(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ハイブリッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/085 20060101AFI20240819BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240819BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20240819BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240819BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240819BHJP
【FI】
F16H3/085
B60K6/48 ZHV
B60K6/36
B60K6/40
B60K6/547
(21)【出願番号】P 2023532584
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2021077569
(87)【国際公開番号】W WO2022111895
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】102020007307.7
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ギット,カーステン
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069727(JP,A)
【文献】特開2012-201116(JP,A)
【文献】特開2012-240624(JP,A)
【文献】特開2012-188031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/085
B60K 6/48
B60K 6/36
B60K 6/40
B60K 6/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)、電気機械(3)および変速装置を備えるハイブリッド駆動装置(101、102)であって、
前記変速装置は、入力軸(5)および少なくとも1つの第1の副軸(V1)および第2の副軸(V2)を有し、
前記内燃機関(2)は、分離クラッチ(4)を介して入力軸(5)に直接連結可能であり、
前記入力軸(5)と同軸上に配置されている歯車(Z1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11)をそれぞれ1つ備える6つの切替え可能な歯車ペア、すなわち第1の歯車ペア(RP1)、第2の歯車ペア(RP2)、第3の歯車ペア(RP3)、第4の歯車ペア(RP4)、第5の歯車ペア(RP5)および第6の歯車ペア(RP6)が設けられており、
前記第1の歯車ペア(RP1)は、遊び歯車として形成されている、前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第1の歯車(Z1)を有しており、
軸方向(a)に見て、前記第1の切替え可能な歯車ペア(RP1)
、前記第2の切替え可能な歯車ペア(RP2)、前記第3の切替え可能な歯車ペア(RP3)、前記第4の切替え可能な歯車ペア(RP4)
、前記第5の切替え可能な歯車ペア(RP5)、前記第6の切替え可能な歯車ペア(RP6)、出力歯車列(AE)の順に配置されているハイブリッド駆動装置(101、102)において、
前記第1の歯車ペア(RP1)は、遊び歯車として形成されている、前記第1の副軸(V1)と同軸上に配置されている第2の歯車(Z2)を有しており、
前記電気機械(3)は、前記第1の歯車ペア(RP1)に接続されていることで、トルクを前記電気機械(3)から前記第1の歯車ペア(RP1)を介して前記変速装置に伝達できるようになっており、
