又は重硫酸ナトリウムを含み、
前記少なくとも一つの弱酸は、乳酸又はクエン酸を含み、
前記組成物の使用溶液が、2~4のpHを有する、組成物。
【請求項20】
前記非イオン性界面活性剤が、EO/POブロックコポリマーを有するアルコキシル化界面活性剤である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記弱酸が、前記固形組成物の10重量%~50重量%を構成し、前記強酸が、前記固形組成物の4重量%~65重量%を構成し、任意に、1重量%~25重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分をさらに含む、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
前記固化剤が、尿素、PEG、および/または固化ポリマーである、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
抗菌組成物を使用する方法であって、
請求項19~22のいずれか一項に記載の固形抗菌組成物を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、
前記方法が、すすぎ工程を必要とせず、少なくとも3対数の微生物減少を達成する、方法。
【請求項24】
前記接触させることが、拭き取り、ディッピング、浸漬、または噴霧によるものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面が、硬質表面、予めクリーニングされた硬質表面、ノロウイルスで汚染された表面、バイオフィルムで汚染された表面、および/またはヒトもしくは哺乳動物の組織である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触させることが、5分未満で、ノロウイルスの完全な死滅を提供する、請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記使用溶液の適用および/または前記固形組成物の取り扱いが、個人用保護具の使用を必要としない、および/または前記接触させる工程が、40°F~160°Fの水性使用温度で行われる、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
センサーおよび/またはインジケータが、前記組成物が殺生物効力を失う溶液のpH、使用溶液中のアニオン性界面活性剤の濃度、蛍光、および/また伝導率のうちの少なくとも1つを測定および検出するために使用される、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
使用溶液が、50ppm~6000ppmの弱酸および強酸と、10ppm~6000ppmのアニオン性界面活性剤と、を含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ウイルスを不活性化する方法であって、前記方法が、
請求項19~22のいずれか一項に記載の固形抗菌組成物を水性源と接触させて、使用溶液を生成することと、
前記使用溶液を、ウイルス不活化を必要とする表面に接触させることと、を含み、
前記表面と接触させることが、1分未満に、少なくとも3対数減少から完全な不活性化までの抗ウイルス不活性化効力を提供する、方法。
【請求項31】
前記ウイルスが、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、および/またはエンベロープウイルスである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルスが、ノロウイルスである、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2017年9月26日に出願された仮出願第62/563,461号に対する優先権を、米国特許法第119条の下で主張する。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、を含む抗菌組成物に関する。特に、少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、を含む食品接触型(または食品非接触型)抗菌組成物は、個人用保護具(PPE)の使用を必要としない許容される使用溶液pHを有し、表面適合性があり、処理された表面上に筋状、濁った、または粘着性の残留物をもたらさない、消毒に、およびノロウイルスに対して効果的なすすぎなしの組成物を提供する。この組成物は、とりわけ、第四級アンモニウム化合物の代替物であるものを含む、用品洗浄用途、サードシンク殺菌剤、食品接触および食品非接触用途、バイオフィルム処理組成物を含む硬質表面抗菌組成物としての使用に好適である。組成物で表面をクリーニングする方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
微生物およびウイルス病原体は、公衆衛生上の懸念が高まっている。病原性ウイルスは、これらが表面上で長期間持続することができ、疾患の伝染を止めるために、完全かつ信頼性の高い不活化を必要とするため、健康上の重大な懸念を提示する。ウイルスは、不活性化に対する抵抗のレベルに対応する階層に従って特定することができる。3つのウイルスサブグループには、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、およびエンベロープウイルスが含まれる。小型の非エンベロープウイルスを不活性化できる抗菌製品は、任意の大型の非エンベロープウイルスまたは任意のエンベロープウイルスも不活性化できる。同様に、大型の非エンベロープウイルスを不活性化できる抗菌製品も、任意のエンベロープウイルスを不活性化できる。したがって、小型の非エンベロープウイルスを不活性化できる抗菌組成物を特定および開発し、その後、ウイルス階層全体に対応する抗菌効力を有することができるようにすることが望ましい。
【0004】
ノロウイルスは、表面処理のための追加の抗菌組成物を必要とする例示的な小型の非エンベロープウイルスである。以前は「ノーウォーク様ウイルス」(NLV)または小型球形ウイルスとしても知られていた非エンベロープノロウイルス(NoV)は、先進国および発展途上国の両方で発生する流行性急性胃腸炎の最も重要なウイルス病原体である。NoVはカルシウイルス科に属し、そのキャプシドが単一の主要な構造タンパク質の180コピーから構成される正二十面体の一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。ノロウイルスは、米国で年間2,300万件の急性胃腸炎を引き起こすと推定されており、米国では胃腸炎の主な原因である。ウイルスの中で、感冒だけがウイルス性胃腸炎(ノロウイルス)よりも頻繁に報告されている。ノロウイルスは、吐き気、嘔吐(時には下痢を伴う)、および胃痙攣を引き起こす。この感染は通常、直接接触により人から人へと広がる。
【0005】
ノロウイルスは非常に接触感染性が高く、人から人へと容易に広がる。人々は、いくつかの方法でノロウイルスに感染する可能性があり、例えば、ノロウイルスで汚染された食品を食べるか、または液体を飲むこと、ノロウイルスで汚染された表面または物体に触れてから、その手を口に入れること、または、感染して症状を示す他の人と直接接触する(例えば、病気の人の世話をしたり、または病気の人と食品もしくは食器を共有したりする)ことである。ノロウイルス性胃腸炎の発症時には、いくつかの伝染モードが記録されており、例えば、レストランでの初期の食物媒介性伝染、その後の家庭内接触への二次的な人から人への伝染が続く。
【0006】
第四級アンモニウム化合物は一般的な抗菌剤になり、外食産業では、フォローアップすすぎ工程を必要とする消毒クレームセットを備えた食品接触消毒および殺菌剤用途に広く使用されている。しかしながら、第四級アンモニウム化合物に対する最近の規制当局の精査により、これらの消毒および殺菌剤組成物の利用が変更する可能性がある。
【0007】
第四級アンモニウム化合物およびその他の化学物質は、接触完成性が高く、重大な公衆衛生の負担であるノロウイルスを処置するための製品に利用されている。ノロウイルスは、消毒が最も難しいウイルスのうちの1つである。ノロウイルスは、全ての発症の少なくとも50%を引き起こす流行性胃腸炎の最も一般的な原因であり、米国では毎年2,000万人と推定されており、食物媒介性疾病の主な原因である。財政的影響は大きい。ノロウイルスの症例あたりの費用は、他の食物媒介疾病に比べて低いが、その発生率が高いため、ノロウイルスの疾病の総費用は相当なものである。ノロウイルスは、感染者の糞便または嘔吐物から供給され、洗浄されていない手との接触、汚染された食品または水の摂取、および汚染された表面との接触を含む様々な方法で広がる。研究によると、感染者は回復後2週間は接触感染性であり、2ヶ月もの間糞便中にウイルス粒子を放出し続ける可能性がある。ノロウイルスの持続性を考えると、感染した人がもはや症状を示さなくなってからずっと後にも表面の汚染除去が行われるべきである。
【0008】
すすぎなしの機能を有する製品が望ましいが、全ての活性成分および不活性成分が、公共の飲食場所、乳製品加工機器、および食品加工機器ならびに調理器具における食品接触面に適用される抗菌性殺菌剤中で成分として使用される化学物質に対して指定されたリスト許容範囲を有するために、これらは課題を提示している。ノロウイルスのすすぎなしの選択肢を提供する様々な市販製品が市場に存在し、例えば、米国特許第8,143,309号に開示されているPurell Professional Food Service Sanitizer、ならびに米国特許第6,197,814号および同第6,583,176号に開示されているPure Bioscience Pure Hard Surfaceが含まれ、これらの内容全体は、その全体が参照により組み込まれる。しかしながら、製品によって提示される様々な課題がある。例えば、様々な製品は、可燃性の懸念を提示し、濁ったおよび/または粘着性の残留物、および/または軟質金属表面(アルミニウムを含む)との制限された適合性を有する、表面の外観の不良を付与し、濃縮物および/または固形物の代わりに即時使用可能な(RTU)配合物、としてだけ利用可能であり、このことがこれらの使用の用途を制限している。結果として、改善された組成物に対する要求を定着させるには様々な制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、組成物および方法の目的は、第四級アンモニウム化合物を使用せずにすすぎなしの消毒を提供できる製品を提供することである。
【0010】
組成物および方法のさらなる目的は、短い接触時間、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下、および最も好ましくは1分以下を含む、ノロウイルスに対する(および他の小型の非エンベロープウイルスに対して、また大型の非エンベロープウイルスおよびエンベロープウイルスに対しても抗ウイルス有効性を提供する)抗菌および消毒組成物を提供することである。
【0011】
組成物および方法のさらなる目的は、処理された表面に濁った、筋状の、または粘着性の残留物なしで良好なクリーニング性能を支援する許容される材料適合性を提供する処理選択肢である。
【0012】
組成物および方法のさらなる目的は、個人用保護具(PPE)の使用を必要としない使用溶液pHを有する処理選択肢である。
【0013】
組成物および方法のさらなる目的は、バイオフィルムに対する有効性を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的、利点および特徴は、添付の図面と併せて以下の明細書から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
組成物および方法の利益は、抗菌組成物がノロウイルスなどのウイルスを含む微生物病原体に対して希釈可能、不燃性、すすぎなしの効果を提供する一方で、処理表面上に濁った、筋状、または粘着性の残留物を残さない表面適合性配合物を提供することである。溶液のpHを使用する組成物および方法のさらなる利益は、ユーザーがPPEを使用する必要がないことである。さらなる利点として、とりわけ、第四級アンモニウム化合物の代替物であるものを含む組成物は、とりわけ、用品洗浄用途、サードシンク殺菌剤、食品接触および食品非接触用途、バイオフィルム処理組成物を含む硬質表面抗菌組成物としての使用に好適である。
【0016】
一実施形態では、固形抗菌組成物は、約10重量%~約70重量%の少なくとも1つの酸と、少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートアニオン性界面活性剤と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および/または固化剤を含み、固形組成物の使用溶液は、酸性pHを有し、かつ不燃性である。さらなる実施形態では、アニオン性界面活性剤は、C8~C22アルキルスルホネートおよび/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、1つ以上の酸は、強酸、弱酸またはこれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態において、アニオン性界面活性剤は、固形組成物の約0.1重量%~約38重量%を構成し、酸は、固形組成物の約8重量%~約55重量%を構成する弱酸および固形組成物の約2重量%~約75重量%を構成する強酸を含み、固化剤は尿素、PEGおよび/または固化ポリマーである。
【0017】
さらなる実施形態では、抗菌組成物を使用する方法は、固形抗菌組成物の使用溶液を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、この方法は、微生物の少なくとも3対数の減少を達成する。接触には、拭き取り、ディッピング、浸漬、または噴霧が含まれ得る。様々な実施形態では、表面は、硬質表面、予めクリーニングされた硬質表面、ヒト組織もしくは哺乳動物組織とすることができ、ならびに/またはバイオフィルムおよび/もしくは小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、および/もしくはエンベロープウイルスで汚染されている。好ましい態様では、接触は1分未満でノロウイルスの完全な死滅を提供する。
【0018】
さらなる実施形態では、固形殺ウイルス組成物は、約10重量%~約70重量%の少なくとも1つの酸であって、弱酸、強酸またはこれらの組み合わせを含む酸と、少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートのアニオン性界面活性剤と、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および/または固化剤を含み、この固形組成物は、不燃性である希釈可能な酸性液体濃縮物である使用溶液を提供する。好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤は、C8~C22アルキルスルホネートおよび/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、組成物の使用pHは約1.5~約4である。さらなる実施形態では、弱酸は、固形組成物の約8重量%~約55重量%を構成し、強酸は固形組成物の約2重量%~約75重量%を構成し、アニオン性界面活性剤は、固形組成物の約1重量%~約40重量%を構成する。
【0019】
追加の実施形態は、固形殺ウイルス組成物を水性源と接触させて使用溶液を生成することと、この使用溶液をウイルス不活性化を必要とする表面に接触させることであって、表面の接触が、約1分未満内に少なくとも3対数の減少から完全な不活性化までの不活性化有効性を提供する、表面に接触させることと、を含む、ウイルスを不活性化する方法を含む。好ましい実施形態では、ウイルスは、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、および/またはエンベロープウイルスである。さらに好ましい実施形態では、ウイルスはノロウイルスである。
