(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/36 20060101AFI20240819BHJP
H01H 85/143 20060101ALI20240819BHJP
H01H 85/06 20060101ALI20240819BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01H85/36
H01H85/143
H01H85/06
H01H37/76 B
H01H37/76 K
(21)【出願番号】P 2023098009
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2018209897の分割
【原出願日】2018-11-07
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-045248(JP,U)
【文献】米国特許第3436712(US,A)
【文献】国際公開第2018/159283(WO,A1)
【文献】特表2010-522420(JP,A)
【文献】特開2012-043573(JP,A)
【文献】特許第6249600(JP,B2)
【文献】特許第6249602(JP,B2)
【文献】特許第4192266(JP,B2)
【文献】特開平06-084446(JP,A)
【文献】特開2006-059568(JP,A)
【文献】特開2012-234774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/36
H01H 85/143
H01H 85/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、バネ性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたヒューズエレメント材とを備え、
前記ヒューズエレメント材は、前記第1の電極と撓ませた状態の前記第2の電極とによって挟み込まれて支持され、
前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、その一端に爪部を備え、
前記ヒューズエレメント材は、前記第1の電極の爪部と前記第2の電極の爪部とが3つ以上交互に並んで挟み込まれて支持されて
おり、
前記ヒューズエレメント材を加熱する発熱体と、
前記発熱体に通電する第3の電極と、
前記発熱体と前記第3の電極とを接続する導電性の連結部と、
をさらに備え、
前記連結部は、一端が前記第3の電極と接続すると共に、他端が前記発熱体を介して前記第1の電極、前記第2の電極および前記ヒューズエレメント材のいずれかと接続されており、
前記発熱体の通電による発熱により、前記ヒューズエレメント材は切断され、前記連結部が前記第3の電極から離間されることで前記発熱体への通電が停止される、保護素子。
【請求項2】
前記第1の電極及び前記第2の電極が備える前記爪部の少なくとも一部の爪部の先端が、前記ヒューズエレメント材側に折れ曲がっている、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記ヒューズエレメント材は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなり、
前記ヒューズエレメント材は、前記低融点金属層の融点で前記低融点金属層が軟化し、高融点金属層が剛性を維持した状態で、前記第2の電極のバネ性により切断される、請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記低融点金属層は、Pbフリーはんだからなり、上記高融点金属層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなる、請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
過電流が流れたときに前記ヒューズエレメント材がせん断されるようなせん断力が、前記第1の電極及び前記第2の電極から前記ヒューズエレメント材に付与されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方と、前記ヒューズエレメント材とは、はんだによって接合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項7】
前記第1の電極はバネ性を有し、前記ヒューズエレメント材は、撓ませた状態の前記第1の電極と撓ませた状態の前記第2の電極とによって挟み込まれて支持されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項8】
前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、外部端子孔を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項9】
前記第1の電極に第1の端子部材が接続され、前記第2の電極に第2の端子部材が接続されている請求項1~8のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項10】
前記第3の電極に第3の端子部材が接続されている請求項
1に記載の保護素子。
【請求項11】
前記第1の電極に第1の端子部材が接続され、前記第2の電極に第2の端子部材が接続され、前記第3の電極に第3の端子部材が接続されており、
第1の端子部材の厚みと、第2の端子部材の厚みと、第3の端子部材の厚みと、は、すべて同じである、請求項
1に記載の保護素子。
【請求項12】
前記外部端子孔は、一部に開放部分を有する爪形状である、請求項8に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格を超える電流が流れたときに発熱して溶断して電流経路を遮断するヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)が用いられている。
【0003】
保護素子としては、例えば、はんだをガラス管に封入したホルダー固定型ヒューズや、セラミック基板表面にAg電極を印刷したチップヒューズ、銅電極の一部を細らせてプラスチックケースに組み込んだねじ止め又は差し込み型保護素子等が多く用いられている。かかる保護素子は、リフローによる表面実装が困難であり、部品実装の効率が低くなるため、近年では表面実装型の保護素子が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
