(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】光学部材、導光システム
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240820BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240820BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20240820BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20240820BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240820BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240820BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240820BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21V5/00 320
F21V5/00 530
F21V5/00 600
E06B9/24 D
E06B7/28 C
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021548856
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035242
(87)【国際公開番号】W WO2021060137
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019175836
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-186361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 5/00
E06B 9/24
E06B 7/28
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の出射光を導光する導光体となる第1基材と、
前記第1基材の所定面に接する可変層と、
前記可変層を介して前記第1基材と対向する第2基材と、を有し、
前記可変層は、液体層と気体層に可変可能であり、
前記第1基材の屈折率
がn1
であり、
前記可変層が前記液体層である場合、前記可変層の屈折率がn2であり、
前記可変層が前記気体層である場合、前記可変層の屈折率がn3であり(但し、n2>n3)、
n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たす光学部材。
【請求項2】
前記光源が点灯し、かつ前記可変層の屈折率がn3である場合、前記第1基材を導光した光が前記可変層を介して前記第2基材側から面発光する面光源となる請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記光源が消灯し、かつ前記可変層の屈折率がn2である場合、可視光を透過する透明部材となる請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記第2基材の所定面に接する第2可変層と、
前記第2可変層を介して前記第2基材と対向する第3基材と、を有し、
前記第2可変層は、前記光源の点灯/消灯に応じて気泡を導入可能な液体層である請求項1に記載の光学部材。
【請求項5】
前記光源が点灯し、かつ前記可変層の屈折率がn3である場合、前記第1基材を導光した光が前記可変層、前記第2基材、前記第2可変層を介して前記第3基材側から面発光する面光源となる請求項4に記載の光学部材。
【請求項6】
前記光源が点灯し、かつ前記可変層の屈折率がn3である場合、前記第2可変層に前記気泡が導入される請求項5に記載の光学部材。
【請求項7】
前記光源が消灯し、かつ前記可変層の屈折率がn2である場合、可視光を透過する透明部材となる請求項4に記載の光学部材。
【請求項8】
前記光源が消灯し、かつ前記可変層の屈折率がn2であり、かつ前記第2可変層に前記気泡が導入された場合、前記透明部材よりも可視光の透過率が低い部材となる請求項7に記載の光学部材。
【請求項9】
前記光源が消灯し、かつ前記可変層の屈折率がn3であり、かつ前記第2可変層に前記気泡が導入された場合、前記透明部材よりも可視光の透過率が更に低い部材となる請求項8に記載の光学部材。
【請求項10】
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の光学部材と、
前記可変層を、屈折率がn2である状態、又は、屈折率がn3である状態、に可変する可変層変更部と、
前記可変層変更部及び前記光源を制御して、前記光源が点灯して前記可変層の屈折率がn3である状態、又は、前記光源が消灯して前記可変層の屈折率がn2である状態、にする制御部と、を有する導光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、導光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラケットやフットライトのように壁面に固定して使用する照明器具が知られている。又、その一方、有機EL(Organic Electro-Luminescence)発光素子を光源とする有機ELパネルを使用した照明器具が知られている。有機ELパネルは、薄くて軽いため、様々な形状の照明器具に対して好適に採用可能である。又、有機ELパネルを採用した照明器具は、有機ELパネルが面光源であり拡散光を発するため、柔らかい光による温かみのある雰囲気を醸し出すことができる。
【0003】