【0020】
複数の実施形態が開示されているが、本発明の例示的な実施形態を示し説明する以下の発明を実施するための形態から、本発明のさらに他の実施形態が当業者には明らかになるであろう。したがって、図面および発明を実施するための形態は、本質的に例示的であり限定的ではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】市販の製品と、本明細書に開示されている酸/アニオン性界面活性剤組成物とのノロウイルスに対する有効性を比較したクリーニング性能評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の様々な実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、いくつかの図を通して同様の参照番号は同様の部分を表す。様々な実施形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で表される図は、本発明による様々な実施形態に限定するものではなく、本発明の例示的な説明のために提示される。
【0023】
本発明は、ノロウイルスを含む微生物およびウイルス病原体に対してすすぎなしの効果を提供する一方で、処理表面上に濁った、筋状、または粘着性の残留物を残さず、かつPPEを必要としない表面適合性配合物を提供する、不燃性抗菌組成物である固形組成物および希釈可能な液体組成物に関する。実施形態は、特定の組成物およびその使用方法に限定されず、これらは変更可能であり、当業者によって理解される。さらに、本明細書で使用される全ての専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、いかなる様式または範囲においても限定することを意図するものではないことを理解されたい。例えば、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が別途明確に示さない限り、複数の指示対象を含み得る。さらに、全ての単位、接頭辞、および記号は、そのSI許容形式で表すことができる。
【0024】
本明細書内に列挙された数値範囲は、定義された範囲内の数を含む。本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示されている。範囲形式での説明は単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲とともに、その範囲内の個々の数値(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)を具体的に開示しているとみなすべきである。
【0025】
本発明がより容易に理解されるように、特定の用語が最初に定義される。別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似、修正、または同等の多くの方法および材料を、過度の実験なしに本発明の実施形態の実施に使用することができ、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。本発明の実施形態を説明および請求する際に、以下に記載される定義に従って、以下の用語が使用される。
【0026】
本明細書で使用される「約」という用語は、例えば、現実の世界で濃縮物または使用溶液を作製するために使用される典型的な測定および液体取扱い手順により、これらの手順における不注意な誤りにより、組成物の作製または方法の実施に使用される成分の製造、供給源、または純度の違いにより起こり得る数量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物についての異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、その量と同等のものを含む。
【0027】
「活性物質」または「パーセント活性物質」または「重量パーセント活性物質」または「活性物質濃度」という用語は、本明細書において互換的に使用され、例えば水または塩などの不活性成分を引いたパーセンテージとして表されるクリーニングに関与する成分の濃度を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アルキル」または「アルキル基」という用語は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環状アルキル基(または「シクロアルキル」または「脂環式」または「炭素環状」基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分岐鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど)、およびアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)が含まれる、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。
【0029】
特に明記しない限り、「アルキル」という用語は、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含む。本明細書で使用されるとき、「置換アルキル」という用語は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の1個以上の水素を置換する置換基を有するアルキル基を指す。そのような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲノ、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環式、アルキルアリール、または芳香族(複素芳香族を含む)基を挙げることができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、置換アルキルは、複素環式基を含むことができる。本明細書で使用されるとき、「複素環式基」という用語は、環中の1個以上の炭素原子が炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、または酸素である炭素環式基に類似の閉環構造を含む。複素環式基は、飽和でも不飽和でもよい。例示的な複素環式基としては、アジリジン、エチレンオキシド(エポキシド、オキシラン)、チイラン(エピスルフィド)、ジオキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ジオキセタン、ジチエタン、ジチエート、アゾリジン、ピロリジン、ピロリン、オキソラン、ジヒドロフラン、およびフランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
抗菌の「殺菌(-cidal)」または「静菌(-static)」活性の区別、有効性の程度を説明する定義、およびこの有効性を測定するための公式の実験室プロトコルは、抗菌剤および組成物の関連性を理解するための考慮事項である。抗菌組成物は、2種類の微生物細胞損傷に影響を与えることができる。第1の種類は、致死的で不可逆的な作用であり、微生物細胞の完全な破壊または無能力化をもたらす。第2の種類の細胞傷害は可逆的であり、したがって、生物がその薬剤から解放されると、それは再度増殖することができる。前者は殺菌性であり、後者は静菌性であると呼ばれる。消毒剤(sanitizer)および殺菌剤(disinfectant)は、定義により、抗菌または殺菌活性を提供する薬剤である。対照的に、防腐剤は一般に阻害剤または静菌組成物として説明されている。
【0032】
本明細書で言及されるように、抗菌組成物は、例えばノロウイルスを含むウイルス病原体に対する殺菌活性に関してさらに好適である。この特許出願の目的のために、ウイルス集団が完全に不活性化され場合に、殺ウイルスの減少が成功裏に達成される。
【0033】
本明細書で使用される「バイオフィルム」という用語は、微生物の集団が分散および/またはコロニーを形成する細胞外マトリックスを意味する。バイオフィルムは、通常、多糖類と、エキソポリサッカライドと呼ばれることの多い他の高分子から作られており、界面(通常は固体/液体)で濃縮され、このような微生物集団を囲む結合剤として機能すると理解されている。バイオフィルムは、バイオフィルム内に閉じ込められるか、バイオフィルム内の細胞から放出される細胞、細胞外産物、および破片(または非生存の粒状有機物質)の複雑な会合を含むとさらに理解される。本明細書で使用されるバイオフィルムという用語はさらに、基層上に固定され、微生物起源の有機ポリマーマトリックスに埋め込まれた細菌細胞の蓄積物としてのバイオフィルムのASTM定義を指す。バイオフィルムは、微生物の動的な自己組織化された蓄積物、および微生物が住む環境によって決定される微生物ならびに環境の副産物であると理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「クリーニング」という用語は、汚れ除去、漂白、微生物集団の減少、すすぎ、およびこれらの任意の組み合わせにおいて促進するか、または助けるために使用される方法を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「微生物」という用語は、任意の非細胞または単細胞(コロニーを含む)生物を指す。微生物は、全ての原核生物を含む。微生物は、細菌(シアノバクテリアを含む)、胞子、地衣類、菌類、原生動物、ビリノス(virinos)、ウイロイド、ウイルス、ファージ、およびいくつかの藻類を含む。本明細書で使用される場合、「微生物(microbe)」という用語は、微生物(microorganism)と同義である。
【0036】
典型的な基材上の典型的な汚れの状態に対処するために、クリーニング製品またはクリーニングシステムを使用する場合、「商業的に許容されるクリーニング性能」は、一般的に、典型的な消費者が達成するか、または費やすと期待する、清浄度の程度、労力の範囲、またはその両方を指す。この清浄度の程度は、特定のクリーニング製品と特定の基材に応じて、目に見える汚れが一般的にないこと、またはいくらかより低い程度の清浄度に相当し得る。清浄度は、使用されている特定のクリーニング製品(例えば、用品洗剤または洗濯洗剤、すすぎ補助剤、硬質表面クリーナー、車両用洗浄またはすすぎ剤など)およびクリーニングされている特定の硬質または軟質表面(例えば、用品、洗濯物、布地、車両など)に応じて、様々な方法で評価されてもよく、通常は、一般に合意された業界標準試験またはこのような試験のローカライズされたバリエーションを使用して決定されてもよい。そのような合意された業界標準試験がない場合、製造業者または販売業者がすでに採用している試験を使用して、そのブランドに関連して販売されているリン含有クリーニング製品のクリーニング性能が評価されてもよい。いくつかの態様では、この方法は、配合物が処理された表面に濁った、筋状の、または粘着性の残留物を残さないことを確実にしながら、商業的に許容できるクリーニング性能を提供する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「腐食性」という用語は、表面の化学的攻撃、酸化、変色、寸法変化および/または重量損失、および/または表面の孔食をもたらす薬剤または組成物を指す。例えば、酸化還元攻撃による金属腐食、金属の不動態化層の攻撃および貫通、表面の孔食などを含む、様々な腐食メカニズムは、Corrosion Basics,National Association of Corrosion Engineers,1984に開示されている。表面の化学的攻撃、酸化、変色、寸法および/または重量損失、および/または表面の孔食を引き起こさない、または示さない非腐食性の組成物が有益である。組成物の腐食性または非腐食性の特性を評価するための例示的な方法は、実施例に示されており、表面変化および/または光沢測定値を測定する重量評価を含むことができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「殺菌剤」という用語は、A.O.A.C. Use Dilution Methods,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists、段落955.14および該当の部分、15th Edition,1990(EPA Guideline 91-2)に記載された手順を使用して、ほとんどの認められている病原性微生物を含む全ての栄養細胞を死滅させる薬剤を意味する。本明細書で使用される場合、「高レベル殺菌」または「高レベル殺菌剤」は、高レベルの細菌胞子を除いて、実質的に全ての生物を死滅させる化合物または組成物を指し、食品医薬品局(Food and Drug Administration)により滅菌剤として売買が許可されている化学的殺病原体剤を用いて行われる。本明細書で使用される場合、「中間レベルの殺菌」または「中間レベルの殺菌剤」という用語は、環境保護庁(Environmental Protection Agency)(EPA)により結核菌殺菌剤として登録された化学的殺病原体剤を用いて、マイコバクテリア、ほとんどのウイルス、および細菌を死滅させる化合物または組成物を指す。本明細書で使用される場合、「低レベル殺菌」または「低レベル殺菌剤」という用語は、EPAにより病院殺菌剤として登録された化学的殺病原体剤を用いて、いくらかのウイルスおよび細菌を死滅させる化合物または組成物を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「食品加工表面」という語句は、食品加工、調理、または保存活動の一部として用いられる、道具、機械、機器、構造物、建物などの表面を指す。食品加工表面の例としては、食品加工または調理機器(例えば、スライシング機器、缶詰機器、または輸送機器で、水路を含む)の表面、食品加工用品(例えば、台所用具、食器、洗浄用品、およびバーガラス(bar glasses)の表面、および食品加工が行われる構造物の床、壁、または固定備品の表面を含む。食品加工表面は、食物腐敗防止空気循環システム、無菌包装消毒、食品冷蔵およびクーラーのクリーナーおよび消毒剤、用品洗浄消毒、ブランチャークリーニングおよび消毒、食品包装材、カッティングボード添加剤、サードシンク(third-sink)消毒、飲料冷却機および加温機、肉の冷却または熱湯処理の水、自動食器消毒剤、消毒ゲル、冷却塔、食品加工用抗菌衣服スプレー、および非水性~低水性食品調理潤滑剤、油、およびすすぎ添加剤中に見い出され、用いられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「食品生産物」という語句は、抗菌剤または組成物での処理を必要とする可能性があり、さらに調理して食べられるか、またはさらに調理されなくても食べられる、任意の食品物質を含む。食品には、肉(例えば、赤肉および豚肉)、魚介類、家禽、農産物(例えば、果物および野菜)、卵、生きた卵、卵製品、インスタント食品、小麦、種子、根、塊茎、葉、茎、トウモロコシ、花、芽、調味料、またはこれらの組み合わせが挙げられる。「農産物」という用語は、典型的には未調理で、しばしば未包装で販売されており、時には生食することができる、果物ならびに野菜および植物または植物由来材料などの食品生産物を指す。
【0041】
「硬質表面」という用語は、カウンタートップ、タイル、床、壁、パネル、窓、衛生器具、台所および浴室の家具、器具、エンジン、回路基板、および皿などの固形の実質的に非可撓性の表面を指す。硬質表面には、例えば、医療表面および食品加工表面が含まれ得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「医療表面」という語句は、医療活動の一部として用いられる、器械、器具、カート、ケージ、家具、構造物、建物などの表面を指す。医療表面の例としては、医用器械または歯科用器械の表面、医用器具または歯科用器具の表面、患者の健康を監視するために用いられる電子装置の表面、および医療が行われる構造物の床、壁、または固定備品の表面が挙げられる。医療表面は、病室、手術室、虚弱(infirmity)室、分娩室、霊安室、および臨床診断室において見られる。これらの表面は、「硬質表面」として代表されるもの(壁、床、便器など)、または布地表面、例えばニット、織布、および不織布表面(例えば、手術用衣服、カーテン、ベッド用リネン製品、包帯など)、または患者ケア機器(呼吸装置、診断機器、シャント、ボディスコープ、車椅子、ベッドなど)、または手術および診断機器であり得る。医療表面には、動物の医療において用いられる物品および表面が含まれる。