表面実装型の保護素子は例えば、リチウムイオン二次電池を使用した電池パックの過充電や過電流の保護素子として採用されている。リチウムイオン二次電池は、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォンなどのモバイル機器において使われており、近年では電動工具、電動自転車、電動バイク及び電気自動車等にも採用されている。そのため、大電流、高電圧用の保護素子が求められている。
【0005】
高電圧用の保護素子では、ヒューズエレメントが溶断される際にアーク放電が生じ得る。アーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが広範囲にわたって溶融し、蒸気化した金属が飛散する場合がある。この場合、飛散した金属によって新たに電流経路が形成され、あるいは飛散した金属が端子や周囲の電子部品等に付着するおそれがある。そのため、高電圧用保護素子では、アーク放電を発生させない、あるいは、アーク放電を止める対策が施されている。
【0006】
アーク放電を発生させない、あるいは、アーク放電を止める対策として、ヒューズエレメントの周りに消弧材を詰めることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、アーク放電を止める他の方法として、ヒューズエレメントと弾性復元力を蓄えた状態のバネとを直列につなげて低融点金属で接合するタイプの保護素子が知られている(例えば、特許文献4~6参照)。このタイプの保護素子では、過電流が流れて低融点金属が溶融すると、バネの弾性復元力によってバネとヒューズエレメントとの分離を促進して、過電流の迅速な遮断を可能にする。
【0008】
アーク放電は電界強度(電圧/距離)に依存し、接点間距離がある間隔以上になるまでアーク放電は止まらない。そこで、バネを利用するタイプの保護素子は、バネとヒューズエレメントとを、バネの弾性復元力を利用してアーク放電を維持できなくなる距離まで迅速に分離することによって、アーク放電を迅速に止めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6249600号公報
【文献】特許第6249602号公報
【文献】特許第4192266号公報
【文献】特開平6-84446号公報
【文献】特開2006-59568号公報
【文献】特開2012-234774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の消弧材を用いた保護素子では製造工程が複雑になり、保護素子の小型化が難しく、保護素子内の発熱体の発熱によるヒューズエレメント材の溶断を阻害する懸念があった。
また、上記のバネを利用する保護素子では、使用環境でヒューズエレメントとバネとの接合強度が経時変化で低下しやすく、長期安定性が懸念される。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、長期安定性を確保しつつ、バネの弾性復元力を活用して過電流遮断の際のアーク放電を迅速に阻止可能な保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0013】
(1)本発明の一態様に係る保護素子は、第1の電極と、バネ性を有する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたヒューズエレメント材とを備え、前記ヒューズエレメント材は、前記第1の電極と撓ませた状態の前記第2の電極とによって挟み込まれて支持されている。
【0014】
(2)上記(1)に記載の態様において、過電流が流れたときに前記ヒューズエレメント材がせん断されるようなせん断力が、前記第1の電極及び前記第2の電極から前記ヒューズエレメント材に付与されていてもよい。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)のいずれかに記載の態様において、前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも一方と、前記ヒューズエレメント材とは、はんだによって接合されていてもよい。
【0016】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、その一端に爪部を備え、
前記ヒューズエレメント材は、前記第1の電極の爪部と前記第2の電極の爪部とによって挟み込まれて支持されていてもよい。
【0017】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、一つ又は複数の前記爪部を備え、前記ヒューズエレメント材は、前記第1の電極の爪部と前記第2の電極の爪部とが3つ以上交互に並んで挟み込まれて支持されていてもよい。
【0018】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極及び前記第2の電極が備える前記爪部の少なくとも一部の爪部の先端が、前記ヒューズエレメント材側に折れ曲がっていてもよい。
【0019】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極はバネ性を有し、撓ませた状態の前記第1の電極と撓ませた状態の前記第2の電極とによって挟み込まれて支持されていてもよい。
【0020】
(8)上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の態様において、前記ヒューズエレメント材は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなってもよい。
【0021】
(9)上記(8)に記載の態様において、前記低融点金属層は、Pbフリーはんだからなり、上記高融点金属層は、Ag若しくはCu又はAg若しくはCuを主成分とする金属からなってもよい。
【0022】
(10)上記(1)~(9)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、外部端子孔を備えてもよい。
【0023】
(11)上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の態様において、前記第1の電極に第1の端子部材が接続され、前記第2の電極に端子部材が接続されていてもよい。
