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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】光周波数の遠隔校正システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20240819BHJP
   G01J 9/02 20060101ALI20240819BHJP
   H01S 3/137 20060101ALI20240819BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G02F1/01 B
G01J9/02
H01S3/137
H01S3/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023129744
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310017828
【氏名又は名称】株式会社マグネスケール
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004426(JP,A)
【文献】特開2012-038833(JP,A)
【文献】特開2013-072848(JP,A)
【文献】特開2014-190759(JP,A)
【文献】特開2015-005601(JP,A)
【文献】特開2016-211965(JP,A)
【文献】米国特許第09287993(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第03327411(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G01J 3/00 - 4/04
G01J 7/00 - 9/04
H01S 3/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定し、校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、を備え、
前記マスター校正部は、前記光伝送部を介して伝送された前記スレーブ校正部の被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正するように構成されるとともに、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項2】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項3】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、位相同期により光周波数コムの周波数安定度が転送されたオフセットレーザが含まれる前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項4】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能、前記被校正光源の出力光の光周波数に光変調器による周波数変調を与えるとともに、時々刻々と前記被校正光源ごとに異なる変調周波数の変化を与える符号化機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、前記被校正光源の出力光の符号化に用いたRF信号をミキシングして復号化することによって選択的に光周波数を測定し、校正する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項5】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能、前記被校正光源の出力光の光周波数に光変調器による周波数変調を与えるとともに、時々刻々と前記被校正光源ごとに異なる変調周波数の変化を与える符号化機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、位相同期により光周波数コムの周波数安定度が転送されたオフセットレーザが含まれる前記光周波数コム装置を用いて校正する機能を有し、校正時に前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、前記被校正光源の出力光の符号化に用いたRF信号をミキシングして復号化することによって選択的に光周波数を測定し、校正する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項6】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能、前記被校正光源の出力光の光周波数に光変調器による周波数変調を与えるとともに、時々刻々と前記被校正光源ごとに異なる変調周波数の変化を与える符号化機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、前記被校正光源の出力光の符号化に用いたRF信号をミキシングして復号化することによって選択的に光周波数を測定し、校正する機能、前記復号化を同時に複数の前記被校正光源の光周波数を校正するために実行する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項7】
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、
前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部と、を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能、前記被校正光源の出力光の光周波数に光変調器による周波数変調を与えるとともに、時々刻々と前記被校正光源ごとに異なる変調周波数の変化を与える符号化機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、位相同期により光周波数コムの周波数安定度が転送されたオフセットレーザが含まれる前記光周波数コム装置を用いて校正する機能を有し、校正時に前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を言用いて、前記被校正光源の出力光の符号化に用いたRF信号をミキシングして復号化することによって選択的に光周波数を測定し、校正する機能、前記復号化を同時に複数の前記被校正光源の光周波数を校正するために実行する機能、校正結果を前記管理部に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システム。
【請求項8】
前記管理部は、前記マスター校正部から受信した校正結果を管理する機能を有している、請求項2から7に記載したいずれか1項の光周波数の遠隔校正システム。
