(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ポリチオール化合物及びその調製方法、硬化剤、樹脂組成物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 323/12 20060101AFI20240819BHJP
C07C 319/02 20060101ALI20240819BHJP
C08G 59/66 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C07C323/12 CSP
C07C319/02
C08G59/66
(21)【出願番号】P 2022577121
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2022113624
(87)【国際公開番号】W WO2023065802
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】202111232232.6
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522484456
【氏名又は名称】▲韋▼▲爾▼通科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲長▼敬
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲濤▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲鴻▼▲騰▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲帥▼
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085408(JP,A)
【文献】特開2012-122012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)で示されるものであり、
【化1】
前記一般式(I)において、R
1、R
2、R
3、R
5、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5のアルキル基及び炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、R
4及びR
6は、それぞれ独立して炭素原子数が
3~5のアルキレン基から選ばれ、m及びnはそれぞれ独立して0、1、2又は3であることを特徴とする、ポリチオール化合物。
【請求項2】
前記一般式(I)において、R
1、R
2、R
5及びR
7はいずれも水素原子であり、R
3及びR
8は、それぞれ独立して水素原子又はメトキシ基から選ばれ、R
4及びR
6は、それぞれ独立して炭素原子数が3~5のアルキレン基から選ばれ、m及びnは1であることを特徴とする、請求項1に記載のポリチオール化合物。
【請求項3】
前記ポリチオール化合物は、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)ビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル及び5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルのうちの少なくとも1つから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のポリチオール化合物。
【請求項4】
一般式(II)で示されるフェノール類化合物と一般式(III)で示される第1化合物を、相間移動触媒の存在及びアルカリ性の条件下で、置換反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るステップ1と、
第1中間生成物とチオ酢酸を、ラジカル開始剤の存在下でラジカル付加反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るステップ2と、
第2中間生成物を加水分解反応させ、精製した後、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るステップ3と、を含み、
【化2】
一般式(II)において、R
1、R
2、R
3、R
5、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5の低級アルキル基及び炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、R
9及びR
10は、それぞれ独立して炭素原子数が
3~5の1-アルケニルアルキルから選ばれ、
一般式(III)において、Xは塩素又は臭素を表し、mは0、1、2又は3であることを特徴とする、請求項1に記載の一般式(I)で表され、式(I)中、m=nであるポリチオール化合物の調製方法。
【請求項5】
ステップ1において、前記置換反応の方法は、一般式(II)で示されるフェノール類化合物を有機溶媒に溶解し、アルカリを添加してアルカリ性条件を提供し、相間移動触媒を添加し、その後、不活性ガスの保護下で、40~100℃に昇温させて10~60分間撹拌し、その後、一般式(III)で示される第1化合物を添加し、4~12時間反応させ、続いて、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るということであることを特徴とする、請求項4に記載のポリチオール化合物の調製方法。
【請求項6】
ステップ2において、前記ラジカル付加反応の方法は、第1中間生成物を有機溶媒に溶解し、ラジカル開始剤を添加し、不活性ガスの保護下で40~100℃に昇温させ、チオ酢酸を緩慢に添加し、4~12時間ラジカル付加反応させた後、減圧蒸留して溶媒を除去し、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るということであることを特徴とする、請求項4に記載のポリチオール化合物の調製方法。
【請求項7】
ステップ3において、前記加水分解反応の方法は、第2中間生成物を有機溶媒に溶解し、塩酸又は水酸化ナトリウムを添加し、50~100℃に昇温させて3~12時間反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、2~8%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るということであることを特徴とする、請求項4に記載のポリチオール化合物の調製方法。
【請求項8】
請求項1に記載のポリチオール化合物を少なくとも含有することを特徴とする、硬化剤。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化剤及び樹脂を少なくとも含有し、前記樹脂は分子内に炭素-炭素二重結合を有するアルケニル類化合物及び/又はエポキシ樹脂であることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はアミン類を含有して硬化促進剤とすることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はエポキシ樹脂とアミン類との反応生成物を含有して硬化促進剤とすることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物は、分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に1級アミノ基及び2級アミノ基のうちの少なくとも1つを有する化合物との反応生成物を含有して硬化促進剤とすることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
接着剤又は密封剤の成分とする請求項9に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年10月22日に中国特許局に提出された、出願番号2021112322326、出願名称「ポリチオール化合物及びその調製方法、硬化剤、樹脂組成物、接着剤並びに密封剤」の中国特許出願の優先権を主張し、その全てが参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明はポリチオール化合物及びその使用の分野に属し、特にポリチオール化合物及びその調製方法、該ポリチオール化合物を使用した硬化剤、該硬化剤を使用した樹脂組成物、接着剤又は密封剤の成分とする該樹脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂は、機械的特性、電気的特性、耐熱性能、耐薬品性及び接着強度等の面で高い性能を備えるため、塗料、電気、電子絶縁材料、接着剤等の面に広く使用される。近年来、使用時に、エポキシ樹脂と硬化剤を混合して硬化させた所謂二成分のエポキシ樹脂組成物に加え、さらに、エポキシ樹脂と硬化剤を事前に混合し、使用の際に加熱することによりさらに硬化させた単成分のエポキシ樹脂組成物を開発した。特に、近年来、電子回路の分野でフレキシブル化、薄型化の要求が日々に増加することに伴い、半導体素子を保護して回路の集中化を高め又は接続信頼性を向上させるために、低温硬化性の単成分のエポキシ樹脂組成物の要求が徐々に高まる。