【0043】
「改善されたクリーニング性能」という用語は、一般に、典型的な基材上の典型的な汚れ条件に対処するために、従来のクリーニング製品ではなく代替クリーニング製品または代替クリーニングシステムを使用する場合の、概ねより高度な清浄度の、または概ね労力が削減されて、またはその両方で、代替クリーニング製品または代替クリーニングシステムによって達成されるものを指す。この程度の清浄度は、特定のクリーニング製品と特定の基材に応じて、目に見える汚れが全体的に存在しないこと、および濁った、筋状の、または粘着性の残留物がない処理表面に相当し得る。
【0044】
材料のリストを参照して使用される場合の「含む」および「含むこと」という用語は、そのように列挙されている材料を指すが、それに限定されるものではない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「器械」という用語は、本発明の組成物でのクリーニングから利点を得ることができる種々の医用または歯科用の器械または器具を指す。
【0046】
本明細書で使用される「微生物」という用語は、任意の非細胞または単細胞(コロニーを含む)生物を指す。微生物は、全ての原核生物を含む。微生物には、細菌(シアノバクテリアを含む)、地衣類、微小菌類、原生動物、ビリノス、ウイロイド、ウイルス(エンベロープおよび非エンベロープ)およびいくつかの藻類が挙げられる。本明細書で使用される場合、「微生物(microbe)」という用語は、微生物(microorganism)と同義である。
【0047】
本明細書で使用される場合、「消毒剤」という用語は、公衆衛生上の要件によって判断されるように、細菌汚染菌の数を安全なレベルまで減少させる薬剤を指す。一実施形態では、本発明で使用する消毒剤は、少なくとも3対数の減少、より好ましくは5対数のオーダーの減少を提供するであろう。これらの低減は、Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists、段落960.09および該当部分、15th Edition,1990(EPA Guideline 91-2)に記載された手順を使用して評価することができる。この参考文献によれば、消毒剤は、いくつかの試験生物に対して、室温、25±2℃で30秒以内に、99.999%の減少(5対数オーダーの減少)を提供するべきである。
【0048】
本明細書で使用される場合、「汚れ」という用語は、炭水化物、タンパク質、脂肪、油などを含むがこれらに限定されない極性もしくは非極性の有機または無機物質を指す。これらの物質は、それらの有機状態で存在するか、または金属と錯体化して無機錯体を形成し得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、完全に構成要素を欠くか、またはそのような少量の構成要素を有する組成物であって、この構成要素が、組成物の性能に影響を与えない、組成物を指す。構成要素は、不純物としてまたは汚染物質として存在してもよく、0.5重量%未満でなければならない。別の実施形態では、構成要素の量は0.1重量%未満であり、さらに別の実施形態では、構成要素の量は0.01重量%未満である。
【0050】
「閾値剤」という用語は、溶液からの硬水イオンの結晶化を阻害するが、硬水イオンと特定の錯体を形成する必要がない化合物を指す。閾値剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、オレフィン/マレイン酸コポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「殺ウイルス剤」という用語は、表面または基材上のウイルスの数を減少させる薬剤を指す。一実施形態では、殺ウイルス組成物は、少なくとも3対数オーダーの減少、または好ましくは5対数オーダーの減少、またはより好ましくはウイルスの完全な不活化を提供するであろう。これらの減少は、ASTM E1053 Standard Test Method for Efficacy of Virucidal Agents Intended for Inanimate Environmental Surfacesで記載された手順を使用して評価することができ、米国の基準は、EPA810.2200に記載されている。この参考文献によれば、殺ウイルス組成物は、殺ウイルス活性の99.9%の減少(3対数オーダーの減少)を提供せねばならない。
【0052】
本明細書で使用される「ウイルス」という用語は、病原性ウイルスおよび非病原性ウイルスの両方を含み得る微生物の種類を指す。病原性ウイルスは、ウイルス構造に関して2つの一般的な種類:エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスに分類することができる。よく知られているエンベロープウイルスには、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス;パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびSARS-CoVウイルスが挙げられる。「ネイキッド(naked)」ウイルスと呼ばれることもある非エンベロープウイルスには、ピコルナウイルス科、レオウイルス科、カリシウイルス科、アデノウイルス科、およびパルボウイルス科が挙げられるこれらの科のメンバーには、ライノウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、A型肝炎ウイルス、ノロウイルス、パピローマウイルス、およびロタウイルスが挙げられる。当技術分野においては、「エンベロープ」ウイルスは比較的感受性であり、したがって、一般的に使用される殺菌剤によって不活化され得ることが知られている。対照的に、非エンベロープウイルスは、従来の殺菌剤に対して実質的により耐性であり、エンベロープウイルスよりも環境的にはるかに安定している。
【0053】
本明細書で使用される場合、「用品(ware)」という用語は、食事用具および調理用具、食器、ならびに他の硬質表面(シャワー、シンク、トイレ、浴槽、カウンタートップ、窓、鏡、輸送車両、および床など)などの品物を指す。本明細書で使用されるとき、「用品洗浄」という用語は、食器の洗浄、クリーニング、またはすすぎを指す。「用品」という用語は、一般に、食器および調理器具、皿、ならびに他の硬質表面などの品目を指す。用品はまた、ガラス、セラミック、陶磁器、水晶、金属、プラスチックまたは天然物質(限定されないが、粘土、竹、大麻など)を含む様々な基材で作製された品目を指す。本組成物でクリーニングすることができる金属の種類には、アルミニウム、銅、真鍮、およびステンレス鋼が含まれるが、これらに限定されない。本組成物でクリーニングすることができるプラスチックの種類には、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シレンアクリロニトリル(SAN)、ポリカーボネート(PC)、メラミンホルムアルデヒド樹脂またはメラミン樹脂(メラミン)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、およびポリスルホン(PS)が挙げられるが、これらに限定されない。本化合物および組成物を使用してクリーニングすることができる他の例示的なプラスチックには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレンポリアミドが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「水」という用語は、食品加工水または輸送水を含む。水温は、約40°F~160°F、約60°F~140°F、または約70°F~140°Fの範囲であり得る。食品加工水または輸送水としては、農産物の輸送水(例えば、水路、パイプ輸送、カッター、スライサー、ブランチャー、レトルトシステム、洗浄機、などに見られるようなもの)、食品輸送ラインのためのベルトスプレー、ブーツおよび手洗いのディップパン、サードシンクすすぎ水などがある。また、水には、プール、温泉、レクリエーション用水路およびウォータースライド、噴水などのような、家庭用水およびびレクリエーション用水がある。
【0055】
「水溶性」という用語は、1重量%超の濃度で水に溶解することができる化合物を指す。「難溶性」または「難水溶性」という用語は、0.1~1.0重量%の濃度までしか水に溶解できない化合物を指す。「水不溶性」という用語は、0.1重量%未満の濃度までしか水に溶解できない化合物を指す。
【0056】
本明細書で使用される「重量パーセント」、「重量%(wt-%)」、「重量%(percent by weight」、「重量%(% by weight)」、およびこれらの変形は、物質の重量を組成物の総重量で割り、100を掛けた、その物質の濃度を指す。本明細書で使用されるとき、「パーセント」、「%」などは、「重量パーセント」、「重量%」などと同義であることが意図されていることが理解される。
【0057】
本発明の方法および組成物は、本発明に記載の構成要素および成分、ならびに本明細書に記載の他の成分を含む(comprise)か、これらから本質的になる(consist essentially of)か、またはこれらからなって(consist of)いてもよい。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、方法および組成物が、追加の工程、構成要素、または成分が、特許請求の範囲に記載の方法および組成物の基本的かつ新規な特徴を著しく変更しない場合にのみ、その追加の工程、構成要素、または成分を含んでもよいことを意味する。
【0058】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「構成された」という用語は、特定のタスクを実行または特定の構成を採用するように構築または構成されたシステム、装置、またはその他の構造を指すことにも留意されたい。「構成された」という用語は、配置かつ構成された、構築かつ配置された、適合かつ構成された、適合された、構築された、製造かつ配置されたなどの他の同様のフレーズと互換的に使用することができる。
【0059】
酸/アニオン性組成物
抗菌組成物および殺ウイルス組成物の例示的な範囲が、表1および2に示されており、表1および2は、液体および固形配合物を、活性濃度基準で(表1Aおよび1B)、および重量パーセント基準で(表2Aおよび2B)を示している。表1A~1Bは、即時使用可能な配合物に必要な酸性pHを提供するために、最小限の酸構成要素と脱イオン水とを有する配合物を含むことができる。表2Aおよび2Bの重量%は、表1Aおよび1Bに概説されている活性物質の範囲を組み込んだ、2オンス/ ガロンの希釈可能な液体配合物で示されている。濃度基準を重量パーセントに変換する場合、全ての原材料が100%活性であると想定した。2オンス/ガロンの希釈率は、原材料を配合するための十分な配合スペースを提供し、使用溶液中の任意の1つの原材料を最高で6000ppmで供給する。
【0060】
表2Cおよび2Dは、0.25~1オンス/ガロンの希釈可能な液体配合物で示している。表2Eおよび2Fは、固形または液体濃縮配合物を示している。表2Gおよび2Hは、即時使用可能な液体配合物を示している。
【0061】
0重量%の下限閾値で、強酸および弱酸の両方についての範囲を示している表1B、2B、2Dおよび2Hは、酸のいずれかを配合物またはその組み合わせに含めることができることを示している。しかしながら、本明細書の開示の範囲内で、少なくとも1つの酸が配合物に含まれる。例示的な実施形態では、強酸のみを含む2オンス/ガロンの希釈可能な配合物にはついては、少なくとも約0.1重量%が必要であり、一方、強酸のみを含む0.25~1オンス/ガロンの希釈可能な配合物には、少なくとも約0.3重量%の強酸が必要であろう。例示的な実施形態では、弱酸のみを含む2オンス/ガロンの希釈可能な配合物にはついては、少なくとも約0.1重量%が必要であり、一方、弱酸のみを含む0.25~1オンス/ガロンの希釈可能な配合物には、少なくとも約0.8重量%の弱酸が必要であろう。当業者であれば、開示された組成物の範囲内である、異なる希釈率を有する組成に達するように組成物の重量%を調整することができる。有益には、活性物質の範囲内で、組成物は、ほぼまたは完全に水を含まない液体または固形組成物を含むように配合することができる。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
【表9】
【0071】
【表10】
【0072】
抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、使用組成物または即時使用可能な(RTU)組成物を形成するために希釈することができる濃縮組成物を含むことができる。有益なことに、組成物は、希釈可能な濃縮物を提供できるという点で従来技術の制限を克服する。一般に、濃縮物とは、水で希釈して対象物と接触する使用溶液を提供し、所望のクリーニング、抗菌効力などを提供することを意図した組成物を指す。物品と接触する抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、本明細書に記載の方法で使用される配合物に応じて、濃縮物または使用組成物(もしくは使用溶液)と呼ばれる場合がある。組成物中の酸、アニオン性界面活性剤(複数可)、および非イオン性界面活性剤などの追加の機能性成分の濃度は、組成物が濃縮物として提供されるか、または使用溶液として提供されるかによって異なることを理解されたい。
【0073】
使用溶液は、所望の洗浄特性を有する使用溶液を提供する希釈率で、固形物または液体濃縮物を水で希釈することにより、濃縮物から調製され得る。濃縮物を希釈して使用組成物を形成するのに使用される水は、希釈水または希釈剤と呼ぶことができ、場所によって異なり得る。典型的な希釈倍率は、約1~約10,000である。一実施形態では、濃縮物は、約1:10~約1:10,000の濃縮物対水、約1:10~約1:1,000の濃縮物対水、または約1:10~約1:510濃縮物対水の比で希釈される。
【0074】
別の態様では、濃縮物は、食品接触消毒効果を提供しながら、約1/8オンス/ガロン~約2オンス/ガロン、約1/4オンス/ガロン~約1オンス/ガロン、または約1/2オンス/ガロン~約1オンス/ガロンの割合で希釈され得る。一態様では、希釈可能な濃縮組成物は、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5(これらの間の範囲を含める)の使用溶液pHを提供する。
【0075】
液体組成物は、当業者に十分に理解されている様々な形態で提供することができる。組成物はまた、液体組成物を飽和させた紙または布の基材などの飽和抗菌ワイプを含むように製造することができる。
【0076】
固形組成物は、当業者に十分に理解されている様々な形態で提供することができる。組成物は、プレス、押出、注型、打錠などを含む固形物ブロックを含むように製造することができる。固形物には、流動性粉末を含む顆粒および粉末も含むことができる。ある特定の実施形態では、固形物は、適用可能な包装材料(例えば、PVAフィルムなどのフィルム)も含むことができる。有益なことに、酸とアニオン性界面活性剤との組み合わせを含む固形組成物は、第四級アンモニウム化合物を使用して押し出された固形物に代わる効果的かつ安定した固形代替物を提供する。例えばパック、錠剤、粉末、顆粒などを含む固形物ブロックに加えて、様々な形態およびサイズの固形物を含めることができる。
【0077】
