(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】水分散型ポリイソシアネート、水性ポリウレタン樹脂組成物および物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/38 20060101AFI20240819BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20240819BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240819BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240819BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20240819BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240819BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240819BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240819BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C08G18/38 055
C08G18/78 037
C08G18/79 020
C08G18/75 010
C08G18/80
C08G18/00 C
C09D5/02
C09D175/04
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2022554034
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021035760
(87)【国際公開番号】W WO2022071361
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020165601
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄井 裕太
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 辰也
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067721(JP,A)
【文献】特開2019-189866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C09D 5/00- 5/46
C09D 175/00-175/16
B32B 27/00- 27/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基およびスルホン基を含有する水分散型ポリイソシアネートであって、
ポリイソシアネート成分と親水性活性水素成分との反応生成物を含み、
前記ポリイソシアネート成分は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を含み、前記親水性活性水素成分は、スルホン基含有活性水素化合物を含み、
前記ポリイソシアネート成分がオキシエチレンユニットを含有する場合
には、前記オキシエチレンユニットの含有割合は、前記水分散型ポリイソシアネートの総量の5質量%以下であり、
前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含み、
前記アロファネート誘導体の含有割合が、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、25質量%以上75質量%以下である、水分散型ポリイソシアネート。
【請求項2】
前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体と、アルコールとの反応生成物を含み、
前記アルコールは、モノオールを含む、請求項1に記載の水分散型ポリイソシアネート。
【請求項3】
前記スルホン基の含有割合が、前記水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載の水分散型ポリイソシアネート。
【請求項4】
前記水分散型ポリイソシアネートの前記イソシアネート基が、ブロック剤によりブロックされている、請求項1に記載の水分散型ポリイソシアネート。
【請求項5】
請求項1に記載の水分散型ポリイソシアネートと、
活性水素基含有化合物と
を含む、水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
被塗物と、前記被塗物の表面に配置されるポリウレタン層とを備え、
前記ポリウレタン層が、請求項5に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型ポリイソシアネート、水性ポリウレタン樹脂組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、各種産業分野において広範に使用される。ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物である。
【0003】
ポリイソシアネート成分は、例えば、有機溶剤溶液として調製される。近年、環境性および作業性の向上を図るために、ポリイソシアネート成分を水分散液として調製することが、要求されている。つまり、水に分散可能なポリイソシアネート成分が、要求されている。
【0004】
水に分散可能なポリイソシアネート成分としては、以下のものが提案されている。すなわち、ペンタメチレン1,5ージイソシアネートのイソシアヌレートと、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸との反応により得られるポリイソシアネート混合物(例えば、特許文献1(実施例5)参照。)。
【0005】
また、水に分散可能なポリイソシアネート成分としては、以下のものも提案されている。すなわち、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートのイソシアヌレートと、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸との反応により得られるポリイソシアネート混合物(例えば、特許文献2(例1)参照。)。
【0006】
さらに、水に分散可能なポリイソシアネート成分としては、以下のものも提案されている。すなわち、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンのイソシアヌレートと、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸との反応により得られるポリイソシアネート混合物(例えば、特許文献2(例5)参照。
)。
【0007】
上記のポリイソシアネート混合物は、3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸のスルホン基によって、水分散可能とされている。また、上記のポリイソシアネート混合物とポリオール成分との反応により、ポリウレタン樹脂が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2018-513239号公報
【文献】特表2003-533566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、ペンタメチレン1,5ージイソシアネートおよび/またはその誘導体を、スルホン基によって水分散させる場合、ポリウレタン樹脂の硬度が低下する。
【0010】
また、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を、スルホン基によって水分散させる場合も、ポリウレタン樹脂の硬度が低下する。
【0011】
さらに、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンおよび/またはその誘導体を、スルホン基によって水分散させる場合には、ポリウレタン樹脂の硬化性が低下する。
【0012】
本発明は、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する水分散型ポリイソシアネート、水性ポリウレタン樹脂組成物および物品である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明[1]は、イソシアネート基およびスルホン基を含有する水分散型ポリイソシアネートであって、ポリイソシアネート成分と親水性活性水素成分との反応生成物を含み、前記ポリイソシアネート成分は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を含み、前記親水性活性水素成分は、スルホン基含有活性水素化合物を含み、前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含み、前記アロファネート誘導体の含有割合が、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、25質量%以上75質量%以下である、水分散型ポリイソシアネートを、含んでいる。
【0014】
本発明[2]は、前記ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体と、アルコールとの反応生成物を含み、前記アルコールは、モノオールを含む、上記[1]に記載の水分散型ポリイソシアネートを、含んでいる。