前記第2の歯車ペア(RP2)は前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第3の歯車(Z3)および前記第2の副軸(V2)と同軸上に配置されている第4の歯車(Z4)を含み、前記第3の歯車ペア(RP3)は前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第5の歯車(Z5)および前記第2の副軸(V2)と同軸上に配置されている第6の歯車(Z6)を含み、前記第4の歯車ペア(RP4)は前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第7の歯車(Z7)および前記第1の副軸(V1)と同軸上に配置されている第8の歯車(Z8)を含み、前記第5の歯車ペア(RP5)は前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第9の歯車(Z9)および前記第2の副軸(V2)と同軸上に配置されている第10の歯車(Z10)を含み、前記第6の歯車ペア(RP6)は前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第11の歯車(Z11)および前記第1の副軸(V1)と同軸上に配置されている第12の歯車(Z12)を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項2】
前記第1の歯車ペア(RP1)は、軸方向(a)に前記分離クラッチ(4)から見て最後の歯車列(RE1)に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項3】
前記電気機械(3)は、軸方向に前記分離クラッチ(4)に重なって配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項4】
第1の切替え要素列(SE1)は、前記第1の副軸(V1)と同軸上に配置されている少なくとも1つの第3の切替え要素(S3)と、前記入力軸(5)と同軸上に配置されている第1の切替え要素(S1)とを含み、
第2の切替え要素列(SE2)は、前記第2の副軸(V2)と同軸上に配置されている少なくとも1つの第5の切替え要素(S5)と、前記第1の副軸(V1)と同軸上に配置されている第6の切替え要素(S6)とを含
み、
前記第1の切替え要素(S1)は前記第1の歯車(Z1)と前記入力軸(5)とを一体回転可能に接続するために設けられており、
前記第3の切替え要素(S3)は前記第2の歯車(Z2)と前記第1の副軸(V1)とを一体回転可能に接続するために設けられており、
前記第5の切替え要素(S5)は前記第10の歯車(Z10)と前記第2の副軸(Z2)とを一体回転可能に接続するために設けられており、
前記第6の切替え要素(S6)は前記第8の歯車(Z8)と前記第1の副軸(V1)とを一体回転可能に接続するために設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項5】
第4の切替え要素(S4)は前記第6の歯車(Z6)と前記第2の副軸(V2)とを一体回転可能に接続するために設けられており
、第7の切替え要素(S7)は前記第12の歯車(Z12)と前記第
1の副軸(V1)とを一体回転可能に接続するために設けられていることを特徴とする、請求項4に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項6】
前記第4の切替え要素(S4)および前記第5の切替え要素(S5)、ならびに前記第6の切替え要素(S6)および前記第7の切替え要素(S7)は、それぞれ共通のスライドスリーブを持つ切替え要素として形成されていることを特徴とする、請求項5に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【請求項7】
前記分離クラッチ(4)は、軸方向に前記少なくとも2つの副軸(V1、V2)上の少なくとも2つの出力歯車(7、8)に重ねて配置されていることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置(101、102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に詳しく定義された種類による、内燃機関、電気機械、変速装置を備えるハイブリッド駆動装置に関する。
【0002】
ハイブリッド駆動装置は、特に特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5から周知である。
【0003】
