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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】レンズ移動機構
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240819BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240819BHJP
   G02B 7/08 20210101ALI20240819BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240819BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B30/00
G02B7/08 B
G02B7/04 D
H04N23/57
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022522681
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2022080024
(87)【国際公開番号】W WO2023168636
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】516180667
【氏名又は名称】北京小米移動軟件有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Xiaomi Mobile Software Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.018, Floor 8, Building 6, Yard 33, Middle Xierqi Road, Haidian District, Beijing 100085, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宇野 勝
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-031622(JP,A)
【文献】特開2000-139086(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0045207(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0088946(US,A1)
【文献】特開2010-176073(JP,A)
【文献】特開2008-199755(JP,A)
【文献】特開2018-101045(JP,A)
【文献】特開2009-258497(JP,A)
【文献】特開2008-167561(JP,A)
【文献】特開2004-159425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/08
G03B 5/00
G03B 15/00
G03B 30/00
H02N 2/00
H04N 23/50-51
H04N 23/55
H04N 23/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも径内側または径外側に一定曲率の周面を有して光軸まわりの周方向に回転可能な部分を有し、当該部分の回転に伴ってレンズが光軸方向に移動するように前記レンズを支持するレンズ支持部と、
前記レンズ支持部に対して径方向で対向する位置に設けられた駆動部と、を備え、
前記駆動部は、通電により伸長する圧電素子と、前記圧電素子と連動するように設けられ前記レンズ支持部の前記周面に当接可能に設けられた押圧部と、を備え、通電により前記圧電素子を伸長させることにより前記押圧部を前記レンズ支持部の前記周面に対して周方向成分を有するように押圧することで前記レンズ支持部を回転させ
前記駆動部は、前記レンズ支持部の周方向の一方側に位置する第1駆動体と、前記レンズ支持部の周方向の他方側に位置する第2駆動体と、を一体に備え、
前記第1駆動体、前記第2駆動体の各々が、前記圧電素子及び前記押圧部を備え、
前記第1駆動体が備える前記押圧部と、前記第2駆動体が備える前記押圧部とは互いに、前記周面に対向する先端の方が基端よりも離れるように形成されているレンズ移動機構。
【請求項2】
前記レンズ支持部は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒と、
前記回転筒に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒と、を備え、
前記回転筒は、前記進退筒に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝が形成されており、前記回転筒の、前記進退筒の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部の前記押圧部における先端が位置し、
