(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】細胞病理染色
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20240819BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240819BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20240819BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240819BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240819BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
C12Q1/6886 Z
C12N15/12
C12N5/09
(21)【出願番号】P 2022573589
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 US2021033672
(87)【国際公開番号】W WO2021242637
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】202010467313.3
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010468262.6
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/120070
(32)【優先日】2020-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/120071
(32)【優先日】2020-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522463325
【氏名又は名称】サイトベイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CYTOBAY INC.
【住所又は居所原語表記】2601 34th St.,Santa Monica,California 90405 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ウェンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-528460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0197839(US,A1)
【文献】特表2014-501929(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110487704(CN,A)
【文献】国際公開第2014/185151(WO,A1)
【文献】特開2011-256179(JP,A)
【文献】Moushumi Suryavanshi,S100P as a Marker for Urothelial Histogenesis: A Critical Review and Comparison With Novel and Traditional Urothelial Immunohistochemical Markers,Adv Anat Pathol,2017年05月,Volume 24, Number 3,pp.151-160
【文献】藤本 清秀,膀胱癌における5-aminolevulinic acidを用いた蛍光顕微鏡下経尿道的腫瘍切除術および尿中剥離細胞における光力学的診断,日レ医誌(JJSLSM),第30巻第4号,2010年,pp.399-404
【文献】abcam,Product datasheet,Anti-S100P antibody [EPR6143] ab133554,2019年07月17日
【文献】BIOSS ANTIBODIES,bsm-52057R,Cytokeratin 17 (1B12) Monoclonal Antibody,2008年08月15日
【文献】CORNING,Including Transwell and Falcon Cell Culture Inserts,Permeable Supports Product Selection Guide,2014年06月14日,pp.1-14
【文献】greiner bio-one,The reconstruction and immunocytochemical characterisation of polarised epithelia in ThinCert cell culture inserts,Application Note,2007年03月,073 100,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における膀胱がんの検出のための方法であって、
患者から得られた試料から尿沈渣細胞を単離する工程;
前記尿沈渣細胞を、水系の細胞懸濁液中で固定する工程;
前記尿沈渣細胞を水系の細胞懸濁液中で免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方で染色する工程;
前記尿沈渣細胞を水系の細胞懸濁液中で診断用細胞形態染色法で染色する工程;ならびに
前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方と前記診断用細胞形態染色法とにより前記尿沈渣細胞中に膀胱がん細胞が存在すると評価する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方が、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを標識することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記診断用細胞形態染色法が、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法、ヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記診断用細胞形態染色法において、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールが使用されないか、該アルコールの濃度が低減されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記評価工程が、光学顕微鏡観察、デジタル病理スライドまたは人工知能によって行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記評価工程が、膀胱がん細胞の総数、もしくは膀胱がん細胞中のバイオマーカー陽性細胞の割合、またはその両方を計測することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記膀胱がん細胞が、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膀胱がんが、尿路上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、肉腫またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記膀胱がんが低悪性度膀胱がんである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が哺乳動物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者がヒトである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、膀胱がんの臨床症状を呈していること、および/または膀胱がんの発症リスクが高い集団に属することに基づいて、
前記尿沈渣細胞を提供するよう選択された患者である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記診断用細胞形態染色法による前記尿沈渣細胞の評価が、核もしくは核小体の形状もしくは大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;または膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴を含む、前記
尿沈渣細胞の特徴を評価することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記尿沈渣細胞を水系の細胞懸濁液中で免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法で染色する工程、および/または前記尿沈渣細胞を診断用細胞形態染色法で染色する工程が、遠心分離を行うこと、または1つ以上のインサートもしくはトランスウェルを使用することを含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記
尿沈渣細胞は保持されるような、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、フランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法で染色された尿沈渣細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/091,633号の優先権の利益を主張する。また、本出願は、2020年5月28日出願の中国特許出願202010468262.6の優先権の利益を主張し、米国を指定国として英語で公開された2020年10月10日出願の国際特許出願PCT/CN2020/120071の優先権の利益を主張する。また、本出願は、2020年5月28日出願の中国特許出願202010467313.3の優先権の利益を主張し、米国を指定国として英語で公開された2020年10月10日出願の国際特許出願PCT/CN2020/120070の優先権の利益を主張する。各出願は、その全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
技術分野
本開示の態様は、全体として、細胞病理学の分野における多重染色方法およびスライド作製方法に関する。これらの方法は、尿検体を用いた膀胱がんの検出に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
膀胱がんは、男性で4番目、女性で12番目に多いがんであり、2019年の米国における膀胱がんの新規症例数は81,400例、死亡例数は17,980例と推定されている。2019年の米国の膀胱がん経験者は約829,620人である。
【0004】
尿細胞診は、悪性度が高く、ステージの高い膀胱がんの検出に非常に有効である。しかし、低悪性度腫瘍の検出感度はわずか4~31%と報告されており、低悪性度腫瘍の検出手段としてはあまり有効でないことが分かっている。これは、低悪性度尿路上皮がんと正常な膀胱尿路上皮細胞の細胞病理学的特徴が形態学的に類似しているためである。したがって、尿沈渣検体の細胞病理学的特徴に基づいて低悪性度尿路上皮がんの診断を下すことは非常に困難である。さらに、炎症、尿路上皮の異型性、化学療法や放射線療法による変化の影響により、偽陽性率は12%に上る。
【0005】
このような欠点により、尿細胞診の利用が妨げられており、尿細胞診の大幅な改善が顕在化している。非侵襲で得られた尿検体を用いて尿路上皮がんなどの膀胱がんを同定および検出するための新規で優れた細胞診の方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、患者由来の細胞の発色免疫細胞化学染色および/またはin situハイブリダイゼーション染色と診断用細胞形態染色とを組み合わせて使用する、異型細胞のin vitro細胞病理学的検出方法が開示される。この2種類の染色法で同じ尿沈渣細胞を多重染色すれば、1つ以上のがん特異的バイオマーカーの発現と細胞の形態学的特徴の両方を観察することができる。これらの染色法は、通常の光学顕微鏡を用いた分析に適合しており、蛍光顕微鏡などの高額な装置は不要である。バイオマーカーの染色は、免疫細胞化学法および/または発色in situハイブリダイゼーション法などのタンパク質ベースまたは核酸ベースの方法で行うことができる。このような多重染色方法は、尿中の膀胱がん細胞の検出に用いられる。特に、本明細書で提供される方法は、尿中剥離細胞を用いた低悪性度膀胱がんの陽性評価を大幅に向上させるものである。なお、尿中剥離細胞は、尿検体中にごく微量に存在する細胞で、可能な限り保存することが求められる。また、本明細書で提供されるいずれかの方法で染色された尿沈渣細胞も本明細書において開示される。
【0007】
本明細書で提供される本開示の実施形態は、以下の番号の実施形態の例により説明される。
【0008】
1. 患者における膀胱がんの検出方法であって、
患者から尿中剥離細胞を単離する工程;
前記尿中剥離細胞を、水系の細胞懸濁液中で固定する工程;
前記尿中剥離細胞を液体ベースの免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方で染色する工程;
前記尿中剥離細胞を診断用細胞形態染色法で染色する工程;ならびに
前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方と前記診断用細胞形態染色法とにより前記尿中剥離細胞中に膀胱がん細胞が存在すると評価することによって、前記患者の膀胱がんを検出する工程
を含む検出方法。
【0009】
2. 前記尿中剥離細胞が、尿検体から遠心分離により単離された尿沈渣細胞である、実施形態1に記載の方法。
【0010】
3. 前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方が、水系の細胞懸濁液中で行われる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0011】
4. 前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方が、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを標識することを含む、実施形態3に記載の方法。
【0012】
5. 前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
【0013】
6. 前記診断用細胞形態染色法が、
a)水系の細胞懸濁液中で行われるか、または
b)前記尿中剥離細胞を固体基材上に載置した後に行われる、
先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0014】
7. 前記診断用細胞形態染色法が、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法、ヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0015】
8. 前記診断用細胞形態染色法において、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールが使用されないか、該アルコールの濃度が低減されている、実施形態7に記載の方法。
【0016】
9. 前記固体基材が顕微鏡用スライドである、実施形態6~8のいずれかに記載の方法。
【0017】
10. 前記評価工程が、光学顕微鏡観察、デジタル病理スライドまたは人工知能によって行われる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0018】
11. 前記評価工程が、膀胱がん細胞の総数、もしくは膀胱がん細胞中のバイオマーカー陽性細胞の割合、またはその両方を計測することを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0019】
12. 前記膀胱がん細胞が、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0020】
13. 前記膀胱がんが、尿路上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、肉腫またはこれらの任意の組み合わせである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0021】
14. 前記膀胱がんが低悪性度膀胱がんである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0022】
15. 前記患者に対して膀胱がんの治療を行うことをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0023】
16. 前記患者に対する膀胱がんの治療が、手術、化学療法、免疫療法、標的療法もしくは放射線療法、またはこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態15に記載の方法。
【0024】
17. 前記化学療法が、シスプラチン、カルボプラチン、フルオロウラシル、マイトマイシン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、エルダフィチニブ、アファチニブ、ドセタキセルもしくはパクリタキセル、またはこれらの任意の組み合わせの投与を含む、実施形態16に記載の方法。
【0025】
18. 前記免疫療法が、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、エンホルツマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、トラスツズマブ、ジシタマブ、PRS-343もしくはペムブロリズマブ、またはこれらの任意の組み合わせの投与を含む、実施形態16または17に記載の方法。
【0026】
19. 前記患者が哺乳動物である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0027】
20. 前記患者がヒトである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0028】
21. 前記患者が、膀胱がんの臨床症状を呈していること、および/または膀胱がんの発症リスクが高い集団に属することに基づいて、尿中剥離細胞を提供するよう選択された患者である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0029】
22.