固形組成物は、サイズだけでなく形態を取ってもよい。例示的な実施形態では、固形物は、約50グラム~約250グラム、約100グラム以上、および約1~約10キログラムの重量を有することができる。ある特定の実施形態では、固形組成物は、錠剤またはパックなどの単位用量を含むことができる。単位用量とは、1回の使用で単位全体が使用されるようなサイズの固形組成物ユニットを指す。固形組成物が単位用量として提供される場合、これは、典型的には、約1グラム~約50グラムのサイズを有する鋳造固形物、押出ペレット、または錠剤として提供される。他の実施形態では、固形組成物は、ブロックまたは複数のペレットなどの複数回使用の固形物の形態で提供され、複数回の適用またはクリーニングサイクル用の水性組成物を生成するために繰り返し使用することができる。ある特定の実施形態では、固形組成物は、約5グラム~約10キログラムの質量を有するプレス固形物、鋳造固形物、押出ブロック、または錠剤として提供される。ある特定の実施形態では、固形組成物の複数回使用形態は、約1キログラム~約10キログラムの質量を有する。
【0078】
固形物鋳造組成物および/またはプレス固形組成物の硬度は、例えば、コンクリートのように比較的密で硬い融合固形製品の硬度から、硬化ペーストであることを特徴とする硬さまでの範囲であり得る。加えて、「固形物」という用語は、固形クリーニング組成物の予想される貯蔵および使用条件下での組成物の状態を指す。一般に、物理的安定性および寸法安定性を維持しながら、最高約100°F、最高約120°F、または最高約125°F、の温度に曝される場合、組成物は固形物のままであると予想される。固形組成物の寸法安定性は、最高約100°F(40℃)、最高約120°F(50℃)、または最高約140°F(60℃)の温度で、少なくとも30分、または少なくとも1時間、最長で2週間、最長で4週間、最長で6週間、または最長で8週間などの長期間にわたって、かつ約40~65%の湿度で加熱した場合、約3%未満の指数成長によって確認される。
【0079】

組成物は、少なくとも1つの酸を含む。実施形態では、組成物は、2つの酸を含む。このような態様では、酸は、弱酸と強酸との組み合わせであり得る。本発明の目的のために、酸は、水性系に添加することができ、7未満のpHをもたらす成分である。使用することができる強酸は、水溶液を実質的に解離させる酸である。「弱」有機酸および無機酸は、酸が本組成物を形成するのに有用な範囲内の濃度で周囲温度の水に溶解したときに、酸部分からのプロトンの最初の解離工程が本質的に完了しない酸または酸構成要素である。
【0080】
理論に束縛されるものではないが、組成物の酸は、細菌のリン脂質膜上のカルボキシレート官能基をプロトン化し、抗菌組成物および殺ウイルス組成物に含まれるアニオン性界面活性剤を電気的に寄せ付けない膜の傾向を減少させるように働く。ウイルスに関しては、酸は脂質エンベロープおよび/またはキャプシドに同じように影響すると考えられている。さらに、本明細書に開示される酸は、基材の表面上の低pH緩衝液の生成を促進し、それにより、それらが組み込まれる組成物および製品の残留抗菌および殺ウイルス活性を延長する。
【0081】
組成物での使用に好適な例示的な強酸としては、メタンスルホン酸、硫酸、重硫酸ナトリウム、リン酸、ホスホン酸、硝酸、スルファミン酸、塩酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トルエンスルホン酸、グルタミン酸など;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸などのアルカンスルホン酸が挙げられる。好ましい態様では、約4未満、好ましくは約3未満のpHを有する酸性の使用組成物を有益に提供するために、組成物は、約2.5未満のpKaを有する強酸を含む。一実施形態では、組成物は、アニオン性界面活性剤と組み合わせて強酸を含み、必要に応じて弱酸を含む。
【0082】
例えば、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸などのアルファヒドロキシ酸;例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;アスコルビン酸、グルタミン酸、レブリン酸などの他の一般的な有機酸を含む、組成物での使用に好適な例示的な弱酸も使用することができる。好ましい態様では、約4未満、好ましくは約3未満のpHを有する酸性の使用組成物を有益に提供するために、組成物は、約2.5超のpKaを有する弱酸を含む。一実施形態では、組成物は、アニオン性界面活性剤と組み合わせて弱酸を含み、必要に応じて強酸を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、組成物は、脂肪酸を含まない。
【0084】
ある特定の実施形態では、強酸と弱酸の組み合わせにより、抗菌および殺ウイルス効率が驚くほど向上する。好ましい実施形態では、酸は、乳酸およびメタンスルホン酸を含む。特定の作用機序に束縛されるものではないが、緩衝化酸性組成物を有することが望ましい場合がある。例えば、処理を必要とする表面が十分にクリーニングされていない場合、弱酸と強酸の組み合わせにより組成物は緩衝化組成物を有し、pH感受性生物の不活性化を有利に支援することができるであろう。
【0085】
一態様では、約2オンス/ガロン希釈を有する組成物は、上記表に記載された範囲に加えて、約0.1重量%~約50重量%の少なくとも1つの酸、約0.1重量%~約38重量%の少なくとも1つの酸、約1重量%~約32重量%の少なくとも1つの酸、約1.5重量%~約29重量%の少なくとも1つの酸、または約2重量%~約26重量%の少なくとも1つの酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0086】
一態様では、約0.25~1オンス/ガロン希釈を有する組成物は、上記表に記載された範囲に加えて、約0.3重量%~約95重量%の少なくとも1つの酸、約1重量%~約90重量%の少なくとも1つの酸、約5重量%~約80重量%の少なくとも1つの酸、約10重量%~約70重量%の少なくとも1つの酸、または約30重量%~約60重量%の少なくとも1つの酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0087】
ある特定の態様では、約2オンス/ガロンの希釈を有する組成物は、弱酸と組み合わせて、約0.1重量%~約20重量%の強酸、約0.1重量%~約19重量%の強酸、約0.1重量%~約13重量%の強酸、または約0.1重量%~約6重量%の強酸を含み、この組成物は、上記表に記載された範囲に加えて、約0.1重量%~約40重量%の弱酸、約0.1重量%~約38重量%の弱酸、約0.1重量%~約32重量%の弱酸、約0.1重量%~約29重量%の弱酸、または約0.1重量%~約26重量%の弱酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0088】
ある特定の態様では、約0.25~1オンス/ガロンの希釈を有する組成物は、弱酸と組み合わせて、約0.1重量%~約75重量%の強酸、約0.1重量%~約75重量%の強酸、約0.1重量%~約50重量%の強酸、約0.1重量%~約25重量%の強酸を含み、この組成物は、上記表に記載された範囲に加えて、約0.1重量%~約95重量%の弱酸、約0.1重量%~約90重量%の弱酸、約0.1重量%~約90重量%の弱酸、または約0.1重量%~約95重量%の弱酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0089】
ある特定の態様では、任意の希釈前の組成物は、約10重量%~約75重量%の酸(強酸および/または弱酸を含む)、約15重量%~約75重量%の酸、約20重量%~約75重量%の酸、約30重量%~約75重量%の酸、約30重量%~約70重量%の酸、約40重量%~約70重量%の酸、または約40重量%~約60重量%の酸を含む。ある特定の態様では、任意の希釈前の組成物は、約8重量%~約55重量%の弱酸および/または約2重量%~約75重量%の強酸、約10重量%~約50重量%の弱酸および/または約4重量%~約65重量%の強酸、約10重量%~約50重量%の弱酸および/または約5重量%~約55重量%の強酸、または約20重量%~約45重量%の弱酸および/または約8重量%~約45重量%の強酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。ある特定の態様では、即時使用可能な濃度の組成物は、約5ppm~約10,000ppmの酸(強酸および/または弱酸を含む)、約50ppm~約5,000ppmの酸、約50ppm~約4,000ppmの酸、または約50ppm~約2,000ppmの酸を含む。ある特定の態様では、即時使用可能な濃度の組成物は、約0ppm~約4,000ppmの強酸、約0ppm~約3,000ppmの強酸、約0ppm~約2,000ppmの強酸、または約0ppm~約1,000ppmの強酸を含む。ある特定の態様では、即時使用可能な濃度の組成物は、約0ppm~約10,000ppmの弱酸、約0ppm~約5,000ppmの弱酸、約0ppm~約4,000ppmの弱酸、または約0ppm~約2,000ppmの弱酸を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0090】
アニオン性界面活性剤
組成物は、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む。実施形態では、組成物は、2つのアニオン性界面活性剤を含む。実施形態では、組成物は2つを超えるアニオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤は、疎水性物質の負電荷によって分類される表面活性物質であるか、または、pHが中性以上に上昇しない限り、分子の疎水性部分が電荷を有しない界面活性剤(例えばカルボン酸)である。カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、およびホスフェートは、アニオン性界面活性剤に見られる極性(親水性)可溶化基である。これらの極性基と会合したカチオン(対イオン)のうち、ナトリウム、リチウム、およびカリウムは、水溶性を付与し、アンモニウムおよび置換アンモニウムイオンは、水溶性および油溶性の両方を提供し、カルシウム、バリウム、およびマグネシウムは、油溶性を促進する。
【0091】
本組成物での使用に好適なアニオン性スルホネート界面活性剤には、アルキルスルホネート、直鎖ならびに分岐鎖一級および第二級アルキルスルホネート、および置換基を有するか、または有しない芳香族スルホン酸も挙げられる。一態様では、スルホネートにはスルホン化カルボン酸エステルが含まれる。一態様では、適切なスルホン酸アルキル界面活性剤には、C8~C22アルキルスルホネート、または好ましくはC10~C22アルキルスルホネートが挙げられる。例示的な態様では、アニオン性アルキルスルホネート界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)である。アニオン性界面活性剤としてLASを使用する好ましい実施形態では、組成物はpH3.0以下で最も効果的である。
【0092】
組成物での使用に適したアニオン性スルフェート界面活性剤には、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、直鎖ならびに分岐鎖一次および二次アルキルスルフェート、アルキルエトキシスルフェート、脂肪オレイルグリセロールスルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルスルフェート、C~C17アシル-N-(C~Cアルキル)および-N-(C~Cヒドロキシアルキル)グルカミンスルフェート、ならびにアルキルポリグルコシドのスルフェートなどのアルキル多糖類のスルフェートなども挙げられる。また、アルキルスルフェート、アルキルポリ(エチレンオキシ)エーテルスルフェート、および芳香族ポリ(エチレンオキシ)スルフェート、例えばスルフェートまたはエチレンオキシドとノニルフェノールとの縮合生成物(通常1分子当たり1~6個のオキシエチレン基を有する)も含まれる。
【0093】
組成物に好適な追加のアニオン性界面活性剤には、カルボン酸またはアルファヒドロキシル酸基を有するアニオン性カルボキシレート界面活性剤が挙げられる。組成物での使用に好適なアニオン性カルボキシレート界面活性剤には、アルカン酸(およびアルカノエート)などのカルボン酸(および塩)、エステルカルボン酸(スルホン化カルボン酸エステルを含む)、エーテルカルボン酸、例えば、スルホン化オレイン酸などスルホン化脂肪酸なども挙げられる。一態様では、適切なエステルカルボン酸には、例えばジオクチルスルホスクシネートなどのアルキルスクシネートが挙げられる。そのようなカルボキシレートとしては、アルキルエトキシカルボキシレート、アルキルアリールエトキシカルボキシレート、アルキルポリエトキシポリカルボキシレート界面活性剤、および石鹸(例えば、アルキルカルボキシ)が挙げられる。組成物に有用な第二級カルボボキシレートには、第二級炭素に結合したカルボキシル単位を含有するものが含まれる。第二級炭素は、例えば、p-オクチル安息香酸と同様に、またはアルキル置換シクロヘキシルカルボキシレートと同様に、環構造中にあり得る。第二級カルボキシレート界面活性剤は、典型的にはエーテル結合、エステル結合、およびヒドロキシル基を含まない。さらに、それらは典型的には頭部基(両親媒性部分)中に窒素原子を欠く。適切な第二級界面活性剤は、典型的には11~13個の総炭素原子を含むが、より多くの炭素原子(例えば、最大で16個)が存在してもよい。適切なカルボキシレートとしてはまた、例えば、アシルグルタメート、アシルペプチド、サルコシネート(例えば、N-アシルサルコシネート)、タウレート(例えば、N-アシルタウレートおよびメチルタウリドの脂肪酸アミド)などのアシルアミノ酸(および塩)が挙げられる。
【0094】
適切なアニオン性界面活性剤としては、以下の式のアルキルまたはアルキルアリールエトキシカルボキシレートが挙げられ、
R-O-(CHCHO)(CH-COX(3)
式中、Rは、C~C22アルキル基であるか、または
【化1】
であり、Rは、C~C16アルキル基であり、nは、1~20の整数であり、mは、1~3の整数であり、Xは、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの対イオン、またはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、もしくはトリエタノールアミンなどのアミン塩である。いくつかの実施形態では、nは4~10の整数であり、mは1である。いくつかの実施形態では、Rは、C~C16アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、C12~C14アルキル基であり、nは4であり、mは1である。
【0095】
他の実施形態では、Rは、
【化2】
であり、Rは、C~C12アルキル基である。またさらに他の実施形態では、Rは、Cアルキル基であり、nは10であり、mは1である。
【0096】
別の部類のアニオン性界面活性剤には、StepanからのMCまたはPC-48などのアルファスルホン化カルボン酸エステルが含まれる。
【0097】
好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤は、スルホネート界面活性剤を含まない。
【0098】
一態様では、約2オンス/ガロン希釈を有する組成物は、約0.1重量%~約40重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、約0.1重量%~約38重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、約0.3重量%~約26重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、約0.5重量%~約13重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、または約0.6重量%~約6.4重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0099】
