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特許7539987内部膨潤緩和および外部冷却機能を備えた電池セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】内部膨潤緩和および外部冷却機能を備えた電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20240819BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20240819BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/6551
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/209
H01M50/474
H01M50/486
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022536815
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2020053125
(87)【国際公開番号】W WO2021130471
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】1918466.2
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1918465.4
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】イアン アンドリュー ハント
(72)【発明者】
【氏名】アレックス マッドセン
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02200109(EP,A2)
【文献】特表2016-522546(JP,A)
【文献】特開2019-021384(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189007(WO,A1)
【文献】特表2016-511509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/471-486
H01M 50/102-198
H01M 10/613
H01M 10/6551
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極アセンブリと電解質を含むセルアセンブリ
記セルアセンブリを収容する筐体と、
膨潤補償部材を有する電池セルと
記筐体の外側表面と熱接触している冷却部材を備え、
前記膨潤補償部材は、前記筐体の内側表面の第1の部分が前記膨潤補償部材と接触し、前記筐体の内側表面の第2の部分が前記膨潤補償部材と接触していないように、前記電極アセンブリおよび前記筐体の内側表面と接触しているように構成され、
前記冷却部材と接触している前記筐体の外側表面の少なくとも一部が、前記膨潤補償部材と接触していない前記筐体の内側表面の少なくとも一部に対応しており、
前記膨潤補償部材は、少なくとも半開放多孔質構造を有する材料を含み、使用中、前記膨潤補償部材が、前記電極アセンブリの膨潤時に少なくとも一次元で収縮し、前記電極アセンブリの収縮時に少なくとも一次元で膨張するように構成されている、
電池
【請求項2】
前記膨潤補償部材の細孔が、前記電池セルで使用するための電解質を含む、請求項1に記載の電池
【請求項3】
1つまたは複数の膨潤補償部材を含む、請求項1又は2に記載の電池
【請求項4】
前記筐体は、可撓性ポーチ材料または実質的に剛性の材料を含む、請求項1~3のいずれかに記載の電池
【請求項5】
前記筐体は、実質的に互いに垂直である3対の、実質的に対向する側壁を含む実質的に立方体の形状であり、前記冷却部材が第1の対の側壁に実質的に平行であり、前記膨潤補償部材が第2または第3の対の側壁に実質的に平行である、請求項1~4のいずれかに記載の電池
【請求項6】
請求項5において、複数の前記電池セルを備え、2つ以上の前記電池セルが並べて配置され、共通の冷却部材を共有する、電池。
【請求項7】
前記冷却部材は、隣接している第1の電池セルと第2の電池セルとの間に配置された1つまたは複数の冷却フィンを含み、各冷却フィンが前記第1の電池セルの第2の側面および前記第2の電池セルの第2の側面と熱接触し、前記冷却フィンと接触している前記第1および第2の電池セルの前記第2の側面がそれぞれ前記第1および第2の電池セルの冷却側面である、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記第1の電池セルの冷却側面の内側表面、および前記第2の電池セルの冷却側面の内側表面が、前記第1および第2の電池セルのそれぞれの膨潤補償部材と接触していない、請求項7に記載の電池。