前記進退筒は、前記回転筒の前記斜行溝に位置する案内突起を備え、
前記駆動部への通電により前記圧電素子を伸長させることにより、前記押圧部の前記先端が、前記回転筒の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記斜行溝と前記案内突起とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒を光軸方向に移動させる、請求項1に記載のレンズ移動機構。
【請求項3】
前記レンズ支持部は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒と、
前記回転筒に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒と、を備え、
前記進退筒は、前記回転筒に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝が形成されており、前記回転筒の、前記進退筒の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部の前記押圧部における先端が位置し、
前記回転筒は、前記進退筒の前記斜行溝に位置する案内突起を備え、
前記駆動部への通電により前記圧電素子を伸長させることにより、前記押圧部の前記先端が、前記進退筒の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記案内突起と前記斜行溝とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒を光軸方向に移動させる、請求項1に記載のレンズ移動機構。
【請求項4】
前記レンズ支持部の径方向に隣接して、前記周方向に回転しない支持体が設けられており、
複数の前記駆動部が、前記支持体に周方向の一定間隔をおいて固定されている、請求項1~のいずれかに記載のレンズ移動機構。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載のレンズ移動機構を備えたカメラモジュール。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のレンズ移動機構を備えた端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン内蔵カメラや小型カメラに用いられるレンズ移動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラにおいて、例えばオートフォーカス機能を実現するためのレンズ移動機構が設けられている。レンズ移動機構の従来技術として、例えば、日本国特開2006-284876号公報に記載のもの(レンズ鏡筒)が挙げられる。このような従来技術では、回転モータによりレンズが光軸方向に移動させられるよう構成されていた。従って、機構の小型化が困難であって、しかも構成が複雑であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことに鑑み、本発明は、構成を小型化でき、しかも単純な構成のレンズ移動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの形態は、少なくとも径内側または径外側に一定曲率の周面を有して光軸まわりの周方向に回転可能な部分を有し、当該部分の回転に伴ってレンズが光軸方向に移動するように前記レンズを支持するレンズ支持部と、前記レンズ支持部に対して径方向で対向する位置に設けられた駆動部と、を備え、前記駆動部は、通電により伸長する圧電素子と、前記圧電素子と連動するように設けられ前記レンズ支持部の前記周面に当接可能に設けられた押圧部と、を備え、通電により前記圧電素子を伸長させることにより前記押圧部を前記レンズ支持部の前記周面に対して周方向成分を有するように押圧することで前記レンズ支持部を回転させるレンズ移動機構である。
【0005】
また、前記レンズ支持部は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒と、前記回転筒に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒と、を備え、前記回転筒は、前記進退筒に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝が形成されており、前記回転筒の、前記進退筒の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部の前記押圧部における先端が位置し、前記進退筒は、前記回転筒の前記斜行溝に位置する案内突起を備え、前記駆動部への通電により前記圧電素子を伸長させることにより、前記押圧部の前記先端が、前記回転筒の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記斜行溝と前記案内突起とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒を光軸方向に移動させるものとできる。