【請求項9】
一以上のスレーブ校正部にそれぞれ備えられた一以上の被校正光源の光周波数を、前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されたマスター校正部に備えられた光周波数コム装置を用いて校正する方法であって、
前記スレーブ校正部と前記マスター校正部とを光伝送部により接続し、
前記スレーブ校正部に設けられた被校正光源の出力光を、前記光伝送部を介して前記マスター校正部に伝送し、
前記マスター校正部では、伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正するとともに、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化するようにした、光周波数の遠隔校正方法。
【請求項10】
一以上の被校正光源、及び該被校正光源の光周波数を測定する光周波数測定部を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置、及び光周波数を校正する光周波数校正部を備えたマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、を備え、
前記マスター校正部は、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有するとともに、前記光周波数コム装置の出力光を、前記伝送部を介して前記スレーブ校正部に伝送するように構成され、
前記スレーブ校正部は、前記光周波数測定部を用いて、該スレーブ校正部に設置された被校正光源の出力光と、該スレーブ校正部に伝送された前記光周波数コム装置の出力光のビート信号の電気的な出力に基づいて、該被校正光源の出力光の光周波数を測定し、得られたビート信号のRF周波数信号を、前記伝送部を介して前記マスター校正部に伝送するように構成され、
前記マスター校正部は、更に、前記スレーブ校正部から前記伝送部を介して伝送されたビート信号のRF周波数信号に基づいて、前記周波数校正部により、前記被校正光源の出力光の周波数を校正するように構成された光周波数の遠隔校正システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレーブ校正部に設けられた被校正光源の光周波数を、マスター校正部に設けられた光周波数コム装置を用いて校正する校正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光源の光周波数を高精度に計測・校正する技術として、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光を干渉させて生じるビート信号を用いる方法が広く利用されている。その代表的な例として、特許文献1があげられる。特許文献1では、単一の被測定光源の出力光を、被測定光源に近接した光周波数コム装置の出力光と干渉させて得られるビート信号の周波数と、光周波数コム装置の繰り返し周波数および搬送波-包絡線オフセット(CEO)周波数と、被測定光源の光周波数を波長計で測定して求めたモード次数を基に、光周波数を高精度に求める手段を提供している。特許文献2においては光周波数コムに同期されたオフセットレーザと被測定光源のビート信号も追加し、波長計を用いることなく校正に利用する方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-5601号公報
【文献】特開2014-190759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2を始めとして、これまでは光周波数コム装置と同一の部屋内に設置された1個の被校正光源の光周波数を校正する事を前提とした運用が想定されており、遠隔地に設置された被校正光源を遠隔校正する校正方式、更には、複数の遠隔地に設置された複数の被校正光源を選択的にあるいは同時に校正可能な分散型の校正方式についてはこれまで議論がされてこなかった。
【0005】
一方で近年の産業界、とくに製造業では、工場設備の遠隔命令/操作や、設備/検査データのデジタル化を進め、生産性を極限まで高める”Industry 4.0”へのパラダイムシフトを通じて企業の収益性・国際競争力を高めることの重要性が増している。
【0006】
ところが、上記従来の光周波数の校正システムでは、校正対象の光源を、使用している設備から取り外して、校正を行うための光周波数コム装置を備えた校正部まで搬送した後、校正作業を行う必要があり、校正のための作業に加えて、校正対象の光源の取り外し、取り付け、搬送といった付随的な作業が必要であり、校正に要するリードタイムが長いという問題があった。具体的には、校正対象の光源を使用している設備から取り外して、校正を行うための光周波数コム装置を備えた校正部まで搬送した後、当該光周波数コム装置の付近に設置し、その後、光源のウォームアップを行って校正を実行する。そして、校正を終了すると、校正対象の光源を再び取り外して、元の設備まで搬送し、当該設備に取り付け直した後、光源のウォームアップと光学調整を行い、この後、設備を再稼働するといった手順が実行される。
【0007】
このように、従来の光周波数校正システムでは、工場の生産性が損なわれる側面があった。また、被校正光源が複数存在する場合には、これらを一つ一つ手作業で取り外し、搬送し、取り付けし、ウォームアップする必要があるため、人件費と設備のダウンタイムの増加を招くことになる。さらに現行の光周波数コムを用いた校正方式では、光源1個を校正するために長時間の測定が必要であり、被校正器の数だけ光周波数コム装置を稼働させる必要がある。
【0008】
さらに技術的な問題として、波長633nm帯の波長計量器の校正対象として一般的なヨウ素安定化ヘリウム・ネオン(HeNe)レーザや軸ゼーマン型HeNeレーザの光出力が0.1mWオーダーと低いことも校正システムの大規模化に対する障害となる。
【0009】
順を追って説明すると、HeNeレーザの出力光の波長は633nm付近であるが、エルビウムドープファイバレーザをオシレーターに用いる光周波数コムの出力光の中心波長は1550nm付近と、633nmから離れており、非線形光ファイバによる非線形光学効果などを用いてこの光周波数コムの帯域を波長633nmまで拡大させても縦モード1本の光出力は数nWオーダーと低い数値を取りうる。
【0010】
このため、この光周波数コムの縦モード1本と被校正光源の出力光のビート周波数を、光検出器で光電変換して測定する時に、ビート信号の信号対雑音比(S/N比)が低く、このS/N比が30dB以上はないと周波数カウンタでスリップ・サイクルという問題が生じ、正しく周波数を測定できないという技術的背景も手伝って周波数測定を困難にしている。
【0011】