一態様では、約0.25~1オンス/ガロン希釈を有する組成物は、約0.2重量%~約50重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、約1重量%~約40重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、約2重量%~約30重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、または約2.5重量%~約25重量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む。加えて、本発明に従うよう限定するものではないが、列挙される全ての範囲は、範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0100】
追加の機能性成分
抗菌性組成物および殺ウイルス性組成物の構成要素は、様々な追加の機能性構成要素とさらに組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酸および少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、組成物の総重量の大量、または実質的に全てを構成する。例えば、いくつかの実施形態では、追加の機能性成分はほとんどまたはまったく含まれない。
【0101】
他の実施形態では、追加の機能性成分は、組成物に含まれてもよい。機能性成分は、組成物に所望の性質および機能性を付与する。本出願の目的のために、「機能性成分」という用語は、用途および/または水溶液などの濃縮溶液中に分散または溶解したときに、特定の用途において有益な特性を提供する材料を含む。機能性材料のいくつかの特定の例を以下にさらに詳細に説明するが、説明した特定の材料は、例としてのみ示されており、多種多様な他の機能性成分を使用することができる。
【0102】
好ましい実施形態では、組成物は、第四アンモニウム化合物を含まない。追加の実施形態では、組成物は、例えばエタノール、クエン酸銀、および/または電解塩素を含む従来のノロウイルス活性物質を含まない。追加の実施形態では、組成物は、不燃性産物を有益に提供するために、アルコールおよび/または他の有機溶媒を含まない。他の実施形態では、組成物は、固化剤、消泡剤、湿潤剤、再付着防止剤、溶解度調整剤、分散剤、すすぎ助剤、金属保護剤、安定剤、腐食防止剤、金属イオン封鎖剤および/またはキレート剤、閾値剤、香料および/または染料、レオロジー調整剤または増粘剤、ヒドロトロープまたはカプラー、緩衝剤、溶媒、センサーインジケーターなどを含んでもよい。
【0103】
界面活性剤
いくつかの実施形態では、組成物は、追加の界面活性剤を含む。組成物で使用するのに好適な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および/または双性イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組成物は、約0重量%~約40重量%、約0.1重量%~約38重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~15重量%の追加の界面活性剤、または約1重量%~約6重量%の追加の界面活性剤を含む。
【0104】
非イオン性界面活性剤
本発明の組成物で使用するのに好適な非イオン性界面活性剤には、アルコキシル化界面活性剤が挙げられる。好適なアルコキシル化界面活性剤としては、EO/POコポリマー、キャップドEO/POコポリマー、アルコールアルコキシレート、キャップドアルコールアルコキシレート、これらの混合物などが挙げられる。溶媒として使用するのに好適なアルコキシル化界面活性剤としては、Pluronicおよび逆Pluronic界面活性剤などのEO/POブロックコポリマー;Dehypon LS-54(R-(EO)(PO))およびDehypon LS-36(R-(EO)(PO))などのアルコールアルコキシレート;Plurafac LF221およびTegoten EC11などのキャップドアルコールアルコキシレート;これらの混合物などが挙げられる。
【0105】
例示的な態様では、「Pluronic」の商品名で市場で入手可能な非イオン性界面活性剤は、組成物中の追加の界面活性剤として含まれている。これらの化合物は、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合により形成される疎水性ベースとエチレンオキシドを縮合させることによって形成される。この分子の疎水性部分は、約1,500~1,800の分子量を有する。この疎水性部分へのポリオキシエチレンラジカルの付加は、分子の水溶性を全体として増加させる傾向があり、生成物の液体特性は、ポリオキシエチレン含有量が縮合生成物の総重量の約50%になるまで保持される。
【0106】
非イオン性界面活性剤の半極性タイプは、本発明の組成物に有用な別の部類の非イオン性界面活性剤である。半極性非イオン性界面活性剤としては、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。
【0107】
アミンオキシドは、一般式:
【化3】
に対応する第三級アミンオキシドであり、式中、矢印は半極性結合の慣例的表現であり、R、R、およびRは、脂肪族、芳香族、複素環式、脂環式、またはこれらの組み合わせであり得る。一般に、対象の洗剤のアミンオキシドについては、Rは、約8~約24個の炭素原子のアルキルラジカルであり、RおよびRは、1~3個の炭素原子のアルキルまたはヒドロキシアルキル、もしくはこれらの混合物であり、RおよびRは、例えば、酸素または窒素原子を介して互いに結合して、環構造を形成することができ、Rは、2~3個の炭素原子を含有するアルキレンまたはヒドロキシアルキレン基であり、nは、0~約20の範囲である。アミンオキシドは、対応するアミンと、過酸化水素などの酸化剤から生成することができる。
【0108】
有用な水溶性アミンオキシド界面活性剤は、オクチル、デシル、ドデシル、イソドデシル、ココナッツ、または獣脂アルキルジ-(低級アルキル)アミンオキシドから選択され、その具体例は、オクチルジメチルアミンオキシド、ノニルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、イソドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド、ペンタデシルジメチルアミンオキシド、ヘキサデシルジメチルアミンオキシド、ヘプタデシルジメチルアミンオキシド、オクタデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジプロピルアミンオキシド、ヘキサデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジブチルアミンオキシド、オクタデシルジブチルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-ドデコキシ-1-ヒドロキシプロピルアミンオキシド、ジメチル-(2-ヒドロキシドデシル)アミンオキシド、3,6,9-トリオクタデシルジメチルアミンオキシドおよび3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピルジ-(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシドである。
【0109】
両性界面活性剤
両性または両性電解質界面活性剤は、塩基性および酸性親水性基および有機疎水性基の両方を含む。これらのイオン性実体は、他の種類の界面活性剤について本明細書に記載されているアニオン性基またはカチオン性基のいずれであってもよい。塩基性窒素および酸性カルボキシレート基は、塩基性および酸性親水性基として用いられる典型的な官能基である。いくつかの界面活性剤では、スルホネート、スルフェート、ホスホネート、またはホスフェートが負電荷を与える。
【0110】
両性界面活性剤は、脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体として広く記載することができ、ここで脂肪族ラジカルは、直鎖または分岐であってよく、脂肪族置換基のうちの1個は、約8~18個の炭素原子を含み、1個は、アニオン性水可溶化基、例えば、カルボキシ、スルホ、スルファト、ホスファト、またはホスホノを含む。両性界面活性剤は、当業者に知られており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「Surfactant Encyclopedia」Cosmetics&Toiletries,Vol.104(2)69-71(1989)に記載されている2つの主なクラスに細分される。第1のクラスには、アシル/ジアルキルエチレンジアミン誘導体(例えば、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリン誘導体)およびそれらの塩が含まれる。第2のクラスには、N-アルキルアミノ酸およびそれらの塩が含まれる。いくつかの両性界面活性剤は、両方のクラスに適合すると想定され得る。
【0111】
両性界面活性剤は、当業者に知られている方法によって合成することができる。例えば、2-アルキルヒドロキシエチルイミダゾリンは、長鎖カルボン酸(または誘導体)とジアルキルエチレンジアミンとの縮合および閉環によって合成される。市販の両性界面活性剤は、その後の加水分解およびアルキル化によるイミダゾリン環の開環によって、例えばクロロ酢酸または酢酸エチルを用いて誘導体化される。アルキル化中に、1個または2個のカルボキシ-アルキル基が反応して、第三級アミンおよび異なるアルキル化剤とのエーテル結合を形成し、異なる第三級アミンを生じる。
【0112】
本発明において用途を有する長鎖イミダゾール誘導体は、一般に以下の一般式を有する:
【化4】
式中、Rは、約8~18個の炭素原子を含有する非環式疎水性基であり、Mは、アニオンの電荷を中和するためのカチオン、一般的にはナトリウムである。本組成物に用いることができる商業的に有名なイミダゾリン由来両性化合物としては、例えば、ココアンホプロピオネート、ココアンホカルボキシ-プロピオネート、ココアンホグリシネート、ココアンホカルボキシ-グリシネート、ココアンホプロピル-スルホネート、およびココアンホカルボキシ-プロピオン酸が挙げられる。アンホカルボン酸は、脂肪族イミダゾリンから生成することができ、ここで、アンホジカルボン酸のジカルボン酸官能基は、二酢酸および/またはジプロピオン酸である。
【0113】
本明細書で上記のカルボキシメチル化化合物(グリシネート)は、しばしばベタインと呼ばれる。ベタインは、双性イオン界面活性剤と題した以下の節において、本明細書で以下に説明される特別なクラスの両性化合物である。
【0114】
長鎖N-アルキルアミノ酸は、容易に、反応RNHによって調製され、Rは、C~C18直鎖または分岐鎖アルキル、ハロゲン化カルボン酸を有する脂肪アミンである。アミノ酸の第一級アミノ基のアルキル化は、第二級および第三級アミンをもたらす。アルキル置換基は、複数の反応性窒素中心を提供する追加のアミノ基を有してもよい。最も市販されているN-アルキルアミン酸は、β-アラニンまたはβ-N(2-カルボキシエチル)アラニンのアルキル誘導体である。本発明に適用される市販のN-アルキルアミノ酸両性電解質の例としては、アルキルβ-アミノジプロピオネート、RN(CCOOM)およびRNHCCOOMが挙げられる。実施形態では、Rは、約8~約18個の炭素原子を含有する非環式疎水性基であり得、Mは、アニオンの電荷を中和するためのカチオンである。
【0115】
適切な両性界面活性剤は、ココナッツ油またはココナッツ脂肪酸などのココナッツ製品から誘導されるものを含む。追加の適切なココナッツ由来界面活性剤は、それらの構造の一部として、エチレンジアミン部分、アルカノールアミド部分、アミノ酸部分、例えばグリシン、またはそれらの組み合わせ、および約8~18個(例えば12個)の炭素原子の脂肪族置換基を含む。そのような界面活性剤はまた、アルキルアンホジカルボン酸と考えることができる。これらの両性界面活性剤は、C12-アルキル-C(O)-NH-CH-CH-N(CH-CH-CONa)-CH-CH-OHまたはC12-アルキル-C(O)-N(H)-CH-CH-N(CH-CONa)-CH-CH-OHとして表される化学構造を含み得る。ココアンホジプロピオン酸二ナトリウムは、1つの適切な両性界面活性剤であり、Rhodia Inc.(Cranbury,N.J.)から商品名Miranol(商標)FBSで市販されている。化学名ココアンホ二酢酸二ナトリウムを有する別の適切なココナッツ由来両性界面活性剤は、同様にRhodia Inc.(Cranbury,N.J.)から商品名Mirataine(商標)JCHAで販売されている。
【0116】
両性クラスの典型的なリストおよびこれらの界面活性剤の種は、1975年12月30日にLaughlin and Heuringに発行された米国特許第3,929,678号に記載されている。さらなる例は、″Surface Active Agents and Detergents″(Vol.I and II by Schwartz,Perry and Berch)に記載されている。
【0117】
双性イオン界面活性剤
双性イオン界面活性剤は、両性界面活性剤のサブセットと考えることができ、アニオン電荷を含み得る。双性イオン界面活性剤は、第二級および第三級アミンの誘導体、複素環式第二級および第三級アミンの誘導体、または第四級アンモニウム、第四級ホスホニウム、または第三級スルホニウム化合物の誘導体として広く記載することができる。典型的には、双性イオン性界面活性剤は、正荷電第四級アンモニウム、または場合によってはスルホニウムもしくはホスホニウムイオン、負荷電カルボキシル基、およびアルキル基を含む。双性イオン性化合物は、一般に、分子の等電領域においてほぼ同程度にイオン化し、正-負電荷中心間に強い「内部塩」誘引を生じ得るカチオン性基およびアニオン性基を含有する。このような双性イオン性合成界面活性剤の例としては、脂肪族基が直鎖または分岐であり得る、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウム、およびスルホニウム化合物の誘導体が挙げられ、脂肪族置換基のうちの1個が、8~18個の炭素原子を含み、1個がアニオン性水可溶化基、例えば、カルボキシ、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、またはホスホネートを含む。
【0118】
ベタインおよびスルタイン界面活性剤は、本明細書で使用するための双性イオン界面活性剤の例である。これらの化合物の一般式は、以下:
【化5】
であり、式中、Rは、0~10個のエチレンオキシド部分および0~1個のグリセリル部分を有する、8~18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、またはヒドロキシアルキルラジカルを含み、Yは、窒素原子、リン原子、および硫黄原子からなる群から選択され、Rは、1~3個の炭素原子を含むアルキル基またはモノヒドロキシアルキル基であり、Yが硫黄原子であるとき、xは1であり、Yが窒素原子またはリン原子であるときは2であり、Rは、1~4個の炭素原子のアルキレンまたはヒドロキシアルキレンまたはヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、およびリン酸基からなる群から選択されたラジカルである。
【0119】