図3に記載の抗体またはその結合断片のうちの1つ以上が用いられる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0030】
23. 前記診断用細胞形態染色法による前記尿中剥離細胞の評価が、核もしくは核小体の形状もしくは大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;または膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴を含む、前記尿中剥離細胞の特徴を評価することを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0031】
24. 前記尿中剥離細胞を液体ベースの免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法で染色する工程、および/または前記尿中剥離細胞を診断用細胞形態染色法で染色する工程が、遠心分離を行うこと、または1つ以上のインサートもしくはトランスウェルを使用することを含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記尿中剥離細胞は保持されるような多孔質メンブレンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0032】
25. 患者から分離され、液体ベースの免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方と診断用細胞形態染色法とで染色された尿中剥離細胞集団。
【0033】
26. 前記尿中剥離細胞が、前記患者の尿検体から遠心分離により単離された尿沈渣細胞である、実施形態25に記載の尿中剥離細胞集団。
【0034】
27. 前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方による染色が、水系の細胞懸濁液中で行われたことを特徴とする、実施形態25または26に記載の尿中剥離細胞集団。
【0035】
28. 前記免疫細胞化学染色法または前記発色in situハイブリダイゼーション染色法で1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色されている、実施形態25~27のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0036】
29. 前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択される、実施形態28に記載の尿中剥離細胞集団。
【0037】
30. 1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色されている、実施形態25~29のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0038】
31. S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5のうちの1つ以上が染色されている、実施形態25~30のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0039】
32. 前記診断用細胞形態染色法による染色が、
a)水系の細胞懸濁液中で行われたか、または
b)前記尿中剥離細胞集団を固体基材上に載置した後に行われた
ことを特徴とする、実施形態25~31のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0040】
33. 前記固体基材が顕微鏡用スライドである、実施形態32に記載の尿中剥離細胞集団。
【0041】
34. 前記診断用細胞形態染色法が、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法、ヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、実施形態25~33のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0042】
35. 前記診断用細胞形態染色法において、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールが使用されないか、該アルコールの濃度が低減されている、実施形態25~34のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0043】
36. 固定処理および/または透過処理に供された、実施形態25~35のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0044】
37. メタノール、エタノール、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを用いて固定された、実施形態36に記載の尿中剥離細胞集団。
【0045】
38. 膀胱がん細胞を含む、実施形態25~37のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0046】
39. 前記膀胱がん細胞が、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択される1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを含む、実施形態38に記載の尿中剥離細胞集団。
【0047】
40. 前記膀胱がん細胞が、尿路上皮がん細胞、扁平上皮がん細胞、腺がん細胞、小細胞がん細胞または肉腫細胞である、実施形態38または39に記載の尿中剥離細胞集団。
【0048】
41. 哺乳動物由来である、実施形態25~40のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0049】
42. ヒト由来である、実施形態25~41のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0050】
43. 前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法もしくはその両方、および/または前記診断用細胞形態染色法が、遠心分離を行うこと、または1つ以上のインサートもしくはトランスウェルを使用することを含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記尿中剥離細胞は保持されるような多孔質メンブレンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、実施形態25~42のいずれかに記載の尿中剥離細胞集団。
【0051】
43. 実施形態1~23のいずれかに記載の方法で染色された尿中剥離細胞。
【0052】
別の例示的な実施形態は、以下に示すさらなる実施形態の例により説明される。
【0053】
44. 細胞検体を免疫組織化学法および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション法で染色するための改善された染色方法であって、
a)細胞検体の細胞懸濁液を容器に準備する工程;
b)前記容器内の細胞懸濁液中の細胞を免疫組織化学法および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション法で染色するために、
i)前記細胞の抗原および/または核酸マーカーに特異的に結合する一次抗体および/または一次核酸プローブを前記細胞懸濁液に加え、該抗原および/または該核酸マーカーと特異的に結合させる工程;
ii)未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブを除去した細胞懸濁液を準備する工程;
iii)発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブを前記細胞懸濁液に加え、前記一次抗体および/または前記一次核酸プローブと特異的に結合させる工程;
iv)未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブを除去した細胞懸濁液を準備する工程;
v)発色基質を前記細胞懸濁液に加え、該細胞懸濁液中に浮遊する細胞を常に撹拌しながら、触媒反応により生じる発色沈澱が濃縮蓄積せず均一に分散するようにして発色させる工程;ならびに
vi)過剰な発色基質を除去した細胞懸濁液を準備する工程
を実施する工程;ならびに
c)前記細胞懸濁液をスライドに塗抹する工程
を含む改善された染色方法。
【0054】
45. 工程ii)、iv)およびvi)において、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブの除去、未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブの除去、ならびに過剰な発色基質の除去が、i)前記細胞を洗浄する工程;ii)遠心分離して前記細胞を沈澱させる工程;およびiii)上清を廃棄する工程により行われる、実施形態44に記載の方法。
【0055】
46. 前記容器が、1つ以上のインサートまたはトランスウェルを含み、前記細胞懸濁液、好ましくは尿中剥離細胞を含む前記細胞懸濁液が、前記容器の1つ以上のトランスウェルに配置され、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記細胞懸濁液中の細胞は保持されるような多孔質メンブレン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよく、
工程ii)、iv)およびvi)において、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブの除去、未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブの除去、ならびに過剰な発色基質の除去が、前記1つ以上のインサート内またはトランスウェル内の細胞を洗浄バッファーで洗浄し、前記洗浄バッファーが前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルを通過することによって行われる、実施形態44に記載の方法。
【0056】
47. 前記細胞検体が、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、血液循環腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体および尿中剥離細胞検体から選択される検体であるか、または、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、胸水、腹水、間質液、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される患者由来の検体の細胞沈殿物を希釈することによって得られる検体である、実施形態44~46のいずれかに記載の方法。
【0057】
48. 前記一次抗体および/または前記一次プローブが、細胞膜、細胞質および/または細胞核を染色する複数種の抗体および/またはプローブの組み合わせである、実施形態44~47のいずれかに記載の方法。
【0058】
49. 細胞バイオマーカー染色が施されている、染色されたex vivo細胞の懸濁液。
【0059】
50. 前記細胞が、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、血液循環腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体、尿中剥離細胞検体、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、胸水、腹水、間質液、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される細胞検体に由来する、実施形態49に記載の染色されたex vivo細胞の懸濁液。
【0060】
51. 前記細胞が腫瘍細胞であり、腫瘍マーカー染色が施されている、実施形態50に記載の染色されたex vivo細胞の懸濁液。
【0061】
52. 実施形態44~48のいずれかに記載の方法によって得られる、実施形態49~51のいずれかに記載の染色されたex vivo細胞の懸濁液。
【0062】
53. 実施形態49~52のいずれかに記載の細胞の懸濁液を含む病理スライド。
【0063】
54. 細胞検体に対して、免疫組織化学染色および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色と病理診断に使用できる細胞形態染色とを組み合わせて行う多重染色方法であって、
a)細胞検体の細胞懸濁液を容器に準備する工程;
b)前記容器内の細胞懸濁液中の細胞を免疫組織化学法および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション法で染色するために、
i)前記細胞の抗原および/または核酸マーカーに特異的に結合する一次抗体および/または一次核酸プローブを前記細胞懸濁液に加え、該抗原および/または該核酸マーカーと特異的に結合させる工程;
ii)未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブを除去した細胞懸濁液を準備する工程;
iii)発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブを前記細胞懸濁液に加え、前記一次抗体および/または前記一次核酸プローブと特異的に結合させる工程;
iv)未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブを除去した細胞懸濁液を準備する工程;
v)発色基質を前記細胞懸濁液に加え、該細胞懸濁液中に浮遊する細胞を常に撹拌しながら、触媒反応により生じる発色沈澱が濃縮蓄積せず均一に分散するようにして発色させる工程;ならびに
vi)過剰な発色基質を除去した細胞懸濁液を準備する工程
を実施する工程;ならびに
c)前記容器内の細胞の病理診断に使用できる細胞形態染色を行い、多重染色された細胞を病理スライドに塗抹するか、または、免疫組織化学法および/または発光in situ核酸ハイブリダイゼーション法で染色された細胞を病理スライドに塗抹し、病理診断に使用できる細胞形態染色を行う工程
を含む多重染色方法。
【0064】
55. 工程ii)、iv)およびvi)において、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブの除去、未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブの除去、ならびに過剰な発色基質の除去が、i)前記細胞を洗浄する工程;ii)遠心分離して前記細胞を沈澱させる工程;およびiii)上清を廃棄する工程により行われる、実施形態54に記載の方法。
【0065】
56. 前記容器が、1つ以上のインサートまたはトランスウェルを含み、前記細胞懸濁液、好ましくは尿中剥離細胞を含む前記細胞懸濁液が、前記容器の1つ以上のインサートまたはトランスウェルに配置され、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記細胞懸濁液中の細胞は保持されるような多孔質メンブレン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよく、
工程ii)、iv)およびvi)において、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブの除去、未結合の発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブの除去、ならびに過剰な発色基質の除去が、前記1つ以上のインサート内またはトランスウェル内の細胞を洗浄バッファーで洗浄し、前記洗浄バッファーが前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルを通過することによって行われる、実施形態54に記載の方法。
【0066】
57. 病理診断に使用できる細胞形態染色が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色およびヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色から選択される、実施形態54~56のいずれかに記載の方法。
【0067】
58. 病理診断に使用できる細胞形態染色がディフ・クイック染色である、実施形態57に記載の方法。
【0068】