【0015】
本発明[3]は、前記スルホン基の含有割合が、前記水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、0.2質量%以上5質量%以下である、上記[1]または[2]に記載の水分散型ポリイソシアネートを、含んでいる。
【0016】
本発明[4]は、前記水分散型ポリイソシアネートの前記イソシアネート基が、ブロック剤によりブロックされている、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水分散型ポリイソシアネートを、含んでいる。
【0017】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水分散型ポリイソシアネートと、活性水素基含有化合物とを含む、水性ポリウレタン樹脂組成物を、含んでいる。
【0018】
本発明[6]は、被塗物と、前記被塗物の表面に配置されるポリウレタン層とを備え、前記ポリウレタン層が、請求項5に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を含む、物品を、含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水分散型ポリイソシアネートは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を含むポリイソシアネート成分と、スルホン基含有活性水素化合物を含む親水性活性水素成分との反応生成物を含む。そして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含み、アロファネート誘導体の含有割合が、所定範囲である。
【0020】
そのため、本発明の水分散型ポリイソシアネートは、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する。
【0021】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、上記の水分散型ポリイソシアネートを含む。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、硬化性に優れる。
【0022】
本発明の物品は、上記の水性ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を含むため、優れた硬度のポリウレタン層を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の水分散型ポリイソシアネートは、イソシアネート基およびスルホン基を含有する。また、水分散型ポリイソシアネートは、水分散可能なポリイソシアネートである。
【0024】
本発明の水分散型ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート成分と、親水性活性水素成分との反応生成物を含む。
【0025】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を含む。
【0026】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体を有する。
【0027】
このようなビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とアルコールとの反応生成物である。より具体的には、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、例えば、以下の方法によって製造される。すなわち、この方法では、まず、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とアルコールとを反応させる。
【0028】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体としては、例えば、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0029】
これらビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体として、好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、より好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0031】
アルコールとしては、例えば、モノオール、ジオールおよびトリオールが挙げられる。
【0032】
モノオールとしては、例えば、直鎖状の1価アルコール、および、分岐状の1価アルコールが挙げられる。
【0033】
直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール、n-ノナデカノール、および、エイコサノールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0034】
分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール(イソブチルアルコール)、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサン-1-オール、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、および、2-オクチルドデカノールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0035】
ジオールとしては、例えば、直鎖状の2価アルコール、および、分岐状の2価アルコールが挙げられる。
【0036】
直鎖状の2価アルコールとしては、例えば、直鎖状のアルカンジオールが挙げられる。直鎖状のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール(1,4-ブチレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ジプロピレングリコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0037】
分岐状の2価アルコールとしては、例えば、分岐状のアルカンジオールが挙げられる。分岐状のアルカンジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、および、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0038】
これらジオールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0039】
トリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
これらトリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0041】
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0042】
アルコールの炭素数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上である。また、アルコールの炭素数は、例えば、50以下、好ましくは、40以下、より好ましくは、30以下、さらに好ましくは、20以下、さらに好ましくは、10以下、とりわけ好ましくは、4以下である。
【0043】
アルコールの炭素数が上記範囲であれば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体の水分散性を向上できる。
【0044】
アルコールとして、好ましくは、モノオールが挙げられ、より好ましくは、分岐状の1価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、イソブタノールが挙げられる。これらを使用することによって、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体の水分散性を向上できる。
【0045】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とアルコールとの配合割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。
【0046】
より具体的には、アルコールの水酸基に対する、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1を超過し、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上である。また、アルコールの水酸基に対する、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1000以下、好ましくは、600以下、より好ましくは、500以下、さらに好ましくは、100以下である。
【0047】
また、アルコールが、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、好ましくは、3.2質量部以上、より好ましくは、3.5質量部以上である。また、アルコールが、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0048】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とアルコールとの反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、40℃以上である。また、反応温度が、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