さらに、例えば特許文献6では、電気機械が変速装置の入力軸に接続されるが、内燃機関の反対にある分離クラッチ側に接続可能であり(一般にP2接続とも呼ばれる)、また出力軸として機能する副軸にも接続可能である(P3接続とも呼ばれる)ようなハイブリッド駆動装置が説明されている。このとき、この構成は、4つの個々のギアについて4つの歯車列を有している。電気機械は入力軸上の2つの遊び歯車に接続されており、これらは副軸上のもう1つの遊び歯車と共に歯車ペアを形成している。従って、この電気機械は、上述のような形で、変速装置の入力軸またはその副軸、あるいは出力軸に選択的に連結可能である。
同様のハイブリッド駆動装置は、特許文献7、特許文献8、特許文献9によって示されている。
【0004】
ここでは、特に軸方向、すなわち入力軸または変速装置の入力軸の回転軸に沿って延びる方向も比較的大きな構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許発明第102012009484号明細書
【文献】仏国特許出願公開第285941号明細書
【文献】独国特許発明第102017112868号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0305258号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016013477号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013210013号明細書
【文献】米国特許第5799536号明細書
【文献】特開2002-031198号公報
【文献】欧州特許出願公開第2902236号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、特に軸方向にも非常にコンパクトに構成され、さらにハイブリッドモードにおいて動力伝達を完全に遮断することなく切替え可能である改善されたハイブリッド駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づき、この課題は、請求項1の特徴、およびここでは特に請求項1の特徴部に記載の特徴を持つハイブリッド駆動装置によって解決される。本発明のハイブリッド駆動装置の有利な実施形態および発展形態は、これに従属する従属請求項から明らかである。
【0008】
ハイブリッド駆動装置は、内燃機関の他に電気機械ならびに変速装置を備えている。変速装置は、1本の入力軸および少なくとも2本の副軸を備えている。このとき、切替え可能な6つの歯車ペアが設けられ、それぞれの歯車ペアは、入力軸と同軸上に配置されている1つの歯車を有している。このとき、本発明の文脈における歯車ペアとは、噛合している2つの歯車であると理解され、一方は入力軸と同軸上に、他方は副軸の一方と同軸上に配置されている。歯車ペアの2つの歯車は、入力軸の回転軸に対して垂直である歯車列に配置されている。
【0009】
さらに、ここでは常に入力軸の回転軸に関係している軸方向に見て、第1の切替え可能な歯車ペア、第1の切替え要素列、第2の切替え可能な歯車ペア、第3の切替え可能な歯車ペア、第4の切替え可能な歯車ペア、第2の切替え要素列、第5の切替え可能な歯車ペア、第6の切替え可能な歯車ペア、出力歯車列の順に配置されている。
【0010】
このハイブリッド駆動装置では、第1の歯車ペアが2つの遊び歯車を含み、そのうちの1つは入力軸上にある。前述の2つの遊び歯車のうち2番目の遊び歯車は、本発明に基づき、第1の副軸上に配置されている。さらに、本発明に基づき、電気機械はこの第1の歯車ペアに接続されていることで、トルクを電気機械から第1の歯車ペアを介して変速装置に伝達できるようになっている。この場合、2つの遊び歯車による第1の歯車ペアの実施形態により、P2接続とP3接続の両方が可能である。
【0011】
さらに、本発明に基づき、第2の歯車ペアは入力軸と同軸上に配置されている第3の歯車および第2の副軸と同軸上に配置されている第4の歯車を含み、第3の歯車ペアは入力軸と同軸上に配置されている第5の歯車および第2の副軸と同軸上に配置されている第6の歯車を含み、第4の歯車ペアは入力軸と同軸上に配置されている第7の歯車および第1の副軸と同軸上に配置されている第8の歯車を含み、第5の歯車ペアは入力軸と同軸上に配置されている第9の歯車および第2の副軸と同軸上に配置されている第10の歯車を含み、第6の歯車ペアは入力軸と同軸上に配置されている第11の歯車および第1の副軸と同軸上に配置されている第12の歯車を含むように設けられている。