【0024】
(12)上記(1)~(11)のいずれか一つに記載の態様において、前記ヒューズエレメント材を加熱する発熱体と、前記発熱体に通電する第3の電極と、を備えてもよい。
【0025】
(13)上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の態様において、前記発熱体は、一端が前記第3の電極に接続され、他端が前記ヒューズエレメント材、前記第1の電極及び前記第2の電極のうち、少なくとも1つに接続されていてもよい。
【0026】
(14)上記(12)に記載の態様において、前記第3の電極に第3の端子部材が接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、長期安定性を確保しつつ、バネの弾性復元力を活用して過電流遮断の際のアーク放電の迅速阻止可能な保護素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は平面模式図、(b)は、(a)のX-X線で切った断面模式図であり、(c)は(a)のY-Y線で切った断面模式図である。
【
図2】第1の電極が爪部を2つ備えた保護素子の平面模式図である。
【
図3】積層体の構造の例を模式的に示した斜視図であり、(a)は、方形状あるいは板状のものであり、内層として低融点金属層とし、外層として高融点金属層としたものであり、(b)は、丸棒状のものであり、内層として低融点金属層とし、外層として高融点金属層としたものであり、(c)は、方形状あるいは板状のものであり、低融点金属層と高融点金属層とが積層された二層構造のものであり、(d)は、方形状あるいは板状のものであり、低融点金属層を上下の高融点金属層及び高融点金属層で挟み込んだ三層構造のものである。
【
図4】(a)は、第2実施形態に係る保護素子の平面模式図であり、(b)は、第2実施形態に係る保護素子の変形例の平面模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は斜視模式図、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。
【
図6】
図5に示した保護素子500について、ヒューズエレメント材の切断後の模式図であり、(a)は、斜視模式図であり、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。
【
図7】バネ性を有する第1の電極が2つの爪部を備えた保護素子600の模式図であり、(a)は、斜視模式図であり、(b)は、過電流による遮断後の模式図である。
【
図8】
図5に示した保護素子500について、ヒューズエレメント材3を含む部分をカバー7で覆った態様の模式図であり、8(a)は、上部カバー7A及び下部カバー7Bで覆った状態の斜視模式図であり、8(b)は、上部カバー7Aを外した状態の斜視模式図である。
【
図9】第4実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は、斜視模式図であり、(b)は、(a)とは反対側から見た斜視模式図である。
【
図10】
図9に示した保護素子700について、ヒューズエレメント材の切断後の斜視模式図であり、(a)は、
図9(a)に対応する図であり、(b)は、
図9(b)に対応する図である。
【
図11】第5実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は、斜視模式図であり、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。
【
図12】
図11に示した保護素子800について、ヒューズエレメント材の切断後の斜視模式図であり、(a)は、
図9(a)に対応する図であり、(b)は、
図9(b)に対応する図である。
【
図13】第6実施形態に係る保護素子の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は平面模式図、(b)は(a)のX-X線で切った断面模式図であり、(c)は(a)のY-Y線で切った断面模式図である。
図1に示す保護素子100は、第1の電極1と、バネ性を有する第2の電極2と、第1の電極1と第2の電極2との間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、第1の電極1と撓ませた状態の第2の電極2とによって挟み込まれて支持されている。
【0031】
<第1の電極>
第1の電極1は、導電材料からなる。例えば、金属(合金を含む)であり、具体的な材料としては、銅、黄銅、ニッケル、ステンレス、42アロイなどが挙げられる。
後述するが、第1の電極自体も、第2の電極と同様にバネ性を有する場合には、第2の電極と同様の材料を用いることができる。
【0032】
第1の電極1の形状(後述する爪部以外の部分の形状)は、
図1に示すものは平面視で全体として長方形であるが、本発明の効果を奏する限り、いかなる形状も使用することができる。
図1に示す例では、第1の電極1は板状部材である。
図1に示す例では、第1の電極1はその一端1Aに、ヒューズエレメント材3を安定に支持するための爪部1aを備えている。
図1に示す例では、第1の電極1が備える爪部は1つであるが、爪部の数は2つ以上であってもよい。複数の爪部を備える場合、それらの爪部は互いに同一であっても、異なっていてもよい。また、一端1Aにおける爪部1aの位置は安定に支持できる限り、任意に選定できる。
【0033】
図2に、第1の電極21が爪部を2つ(21a、21b)備える保護素子200の平面模式図を示す。
図2において、符号が
図1と同じ部材は同様な部材として説明を省略する。
【0034】
また、
図1に示す例では、第1の電極1が備える爪部1aの先端1aAは、ヒューズエレメント材3をより安定に支持可能とするために、ヒューズエレメント材3側に折れ曲がった屈曲部1aAaを備えている。すなわち、屈曲部1aAaは、ヒューズエレメント材3の抜けを防止する機能を有する。
【0035】
第1の電極1の厚みとしては、限定するものではないが、その目安を言えば、0.05~0.5mmとすることができる。
【0036】
<第2の電極>
第2の電極2は、バネ性を有する導電材料からなる。バネ性を有する導電材料としては、金属(合金を含む)を例示できる。その中でも、低抵抗で板バネ材料に適した金属材料(合金を含む)であることが好ましく、具体的な材料としては、りん青銅、銅合金、チタン銅、コルソン合金、ベリリウム銅などが挙げられる。