59. 前記細胞検体が、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、血液循環腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体および尿中剥離細胞検体から選択される検体であるか、または、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、間質液、胸水、腹水、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される患者由来の検体の細胞沈殿物を希釈することによって得られる検体である、実施形態54~58のいずれかに記載の方法。
【0069】
60. 前記一次抗体および/または前記一次プローブが、細胞膜、細胞質および/または細胞核を染色する複数種の抗体および/またはプローブの組み合わせである、実施形態54~59のいずれかに記載の方法。
【0070】
61. 病理診断に使用できる形態染色と細胞バイオマーカー染色とが同一の標的細胞に施されている、多重染色されたex vivo細胞。
【0071】
62. 前記細胞が、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、血液循環腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体、尿中剥離細胞検体、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、間質液、胸水、腹水、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される細胞検体に由来する、実施形態61に記載のex vivo細胞。
【0072】
63. 前記細胞が腫瘍細胞であり、病理診断に使用できる形態染色と腫瘍マーカー染色とが同一の標的細胞に施されている、実施形態61に記載のex vivo細胞。
【0073】
64. 実施形態54~60のいずれかに記載の方法によって得られる、実施形態61~63のいずれかに記載のex vivo細胞。
【0074】
65. 実施形態61~64のいずれかに記載の多重染色されたex vivo細胞を含む病理スライド。
【0075】
66. 細胞検体に対して、免疫組織化学染色および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色と病理診断に使用できる細胞形態染色とを行うための多重染色キットであって、細胞検体の免疫組織化学染色用および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色用の試薬と細胞形態染色用の試薬とを含む多重染色キット。
【0076】
67. 細胞検体の免疫組織化学的染色用および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色用の前記試薬が、一次抗体および/または一次核酸プローブ、発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブ、ならびに発色基質を含む、実施形態66に記載のキット。
【0077】
68. 細胞形態染色用の前記試薬が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色およびヘマトキシリン/エオシン染色に用いられる試薬から選択される、実施形態66または67に記載のキット。
【0078】
69. 前記一次抗体および/または前記一次プローブが、細胞膜、細胞質および/または細胞核を染色する複数種の抗体および/またはプローブの組み合わせである、実施形態67に記載のキット。
【0079】
70. 前記細胞検体が、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体および尿中剥離細胞検体から選択される検体であるか、または、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、間質液、胸水、腹水、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される患者由来の検体の細胞沈殿物を希釈することによって得られる検体である、実施形態66~69のいずれかに記載のキット。
【0080】
71. 前記キットが、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器と、該容器のウェルに嵌まるように構成された1つ以上のインサートまたはトランスウェルとをさらに含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが前記細胞検体の細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、実施形態66~70のいずれかに記載のキット。
【0081】
72. インサートまたはトランスウェルであって、該インサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含み、前記インサートまたはトランスウェルが、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、前記インサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよいことを特徴とする、インサートまたはトランスウェル。
【0082】
73. プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートであって、該プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートが、それぞれのプレートのウェルに嵌まるように構成された1つ以上のインサートまたはトランスウェルを含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルが、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含み、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレート。
【0083】
74. 互いに接続または連結された複数のインサートまたはトランスウェルが設けられており、該複数のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい、実施形態71に記載のキット、実施形態72に記載のインサートもしくはトランスウェル、または実施形態73に記載のプレート、マルチウェルプレートもしくはマイクロタイタープレート。
【図面の簡単な説明】
【0084】
前述した特徴以外のさらなる特徴や変形例は、以下の図面の説明および例示される実施形態から容易に理解できるであろう。以下の図面は実施形態を示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0085】
【
図1A-G】10%ディフ・クイック染色法または5%パパニコロウ染色法と同時に液体ベースの免疫細胞化学法で染色した尿沈渣細胞を示した顕微鏡写真の例である。尿沈渣細胞はすべて十分に染色されており、細胞病理診断可能である。細胞病理学的に異型の細胞(膀胱がん細胞など)は、発色沈殿により染色される(矢印で示す)。
図1A~Gはそれぞれ異なる患者の尿検体であるため、異型細胞の形態が異なって見える。免疫細胞化学法は、一次抗体として、ヒトサイトケラチン20(CK-20)(
図1A)、膀胱腫瘍抗原(BTA)(
図1B)、p63(
図1C)、hTERT(
図1D)、S100P(
図1E)、PD-L1(
図1F)またはMCM5(
図1G)に対して特異的な市販のマウスモノクローナル抗体またはウサギモノクローナル抗体(例えば、LBP Med Sci & Tech社およびAbcam社)を用いて実施した。
【0086】
【
図2】ディフ・クイック染色法と同時に発色in situハイブリダイゼーション法で染色した尿沈渣細胞を示した顕微鏡写真である。尿沈渣細胞はすべて十分に染色されており、細胞病理診断可能である。ヒトGATA-3を一次核酸プローブとして用いた発色沈殿により染色された4個の膀胱がん細胞(黒枠で囲った部分)が見られる。
【0087】
【
図3】本明細書に開示されたいずれかの方法において免疫細胞化学法に用いることができる膀胱がんバイオマーカーに対する抗体の例である。
【0088】
【
図4A-B】5%パパニコロウ染色法と同時に液体ベースの免疫細胞化学法で染色した尿沈渣細胞を示した顕微鏡写真の例である。尿沈渣細胞はすべて十分に染色されており、細胞病理診断可能である。細胞病理学的に異型の細胞(膀胱がん細胞など)は、発色沈殿により染色される(矢印で示す)。
図4A~Bはそれぞれ異なる患者の尿検体であるため、異型細胞の形態が異なって見える。免疫細胞化学法は、一次抗体として、ヒトサイトケラチン17(CK-17)(
図4A)またはHer-2(
図4B)に特異的な市販のマウスモノクローナル抗体またはウサギモノクローナル抗体を用いて実施した。
【0089】
【
図5A-D】尿中剥離細胞の染色に用いられるトランスウェルデバイスまたはインサートデバイスの実施形態を示した図である。
図5A~Dに示した図は非限定的なものであり、これら以外にもトランスウェルデバイスまたはインサートデバイスの好適な実施形態が想定される。
【発明を実施するための形態】
【0090】
細胞病理学は、疾患の原因や発症機序、また、主に細胞内の異常な状態に基づく疾患発症時の細胞の生理機能の変化などを検討し、疾患の診断、予防や治療の基礎情報を提示する学問である。臨床検体としては、剥離細胞診、穿刺吸引細胞診、血液循環腫瘍細胞診やその他の細胞診(例えば、手術時細胞診、骨髄・末梢血細胞診、AIDSの細胞診など)の検体が挙げられる。
【0091】
慣用的な細胞病理学的染色法として、パパニコロウ染色法(Pap stain)、ライトギムザ染色法、ディフ・クイック染色法などが挙げられる。中でもディフ・クイック染色法は、日常的な細胞病理学的診療に最も利用されている染色法で、世界保健機関(WHO)の推奨染色法であり、通常、キサンテン系色素(例えば、エオシンY)とチアジン系色素(例えば、メチレンブルーまたはアズールA)が用いられる。ディフ・クイック染色法により、核や核小体の形状や大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;および膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴が明確に示される。また、遊離ムチン、コロイド、基底物質などの細胞外物質も容易に染色される。このような特徴は、細胞病理学的診断に不可欠なものである。
【0092】
本開示は、膀胱がんの一次診断、再発検出、疾患の進行、疾患スクリーニング、例えば、高リスク集団における疾患スクリーニングなどの分野に関する。本明細書に開示される方法は、膀胱がんの場合、剥離した悪性細胞を含む尿沈渣細胞が載置された細胞病理スライドを評価するために使用される。
【0093】
本明細書で提供される方法の特異な点は、同一スライド上の同一の尿沈渣細胞に対して、病理医が細胞病理学的に適格な形態的特徴と膀胱がん特異的バイオマーカーの発現の両方を評価することができる初めての方法であるということである。この組み合わせ評価は、病理医が通常の光学顕微鏡観察で行うことができ、このような評価により、尿検体を用いた膀胱がんの一次診断、膀胱がん再発のモニタリングおよび膀胱がんのスクリーニングが可能になる。
【0094】
尿細胞診は、病理医により行われるスライドガラス上の尿沈渣細胞(および悪性細胞成分)を評価する方法で、病理医は、通常の光学顕微鏡観察により個々の細胞の細胞病理学的特徴を調べる。尿細胞診は、膀胱がんの非侵襲的検査として、臨床現場で日常的に使用されている。尿細胞診は、悪性度が高く、ステージの高い疾患の検出には非常に有効であり、高悪性度膀胱がんに対する高い感度と高い特異度が報告されている。しかし、低悪性度腫瘍の検出感度はわずか4~31%程度と報告されており、低悪性度腫瘍を検出する手段としてはあまり有効でないことが分かっている。
【0095】
細胞診は、悪性度が高く、ステージの高い膀胱がんの再発をモニタリングするために一般的に行われている。しかし、尿細胞診は、膀胱がん検出の感度や特異度が十分でないため、低悪性度膀胱がんや高リスク集団の膀胱がんスクリーニングに有効であるとは認められていない。
【0096】
従来法では、20~25mLの尿検体を遠心分離して、尿沈渣細胞を回収する。この尿沈渣細胞を病理スライドガラスに薄層状に載置し、臨床的に認められている方法で染色することにより、病理医の診断に役立つ細胞の形態的特徴が示される。
【0097】
膀胱がんの悪性度は、がん細胞を染色して顕微鏡で観察したときに、がん細胞が健康な細胞とどの程度似ているかを示すものである。しかし、病理医が悪性度の低い膀胱がん細胞を見た場合、正常な細胞と誤認したり、判断に悩んで確定診断できずに異型細胞や疑わしい細胞として分類したりするケースが多いという問題がある。尿細胞診は、低悪性度膀胱腫瘍の検出には明らかに不十分であり、偽陰性率も極めて高いため、尿細胞診を補助する他の技術が検討されている。そのため、剥離した悪性腫瘍細胞における膀胱腫瘍特異的バイオマーカーの発現に注目が集まっている。このようなニーズの高まりに応えるため、2つの主要な技術プラットフォームが開発されている。
【0098】
1)尿検体中の膀胱腫瘍特異的バイオマーカータンパク質濃度の定量
【0099】
2)蛍光法、すなわち免疫蛍光染色法(IF)や蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)による尿沈渣細胞におけるバイオマーカー発現の検出
【0100】
米国食品医薬品局(FDA)は、尿検体を用いた膀胱腫瘍の検出法として、表1に示す6製品を承認している。しかし、感度や特異度が十分でないため、尿細胞診よりも優れた選択肢とは考えられておらず、泌尿器科医に広く採用されていない。表1の数値は、Tabayoyong W & Kamat AM Current Use and Promise of Urinary Markers for Urothelial Cancer. Curr Urol Rep. 2018;19(12):96から引用したものである。本明細書に記載の方法(「Cytobay」)の予測値(*)は、臨床試験に基づいた予想値である。
【表1】
【0101】
表1に示すFDA承認の検査のうち、最初の4つ(BTA stat、BTATRAK、NMP22 BC、NMP22 BladderChek)は膀胱がん特異的バイオマーカーのタンパク質濃度を測定するものであり、ImmunoCyt/uCytとUroVysionは免疫蛍光法によりバイオマーカーを検出するものである。いずれも病理診断に適格な詳細な細胞形態情報を提供するものではない。免疫蛍光染色法は、対象となる細胞の全体的な形状や大きさを示すことはできるが、病理医が形態学的診断を行うには不十分であり不適格である。したがって、これらの検査から、病理診断に適格な詳細な形態学的情報や細胞病理学的情報を得ることはできない。
【0102】
さらに、表1に示すように、FDAが承認した手法は、検査の精度を評価するための重要なパラメータである感度と特異度において、観察者間で大きな差異がある。特異度の低さは、感染症、結石、血尿、尿路系への直近の器具装着など、良性または別の原因による偽陽性判定が多いためである。また、暗室や高価な蛍光顕微鏡などの特殊な実験設備や、検査結果を解釈する熟練した読み手が必要なため、これらの測定法の普及は限定的なものとなっている。
【0103】
より正確な診断のためには、細胞病理染色法に代わる方法、例えば、免疫細胞化学染色法や発色in situハイブリダイゼーション染色法などが求められているが、尿沈渣細胞でこのような手法を行うことは非常に困難である。このような手法が尿細胞診の補助技術として使用されないのにはいくつかの理由がある。
【0104】
1)現在、尿細胞診スライドは20~25mLの尿検体を用いて作製される。尿検体中の細胞量は少なく、細胞形態染色用スライド1枚分に相当する。ディフ・クイック染色法などの日常的に用いられる細胞形態染色法では、色素が使用されるため、一次抗体や一次核酸プローブとそのエピトープや標的配列との結合が阻害される。このような色素は、免疫染色を行う前に尿沈渣細胞から除去する必要がある。
【0105】
2)色素を除去した後でも、十分な染色を行うためには、より高濃度の一次抗体や一次核酸プローブを使用する必要がある。そのため、偽陽性となる場合があり、臨床診断、疾患モニタリングまたは治療法の選択で誤った判断をする可能性がある。
【0106】
3)試薬の交換や洗浄を複数回行う免疫染色では、スライドガラス上の尿沈渣細胞は開放環境に曝される。試薬の交換や洗浄の際に、尿沈渣細胞の一部がスライドから剥がれることは避けられず、その結果、廃棄される溶液と共に失われる。そのため、感度が低下し、正確な結果が得られないことがある。
【0107】