【請求項9】
第3の電池セルを含み、前記第3の電池セルは、前記第3の電池セルの第2の側面が前記第2の電池セルの前記第2の側面に隣接するように、前記第2の電池セルと並べて隣接配置され、前記第2および第3のセルの隣接する側面がそれぞれ前記第2および第3の電池セルの絶縁側面であり、前記第3の電池セルの前記絶縁側面の内側表面および第2の電池セルの前記絶縁側面の内側表面が、前記第2及び第3の電池セルのそれぞれの前記膨潤補償部材と接触している請求項8に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内部膨潤緩和および外部冷却機能を有する電池セルに関する。特に、本開示は、内部膨潤緩和および電池セルの筐体と接触している外部冷却部材を有する電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池または再充電可能な電池は、携帯電話、ラップトップ、パーソナルケアデバイス、ホームケアデバイス、電気自動車など、あらゆるタイプのポータブル電気デバイスで一般的に使用されている。二次電池の動作性能と寿命は、提供する製品の品質とエンドユーザーに認識される金銭的価値にとって極めて重要である。
【0003】
エンドユーザーの観点から見た二次電池の主な性能の特徴は、電池が蓄えることができる電力量と、電池をすばやく充電できることである。二次電池技術の分野では、電池の急速な充電と放電が電池の寿命を縮める可能性があることはよく知られている。高温での充電と放電は電池に損傷を与え、それにより電池の寿命を縮めたり、壊滅的な故障を引き起こしたりする可能性があることも知られている。
【0004】
二次電池のもう1つの一般的な問題は、一般に電解質の酸化によって引き起こされる、時間の経過に伴う電解質の損失である。電池内の電解質の量が減少すると、電池の容量と寿命がそれに伴って減少する。
【0005】
二次電池のさらによく知られている特性は、電池が充電/放電サイクルを繰り返すと、電極(通常は陽極)が膨潤および収縮する可能性があることである。電極の膨潤または収縮は、特定の電池の化学的性質に応じて、電池の充電または放電時に発生する可能性がある。一部の電池の化学的性質は、他の化学的性質よりも大量の膨潤/収縮を引き起こす。電極はまた、その寿命を通して膨潤する可能性がある。
【0006】
二次電池の設計では、電極の膨潤/収縮特性を考慮する必要がある。従来、二次電池セルは、固定寸法の剛性筐体に収められている。電極の膨潤による筐体の過大応力や損傷を防ぐために、剛性筐体は電極の膨潤に対応できるサイズにする必要がある。ただし、電池の性能を維持するためには、電極アセンブリに一定量の圧力を維持する必要があり、この圧力は電極の収縮によって低下する可能性がある。したがって、これら2つの相反する設計要件の間でバランスを取らなければならない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、電極アセンブリおよび電解質を含むセルアセンブリ、セルアセンブリを収容する筐体を備える電池を提供し、電池は、膨潤補償部材、および筐体の最外面と熱接触している冷却部材を備える。膨潤補償部材は、筐体の最内面の第1の部分が膨潤補償部材と接触し、筐体の最内面の第2の部分が膨潤補償部材と接触していないように、電極アセンブリおよび筐体の最内面と接触しているように構成され、冷却部材と接触している筐体の最外面の少なくとも一部が、膨潤補償部材と接触していない筐体の最内面の少なくとも一部に対応している。
【0008】
使用中、電極アセンブリは、セルアセンブリの充電/放電サイクルに応じて収縮および/または膨潤する。有利なことに、膨潤補償部材は電極アセンブリの膨潤時に収縮し、電極アセンブリの収縮時に膨張して、外部寸法変化の影響を低減し、膨潤状態に関係なく電極アセンブリの圧縮を維持することができる。膨潤補償部材は多孔質構造を有するスポンジ状の材料を含むため、膨潤補償部材は電池セルから他の構成要素または他の電池セルへの熱伝達を防ぐのに役立つ断熱材として機能する。膨潤補償部材の位置は、電池セルの他の領域の断熱を提供しながら電池セルからの最適な熱伝達を確実にすべく冷却部材の位置に対して最適な位置に選択される。
【0009】
膨潤補償部材は、任意選択で、少なくとも半開放多孔質構造を有する材料を含み、使用中、膨潤補償部材は、電極アセンブリの膨潤時に少なくとも一次元で収縮し、電極アセンブリの収縮時に少なくとも一次元で膨張するように構成される。
【0010】