よって、光周波数コム装置の光出力を空間的に分割して各被校正レーザの出力光とそれぞれビート信号を取るといった校正システムの拡張が実行できず、光周波数コム装置の出力光のフルパワーを用いてようやくHeNeレーザ1個の校正が技術的に可能になるという現状を鑑みると、同時に多数の被校正レーザを校正できず、複数の光源の校正を同時に実行することはできない。
【0012】
本発明は、以上の背景の下でなされたものであり、被校正光源の出力光の光周波数を、被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設された光周波数コム装置を用いて遠隔校正可能な校正システムの提供を一の目的とし、複数の遠隔地に設置された複数の被校正光源を選択的にあるいは同時に校正可能な分散型の校正システムの提供を他の一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置を備え、該光周波数コム装置を用いて、前記スレーブ校正部に備えられた被校正光源の光周波数を測定し、校正するマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、を備え、
前記マスター校正部は、前記光伝送部を介して伝送された前記スレーブ校正部の被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正するように構成されるとともに、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している、光周波数の遠隔校正システムに係る。
【0014】
この遠隔校正システムによれば、スレーブ校正部とマスター校正部とが光伝送部を介して接続されているので、スレーブ校正部に設けられた被校正光源の光周波数を校正するために、被校正光源をマスター校正部の光周波数コム装置の近傍にまで搬送して設置する必要がなく、被校正光源をスレーブ校正部に設置したまま、その校正を行うことができる。
【0015】
したがって、本発明に係る遠隔校正システムによれば、被校正光源の光周波数の校正を短時間で効率よく行うことができる。
【0016】
尚、この態様(第1の態様)の遠隔校正システムにおいて、前記光周波数コム装置は、位相同期により光周波数コムの周波数安定度が転送されたオフセットレーザを含む態様を採ることができる。また、前記光伝送部は光ファイバや光導波路といった光伝送路から構成することができる。
【0017】
また、上記第1の態様の遠隔校正システムは、更に、前記スレーブ校正部の稼働状況を受信する機能、前記被校正光源の校正命令を前記マスター校正部に送信する機能、及び校正結果を前記マスター校正部から受信する機能を有する管理部を備え、
前記スレーブ校正部は、稼働状況を前記管理部に送信する機能、前記マスター校正部からの光路切替信号を受信する機能、前記被校正光源の出力光の光路を切り替えることにより光伝送路に結合させる機能を有し、
前記マスター校正部は、校正命令を前記管理部から受信して光路切替命令を前記スレーブ校正部に送信し、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正する機能、校正結果を前記管理室に送信する機能、更に、GPS経由で時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有している態様(第2の態様)を採ることができる。
【0018】
また、上記第2の態様の遠隔校正システムは、
そのスレーブ校正部が、前記被校正光源の出力光の光周波数に光変調器による周波数変調を与えるとともに、時々刻々と前記被校正光源ごとに異なる変調周波数の変化を与える符号化機能を更に有し、
前記マスター校正部が、前記光周波数コム装置の出力光と前記被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力に対して、前記複数の被校正光源のうち特定の被校正光源の出力光の符号化に用いたRF信号をミキシングして復号化することによって選択的に光周波数を測定し、校正する機能を更に有する態様(第3の態様)を採ることができる。
【0019】
また、前記第2の態様又は第3の態様の遠隔校正システムは、
その前記マスター校正部が、前記スレーブ校正部から前記光伝送路を介して伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、位相同期により光周波数コムの周波数安定度が転送されたオフセットレーザが含まれる前記光周波数コム装置を用いて校正する機能を有する態様(第4の態様又は第5の態様)を採ることができる。
【0020】
また、上記第3の態様の遠隔校正システムは、
その前記マスター校正部が、前記復号化を同時に複数の前記被校正光源の光周波数を校正するために実行する機能を有する態様(第6の態様)を採ることができる。
【0021】
また、上記第5の態様の遠隔校正システムは、
その前記マスター校正部が、前記復号化を同時に複数の前記被校正光源の光周波数を校正するために実行する機能を有する態様(第7の態様)を採ることができる。
【0022】
また、本発明は、一以上のスレーブ校正部にそれぞれ備えられた一以上の被校正光源の光周波数を、前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されたマスター校正部に備えられた光周波数コム装置を用いて校正する方法であって、
前記スレーブ校正部と前記マスター校正部とを光伝送部により接続し、
前記スレーブ校正部に設けられた被校正光源の出力光を、前記光伝送部を介して前記マスター校正部に伝送し、
前記マスター校正部では、伝送された前記被校正光源の出力光の光周波数を、前記光周波数コム装置を用いて校正する際に、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力を用いて、光周波数を測定し、校正するとともに、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化するようにした、光周波数の遠隔校正方法に係る。
【0023】
また、本発明は、一以上の被校正光源、及び該被校正光源の光周波数を測定する光周波数測定部を備えたスレーブ校正部の一以上と、
前記被校正光源の設置された場所から離れた場所に配設されるとともに、光周波数コム装置、及び光周波数を校正する光周波数校正部を備えたマスター校正部と、
前記スレーブ校正部とマスター校正部とを接続する光伝送部と、を備え、
前記マスター校正部は、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、前記光周波数コム装置の動作周波数を安定化する機能を有するとともに、前記光周波数コム装置の出力光を、前記伝送部を介して前記スレーブ校正部に伝送するように構成され、
前記スレーブ校正部は、前記光周波数測定部を用いて、該スレーブ校正部に設置された被校正光源の出力光と、該スレーブ校正部に伝送された前記光周波数コム装置の出力光のビート信号の電気的な出力に基づいて、該被校正光源の出力光の光周波数を測定し、得られたビート信号のRF周波数信号を、前記伝送部を介して前記マスター校正部に伝送するように構成され、