【0006】
また、前記レンズ支持部は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒と、前記回転筒に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒と、を備え、前記進退筒は、前記回転筒に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝が形成されており、前記回転筒の、前記進退筒の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部の前記押圧部における先端が位置し、前記回転筒は、前記進退筒の前記斜行溝に位置する案内突起を備え、前記駆動部への通電により前記圧電素子を伸長させることにより、前記押圧部の前記先端が、前記進退筒の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記案内突起と前記斜行溝とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒を光軸方向に移動させるものとできる。
【0007】
また、前記駆動部は、前記レンズ支持部の周方向の一方側に位置する第1駆動体と、前記レンズ支持部の周方向の他方側に位置する第2駆動体と、を一体に備え、前記第1駆動体、前記第2駆動体の各々が、前記圧電素子及び前記押圧部を備えるものとできる。
【0008】
また、前記第1駆動体が備える前記押圧部と、前記第2駆動体が備える前記押圧部とは互いに、前記周面に対向する先端の方が基端よりも離れるように形成されているものとできる。
【0009】
また、前記レンズ支持部の径方向に隣接して、前記周方向に回転しない支持体が設けられており、複数の前記駆動部が、前記支持体に周方向の一定間隔をおいて固定されているものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ移動機構の構造を概略的に示し、構成部材をそれぞれ分解して光軸方向に並べて示した分解斜視図である。
図2図2は、前記レンズ移動機構の径方向断面図である。
図3図3は、前記レンズ移動機構においてレンズ支持部が沈み込んだ状態を示す光軸方向断面図である。
図4図4は、前記レンズ移動機構においてレンズ支持部が飛び出た状態を示す光軸方向断面図である。
図5図5は、前記レンズ移動機構の駆動部を示す側面図である。
図6図6は、前記レンズ移動機構においてレンズ支持部が沈み込んだ状態であって、支持体を除去して示した側面図である。
図7図7は、前記レンズ移動機構においてレンズ支持部が飛び出た状態であって、支持体を除去して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るレンズ移動機構1を、図面を示しつつ説明する。以下の説明における、「光軸方向」、「周方向」、「径方向」、「径内」、「径外」は、特記のない限り、レンズ移動機構1全体における方向を示す。つまり、レンズ移動機構1における光軸方向に対して周回する方向が周方向である。そして、光軸方向に直交する方向が径方向である。
【0012】
図1に全体の分解図を示す。図示上方がカメラにおける被写体を向く方向であり、下方がカメラの撮像素子の方向である。図1において左方に示す部分が本実施形態のレンズ移動機構1を構成する。図1で右方に示す部分は、撮像光に対して絞りを行う絞り機構Xである。なお、絞り機構Xは本発明に直接の関係がないことから、以下で詳細な説明を行わない。
【0013】
本実施形態のレンズ移動機構1ではカメラ(スマートフォン等に内蔵されるカメラではカメラ機能に関する部分)内でレンズを光軸方向に移動させることでオートフォーカス機能を実現する。このレンズ移動機構1はいわゆる「沈胴式」とされており、後述する回転筒21と進退筒22とが組み合わされた状態で実質的に円筒状であるレンズ支持部2を光軸方向に前進及び後退させることができる。図3及び図6がレンズ支持部2の沈み込んだ状態であり、図4及び図7がレンズ支持部2の飛び出た状態である。なお図6及び図7では、支持体4を除去して示していることから、駆動部5が浮いているように示されているが、実際には駆動部5は支持体4に固定されている。
【0014】
本実施形態のレンズ移動機構1は、主に、レンズ支持部2、レンズ3(ここではレンズ支持部2に支持されたレンズを指し、レンズ移動機構1の外部に配置されたレンズは含まない)、支持体4、駆動部5を備える。レンズ支持部2は、少なくとも径内側または径外側に一定曲率の周面を有する。レンズ支持部2は、光軸まわりの周方向に回転可能な部分を有する。レンズ支持部2は、前記回転可能な部分の回転に伴ってレンズ3が光軸方向に移動するように、カメラが備える撮像素子に撮像光を結像させるためのレンズ3を支持する。
【0015】