4)日常的に用いられる形態染色を除去する必要がない稀な状況においては、免疫細胞化学法および/または発色in situハイブリダイゼーション法の過程で細胞形態染色の状態が劣化することが避けられず、正確な形態学的評価の妨げになる。
【0108】
5)免疫細胞化学法または発色in situハイブリダイゼーション法のシグナルとして固定スライドガラス上に存在する発色沈殿は、対象となる細胞に蓄積し、細胞の形態的特徴が見えなくなる場合がある。その結果、病理医による細胞病理学的評価が適切に行われない可能性がある。
【0109】
6)尿沈渣細胞がスライドガラスに付着する。染色試薬や洗浄試薬は、細胞がスライドガラスに付着している部分には浸透しない(付着していないと細胞は剥がれて失われる)。そのため、尿沈渣細胞がスライドガラスに付着している部分に染色の「盲点」が生じる。また、付着した個々の細胞とスライドガラス表面との間には、数多くの細い溝が存在する。その結果、このような届きにくい細い溝に染色成分が入り込んで停滞しやすく、免疫細胞化学法や発色in situハイブリダイゼーション法において、個々の尿沈渣細胞の周囲で、いわゆる望ましくない「エッジエフェクト」が生じる。この副次的な影響により、偽陽性のシグナルが発生し、正確な検出が妨げられることがある。
【0110】
したがって、現在の技術では、尿中の剥離した悪性細胞に関する情報は、細胞形態学的情報(尿細胞診)か膀胱がん特異的バイオマーカーのどちらか一面的なものしか得られないのが現状である。膀胱がん特異的バイオマーカーの検出では、タンパク質濃度によるものであれ、免疫蛍光法によるものであれ、形態学的情報は全く得られないか、ほとんど得られない。膀胱がんに対する尿沈渣細胞診断の感度と特異度を向上させるための手法として、同一の細胞において、診断に適格な細胞形態情報と膀胱がん特異的バイオマーカー発現を組み合わせて検出できる革新的な方法が本明細書に開示される。同一スライド上の同一の細胞の細胞形態と腫瘍マーカーが検出されることで得られる相乗効果により、病理医は容易に解析を行うことができるようになり、より正確な細胞病理学的診断が可能となる。
【0111】
定義
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照しながら本発明を説明する。別段の記載がない限り、図面中の類似の記号は、通常、類似の構成要素を示す。詳細な説明、図面および請求項に記載の実施形態は例示を目的としたものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、本明細書で示される主題の趣旨または範囲から逸脱しない限り、その他の実施形態も可能であり、また、その他の変更も可能である。本明細書で概説し、図面に示した本開示の態様は、様々な構成で配置、置換、合体、分離および設計できることは容易に理解され、このような態様はいずれも本明細書に明示的に包含される。
【0112】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示に照らして解釈した際に、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。本発明の開示を目的として、以下の用語を下記の通り定義する。
【0113】
本発明の様々な実施形態を説明するため、本開示では概して肯定的な表現が用いられている。本開示は、物質または材料、方法の工程および条件、プロトコルまたは手順などの、本発明の主題のすべてまたはその一部が除外された実施形態も包含する。
【0114】
本明細書において、「a」および「an」という冠詞は、これらの冠詞の文法上の目的語となる1つまたは複数の(例えば、少なくとも1つの)ものを示すために使用される。例えば、「an element」は、1つの構成要素または複数の構成要素を意味する。
【0115】
「約」は、特定の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さが、基準となる数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さに対して、10%程度の範囲で変動することを意味する。
【0116】
本明細書を通して、別段の記載がない限り、「含む」および「含んでいる」という用語は、本明細書に記載の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を包含することを意味するが、その他の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を除外するものではない。「からなる」は、この用語の前に挙げられたもののみを含むことを意味する。したがって、「からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示し、その他の構成要素は含まれていなくてもよいことを意味する。「から実質的になる」は、この用語の前に挙げられた構成要素を含み、これらの構成要素の開示に関連して記載された活性または作用に対して妨害も寄与もしないその他の構成要素も含むことを意味する。したがって、「から実質的になる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示すが、その他の構成要素は任意であり、この用語の前に挙げられた構成要素の活性または作用に実質的な影響を与えるかどうかに応じて含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0117】
本明細書において、「個体」、「対象」または「患者」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ヒト、もしくはイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類などのヒト以外の哺乳動物、ニワトリなどの鳥類、その他の脊椎動物、または無脊椎動物を意味する。「哺乳動物」という用語は、通常の生物学的な意味で使用される。したがって、「哺乳動物」には、具体的には、サル類(チンパンジー、類人猿、サル)およびヒトを含む霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ネズミ、マウス、モルモットなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書において、「有効量」または「有効用量」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、観察可能な効果をもたらす本明細書に記載の組成物または化合物の量を表す。本明細書に開示された主題の活性組成物に含まれる有効成分の実際の投与量は、特定の対象および/または用途において所望の応答を得るのに有効な量の当該活性組成物または化合物が投与されるように変更することができる。選択される投与量は、以下に限定されないが、当該組成物の活性、処方、投与経路、他の薬物または治療との組み合わせ、治療中の病態の重症度、治療対象の健康状態および既往歴などの様々な要因によって異なる。いくつかの実施形態において、最小用量が投与され、用量は、用量制限毒性が認められない最小有効量まで増量することができる。有効用量の決定や調整だけでなく、このような調整をいつ、どのように行うかという評価についても、本明細書において想定されている。
【0119】
本明細書において、「機能」および「機能的」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的機能、酵素的機能または治療的機能を意味する。
【0120】
本明細書において、「抑制する」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的活性を軽減または阻害することを意味する場合がある。軽減の程度は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の値で表される。本明細書において、「遅延させる」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的事象の進行を遅らせたり、当該事象の発生時期を予想された時期より後ろにずらすことを意味する。遅延の程度は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の値で表される。「抑制する」および「遅延させる」という用語は、必ずしも100%の抑制や遅延を意味するものではなく、部分的な抑制または遅延であってもよい。
【0121】
本明細書において、「単離された」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、(1)(自然環境および/または実験環境において)生成された際に元々付随していた成分の少なくとも一部が分離された状態である物質および/もしくは実体、ならびに/または(2)人手を介して生成、調製および/もしくは製造された状態である物質および/もしくは実体を意味する。単離された物質および/または実体は、それらに元々付随していた他の成分が、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、実質的に100%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値を含む範囲および/もしくはこれらの値にまたがる範囲で分離されていてもよい。いくつかの実施形態において、単離された物質の純度は、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、実質的に100%もしくは100%であるか、これらの値程度であるか、少なくともこれらの値であるか、少なくともこれらの値程度であるか、これらの値以下であるか、これらの値程度以下であるか、またはこれらの値を含む範囲および/もしくはこれらの値にまたがる範囲である。本明細書において、「単離された」物質は、「純粋な」(例えば、他の成分を実質的に含まない)物質であってよい。本明細書において、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物または組織に含まれていない細胞を意味する場合がある。
【0122】
本明細書において、「in vivo」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、組織抽出物や死滅した生物体ではなく、生存している生物体、通常、動物、ヒトを含む哺乳動物や植物などの生体内で何らかの手技を実施することを意味する。
【0123】
本明細書において、「ex vivo」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生体外で天然の状態にほとんど変更を加えることなく何らかの手技を実施することを意味する。
【0124】
本明細書において、「in vitro」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的状態とは異なる状態において、例えば、シャーレや試験管の中で何らかの手技を実施することを意味する。
【0125】
本明細書において、「核酸」または「核酸分子」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、細胞内に天然で存在している核酸や核酸分子、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られる断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより得られる断片を意味する。核酸分子は、天然のヌクレオチドモノマー(DNAやRNAなど)、天然のヌクレオチドの類似体(例えば、天然のヌクレオチドのエナンチオマー)、またはこれらの組み合わせから構成されていてもよい。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分に修飾を有していてもよい。糖部分の修飾としては、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミンまたはアジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換が挙げられ、糖部分はエーテル化またはエステル化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体構造的に類似の構造や電子的に類似の構造と置換されていてもよく、このような構造として、例えば、アザ糖および炭素環式糖類似体が挙げられる。修飾塩基部分としては、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、およびその他の公知の複素環置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこれに類似した結合により連結することができる。ホスホジエステル結合に類似した結合としては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロセレノエート結合、ホスホロジセレノエート結合、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)結合、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)結合およびホスホロアミデート結合が挙げられる。「核酸分子」は、いわゆる「ペプチド核酸」も包含する。ペプチド核酸は、ポリアミド主鎖に付加された天然の核酸塩基または修飾核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。「オリゴヌクレオチド」は、核酸と同じ意味で用いられ、二本鎖または一本鎖のDNAまたはRNAを意味する。核酸は、様々な生物系で核酸を増幅および/または発現させることができる核酸ベクターまたは核酸コンストラクト(例えば、プラスミド、ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはヒト人工染色体(HAC))に含まれていてもよい。通常、核酸ベクターまたは核酸コンストラクトは、以下に限定されないが、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、クローニング部位、マルチクローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的配列、ペプチド精製タグもしくはアクセサリー遺伝子またはこれらの任意の組み合わせなどの要素も含む。
【0126】
核酸または核酸分子は、複数の異なるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の配列を含んでいてもよい。これらの1つ以上の配列は、1つの核酸または核酸分子内で隣接して連結していてもよく、別の核酸を間に挟んで連結していてもよい。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列もしくは制限酵素部位、または、1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、核酸に関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、核酸が二本鎖である場合はコード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の3'末端側(後方)に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、核酸が二本鎖である場合はコード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の5'末端側(前方)に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「グループ化されている」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、近接して存在する2つ以上の配列、例えば、直接連結しているか、別の核酸を間に挟んで連結している2つ以上の配列を意味する。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列もしくは制限酵素部位、または、1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。なお、間に挟まれている核酸配列は、通常、機能性または触媒性のポリペプチド、タンパク質またはタンパク質ドメインをコードしていない。
【0127】