【0004】
分子内に複数のチオール基を有するチオール化合物は広範囲の用途を有し、例えば、エポキシ樹脂の硬化剤とすることとチオール-エンクリック反応の使用が周知されている。ポリチオール化合物を硬化剤として使用すると共に、第3級アミン類硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物は、低温度で高速に硬化する優位性を有し、低温硬化性の単成分のエポキシ樹脂組成物の要求を満たすことができる。しかし、現在、既知のポリチオール硬化剤の多くは、エステル結合を介してチオール基を接続することで、通常、耐湿性が低く、高湿環境下で接着強度が低下するという問題を引き起こす。また、特許US4266055A及びJPS56120671Aにおける合成されたトリメルカプトプロピルイソシアヌル酸エステルは、分子内にエステル結合を有さないため、耐水性が優れたエポキシ樹脂組成物の硬化剤として用いられるが、該硬化剤は室温で不快な異臭(激しい硫黄の味)がし、硬化物の耐熱性も満足できず、且つ靱性が低いという問題が存在する。また、エポキシ樹脂硬化物に良好な耐湿性及び耐熱性を同時に付与するために、今までの業界内の主なやり方は、メルカプトアルキルグリコールウリルをエポキシ樹脂の硬化剤として採用することである。例えば、特許CN201480064943.9及びJP2015059099Aには、所謂メルカプトアルキルグリコールウリルのポリチオール硬化剤が開示され、該ポリチオール硬化剤は良好な耐湿性及び耐熱性を有するが、特許CN201680014880.5には、該ポリチオール硬化剤が室温で固体であり、エポキシ樹脂と錯体を形成する時、結晶を容易に析出し、構成が不均一になるという問題が提出され、この時、別のメルカプトエチルグリシジル化合物と合わせて使用することで、固体のポリチオール硬化剤を液体にし、最終的に液状のジスルフィド結合を有するオリゴマー混合物を硬化剤として形成する必要があり、この方法では、硬化剤を最終的に液体に変換できるが、反応プロセス及びコストが増加する。また、CN201480064943.9に言及されるメルカプトアルキルグリコールウリル類硬化剤はさらに単成分の低温硬化エポキシ接着剤の保存安定性を低減する恐れがある。
【0005】
以上により、現在、従来の各種類のチオール化合物及びチオール化合物を含有する硬化剤は主に以下の問題が存在する。
(1)従来のポリチオール硬化剤の多くはエステル結合を有し、高温高湿環境下で加水分解しやすく、エポキシ接着剤の接着強度が低下し、接着が不良になり、且つ耐熱性が一般的に低い。
(2)従来のポリチオール硬化剤の多くは異臭が非常に大きく、接着剤を塗布する場合、作動環境に深刻な影響を及ぼす。
(3)従来のメルカプトアルキルグリコールウリル類硬化剤は室温で固体であり、液状にし、結晶析出時間を短縮しようとする場合、ジスルフィド結合を有するメルカプトエチルグリシジル化合物と合わせて使用する必要があるため、調製の際に、追加してカップリングしてオリゴマー混合物を形成するだけで、液状にすることができ、プロセスが複雑であり、コストが高い。
【0006】
また、従来のメルカプトアルキルグリコールウリル類硬化剤はさらに単成分の低温硬化エポキシ接着剤の保存安定性のリスクを向上させ、適用期間が短い。
【0007】
上記分析から分かるように、自体が液状であると共に、良好な耐湿性と耐熱性を兼ねて備え、適用期間が長く且つ異臭が少ないエポキシ樹脂硬化剤の開発が急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US4266055
【文献】JPS56120671
【文献】CN201480064943.9
【文献】JP2015059099
【文献】CN201680014880.5
【文献】CN201480064943.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[発明の概要]
本発明の第1の目的は、自体が液状であると共に、良好な耐湿性と耐熱性を兼ねて備え、適用期間が長く且つ異臭が少ないことを実現できない従来のポリチオール硬化剤の欠陥を克服するために、新しいポリチオール化合物を提供することであり、該ポリチオール化合物は室温で液状であると共に、良好な耐湿性と耐熱性を兼ねて備えることができ、適用期間が長く且つ異臭が少ない。
【0010】
本発明の第2の目的は上記ポリチオール化合物の調製方法を提供することである。
【0011】
本発明の第3の目的は少なくとも上記ポリチオール化合物を含有する硬化剤を提供することである。
【0012】
本発明の第4の目的は上記硬化剤を使用した樹脂組成物を提供することである。
【0013】
本発明の第5の目的は接着剤又は密封剤の成分とする上記樹脂組成物の使用を提供することである。
【0014】
具体的には、本発明が提供するポリチオール化合物は以下の一般式(I)で示されるものであり、
【化1】
【0015】
一般式(I)において、R1、R2、R3、R5、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5のアルキル基及び炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、R4及びR6は、それぞれ独立して炭素原子数が1~5のアルキレン基であり、m及びnはそれぞれ独立して0、1、2又は3である。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態において、一般式(I)において、R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8は、それぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であり、R4及びR6は、それぞれ独立して炭素原子数が3~5のアルキレン基から選ばれ、m及びnは1である。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ポリチオール化合物は、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)ビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル及び5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルのうちの少なくとも1つから選ばれる。
【0018】
本発明が提供するポリチオール化合物の調製方法は、
一般式(II)で示されるフェノール類化合物と一般式(III)で示される第1化合物を、相間移動触媒の存在及びアルカリ性の条件下で、置換反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るステップ1と、
第1中間生成物とチオ酢酸を、ラジカル開始剤の存在下でラジカル付加反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るステップ2と、
第2中間生成物を加水分解反応させ、精製した後、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るステップ3と、を含む。
【0019】
【0020】
一般式(II)において、R1、R2、R3、R5、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5の低級アルキル基と炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、R9及びR10は、それぞれ独立して炭素原子数が1~5の1-アルケニルアルキルから選ばれる。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ1において、前記置換反応の方法は、一般式(II)で示されるフェノール類化合物を有機溶媒に溶解し、アルカリを添加してアルカリ性条件を提供し、相間移動触媒を添加し、その後、不活性ガスの保護下で、40~100℃に昇温させて10~60分間撹拌し、その後、一般式(III)で示される第1化合物を添加し、4~12時間反応させ、続いて、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るということである。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ2において、前記ラジカル付加反応の方法は、第1中間生成物を有機溶媒に溶解し、ラジカル開始剤を添加し、不活性ガスの保護下で40~100℃に昇温させ、チオ酢酸を緩慢に添加し、4~12時間ラジカル付加反応させた後、減圧蒸留して溶媒を除去し、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るということである。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ3において、前記加水分解反応の方法は、第2中間生成物を有機溶媒に溶解し、塩酸又は水酸化ナトリウムを添加し、50~100℃に昇温させて3~12時間反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、2~8%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るということである。