又、省エネを目的として、所定の間隔をおいて対向された二枚の透光性のパネルの隙間に貯留された水によって貯水層を形成し、貯水層にマイクロバブル発生手段によって発生させたマイクロバブルを供給して混入させ、マイクロバブルをパネルの表面に沿って移動させることにより光透過率を変化させて日射からの熱の吸収量を調整し、空調装置の冷房効率を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機ELパネル等の照明器具は、天井や壁等に取り付けることは可能であるが、可視光を透過できないため、窓に取り付けた場合は外の景観を見る等の行為ができない。
【0006】
一方で、特許文献1に開示された技術では、外の景観は見ることが可能であるものの、光源としての機能はない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能な光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本光学部材は、光源と、前記光源の出射光を導光する導光体となる第1基材と、前記第1基材の所定面に接する可変層と、前記可変層を介して前記第1基材と対向する第2基材と、を有し、前記可変層は、液体層と気体層に可変可能であり、前記第1基材の屈折率がn1であり、前記可変層が前記液体層である場合、前記可変層の屈折率がn2であり、前記可変層が前記気体層である場合、前記可変層の屈折率がn3であり(但し、n2>n3)、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たす。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能な光学部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る導光システムに含まれる制御部のハードウェアブロック図の例である。
【
図3】第1実施形態に係る導光システムに含まれ制御部の機能ブロック図の例である。
【
図4】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)である。
【
図5】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)である。
【
図6】第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)である。
【
図7】第2実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)である。
【
図9】第2実施形態に係る導光システムに含まれ制御部の機能ブロック図の例である。
【
図10】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)である。
【
図11】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)である。
【
図12】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その4)である。
【
図13】第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光学部材は、光源と、前記光源の出射光を導光する導光体となる第1基材と、前記第1基材の所定面に接する可変層と、前記可変層を介して前記第1基材と対向する第2基材と、を有し、前記第1基材の屈折率をn1としたとき、前記可変層の屈折率はn2又はn3に可変でき(但し、n2>n3)、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たす。
【0012】
本発明では、導光体となる第1基材と、第1基材と対向する第2基材との間に、屈折率が変化する可変層を設け、第1基材は光源から第1基材に導波した光が可変層側に出射するように設計されている。このような構成とすることで、光源をオフとした場合には、可変層の屈折率をn2とする、つまり、可変層の屈折率を高くすることで、第1基材から第2基材を通じて光学的に透明な部材とすることができる(「透明状態」と称する)。
【0013】
一方で、光源をオンとした場合には、可変層の屈折率をn3とする、つまり、可変層の屈折率を低くすることで、光源からの光が第1基材中を十分に導波し、第1基材側から第2基材側へ光を出射できる(「発光状態」と称する)。又、光源をオフとした場合に、可変層の屈折率をn3とする、つまり、可変層の屈折率を低くすることで、第1基材から第2基材を通じてヘイズのある部材とすることができ、言い換えれば、プライバシー性を持たせることができる(「ヘイズ状態」と称する)。
【0014】
このように、本発明の光学部材は、光源のオン及びオフ並びに可変層の屈折率の変化を簡便に組み合わせ可能とし、光学的に複数の態様を実現することができる。
【0015】
前記透明状態をより良好にするためには、屈折率の値の差n2-n1が0以上0.2以下であることが好ましい。
【0016】
前記発光状態をより良好にするためには、屈折率の値の差n3-n1が0.46以上0.76以下であることが好ましい。
【0017】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本実施形態の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張して描いている場合がある。
【0018】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
図1に示すように、導光システム1は、光学部材10と、貯水部30と、ポンプ40と、電磁弁50と、制御部60とを有している。
【0019】
