(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】自動車投光器用照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 41/43 20180101AFI20240819BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20240819BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240819BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240819BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240819BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/153
F21S41/143
F21Y115:10
F21W102:155
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023113687
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-08-07
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】テヤング パク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シャーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト マンドル
(72)【発明者】
【氏名】キリアコス コスマス
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/085298(WO,A1)
【文献】特開2008-243432(JP,A)
【文献】特開2011-243362(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21Y 115/10
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称的な減光ライト用光分布(50)を生成するための自動車投光器用の照明装置であって、
前記減光ライト用光分布(50)は、光分布を測定するための測定スクリーンの水平線H-H及び垂直線V-Vの交点HVの下方の領域(51)に垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで均一な光分布を有し、
前記照明装置は、
・光を放射するための発光手段(100)、
・絞りエッジ(200a)を有する絞り(200)、但し、前記絞り(200)は、前記絞りエッジ(200a)が非対称的な減光ライト用光分布(50)の生成に寄与するよう、配置されており、前記絞り(200)は第1絞り部分(210)及び第2絞り部分(220)を含み、前記第2絞り部分(220)は前記第1絞り部分(210)に対し―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―より高くに配置されており、前記第1絞り部分(210)と前記第2絞り部分(220)は前記絞り(200)の結合部分(230)によって互いに結合されている、及び、
・光軸(A)を含む投影光学系(300)、但し、前記投影光学系(300)は、前記発光手段と組み合わせられた前記絞り(200)によって生成される減光ライト用光分布(50)を主放射方向(X)の方向において前記照明装置(10)の前方に結像するよう、構成されている、
を含むこと、
前記絞りの前記結合部分(230)は終端エッジ(241)を有する偏向面(240)を有し、前記終端エッジ(241)は前記絞り(200)の前記絞りエッジ(200a)の一部分を形成すること、
前記主放射方向(X)に対し直角に第1仮想軸(y)が配されており、前記第1仮想軸(y)は―照明装置が正確に組み込まれた状態で見て―水平面に配されていること、
前記偏向面(240)は平坦な面に沿って延在し、前記平坦な面は面ベクトル(A)を有し、前記面ベクトル(A)は、主放射方向(X)に見て前記第1
仮想軸(y)に対し1°~3°の、
又は2°の第1角(W1)を形成し、かつ、前記第1
仮想軸(y)に沿って見て、前記主放射方向(X)に対し1°~3°の、
又は2°の第2角(W2)を形成し、以って、前記偏向面(240)に入射する前記発光手段(100)の光の少なくとも一部分は前記交点HVの下方の領域(51)の方向へ前記垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで偏向されること
を特徴とする、照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記絞りエッジ(200a)は減光ライト用光分布(50)における非対称的な上り勾配の生成に寄与する非対称エッジを有すること、前記偏向面(240)の前記終端エッジ(241)は前記絞りエッジ(200a)の前記非対称エッジを形成すること