任意選択で、膨潤補償部材の細孔は、電池セルで使用するための電解質を含む。膨潤補償部材の細孔に含まれる電解質は、電池セルの動作中に時間の経過とともに失われた電解質を補充して、電池セルの寿命を延ばし、性能を維持することができる。
【0011】
電池セルは、電池セルの設計に最もよく適合するように、1つまたは複数の膨潤補償部材を含み得る。
【0012】
筐体は、可撓性ポーチ材料または実質的に剛性の材料を含み得る。
【0013】
電極アセンブリは、当技術分野でよく知られているように、ゼリーロールまたはスタックを含み得る。
【0014】
筐体は、任意選択で、実質的に互いに垂直である3対の、実質的に対向する側壁を含む実質的に立方体の形状とすることができ、冷却部材が第1の対の側壁に実質的に平行であり、膨潤補償部材が第2または第3の対の側壁に実質的に平行である。言い換えれば、筐体は、第1の平面に実質的に平行であって実質的に対向する第1の対の側面、第2の平面に実質的に平行であって実質的に対向する第2の対の側面、および第3の平面に実質的に平行であって実質的に対向する第3の対の側面を含み、第1、第2および第3の平面が互いに実質的に垂直であり、冷却部材が第1の平面に実質的に平行であり、膨潤補償部材が第2または第3の平面に平行である。この構成は、絶縁膨潤補償部材と冷却部材との間の重なりを確実に最小にするのに役立つ。
【0015】
任意選択で、コンパクトな電池設計のために、2つ以上の電池を並べて配置し、共通の冷却部材を共有することができる。
【0016】
冷却部材は、任意選択で、隣接している第1のセルと第2のセルとの間に配置された1つまたは複数の冷却フィンを含み、各冷却フィンが第1のセルの第2の側面および第2のセルの第2の側面と熱接触し、冷却フィンと接触している第1および第2のセルの第2の側面が、それぞれ第1および第2のセルの冷却側面である。この構成は、電池セルの間に冷却フィンを設けて熱伝達を最適化する。
【0017】
任意選択で、第1のセルの冷却側面の最内面、および第2のセルの冷却側面の最内面は、第1および第2のセルのそれぞれの膨潤補償部材と接触していない。この構成は、絶縁膨潤補償部材と冷却フィンとの間の重なりを防ぐ。
【0018】
第3の電池セルは、任意選択で、第3のセルの第2の側面が第2のセルの第2の側面に隣接するように、第2の電池セルと並んで隣接して配置することができ、第2および第3の隣接する側面は、それぞれ第2および第3のセルの絶縁側面であり、第3のセルの絶縁側面の最内面および第2のセルの絶縁側面の最内面は、第2及び第3のセルのそれぞれの膨潤補償部材と接触している。この構成は、隣接するセルの絶縁膨潤補償部材を互いに隣接配置して、セル間の熱伝達を防止するのに有利である。
【0019】
代替例として、電極アセンブリおよび電解質を含むセルアセンブリと、前記セルアセンブリを収容する筐体とを含む電池が提供され、該電池は、少なくとも半開放多孔質構造の材料を含み、その少なくとも一部の細孔が電解質を含む膨潤補償部材をさらに含み、用中、膨潤補償部材は、電極アセンブリの膨潤時に少なくとも一次元で収縮し、電極アセンブリの収縮時に少なくとも一次元で膨張するように構成され、膨潤補償部材は、電池セルの各充電/放電サイクルを通して電極アセンブリと連続的に接触しているように構成される。
【0020】
この代替例では、有利なことに、膨潤補償部材は、電極アセンブリの膨潤時に収縮し、電極アセンブリの収縮時に膨張して、外部寸法変化効果を低減し、膨潤状態に関係なく電極アセンブリの圧縮を維持することができる。さらに、膨潤補償部材の細孔に含まれる電解質は、電池セルの動作中に経時的に失われた電解質を補充して、電池セルの寿命を延ばし、性能を維持することができる。
【0021】
この代替例では、膨潤補償部材は、任意選択で、筐体の最内面と電極アセンブリとの間に配置され、膨潤補償部材は、電池セルの各充電/放電サイクルを通して、筐体の最内面と連続的に接触しているように構成される。膨潤補償部材のこの位置は、外部寸法変化を最小限に抑えるのに役立つ。また、膨潤補償部材は、多孔質構造のスポンジ状の材料であるため、熱絶縁体として機能する。したがって、筐体の隣りの膨潤補償部材の位置は、電池セルを熱的に絶縁するのに役立つ。これは、多数の電池セルが互いに並んで配置されている場合に、1つの電池セルの熱暴走が隣接する電池セルに広がるのを防ぐために、特に有益である。
【0022】
この代替例では、電池セルは、特定の電池セル構成に従って膨潤補償および電解質補充の位置および効果を最適にするために、任意選択で1つまたは複数の膨潤補償部材を含む。
【0023】
この代替例では、筐体は、柔軟なポーチ材料または実質的に剛性の材料を含み得る。
【0024】
この代替例では、電極アセンブリは、当技術分野でよく知られているように、ゼリーロールまたはスタックを含み得る。
【0025】