光学部材10は、基材11及び12と、支持体13~16と、可変層17と、光源20とを有している。導光システム1において、光学部材10は、光源又は透明部材となる部分であり、例えば、ビルや家屋等の建築物の窓部に装着可能である。
【0020】
光学部材10は、所定の間隔を空けて略平行に配置された2枚の板状の基材11及び12を有している。基材11及び12は透明であり、可視光を透過させることができる。基材11及び12の可視光透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。基材11及び12としては、例えば、ソーダ石灰ガラス等の無機ガラスや、アクリル系樹脂等を使用可能である。
【0021】
基材11及び12の形状は、特に限定されないが、例えば、矩形である。基材11及び12の形状が矩形である場合、
図1のA-A線に平行な方向から視たときの基材11及び12の大きさは、特に限定されないが、例えば、縦2030mm×横1690mm程度である。基材11及び12の厚さは、特に限定されないが、例えば、2mm~20mm程度である。基材11及び12の間隔(可変層17の厚さ)は、特に限定されないが、例えば、5mm~30mm程度である。
【0022】
基材11及び12は、支持体13及び14により上下方向から支持され、支持体15及び16により左右方向から支持され、内部の密閉された空隙に可変層17を形成している。基材12は、可変層17を介して基材11と対向しており、可変層17は、基材11及び12の互いに対向する面に接して形成されている。可変層17は、液体層と気体層に可変可能である。
【0023】
なお、光学部材10において、基材11と基材12の間に可変層17が配置される密閉された空隙を形成可能であれば、基材11及び12を支持する構造は、
図1に示す態様には特に限定されない。
【0024】
基材11の所定側(
図1の例では、基材11の下端部)に、1つの光源20が、基材11に導光可能に配置されている。光源20は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)が基材11の下端部に沿って一次元又は二次元に配列されたLEDアレイであるが、LEDに代えて、有機ELやレーザ等の任意の光源を選択可能である。なお、光源20の配置は
図1に示す態様には特に限定されず、例えば、基材11の上端部や側端部等に適宜配置可能である。
【0025】
貯水部30は、ポンプ40及び電磁弁50を経由して、給水路31により支持体14を貫通して光学部材10の可変層17と接続されている。又、貯水部30は、排水路32により支持体14を貫通して光学部材10の可変層17と接続されている。なお、給水路31及び排水路32を光学部材10の可変層17と接続する位置は、特に限定されない。
【0026】
制御部60は、光源20、ポンプ40、及び電磁弁50を制御する。
図2及び
図3を参照しながら、制御部60について詳説する。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る導光システムに含まれる制御部のハードウェアブロック図の例である。
図2に示すように、制御部60は、主要な構成要素として、CPU61と、ROM62と、RAM63と、I/F64と、バスライン65とを有している。CPU61、ROM62、RAM63、及びI/F64は、バスライン65を介して相互に接続されている。制御部60は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0028】
CPU61は、制御部60の各機能を制御する。記憶手段であるROM62は、CPU61が制御部60の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM63は、CPU61のワークエリア等として使用される。又、RAM63は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F64は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、外部ネットワーク等と接続される。
【0029】
制御部60は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System On a Chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、制御部60は、回路モジュール等であってもよい。
【0030】
図3は、第1実施形態に係る導光システムに含まれ制御部の機能ブロック図の例である。
図3に示すように、制御部60は、主要な機能ブロックとして、光源制御部601と、ポンプ制御部602と、電磁弁制御部603とを備えている。制御部60は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。
【0031】
光源制御部601は、光源20の点灯/消灯を切り替える機能を有する。ポンプ制御部602は、例えばポンプ40のモータの回転数を変化させて、可変層17の給水量及び排水量を制御する機能を有する。又、電磁弁制御部603は、電磁弁50を制御して、可変層17の給水をオン/オフする機能を有する。制御部60は、必要に応じ、その他の機能を有してもよい。
【0032】
なお、貯水部30から可変層17の給水を行うことは一例であり、例えば、水道等の水源から可変層17の給水を行ってもよい。
【0033】
図4は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)であり、
図1のA-A線に沿う縦断面を示している。
図4に示すように、基材11の可変層17内に露出する面には、断面形状が略三角状の複数の溝111が形成されており、これにより、基材11は、光源20の出射光を導光する導光体となる。
【0034】