前記マスター校正部は、更に、前記スレーブ校正部から前記伝送部を介して伝送されたビート信号のRF周波数信号に基づいて、前記周波数校正部により、前記被校正光源の出力光の周波数を校正するように構成された、光周波数の遠隔校正システムに係る。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る遠隔校正システムによれば、スレーブ校正部に設けられた設備から被校正光源を取り外すことなく、当該被校正光源を校正することができる。被校正光源の校正に当たり、設備を稼働状態から校正状態へ、校正状態から稼働状態へとシームレスに移行させることができ、従来問題であった被校正光源の取り外し、搬送、設置、ウォームアップといったダウンタイムを除去し、工場の生産性の最大化を図ることができる。また、校正作業を遠隔操作によって行うことができるため、精密測定が要求される校正部を無人化してその環境を理想的な温度に精密制御することができ、人の動きなどに伴なう振動の少ない高く安定した環境を維持できる。
【0025】
また、スレーブ校正部の数を拡張することができ、このため、生産需要が増加した場合に、校正可能な光源の数を増すことができる。また、被校正光源ごとに異なる変復調信号を与えることで、複数の被校正光源を同時に校正可能であり、将来的に被校正光源の数量が拡大したとしても、これに対応することができ、スケーラブルな校正システムを構築することができる。
【0026】
また、オフセットレーザは位相同期回路によって光周波数コムと位相が揃い、且つ高いコヒーレンスを有するため、光周波数コム装置の一部とみなすことができる。このオフセットレーザの高い光出力を活かすことで、ビート周波数測定に重要な30dB以上の信号雑音比を実現できる。また、光学的な符号化と電気的な復号化機構により、光周波数コム装置の微弱な出力光を分割することなく、同時に多数の被校正レーザを校正することができる。
【0027】
また、時間及び周波数に係る標準器に国家標準器を適用すれば、当該標準器によってGPS衛星を介して遠隔校正されたRF発振器を基準に光周波数コム装置の動作周波数を決定すれば、国家標準とトレーサブルな状態を構築することができる。また、符号化及び復号化に用いるRF周波数を、前記RF発振器を定数倍して発生させることで、優れた長期周波数安定度とビート信号の多重化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る分散型校正システムの概略構成を示したブロック図である。
図2】本実施形態に係るスレーブ校正室の概略構成を示したブロック図である。
図3】本実施形態に係るマスター校正室の概略構成を示したブロック図である。
図4】変形例に係るマスター校正室の概略構成を示したブロック図である。
図5】本実施形態に係る光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。
図6】変形例に係る光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。
図7】本実施形態に係る光周波数測定方法を説明するための説明図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るスレーブ校正室の概略構成を示したブロック図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。
図10】本発明に係るスレーブ校正室の光路切替装置・合波部の具体的な構成例に関する図である。
図11】本発明に係るマスター校正室のマスター光路切替装置・周波数測定部における光電変換部の具体的な構成例に関する図である。
図12】本発明における周波数測定部の2通りの構成の概略図である。
図13図12の測定方式2におけるマスター校正室の構成例である。
図14図12の測定方式2におけるスレーブ校正室の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る分散型校正システム(1)の概略構成を示したブロック図である。以下、本例の分散型校正システム(1)について説明する。
【0031】
1.分散型校正システムの構成
図1に示すように、本例の分散型校正システム(100)は、管理室(管理部)(101)と、光周波数コム装置を備えたマスター校正室(マスター校正部)(102)と、被校正光源を備えたスレーブ校正室(スレーブ校正部)群(103)からなる。スレーブ校正室群(103)は、N個の分散配置されたスレーブ校正室1(104)からスレーブ校正室N(105)によって構成される。各スレーブ校正室内には1以上の被校正光源が設けられている。ここで、Nはスレーブ校正室の個数を表す自然数であり、1を含むものとする。
【0032】
校正において、まず、スレーブ校正室1(104)は設備の稼働状況信号1を、・・・スレーブ校正室N(105)は設備の稼働状況信号Nを、管理室(101)に伝達し、これらの稼働状況をもとに管理室(101)はどのスレーブ校正室内のどの被校正光源の校正が可能か(或いは必要か)を判断して、校正命令をマスター校正室(102)に伝送する。
【0033】
校正命令を受け取ったマスター校正室(102)は、校正命令の対象たるスレーブ校正室に設置された1個あるいは2個以上の被校正光源の出力光がマスター校正室(102)に伝送されるべく、スレーブ校正室群(103)の被校正光源の各光路を切り替える光路切替命令を送る。同時に、被校正光源の光周波数を変調して多重化するための符号化命令を送る。
【0034】
校正命令の対象たる被校正光源を含むスレーブ校正室は光路切替命令および符号化命令を受け取り、当該スレーブ校正室中に設置された被校正光源の出力光の光路を切り替え、被校正光源ごとに光周波数に対して異なる変調パターンを与え、光伝送路群(106)の該当する光伝送路中に被校正光源の出力光を伝搬させ、マスター校正室(102)に送り込む。ここで、光伝送路としては、自由空間伝搬ではなく、光ファイバや光導波路などを用いた伝送路が例示される。
【0035】
上記被校正光源の出力光をマスター校正室(102)に送り込んだのち、マスター校正室(102)では、設置された光周波数コム装置を用いて1個あるいは複数の被校正光源の出力光の光周波数の復調および校正を行い、校正結果を管理室(101)に報告し、光路切替命令信号をスレーブ校正室群(103)に伝達し、校正が完了した被校正光源の出力光の光路が該当スレーブ校正室内の装置に組み込まれる光路切替操作を行ったことをもって、校正命令に該当する被校正光源の校正が完了する。
【0036】
管理室(101)は校正結果を受け取り、次の校正のスケジュールを決定する。校正完了後に管理室(101)から新たな校正命令を受け取ったマスター校正室(102)は、上記の一連の手続きを新たな校正命令に該当するスレーブ校正室の被校正光源に対して実行する。
【0037】