ここで、本明細書において、「バネ性」とは、力が加わると変形し、力を除くと元に戻る性質をいい、具体的には、撓ませた状態でヒューズエレメント材3を支持していた電極が、過電流によるヒューズエレメント材3の切断後に撓む前の位置に戻ることを意味する。撓ませた状態とされるのは電極全体でもいいし、電極の一部であってもよい。電極の一部が撓ませた状態でヒューズエレメント材3を支持する場合(例えば、
図1の場合)は、バネ性を担っているのは撓んでいる電極のその一部である。
【0037】
第2の電極2の形状は、
図1に示すものは平面視で全体として長方形であるが、本発明の効果を奏する限り、いかなる形状も使用することができる。
図1に示す例では、第2の電極2は板状部材である。
図1に示す例では、第2の電極2はその一端2Aに、ヒューズエレメント材3を支持するための爪部2a、爪部2bを備えている。
図1に示す例では、第2の電極2は2つの爪部を備えているが、爪部の数は1つでもよく、また、3つ以上であってもよい。
図1に示す例のように複数の爪部を備える場合、それらの爪部は互いに同一であっても、異なっていてもよい。
図1に示す例のように、第2の電極2のうち、爪部を撓ませた状態でヒューズエレメント材3を支持するので、爪部の構成(幅や厚み、形状など)がヒューズエレメント材3の切断、あるいは、せん断に大きく影響する。
ここで、本明細書において、「せん断」とは、ヒューズエレメント材をはさみ切るような作用をいい、後述する「せん断力」とは、ヒューズエレメント材のある断面に平行に、互いに反対向きの一対の力を作用させるとヒューズエレメント材はその面に沿って滑り切られるような作用を受けるが、このような作用を与える力をいう。ヒューズエレメント材には、第1の電極及び第2の電極のそれぞれから、互いに反対向きの一対の力が付与されている。
また、
図1に示す例では、第2の電極2が備える爪部2aの先端2aAは、ヒューズエレメント材3をより安定に支持可能とするために、ヒューズエレメント材3側に折れ曲がった屈曲部2aAaを備えている。爪部2bの先端も屈曲部を備えることが好ましい。
【0038】
第2の電極2の厚みとしては、限定するものではないが、その目安を言えば、0.05~0.5mmとすることができる。
【0039】
第2の電極2の厚みは全体が同じ厚みであってもよいが、異なる厚みの部分を有してもよい。例えば、ヒューズエレメント材を挟み込んで支持する部分(
図1の例では、爪部2a、2b)のみを薄くして、それ以外の部分は薄くしない構成とすることにより、外部との接続端子としての剛性を維持しつつ、ヒューズエレメント材を挟み込むバネ性を高くすることができる。
【0040】
第2の電極2の一部を薄くする方法としては、例えば、例えば、圧延などの公知の金属加工の方法を用いることができる。
【0041】
<ヒューズエレメント材>
ヒューズエレメント材3としては、公知のヒューズエレメントに用いられる材料のものを用いることができる。
ヒューズエレメント材3は、保護素子を備える装置が通常の作動中の通電による温度では、力を加えても実質的に(本発明の効果を奏する範囲で)変形しない部材である。さもなければ、ヒューズエレメント材3が経時的に変形して、ヒューズエレメント材としての機能を果たさなくなるからである。従って、ヒューズエレメント材3は、力を加えると変形する薄片などではなく、力を加えても変形しないバルク材(板状、棒状、角材状など)である。
【0042】
ヒューズエレメント材3は、第1の電極1と撓ませた状態の第2の電極2とによって挟み込まれて支持されている。
より詳細には、
図1に示す例では、ヒューズエレメント材3は、第1の電極1が備える爪部1aと、第2の電極2が備える、撓ませた状態の爪部2a、爪部2bとによって、挟み込まれて状態で支持されている。ここで、第1の電極1が備える爪部と第2の電極2が備える爪部とは
図1に示すように、交互に並んで配置していることが好ましい。すなわち、爪部2a、爪部1a、爪部2bの順に、平面視で重ならないように配置していることが好ましい。
【0043】
ヒューズエレメント材3の寸法(形状によって、厚み、幅、長さなど)は、通常作動中の通電によっては(本発明の効果を奏する範囲で)変形しない構成であれば、過電流が流れて、第1の電極1と撓ませた状態の第2の電極2とによって切断可能な任意の寸法を取ることができる。
【0044】
保護素子100においては、バネ性を有する第2の電極2を撓ませた状態で、第1の電極1と共に、ヒューズエレメント材を上下から挟み込んで支持するため、ヒューズエレメント材には第1の電極1と第2の電極2とから逆向きに力が付与されている。
この状態で、過電流が流れて、ヒューズエレメント材の温度が保護素子を備える装置が通常の作動中の通電による温度よりも高くなり、その結果、ヒューズエレメント材が柔らかくなると、あるいは、半溶融すると、ヒューズエレメント材は切断あるいはせん断され、回路電流が遮断される。このように、保護素子100においては、ヒューズエレメント材自体を物理的に切断する点で、ヒューズエレメントとバネとの接合を切り離す上述のバネ利用タイプの保護素子とは異なる。ヒューズエレメント材が、溶融がなく、単に柔らかくなった状態で切断された場合だけでなく、一部が溶融され、一部が溶融されていないままの状態で切断された場合には、上述のせん断力によるせん断と言える場合が多いと思われるが、せん断力によるせん断とは言えない態様でヒューズエレメント材が切断されてもよい。
また、アーク放電は、距離に反比例する電界強度に依存するが、保護素子100では、切断されたヒューズエレメント材の切断面同士の距離は弾性復元力によって急速に大きくなるので、アーク放電を速やかに止めることができる。
また、保護素子100では、ヒューズエレメント材が溶融状態に至る前の柔らなくなる温度すなわち、溶融状態に至る温度よりも低温で、ヒューズエレメント材を切ることができるので、アーク放電の発生リスクを低減できる。
【0045】
ヒューズエレメント材3は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなるものとしてもよい。
この構成の場合、高融点金属層によってヒューズエレメント材3の剛性をしつつ、低融点金属層を備えることでより低温でヒューズエレメント材3を柔らかくして、あるいは、半溶融して、ヒューズエレメント材を切断可能にする。
【0046】
低融点金属層に用いられる低融点金属としては、Snを主成分とするPbフリーはんだなどのはんだを用いることが好ましい。Snは融点217℃であるため、Snを主成分とするはんだは低融点であり、低温で柔らかくなるからである。