本明細書に記載の核酸は、核酸塩基を含む。基本の塩基、言い換えれば、標準の塩基、天然の塩基または非修飾塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシルである。その他の核酸塩基としては、プリン類、ピリミジン類、修飾核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素標識塩基、蛍光標識塩基またはビオチン標識塩基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、複数のアミノ酸がペプチド結合により連結されて構成される巨大分子を意味する。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の機能として数多くのものが当技術分野で知られており、酵素、構造、輸送、防御、ホルモンまたはシグナル伝達といった機能があるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、多くの場合、核酸を鋳型として、リボソーム複合体により生物学的に生成されるが、この方法に限られず、化学合成により作製することもできる。鋳型となる核酸を遺伝子操作することによって、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に変異を加えることができ、この変異には、置換、欠失、切断、付加、重複、または2つ以上のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の融合が含まれる。2つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が融合されている場合、2つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つの分子内で隣接して連結していてもよく、別のアミノ酸を間に挟んで連結していてもよい。この別のアミノ酸としては、例えば、リンカー、反復配列、エピトープもしくはタグ、または、1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの長さのいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、ポリペプチドに関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ある配列のC末端側(後方)にある配列を意味する。本明細書において、ポリペプチドに関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ある配列のN末端側(前方)にある配列を意味する。
【0129】
本明細書において、「%w/w」または「%wt/wt」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、本発明の組成物の全重量に対する成分または薬剤の重量の割合に100を掛けたものである。本明細書において、「%v/v」または「%vol/vol」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、本発明の組成物の液体全容量に対する化合物、物質、成分または薬剤の液体容量の割合に100を掛けたものである。
【0130】
膀胱がんは、低悪性度と高悪性度に分類される。低悪性度の腫瘍は、がん細胞の増殖が遅く、正常な尿路上皮細胞や他の膀胱細胞と細胞形態学的に類似しているという特徴がある。低悪性度の膀胱がんは、高悪性度の膀胱がんに比べて悪性度や浸潤性の高い腫瘍に進行することはあまりないものの、低悪性度の腫瘍の存在は、その人が進行性の膀胱がんを発症する傾向があることを示唆すると考えられるため、低悪性度の腫瘍を早期に発見して維持することが重要である。高悪性度の腫瘍は、急速に増殖し、周囲の膀胱筋に浸潤し、最終的には転移する可能性がある腫瘍である。高悪性度膀胱腫瘍を検出する方法として承認されている病理学的方法はあるものの、低悪性度腫瘍は正常な膀胱細胞と類似しているため、検出が困難である。本開示の方法に具体化されているように、細胞形態学的評価とがんバイオマーカー評価を組み合わせることにより、患者検体における低悪性度と高悪性度の両方の膀胱がんをより高い信頼性で同定することができる。
【0131】
本明細書において、「尿中剥離細胞」という用語は、尿排泄の際に体外に排出される、尿路に関連する少量の尿路上皮細胞やその他の細胞を意味し、これらの細胞には潜在的ながん細胞が含まれる。尿検体に含まれるこの体外に排出された細胞(例えば、がん細胞、赤血球、白血球または細菌)を分析することにより、個人の健康状態を非侵襲的に評価することが可能である。しかし、この尿中剥離細胞の濃度は非常に低いため、一般的には濃縮が必要である。通常、細胞成分を遠心分離で圧縮して細胞ペレット(「尿沈渣細胞」)とする。これを再懸濁してその後の工程に使用する。
【0132】
検体中の特定の細胞標的物質を検出し、染色することができる。この特定の細胞標的物質は生物学的成分であればよく、例えば、タンパク質または核酸が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質(または抗体が結合可能なその他のエピトープ)を検出するために抗体を使用する免疫組織化学法(免疫細胞化学法)と、DNAやRNAなどの核酸とハイブリダイズしてこれらを検出するために核酸プローブを使用するin situハイブリダイゼーション法(蛍光、発色など)という2つのアプローチがある。膀胱がん特異的バイオマーカーに特異的な免疫細胞化学法および発色in situハイブリダイゼーション法が、いくつかの実施形態において本明細書に開示されている。特に、通常の光学顕微鏡を使用して行える検出の容易さから、発色基質が酵素により着色沈殿物に変換される発色法が使用されている。ただし、当業者によって別のバイオマーカー特異的染色法やその他のバイオマーカーが代わりに使用されることも想定される。
【0133】
通常、免疫細胞化学法はスライドガラスを用いて行われる。スライド上の細胞検体または組織検体を、標的タンパク質に特異的な一次抗体とインキュベートする。十分に洗浄して一次抗体を除去した後、発色酵素結合二次抗体をスライドに加えてインキュベートする。その後、対応する発色基質をスライドに加えると、二次抗体に結合している発色酵素による触媒反応により発色沈殿が生じ、陽性シグナルが得られる。スライド上のシグナルは、光学顕微鏡観察により評価することができる。
【0134】
通常、発色in situハイブリダイゼーションは、スライドガラスを用いて行われる。スライド上の細胞検体または組織検体を、標的核酸とハイブリダイズする特異的な核酸プローブとインキュベートする。十分に洗浄して核酸プローブを除去した後、発色酵素結合二次試薬を順次スライドに加えてインキュベートする。その後、対応する発色基質をスライドに加えると、二次試薬に結合している発色酵素による触媒反応により発色沈殿が生じ、陽性シグナルが得られる。スライド上のシグナルは、光学顕微鏡観察により評価することができる。
【0135】
免疫細胞化学法と発色in situハイブリダイゼーション法の主な違いは、一次試薬がタンパク質抗体であるか、核酸プローブであるかの違いである。シグナルの生成と評価については、基本的に同じである。
【0136】
本明細書において、「診断用細胞形態染色法」という用語は、細胞やその他の生物学的物質を、色素または色素の混合物を用いて、(特定の成分を標的とする免疫細胞化学法や発色in situハイブリダイゼーション染色法とは異なる)一般的な方法で着色する染色法を意味する。診断用細胞形態染色法は、通常の光学顕微鏡観察での細胞のコントラストを高め、細胞病理学的判断を行うための細胞形態に関する識別可能な細部の情報を得るためによく使用される。診断用細胞形態染色法の例としては、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法およびヘマトキシリン/エオシン染色法が挙げられる。特定の望ましい特性のために、公知の診断用細胞形態染色法の派生法や変法が使用されることも想定されており、着色するための化学色素をそのまま使用するか、別のものに変更した派生法や変法が想定される。
【0137】
本明細書において、「トランスウェル」または「インサート」という用語は、当技術分野で理解されているように、多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを有し、この多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンの透過性に基づいて2つの領域に分離するデバイスを意味する。本明細書で使用されるトランスウェルデバイスまたはインサートデバイスの実施形態は、
図5A~Dに示されている。トランスウェルまたはインサートの一実施形態は、ウェル形状のデバイス501である。デバイス501は、多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509を含み、容器503にぴったり嵌まる。トランスウェル501が配置されると、容器503は下部コンパートメント507を構成し、トランスウェル501は上部コンパートメント505を構成する。下部コンパートメント507と上部コンパートメント505は多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509を介して接しており、両コンパートメント間の移動は、粒子径に基づいてある程度可能になっている。細胞培養で使用する場合、トランスウェル501の多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509上に位置する細胞は、下部コンパートメントおよび上部コンパートメントの両方の成長培地に接触させることができる。なお、細胞511の集団は、単層の形態であってもよい。細胞集団が産生する分子は、多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを通って下部コンパートメントに移行するものもあるが、細胞は上部コンパートメントに残ったままである。また、このトランスウェルは、細胞集団に所望の液体組成物を短時間接触させる手段として使用することもできる。例えば、細胞511の集団がトランスウェル501の多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509上に位置し、溶液513(例えば、染色法の一部としての洗浄バッファー)が細胞511の集団に添加されると、溶液513は細胞511に接触して、517として示すプロセスにより多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509を通って使用済溶液515として下部コンパートメントへと移動する(例えば、色素、タンパク質、抗体または核酸などの除去したい物質を細胞の集団から分離するために、溶液513として洗浄バッファーを使用する)。標的細胞は多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン上に保持されると同時に、孔径より小さい粒子(例えば、小さい細胞、高分子、低分子、溶媒)は多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを通過することができるように、通常、トランスウェル501には、標的細胞より小さい孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン509が装着されている。いくつかの実施形態において、前記多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンの孔径(直径)は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmまたは8μmである。いくつかの実施形態において、前記トランスウェルは、尿中剥離細胞をろ過するために使用される。尿中剥離細胞は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmまたは8μmの孔径(直径)を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンで保持される。前記トランスウェル501は、適切な容器503にぴったり嵌まる大きさである。前記容器は、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレート(例えば、523として具体化されているような6ウェルプレート)のウェルであってもよい。前記トランスウェルは、プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、PTFE、PET)などの適切な材料で製造されたものであってもよく、場合により、前記容器も、同様の材料で製造されたものであってもよい。前記多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンは、所望のニーズに従って、トランスウェルデバイスの他の部分とは異なる材料で構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記トランスウェルは、トランスウェル501の容器503への移動および容器503からの移動が簡便に行えるように、フランジ、突起、タブまたはハンドル519をさらに有していてもよい。いくつかの実施形態において、複数の前記トランスウェルが接続されて1つのユニット521を形成していてもよく、このユニット521が収容される適切な容器523を使用してもよい。
【0138】
細胞病理多重染色
本明細書において、尿検体から分離された尿沈渣細胞を用いて、低悪性度膀胱がんなどの膀胱がんを検出または診断する方法が開示される。この方法は、本明細書で提供される複数の染色工程を含む。
【0139】
本明細書に開示される方法は、従来の細胞病理学的検出法の欠点を克服したものであり、同一の尿沈渣細胞で診断用細胞形態学的特徴と腫瘍マーカー発現を観察できる細胞病理スライドを作製する方法である。同一細胞の多重染色が可能になることで、病理医はより確信を持って、異常細胞やがん細胞である可能性を示す細胞学的特性を評価することができる。尿沈渣細胞を容器(例えば、試験管)に採取し、液体懸濁液中で染色する。1つ以上の所望の染色工程が終了した後、尿沈渣細胞を塗抹するか薄層状にして、スライドガラスに固定する。この方法により、多重染色(すなわち、形態染色と腫瘍バイオマーカー染色)を実現することができる。染色中に試薬の交換が必要な場合は、例えば、遠心分離して、染色試薬が含まれる細胞不含の上清を廃棄するか、または、ウェルに1つ以上のインサートまたはトランスウェルを一緒に装着または脱着できるような、接続可能または連結可能な1つ以上のインサートまたはトランスウェルを使用することにより、尿沈渣細胞の量を維持する。また、1つ以上のインサートまたはトランスウェルをウェルから簡便に移動させることができるように、インサートもしくはトランスウェルまたは複数のインサートもしくはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルが設けられていてもよい。例えば、フランジ、突起、タブまたはハンドルが、1つ以上のインサートもしくはトランスウェルのリムもしく縁、または複数のインサートもしくはトランスウェルを連結するステムに接続されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。前記インサートまたはトランスウェルは、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されている。いくつかの実施形態において、1つ以上のインサートまたはトランスウェルを使用することにより、遠心分離する場合に比べて細胞の形態が保持される。懸濁液中で染色を行うことにより、盲点やエッジエフェクトが生じる可能性のある不完全な染色を回避することができる。また、スライドガラス上で染色を行わないため、バックグラウンドノイズとして非特異的な発色沈殿が生じるリスクも回避できる。発色沈殿のシグナルは標的細胞内に均一に分布し、細胞の細部の形態学的な評価を妨げることはない。また、メタノールやエタノール(または他のアルコール類や固定液)の使用量が少ないか全く含まない改良液で形態染色を行うことで、発色染色への干渉も緩和される。
【0140】
簡潔に述べると、細胞病理染色の手順は、尿沈渣細胞を、水系の細胞懸濁液中で固定処理および/または透過処理に供する工程、免疫細胞化学染色および/または発色in situハイブリダイゼーション染色を行う工程、ならびにa)細胞病理診断に適格な詳細な形態染色を行い、多重染色された尿沈渣細胞をスライドガラスに塗抹または薄膜状に載置して顕微鏡評価を行うか、あるいはb)免疫細胞化学染色および/または発色in situハイブリダイゼーション染色を行った尿沈渣細胞をスライドガラスに塗抹または薄膜状に載置し、細胞病理診断に適格な詳細な形態染色を行う工程を含む。いくつかの実施形態において、前記形態染色は、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法もしくはヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法、例えば、例示した染色法の主要な染色成分を使用しつつ変更を加えた染色法を用いて行われる。