を特徴とする、照明装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記第1絞り部分(210)と前記第2絞り部分(220)は夫々―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―実質的に水平面に延在すること、前記第1絞り部分(210)と前記第2絞り部分(220)は第2仮想軸(z)に沿ってズレを有すること、前記第2仮想軸(z)は前記第1仮想軸(y)及び前記主放射方向(X)に対し直角に配されていること
を特徴とする、照明装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記偏向面(240)は、前記第2絞り部分(220)と部分的に境を接しかつ前記終端エッジ(241)と交差するサイドエッジ(242)を含むこと、前記サイドエッジ(242)は前記投影光学系(300)の光軸(A)に対し15°~20°の第3角(W3)を形成すること
を特徴とする、照明装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記主放射方向(X)に沿った前記結合部分(230)の縦方向の延在は、前記投影光学系(300)の焦点距離の少なくとも3分の1、
又は少なくとも4分の1であること
を特徴とする、照明装置。
【請求項6】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記発光手段(100)は複数の発光ダイオードから構成されていること
を特徴とする、照明装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記発光手段(100)は、1つ又は複数の前置光学
系を含むこと
を特徴とする、照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置において、
前記前置光学系は、光放射線を平行光線化するためのコリメータであること
を特徴とする、照明装置。
【請求項9】
請求項
1に記載の照明装置において、
前記減光ライト用光分布(50)における前記均一な光分布の領域(51)は、前記交点HVの下方において前記水平線H-Hに沿って少なくとも-4°~少なくとも+4°まで延在すること
を特徴とする、照明装置。
【請求項10】
請求項1~
9の何れかに記載の照明装置(10)を少なくとも1つ含む自動車投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年8月17日に出願された欧州特許出願第22190799.1号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、非対称的な減光ライト用光分布を生成するための自動車投光器(前照灯等)用の照明装置であって、
前記減光ライト用光分布は、光分布を測定するための測定スクリーンの水平線H-H及び垂直線V-Vの交点HVの下方の領域に垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで均一な光分布を有し、
前記照明装置は、
・光を放射するための発光手段、
・絞りエッジを有する絞り、但し、前記絞りは、前記絞りエッジが非対称的な減光ライト用光分布の生成に寄与するよう、配置されており、前記絞りは第1絞り部分及び第2絞り部分を含み、前記第2絞り部分は前記第1絞り部分に対し―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―より高くに(高くされて)配置されており、前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は前記絞りの結合部分によって互いに結合されている、及び、
・光軸を含む投影光学系、但し、前記投影光学系は、前記発光手段と組み合わせられた前記絞りによって生成される減光ライト用光分布を主放射方向の方向において前記照明装置の前方に結像するよう、構成されている、
を含む、照明装置に関する。
【0003】
更に、本発明は、少なくとも1つの本発明の照明装置を含む自動車投光器(前照灯等)に関する。
【背景技術】
【0004】
通常、減光ライト用光分布を生成するための絞りエッジを有する絞りは、照明装置において、その上側(上面)が発光手段によって放射される光を反射及び偏向するよう、構成されている。
【0005】
とりわけ絞りの結合部分は、光が投影光学系へ最早偏向されず、従って減光ライト用光分布の生成ないし形成のために欠落する(使用されない)よう、当該光を偏向させる(よう構成されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE 10 2008 015246 A1
【文献】US 2008/239741 A1
【文献】EP 3 211 292 A1
【文献】US 2010/309678 A1
【文献】US 2013/051054 A1
【文献】EP 3 361 146 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、交点HVの周囲の明暗境界の下方における即ち非対称的な上り勾配の下方ないし減光ライト用光分布の上り勾配の始端におけるまさにその領域において、交点HVの下方にシャドー領域(暗い領域)をもたらす不均一性(非一様性)が生じる。
【0008】
概念「均一(一様)な(homogen)」は、本発明との関連においては、光分布における明るい領域と暗い領域との間の跳躍的な変化の欠如を意味する。
【0009】