【0024】
本発明は少なくとも上記ポリチオール化合物を含有する硬化剤をさらに提供する。
【0025】
本発明はさらに樹脂組成物を提供し、そのうち、前記樹脂組成物は少なくとも上記硬化剤及び樹脂を含有し、前記樹脂は分子内に炭素-炭素二重結合を有するアルケニル類化合物及び/又はエポキシ樹脂である。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はアミン類を含有して硬化促進剤とする。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はエポキシ樹脂とアミン類との反応生成物を含有して硬化促進剤とする。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物は、分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に1級アミノ基及び2級アミノ基のうちの少なくとも1つを有する化合物との反応生成物を含有して硬化促進剤とする。
【0029】
本発明は接着剤又は密封剤の成分とする上記樹脂組成物の使用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明が提供するポリチオール化合物は良好な耐湿性及び耐熱性を有する。
(2)本発明が提供するポリチオール化合物は異臭が少ない。
(3)本発明が提供するポリチオール化合物は、常温で液体であり、直接に硬化剤として樹脂組成物の硬化に用いることができ、カップリングしてオリゴマー混合物を形成する必要がなく、他のポリチオール化合物と併用する必要もなく、コストが低く、且つ、前記樹脂組成物は密封剤と接着剤の成分とすることができる。また、該ポリチオール化合物は単成分の低温硬化エポキシ樹脂の保存安定性を向上させることができ、適用期間が長く、利用上の将来性が広い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例1で得られた5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルの
1H-NMRスペクトルである。
【
図2】実施例1で得られた5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルのIRスペクトルである。
【
図3】実施例2で得られた5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルの
1H-NMRスペクトルである。
【
図4】実施例2で得られた5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルのIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
具体的には、本発明が提供するポリチオール化合物は以下の一般式(I)で示されるものであり、
【化3】
一般式(I)において、R
1、R
2、R
3、R
5、R
7及びR
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5のアルキル基及び炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、R
4及びR
6は、それぞれ独立して炭素原子数が1~5のアルキレン基から選ばれ、m及びnはそれぞれ独立して0、1、2又は3である。そのうち、前記炭素原子数が1~5のアルキル基の具体的な実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基又はネオペンチル基を含むが、それらに限定されない。前記炭素原子数が1~5のアルコキシ基の具体的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基又はイソブトキシ基を含むが、それらに限定されない。前記炭素原子数が1~5のアルキレン基の具体的な実例は、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基又はネオペンチレン基を含むが、それらに限定されない。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態において、一般式(I)において、R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8は、それぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であり、R4及びR6は、それぞれ独立して炭素原子数が3~5のアルキレン基から選ばれ、例えば、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチル基又はネオペンチレン基であり、m及びnは1である。
【0034】
前記ポリチオール化合物の具体的な実例は、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)ビフェニル(R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも2である)、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトブトキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル(R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8はそれぞれ独立してメトキシ基から選ばれ、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも2である)、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニル(R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも3である)、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル(R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8はそれぞれ独立してメトキシ基から選ばれ、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも3である)、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル(R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である)及び5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル(R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8はそれぞれ独立してメトキシ基から選ばれ、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である)のうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。
【0035】
本発明が提供するポリチオール化合物の調製方法は、
一般式(II)で示されるフェノール類化合物と一般式(III)で示される第1化合物を、相間移動触媒の存在及びアルカリ性の条件下で、置換反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るステップ1と、
第1中間生成物とチオ酢酸を、ラジカル開始剤の存在下でラジカル付加反応を行い、精製した後、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るステップ2と、
第2中間生成物を加水分解反応させ、精製した後、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るステップ3と、を含む。
【0036】
【0037】