高融点金属層に用いられる高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。例えば、Agは融点962℃であるため、Agを主成分とする合金からなる高融点金属層は低融点金属層が柔らかくなる温度では剛性を維持できるからである。
【0047】
積層体の構造としては種々の構造をとることができる。
図3に、積層体の構造の例を模式的に示した斜視図を示す。
図3(a)に示す積層体(ヒューズエレメント材)3Aは、方形状あるいは板状のものであり、内層として低融点金属層3Aaとし、外層として高融点金属層3Abとしたものであるが、内層と外層とを逆にしてもよい。
図3(b)に示す積層体(ヒューズエレメント材)3Bは、丸棒状のものであり、内層として低融点金属層3Baとし、外層として高融点金属層3Bbとしたものであるが、内層と外層とを逆にしてもよい。
図3(c)に示す積層体(ヒューズエレメント材)3Cは、方形状あるいは板状のものであり、低融点金属層3Caと高融点金属層3Cbとが積層された二層構造のものである。
図3(d)に示す積層体(ヒューズエレメント材)3Dは、方形状あるいは板状のものであり、低融点金属層3Daを上下の高融点金属層3Db及び高融点金属層3Dcで挟み込んだ三層構造のものである。逆に、高融点金属層を二層の低融点金属層で挟み込んだ三層構造としてもよい。
図3(a)~(d)は、二層又は三層の積層体としたものであるが、四層以上としてもよい。
【0048】
第1の電極1及び第2の電極2の少なくとも一方とヒューズエレメント材3とは、はんだによって接合されていることが好ましく、第1の電極1及び第2の電極2のいずれもヒューズエレメント材3とはんだによって接合されていることがより好ましい。
第1の電極1あるいは第2の電極2とヒューズエレメント材3との間の電気抵抗を下げるためである。
はんだの材料としては公知のものを用いることができるが、抵抗率と融点の観点からSnを主成分とするものが好ましい。
【0049】
(第2実施形態)
図4(a)は、第2実施形態に係る保護素子の平面模式図である。第1実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、第1実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0050】
第2実施形態に係る保護素子は、第1実施形態に係る保護素子に対して、第1の電極及び第2の電極が外部端子孔を備える点が主な差異である。すなわち、第1実施形態に係る保護素子は外部端子を別個に取り付けて用いられるが、第2実施形態に係る保護素子は、第1の電極及び第2の電極が外部端子と一体に形成された構成である。
【0051】
具体的には、
図4(a)に示す保護素子400は、第1の電極41と、バネ性を有する第2の電極42と、第1の電極41と第2の電極42との間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、第1の電極41と撓ませた状態の第2の電極42とによって挟み込まれて支持されており、第1の電極41及び第2の電極42はそれぞれ、外部端子孔45、46を備えている。
【0052】
<外部端子孔>
外部端子孔45、46は、第1の電極41及び第2の電極42のそれぞれに備えられている。
一対の外部端子孔45、46のうち、一方の外部端子孔は電源側へ接続するために用いることができ、他方の外部端子孔は負荷側へ接続するために用いることができる。
ここで、外部端子孔45、46の形状は図示しない電源側あるいは負荷側の端子に係合可能な形状であれば特に制限はなく、
図4(a)に示す外部端子孔45、46は開放部分がない貫通穴であるが、例えば、
図4(b)に示すように一部に開放部分を有するつめ形状などでもよい。
【0053】
第1の電極41は、第1実施形態の第1の電極1と同様な材料を用いることができる。 また、第2の電極42についても、第1実施形態の第2の電極2と同様な材料を用いることができる。
【0054】
図4(b)は、第2実施形態に係る保護素子の変形例の平面模式図である。
図4(b)に示す変形例では、外部端子孔の形状が
図4(a)に示した例と異なる。
図4(a)に示す保護素子と同様な部材については同じ符号を用いて説明を省略する。
具体的には、
図4(b)に示す保護素子400Aは、第1の電極41AAと、バネ性を有する第2の電極42AAと、第1の電極41AAと第2の電極42AAとの間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、第1の電極41AAと撓ませた状態の第2の電極42AAとによって挟み込まれて支持されており、第1の電極41AA及び第2の電極42AAはそれぞれ、一部に開放部45Aa、46Aaを有する外部端子孔45A、46Aを備える。
【0055】
外部端子孔が有する開放部の位置は適宜選択可能である。
図4(b)に示す保護素子400Aでは、外部端子孔45A、46Aが有する開放部45Aa、46Aaは、第1の電極41AA及び第2の電極42AAのそれぞれ、ヒューズエレメント材3と接続する側の反対側に位置するが、別の位置にあってもよい。
【0056】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は斜視模式図、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
図5において、S-Sの点線は、第1の電極51及び第2の電極52のそれぞれの爪部を除く部分(ヒューズエレメント材3の切断後にも実質的に変わらない部分)51B、52Bの厚み方向の中心面を繋いだ面を示す。
【0057】
第3実施形態に係る保護素子は、上記実施形態に係る保護素子に対して、第2の電極に加えて第1の電極もバネ性を有する点が主な差異である。
【0058】
具体的には、
図5に示す保護素子500は、バネ性を有する第1の電極51と、バネ性を有する第2の電極52と、第1の電極51と第2の電極52との間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、撓ませた状態の第1の電極51と撓ませた状態の第2の電極52とによって挟み込まれて支持されている。
また、第1の電極51と第2の電極52はそれぞれ、外部端子孔55、56を有する。
【0059】
<第1の電極>
第1の電極51はバネ性を有するので、第1実施形態の第2の電極2と同様な材料を用いることができる。