この代替例では、任意選択で、筐体の最内面の第1の部分が膨潤補償部材と接触し、筐体の最内面の第2の部分が膨潤補償部材と接触していない。こうすると、膨潤補償部材の位置は、筐体の外面の隣に配置される冷却部材の位置に最もよく適合するように選択することができる。
【0026】
別の代替態様では、電極アセンブリに電解質を補充する方法があり、この方法は、上記の電池セルを電気デバイスに取り付け、電池セルを使用して電気デバイスに電気エネルギーを供給し、膨潤補償部材の細孔から電極アセンブリに電解質を提供するステップを含む。
【0027】
必要に応じて、この代替態様では、膨潤補償部材の収縮時および/または膨潤補償部材の膨張時に、電解質が電極アセンブリに提供される。
【0028】
この代替態様では、電解質は毛細管作用によって電極アセンブリに提供され得る。
【0029】
ここで、本発明を、以下の図面を参照して、非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】内部膨潤緩和を有する電池セルの概略断面図を示す。
図2】「ゼリーロール」タイプの電極アセンブリの概略端面図を示す。
図3】複数の電池セルを含む電池の概略断面図を示す。
図4】電池セル筐体の概略図を示す。
図5】複数の電池セルを含む代替電池構成の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
電池セル10の概略断面図を図1に示す。電池セル10は筐体12を備え、その中に電極アセンブリ20が配置されている。電極アセンブリ20は、セパレータ26で互いに分離された第1の電極22および第2の電極24を備える。
【0032】
電池技術でよく知られているように、第1および第2の電極22、24は、異なる電極電位の電気導体を含む。適切な電解質(図示せず)が筐体12内に配置されている。典型的には、電解質は液体またはゲルを含み、解放多孔質構造を有するセパレータ26内に存在する。例えば、セパレータ26は、多孔質の固体または織材を含み得る。典型的な二次電池セルの化学的性質には、当技術分野でよく知られているように、リチウム金属およびリチウムイオンセルが含まれる。
【0033】
第1および第2の電極22、24、およびセパレータ26は、通常、薄膜タイプの構造を有する。図1に示される例では、電極アセンブリ20は、単一の第1の電極22(例えば、陰極)、単一の第2の電極24(例えば、陽極)、および単層のセパレータ材料26を含む層のスタックとして示されている。各電極22、24は、(例えば、超音波またはスポット溶接によって)電気接続タブ16に取り付けられ、このタブは筐体12の外側にある外部電気接点14につながる。外部電気接点14が回路に接続されると、イオンが電解質を通って一方の電極から他方の電極へ流れ、回路及び回路に取り付けられた電気装置に電力を供給する。電池セルを充電するには、電流の流れが逆になる。
【0034】
上記のように、図1に示す電極アセンブリ20の構成は、1つのセパレータ26によって分離された2つの電極22、24を含む。しかし、これは簡略化された例にすぎず、他の電極アセンブリ構成が可能であることは理解されよう。例えば、電極アセンブリ20は、複数の第1の電極22および対応する複数の第2の電極24を含み、これらの電極はマルチ電極、マルチセパレータスタック内でそれぞれセパレータ層26によって分離することができる。この場合、複数の電極22、24のそれぞれは、電極から対応する外部電気接点14につながる電気接続タブ16を有する。代わりにまたは加えて、電極アセンブリ20を巻いてほぼ円筒形の電極アセンブリを形成することができる。このようなアセンブリは、通常、円筒形の筐体内に配置されて、円筒形の電池セルを形成する。別の一般的な電極アセンブリ構成は、図2に概略的に示すように、薄膜スタック(または複数のスタック)を平坦な渦巻き状に巻いた「ゼリーロール」である。「ゼリーロール」電極アセンブリは、通常、排他的ではないが、ポーチセル電池に使用される。
【0035】
再び図1を参照すると、電池セル10はまた、電極アセンブリ20と筐体12の内面11との間に配置された膨潤補償部材30を含む。膨潤補償部材30は、弾性材料を含み、電極アセンブリ20と連続的に接触しているように構成されている。材料の例には、発泡体、スポンジ状材料、および織材が含まれる。膨潤補償部材30の弾性挙動は線形である必要はない。
【0036】
上述したように、使用中、電池セル10の充電/放電中に、電極アセンブリ20は膨潤または収縮し得る。図1に示す例では、膨潤/収縮は、一般に、電極アセンブリ20に垂直な方向Yである。膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20の膨潤時にY方向に収縮し、電極アセンブリ20の収縮時にY方向に膨張するよう構成されている。他の実施形態では、電極アセンブリ20は、図1に示されるY方向に加えて、またはY方向の代わりに、1つまたは複数の他の方向に膨潤し得る。膨潤補償部材30は、特定の電極アセンブリ20の膨潤/収縮特性により必要とされる任意の方向に膨張/収縮するように構成することができる。