なお、校正命令により複数のスレーブ校正室が選択され得るものとする。また、校正命令により同時に複数個の被校正光源の校正が可能なものとする。
【0038】
2.スレーブ校正室の構成
図2は、スレーブ校正室群(103)のうち、i番目のスレーブ校正室(201)の概略構成を示したブロック図である。ここでiは、1からNまでの任意の自然数である。i番目のスレーブ校正室(201)は、N個の被校正レーザを有し、それぞれ被校正レーザi_1(202)、・・・、被校正レーザi_N(203)とラベリングされている。Nは自然数であり、1個の被校正レーザのみからなる場合(N=1)も含み得る。
【0039】
i番目のスレーブ校正室(201)の全ての被校正レーザの校正を実施しない時、被校正レーザは装置類(207)に用いられるが、マスター校正室(102)から光路切替命令信号(208)および符号化命令信号(211)が送られた場合、光路切替装置(204)は該当する被校正レーザの光路を合波部(205)および光伝送路i(206)に伝送するべく切り替える。なお、スレーブ校正室1個あたり被校正レーザを1個しか有さないまたは1個しか校正しない場合も図2の中に含まれる。
【0040】
さらに、校正対象たる被校正レーザが光伝送路i(206)に結合する前に、光学変調器i_1(209)から光学変調器i_M(210)までのうち、校正対象の被校正レーザの光路に置かれた光学変調器によって変調を受けるものとする。ここでMはi番目のスレーブ校正室(201)から伝送可能な被校正光源の最大数であり、1からNを超えない自然数である。該当する光学変調器は符号化命令信号(211)の変調パターンを元に、複数の被校正光源の出力光の位相または周波数をそれぞれ異なるパターンで周波数変調するものとする。
【0041】
例えば周波数を変調する光学変調器として音響光学変調器(AOM)を例にとると、AOMに印加して被校正光源の出力光を回折かつその出力周波数をシフトさせるRF周波数を、校正中に逐次ホッピングさせる符号化を行い、マスター校正室でビート信号を電気的に分割して後述の復号化操作を行い、複数の被校正光源の光周波数の校正を同時に行う場合が考えられる(詳細な例は図8を参照)。
【0042】
3.マスター校正室の構成
図3は、本例のマスター校正室の概略構成を示したブロック図である。実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。このマスター校正室(300)では、光伝送路N個からなる光伝送路群(106)の終端部(301)を有する。校正用コンピュータ(302)が管理室(101)からの校正命令を受け取ると、スレーブ校正室群(103)のうち該当する被校正光源に光路切替命令群を出し、その結果として、光伝送路群(106)の終端部(301)を構成するN個の光出力ポートのうち、C個の光出力ポートから各被校正光源の光が出射される。なお、光周波数コム装置(303)で同時に校正可能な光源の個数Dは、C個またはC個を超えるものとする。
【0043】
N個の光出力ポートのうち、光が実際に出ているポートが光周波数コム装置(303)とビート信号を取るべく、校正用コンピュータ(302)はマスター光路切替装置(304)の光路を切り替え、マスター光路切替装置(304)の出力光路のうち、L、・・・、LからなるC個の光路(1つの光路に複数の被校正光源の出力光が入り得る)に被校正光源の出力光が分配され、光周波数測定装置(305)に入るものとする。
【0044】
光周波数コム装置(303)は、光周波数コム(306)と、光周波数コム(306)の光出力を基に繰り返し周波数frepやCEO周波数fCEOを測定するfrep、fCEO測定装置(307)と、frep、fCEO測定装置(307)の出力するfrep、fCEOを安定化するために光周波数コム(306)にフィードバックを行うfrep、fCEO制御装置(308)とを備え、frep、fCEO信号を校正用コンピュータ(302)に出力する。
【0045】
光周波数コム(306)の構成の例としては、ErやYbがドープされたファイバレーザやチタンサファイアレーザといったオシレーターと、その光出力の一部を分岐したのち増幅するEDFAなどの増幅機構と、増幅後の波長帯域を拡大するための非線形ファイバと、非線形ファイバの光出力をPeriodically Poled Lithium Niobate(PPLN)などの非線形光学結晶に入れて二次高調波発生を行い、CEO周波数を測定する光学系、検出系と、繰り返し周波数を測定する光学系、光検出器と、またオシレーターの光出力を校正用に分岐後に増幅するEDFAなどの増幅機構と、校正用に波長域を拡大する非線形ファイバと、非線形ファイバの出力から校正用波長以外をカットする回折格子やバンドパスフィルタなどの機構と、パルスの分散補正用光学系と、からなる場合などが考えられる。
【0046】
校正用コンピュータ(302)は上記光周波数測定装置(305)に後述する復調信号を与える命令を出し、光周波数測定装置(305)が出力するビート周波数fbeatおよびモード次数nの情報と、frep、fCEO測定装置(307)からの繰り返し周波数frepおよびCEO周波数fCEOの情報を受け取り、以下の式1に従って被校正光源の光周波数を決定するものとする。
【0047】
(数式1)
f=n×frep±|fCEO|±|fbeat
【0048】
式1のfCEOとfbeatの各符号を決定するには、たとえばfrepを変えた時のビート周波数やCEO周波数のシフト方向から決定する方式を用いる。なお、光源によってはfrepを超える周波数ドリフトを発生させる場合があるが、大半はウォームアップに伴うものであることから、設置環境の温度・湿度・気圧などの情報をモニタリングしておき、アラート機能を実装するなどの形態により異常検知を行い、校正スケジュールを組みなおすといった対策を取る事で迂回可能である。
【0049】
上記光周波数コム装置(303)を用いた光周波数測定の安定性は、frep、fCEO測定装置(307)と、frep、fCEO制御装置(308)と、光周波数測定装置(305)で計測・制御に用いるRF周波数の基準信号を発生するRF発振器(309)の周波数安定性によって決定され、たとえばルビジウム発振器やそのGPSDO発振器などが用いられる。本例では時間・周波数の国家標準器とGPS衛星経由でRF発振器(309)の遠隔校正を行うため、GPS信号およびインターネット経由のUTC信号をRF発振器(309)の発振周波数の安定化に用いるものとする。遠隔校正はGPS Common View法によるサービスを利用することにより、実施可能である。
【0050】
以上の光周波数測定を、校正命令に該当するC個の被校正光源に対して実行する。その結果、複数個の被校正光源をスレーブ校正室から動かすことなく光周波数コム装置によって校正できる。
【0051】
4.マスター校正室の変形例