【0049】
また、この方法では、必要に応じて、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体およびアルコールに、ウレタン化触媒を配合できる。ウレタン化触媒としては、例えば、公知のアミン類、および、公知の有機金属化合物が挙げられる。なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0050】
これにより、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とアルコールとが、ウレタン化反応する。その結果、ウレタン化反応生成物が得られる。
【0051】
次いで、この方法では、ウレタン化反応生成物を、アロファネート化反応およびイソシアヌレート化反応させる。
【0052】
より具体的には、この方法では、ウレタン化反応生成物に、アロファネート-イソシアヌレート化触媒を配合し、加熱する。
【0053】
アロファネート-イソシアヌレート化触媒としては、イソシアネート基のアロファネート化およびイソシアヌレート化を促進可能な触媒であれば、特に制限されない。アロファネート-イソシアヌレート化触媒としては、例えば、3級アミン、マンニッヒ塩基、フリーデル・クラフツ触媒、アルキルカルボン酸の金属塩、有機金属化合物、ハロゲン置換有機リン化合物、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、および、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの有機弱酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0054】
アロファネート-イソシアヌレート化触媒として、好ましくは、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムの有機弱酸塩が挙げられる。
【0055】
トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、および、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0056】
また、有機弱酸塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、2-エチルヘキサン塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩および安息香酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0057】
アロファネート-イソシアヌレート化触媒の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、0.0005質量部以上、好ましくは、0.001質量部以上である。また、アロファネート-イソシアヌレート化触媒の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、0.3質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下、より好ましくは、0.03質量部以下である。
【0058】
アロファネート化反応およびイソシアヌレート化反応の反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、反応温度が、例えば、160℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間が、例えば、30分以上、好ましくは、60分以上である。
また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0059】
そして、反応液の反応率(イソシアネート基転化率)が所定値に達した時点で、反応停止剤を反応液に添加する。反応を停止させるときのイソシアネート基の転化率は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上である。また、反応を停止させるときのイソシアネート基の転化率は、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。なお、イソシアネート基の転化率は、公知の方法で算出できる。
【0060】
反応停止剤としては、例えば、リン酸、モノクロロ酢酸、塩化ベンゾイル、ドデシルベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸メチル、o-トルエンスルホンアミド、および、p-トルエンスルホンアミドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。反応停止剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0061】
また、反応停止剤に代えて、触媒吸着剤を添加することもできる。触媒吸着剤としては、例えば、キレート樹脂およびイオン交換樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。触媒吸着剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0062】
これにより、アロファネート化反応およびイソシアヌレート化反応が停止する。
【0063】
その結果、反応生成物として、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体とを含む組成物が得られる。
【0064】
また、上記の各反応では、助触媒を配合できる。助触媒としては、例えば、公知の有機亜リン酸エステルが挙げられる。有機亜リン酸エステルとして、好ましくは、モノフォスファイト類、より好ましくは、トリス(トリデシル)ホスファイトが挙げられる。
【0065】
助触媒の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.02質量部以上、より好ましくは、0.03質量部以上である。また、助触媒の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、0.2質量部以下、好ましくは、0.15質量部以下、より好ましくは、0.1質量部以下である。
【0066】
また、上記の各反応では、反応安定剤を添加できる。反応安定剤としては、例えば、公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。として、好ましくは、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(BHT)が挙げられる。
【0067】
反応安定剤の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上である。
また、反応安定剤の配合割合は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体100質量部に対して、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.10質量部以下である。
【0068】
また、上記の各反応では、公知の反応溶媒を添加できる。なお、反応溶媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。また、上記の各反応では、反応液を、精製できる。精製方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。精製により、反応液から、未反応のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体が除去される。また、ウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒、触媒失活剤、助触媒、反応安定剤および/または反応溶媒が、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体とともに、除去される。
【0069】
そして、上記の反応では、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが、アロファネート変性されるとともに、イソシアヌレート変性される。
【0070】
つまり、上記の反応では、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体とが生成する。
【0071】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体において、アロファネート誘導体の含有割合は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、35質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、とりわけ好ましくは、45質量%以上である。また、アロファネート誘導体の含有割合が、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、例えば、75質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、65質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下、とりわけ好ましくは、55質量%以下である。
【0072】