第1の電極51は、その一端51Aに、ヒューズエレメント材3を安定に支持するための爪部51aを備えている。また、第1の電極51が備える爪部51aの先端51aAは、ヒューズエレメント材3をより安定に支持可能とするために、ヒューズエレメント材3側に折れ曲がった屈曲部51aAaを備えている。
第1の電極51が有する外部端子孔55は、第2実施形態の第1の電極41が有する外部端子孔45や第1の電極41AAが有する外部端子孔45Aと同様な構成とすることができる。
図5に示す保護素子500では、第1の電極51は外部端子孔55を有する構成であるが、外部端子孔を有さなくてもよい。
【0060】
第1の電極51の厚みは全体が同じ厚みであってもよいが、異なる厚みの部分を有してもよい。例えば、ヒューズエレメント材を挟み込んで支持する部分(
図5の例では、爪部51a)のみを薄くして、それ以外の部分は薄くしない構成とすることにより、外部との接続端子としての剛性を維持しつつ、ヒューズエレメント材を挟み込むバネ性を高くすることができる。
【0061】
第1の電極51の一部(
図5の例では、爪部51a)を薄くする方法としては、例えば、圧延などの公知の金属加工の方法を用いることができる。
【0062】
<第2の電極>
第2の電極52は、第1実施形態の第2の電極2と同様な材料を用いることができる。 第2の電極52は、その一端52Aに、ヒューズエレメント材3を安定に支持するための爪部52a、52bを備えている。また、第2の電極52が備える爪部52aの先端52aA及び爪部52bの先端(不図示)はそれぞれ、ヒューズエレメント材3をより安定に支持可能とするために、ヒューズエレメント材3側に折れ曲がった屈曲部52aAa、屈曲部(不図示)を備えている。
第2の電極52が有する外部端子孔56は、第2実施形態の第2の電極42が有する外部端子孔46や第2の電極42AAが有する外部端子孔46Aと同様な構成とすることができる。
図5に示す保護素子500では、第2の電極52は外部端子孔56を有する構成であるが、外部端子孔を有さなくてもよい。
【0063】
図6に、
図5に示した保護素子500について、ヒューズエレメント材の切断後の模式図を示す。
図6(a)は斜視模式図、(b)は(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。
図6(b)中の符号xで示した方向は、S-S面に平行な方向であって、第1の電極51及び第2の電極52のそれぞれの爪部を除く部分51B及び部分52Bを結ぶ方向であり、一方、符号zで示した方向は、第1の電極51あるいは第2の電極52の厚み方向に平行な方向である。
図6の符号3’で示すものはヒューズエレメント材3が切断により分割されたものである。
【0064】
図5及び
図6で示す通り、第1の電極51において撓んでいた部分(換言すると、バネ性を担っている部分)である爪部51aはz方向において、ヒューズエレメント材3の切断前はS-S面よりも上側に位置していたが(
図5参照)、ヒューズエレメント材3の切断後はS-S面よりも下側に位置している(
図6参照)。換言すると、第1の電極51の爪部51aは、撓ませる力がない状態ではS-S面よりも下側に位置するものであるものであったが、ヒューズエレメント材3を上から押すように撓ませられていた。第1の電極51の爪部51aは、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、弾性復元力によって元の状態に戻ったものである。すなわち、第1の電極51の爪部51aは、
図6に示す状態が外部からの力が作用していない状態である。
同様に、第2の電極52において撓んでいた部分(換言すると、バネ性を担っている部分)である爪部52a、52bはz方向において、ヒューズエレメント材3の切断前はS-S面よりも下側に位置していたが(
図5参照)、ヒューズエレメント材3の切断後はS-S面よりも上側に位置している(
図6参照)。換言すると、第2の電極52の爪部52a、52bは、撓ませる力がない状態ではS-S面よりも上側に位置するものであるものが、ヒューズエレメント材3を下から押すように撓ませられていた。第2の電極52の爪部52a、52bは、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、弾性復元力によって元の状態に戻ったものである。すなわち、第2の電極52(第2の電極52の爪部を除く部分52B及び爪部52a、52b)は、
図6に示す状態が外部からの力が作用していない状態である。
【0065】
図5及び
図6の第1の電極51及び第2の電極52の撓ませ方(爪部51a及び爪部52a、52bのヒューズエレメント材3の切断前後の位置)は一例であって、本発明の効果を奏する限り、任意に設定できる。
【0066】
図7に、バネ性を有する第1の電極が2つの爪部を備えた保護素子600の模式図を示す。(a)は斜視模式図であり、(b)は過電流による遮断後の斜視模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0067】
具体的には、
図7(a)に示す保護素子600は、バネ性を有する第1の電極61と、バネ性を有する第2の電極52と、第1の電極61と第2の電極52との間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、撓ませた状態の第1の電極61と撓ませた状態の第2の電極52とによって挟み込まれて支持されている。第1の電極61は、その一端に、ヒューズエレメント材3を安定に支持するための爪部を2つ(61a、61b)備えている。
また、第1の電極61は、外部端子孔65を有する。
【0068】
図7(a)及び(b)で示す通り、第1の電極61において撓んでいた部分(バネ性を担っている部分)である爪部61a、61bは、厚み方向において、ヒューズエレメント材3の切断前は第1の電極61の爪部を除く部分61Bよりも上側に位置していたが(
図7(a)参照)、ヒューズエレメント材3の切断後は部分61Bよりも下側に位置している(
図7(b)参照)。換言すると、第1の電極61の爪部61a、61bは、撓ませる力がない状態では部分61Bよりも下側に位置するものであるものであったが、ヒューズエレメント材3を上から押すように撓ませられていた。第1の電極61の爪部61a、61bは、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、元の状態に戻ったものである。すなわち、第1の電極51の爪部51a、51bは、