【0141】
本明細書において、患者における膀胱がんの検出方法が開示される。いくつかの実施形態において、前記方法は、患者から膀胱細胞を単離する工程、該膀胱細胞を、水系の細胞懸濁液中で固定する工程、前記膀胱細胞を免疫細胞化学染色法および/または発色in situハイブリダイゼーション染色法で染色する工程、前記膀胱細胞を診断用細胞形態染色法で染色する工程、ならびに前記免疫細胞化学染色法および/または前記発色in situハイブリダイゼーション染色法と前記診断用細胞形態染色法とにより前記膀胱細胞中に膀胱がん細胞が存在すると評価することによって、前記患者の膀胱がんを検出する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記膀胱細胞は、尿中剥離細胞である。本明細書に記載の方法により作製した細胞診スライドを用いることにより、病理医は、核や核小体の形状や大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;および膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴を評価して、膀胱がんの診断を行うことができる。また、遊離ムチン、コロイド、基底物質などの細胞外物質の評価も容易に行える。病理医にとって細胞形態学的な評価が困難な事例においては、本明細書に記載された方法を用いて同一スライド上で染色された膀胱がん特異的腫瘍マーカーをさらに利用することができる。これは、病理医が現在の尿細胞診の結果のみに基づいて診断する場合、2~3人に1人の患者の膀胱がんを見逃す可能性があるため、重要なことである。一般的に、膀胱がんにおける尿細胞診の感度は48~70%程度にとどまっている。非がん細胞の腫瘍マーカー染色による偽陽性を、細胞形態学的評価を併用することにより効果的に除外できることは注目に値する。本明細書に記載された方法が優れているもう一つの理由は、本願発明が発色性の免疫細胞化学法またはin situハイブリダイゼーション法に基づいており、一般に、ImmunoCyt/uCytやUroVysionなどの同等のアッセイで現在用いられている蛍光を利用する方法よりも感度と精度が高いと考えられているためである。したがって、本明細書に記載された方法は、尿細胞診の感度と精度を大幅に向上させ、尿検体を、膀胱がんの一次診断、疾患のリアルタイムでのモニタリング、膀胱がんのスクリーニングにおいて信頼性や費用対効果が高く、非侵襲的で便利な情報源とすることができる。また、患者の検体で膀胱がんが確認された場合、その患者に対して、膀胱がんの程度、種類または治療に応じた臨床管理計画を任意で適用してもよい。例えば、解析結果に応じて、当該患者に対する手術および/または放射線療法および/または化学療法および/または免疫療法および/または標的療法の適用が想定される。例えば、本明細書に記載の方法によりKi-67およびp16が検出された場合、膀胱がんの急速な進行が示唆されるため、より侵襲的な手術および/または化学療法が適用され、より綿密な臨床経過観察が必須である。本明細書に記載の方法によりPD-L1およびCTLA4が検出された場合、1つ以上の免疫治療用モノクローナル抗体薬の投与が、単独でまたは膀胱内化学療法と併せて行われる。本明細書に記載の方法により膀胱がん細胞においてHer-2の発現が検出された場合、ハーセプチン、アファチニブ、RC48-ADC、DS8201aまたはPRS-343などの標的療法が適用される可能性がある。さらに、バイオマーカー検出と細胞形態診断の組み合わせにより、非がん細胞における腫瘍マーカー染色の偽陽性が除外され、不必要な治療や医療資源の浪費を防ぐことができることも重要な点として挙げられる。さらに、本明細書に記載の方法は感度や特異度が高いため、膀胱がんは、大腸がん、乳がん、肺がん、子宮頸がんに続く、高リスク集団で効果的にスクリーニングできる5番目のがん種となり得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法に用いられる膀胱がん細胞は、患者の尿検体から単離されたものである。いくつかの実施形態において、前記尿検体は、尿中剥離細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記膀胱細胞は、前記尿検体から単離された尿中剥離細胞である。いくつかの実施形態において、前記尿検体は、約10個、約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個、約800個、約900個、約1000個、約1100個、約1200個、約1300個、約1400個、約1500個、約2000個、約3000個、約4000個、約5000個、約6000個、約7000個、約8000個、約9000個もしくは約10000個/mL、またはこれらの濃度のいずれか2つを上下限値とする範囲内の濃度の尿中剥離細胞を含む。尿検体中の細胞量は比較的少ないため、尿検体や尿検体から単離した細胞のロスを最小限に抑えるために、慎重な取り扱いが求められる。いくつかの実施形態において、前記尿検体を遠心分離または重力による沈殿に供することより、尿中剥離細胞が尿沈渣細胞として回収される。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞は、前記尿検体から遠心分離により単離された尿沈渣細胞である。
【0143】
いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方は、水系の細胞懸濁液中で行われる。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方は、固体基材上では行われない。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方は、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを標識することを含む。いくつかの実施形態において、標識される前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーは、タンパク質または核酸(例えば、DNAまたはRNA)である。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーは、S100カルシウム結合タンパク質P(S100P)、腫瘍タンパク質p63(p63)、M344腫瘍関連抗原(抗体M344により検出)、ムチン2(抗体LDQ10により検出)、がん胎児性抗原(CEA;抗体19A211により検出)、GATA結合タンパク質3(GATA-3)、増殖マーカーKi-67(Ki-67)、p16、ヒト上皮成長因子受容体2(Her-2)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、サイトケラチン17(CK-17)、サイトケラチン20(CK-20)、核マトリックスタンパク質22(nmp-22)、膀胱腫瘍抗原(BTA)、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)およびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される。
【0144】
いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方は、特定の一次抗体および/または一次核酸プローブを加える工程、該一次抗体および/または該一次核酸プローブをインキュベートしてそれらの特定の標的に結合させる工程、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブを除去する工程、発色酵素と結合した二次抗体および/または二次核酸プローブを加える工程、該二次抗体および/または該二次核酸プローブをインキュベートして前記一次抗体および/または前記一次核酸プローブに結合させる工程、未結合の二次抗体および/または二次核酸プローブを除去する工程、細胞懸濁液に発色基質を加えて発色反応を行う工程、穏やかに振動または撹拌させて均一な発色沈殿が得られるようにする工程、ならびに未使用の発色基質を除去して発色反応を停止する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記未結合の抗体、核酸プローブおよび/または発色基質の除去は、前記尿中剥離細胞を洗浄した後、細胞懸濁液を遠心分離して前記尿中剥離細胞を沈殿させ、細胞不含の上清を廃棄することによって行われる。いくつかの実施形態において、前記細胞懸濁液は、1つ以上のインサートまたはトランスウェルに配置されており、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。前記インサートまたはトランスウェルは、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されている。前記未結合の抗体、核酸プローブおよび/または発色基質は、前記細胞が配置されている前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに洗浄バッファーを通すことによって除去される。また、1つ以上のトランスウェルをウェルから簡便に移動させることができるように、トランスウェルまたは複数のインサートもしくはトランスウェルに、任意でフランジ、突起またはハンドルが設けられていてもよい。例えば、フランジ、突起またはハンドルが、1つ以上のインサートもしくはトランスウェルのリムもしく縁、または複数のインサートもしくはトランスウェルを連結するステムに接続されていてもよい。いくつかの別の実施形態において、前記尿中剥離細胞は、前記未結合の抗体および/または核酸プローブを除去するために、タンパク質または核酸に高い親和性を有するマイクロ流体チャネルに通される。いくつかの実施形態において、前記発色酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)である。いくつかの実施形態において、前記発色基質は、3,3-ジアミノベンジジン(DAB)、アミノエチルカルバゾール(AEC)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、ファストレッド、パーマネントレッド、塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、ステイイエロー、ステイグリーンもしくはこれらの誘導体またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション法またはその両方は、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーに対して特異性を有する。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション法またはその両方は、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択されるタンパク質または核酸に対して特異性を有する。
【0145】
いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法は、水系の細胞懸濁液中で(載置する前に)行われるか、または前記尿中剥離細胞を固体基材上に載置した後に行われる。いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法を水系の細胞懸濁液中で行うことにより、前記尿中剥離細胞に対して均一に診断用細胞形態染色を行うことができ、盲点やエッジエフェクトを回避することができる。いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法による前記尿中剥離細胞の評価は、核もしくは核小体の形状もしくは大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;または膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴を含む、前記尿中剥離細胞の特徴を評価することを含む。いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法は、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法、ヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法を含む。いくつかの実施形態では、前記診断用細胞形態染色法において、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールが使用されないか、該アルコールの濃度が低減されている。いくつかの実施形態では、前記診断用細胞形態染色法において、従来使用されている染色法と比較して、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールの濃度が低減されている。いくつかの実施形態において、前記固体基材は、顕微鏡用スライドである。いくつかの実施形態において、前記顕微鏡用スライドは、ガラス製またはプラスチック製である。
【0146】
いくつかの実施形態において、染色された前記尿中剥離細胞は、光学顕微鏡観察、デジタル病理スライドまたは人工知能によって評価される。いくつかの実施形態において、染色された前記尿中剥離細胞中に膀胱がん細胞が存在すると評価される。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞中に膀胱がん細胞が存在することは、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方と前記診断用細胞形態染色法とにより評価される。いくつかの実施形態において、前記膀胱がん細胞は、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択される1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、前記膀胱がん細胞は、がん細胞に特徴的な形態学的性質を有する。
【0147】
いくつかの実施形態において、前記患者において膀胱がんが検出される。いくつかの実施形態において、前記膀胱がんは、尿路上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、肉腫またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記膀胱がんは、低悪性度膀胱がんまたは高悪性度膀胱がんである。いくつかの実施形態において、前記膀胱がんは、低悪性度膀胱である。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のいずれかの方法は、前記患者に対して膀胱がんの治療を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記患者に対する膀胱がんの治療は、手術、化学療法、免疫療法、標的療法もしくは放射線療法、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、前記化学療法は、シスプラチン、カルボプラチン、フルオロウラシル、マイトマイシン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、エルダフィチニブ、アファチニブ、ドセタキセルもしくはパクリタキセル、またはこれらの任意の組み合わせの投与を含む。いくつかの実施形態において、前記免疫療法は、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、エンホルツマブ、ニボルマブ、イピリムマブ、トラスツズマブ、ジシタマブ、PRS-343もしくはペムブロリズマブ、またはこれらの任意の組み合わせの投与を含む。いくつかの実施形態において、前記標的療法は、標的指向性を有するハーセプチン、アファチニブ、RC48-ADC、DS8201aもしくはPRS-343、またはこれらの任意の組み合わせの投与を含む。
【0149】
本明細書におけるいずれかの実施形態において、前記患者は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記患者はヒトである。いくつかの実施形態において、前記患者は、膀胱がんの臨床症状を呈していること、および/または膀胱がんの発症リスクが高い集団に属することに基づいて、尿中剥離細胞を提供するよう選択された患者である。
【0150】
多重染色された尿中剥離細胞
また、本明細書において、多重染色された尿中剥離細胞も開示される。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞は、本明細書に開示されたいずれかの方法に従って多重染色された尿中剥離細胞である。