アロファネート誘導体の含有割合が上記下限を上回っていれば、優れた硬化性および水分散性を有する水分散型ポリイソシアネートが得られる。また、アロファネート誘導体の含有割合が上記上限を下回っていれば、優れた硬度のポリウレタン樹脂が得られる。
【0073】
また、イソシアヌレート誘導体の含有割合が、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、35質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、とりわけ好ましくは、45質量%以上である。また、イソシアヌレート誘導体の含有割合が、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対して、例えば、75質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、65質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下、とりわけ好ましくは、55質量%以下である。
【0074】
イソシアヌレート誘導体の含有割合が上記範囲であれば、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する水分散型ポリイソシアネートが得られる。
【0075】
なお、アロファネート誘導体の含有割合、および、イソシアヌレート誘導体の含有割合は、後述する実施例に準拠して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0076】
また、上記の方法では、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体とを、同時に製造しているが、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体とを、個別に製造し、上記の割合で混合してもよい。また、上記のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体に、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのアロファネート誘導体、および/または、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体を添加して、上記の割合に調整してもよい。
【0077】
また、ポリイソシアネート成分は、任意成分として、その他のポリイソシアネートを含むことができる。
【0078】
その他のポリイソシアネートは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を除くポリイソシアネートである。
【0079】
より具体的には、その他のポリイソシアネートとしては、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン単量体が挙げられる。
【0080】
また、その他のポリイソシアネートとしては、工業的に汎用されるポリイソシアネートも挙げられる。工業的に汎用されるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)が挙げられる。また、工業的に汎用されるポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0081】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0082】
その他のポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0083】
すなわち、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体からなり、その他のポリイソシアネートを含有しない。
【0084】
ポリイソシアネート成分が、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体からなる場合、とりわけ優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する水分散型ポリイソシアネートが得られる。
【0085】
また、ポリイソシアネート成分は、公知の有機溶剤に溶解されていてもよい。このような場合、ポリイソシアネート成分の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上である。また、ポリイソシアネート成分の固形分濃度は、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0086】
そして、上記のポリイソシアネート成分と、後述の親水性活性水素成分とを反応させることにより、水分散型ポリイソシアネートが得られる。
【0087】
より具体的には、水分散型ポリイソシアネートの調製では、ポリイソシアネート成分と、親水性活性水素成分とを、遊離のイソシアネート基が残存する割合で反応させる。
【0088】
親水性活性水素成分は、スルホン基含有活性水素化合物を含んでいる。
【0089】
スルホン基含有活性水素化合物は、1つ以上のスルホン基と、1つ以上の活性水素基とを含有する化合物である。活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられる。
【0090】
スルホン基含有活性水素化合物としては、例えば、1つの活性水素基と、1つのスルホン基とを併有する化合物が挙げられる。そのようなスルホン基含有活性水素化合物としては、例えば、ヒドロキシアルカンスルホン酸およびアミノスルホン酸が挙げられる。
【0091】
ヒドロキシアルカンスルホン酸としては、例えば、ヒドロキシメタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸および3-ヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0092】
アミノスルホン酸としては、例えば、2-(シクロヘキシルアミノ)-エタンスルホン酸(CHES)および3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0093】
これらスルホン基含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0094】
スルホン基含有活性水素化合物として、好ましくは、アミノスルホン酸が挙げられ、より好ましくは、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸が挙げられる。
【0095】
また、親水性活性水素成分は、任意成分として、その他の水分散性活性水素化合物を含むことができる。
【0096】
その他の水分散性活性水素化合物は、スルホン基含有活性水素化合物を除く水分散性活性水素化合物である。
【0097】
その他の水分散性活性水素化合物として、より具体的には、ノニオン基含有活性水素化合物、カルボキシル基含有活性水素化合物およびリン酸基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0098】
ノニオン基含有活性水素化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン化合物が挙げられる。
【0099】
ポリオキシエチレン化合物としては、例えば、活性水素基と、少なくとも3つ連続したエチレンオキシド基とを併有する化合物が挙げられる。このようなポリオキシエチレン化合物としては、例えば、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、および、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールが挙げられる。
【0100】
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、例えば、炭素数1~20のアルキル基で片末端が封止されたアルコキシポリエチレングリコールが挙げられる。より具体的には、メトキシポリオキシエチレングリコール、および、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールは、公知の方法で製造できる。
【0101】
ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミンとの反応生成物が挙げられる。ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、公知の方法で製造できる。
【0102】
ポリオキシエチレン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0103】
ポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、例えば、200以上、好ましくは、300以上、例えば、2000以下、好ましくは、1000以下である。
【0104】
カルボキシル基含有活性水素化合物は、活性水素基およびカルボキシル基を併有する化合物である。カルボキシル基含有活性水素化合物としては、例えば、1つの活性水素基と、1つのカルボキシル基を併有するカルボキシル基含有活性水素化合物が挙げられる。また、カルボキシル基含有活性水素化合物としては、例えば、2つの活性水素基と1つのカルボキシル基とを併有するカルボキシル基含有活性水素化合物も挙げられる。
【0105】
1つの活性水素基と、1つのカルボキシル基を併有するカルボキシル基含有活性水素化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、および、クエン酸が挙げられる。