【0012】
このとき、切替え要素とは、歯車ペアの遊び歯車を、これを支持する軸に一体回転可能に接続するために設けられている装置であると理解され、この切替え要素は少なくとも1つのスライドスリーブおよびドッグクラッチ、ならびに有利な実施形態ではさらに同期装置を備えている。隣接する、互いに同軸上に配置された2つの切替え要素は、有利には1つの同じスライドスリーブを共有することができる。このとき、切替え要素列は入力軸の回転軸に対して垂直に配置され、少なくとも2つの切替え要素と交差する列であり、少なくとも2つの切替え要素が相異なる軸と同軸上に配置されており、これらの軸は、入力軸、第1の副軸、第2の副軸であると理解される。
【0013】
従って、切替え要素列は切替え要素を「含む」という表現は、この切替え要素列はこの切替え要素の少なくとも一部と交差していることを意味している。これと同様に、出力歯車列は入力軸の回転軸に対して垂直に配置されている列であり、この列には副軸上に一体回転可能に配置された出力歯車が含まれている。このとき、本発明の意味における一体回転可能とは、そのように接続された互いに同軸上に配置された要素が、同じ角速度または回転速度で回転することを意味している。
【0014】
遊び歯車、あるいは「軸上の遊び歯車」という表現は、その軸と同軸上に配置され、かつその軸に対して回転可能に配置されている歯車であると理解される。遊び歯車は、通常、切替え要素によってその軸と一体回転可能に接続することができる。固定歯車、あるいは「軸上の固定歯車」という表現は、以下では、その軸と同軸上に配置され、かつその軸と恒久的に一体回転可能に接続されている歯車であると理解される。
【0015】
本発明に基づくハイブリッド駆動装置は、特に軸方向に非常にコンパクトな構造を実現することができる。特殊な歯車セット構成により、このことは非常に低コストで可能である。さらに、簡単な構造でありながら、切替え時には完全な機能と高い快適性が提供され、特に動力伝達を遮断することなく切替え可能である。
【0016】
このとき、本発明の極めて好都合な発展形態によれば、第1の歯車ペアは、入力軸に沿って、分離クラッチから見て最後の歯車列に配置されている。
【0017】
本発明の非常に有利な発展形態によれば、さらに、電気機械は軸方向に分離クラッチの上に重なっている。本発明の意味において重なっている配置とは、上述の要素が同じ軸方向の列と交差している、あるいは軸方向に同じ軸方向の列の中に突き出していることを意味する。従って、上述の要素は軸方向に少なくとも部分的に重なっている。軸方向の列とは、入力軸の回転軸上に垂直な列であると理解される。
【0018】
このとき、本発明に基づくハイブリッド駆動装置は、好ましくは内燃機関を始動開始可能な分離クラッチならびに特に機械的後退ギアを省略することができる。これにより、分離クラッチの直径は相応に小さく設計することが可能になるため、この分離クラッチを、場所をとらないように電気機械に重ねて配置し、極めて好都合な発展形態によれば、これに加えて少なくとも2つの副軸上の少なくとも2つの出力歯車に重ねて配置することができる。
【0019】
この変形例およびここで特に最後に言及した2つの実施形態の組み合わせにより、さらにコンパクトな構造が確保される。
【0020】
従って、本発明に基づくハイブリッド駆動装置を搭載したハイブリッド車において、この装置は、電気だけで駆動される別の車軸と一緒に、ハイブリッド駆動装置によって駆動される車軸を駆動するために使用することが可能である。発進プロセスならびに後退走行は、1つの電気機械または2つの電気機械、すなわち本発明に基づくハイブリッド駆動装置の電気機械と電気だけで駆動される別の車軸の電気機械とを使って、電気だけで実現することが可能である。変速装置内の切替えは、内燃機関または内燃機関と電気機械とによる駆動の場合、P3接続の電気機械が、切替え中に回転数とトルクを相応に補正または支援することにより、負荷を中断することなく行うことができる。
【0021】