上に挙げた構造を有する双性イオン界面活性剤の例としては、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-N-オクタデシルアンモニオ]-ブタン-1-カルボキシレート、5-[S-3-ヒドロキシプロピル-S-ヘキサデシルスルホニオ]-3-ヒドロキシペンタン-1-スルフェート、3-[P,P-ジエチル-P-3,6,9-トリオキサテトラコサンホスホニオ]-2-ヒドロキシプロパン-1-ホスフェート、3-[N,N-ジプロピル-N-3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピル-アンモニオ]-プロパン-1-ホスホネート、3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)-プロパン-1-スルホネート、3-(N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-プロパン-1-スルホネート、4-[N,N-ジ(2(2-ヒドロキシエチル)-N(2-ヒドロキシドデシル)アンモニオ]-ブタン-1-カルボキシレート、3-[S-エチル-S-(3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピル)スルホニオ]-プロパン-1-ホスフェート、3-[P,P-ジメチル-P-ドデシルホスホニオ]-プロパン-1-ホスホネート、およびS[N,N-ジ(3-ヒドロキシプロピル)-N-ヘキサデシルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-ペンタン-1-スルフェートが挙げられる。当該洗剤界面活性剤に含まれるアルキル基は、直鎖または分岐および飽和または不飽和であり得る。
【0120】
本組成物における使用に適した双性イオン界面活性剤は、以下:
【化6】
の一般構造のベタインを含む。これらの界面活性剤ベタインは、典型的には、極端なpHにおいて強いカチオン性またはアニオン性を示さず、またそれらは等電点範囲で低い水溶性を示さない。「外部の」第四級アンモニウム塩とは異なり、ベタインはアニオン性物質と相溶性がある。適切なベタインの例としては、ココナッツアシルアミドプロピルジメチルベタイン、ヘキサデシルジメチルベタイン、C12~14アシルアミドプロピルベタイン、C8~14アシルアミドヘキシルジエチルベタイン、4-C14~16アシルメチルアミドジエチルアンモニオ-1-カルボキシブタン、C16~18アシルアミドジメチルベタイン、C12~16アシルアミドペンタンジエチルベタイン、およびC12~16アシルメチルアミドジメチルベタインが挙げられる。
【0121】
本発明において有用なスルタインは、式(R(RSO3-を有する化合物を含み、ここで、Rは、C~C18ヒドロカルビル基であり、各Rは、典型的には独立して、C~Cアルキル、例えばメチルであり、Rは、C~Cヒドロカルビル基、例えばC~Cアルキレンまたはヒドロキシアルキレン基である。
【0122】
双性イオン性クラスおよびこれらの界面活性剤の種の典型的なリストは、1975年12月30日にLaughlin and Heuringに発行された米国特許第3,929,678号に記載されている。さらなる例は、「Surface Active Agents and Detergents」(Vol.I and II by Schwartz,Perry and Berch)に記載されている。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
一実施形態では、本発明の組成物は、ベタインを含む。例えば、組成物は、ココアミドプロピルベタインを含むことができる。
【0124】
消泡剤
消泡剤も組成物に含めることができる。一般に、本発明に従って使用することができる消泡剤には、好ましくは、アルコールアルコキシレートおよびEO/POブロックコポリマーが挙げられる。消泡剤には、ポリアルキレングリコール縮合体、およびポリプロピルグリコールを含むプロピルグリコールも挙げることができる。いくつかの実施形態では、組成物は、本方法の適用例を考慮すれば、食品グレードの品質である泡止め剤または消泡剤を含むことができる。この目的のために、より効果的な泡止め剤のうちの1つには、シリコーンが含まれる。ジメチルシリコーン、グリコールポリシロキサン、メチルフェノールポリシロキサン、トリアルキルまたはテトラアルキルシラン、疎水性シリカ消泡剤、およびそれらの混合物などのシリコーンは全て、消泡用途に使用することができる。これらの消泡剤は、約0.01重量%~20重量%、0.01重量%~20重量%、約0.01重量%~5重量%、または約0.01重量%~約1重量%の濃度範囲で存在することができる。
【0125】
固化剤
固化剤(硬化剤とも呼ばれる)も固形組成物に含めることができる。固化剤は、固形組成物の均一な固化に著しく寄与する有機または無機の化合物または化合物の系を含むことができる。固化剤は、使用中に固形組成物から活性物質の均一な溶解をもたらすように混合および固化されると、固形組成物の活性構成要素と均質なマトリックスを形成できなければならない。
【0126】
例示的な固化剤には尿素が含まれる。尿素は、プリル化ビーズまたは粉末の形態であり得る。プリル化尿素は、一般に、約8~15のU.S.メッシュの範囲の粒径の混合物として、例えば、Arcadian Sohio Company、Nitrogen Chemicals Divisionから商業的供給源から入手可能である。尿素のプリル化形態は、好ましくは、単軸または二軸押出機などの湿式ミル、Teledyneミキサー、Ross乳化機などを使用して、約50U.S.メッシュ~約125U.S.メッシュ、特に約75~100U.S.メッシュに粒径を低下させるために粉砕される。
【0127】
さらなる固化剤は、例えば、以下を含む有機硬化剤であり得る:ポリエチレングリコール(PEG)化合物であり、一般式H(OCHCH)nOHの固体ポリエチレングリコールが含まれ、式中、nは15よりも大きく、特に約30~約1700であり、とりわけ、PEG4000、PEG1450、およびPEG8000などである。なおさらに、PEGは、様々な分子量、例えば約1,400~約30,000の分子量を含むことができる。ある特定の実施形態では、固化剤は、固体PEG、例えばPEG1500からPEG20,000までを含むか、またはこれらである。ある特定の実施形態では、PEGには、PEG1450、PEG3350、PEG4500、PEG8000、PEG20,000などが挙げられる。適切な固体ポリエチレングリコールは、商品名CARBOWAXでUNION Carbideから市販されている。
【0128】
追加の固化剤は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩であり得る炭酸塩、硫酸塩および重炭酸塩を含むがこれらに限定されない水和可能な無機塩を含む無機硬化剤であり得る。好適な塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ストロンチウム、亜鉛、マンガン、ランタン、チタン、ガリウム、アルミニウム、コバルト、銅、モリブデン、レニウム、ロジウム、スカンジウム、スズおよびジルコニウムが挙げられる好適な金属塩としては、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、および炭酸塩を含むがこれらに限定されないナトリウム、リチウム、カリウム塩が挙げられる。特に有用な金属塩としては、リチウム、ナトリウムならびにカリウムの硫酸塩、塩化物および酢酸塩が挙げられる。以下の特許は、本発明の固形組成物に利用できる固化剤、結合剤および/または硬化剤の様々な組み合わせを開示している。以下の米国特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第7,153,820号;同第7,094,746号;同第7,087,569号;同第7,037,886号;同第6,831,054号;同第6,730,653号;同第6,660,707号;同第6,653,266号;同第6,583,094号;同第6,410,495号;同第6,258,765号;同第6,177,392号;同第6,156,715号;同第5,858,299号;同第5,316,688号;同第5,234,615号;同第5,198,198号;同第5,078,301号;同第4,595,520号;同第4,680,134号;同第RE32,763号;および同第RE32818号。
【0129】
さらに、固化剤はポリマーを含むことができ、増粘剤はキサンタンガム、グアーガム、または植物粘液からの他のガムなどの天然ガム;アルギン酸塩、デンプン、およびセルロース系ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース)などの多糖類ベースの増粘剤;固体EO/POブロックコポリマー;ポリアクリレート;ならびにハイドロコロイドを含む。一実施形態では、増粘剤は、対象物の表面に汚染残留物を残さない。例えば、増粘剤またはゲル化剤は、接触領域の食品または他の敏感な製品と適合性があり得る。
【0130】
固化剤は、約0重量%~70重量%、0重量%~50重量%、約0.01重量%~30重量%、または約0.01重量%~約20重量%、または約1重量%~約20重量%の範囲で組成物中に含まれ得る。固体酸とアニオン性界面活性剤との組み合わせを使用する他の実施形態では、本明細書に開示される様々な固形配合物中の安定化固形組成物を提供するための固化剤はほとんどまたは全く必要ない。
【0131】
使用方法
抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、例えば殺ウイルス効力を含める抗菌効力を必要としている表面を処理するのに特によく適している。さらなる態様では、抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルスおよび/または任意のエンベロープウイルスに対する殺ウイルス効力を必要とする表面を処理するのによりさらによく適している。特定の態様では、抗菌組成物および殺ウイルス組成物は、ノロウイルスを含める小型の非エンベロープウイルスを不活性化する必要がある表面を処理するのに特によく適している。したがって、本開示によれば、抗菌剤を使用する方法が包含される。本開示によれば、ウイルスを不活性化する方法も包含される。本開示によれば、小型の非エンベロープウイルスを不活性化する方法も包含される。さらに、本開示によれば、ノロウイルスを不活性化する方法が包含される。
【0132】
ウイルスの不活性化を伴う抗ウイルス消毒を含む抗菌薬の使用方法は、本明細書に開示される抗菌組成物および殺ウイルス組成物が処理を必要とする表面に適用される接触工程を含む。一態様では、組成物の接触は、ノロウイルスを含むカルシフォームウイルスなどのエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスを含むウイルスで汚染された表面に対するものである。好ましい態様では、使用方法は、ノロウイルスの完全な死滅を提供する。有益なことに、一態様では、表面上のノロウイルスの完全な死滅は、10分未満、5分未満、2分未満、1分未満、または30秒未満の接触時間で達成される。
【0133】
さらなる態様では、組成物の接触は、バイオフィルムで汚染された表面に対するものである。本明細書で言及するように、バイオフィルムはしばしば水と接触する表面に形成され、多糖類の水和マトリックスを提供し、殺生物剤および抗菌剤からの構造的保護を提供し、バイオフィルムを他の病原体よりも死滅させにくくさせる。接触させる工程は、例えば、壁、床、シンク、カウンタートップ、排水管、パイプおよび他の配管表面、チューブおよびバルブなどのバイオフィルムと接触する硬質表面に抗菌組成物および/または殺ウイルス組成物を提供することを含み得る。本方法および組成物を使用することができる例示的な産業としては、ホテル、ハウスキーピングおよび外食産業を含む機関産業、食品加工産業、水ケア産業、清掃業、医療が挙げられるが、これらに限定されない。本方法の実施形態によれば、接触させる工程は、多種多様な細菌および他の微生物によって生成されるバイオフィルム成長を低減および/または排除する。例えば、一実施形態によれば、バイオフィルムを処理する方法は、例えば、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureusおよびListeria monocytogenesを含むグラム陽性およびグラム陰性細菌の両方などの様々な病原体を含むバイオフィルムに有効である。
【0134】
さらなる態様では、抗菌組成物および/または殺ウイルス組成物の接触は、食品接触および/または食品非接触の硬質表面に対するものであり得る。このような表面は、医療器械などの器械をさらに含むことができる。表面には、様々な用品を含む、サードシンクの消毒でクリーニングされたものも含むことができる。さらなる態様では、組成物の接触は、CIP(所定の場所でのクリーニング)用途に対するものであり得る。
【0135】
さらなる態様では、組成物の接触は、用品洗浄用途などの用品洗浄機に対するものであり得る。
【0136】
さらなる態様では、組成物の接触は、サードシンク消毒用途に対するものであり得る。さらに別の態様では、接触は、ファーストシンク洗剤と有益に適合し、それにより、サードシンク消毒工程をファーストシンク洗剤と組み合わせるための水のリサイクルとして使用することができる。これは、ファーストシンク洗剤と適合しない第四級アンモニウム化合物を含有する従来の組成物を超える利点である。
【0137】
さらなる態様では、組成物の接触は、組織処理用途を含む、組織表面に対するものであり得る。例示的な組織表面には、例えばヒトの手を含む、動物またはヒトの皮膚などの哺乳動物の皮膚が含まれる。
【0138】
組成物を適用することができる様々な表面は、任意の従来の適用手段を含むことができる。適用には、例えば、拭き取り、噴霧、ディッピング、浸漬などが含まれ得る。接触は、最初に水に溶解される固形物を提供して接触用の溶液を形成することも含むことができる。接触工程は、組成物が汚れた表面に所定の時間接触することを可能にする。時間の長さは、数秒~1時間、約30秒~約15分、またはそれらの間の任意の範囲を含む、可能にするのに十分なものであり得る。これらの方法は、すすぎ工程など、直接物理的に除去せずに組成物を表面に適用する単一の工程を含んでもよい。有益には、組成物は、すすぎなしの用途を提供する。
【0139】
いくつかの態様では、この方法は、クリーニング組成物が適用され、拭き取りされ、および/またはすすぎが行われるような予めクリーニングする工程をさらに含むことができ、その後、組成物の適用が続く。その組成物およびその使用方法は、クリーニングされた、または汚れた表面を処理する含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物と表面との間の接触時間の長さは、バイオフィルムで汚れた表面の上または表面中の微生物の集団(ノロウイルスを含む)を減少させて、90%超の減少(1対数オーダーの減少)、このような集団での99%超の減少(2対数オーダーの減少)、このような集団での99.9%超の減少(3対数オーダーの減少)、このような集団での99.99%超の減少(4対数オーダーの減少)、または微生物および病原体の集団での99.999%超の減少(5対数オーダーの減少)を提供するのに十分なものである。
【0140】
有益なことに、これらの方法は、すすぎ工程を必要としない。一態様では、組成物は、食品との接触が承認されており、すすぎ工程を必要としない。さらなる利点として、この方法は腐食を引き起こさず、および/または表面と干渉しない(例えば、表面に及ぼす曇った、鈍い、または他の負の美的効果)。
【0141】
この方法には、任意に、様々なセンサーおよび/またはインジケータの使用を含むことができる。一態様では、使用溶液中の活性成分のレベルは、様々な方法で監視することができる。1つのアプローチでは、製品の殺生物効力が著しく低下し始める溶液の臨界pHは、色の変化によって視覚的に示され、色の変化は、このpHで劇的な色の変化を示す染料を選択することによって達成される。染料は製品に簡単に組み込むことができ、染料をポリマー基材に組み込んで色変化ストリップを形成することが好ましく、そのストリップは容器に、例えば、溶液が変化したときに色の変化を示すためにサードシンクに置かれ、溶液が臨界pH値を通過すると色変化を示す。さらに、使用溶液中のアニオン性界面活性剤のレベルも同様の方法で監視でき、色の変化は殺生物効力に必要なアニオン性界面活性剤の臨界濃度を示すであろう。