一般式(II)において、R1、R2、R3、R5、R7及びR8は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1~5の低級アルキル基と炭素原子数が1~5のアルコキシ基のうちの1つから選ばれ、好ましくは、R1、R2、R5及びR7はいずれも水素原子であり、R3及びR8はそれぞれ独立して水素原子又はメトキシ基から選ばれる。R9及びR10は、それぞれ独立して炭素原子数が1~5の1-アルケニルアルキルから選ばれ、好ましくはそれぞれ独立して炭素原子数が3~5の1-アルケニルアルキルから選ばれる。
【0038】
一般式(III)において、Xは塩素又は臭素を表し、mは0、1、2又は3である。
【0039】
ステップ1において、前記置換反応の方法は、好ましくは、一般式(II)で示されるフェノール類化合物を有機溶媒に溶解し、アルカリを添加してアルカリ性条件を提供し、相間移動触媒を添加し、その後、不活性ガスの保護下で、40~100℃に昇温させて10~60分間撹拌し、その後、一般式(III)で示される第1化合物を添加し、4~12時間反応させ、続いて、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の無色又は薄黄色の第1中間生成物を得るということである。
【0040】
前記アルカリの種類は特に限定されず、分野での一般的な選択肢であってもよく、その具体的な実例は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン及び4-ジメチルアミノピリジンのうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。
【0041】
前記相間移動触媒は、一般式(II)で示されるフェノール類化合物中のフェノール性ヒドロキシ基と一般式(III)で示される第1化合物中の塩素又は臭素との置換反応を触媒できる従来の様々な物質であってもよく、好ましくは環状クラウンエーテル類、ポリエーテル類及びアンモニウム類のうちの少なくとも1つである。そのうち、前記環状クラウンエーテル類の具体的な実例は、18-クラウン-6、15-クラウン-5及びシクロデキストリンのうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。前記ポリエーテル類の具体的な実例は、鎖状ポリエチレングリコール及び/又は鎖状ポリエチレングリコールジアルキルエーテルを含むが、それらに限定されない。前記アンモニウム類の具体的な実例は、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド及びテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドのうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。
【0042】
ステップ2において、前記ラジカル付加反応の方法は、好ましくは、第1中間生成物を有機溶媒に溶解し、ラジカル開始剤を添加し、不活性ガスの保護下で40~100℃に昇温させ、チオ酢酸を緩慢に添加し、4~12時間ラジカル付加反応させた後、減圧蒸留して溶媒を除去し、液状の無色又は薄黄色の第2中間生成物を得るということである。
【0043】
前記ラジカル開始剤は、第1中間生成物中の二重結合とチオ酢酸中のチオール基とのラジカル付加反応を引き起こす従来の様々な物質であってもよく、アゾ系開始剤及び/又は過酸化系開始剤であってもよい。そのうち、前記アゾ系開始剤の具体的な実例は、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸エステル)、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾジカルボンアミド、アゾジイソプロピルイミダゾリン塩酸塩、アゾイソブチルホルムアミド、アゾ二シクロヘキシルメトニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾジイソプロピルイミダゾリン、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)のうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。前記過酸化系開始剤の具体的な実例は、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキシル酸エステル、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキシル酸エステル、tert-ブチルパーオキシピバル酸エステル、tert-ヘキシルパーオキシピバル酸エステル、tert-ブチルパーオキシネオデカネート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルパーオキシヘキシル、過酸化ラウロイル及びt-ブチル過酸化ベンゾイルのうちの少なくとも1つを含むが、それらに限定されない。原料の入手容易性から考慮すれば、前記ラジカル開始剤は、好ましくはアゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸エステル)、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキシル酸エステル、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキシル酸エステル、tert-ブチルパーオキシピバル酸エステル、tert-ヘキシルパーオキシピバル酸エステル、tert-ブチルパーオキシネオデカネート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、過酸化ベンゾイル、3,5,5-トリメチルパーオキシヘキシル及び過酸化ラウロイルのうちの少なくとも1つである。
【0044】
ステップ3において、前記加水分解反応の方法は、好ましくは、第2中間生成物をアルコールに溶解し、塩酸又は水酸化ナトリウムを添加し、50~100℃に昇温させて3~12時間反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、2~8%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、無色又は薄黄色の粘稠液状生成物、即ち、ポリチオール化合物を得るということである。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップ1の置換反応は有機溶媒Iの存在下で行われ、ステップ2のラジカル付加反応は有機溶媒IIの存在下で行われ、ステップ3の加水分解反応は有機溶媒IIIの存在下で行われる。前記有機溶媒Iと有機溶媒IIは、好ましくは、それぞれ独立してメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、プロピルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、キシレン、ジロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドのうちの少なくとも1つから選ばれる。前記有機溶媒IIIは、好ましくはアルコールであり、より好ましくは炭素原子数が1~5の1価アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びn-ブタノールのうちの少なくとも1つである。
【0046】
本発明は少なくとも上記ポリチオール化合物を含有する硬化剤をさらに提供する。
【0047】
本発明はさらに樹脂組成物を提供し、そのうち、前記樹脂組成物は少なくとも上記硬化剤及び樹脂を含有し、前記樹脂は分子内に炭素-炭素二重結合を有するアルケニル類化合物及び/又はエポキシ樹脂である。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はアミン類を含有して硬化促進剤とする。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物はエポキシ樹脂とアミン類との反応生成物を含有して硬化促進剤とする。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態において、前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、前記樹脂組成物は、分子内に1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内に1級アミノ基及び2級アミノ基のうちの少なくとも1つを有する化合物との反応生成物を含有して硬化促進剤とする。
【0051】
本発明は接着剤又は密封剤の成分とする上記樹脂組成物の使用をさらに提供する。
【実施例】
【0052】
以下に実施例と組み合わせて、本発明をさらに説明する。
【0053】