本発明の課題は、改善された照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点により、非対称的な減光ライト用光分布を生成するための自動車投光器用の照明装置であって、
前記減光ライト用光分布は、光分布を測定するための測定スクリーンの水平線H-H及び垂直線V-Vの交点HVの下方の領域に垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで均一な光分布を有する、照明装置が提供される。
前記照明装置は、
・光を放射するための発光手段、
・絞りエッジを有する絞り、但し、前記絞りは、前記絞りエッジが非対称的な減光ライト用光分布の生成に寄与するよう、配置されており、前記絞りは第1絞り部分及び第2絞り部分を含み、前記第2絞り部分は前記第1絞り部分に対し―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―より高くに配置されており、前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は前記絞りの結合部分によって互いに結合されている、及び、
・光軸を含む投影光学系、但し、前記投影光学系は、前記発光手段と組み合わせられた前記絞りによって生成される減光ライト用光分布を主放射方向の方向において前記照明装置の前方に結像するよう、構成されている、
を含む。
前記照明装置において、
前記絞りの前記結合部分は終端エッジを有する偏向面を有し、前記終端エッジは前記絞りの前記絞りエッジの一部分を形成すること、
前記主放射方向に対し直角に第1仮想軸が配されており、前記第1仮想軸は―照明装置が(自動車に)正確に組み込まれた状態で見て―水平面に配されていること、
前記偏向面は平坦な面(Ebene)に沿って延在し、前記平坦な面は面ベクトルを有し、前記面ベクトルは、主放射方向に見て前記第1(仮想)軸に対し1°~3°の、又は2°の第1角を形成し、かつ、前記第1(仮想)軸に沿って見て、前記主放射方向に対し1°~3°の、又は2°の第2角を形成し、以って、前記偏向面に入射する前記発光手段の光の少なくとも一部分は前記交点HVの下方の領域の方向へ前記垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで偏向されること
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、本発明の照明装置を少なくとも1つ含む自動車投光器が提供される(形態10)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1に記載の照明装置において、
前記絞りエッジは減光ライト用光分布における非対称的な上り勾配の生成に寄与する非対称エッジを有すること、前記偏向面の前記終端エッジは前記絞りエッジの前記非対称エッジを形成することが好ましい。
(形態3)形態1に記載の照明装置において、
前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は夫々―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―実質的に水平面に延在すること、前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は第2仮想軸に沿ってズレを有すること、前記第2仮想軸は前記第1仮想軸及び前記主放射方向に対し直角に配されていることが好ましい。
(形態4)形態1に記載の照明装置において、
前記偏向面は、前記第2絞り部分と部分的に境を接しかつ前記終端エッジと交差するサイドエッジを含むこと、前記サイドエッジは前記投影光学系の光軸に対し15°~20°の第3角を形成することが好ましい。
(形態5)形態1に記載の照明装置において、
前記主放射方向沿った前記結合部分の縦方向の延在は、前記投影光学系の焦点距離の少なくとも3分の1、又は少なくとも4分の1であることが好ましい。
(形態6)形態1に記載の照明装置において、
前記発光手段は複数の発光ダイオードから構成されていることが好ましい。
(形態7)形態1に記載の照明装置において、
前記発光手段は、1つ又は複数の前置光学系を含むことが好ましい。
(形態8)形態7に記載の照明装置において、
前記前置光学系は、光放射線を平行光線化するためのコリメータであることが好ましい。
(形態9)形態1に記載の照明装置において、
前記減光ライト用光分布における前記均一な光分布の領域は、前記交点HVの下方において前記水平線H-Hに沿って少なくとも-4°~少なくとも+4°まで延在することが好ましい。
(形態10)上記本発明の第2の視点参照。
【0012】
上記の課題は、絞りの結合部分は終端エッジを有する偏向面を有し、該終端エッジは絞りの絞りエッジの一部分を形成すること、
主放射方向に対し直角に第1仮想軸が配されており、第1仮想軸は―照明装置が(自動車に)正確に組み込まれた状態で見て―水平面に配されていること、
偏向面は平坦な面に沿って(平坦な面として)延在し、該平坦な面は面ベクトルを有し、該面ベクトルは、主放射方向に見て第1(仮想)軸に対し1°~3°の、好ましくは2°の第1角を形成し、かつ、第1(仮想)軸に沿って見て、主放射方向に対し1°~3°の、好ましくは2°の第2角を形成し、以って、偏向面に入射する発光手段の光の少なくとも一部分は交点HVの下方の領域の方向へ垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで偏向されることによって解決される。