導光体とは、基材11の表面に特殊な加工を施し、基材11の端面から入射する光を均一に面発光させる部材である。従って、基材11が導光体として機能すれば、断面形状が略三角状の複数の溝が形成された構造には限定されない。例えば、基材11の可変層17内に露出する面に、ドットパターンを形成してもよい。
【0035】
図5は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)であり、
図4において可変層17内を水で満たし、光源20を消灯した状態である。
図6は、第1実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)であり、
図4と同様に可変層17内を空気で満たし、光源20を点灯した状態である。
【0036】
図5及び
図6に示すように、制御部60がポンプ40及び電磁弁50を制御して可変層17の給水及び排水を行うことにより、可変層17内を水で満たした状態と空気で満たした状態に可変できる。すなわち、制御部60がポンプ40及び電磁弁50を制御して可変層17の給水及び排水を行うことにより、可変層17を液体層又は気体層に可変できる。
【0037】
本実施形態では、基材11の屈折率をn1としたとき、可変層17の屈折率はn2(液体層)又はn3(気体層)に可変でき(但し、n2>n3)、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たすように各材料が選定されている。
【0038】
例えば、基材11がソーダ石灰ガラスである場合、屈折率n1=1.51である。又、可変層17において、液体層が水である場合、屈折率n2=1.33である。又、可変層17において、気体層が空気である場合、屈折率n3=1.00である。この場合、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たす。
【0039】
但し、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たせば、基材11や可変層17の構成は限定されない。例えば、基材11の材料は、ソーダ石灰ガラス(屈折率n1=1.51)に代えて硼珪クラウンガラス(屈折率n1=1.46)やアクリル系樹脂(屈折率n1=1.53)や光学樹脂(ポリメタクリル酸メチル、屈折率n1=1.76)を用いてもよい。又、可変層17において、液体層として水に代えて有機溶剤やアーモンド油(屈折率n2=1.46)を用いてもよいし、気体層として空気に代えて窒素やアルゴンを用いてもよい。なお、基材12の材料は、特に限定されず、基材11と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0040】
基材11と可変層17(液体層及び気体層)の屈折率を上記の関係にすることで、
図5のように、可変層17が液体層である場合には、光学部材10の外部から入射した光が、光学部材10を透過する。そのため、光学部材10をガラス等と同様の可視光を透過する透明部材として機能させることができる。
【0041】
すなわち、ポンプ40及び電磁弁50は、制御部60に制御されて、可変層17を、屈折率がn2である状態、又は、屈折率がn3である状態、に可変する可変層変更部である。又、可変層17は、光源20の点灯/消灯に応じて屈折率を可変可能である。そして、制御部60の光源制御部601が光源20を消灯し、制御部60のポンプ制御部602及び電磁弁制御部603が可変層17が液体層(屈折率n2)になるようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10を可視光を透過する透明部材として機能させることができる。なお、光学部材10は、可視光以外の光を透過してもよい。
【0042】
なお、光源20が消灯しており、可変層17が気体層である状態では、光学部材10の視認性が低下する。そのため、光学部材10を透明部材として使用する場合には、
図5に示したように、光源20を消灯し、可変層17が液体層である状態で使用することが好ましい。
【0043】
又、基材11と可変層17(液体層及び気体層)の屈折率を上記の関係にすることで、
図6のように、可変層17が気体層である場合には、光学部材10を基材11を導光した光が可変層17を介して基材12の所定面から面発光する面光源として機能させることができる。
【0044】
図6において、光源20から出射された光L
1は、基材11に入射し、導光体である基材11内で全反射を繰り返して進み、一部の光が基材12側に反射され、基材12から外部に出射される。基材12からの出射光L
2の輝度が、基材12の出射面の全面において均一化するように、光源20からの距離に応じて基材11に溝111が設けられているため、光学部材10を面光源として機能させることができる。
【0045】
すなわち、可変層17は、光源20の点灯/消灯に応じて屈折率を可変可能である。そして、制御部60の光源制御部601が光源20を点灯し、ポンプ制御部602及び電磁弁制御部603が可変層17が気体層(屈折率n3)になるようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10を面光源として機能させることができる。
【0046】
このように、光学部材10は、光源としても、可視光を透過する透明部材としても用いることが可能である。つまり、光学部材10は、照明器具としても用いることができ、外の景観などの室外を見ることもできる。
【0047】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、光学部材が複数の可変層を有する例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0048】
図7は、第2実施形態に係る導光システムを例示する模式図である。
図8は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その1)であり、