本発明のもう1つの非常に好都合な実施形態によれば、補足的に、第1の切替え要素列は、第1の副軸と同軸上に配置されている少なくとも1つの第3の切替え要素と、入力軸と同軸上に配置されている第1の切替え要素とを含み、第2の切替え要素列は、第2の副軸と同軸上に配置されている少なくとも1つの第5の切替え要素と、第1の副軸と同軸上に配置されている第6の切替え要素とを含むように構成されている。
【0022】
この実施形態のさらなる有利な補足として、さらに、第1の切替え要素は第1の歯車と入力軸を一体回転可能に接続するために設けられており、第3の切替え要素は第2の歯車と第1の副軸を一体回転可能に接続するために設けられており、第4の切替え要素は第6の歯車と第2の副軸を一体回転可能に接続するために設けられており、第5の切替え要素は第10の歯車と第2の副軸を一体回転可能に接続するために設けられており、第6の切替え要素は第8の歯車と第1の副軸を一体回転可能に接続するために設けられており、第7の切替え要素は第12の歯車と第2の副軸を一体回転可能に接続するために設けられているようにすることも可能である。
【0023】
好ましくは、このとき、第4の切替え要素および第5の切替え要素、ならびに第6の切替え要素および第7の切替え要素は、それぞれ共通のスライドスリーブを持つ切替え要素として形成されていてよい。これにより、変速装置の構造がさらに有利に、コンパクトになる。
【0024】
本発明に基づくハブリッド駆動装置の非常に好都合な実施形態は、さらに、第1の歯車ペア、第2の歯車ペア、第3の歯車ペア、第6の歯車ペアがそれぞれ1つの純粋な歯車列を形成するように設けることもできる。このとき、純粋な歯車列とは、入力軸の回転軸上に垂直な列であって、歯車ペアだけに交差し、切替え要素には交差しない列であると理解される。また、このことはコンパクトな実施形態にも貢献する。
【0025】
本発明に基づくハイブリッド駆動装置のさらなる有利な実施形態および発展形態は、以下に図を使って詳しく示されている実施例からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に基づくハイブリッド駆動装置の第1の可能な変形例を示す図である。
【
図2】本発明に基づくハイブリッド駆動装置の第2の可能な変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
両方の図においては、それぞれ1つのハイブリッド駆動装置101、102が、本発明に基づく可能な構造で図示されている。歯車セット配置図は、その中に取り付けられている変速装置を示すために用いるものであり、縮尺に従ったものと理解するべきではなく、またすべての構成部品が、示されている図面上にあるわけではない。ここでは、図示されているコンポーネントの規模も、実際の構造に対応している必要はない。
【0028】
図1はハイブリッド駆動装置101の第1の変形例を示し、内燃機関2を備える一方で、電気機械3も備えている。内燃機関2は、分離クラッチ4を介して、ハイブリッド駆動装置101の変速装置の入力軸5に直接接続されている。このとき、この直接接続は、内燃機関2のクランクシャフトと分離クラッチ4との間にオプションで回転振動を除去および/または減衰するための装置6、例えばダブルマスフライホイールを含んでいてもよく、従ってここでの「直接」とは、内燃機関2のクランクシャフトと分離クラッチ4との間に、例えばクラッチや伝動装置など、その他の伝動要素が配置されていないというように理解しなければならない。
【0029】
入力軸5の回転軸の軸方向aに、分離クラッチ4から見て6つの歯車ペア、すなわち第1の歯車ペアRP1、第2の歯車ペアRP2、第3の歯車ペアRP3、第4の歯車ペアRP4、第5の歯車ペアRP5、第6の歯車RP6が、それぞれ属する1つの歯車列、すなわち第1の歯車列RE1から第6の歯車列RE6の中で続いている。このとき、入力軸5とそれぞれ同軸上に配置されている6つの歯車、すなわち第6の歯車ペアRP6に属する第11の歯車Z11、第5の歯車ペアRP5に属する第9の歯車Z9、第4の歯車ペアRP4に属する第7の歯車Z7、第3の歯車ペアRP3に属する第5の歯車Z5、第2の歯車ペアRP2に属する第3の歯車Z3、第1の歯車ペアRP1に属する第1の歯車Z1のうち、分離クラッチ4の方向から見て最初の4つの歯車Z11、Z9、Z7、Z5は、それぞれ固定歯車として入力軸5上に形成されており、一方、最後の2つの歯車Z3およびZ1は遊び歯車として形成されている。2つの切替え要素、すなわち第1の歯車Z1の第1の切替え要素S1および第3の歯車Z3の第2の切替え要素S201により、第1の歯車Z1と第3の歯車Z3は、それぞれ一体回転可能に入力軸5に接続することができる。このとき、2つの切替え要素S1、S201は、これらが共通のスライドスリーブを使用できるように配置され、組み合わされている。