【0106】
2つの活性水素基と1つのカルボキシル基とを併有するカルボキシル基含有活性水素化合物としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2-ジメチロール酪酸、および、2,2-ジメチロール吉草酸が挙げられる。
【0107】
カルボキシル基含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0108】
リン酸基含有活性水素化合物は、活性水素基およびリン酸基を併有する化合物である。
【0109】
リン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、1つの活性水素基および1つのリン酸基を併有するリン酸基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0110】
そのようなリン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、ヒドロキシアルキルホスホン酸、および、アミノアルキルホスホン酸が挙げられる。
【0111】
リン酸基含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0112】
その他の水分散性活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0113】
その他の水分散性活性水素化合物の含有割合は、親水性活性水素成分の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0114】
すなわち、親水性活性水素成分は、とりわけ好ましくは、スルホン基含有活性水素化合物からなり、その他の水分散性活性水素化合物を含有しない。
【0115】
親水性活性水素成分が、スルホン基含有活性水素化合物からなる場合、とりわけ優れた硬度および機械物性のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する水分散型ポリイソシアネートが得られる。
【0116】
ポリイソシアネート成分と、親水性活性水素成分との反応割合は、反応生成物中に遊離のイソシアネート基が残存するように、調整される。
【0117】
より具体的には、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対する、親水性活性水素成分の活性水素基の当量比(活性水素基/NCO)が、例えば、0.30以下、好ましくは、0.20以下である。また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対する、親水性活性水素成分の活性水素基の当量比(活性水素基/NCO)は、例えば、0.01以上、好ましくは、0.10以上である。
【0118】
親水性活性水素成分の配合割合は、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、25質量部以上である。また、親水性活性水素成分の配合割合は、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下、さらに好ましくは、55質量部以下である。
【0119】
ポリイソシアネート成分と親水性活性水素成分との反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上である。また、反応温度が、例えば、150℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、120時間以下、好ましくは、72時間以下である。
【0120】
なお、反応の終了は、例えば、反応液中のイソシアネート量が変化しなくなることによって、確認される。イソシアネート量は、滴定法または赤外吸収法により測定される。
【0121】
また、この方法では、好ましくは、反応液に中和剤を添加し、スルホン基の塩を形成させる。すなわち、スルホン基は、塩でなくともよく、塩であってもよい。好ましくは、スルホン基として、スルホン基の塩が挙げられる。
【0122】
中和剤としては、慣用の塩基が挙げられる。塩基として、具体的には、有機塩基、無機塩基が挙げられる。
【0123】
有機塩基としては、例えば、3級アミンおよび2級アミンが挙げられる。3級アミンとしては、例えば、トリアルキルアミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、および、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。2級アミンとしては、例えば、複素環式アミンが挙げられる。複素環式アミンとしては、例えば、モルホリンが挙げられる。これら有機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0124】
無機塩基としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。これら無機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0125】
これらの中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0126】
中和剤として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0127】
中和剤の添加量は、スルホン基1当量に対して、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上である。また、中和剤の添加量は、スルホン基1当量に対して、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1.0当量以下である。
【0128】
これにより、イソシアネート基およびスルホン基を含有する水分散型ポリイソシアネートが得られる。
【0129】
また、水分散型ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基は、遊離のイソシアネート基であってもよい。また、イソシアネート基は、ブロック剤によりブロックされていてもよい。すなわち、イソシアネート基として、遊離のイソシアネート基、および、ブロックドイソシアネート基が挙げられる。
【0130】
ブロック剤は、イソシアネート基に反応する活性基(以下、ブロック基と称する。)を有する化合物である。ブロック剤としては、例えば、活性メチレン系化合物、活性メチン系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系化合物、ラクタム系化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物および重亜硫酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ブロック剤として、好ましくは、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、オキシム系化合物およびピラゾール系化合物が挙げられる。
【0131】
そして、遊離のイソシアネート基を有する水分散型ポリイソシアネートと、上記ブロック剤とを反応させることにより、ブロックされたイソシアネート基を有する水分散型ポリイソシアネートが生成する。
【0132】
遊離のイソシアネート基を有する水分散型ポリイソシアネートと、上記ブロック剤との配合割合は、例えば、水分散型ポリイソシアネート中のイソシアネート基と、ブロック剤中のブロック基との当量比に基づいて、調整される。
【0133】
より具体的には、遊離のイソシアネート基に対するブロック基の当量比(ブロック基/イソシアネート基)が、例えば、0.2以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.8以上、さらに好ましくは、1.0以上である。また、遊離のイソシアネート基に対するブロック基の当量比(ブロック基/イソシアネート基)が、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0134】
遊離のイソシアネート基を有する水分散型ポリイソシアネートと、上記ブロック剤との反応条件は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。より具体的には、環境条件は、不活性雰囲気および常圧である。また、反応温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、反応温度が、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下、より好ましくは、70℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上である。また、反応時間が、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0135】
なお、反応の終了は、例えば、反応液中のイソシアネート量が変化しなくなることによって、確認される。イソシアネート量は、滴定法または赤外吸収法により測定される。
【0136】
また、上記の各反応は、いずれも、無溶剤下で実施されてもよい。また、上記の各反応は、いずれも、溶剤存在下で実施されてもよい。溶剤としては、公知の有機溶剤が挙げられる。また、溶剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0137】