図7のB-B線に沿う縦断面を示している。
【0049】
図7及び
図8に示すように、導光システム1Aは、光学部材10が光学部材10Aに置換された点、及びノズル90が追加された点が、導光システム1(
図1参照)と相違する。
【0050】
光学部材10Aにおいて、基材11及び12、支持体13及び14により形成された空隙は、基材18により可変層17Aと可変層17Bとに分割されている。基材18としては、例えば、ソーダ石灰ガラス等の無機ガラスや、アクリル系樹脂等の有機ガラスを使用可能である。
【0051】
基材11及び12、支持体13~16、並びに基材18により、内部の密閉された空隙に可変層17A及び17Bを形成している。基材18は、可変層17Aを介して基材11と対向しており、可変層17Aは、基材11及び18の互いに対向する面に接して形成されている。
【0052】
可変層17Aは、液体層と気体層に可変可能である。基材12は、可変層17Bを介して基材18と対向しており、可変層17Bは、基材12及び18の互いに対向する面に接して形成されている。
【0053】
可変層17Bは、光源20の点灯/消灯に応じて気泡Bを導入可能な液体層である。気泡Bは、例えば、マイクロバブルである。ここで、マイクロバブルとは、直径が1μm~100μm程度である気泡を指す。
【0054】
貯水部30は、ポンプ40及び電磁弁50を経由して、給水路31により支持体14を貫通して光学部材10Aの可変層17Aと接続されている。又、貯水部30は、排水路32により支持体14を貫通して光学部材10Aの可変層17Aと接続されている。なお、給水路31及び排水路32を光学部材10Aの可変層17Aと接続する位置は、特に限定されない。
【0055】
ノズル90は、マイクロバブル発生器であり、可変層17Bの端部に沿って配置されている。ノズル90の可変層17B側には、例えば、支持体14を貫通して可変層17Bに気泡Bを導入する多数の微細孔が所定ピッチで形成されている。なお、可変層17Bは、常に水等の液体で満たされている。ノズル90としては、例えば、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、加圧溶解方式等の任意の方式のマイクロバブル発生器を用いることができる。
【0056】
又、マイクロバブル発生器であるノズル90を用いる代わりに、マイクロバブル入りの水を可変層17Bに供給する方法を用いてもよい。例えば、光学部材10Aの外部に貯水部30と同様な貯水槽を配置し、この貯水槽に上記のような種々の方式で発生させたマイクロバブルを入れた水を溜めて、この貯水槽から必要なときにポンプ等によりマイクロバブルを入れた水を可変層17Bに供給すればよい。
【0057】
なお、マイクロバブルの寿命は数分から十数分のため、貯水槽に必要な時にマイクロバブルを導入するか、貯水槽を常時マイクロバブルが導入された状態にしておく必要がある。
【0058】
図9に示すように、制御部60は、主要な機能ブロックとして、光源制御部601と、ポンプ制御部602と、電磁弁制御部603と、ノズル制御部604とを備えている。制御部60は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。
【0059】
光源制御部601は、光源20の点灯/消灯を切り替える機能を有する。ポンプ制御部602は、例えばポンプ40のモータの回転数を変化させて、可変層17Aの給水量及び排水量を制御する機能を有する。又、電磁弁制御部603は、電磁弁50を制御して、可変層17Aへの給水をオン/オフする機能を有する。又、ノズル制御部604は、ノズル90を制御して、可変層17Bへの気泡の供給をオン/オフする機能、及び可変層17Bへの気泡の供給量を調整する機能を有する。制御部60は、必要に応じ、その他の機能を有してもよい。
【0060】
図10は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その2)であり、
図8において可変層17A内を水で満たし、光源20を消灯した状態である。
図11は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その3)であり、
図8と同様に可変層17A内を空気で満たし、可変層17Bに気泡Bを導入し、光源20を点灯した状態である。
【0061】
図10及び
図11に示すように、制御部60がポンプ40及び電磁弁50を制御して可変層17Aの給水及び排水を行うことにより、可変層17A内を水で満たした状態と空気で満たした状態に可変できる。すなわち、制御部60がポンプ40及び電磁弁50を制御して可変層17Aの給水及び排水を行うことにより、可変層17Aを液体層又は気体層に可変できる。
【0062】
又、可変層17Bは、常に水等の液体で満たされているが、制御部60がノズル90を制御して可変層17Bに気泡Bを導入できる。すなわち、制御部60がノズル90を制御して可変層17Bに気泡Bを導入することにより、可変層17Bを気泡Bのない液体層から気泡Bが導入された液体層に可変できる。
【0063】
ノズル90から供給される多数の気泡Bは、可変層17Bの全領域において可変層17B中を上昇する。可変層17B中を上昇した気泡Bは、支持体13に設けられた図示しない貫通孔を介して大気中に放出される。気泡Bが導入された可変層17Bは、入射光を拡散する拡散層として機能する。
【0064】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、基材11の屈折率をn1としたとき、可変層17Aの屈折率はn2(液体層)又はn3(気体層)に可変でき(但し、n2>n3)、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たすように各材料が選定されている。
【0065】