レンズ支持部2は、光軸方向の一定位置で周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒21(前記回転可能な部分に相当する)と、回転筒21に対して径内側に隣接する実質的に円筒状の進退筒22と、カバー部23とを備える。回転筒21は、少なくとも進退筒22に対向する内面に、光軸方向に対して斜め方向、より詳しくは光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる(後述する両端部の水平部2111を除く)斜行溝211が形成されている。本実施形態の斜行溝211は、回転筒21において径方向に貫通したスリット状とされている。また、回転筒21には、同一形状の斜行溝211が複数(本実施形態では3本)、周方向に一定間隔(本実施形態では60度)をおいて形成されている。本実施形態では、図1に示すように、斜行溝211における光軸方向の一方側(被写体側)の端部と、周方向で隣り合う他の斜行溝211における光軸方向の他方側(撮像素子側)の端部が周方向でほぼ同一位置にある。しかしこれに限定されず、両端部が周方向に離れていたり、重なり合っていたりしてもよい。
【0016】
進退筒22は、支持体4のうち進退筒22の径内側に位置する一部との間に介在する回転止め部材7(本実施形態では、図2に示すように光軸方向に延びる溝に配置されたボール)によって回転不能とされている。この回転止め部材7は、図2に示すように、周方向では駆動部5と同じ位置に設けられている。後述する押圧部552,562の押圧力が回転筒21に及ぶ位置の径内側に回転止め部材7が存在することから、進退筒22を光軸方向に安定的に移動させることができる。進退筒22は、外周面から径方向に突出する案内突起221を備える。案内突起221は、回転筒21の斜行溝211に入り込むように位置する(図3図4図6図7参照)。この位置関係により、案内突起221が、回転する回転筒21における斜行溝211の延長方向に沿う内側面に当接することによって、光軸方向に移動させられる。回転筒21の周方向に対する斜行溝211の傾斜角度は、径方向視で一定とされている。このため、回転筒21の回転量と進退筒22の光軸方向への移動量の関係を一定とできる。なお、回転筒21の周方向に対する斜行溝211の傾斜角度を緩めたり急にしたりすることにより、回転筒21の回転量と進退筒22の光軸方向への移動量の比を変更でき、レンズ3の所望の移動量を実現できる。案内突起221は、周方向に一定間隔(本実施形態で60度)をおいて3個形成されている。
【0017】
以上のようにレンズ支持部2が構成されたことにより、回転筒21が後述する駆動部5により、図1に示す方向21Mに回転させられると、周方向に移動する各斜行溝211が周方向に不動の各案内突起221を光軸方向に案内する。これに伴い、進退筒22が光軸方向(図1に示す方向22M)に移動する。進退筒22の内部には、レンズ3と、レンズ3を支持する枠状のレンズ支持体6が設けられている。詳細は説明しないが、レンズ支持体6には手ブレ防止機構が設けられており、レンズ3を手ブレに応じて光軸と直交する方向に微細に移動させることで、撮像素子に結像される映像がブレにくいようにされる。このため、本実施形態における進退筒22は、外周面が円周面を有しており内部が空洞である点で実質的に円筒状であるが、内周面については図1に示すように円周面を有さず、レンズ支持体6を配置可能な面を有している。進退筒22の被写体寄り部分には絞り機構Xが設けられている。進退筒22の被写体寄り部分の端部にはカバー部23が取り付けられている。また、回転筒21と進退筒22との間にはOリング8が設けられている。これにより回転筒21と進退筒22との間に水分や塵埃が混入することを抑制できる。
【0018】
ここで、斜行溝211の両端部は、図6及び図7に示すように、周方向に沿う水平部2111とされている。この水平部2111に後述する進退筒22の案内突起221が図示のように位置することで、例えば駆動部5の押圧部552,562と回転筒21の外周面との間で滑りが生じたことにより、駆動部5による回転筒21の回転(つまり回転筒21の周方向移動距離)に多少のずれが生じたとしても、水平部2111に案内突起221を位置させることで、進退筒22を光軸方向の一定位置に保持することができる。このように水平部2111を設けることで、レンズ3が光軸方向から傾いてしまうことを防止し、レンズ支持部2を安定的に動作させることができる。
【0019】
支持体4は、内周部41と、内周部41の外側に設けられる外周部42とを備える。支持体4のうち内周部41は、レンズ支持部2の径方向に隣接して、回転しないように設けられている。レンズ支持部2は、光軸方向への移動に伴い、支持体4に対して沈み込んだり(図3参照)、飛び出たり(図4参照)する。
【0020】