図7(b)に示す状態が外部からの力が作用していない状態である。
同様に、第2の電極52において撓んでいた部分(バネ性を担っている部分)である爪部52a、52bはz方向において、ヒューズエレメント材3の切断前は第2の電極52の爪部を除く部分52Bよりも下側に位置していたが(
図7(a)参照)、ヒューズエレメント材3の切断後は部分52Bよりも上側に位置している(
図7(b)参照)。換言すると、第2の電極52の爪部52a、52bは、撓ませる力がない状態では部分52Bよりも上側に位置するものであるものであったが、ヒューズエレメント材3を下から押し上げるように撓ませられていた。第2の電極52の爪部52a、52bは、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、元の状態に戻ったものである。すなわち、第2の電極52(第2の電極52の爪部を除く部分52B及び爪部52a、52b)は、
図7(b)に示す状態が外部からの力が作用していない状態である。
【0069】
図8は、
図5に示した保護素子500について、ヒューズエレメント材3を含む部分をカバー7で覆った態様の模式図であり、8(a)は、上部カバー7A及び下部カバー7Bで覆った状態の斜視模式図であり、8(b)は、上部カバー7Aを外した状態の斜視模式図である。
【0070】
カバー7(上部カバー7A及び下部カバー7B)は、例えば、絶縁性の樹脂等によって作製されたものを用いることができる。
【0071】
カバー7(上部カバー7A及び下部カバー7B)は、他の実施形態に係る保護素子にも用いることができる。
【0072】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は斜視模式図、(b)は、(a)とは反対側から見た斜視模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0073】
第4実施形態に係る保護素子は、上記実施形態に係る保護素子に対して、ヒューズエレメント材を加熱する発熱体と、発熱体に通電する第3の電極とをさらに備える点が主な差異である。
図9に示す第4実施形態に係る保護素子は、
図7(a)で示した保護素子600に対して、ヒューズエレメント材を加熱する発熱体と、発熱体に通電する第3の電極とをさらに備えた例である。
【0074】
具体的には、
図9に示す保護素子700は、バネ性を有する第1の電極61と、バネ性を有する第2の電極52と、第1の電極61と第2の電極52との間に配置されたヒューズエレメント材3とを備え、ヒューズエレメント材3は、撓ませた状態の第1の電極61と撓ませた状態の第2の電極52とによって挟み込まれて支持されており、さらに、ヒューズエレメント材3を加熱する発熱体70と、発熱体70に通電する第3の電極80とを備える。
また、
図9に示す保護素子700では、第1の電極61、第2の電極52、及び、第3の電極80はそれぞれ、外部端子孔65、56、81を有する。
【0075】
図9に示す保護素子700では、発熱体70と第3の電極80とは導電性の連結部90によって接続されている。また、第3の電極80は、第1の電極61及び第2の電極52のいずれとも離間して、接続されていない。
【0076】
図9に示す保護素子700では、発熱体70は第1の電極61に接続されている。より詳細には、発熱体70に爪部61a、61bに接続されている。
発熱体70は、第2の電極52、又は、ヒューズエレメント材3のいずれかに接合された構成であってもよい。
【0077】
発熱体70は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、たとえばW、Mo、Ru等からなるものとすることができる。
【0078】
第3の電極80は、導電材料からなり、上述した第1の電極1と同様の材料を用いることができる。
【0079】
図9に示す保護素子700では、発熱体70と第3の電極80とを備え、第3の電極80が第1の電極61に接続された構成なので、第3の電極80と第1の電極61との間に電流を流して発熱体70を発熱させ、ヒューズエレメント材3を加熱することができる。それによって、ヒューズエレメント材3を切断することができる。
【0080】
図10に、保護素子700について、ヒューズエレメント材の切断後の斜視模式図を示す。
図10(a)及び
図10(b)はそれぞれ、
図9(a)、
図9(b)に対応する。
【0081】
図10(a)及び
図10(b)に示す通り、第1の電極61において撓んでいた部分である爪部61a、61bは、厚み方向において、ヒューズエレメント材3の切断前は第1の電極61の爪部を除く部分61Bよりも上側に位置していたが(
図9参照)、ヒューズエレメント材3の切断後は部分61Bよりも下側に位置している(
図10参照)。換言すると、第1の電極61の爪部61a、61bは、撓ませる力がない状態では61Bよりも下側に位置するものであるものが、ヒューズエレメント材3を上から押すように撓ませられていたが、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、元の状態に戻ったものである。
同様に、第2の電極52において撓んでいた部分である爪部52a、52bはz方向において、ヒューズエレメント材3の切断前は第2の電極52の爪部を除く部分52Bよりも下側に位置していたが(
図9参照)、ヒューズエレメント材3の切断後は第2の電極52の爪部を除く部分52Bよりも上側に位置している(
図10参照)。換言すると、第2の電極52の爪部52a、52bは、撓ませる力がない状態では第2の電極52の爪部を除く部分52Bよりも上側に位置するものであるものが、ヒューズエレメント材3を下から押し上げるように撓ませられていたが、ヒューズエレメント材3の切断によって撓ませる力がなくなって、元の状態に戻ったものである。
【0082】
ヒューズエレメント材3の切断前は、発熱体70はその下面が第1の電極61の爪部61a、61bに接触していたが、ヒューズエレメント材3の切断後は、発熱体70はその下面が第2の電極52の爪部52a、52bに接触するものとなっている。
更に、連結部90が第3の電極80から離間され、発熱体70への通電が途絶えることにより発熱体70の発熱は停止する。
【0083】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は斜視模式図、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0084】