【0013】
主放射方向に沿った結合部分の縦方向の延在(長手方向の伸びないし長さ)は投影光学系の焦点距離の3分の1、好ましくは4分の1であるよう構成可能である。
【0014】
対象(問題)となる記述における値(数値)の範囲についてのデータ(情報ないし開示)はすべて、これらの範囲がその任意のかつ全ての部分領域をも含むものとして理解されるべきである。例えば、表示1~10は、下限1と上限10との間にある全ての部分領域が含まれている、即ち1以上の下限から出発し10以下の上限で終わる全ての部分領域、例えば1~1.7、又は3.2~8.1、又は5.5~10が含まれていると理解されるべきである。
【0015】
「主放射方向」とは、発光手段がその指向性(方向作用)の故に最も強いないし最も多くの光を放射する方向と理解されるべきものである。
【0016】
有利には、主放射方向は投影光学系の光軸と一致する。
【0017】
絞りエッジは減光ライト用光分布における非対称的な上り勾配の生成に寄与する非対称エッジを有し、偏向面の終端エッジは絞りエッジの非対称エッジを形成することが可能である。
【0018】
第1絞り部分と第2絞り部分は夫々―照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―実質的に水平面に延在し、第1絞り部分と第2絞り部分は第2仮想軸に沿ってズレを有し、第2仮想軸は第1仮想軸及び主放射方向に対し直角に配されることが可能である。
【0019】
発光手段複数の発光ダイオードから構成されることが可能である。
【0020】
発光手段は、1つ又は複数の前置光学系、好ましくは光放射線(放射された光線)を平行光線化するためのコリメータ、を含むことが可能である。
【0021】
減光ライト用光分布における均一な光分布の領域は、交点HVの下方において水平線H-Hに沿って少なくとも-4°~少なくとも+4°まで延在することが可能である。
【0022】
上記の課題は、本発明の照明装置を少なくとも1つ含む自動車投光器(前照灯等)によっても解決される。
【0023】
以下に、本発明は例示的な図面を用いて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】発光手段、絞り及び投影光学系を含む例示的照明装置の一例の側面図。発光手段は絞りとの組み合わせで減光ライト(ロービーム)用光分布を生成し、該光分布は、投影光学系によって主放射方向の方向において照明装置の前方に結像される。
【
図2】
図1の照明装置の後部側の(主放射方向の方向に沿って発光手段側の)上方から見た斜視図。
【
図3】
図1の例の絞りの斜視図。絞りは減光ライト用光分布の生成に寄与する絞りエッジを有する。絞りは結合部分によって互いに結合されている第1及び第2絞り部分を有する。結合部分は、当該偏向面に入射する発光手段の光の少なくとも一部分を投影光学系へと偏向するよう構成(調整)された偏向面を有する。
【
図4】後方から見た
図3の絞りの斜視図。偏向面は、主放射方向と、主放射方向に対し直角をなしかつ水平面内にある第1仮想軸とに対し、夫々所定の角度をなす面ベクトルを有する面に沿って延在する。
【
図5】主放射方向において見た、面ベクトルと第1仮想軸とによって閉じられる(形成される)第1角。
【
図6】第1仮想軸に沿って見た、面ベクトルと主放射方向とによって囲まれる(形成される)第2角。主放射方向は(紙面)左側、即ち、右手直交座標系(この場合主放射方向はx軸に相当する)を基準とし、y軸の反対側ないしy軸の正方向の反対側に見て(紙面)左側を向いている。
【
図7】従来技術の照明装置の一例によって生成される減光ライト用光分布の一例。交点HVの(紙面)下側の領域は不均一である(一様でない)。
【
図8】本発明の照明装置の一例によって生成される減光ライト用光分布の一例。交点HVの(紙面)下側の領域は均一(一様)である。
【実施例】
【0025】
まず、別個に説明される複数の実施例(実施形態)において同じ部分は同じ図面参照符号ないし同じ構成要素名が付記されており、明細書全体に含まれている開示事項は同じ図面参照符号ないし同じ構成要素名を有する同じ部分に対し目的に適う仕方で適用可能であることに留意すべきである。更に、明細書において選択された、例えば上、下、横等のような位置の規定は直接的に説明されたないしは表示された図に関連付けられたものであり、これらの位置の規定は、位置が変更されれば、新たな位置に対し目的に適う仕方で適用可能である。
【0026】
図1は、非対称的な減光ライト(ロービーム)用光分布50を生成するための自動車投光器(前照灯等)のための例示的な照明装置10の一例を示す。減光ライト用光分布50は、光分布を測定するための測定スクリーンの水平線H-Hと垂直線V-Vの交点HVの下方の、垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°までの領域51において均一(一様)な光分布を有する。(
図8)
【0027】