以下の実施例と比較例において、5,5′-ジアリルビフェニル-2,2′-ジオールは、薩恩化学技術(上海)有限公司から由来し、品番がE100338である。相間移動触媒の18-クラウン-6は上海泰坦科技股イ分有限公司から由来し、品番が30243Dである。テトラブチルアンモニウムブロミドは上海泰坦科技股イ分有限公司から由来し、品番が28296Fである。臭化アリルは上海泰坦科技股イ分有限公司から由来し、品番が13125Cである。アゾビスイソブチロニトリル(「AIBN」と略称)は上海麦克林生物化学科技有限公司から由来し、品番がA800353である。過酸化ベンゾイルは上海麦克林生物化学科技有限公司から由来し、品番がB802244である。チオ酢酸は国薬集団化学試剤有限公司から由来し、品番が80128126である。5,5’-ジアリル-3,3’-ジメトキシ-2,2’-ビフェニルジフェノールは薩恩化学技術(上海)有限公司から由来し、品番がD050881である。塩化アリルは薩恩化学技術(上海)有限公司から由来し、品番がW310002である。5-ブロモ-1-ペンテンは薩恩化学技術(上海)有限公司から由来し、品番がW330079である。潜在性硬化促進剤は味之素精細化学株式会社から由来し、品番がAJICURE PN-23である。光開始剤は艾堅蒙から由来し、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンの品番がOmnirad 651であり、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンの品番がOmnirad 1173であり、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)オキシホスフィンの品番がOmnirad TPOであり、1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルは四国化成工業会社から由来し、商品名がTS-Gであり、式(IV)に示すような構造を有する。1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]は四国化成工業会社から由来し、式(V)に示すような構造を有する。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は三菱化学株式会社のjER-828ELから由来する。水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は米国CVC熱硬化性特種材料会社のEpalloy 5000から由来する。分子内に炭素-炭素二重結合を有するアルケニル類化合物は沙多瑪化学有限公司のトリシクロデカンジメタノールジアクリレートSR833Sと湛新樹脂(中国)有限公司のビスフェノールA型エポキシジアクリレートEBECRYL600から由来する。重合阻害剤の4-メトキシフェノールはSolvay会社のMEHQから由来する。安定剤のホウ酸トリエチルは日本TCI会社のB0520から由来する。エステル結合を有するポリチオール硬化剤のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)はSC有機化学株式会社のPEMPから由来する。
【0054】
【0055】
実施例1
該実施例は、本発明が提供するポリチオール化合物(5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル)の調製を説明するために用いられ、具体的なステップ及び反応フローチャートは以下のとおりである。
【0056】
【0057】
ステップ1: 5,5′-ジアリルビフェニル-2,2′-ジオール80gを200mLのアセトンに溶解し、炭酸カリウム103.6g及び相間移動触媒の18-クラウン-6 7.9gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて10分間撹拌し、続いて臭化アリル79.8gを緩慢に添加し、8時間反応させた後、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の薄黄色の第1中間生成物を得る。
【0058】
ステップ2: ステップ1で得られた第1中間生成物を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル5.4gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて、チオ酢酸96.2gを緩慢に添加し、12時間反応させた後、減圧蒸留して溶媒と過剰なチオ酢酸を除去し、液状の薄黄色の第2中間生成物を得る。
【0059】
ステップ3: ステップ2で得られた第2中間生成物を300mLのメタノールに溶解し、塩酸60mLを添加して加水分解を行い、60℃に昇温させて12時間加水分解反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、5%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、薄黄色の粘稠液状の最終的な生成物124.8g、即ち、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを得て、総収率が86.2%である。該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルは基本的に硫黄の異臭がない。
【0060】
該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルの
1H-NMRスペクトル及びIRスペクトルはそれぞれ
図1と
図2に示すとおりである。
【0061】
図1から分かるように、化学シフト7.0ppm付近がビフェニル環上のプロトンピークであり、化学シフト4.0ppm、2.6ppm及び1.95ppm位置のピークはビフェニル環上のアルコキシ基に対応し、化学シフト2.7ppm、2.5ppm及び1.89ppm位置のピークはビフェニル環上のアルキル基に対応し、化学シフト1.42ppm及び1.3ppm位置のピークは、それぞれビフェニル環上のアルキルメルカプト基とアルコキシメルカプト基に対応する。
図2から分かるように、1492cm
-1位置はビフェニル環上の吸収ピークであり、815cm
-1位置はビフェニル環上のAr-H屈曲振動に対応し、2928cm
-1位置はアルキル基鎖上のC-H伸縮振動吸収ピークであり、1246cm
-1位置での吸収ピークはアルコキシ基C-O伸縮振動であり、2560cm
-1位置での吸収ピークはチオール基に対応する。このことから分かるように、該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルは、一般式(I)に示すような構造を有し、そのうち、R
1、R
2、R
3、R
5、R
7及びR
8はいずれも水素原子であり、R
4及びR
6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である。
【0062】
実施例2
該実施例は本発明が提供するポリチオール化合物(5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル)の調製を説明するために用いられ、具体的なステップは以下のとおりである。
【0063】
ステップ1: 5,5’-ジアリル-3,3’-ジメトキシ-2,2’-ビフェニルジフェノール98gを250mLアセトンに溶解し、炭酸カリウム103.6g及び相間移動触媒の18-クラウン-6 7.9gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて10分間撹拌し、続いて臭化アリル79.8gを緩慢に添加し、8時間反応させた後、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の薄黄色の第1中間生成物を得る。
【0064】
ステップ2: ステップ1で得られた第1中間生成物を200mLテトラヒドロフランに溶解し、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル5.4gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて、チオ酢酸96.2gを緩慢に添加し、12時間反応させた後、減圧蒸留して溶媒と過剰なチオ酢酸を除去し、液状の薄黄色の第2中間生成物を得る。
【0065】
ステップ3: ステップ2で得られた第2中間生成物を300mLのメタノールに溶解し、塩酸60mLを添加して加水分解を行い、70℃に昇温させて12時間加水分解反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、5%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、薄黄色の粘稠液状の最終的な生成物137.7g、即ち、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルを得て、総収率が84.5%である。該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルは基本的に硫黄の異臭がない。
【0066】