【0151】
本明細書において、液体ベースの免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方と診断用細胞形態染色法とで染色された尿中剥離細胞集団が開示される。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、患者から単離されたものである。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞は、前記患者の尿検体から遠心分離により単離された尿沈渣細胞である。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方は、本明細書に開示されたいずれかの方法により行われ、本明細書に開示されたいずれかの染色工程を含む。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学染色法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方による染色は、水系の細胞懸濁液中で行われたものである。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、前記免疫細胞化学染色法または前記発色in situハイブリダイゼーション染色法で1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色されている。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーは、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色されている。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5のうちの1つ以上が染色されている。いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法による染色は、a)水系の細胞懸濁液中で行われたか、またはb)前記尿中剥離細胞集団を固体基材上に載置した後に行われたものである。いくつかの実施形態において、前記固体基材は、顕微鏡用スライドである。いくつかの実施形態において、前記診断用細胞形態染色法は、ディフ・クイック染色法、パパニコロウ染色法、ライトギムザ染色法、ヘマトキシリン/エオシン染色法、またはこれらの派生法もしくは変法を含む。いくつかの実施形態では、前記診断用細胞形態染色法において、メタノールおよび/またはエタノールなどのアルコールが使用されないか、該アルコールの濃度が低減されている。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、固定処理および/または透過処理に供された尿中剥離細胞集団である。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを用いて固定された尿中剥離細胞集団である。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、膀胱がん細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記膀胱がん細胞は、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択される1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを含む。いくつかの実施形態において、前記膀胱がん細胞は、尿路上皮がん細胞、扁平上皮がん細胞、腺がん細胞、小細胞がん細胞または肉腫細胞である。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は哺乳動物由来である。いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団はヒト由来である。
【0152】
いくつかの実施形態において、前記尿中剥離細胞集団は、免疫細胞化学染色法もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色法またはその両方で染色されている。該染色法は、特定の一次抗体および/または一次核酸プローブを加える工程、該一次抗体および/または該一次核酸プローブをインキュベートしてそれらの特定の標的に結合させる工程、未結合の一次抗体および/または一次核酸プローブを除去する工程、発色酵素と結合した二次抗体および/または二次核酸プローブを加える工程、該二次抗体および/または該二次核酸プローブをインキュベートして前記一次抗体および/または前記一次核酸プローブに結合させる工程、未結合の二次抗体および/または二次核酸プローブを除去する工程、細胞懸濁液に発色基質を加えて発色反応を行う工程、穏やかに振動または撹拌させて均一な発色沈殿が得られるようにする工程、ならびに未使用の発色基質を除去して発色反応を停止する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記未結合の抗体、核酸プローブおよび/または発色基質の除去は、前記尿中剥離細胞を洗浄した後、細胞懸濁液を遠心分離して前記尿中剥離細胞を沈殿させ、細胞不含の上清を廃棄することによって行われる。いくつかの実施形態において、前記細胞懸濁液は、1つ以上のインサートまたはトランスウェルに配置されており、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されている。前記未結合の抗体、核酸プローブおよび/または発色基質は、前記細胞が配置されている前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに洗浄バッファーを通すことによって除去される。また、1つ以上のインサートまたはトランスウェルをウェルから簡便に移動させることができるように、インサートもしくはトランスウェルまたは複数のインサートもしくはトランスウェルに、任意でフランジ、突起またはハンドルが設けられていてもよい。例えば、フランジ、突起またはハンドルが、1つ以上のインサートもしくはトランスウェルのリムもしく縁、または複数のインサートもしくはトランスウェルを連結するステムに接続されていてもよい。いくつかの別の実施形態において、前記尿中剥離細胞は、前記未結合の抗体および/または核酸プローブを除去するために、タンパク質または核酸に高い親和性を有するマイクロ流体チャネルに通される。いくつかの実施形態において、前記発色酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)である。いくつかの実施形態において、前記発色基質は、3,3-ジアミノベンジジン(DAB)、アミノエチルカルバゾール(AEC)、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)、ファストレッド、パーマネントレッド、塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、ステイイエロー、ステイグリーンもしくはこれらの誘導体またはこれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション法またはその両方は、1つ以上の膀胱がん特異的バイオマーカーに対して特異性を有する。いくつかの実施形態において、前記免疫細胞化学法もしくは前記発色in situハイブリダイゼーション法またはその両方は、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERTおよびMCM5からなる群から選択されるタンパク質または核酸に対して特異性を有する。
【0153】
試薬およびキット
また、本明細書において、多重染色キットの実施形態も想定される。いくつかの実施形態において、前記多重染色キットは、細胞検体に対して、免疫組織化学染色および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色と病理診断に使用できる細胞形態染色とを行うために使用される。いくつかの実施形態において、前記キットは、細胞検体の免疫組織化学染色用および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色用の試薬と細胞形態染色用の試薬とを含む。いくつかの実施形態において、細胞検体の免疫組織化学的染色用および/または発色in situ核酸ハイブリダイゼーション染色用の前記試薬は、一次抗体および/または一次核酸プローブ、発色酵素結合二次抗体および/または発色酵素標識二次核酸プローブ、ならびに発色基質を含む。いくつかの実施形態において、細胞形態染色用の前記試薬は、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色およびヘマトキシリン/エオシン染色に用いられる試薬から選択される。いくつかの実施形態において、前記一次抗体および/または前記一次プローブは、細胞膜、細胞質および/または細胞核を染色する複数種の抗体および/またはプローブの組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記細胞検体は、細胞病理用穿刺吸引(FNA)検体、腫瘍細胞検体、子宮頸部擦過細胞検体および尿中剥離細胞検体から選択される検体であるか、または、体液、血液、血清、血漿、尿、唾液、汗、痰、精液、粘液、涙、リンパ液、羊水、間質液、胸水、腹水、肺洗浄液、脳脊髄液、糞便および組織検体から選択される患者由来の検体の細胞沈殿物を希釈することによって得られる検体である。いくつかの実施形態において、前記キットは、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器と、該容器のウェルに嵌まるように構成された1つ以上のインサートまたはトランスウェルとをさらに含む。前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが前記細胞検体の細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。また、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい。
【0154】
また、本明細書において、インサートまたはトランスウェルも開示される。いくつかの実施形態において、前記インサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。前記インサートまたはトランスウェルは、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されており、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに嵌まるように構成されている。また、前記インサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい。
【0155】
また、本明細書において、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートも開示される。いくつかの実施形態において、前記プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートは、それぞれのプレートのウェルに嵌まるように構成された1つ以上のインサートまたはトランスウェルを含み、該1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが、細胞、好ましくは尿中剥離細胞を含む細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。また、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態において、前記キット、前記インサートもしくはトランスウェル、または前記プレート、マルチウェルプレートもしくはマイクロタイタープレートはいずれも、互いに接続または連結された複数のインサートまたはトランスウェルを含んでいてもよく、該複数のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい。
【0157】
膀胱がん患者の選別
いくつかの実施形態において、前記尿検体および/または前記尿沈渣細胞成分は、患者から採取されたものである。いくつかの実施形態において、前記患者は、尿検体を提供するよう選択された患者である。いくつかの実施形態において、前記患者は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記患者は、ヒトである。いくつかの実施形態において、前記患者は、膀胱がんを有する患者、膀胱がんを発症するリスクがある患者、膀胱がんを過去に発症したことがある患者、または膀胱がんを有してない患者である。いくつかの実施形態において、前記患者は、以下に限定されないが、血尿(尿中の血液)、通常よりも排尿回数が多いこと(頻尿)、排尿時の痛みまたは灼熱感、膀胱が尿で満たされていない状態で尿意を催すこと、排尿困難または弱い尿流、および夜間に何度も排尿すること(夜間頻尿)を含む膀胱がんの臨床症状を呈する。
【0158】
いくつかの実施形態において、前記患者は、膀胱がんの高リスク集団に属する。いくつかの実施形態において、膀胱がんの高リスク集団は、以下に限定されないが、喫煙、作業空間への暴露(例えば、ゴム・革・織物の製造工、塗装工、機械工、印刷工、美容師もしくはトラック運転手)、特定の医薬品もしくはハーブサプリメント、飲料水中のヒ素、水分摂取量の不足、人種や民族(白人は、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人の約2倍膀胱がんを発症しやすく、アジア人やアメリカインディアンは膀胱がんの発症率はやや低い)、年齢(膀胱がん患者10人のうち約9人が55歳より高齢)、性別(膀胱がんは女性よりも男性に多い)、慢性の膀胱炎や感染症、尿路上皮がんやその他の膀胱疾患の既往歴、膀胱の先天異常、膀胱がんの遺伝歴や家族歴、または化学療法や放射線療法を含む特徴を有する。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記患者は、尿以外に検査に使用する膀胱がん組織が得られないか、または侵襲的な方法が適用できないという理由で、尿検体の細胞病理検査を受けるように選択された患者である。
【0160】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法に基づく膀胱がんの陽性評価により、化学療法、標的療法および/または免疫療法などの膀胱がんの治療のための治療法の選択が促される。
【実施例】
【0161】
以下の実施例において、本明細書に記載の実施形態の態様のいくつかをさらに詳細に開示するが、以下の実施例は本発明の開示の範囲を何ら限定するものではない。本明細書および請求項で述べるように、その他の多くの実施形態も本開示の範囲内に含まれることは当業者であれば十分に理解できるであろう。
【0162】
実施例1
免疫組織化学法と形態染色法による尿沈渣細胞の多重染色
25mLの尿検体を等量のCytoLyt液(Hologic社、米国マサチューセッツ州)または4%パラホルムアルデヒドと混合し、固定を行った。その後、遠心分離して尿検体中の細胞を沈殿させた。上清を捨て、尿沈渣細胞を1mLのPBS緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。20μLのTween-20を加え、5分間インキュベートして細胞の膜透過処理を行い、その後、遠心分離により細胞を単離した。100μLのデュアル内在性酵素ブロッキング試薬(Dako社、米国カリフォルニア州バーピンテリア)を加え、5分間インキュベートして細胞内のペルオキシダーゼ活性とアルカリホスファターゼ活性を阻害し、その後、遠心分離により細胞を単離した。200μLの無血清ブロッキング試薬(Dako社)を加え、5分間インキュベートした。次いで、200μLのウサギ抗ヒトサイトケラチン20(CK-20)モノクローナル一次抗体(初期濃度1μg/mL;LBP Med Sci & Tech社、中国広州市)を加え、室温で2時間インキュベートした。一次抗体とインキュベートした後、遠心分離して、細胞を1mLのPBSバッファーで3回洗浄した。200μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス二次抗体(Envision、Dako社)を加え、室温で1時間インキュベートした。二次抗体とインキュベートした後、遠心分離して、細胞を1mLのPBSバッファーで3回洗浄した。100μLのLiquid DAB+(Dako社)を加え、600rpmで攪拌しながら2分間インキュベートした。発色基質とインキュベートした後、遠心分離して、細胞を1mLのPBSバッファーで3回洗浄した。最終的に得られた細胞ペレットを100μLのPBSバッファー(pH7.4)に再懸濁した。再懸濁した細胞をスライドガラスに塗抹し、10%ディフ・クイック溶液(Fisher Scientific社)を用いてディフ・クイック染色を行った。その後、多重染色を施した細胞を通常の顕微鏡観察により評価した。(なお、上記の遠心分離はそれぞれ1500rpmで5分間行った)