駆動部5は、レンズ支持部2に対して径方向で対向する位置に設けられている。本実施形態では、複数(本実施形態では3台)の駆動部5が、支持体4に周方向の一定間隔(本実施形態では60度)をおいて固定されている。図5に示すように、駆動部5は、基部51、緩衝部52、ガイドピン53、ホルダ54、第1駆動体55、第2駆動体56を備える。第1駆動体55、第2駆動体56の各々は、通電により伸長する圧電素子551,561と、圧電素子551,561と連動するように設けられレンズ支持部2の周面(本実施形態では回転筒21の外周面)に当接可能に設けられた押圧部552,562と、を備える。
【0021】
基部51は支持体4に固定される部分である。本実施形態の基部51は有底の筒状に形成されており、内部にホルダ54が基部51基準で前後移動可能に(レンズ移動機構1全体では径方向へ移動可能に)設けられる。ホルダ54には対称形状である第1駆動体55及び第2駆動体56が固定されている。つまり駆動部5は、第1駆動体55及び第2駆動体56を一体に備える。緩衝部52は基部51とホルダ54との間に設けられている。緩衝部52はホルダ54の移動に伴い伸縮する。本実施形態の緩衝部52はゴム板から構成されている。ガイドピン53は光軸方向に沿うように基部51を貫通している。ホルダ54及び緩衝部52には、基部51基準で前後方向に延びる長穴57が形成されていて、ガイドピン53はこの長穴57を貫通している。このためホルダ54と第1駆動体55及び第2駆動体56は、基部51に対して長穴57の形成範囲内で前後移動可能となっている。
【0022】
第1駆動体55は、レンズ支持部2の周方向の一方側に位置する。第2駆動体56は、レンズ支持部2の周方向の他方側に位置する。第1駆動体55、第2駆動体56の各々は、正電圧の通電により伸長し、逆電圧の通電により短縮する圧電素子551,561、及び、圧電素子551,561と連動するように設けられレンズ支持部2の周面(本実施形態では回転筒21の外周面)に当接可能に設けられた押圧部552,562を備える。本実施形態の押圧部552,562は図示のように、圧電素子551,561に通電されていない状態では回転筒21の外周面に当接しているが、圧電素子551,561への正電圧の通電時(伸長時)にのみ当接するよう構成してもよい。
【0023】
圧電素子551,561は六面体(直方体)形状であってホルダ54に埋め込まれるようにして固定されている。押圧部552,562はセラミックから形成された板状であり、一面が各圧電素子551,561において互いに対向している面に対して接着されて一体となっている。なお、押圧部552,562はホルダ54には固定されておらず、圧電素子551,561の伸縮に伴い、ホルダ54に対して移動可能である。押圧部552,562における先端には、厚み寸法が拡大した拡大部5521,5621を有している。つまり、押圧部552,562の本体と拡大部5521,5621とは一体に形成されている。本実施形態の拡大部5521,5621の断面形状は円形とされている。拡大部5521,5621は、回転筒21の、進退筒22の隣接する側と反対の周面(本実施形態では外周面)に対向するように位置する。拡大部5521,5621は、回転筒21の外周面における、斜行溝211に重ならない下部領域に対向するように位置する。
【0024】
第1駆動体55と第2駆動体56とは対向して設けられている。第1駆動体55と第2駆動体56の対向する方向はレンズ移動機構1の周方向に沿っている。第1駆動体55が備える押圧部552と、第2駆動体56が備える押圧部562とは互いに、回転筒21の外周面に対向する先端の方が基端よりも離れるように形成されている。両押圧部552,562は、図5に示すように逆V字形状に配置されている。圧電素子551,561に正電圧をかけた場合の伸長方向551M,561Mは、図上において矢印で示した方向であって、前記逆V字形状を構成する両押圧部552,562の対称中心に向かう方向である。圧電素子551,561に逆電圧をかけた場合の短縮方向は、前記伸長方向と逆の方向である。なお、通電を停止すると、圧電素子551,561は伸縮前の形状に戻る。圧電素子551,561の伸長により、押圧部552,562は同方向に移動する。通電を周期的に行うことにより、通電間隔に対応した周波数で押圧部552,562を駆動させられ、この周波数に対応した周期で押圧部552,562(具体的には拡大部5521,5621)を、回転筒21に対して間欠的に押圧することができる。
【0025】
なお、圧電素子551,561に逆電圧をかけることは必須ではなく、正電圧を間欠的にかけるのみであってもよい。逆電圧をかけることに関し、例えば、第1駆動体55の圧電素子551に正電圧をかける場合、同時に第2駆動体56の圧電素子561に逆電圧をかける。そうすると圧電素子561は短縮するため、第2駆動体56の押圧部562は回転筒21の外周面から離間する。よって、押圧部562が回転筒21の外周面に当接したままであることに比べ、押圧部562が回転筒21を回転させる際の抵抗になりにくい。第2駆動体56の圧電素子561に正電圧をかける場合は前記と逆で、同時に第1駆動体55の圧電素子551に逆電圧をかけることになる。
【0026】