例えば、基材11がソーダ石灰ガラスである場合、屈折率n1=1.51である。又、可変層17Aにおいて、液体層が水である場合、屈折率n2=1.33である。又、可変層17Aにおいて、気体層が空気である場合、屈折率n3=1.00である。この場合、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たす。
【0066】
但し、n1、n2、及びn3が|n1-n2|<|n1-n3|の関係を満たせば、基材11や可変層17Aの構成は限定されない。例えば、基材11の材料は、ソーダ石灰ガラス(屈折率n1=1.51)に代えて硼珪クラウンガラス(屈折率n1=1.46)やアクリル系樹脂(屈折率n1=1.53)や光学樹脂(ポリメタクリル酸メチル、屈折率n1=1.76)を用いてもよい。又、可変層17Aにおいて、液体層として水に代えて有機溶剤やアーモンド油(屈折率n2=1.46)を用いてもよいし、気体層として空気に代えて窒素やアルゴンを用いてもよい。なお、基材12及び18の材料は、特に限定されず、基材11と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0067】
基材11と可変層17A(液体層及び気体層)の屈折率を上記の関係にすることで、
図10のように、可変層17Aが液体層である場合には、光学部材10Aの外部から入射した光が、光学部材10Aを透過する。そのため、光学部材10Aをガラス等と同様の可視光を透過する透明部材として機能させることができる。
【0068】
すなわち、可変層17Aは、光源20の点灯/消灯に応じて屈折率を可変可能である。そして、制御部60の光源制御部601が光源20を消灯し、ポンプ制御部602及び電磁弁制御部603が可変層17Aが液体層(屈折率n2)になるようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10Aを可視光を透過する透明部材として機能させることができる。なお、光学部材10Aは、可視光以外の光を透過してもよい。
【0069】
なお、光源20が消灯しており、可変層17Aが気体層である状態では、光学部材10Aの視認性が低下する。そのため、光学部材10Aを透明部材として使用する場合には、
図10に示したように、光源20を消灯し、可変層17Aが液体層である状態で使用することが好ましい。
【0070】
又、基材11と可変層17A(液体層及び気体層)の屈折率を上記の関係にすることで、
図11のように、可変層17Aが気体層である場合には、光学部材10Aを基材11を導光した光が可変層17A、基材18、及び可変層17Bを介して基材12の所定面から面発光する面光源として機能させることができる。
【0071】
図11において、光源20から出射された光L
1は、基材11に入射し、導光体である基材11内で全反射を繰り返して進み、一部の光が基材12側に反射され、基材12から外部に出射される。基材12からの出射光L
2の輝度が、基材12の出射面の全面において均一化するように、光源20からの距離に応じて基材11に溝111が設けられているため、光学部材10Aを面光源として機能させることができる。
【0072】
すなわち、可変層17Aは、光源20の点灯/消灯に応じて屈折率を可変可能である。そして、制御部60の光源制御部601が光源20を点灯し、ポンプ制御部602及び電磁弁制御部603が可変層17Aが気体層(屈折率n3)になるようにポンプ40及び電磁弁50を制御すれば、光学部材10Aを面光源として機能させることができる。
【0073】
この際、制御部60のノズル制御部604が可変層17Bに気泡Bを導入するようにノズル90を制御すれば、全領域に気泡Bが導入された可変層17Bが拡散層として機能する。そのため、基材12の出射面からの出射光L2の輝度を第1実施形態よりも更に均一化できる。
【0074】
又、光学部材10Aは、プライバシーガラスとして用いることもできる。
図12は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その4)であり、
図10において可変層17Bに気泡Bを導入した状態である。又、
図10の場合と同様に、光源20は消灯した状態である。
【0075】
可変層17Bに気泡Bが導入されると、可変層17Bが白濁状態となり、光学部材10Aの外部から入射した光が、光学部材10Aを透過しにくくなる。そのため、光学部材10Aは、
図10の状態の透明部材よりも可視光の透過率が低い部材となり、プライバシーガラスとして機能させることができる。
【0076】
図13は、第2実施形態に係る導光システムの光学部材を例示する断面図(その5)であり、
図12において、可変層17Aを気体層にした状態である。又、
図12の場合と同様に、光源20は消灯した状態である。
【0077】
可変層17Aを気体層にすると、光学部材10Aの外部から入射した光が、光学部材10Aを
図12の場合よりも更に透過しにくくなる。そのため、光学部材10Aは、
図12の状態よりも可視光の透過率が更に低い部材となり、プライバシーガラスとして機能を一層強化させることができる。
【0078】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0079】
本国際出願は2019年9月26日に出願した日本国特許出願2019-175836号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2019-175836号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0080】
1、1A 導光システム
10、10A 光学部材
11、12、18 基材
13、14、15、16 支持体
17、17A、17B 可変層
20 光源
30 貯水部
31 給水路
32 排水路
40 ポンプ
50 電磁弁
60 制御部
90 ノズル
111 溝