【0037】
膨潤補償部材30は、機械的締結具および/または接着剤によって、電極アセンブリ20におよび/または筐体12の内面11に取り付けることができる。あるいは、膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20と筐体12の内面11の間におよび/またはどちらにも物理的に取り付けることなく、単に配置することもできる。膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20のあらゆる膨潤状態において圧縮下にあり得るので、膨潤補償部材30がその非圧縮形態に戻ろうとする弾性復元力によって、電極アセンブリ20と筐体12の内面11との間の所定の位置に実質的に保持される。膨潤補償部材30を筐体12および/または電極アセンブリ20に向けて偏倚させるために、偏倚部材(図示せず)を設けることができる。
【0038】
膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20の膨潤時に収縮し、電極アセンブリ20の収縮時に膨張するように構成されているので、電極アセンブリの寸法変化は膨潤補償部材30によって吸収されるため、電池セル筐体12の外形寸法は、電極アセンブリ20の膨潤/収縮によって引き起こされる寸法変化から保護され得る。
【0039】
上記の例では、膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20の片側にのみ設けられている。しかしながら、複数の膨潤補償部材30を設けることができ、必要に応じて、電極アセンブリ20の任意の部分と電池セル筐体12の内面11の間に配置することができることは理解されよう。代わりにまたはさらに、1つまたは複数の膨潤補償部材30を、電極アセンブリ20内に設けることができる。例えば、電極スタック内(電極対の間)、または巻き電極アセンブリ内に設けることができる。膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20を部分的または実質的に完全に取り囲む1つの連続部材を含み得る。さらに、電極アセンブリ20は、積み重ね、巻き重ねまたはゼリーロールなどの任意の適切な構成を有することができ、筐体12は、剛性または可撓性のポーチとすることができ、例えば直方体、丸みを帯びた直方体または円筒形などの任意の適切な形状とすることができると理解されるであろう。
【0040】
一例では、膨潤補償部材30は、電池セルの電解質を収容し得る解放多孔質構造を有する弾性材料を含む。このような例では、膨潤補償部材が使用中に収縮および膨張するときに、電解質は、膨潤補償部材30の細孔からセパレータ26に、およびその逆に移動することができる。電池セル10が酸化によりその寿命の間に電解質を失う場合、膨潤補償部材30に含まれる電解質が失われた電解質と置き換わって電池セル10の寿命を延ばすことができる。
【0041】
膨潤補償部材30に適した材料は、一部の細孔が閉構造を有し、一部の細孔が開相互接続構造を有する半開放多孔質構造のエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)発泡体である。このような半開放多孔質構造を有するスポンジまたは発泡体は、閉じた細孔の弾性挙動が、電極アセンブリ20の膨潤および収縮中の寸法安定性および電極アセンブリの圧縮を維持するのを助け、開いた相互接続細孔が、電池セル10の寿命中、電解質を含み分配するのに適しているので、有用である。
【0042】
図3は、複数の電池セル10を含む電池40の概略断面図を示す。一貫性の理由から、上記で使用された参照番号と同じ参照番号が同様の特徴を示すために明細書全体を通して使用されている。
【0043】
電池40は、並置された6つの電池セル10を含む。明確にするために、電極アセンブリ20は輪郭のみで示されている。電極アセンブリ20は、上述したように、任意の適切な方法で構成することができることが理解されよう。
【0044】
各電池セル10は、第1の平面に実質的に平行であり、実質的に対向する第1の対の側面41、42、第2の平面に実質的に平行であり、実質的に対向する第2の対の側面43、44、および第3の平面に実質的に平行であり、実質的に対向する第3の対の側面45、46を有し、第1、第2および第3の平面が互いに実質的に垂直である、丸みを帯びた直方体形状の筐体12(図4)を含む。
【0045】