図4は、変形例に係るマスター校正室の概略構成を示したブロック図である。本発明において、マスター校正室は、上述したマスター校正室(300)に代えて、図4に示した態様を採ることができる。図4において、実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。このマスター校正室(400)は、光伝送路N個からなる光伝送路群(106)の終端部(401)を有する。校正用コンピュータ(402)が管理室(101)からの校正命令を受け取ると、スレーブ校正室群(103)のうち該当する被校正光源に光路切替命令群を出し、その結果として、光伝送路群(106)の終端部(401)を構成するN個の光出力ポートのうち、C個の光出力ポートから各被校正光源の光が出射される。なお、光周波数コム装置(403)で同時に校正可能な光源の個数Dは、C個またはC個を超えるものとする。
【0052】
N個の光出力ポートのうち、光が実際に出ているポートを光周波数コム装置(403)とビート信号を取るべく、校正用コンピュータ(402)はマスター光路切替装置(404)の光路を切り替え、マスター光路切替装置(404)の出力光路のうち、L、・・・、LからなるC個の光路(1つの光路に複数の被校正光源の出力光が入り得る)に被校正光源の出力光がそれぞれ分配され、光周波数測定装置(405)に入るものとする。
【0053】
光周波数コム装置(403)は、光周波数コム(406)と、光周波数コム(406)の光出力を基に繰り返し周波数frepやCEO周波数fCEOを測定するfrep、fCEO測定装置(407)と、frep、fCEO測定装置(407)の出力するfrep、fCEOを安定化するために光周波数コム(406)にフィードバックを行うfrep、fCEO制御装置(408)と、オフセットレーザ(409)と、オフセットレーザの光周波数コムに対するオフセット周波数foffsetを測定するオフセット周波数測定装置(410)と、オフセット周波数を光周波数コムに対して完全位相同期するための位相同期装置(411)を備え、frep、fCEO、foffsetの信号を校正用コンピュータ(402)に出力する。
【0054】
光周波数コム(406)の構成の例としては、ErやYbがドープされたファイバレーザやチタンサファイアレーザといったオシレーターと、その光出力の一部を分岐したのち増幅するEDFAなどの増幅機構と、増幅後の波長帯域を拡大するための非線形ファイバと、非線形ファイバの光出力をPeriodically Poled Lithium Niobate (PPLN)などの非線形光学結晶に入れて二次高調波発生を行い、CEO周波数を測定する光学系、検出系と、繰り返し周波数を測定する光検出器と、またオシレーターの光出力を校正用に分岐後に増幅するEDFAなどの増幅機構と、校正用に波長域を拡大する非線形ファイバと、非線形ファイバの出力から校正用波長以外をカットする回折格子やバンドパスフィルタなどの機構と、からなる場合などが挙げられる。
【0055】
次に、オフセットレーザ(409)の構成例としては外部共振器半導体レーザの共振器を駆動するピエゾ素子とレーザダイオードの駆動電流にフィードバックをかけ、単一縦モード発振を実現する形態などが知られている。オフセットレーザ(409)の周波数安定度は、フィードバック機構として外部共振器を調整するピエゾ素子によるslow feedbackとレーザダイオードの駆動電流によるfast feedbackを組み合わせる事により、位相同期装置(411)(デジタルPLL回路などが考えられる)を通してオフセットレーザ(409)と光周波数コム(406)の位相を数十MHzという広帯域にわたってロック可能である。つまり光周波数コム(406)の周波数安定度をオフセットレーザ(409)に転送できるため、オフセットレーザ(409)は光周波数コム装置の中に含まれる。なお、オフセットレーザ(409)を光周波数コム(406)に対してロックする前に、波長計などの計測手法により、被校正レーザの発振周波数とオフセットレーザ(409)の発振周波数の差が光周波数コム装置の繰り返し周波数よりも短くなるよう、オフセットレーザ(409)の共振器長を制御する機能を有するものとする。
【0056】
校正用コンピュータ(402)は上記光周波数測定装置(405)に後述する復調信号を与える命令を出し、光周波数測定装置(405)が出力するオフセットレーザと被校正光源のビート周波数fbeatおよびモード次数nの情報と、frep、fCEO測定装置(407)からの繰り返し周波数frepおよびCEO周波数fCEOの情報と、オフセット周波数測定装置410からの光周波数コム(406)とオフセットレーザ(409)のビート周波数foffsetの情報を受け取り、以下の式2に従って光周波数を決定するものとする。
【0057】
(数式2)
f=n×frep±|fCEO|±|foffset|±|fbeat
【0058】
式2のfCEOとfoffsetとfbeatの各符号を決定するには、たとえばfrepを変えた時のfoffsetやfCEOのシフト方向と、foffsetを変えた時のfbeatのシフト方向から決定する方式などを用いる。なお、光源によってはfrepを超える周波数ドリフトを発生させる場合があるが、大半はウォームアップに伴うものであるから、設置環境の温度、湿度、気圧などの情報をモニタリングしておき、アラート機能を実装するなどの形態により異常検知を行い、校正スケジュールを組みなおすといった対策を取る事で迂回可能である。
【0059】
上記光周波数コム装置(403)を用いた光周波数測定の安定性は、frep、fCEO測定装置(407)と、frep、fCEO制御装置(408)と、オフセット周波数測定装置(410)と位相同期装置(411)と、光周波数測定装置(405)と、で計測・制御に用いるRF周波数を作り出す元となるRF発振器(412)の周波数安定性によって決まり、たとえばルビジウム発振器やそのGPSDO発振器などの形態が用いられる。本発明では時間・周波数の国家標準器(標準器の一例)とGPS衛星経由でRF発振器(412)の遠隔校正を行うため、GPS信号およびインターネット経由のUTC信号をRF発振器(412)の安定化に用いるものとする。遠隔校正はGPS Common View法によるサービスを利用することにより、実施可能である。
【0060】
以上の光周波数測定を、校正命令に該当するC個の被校正光源に対して実行する。その結果、複数個の被校正光源をスレーブ校正室から動かすことなく光周波数コム装置によって校正できる。
【0061】
5.光周波数測定部の構成
図5は、本例の光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。図5に示すように、光周波数測定部(600)は、図3に示した光周波数測定装置(305)、または図4に示した光周波数測定装置(405)において、被校正レーザL_1(601)から被校正レーザL_C(602)までのC個の被校正レーザのうち1個の被校正レーザの出力光の光周波数を校正する。図5において、実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。