【0163】
図1A~Gおよび
図4A~Bから分かるように、この処理により、尿沈渣細胞は、10%ディフ・クイック染色法または5%パパニコロウ染色法と免疫細胞化学法とで二重染色されている。異型細胞は、使用した膀胱がんバイオマーカーに関する陽性細胞として容易に確認することができ、また、形態染色法により、堅牢な細胞病理学的同定を行うことができる。試験に使用したバイオマーカーは、ヒトサイトケラチン20(CK-20)(
図1A)、膀胱腫瘍抗原(BTA)(
図1B)、p63(
図1C)、hTERT(
図1D)、S100P(
図1E)、PD-L1(
図1F)およびMCM5(
図1G)である。
図1C、1D、1Fおよび1Gは、10%ディフ・クイック染色法の代わりに5%パパニコロウ染色法で染色を行ったものであり、メタノールおよび/またはエタノールの濃度を下げて実施した。パパニコロウ染色法とともに、別のバイオマーカーとしてサイトケラチン17(CK-17)(
図4A)およびHer-2(
図4B)を用いた。バイオマーカーの検出に用いた抗体の例は、
図3に示した。
図1A~Gおよび
図4A~Bは、別々の患者の尿検体を用いて得られた画像であるため、画像間で細胞形態が若干異なる。
【0164】
染色工程において、遠心分離操作の代わりに、トランスウェルを利用した操作を行ってもよい。トランスウェルを利用した操作では、水性試薬は通過するが尿沈渣細胞は保持されるような多孔質メンブレンを備えたはめ込み型インサート、インサートまたはトランスウェルを有する適切なサイズのプレート(例えば、6ウェルプレート)が用いられる。また、1つ以上のインサートまたはトランスウェルをプレートのウェルから簡便に移動させることができるように、インサートもしくはトランスウェルまたは複数のインサートもしくはトランスウェルに、任意でフランジ、突起またはハンドルが設けられていてもよい。例えば、フランジ、突起またはハンドルが、1つ以上のインサートもしくはトランスウェルのリムもしく縁、または複数のインサートもしくはトランスウェルを連結するステムに接続されていてもよい。例えば、プレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器、例えば、1ウェル、2ウェル、4ウェル、6ウェル、8ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェルまたは384ウェルを有するプレート、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレートなどの容器と、該容器のウェルに嵌まるように構成された1つ以上のインサートまたはトランスウェルとが用いられる。前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルは、水溶液は通過するが細胞検体中の細胞は保持されるような多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーン、例えば、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmもしくは8μmの孔径もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の孔径を有する多孔質メンブレンまたは多孔質スクリーンを含む。また、前記1つ以上のインサートまたはトランスウェルに、任意でフランジ、突起、タブまたはハンドルがさらに設けられていてもよい。このトランスウェルを利用した操作は、遠心分離の代わりにまたは遠心分離に加えて行ってもよい。トランスウェルを利用した操作を行うことにより、細胞の形態がより良く保持され、遠心分離の頻度を減らしたり、操作を省略することが想定される。いくつかの実施形態において、特に、高容量で細胞の濃度が低い生体検体を使用する場合、初めに尿中剥離細胞を沈殿させるために遠心分離を行うことが望ましい。
【0165】
実施例2
発色in situハイブリダイゼーション法と形態染色法による尿沈渣細胞の多重染色
25mLの尿検体を等量のCytoLyt液または4%パラホルムアルデヒドと混合し、固定を行った。その後、遠心分離して尿検体中の細胞を沈殿させた。上清を捨て、尿沈渣細胞を1mLのPBS緩衝液(pH7.4)に再懸濁した。20μLのTween-20を加え、5分間インキュベートして細胞の膜透過処理を行い、その後、遠心分離により細胞を単離した。200μLのHs-GATA3プローブ(ACD Bio社、米国カリフォルニア州)を加え、40℃で2時間インキュベートした。1mLのRNAscope 2.5 HD Reagent Kit(ACD Bio社、米国カリフォルニア州)の洗浄バッファーを加え、この懸濁液を遠心分離した。上清を捨て、この洗浄工程を再度行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP1を4滴加え、40℃で30分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP2を4滴加え、40℃で30分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP3を4滴加え、40℃で30分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP4を4滴加え、40℃で15分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP5を4滴加え、40℃で30分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent Kitのハイブリダイゼーション液AMP6を4滴加え、40℃で15分間インキュベートした後、細胞を1mLの洗浄バッファーで2回洗浄し、遠心分離を行った。RNAscope 2.5 HD Reagent KitのDAB-AとDAB-Bを混合したものを120μL加え、600rpmで攪拌しながら10分間インキュベートした。発色基質とインキュベートした後、遠心分離して、細胞を1mLのPBSバッファーで3回洗浄した。最終的に得られた細胞ペレットを100μLのPBSバッファー(pH7.4)に再懸濁した。再懸濁した細胞をスライドガラスに塗抹し、10%ディフ・クイック溶液(Fisher Scientific社)を用いてディフ・クイック染色を行った。その後、多重染色を施した細胞を通常の顕微鏡観察により評価した。(なお、上記の遠心分離はそれぞれ1500rpmで5分間行った)
【0166】
図2から分かるように、この処理により、尿沈渣細胞は、ディフ・クイック染色法とGATA3核酸染色法で二重染色されている。異型細胞は、GATA3陽性細胞として容易に確認することができ、また、形態染色法により、堅牢な細胞病理学的同定を行うことができる。
【0167】
実施例1で説明したように、染色工程において、遠心分離操作の代わりに、トランスウェルを利用した操作を行ってもよい。
【0168】
実施例3
臨床試験の実施手順
患者の登録
この臨床試験は、現地の臨床試験倫理委員会により承認されたものである。すべての患者が当該臨床試験への参加に同意する書類に署名した。すべての患者が膀胱鏡検査を受けた。この検査は現在、膀胱がんの初期診断の標準となっているものである。膀胱がん患者(陽性検体)であることは、膀胱鏡検査と組織診により確認した。膀胱がんでない患者(陰性検体)であることは、組織診を伴うまたは伴わない膀胱鏡検査により確認した。各患者から150mLの尿検体を採取し、各検体を等量のCytolyt液(Hologic社)で固定した。
【0169】
染色の実施
20mLの患者の尿検体と20mLのCytolyt液を混和したものを遠心分離し、各種抗体による染色用に尿沈渣細胞を回収した。回収した尿沈渣細胞を、本明細書に記載されているような液体ベースの免疫細胞化学法で染色し、同時に細胞形態染色法としてパパニコロウ染色法で染色した。各患者由来の検体を、CK-17、GATA-3、S100PまたはhTERTに特異的な4種類のモノクローナル抗体でそれぞれ染色した。また、本明細書に開示されているような他の抗体(もしくは核酸プローブ)または膀胱がんバイオマーカーとして当該技術分野で知られている他の抗体(もしくは核酸プローブ)を使用することも可能である。
【0170】
膀胱がん細胞の計数
各抗体で染色した検体において、免疫組織化学的に陽性である細胞を計数した。陽性細胞数は、尿検体中の非細胞片に対する非特異的染色などの偽陽性シグナルを除外することにより補正した。さらに、正常な非がん細胞に対する偽陽性染色も除外した。除外した非がん細胞には、(1)正常扁平上皮細胞(CK-17、S100P、hTERTで陽性に染色されることがある)および(2)正常リンパ球(GATA-3で陽性に染色されることがある)が含まれる。偽陰性に染色されたがん細胞(抗体染色では検出限界以下)は、細胞形態学的評価により可能な限り含めた。細胞形態染色(例えば、パパニコロウ染色)により、計数補正を行うことができた。
【0171】
最終結果
各抗体による染色結果で陽性となったがん細胞の数に基づいて、重み付けスコアを計算した。最終スコアにより、以下の診断が下される。
【0172】
a)膀胱がん陰性
最終スコアは陰性域の範囲である。膀胱がん診断を裏付ける数の陽性染色細胞は認められない。
【0173】
b)膀胱がん陽性
最終スコアが陽性域の範囲にあり、膀胱がんと診断される。
【0174】
c)膀胱がんの疑いあり
最終スコアはグレーゾーンの範囲である(稀なケース)。
【0175】
前述の少なくともいくつかの実施形態において、技術的に実現可能であれば、いずれかの実施形態で用いられている1つ以上の構成要素と、別の実施形態の構成要素とを入れ替えて用いることが可能である。請求項に記載の主題の範囲から逸脱しない限り、本明細書に記載の方法および構造に対して、これまでに述べた以外の様々な省略、追加および変形を行ってもよいことは、当業者であれば十分に理解できるであろう。このような変形および変更はいずれも、添付の特許請求の範囲により定義される主題の範囲に含まれる。
【0176】
本明細書における実質的にすべての複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数を単数として、かつ/または単数を複数として解釈することができる。明瞭性を期するため、このような様々な単数と複数の交換について本明細書に明記する場合がある。
【0177】
「e.g.」の使用に関して、「e.g.」は「例えば」を意味し、非限定的な例の提示であると理解される。
【0178】
当業者であれば十分に理解できるであろうが、通常、本明細書で用いられる用語、特に、添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で用いられる用語は、全体を通じて「オープンな」用語として意図されている(例えば、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるものであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるものであり、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるものである等)。さらに、請求項の記載事項において特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載されるものであり、記載がない場合はそのような意図が存在しないということも、当業者であれば理解できるであろう。具体的に説明をすれば、例えば、添付の特許請求の範囲では、請求項の記載事項に「少なくとも1つ」や「1つ以上」といった前置きが使用されている場合がある。しかし、このような前置きが使用されていても、不定冠詞「1つ(aまたはan)」を使用した記載事項を含む特定の請求項が、その記載事項のみを含む実施形態に限定されるものではなく、たとえ1つの請求項内に「1つ以上」または「少なくとも1つ」といった前置きと「1つ(aまたはan)」といった不定冠詞とが含まれている場合でも、同様である(例えば、「1つ(aおよび/またはan)」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈される)。これは、定冠詞を使用した請求項の記載事項についても同様である。また、請求項の記載事項において特定の数が明示的に記載されている場合でも、記載された数は最小限の数を意味するものであるということは当業者であれば理解できるであろう(例えば、修飾語を伴わない「2つ」という記載は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」といった慣用表現が使用されている場合、通常、当業者がその慣用表現を理解する意味で解釈されることが意図されている(例えば「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。また、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」といった慣用表現が使用されている場合、通常、当業者がその慣用表現を理解する意味で解釈されることが意図されている(例えば「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の選択肢を提示するための離接語および/または離接句は、明細書、特許請求の範囲、図面のいずれにおいても、選択肢として記載されている用語の一方、当該用語のいずれか、または当該用語の両方を含む可能性を想定するものであることは、当業者であれば理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「A」もしくは「B」、または「AおよびB」の可能性を含むものと理解される。
【0179】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、本開示もまた、マーカッシュ形式の任意の個々の要素または複数の要素からなるサブグループで記載されていることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0180】
詳細な説明を提供するなどといった何らかの目的で本明細書に記載されているすべての範囲は、考えられるあらゆる下位範囲およびその下位範囲の組み合わせを包含するものであることは、当業者であれば理解できるであろう。前記範囲はいずれも、該範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割されることが十分に記載されているとともにその分割が可能であるものとして容易に理解できるであろう。例えば、本明細書に記載の範囲はいずれも、上、中、下といった3等分などに容易に分割することができるが、これに限定されない。また、「以下」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」といった文言はいずれも、記載された数値を含むとともに、本明細書に記載されているように、下位範囲に分割可能な範囲も表すことは、当業者であれば理解できるであろう。さらに、本明細書に記載の範囲は個々の要素を含むことは、当業者であれば理解できるであろう。したがって、例えば、1~3個の要素を有する群は、1個の要素を有する群、2個の要素を有する群または3個の要素を有する群を表す。同様に、1~5個の要素を有する群は、1個の要素を有する群、2個の要素を有する群、3個の要素を有する群、4個の要素を有する群、または5個の要素を有する群を表し、その他の場合も同様である。
【0181】
本明細書において様々な態様および実施形態を開示してきたが、当業者であればその他の態様および実施形態も可能であることは容易に理解できるであろう。本明細書において開示されている様々な態様および実施形態は、本発明を説明することを目的としたものであり、本発明を何ら限定するものではなく、本発明の範囲および要旨は以下の特許請求の範囲により示される。
【0182】
本明細書において引用された公開特許出願、非公開特許出願、特許および学術文献を含む(ただしこれらに限定されない)すべての参考文献は、本明細書において引用された特定の開示またはその全体が引用により本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。参照により援用された刊行物、特許または特許出願が本明細書の開示内容と矛盾する場合、このような矛盾するいかなる事項に対しても本明細書の記載が採用および/または優先される。
【0183】
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