該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルの
1H-NMRスペクトル及びIRスペクトルはそれぞれ
図3と
図4に示すとおりである。
図3から分かるように、化学シフト6.85ppmと7.05ppm付近はビフェニル環上のプロトンピークであり、化学シフト4.03ppm、2.59ppm及び1.98ppm位置のピークはビフェニル環上のアルコキシ基に対応し、化学シフト2.73ppm、2.49ppm及び1.92ppm位置のピークはビフェニル環上のアルキル基に対応し、化学シフト1.43ppm及び1.31ppm位置のピークは、それぞれビフェニル環上のアルキルメルカプト基とアルコキシメルカプト基に対応する。
図4から分かるように、1489cm
-1位置はビフェニル環上の吸収ピークであり、818cm
-1位置はビフェニル環上のAr-H屈曲振動に対応し、2925cm
-1位置はアルキル基鎖上のC-H伸縮振動吸収ピークであり、1242cm
-1位置での吸収ピークはアルコキシ基C-O伸縮振動であり、2560cm
-1位置での吸収ピークはチオール基に対応する。このことから分かるように、該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニルは、一般式(I)に示すような構造を有し、そのうち、R
1、R
2、R
5及びR
7はいずれも水素原子であり、R
3及びR
8はそれぞれ独立してメトキシ基から選ばれ、R
4及びR
6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である。
【0067】
実施例3
該実施例は本発明が提供するポリチオール化合物(5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニル)の調製を説明するために用いられ、具体的なステップは以下のとおりである。
【0068】
ステップ1: 5,5′-ジアリルビフェニル-2,2′-ジオール80gを200mLのアセトンに溶解し、炭酸カリウム103.6g及び相間移動触媒の18-クラウン-6 7.9gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて20分間撹拌し、続いて5-ブロモ-1-ペンテン98.3gを緩慢に添加し、8時間反応させた後、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の薄黄色の第1中間生成物を得る。
【0069】
ステップ2: ステップ1で得られた第1中間生成物を200mLテトラヒドロフランに溶解し、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル5.4gを添加し、不活性ガスの保護下で、70℃に昇温させて、チオ酢酸96.2gを緩慢に添加し、12時間反応させた後、減圧蒸留して溶媒と過剰なチオ酢酸を除去し、液状の薄黄色の第2中間生成物を得る。
【0070】
ステップ3: ステップ2で得られた第2中間生成物を300mLのメタノールに溶解し、塩酸60mLを添加して加水分解を行い、60℃に昇温させて12時間加水分解反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、5%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、薄黄色の粘稠液状の最終的な生成物133.2g、即ち、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニルを得て、総収率が82.4%である。該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトペンチルオキシ)ビフェニルは基本的に硫黄の異臭がなく、1H-NMR及びIR検出を行ったところ、それは一般式(I)に示すような構造を有し、そのうち、R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも3である。
【0071】
実施例4
該実施例は本発明が提供するポリチオール化合物(5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル)の調製を説明するために用いられ、具体的なステップは以下のとおりである。
【0072】
ステップ1: 5,5′-ジアリルビフェニル-2,2′-ジオール80gを200mLのアセトンに溶解し、炭酸カリウム103.6g及び相間移動触媒の18-クラウン-6 7.9gを添加し、不活性ガスの保護下で、50℃に昇温させて60分間撹拌し、続いて臭化アリル79.8gを緩慢に添加し、12時間反応させた後、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の薄黄色の第1中間生成物を得る。
【0073】
ステップ2: ステップ2で得られた第1中間生成物を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、ラジカル開始剤の過酸化ベンゾイル8.0gを添加し、不活性ガスの保護下で、80℃に昇温させ、チオ酢酸96.2gを緩慢に添加し、5時間反応させた後、減圧蒸留して溶媒と過剰なチオ酢酸を除去し、液状の薄黄色の第2中間生成物を得る。
【0074】
ステップ3: ステップ2で得られた第2中間生成物を300mLのメタノールに溶解し、塩酸60mLを添加して加水分解を行い、60℃に昇温させて12時間加水分解反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、5%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、薄黄色の粘稠液状の最終的な生成物120.9g、即ち、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを得て、総収率が83.5%である。該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルは基本的に硫黄の異臭がなく、1H-NMR及びIR検出を行ったところ、それは一般式(I)に示すような構造を有し、そのうち、R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である。
【0075】
実施例6
該実施例は本発明が提供するポリチオール化合物(5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル)の調製を説明するために用いられ、具体的なステップは以下のとおりである。
【0076】
ステップ1: 5,5′-ジアリルビフェニル-2,2′-ジオール80gを200mLジメチルホルムアミドに溶解し、水酸化カリウム42.1g及び相間移動触媒のテトラブチルアンモニウムブロミド9.67gを添加し、不活性ガスの保護下で、100℃に昇温させて10分間撹拌し、続いて塩化アリル50.5gを緩慢に添加し、4時間反応させた後、反応液を濾過し、濾液を減圧蒸留して溶媒を除去し、水で3回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、液状の薄黄色の第1中間生成物を得る。
【0077】
ステップ2: ステップ2で得られた第1中間生成物を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、ラジカル開始剤のアゾビスイソブチロニトリル5.4gを添加し、不活性ガスの保護下で、50℃に昇温させて、チオ酢酸89.3gを緩慢に添加し、12時間反応させた後、減圧蒸留して溶媒と過剰なチオ酢酸を除去し、液状の薄黄色の第2中間生成物を得る。
【0078】
ステップ3: ステップ2で得られた第2中間生成物を300mLのメタノールに溶解し、塩酸60mLを添加して加水分解を行い、70℃に昇温させて5時間加水分解反応させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、5%の炭化水素ナトリウム溶液で2回洗浄し、且つクロロホルムで抽出し、有機相を収集した後、蒸発乾固させ、薄黄色の粘稠液状の最終的な生成物111.6g、即ち、5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを得て、総収率が77.1%である。該5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルは基本的に硫黄の異臭がなく、1H-NMR及びIR検出を行ったところ、それは一般式(I)に示すような構造を有し、そのうち、R1、R2、R3、R5、R7及びR8はいずれも水素原子であり、R4及びR6は、いずれも炭素原子数が3のアルキレン基であり、mとnはいずれも1である。
【0079】
実施例6
該実施例は本発明が提供する熱硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂50部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂10部、実施例1で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル38部、潜在性硬化促進剤3部、安定剤のホウ酸トリエチル0.5部を含む。