【0030】
それぞれ入力軸5に平行に、2本の副軸、すなわち第1の副軸V1および第2の副軸V2が配置されている。第1の出力歯車7は、第1の副軸V1と同軸上に配置され、一体回転可能にこれに接続されている。第2の出力歯車8は、第2の副軸V2と同軸上に配置され、一体回転可能にこれに接続されている。出力歯車7、8は、有利にはその他の中間の伝動要素なしで、ここでは図示されていない差動歯車(すなわち差動装置の入力歯車)に噛み合っている。この場合、有利には、出力歯車7、8は共通の出力歯車列AEに分離クラッチ4と共に配置されている。出力歯車列AEは、軸方向aに対して垂直に配置されており、2つの出力歯車7、8と分離クラッチ4の両方と交差している。
【0031】
このとき、第1の歯車ペアRP1は、分離クラッチ4から軸方向aに見て最後の歯車ペアRP1であり、従ってこの方向に見て最後の歯車列RE1に配置されている。この列は、遊び歯車として入力軸5上に形成されている第1の歯車Z1と、同様に遊び歯車として形成され、第1の副軸V1と同軸上に配置されている第2の歯車Z2とを含んでいる。第1の歯車Z1は、すでに言及したように、第1の切替え要素S1によって一体回転可能に入力軸5と接続可能であり、第2の歯車Z2は、第3の切替え要素S3によって第1の副軸V1と一体回転可能に接続可能である。電気機械3の接続は、電気機械3の回転子軸10と一体回転可能に接続されているピニオン9を介して第1の歯車ペアRP1で行われる。そのために、ピニオン9は、
図1に破線で示されているように、第1の歯車ペアRP1の第2の歯車Z2と噛み合っている。代替として、ピニオン9は第1の歯車Z1と噛み合っていてもよい(図示されていない)。有利には、ピニオン9とそれぞれの遊び歯車との間に、さらに1つの中間歯車または中間軸が配置されている。
【0032】
これにより、電気機械3のトルクを変速装置に伝達することができる。このとき、切替え要素S1、S3の位置に応じて、いわゆるP2接続を実現することができ、この場合、電気機械3は、ピニオン9、第1の副軸V1上で自由回転する第1の歯車ペアRP1の遊び歯車Z2、および第1の切替え要素S1によって入力軸5と一体回転可能に連結されている第1の歯車Z1を介して、入力軸5に、詳細には分離クラッチ4の内燃機関2とは反対側に作用する。次に出力は、変速装置内の切替え位置に応じて、第1の副軸V1とその出力歯車7または第2の副軸V2との出力歯車8を介して行われる。
【0033】
この代替として、本構造は、いわゆる電気機械3のP3接続に切り替えることが可能であり、ここでは、切替え要素S1が開いており、それに応じて遊び歯車Z1が入力軸5上で回転し、次に第1の歯車ペアPR1の第2の歯車Z2が第3の切替え要素S3によって第1の副軸V1と一体回転可能に連結されている場合、第1の副軸V1およびその出力歯車7が電気機械3によって直接に駆動される。
【0034】
変速装置をニュートラルに切り替えることにより(どの遊び歯車も連結されていない)、電気機械3は例えば内燃機関2を始動させることができ、または内燃機関2は電気機械3を発電機として駆動する。
【0035】
このとき、電気機械3は、軸方向aに分離クラッチ4に重なって、従って特に副軸V1、V2の出力歯車7、8にも重なって配置されている。軸方向aに分離クラッチ4から見て最後の歯車列RE1への電気機械3の接続、同時に電気機械と分離クラッチ4との軸方向の重なり、すなわち分離クラッチ4および特に出力歯車7、8の共通の出力歯車列AEの中への突出により、極めてコンパクトな構造が保証される。
【0036】
軸方向aに、今度は歯車ペアRP1を持つ歯車列RE1から分離クラッチ4の方向に見て、入力軸5上で同様に遊び歯車として形成されている第3の歯車Z3を持つ第2の歯車ペアRP2が、第1の歯車ペアRP1の上に続いている。この第3の歯車は、第2の切替え要素S201によって、第1の歯車Z1と同様に切替え可能であり、有利には切替え要素S1およびS201は共通のスライドスリーブと共に形成することができるため、ここでは一種の二重切替え要素が生じており、これにより取付けスペースおよび特にコストが軽減される。第4の歯車Z4は、第2の歯車ペアRP2の別の歯車として用いられ、固定歯車として第2の副軸V2上に形成されている。