また、溶剤が使用される場合、反応終了後に、溶剤を除去することもできる。溶剤を除去する方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。
【0138】
なお、以下において、イソシアネート基は、遊離のイソシアネート基と、ブロック剤によりブロックされたイソシアネート基とを示す。
【0139】
水分散型ポリイソシアネートにおける平均イソシアネート基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.2以上、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。
【0140】
また、イソシアネート基の含有割合が、水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、7質量%以上である。また、イソシアネート基の含有割合が、水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0141】
また、スルホン基の含有割合が、水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上、さらに好ましくは、1質量%以上である。また、スルホン基の含有割合が、水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、4質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下である。
【0142】
スルホン基の含有割合が上記下限を上回っていれば、とりわけ優れた水分散性が得られる。また、スルホン基の含有割合が上記上限を下回っていれば、とりわけ優れた耐水性が得られる。
【0143】
なお、スルホン基の含有割合は、後述する実施例に準拠して、化学構造式および配合処方から、算出できる。
【0144】
また、水分散型ポリイソシアネートが、オキシエチレンユニットを含有する場合、その含有割合は、水分散型ポリイソシアネートの総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、4質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下である。
【0145】
なお、オキシエチレンユニットを含有割合は、後述する実施例に準拠して、化学構造式および配合処方から、算出できる。
【0146】
また、水分散型ポリイソシアネートの酸価は、例えば、1mgKOH/g以上、好ましくは、2mgKOH/g以上、より好ましくは、3mgKOH/g以上である。また、水分散型ポリイソシアネートの酸価は、例えば、56mgKOH/g以下、好ましくは、34mgKOH/g以下、より好ましくは、12mgKOH/g以下である。
【0147】
なお、酸価は、JIS K 1557-5(2007)に準拠して測定される。また、原料成分の仕込み量に基づいて、水分散型ポリイソシアネートのスルホン基含有量を算出することにより、酸価を求めることもできる。
【0148】
水分散型ポリイソシアネートの酸価が上記下限を上回っていれば、とりわけ優れた水分散性が得られる。また、水分散型ポリイソシアネートの酸価が上記上限を下回っていれば、とりわけ優れた耐水性が得られる。
【0149】
そして、上記の水分散型ポリイソシアネートは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体を含むポリイソシアネート成分と、スルホン基含有活性水素化合物を含む親水性活性水素成分との反応生成物を含む。そして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン誘導体は、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含み、アロファネート誘導体の含有割合が、所定範囲である。
【0150】
そのため、上記の水分散型ポリイソシアネートは、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、優れた硬化性および水分散性を有する。
【0151】
水性ポリウレタン樹脂組成物は、上記の水分散型ポリイソシアネートと、活性水素基含有化合物とを含む。なお、水性ポリウレタン樹脂組成物は、水分散型ポリイソシアネートと、活性水素基含有化合物とが混合された1液硬化型ポリウレタン樹脂組成物であってもよい。また、ポリウレタン樹脂組成物は、水分散型ポリイソシアネートと、活性水素基含有化合物とが、個別に準備され、使用時に配合される2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物であってもよい。
【0152】
好ましくは、水性ポリウレタン樹脂組成物は、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物である。
【0153】
2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、主剤として、活性水素基含有化合物を含んでいる。また、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、硬化剤として、上記の水分散型ポリイソシアネートを含んでいる。
【0154】
主剤は、例えば、活性水素基含有化合物の水分散液を含んでいる。
【0155】
活性水素基含有化合物としては、例えば、マクロポリオールが挙げられる。マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物(重合物)である。なお、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、600を超過し、例えば、20000以下である。
【0156】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0157】
これら活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0158】
活性水素基含有化合物の水分散液は、例えば、活性水素基含有化合物に水を添加することにより、調製される。また、活性水素基含有化合物の水分散液は、例えば、水に、活性水素基含有化合物を添加することによっても、調製される。
【0159】
活性水素基含有化合物の水分散液において、活性水素基含有化合物の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、水分散液の総量に対して、活性水素基含有化合物(固形分)が、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上である。また、水分散液の総量に対して、活性水素基含有化合物(固形分)が、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0160】
硬化剤は、例えば、水分散型ポリイソシアネートの水分散液を含んでいる。
【0161】
水分散型ポリイソシアネートの水分散液は、例えば、水分散型ポリイソシアネートに水を添加することにより、調製される。また、水分散型ポリイソシアネートの水分散液は、例えば、水に、水分散型ポリイソシアネートを添加することによっても、調製される。また、必要に応じて、水および/または水分散型ポリイソシアネートに、公知の外部乳化剤を添加することができる。また、水および水分散型ポリイソシアネートの混合物に、公知の外部乳化剤を添加することもできる。
【0162】
水分散型ポリイソシアネートの水分散液において、水分散型ポリイソシアネートの含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、水分散液の総量に対して、水分散型ポリイソシアネート(固形分)が、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上である。また、水分散液の総量に対して、水分散型ポリイソシアネート(固形分)が、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0163】
なお、活性水素基含有化合物の水分散液が調製される場合、水分散型ポリイソシアネートの水分散液は調製されなくてもよい。すなわち、水分散型ポリイソシアネートの固形分を、そのまま使用することができる。
【0164】
また、水分散型ポリイソシアネートの水分散液が調製される場合、活性水素基含有化合物の水分散液は調製されなくてもよい。すなわち、活性水素基含有化合物の固形分を、そのまま使用することができる。
【0165】
また、水性ポリウレタン樹脂組成物は、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、触媒、溶媒、エポキシ樹脂、塗工性改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、防黴剤、充填剤、有機粒子および無機粒子が挙げられる。添加剤は、主剤に配合されていてもよい。また、添加剤は、硬化剤に配合されていてもよい。
【0166】
なお、添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜設定される。
【0167】
2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の使用時には、主剤および硬化剤が、配合される。
【0168】
主剤および硬化剤の配合割合は、例えば、活性水素基含有化合物の活性水素基に対する、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)に基づいて、調整される。
【0169】