【0142】
追加の実施形態では、視覚的インジケータの代替として、pH、アニオン活性、蛍光、および/または伝導率を含む使用溶液の特性は、溶液が指定範囲内に入らなくなると、視覚的または可聴信号を提供するセンサーによって監視することができる。いくつかの実施形態では、使用溶液中の活性成分の変化がマーカー分子の物理的および/または化学的特性の変化を誘発するマーカー分子を組成物に加えることができ、その変化は信号処理を通じて定量化される。
【0143】
様々な従来の抗菌組成物に見られるような第四級アンモニウム化合物の使用を超えるさらなる利点として、本明細書に開示される抗菌および抗ウイルス組成物は、例えば、マイクロファイバークロス、モップ、コーティングされた表面などを含む軟質表面などの処理表面に吸着することはない。
【0144】
本明細書における全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野の当業者の水準を示している。全ての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に参照により組み込まれるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0145】
本発明の実施形態は、以下の非限定的な実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、例示のみのために与えられていることを理解されたい。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態の種々の変更および修正を行い、これを種々の用途および条件に適合させることができる。したがって、当業者には、本発明の実施形態の種々の修正は、本明細書に示され記載されたものに加えて、前述の説明から明らかであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0146】
ノロウイルス試験プロトコル。(実施例1~4)
サンプルを、400ppmの合成硬水で表に列挙されている化学物質の活性レベルを提供するように調製した。合成水は、400ppmの炭酸カルシウムのAOAC硬水であった。これらの溶液のpHを測定し、記録した。
【0147】
ネコカリシウイルス(FCV)株VR782は、ノロウイルスの有効性評価のサロゲートであり、ASTM E1053-11 5% ウシ胎児血清が有機土壌として選択された後に試験した。化学物質は、3つの異なる試験に対して二通りで、合計6回繰り返して試験し、全て繰り返しが必要とされる完全な不活性化(生存生物なし)が、合格結果とみなされた。実施例1~4では、ウイルス力価は6.5~7対数であった。6回の繰り返しが試験される前に不合格が観察された場合、試験は終了し、不合格として報告された。実施例1~4は、公衆衛生のサポートおよび対象の食品安全性においてウイルス集団を確実に減らすことができる化学物質を特定する高チャレンジ試験を示している。
【0148】
以下の略語は、評価された配合物の構成要素に対して、実施例で使用されている。
LAS:アニオン性界面活性剤、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
MSA:酸、メタンスルホン酸
DOS:アニオン性界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
SAS:酸、重硫酸ナトリウム
Pluronic F68:非イオン性界面活性剤、第一級ヒドロキシル基で終わる二官能性ブロックコポリマー界面活性剤
Pluronic 17R4:非イオン性界面活性剤、二官能性ブロックコポリマー界面活性剤、ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)、PPG-PEG-PPG
SXS:ヒドロトープ、キシレンスルホン酸ナトリウム
【0149】
実施例1
5分間の有効性評価。サンプルを、表3に概説した化学物質の活性レベルで、400ppmの合成水(SW)中で調製した。組成物の有効性を、上記で概説したノロウイルス試験プロトコルに従って5分間の接触時間で評価した。弱酸(乳酸)と強酸(MSA)のブレンドを使用した組成物1-2は、試験生物の完全な不活性化を提供できたが、強酸(硫酸)のみを使用した組成物1-1は、組成物が非常に類似したpH値(それぞれ、2.4および2.5)であるにもかかわらず、試験生物の完全な不活性化を提供しなかった。
【表11】
【0150】
結果は、酸の選択が、試験生物に対する有効性の結果に影響を与えることを示している。結果に基づいて、組成物1-1の追加の強酸濃度および/または組成物1-1への弱酸の添加は、有効性結果に合格する可能性があると仮定される。したがって、追加の試験を行った。
【0151】
実施例2
FCVノロウイルス接触の30秒での有効性評価。サンプルを、表4に概説した化学物質の活性レベルで400ppmのSW中で調製した。評価された組成物の有効性を、上記で概説したノロウイルス試験プロトコルに従って30秒間の接触時間で評価した。
【表12】
【0152】
表に示すように、実施例1における5分間の接触時間で完全な不活性化が提供された組成物1-2は、30秒間の接触時間で試験生物の完全な不活化を提供しなかった。加えて、2.1のpHであっても、430ppmのLASを有する組成物2-2は、30秒間の接触時間で試験生物の完全な不活性化を提供しなかった。LAS濃度が650ppmに増加すると、組成物2-5については、試験生物の完全な不活性化が、2.1のpHで達成された。完全な不活性化が観察されたが、低アルカリ性給水で調製された組成物は、pH2.0未満の使用溶液pHをもたらすため、低いpH範囲は、特定の表面の処理には好ましくない場合がある。これらの結果に基づいて、30秒間の有効性の主張をサポートできるより高いpH範囲を有する組成物を特定するために、有効性性能に対する乳酸の寄与ならびに別のアニオン性界面活性剤の添加を決定する追加評価が必要とされた。
【0153】
実施例3
FCVノロウイルス接触の30秒間の有効性評価-乳酸の有効性寄与。サンプルを、表5に概説した化学物質の活性レベルで400ppmのSW中で調製した。組成物の有効性を、上記で概説したノロウイルス試験プロトコルに従って、30秒、60秒、1、2、および5分の接触時間で評価した。
【表13】
【0154】
試験生物の完全な不活性化は、乳酸を組成物3-2および3-4に対して、3000ppmまで増加させたときに、540ppmほどの低いLAS濃度で30秒の時点で達成された。試験生物の完全な不活性化は、同様またはより低い使用溶液のpHで研究された低濃度の乳酸では達成されなかった。
【0155】
実施例4
追加のアニオン性界面活性剤の評価。サンプルを、表6に概説した化学物質の活性レベルで400ppmのSW中で調製した。組成物の有効性を、上記で概説したノロウイルス試験プロトコルに従って、30秒および60秒の接触時間で評価した。
【表14】
【0156】
結果は、組成物4-1に第2のアニオン性界面活性剤を組み込むことが、60秒の接触時間で試験生物の完全な不活性化をサポートすることを示している。
【0157】
実施例5
クリーニング組成物からの残留物のクリーニング性能評価。サンプルを、表7に概説した化学物質の活性レベルで5グレーンの水で調製した。0.5gの試験物質をチーズクロスに添加した。硬質表面を拭き、空気乾燥させた(約10分)。表面の視覚的評価を、1~5のスケールでランク付けし、1が最高の外観を有した。
【表15】
【0158】
図1に示すように、本開示の実施形態によるLASおよび酸のクリーニング組成物は、全ての評価表面上で、市販の製品PureおよびPurellを超える著しい視覚的な改善を示している。強酸(LAS 590ppm MSA)、弱酸(LAS 4600ppm LA)、および強/弱酸(LAS 6A)を使用する化学物質は全て、表面クリーニング外観の視覚的評価に関して、市販の製品よりも優れている。この評価は、クリーニング剤組成物が曇ったまたは粘着性の表面をもたらさないことを確実にするために重要である。弱酸(LAS 4600ppm LA)および強酸/弱酸(LAS 6A)組成物の視覚的評価は同等にランク付けされたが、酸の組み合わせによって得られる配合効果のために、強酸/弱酸(LAS 6A)について好ましい結果が得られた。
【0159】
実施例6
腐食評価。サンプルを、表8に概説した化学物質の活性レベルで5グレーンの水で調製した。溶液のpHを測定し、記録した。特に明記しない限り、試験化学物質は、5グレーンの水で調製した。
【表16】
【0160】
1インチ×2インチのアルミニウム6061クーポンの重量、高さ、幅、および奥行きを測定して、記録した。50mLの試験化学物質を含むサンプルジャーにクーポンを添加し、50℃のオーブンで3日間暴露した。暴露時間は、化学物質に1分、2回/日、365日/年暴露した場合の用品の約5年間の寿命を表す。指定された暴露期間の後、アルミニウムクーポンを溶液から取り出し、DI水ですすぎ、乾燥させた。サンプルを視覚的に評価し、再測定した。視覚的評価およびデータの変化率は、3日間の暴露結果を表している表9に示している。
【表17】
【0161】
表9に示すように、記録された視覚的変化は、強酸および/または弱酸を用いる評価された組成物が全て、処理表面上の腐食性の欠如に関して、市販のPurell製品よりも優れていることを示している。
【0162】
実施例7
様々な酸のペアによる腐食評価。表10A~10Cに概説した濃縮配合物の1オンス/ガロン希釈液を作製することによって、サンプルをDI水で調製した。溶液のpHを測定し、記録した。アルミニウム6061クーポンを、試験化学物質を入れたサンプルジャーに添加し、50℃のオーブンで約12時間、24時間、3日間、1週間、2週間、および4週間の時点で暴露させた。指定された暴露期間の後、アルミニウムクーポンを溶液から取り出し、DI水ですすぎ、乾燥させた。
【表18】
【0163】
【表19】
【0164】
【表20】
【0165】
サンプルを視覚的に評価し、クーポンの光沢を測定した。光沢データは、クーポンのくすみを捕捉するための測定基準として使用された。光沢値が低くなるほど、クーポンのより多くの変化が観察された。結果を表11に示し、表11は、pHおよび20°の光沢データを報告している。これらの結果は、組成物の実施形態に従う強酸と弱酸との組み合わせについての選好を示している。例えば、B4-MSAとB4-SAS(重硫酸ナトリウム)との間の結果の違いは、MSA強酸含有組成物が、処理表面に約4倍低いくすみをもたらすことを示している(光沢度が高くなることが、くすんだ表面とは対照的に光沢のある表面を表している)。同様に、B4-MSAとA4-MSAとの間の結果の違いは、乳酸の弱酸含有組成物が、処理表面に約4倍低いくすみをもたらすことを示している(光沢度が高くなることが、くすんだ表面とは対照的に光沢のある表面を表している)。
【表21】
【0166】
実施例8
市販の組成物と比較した抗菌組成物の優位性を実証するために、追加のテストを実施した。これらの研究の力価が5~7の範囲であるという修正を加えて、実施例1~3に記載されているのと同じ方法およびプロトコルを使用した。温度条件は、20~26℃の周囲温度であった。
【0167】
最初の研究では、ネコカリシウイルス(FCV)ノロウイルスサロゲート(VR782株)を表13に従って評価した。本開示による表12に示した配合処方1は、抗菌効力のためにLASを酸と組み合わせる。配合物1を、0.20重量%で希釈した。Bardac 205Mマルチ-クワット(quat)を含有する市販のクワット配合物(3%のn-アルキル(50%のC14、40%のC12、10%のC16)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、2.25%のオクチルデシルジメチルアンモニウムクロリド、1~5%のエタノール、1.35%のジデシルジメチルアンモニウムクロリド、0.9%のジオクチルジメチルアンモニウムクロリド)および塩素(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、二水和物)を有効性比較の対照として使用した。市販のクワット配合物は、15重量%の活性物質を有し、0.53重量%で希釈した。50ppmの塩素、は0.1g/Lに希釈した。
【表22】
【0168】
【表23】
【0169】
表13に示すように、塩素および配合処方1は、両方とも30秒の接触時間で完全な不活性化を達成できたが、マルチ4成分対照配合物は、平均で1.125対数の減少を達成したに過ぎなかった。
【0170】
2番目の研究では、ネズミノロウイルス(MNV)サロゲート株を、0.42重量%に希釈した表12の配合物1を使用して、表14に従って評価した。市販のクワット配合物は、15重量%の活性物質を含み、0.53重量%に希釈した。50ppmの塩素(次亜塩素酸ナトリウム10%)を、0.05重量%に希釈した。100ppmの塩素(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、二水和物)を、0.18g/Lに希釈した。200ppmの塩素(次亜塩素酸ナトリウム10%)を0.20重量%に希釈した。塩素の評価のために選択された濃度は、すすぎなし適用についての許容濃度に基づいており、400ppmの活性クワット、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物から塩素が供給される場合100ppm、次亜塩素酸ナトリウムから供給される場合200ppmが含まれる。加えて、評価された濃度は、現在許容されている臭気、残留物、および腐食プロファイルを有する化学物質の閾値レベルである。したがって、望ましい臭気、残留物、および腐食プロファイルを備えたすすぎなし適用機能に加えて、ウイルスの完全な不活化(または少なくとも5対数減少)を有する主張される組成物は、有益である。組成物およびその使用方法の特定の利点に限定されるものではないが、すすぎなし適用は必須ではない。すすぎ工程は、さらに使用することができる。
【表24】
【0171】
表14に示すように、酸とアニオン性界面活性剤を組み合わせた配合処方1は、市販のマルチクワット組成物および塩素組成物の対照よりも優れた結果をもたらす。配合処方1は、5分の接触時間での完全な不活性化を実証している。しかしながら、同じ条件下では、市販のマルチクワット組成物は、2.5対数減少のみを達成できたに過ぎない。同じ条件下での50ppmの塩素は、対数減少を示さず、100ppmの塩素は、1対数未満の減少を示した。
【0172】
実施例9
固形組成物(この実施例では、配合物1~11)は、全ての環境試験室で安定でありながら、食品接触消毒の目標酸性pHで安定した固形物を提供できる、食品接触消毒に許可された固体酸を使用して評価した。表15に、評価された圧縮固形配合物を示している。圧縮/錠剤/パック配合物では、顆粒を用いてCarver油圧プレスを使用したが、粉末は手で混合した。
【表25】
【0173】
表16は、鋳造および押し出しの両方で製造された配合物を示している。鋳造配合物は蒸気ジャケットを使用し、押出配合物はベーキングパンを使用した。
【表26】
【0174】
固形配合物1~8は、pHについて、500ppm軟水および400ppm軟水(接種前)でノロウイルスを増殖させるためのEMEM緩衝液で分析し、食品接触消毒レベルを取得し、ならびにすすぎ工程の排除が望ましい場合の使用用途を含むノロウイルスを不活性化する能力を確認した。EMEM緩衝液は、FCVを増殖および懸濁させるために使用される。
【0175】
pH測定値を、表17に示している。配合物9~11は、これらが配合処方8と同様の配合物であるため、pHについては試験しなかった。
【表27】
【0176】
圧縮/粉末/顆粒用に作製された配合処方1~7をビーカーで混合し、安定性試験室に入れて2週間まで観察した。鋳造用の配合処方8~11をオーバーヘッドミキサーおよび加熱用のスチームジャケットを用いてブレンドし、冷凍庫内の成形型に1時間セットし、観察が行われた場所で解凍した。配合処方8~11も押し出しによって作製し、押し出しについては、配合物をパンでブレンドおよび混練し、観察が行われる成形型に入れた。視覚的評価に従って安定性の結果を評価し、固形物からの配合処方のしみ出しがないことを確認し、結果を表18に示している。