図1ではこの第2の歯車ペアRP2の右横に第3の歯車ペアRP3が続き、ここでは第5の歯車Z5が固定歯車として入力軸5上に形成され、第6の歯車Z6が遊び歯車として第2の副軸V2上に形成されている。その横の第4の歯車列RE4には、第4の歯車ペアRP4が配置されている。第7の歯車Z7は固定歯車として入力軸5上に形成されており、この第4の歯車ペアRP4の第8の歯車Z8は遊び歯車として第1の副軸V1上に形成されている。
【0037】
次に、第5の歯車ペアRP5は、第5の歯車列RE5に形成されている。この歯車ペアは、第10の歯車Z10である遊び歯車が副軸2上に形成され、第9の歯車Z9である固定歯車が入力軸5上に形成されている。第4の歯車列RE4が、出力歯車として働く第8の歯車Z8を第1の副軸V1上に有することにより、第2の副軸V2上に十分なスペースができるため、第3の歯車ペアRP3の第6の歯車Z6のための第4の切替え要素S4と、第5の歯車ペアRP5の出力歯車である第10の歯車Z10のための第5の切替え要素S5とを並べて配置することができ、これにより、これらの2つの切替え要素S4、S5も共通のスライドスリーブによって二重切替え要素として実現することが可能となる。第6の歯車列RE6にある第6の歯車ペアRP6は、固定歯車である第11の歯車Z11が入力軸5上に配置され、遊び歯車である第12の歯車Z12は第1の副軸V1上に配置されている。次に、この列に属している切替え要素、すなわち第7の切替え要素S7は、第4の歯車ペアRP4のための第6の切替え要素S6の隣に位置決めすることができ、従ってこの歯車ペアも、第2の副軸V2の方に移動している第5の歯車ペアRP5によってできた取付けスペースの中に配置されている。ここでも、2つの切替え要素S6、S7は、共通のスライドスリーブによって二重切替え要素の形で形成することが可能である。次に、この第6の歯車列RE6には、すでに述べた出力歯車列AEが続き、この列には副軸V1、V2の少なくとも2つの出力歯車7、8があり、好ましくは、ここに図示されているように、分離クラッチ4も相応に配置されている。電気機械3は、同じく軸方向aにこの出力歯車列AEの上に重なっている。
【0038】
また、第1の歯車列RE1と第2の歯車列RE2との間には、第1の副軸V1と同軸上に配置されている第3の切替え要素S3および入力軸5と同軸上に配置されている第1の切替え要素S1を持つ第1の切替え要素列SE1がある。第2の切替え要素列SE2は、第4の歯車列RE4と第5の歯車列RE5との間にあり、第5の切替え要素S5ならびに第6の切替え要素S6を含んでいるが、第4の切替え要素S4と第7の切替え要素S7がそれぞれ第4の歯車列RE4または第5の歯車列RE5の中に配置されている。
【0039】
「切替え要素列」という用語は、軸方向aに対して垂直に配置されており、この列に属する、またはこの列に「含まれる」切替え要素と交差している列を意味している。
【0040】
この場合、ハイブリッド駆動装置101の変速装置は、有利には、機械的後退ギアのない6速変速装置として利用されるように形成することができる。従って、特に後退走行は電気機械3によって行われる。この電気機械を内燃機関を始動するためにも使用することで、相応に小さな分離クラッチ4を用いることができ、この場合、分離クラッチは内燃機関を始動可能である必要はない。従って、この分離クラッチは、
図1に示されているように、出力歯車列AEの副軸V1、V2の出力歯車7、8と一緒に配置できるように小型化することが可能である。
【0041】
ここでは、第4の歯車ペアRP4および第5の歯車ペアRP5を介して交互に変速装置の1速または2速が生じるように変速比が構成されていてよい。次に、第1の歯車ペアRP1は3速を実現するために用いられ、第3の歯車ペアRP3ならびに第6の歯車ペアRP6は4速、5速または6速を実現するために使用することができ、5速または6速の実現には、さらに第2の歯車ペアRP2も適宜追加的に使用される。
【0042】
「ギア(速)」という用語は、設定可能な変速段階を意味し、変速比は1速から6速の順に連続的に減少する。