より具体的には、活性水素基含有化合物の活性水素基に対する、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上である。また、活性水素基含有化合物の活性水素基に対する、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
【0170】
そして、主剤および硬化剤の混合物は、公知の塗布方法で、任意の被塗物に塗布され、任意の乾燥条件で乾燥する。塗布方法としては、例えば、スプレー塗装、ディップコート、スピンコート、回転霧化塗装およびカーテンコート塗装が挙げられる。
【0171】
これにより、水性ポリウレタン樹脂組成物の塗膜が形成される。その後、塗膜は、加熱されることにより、硬化する。
【0172】
加熱条件は、主剤および硬化剤に応じて、適宜設定される。例えば、硬化剤のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされていない場合、加熱温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、加熱温度は、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上である。また、加熱時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0173】
これにより、水性ポリウレタン樹脂組成物からなる硬化物として、ポリウレタン樹脂が得られる。また、これにより、被塗物およびポリウレタン層を含む物品が得られる。より具体的には、物品は、被塗物と、被塗物の表面に配置されるポリウレタン層とを備えており、そのポリウレタン層が、上記の水性ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を含んでいる。また、ポリウレタン樹脂は、必要に応じて、任意の条件で養生される。
【0174】
なお、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ブロック剤によりブロックされている場合、水性ポリウレタン樹脂組成物は、好ましくは、1液硬化型ポリウレタン樹脂組成物である。このような場合、水分散型ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との混合割合は、上記の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物における水分散型ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との混合割合と同様である。
【0175】
そして、上記の水性ポリウレタン樹脂組成物は、上記の水分散型ポリイソシアネートを含む。そのため、上記の水性ポリウレタン樹脂組成物は、優れた硬度のポリウレタン樹脂を得ることができ、また、硬化性に優れる。
【0176】
また、上記の物品は、上記の水性ポリウレタン樹脂組成物の硬化塗膜を含むため、優れた硬度のポリウレタン層を有する。
【0177】
そのため、上記の水分散型ポリイソシアネート、水性ポリウレタン樹脂組成物および物品は、例えば、自動車外装、家庭用電化製品の表面樹脂コート、および、軟包装フレキソインキにおいて、好適に用いられる。
【実施例】
【0178】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0179】
合成例1(ポリイソシアネートAの調製)
撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-H6XDI、タケネート600、三井化学社製)2000.0gと、イソブタノール76.4gとを仕込んだ。これらを、80℃で2時間ウレタン化反応させた。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、20であった。
【0180】
次いで、得られた反応液に、アロファネート-イソシアヌレート化触媒として、DABCO-TMR(N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、エアープロダクツ社製)0.52gを添加し、80~86℃で2時間反応させた。
【0181】
そして、イソシアネート基含有率測定により、イソシアネート基の10%が転化したことを確認した。その後、o-トルエンスルホン酸0.60gを、反応液に添加して、反応を停止させた。
【0182】
反応液を、薄膜蒸留装置(真空度0.05kPa、温度140℃)で蒸留し、未反応の1,3-H6XDIを除去した。その後、残存成分を、固形分濃度75.0質量%となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)に溶解させた。これにより、ポリイソシアネートAを得た。
【0183】
このポリイソシアネートAのイソシアネート基含有量(NCO%)は13.5%であった。
【0184】
また、ポリイソシアネートAを、後述のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した。その結果、ポリイソシアネートAが、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体を含有していることが確認された。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有量が、50質量%であった。
【0185】
合成例2(ポリイソシアネートBの調製)
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン2000.0gと、イソブタノール38.2gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートBを得た。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、40であった。
【0186】
このポリイソシアネートBのイソシアネート基含有量(NCO%)は13.4%であった。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有割合が、30質量%であった。
【0187】
合成例3(ポリイソシアネートCの調製)
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン2000.0gと、イソブタノール101.8gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートCを得た。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、15であった。
【0188】
このポリイソシアネートCのイソシアネート基含有量(NCO%)は14.5%であった。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有割合が、70質量%であった。
【0189】
合成例4(ポリイソシアネートDの調製)
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン2000.0gと、1,3-ブタンジオール46.4gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートDを得た。なお、1,3-ブタンジオールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、20であった。
【0190】
このポリイソシアネートDのイソシアネート基含有量(NCO%)は14.1%であった。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有割合が、50質量%であった。
【0191】
合成例5(ポリイソシアネートEの調製)
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン2000.0gと、イソブタノール8.5gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートEを得た。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、180であった。
【0192】
このポリイソシアネートEのイソシアネート基含有量(NCO%)は15.2%であった。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有割合が、10質量%であった。
【0193】
合成例6(ポリイソシアネートFの調製)
撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン1924.5gと、イソブタノール73.4gとを仕込んだ。これらを、75℃で3時間ウレタン化反応させた。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,3-H6XDIのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、20であった。
【0194】
次いで、反応液に、アロファネート-イソシアヌレート化触媒として、ネオスタンU-600(ビスマスオクテート18質量%、日東化成社製)0.094gを添加し、110℃で18時間反応させた。その後、o-トルエンスルホン酸0.062gを添加して反応を停止させた。
【0195】
反応液を、薄膜蒸留装置(真空度0.05kPa、温度140℃)を用いて蒸留し、未反応の1,3-H6XDIを除去した。その後、残存成分を固形分濃度75.0質量%となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)に溶解させた。これにより、ポリイソシアネートFを得た。