【0062】
該当する被校正レーザはすべて、図2のi番目のスレーブ校正室(201)の例を挙げると、光学変調器i_1(209)から光学変調器i_M(210)のうち該当する光学変調器によって周波数変調を受けているものとする。この被校正レーザ複数個の出力光と、光周波数コム装置(612)の出力光を例えば光学素子とシリコンフォトデテクターからなる光電変換部(603)に入射して光学的に干渉させ、電気的なビート信号を得る。このビート信号から特定の被校正レーザ由来のビート信号を抽出するため、校正用コンピュータ(604)の復号命令と、RF発振器(605)をもとに、復号部(606)にて復号を実施する。
【0063】
復号部(606)では、RF発振器(605)を外部クロックとするRF信号発生器(607)で復号命令に対応する時間的に周波数が変化するRF信号を発生させ、光電変換部(603)のビート信号出力とRFミキサ(608)でかけあわせる。これにより、該当する被校正レーザの本来のビート周波数だけが時間によらず光源の周波数安定度以内で一定となる。
【0064】
他の被校正レーザに由来するビート信号は、RFミキサ(608)で復号に必要なホッピングパターンと異なるホッピングパターンが重畳され、ホッピングの時間間隔ごとに異なる周波数にホッピングし続ける。ホッピングの時間間隔を周波数カウンタ(609)のゲート時間よりも十分短く取り、これらの校正対象ではない光のSN比を抑圧でき、周波数カウンタで計測時に該当の被校正レーザ由来のビート周波数だけが表示される。さらに被校正レーザL(601)の一部の光を波長計L(610)で計測し、・・・、被校正レーザL(602)の一部の光を波長計L(611)で計測し、波長情報を校正用コンピュータ(604)に出力することで、校正のモード次数の特定に用いる。
【0065】
6.光周波数測定部の変形例
図6は、変形例に係る光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。本発明において、光周波数測定部は、上述した光周波数測定部(600)に代えて、図6に示した態様を採ることができる。図6に示した光周波数測定部(700)は、図3の光周波数測定装置(305)および図4の光周波数測定装置(405)において、被校正レーザL_1(701)から被校正レーザL_C(702)までのC個の被校正レーザのうちC個の被校正レーザの光周波数を校正する例である。図6において、実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。
【0066】
該当する被校正レーザはすべて、図2のi番目のスレーブ校正室(201)の例を挙げると、光学変調器i_1(209)から光学変調器i_M(210)のうち該当する光学変調器によって周波数変調を受けているものとする。この被校正レーザの出力光と、光周波数コム装置(714)を例えば光学素子とシリコンフォトデテクターからなる光電変換部(703)に入射して光学的に干渉させ、電気的なビート信号を得る。
【0067】
このビート信号から特定の被校正レーザ由来のビート信号を抽出するため、校正用コンピュータ(704)の復号命令と、RF発振器(705)をもとに、復号部(706)にて復号を実施する。復号部(706)では、RF発振器(705)を外部クロックとする1個または複数個からなるRF信号発生器(707)で復号命令に対応する時間的に周波数が変化するRF信号を1個または複数個発生させ、光電変換部(703)のビート信号出力を分割してそれぞれRFミキサL_1(708)からRFミキサL_C(710)でRF信号の各々とかけあわせ、周波数カウンタ1(709)から周波数カウンタL_c(711)で対応するRFミキサ出力のRF周波数を測定する。
【0068】
これにより、各RFミキサが印加する復号パターンに該当する被校正レーザの本来のビート周波数だけが時間によらず光源の周波数安定度以内で一定となる。他の被校正レーザに由来するビート信号は、該当するRFミキサで復号に必要なホッピングパターンと異なるホッピングパターンが重畳され、ホッピングの時間間隔ごとに異なる周波数にホッピングし続ける。ホッピングの時間間隔を該当する周波数カウンタのゲート時間よりも十分短く取ることで、これらの校正対象ではない光のSN比を抑圧でき、周波数カウンタで計測時に該当の被校正レーザ由来のビート周波数だけが表示される。
【0069】
さらに被校正レーザL_1(701)の一部の光を波長計L_1(712)で計測し、・・・、被校正レーザL_C(702)の一部の光を波長計L_C(713)で計測し、得られた光周波数を校正用コンピュータ(704)に出力することで、校正のモード次数の特定に用いる。
【0070】
以上の方式により、1つの光電変換部(703)から出力された複数個のビート周波数を同時に選択的に計測できる。項目2および3で説明した枠組みと組み合わせると、一つの光周波数コム装置を用い、同時に複数個の被校正レーザの光周波数の校正ができる方式である。
【0071】
7.分散型校正システムの運用
以上の光周波数測定方法について、具体的な構成例を図7に示す。実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。この例では、同一のスレーブ校正室に設置された2つの被校正レーザの出力光の光周波数を選択的に測定する場合について述べる。2つの被校正レーザの出力光は、それぞれAOM1、AOM2によって回折される。回折に伴う光周波数のシフト量を時間と共に変化させ、被校正レーザごとに異なるホッピングパターンf(t)、f(t)で回折されている。
【0072】
ここで回折の次数は、0次を除く任意の次数とする。f(t)、f(t)で符号化された被校正レーザの出力光は合波して同じ光ファイバを伝搬した後、2つの符号化された被校正レーザの出力光と、例えば光周波数コム装置におけるオフセットレーザの出力光のビート信号を光電変換した後、f(t)と同一の周波数ホッピングパターンf(t)をもつRF信号と電気的にミキシングさせる。ミキシングの結果、被校正レーザ1の出力光とオフセットレーザの出力光のビート周波数だけが常に時間によらず一定となる(被校正レーザの周波数安定度の範囲内で)。
【0073】
一方で、被校正レーザ2の出力光とオフセットレーザの出力光のビート周波数は常にホッピングを続ける。周波数測定を正しく行うために、周波数カウンタのゲート時間よりも十分短い間隔でf(t)、f(t)が変化するように構成すれば、周波数カウンタの測定値は被校正レーザ1の出力光とオフセットレーザの出力光とのビート周波数と一致し、被校正レーザ2の出力光とオフセットレーザの出力光とのビート周波数は時間平均を取るとゼロとなることから無視でき、選択的な光周波数の測定、すなわち校正が可能となる。また本方法は図7に示す通り復号化エレクトロニクスの数を追加すれば、被校正レーザ1の光周波数と被校正レーザ2の光周波数の同時校正が可能になる。