【0043】
説明されているこの実施形態の具体例は、1速が第5の歯車ペアRP5によって実現され、2速が第4の歯車ペアRP4によって実現され、3速が第1の歯車ペアRP1によって実現され、4速が第6の歯車ペアRP6によって実現され、5速が第3の歯車ペアRP3によって実現され、6速が第2の歯車ペアRP2によって実現されるように設けることもできるであろう。
【0044】
この代替として、
図1による実施形態におけるハイブリッド駆動装置の構成によって、第1の歯車列RE1を使って4速も実現し、第2の歯車列RE2を使って交互に2速または6速を実現し、これに応じて第4の歯車列RE4および同様に第5の歯車列RE5を使って交互に1速、2速または3速を実現することができる。次に、第3および第6の歯車列RE3、RE6によって交互に残りのギアを実現することができる。ここでの具体的な実施例は、特に、1速が第5の歯車ペアRP5によって実現され、2速が第4の歯車ペアRP4によって実現され、3速が第3の歯車ペアRP3によって実現され、4速が第1の歯車ペアRP1によって実現されるように形成できるであろう。次に、5速は第6の歯車ペアRP6によって実現でき、これに応じて6速は第2の歯車ペアRP2によって実現できるであろう。
【0045】
図2には、ハイブリッド駆動装置102の代替の変形例が示されている。違いは、第2の切替え要素S201が入力軸5から第2の副軸V2に変更されていることである。第2の歯車ペアRP2は、歯車ペアRP3からRP6と同様に、固定歯車を第3の歯車Z3として入力軸5上に有している。第4の歯車Z4は、第2の副軸V2上にある遊び歯車であり、この遊び歯車は第2の切替え要素202を介して第2の副軸V2と選択的に一体回転可能に接続、または解放されてよい。第2の副軸V2へ「移行した」この第2の切替え要素S202は、ハイブリッド駆動装置102のこの実施形態では、第1の切替え要素S1および第3の切替え要素S3に追加して、第1の切替え要素列SE1に移行しているため、構造はさらにコンパクトになる。ハイブリッド駆動装置102のその他の構造は、前述の図ですでに説明したハイブリッド駆動装置101の構造と同様である。
【0046】
このとき、第4および第5の歯車列RE4、RE5を交互に1速と2速のために使用し、第1の歯車列RE1を3速のために使用し、第2の歯車列RE2を2速または4速のために使用し、第3の歯車列RE3を、第6の歯車列RE6と同様に、交互に4速、5速または6速のために使用するように設けることができる。この構成の場合、具体例として、1速が第5の歯車ペアRP5によって実現され、2速が第4の歯車ペアRP4によって実現され、3速が第1の歯車ペアRP1によって実現され、4速が第2の歯車ペアRP2によって実現され、5速が第3の歯車ペアRP3によって実現され、6速が第6の歯車ペアRP6によって実現されるようにできるであろう。
【0047】
ハイブリッド駆動装置102の別の変形例は、第4の歯車列RE4および第5の歯車列RE5によって交互に1速、2速および/または3速を実現し、これに応じて次に第2の歯車列RE2によって交互に3速または5速を実現し、第1の歯車列RE1によって4速を実現するように設けることもできるであろう。次に、第3および第6の歯車列RE3、RE6によって交互に残りのギアを実現することができる。ここでは、具体的な実施例として、1速が第5の歯車列RE5、すなわち第5の歯車ペアRP5によって実現され、2速が第4の歯車ペアRP4によって実現され、3速が第3の歯車ペアRP3によって実現され、4速が第1の歯車ペアRP1によって実現され、5速が第2の歯車ペアRP2によって実現され、6速が第6の歯車ペアRP6によって実現されるようにできるであろう。
【0048】
この場合、
図1および2によるハイブリッド駆動装置101、102のすべての変形例は、機械的後退ギアなしで6速を実現することが可能である。ハイブリッド駆動装置101、102は、好ましくは車両の第1の駆動軸を駆動するために使用され、この車両では、第2の駆動軸が電気だけで駆動されている。従って、この車両は原則的にさらなる駆動軸または非駆動軸を備えることも可能であるが、車両としては2本の車軸を設ける構造が一般的である。しかしながら、そのようなハイブリッド車両はハイブリッド駆動装置101、102の好ましい使用目的ではあるが、唯一の使用目的ではない。