【0080】
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0081】
実施例7
該実施例は本発明が提供する熱硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂50部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂10部、実施例2で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル42部、潜在性硬化促進剤3部、安定剤のホウ酸トリエチル0.5部を含む。
【0082】
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0083】
実施例8
該実施例は本発明が提供するUV光硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート50部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート10部、実施例1で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル32部、光開始剤の2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン3部、重合阻害剤の4-メトキシフェノール0.2部を含む。
【0084】
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して遮光条件下で室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0085】
実施例9
該実施例は本発明が提供するUV光硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート50部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート10部、実施例2で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル36部、光開始剤の2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン3部、重合阻害剤の4-メトキシフェノール0.2部を含む。
【0086】
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して遮光条件下で室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0087】
実施例10
該実施例は本発明が提供する光/熱二重硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂25部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂5部、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート25部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート5部、実施例1で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニル35部、光開始剤の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン1部及びジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)オキシホスフィン1部、潜在性硬化促進剤2部、安定剤のホウ酸トリエチル0.3部、重合阻害剤の4-メトキシフェノール0.1部を含む。
【0088】
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して遮光条件下で室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0089】
実施例11
該実施例は本発明が提供する光/熱二重硬化樹脂組成物の調製を説明するために用いられ、前記樹脂組成物は、重量部で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂25部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂5部、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート25部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート5部、実施例2で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)-3,3’-ジメトキシビフェニル39部、光開始剤の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン1部及びジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)オキシホスフィン1部、潜在性硬化促進剤2部、安定剤のホウ酸トリエチル0.3部、重合阻害剤の4-メトキシフェノール0.1部を含む。
容器に上記原料を計り取った後、分散装置を利用して遮光条件下で室温又は低温で十分且つ均一に混合し、且つ脱泡処理を行い、取り出してパッケージした後、樹脂組成物を得る。
【0090】
比較例1
実施例6の方法で熱硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例6で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のエステル結合を有するポリチオール硬化剤のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)で置換することであり、他の条件を実施例6と同じようにし、熱硬化樹脂組成物を得る。
【0091】
比較例2
実施例6の方法で熱硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例6で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量の1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルで置換することであり、他の条件を実施例6と同じようにし、熱硬化樹脂組成物を得る。
【0092】
比較例3
実施例6の方法で熱硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例6で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のグリコールウリル複合体(該グリコールウリル複合体が1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルと1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の混合物であり、そのうち、1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の質量比率が8%である)で置換することであり、他の条件を実施例6と同じようにし、熱硬化樹脂組成物を得る。
【0093】
比較例4
実施例8の方法でUV光硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例8で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のエステル結合を有するポリチオール硬化剤のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)で置換することであり、他の条件を実施例8と同じようにし、UV光硬化樹脂組成物を得る。
【0094】
比較例5
実施例8の方法でUV光硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例8で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量の1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルで置換することであり、他の条件を実施例8と同じようにし、UV光硬化樹脂組成物を得る。
【0095】
比較例6