図3の向きを参照すると、第1の対の側面41、42はそれぞれ電池セル10の上面および底面を形成し、第2の対の側面43、44はそれぞれ電池セル10の左側面および右側面を形成し、および第3の対の側面45、46は、それぞれ電池セル10の前面および背面を形成する。各電池セル10は、電極アセンブリ20と筐体12の左側面(図3に関して)の内面11との間に配置された膨潤補償部材材料30の層を含む。
【0046】
金属(または他の熱伝導性材料)プレートの形態の冷却部材60が、電池セル10の底面と熱接触している。冷却部材60は、機械的ファスナーおよび/または接着剤により電池セル10の底面に取り付けることができる。外部筐体50は、電池セル10と冷却部材60を包囲する。
【0047】
充電および放電中に電池セル10で発生した熱は、電池セルから冷却部材60への熱伝導を介して除去される。冷却部材60は、ファンまたは他の冷却システム(図示せず)によって冷却することができる。
【0048】
冷却部材60は、電池セル10と熱的に接触していれば、電池セル10の底部と直接物理的に接触している必要はない。必要に応じて、任意の適切な熱伝導性材料を冷却部材60と電池セル10との間に配置することができる。さらに、冷却部材60は、代わりにまたは加えて、電池セル10の上面、前面または背面などの他の面と接触させてもよいことが理解されよう。さらに、電池40は、2つ以上の冷却部材60を含んでもよいことが理解されよう。
【0049】
電池40の電池セル10の膨潤補償部材30は、隣接する電池セル10の間で熱絶縁を提 供するため、電池セル10の1つが熱暴走を経験した場合に電池40全体の熱暴走を防止 するのに役立つ。
【0050】
図5は、外部筐体50に配置された、6つの電池セル10a~10fと冷却部材60とを含む代替電池構成70を示す。図5の電池構成70において、冷却部材60は、第1および第2の電池セル10a、10b、第3および第4の電池セル10c、10d、ならびに第4および第5の電池セル10e、10fの間にそれぞれ配置され、それらと熱的に接触している複数のフィン62a、62b、62cを含む。
【0051】
図5の向きを参照すると、第1の電池セル10a、第3の電池セル10c、および第5の電池セル10eの膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20と筐体12の左側面の内面11との間にあり、第2の電池セル10b、第4の電池セル10d、および第6の電池セル10fの膨潤補償部材30は、電極アセンブリ20と筐体12の右側面の内面11との間にある。この例では、膨潤補償部材30が隣接する電池セル10の間の熱絶縁を提供するので、膨潤補償部材30と接触している側面43、44が絶縁側面である。
【0052】
逆に、冷却フィン62a~62cと熱的に接触している電池セル10a~10fの側面43、44の最内面は、膨潤補償部材30と接触していない。その結果、膨潤補償部材30は電池セルから冷却フィンへの熱の移動を妨げない。したがって、この例では、冷却フィン62a~62cと接触している側面43、44が冷却側面である。
【0053】
図3の電池40について上述したように、冷却フィン62a~62cと熱接触していない隣接する電池セルの熱補償部材30は、隣接する電池セルの間の熱絶縁を提供し、電池セル10a~10fの1つが熱暴走した場合に、電池70全体の熱暴走を防止するのに役立つ。
【0054】
図に示されていないが、必要に応じて、冷却フィン62を図3の1つまたは複数のセル10の間に配置することができる。そのような例では、膨潤補償部材30が電池セル10から冷却フィン62への熱の伝達を妨げ得る。しかしながら、そのような配置は、必要であれば冷却フィン62の使用を排除しない。さらに、膨潤補償部材30の材料は、熱伝導性に選択または設計することもできる。冷却フィン62は、熱伝導性材料の固体層を含んでも、またはメッシュ、フィンガーまたは任意の他の適切な構成を含んでもよい。複数の冷却フィン62を隣接する電池セル62の間に配置してもよい。冷却フィン62は、電池セルの任意の面、特に左面、右面、前面および後面に接触してもよい(図3および図5の向きにおいて)。
【0055】
図3および図5の電池40、70は、一般に丸みを帯びた直方体形状のセル筐体12を有すると記載したが、任意の形状の電池セルを使用できることは理解されよう。さらに、電池セル10の筐体12、および電池40、70の外部筐体50は、剛性筐体またはポーチセル筐体またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。電池40、70の外部筐体50は必須ではなく、必要に応じて省略してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5