【0074】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上述した態様に限られるものでは無い。
【0075】
例えば、上例では、スレーブ校正室に光学変調器iを設けて、マスター校正室から符号化命令信号が送信されると、符号化命令信号の変調パターンを元に、複数の被校正光源の出力光の位相または周波数をそれぞれ異なるパターンで周波数変調するようにしたが、このような構成に限られるものでは無く、図8に示すように、光学変調器iを省略した構成としても良い。
【0076】
この場合、光周波数測定部は図9に示した態様を採ることができる。図9は、この態様の光周波数測定部の概略構成を示したブロック図である。図9に示すように、光周波数測定部(500)は、図3に示した光周波数測定装置(305)、または図4に示した光周波数測定装置(405)において、被校正レーザL_1(501)から被校正レーザL_C(502)までのC個の被校正レーザのうち1個の被校正レーザの光周波数を校正する。図9において、実線の矢印は電気信号を、点線の矢印は光学的な信号を示す。
【0077】
該当する被校正レーザの出力光はすべて、図8のi番目のスレーブ校正室(201)の例に示される構成を介してマスター校正室に伝送されるものとする。被校正レーザの出力光が複数個マスター校正室に伝送される時は、マスター校正室の光路切替装置を用いて選択されたC個の被校正レーザの出力光を光周波数コム装置(512)の例えば光学素子とシリコンフォトデテクターからなるC個の光電変換部(503)に入射して光学的に干渉させ、電気的なビート信号を得る。
【0078】
ビート信号の周波数は、周波数カウンタで読み出され、光周波数の測定に用いられる。
【0079】
さらにモード次数の決定のために、被校正レーザL_1(501)から被校正レーザL_C(502)の出力光の一部を分岐させて波長計L_1(507)から波長計L_C(508)にて光周波数を光周波数コム(306)のモード間隔よりも高い分解能で決定する。
【0080】
また、図10に、スレーブ校正室(201)の光路切替装置(204)と合波部(205)の具体的な構成例を示す。この例では、図8に記載の1つのスレーブ校正室(201)に4つの被校正レーザ1-4がある場合を考える。被校正レーザ1を校正する場合、被校正レーザ1の出力光の光路と接触しないように配置された部分偏光ビームスプリッタ(PPBS)の高さをアクチュエータなどの駆動機構によって上昇させ、出力光の偏光の一部をPPBSで反射した先で、偏波保持ファイバなどの光伝送路からなる伝送部と結合させる。同様に、複数のレーザを同時に校正する場合、複数の被校正レーザの光路の下部にある複数のPPBSを上昇させ、複数の被校正レーザの出力光の一部を反射させて同じ光路をたどり伝送部に結合させ、マスター校正部に伝送する、といった形態がとられうる。成膜条件を変えてPPBSごとに異なる偏光依存反射率をもたせることにより、PPBSを複数経由しても、1個しか経由しなくとも、どの被校正レーザも光伝送路に等しいパワーで結合する、といった形態が考えられる。また、本例では光変調器を図10のPPBSよりも左側に追加することで被校正レーザごとに異なる変調を加えることが可能となる。
【0081】
また、図11に、マスター光路切替装置(304)および光周波数測定装置(305)の具体的な構成例を示す。この例では、4つのスレーブ校正部のうち2つの被校正レーザを校正する場合を考える。光周波数コム装置の出力光は、上述と同様にPPBSで等パワーで4分割され、スレーブ校正部1からの出力光とハーフビームスプリッタ(HBS)で合波して生じたビート信号がフォトデテクタで光電変換され、周波数計測に用いられる。同様に、スレーブ校正部2についても別のPPBSを反射した光周波数コム装置の出力光とのビート信号が別のフォトデテクタで光電変換される。
【0082】
また、本発明では、図12の測定方式1に示す光周波数測定装置がマスター校正部に設置される方式だけでなく、測定方式2に示すように光周波数測定装置がスレーブ校正部に設けられた態様も採り得る。その場合は、光周波数コム装置の出力光が伝送部を介して各スレーブ校正部に供給され、スレーブ校正部に設置された光周波数測定装置で得られた波長計の測定周波数データや周波数カウンタのビート周波数データがマスター校正部に伝送される形態をとる。図13図4のマスター校正室(400)が図12の測定方式2の形態に応じて変更された時の構成例である。図4と異なり、オフセットレーザ(1309)の出力光はマスター光路切替装置(1304)によってどの光伝送路群106の終端部(1301)に接続するかが選択され、光伝送路を介してスレーブ校正部に伝送される。図14図2のスレーブ校正室(201)が、図12に示した測定方式2に従って変更された時の構成例である。マスター校正室(1300)から伝送されたオフセットレーザ(1309)の出力光と、合波部(1405)から出力された被校正レーザi_1からi_Nまでのうち校正対象となるレーザの出力光のビート信号は、i番目のスレーブ校正室(1401)に設置された光周波数測定装置(1412)において測定される。測定されたビート周波数のデータは、マスター校正室(1300)に伝送され、校正用コンピュータ(1302)で被校正レーザの発振周波数が計算される。ここで、マスター校正室(1300)のRF発振器(1312)の出力はスレーブ校正室群(103)に供給され、図14のi番目のスレーブ校正室(1401)に設置された光周波数測定装置(1412)のクロックに用いられる。
【0083】
尚、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0084】
100 分散型校正システム
101 管理室
102 マスター校正室
103 スレーブ校正室群
201 スレーブ校正室
204 光路切替装置
205 合波部
206 光伝送路
300 マスター校正室
302 校正用コンピュータ
303 光周波数コム装置
305 光周波数測定装置
309 RF発振器
【要約】
【課題】被校正光源の光周波数を、離れた場所に配設された光周波数コム装置を用いて遠隔校正可能な校正システムを提供する。
【解決手段】一以上の被校正光源を備えたスレーブ校正部103と、光周波数コム装置を用いて、スレーブ校正部103に備えられた被校正光源の光周波数を測定して校正するマスター校正部102と、スレーブ校正部103とマスター校正部102とを接続する光伝送部106とを備える。マスター校正部102は、光伝送部106を介して伝送されたスレーブ校正部103の被校正光源の出力光の光周波数を、光周波数コム装置を用いて校正し、光周波数コム装置の出力光と被校正光源の出力光のビート信号の電気的な出力に対して、光周波数を測定して校正する。また、マスター校正部102は、時間及び周波数に係る標準器に基づいた遠隔校正が可能なRF発振器に基づいて、光周波数コム装置の動作周波数を安定化する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14