圧電素子551,561の伸長に伴う、押圧部552,562(拡大部5521,5621)の回転筒21の外周面に対する押圧は、周方向成分を有するようになされる。このため、押圧の際に周方向に向かう力(摩擦力)を回転筒21に及ぼすことができる。従って、押圧部552,562(拡大部5521,5621)は回転筒21を周方向に、通電周期に応じて連続して蹴るような動作を行う。これにより回転筒21は回転させられる。複数(本実施形態では3台)の駆動部5の各々への通電は同時になされる。つまり、複数(本実施形態では3台)の駆動部5は同期駆動する。このため、周方向の複数個所(本実施形態では3箇所)で同時に回転力を回転筒21に生じさせることができるので、スムーズな回転が可能である。回転筒21の外周面のうち、少なくとも押圧部552,562が押圧する部分は一定曲率とされている。このため、押圧部552,562の押圧力によって生じる回転筒21の回転力を一定にすることができ、安定した回転を実現できる。回転筒21が回転すると、斜行溝211と案内突起221とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、進退筒22は光軸方向に移動する。第1駆動体55を正電圧の印加によって駆動させた際(第2駆動体56には逆電圧が同時に印加される)には回転筒21は一方向に回転し、第2駆動体56を正電圧の印加によって駆動させた際(第1駆動体55には逆電圧が同時に印加される)には回転筒21は逆方向に回転する。これにより、レンズ3を撮像素子に対して接近させたり離反させたりすることができ、これにより撮像素子に対してピント合わせをできるので、オートフォーカス機能を実現できる。
【0027】
前記説明のように、本実施形態は、少なくとも径内側または径外側に一定曲率の周面を有して光軸まわりの周方向に回転可能な部分(回転筒21)を有し、当該部分(回転筒21)の回転に伴ってレンズ3が光軸方向に移動するように前記レンズ3を支持するレンズ支持部2と、前記レンズ支持部2に対して径方向で対向する位置に設けられた駆動部5と、を備え、前記駆動部5は、通電により伸長する圧電素子551,561と、前記圧電素子551,561と連動するように設けられ前記レンズ支持部2の前記周面に当接可能に設けられた押圧部552,562と、を備え、通電により前記圧電素子551,561を伸長させることにより前記押圧部552,562を前記レンズ支持部2の前記周面に対して周方向成分を有するように押圧することで前記レンズ支持部2を回転させるレンズ移動機構1である。
【0028】
この構成によると、圧電素子551,561の伸長により押圧部552,562をレンズ支持部2の外周に対して周方向成分を有するように押圧することでレンズ支持部2を回転させることができる。回転のための主な構成は圧電素子551,561と押圧部552,562だけでよいので、従来の回転モータによる駆動に比べ、構成を小型化でき、しかも単純な構成とできる。
【0029】
また、前記レンズ支持部2は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒21と、前記回転筒に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒22と、を備え、前記回転筒21は、前記進退筒22に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝211が形成されており、前記回転筒21の、前記進退筒22の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部5の前記押圧部552,562における先端(拡大部5521,5621)が位置し、前記進退筒22は、前記回転筒21の前記斜行溝211に位置する案内突起221を備え、前記駆動部5への通電により前記圧電素子551,561を伸長させることにより、前記押圧部552,562の前記先端(拡大部5521,5621)が、前記回転筒21の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記斜行溝211と前記案内突起221とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒22を光軸方向に移動させるものとできる。
【0030】
この構成によると、圧電素子551,561の伸長により生じる力を、回転筒21の斜行溝211と進退筒22の案内突起221とによる、回転力の光軸方向に向かう力への変換により、進退筒22を光軸方向に移動させるために有効に利用できる。
【0031】
また、前記レンズ支持部2は、光軸方向の一定位置で前記周方向に回転する実質的に円筒状の回転筒21と、前記回転筒21に対して径内側または径外側に隣接する実質的に円筒状の進退筒22と、を備え、前記進退筒22は、前記回転筒21に対向する面に、光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる斜行溝が形成されており、前記回転筒21の、前記進退筒22の隣接する側と反対の周面に対向するように前記駆動部5の前記押圧部552,562における先端(拡大部5521,5621)が位置し、前記回転筒21は、前記進退筒22の前記斜行溝に位置する案内突起を備え、前記駆動部5への通電により前記圧電素子551,561を伸長させることにより、前記押圧部552,562の前記先端(拡大部5521,5621)が、前記進退筒22の前記周面を前記周方向に押圧することで、前記案内突起と前記斜行溝とにより回転力が光軸方向に向かう力に変換されて、前記進退筒22を光軸方向に移動させるものとできる。