照明装置10は光を放射するための発光手段100を含む。図示の例では、発光手段100は複数の発光ダイオードとして構成されている。発光手段は他の態様で構成可能であることは明らかである。とりわけ、発光手段100は、マトリックス状に左右に及び/又は上下に配置された多数の発光ダイオードを有することができる。発光ダイオード(複数)は、個別にオンオフ切替及び/又は調光(明るさ調節)が可能であるよう、個別に制御可能であることが好ましい。発光ダイオード(複数)の制御は(例えば制御装置によって)自動的に実行されることが好ましい。
【0028】
更に、照明装置10は、絞りエッジ200aを有する絞り200を含む。絞り200は、絞りエッジ200aが非対称的減光ライト用光分布50の生成に寄与するよう、配置されている。
【0029】
絞り200は、とりわけ
図2において見出すことができる第1絞り部分210及び第2絞り部分220を含む。第2絞り部分220は、第1絞り部分210に対し―照明装置が自動車に正確に(適切に)組み込まれた状態で見て―より高い(高くされた)位置に配置されている。第1絞り部分210と第2絞り部分220は絞り200の結合部分230によって互いに結合されている。
【0030】
更に、照明装置10は、発光手段と組み合わせられた絞り200によって生成された減光ライト用光分布50を主放射方向Xの方向において照明装置10の前方に結像するよう構成(調整)された投影光学系300を含む。投影光学系300は、図示の例では、投影レンズとして構成されている。投影レンズないし投影光学系300は、照明装置10の内部における投影光学系300の合焦領域(例えば焦点面)の領域に生成される減光ライト用光分布を有する画像を照明装置10の前方に投影する。
【0031】
絞り200は堅固に構成されており、絞りエッジ200aは投影光学系300の合焦領域(焦点面ないし焦点又は焦点雲(Brennpunktwolke)ないしペッツバール面(Petzval-Flaeche))に配置されている。
【0032】
図3は絞り200の斜視図であり、絞りの結合部分230は終端エッジ241を有する偏向面240を有し、該終端エッジ241は絞り200の絞りエッジ200aの一部分を形成することが分かる。
【0033】
図面において、とりわけ
図3において見出すことができるように、絞り200の絞りエッジ200aは減光ライト用光分布50における非対称的な上り勾配の生成に寄与する非対称エッジを有し、偏向面240の終端エッジ241は絞りエッジ200aのこの非対称エッジを形成する。
【0034】
第1絞り部分210と第2絞り部分220は夫々―照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―実質的に水平面に延在し、第1絞り部分210と第2絞り部分220は第2仮想軸zに沿ってズレを有し、第2仮想軸zは第1仮想軸y及び主放射方向Xに対し直角に配されている。更に、偏向面240は、第2絞り部分220と部分的に境を接しかつ終端エッジ241を切る(と交差する)サイドエッジ242を含み、サイドエッジ242は投影光学系300の光軸Aに対し15°~20°の第3角W3を形成する。この場合、絞り200は光軸A内にあり、投影光学系300は、光軸Aが測定スクリーンの交点HVと交差するよう、配置されている。
【0035】
主放射方向Xに関して左側の部分ないし第1絞り部分210は、既述のように、右側部分ないし第2絞り部分220の僅か下方に配されている。結合部分230は、両部分210、220間に何らかのステップ(段部)ないし斜めの移行部が形成されるように、両部分210、220を互いに結合する。
【0036】
主放射方向に沿った結合部分230の縦方向の延在(長手方向の伸びないし長さ)は、図示の例では、投影光学系300の焦点距離の3分の1である。
【0037】
左側部分の前方辺縁部ないし第1絞り部分210のエッジによって、投影光学系300による結像作用による減光ライト用光分布の生成の際に、非対称的な明暗境界のより高い(高くされた)部分が、右側通行の場合のそれ自身の通行側(順行車線側)に生成される。これに応じて、第2絞り部分220の前方辺縁部ないしエッジによって、非対称的な明暗境界のより低い(低くされた)部分が対向車線側に生成される。
【0038】
主放射方向Xに対し直角に第1仮想軸yが配されており、第1仮想軸yは―照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―水平面に配されているが、これについては例えば
図2又は
図4に見出すことができる。
【0039】
偏向面240は平坦な面に沿って(平坦面をなして)延在し、該平坦な面は、
図4において見出すことができるように、面ベクトルAを有する。面ベクトルAは、主放射方向Xに見て、第1軸yに対し1°~3°の、好ましくは2°の第1角W1を形成するが、これについては
図5に示されている。
【0040】
更に、面ベクトルAは、偏向面240に入射する発光手段100の光の少なくとも一部分を交点HVの下方の領域51の方向へ垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで偏向するよう、第1軸yに沿って(の方向から)見て主放射方向Xに対し1°~3°の、好ましくは2°の第2角W2を形成する。
図6において見出すことができるように、主放射方向Xは(紙面)左側、即ち、右手直交座標系(この場合主放射方向はx軸に相当する)を基準とし、y軸の反対側ないしy軸の正方向の反対側に見て(紙面)左側を向いている。
【0041】