【0196】
このポリイソシアネートFのイソシアネート基含有量(NCO%)は13.2%であった。また、アロファネート誘導体およびイソシアヌレート誘導体の総量に対するアロファネート誘導体の含有割合が、80質量%であった。
【0197】
合成例7(ポリイソシアネートGの調製)
ヘキサメチレンジイソシアネート2000.0gと、イソブタノール2.9gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートGを得た。なお、イソブタノールの水酸基に対するヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、600であった。
【0198】
このポリイソシアネートGのイソシアネート基含有量(NCO%)は17.1%であった。
【0199】
合成例8(ポリイソシアネートHの調製)
1,5-ペンタメチレンジイソシアネート2000.0gと、イソブタノール3.2gとを用いた。上記以外は、合成例1と同様にして、ポリイソシアネートHを得た。なお、イソブタノールの水酸基に対する1,5-ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、600であった。
【0200】
このポリイソシアネートHのイソシアネート基含有量(NCO%)は18.5%であった。
【0201】
合成例9(ポリイソシアネートIの調製)
VESTANAT T-1890(イソホロンジイソシアネートトリマー、エボニック社製)を用意した。これを、ポリイソシアネートIとした。
【0202】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
各ポリイソシアネートの分子量分布を、下記のGPC装置で測定した。
【0203】
そして、全ピークに対するアロファネート誘導体に相当するピークの面積比率を、アロファネート誘導体の含有率とした。また、その残余の割合を、イソシアヌレート誘導体の含有率とした。
【0204】
なお、イソブタノールが使用される場合、分子量410~510の範囲にトップを有するピークが、アロファネート誘導体に相当するピークである。また、1,3-ブタンジオールが使用される場合、分子量770~870の範囲にトップを有するピークが、アロファネート誘導体に相当するピークである。
【0205】
GPC装置:
使用機器:HLC-8020(東ソー製)
使用カラム:G1000HXL、G2000HXLおよびG3000HXL(以上、東ソー製商品名)を直列に連結
サンプル濃度:0.3質量%、テトラヒドロフラン溶液
サンプル注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液の流量:0.8ml/min
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率
標準物質:ポリエチレンオキシド(東ソー製、商品名:TSK標準ポリエチレンオキシド)
実施例2~9および比較例1~6
表1~表2に示す処方で、水分散型ポリイソシアネートを得た。
【0206】
より具体的には、ポリイソシアネート成分と、親水性活性水素成分とを混合し、乾燥窒素下、80~90℃で8時間反応させた。その後、中和剤を添加し、さらに、溶剤を添加して、固形分濃度を調整した。
【0207】
実施例10
表3に示す処方で、イソシアネート基がブロックされた水分散型ポリイソシアネートを得た。
【0208】
より具体的には、ポリイソシアネート成分と、親水性活性水素成分とを混合し、乾燥窒素下、80~90℃で8時間反応させた。その後、中和剤を添加した。さらに、反応液にジメチルピラゾールを添加し、40~50℃で反応させた。その後、イソシアネート基(2260cm-1)がIR分光計で検出されなくなるまで、反応液を2時間撹拌した。これにより、イソシアネート基をイソシアネート基でブロックした。
【0209】
その後、30℃に冷却した反応液を、撹拌された脱イオン水に、ゆっくりと添加した。
【0210】
これにより、イソシアネート基がブロックされた水分散型ポリイソシアネートの水分散液を得た。
【0211】
<酸価(mgKOH/g)>
JIS K 1557-5(2007)に準拠して、水分散型ポリイソシアネートの酸価を測定した。
【0212】
<スルホン基の含有割合(SO3含有量、質量%)>
SO3
-の分子量を80として、化学構造式および配合処方から、水分散型ポリイソシアネート中のスルホン基の含有割合(SO3含有率)を算出した。
【0213】
<オキシエチレンユニットの含有割合(EO含有量、質量%)>
エチレンオキサイドユニット含有率を、化学構造式および配合処方から、下記式より算出した。
((メトキシPEG分子量-32)/メトキシPEG分子量)×メトキシPEG仕込量)/樹脂分量)×100
<イソシアネート基の含有割合(NCO含有量、質量%)>
イソシアネート基の含有割合を、電位差滴定装置を用いて、JIS K-1556(2006)に準拠したn-ジブチルアミン法により測定した。
【0214】
<評価>
(1)水分散性
水分散型ポリイソシアネートの固形分5gを、水95gに対して添加し、マグネチックスターラーで15分間撹拌した後、1時間静置した。そして、混合液の性状を、以下の評価基準で、評価した。
【0215】
○:沈殿物なし。
【0216】
△:沈殿物があるが、撹拌により再度分散可能。
【0217】
×:沈殿物があり、再度分散不可。
【0218】
(2)硬度
水酸基価50mgKOH/gの水性アクリルエマルション(固形分濃度40.0質量%)を、水で固形分濃度25質量%に希釈した。この水溶液を、主剤とした。
【0219】
硬化剤としての各水分散型ポリイソシアネートを、上記主剤に添加し、15分撹拌した。なお、主剤中の水酸基に対する硬化剤中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を、1.0とした。
【0220】
その後、主剤および硬化剤の混合液を、ガラス板上に塗布した。なお、乾燥厚みが20μmとなるように、塗布量が調整された。その後、塗膜を、110℃で30分乾燥させ、23℃で7日間養生した。これにより、硬化膜を得た。
【0221】
硬化膜のケーニッヒ硬度を、BYK社のペンデュラム硬度試験機によって、23℃で測定した。そして、硬度を、以下の評価基準で、評価した。
【0222】
○:70以上
△:60以上70未満
×:60未満
(3)硬化性
水酸基価50mgKOH/gの水性アクリルエマルション(固形分濃度40.0質量%)を、水で固形分濃度25質量%に希釈した。この水溶液を、主剤とした。
【0223】
硬化剤としての各水分散型ポリイソシアネートを、上記主剤に添加し、15分撹拌した。なお、主剤中の水酸基に対する硬化剤中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)を、1.0とした。
【0224】
その後、主剤および硬化剤の混合液を、ガラス板上に塗布した。なお、乾燥厚みが20μmとなるように、塗布量が調整された。その後、塗膜を、110℃で30分乾燥させ、23℃で7日間養生した。これにより、硬化膜を得た。
【0225】
硬化膜を、アセトンとメタノールとの混合液(質量比1:1)に、24時間浸漬した。
【0226】
そして、浸漬後の硬化膜の残存率を算出し、以下の評価基準で評価した。
【0227】
○:残存率90%以上
△:残存率80%以上90%未満
×:残存率80%未満
(4)弾性
まず、評価(2)の方法で得られた硬化膜を、幅5mm、長さ10cmのサイズに、裁断した。これにより、サンプルを得た。
【0228】
次いで、サンプルの0℃における貯蔵弾性率を、以下の方法で測定した。
【0229】
すなわち、動的粘弾性装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、モデル:RSA-III)を使用した。また、測定条件を、以下の通りに設定した。
【0230】
測定雰囲気:窒素
測定モード:引張モード(AutoTension、AutoStrain制御) 測定温度:-50~200℃
昇温速度:5℃/min
周波数:10Hz
評価の基準を、下記する。
【0231】
○:1.5×109Pa以上
×:1.5×109Pa未満
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、タケネート600、三井化学社製
HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート
PDI:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
IBA:イソブタノール
1,3-BG:1,3-ブタンジオール
CAPS:3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸、スルホン基含有活性水素化合物
MePEG1000:メトキシPEG、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ノニオン基含有活性水素化合物、数平均分子量1000
DMCHA:N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン
PMA:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
【0236】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明の水分散型ポリイソシアネート、水性ポリウレタン樹脂組成物および物品は、例えば、自動車外装、家庭用電化製品の表面樹脂コート、および、軟包装フレキソインキにおいて、好適に用いられる。