【0032】
この構成によると、圧電素子551,561の伸長により生じる力を、進退筒22の斜行溝と回転筒21の案内突起221とによる、回転力の光軸方向に向かう力への変換により、進退筒22を光軸方向に移動させるために有効に利用できる。
【0033】
また、前記駆動部5は、前記レンズ支持部2の周方向の一方側に位置する第1駆動体55と、前記レンズ支持部2の周方向の他方側に位置する第2駆動体56と、を一体に備え、前記第1駆動体55、前記第2駆動体56の各々が、前記圧電素子551,561及び前記押圧部552,562を備えるものとできる。
【0034】
この構成によると、レンズ支持部2の一方向への回転と逆方向への回転を1台の駆動部5で行うことができる。
【0035】
また、前記第1駆動体55が備える前記押圧部552,562と、前記第2駆動体56が備える前記押圧部552,562とは互いに、前記周面に対向する先端(拡大部5521,5621)の方が基端よりも離れるように形成されているものとできる。
【0036】
この構成によると、第1駆動体55と第2駆動体56とを交錯させずに配置できる。
【0037】
また、前記レンズ支持部2の径方向に隣接して、前記周方向に回転しない支持体4が設けられており、複数の前記駆動部5が、前記支持体4に周方向の一定間隔をおいて固定されているものとできる。
【0038】
この構成によると、複数の駆動部5が支持体4に周方向の一定間隔をおいて固定されたことで、レンズ支持部2を円滑に回転させられる。
【0039】
以上のように構成された本実施形態によると、構成を小型化でき、しかも単純な構成のレンズ移動機構1を提供できる。
【0040】
本実施形態は以上のとおりであるが、本発明は、前述した形態に限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更されることが可能である。また、本発明の作用効果も、前記実施形態で述べたもの限定されない。即ち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく特許請求の範囲によって画定される。また、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0041】
例えば、駆動部5が支持体4(固定側)ではなくレンズ支持部2(回転側)に設けられていてもよい。この場合、駆動部5は支持体4を押圧するよう構成される。また、駆動部5はレンズ支持部2と共に回転する。また、駆動部5が支持体4(固定側)に設けられる場合でも、前記実施形態とは逆に、レンズ支持部2に対する径内位置に設けられていてもよい。
【0042】
また、回転筒21と進退筒22は径方向での内外関係が前記実施形態と逆であってもよい。ただし前記実施形態と逆の配置とした場合、進退筒22の内部に配置される部材が回転筒21と干渉しない位置関係とされる必要がある。
【0043】
また、回転筒21と進退筒22は径方向での内外関係が前記実施形態と同じであるが、進退筒22に斜行溝を形成し、回転筒21に案内突起を形成してもよい。
【0044】
また、回転筒21と進退筒22とを一体化して、回転しつつ進退する筒体として形成してもよい。この場合、一体形成された筒体からなるレンズ支持部2に斜行溝を形成し、支持体4に案内突起を形成する。駆動部5はレンズ支持部2を周方向に押圧するように配置される。
【0045】
また、前記実施形態における斜行溝211の代わりに、レンズ支持部2において光軸方向及び周方向に交わる方向に延びる突条を形成し、前記実施形態における案内突起221の代わりに、突条に対してスライドできる部分を形成しても、前記実施形態と同様にレンズ支持部2を光軸方向に移動させられる。
【符号の説明】
【0046】
1 レンズ移動機構
2 レンズ支持部
21 回転筒
211 斜行溝
2111 水平部
21M 回転筒の回転方向
22 進退筒
221 案内突起
22M 進退筒の移動方向
23 カバー部
3 レンズ
4 支持体
41 内周部
411 外壁部
412 内壁部
42 外周部
5 駆動部
51 基部
52 緩衝部
53 ガイドピン
54 ホルダ
55 第1駆動体
551 圧電素子
551M 伸長方向
552 押圧部
5521 押圧部の先端、拡大部
56 第2駆動体
561 圧電素子
561M 伸長方向
562 押圧部
5621 押圧部の先端、拡大部
57 長穴
6 レンズ支持体
7 ボール
8 Oリング
M 伸長方向(圧電素子)
X 絞り機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7