図7は、従来技術の照明装置の一例によって生成される減光ライト用光分布50の一例を示すが、交点HVの(紙面)下側の領域51は不均一である(一様でない)ことが分かる。領域51は、減光ライト用光分布50において、交点HVの下方で水平線H-Hに沿って少なくとも-3°から少なくとも+3°まで延在し得る。
【0042】
図8は本発明の照明装置10の一例によって生成される減光ライト用光分布50の一例を示し、交点HVの(紙面)下側の領域51は
図7の場合と比べて均一(一様)であることが分かる。
【0043】
上記の実施形態の全部又は一部は以下の付記として記載可能であるが、それらに限定されない。
[付記1]非対称的な減光ライト用光分布を生成するための自動車投光器用の照明装置。
前記減光ライト用光分布は、光分布を測定するための測定スクリーンの水平線H-H及び垂直線V-Vの交点HVの下方の領域に垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで均一な光分布を有する。
前記照明装置は、
・光を放射するための発光手段、
・絞りエッジを有する絞り、但し、前記絞りは、前記絞りエッジが非対称的な減光ライト用光分布の生成に寄与するよう、配置されており、前記絞りは第1絞り部分及び第2絞り部分を含み、前記第2絞り部分は前記第1絞り部分に対し―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―より高くに配置されており、前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は前記絞りの結合部分によって互いに結合されている、及び、
・光軸を含む投影光学系、但し、前記投影光学系は、前記発光手段と組み合わせられた前記絞りによって生成される減光ライト用光分布を主放射方向の方向において前記照明装置の前方に結像するよう、構成されている、
を含む。
前記絞りの前記結合部分は終端エッジを有する偏向面を有し、前記終端エッジは前記絞り前記絞りエッジの一部分を形成する。
前記主放射方向に対し直角に第1仮想軸が配されており、前記第1仮想軸は―照明装置が(自動車に)正確に組み込まれた状態で見て―水平面に配されている。
前記偏向面は平坦な面に沿って延在し、前記平坦な面は面ベクトルを有し、前記面ベクトルは、主放射方向に見て前記第1(仮想)軸に対し1°~3°の、好ましくは2°の第1角を形成し、かつ、前記第1(仮想)軸に沿って見て、前記主放射方向に対し1°~3°の、好ましくは2°の第2角を形成し、以って、前記偏向面に入射する前記発光手段の光の少なくとも一部分は前記交点HVの下方の領域の方向へ前記垂直線V-Vに沿って少なくとも-3°まで偏向される。
[付記2]上記の、とりわけ付記1に記載の照明装置において、
前記絞りエッジは減光ライト用光分布における非対称的な上り勾配の生成に寄与する非対称エッジを有する;前記偏向面の前記終端エッジは前記絞りエッジの前記非対称エッジを形成する。
[付記3]上記の、とりわけ付記1又は2に記載の照明装置において、
前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は夫々―前記照明装置が自動車に正確に組み込まれた状態で見て―実質的に水平面に延在する;前記第1絞り部分と前記第2絞り部分は第2仮想軸に沿ってズレを有すること、前記第2仮想軸は前記第1仮想軸及び前記主放射方向に対し直角に配されている。
[付記4]上記の、とりわけ付記1~3の何れかに記載の照明装置において、
前記偏向面は、前記第2絞り部分と部分的に境を接しかつ前記終端エッジと交差するサイドエッジを含む;前記サイドエッジは前記投影光学系の光軸に対し15°~20°の第3角を形成する。
[付記5]上記の、とりわけ付記1~4の何れかに記載の照明装置において、
前記主放射方向に沿った前記結合部分の縦方向の延在(Laengserstreckung)は、前記投影光学系の焦点距離の少なくとも3分の1、好ましくは少なくとも4分の1である。
[付記6]上記の、とりわけ付記1~5の何れかに記載の照明装置において、
前記発光手段は複数の発光ダイオードから構成されている。
[付記7]上記の、とりわけ付記1~6の何れかに記載の照明装置において、
前記発光手段は、1つ又は複数の前置光学系、好ましくは光放射線を平行光線化するためのコリメータ、を含む。
[付記8]上記の、とりわけ付記1~4の何れかに記載の照明装置において、
前記減光ライト用光分布における前記均一な光分布の領域は、前記交点HVの下方において前記水平線H-Hに沿って少なくとも-4°~少なくとも+4°まで延在する。
[付記9]付記1~8の何れかに記載の照明装置を少なくとも1つ含む自動車投光器。
【0044】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0045】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0046】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【符号の説明】
【0047】
10 照明装置
50 減光ライト用光分布
51 領域
100 発光手段
200 絞り
200a 絞りエッジ
210 第1絞り部分
220 第2絞り部分
230 結合部分
240 偏向面
241 終端エッジ
242 サイドエッジ
300 投影光学系
X 主放射方向
y 仮想軸
A 面ベクトル
W1 第1角
W2 第2角
W3 第3角