第5実施形態に係る保護素子は、上記実施形態に係る保護素子に対して、第1の電極の厚み方向に第1の端子部材が重なるように接続され、また、第2の電極の厚み方向に第2の端子部材が重なるように接続されている点が主な差異である。
第1の端子部材、及び、第2の端子部材はそれぞれ、第1の電極、第2の電極の外部との接続のための剛性を補強し、電気抵抗を低減するものである。
【0085】
図11に示す保護素子800は、
図7(a)で示した保護素子700に対して、第1の電極61に第1の端子部材5が接続され、第2の電極52に第2の端子部材6が接続されている例である。
第1の端子部材5は、第1の電極61が備える外部端子孔65に対応する位置に外部端子孔を有する。また、第2の端子部材6は、第2の電極52が備える外部端子孔56に対応する位置に外部端子孔を有する。
【0086】
<第1の端子部材、第2の端子部材>
第1の端子部材、及び、第2の端子部材の材料としては、例えば、銅や黄銅などが挙げられる。
そのうち、剛性強化の観点では、黄銅が好ましい。
そのうち、電気抵抗低減の観点では、銅が好ましい。
第1の端子部材、及び、第2の端子部材の材料は、同じでも異なっていてもよい。
【0087】
第1の端子部材、及び、第2の端子部材を、第1の電極、第2の電極に接続する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、溶接による接合、リベット接合やネジ接合などの機械的接合などが挙げられる。
【0088】
第1の端子部材、及び、第2の端子部材の厚みとしては、限定するものではないが、目安を言えば、0.3~1.0mmとすることができる。
第1の端子部材、及び、第2の端子部材の厚みは、同じでも異なっていてもよい。
【0089】
図11に示す保護素子800では、第1の端子部材5、及び、第2の端子部材6はそれぞれ、第1の電極の爪部を除く部分61B、第2の電極の爪部を除く部分52Bの全面を覆うように設けられているが、剛性強化あるいは電気抵抗低減の少なくとも一方の効果を奏する限り、覆う範囲や覆う形状は任意に設定できる。
また、第1の電極の爪部を除く部分61B、第2の電極の爪部を除く部分52Bは、各々の外部端子孔56、65の位置まで覆う必要は無く、第1の端子部材5、及び、第2の端子部材6の一部と重なる様に接続されていても良い。
【0090】
図12は、
図11に示した保護素子800について、ヒューズエレメント材の切断後の模式図を示す。
図12(a)は斜視模式図、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0091】
第5実施形態に係る保護素子では、第1の電極、及び、第2の電極がそれぞれ、第1の端子部材、第2の端子部材を備えることにより、剛性が強化されるため、第1の電極、及び、第2の電極のそれぞれの全体の厚みを薄くすることができ、バネ性を調整しやすくなる。すなわち、第1の電極、及び、第2の電極の厚みの調整範囲が広くなる。
また、第1の電極、あるいは、第2の電極について、上述したようなヒューズエレメント材を挟み込んで支持する部分のみを薄くする構成において、第1の端子部材、第2の端子部材を備えることにより、その部分をさらに薄くすることが可能となる。
【0092】
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態に係る保護素子の模式図であり、(a)は斜視模式図、(b)は、(a)に示す矢印Aの方向から見た側面模式図である。上記実施形態と同じ符号を用いた部材は同じ構成を有するものであり、説明を省略する。また、上記実施形態と符号が異なっていても機能が同じ部材については説明を省略する場合がある。
【0093】
第6実施形態に係る保護素子は、第5実施形態に係る保護素子と比べると、ヒューズエレメント材を加熱する発熱体と、発熱体に通電する第3の電極と、発熱体と第3の電極を繋ぐ連結部90をさらに備え、第3の電極にもその厚み方向に第3の端子部材が重なるように接続されている点が主な差異である。
第3の端子部材は第1の端子部材や第2の端子部材と同様に、第3の電極の外部との接続のための剛性を補強し、電気抵抗を低減するものである。
【0094】
図13に示す保護素子900は、
図9(a)で示した保護素子700に対して、第1の電極61に第1の端子部材5が接続され、第2の電極52に第2の端子部材6が接続され、さらに、第3の電極80に第3の端子部材7が接続されている例である。
第1の端子部材5は、第1の電極61が備える外部端子孔65に対応する位置に外部端子孔を有する。また、第2の端子部材6は、第2の電極52が備える外部端子孔56に対応する位置に外部端子孔を有する。また、第3の端子部材7は、第3の電極80が備える外部端子孔81に対応する位置に外部端子孔を有する。
また、第1の電極の爪部を除く部分61B、第2の電極の爪部を除く部分52Bは、各々の外部端子孔56、65の位置まで覆う必要は無く、第1の端子部材5、及び、第2の端子部材6の一部と重なる様に接続されていても良い。更に、第3の電極80を廃止し、連結部90を直接第3の端子部材7に接続しても良い。
【0095】
<第3の端子部材>
第3の端子部材の材料は、第1の端子部材、及び、第2の端子部材の材料が異なる場合には、いずれかと同じでもよいし、いずれとも異なってもよい。また、第3の端子部材の材料、第1の端子部材の材料、及び、第2の端子部材の材料が同じでもよい。
【0096】
第3の端子部材を、第3の電極に接続する方法としては、第1の端子部材、あるいは、第2の端子部材を、第1の電極、第2の電極に接続する方法と同じ方法を用いることができる。
【0097】
第3の端子部材の厚みとしては、第1の端子部材、あるいは、第2の端子部材の厚みと同程度であり、それらの一方と同じでもよいし、異なっていてもよい。
第3の端子部材の厚み、第1の端子部材の厚み、及び、第2の端子部材の厚みがすべて同じでもよい。
【符号の説明】
【0098】
1、21、41、41AA、51、61 第1の電極
1a、21a、21b、41a、51a、61a、61b 爪部
2、42、42AA、52 第2の電極
2a、2b、42a、42b、52a、52b 爪部
3 ヒューズエレメント材
5 第1の端子部材
6 第2の端子部材
7 第3の端子部材
45、45A、46、46A、55、56 外部端子孔
100、200、400、400A、500、600、700、800、900 保護素子