実施例8の方法でUV光硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例8で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のグリコールウリル複合体(該グリコールウリル複合体が1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルと1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の混合物であり、そのうち、1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の質量比率が8%である)で置換することであり、他の条件を実施例8と同じようにし、UV光硬化樹脂組成物を得る。
【0096】
比較例7
実施例10の方法で光/熱二重硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例10で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のエステル結合を有するポリチオール硬化剤のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)で置換することであり、他の条件を実施例10と同じようにし、光/熱二重硬化樹脂組成物を得る。
【0097】
比較例8
実施例10の方法で光/熱二重硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例10で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量の1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルで置換することであり、他の条件を実施例8と同じようにし、光/熱二重硬化樹脂組成物を得る。
【0098】
比較例9
実施例10の方法で光/熱二重硬化樹脂組成物を調製し、その差異は、実施例10で調製されたポリチオール硬化剤の5,5’-ビス(3-メルカプトプロピル)-2,2’-ビス(3-メルカプトプロポキシ)ビフェニルを、同じチオール官能基当量のグリコールウリル複合体(該グリコールウリル複合体が1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル及び1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の混合物であり、そのうち、1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]の質量比率が8%である)で置換することであり、他の条件を実施例10と同じようにし、光/熱二重硬化樹脂組成物を得る。
【0099】
測定例
(1)結晶析出時間(h): それぞれ実施例と比較例で調製された樹脂組成物を室温で放置し、樹脂組成物の調製が完了する時から結晶の析出が確認されたまでの時間である。説明しておきたいのは、結晶析出の確認は目視で行われ、最長の測定時間が240時間であるということである。
(2)硬化条件: 実施例6~7及び比較例1~3で調製された樹脂組成物を、80℃のオーブンに入れて60分間熱硬化し、硬化した後の試料を得て、実施例8~9及び比較例4~6で調製された樹脂組成物を、紫外光源(365nm、光強度1000mW/cm2)で10秒照射硬化し、硬化した後の試料を得て、実施例10~11及び比較例7~9で調製された樹脂組成物を、紫外光源(365nm、光強度1000mW/cm2)で4秒照射硬化した後、試料を80℃のオーブンに入れて60分間熱硬化し、硬化した後の試料を得る。
(3)ガラス転移温度(℃): 米国TA機器のQ-800型の動的熱機械分析試験装置(DMA)を使用して測定を行い、以上の実施例及び比較例で調製された樹脂組成物を完全に硬化した後、42mm×8mm×0.3mmの薄片を製造し、-40~250℃の温度範囲内に、液体窒素雰囲気とフィルム延伸モードで、温度に伴う損失係数(tanδ)の変化ルールを測定し、そのうち、昇温速度が10℃/minであり、測定周波数が10Hzであり、それにより樹脂組成物を硬化した後のガラス転移温度Tg(℃)を確定する。
(4)熱接着強度(MPa): 以上の実施例及び比較例で調製された樹脂組成物をそれぞれステンレス鋼シートに塗布し、強化ガラスシートを使用して重ね継いて圧着し、試験試料を製造し、接着面積が25.4mm×5mmであり、接着層の厚さが0.1mmであることを保証し、測定試料をそれぞれ硬化し、続いて完全に硬化した試料を、万能試験機で2つのシートを反対方向に沿って引き伸ばし、環境温度85℃の条件下で測定を行い、測定した力値を強度(MPa)として記録し、硬化した後の試料を85℃/85%RHの加熱加湿条件で120h処理した後、再度、環境温度85℃の条件下で試料のせん断接着強度(MPa)を測定して記録する。
【0100】
上記結晶析出時間、ガラス転移温度及び加熱加湿前後の熱接着強度の測定結果は下記表1に示すとおりである。
【0101】
【0102】
表1と組み合わせて実施例1~11及び/又は比較例1~9を分析して比較する。まず、実施例1~5を分析したところ、本発明のポリチオール化合物が液状であり、エステル結合がなく、収率が高く、且つ基本的に副生成物が生成されず、調製プロセスが簡単であり、コストを効果的に削減することができる。実施例6と比較例1~3、実施例8と比較例4~6、実施例10と比較例7~9を対比分析したところ、本発明のポリチオール化合物を硬化剤として調製された樹脂組成物は結晶析出時間、ガラス転移温度及び加熱加湿前後の熱接着強度がいずれも明らかにより優れ、これによって、本発明で調製された樹脂組成物は、より高い安定性(結晶析出時間が長い)、より高い耐熱性(ガラス転移温度と熱接着強度が高い)、より高い接着性及び耐湿熱加水分解性を有することが示されている。
【0103】
実施例6、実施例8、実施例10をそれぞれ比較例1、比較例4、比較例7と対比したところ、本発明で調製されたポリチオール化合物をエステル結合を有するポリチオール硬化剤のペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)に交換した場合、樹脂組成物を硬化した後のガラス転移温度がいずれも急激に低下すると共に、熱接着強度も明らかに低下し、特に加熱加湿後の熱接着強度がほぼ失われ、これによって、本発明のポリチオール化合物は樹脂組成物の耐熱性、接着性及び耐湿熱加水分解性にいずれも明らかな影響を与えることが示されている。
【0104】
実施例6、実施例8、実施例10をそれぞれ比較例2~3、比較例5~6、比較例8~9と比較したところ、比較例2、比較例5及び比較例8では、本発明で調製されたポリチオール化合物を1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルに交換した後、樹脂組成物の結晶析出時間は6.5時間、26時間及び13時間に短縮されると共に、硬化物のガラス転移温度と熱接着強度もある程度低下し、これによって、固体のポリチオール硬化剤の1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリルは結晶を容易に析出するため、樹脂組成物の総合的な特性が低下することが示されている。比較例3、比較例6及び比較例9では、一部の1,1-(ジチオビスエタンジイル)-ビス[3,4,6-トリ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル]を添加することで、ポリチオール硬化剤の1,3,4,6-テトラ(2-メルカプトエチル)グリコールウリル結晶の析出時間が短くなるという問題が改善されるが、このような解決手段はコストを明らかに増加すると共に、樹脂組成物のガラス転移温度と熱接着強度が本発明の樹脂組成物よりも僅かに低く、これによって、本発明のポリチオール化合物は、コストが低く、結晶の析出がない場合、樹脂組成物の耐熱性、接着性能及び耐湿熱加水分解性能に明らかな影響を与えることができることが示されている。
【0105】
上記分析をまとめると、本発明のポリチオール化合物は、異臭が少ない上で、エステル結合がなく、良好な耐湿耐熱性能を有し、室温で液体であり、且つ直接に硬化剤として樹脂組成物の合成に用いることができ、該樹脂組成物は密封剤と接着剤の成分とすることができ、特許CN201680014880.5に提出された2種類のメルカプトエチルグリシジル化合物を併用して硬化剤成分とすることに比べて、本発明のポリチオール化合物は反応プロセスが簡単であり、カップリングしてオリゴマー混合物を形成する必要がなく、他のポリチオール化合物と併用する必要もなく、コストが低い。また、本発明が提供するポリチオール化合物は、単成分の低温硬化エポキシ樹脂の保存安定性上のリスクを低減することができ、適用期間が長く、利用上の将来性が広い。
【0106】
以上は本発明の実施例を示し記述したが、上記実施例が例示的なものであることが理解可能であり、本発明に対する限定と理解されるべきではなく、当業者であれば、本発明の原理と主旨から逸脱することなく、本発明の範囲内で上記実施例に対する変更、修正、置換と変形が可能である。