【表28】
【0177】
配合処方1~5は、配合物中の2つの酸(強酸および弱酸)の組み合わせで十分な安定性を提供した。配合処方6~7は、クエン酸の濃度の結果として染み出しを示した。代替の固形配合物(例えば、粉末)または包装を使用した固形物(例えば、非透湿性)として提供するなど、安定した弱酸のみの配合物を提供するために修正が必要となるだろう。あるいは、配合物に添加された水分および/または脂肪酸をほとんど吸収しない他の弱酸を選択することが可能である。
【0178】
マイクロ有効性データを、表19に示している。Staph、E.Coli、E.Coli O157:H7、Listeria、およびSalmonellaの試験では、標準のAOAC 960.09: Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfection Methodsを採用した。ネコカルシウイルス(FCV)試験では、ASTM E1053-11:無生物の非多孔性環境表面の殺菌を目的とした化学物質の殺ウイルス活性を評価する標準試験方法を採用した。
【表29】
【0179】
【表30】
【0180】
表19に示すように、固形配合物は、抗菌剤、特に液体配合物で達成された殺ウイルス効力を有益に維持している。この組成物は、食品接触消毒およびノロウイルスの完全な失活を達成する。
【0181】
実施例10
追加の固形安定性試験を実施して、安定した配合物のための酸の組み合わせを評価した。安定性テストは、40℃において65%の相対湿度を有する湿度試験室で行われた。視覚的評価を、毎週行った。評価された配合物および結果を、表20~23に示している。
【0182】
【表31】
【0183】
【表32】
【0184】
【表33】
【0185】
【表34】
【0186】
本発明がこのように記載されていることから、本発明が多くの方法で変更され得ることは明らかであろう。このような変更は、本発明の趣旨および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、全てのこのような修正は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。上記明細書は、開示された組成物および方法の製造および使用の説明を提供する。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの実施形態を行うことができるため、本発明は特許請求の範囲に属する。以下の項目[1]~[47]に、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
約10重量%~約75重量%の少なくとも1つの酸と、
少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートアニオン性界面活性剤と、
水と、を含む、抗菌組成物であって、
前記組成物が、不燃性である酸性pHを有する希釈可能な液体濃縮物である、組成物。
[2]
前記アニオン性界面活性剤が、C8~C22アルキルスルホネート、および/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、前記酸が、強酸、弱酸、および/またはこれらの組み合わせである、項目1に記載の組成物。
[3]
前記C8~C22アルキルスルホネートが、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸である、項目2に記載の組成物。
[4]
前記酸が、乳酸およびメタンスルホン酸を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
非イオン性界面活性剤、好ましくは、EO/POブロックコポリマーを有するアルコキシル化界面活性剤をさらに含む、項目1~4のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
前記組成物が、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5の使用pHを有する、項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記酸が、約30重量%~約70重量%を構成し、前記少なくとも1つのアニオン性界面活性剤が、約0.1重量%~約38重量%を構成し、約1重量%~約38重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分と、水を含む残部と、をさらに含む、項目1~6のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
前記少なくとも1つの酸が、約10重量%~約50重量%を構成する弱酸と、約0.1重量%~約19重量%を構成する強酸とを含む、項目7に記載の組成物。
[9]
前記組成物の約1重量%~約38重量%を構成する非イオン性界面活性剤をさらに含み、および/または少なくとも1つのアニオン性界面活性剤が、約0.2重量%~約50重量%を構成し、任意に、約1重量%~約75重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分と、水を含む残部とをさらに含む、項目5~8のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
前記液体組成物が、拭き取り基材上に飽和している、項目1~9のいずれか一項に記載の組成物。
[11]
前記液体組成物が、約5ppm~約10,000ppmの少なくとも1つの酸と、約10ppm~約6,000ppmのアニオン性界面活性剤と、を含む即時使用可能な濃度である、項目1~9のいずれか一項に記載の組成物。
[12]
抗菌組成物を使用する方法であって、
項目1~11のいずれか一項に記載の抗菌組成物を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、
前記方法が、少なくとも3対数の微生物減少を達成する、方法。
[13]
前記接触させることが、拭き取り、ディッピング、浸漬、または噴霧によるものである、項目12に記載の方法。
[14]
前記表面が、硬質表面、予めクリーニングされた硬質表面、ノロウイルスで汚染された表面、バイオフィルムで汚染された表面、および/またはヒトもしくは哺乳動物の組織である、項目12又は13に記載の方法。
[15]
接触させることが、5分未満、2分未満、1分未満、または30秒未満でノロウイルスの完全な死滅を提供する、項目14に記載の方法。
[16]
前記濃縮物が、約1/8オンス/ガロン~約2オンス/ガロン、約1/4オンス/ガロン~約1オンス/ガロン、または約1/2オンス/ガロン~約1オンス/ガロンの割合で希釈されて、使用溶液を形成し、前記使用溶液が、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5の使用溶液pHを有する、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
[17]
前記組成物の前記適用が、個人用保護具の使用を必要としない、項目12~16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
センサーおよび/またはインジケータが、前記組成物が殺生物効力を失う溶液のpH、前記使用溶液中のアニオン性界面活性剤の濃度、蛍光、および/また伝導率のうちの少なくとも1つを測定および検出するために使用される、項目12~17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
前記接触させる工程が、約40°F~160°F、または約60°F~140°F、または約70°F~140°Fの水性使用温度で行われる、項目12~18のいずれか一項に記載の方法。
[20]
使用溶液が、約5ppm~約10,000ppmの少なくとも1つの酸と、約10ppm~約6,000ppmの少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、を含む、項目12~19のいずれか一項に記載の方法。
[21]
約10重量%~約75重量%の少なくとも1つの強酸および少なくとも1つの弱酸と、
少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートアニオン性界面活性剤と、
水と、を含む、殺ウイルス組成物であって、
前記組成物が、不燃性である希釈可能な酸性液体濃縮物である、組成物。
[22]
前記アニオン性界面活性剤が、C8~C22アルキルスルホネート、および/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸である、項目21に記載の組成物。
[23]
前記組成物の使用pHが、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5である、項目21~22のいずれか一項に記載の組成物。
[24]
非イオン性界面活性剤をさらに含む、項目21~23のいずれか一項に記載の組成物。
[25]
前記弱酸が、約10重量%~約50重量%を構成し、前記強酸が、約0.1重量%~約19重量%を構成し、前記少なくとも1つのアニオン性界面活性剤が、約0.2重量%~約50重量%を構成する、項目21~24のいずれか一項に記載の組成物。
[26]
ウイルスを不活性化する方法であって、前記方法が、
項目21~25のいずれか一項に記載の殺ウイルス組成物を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、
前記接触させることが、1分未満内に、または好ましくは30秒未満内に、少なくとも3対数減少から完全な不活性化までの抗ウイルス不活性化効力を提供し、
前記方法が、処理された表面に残留物を付与しない、方法。
[27]
前記ウイルスが、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、および/またはエンベロープウイルスであり、好ましくは、前記ウイルスが、ノロウイルスである、項目26に記載の方法。
[28]
約10重量%~約70重量%の少なくとも1つの酸と、
少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートアニオン性界面活性剤と、
少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および/または固化剤と、を含む、固形抗菌組成物であって、
前記固形組成物の使用溶液が、酸性のpHを有し、かつ不燃性である、組成物。
[29]
前記アニオン性界面活性剤が、C8~C22アルキルスルホネート、および/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸である、項目28に記載の組成物。
[30]
前記1つ以上の酸が、強酸、弱酸、またはこれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記酸が、乳酸およびメタンスルホン酸を含む、項目28又は29に記載の組成物。
[31]
前記非イオン性界面活性剤が、EO/POブロックコポリマーを有するアルコキシル化界面活性剤である、項目28~30のいずれか一項に記載の組成物。
[32]
前記組成物の前記使用溶液が、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5のpHを有する、項目28~31のいずれか一項に記載の組成物。
[33]
前記アニオン性界面活性剤が、前記固形組成物の約0.1重量%~約38重量%を構成し、前記酸が、前記固形組成物の約8重量%~約55重量%を構成する弱酸および前記固形組成物の約2重量%~約75重量%を構成する強酸を含み、任意に、約1重量%~約25重量%の少なくとも1つの追加の機能性成分をさらに含む、項目28~32のいずれか一項に記載の組成物。
[34]
前記固化剤が、尿素、PEG、および/または固化ポリマーである、項目28~33のいずれか一項に記載の組成物。
[35]
抗菌組成物を使用する方法であって、
項目28~34のいずれか一項に記載の固形抗菌組成物を、処理を必要とする表面に接触させることを含み、
前記方法が、すすぎ工程を必要とせず、少なくとも3対数の微生物減少を達成する、方法。
[36]
前記接触させることが、拭き取り、ディッピング、浸漬、または噴霧によるものである、項目35に記載の方法。
[37]
前記表面が、硬質表面、予めクリーニングされた硬質表面、ノロウイルスで汚染された表面、バイオフィルムで汚染された表面、および/またはヒトもしくは哺乳動物の組織である、項目35又は36に記載の方法。
[38]
前記接触させることが、5分未満、2分未満、1分未満、または30秒未満で、前記ノロウイルスの完全な死滅を提供し、前記使用溶液のpHが、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5である、項目35~27のいずれか一項に記載の方法。
[39]
前記使用溶液の前記適用および/または前記固形組成物の取り扱いが、個人用保護具の使用を必要としない、および/または前記接触させる工程が、約40°F~160°F、または約60°F~140°F、または約70°F~140°Fの水性使用温度で行われる、項目35~38のいずれか一項に記載の方法。
[40]
センサーおよび/またはインジケータが、前記組成物が殺生物効力を失う溶液のpH、前記使用溶液中のアニオン性界面活性剤の濃度、蛍光、および/また伝導率のうちの少なくとも1つを測定および検出するために使用される、項目35~39のいずれか一項に記載の方法。
[41]
使用溶液が、約50ppm~約6000ppmの弱酸および強酸と、約10ppm~約6000ppmのアニオン性界面活性剤と、を含む、項目35~40のいずれか一項に記載の方法。
[42]
約10重量%~約70重量%の少なくとも1つの酸であって、前記酸が、弱酸、強酸、またはこれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの酸と、
少なくとも1つのスルホネート、スルフェートおよび/またはカルボキシレートアニオン性界面活性剤と、
少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および/または固化剤と、を含む、固形殺ウイルス組成物であって、
前記固形組成物が、不燃性である希釈可能な酸性液体濃縮物である使用溶液を提供する、組成物。
[43]
前記アニオン性界面活性剤が、C8~C22アルキルスルホネート、および/またはアルファスルホン化カルボン酸もしくはそのエステルであり、好ましくは、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸である、項目42に記載の組成物。
[44]
前記組成物の使用pHが、約1.5~約4、約2~約4、約2.2~約3.5、または約2.5~約3.5である、項目42又は43に記載の組成物。
[45]
前記弱酸が、前記固形組成物の約8重量%~約55重量%を構成し、前記強酸が、前記固形組成物の約2重量%~約75重量%を構成し、前記アニオン性界面活性剤が、前記固形組成物の約1重量%~約40重量%を構成する、項目42~44のいずれか一項に記載の組成物。
[46]
ウイルスを不活性化する方法であって、前記方法が、
項目42~45のいずれか一項に記載の固形殺ウイルス組成物を水性源と接触させて、使用溶液を生成することと、
前記使用溶液を、ウイルス不活化を必要とする表面に接触させることと、を含み、
前記表面と接触させることが、1分未満内に、または好ましくは30秒未満に、少なくとも3対数減少から完全な不活性化までの抗ウイルス不活性化効力を提供する、方法。
[47]
前記ウイルスが、小型の非エンベロープウイルス、大型の非エンベロープウイルス、および/またはエンベロープウイルスであり、好ましくは、前記ウイルスが、ノロウイルスである、項目46に記載の方法。
図1